以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本開示の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
図1は、本開示の一実施形態である密閉型電池10の斜視図である。図2は、密閉型電池10の上側角部の断面を含む斜視図と一部拡大図である。図1及び図2において、密閉型電池10の横方向(または幅方向)が矢印Xで示され、密閉型電池10の長さ方向が矢印Yで示され、密閉型電池10の縦方向(または上下方向、高さ方向)が矢印Zで示されている。矢印X,Y,Zで示す各方向は互いに直交する。
図1に示すように、密閉型電池10は、横長の長方形状を有する角形電池である。また、密閉型電池10は、長さ方向Yの寸法が小さい扁平な角形電池である。さらに、密閉型電池10は、例えばリチウムイオン電池等の充放電可能な二次電池である。
図1に示すように、密閉型電池10は、例えば、アルミニウム合金等の金属からなるケース12を備える。ケース12は、底部と側壁部を有し、上部に開口部を有する。ケース12の開口部は、蓋部材14によって密閉されている。蓋部材14は、例えば、アルミニウム合金等からなる金属板で構成されている。蓋部材14は、例えば、レーザー溶接等によってケース12の開口縁部に固定される。
蓋部材14の上面には、正極端子部22pおよび負極端子部22nが設けられている。正極端子部22pと負極端子部22nとは、互いに離れて設けられている。具体的には、負極端子部22nは蓋部材14の横方向Xの一端部に配置され、正極端子部22pは蓋部材14の横方向Xの他端部に配置されている。
正極端子部22pおよび負極端子部22nには、ボルト23がそれぞれ突設されている。これらのボルト23をバスバー等の接続部材の貫通孔に挿通させてナットで締め付けることにより、接続部材を正極端子部22pおよび負極端子部22nにそれぞれ電気的に接続することができる。
なお、本実施形態では各端子部22p,22nにボルト23を設けた例について説明するが、これに限定されるものではなく、ボルトは省略されてもよい。
図2に示すように、ケース12内には、電極体16が収納されている。電極体16は、それぞれシート状をなす正極板と負極板とをセパレータを挟んで多数枚積層して構成される。正極板、負極板、セパレータの詳細については後述する。電極体16では、多数枚の正極板、負極板およびセパレータが例えば粘着テープ等の結束部材によって一体にまとめられている。
電極体16を構成する各正極板は、その上端部から延出する正極タブ18をそれぞれ有する。各正極タブ18は、電極体16の横方向右側部分の上端部にそれぞれ設けられ、厚み方向Yに並んで配置されている。また、電極体16を構成する各負極板は、その上端部から延出する負極タブ20をそれぞれ有する(図8、図9参照)。各負極タブ20は、電極体16の横方向左側部分の上端部にそれぞれ設けられ、厚み方向Yに並んで配置されている。
なお、本実施形態では電極体16が積層型電極体である場合について説明するが、これに限定されない。電極体は、セパレータを挟んで正極板および負極板を巻回して構成される巻回型電極体であってもよい。
次に、図2を参照して、正極端子部22pの構成について説明する。図2に示すように、正極端子部22pは、導電性の正極外部端子24pを備える。正極外部端子24pと蓋部材14との間は例えば樹脂部材である絶縁部材26によって絶縁されている。
正極外部端子24pは、横方向Xに延在する金属板によって形成される。正極外部端子24pの一方端部25aには貫通孔が形成され、この貫通孔にはボルト23が挿通されている。また、正極外部端子24pは延在方向に中央部に曲げ部25cが形成されている。この曲げ部25cによって正極外部端子24pの一方端部25aと絶縁部材26との間に隙間が形成されている。この隙間にボルト23の頭部が配置されている。
他方、正極外部端子24pの他方端部25bは、正極外部端子24pに上面に接触して配置されている。後述するように、正極外部端子24pの他方端部25bは、カシメ及び溶接によって正極外部端子24pに固定されて電気的に接続されている。
ケース12内には、正極集電部材34が設けられている。正極集電部材34は、例えば、横方向に延在する金属板によって形成される。正極集電部材34は、横方向Xに関して、一方端部34a、他方端部34b、および、曲げ部34cを有する。
