JP6909972B2 - 脱水素方法、水素供給溶液及び脱水素装置 - Google Patents

脱水素方法、水素供給溶液及び脱水素装置 Download PDF

Info

Publication number
JP6909972B2
JP6909972B2 JP2017094644A JP2017094644A JP6909972B2 JP 6909972 B2 JP6909972 B2 JP 6909972B2 JP 2017094644 A JP2017094644 A JP 2017094644A JP 2017094644 A JP2017094644 A JP 2017094644A JP 6909972 B2 JP6909972 B2 JP 6909972B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hydrogen
dehydrogenation
solution
cathode
aromatic compound
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017094644A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018119205A (ja
Inventor
学 加納
学 加納
裕貴 中田
裕貴 中田
勇磁 銭谷
勇磁 銭谷
ヒョンジョン ナム
ヒョンジョン ナム
サイフッラー バダル
サイフッラー バダル
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Intellectual Property Management Co Ltd
Original Assignee
Panasonic Intellectual Property Management Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Panasonic Intellectual Property Management Co Ltd filed Critical Panasonic Intellectual Property Management Co Ltd
Publication of JP2018119205A publication Critical patent/JP2018119205A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6909972B2 publication Critical patent/JP6909972B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C01INORGANIC CHEMISTRY
    • C01BNON-METALLIC ELEMENTS; COMPOUNDS THEREOF; METALLOIDS OR COMPOUNDS THEREOF NOT COVERED BY SUBCLASS C01C
    • C01B3/00Hydrogen; Gaseous mixtures containing hydrogen; Separation of hydrogen from mixtures containing it; Purification of hydrogen
    • C01B3/0005Reversible uptake of hydrogen by an appropriate medium, i.e. based on physical or chemical sorption phenomena or on reversible chemical reactions, e.g. for hydrogen storage purposes ; Reversible gettering of hydrogen; Reversible uptake of hydrogen by electrodes
    • C01B3/001Reversible uptake of hydrogen by an appropriate medium, i.e. based on physical or chemical sorption phenomena or on reversible chemical reactions, e.g. for hydrogen storage purposes ; Reversible gettering of hydrogen; Reversible uptake of hydrogen by electrodes characterised by the uptaking medium; Treatment thereof
    • C01B3/0015Organic compounds; Solutions thereof
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C25ELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES; APPARATUS THEREFOR
    • C25BELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES FOR THE PRODUCTION OF COMPOUNDS OR NON-METALS; APPARATUS THEREFOR
    • C25B1/00Electrolytic production of inorganic compounds or non-metals
    • C25B1/01Products
    • C25B1/02Hydrogen or oxygen
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07CACYCLIC OR CARBOCYCLIC COMPOUNDS
    • C07C5/00Preparation of hydrocarbons from hydrocarbons containing the same number of carbon atoms
    • C07C5/32Preparation of hydrocarbons from hydrocarbons containing the same number of carbon atoms by dehydrogenation with formation of free hydrogen
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C25ELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES; APPARATUS THEREFOR
    • C25BELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES FOR THE PRODUCTION OF COMPOUNDS OR NON-METALS; APPARATUS THEREFOR
    • C25B3/00Electrolytic production of organic compounds
    • C25B3/20Processes
    • C25B3/23Oxidation
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C25ELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES; APPARATUS THEREFOR
    • C25BELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES FOR THE PRODUCTION OF COMPOUNDS OR NON-METALS; APPARATUS THEREFOR
    • C25B3/00Electrolytic production of organic compounds
    • C25B3/20Processes
    • C25B3/25Reduction
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C25ELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES; APPARATUS THEREFOR
    • C25BELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES FOR THE PRODUCTION OF COMPOUNDS OR NON-METALS; APPARATUS THEREFOR
    • C25B15/00Operating or servicing cells
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/32Hydrogen storage

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Metallurgy (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Electrochemistry (AREA)
  • Inorganic Chemistry (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Combustion & Propulsion (AREA)
  • Electrolytic Production Of Non-Metals, Compounds, Apparatuses Therefor (AREA)
  • Hydrogen, Water And Hydrids (AREA)

