JP6917085B1 - 油吸着材及び油吸着マット - Google Patents
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Abstract
Description
以下、本発明の第1実施形態に係る油吸着材(以降、「第1吸着材」と称呼される場合がある。)について説明する。
第1吸着材は、親油性を有する高分子材料である第1材料からなり300nm以上であり且つ5000nm未満である繊維径を有する繊維である第1繊維の集積体である繊維集積体を含んでなる油吸着材である。第1材料は、親油性を有する高分子材料であり且つ油吸着材としての使用環境及び使用条件に耐えることが可能である限り特に限定されない。第1材料の具体例としては、例えばポリオレフィン等を挙げることができる。典型的には、第1材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリブチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の高分子材料である。また、第1材料は、異なる複数種の親油性を有する高分子材料の組み合わせであってもよい。換言すれば、第1繊維は、異なる複数種の親油性を有する高分子材料からなる繊維の組み合わせであってもよい。更に、繊維集積体の全体としての親油性及び第1吸着材の油吸着性能を損なわない限りにおいて、親油性が低い高分子材料からなる少量の繊維が繊維集積体に含まれていてもよい。
以上のように、第1吸着材を構成する繊維集積体は、親油性を有する高分子材料である第1材料からなり300nm以上であり且つ5000nm未満である繊維径を有する繊維である第1繊維同士が不規則に絡まっている。その結果、第1吸着材が単位質量当たりに吸着する油の質量(油吸着比)が増大すると共に、油吸着時における繊維の解れが低減される。即ち、第1吸着材によれば、より高い油吸着性能を達成しつつ、油吸着時における破断及び繊維の解れを低減することができる。
以下、本発明の第2実施形態に係る油吸着材(以降、「第2吸着材」と称呼される場合がある。)について説明する。
第2吸着材は、上述した第1吸着材であって、繊維集積体を構成する第1繊維の中心繊維径が800nm以上であり且つ2500nm以下であることを特徴とする油吸着材である。ここで、「中心繊維径」は、繊維集積体を構成する第1繊維の繊維径の数量分布における最頻値である。換言すれば、「中心繊維径」は、第1繊維の繊維径の数量分布において出現頻度が最も高い繊維径を意味する。
以上のように、第2吸着材においては、繊維集積体を構成する第1繊維の中心繊維径が800nm以上であり且つ2500nm以下である。これにより、第2吸着材が単位質量当たりに吸着する油の質量(油吸着比)が更に増大する。
以下、本発明の第2実施形態に係る油吸着材(以降、「第3吸着材」と称呼される場合がある。)について説明する。
そこで、第3吸着材は、上述した第2吸着材であって、繊維集積体を構成する第1繊維の繊維径の数量分布における変動係数が0.50以上であり且つ0.65以下であることを特徴とする油吸着材である。ここで言う「変動係数」は、第1繊維の繊維径の数量分布におけるバラツキの大きさを示す指標であり、当業者に周知であるように、第1繊維の繊維径の数量分布の標準偏差を第1繊維の繊維径の平均値によって除算することによって得ることができる。
以上のように、第3吸着材においては、繊維集積体を構成する第1繊維の繊維径の数量分布における変動係数が0.50以上であり且つ0.65以下である。これにより、第3吸着材が単位質量当たりに吸着する油の質量(油吸着比)が更に増大する。
以下、本発明の第4実施形態に係る油吸着材(以降、「第4吸着材」と称呼される場合がある。)について説明する。
そこで、第4吸着材は、上述した第3吸着材であって、繊維集積体の嵩密度が0.01g/cm3以上であり且つ0.05g/cm3以下であることを特徴とする油吸着材である。
以上のように、第4吸着材においては、繊維集積体の嵩密度が0.01g/cm3以上であり且つ0.05g/cm3以下である。これにより、第4吸着材が単位質量当たりに吸着する油の質量(油吸着比)が更に増大する。より好ましくは、繊維集積体の嵩密度は0.01g/cm3以上であり且つ0.03g/cm3以下である。
以下、本発明の第5実施形態に係る油吸着材(以降、「第5吸着材」と称呼される場合がある。)について説明する。
そこで、第5吸着材は、上述した第1吸着材乃至第4吸着材の何れかであって、JIS L 1092:2009に準拠する撥水度試験において繊維集積体が第5級又は第4級の湿潤状態を示すことを特徴とする油吸着材である。
2級:表面の半分に湿潤を示し,小さな個々の湿潤が布を浸透する状態を示すもの。