正極集電部材34の一方端部34aの下面には、電極体16から延出する多数枚の正極タブ18が電気的に接続されている。正極タブ18は、例えば、レーザー溶接等によって正極集電部材34に接合されている。
正極集電部材34の一方端部34aは、蓋部材14の裏面に接触して配置された絶縁部材37に隙間を隔てて近接して配置されている。
正極集電部材34の他方端部34bは、正極集電部材34の中間部分に曲げ部34cが形成されていることによって、一方端部34aよりも低い位置に配置されている。
正極集電部材34の他方端部34bには、上方へ向かって窪んだ凹部36が形成されている。凹部36は、平面視で円形状をなす。凹部36の底部は、正極集電部材34の他の部分(一方端部34aおよび曲げ部34c)よりも薄板になっている。また、凹部36の底部には、円形の開口部38が形成されている。さらに、凹部36の底部であって開口部38の外周側には、V字状の溝からなる円形状の脆弱部40が形成されている。
本実施形態の密閉型電池10は、電池内部であるケース12内に電流遮断機構(CID:Current Interrupt Device)42を備える。電流遮断機構42は、反転板44と、正極集電部材34の他方端部34bに形成された脆弱部40とによって構成される。
反転板44は、金属製の薄板からなる導電板である。反転板44は、円錐台状をなして下方に突出する内周部44aと、内周部44aの外周縁に一体に形成されるフランジ部44bとを有する。反転板44の内周部44aは、先端平坦面45が例えばレーザー溶接等によって正極集電部材34の脆弱部40に接合されている。反転板44の内周部44aの先端平坦面45は、正極集電部材34の脆弱部40に対して、開口部38の外周側であって脆弱部40を形成する溝の内周側の領域で接合されるのが好ましい。図2中の拡大図において溶接部分が円形状の破線によって示されている。
反転板44のフランジ部44bは、例えばレーザー溶接等によって導通部材46に接合されている。導通部材46は、反転板44を介して正極集電部材34をケース外部の正極外部端子24pに電気的に接続する接続部材である。
導通部材46は、板状部48と、柱状部50と有する。板状部48は、金属体によって構成され、横方向Xに延在している。板状部48の一方端部48aの下面には、反転板44のフランジ部44bが例えばレーザー溶接等により接合されている。これにより、反転板44が導通部材46の板状部48に電気的に接続されている。
板状部48の一方端部48aの下面には、扁平な円柱状空間を含む収容凹部49が形成されている。反転板44は、収容凹部49を覆った状態で一方端部48aに固定されている。これにより、反転板44によって覆われた収容凹部49の内部空間52は、密閉空間になっている。
収容凹部49は、反転板44の内周部44aが電池内圧上昇により反転変位したときに内周部44aを収容する機能を有する。収容凹部49は、板状部48の一方端部48aにおいて厚み方向の内部に形成されている。このように反転板44の作動空間を形成する収容凹部49を導通部材46の板状部48の一方端部48aにおいて厚み方向の内部に形成することで、反転板44を含む電流遮断機構42を薄型化することができる。その結果、ケース12内において電極体16の上方に形成されるデッドスペースを小さくすることができ、高容量化に適した電池とすることができる。
導通部材46の板状部48と蓋部材14との間には絶縁部材37が配置されて電気的に絶縁されている。絶縁部材37は横方向Xに延在しており、一方端部が正極集電部材34の一方端部34aと対向している。絶縁部材37の他方側端部には貫通孔が形成されており、この貫通孔を介して導通部材46の柱状部50が上方に延びている。
導通部材46の板状部48の他方端部48bは、密閉型電池10の横方向端部側に向かって延在している。他方端部48bの上面には突出部が形成されており、この突出部が絶縁部材37の下面に形成された凹部に嵌り込むことによって導通部材46が絶縁部材37に対して位置決めされている。
また、導通部材46の板状部48の他方端部48bの上面には柱状部50が立設されている。柱状部50は、例えば金属製リベットによって構成される。柱状部50は、絶縁部材37の貫通孔および蓋部材14の貫通孔を介して上方に延伸している。柱状部50の上端部は、正極外部端子24pの他方端部25b上でカシメられてフランジ状に拡径されている。これにより、導通部材46が柱状部50を介して正極外部端子24pに固定され、その結果、導通部材46が正極外部端子24pと電気的に接続されている。
