本発明の適用対象として電動式油圧ショベルを例にとり、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
<第1の実施の形態>
〜構成〜
図1は、本発明の第1の実施の形態における電動式油圧ショベルの全体構成を示す側面図であり、図2は、その上面図である。なお、本明細書において、電動式油圧ショベルが図1に示す状態にて運転者が運転席に着座した場合における運転者の前側(図1中右側)、後側(図1中左側)、左側(図1中紙面に向かって奥側)、右側(図1中紙面に向かって手前側)を、単に前側、後側、左側、右側と称する。
これら図1及び図2において、電動式油圧ショベル(本実施の形態では、車体重量6トン未満のミニショベル)は、クローラ式の下部走行体1と、この下部走行体1上に旋回可能に設けられた上部旋回体2と、この上部旋回体2の基礎下部構造をなす旋回フレーム3と、この旋回フレーム3の前側に左右方向に回動可能に設けられたスイングポスト4と、このスイングポスト4に上下方向に回動可能(俯仰可能)に連結された多関節型の作業装置5と、旋回フレーム3上に設けられたキャノピータイプの運転室6と、旋回フレーム3上の後側に設けられバッテリ装置7(後述の図4〜図6参照)を収納する駆動用バッテリユニット搭載部8とを備えている。
下部走行体1は、上方から見て略H字形状のトラックフレーム9と、このトラックフレーム9の左右両側の後端近傍に回転可能に支持された左右の駆動輪10,10と、トラックフレーム9の左右両側の前端近傍に回転可能に支持された左右の従動輪(アイドラ)11,11と、左右それぞれの駆動輪10と従動輪11とで掛けまわされた左右のクローラ12とを備えている。そして、左の走行用油圧モータ13A(後述の図3参照)の駆動により左の駆動輪10(すなわち、左のクローラ12)が回転し、右の走行用油圧モータ13Bの駆動により右の駆動輪10(すなわち、右のクローラ12)が回転するようになっている。
トラックフレーム9の前側には排土用のブレード14が上下動可能に設けられており、このブレード14はブレード用油圧シリンダ(図示せず)の伸縮駆動により上下動するようになっている。
トラックフレーム9の中央部には旋回輪15が設けられ、この旋回輪15を介し旋回フレーム3が旋回可能に設けられており、旋回フレーム3(すなわち、上部旋回体2)は旋回用油圧モータ(図示せず)の駆動により旋回するようになっている。
スイングポスト4は、旋回フレーム3の前側に左右方向に回動可能に設けられており、スイング用油圧シリンダ(図示せず)の伸縮駆動により左右方向に回動するようになっている。これにより、作業装置5が左右にスイングするようになっている。
作業装置5は、スイングポスト4に上下方向に回動可能に連結されたブーム16と、このブーム16に上下方向に回動可能に連結されたアーム17と、このアーム17に上下方向に回動可能に連結されたバケット18とを備えている。ブーム16、アーム17、及びバケット18は、ブーム用油圧シリンダ19、アーム用油圧シリンダ20、及びバケット用油圧シリンダ21により上下方向に回動するようになっている。なお、バケット18は、例えばオプション用の油圧アクチュエータが組み込まれたアタッチメント(図示せず)と交換可能になっている。
運転室6には、運転者が着座する運転席(座席)22が設けられている。運転席22の前方には、手又は足で操作可能とし前後方向に操作することで左右の走行用油圧モータ13A,13B(すなわち、左右のクローラ12A,12B)の動作をそれぞれ指示する左の走行用操作レバー23A(後述の図3参照)及び右の走行用操作レバー(図示せず)が設けられている。左の走行用操作レバー23Aのさらに左側の足元部分には、左右方向に操作することでオプション用の油圧アクチュエータ(すなわち、アタッチメント)の動作を指示するオプション用操作ペダル(図示せず)が設けられている。右の走行用操作レバーのさらに右側の足元部分には、左右方向に操作することでスイング用油圧シリンダ(すなわち、スイングポスト4)の動作を指示するスイング用操作ペダル(図示せず)が設けられている。
運転席22の左側には、前後方向に操作することでアーム用油圧シリンダ20(すなわち、アーム17)の動作を指示し、左右方向に操作することで旋回用油圧モータ(すなわち、上部旋回体2)の動作を指示する十字操作式のアーム・旋回用操作レバー24A(図示せず)が設けられている。運転席22の右側には、前後方向に操作することでブーム用油圧シリンダ19(すなわち、ブーム16)の動作を指示し、左右方向に操作することバケット用油圧シリンダ21(すなわち、バケット18)の動作を指示する十字操作式のブーム・バケット用操作レバー24Bが設けられている。また、運転席22の右側には、前後方向に操作することでブレード用油圧シリンダ(すなわち、ブレード14)の動作を指示するブレード用操作レバー(図示せず)が設けられている。
また、運転席22の左側(言い換えれば、運転室6の乗降口)には、ロック解除位置(詳細には、運転者の乗降を妨げる下降位置)とロック位置(詳細には、運転者の乗降を許容する上昇位置)に操作されるゲートロックレバー(図示せず)が設けられている。また、運転席22の右側には、キースイッチ25、ダイヤル26、充電スイッチ27、充電前冷却許可スイッチ28(後述の図4参照)等が設けられている。また、運転席22の右側前方には、モニタ30が設けられている。
図3は、上述した電動式油圧ショベルに備えられた油圧駆動装置の構成を示す油圧回路図である。なお、この図3は、代表として、左の走行用油圧モータ13A及びブーム用油圧シリンダ19に係わる構成を示している。
