JP6912051B2 - 組成物 - Google Patents

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本発明は、抗菌防腐剤組成物及びそれを用いた組成物に関し、詳しくは、皮膚や粘膜における常在菌を残存させ、かつ安全性に優れた抗菌防腐剤組成物及びそれを用いた、膣内、および外陰部、その周辺部分に適用される組成物に関する。
従来より化粧品や医薬品、医薬部外品、食品などの組成物には、抗菌防腐剤(保存剤)として、パラベン、安息香酸及びその塩類等が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
病原性微生物の人への感染予防として種々の対策が行われている。例えば、皮膚や粘膜(口腔や膣等)における細菌性の炎症や病原性微生物による感染症を抑えたりするための種々の製剤が市販されているが、それらの製剤においても、抗菌防腐性能が高いパラベン等の抗菌防腐剤が用いられている。また、感染予防や疾病の治療用途として女性の膣内に使用する膣用製剤が種々市販されている。
真菌等の病原性細菌は、人の皮膚や粘膜に存在し常在菌叢を構成している。このような病原性細菌は、通常は他の常在菌とのバランスを保って存在し、病原性を示すことはない。しかしながら、疾病やストレス等による免疫力(抵抗力)の低下や、病気治療のための薬物の過剰投与、衛生状態の悪化などが要因となって、常在菌のバランスが崩れ、病原性細菌が過度に繁殖すると、病原性細菌が原因菌となり、細菌性の炎症や病原性細菌による感染症が引き起こされる。
また、パラベン等の抗菌防腐剤を含有する上記のような女性の膣内に使用する市販の製剤は、当該抗菌防腐剤の影響により原因菌以外の常在菌を減少/死滅/発育阻止する傾向が高い。常在菌は、安定して多数で存在することで、病原性細菌の繁殖を抑制する効果がある有用菌であり、常在菌が減少/死滅したり、発育が阻止されると病原性細菌に対する耐性が低下してしまうという問題点があった。また、疾病の治療の一環として用いられる「抗生物質」でも常在菌が侵され、症状が悪化するケースがある。そのため、防腐力を有しつつ、有用な常在菌を死滅させること無く残存させるような新たな抗菌防腐剤が求められている。
また、近年、消費者の間で人体に対する安全性への関心が高まり、抗菌防腐剤としてよく使用されるパラベンは、使用者に対する刺激性やアレルギー性などの問題から、その使用を控えたり、使用量を軽減したりする傾向にある。そのため、抗菌防腐剤としてパラベン類の代用や少なくともその一部を置き換えたりすることが可能であるとともに、安全性に優れた抗菌防腐剤が求められている。
特開2014−114291号公報
そこで、本発明は、防腐力を有しつつ、皮膚や粘膜における常在菌を残存させ、かつ安全性に優れた抗菌防腐剤組成物及びそれを用いた、膣内、および外陰部、その周辺部分に適用される組成物を提供することを目的とする。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
本発明者らは、前記課題を解決するため種々の検討を重ねた結果、ヒトの唾液中に存在する特定の乳酸菌株に、防腐力を有しつつ、皮膚や粘膜における常在菌を残存させるものがあることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、請求項1の組成物においては、
ラクトバチルス・ラムノーサスKO3株(NITE BP−771)に属する乳酸菌の菌体、菌体培養物、又はこれらの抽出物を含有し、
デーデルライン桿菌に対しては抗菌作用が緩和される抗菌防腐剤組成物を用いた、膣内、および外陰部、その周辺部分に適用されるものである。
本発明によれば、防腐力を有しつつ、皮膚や粘膜における常在菌を残存させ、かつ安全性に優れた抗菌防腐剤組成物及びそれを用いた、膣内、および外陰部、その周辺部分に適用される組成物を提供することができる。
デーデルライン桿菌数とpHの相関を示すグラフ。 各種検体存在下でデーデルライン桿菌の発育試験における菌数の推移を示すグラフ。 各種検体存在下でデーデルライン桿菌の発育試験における菌数の推移を比較したグラフ。
次に、発明の実施の形態を説明する。
なお、本発明において、「抗菌」とは、細菌及び真菌類の殺菌又除菌、もしくはこれらの発生・生育・増殖を抑制することを含めて、最も広義に解釈されるべきであり、如何なる意味においても限定されない。本発明における抗菌防腐剤組成物とは、抗菌作用を有するため抗菌剤や防腐剤として使用可能であり、抗菌剤や防腐剤の各用途に応じて外用組成物中に組成物として配合される成分を意味する。
