以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る無線通信システム100のシステム構成の一例を示す図である。無線通信システム100は、移動中継装置が、ヌルスポット内の端末に、基地局との通信の中継を行う移動中継サービスを提供するシステムである。無線通信システム100は、移動中継装置1と、基地局2と、端末3とを含む。ただし、図1では、電波の伝搬の障害物も示されている。無線通信システム100は、例えば、第5世代移動通信システム、IEEE802.11ad/ay等のミリ波を用いる無線通信システムである。ただし、無線通信システム100で用いられる通信は、第5世代移動通信、IEEE802.11ad/ayに限定されない。
移動中継装置1は、例えば、自律飛行する、ドローン、自動車等の移動体である。第1実施形態では、移動中継装置1は、自律飛行するドローンであることを想定する。基地局2は、例えば、キャリア網の基地局、WiFiアクセスポイント等である。端末3は、無線通信システム100によって提供される移動中継サービスに契約するユーザの端末である。端末3は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話端末等の携帯端末である。移動中継装置1は、「移動中継装置」の一例である。基地局2は、「通信先装置」の一例である。端末3は、「端末装置」の一例である。
移動中継装置1、基地局2、端末3は、それぞれ、制御プレーンの通信に低周波数帯域、ユーザプレーンの通信に高周波数帯域を用いる。低周波数帯域は、第1実施形態では、例えば、移動体通信システムの場合には2GHz帯域、WiFi通信システムの場合には、2GHz帯域、5GHz帯域のいずれか、である。高周波数帯域は、第1実施形態では、例えば、移動体通信システムの場合には10GHz以上の帯域、WiFi通信システム
の場合には60GHz以上の帯域である。
制御信号は、ユーザ信号よりも重要度の高い信号であり、より確実に相手先装置に届けられることが求められる。低周波数帯域の電波は、高周波数帯域の電波に比べて直進性が低く、基地局2と端末3との間に障害物が存在していても電波の回析や反射等によって端末3に届く可能性が高い。そのため、第1実施形態に係る無線通信システム100では、制御プレーンでは低周波数帯域が用いられている。
移動中継装置1は、第1実施形態では、1台の端末3を中継対象の端末とする。移動中継装置1は、端末3と通信可能な位置として、端末3の真上に位置し、端末3の移動に追従して移動する。第1実施形態では、移動中継装置1は、所定の高度で飛行する。移動中継装置1が飛行する高度は、例えば、地上から10〜40mである。例えば、移動中継装置1は、基地局2のアンテナの高度で飛行してもよい。
したがって、第1実施形態では、移動中継装置1は、移動中継装置1と基地局2との間に高周波数帯域の電波の伝搬の障害となるものが存在しないような高度で飛行し、基地局2と通信可能な状態であることを想定する。第1実施形態における、端末3と同じ緯度及び経度で、所定の高度の位置は、「端末装置及び通信先装置と無線通信可能な位置」の一例である。
移動中継装置1、基地局2、端末3は、それぞれ、所定の周期で、自装置の位置情報を取得し、低周波数帯域(制御プレーン)で、ブロードキャストで送信する。移動中継装置1は、端末3の位置情報を受信し、端末3の位置情報に基づいて、端末3の移動に追従する。
端末3は、データの送受信を伴う通信を行う場合には、基地局2に高周波数帯域(ユーザプレーン)で接続する。端末3は、基地局2から高周波数帯域で所定の周期で発信されるビーコン信号を受信することで、基地局2の存在を認識する。基地局2と端末3との間に、ビル、自動車、壁、樹木、人等の障害物が存在する場合には、基地局2からの高周波帯域で送信される電波が、障害物によってさえぎられて、端末3に届かなくなる。
基地局2からの高周波数帯域の電波の強度が通信が行えない程度まで低下すると、端末3は、基地局2を探すためにサーチ信号を発信する。すなわち、サーチ信号は、端末3がヌルスポットに進入すると発信される。サーチ信号は、制御信号の一つであり、ブロードキャストで送信される。第1実施形態では、高周波数帯域において基地局2を探すためにサーチ信号が用いられるので、端末3から発信されるサーチ信号は高周波数帯域で送信される。サーチ信号は、例えば、LTE(Long Term Evolution)の同期信号、WiFiの
プローブ要求信号である。サーチ信号は、「通信先装置と無線通信できない状態であることを示す制御信号」の一例である。
移動中継装置1は、端末3の真上に位置しており、端末3からのサーチ信号を受信する。移動中継装置1は、端末3からのサーチ信号の受信を契機に、端末3と基地局2との間の高周波数帯域の無線通信の中継を開始する。これによって、第1実施形態では、端末3が基地局2と高周波数帯域で無線通信できない場所に存在する場合でも、端末3が高周波数帯域で通信を行うことができるようになる。
第1実施形態では、移動中継装置1は端末3の移動に追従して移動するため、複数の基地局2のセル間を移動する。移動中継装置1は、セル間を移動する際には、ハンドオーバーを行う。移動中継装置1のハンドオーバーは、第5世代移動通信システム、IEEE802.11ad/ay等の規格に準ずるものとする。したがって、第1実施形態では、移
動中継装置1の基地局2間のハンドオーバーについては、特に言及しない。
<装置構成>
図2は、移動中継装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。図2に示される例では、移動中継装置1がドローンであることが想定されている。移動中継装置1は、ハードウェア構成要素として、プロセッサ101、RAM(Random Access Memory)102、不揮発性メモリ103、原動機104A、推進機104B、位置測位部105、低周波数用無線通信部106、低周波数用アンテナ107、高周波数用無線通信部108、高周波数用アンテナ109を備える。
RAM 102は、揮発性のメモリである。RAM 102は、プロセッサ101に作業領域を提供する。不揮発性メモリ103は、例えば、フラッシュメモリである。不揮発性メモリ103は、OS(Operating System)、移動中継プログラム、その他様々なプログラムを格納する。移動中継プログラムは、基地局2と端末3との無線通信を中継するためのプログラムである。
プロセッサ101は、不揮発性メモリ103に保持されたOSや様々なアプリケーションプログラムをRAM 102にロードして実行することによって、様々な処理を実行する。プロセッサ101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。プロセ
ッサ101は、1つに限られず、複数備えられてもよい。プロセッサ101は、「制御部」の一例である。