図3において、油圧駆動装置は、電動モータ31と、この電動モータ31の電力源であるバッテリ装置7と、電動モータ31への供給電力を制御して電動モータ31を駆動するインバータ32と、電動モータ31によって駆動される油圧ポンプ33及びパイロットポンプ34と、油圧ポンプ33から吐出された圧油により駆動される上述した複数の油圧アクチュエータ13A,19・・・(左走行用油圧モータ13A及びブーム用油圧シリンダ19以外の油圧アクチュエータの図示は省略)と、油圧ポンプ33から複数の油圧アクチュエータ13A,19・・・に供給される圧油の流れを制御する複数の方向切換弁36,38・・・(左走行用方向切換弁36及びブーム用方向切換弁38以外の方向切換弁の図示は省略)と、複数の油圧アクチュエータ13A,19・・・の動作を指示し、複数の方向切換弁36,38・・・を切り換えるパイロット圧(操作信号)を生成する油圧パイロット式の複数の操作装置35,37・・・(左走行用の操作装置35及びバケット・ブーム用の操作装置37以外の操作装置の図示は省略)を備えている。
左走行用方向切換弁36は左走行用操作レバー23Aを備え、この操作レバー23Aの前後方向の操作に応じて油圧ポンプ33から左走行用油圧モータ13Aへの圧油の流れを制御する。ブーム用方向切換弁38はブーム・バケット用操作レバー24Bを備え、この操作レバー24Bの前後方向の操作に応じて油圧ポンプ33からブーム用油圧シリンダ19への圧油の流れを制御する。
なお、図3に図示しない右走行用油圧モータ13B、アーム用油圧シリンダ20、バケット用油圧シリンダ21、旋回用油圧モータ、スイング用油圧シリンダ、及びブレード用油圧シリンダに係わる油圧回路の構成もほぼ同様である。
左走行用方向切換弁36及びブーム用方向切換弁38と図示しないその他の方向切換弁は、センタバイパス型であり、センタバイパスライン39上に位置するセンタバイパス通路をそれぞれ有している。各方向切換弁のセンタバイパス通路は、センタバイパスライン39に直列に接続されており、各方向切換弁のスプールが中立位置にあるときセンタバイパス通路を連通し、各方向切換弁のスプールが図3中左側又は右側の切換位置に切換えられるとセンタバイパス通路を遮断するようになっている。センタバイパスライン39の上流側は油圧ポンプ33の吐出ライン40に接続され、センタバイパスライン39の下流側はタンクライン41に接続されている。
また、左走行用方向切換弁36及びブーム用方向切換弁38と図示しないその他の方向切換弁は、油圧信号ライン42上に位置する信号通路をそれぞれ有している。各方向切換弁の信号通路は、油圧信号ライン42に直列に接続されており、各方向切換弁のスプールが中立位置にあるとき油圧信号ライン42を連通させ、各方向切換弁のスプールが図3中左側又は右側の切換位置に切換えられると油圧信号ライン42を遮断するようになっている。油圧信号ライン42の上流側はパイロットポンプ34の吐出ライン43から分岐するように接続され、油圧信号ライン42の下流側はタンクライン41に接続されている。油圧信号ライン42における最上流の方向切換弁36の上流側には固定絞り44が設けられ、この固定絞り44と方向切換弁36との間に圧力スイッチ45(操作検出手段)が設けられている。圧力スイッチ45は、方向切換弁36の上流側の油圧を導入し、これが予め設定された閾値に達した場合に接点を閉じるようになっている。これにより、方向切換弁36,38・・・(左走行用方向切換弁36及びブーム用方向切換弁38以外の方向切換弁の図示は省略)のうちのいずれかが切換えられたか否か、すなわち、油圧アクチュエータ13A,19・・・(左走行用油圧モータ13A及びブーム用油圧シリンダ19以外の油圧アクチュエータの図示は省略)のうちのいずれかが操作されているか否かを検出し、いずれかの油圧アクチュエータが操作されている場合にON信号を出力するようになっている。
左走行用方向切換弁36は、操作装置35からのパイロット圧によって切換えられるようになっている。操作装置35は、前述した左走行用操作レバー23Aと、この操作レバー23Aの前後方向の操作に応じパイロットポンプ34の吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成する一対のパイロット弁(図示せず)とを有している。そして、例えば操作レバー23Aを中立位置から前側に操作すると、その操作量に応じて一方のパイロット弁で生成されたパイロット圧が左走行用方向切換弁36の図3中右側の受圧部へ出力され、これによって左走行用方向切換弁36が図3中右側の切換位置に切換えられる。これにより、左の走行用油圧モータ13Aが前方向に回転し、左の駆動輪10及びクローラ12が前方向に回転するようになっている。一方、例えば操作レバー23Aを中立位置から後側に操作すると、その操作量に応じて他方のパイロット弁で生成されたパイロット圧が左走行用方向切換弁36の図3中左側の受圧部へ出力され、これによって左走行用方向切換弁36が図3中左側の切換位置に切換えられる。これにより、左の走行用油圧モータ13Aが後方向に回転し、左の駆動輪10及びクローラ12が後方向に回転するようになっている。
ブーム用方向切換弁38は、操作装置37からのパイロット圧によって切換えられるようになっている。操作装置37は、ブーム・バケット用操作レバー24Bと、この操作レバー24Bの前後方向の操作に応じパイロットポンプ34の吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成する一対のパイロット弁(図示せず)等を有している。そして、例えば操作レバー24Bを中立位置から前側に操作すると、その操作量に応じて一方のパイロット弁で生成されたパイロット圧がブーム用方向切換弁38の図3中右側の受圧部へ出力され、これによってブーム用方向切換弁38が図3中右側の切換位置に切換えられる。これにより、ブーム用油圧シリンダ19が縮短し、ブーム16が下がるようになっている。一方、例えば操作レバー24Bを後側に操作すると、その操作量に応じて他方のパイロット弁で生成されたパイロット圧がブーム用方向切換弁38の図3中左側の受圧部へ出力され、これによってブーム用方向切換弁38が図3中左側の切換位置に切換えられる。これにより、ブーム用油圧シリンダ19が伸張し、ブーム16が上がるようになっている。