柱状部50の外周には、ガスケット54が配置されている。ガスケット54は、樹脂部材で構成されるシール部材である。ガスケット54は、柱状部50の外周面に接触して配置される筒部と、この筒部のケース内側端部から外側に突出するフランジ部を有する。ガスケット54の筒部は、柱状部50と蓋部材14の貫通孔の縁部との間を気密状態に封止する。ガスケット54のフランジ部は絶縁部材37の貫通孔の縁部に係合している。
本実施形態の密閉型電池10では、電池上面から透視したとき、反転板44がガスケット54から離れた位置に配置されている。具体的には、反転板44とガスケット54とは、横方向Xの距離dだけ離れて配置されている。この距離dは3〜10mmの範囲内であることが好ましい。その理由は、距離dが3mmより短いと反転板44での抵抗発熱によって生じた熱がガスケット54に伝わりやすくなり、距離dが10mmより長いと、正極端子部22pにおける電流経路が長くなるために抵抗が高くなり、全体としての発熱が大きくなるためである。
密閉型電池10の負極端子部22nは、電流遮断機構が設けられていない点で正極端子部22pと相違するが、他の構成はほぼ同様である。具体的には、図9に示すように、電極体16に含まれる負極板の上端部からそれぞれ延出する多数枚の負極タブ20が負極集電部材60の一方端部に例えばレーザー溶接等によって接合される。この場合、負極集電部材60の他方端部には脆弱部は設けられていない。負極集電部材60の他方端部は、導通部材62の板状部の一方端部に直接(すなわち反転板を介することなく)接合される。そして、導通部材62の板状部の他方端部に設けられた柱状部が蓋部材14を貫通して延伸し、柱状部の先端がカシメられて負極外部端子24nに固定されている。
図3は、正極端子部22pにおける電流の流れと発熱領域を示す、図2と同様の斜視図である。図3に示すように、密閉型電池10が使用されて電流が流れるとき、電流は電極体16から正極タブ18を経て正極集電部材34に流れ、正極集電部材34から反転板44を介して導通部材46に流れ、導通部材46から正極外部端子24pに流れて、ボルト23から図示しないバスバー等の接続部材に流れる。
このとき、図3において一点鎖線で囲んだ領域で特に抵抗発熱が大きくなる。具体的には、正極集電部材34の他方端部34bには薄肉となった脆弱部40が形成されており、この脆弱部40は電気抵抗値が高くなるため抵抗発熱が大きくなる。また、反転板44は薄板状の金属板で形成されるため、反転板44における抵抗発熱も大きくなる。したがって、このように抵抗発熱が大きくなる領域に近い位置、例えば、上下方向Zの直上位置に樹脂製のガスケットが配置されている場合には、反転板44からの伝熱によって劣化が促進され、気密性に悪影響を及ぼすおそれがある。
これに対し、本実施形態の密閉型電池10では、ガスケット54が反転板44から横方向Xに距離dだけ離れた位置に配置されている。これにより、反転板44からガスケット54に熱が伝わりにくくなり、その結果、ガスケット54の劣化を抑制して気密性を良好に維持することができる。
内部短絡等の原因によって電池内圧が所定の設定値以上に上昇すると、電池内部に設けられている電流遮断機構42を構成する反転板44の内周部44aの傾斜した外周面が受圧によって上方に押される。これにより、正極集電部材34の他方端部34bに形成された脆弱部40が破断して、反転板44の内周部44aが上方に凸状となるように反転変位する。すなわち、反転板44が正極集電部材34から離間する。このとき反転板44の内周部44aは上方へ凸状に塑性変形して収容凹部49内に収容される。その結果、正極端子部22pにおける電流経路が正極集電部材34と導通部材46との間で絶たれることで電流が遮断される。
このように作動する電流遮断機構42は、電池内圧上昇時に反転変形する反転板44の内周部44aを収容する収容凹部49を、導通部材48の一方端部48aの厚み方向の内部に形成したことで、電流遮断機構42の縦方向寸法を小さくすることができる。したがって、ケース12内において蓋部材14と電極体16との間に形成されるデッドスペースを小さくでき、高容量化に適した電池とすることができる。
次に、図4〜図10を参照して、本実施形態の密閉型電池10の製造工程について説明する。図4等において、レーザーRがV字状に示されている。
まず図4に示すように、導通部材46の板状部48の一方端部48aに反転板44を、収容凹部49を覆った状態に組み付ける。そして、反転板44の外周全体をレーザー溶接によって気密状態に接合する。
