<発明者の得た知見>
まず、従来のケーブル終端接続構造として、比較例1および2について説明する。
(比較例1)
図9は、比較例1に係るケーブル終端接続構造の一部を拡大した断面図である。
図9では、比較例1のケーブル終端接続構造91のうち、碍管(不図示)の鉛直下端側の封止部を示している。比較例1のケーブル終端接続構造91は、例えば、碍管と、フランジ951と、を有している。
碍管内には、一端から軸方向に段階的に剥がされた電力ケーブル100が挿入されている。電力ケーブル100のうち露出したケーブル外部半導電層140の外周には、金属筒960が外嵌されている。金属筒960の軸方向の両端は、それぞれシール部により、ケーブル外部半導電層140との間(の間隙)が封止された状態でケーブル外部半導電層140に固定されている。碍管内の電力ケーブル100との間には、絶縁媒体(例えば絶縁油)が充填されている。
フランジ951は、リング状に構成され、碍管の鉛直下端部に碍管の周方向に沿って固定されている。また、フランジ951は、電力ケーブル100の外周を囲み、電力ケーブル100との間がパッキン(Oリング)(符号不図示)を介して封止された状態で設けられている。
比較例1によれば、フランジ951は、電力ケーブル100との間が封止された状態を維持しながら電力ケーブル100の軸方向の伸び出しを許容するよう構成されている。例えば、電力ケーブル100が通電され、ジュール熱によって電力ケーブル100が軸方向に伸長した場合に、碍管内の絶縁媒体の封止性を維持しつつ、電力ケーブル100の一部を碍管内から伸び出させることができる。
しかしながら、比較例1では、碍管内で電力ケーブルの地絡等が生じ、碍管内の絶縁媒体が加熱された場合に、碍管内の絶縁媒体が膨張し、碍管内の絶縁媒体の圧力が過剰に上昇してしまうおそれがあった。
(比較例2)
図10は、比較例2に係るケーブル終端接続構造の一部を拡大した断面図である。
図10では、比較例2のケーブル終端接続構造92のうち、碍管の鉛直下端側の封止部を示している。比較例2では、比較例1と異なる点について説明する。
比較例2のケーブル終端接続構造92は、例えば、碍管と、フランジ951と、ストッパ953と、を有している。電力ケーブル100に外嵌される金属筒960は、径方向に拡径した拡径部962を有している。ストッパ953は、フランジ951に固定され、金属筒960の拡径部962をフランジ951に係止している。
比較例2によれば、ストッパ953は、拡径部962に加わる絶縁媒体の圧力が所定値未満であるときに金属筒960の鉛直下方向の移動を規制し、拡径部962に加わる絶縁媒体の圧力が所定値以上に達したときに変形することで金属筒960の鉛直下方向の移動を許容するよう構成されている。これにより、碍管内で電力ケーブルの地絡等が生じ、碍管内の絶縁媒体が加熱された場合に、金属筒960のシール部を剥がし、金属筒960を鉛直下方向に移動させ、フランジ951と拡径部962との間から絶縁媒体の一部を解放することができる。その結果、碍管内の絶縁媒体の過剰な圧力上昇を抑制することができる。
しかしながら、比較例2では、電力ケーブル100が通電され、ジュール熱によって電力ケーブル100が軸方向に伸長した場合に、金属筒960の拡径部962がストッパ953に引っ掛かる可能性があった。このため、電力ケーブル100の伸び出し量が大きい場合には、金属筒960のシール部が破れ、碍管内の絶縁媒体の封止性が低下するおそれがあった。
以下で説明する本発明は、本発明者が見出した上記した新規課題に基づくものである。
<本発明の一実施形態>
(1)ケーブル終端接続構造
本発明の一実施形態に係るケーブル終端接続構造について、図1〜図3を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る電力ケーブルの軸方向と直交する断面図である。図2は、本実施形態に係るケーブル終端接続構造を示す断面図である。図3は、本実施形態に係るケーブル終端接続構造の一部を拡大した断面図である。なお、図3は、図2のA部の拡大断面図である。
以下の説明において、電力ケーブル100または碍管200の「軸方向」とは、電力ケーブル100または碍管200の中心軸の方向のことをいい、「長手方向」と言い換えることができる。また、電力ケーブル100または碍管200の「径方向」とは、電力ケーブル100または碍管200の中心軸から外周に向かう方向のことをいい、場合によっては「短手方向」と言い換えることができる。また、電力ケーブル100または碍管200の「周方向」とは、電力ケーブル100または碍管200の、外周または内周に沿った方向のことをいう。
