JP6917626B2 - 積層透明蛍光体および照明装置 - Google Patents
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ηEX=IEM/IEX (1)
IEM:蛍光光子数
IEX:照射光子数
内部量子効率(ηINT)は、吸収光子数をIABSとすると、
ηINT=IEM/IABS (2)
となる。ここで、
IABS=IEX・(1−T) (3)
であるので、式(1)〜(3)より、透過率をTとすると、
ηEX=ηINT・IABS/IEX=ηINT・IEX・(1−T)/IEX
=ηINT・(1−T) (4)
となる。式(4)より、透過率を低減すれば外部量子効率は内部量子効率に漸近することが分かる。Lambert-Beer則より、下記式が成立する。
1−T=1−I1/IEX−Ir/IEX−IS/IEX
=1−exp(acl)−Ir/IEX−IS/IEX
I1:透過光強度
Ir:反射光強度
IS:散乱光強度
a:モル吸光係数
c:吸収イオンの濃度
l:光路長
内部量子効率の高い透明蛍光体は幾つか報告されているが、吸光係数が低いことによって透過率が大きくなり、外部量子効率を高くすることができないという問題がある。本明細書では、透明なガラスを想定しているので、ISはほとんど無視できるとする。外部量子効率を高めるためのアプローチとしては、
・光路長、吸収イオン濃度、モル吸光係数のいずれかを増大させることによる吸収量の増大
・反射光強度の低減
が挙げられる。
R=(n1−n0)2/(n1+n0)2 (1)
n0:周囲媒体の屈折率
n1:ガラス蛍光体の屈折率
よって、Ir/IEXは屈折率(n)に依存するが、n0=1.0(空気)とすると、典型的な酸化物結晶の屈折率はn0=1.5〜2.0程度であるため、この範囲であればIr/IEXは0.2を越えることはない。そのため、反射光強度の低減効果だけでは、外部量子効率は、せいぜい20%強の増強しか見込めない。
項1.
波長がλ(350nm≦λ≦470nm)の光を照射すると蛍光を発する透明蛍光体と、
前記透明蛍光体の外面の少なくとも一部に接合された光を透過するガラス体と、を備え、
前記ガラス体の前記透明蛍光体と接合している接合面の反対面には、光を回折させる回折構造が形成されている、積層透明蛍光体。
項2.
前記透明蛍光体および前記ガラス体は平板形状であり、
前記ガラス体は、前記平板形状の透明蛍光体の少なくとも一方の平板面に接合している、項1に記載の積層透明蛍光体。
項3.
前記回折構造は、所定の方向に配列された複数の突条である、項1または2に記載の積層透明蛍光体。
項4.
前記光の波長がλであり、
前記突条の間隔dは0.75×λ≦d≦2.00×λである、項3に記載の積層透明蛍光体。
項5.
前記光の波長がλであり、
前記突条の間隔dは0.90×λ≦d≦λである、項4に記載の積層透明蛍光体。
項6.
前記光の波長が400nm〜410nmであり、
前記突条の間隔は300nm〜800nmである、項3に記載の積層透明蛍光体。
項7.
前記光の波長が400nm〜410nmであり、
前記突条の間隔は365nm〜405nmである、項6に記載の積層透明蛍光体。
項8.
前記光の波長が450〜470nmであり、
前記突条の間隔は340nm〜900nmである、項3に記載の積層透明蛍光体。
項9.
前記光の波長が450〜470nmであり、
前記突条の間隔は405nm〜450nmである、項8に記載の積層透明蛍光体。
項10.