パイロットポンプ34の吐出ライン43には、パイロットポンプ34の吐出圧を一定に保持するパイロットリリーフ弁(図示せず)が設けられている。また、パイロットポンプ34の吐出ライン43にはロック弁46が設けられており、このロック弁46は、上述したゲートロックレバーの操作に応じて切換えられるようになっている。詳細には、ゲートロックレバーがロック解除位置(下降位置)にある場合に閉じ状態、ロック位置(上昇位置)にある場合に開き状態となるロックスイッチ47(後述の図4参照)が設けられている。そして、例えばロックスイッチ47が閉じ状態になると、このロックスイッチ47を介してロック弁46のソレノイド部が通電されて、ロック弁46が図3中下側の切換位置に切換えられる。これにより、パイロットポンプ34の吐出ライン43を連通して、パイロットポンプ34の吐出圧が操作装置35,37等に導入される。一方、ロックスイッチ47が開き状態になると、ロック弁46のソレノイド部が通電されず、バネの付勢力で、ロック弁46が図3中上側の中立位置となる。これにより、パイロットポンプ34の吐出ライン43を遮断する。その結果、操作装置35,37等を操作してもパイロット圧が生成されず、油圧アクチュエータが作動しないようになっている。
図4は、本発明の一実施の形態における電動システムの構成を表すブロック図である。本実施の形態における電動システムは、外部の商用電源48又は直流電源急速充電器49から供給される電力を、バッテリ装置7に供給し充電する機能と、商用電源48又はバッテリ装置7からの電力を、インバータ32を介して電動モータ31に供給し電動式油圧ショベルを稼働させる機能を有している。
上記機能を実行するため、電動システムは、配電盤51、昇降圧器55、DC/DCコンバータ56、補機用バッテリ57、リレー60及び電動ファン61と、コントローラ53とを備えている。また、電動システムは、モニタ30、ダイヤル26、キースイッチ25、ロックスイッチ47、残量表示器29、充電前冷却許可スイッチ28、情報コントローラ58を備えている。
図5は、配電盤51の構成を、関連機器と共に示す図である。商用電源48から受電コネクタ52Aを介して供給された交流電力は、整流器50で直流に変換され、配電盤51に供給される。直流電源急速充電器49から受電コネクタ52Bを介して供給された直流電力は、そのまま配電盤51に供給される。配電盤51はリレー54A,54Bを有し、整流器50はリレー54Aに接続され、受電コネクタ52Bはリレー54Bに接続されている。ここで、コントローラ53がリレー54AをONし、リレー54BをOFFすることで商用電源48からの電力、すなわち整流器50によって交流から変換された直流電力を内部回路に供給する。同様に、リレー54AをOFFし、リレー54BをONにすることで直流電源急速充電器49からの直流電力を内部回路に供給する。
図4に戻り、昇降圧器55は、配電盤51からの直流電圧を降圧してバッテリ装置7に供給する機能、及びモータ駆動制御時にバッテリ装置7からインバータ32に供給する直流を昇圧する昇圧機能を有している。
DC/DCコンバータ56は、配電盤51から供給された電力を、車両の電気システムの電源としての直流電圧(例えば12Vや24V)に降圧し、補機用バッテリ57を充電する。
補機用バッテリ57は、車両の電気システムの電源(電動モータ31以外の電気機器の電源)として機能する。
コントローラ53は、上述したモニタ30、キースイッチ25、ダイヤル26、充電スイッチ27、充電前冷却許可スイッチ28、圧力スイッチ45、及びロックスイッチ47からの信号と、補機用バッテリ57の電圧が入力されるとともに、情報コントローラ58、後述するバッテリ装置7のバッテリコントローラ59との間で通信可能となっている。また、コントローラ53は、昇降圧器55、インバータ32、配電盤51内のリレー54A及び54B(図4に示す)、後述するリレー60を制御するとともに、モニタ30及び残量表示器29に表示信号を出力するようになっている。
リレー60は電動ファン61の電源供給部に接続されており、コントローラ53からの信号でリレー60をON、OFFさせることで電動ファン61の起動、停止を切り替える。
電動ファン61はバッテリ装置7に外気を吹きつけ冷却する。もしくは、送風方向を反対にし、バッテリ装置7周辺雰囲気を吐き出すことで冷却する構成でもよい。このように電動ファン61は、エアコンユニットではなく、外気通風タイプの冷却装置である。
図6は、バッテリ装置7の構成を示す図である。バッテリ装置7は、複数のバッテリセル62A,62B・・・を直列に接続したバッテリモジュール62とバッテリコントローラ59を備え、バッテリセル62A,62B・・・はバッテリモジュール62内に設けられたセルコントローラ(図示せず)により監視、制御され、バッテリコントローラ59はセルコントローラが検出したセル電圧、セル温度等の状態量を入力し、コントローラ53へ周期的に送信する。