3級:表面に小さな個々の水滴状の湿潤を示すもの。
4級:表面に湿潤しないが,小さな水滴の付着を示すもの。
5級:表面に湿潤及び水滴の付着がないもの。
以上のように第5吸着材は高い撥水性を有するので、例えば海及び河川等の水面上に浮かんでいる油を回収する場合等においても、水を吸着せず油のみを吸着することができる。従って、従来吸着材のように水を吸着して油の吸着が困難となったり水面下に沈んだりして油の回収が困難となる可能性が低い。即ち、第5吸着材によれば、水が併存する環境においても、上述した吸水問題を引き起こす可能性が低く、油を有効に吸着して回収することができる。
以下、本発明の第6実施形態に係る油吸着マット(以降、「第1マット」と称呼される場合がある。)について説明する。
そこで、第1マットは、上述した第1吸着材乃至第5吸着材を始めとする本発明に係る油吸着材(本発明吸着材)と、親油性を有する高分子材料である第2材料からなり且つ液体が通過し得る複数の間隙を備えるシート状の部材であるカバーシートと、を含む油吸着マットである。本発明吸着材の詳細については、本発明の第1実施形態乃至第5実施形態に関する説明において既に述べたので、ここでは説明を繰り返さない。
上記のように、第1マットは、本発明吸着材と、親油性を有する高分子材料である第2材料からなり且つ液体が通過し得る複数の間隙を備えるシート状の部材であるカバーシートと、を含む油吸着マットである。更に、第1マットにおいては、上述した繊維集積体を構成する第1繊維が漏出しないように本発明吸着材の少なくとも一部がカバーシートによって覆われている。その結果、第1マットによれば、運輸省(現国土交通省)が定める「排出油防除資材の性能試験基準」(非特許文献2)を容易に満たすことができる。また、第1繊維の漏出を防止しつつ、より高い取り扱い性を発揮することができる。
以下、本発明の第7実施形態に係る油吸着マット(以降、「第2マット」と称呼される場合がある。)について説明する。
そこで、第2マットは、上述した第1マットにおいて、一対のカバーシートによってサンドイッチ状に油吸着材が挟まれており、一対のカバーシートは、一対のカバーシートの周縁部の少なくとも一部においては直接的又は繊維集積体を介して間接的に互いに接着されており且つ周縁部以外の領域においては互いに接着されていない、ことを特徴とする油吸着マットである。
上記のように、第2マットにおいては、一対のカバーシートによってサンドイッチ状に本発明吸着材が挟まれており、周縁部の少なくとも一部においてのみ一対のカバーシートが互いに接着されている。その結果、油を吸着した際に繊維集積体が厚み方向に大きく膨らむことが容易となり、繊維集積体自体が本来備える油吸着性能を十分に発揮させることができる。
以下、本発明の第8実施形態に係る油吸着マット(以降、「第3マット」と称呼される場合がある。)について説明する。
そこで、第3マットは、上述した第1マット又は第2マットであって、油吸着比が40以上であり且つ油保持比が40以上であることを特徴とする、油吸着マットである。本明細書において、油吸着比は、第1試験油に油吸着マットの全体を20℃の温度において5分間に亘って浸漬させた後に1mmの線径及び17mmの目開きを有する金網である第1金網の上に5分間に亘って放置したときの油吸着マットの質量の第1試験油に浸漬する前の油吸着マットの質量に対する比として定義される。また、本明細書において、油保持比は、第1試験油に油吸着マットの全体を20℃の温度において5分間に亘って浸漬させた後に第1金網の上に30分間に亘って放置したときの油吸着マットの質量の第1試験油に浸漬する前の油吸着マットの質量に対する比として定義される。尚、本明細書において、第1試験油は、JISに定められているISO VG 22の粘度グレードを有する油である。
上記のように、第3マットは、油吸着比及び油保持比が何れも40以上であることを特徴とする、油吸着マットである。具体的には、第3マットにおいては、第1試験油に浸漬させた後に第1金網の上に5分間に亘って放置したときの油の吸着量が自重の40倍以上であるのみならず、更に25分間(合計で30分間)放置したときの油の吸着量もまた自重の40倍以上である。即ち、第3マットは、油を吸着する能力のみならず一旦吸着した油を保持する能力も高い、油吸着マットとして非常に優れた油吸着性能を発揮する。
実施例吸着材は、上述したメルトブロー法において第1繊維同士を不規則に絡み合わせる処理を行うことによって得られた本発明に係る油吸着材(本発明吸着材)である。一方、比較例吸着材は、メルトブロー法において繊維同士を絡み合わせる処理を行わない点を除き、上述した実施例吸着材と同様に製造された従来技術に係る比較用の油吸着材(従来吸着材)である。実施例吸着材及び比較例吸着材の何れについても、30cm四方の正方形の外形を有する繊維集積体をそれぞれ製造した。また、第1繊維の繊維径の数量分布における最頻値(中心繊維径)が1500nmとなるように、第1材料としてのポリプロピレンの供給量及びメルトブロー法におけるガスの噴射量等を調整した。図10は、実施例吸着材301の外観を示す写真である。