Description

本開示は脱水素方法、水素供給溶液及び脱水素装置に関する。
近年、水素エネルギーを利用する技術が盛んに研究されている。例えば、家庭用および産業用燃料電池、燃料電池自動車等が実用化されている。電気エネルギーと異なり、水素は、原理的にはそのまま貯蔵が可能である。しかし、水素は常温、常圧において気体であるため、特に、エネルギーの体積密度は小さい。このため、圧力をかけて水素ボンベに保存したり、液体水素の状態で保持したり、水素吸蔵合金に吸蔵させるなどの方法が利用される。
非特許文献1は、上述以外の貯蔵方法として、有機ハイドライド法を提案している。有機ハイドライド法は、芳香族化合物に水素を結合させ水素を貯蔵する。例えば、トルエンに水素を結合させることによりメチルシクロヘキサンを生成させ、メチルシクロヘキサンの状態で水素を貯蔵する。水素を脱離させると、メチルシクロヘキサンはトルエンに戻る。同様に、ナフタレンとデカヒドロナフタレン(デカリン)との変換を利用して水素を貯蔵し得る。
有機ハイドライド法によれば、水素が結合した化合物および水素が脱離した化合物は常温で液体であり、ガソリンや灯油等の石油類に属する化合物として取り扱うことができる。また、いずれの化合物も安定であり、循環利用が可能であるため、水素貯蔵および水素供給手段として有効であると考えられる。
しかしながら、有機ハイドライド法によれば、水素の脱離反応は吸熱反応であるため、水素を脱離させる際、外部からエネルギーを与える必要がある。このため、より少ない熱エネルギーで水素を脱離させることが可能な触媒が研究されている(特許文献1)。非特許文献2は、電気化学的に水素を脱離させる方法を提案している。
特開2005−211845号公報
水素エネルギーがわかる本 水素社会と水素ビジネス(オーム社) Peter F. Driscoll,Elise Deunf,Leah Rubin,John Arnold,John B. Kerr,Journal of Electron Society, 160 G3152−G3158(2013)
有機ハイドライドの電気化学的反応について改善の余地があった。本開示は、有機ハイドライドの脱水素方法、水素供給溶液及び脱水素装置を提供する。
本開示の脱水素方法は、水素化芳香族化合物と、[P((CH2mCH33((CH2nCH3)(5≦m≦24,13≦n≦24)]、および、[N((CH2mCH33((CH2CH3)(5≦m≦24,13≦n≦24)]の少なくとも一方と、アニオンとを含む溶液を陰極に接触させる工程と、前記水素化芳香族化合物から水素を脱離させる工程とを包含する。
本開示の水素供給溶液は、水素化芳香族化合物と、[P((CH2mCH33((CH2nCH3)(5≦m≦24,13≦n≦24)]、および、[N((CH2mCH33((CH2CH3)(5≦m≦24,13≦n≦24)]の少なくとも一方と、アニオンとを含む。
本開示の脱水素装置は、前記水素供給溶液を収容する収容室と、前記収容室の前記水素供給溶液と接触している陰極と、陽極と、を備える。
本開示の脱水素方法、水素供給溶液及び脱水素装置によれば、有機ハイドライドの電気化学的反応が利用可能な反応系が提供される。
図1は水素化芳香族化合物に電解質を溶解させた場合における抵抗値の濃度依存性を示すグラフである。 図2は、実施の形態2の脱水素装置の一例を示す図である。 図3は、有機ハイドライド溶液中のクロラニルのn量体(n≧1)の構造式の一例を示す図である。 図4は、クロラニルの一例及び水素化されてヒドロキノンになったクロラニルの一例を示す図である。 図5は、評価セルへの印加電圧と四重極型質量分析計による水素の計測電流値との関係を示す図である。 評価セルへの印加電圧と評価セルに流れる電流との関係を示す図である。 実験前と実験後でのアノード室内の溶液中のトルエンをガスクロマトグラフ−質量分析計で検出した結果を示す図である。 図3は実施例4で用いた脱水素装置の例を示す模式図である。 図9は、実施例4におけるサイクリック・ボルタンメトリー測定の結果を示すグラフの一例である。 図10は、実施例4におけるGC(ガスクロマトグラフィ−)測定の結果を示すグラフの一例である。
上記従来技術のような有機ハイドライドの電気化学的な水素脱離方法を含む有機ハイドライドの種々の電気化学反応を進行させるためには、有機ハイドライドと、あるいは、有機ハイドライドと反応し得る物質との電気化学的な電子の授受が必要である。このため、有機ハイドライドまたは有機ハイドライドを含む液体が導電性を有していることが適当である。
しかし、水素の貯蔵に用いられる有機ハイドライドは、一般に炭素および水素一般のみによって構成され、有機ハイドライド分子の極性は小さい。このため、有機ハイドライドに導電性を付与するために一般的な電解質を溶解させようとしても、一般的な電解質は、十分な濃度で有機ハイドライドに溶解しにくい。
有機ハイドライド中の電解質の濃度を高めるためには、有機ハイドライドに極性溶媒を添加することが考えられる。しかし、この場合、液体中における有機ハイドライドの割合が低下し、水素エネルギーの貯蔵密度が低下する。本開示は、有機ハイドライドの脱水素方法、水素供給溶液及び脱水素装置を提供する。本開示の、脱水素方法、水素供給溶液および脱水素装置の概要は以下の通りである。
本開示の第1態様の脱水素方法は、水素化芳香族化合物と、[P((CH2mCH33((CH2nCH3)(5≦m≦24,13≦n≦24)]、および、[N((CH2mCH33((CH2nCH3)(5≦m≦24,13≦n≦24)]の少なくとも一方と、アニオンとを含む溶液を陰極に接触させる工程と、前記水素化芳香族化合物から水素を脱離させる工程とを包含する。
本開示の第2態様の脱水素方法は、上記第1態様の脱水素方法において、前記水素化芳香族化合物はシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、デカリンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。
本開示の第3態様の脱水素方法は、上記第1態様または第2態様の脱水素方法において、前記溶液は、[P((CH25CH33((CH213CH3)]または[N((CH25CH33((CH213CH3)]を100mmol/L以上の濃度で含んでもよい。
本開示の第4態様の脱水素方法は、上記第1態様−第3態様のいずれか1つの脱水素方法において、前記アニオンは、[N(SO2CF32、および、[[(CH33CCH2CH(CH3)CH2]PO2の少なくとも一方を含んでもよい。
本開示の第5態様の脱水素方法は、上記第1態様−第4態様のいずれか1つの脱水素方法において、前記溶液に電圧を印加し、前記水素化芳香族化合物から水素を脱離させてもよい。
本開示の第6態様の水素供給溶液は、水素化芳香族化合物と、[P((CH2mCH33((CH2nCH3)(5≦m≦24,13≦n≦24) ]、および、[N((CH2mCH33((CH2nCH3)(5≦m≦24,13≦n≦24)]の少なくとも一方と、アニオンとを含む。
本開示の第7態様の水素供給溶液は、上記第6態様の水素供給溶液において、前記水素化芳香族化合物はシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、デカリンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。
本開示の第8態様の水素供給溶液は、上記第6態様または第7態様の水素供給溶液において、前記溶液は、[P((CH25CH33((CH213CH3)]または[N((CH25CH33((CH213CH3)]を100mmol/L以上の濃度で含んでもよい。
本開示の第9態様の水素供給溶液は、上記第6態様−第8態様のいずれか1つの水素供給溶液において、前記アニオンは、[N(SO2CF32、および、[[(CH33CCH2CH(CH3)CH2]PO2の少なくとも一方を含んでもよい。