また、バッテリモジュール62の正極側には電流センサ63が設けられており、電流センサ63はバッテリ装置7の入出力電流値を検出し、この入出力電流値はバッテリコントローラ59を介してコントローラ53に送信される。コントローラ53はバッテリコントローラ59から受信した情報から、バッテリ装置の温度、総電圧、SOC、電動モータ31への供給電力を計算する。また、機体の停止時及び異常時には、コントローラ53がリレー64をOFFにし、バッテリ装置7と回路との接続を遮断する。また、計算されたバッテリ装置7のSOCは残量表示器29に表示される。
再び図4に戻り、情報コントローラ58は、コントローラ53と通信し、コントローラ53に入力される各種センサ値や警告及び充電時刻など、車両の稼働状態を記録する。
キースイッチ25は、キーシリンダ及びこのキーシリンダに挿入可能なキーで構成されており、キーの回転操作位置(OFF位置、ON位置、又はSTART位置)に応じて信号を出力するようになっている。ダイヤル26は、電動モータ31の目標回転数を指示するものであり、その回転操作位置に対応した目標回転数の信号を出力するようになっている。充電スイッチ27は、バッテリ充電制御のON・OFFを指示するものであり、その操作位置(OFF位置又はON位置)に応じて信号を出力するようになっている。充電前冷却許可スイッチ28は、充電前バッテリ冷却制御の開始を指示する充電前冷却許可指示装置として機能するものであり、その操作位置(OFF位置又はON位置)に応じて信号を出力するようになっている。
次に、コントローラ53の制御機能の詳細を説明する。
コントローラ53は、バッテリ充電モードにおける充電制御機能と、バッテリ稼働モードにおける電動モータ制御機能を有している。また、コントローラ53は、バッテリ稼働モードにおいて、本発明の特徴である充電前バッテリ冷却制御を行う機能を有している。以下に順番に説明する。
<バッテリ充電モード>
コントローラ53は、例えば、キースイッチ25からの信号の電圧値によってキースイッチ25がOFF位置にあると判定し、充電スイッチ27からの信号の電圧値によって充電スイッチ27がON位置に操作されたと判定し、受電コネクタ52A,52Bを介して、ケーブル接続検出回路(図示せず)からの信号の電圧値によって商用電源48又は直流電源急速充電器49からのケーブルが接続されたと判定した場合に、バッテリ充電制御を行うようになっている。
商用電源48が接続された場合には、配電盤51内のリレー54Aを閉状態、リレー54Bを開状態になるように、コントローラ53が制御する。また、直流電源急速充電器49が接続された場合には、配電盤51内のリレー54Aを開状態、リレー54Bを閉状態になるように、コントローラ53が制御する。閉状態となったリレー54A又はリレー54Bから高電圧回路を通して直流電力がバッテリ装置7に供給される。
また、商用電源48と急速充電器49が同時に接続される場合には、安全のためリレー54A、54Bそれぞれを開状態に制御する。
また、コントローラ53は、例えば、バッテリ装置7の充電中、充電スイッチ27からの信号の電圧値によって充電スイッチ27がOFF位置に操作されたと判定した場合に、リレー54A及びリレー54Bを開状態に制御することで充電を停止する。
<バッテリ稼働モード>
コントローラ53は、例えば、キースイッチ25からの信号の電圧値に基づいてキースイッチ25がSTART位置に操作されたと判定し、かつロックスイッチ47からの信号の電圧値によってゲートロックレバーがロック解除位置にあると判定した場合に、バッテリ装置7からの電力による電動モータ31の駆動を開始するようになっている。
このとき、コントローラ53は、配電盤51内部のリレー54A及び54BをOFFにし、商用電源48及び直流電源急速充電器49との回路接続を遮断する方向に制御するとともに、昇降圧器55へ昇圧の指令を出力する。昇降圧器55は、この指令に応じて、バッテリ装置7から出力される直流の電圧を、インバータ32への入力に適した電圧まで昇圧するようになっている。
また、コントローラ53は、ダイヤル26で指示された目標回転数の指令をインバータ32へ出力する。インバータ32は、この指令に応じて、電動モータ31の実回転数が目標回転数となるように、電動モータ31への印加電圧を制御するようになっている。
また、コントローラ53は、例えば、電動モータ31の駆動中、圧力スイッチ45からの信号の電圧値によって全ての油圧アクチュエータが操作されていない状態であると判定し、その状態で予め設定された所定時間(例えば4秒)が経過した場合に、予め設定された所定の低速回転数(アイドル回転数)の指令をインバータ32へ出力する。インバータ32は、この指令に応じて、電動モータ31の実回転数が所定の低速回転数となるように、電動モータ31の印加電圧を制御するようになっている。
また、コントローラ53は、例えば、電動モータ31の駆動中、キースイッチ25からの信号の電圧値によってキースイッチ25がOFF位置に操作されたと判定した場合に、インバータ32へ停止の指令を出力する。インバータ32は、この指令に応じて、電動モータ31を停止させるようになっている。
<充電前バッテリ冷却制御>
本実施の形態において、バッテリ装置7の冷却は電動ファン61で行う。電動ファン61は補機用バッテリ57の直流電源によって動作し、後述する制御条件にしたがって、コントローラ53が、電動ファン61に電力を供給するリレー60を切り替えることで起動、停止させる。なお、電動ファン61はバッテリ装置7の電源で動作させるようにしてもよい。
コントローラ53が行う充電前バッテリ冷却制御の概要は以下のようである。
コントローラ53は、予め設定した充電開始時刻における目標バッテリ温度を算出し、電動ファン61(冷却装置)によりバッテリ装置7を冷却するときのバッテリ装置7の冷却特性と上記目標バッテリ温度とに基づいて、電動ファン61(冷却装置)によりバッテリ装置7を目標バッテリ温度まで冷却するのに必要な冷却制御時間を算出し、充電開始時刻とその冷却制御時間とに基づいて冷却制御開始時刻を算出し、冷却制御開始時刻に達したときに、電動ファン61(冷却装置)を作動可能とする処理を行う。