項1〜9のいずれかに記載の積層透明蛍光体と、
前記積層透明蛍光体に前記光を照射する光源と、を備えた、照明装置。
図1(a)は、本実施形態に係る積層透明蛍光体10の断面図であり、図1(b)は、積層透明蛍光体10の平面図である。積層透明蛍光体10は、透明蛍光体1とガラス体2とを備えている。透明蛍光体1は、発光中心を含んだガラス蛍光体またはセラミックス蛍光体であり、通常、1.5〜2.0程度の屈折率を有する。発光中心としては、例えばEu,Ceなどの希土類イオンやCuなどの遷移金属イオン、Snなどの重金属イオンを含有した酸化物ガラスやフッ化物ガラスが挙げられる。これにより、透明蛍光体1は、波長がλ(本実施形態では、350nm≦λ≦470nm)の光を照射すると蛍光を発する。
ε=△α(Tg−Trt)E
ここで、△αはガラス体と蛍光体の熱膨張率の差、Tgはガラス体のガラス転移点、Eはガラスのヤング率である。
図2は、図1(a)に示す透明蛍光体1およびガラス体2の部分拡大断面図であり、ガラス体2の反対面2aに光Lin(波長λ)が入射した場合の、光の挙動を示している。光Lin(波長λ)は、ガラス体2に入射する際に、複数の突条3aによって、回折光Ld1(波長λ)および透過光Lt(波長λ)となる。透過光Lt(波長λ)の一部は、ガラス体2から透明蛍光体1に進行し、透明蛍光体1の下面1bにおいて反射する(反射光Lr1(波長λ))。また、回折光Ld1(波長λ)については、回折角(回折光Ld1(波長λ)と透過光Lt(波長λ)との角度)が透明蛍光体1の臨界角以上である場合、回折光Ld1(波長λ)は、透明蛍光体1の界面において突条がない場合は全反射、突条がある場合は高い反射率で反射を繰り返すので、光路長が著しく増大する。これにより、外部量子効率が高くなり、透明蛍光体1とガラス体2とを合わせた積層透明蛍光体10の厚みを実用的な厚み程度とすれば、厚みを大きくすることなく、積層透明蛍光体10の発光効率を高めることができる。
sinθc=n0/n1 (5)
により与えられる。例えば、n1=1.62、n0=1.00とすると、θc=39(deg.)である。
n1:ガラス蛍光体の屈折率
θi:入射光の面直角度
φi:入射光の面内角度
θt:透過回折の面直角度
φt:透過回折の面内角度
λ:波長
dx:x方向(光の入射方向の入射面に平行な成分)の突条の間隔
dy:y方向の突条の間隔
m:回折次数
m’:回折次数
本実施形態に係る積層透明蛍光体10は、ナノインプリント成型加工によって製造することができる。図4(a)〜(c)は、積層透明蛍光体10の製造工程を示す概略図である。
図1に示す積層透明蛍光体10では、ガラス体2が面1aのみに接合しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、図5(a)に示す積層透明蛍光体10’のように、ガラス体2が透明蛍光体1の下面1bのみに接合してもよい。あるいは、図5(b)に示す積層透明蛍光体10”のように、ガラス体2が透明蛍光体1の上面1aおよび下面1bの両面に形成されてもよい。
上述の形態では、入射光を積層透明蛍光体の入射面に対して垂直に入射させていたが、特に、入射光の指向性が強い場合、入射光を積層透明蛍光体の入射面に対して傾斜させてもよい。以下で示すように、入射光を積層透明蛍光体の入射面に対して所定の範囲で傾斜させたほうが、入射光を垂直に入射させた場合よりも蛍光強度が大きくなる場合もある。
θin=arcsin(mλ/n0d−1) (6)
であることが好ましい。入射面1aのみに突条が形成されている場合、式(6)は、以下のように導出される。
n1:ガラス蛍光体の屈折率
θi:入射光の面直角度
φi:入射光の面内角度
θt:透過回折の面直角度
φt:透過回折の面内角度
λ:波長
dx:x方向(光の入射方向の入射面に平行な成分)の突条の間隔
dy:y方向の突条の間隔
m:回折次数
m’:回折次数
θin=arcsin(mλ/n0d−1) (6)
であることが好ましい。反対面1bのみに突条が形成されている場合、式(6)は、以下のように導出される。
n1:ガラス蛍光体の屈折率
θi:入射光の面直角度
φi:入射光の面内角度
θt透過回折の面直角度