図2に示すように、本実施形態のケーブル終端接続構造(気中終端接続部、気中終端接続箱)10は、電力ケーブル100と架空送電線(不図示)等とを接続するよう構成され、例えば、碍管200と、導体固定部320と、下側封止部50と、防護管340と、を有している。
(電力ケーブルおよび付属部材)
まず、図1および図2を用い、ケーブル終端接続構造10において終端接続される電力ケーブル100およびその付属部材について説明する。
図1に示すように、電力ケーブル100は、高電圧の地中送電線として用いられるCVケーブル(Crosslinked polyethylene insulated PVC sheathed cable、XLPEケーブルともいう)として構成され、例えば、中心軸から外周に向けて、ケーブル導体110、ケーブル内部半導電層120、ケーブル絶縁体130、ケーブル外部半導電層140、ケーブル金属被(ケーブル金属遮蔽層)150、およびケーブルシース160を有している。
図2に示すように、電力ケーブル100は、一端から軸方向に段階的に剥がされている(段剥ぎされている)。すなわち、ケーブル導体110、ケーブル絶縁体130およびケーブル外部半導電層140は、電力ケーブル100の一端側からこの順で露出している。段階的に剥がされた電力ケーブル100には、例えば、導体引出棒310と、絶縁筒(ストレスリリーフコーン、プレモールド絶縁体)400と、金属筒(油止金具)600と、が付属(装着)されている。電力ケーブル100は、ケーブル終端接続構造10において、鉛直方向に沿って立ち上げられることとなる。
導体引出棒310は、一端に架空送電線等が接続されるよう構成されている。導体引出棒310の一端と反対の基端側には、露出したケーブル導体110の一端が圧縮接続されている。ケーブル導体110の一端と導体引出棒310との接続部には、これらの間を封止するシール部(符号不図示)が設けられている。
絶縁筒400は、電力ケーブル100の周囲の電界を緩和するよう構成されている。すなわち、絶縁筒400は、電力ケーブル100の外周に外嵌され(電力ケーブル100の外周を囲むように設けられ)、露出したケーブル外部半導電層140の一端周辺の電界を緩和するよう構成されている。具体的には、絶縁筒400は、例えば、軸方向の一方に設けられる絶縁体420と、軸方向の他方に設けられる半導電層440と、を有し、これらが一体として筒状にモールド成形されることにより構成されている。絶縁体420は、例えば、絶縁性ゴムからなっている。絶縁性ゴムとしては、例えば、エチレンプロピレンゴムまたはシリコーンゴムが挙げられる。一方、半導電層440は、例えば、半導電性ゴムからなっている。半導電性ゴムとしては、例えば、エチレンプロピレンゴムまたはシリコーンゴムとカーボンブラックとを含むものが挙げられる。また、半導電層440は、テーパ形状を有しており、絶縁筒400の半導電層440側の他端から絶縁体420側の一端に向かう方向に絶縁筒400の内周面から徐々に離れて拡径するように設けられている。絶縁筒400が電力ケーブル100の外周に外嵌されるとき、絶縁体420は、露出したケーブル絶縁体130の外周面と接し、半導電層440は、露出したケーブル外部半導電層140の外周面と接する。また、半導電層440は、ケーブル外部半導電層140の一端からケーブル導体110の一端に向かう方向に電力ケーブル100の外周から徐々に離れて拡径するように配置される。これにより、露出したケーブル外部半導電層140の周辺において、等電位線を均等に分布させ、電界集中を抑制することができる。
金属筒600は、露出したケーブル外部半導電層140のうち絶縁筒400の鉛直下側において、電力ケーブル100を囲むように設けられている。金属筒600の軸方向の下端には、下側シール部620が設けられ、金属筒600の軸方向の上端には、上側シール部640が設けられている。下側シール部620および上側シール部640のそれぞれは、金属筒600と電力ケーブル100との間に後述する絶縁媒体20が浸入することを抑制するよう構成され、例えば、粘着層付き封止テープまたは収縮性封止チューブ等からなっている。金属筒600は、下側シール部620および上側シール部640のそれぞれによって、ケーブル外部半導電層140との間(の間隙)が封止された状態で、ケーブル外部半導電層140に固定されている。
(碍管)