原動機104Aは、例えば、エンジン、モータである。原動機104Aは、例えば、電力を推進機104Bの動力に変換する。推進機104Bは、例えば、プロペラである。推進機Bは、原動機104Aから入力される動力を用いて、移動中継装置1を推進させる。なお、移動中継装置1が自動車である場合には、例えば、原動機104Aはガソリンエンジン、推進機104Bは車輪である。原動機104A及び推進機104Bは、プロセッサ101によって制御されている。原動機104Aは、プロセッサ101からの指示によって駆動及び停止する。推進機104Bは、プロセッサ101から指示された方向、距離の分移動する。推進機104Bは、「推進機」の一例である。
位置測位部105は、移動中継装置1の現在位置の情報源となる信号を受信する。装置の現在位置の情報源となる信号を、以降、位置信号と称する。位置測位部105は、例えば、GPS信号の受信機、BLEビーコンの受信機である。位置測位部105によって受信される位置信号からは、例えば、移動中継装置1の現在位置の緯度、経度が取得される。位置測位部105によって取得された位置信号は、プロセッサ101に出力される。
低周波数用アンテナ107は、低周波数帯域の無線信号を受信及び送信する。低周波数用無線通信部106は、低周波数用アンテナ107によって受信された無線信号を電気信号に変換し、さらにベースバンド信号に変換して、プロセッサ101に出力する。また、低周波数用無線通信部106は、プロセッサ101から入力されるベースバンド信号を電気信号に変換し、さらに、無線信号に変換して低周波数用アンテナ107から送信する。
高周波数用無線通信部108、高周波数用アンテナ109は、それぞれ、高周波数帯域の無線信号に対して、低周波数用無線通信部106、低周波数用アンテナ107と同様の処理を行う。高周波数用アンテナ109は、指向性が可変なアンテナである。高周波数用アンテナ109は、例えば、1つであり、位相を調整することで、基地局2と端末3とのそれぞれについて指向性を合わせる。または、高周波数用アンテナ109は、例えば、基地局2向け用と、端末3向け用との2つが備えられ、それぞれのアンテナの向きを基地局
2又は端末3に合わせることで、指向性を合わせてもよい。
なお、指向性とは、電波の放射方向と放射強度との関係のことである。アンテナの指向性を合わせるとは、対象への送信電波又は対象からの受信電波の強度がより強くなるように、アンテナの電波の放射方向又は入射方向を調整することを示す。なお、低周波数用アンテナ107は、無指向性のアンテナであってもよい。高周波数用無線通信部108は、「無線通信部」の一例である。高周波数用アンテナ109は、「アンテナ」の一例である。
なお、図2に示される移動中継装置1のハードウェア構成は、一例であり、上記に限られず、実施の形態に応じて適宜構成要素の省略や置換、追加が可能である。例えば、移動中継装置1は、位置測位部105として、さらに、加速度センサ、地磁気センサ等を備えてもよい。例えば、移動中継装置1は、可搬記録媒体駆動装置を備え、可搬記録媒体に記録されたプログラムを実行してもよい。可搬記録媒体は、例えば、miniSDカード、microSDカードのような記録媒体である。
図3は、移動中継装置1の機能構成の一例を示す図である。移動中継装置1は、機能構成要素として、制御部11、位置情報受信部12、位置推定部13、指向性制御部14、低周波数受信部15A、低周波数送信部15B、周辺装置情報データベース(DB)16、高周波数受信部17A、高周波数送信部17B、中継処理部18を備える。これらの機能構成要素は、移動中継装置1のプロセッサ101が不揮発性メモリ103内の移動中継プログラムを実行することによって達成される機能構成要素である。
位置情報受信部12は、位置測位部105とのインタフェースである。位置情報受信部12は、位置測位部105から入力される位置信号を受信する。位置情報受信部12は、位置信号を位置推定部13に出力する。
位置推定部13は、位置情報受信部12から入力される位置信号に基づいて、移動中継装置1の現在位置を推定し、推定した現在位置を移動中継装置1の位置情報として取得する。移動中継装置1の位置情報は、例えば、緯度、経度、高度を含む。位置推定部13は、取得した位置情報を制御部11に出力する。
指向性制御部14は、制御部11からの指示にしたがって、高周波数用アンテナ109の指向性を制御する。指向性制御部14は、制御部11から、移動中継装置1、基地局2、端末3それぞれの位置情報を受信し、移動中継装置1、基地局2、端末3の位置情報に基づいて、高周波数用アンテナ109の指向性を制御する。
高周波数用アンテナ109が1つである場合には、指向性制御部14は、基地局2、端末3に放射方向が合うように高周波数用アンテナ109の位相を制御する。高周波数用アンテナ109が基地局2向け用と端末3向け用と2つ備えられている場合には、指向性制御部14は、基地局2、端末3に放射方向が合うようにそれぞれの高周波数用アンテナ109の向きを制御する。なお、指向性の制御方法は、所定の方法に限定されず、既存の方法のいずれが用いられてもよい。
低周波数受信部15A及び低周波数送信部15Bは、低周波数用無線通信部106とのインタフェースである。低周波数受信部15Aは、低周波数用無線通信部106からの入力を受け付け、制御部11に出力する。低周波数送信部15Bは、制御部11からの入力を受け付け、低周波数用無線通信部106に出力する。
低周波数用無線通信部106から低周波数受信部15Aへ入力される信号は、例えば、
低周波数帯域で、基地局2、端末3から送信される制御信号である。低周波数帯域で、基地局2、端末3から送信される制御信号の一つに、基地局2、端末3の位置情報がある。基地局2、端末3は、それぞれ、所定の周期で位置情報を取得し、取得した位置情報をブロードキャストで低周波数帯域で送信する。位置情報には、例えば、基地局2、端末3の端末識別情報、緯度及び経度が含まれている。制御部11から低周波数送信部15Bに入力される信号の一つには、移動中継装置1が発信する移動中継装置1の位置情報を含む制御信号がある。
高周波数受信部17A及び高周波数送信部17Bは、高周波数用無線通信部108とのインタフェースである。高周波数受信部17Aは、高周波数用無線通信部108からの入力を受け付け、中継処理部18に出力する。高周波数送信部17Bは、中継処理部18からの入力を受け付け、高周波数用無線通信部108に出力する。高周波数受信部17Aには、端末3からのサーチ信号が入力される。サーチ信号は、ブロードキャストで送信されるので、高周波数受信部17Aから中継処理部18に入力され、中継処理部18から制御部11に出力される。
中継処理部18は、基地局2と端末3との通信の中継処理を行う。中継処理部18は、高周波数受信部17Aから入力されたデータに対して、所定の処理を実行し、高周波数送信部17Bに出力する。中継処理部18が行う中継方法は、既存の無線信号の中継方法のいずれであってもよく、所定の中継方法に限定されない。例えば、中継処理部18は、高周波数受信部17Aから入力された信号の成形、増幅等の処理を行い、処理を施した信号を高周波数送信部17Bに出力する。