また、本発明における外用組成物とは、おおよそ外用に用いる組成物全般を包括する概念であり、特には皮膚または皮膚に隣接する粘膜(口腔、膣など)に適用する組成物をいう。本発明の外用組成物は、皮膚や粘膜における細菌性感染症の原因菌の増殖を抑制し、これにより細菌性感染症を予防またはその症状を改善もしくは、治療することができる組成物であり、医薬品、医薬部外品、化粧品などであってもよく、薬事法上の区分は特に限定されない。また、本発明における外用組成物とは、経皮投与、経口投与及び経膣投与により有効成分を作用させるための組成物である。
また、本実施形態では、上記外用組成物の一例として、女性の膣内、および外陰部、その周辺部分に適用される組成物(以下、単に「組成物」ともいう)について具体的に説明する。
また、「女性の膣内、および外陰部、その周辺部分に適用される組成物」の一例としては、女性の膣内の粘膜及び膣周囲の皮膚の疾患の予防、改善または治療に用いられる組成物が挙げられる。
本発明の抗菌防腐剤組成物は、ラクトバチルス・ラムノーサスに属する乳酸菌の菌体、菌体培養物、又はこれらの抽出物を含有することを特徴とする。
本発明に関する乳酸菌は、ラクトバチルス・ラムノーサスに属する乳酸菌の菌株である。この菌株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託されている。
具体的には、ラクトバチルス・ラムノーサスの一例として、当該特許微生物寄託センターにNITE BP−771として寄託されたラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)KO3株が挙げられる(以下、単にKO3株ともいう)。
KO3株は、ヒト唾液中から本発明者らによって初めて分離されたものであり、ヒト由来の乳酸菌である。KO3株は、16S rRNAの塩基配列がラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)strain IDCC3201の塩基配列と1485/1485の間で100%の相同性を示し、グラム染色後の顕鏡下においてグラム陽性桿菌の様相を呈することから、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)と同定された。KO3株の主な菌学的性質を以下に示す。
1)グラム陽性乳酸桿菌、2)ホモ型乳酸発酵、3)カタラーゼ陰性、4)芽胞形成能無し、5)好気条件下でも培養可、6)菌体外多糖類を産生。
本発明においては、上記乳酸菌の菌体を、乳酸菌培養の常法に従って培養し、得られた培養物から遠心分離等の集菌手段によって分離されたものをそのまま用いることのみならず、当該培養・発酵液(培養上清)、その濃縮液や、菌体を酵素や物理的手段を用いて処理した細胞質や細胞壁画分も用いることができる。また、生菌体のみならず死菌体であってもよい。
本発明の乳酸菌を培養する培地には、果汁培地、野菜汁培地、牛乳培地、脱脂粉乳培地又は乳成分を含む培地、これを含まない半合成培地等種々の培地を用いることができる。このような培地としては、脱脂乳を還元して加熱殺菌した還元脱脂乳培地、酵母エキスを添加した脱脂粉乳培地、MRS培地、GAM培地等を例示することができる。
培養方法は、静置培養又はpHを一定にした中和培養や、回分培養及び連続培養等、菌体が良好に生育する条件であれば、特に制限はない。
本発明の乳酸菌の菌体又は菌体培養物の抽出物とは、菌体又は菌体培養物を、溶媒抽出することにより得られる各種溶剤抽出液、その希釈液、その濃縮液又はその乾燥末を意味するものである。
本発明の抽出物を得るために用いられる抽出溶剤としては、極性溶剤、非極性溶剤のいずれをも使用することができ、これらを混合して用いることもできる。例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ピリジン類等が挙げられ、このうち、酢酸エチル等のエステル類、エタノール等のアルコール類が好ましい。
抽出条件は、使用する溶剤によっても異なるが、例えば、培養液1質量部に対して1〜10質量部の溶剤を用い、0〜50℃、好ましくは25〜37℃の温度で、0.5時間〜3時間抽出するのが好ましい。
上記の抽出物は、そのまま用いることもできるが、当該抽出物を希釈、濃縮若しくは凍結乾燥した後、必要に応じて粉末又はペースト状に調製して用いることもできる。また、液々分配等の技術により、適宜精製して用いることもできる。
「膣内、および外陰部、その周辺部分の疾患」としては、病原性微生物(病原性細菌)によって引き起こされる疾患をいい、その一例として、膣周囲の皮膚または当該皮膚に隣接する膣内の粘膜に発症する病原性細菌による感染症等が挙げられる。