本開示の第10態様の脱水素装置は、上記第6態様−第9態様のいずれかに記載の水素供給溶液を収容する収容室と、前記収容室の前記水素供給溶液と接している陰極と、陽極と、を備える。
以下、図面を参照しながら、本開示の脱水素方法、水素供給溶液及び脱水素装置の実施形態を説明する。本開示の脱水素方法は、水素供給溶液に電圧を印加する用意する工程を包含する。「水素供給溶液」とは、脱離可能な水素原子または分子を含んでおり、脱離反応によって水素を発生し得る液体である。
なお、以下で説明する実施形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。よって、以下の実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面において、同じ符号が付いたものは、説明を省略する場合がある。また、図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を模式的に示したもので、形状及び寸法比等については正確な表示ではない場合がある。
(実施の形態1)
水素供給溶液は、水素化芳香族化合物と、下記一般式(1)および一般式(2)で示される少なくとも1種のカチオンと、アニオンとを含む。
[P((CH2mCH33((CH2nCH3)(5≦m≦24,13≦n≦24)]
・・(1)
[N((CH2mCH33((CH2nCH3)(5≦m≦24,13≦n≦24)]
・・(2)
水素化芳香族化合物は、芳香族化合物に水素が結合することによって、水素を貯蔵した状態にある化合物である。「水素化芳香族化合物」とは、芳香族化合物の少なくとも1つの炭素―炭素二重結合に水素が付加された化合物であり、分子内に炭素−炭素不飽和結合を含んでいてもよい。水素化芳香族化合物は炭素および水素のみによって構成されていることが適当である。炭素および水素のみによって構成される水素化芳香族化合物は、分子内に電荷の偏りが少なく、低極性化合物である。
水素化芳香族化合物として用いることができる化合物は、例えば、メチルシクロヘキサン、1,2−ジメチルシクロヘキサン、1,3−ジメチルシクロヘキサン、1,4−ジメチルシクロヘキサン、テトラリン、デカリン、メチルテトラリン、ビシクロヘキシル、シクロヘキシルベンゼンなどである。上述したように、水素貯蔵および水素供給手段として用いる場合には、水素が結合した化合物および水素が脱離した化合物が、融点、沸点、燃焼性、爆発性、毒性等の観点で、ガソリン等の石油類に属する化合物として取り扱いが可能であることが適当である。これらの観点からは、水素化芳香族化合物は、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、デカリンであることが適当である。メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、デカリンから水素が完全に脱離した化合物は、トルエン、キシレン、ナフタレンである。
上述した水素化芳香族化合物の極性は小さい。このため、例えば、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(N(CH34BF4)のような一般的な電解質は上述した水素化芳香族化合物にほとんど溶解しない。これはカチオンおよびアニオンに結合する側鎖が短いことに起因して、カチオンとアニオンとを乖離させるのに必要なエネルギーが大きいこと、および、カチオンおよびアニオンの表面積が小さいことにより、溶媒和によるエネルギー利得が小さいことが原因であると考えられる。
本開示の水素供給溶液は、特に、長い炭素鎖の側鎖を有するアンモニウムイオンまたはホスホニウムイオンを含む。具体的には、[P((CH2mCH33((CH2nCH3)(5≦m≦24,13≦n≦24)]、または、[N((CH2mCH33((CH2nCH3)(5≦m≦24,13≦n≦24)]をカチオンとして含む。
以下の実施例で説明するように、上記アンモニウムイオンおよびホスホニウムイオンにおいて、炭素数mが5未満である場合、またはnが13未満である場合、カチオンの溶解性が小さく、十分な濃度でカチオンが溶解しない。このため、水素化芳香族化合物に十分な導電性を付与することができない。
mおよびnが大きくなるにつれて、溶媒和が可能な表面積が増大するため、カチオンの溶解度は大きくなる。このため、水素供給溶液カチオンがより多く溶解することによって、水素供給溶液の抵抗が低下し、水素供給溶液に多くの電流を流すことが可能となる。
一方、上記アンモニウムイオンおよびホスホニウムイオンにおいて、m、nが増大すると、カチオンの分子量が増大することによる電解質の格子エネルギーの増大および粘性の増大が顕著になり、カチオンの溶解度は低下し、水素供給溶液の抵抗値が増大する。文献Elise Provost, et. al., "Solubility of some n-Alkanes (C23, C25, C26、C28) in Heptane, Methylcyclohexane, and Toluene", J. Chem. Eng. Data 1998, 43, 745-749に開示されたメチルシクロへキサンおよびトルエンに対するn−アルカンの溶解度を考慮すると、炭素数mまたはnが24より大きいと、カチオンの溶解度が小さくなるため好ましくない。上述の範囲のm、nを選択することによって、水素化芳香族化合物に適切な導電性が付与でき、電解に適した水素供給溶液が得られる。
水素供給溶液に含まれるアニオンは嵩高い構造を有することが適当である。これは。嵩高い置換基がついていると実質的なイオン半径が大きくなり、アニオンとカチオンを引き剥がすエネルギーが低くなるのでアニオン及びカチオンの溶解度が向上することが期待されるからである。例えば、[N(SO2CF32、[[(CH33CCH2CH(CH3)CH2]PO2を含むことが適当である。
エネルギー密度の観点では、水素供給溶液は他の極性溶媒は含まないほうが適当である。他の極性溶媒を含まないことによって、高いエネルギー密度を有することが可能となる。しかし、エネルギー密度以外の観点、例えば、水素供給溶液の粘度、抵抗等、脱水素反応に影響し得る他の特性の改善のため、例えば、体積比で10vol%程度の他の溶媒極性溶媒を含んでいてもよい。
水素供給溶液は、この他に、脱水素反応に寄与する化合物をさらに含んでいてもよい。具体的には、キノンが挙げられる。キノンとしては、例えば、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン(以下、DDQと略す)が挙げられる。クロラニルは、有機化合物から水素を引き抜く脱水素反応に用いられる酸化剤である。非特許文献2によれば、アセトニトリル中において、DDQは、ベンジルアニリンから電気化学的に水素を引き抜くメデュエーターとして機能することが示唆されている。
したがって、例えば、水素供給溶液がDDQを含む場合、水素供給溶液に陽極及び陰極を浸漬し、陽極及び陰極間に電圧を印加することによって、電気化学的に脱水素反応を生じさせ、水素供給溶液の水素化芳香族化合物から水素を引き抜くことが考えられる。この場合、本開示の水素供給溶液は、本開示のカチオンを含む電解質と異なる極性溶媒を含まなくても高い導電性を有するため、水素を引き抜くことが可能であれば、高いエネルギー密度で水素を貯蔵し得ると言える。
このように本開示の脱水素方法および水素供給溶液によれば、水素供給溶液は、水素化芳香族化合物および水素化芳香族化合物に溶解し得るカチオンおよびアニオンを含む。したがって、電気化学的に水素化芳香族化合物から水素を脱離させることが可能である場合、水素供給溶液は、脱離可能な水素を有していない極性溶媒等を含まないことによって、高いエネルギー密度を達成することができる。