φt:透過回折の面内角度
λ:波長
dx:x方向(光の入射方向の入射面に平行な成分)の突条の間隔
dy:y方向の突条の間隔
m:回折次数
m’:回折次数
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能であり、例えば、上記実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる形態も、本発明の技術的範囲に属する。
(透明蛍光体の製造)
以下の手順で、比較例1、2及び実施例1として、3種類の図1に示す積層透明蛍光体10を作製した。具体的には、図4(a)に示す透明蛍光体11として、10mm×10mm×0.2mmの透明YAG:Ceセラミックス(神島化学工業株式会社製)を用意した。透明蛍光体11の熱膨張係数α=78(10−7/℃@+100−300℃)であり、屈折率n=1.8293であった。また、表1に示す市販の3種類のガラスを10mm×10mm×2mmの平板状に切断、研磨することにより、図4(a)に示すガラス体12を3つ作製した(それぞれ比較例1、2及び実施例1に対応する)。
ε=(α11−α12)*(At12―Trt) (9)
α11:透明蛍光体11の熱膨張係数
α12:ガラス体12の熱膨張係数
At12:ガラス体12の屈伏点
Trt:室温
続いて、図7に示す照明装置100を用いて、突条3aの間隔と蛍光強度との関係を検証した。透明蛍光体としては、上述の3種類の積層透明蛍光体10、および、従来の平坦な透明蛍光体を用いた。図9に示すように、ガラス体2側に光源4を配置した。光源4としては、波長450nmのレーザ光を出射するレーザ光源を用いた。光源4とガラス体2との間に、光源4からのレーザ光のs偏光のみを通過させる偏光板5を配置した。また、透明蛍光体1側を直径150mmの積分半球7で覆い、積分半球7によって透明蛍光体1からの蛍光を収集した。そして、積分半球7によって収集された蛍光の強度を、検出器6によって検出した。
(シミュレーション条件)
実施例2では、回折構造を形成することによる蛍光強度の増大を説明するため、光の挙動についてシミュレーションによる解析を行った。本実施例では、DiffractMod(RSoft製)のソフトウェアによる厳密結合波解析(Rigorous Coupled Wave Analysis, RCWA)を用いて解析した。具体的には、複数の突条を有する回折構造が形成された屈折率1.8のガラス体を平板状の透明蛍光体に接合して積層透明蛍光体を作製し、積層透明蛍光体に波長450nmのs偏光を入射させたとき(励起光の照射に相当)、および入射光と同じ波長の光が出射するとき(励起光が蛍光変換されずにガラス平板を透過したものに相当)、並びに、波長550nmの蛍光が出射するときの挙動を計算した。突条の間隔dは175nm〜2000nmの範囲で変化させ、突条の高さは130nmで固定した。突条の断面形状は幅がd/2の正弦波状で設定し、間隔に応じて前記正弦波の周期を変更した。
図13は、透明蛍光体の光源側のみにガラス体が接合された積層透明蛍光体に、波長450nmのs偏光を垂直に入射させた場合の、透過光、透過方向への回折光、およびそれらの合計の強度と、突条の間隔dとの関係を示すグラフである。同グラフから、間隔dが340nm〜900nmの場合に、回折光の強度が大きくなり、間隔dが405nm〜450nmの場合に、回折光の強度がさらに大きくなり、特に、間隔d=440nmの場合に、回折光の強度が最大になっている。
図16は、透明蛍光体の光源と反対面に接合されたガラス体の出射面における光の電場分布シミュレーション結果を示す図である。ガラス体の出射面には、480nmの間隔で突条が形成されており、光の波長は450nmである。図16から、光のエネルギーは突条の表面に集中し、外部にあまり放出されていないことが分かる。つまり、突条が形成されていることで、光の大半が反対面において反射し、空間にあまり抜けていない。
(シミュレーション条件)