また、中継処理部18には、高周波数受信部17Aから移動中継装置1自身宛てのデータ、制御部11から移動中継装置1自身が送信元であるデータが入力される。中継処理部18は、移動中継装置1自身宛てであるデータを制御部11に出力する。ブロードキャストで送信されるサーチ信号は、移動中継装置1宛てのデータの一つであるので、中継処理部18は、高周波数受信部18Aから入力されるサーチ信号を制御部11に出力する。
中継処理部18は、移動中継装置1自身が送信元であるデータを高周波数送信部17Bに出力する。制御部11から中継処理部18に入力される移動中継装置1自身が送信元であるデータには、例えば、高周波数帯域において移動中継装置1が通信の中継を開始するための基地局2との接続シーケンスに用いられる制御信号がある。
制御部11は、位置測位部105に対して、位置信号の取得の周期を設定する。位置信号の取得の周期は、例えば、10秒である。ただし、位置信号の取得の周期は、10秒に限定されない。制御部11には、位置信号の取得の周期で、位置推定部13から移動中継装置1の位置情報が入力される。
制御部11は、位置推定部13から位置情報が入力されると、移動中継装置1の位置情報を含む制御信号を生成して、生成した制御信号を低周波数送信部15Bに出力する。移動中継装置1の位置情報を含む制御信号は、ブロードキャストで送信される。したがって、移動中継装置1の位置情報を含む制御信号の送出周期は、位置信号の取得の周期と同じになる。移動中継装置1の位置情報を含む制御信号には、移動中継装置1の移動速度、送信電力、最低受信感度等の情報が含まれてもよい。
制御部11は、低周波数受信部15Aから基地局2及び端末3の位置情報を含む制御信号の入力を受ける。制御部11は、低周波数受信部15Aからの制御信号に含まれる基地局2及び端末3の位置情報を周辺装置情報DB 16に格納する。
制御部11は、低周波数受信部15Aから中継対象の端末3の位置情報を含む制御信号が入力されると、例えば、当該端末3の位置情報と移動中継装置1の位置情報とを比較する。当該端末3の位置情報と移動中継装置1の位置情報との比較の結果、緯度及び経度が一致しない場合には、制御部11は、最新の当該端末3の位置情報が示す緯度及び経度への移動を判定し、推進機104Bに移動先として最新の当該端末3の位置情報を通知し、移動を指示する。当該端末3の位置情報と移動中継装置1の位置情報との比較の結果、緯度及び経度が一致する場合には、制御部11は、移動中継装置1の移動を判定せず、移動中継装置1は現在位置に停留することになる。
なお、制御部11は、低周波数受信部15Aから中継対象の端末3の位置情報を含む制御信号が入力された場合に、例えば、当該端末3の位置情報に変更があるか否かを判定してもよい。当該端末3の位置情報に変更がある場合に、制御部11は、最新の当該端末3の位置情報が示す緯度及び経度への移動を判定し、推進機104Bに移動先として最新の端末3の位置情報を通知し、移動を指示する。当該端末3の位置情報に変更がない場合に、制御部11は、移動中継装置1の移動を判定しない。
制御部11は、中継処理部18から、中継対象の端末3からのサーチ信号の入力を受ける。制御部11は、中継対象の端末3からのサーチ信号を検出すると、基地局2に対して、接続要求を送信する。接続要求は、例えば、LTEの、基地局2との接続シーケンスのなかで、基地局2に対して送信される信号のいずれかである。接続要求は、例えば、WiFiのAssociation手続である。接続要求は、制御部11から中継処理部18を通じて高周波数送信部17Bに出力され、高周波数帯域で送信される。
制御部11は、高周波数受信部17Aから、接続要求に対する基地局2からの応答の入力を受ける。端末3からの接続要求に対する応答は、例えば、LTEの、基地局2との接続シーケンスのなかで、基地局2から送信される信号のいずれかである。接続要求に対する応答は、例えば、WiFiのCTS(Clear To Send)である。
制御部11は、接続要求に対する基地局2からの応答の入力を受けると、周辺装置情報DB 16から基地局2及び端末3の位置情報を読み出し、基地局2及び端末3の位置情報とともに指向性制御部14に高周波数用アンテナ109の指向性の制御を指示する。また、制御部11は、指向性制御部14に高周波数用アンテナ109の指向性の制御が完了すると、中継処理部18に中継開始を指示する。
周辺装置情報DB 16は、基地局2及び端末3の位置情報と、無線通信システム100のサービスを契約している端末3の端末識別情報とを格納している。移動中継プログラムのインストール時に、不揮発性メモリ103内の記憶領域が周辺装置情報DB 16用に確保される。基地局2及び端末3からの位置情報を含む制御信号には、基地局2及び端末3の識別情報も含まれており、周辺装置情報DB 16には、基地局2及び端末3の位置情報は識別情報とともに格納されている。
<処理の流れ>
図4は、第1実施形態に係る移動中継装置1の制御部11の移動制御処理のフローチャートの一例である。移動制御処理は、移動中継装置1の移動を制御する処理である。図4に示される処理は、端末3の位置情報を含む制御信号が受信されると開始される。端末3は、端末3の位置情報を所定の周期で送信するので、図4に示される処理は、端末3が位置情報を送信する周期で実行されることとなる。図4に示される処理の実行主体は、移動中継装置1のプロセッサ101であるが、便宜上、機能構成要素である制御部11を主体として説明する。端末3の位置情報を、以降、端末位置情報と称する。
OP1では、制御部11は、低周波数受信部15Aから入力された制御信号から端末位置情報を取得する。OP2では、制御部11は、低周波数受信部15Aから入力された端末位置情報が、中継対象の端末3のものであるか否かを判定する。例えば、端末位置情報とともに制御信号に含まれる端末識別情報が、周辺装置情報DB 16に格納されている無線通信システム100のサービスを契約している端末3の端末識別情報と一致する場合に、中継対象の端末3の位置情報であることが判定される。
低周波数受信部15Aから入力された端末位置情報が、中継対象の端末3のものである場合には(OP2:YES)、処理がOP3に進む。OP3では、制御部11は、端末位置情報を周辺装置情報DB 16に格納する。低周波数受信部15Aから入力された端末位置情報が、中継対象の端末3のものでない場合には(OP2:NO)、図4に示される処理が終了する。
OP4では、制御部11は、端末位置情報に含まれる緯度及び経度が、移動中継装置1の現在位置の緯度及び経度と一致するか否かを判定する。なお、この判定では、移動中継装置1の現在位置の緯度及び経度が端末位置情報に含まれる緯度及び経度から所定の許容範囲内であれば、一致と判定される。端末位置情報に含まれる緯度及び経度が、移動中継装置1の現在位置の緯度及び経度と一致する場合には(OP4:YES)、移動中継装置1の移動は判定されず、図4に示される処理が終了する。端末位置情報に含まれる緯度及び経度が、移動中継装置1の現在位置の緯度及び経度と一致しない場合には(OP4:NO)、処理がOP5に進む。