後述する実施例(防腐効力試験)に示すように、KO3株の菌体若しくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、大腸菌であるエシェリキア・コリ(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌であるスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、緑膿菌であるシュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)及びセパシア菌であるシュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)に対して増殖抑制効果もしくは制菌効果を有する。セパシア菌は、パラベンに対して耐性を有する耐性菌である。本発明の乳酸菌は、大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌又セパシア菌の抗菌防腐剤組成物及びそれを用いた組成物となり得る。
KO3株は、女性の膣内、および外陰部、その周辺部分等の部位、例えば、膣内の粘膜及び膣周囲の皮膚の疾患の予防、改善または治療等に優れた効果を発揮する有効成分となる。したがって、女性の膣内、および外陰部、その周辺部分等の部位の疾患の予防、改善又は治療剤として有用である。
大腸菌としては、例えば、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)等が挙げられる。
黄色ブドウ球菌としては、例えば、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)等が挙げられる。
緑膿菌としては、例えば、シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)等が挙げられる。
セパシア菌としては、例えば、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)等が挙げられる。セパシア菌は、細菌の一種で、緑膿菌に似たグラム陰性の好気性桿菌である。セパシア菌は、自然環境では腐敗した野菜や畑などの土壌に存在し、農作業にも利用されているが、一方で、抗生物質等に耐性を示すため、院内感染の原因菌ともなる。
抗菌防腐剤組成物を用いる場合の形態としては、その剤型は、例えば、液剤;錠剤、顆粒剤、細粒剤、粉剤、タブレット等の固形剤;或いは当該液剤又は固形剤を封入したシリンジ状、押出し式注入容器、洗浄剤、カプセル剤、スプレー等の様々な形態が挙げられる。このような種々の剤型の製剤を調製するには、本発明の菌体や培養物の作用を妨げない範囲で、他の薬学的に許容される賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、香料、被膜剤、担体、希釈剤等を適宜組み合わせて用いることができる。
また、抗菌防腐剤組成物を化粧品、食品、医薬品、医薬部外品等の被防腐対象物の防腐剤として使用する際は、公知の防腐剤(例えば、パラベン、安息香酸及びその塩類等)と適宜組み合わせて用いることができる。
このように形態として用いる場合の該製剤中の本発明の乳酸菌の菌体若しくは菌体培養物又はこれらの抽出物の含有量は、全組成中の0.01質量%〜50質量%、好ましくは0.1質量%〜20質量%である。
また、女性の膣内、および外陰部、その周辺部分等の部位の疾患の予防、改善または治療に用いられる組成物として用いる場合の具体的な形態としては、溶液、洗浄剤、潤滑剤、軟膏剤、ゲル剤、錠剤、顆粒剤、細粒剤が挙げられ、経腟的及び経皮的に投与可能な形態全般を含むものである。
また、女性の膣内、および外陰部、その周辺部分等の部位の疾患の予防、改善または治療に用いられる組成物においては、該組成物中の本発明の乳酸菌の菌体若しくは菌体培養物又はこれらの抽出物の含有量は、全組成中の0.01質量%〜50質量%、好ましくは0.05質量%〜20質量%である。より好ましくは0.09〜5.0重量%含有される。
以下に、実施例及び試験例を示し、本発明についてより詳細に説明する。
以下、試験例などにより本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによりなんら限定されるものではない。また、特に断らない限り「%」は質量%を意味する。
(菌体の調製)
MRS培地(Difco社)を121℃で20分間滅菌した後、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)KO3株(NITE BP−771)を接種し、37℃で、48時間大気下で培養した後、蒸留水・超純水・緩衝液などで洗浄後、菌体を調製した。