実施例吸着材及び比較例吸着材を構成する繊維集積体を切断して、それぞれ約10mm×5mm四方の大きさを有する試験片を調製し、各々の試験片の異なる300箇所において走査型電子顕微鏡(SEM)による写真撮影を行った。そして、個々の箇所について画像解析によって測定された繊維径の平均値を個々の箇所における繊維径として算出し、当該繊維径の出現頻度(撮影箇所の数)の分布を、それぞれの試験片における第1繊維の繊維径の数量分布として求めた。
例えば油吸着材の生産ライン等において上記のように走査型電子顕微鏡(SEM)によって繊維集積体を構成する第1繊維の繊維径の数量分布を測定したり繊維集積体の空隙率を測定したりして油吸着材の油吸着性能の管理指標とすることは現実的ではない。繊維径の数量分布及び空隙率に代わる油吸着性能の管理指標としては「嵩密度」を採用することができる。そこで、以下の手順により、上述した実施例吸着材を構成する繊維集積体の嵩密度を測定した。
2)得られた9つの試験片の総質量M[g]を測定する。
3)上記9つの試験片を、試験片の1辺の長さよりも1cm長い正方形の底面を有する角柱状の透明なケース内に積み重ねる。
4)積み重ねられた9つの試験片の高さH[cm]及び1つの試験片の面積S[cm2]から積み重ねられた9つの試験片の体積V[cm3]を算出する。
5)9つの試験片の総質量M[g]及び体積V[cm3]から繊維集積体の嵩密度ρ[g/cm3](=M/V)を算出する。
上述したJIS L 1092:2009に準拠する撥水度試験により実施例吸着材を構成する繊維集積体及び比較例吸着材を構成する繊維集積体の湿潤状態を比較した。その結果、実施例吸着材を構成する繊維集積体の湿潤状態は第5級又は第4級であったのに対し、比較例吸着材を構成する繊維集積体の湿潤状態は第1級又は第2級であった。
そこで、上述した実施例吸着材を構成する繊維集積体の油吸着比(OAR)及び油保持比(OKR)を測定した。前述したように、油吸着比(OAR)は、第1試験油に油吸着マットの全体を20℃の温度において5分間に亘って浸漬させた後に1mmの線径及び17mmの目開きを有する金網である第1金網の上に5分間に亘って放置したときの油吸着マットの質量の第1試験油に浸漬する前の油吸着マットの質量に対する比である。また、油保持比(OKR)は、第1試験油に油吸着マットの全体を20℃の温度において5分間に亘って浸漬させた後に第1金網の上に30分間に亘って放置したときの油吸着マットの質量の第1試験油に浸漬する前の油吸着マットの質量に対する比である。第1試験油は、第1日本産業規格(JIS)に定められているISO VG 22の粘度グレードを有する油である。実施例吸着材を構成する繊維集積体の油吸着比(OAR)及び油保持比(OKR)の測定結果を以下の表2に列挙する。
次に、実施例吸着材及び比較例吸着材を構成する繊維集積体の機械的強度について評価した。具体的には、引張試験機を用いて、実施例吸着材及び比較例吸着材を構成する8つの繊維集積体につき、破断強度[N]を測定した。先ず、実施例吸着材を構成する繊維集積体の破断強[N]を以下の表3に列挙する。
次に、上述した(1)と同様の手順により、50cm四方の正方形の外形を有する繊維集積体によって構成される実施例吸着材を製造した。図11の(a)を参照しながら上述したように、繊維集積体を構成する第1繊維の繊維径の数量分布における最頻値(中心繊維径)は1500nmである。また、繊維集積体の質量は約40gである。次に、50cm四方の正方形の形状を有する一対のカバーシートによって実施例吸着材の表裏をサンドイッチ状に挟み、周縁部の全周に亘る1cm幅の領域において、繊維集積体を介して一対のカバーシートを互いに接着した。尚、カバーシートとしては、前田工繊株式会社製の不織布シートである「スプリトップ(登録商標)SP−1030」を採用した。「スプリトップ(登録商標)SP−1030」の仕様として記載されている通り、カバーシートの目付は30[g/m2]であるので、繊維集積体の表裏を覆う一対のカバーシートの質量はそれぞれ7.5gである。従って、実施例吸着マットの質量は55gである。