続いて、図5に示すように、反転板44が取り付けられた導通部材46の柱状部50を、蓋部材14の下面に組み付けられたガスケット54および絶縁部材37と、蓋部材14の上面に組み付けられた絶縁部材26および正極外部端子24pを貫通させて挿通する。
そして、図6に示すように、柱状部50の上端部を正極外部端子24pにカシメ固定した後、レーザー溶接によって柱状部50の上端縁部を正極外部端子24pに接合する。これにより、柱状部50(すなわち導通部材46)がより確実に正極外部端子24pと電気的に接続される。
続いて、図7に示すように、蓋部材14に負極端子部22nの構成部材を組み付ける。具体的には、負極用の導通部材62の柱状部64を、蓋部材14の下面に組み付けられたガスケット66および絶縁部材68と、蓋部材14の上面に組み付けられた絶縁部材70および負極外部端子24nとを貫通した状態にする。そして、柱状部64の上端部をカシメて負極外部端子24nに固定し、レーザー溶接によって柱状部64の上端縁部を負極外部端子24nに接合する。これにより、柱状部64(すなわち導通部材62)がより確実に負極外部端子24nと電気的に接続される。
続いて、図8に示すように、電極体16を2つの電極体部分16a,16bに分けて、各電極体部分16a,16bから延出する正極タブ18を正極集電部材34にレーザー溶接して接合するとともに、各電極体部分16a,16bから延出する負極タブ20を負極集電部材60にレーザー溶接して接合する。
続いて、図9に示すように、電極体部分16a,16bを重ね合わせた状態にする。そして、正極集電部材34を蓋部材14に取り付けられた導通部材46にレーザー溶接によって接合するとともに、負極集電部材60を蓋部材14に取り付けられた導通部材62にレーザー溶接によって接合する。
続いて、図10に示すように、電極体部分16a,16bを重ね合わせた電極体16をケース12内に収容し、蓋部材14の外周縁部全周をケース12の開口部に気密状態に接合する。
そして、蓋部材14に設けられた注液口(図示せず)から非水電解質溶液を注入してから、注液口を密封する。これにより、密閉型電池10の製造が完了する。
ここで、本実施形態の密閉型電池10がリチウムイオン電池である場合、電極体16を構成する正極板、負極板、および、セパレータの例について説明する。
正極板は、箔状の正極芯体の両側表面に正極活物質含有層を形成して構成される。正極芯体は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金箔からなる。正極タブ18は、正極活物質層が形成されていない正極芯体自体によって形成されている。
正極活物質含有層は、例えば、正極活物質として、リチウムニッケル酸化物を用い、導電剤として、アセチレンブラック(AB)を用い、結着剤として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用い、分散媒として、N−メチル−2−ピロリドンを用いることで作製できる。正極活物質について更に詳細に説明すると、正極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出することが可能な化合物であれば適宜選択して使用できる。これらの正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物が好ましい。例えば、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出することが可能なLiMO2(但し、MはCo、Ni、Mnの少なくとも1種である)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物、すなわち、LiCoO2、LiNiO2、LiNiyCo1−yO2(y=0.01〜0.99)、LiMnO2、LiCoxMnyNizO2(x+y+z=1)や、LiMn2O4又はLiFePO4などを一種単独もしくは複数種を混合して用いることができる。さらには、リチウムコバルト複合酸化物にジルコニウムやマグネシウム、アルミニウム、タングステンなどの異種金属元素を添加したものも使用し得る。しかし、正極活物質含有層は、それら以外の公知の如何なる材料で作製されてもよい。
正極板は、例えば、次のように作製される。正極活物質に導電剤や結着剤等を混合し、その混合物を分散媒中で混練することによってペースト状の正極活物質スラリーを作製する。その後、正極活物質スラリーを正極芯体上に塗布する。続いて、正極芯体に塗布された正極活物質スラリーを乾燥、及び圧縮して、正極活物質含有層を形成する。そして、正極芯体および正極活物質含有層を例えばレーザー溶断等によって切断することで、正極タブ18を有する正極板が形成される。