碍管200は、電力ケーブル100の外周を囲むように設けられ、段階的に剥がされた電力ケーブル100の周辺の絶縁性を確保するよう構成されている。碍管200は、例えば、磁器またはポリマにより構成されている。
碍管200は、鉛直方向に沿って立設され、架台(不図示)等に固定されている。碍管200内には、導体引出棒310の一部と、段階的に剥がされた電力ケーブル100と、絶縁筒400と、金属筒600の一部とが挿入されている。電力ケーブル100は、碍管200に沿って直線状に配置され、碍管200の軸方向から見て、碍管200の中心に配置されている。
碍管200内のうち、碍管200の内周面と、電力ケーブル100、絶縁筒400および金属筒600のそれぞれとの間には、絶縁媒体20が充填されている。絶縁媒体20は、例えば、絶縁油または絶縁ガスである。絶縁媒体20が絶縁油である場合、碍管200内の絶縁媒体20の圧力(油圧)は、例えば、大気圧以上0.5MPa以下である。なお、この場合、碍管200内の全体に亘って絶縁媒体20としての絶縁油が充填されているのではなく、その鉛直上側一部に例えば空気または絶縁ガスを含む気体層(符号不図示)が設けられている。これにより、絶縁油の膨張や収縮による圧力変化を気体層により吸収させることができる。なお、絶縁ガスは、例えば、六フッ化硫黄(SF6)である。
また、碍管200は、径方向に拡径した複数の鍔部(ひだ部)210を有している。複数の鍔部210は、碍管200の軸方向に所定の間隔で配置されている。これにより、導体引出棒310とアースとの間の絶縁距離(沿面距離)が確保されている。
(導体固定部および付属部材)
導体固定部320は、碍管200の鉛直上端部に設けられ、導体引出棒310(ケーブル導体110の一端側)を固定している。導体固定部320は、碍管200の軸方向から見て、導体引出棒310を碍管200の中心に固定している。
また、導体固定部320の上側には、上部覆い330が設けられている。これにより、雨水が導体固定部320と導体引出棒310との接続部を介して碍管200内に浸入することが抑制されている。
(下側封止部)
図2および図3に示すように、本実施形態の下側封止部50は、二重フランジ構造により碍管200の鉛直下端側の開口を封止する(塞ぐ)よう構成され、例えば、外側フランジ510と、内側フランジ520と、ストッパ530と、を有している。
(外側フランジ)
外側フランジ510は、リング状(円筒リング状)に構成され、中心に開口を有している。外側フランジ510は、碍管200の鉛直下端部に碍管200の周方向に沿って配置され、ボルト(符号不図示)によって碍管200の鉛直下端部に固定されている。外側フランジ510は、中心軸が碍管200の中心軸と一致するよう配置されている。
本実施形態では、外側フランジ510の内径は、例えば、碍管200の内径よりも小さい。つまり、外側フランジ510は、例えば、碍管200の径方向の内側に延在している。
図3に示すように、外側フランジ510は、上側開口よりも縮径した下側開口(符号不図示)を有している。外側フランジ510の径方向の内側には、該外側フランジ510の周方向に沿ってリング状のパッキン514が設けられている。パッキン514は、外側フランジ510の下側開口に係止されている。一方、外側フランジ510の鉛直上側には、該外側フランジ510の周方向に沿ってリング状の締付金具512が設けられている。締付金具512は、ボルト(符号不図示)によって外側フランジ510に固定され、外側フランジ510とともにパッキン514を圧縮して挟持している。
(内側フランジ)
内側フランジ520は、リング状(円筒リング状)に構成され、中心に開口を有している。例えば、内側フランジ520の外径は、外側フランジ510の内径よりも若干小さく、内側フランジ520の内径は、金属筒600の外径よりも若干大きくなっている。
内側フランジ520は、外側フランジ510の径方向の内側に外側フランジ510との間が封止された状態で設けられている。具体的には、上述のパッキン514が内側フランジ520の外周を囲み、内側フランジ520の外周面に密着している。これにより、内側フランジ520と外側フランジ510との間がパッキン514を介して(油密に)封止されている。
なお、上述のように、内側フランジ520が外側フランジ510の中心の開口内に密に配置されることにより、内側フランジ520の中心軸は、碍管200の中心軸および外側フランジ510の中心軸と一致することとなる。