OP5では、制御部11は、端末位置情報に含まれる緯度及び経度の位置への移動を判定し、移動先として端末位置情報に含まれる緯度及び経度を推進機104Bに通知し、移動を指示する。なお、移動中継装置1の高度は変更されない。これによって、移動中継装置1は、端末3の移動に追従して、端末3の真上に移動することとなる。OP5の処理は、「前記端末装置の位置情報に基づいて、前記端末装置及び前記通信先装置と無線通信可能な位置を判定する」ことの一例である。
図5は、第1実施形態に係る移動中継装置1の制御部11の中継制御処理のフローチャートの一例である。中継制御処理は、基地局2と端末3との通信の中継を制御する処理である。図5に示される処理は、中継対象の端末3からサーチ信号を受信すると開始される。図5に示される処理の実行主体は、移動中継装置1のプロセッサ101であるが、便宜上、機能構成要素である制御部11を主体として説明する。
OP11では、制御部11は、高周波数受信部17Aから、中継対象の端末3からのサーチ信号の入力を受ける。OP12では、制御部11は、高周波数送信部17Bを通じて、高周波数帯域で基地局2に接続要求を送信する。接続要求先の基地局2として、例えば、移動中継装置1が受信する電波の強度が最も高い基地局2が選択される。
OP13では、制御部11は、接続要求に対する基地局2からの応答を受信したか否かを判定する。接続要求に対する基地局2からの応答が高周波数受信部17Aから入力された場合には(OP13:YES)、処理がOP14に進む。接続要求に対する基地局2からの応答が高周波数受信部17Aから入力されるまでの間(OP13:NO)、OP13の処理が繰り返し実行される。
OP14では、制御部11は、指向性制御部14に高周波数用アンテナ109の指向性の制御を指示する。制御部11は、基地局2及び端末3の最新の位置情報を周辺装置情報DB 16から読み出し、指向性制御部14に通知する。
OP15では、制御部11は、中継処理部18を起動する。これによって、基地局2と端末3との通信の中継が開始される。その後、図5に示される処理が終了する。その後、基地局2と端末3の通信が終了すると、中継処理部18は動作を停止する。図5に示される処理は、「前記端末装置と前記通信先装置との無線通信の中継に係る処理」の一例である。
図6は、第1実施形態に係る移動中継装置1の、基地局2と端末3との通信の中継開始までのシーケンスの一例を示す図である。図6に示される例では、例えば、端末3を携帯するユーザは移動していることを想定する。
S1、S2では、それぞれ、基地局2、端末3が所定の周期で位置情報を送信する。移動中継装置1は、基地局2、端末3の位置情報を受信すると、周辺装置情報DB 16に格納する(図4、OP2)。
S3では、端末3のユーザは移動しているので端末3の位置情報は変更されており、移動中継装置1は、移動中継装置1の現在位置と端末3の位置との緯度及び経度が一致していないことを判定する(図4、OP3:NO)。S4では、移動中継装置1は、端末3の真上に移動する(図4、OP4)。
S5では、端末3のユーザが、例えば、ビルの陰に入ったことにより、端末3が受信する基地局2からの電波の強度が低下し、端末3が基地局2と通信ができない状態になる。S6では、端末3は、高周波数帯域でサーチ信号をブロードキャストで送信する。
S7では、移動中継装置1は、端末3から送信されたサーチ信号を受信し(図5、OP11)、高周波数帯域で基地局2に接続要求を送信する(図5、OP12)。S8では、基地局2は、接続要求に対する応答を高周波数帯域で送信する。移動中継装置1は、基地局2からの接続要求に対する応答を受信し(図5、OP13:YES)、中継処理を開始する(図5、OP15)。これによって、以降、基地局2と端末3との間で接続シーケンスが行われ、通信が開始される。
図7は、基地局2、移動中継装置1、端末3それぞれのパケット送信、中継、受信の処理のタイミングチャートの一例である。第1実施形態では、移動中継装置1は、高周波数用アンテナ109の位相を基地局2向け、端末3向けにそれぞれ設定するか、基地局2向け用と端末3向け用とに別々のアンテナを保持する。これによって、移動中継装置1は、端末32からのパケットの受信と並行して端末3へのパケット送信を行うことができる。したがって、移動中継装置1による基地局2と端末3との通信の中継処理では、遅延を小さく抑えることができる。
図8は、第1実施形態に係る無線通信システム100における高周波数用アンテナ109の指向性の設定の一例を示す図である。第1実施形態では、移動中継装置1の高周波数用アンテナ109は指向性アンテナである。移動中継装置1は、基地局2と端末3との通信を中継する際に、高周波数用アンテナ109の指向性を、基地局2と端末3とそれぞれの位置に合わせて調整する。
高周波数用アンテナ109の指向性を調整することによって、高周波数用アンテナ109から発信される電波の拡散する方向を限定することができる。これによって、基地局2と移動中継装置1と通信の電波が基地局2からの他の通信の電波の干渉を受けるエリア(被干渉エリア)と、移動中継装置1と端末3との通信の電波が端末3からの他の通信の電波に干渉するエリア(与干渉エリア)と、を低減させることができる。
<第1実施形態の作用効果>
第1実施形態では、移動中継装置1は、端末3と基地局2とに無線通信可能な位置に移動し、端末3からのサーチ信号を受信すると、端末3と基地局2との無線通信の中継を行う。これによって、端末3が基地局2と無線通信できない状態である場合でも、端末3が基地局2と通信できるようになる。
第1実施形態では、移動中継装置1は、端末3の位置情報を取得し、端末3の位置情報に基づいて、端末3と基地局2とに無線通信可能な位置を判定し、判定した位置に移動する。これによって、端末3がヌルスポットに進入した場合でも、移動中継装置1が端末3と端末2とに無線通信可能な位置に移動し、端末3と基地局2との通信を中継するので、端末3がヌルスポットに進入しても基地局2との通信を行うことができる。
第1実施形態では、移動中継装置1は、端末3の移動に追従して端末3の真上を移動し、端末3がヌルスポットに進入したことによって発信されるサーチ信号を受信した場合に、基地局2と端末3との通信の中継を開始する。これによって、高周波数帯域を用いた通信におけるヌルスポット内の端末3の基地局2との通信を可能にすることができる。
移動中継装置1は、地上から所定の高度で飛行することで、基地局2との間に高周波数帯域の電波の障害物を避け、基地局2と高周波数帯域で通信可能な状態を保つ。また、移動中継装置1は、端末3の真上を飛行するので、端末3と高周波数帯域で通信可能な状態を保つことができる。
また、第1実施形態によれば、新規に基地局を設置することなく、ヌルスポットの対策ができる。これによって、基地局の設置費、場所代、回線費等のコストを削減することができる。
なお、第1実施形態では、移動中継装置1は端末3の真上に移動するが、移動中継装置1の移動先はこれに限定されない。例えば、移動中継装置1は、端末3と基地局2との中間地点の緯度及び経度を移動先としてもよい。移動中継装置1は、端末3と基地局2との間の、端末3と基地局2との両方と高周波数帯域で通信可能な位置に移動すればよい。