なお、上記実施形態では、水素供給溶液は、水素化芳香族化合物を含んでいるが、芳香族化合物を含んでいてもよい。この場合、芳香族化合物は炭素および水素のみによって構成されていることが適当である。炭素および水素のみによって構成される芳香族化合物も分子内に電荷の偏りが少なく、低極性化合物である。したがって、水素化芳香族化合物と同様に、一般式(1)および(2)で示されるカチオンを含む電解質は芳香族化合物にも溶解し、芳香族化合物に導電性を付与し得る。この場合、水素供給溶液は、芳香族化合物の炭素−炭素二重結合または三重結合に水素が付加することによって水素を貯蔵することが可能である。水素供給溶液が、水素付加反応に寄与する化合物をさらに含んでおり、芳香族化合物に、電気化学的に水素を付加させてもよい。
(実施例)
以下、水素化芳香族化合物に対する電解質の溶解性を調べた結果を説明する。
(実施例1)
水素化芳香族化合物として10mlのメチルシクロヘキサンを容器に秤量し、固体の場合には0.02g、液体の場合には0.2mlの電解質を秤量し、容器に加えて撹拌した。使用した電解質は、[N(CH2CH34][BF4]、[N((CH23CH34][PF6]、[N((CH23CH33CH3][CH3OSO3]、[Py(CH3)((CH23CH3)][N(SO2CF32]、[N(C611)(CH33][N(SO2CF32]、[P((CH23CH33((CH211CH3)][N(SO2CF32]、[P((CH25CH33((CH213CH3)] [[(CH33CCH2CH(CH3)CH2]2PO2]、[P((CH25CH33((CH213CH3)][N(SO2CF32]である。Pyはピリジニウム基を示す。
その後、目視により溶解しているかを確認し、更に抵抗を測定することにより混和・溶解しているかを確認した。表1に結果を示す。表1において○は、抵抗値が50MΩ以下であり、×は、抵抗値が50MΩより大きいことを示す。
Figure 0006909972
Figure 0006909972
Figure 0006909972
表1に示すようにメチルシクロヘキサンには上記化学式(3)および(4)で示す電解質のみが溶解および混和することがわかった、化学式(3)および(4)はいずれも、一般式(1)におけるm=5、n=13のカチオンを含む。一般式(1)におけるm=3、n=11のカチオンでも、電解質が溶解しなかったことから、下限は、m=5、n=13程度であることが分かる。
上述したように、一般式(1)、(2)における、アルキル基の長さを示すmおよびnは大きいほど溶媒和が可能な表面積の増大、混和を阻害する極性の低減が見込め、溶解度の向上が期待できる。しかし、m、nが大きすぎると、カチオンの分子量が増大することによる電解質の格子エネルギーの増大および粘性の増大が顕著になる。上述の文献J. Chem. Eng. Data 1998, 43, 745-749を考慮すると、一般式(1)および(2)におけるm、nの最大値は24程度であると見積もられる。
(実施例2)
メチルシクロヘキサン(和光純薬工業社製、純度98.0%以上)に電解質[P((CH25CH33((CH213CH3)][N(SO2CF32](シグマアルドリッチ社製、純度95.0%以上)を加え、体積モル濃度範囲0mmol/L(純メチルシクロヘキサン)から1400.52mmol/L(純粋な[P((CH25CH33((CH213CH3)][N(SO2CF32]の体積モル濃度)の範囲で、室温にて抵抗測定器(Kaise製:KT-2011、最大測定可能抵抗50MΩ)により抵抗値を測定した。図1に測定結果を示す。
純粋なメチルシクロヘキサン(電解質のモル濃度は0mmol/L)は測定不能な抵抗(無限大)を示す。このため、電気化学的脱水素反応等、メチルシクロヘキサンに電気化学反応を生じさせることは困難である。一方、[P((CH25CH33((CH213CH3)][N(SO2CF32]の濃度が上昇するにつれて抵抗値が劇的に減少し、100mmol/Lの濃度で抵抗値は10.4MΩまで減少した。200mmol/Lより高濃度では抵抗値の減少がゆるやかとなり、純粋な[P((CH25CH33((CH213CH3)][N(SO2CF3)2]の抵抗値である1.4MΩに漸近した。
この結果から、[P((CH25CH33((CH213CH3)][N(SO2CF32]は、メチルシクロヘキサンと任意の割合で混和し、均一な溶液を形成することが分かった。また、電解質の濃度が100mmol/L以上であれば、溶液の抵抗は大幅に低下していることが分かった。したがって、電解質の濃度は、100mmol/L以上で用いることが適当である。また、電解質の濃度が200mmol/L以上であれば、容積の抵抗はより低下するので、電解質の濃度は200mmol/L以上であってもよい。抵抗値の低減に必要な電解質の量という観点では、概ね500mmol/Lの濃度で、十分低抵抗な溶液が得られると言える。従って、電解質の濃度は、500mmol/Lの濃度で用いてもよい。
なお、本実施の形態では、カチオンとして一般式(1)で示される4級ホスホニウム塩を用いた例について示したが、一般式(2)で示される4級アンモニウム塩を用いても同様の結果が得られると推測される。これは、4級ホスホニウム塩及び4級アンモニウム塩は電気的に類似の性質を示すからである。
(実施の形態2)
有機ハイドライドの電気化学反応の一例として、脱水素反応で水素を生成する例について説明する。具体的には、プロトン伝導体等を用いて作用極と対極とを分け、有機ハイドライドの脱水素反応で得られた電子の受け取り先を作る形態が挙げられる。
[装置構成]
図2は、実施形態の脱水素装置の一例を示す図である。
図2に示す例では、脱水素装置100は、アノード10と、カソード11と、プロトン伝導体12と、タンク20と、第1の供給器21と、第2の供給器31と、加湿器32と、電圧印加器40と、を備える。
なお、本実施形態の脱水素装置100では、アノード10、カソード11及びプロトン伝導体12を備える積層体が容器内を区画するように配置されている。そして、容器のアノード10側の領域が、水素化芳香族化合物、本開示のカチオン及びアニオンを含む電解質、及びキノンを含む液体が流入するアノード室15を構成する。容器のカソード11側の領域が、カソード流体が流入するカソード室16を構成しているが、これに限定されない。例えば、本例では、プロトン伝導体12を湿潤状態にするため、カソード流体が加湿されているが、アノード10側から水分を供給することでプロトン伝導体12を湿潤状態にしてもよい。この場合は、必ずしもカソード室16にカソード流体を流入させる必要はない。アノード室15は、本開示の収容室の一例である。なお、上記キノンの一例として、クロラニルのn量体(n≧1)が挙げられるが、これに限定されず、DDQであってもよい。
アノード10は、脱水素触媒を含む電極である。アノード10は、脱水素触媒を含む電極であれば、どのような構成であってもよい。脱水素触媒の触媒金属として、例えば、白金(Pt)を用いることができるが、これに限定されない。触媒の担体としては、例えば、カーボン等を挙げることができる。
カソード11は、プロトンを還元する触媒を含む電極である。カソード11は、プロトンを還元する触媒を含む電極であれば、どのような構成であってもよい。プロトンを還元する触媒の触媒金属として、例えば、白金(Pt)及びルテニウム(Ru)を用いることができるが、これに限定されない。触媒の担体としては、例えば、カーボン等を挙げることができる。
プロトン伝導体12は、アノード10及びカソード11の間に配置されている。具体的には、アノード10は、プロトン伝導体12の一方の主面に設けられ、カソード11は、プロトン伝導体12の他方の主面に設けられている。
プロトン伝導体12は、プロトン伝導性を備える部材であれば、どのような構成であってもよい。
プロトン伝導体12として、例えば、固体高分子電解質膜等を挙げることができる。固体高分子電解質膜として、例えば、Nafion(登録商標、デュポン社製)、キャッピング電解質膜等を用いることができる。
また、プロトン伝導体12として、例えば、BZY、鉄とタンタルからなる化合物、ピロリン酸スズをベースとした化合物等の無機電解質膜、多孔質の無機材料にイオン液体を入れた無機−有機ハイブリット電解質膜等を挙げることもできる。