また、内側フランジ520は、電力ケーブル100の外周を囲み、電力ケーブル100との間が封止された状態で設けられている。具体的には、例えば、内側フランジ520は、内側凹溝524を有している。内側凹溝524は、内側フランジ520の内周面から径方向の外側に向かう方向に凹んでいる。また、内側凹溝524は、内側フランジ520の内周面の周方向に沿って内周全体に亘って設けられている。内側凹溝524内には、該内側凹溝524の周方向に沿ってパッキン526が嵌合されている。パッキン526の鉛直上下両側は、内側フランジ520の内側凹溝524によって挟み込まれ、パッキン526は、内側凹溝524の内壁に密着している。また、パッキン526は、電力ケーブル100の外周を囲み、金属筒600の外周面に密着している。これにより、内側フランジ520と電力ケーブル100との間が金属筒600およびパッキン526を介して(油密に)封止されている。
上述の構成により、内側フランジ520は、電力ケーブル100との間が封止された状態を維持しながら、電力ケーブル100の軸方向の少なくとも伸び出しを許容するようになっている。本実施形態の内側フランジ520は、電力ケーブル100との間が封止された状態を維持しながら、電力ケーブル100の軸方向の伸縮の両方を許容するようになっている。この点については、詳細を後述する。
なお、上述のように、電力ケーブル100が内側フランジ520の中心の開口内に密に配置されることにより、電力ケーブル100の中心軸は、碍管200の中心軸、外側フランジ510の中心軸および内側フランジ520の中心軸と一致することとなる。つまり、絶縁筒400等が装着された電力ケーブル100は、碍管200の軸方向から見て、碍管200の中心に配置されることとなる。また、電力ケーブル100および絶縁筒400は、それぞれ、碍管200の内周面から所定間隔だけ離れ、碍管200の内周面と非接触に配置されることとなる。
また、本実施形態では、内側フランジ520は、後述のストッパ530が嵌合する嵌合部522を有している。嵌合部522は、ストッパ530の鉛直上下両側を挟むよう構成されている。具体的には、嵌合部522は、例えば、内側フランジ520の外側凹溝として構成されている。すなわち、嵌合部522は、内側フランジ520の外周面から径方向の内側に向かう方向に凹んでいる。内側フランジ520の軸方向に直交する断面では、嵌合部522は、C字状となっている。また、嵌合部522は、例えば、内側フランジ520の外周面の周方向に沿って外周全体に亘って設けられている。
また、本実施形態では、内側フランジ520の径方向の幅は、例えば、外側フランジ510のうち絶縁媒体20が当接する部分の径方向の幅よりも広い。これにより、絶縁媒体20の圧力によって内側フランジ520に加わる力を、外側フランジ510に加わる力よりも大きくすることができる。つまり、絶縁媒体20の圧力による力を内側フランジ520に集中させることができる。その結果、後述の碍管200内の絶縁媒体20の過剰な圧力上昇を抑制する制御性を向上させることができる。
(ストッパ)
ストッパ530は、内側フランジ520を外側フランジ510に係止するよう構成されている。ストッパ530は、例えば、内側フランジ520に加わる絶縁媒体20の圧力が所定値未満であるときに内側フランジ520の少なくとも鉛直下方向の移動を規制し、内側フランジ520に加わる絶縁媒体20の圧力が所定値以上に達したときに変形することで内側フランジ520の鉛直下方向の移動を許容するよう構成されている。
本実施形態では、ストッパ530は、例えば、内側フランジ520に加わる絶縁媒体20の圧力が所定値未満であるときに内側フランジ520の鉛直上下方向のそれぞれの移動を規制するよう構成されている。
具体的には、ストッパ530は、例えば、外側フランジ510から該外側フランジ510の径方向の内側に延在するよう設けられている。ストッパ530のうち外側フランジ510の径方向の内側に延在した部分は、内側フランジ520の嵌合部522内に嵌合している。ストッパ530のうち外側フランジ510の径方向の内側に延在した部分の鉛直上下両側は、嵌合部522に挟み込まれている。これにより、内側フランジ520に加わる絶縁媒体20の圧力が所定値未満であるときに、内側フランジ520が鉛直上方向に移動した場合には、ストッパ530が嵌合部522の下側内壁に当接し、一方で、内側フランジ520が鉛直下方向に移動した場合には、ストッパ530が嵌合部522の上側内壁に当接するようになっている。その結果、内側フランジ520の鉛直上下方向のそれぞれの移動を規制することができる。