<第2実施形態>
図9は、第2実施形態に係る無線通信システム100のシステム構成の一例を示す図である。第2実施形態に係る無線通信システム100は、移動中継装置1、基地局2、複数の端末3を含む。第2実施形態では、移動中継装置1は、担当するエリアが設定されており、担当するエリア内の端末3と基地局2との通信を中継する。
1つのエリアのサイズは、例えば、直径10〜20mである。移動中継装置1の担当エリアは、隣接しているエリアであるとする。移動中継装置1が通信を中継するのは、無線通信システム100が提供するサービスに契約するユーザの端末に限られる。また、第2実施形態では、移動中継装置1が接続する基地局2は1台に固定されている。
例えば、図9に示される例において、移動中継装置1の担当エリアは、エリアA、エリアB、エリアCである。第2実施形態では、移動中継装置1は、所定の高度で飛行して、基地局2と通信できない状態にある端末3の数が最も多いエリアの上空に移動し、基地局2と端末3との通信の中継を行う。また、移動中継装置1は、移動先でも担当エリア全ての範囲をカバーできるように高周波数用アンテナ109の指向性を調整する。移動中継装置1が飛行する高度は、例えば、地上から10〜40mである。例えば、移動中継装置1は、基地局2のアンテナの高度で飛行してもよい。
第2実施形態では、第1実施形態と重複する説明は省略される。第2実施形態では、移動中継装置1のハードウェア構成は、第1実施形態と同様である。第2実施形態に係る移動中継装置1の機能構成は、第1実施形態の機能構成に、移動中継装置1の担当エリアの情報を含むエリア情報データベースを追加した構成となる。ただし、第2実施形態では、移動中継装置1の制御部11の処理は、第1実施形態と異なる。
エリア情報DBは、不揮発性メモリ103内の記憶領域に移動中継プログラムのインストール時に作成される。エリア情報DBには、移動中継装置1の担当エリアそれぞれについて、識別情報と、エリアの範囲とが格納されている。エリアの範囲は、例えば、緯度及び経度で定義されている。
図10は、第2実施形態に係る移動中継装置1の制御部11の移動制御処理の一例を示す図である。図10に示される例は、例えば、所定の周期で実行される。図10に示される処理の実行周期は、例えば、10秒オーダで設定される。図10に示される処理の実行主体は、移動中継装置1のプロセッサ101であるが、便宜上、機能構成要素である制御部11を主体として説明する。
OP21では、制御部11は、高周波数受信部17Aからサーチ信号の入力を受けたか否かを判定する。サーチ信号の入力を受けた場合には(OP21:YES)、処理がOP22に進む。所定時間経過してもサーチ信号の入力を受けていない場合には(OP21:NO)、図10に示される処理が終了する。所定時間は、例えば、1秒である。
OP22では、制御部11は、サーチ信号の発信元である端末3が担当エリア内の端末3であるか否かを判定する。例えば、制御部11は、サーチ信号の発信元の端末3の識別情報で周辺装置情報DB 16を検索する。サーチ信号の発信元の端末3の位置情報が周辺装置情報DB 16に格納されており、当該端末3の位置情報が担当エリア内を示す場合には、制御部11は、当該端末3が担当エリア内に存在することを判定する。例えば、サーチ信号の発信元の端末3の位置情報が周辺装置情報DB 16に格納されているものの、当該端末3の位置情報が担当エリア外を示す場合には、制御部11は、当該端末3が担当エリア内に存在していないことを判定する。例えば、制御部11は、サーチ信号の発信元の端末3が、無線通信システム100が提供するサービスに契約する端末3でない場合には、サーチ信号を廃棄する。
サーチ信号の発信元である端末3が担当エリア内の端末3である場合には(OP22:YES)、処理がOP23に進む。サーチ信号の発信元である端末3が担当エリア内の端末3でない場合には(OP22:NO)、図10に示される処理が終了する。
OP23では、制御部11は、各担当エリアについて、所定の位置において高周波数帯域で端末検出信号を発信し、応答信号が返ってくる端末3の数を検出する。これによって、高周波数帯域において、担当エリア内の端末3が移動中継装置1と通信可能であることが確認される。具体的な処理は以下の通りである。ただし、検出される端末3は、無線通信システム100が提供するサービスを契約している端末3である。
例えば、各担当エリアでは、端末検出信号の発信ポイントが定められている。移動中継装置1は、現在位置するエリア内の端末検出信号の発信ポイントへの移動を、推進機104Bに指示する。端末検出信号の発信ポイントへの移動が完了すると、制御部11は、端末検出信号を、中継処理部18、高周波数送信部17Bを通じて送出する。制御部11は、端末3から高周波数受信部17A、中継処理部18を通じて応答信号を受信する担当エリア内の端末3の数を計数する。応答信号が受信された端末3が現在移動中継装置1が位置する担当エリア内に存在するか否かは、周辺装置情報DB 16に格納されている端末
3の位置情報に基づいて判定される。応答信号が受信される端末3の数の計数が終了すると、制御部11は、隣接する担当エリアの端末信号の発信ポイントへの移動を推進機104Bに指示する。
端末検出信号、応答信号には、それぞれ、例えば、LTEの、UE Capability Enquiry、UE Capability Responseが用いられる。また、端末検出信号、応答信号には、それぞれ、例えば、WiFiの、ビーコン信号、プローブ信号が用いられる。OP23の処理は、「複数のエリアそれぞれにおける自装置と無線通信可能な端末装置の数を検出」することの一例である。
OP24では、制御部11は、端末検出信号に対する応答信号が受信された端末数が最も多いエリアを移動先として判定し、推進機104Bに移動先エリアへの移動の指示を送る。例えば、移動先の担当エリア内の端末検出信号の発信ポイントが、移動先として指定される。各担当エリアの端末検出信号の発信ポイントは、「エリアにおける所定の位置」の一例である。OP24の処理は、「前記複数のエリアのうち所定の条件を満たすエリアにおける所定の位置を、前記端末装置及び前記通信先装置と無線通信可能な位置として決定する」ことの一例である。端末検出信号に対する応答信号が受信された端末数が最も多いエリアは、「前記複数のエリアのうち所定の条件を満たすエリア」の一例である。
OP25では、制御部11は、指定した移動先への移動が完了したか否かを判定する。指定した移動先への移動が完了した場合には(OP25:YES)、処理がOP26に進む。指定した移動先への移動が完了していない場合には(OP25:NO)、OP25の処理が繰り返し実行される。
OP26では、制御部11は、指向性制御部14に高周波数用アンテナ109の指向性の制御を指示する。制御部11は、現在位置と、エリア情報DB内の担当エリアそれぞれの範囲の情報とを、指向性制御部14に通知する。指向性制御部14は、現在位置において、全ての担当エリアをカバーできるように、高周波数用アンテナ109の指向性を制御する。OP26の処理は、「前記複数のエリアへ前記第1の周波数帯域の電波が到達可能なように、前記アンテナの指向性を制御する」ことの一例である。