第1の供給器21は、アノード10に水素化芳香族化合物、クロラニルのn量体(n≧1)、及び本開示のカチオン及びアニオンを含む電解質を含む液体(以下、「有機ハイドライド溶液」と略す場合がある)を供給する。
また、タンク20は、有機ハイドライド溶液を収容する。有機ハイドライド溶液は、アセトニトリル、水等の極性溶媒を含んでいてもよいし、有機ハイドライドの脱水素反応で生成される芳香族化合物等が混合されてもいてもよい。
第1の供給器21は、アノード10に、上記の液体を供給できれば、どのような構成であってもよい。第1の供給器21として、例えば、容積型のポンプ等を挙げることができる。
有機ハイドライド溶液中の水素化芳香族化合物は、第3級炭素を有する脂環式飽和炭化水素であってもよい。第3級炭素を有する脂環式飽和炭化水素は、飽和炭化水素を側鎖に持つ第3級炭素を有する単環式飽和炭化水素または多環式飽和炭化水素であってもよい。
飽和炭化水素を側鎖に持つ第3級炭素を有する脂環式飽和炭化水素は、飽和炭化水素を側鎖に持つ第3級炭素を有する単環式飽和炭化水素または多環式飽和炭化水素であってもよい。
飽和炭化水素を側鎖に持つ第3級炭素を有する単環式飽和炭化水素は、例えば、メチルシクロヘキサン、1,2−ジメチルシクロヘキサン、1,3−ジメチルシクロヘキサン、1,4−ジメチルシクロヘキサンなどである。多環式飽和炭化水素は、デカリン、メチルデカリン、1,2−ジメチルデカリン、1,3−ジメチルデカリン、1,4−ジメチルデカリンなどである。上述したように、水素貯蔵および水素供給手段として用いる場合には、水素が結合した化合物および水素が脱離した化合物が、融点、沸点、燃焼性、爆発性、毒性等の観点で、ガソリン等の石油類に属する化合物として取り扱いが可能であることが適当である。これらの観点からは、飽和炭化水素を側鎖に持つ第3級炭素を有する単環式飽和炭化水素は、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、多環式飽和炭化水素は、デカリンであることが適当である。メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、デカリンから水素が完全に脱離した化合物は、トルエン、キシレン、ナフタレンである。
図3は、有機ハイドライド溶液中のクロラニルのn量体(n≧1)の構造式の一例を示す図である。図3(a)には、クロラニルの1量体の構造式が示されている。図3(b)には、クロラニルの2量体の構造式が示されている。図3(c)には、クロラニルの3量体の構造式が示されている。
有機ハイドライド溶液中のクロラニルのn量体(n≧1)は、間接電解反応におけるメディエーターとして機能する。
以下、クロラニルのn量体(n≧1)がクロラニルの1量体(以下、クロラニル)である場合を例に取り、図4を参照しながら、クロラニルのメディエーターとしての機能を説明する。
まず、クロラニル(図4(a)参照)は、電気化学的に酸化されることにより、酸化される前に比べて活性化されると考えられる。そして、活性化されたクロラニルは、有機ハイドライドから脱水素反応によって水素を引き抜くことができる。すると、活性化されたクロラニルは、引き抜かれた水素と結合することで、ヒドロキノン体が生成されると考えられる(図4(b)参照)。クロラニルのヒドロキノン体は、その後、電気化学的に酸化され、クロラニルに戻るとともに、水素が、このヒドロキノン体から脱離すると考えられる。
以上の反応は、低温(例えば、室温)で進行する。つまり、本実施形態の脱水素装置100では、低温で、水素化芳香族化合物から水素を脱離させることができる。また、クロラニルのヒドロキノン体が、低温で水素脱離することにより、電気化学的にクロラニルに再生することができる。
有機ハイドライド溶液中の電解質は、本開示の一般式(1)及び(2)で示されるカチオンの少なくとも1種とアニオンとを含む。
具体的には、例えば、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド「Trihexyltetradecylphosphoniumbis (trifluoromethylsulfonyl)imide」等を用いることができるが、これに限定されない。
第2の供給器31は、カソード11にカソード流体を供給する。第2の供給器31は、カソード11に、カソード流体を供給できれば、どのような構成であってもよい。
プロトン伝導体12として、例えば、固体高分子電解質膜を用いる場合、この固体高分子電解質膜は、湿潤状態でプロトン伝導性を示す。よって、この場合、脱水素装置100は、カソード流体を加湿する加湿器32を備える。かかる加湿器32はカソード流体を加湿できれば、どのような構成であってもよい。
例えば、本実施形態の脱水素装置100では、カソード流体を加湿するのにバブリング方式が用いられている。つまり、加湿器32は、液体の水を収容するバブリングタンク(図示せず)を備え、このバブリングタンク中の水にカソード流体を潜らせることにより、カソード流体が加湿される。この場合、第2の供給器31は、バブリングタンク中の水にバブリング方式のキャリアガスを供給する際のキャリアガスの流量を調整する機器である。第2の供給器31として、例えば、マスフローコントローラ、流量調整弁等を挙げることができる。
バブリング方式のキャリアガスとして不活性ガスを用いる場合、カソード流体は不活性ガスを含む。なお、不活性ガスとして、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等の希ガスを挙げることができる。
このようにして、本実施形態の脱水素装置100では、カソード流体を水にバブリングすることで、カソード流体が加湿された後、加湿器32から供給されるカソード流体が、カソード室16を通過するとき、カソード流体がカソード11に接触する。すると、カソード流体中の水分がカソード11からプロトン伝導体12に供給される。これにより、カソード流体を積極的に加湿することで、プロトン伝導体12(例えば、固体高分子電解質膜)を適切に湿潤状態に保つことができる。
電圧印加器40は、アノード10及びカソード11に電圧を印加する。具体的には、電圧印加器40の高電位側端子が、アノード10に接続され、電圧印加器40の低電位側端子が、カソード11に接続されている。電圧印加器40は、アノード10及びカソード11の間に所望の電圧を印加できれば、どのような構成であってもよい。
[動作]
以下、実施形態の水素脱離方法(脱水素装置100の動作)の一例について図2を参照しながら説明する。
なお、以下の脱水素装置100の動作は、図示しない制御器の制御プログラムにより行われても構わない。ただし、以下の動作を制御器で行うことは、必ずしも必須ではない。操作者が、その一部又は全部の動作を行っても構わない。
また、制御器は、制御機能を有するものであれば、どのような構成であっても構わない。制御器は、例えば、演算回路と、制御プログラムを記憶する記憶器と、を備える。演算回路として、例えば、MPU、CPU等が例示される。記憶器として、例えば、メモリが例示される。制御器は、集中制御を行う単独の制御器で構成されていてもよいし、互いに協働して分散制御を行う複数の制御器で構成されていてもよい。
本実施形態の水素脱離方法は、水素化芳香族化合物、キノン、及び本開示のカチオン及びアニオンを含む電解質を含む液体を、脱水素触媒を含むアノードに供給する工程と、アノード及びカソード間に電圧を印加し、水素化芳香族化合物から水素を脱離させる工程と、を備える。
具体的には、タンク20から供給配管を通じて、有機ハイドライド溶液を、アノード室15に供給するとともに、加湿器32から供給配管を通じて、水分含有のカソード流体をカソード室16に供給する。
そして、このとき、電圧印加器40により、アノード10とカソード11の間に、所定の直流電圧が印加される。これにより、有機ハイドライド溶液中の水素化芳香族化合物から水素を脱離される。
アノード10では、有機ハイドライド溶液中の水素化芳香族化合物は、電子及び水素(プロトン)を遊離して芳香族化合物となる。