また、ストッパ530は、例えば、リング状に構成されている。ストッパ530の内径は、外側フランジ510の内径よりも小さくなっている。ストッパ530は、外側フランジ510の鉛直下側に該外側フランジ510の周方向に沿って配置されている。ストッパ530は、内側フランジ520の外周全体に亘って嵌合部522内に嵌合している。これにより、ストッパ530により内側フランジ520を外側フランジ510に均等に係止することができ、内側フランジ520の傾斜を抑制することができる。
また、ストッパ530は、例えば、板状に構成されている。板状のストッパ530は、内側フランジ520に加わる絶縁媒体20の圧力が所定値以上に達したときに折れ曲がることで内側フランジ520の鉛直下方向の移動を許容するようになっている。なお、ストッパ530が変形する(折れ曲がる)ときの、碍管200内の絶縁媒体20の圧力(ストッパ破壊強度)は、例えば、1MPaである。内側フランジ520に加わる絶縁媒体20の圧力が所定値以上に達したときの挙動については、詳細を後述する。
また、ストッパ530は、例えば、外側フランジ510と別体として設けられている。ストッパ530は、例えば、外側フランジ510の鉛直下側にボルト(符号不図示)によって固定されている。さらに、ストッパ530は、例えば、平面視で略扇形に複数分割されたストッパピース(符号不図示)を有している。なお、本実施形態のストッパ530は、例えば、2分割されたストッパピースを有している。複数のストッパピースは、例えば、外側フランジ510の鉛直下側に外側フランジ510の周方向に沿うように並べられることで、リング状のストッパ530を構成している。これにより、ストッパ530を容易に後付けすることができる。すなわち、内側フランジ520を、外側フランジ510の径方向の内側に外側フランジ510との間が封止された状態で配置した後に、ストッパ530により内側フランジ520を外側フランジ510に容易に係止させることができる。また、その際に、ストッパ530を、内側フランジ520の外周全体に亘って嵌合部522内に容易に嵌合させることができる。
なお、ストッパ530が内側フランジ520を外側フランジ510に係止することで、内側フランジ520は、ストッパ530を介して、外側フランジ510とともに接地されている。なお、内側フランジ520は、例えば、編組線を介して、外側フランジ510とともに接地されていてもよい。
(防護管)
図2に示すように、防護管340は、露出したケーブル外部半導電層140と下側封止部50(の下側)とを保護するよう構成されている。具体的には、防護管340は、例えば、略筒状の金属管として構成され、下側封止部50の鉛直下側で露出したケーブル外部半導電層140と下側封止部50とを覆うように設けられている。防護管340の上側は、例えば、ボルト(符号不図示)によって外側フランジ510に固定されている。一方、防護管340の下側と電力ケーブル100との間は、防護管シール部350によって封止されている。
(2)碍管内の絶縁媒体の圧力が上昇した場合について
次に、図4を用い、碍管200内の絶縁媒体20の圧力が上昇した場合について説明する。図4は、碍管内の絶縁媒体を解放したときのケーブル終端接続構造の一部を拡大した断面図である。
本実施形態のケーブル終端接続構造10では、碍管200内の絶縁媒体20の圧力が通常の圧力であるとき、すなわち、内側フランジ520に加わる絶縁媒体20の圧力が所定値未満であるとき、ストッパ530は、内側フランジ520の鉛直下方向の移動を規制している。これにより、下側封止部50の封止性が維持され、碍管200内からの絶縁媒体20の漏洩が抑制されている。
一方、碍管200内で電力ケーブル100の地絡等が生じると、碍管200内の絶縁媒体20が加熱される。このため、碍管200内の絶縁媒体20の圧力が上昇し、内側フランジ520に加わる絶縁媒体20の圧力が上昇する。
図4に示すように、本実施形態のケーブル終端接続構造10では、碍管200内の絶縁媒体20の圧力が大きく上昇したとき、すなわち、内側フランジ520に加わる絶縁媒体20の圧力が所定値以上に達したとき、ストッパ530は、変形することで、内側フランジ520の鉛直下方向の移動を許容する。