以上に示されるKO3株は、公知の手法によって調整することができ、その方法を限定するものではない。
<KO3株の増殖抑制効果>
大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌及びセパシア菌の4種の各菌に対するKO3株の増殖抑制効果を防腐効力試験により試験する。
試験例1)<KO3株の細菌繁殖能力試験(防腐効力試験)>
防腐効力試験によりKO3株の防腐力(抗菌力)を評価した。なお、対照としてKO3株を配合しない滅菌リン酸緩衝生理食塩水を用いた。
1.試験材料及び方法
(1)供試品
(a)2.5%KO3株水溶液:KO3株を2.5%含有した水溶液
(b)対照(滅菌リン酸緩衝生理食塩水)
(2)試験菌種
試験菌種として、以下の菌種を用いた。
(1)大腸菌:Escherichia coli(ATCC 8739)
(2)黄色ブドウ球菌:Staphylococcus aureus(NBRC12732)
(3)緑膿菌:Pseudomonas aeruginosa(ATCC 27853)
(4)セパシア菌:Pseudomonas cepacia
(3)試料保存温度と培養条件
試料保存温度:25℃
培養条件 :(1)培地の種類 SCDLP寒天培地
(2)培養温度 37℃
(4)菌の接種方法及び測定方法
接種方法:100ml容三角フラスコに各試料を20gずつ秤量し、菌液0.1mlを添加した。
目標接種菌数:10個/ml〜10個/mlを目標として接種した。
(5)菌数評価時期及び測定方法
菌数評価時期は接種時(接種した菌数測定)を保存日数0日とし、接種後7日目、14日目、28日目を保存日数7日(1W)、14日(2W)、28日(4W)とした。試験結果を表1、表2に示す。各表中の単位は、個/mLである。
Figure 0006912051
Figure 0006912051
表1及び表2の試験結果により、2.5%KO3株水溶液は試験菌種(1)〜(4)においては、保存日数7日間で菌数が0個になった。すなわち、2.5%KO3株水溶液は、試験菌種(1)〜(4)に対して高い増殖抑制効果を示した。こうして、KO3株は、抗菌防腐剤組成物として有効であることが確認できた。
次に、上記の試験例1と同様にして、KO3株水溶液におけるKO3株の含有比率が0.1%及び0.3%(それぞれ、0.1%KO3株水溶液、0.3%KO3株水溶液という)となるものを調製し、防腐効力試験を行った。試験結果を表3、表4に示す。また、表1、表3、表4の各試験結果のまとめを表5に示す。各表中の単位は、個/mLである。
Figure 0006912051
Figure 0006912051
Figure 0006912051
表3の試験結果により、0.1%KO3株水溶液は試験菌種(2)、(3)においては、保存日数14日間(2W)で菌数が0個になった。また、試験菌種(1)においては、保存日数28日間(4W)で菌数が0個になった。すなわち、0.1%KO3株水溶液は、試験菌種(1)〜(3)に対して高い増殖抑制効果を示した。こうして、KO3株は、抗菌防腐剤として有効であることが確認できた。
表4の試験結果により、0.3%KO3株水溶液は試験菌種(1)〜(3)においては、保存日数7日間(1W)で菌数が0個になった。すなわち、0.3%KO3株水溶液は、試験菌種(1)〜(3)に対して高い増殖抑制効果を示した。こうして、KO3株は、抗菌防腐剤として有効であることが確認できた。
表5の試験結果のまとめにより、試験菌種(1)〜(4)においては、KO3株水溶液におけるKO3株の含有率が0.1%含有から2.5%含有に増加するにつれて、増殖抑制効果効果が向上することが確認できた。2.5%を超える含有率のKO3株水溶液では、その含有率を増加させることで増殖抑制効果がさらに向上するものと考えられる。
<デーデルライン桿菌に対するKO3株の影響についての検証>
膣内にはデーデルライン桿菌という常在菌が存在し、この常在菌により膣内を清潔に保つ自浄作用があることや病原性微生物(病原性細菌)の感染を防ぐことが知られている。本検証では、KO3株が膣内環境(デーデルライン桿菌)に対して悪影響を及ぼすかどうかの確認をおこなった。さらに、既存の膣洗浄用製剤や膣用潤滑剤である種々の市販品と2.5%KO3株水溶液とを用いてデーデルライン桿菌に対する影響を調査した。
[検体]以下、2)〜8)の各検体においては、括弧内に含有される防腐剤を明記している。
1)2.5%KO3株水溶液
2)市販品A(パラベン)
3)2.5%KO3株+市販品A(市販品Aに2.5%濃度でKO3株を添加したもの。パラベン)