以下に、コントローラ53が行う充電前バッテリ冷却制御の詳細を説明する。
図7は、コントローラ53が行う充電前バッテリ冷却制御の処理内容を示すフローチャートである。
図7において、ステップS1〜S14の処理手順は、上述したバッテリ稼働モード時に、コントローラ53内で周期的に繰り返し実行される。
図7のステップS1において、充電開始時刻(ここではteと表記)の書き換えがあったか否かを判定する。本実施の形態では、コントローラ53が、モニタ30からの入力を割り込み処理する形式で行う。運転室6に設けられたモニタ30には、コントローラ53内に記録されている、現在の時刻(ここではtと表記)と、設定中の充電開始時刻teが表示される。また、モニタ30には、バッテリ装置7の充電開始時刻を設定する入力装置として、例えば△マーク或いは▽マークのアップ、ダウンボタンと□マークの確定ボタンが表示され、充電開始時刻teの書き換えは、これらのボタンを操作して充電開始時刻teの数値を入力し、この入力状態を確定する(例えば、△▽マークのボタンで選択した時刻を、□マークのボタンで確定する)ことで行われ、これによりオペレータは希望する任意の時刻を設定することができる。なお、入力装置として専用の入力装置を設けてもよい。
充電開始時刻teの入力を確定した場合に、入力値の書き換えフラグがONになる。この書き換えフラグがONの場合はステップS2、OFFの場合はS3に進む。
本制御の使い方としては、例えば、作業がしばらく中断される昼休憩時などに充電をすることを想定しており、午前中の稼働始動時に、オペレータが充電開始時刻teを昼休憩開始時刻に設定する等の使い方がある。又は、ここでは明記しないが、情報コントローラ58内に記録された稼働履歴から推定された時刻を充電開始時刻teとしてもよい。
ステップS2では、モニタ30へ入力され、確定されたと判定した設定値を、充電開始時刻teとして設定する。
ステップS3では、充電開始時刻teの設定があるか否かを判定する。本実施の形態におけるバッテリ稼働モードの開始後に、ステップS2が一度でも実行されていれば、S4に進む。ステップS2が実行されていなければ、ステップS13に進む。
ステップS4では、バッテリ装置7に設けられたバッテリコントローラ59より、バッテリセル62A,62B・・・(バッテリモジュール62)の温度、電圧値及び電流センサ63の値を取得する。なお、本明細書では、バッテリセル62A,62B・・・(バッテリモジュール62)の温度をバッテリ装置7の温度又はバッテリ温度ということがある。
ステップS5では、SOCを計算する。ここでは、ステップS4で取得したバッテリセルの電圧値より、バッテリ装置7の総電圧値を計算し、SOCを推定する。計算されたSOCは所定の閾値でレベルが設定されており、残量表示器29は前記レベルに応じてランプが点灯する。
ステップS6では、充電開始時の目標バッテリ温度を計算する(ここではTsと表記)。充電開始時の目標バッテリ温度Tsは、バッテリモジュール62(バッテリ装置7)に推奨される充電温度の許容上限値から、バッテリ装置7の充電時の発熱によるバッテリ温度の上昇量を減算することで算出される。
充電開始時の目標バッテリ温度Tsは以下の式から計算することができる。
Ts=Tmax−ΔT
Tmax:バッテリ装置7の充電温度の推奨許容上限値(既知)
ΔT:充電時の発熱によるバッテリ温度上昇量
ここで、充電時の発熱によるバッテリ上昇温度ΔTは以下の式から計算することができる。
ΔT=α×tc
α:充電時の単位時間あたりの温度上昇量(既知)
tc=充電時間
充電時間tcは以下の式から計算することができる。
tc=(SOCmax−SOCc)/C
SOCmax:SOCの上限値(既知)
SOCc:充電開始時のSOC
C:単位時間あたりのSOC増加量
充電開始時のSOC(SOCc)は以下の式から計算することができる。
SOCc=SOCin−ΔSOC
SOCin:ステップS5で計算した現在のSOC(既知)
ΔSOC:現在から充電開始時までのSOCの減少量
現在から充電開始時までのSOCの減少量ΔSOCは以下の式から計算することができる。
ΔSOC=(te−t)×β
te:ステップS2で設定した充電開始時刻(既知)
β:バッテリ稼働モード時の単位時間あたりの平均SOC減少量(既知)
このようにバッテリ装置7の充電温度の推奨許容上限値Tmaxと充電時の発熱によるバッテリ温度上昇量ΔTとから充電開始時の目標バッテリ温度Tsを計算して求めておくことで、必要以上の冷却を行うことによる無駄なエネルギー消費を押さえることができる。
ステップS7では、冷却制御時間を計算する(ここではtxと表記)。この計算は、一定の推定供給電力で電動モータ31を駆動し、電動式油圧ショベルを稼働させている状態で電動ファン61を作動させ、バッテリ装置7を冷却させた場合のバッテリ装置7の冷却特性を考慮して行う。
図8は、電動ファン61を駆動しバッテリ装置7を冷却している状態でのバッテリ装置7内のバッテリ装置7の温度変化を時間軸で表したものであり、一定の推定供給電力で電動モータ31を駆動し、電動式油圧ショベルを稼働させている状態で、電動ファン61を作動させ、バッテリ装置7を冷却させた場合のバッテリ装置7の冷却特性を示す図である。
図8において、Aはバッテリ冷却時におけるバッテリ装置7の推定供給電力がPaである場合の冷却特性を示し、Bはバッテリ装置7の推定供給電力がPbである場合の冷却特性を示している。推定供給電力Pa及びPbは、車両稼働時にバッテリ装置7から電動モータ31供給される電力の状態を表し、その推定供給電力の大きさの関係はPa>Pbである。