上述したように、実施例吸着マットにおいては、50cm四方の正方形の形状を有する一対のカバーシートによって実施例吸着材の表裏がサンドイッチ状に挟まれ、周縁部の全周に亘る1cm幅の領域において、繊維集積体を介して一対のカバーシートが互いに接着されている。従って、油を吸着することが可能な繊維集積体の実効面積は48cm四方となり、当該実効面積に対応する繊維集積体の実効質量は40g×(48/50)^2≒36.9gとなる。表2に示したように実施例吸着材を構成する繊維集積体の油吸着比(OAR)の平均値は46.4であり実施例吸着マットにおける当該繊維集積体の実効質量は36.9gであるので、実施例吸着マットによって吸着可能な油の量は36.9g×46.4倍≒1700gであると推定される。上述したように実施例吸着マットの質量は55gであるので、実施例吸着マットとしての油吸着比(OAR)は1700g÷55g≒30倍であると推測される。但し、実際には固着されていない48cm四方の実効面積においても周縁部において一対のカバーシートが接着されている影響を受けることから、実施例吸着マットとしての実際の油吸着比(OAR)は上記よりも20〜30%程度低下するものと推定される。このようにして推定される実施例吸着マットとしての油吸着比(OAR)30×0.7〜0.8=21〜24倍であると推定される。
次に、上述した(4)と同様の手順によって実施例吸着マットの油吸着比(OAR)を実測した結果を以下の表5に列挙する。
Claims (10)
- 親油性を有する高分子材料である第1材料からなり300nm以上であり且つ5000nm未満である繊維径を有する繊維である第1繊維の集積体である繊維集積体を含んでなる油吸着材であって、
前記繊維集積体においては、前記第1繊維同士が不規則に絡み合っており、且つ
前記第1繊維の繊維径の数量分布における最頻値である中心繊維径が800nm以上であり且つ2500nm以下である、
ことを特徴とする、油吸着材。 - 請求項1に記載された油吸着材において、
前記第1繊維の繊維径の数量分布における変動係数が0.50以上であり且つ0.65以下である、
ことを特徴とする、油吸着材。 - 請求項2に記載された油吸着材において、
前記繊維集積体の嵩密度が0.01g/cm3以上であり且つ0.05g/cm3以下である、
ことを特徴とする、油吸着材。 - 請求項3に記載された油吸着材であって、
JIS L 1092:2009に準拠する撥水度試験において前記繊維集積体が第5級又は第4級の湿潤状態を示す、
ことを特徴とする、油吸着材。 - 請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載された油吸着材において、
前記第1材料はポリオレフィンである、
ことを特徴とする、油吸着材。 - 請求項5に記載された油吸着材において、
前記第1材料はポリエチレン、ポリプロピレン及びポリブチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の高分子材料である、
ことを特徴とする、油吸着材。 - 請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載された油吸着材と、
親油性を有する高分子材料である第2材料からなり且つ液体が通過し得る複数の間隙を備えるシート状の部材であるカバーシートと、を含み、
前記第1繊維が漏出しないように前記油吸着材の少なくとも一部が前記カバーシートによって覆われている、
ことを特徴とする、油吸着マット。 - 請求項7に記載された油吸着マットにおいて、
一対の前記カバーシートによってサンドイッチ状に前記油吸着材が挟まれており、
一対の前記カバーシートは、一対の前記カバーシートの周縁部の少なくとも一部においては直接的又は前記繊維集積体を介して間接的に互いに固着されており且つ前記周縁部以外の領域においては互いに固着されていない、
ことを特徴とする、油吸着マット。 - 請求項7又は請求項8に記載された油吸着マットにおいて、
前記カバーシートは、前記第2材料からなる繊維である第2繊維によって構成された不織布又はメッシュである、
ことを特徴とする、油吸着マット。 - 請求項7乃至請求項9に記載された油吸着マットであって、
日本産業規格に定められているISO VG 22の粘度グレードを有する油である第1試験油に前記油吸着マットの全体を20℃の温度において5分間に亘って浸漬させた後に1mmの線径及び17mmの目開きを有する金網である第1金網の上に5分間に亘って放置したときの前記油吸着マットの質量の前記第1試験油に浸漬する前の前記油吸着マットの質量に対する比として定義される油吸着比が40以上であり、
前記第1試験油に前記油吸着マットの全体を20℃の温度において5分間に亘って浸漬させた後に前記第1金網の上に30分間に亘って放置したときの前記油吸着マットの質量の前記第1試験油に浸漬する前の前記油吸着マットの質量に対する比として定義される油保持比が40以上である、
ことを特徴とする、油吸着マット。
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