負極板は、箔状の負極芯体の両側表面に負極活物質含有層を形成して構成される。負極芯体は、例えば、銅又は銅合金箔からなる。負極タブ20は、負極活物質層が形成されていない負極芯体自体によって形成されている。
負極活物質含有層の負極活物質は、リチウムを可逆的に吸蔵・放出できるものであれば特に限定されず、例えば、炭素材料や、珪素材料、リチウム金属、リチウムと合金化する金属或いは合金材料や、金属酸化物などを用いることができる。なお、材料コストの観点からは、負極活物質に炭素材料を用いることが好ましく、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズピッチ系炭素繊維(MCF)、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス、ハードカーボンなどを用いることができる。特に、高率充放電特性を向上させる観点からは、負極活物質として、黒鉛材料を低結晶性炭素で被覆した炭素材料を用いることが好ましい。
また、負極活物質含有層は、結着剤として、スチレンーブタジエン共重合体ゴム粒子分散体(SBR)を用い、増粘剤として、カルボキシメチルセルロース(CMC)を用い、分散媒として、水を用いて、作製されると好ましい。負極活物質含有層は、例えば、次のように作製される。負極活物質に導電剤や結着剤等を混合し、その混合物を分散媒中で混練することによってペースト状の負極活物質スラリーを作製する。その後、負極活物質スラリーを負極芯体上に塗布する。続いて、負極芯体に塗布された負極活物質スラリーを乾燥、及び圧縮すると、負極活物質含有層が形成される。そして、負極芯体および負極活物質含有層を例えばレーザー溶断等によって切断することで、負極タブ20を有する負極板が形成される。
セパレータとしては、非水電解質二次電池において一般に使用されている公知のものを用いることができる。例えば、ポリオレフィンからなるセパレータが好ましい。具体的には、ポリエチレンからなるセパレータのみならず、ポリエチレンの表面にポリプロピレンからなる層が形成されたものや、ポリエチレンのセパレータの表面にアラミド系の樹脂が塗布されたものを用いても良い。
正極板とセパレータの界面ないし負極板とセパレータとの界面には、無機物のフィラー層を形成してもよい。このフィラーとしては、チタン、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム等を単独もしくは複数用いた酸化物やリン酸化合物、またその表面が水酸化物などで処理されているものを用いることができる。また、このフィラー層は、正極板、負極板、又はセパレータに、フィラー含有スラリーを直接塗布して形成してもよく、フィラーで形成したシートを、正極板、負極板、又はセパレータに貼り付けることで形成してもよい。
非水電解質の溶媒としては、特に限定されるものではなく、非水電解質二次電池に従来から用いられてきた溶媒を使用することができる。例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート(VC)などの環状カーボネート;ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)などの鎖状カーボネート;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトンなどのエステルを含む化合物;プロパンスルトンなどのスルホン基を含む化合物;1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,2−ジオキサン、1,4−ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテルを含む化合物;ブチロニトリル、バレロニトリル、n−ヘプタンニトリル、スクシノニトリル、グルタルニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、1,2,3−プロパントリカルボニトリル、1,3,5−ペンタントリカルボニトリルなどのニトリルを含む化合物;ジメチルホルムアミドなどのアミドを含む化合物などを用いることができる。特に、これらのHの一部がFにより置換されている溶媒が好ましく用いられる。また、これらを単独又は複数組み合わせて使用することができ、特に環状カーボネートと鎖状カーボネートとを組み合わせた溶媒や、さらにこれらに少量のニトリルを含む化合物やエーテルを含む化合物が組み合わされた溶媒が好ましい。