実施例3では、複数の突条を有する回折構造が形成されたガラス体が透明蛍光体の一方面に接合された平板状の積層透明蛍光体に、所定の波長の光を入射させたときの光の挙動をシミュレーションによって解析した。これにより、突条の間隔と回折効率(蛍光強度)との関係が、突条の高さおよび積層透明蛍光体の屈折率によって、どのように変化するのかを検証した。本実施例では、上述の実施例2と同様、DiffractMod(RSoft製)のソフトウェアによる厳密結合波解析(Rigorous Coupled Wave Analysis, RCWA)を用いて解析した。
図17は、透明蛍光体の光源側のみにガラス体が接合された積層透明蛍光体に、波長450nmのs偏光を垂直に入射させた場合の、入射光への回折効率と突条の間隔dとの関係を示すグラフである。回折構造の突条の高さは180nmであり、突条の断面形状は幅がd/2の正弦波状であり、積層透明蛍光体の屈折率をn=1.9、1.7および1.5の3段階に変化させてシミュレーションを行った。同グラフから、屈折率n=1.9のとき、回折効率が最大となる間隔dは440nmであり、屈折率n=1.7のとき、回折効率が最大となる間隔dは430nmであり、屈折率n=1.5のとき、回折効率が最大となる間隔dは420nmであった。入射光への回折効率が大きいほど、光が積層透明蛍光体の内部を通過せずに戻るため、実質的な光路長が増加する。通常のガラスの屈折率は1.5〜2.0程度であるため、回折効率を大きくするためには、間隔dを405nm〜450nmとすればよいことが確認できた。
図19は、透明蛍光体の光源側のみにガラス体が接合された積層透明蛍光体に、波長405nmのs偏光を垂直に入射させた場合の、回折効率と突条の間隔dとの関係を示すグラフである。ガラス体および透明蛍光体の屈折率は1.6であり、回折構造の突条の高さhは90nm、180nmおよび360nmの3段階で変化させた。同グラフから、高さh=90nmのとき、回折効率が最大となる間隔dは400nmであり、高さh=180nmのとき、回折効率が最大となる間隔dは390nmであり、高さh=360nmのとき、回折効率が極大となる間隔dは490nmであった。通常のガラスの屈折率は1.5〜2.0程度であるため、回折効率を大きくするためには、間隔dを365nm〜405nmとすればよいことが確認できた。
1’ 透明蛍光体
1” 透明蛍光体
1a 上面
1b 下面
2 ガラス体
2a 反対面
2b 接合面
3 回折構造
3a 突条
4 光源
5 偏光板
6 検出器
7 積分半球
10 積層透明蛍光体
10’ 積層透明蛍光体
10” 積層透明蛍光体
11 透明蛍光体
12 ガラス体
100 照明装置
100’ 照明装置
Claims (8)
- 波長がλ(350nm≦λ≦470nm)の励起光を照射すると蛍光を発する平板形状の透明蛍光体と、
前記透明蛍光体の一方の平板面に接合された光を透過する平板形状のガラス体と、を備え、
前記ガラス体の前記透明蛍光体と接合している接合面の反対面には、前記励起光を回折させる回折構造が形成され、
前記励起光は前記反対面に入射し、
前記蛍光は前記透明蛍光体の他方の平板面から出射し、
前記回折構造は、所定の方向に配列された複数の突条であり、
前記突条の間隔dは0.75×λ≦d≦2.00×λである、積層透明蛍光体。 - 前記突条の間隔dは0.90×λ≦d≦λである、請求項1に記載の積層透明蛍光体。
- 前記励起光の波長が400nm〜410nmであり、
前記突条の間隔は300nm〜800nmである、請求項1に記載の積層透明蛍光体。 - 前記励起光の波長が400nm〜410nmであり、
前記突条の間隔は365nm〜405nmである、請求項3に記載の積層透明蛍光体。 - 前記励起光の波長が450〜470nmであり、
前記突条の間隔は340nm〜900nmである、請求項1に記載の積層透明蛍光体。 - 前記励起光の波長が450〜470nmであり、
前記突条の間隔は405nm〜450nmである、請求項5に記載の積層透明蛍光体。 - 請求項1〜6のいずれかに記載の積層透明蛍光体と、
前記積層透明蛍光体に前記励起光を照射する光源と、を備えた、照明装置。 - 前記励起光の前記反対面に対する入射角は、10°〜40°である、請求項7に記載の照明装置。
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