遊離した電子は、電圧印加器40を介してカソード11へと移動する。プロトンは、プロトン伝導体12からカソード11に移動する。
カソード11では、プロトンと電子とによる還元反応が行われ、水素ガスが生成される。
なお、アノード室15を通過した有機ハイドライド溶液は、水素化芳香族化合物を含み、図2に示すように、排出配管と通じてタンク20に戻してもよいし、図示しない他のタンクに送ってもよい。芳香族化合物は、水素化を行うことで有機ハイドライドとして再利用できる。
(実施例3)
本実施例の脱水素装置100及び水素脱離方法では、水素化芳香族化合物としてメチルシクロヘキサン(MCH)を、電解質として[P((CH25CH33((CH213CH3)][N(SO2CF32](トリヘキシルテトラデシルホスホニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)を、メディエーターとしてクロラニルの1量体(以下、クロラニル)を、バブリング方式のキャリアガスとしてアルゴンガスを、それぞれを用いた。
また、タンク20内には、MCH、電解質及びクロラニルの重量比が62:21:0.1になるよう調整された有機ハイドライド溶液を収容した。つまり、溶媒を用いずに、液体のMCHに、クロラニルを溶かして得られた高濃度の有機ハイドライド溶液を用いた。
評価セルの仕様は以下の通りである。
・プロトン伝導体12:電極面積が20mm角であるNafion NR−21(厚みが約50μm)
・アノード10:カーボン担持のPt電極
・カソード11:カーボン担持のPt−Ru電極
脱水素装置100の環境温度を室温に保ち、有機ハイドライド溶液を2ccmの流量でアノード室15に送るとともに、バブリングにより加湿されたアルゴンガスを200sccmの流量でカソード室16に送った。
カソード室16を通過したアルゴンガスが流れる排出配管には、図示しない四重極型質量分析計を設けた。そして、電圧印加器40により、評価セルに印加する直流電圧を0Vから1.1Vまで徐々に上昇させた。
なお、以上の実験条件は例示であって、本例に限定されない。
図5は、評価セルへの印加電圧と四重極型質量分析計による水素の計測電流値との関係を示す。図5に示すように、単セルで約0.9Vの直流電圧を評価セルに印加すると、四重極型質量分析計によるガス分析により、水素の生成が開始されることが確認できた。
図6は、評価セルへの印加電圧と評価セルに流れる電流との関係を示す。図6に示すように、図5で水素の生成が認められる0.9V以上の電圧を印加しているときに、評価セル内に電流が継続的に流れていることが示される。0.9V前後で評価セルに流れる相対的に大きな電流及び0.9Vよりも低い電圧を印加しているときに評価セルに流れる電流は、電極表面に電気2重層が形成される際に流れる電流であると推測される。
また、図7は、実験前と実験後でのアノード室15内の溶液中のトルエンをGC−MS(ガスクロマトグラフ−質量分析計)で検出した結果を示す。なお、図7に示す実験後の結果は、図5に示す、評価セルに電圧印加を3000秒行う実験を30サイクル繰返した後のアノード室の溶液中のトルエンをGC−MSで検出した結果である。
図7に示すように実験後にアノードガス中の溶液中のトルエンの量が増加していることが分かる。
具体的には、実験前に、アノード室15内の溶液をGC−MS(ガスクロマトグラフ−質量分析計)で分析したところ、トルエンの検出量が3.9ppmであった。また、実験後に、アノード室15を通過した溶液をGC−MS(ガスクロマトグラフ−質量分析計)で分析したところ、トルエンの検出量が、60.9ppmとなり、実験前に比べて、15倍となった。上記実験により、MCHの脱水素反応の生成物であるトルエンが生成したことを確認できた。
(実施例4)
図8は、実施例で用いた脱水素装置200の一例を示す模式図を示す。図8に示すように、30mLのアセトニトリル(和光純薬工業(株)、75−05−8)を溶媒に、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(シグマアルドリッチ社製、純度95.0%以上)(0.1mol/L)、DDQ(東京化成工業株式会社、84−58−2)(6mmol/L)、メチルシクロヘキサン(図中ではMCHと記載、和光純薬工業株式会社108−87−2)(600mmol/L)を混合し、スターラーで均一に攪拌させ、試料液112を調製した。調製した試料液112を密閉容器111に導入し、CV装置115に接続された対極113(Pt)および作用極114(Pt)を浸漬した。なお、本例のCV装置115では、参照電極(Pt)も用いた。CV装置115によって、走査電位−2.0〜+0.4V、走査速度0.5V/S、常温でサイクリック・ボルタンメトリー測定を行った。また、CV装置115で、試料液112を攪拌しながら0.28V印加したとき、電圧印加時間に対する試料液112中のトルエン濃度の変化をGC−MS(ガスクロマトグラフィ−)で測定した。なお、上記トルエン濃度に対応する値として、GCで測定された各成分の面積値をそのまま使用し、トルエンの面積及びMCHの面積の和に対するトルエンの面積の比率(以下、トルエン面積比(%))とした。
また、実施例4のサイクリック・ボルタンメトリー測定の結果を図9に、GC(ガスクロマトグラフィ−)によるトルエン濃度変化の測定結果を図10に示す。なお、図9の結果は、参照電極(Pt)の標準電極電位(1.188V)で修正した結果である。
また、図9で示されるように、実施例4の有機ハイドライドを含む試料では、0.2V及び0.6V付近にDDQの第1の酸化のピークが見られる。また、1V付近でDDQの第2の酸化ピークが現れる。還元側では、0.1V付近と0.8V付近で還元ピークが見られる。第1の酸化のピークでは、0.2Vのピークから、電流値があまり低下することなく、0.6Vのピークにつながっている。これは、DDQの酸化とは別な1以上の反応が続けて生じていることを示していると考えられる。また、メチルシクロヘキサンは安定な化合物であり、0〜1V程度の電圧では酸化されない。これらの結果から、実施例4の試料では、酸化された状態のDDQが、常温でメチルシクロヘキサンから水素を引き抜く脱水素反応が生じ、メチルシクロヘキサンに炭素−炭素二重結合が生成していると考えられる。0.2Vから1Vにかけて、電流値があまり低下していないことを考慮すると、脱水素反応は、逐次生じていると考えられる。
また、図10では、トルエンの面積比(%)が電圧印加時間の経過とともに増加していることから、酸化された状態のDDQにより、常温でメチルシクロヘキサンが脱水素反応を経て、トルエンが生成していると考えられる。
以上により、本開示のカチオン及びアニオンを含む電解質を用いることで、有機ハイドライトの脱水素反応を適切に行い得る。
なお、本実施の形態に示す脱水素反応では、脱水素剤であるキノン(クロラニル)を使用したが、これは、脱水素反応の低電圧化のために用いている。従って、脱水素剤としてのキノンは、脱水素反応において必ずしも必要としない。
また、上記実施の形態では、有機ハイドライドの種々の電気化学的反応の一例として、有機ハイドライドを含む液体に電圧を印加して脱水素する方法について、例示したが、これに限定されない。例えば、有機ハイドライドを燃料電池の燃料として燃料電池のアノードの電極反応に利用して、脱水素してもよい。この燃料電池では、有機ハイドライドを含む液体への電圧印加を必要としない。
本開示の脱水素方法、水素供給溶液及び脱水素装置は、種々の電気化学的反応を利用した有機ハイドライドによる水素の供給に利用可能である。また、種々の電気化学的反応を利用した有機ハイドライドによる水素の貯蔵にも利用可能である。
10 :アノード
11 :カソード
12 :プロトン伝導体
15 :アノード室
16 :カソード室
20 :タンク
21 :第1の供給器
31 :第2の供給器
32 :加湿器
40 :電圧印加器
100 :脱水素装置
111 :密閉容器
112 :試料液
113 :対極
114 :作用極
115 :CV装置
200 :脱水素装置