本実施の形態においては、コントローラ53は、バッテリコントローラ59から取得したバッテリ装置7の電流値及び電圧値から計算した瞬間的な電力を、予め定めた時点から現時点(冷却制御時間txの計算時)まで積算し、この積算した電力を平均化した値をバッテリ装置7の冷却時における供給電力として推定する。予め定めた時点とは、例えば、車体稼働開始時、すなわちキースイッチ25がSTART位置に操作された時点である。この場合、コントローラ53は、キースイッチ25がSTART位置に操作された時点から現時点まで積算し、この積算した電力を平均化した値を供給電力として推定する。また、予め定めた時点は、現時点の所定時間前であってもよく、この場合、コントローラ53は、現時点の所定時間前からの積算平均値を供給電力として推定する。前記の通り演算された推定供給電力は、本実施の形態では、キーOFF時にクリアされるようになっている。
図8は、バッテリ装置7の冷却時における推定供給電力が大きいほど、バッテリ内部の発熱量が増えるため、バッテリ装置7を冷却した場合の単位時間あたりの温度下降が緩やかなる、すなわち、冷却特性の直線の傾きは緩やかになることを示している。
推定供給電力がPaの場合、バッテリ温度がT0である時点をt1,バッテリ温度がTs(目標バッテリ温度)に達したときの時点をt2aとすれば、バッテリ装置7を冷却し、バッテリ温度がT0からTsまで低下するのに要する時間はt2a-t1=txaとなる。同様に、推定供給電力Pbの場合、バッテリ温度がT0からTsまで低下するのに要する時間はt2b-t1=txbとなる。
ここで、電動ファン61を駆動し、バッテリ温度がT0からTsまで低下する時間txa又はtxbは、上述した冷却制御時間txに相当する。したがって、冷却制御時間tx(電動ファン61の駆動時間)は、バッテリ装置7の冷却特性の直線の傾き(冷却特性の勾配)、すなわちバッテリ電流値及び電圧値より算出した推定供給電力の大きさに反比例する所定の係数(ここでは、Kpと表記)と、現在のバッテリ温度Tと目標温度Tsから、下記の計算式により算出できる。
tx = (T-Ts)/Kp
ここで、冷却特性の勾配である係数Kpは、事前に推定供給電力と係数Kpとの関係を求めておくことで、計算することができる。
図16は、推定供給電力(ここではPと表記)と係数Kpとの関係の一例を示す図である。
・P≦Pminのとき
Kp=Kpmaxとなる。推定供給電力Pが小さく発熱量が少ないため、冷却制御時間txは最小となる。
・Pmin<P<Pmaxのとき
係数Kpは推定供給電力Pに反比例するため、推定供給電力Pが大きくなるほど発熱量が増加し、冷却制御時間txは長くなる
・Pmax≦Pのとき
Kp=Kmaxとなる。推定供給電力Pが大きく発熱量が多いため、冷却制御時間txは最大となる。
コントローラ53は、図16に示した推定供給電力Pと係数Kpとの関係をテーブルに記憶しておき、以下のように冷却制御時間txを算出する。
(1)上記のようにして求めた推定供給電力Pをそのテーブルに参照させることで、係数Kpを算出する。
(2)係数Kpと現在のバッテリ温度TとステップS6で求めた目標バッテリ温度Tsとから目標バッテリ温度Tsとなるときの時刻t2を算出する。
(3)冷却制御時間txを以下のように算出する。
tx=t2−t1(t1は現在の時刻)
このようにコントローラ53は、バッテリ装置7から電動モータ31に供給された供給電力を予め定めた時点から現時点まで積算し、この積算した供給電力を平均化してバッテリ装置7を電動ファン61(冷却装置)によって冷却するときの供給電力を推定し、この推定供給電力に基づいて上記バッテリ装置7の冷却特性の温度勾配を算出する。そしてコントローラ53は、バッテリ装置7の現在の温度と目標バッテリ温度との差分を冷却特性の勾配で除することで冷却制御時間を算出する。
ステップS8では、電動ファン61を作動させてバッテリ装置7の冷却制御を開始する時刻(ここではtsと表記)を決定する。この冷却制御開始時刻tsは、ステップS2で入力した充電開始時刻teから、ステップS5で算出した冷却制御時間txだけ前の時刻であるので、以下のように充電開始時刻teから冷却制御時間txを減算することで算出される。
ts=te−tx
ステップS9では、現在時刻(ここではtと表記)がステップS8で決定した冷却制御開始時刻tsに到達したか否かを判定する。現在時刻は、コントローラ53内のタイマーによって計算される絶対時刻とする。現在時刻tがステップS8で設定した冷却制御開始時刻tsに到達した場合にはステップS10に、そうでない場合はステップS13に進む。なお、図7に示していないが、現在時刻tが冷却制御開始時刻tsを過ぎていた場合は、例えばモニタに30にエラー表示をし、充電開始時刻の再設定を促す。
ステップS10では、モニタ30に、充電前バッテリ冷却制御の開始時刻に達したことを示すインジケータを表示する。モニタ30に表示されるインジケータは冷却制御開始時刻に達したことをオペレータに知らせる告知装置であり、この告知装置は、例えば、ブザー、スピーカなどの奏鳴手段であってもよい。
このようにステップS9,S10において、コントローラ53は、冷却制御開始時刻に達したときにモニタ30のインジケータ(告知装置)を作動させ、充電前冷却許可スイッチ28(充電前冷却許可指示装置)が操作されたときに、電動ファン61(冷却装置)を作動可能とする処理を行う。なお、充電前冷却許可指示装置は充電前冷却許可スイッチ28ではなく、モニタ28の表示画面を用いて構成してもよい。