OP27では、制御部11は、現在位置において、図5に示される中継制御処理を開始する。その後、図10に示される処理が終了する。なお、第2実施形態では、中継制御処理は、第1実施形態と同様であり(図5参照)、移動中継装置1は、サーチ信号を受信すると、基地局2に対して接続要求を送信し、基地局2から接続要求に対する応答を受信すると、端末3と基地局2との通信の中継を開始する。
<具体例>
図11Aは、第2実施形態に係る具体例のエリア構成を示す図である。具体例では、移動中継装置1の担当エリアはエリアA、エリアB、エリアCであるとする。エリアA、エリアB、エリアCは、連続的に隣接しあうエリアである。エリアA、エリアB、エリアCともに、固定の障害物(ビル等)によるヌルスポットではないものとする。
エリア内の端末3の数は、エリアA>エリアB>エリアCであることを前提とする。また、移動中継装置1は、エリアAの上空に停留していることを前提とする。
例えば、エリアAが、トラックやバス等の移動してくる障害物によってヌルスポットとなると、エリアA内の端末3が受信する基地局2からの高周波数帯域の電波の強度が低下し、エリアA内の端末3は基地局2と高周波数帯域で通信できない状態となる。この場合、エリアA内の端末3は、基地局2を探すためにサーチ信号を送信する。具体例では、エ
リアA内の端末3からのサーチ信号を受信した場合の移動中継装置1の処理について説明される。
図11Bは、第2実施形態に係る具体例の、無線通信システム100における処理のシーケンスの一例を示す図である。図11Bは、図11Aに示されるエリア構成を前提とする。移動中継装置1は、エリアAの上空に位置することを前提とする。
S11では、エリアA内の端末3からサーチ信号が発信される。移動中継装置1は、エリアA内の端末3からのサーチ信号を受信する(図10、OP21)。S12では、移動中継装置1は、エリアA内の端末検出信号の発信ポイントに移動し、端末検出信号を発信し、エリアA内の応答信号が受信される端末3の数を検出する(図10、OP23)。
S13では、移動中継装置1は、次のエリアであるエリアBに移動する。S14では、移動中継装置1は、エリアB内の端末検出信号の発信ポイントに移動し、端末検出信号を発信し、エリアB内の応答信号が受信される端末3の数を検出する(図10、OP23)。
S15では、移動中継装置1は、次のエリアであるエリアCに移動する。S16では、移動中継装置1は、エリアC内の端末検出信号の発信ポイントに移動し、端末検出信号を発信し、エリアC内の応答信号が受信される端末3の数を検出する(図10、OP23)。
S17では、移動中継装置1は、エリアA、エリアB、エリアCのうち、最も端末数が多いエリアAを移動先として判定する(図10、OP24)。S18では、移動中継装置1は、エリアAに移動する。S18では、例えば、移動中継装置1は、エリアA内の端末検出信号の発信ポイントに移動する。
S19では、移動中継装置1は、高周波数用アンテナ109の指向性を、エリアAの上空に位置しながらエリアB及びエリアCもカバーできるように、制御する(図10、OP26)。S20では、移動中継装置1は、エリアA内の端末3からサーチ信号を受信する(図5、OP11)。以降、図5に示される中継制御処理が行われ、基地局2と端末3との通信が移動中継装置1によって中継される。
なお、移動中継装置1は、エリアAの上空に停留して端末3と基地局2との通信の中継を行うが、エリアA以外の担当エリア内の端末3からのサーチ信号を受信した場合には、当該端末3の通信の中継も行う。すなわち、第2実施形態では、移動中継装置1は、端末3のアクセスが集中することが予想される場所へと移動するように制御される。
<第2実施形態の作用効果>
第2実施形態では、移動中継装置1は、担当エリア上空を飛行し、エリア内の端末3からサーチ信号を受信すると、端末3が最も多く存在するエリアに移動し、通信の中継を行う。これによって、移動中継装置1の担当エリア内のヌルスポットに存在するより多くの端末3が高周波数帯域において基地局2と通信を行うことができるようになる。
また、第2実施形態では、移動中継装置1は複数のエリアを担当するため、無線通信システム100に用いられる移動中継装置1の数を少なく抑えることができる。
第2実施形態では、移動中継装置1は、担当エリア全てをカバーできるように、高周波数用アンテナ109の指向性を制御する。これによって、各担当エリア内の端末3からのサーチ信号を取りこぼすことを抑制することができる。
第2実施形態では、移動中継装置1は、各担当エリアの端末検出信号の発信ポイントに移動して高周波数帯域で端末検出信号を発信し、応答信号が返ってくる端末3の数を数える。これによって、より正確に、各担当エリア内において移動中継装置1と高周波数帯域で通信可能な端末3の数を検出することができる。
第2実施形態では、移動中継装置1は、端末検出信号に対する応答が返ってくる端末3の数が最も多いエリアに移動して、端末3と基地局2との通信の中継を行う。ただし、移動中継装置1の移動先を決定する条件は、端末検出信号に対する応答が返ってくる端末3の数が最も多いことに限定されない。例えば、移動中継装置1の移動先を決定する条件は、端末検出信号に対する応答が返ってくる端末3の数が最も少ないことであってもよい。
第1及び第2実施形態では、移動中継装置1は、固定の基地局2と端末3との通信の中継を行うことが想定されて説明された。ただし、これに限られず、移動中継装置1は、他の移動中継装置と端末3との通信の中継を行ってもよい。移動中継装置1が他の移動中継装置と端末3との通信を中継する場合には、移動中継装置1も他の移動中継装置も、地上から所定の高度を飛行するため、高周波数帯域での通信可能な状態を保つことができる。また、他の移動中継装置も所定の周期で自装置の位置情報をブロードキャストで送信する。そのため、移動中継装置1が他の移動中継装置の位置情報を取得することができ、第1又は第2実施形態と同様の処理を行うことで、他の移動中継装置と端末3との通信を中継することができる。なお、移動中継装置1が、他の移動中継装置と端末3との通信の中継を行う場合には、他の移動中継装置は、「通信先装置」の一例である。
<第3実施形態>
第1及び第2実施形態では、移動中継装置1自身が、端末3の位置に応じて移動先を判定し、中継処理の開始を判定している。第3実施形態では、移動中継装置1は判定処理を行わず、複数の移動中継装置1を集中管理するコントローラが、移動中継装置1の移動先を判定し、中継処理の開始を判定する。
図12は、第3実施形態に係る無線通信システム100Cのシステム構成の一例である。第3実施形態に係る無線通信システム100Cでは、複数の移動中継装置1、基地局2、端末3、及び、複数の移動中継装置1を集中管理するコントローラ4が含まれる。コントローラ4は、移動中継装置1、基地局2と、制御プレーン、すなわち、低周波数帯域で通信する。移動中継装置1は、基地局2を介してコントローラ4と通信を行う。ただし、図12では、便宜上、移動中継装置1とコントローラ4とが直接通信を行うように表示されている。コントローラ4は、「制御装置」の一例である。コントローラ4と複数の移動中継装置1とを含むシステムは、「移動中継システム」の一例である。