Claims (8)

  1. 水素化芳香族化合物と、[P((CH2mCH33((CH2nCH3)(5≦m≦24,13≦n≦24)]、および、[N((CH2mCH33((CH2nCH3)(5≦m≦24,13≦n≦24)]の少なくとも一方と、[N(SO 2 CF 3 2 、および、[[(CH 3 3 CCH 2 CH(CH 3 )CH 2 ]PO 2 の少なくとも一方とを含む溶液を陰極に接触させる工程と、
    前記水素化芳香族化合物から水素を脱離させる工程とを包含する、脱水素方法。
  2. 前記水素化芳香族化合物はシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、デカリンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の水素を脱離するための脱水素方法。
  3. 前記溶液は、[P((CH25CH33((CH213CH3)]または[N((CH25CH33((CH213CH3)]を100mmol/L以上の濃度で含む請求項1または2に記載の脱水素方法。
  4. 前記溶液に電圧を印加し、前記水素化芳香族化合物から水素を脱離させる請求項1からのいずれか1項に記載の脱水素方法。
  5. 水素化芳香族化合物と、
    [P((CH2mCH33((CH2nCH3)(5≦m≦24,13≦n≦24)]、および、[N((CH2mCH33((CH2nCH3)(5≦m≦24,13≦n≦24)]の少なくとも一方と、
    [N(SO 2 CF 3 2 、および、[[(CH 3 3 CCH 2 CH(CH 3 )CH 2 ]PO 2 の少なくとも一方と
    を含む水素供給溶液。
  6. 前記水素化芳香族化合物はシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、デカリンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項に記載の水素供給溶液。
  7. 前記溶液は、[P((CH25CH33((CH213CH3)]または[N((CH25CH33((CH213CH3)]を100mmol/L以上の濃度で含む請求項またはに記載の水素供給溶液。
  8. 請求項のいずれか1項に記載の水素供給溶液を収容する収容室と、
    前記収容室の前記水素供給溶液と接している陰極と、陽極と、
    を備える脱水素装置。
JP2017094644A 2016-06-20 2017-05-11 脱水素方法、水素供給溶液及び脱水素装置 Active JP6909972B2 (ja)