ステップS11では、ステップS10でモニタ30に表示された充電前バッテリ冷却制御の開始に対して、オペレータが充電前冷却を要求しているか否かを判定する。ここでは、オペレータが運転室6内に設置された、充電前冷却許可スイッチ28をONにした場合に、コントローラ53がその入力状態を検出することで、上記充電前バッテリ冷却制御が要求されたと判断する。充電前冷却許可スイッチ28がONの場合はステップS12に、OFFの場合はステップS13に進む。
ステップS12では目標冷却温度(ここではTaと表記)をステップS6で設定した、目標バッテリ温度Tsに設定する。
ステップS13では目標冷却温度Taを、通常稼働時の目標バッテリ温度(ここではTnと表記)に設定する。ステップS13は、上記ステップS3の判定が否、つまり充電開始時刻teの設定が無い場合と、上記ステップS9の判定が否、つまり現在時刻が冷却制御開始時刻tsよりも前である場合と、ステップS11で、充電前冷却許可スイッチ28がOFFのままで充電前バッテリ冷却制御が要求されなかった場合に実行される。このときの目標バッテリ温度Tnは通常稼働時に問題の無い温度であり、例えば、本実施の形態で搭載されるリチウムイオンバッテリの場合は、40℃としている。
ステップS14では、電動ファン61の駆動を開始し、ステップS12又はステップS13で設定された目標冷却温度Taとなるように、電動ファン61を制御する。
このようにステップS10〜S12,S14において、現在時刻tが冷却制御開始時刻tsに達した場合でも、オペレータが充電前冷却許可スイッチ28をONにする指示を行った場合だけ目標冷却温度Taとして目標バッテリ温度Tsを設定し、電動ファン61の駆動を開始することにより、ステップS1における充電開始時刻teの設定後にバッテリ装置7の充電を延期したい事情が発生した場合に、充電前冷却許可スイッチ28をOFFのままとすることで充電前バッテリ冷却制御を中止し、状況の変化に柔軟に対応することができる。
なお、現在時刻tが冷却制御開始時刻tsに達した場合に自動で目標バッテリ温度Tnを設定し、電動ファン61の駆動を開始してもよい。
図9Aは、図8のステップS14で実施される電動ファン61の制御フローチャートを示す図であり、図9Bはそのときの制御条件を示す図である。
図9Aにおいて、ステップS14−1では、ステップS4で検出した現在のバッテリ温度Tが、目標温度Taからヒステリシスを考慮した設定温度T1より高いかどうか判定する。バッテリ温度Tが設定温度T1よりも高い場合はステップS14−3、そうでない場合にはステップS14−2に進む。
ステップS14−3では、コントローラ53がリレー60をONにし、電動ファン61をONにする。
ステップS14−2では、ステップS4で検出した現在のバッテリ温度Tが、目標温度Taからヒステリシスを考慮した設定温度T2より低いかどうかを判定する。バッテリ温度Tが設定温度T2よりも低い場合はステップS14−4、そうでない場合には、処理を終了し、図7で示す制御フローのステップS1に戻る。
ステップS14−4では、コントローラ53がリレー60をOFFにし、電動ファン61をOFFにする。
図10は、本実施の形態における冷却制御開始から充電までのタイムチャートであり、時刻tに対するバッテリ温度Tの遷移を示す図である。
図10において、車体が稼働後、時刻tsになるまでは、目標バッテリ温度Tnを目標として電動ファン61が起動と停止を繰り返してバッテリ温度Tが制御される。時刻tsになり、モニタ30にインジケータが表示されたとき、オペレータが充電前冷却許可スイッチ28を押す。これにより充電前冷却許可スイッチ28がONになり、例えば時刻tsから、車両が停止して充電開始時刻teになるまでは、Tsを目標バッテリ温度として電動ファン61が起動し、バッテリ温度Tが制御される。目標バッテリ温度Tsまでバッテリ装置7を冷却するために必要とする冷却制御時間txの間、冷却制御が実行されるので、充電開始時刻teに目標バッテリ温度Tsとすることができる。オペレータは充電開始時刻teになると、オペレータが充電スイッチ27を押すことで充電モードとなり、充電開始時刻teから充電が開始される。このようにバッテリ温度が通常時の目標バッテリ温度Tnではなく、それよりも小さい、充電開始時の目標バッテリ温度Tsである状態から充電を開始することで、充電中にバッテリ温度がバッテリ装置7の充電温度範囲を超えることが回避される。
〜第1の実施の形態の効果〜
本実施の形態によれば、ナビゲーションシステムによる公道上の位置情報を利用しないオフロード型の電動式油圧ショベル(電動式建設機械)において、バッテリ装置7を冷却する冷却装置がエアコンユニットでなく、外気通風タイプの電動ファン61であっても、冷却制御時間内に確実にバッテリ装置7を目標温度まで冷却することができ、これにより所望の充電開始時刻に速やかに充電を開始することができる。
また、本実施の形態によれば、リアルタイムに目標バッテリ温度と冷却制御時間を計算することで、冷却制御時間が不足することなく、精度よく目標のバッテリ温度までバッテリ装置7を冷却することができる。
<第2の実施の形態>
図11は本発明の第2の実施の形態における電動システムの構成を表すブロック図である。第1の実施の形態との構成の違いは、電動ファン61のリレー60に代わり、ファンコントローラ65を備え、電動ファン61Aは可変速の機能を有している点である。電動ファン61Aは外部からのPWM信号によりファン回転数が制御される。この制御では、PWMのデューティが小さいほど回転数は減少、PWMのデューティが大きいほど回転数は上昇する。
ファンコントローラ65は、コントローラ53に接続され、また電動ファン61Aに前記PWM信号を出力している。ファンコントローラ65は、コントローラ53からの制御指令値に応じて、PWM信号のデューティを変更し、電動ファン回転数を制御する。
図12は、本実施の形態においてコントローラ53が行う充電前バッテリ冷却制御の処理内容を示すフローチャートである。