例えば、無線通信システム100Cにおいて、第1実施形態と同様に、移動中継装置1は端末3の真上を追従して移動し、端末3からのサーチ信号の検出により基地局2と端末3との通信の中継を開始する場合は、コントローラ4は以下のように動作する。
コントローラ4へは、移動中継装置1から所定の周期で、移動中継装置1、基地局2、及び端末3の位置情報が送信される。コントローラ4は、移動中継装置1から位置情報を受信した場合に、第1実施形態に係る移動中継装置1の制御部11の移動制御処理(図4参照)を実行して、移動中継装置1の移動先を判定し、判定した移動先への移動の指示を移動中継装置1に通知する。
移動中継装置1は、端末3からサーチ信号を受信した場合には、コントローラ4へサーチ信号の受信を通知する。コントローラ4は、端末3からのサーチ信号の受信の通知を受
けると、移動中継装置1に、基地局2への接続要求の送信を指示する。移動中継装置1は、コントローラ4からの指示を受けて、基地局2へと接続要求を送信する(図5、OP12)。
移動中継装置1は、基地局2から接続要求に対する応答を受信すると(図5、OP13:YES)、コントローラ4に接続要求に対する応答の受信を通知する。コントローラ4は、移動中継装置1から接続要求に対する応答の受信の通知を受けると、基地局2及び端末3の位置情報から、移動中継装置1の高周波数用アンテナ109の指向性の制御情報を生成し、移動中継装置1に通知する。
移動中継装置1は、コントローラ4から高周波数用アンテナ109の指向性の制御情報を受信すると、当該制御情報に従って、高周波数用アンテナ109の指向性を制御する(図5、OP14)。高周波数用アンテナ109の指向性の制御が完了すると、移動中継装置1は、コントローラ4に指向性の制御の完了を通知する。
コントローラ4は、移動中継装置1から指向性の制御の完了の通知を受信すると、移動中継装置1に無線通信の中継の開始の指示を送信する。移動中継装置1は、コントローラ4からの指示を受信すると、端末3と基地局2との通信を開始する(図5、OP15)。
例えば、無線通信システム100Cおいて、第2実施形態と同様に、移動中継装置1は、端末3からのサーチ信号の検出により、担当エリア内の端末3の数が最も多いエリアに移動し、基地局2と端末3との通信の中継を開始する場合は、コントローラ4は以下のように動作する。
コントローラ4へは、移動中継装置1から所定の周期で、移動中継装置1、基地局2、及び端末3の位置情報が送信される。移動中継装置1は、端末3からのサーチ信号を検出した場合(図10、OP21:YES)に、コントローラ4に、端末3からのサーチ信号の検出を通知する。コントローラ4は、端末3からのサーチ信号の検出を通知を受けた場合に、当該端末3が移動中継装置1の担当エリア内の端末3であるか否かを判定する(図10、OP22)。
サーチ信号の発信元の端末3が移動中継装置1の担当エリア内の端末3である場合には、コントローラ4は、移動中継装置1に担当エリア上空の飛行と、各担当エリアの端末数の検出とを指示する。
移動中継装置1は、コントローラ4から指示を受けると、各担当エリアにおいて端末検出信号を発信し、応答が返ってくる端末3の数を検出する(図10、OP23)。移動中継装置1は、各担当エリア内の端末検出信号の応答が返ってくる端末3の数をコントローラ4に通知する。
移動中継装置1から各担当エリア内の端末数の通知を受けた場合に、コントローラ4は、端末数の最も多いエリアを移動中継装置1の移動先となるエリアとして判定し、移動先エリアへの移動の指示を移動中継装置1に通知する。移動中継装置1は、コントローラ4からの通知を受けると、移動先エリアへ移動する(図10、OP24)。移動先エリアへの移動が完了すると、移動中継装置1は、コントローラ4へ移動の完了を通知する。
コントローラ4は、移動中継装置1から移動の完了の通知を受けると、移動中継装置1の担当エリアの情報に基づいて、移動中継装置1の高周波数用アンテナ109の指向性の制御情報を生成し、移動中継装置1に通知する。
移動中継装置1は、コントローラ4から高周波数用アンテナ109の指向性の制御情報を受信すると、当該制御情報に従って、高周波数用アンテナ109の指向性を制御する(図10、OP26)。高周波数用アンテナ109の指向性の制御が完了すると、移動中継装置1は、コントローラ4に指向性の制御の完了を通知する。
以降は、例えば、無線通信システム100Cにおいて、第1実施形態と同様の制御が行われる場合と同様にして、コントローラ4によって、移動中継装置1の、端末3と基地局2との無線通信の中継処理の制御が行われる。
したがって、第3実施形態に係る無線通信システム100Cでは、第1実施形態又は第2実施形態において、移動中継装置1が行う判定処理を移動中継装置1に代わりコントローラ4が行う。
図13は、コントローラ4のハードウェア構成の一例を示す図である。コントローラ4は、例えば、専用のコンピュータである。コントローラ4は、プロセッサ401、主記憶装置402、補助記憶装置403、ネットワークインタフェース404を備える。また、これらはバスにより互いに接続されている。
補助記憶装置403は、OS、様々なプログラムや、各プログラムの実行に際してCPU 401が使用するデータを格納する。補助記憶装置403は、例えば、EPROM(Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ、又はハードディスクドライブ(Hard Disk Drive)等の不揮発性のメモリである。補助記憶装置403は、例えば、移動中継制御プログラムを記憶する。移動中継制御プログラムは、移動中継装置1を制御するためのプログラムである。
主記憶装置402は、プロセッサ401に、補助記憶装置403に格納されているプログラムをロードする記憶領域および作業領域を提供したり、バッファとして用いられたりする記憶装置である。主記憶装置402は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAMのような半導体メモリを含む。
プロセッサ401は、補助記憶装置403に保持されたOSや様々なアプリケーションプログラムを主記憶装置402にロードして実行することによって、様々な処理を実行する。プロセッサ401は、1つに限られず、複数備えられてもよい。プロセッサ401は、「制御装置」の「制御部」の一例である。
ネットワークインタフェース404は、ネットワークとの情報の入出力を行うインタフェースである。ネットワークインタフェース404は、例えば、無線LANに対応するインタフェースである。移動中継装置1からコントローラ4に送信されるデータは、基地局2に中継され、ネットワークインタフェース404で受信される。ネットワークインタフェース404は、「制御装置」の「送信部」の一例である。