4)市販品W(パラベン)
5)市販品F(安息香酸塩)
6)市販品S(パラベン)
7)市販品I(パラベン)
8)市販品P(IPBC(ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル))
対照)滅菌リン酸緩衝生理食塩水
※注1 上記8)における市販品PのIPBC(ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル)は、化粧品のポジティブリストに収載されている防腐剤であり、配合上限は0.02%である。
[試験委託機関]一般社団法人日本油料検定協会 綜合分析センター
[対象菌種]デーデルライン桿菌(被験者(30代女性)から採取)
[試験内容]
試験(1)デーデルライン桿菌の発育(菌数)とpHの相関関係を調べた。
[試験(1)の方法]
滅菌済のBHI液体培地(10ml)が入った各試験管に、約10個/mLに希釈したデーデルライン桿菌の菌液を1.0mLずつ添加した。その後、指定された0.5、5、8、24時間と36時間振とう培養し検液とした。各検液は10倍段階希釈を行い菌数の測定を行った。測定培地にはSCDLP寒天培地を使用し混釈法で行った。SCDLP寒天培地が固化した後は、倒置して37℃で48±3時間培養後、菌数を測定した。
接種菌液菌数:6.0×10/ml
[試験内容]
試験(2)各種検体存在下でデーデルライン桿菌の発育試験を行った。
[試験(2)の方法]
BHI液体培地にデーデルライン桿菌を接種後、37℃で一夜ほど、振とう培養したものを約10程度の菌数になるように希釈し試験菌液とした。次に各検体(1.5g)を滅菌済みのBHI液体培地(10ml)が入った試験管に入れた後、よく混和したものを試験液とした。各試験液に、試験菌液を1mL加え、37℃で振とう培養し、0.5、3、7、24時間振とう培養したものを検液とした。各検液は、10倍段階希釈を行い菌数の測定を行った。その後、各検液の濁度とpHを測定した。0時間の菌数は添加菌数より算出したが、濁度とpHは測定した。測定培地にはSCDLP寒天培地を使用し混釈法で行った。SCDLP寒天培地が固化した後は、倒置して37℃で48±3時間培養後、菌数を測定した。
接種菌液菌数:6.7×10/mL
[試験内容]
試験(3)各種検体存在下でデーデルライン桿菌への影響の確認を行った。
なお、以下の(9)は、市販品B(ビデ)である。
[試験(3)の方法]
BHI液体培地と5倍濃縮のBHI液体培地をpH4.0に調整した後、オートクレーブで滅菌を行った。滅菌ができたBHI液体培地と5倍濃縮のBHI液体培地は滅菌試験管へ使用に合わせて各10mLと2mLに分注した。各10mLのBHI液体培地に各検体(1)、(7)、(8)、(9)1.5gを加えた。検体(4)は5倍濃縮のBHI液体培地2mLに対して8mLを加えて混和した。その後、約10個/mLの供試菌液を100μLずつ添加し37℃で振とう培養し、0.5、24時間振とう培養したもの(各検体2つずつ)を検液とした。各検液とも30分後と24時間後のものから段階希釈して菌数を測定した。測定培地にはSCDLP寒天培地を使用し混釈法で行った。SCDLP培地が固化した後は倒置して37℃で、48±3時間培養し菌数を測定した。
接種菌液菌数:6.0×10/mL
試験(1)の結果を図1、表6に示す。図1のグラフの縦軸は菌数の10の乗数、横軸は時間である。この結果に基づき考察すると、デーデルライン桿菌の増加とともにpHの低下が確認された。デーデルライン桿菌の増加により、代謝物である乳酸が増加した結果である。なお、pHが中性から5.5付近までであれば、デーデルライン桿菌の発育に影響を与えない。
Figure 0006912051
試験(2)の結果を図2、図3、表7、表8に示す。表7の値に基づいてグラフ化したのが図2及び図3のグラフである。図2のグラフの縦軸は菌数の10の乗数、横軸は各検体とデーデルライン桿菌との接触時間である。図3のグラフは、縦軸として対照を100%とした場合における、各検体のデーデルライン桿菌の発育率(%)を記載したものであり、横軸は測定時間(30分、3時間、7時間、24時間)の時点での発育率を評価したものである。表8は、試験(2)において各検体におけるpHの経時変化を示すものである。
Figure 0006912051
Figure 0006912051
試験(3)の結果を表9に示す。なお、表9中のBl−1、Bl−2は検体を含まないブランク品である。
Figure 0006912051
[結論]