図12に示すフローチャートにおいて、ステップS1〜S13及びS20は、前記バッテリ稼働モード時に、コントローラ53内で周期的に繰り返し実行される。図7に示す、第1の実施の形態における制御フローチャートとの違いは、ステップS14に代わりステップS20となっている点である。
以下において、第1の実施の形態と同じステップS1〜S13の部分については説明を省略し、第1の実施の形態と異なるステップS20の処理内容について説明する。
ステップS20はステップS12又はS13から移行する。
図13Aは、図12のステップS20で実施される電動ファン61の制御フローチャートを示す図であり、図13Bはそのときの作動条件を示す図である。
図13Aにおいて、ステップS20−1では、ステップS4で検出した現在のバッテリ温度Tと、温度制御上限温度(ここではTmと表記)との大小を判定する。バッテリ温度Tが温度制御上限温度Tmを上回る場合には、ステップS20−2、そうでない場合にはステップS20−3に進む。温度制御上限温度Tmはバッテリ装置7に推奨される使用温度の上限よりも低めの値に設定されている。
ステップS20−2では、電動ファン61の回転数を定格回転数Nrに設定する。定格回転数Nrは、バッテリ温度が、使用温度の上限を超えないようにバッテリ装置7を冷却する最大の回転数である。
ステップS20−3では、ステップS2で検出した現在のバッテリ温度Tと、温度制御下限温度(ここではTlと表記)との大小を判定する。バッテリ温度Tが温度制御下限温度Tlを下回る場合には、ステップS20−4、そうでない場合には、ステップS20−5に進む。温度制御下限温度Tlはバッテリに推奨される使用温度の下限よりも高めの値に設定される。
ステップS20−4では、電動ファン61の回転を停止し、バッテリ温度が、使用温度の下限を超えないように冷却を停止する。
ステップS20−5では、ステップS12及びS13で設定した目標冷却温度Taに応じて、ファン回転数を設定する。詳細な回転数の設定方法を、図14を用いて説明する。
図14は、本発明の第2の実施の形態における電動ファン回転数制御のブロック図である。減算部105において、目標冷却温度Taと、ステップS4で検出したバッテリ温度Tとの偏差Ta-Tが演算され、この偏差Ta-Tに対してPI制御を行い、目標回転数を設定する。
ブロック100は、前記偏差に対してゲインをかけるテーブルであり、その出力がP制御に相当する。
ブロック101は、信号の遅延を示し、現在の入力偏差Ta-Tと、1ステップ前の入力偏差が加算部106で加算され積分値となる。
ブロック102は、前記積分値にゲインをかけるテーブルであり、その出力がI制御に相当する。
ブロック103は、加算部107で演算されたブロック100からのP制御分の出力と、前記ブロック102からのI制御分の出力の和が入力され、電動ファン61の目標回転数を出力するテーブルである。ブロック103から出力された電動ファン目標回転数はファンコントローラ65に回転数指令値として送信される。目標回転数は前記電動ファン定格回転数Nrと、動作上問題の無い最低回転数Nlの間で決まる。
本実施例に適用される前記制御の結果、稼働中は目標冷却温度Taになるように電動ファン61が回転する。
ステップS20−6では、ステップS20−5及びS20−4及びS20−2で設定された、電動ファン61の回転数指令値を、ファンコントローラ65に送信する。ファンコントローラ65は、設定されたファン回転数になるように、電動ファン61に出力されるPWM信号のデューティ比を変更する。
図15は、本実施の形態における冷却制御開始から充電までのタイムチャートであり、時刻tに対するバッテリ温度Tの遷移を示す図である。
図15において、車体が稼働後、時刻tsになるまでは、目標バッテリ温度Tnを目標として電動ファン61が、上記の回転数に制御されて回転することで、バッテリ温度Tが制御される。時刻tsになり、モニタ30にインジケータが表示されたとき、オペレータが充電前冷却許可スイッチ28を押す。これにより充電前冷却許可スイッチ28がONになり、例えば時刻tsから、車両が停止して充電が開始される時刻teまでは、目標バッテリ温度Tsを目標冷却温度Taとして電動ファン61が起動し、バッテリ温度Tが制御される。目標バッテリ温度Tsまでバッテリ装置7を冷却するために必要とする冷却制御時間txの間、冷却制御が実行されるので、充電開始時刻teに目標バッテリ温度Tsとすることができる。オペレータは充電開始時刻teになると、オペレータが充電スイッチ27を押すことで充電モードとなり、充電開始時刻teから充電が開始される。このようにバッテリ温度が通常時の目標バッテリ温度Tnではなく、それよりも小さい、充電開始時の目標バッテリ温度Tsである状態から充電を開始することで、充電中にバッテリ温度がバッテリ装置7の充電温度範囲を超えることが回避される。
本実施の形態によれば、リアルタイムに目標バッテリ温度Tsと冷却制御時間txを計算し、電動ファン61の回転数を可変に制御することで、電動ファン61の利用効率を高め、かつ第1の実施の形態同様に冷却制御時間が不足することなく、精度よく目標のバッテリ温度までバッテリ装置7を冷却することができる。
また、電動ファン61の回転数を可変に制御するため、油圧ショベルの稼働中にバッテリ温度Tをより精度良く目標バッテリ温度Tnに冷却し、電動ファン61の消費電力を落とすことができるので、効率的な冷却が可能である。
なお、上記の実施の形態では、電動式建設機械がクローラ式の油圧ショベルである場合について説明したが、電動式建設機械は油圧ショベル以外の建設機械、例えば、ホイール式の油圧ショベル、ホイールローダ等その他の建設機械であってもよい。