なお、図13に示されるコントローラ4のハードウェア構成は一例であり、上記に限られず、実施の形態に応じて適宜構成要素の省略や置換、追加が可能である。例えば、サーバ3は、可搬記録媒体駆動装置を備え、可搬記録媒体に記録されたプログラムを実行してもよい。可搬記録媒体は、例えば、SDカード、miniSDカード、microSDカード、USB(Universal Serial Bus)フラッシュメモリ、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、Blu−ray(登録商標) Disc、又はフラッシュメモリカードのような記録媒体である。
図14は、コントローラ4の機能構成の一例を示す図である。コントローラ4は、機能
構成要素として、制御部41、ネットワーク送受信部42、基地局情報DB 43、端末情報DB 44、移動中継装置情報DB 45を備える。これらは、コントローラ4のプロセッサ401が補助記憶装置403内の移動中継制御プログラムを実行することによって達成される機能構成要素である。
ネットワーク送受信部42は、ネットワークインタフェース404とのインタフェースである。ネットワーク送受信部42は、例えば、基地局2経由で、移動中継装置1から、移動中継装置1、基地局2、及び端末3の位置情報、端末3からのサーチ信号の検出の通知等を受信する。ネットワーク送受信部42は、移動中継装置1からの、移動中継装置1、基地局2、及び端末3の位置情報、端末3からのサーチ信号の検出の通知等を制御部41に出力する。
また、ネットワーク送受信部42は、制御部41から、移動中継装置1への移動先の指示の入力を受けると、端末3への移動先の指示を、ネットワークインタフェース404を通じて送信する。
制御部41は、ネットワーク送受信部42から、移動中継装置1から、移動中継装置1、基地局2、及び端末3の位置情報、端末3からのサーチ信号の検出の通知等を受信する。制御部41は、移動中継装置1の位置情報を移動中継装置情報DB 45に格納する。制御部41は、基地局2の位置情報を基地局情報DB 43に格納する。制御部41は、端末3の位置情報を端末情報DB 44に格納する。
無線通信システム100Cにおいて、第1実施形態と同様のサービスが実施される場合には、制御部41は、移動中継装置1及び端末3の位置情報が入力されると、移動中継装置1及び端末3の位置情報に含まれる緯度及び経度が一致するか否かを判定する。移動中継装置1及び端末3の位置情報に含まれる緯度及び経度が一致しない場合に、制御部41は、移動中継装置1の移動先として端末3の位置情報に含まれる緯度及び経度を判定し、移動中継装置1への移動先への移動の指示を、ネットワーク送受信部42に出力する。
無線通信システム100Cにおいて、第2実施形態と同様のサービスが実施される場合には、制御部41は、以下の処理を行う。制御部41は、端末3からのサーチ信号の検出の通知が入力されると、移動中継装置1への、担当エリア上空の飛行指示と各担当エリア内の端末数の検出指示とを、ネットワーク送受信部42に出力する。制御部41は、移動中継装置1から各担当エリア内の端末数の通知が入力されると、最も端末数の多いエリアを移動先のエリアと判定し、移動中継装置1への移動先エリアへの移動の指示をネットワーク送受信部42に出力する。
また、制御部41は、無線通信システム100Cにおいて、第1又は第2実施形態と同様のいずれのサービスが実施される場合にも、例えば、上述のように、移動中継装置1が図5に示される中継制御処理に従って動作するように、移動中継装置1に指示を送信する。
すなわち、制御部41は、第1実施形態又は第2実施形態において、例えば、図4、図5、図10に示される処理において移動中継装置1が行っている判定処理を、移動中継装置1に代わって行う。
基地局情報DB 43、端末情報DB 44、移動中継装置情報DB 45は、それぞれ、コントローラ4の補助記憶装置403の記憶領域に作成される。基地局情報DB 43、端末情報DB 44、移動中継装置情報DB 45は、それぞれ、基地局2、端末3、移動中継装置1の位置情報を格納する。
第3実施形態によれば、複数の移動中継装置1を一元的に制御することができる。また、各移動中継装置1の担当エリアの変更等の設定変更もコントローラ4から移動中継装置1に送信することで容易に行うことができ、ヌルスポットの変動にも柔軟に対応することができる。また、判定処理はコントローラ4が行うため、移動中継装置1が搭載するプロセッサ101の性能は低くてもよく、移動中継装置1自体のコストを抑えることができる。
<プロセッサ>
CPUは、MPU(Microprocessor)、プロセッサとも呼ばれる。CPUは、単一のプロセッサに限定される訳ではなく、マルチプロセッサ構成であってもよい。また、単一のソケットで接続される単一のCPUがマルチコア構成を有していても良い。上記各部の少なくとも一部の処理は、CPU以外のプロセッサ、例えば、Digital Signal Processor(DSP)、Graphics Processing Unit(GPU)、数値演算プロセッサ、ベクトルプロセッサ、画像処理プロセッサ等の専用プロセッサで行われても良い。また、上記各部の少なくとも一部の処理は、集積回路(IC)、その他のディジタル回路であっても良い。また、上記各部の少なくとも一部にアナログ回路が含まれても良い。集積回路は、LSI,Application Specific Integrated Circuit(ASIC),プログラマブルロジックデバイス(PLD)
を含む。PLDは、例えば、Field-Programmable Gate Array(FPGA)を含む。上記各部は
、プロセッサと集積回路との組み合わせであっても良い。組み合わせは、例えば、マイクロコントローラ(MCU),SoC(System-on-a-chip),システムLSI,チップセットなどと呼ばれる。
<記録媒体>
コンピュータその他の機械、装置(以下、コンピュータ等)に上記いずれかの機能を実現させるプログラムをコンピュータ等が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。コンピュータ等に、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。
ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる非一時的な記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータ等から取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R/W、DVD、ブルーレイディスク、DAT、8mmテープ、フラッシュメモリなどのメモリカード等がある。また、コンピュータ等に固定された記録媒体としてハードディスク、ROM(リードオンリーメモリ)等がある。さらに、SSD(Solid State Drive)は、コンピュータ等から取り外し可能な記録媒体としても、コ
ンピュータ等に固定された記録媒体としても利用可能である。