試験(1)、(2)、(3)の結果に基づき考察すると、膣洗浄を標榜した市販品及び潤滑剤である各検体と比較して、例えば、2.5%KO3株水溶液は対照と同じく、デーデルライン桿菌の菌数が維持されており、膣常在菌であるデーデルライン桿菌に影響がないことが確認された。これにより、膣内での使用を想定した抗菌防腐剤組成物としてのKO3株の優位性が確認された。KO3株はデーデルライン桿菌の発育阻害が緩和されているのに対して、市販品は配合されている防腐剤の影響によって顕著にデーデルライン桿菌の発育を阻害しており(例えば、検体(7)、(8))、膣桿菌の一種であるデーデルライン桿菌に対する防腐剤の負荷が非常に大きいことがわかる。また、パラベンとKO3株が共存する場合は、パラベンによる防腐効果が維持されるためデーデルライン桿菌は発育しにくくなる。デーデルライン桿菌の発育とともに乳酸が代謝され、系内のpHが低下するが試験(3)の結果からpHが低下し過ぎると(pH=4.0以下)とデーデルライン桿菌の発育が顕著に遅くなるため、製剤のpH設定は非常に重要である。パラベンの配合量とデーデルライン桿菌の発育阻害効果にはある程度の相関が見られ、パラベン配合量の多い検体ほど、発育阻害効果が大きく、配合量の少ない検体に関しては、発育阻害効果は観測されるが、24時間後には、対照と同程度まで発育する。
以上により、KO3株は、他の市販品と比較して、膣内の常在菌であるデーデルライン桿菌を残存させることができることが確認できた。
また、女性の膣内常在菌であるデーデルライン桿菌は乳酸桿菌である。本発明のKO3株もヒト由来の乳酸桿菌であるため、KO3株とデーデルライン桿菌とは互いに共存が可能である。したがって、例えば、KO3株を膣内殺菌用途の製剤に含有させても、膣内常在菌のデーデルライン桿菌に悪影響を与えない。
また、本発明に係るKO3株は、ヒト由来の乳酸菌株であり、粘膜などの薬剤が吸収されやすい部分であっても、安全に使用することが推察できる。
また、本発明に係る乳酸菌、及びその代謝物は、上述したように抗菌作用を有し、例えば、女性の膣内において病原性細菌等の原因菌に対しては抗菌作用が効果的に働くとともに、膣内常在菌(本実施形態では、デーデルライン桿菌)に対しては抗菌作用が緩和される。このように、本発明に係る乳酸菌は膣内の有用な常在菌を死滅させることなく安定して存在させて、常在菌の病原性細菌に対する耐性を維持することができる。
また、本発明に係る乳酸菌は、膣内常在菌に影響を与えず、常在菌により病原性微生物の侵入や増殖を抑制させるプロバイオティクスの概念を達成する素材として提供することができる。
また、本発明に係る乳酸菌は、上述した細菌系に対して防腐剤として極めて有効な作用を発揮する為、製剤に配合する防腐剤として有用である。したがって、本発明に係る乳酸菌によれば、製剤に配合される、従来の防腐剤の置き換え、もしくは減量をすることができる。
本発明に係る乳酸菌を単独、もしくは少量の既知の防腐剤と併用し、製品の製造段階で発生する一次汚染や消費者の使用段階で発生する二次汚染を抑制する防腐剤として活用することもでき、また製剤は常在菌を減少、死滅させたり、常在菌の発育を阻止するなどの悪影響を抑えることができる。
本発明の適用対象は、抗菌防腐性を付与したいもの(被抗菌防腐対象物)全てを含み、例えば、ヒトの皮膚や口腔、膣または、ペット等の動物を包含するものである。
本発明の抗菌防腐剤組成物は、有効成分であるKO3株を1種単独で、あるいは公知の防腐剤等を適宜組み合わせてもよく、また、その他の添加剤を加えてもよい。また、その形態は特に限定するものではない。添加剤としては、本発明の効果を阻害しない範囲でその形態に応じた、保湿剤、乳化剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、香料等からなる群から選ばれる1種又は2種以上のものを加えることができる。
本発明の抗菌防腐剤組成物は、抗菌防腐性付与の対象物の種類、使用材料、使用目的などにより、その適用範囲や適用方法を適宜変更することができる。
以上の如く、本発明は、防腐力を有しつつ、皮膚や粘膜における常在菌を残存させ、かつ安全性に優れた抗菌防腐剤組成物及びそれを用いた、膣内、および外陰部、その周辺部分に適用される組成物を得ることができる。

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  1. ラクトバチルス・ラムノーサスKO3株(NITE BP−771)に属する乳酸菌の菌体、菌体培養物、又はこれらの抽出物を含有し、
    デーデルライン桿菌に対しては抗菌作用が緩和される抗菌防腐剤組成物を用いた、膣内、および外陰部、その周辺部分に適用される組成物
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