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016121430 2016-06-20
JP2016121430 2016-06-20
JP2017010454 2017-01-24
JP2017010454 2017-01-24

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018119205A JP2018119205A (ja) 2018-08-02
JP6909972B2 true JP6909972B2 (ja) 2021-07-28

Family

ID=58873747

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017094644A Active JP6909972B2 (ja) 2016-06-20 2017-05-11 脱水素方法、水素供給溶液及び脱水素装置

Country Status (3)

Country Link
US (1) US10556794B2 (ja)
EP (1) EP3260577B1 (ja)
JP (1) JP6909972B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109321940A (zh) * 2018-11-30 2019-02-12 西南大学 一种酰胺的电化学氧化合成方法及其应用

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4652695B2 (ja) 2004-01-30 2011-03-16 千代田化工建設株式会社 水素化芳香族類の脱水素触媒及びその製造方法
EA201101062A1 (ru) * 2009-01-15 2012-02-28 Фту Холдинг Гмбх Способ применения ионной жидкости для хранения водорода
US20110171119A1 (en) * 2009-12-14 2011-07-14 Rachid Yazami Hydrogen storage and/or generation
JP6292383B2 (ja) * 2014-02-07 2018-03-14 パナソニックIpマネジメント株式会社 脱水素化装置

Also Published As

Publication number Publication date
EP3260577A1 (en) 2017-12-27
EP3260577B1 (en) 2019-08-07
US10556794B2 (en) 2020-02-11
JP2018119205A (ja) 2018-08-02
US20170362085A1 (en) 2017-12-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Banerjee et al. Modulating the electrode–electrolyte interface with cationic surfactants in carbon dioxide reduction
Piao et al. Ion‐Enhanced Conversion of CO2 into Formate on Porous Dendritic Bismuth Electrodes with High Efficiency and Durability
Zhang et al. Regulating* OCHO intermediate as rate‐determining step of defective oxynitride nanosheets enabling robust CO2 electroreduction
JP4907745B2 (ja) 二酸化炭素を還元する方法
WO2021045206A1 (ja) アンモニアの製造方法及び製造装置
JP6096129B2 (ja) 電気化学還元装置および、芳香族炭化水素化合物の水素化体の製造方法
Ni et al. Deciphering electrolyte selection for electrochemical reduction of carbon dioxide and nitrogen to high‐value‐added chemicals
Ejigu et al. The role of adsorbed ions during electrocatalysis in ionic liquids
Amaral et al. Electrochemistry of hydrogen evolution in ionic liquids aqueous mixtures
Hailu et al. Efficient conversion of CO2 to formate using inexpensive and easily prepared post-transition metal alloy catalysts
JP2014167151A (ja) ダイヤモンド電極を用いる電気化学的還元装置
CA2530146A1 (en) Electrolytic hydrogen production method and related systems and electrolytes
EP3257971B1 (en) Hydrogen desorption method
Yang et al. Nanoporous Intermetallic SnTe Enables Efficient Electrochemical CO2 Reduction into Formate via Promoting the Fracture of Metal–Oxygen Bonding
Wei et al. Boosting the performance of positive electrolyte for VRFB by employing zwitterion molecule containing sulfonic and pyridine groups as the additive
Abdinejad et al. Insertion of MXene‐Based Materials into Cu–Pd 3D Aerogels for Electroreduction of CO2 to Formate
Chen et al. Fe2+/Fe3+ Cycling for Coupling Self‐Powered Hydrogen Evolution and Preparation of Electrode Catalysts
WO2013111586A1 (ja) 電気化学還元装置および、芳香族炭化水素化合物または含窒素複素環式芳香族化合物の水素化体の製造方法
JP6909972B2 (ja) 脱水素方法、水素供給溶液及び脱水素装置
JP2020198289A (ja) 三層系電解液を含む電気化学デバイス
Mehri et al. Evaluation of the membrane efficiency of both Nafion and sulfonated poly (ether ether ketone) using electrochemical membrane reactor toward desulfurization of a model diesel fuel
Yi et al. Hollow Nanowire Constructed by NiCo Doped RuO2 Nanoparticles for Robust Hydrogen Evolution at High‐Current‐Density
JPWO2011135782A1 (ja) 二酸化炭素を還元する方法
WO2021054445A1 (ja) 有機ハイドライド生成システムの制御方法および有機ハイドライド生成システム
Liu et al. Ionic liquids as a new cornerstone to support hydrogen energy

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200413

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210203

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210209

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210326

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210615

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210617

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6909972

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151