また、非水電解質の非水系溶媒としてイオン性液体を用いることもでき、この場合、カチオン種、アニオン種については特に限定されるものではないが、低粘度、電気化学的安定性、疎水性の観点から、カチオンとしては、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、4級アンモニウムカチオンを、アニオンとしては、フッ素含有イミド系アニオンを用いた組合せが特に好ましい。
さらに、非水電解質に用いる溶質としても、従来から非水電解質二次電池において一般に使用されている公知のリチウム塩を用いることができる。そして、このようなリチウム塩としては、P、B、F、O、S、N、Clの中の一種類以上の元素を含むリチウム塩を用いることができ、具体的には、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)、LiC(C2F5SO2)3、LiAsF6、LiClO4、LiPF2O2などのリチウム塩及びこれらの混合物を用いることができる。特に、非水電解質二次電池における高率充放電特性や耐久性を高めるためには、LiPF6を用いることが好ましい。
また、溶質としては、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩を用いることもできる。このオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩としては、LiBOB(リチウム−ビスオキサレートボレート)の他、中心原子にC2O4 2−が配位したアニオンを有するリチウム塩、例えば、Li[M(C2O4)xRy](式中、Mは遷移金属、周期律表の13族,14族,15族から選択される元素、Rはハロゲン、アルキル基、ハロゲン置換アルキル基から選択される基、xは正の整数、yは0又は正の整数である。)で表わされるものを用いることができる。具体的には、Li[B(C2O4)F2]、Li[P(C2O4)F4]、Li[P(C2O4)2F2]などがある。ただし、高温環境下においても負極の表面に安定な被膜を形成するためには、LiBOBを用いることが最も好ましい。
なお、上記溶質は、単独で用いるのみならず、2種以上を混合して用いても良い。また、溶質の濃度は特に限定されないが、非水電解液1リットル当り0.8〜1.7モルであることが望ましい。更に、大電電流での放電を必要とする用途では、上記溶質の濃度が非水電解液1リットル当たり1.0〜1.6モルであることが望ましい。
次に、本実施形態の密閉型電池10における正極端子部22pと、図11に示す比較例の正極端子部22phとで、ガスケットの温度上昇の相違をCAE(Computer Aided Engineering:コンピュータ支援設計)を用いて解析した。
図11に示すように、比較例の正極端子部22phでは、導通部材46における板状部48と柱状部50とが分離しており、柱状部50の基部に連結されている板状部50aと導通部材46の板状部48の他方端部48bとの間に反転板44が配置されている。すなわち、比較例の正極端子部22phでは、柱状部50の外周に配置されたガスケット54の直下位置に反転板44が設置されている。また、図示していないが、この場合には反転板44の突出した内周部44aの先端平坦部が接合されている導通部材46の板状部48の他方端部48bに脆弱部が形成されている。
CAEによる温度解析では、正極端子部22p,22phのボルト23の上面に電流250Aを印加し、正極集電部材34の一方端子34aをアース接続して電圧ゼロの状態で電流を流した条件で、25℃の雰囲気から開始して900秒経過後のガスケット54の最高温度を計測した。その結果、比較例の正極端子部22phでは82.9℃であったのに対し、本実施形態の密閉型電池10における正極端子部22pでは74.3℃であった。これにより、本実施形態では比較例よりガスケット温度を8.6℃下げることができ、熱による劣化を低減できることが確認できた。
なお、本開示は、上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能である。
例えば、上記においては電流遮断機構42を正極端子部22pに設けた例について説明したが、これに限定されるものではなく、電流遮断機構を負極端子部22nに設けてもよい。