具体的には、内側フランジ520に加わる絶縁媒体20の圧力が所定値以上に達したとき、絶縁媒体20の圧力によって内側フランジ520に対して鉛直下方向に加わる力が大きくなる。このとき、外側フランジ510は碍管200に固定されているため、外側フランジ510に対して内側フランジ520のみが相対的に鉛直下方向に移動し始める。外側フランジ510に対する内側フランジ520の相対的な移動が始まると、ストッパ530に対して厚さ方向にせん断力が加わる。ストッパ530に所定のせん断力が加わると、ストッパ530のうち外側フランジ510に固定された部分に対して、内側フランジ520の嵌合部522内に嵌合した部分が折れ曲がる。ストッパ530が折れ曲がると、ストッパ530のうち内側フランジ520の嵌合部522内に嵌合した部分が該嵌合部522から外れ、内側フランジ520を外側フランジ510に係止したストッパ530が解除される。これにより、外側フランジ510に対して内側フランジ520のみが相対的に鉛直下方向にさらに移動することとなる。
外側フランジ510に対して内側フランジ520のみが相対的に鉛直下方向にさらに移動すると、内側フランジ520と外側フランジ510との間を封止していたパッキン514が内側フランジ520から外れる。さらには、内側フランジ520が、外側フランジ510およびストッパ530よりも鉛直下方向に移動する。内側フランジ520が外側フランジ510から鉛直下方向に離れると、外側フランジ510と内側フランジ520との間に間隙が形成される。これにより、外側フランジ510と内側フランジ520との間に形成された間隙から絶縁媒体20の一部を解放することができる。その結果、碍管200内の絶縁媒体20の過剰な圧力上昇を抑制することができる。
このとき、内側フランジ520は、電力ケーブル100との間が封止された状態を維持しながら電力ケーブル100の軸方向の伸縮を許容するよう構成されていることで、上述のように、外側フランジ510に対して内側フランジ520が相対的に鉛直下方向に移動した際に、電力ケーブル100に対しても内側フランジ520を相対的に鉛直下方向に移動させることができる。つまり、内側フランジ520を鉛直下方向に移動させる力が電力ケーブル100に対して加わり難くすることができる。これにより、電力ケーブル100のケーブル導体110の一端側を固定する導体固定部320が外れることを抑制することができる。その結果、碍管200の鉛直上側から絶縁媒体20が飛散する事態を回避することができる。
また、このとき、電力ケーブル100に対して内側フランジ520を相対的に鉛直下方向に移動させることにより、金属筒600と電力ケーブル100との間を封止する下側シール部620および上側シール部640の破断を抑制することができる。これにより、碍管200内の絶縁媒体20を解放した後に、ストッパ530を交換するだけで、ケーブル終端接続構造10を容易に修復することができる。
また、このとき、防護管340により下側封止部50の下側を保護している(塞いでいる)。これにより、外側フランジ510と内側フランジ520との間に形成された間隙から絶縁媒体20の一部を解放したとしても、ケーブル終端接続構造10よりも外側に絶縁媒体20が飛散することを抑制することができる。
(3)電力ケーブルが軸方向に伸縮した場合について
次に、電力ケーブル100が軸方向に伸縮した場合について説明する。
まず、図5を用い、電力ケーブル100が軸方向に伸長した場合について説明する。図5は、電力ケーブルの一部が碍管内から軸方向に伸び出したときのケーブル終端接続構造の一部を拡大した断面図である。
図5に示すように、電力ケーブル100が通電されると、ジュール熱によって電力ケーブル100が軸方向に伸長する。このとき、内側フランジ520は、電力ケーブル100との間が封止された状態を維持しながら、碍管200内からの電力ケーブル100の軸方向の伸び出しを許容する。
具体的には、電力ケーブル100が軸方向に伸長したとき、内側フランジ520の内側凹溝524内に嵌合したパッキン526と金属筒600の外周面とが密着した状態で、金属筒600が該パッキン526内を電力ケーブル100の軸方向に沿って滑るように動く。金属筒600が滑るように動くことで、金属筒600と電力ケーブル100との間を封止する下側シール部620および上側シール部640に対して、過剰な力が加わることを抑制することができ、下側シール部620および上側シール部640の破断を抑制することができる。これにより、内側フランジ520と電力ケーブル100との間が封止された状態を維持しながら、電力ケーブル100の一部を碍管200内から軸方向に伸び出させることができる。
このとき、電力ケーブル100が軸方向に伸び出した際に、パッキン526と金属筒600との間の摩擦力によって、内側フランジ520を鉛直下方向に移動させる力が生じる可能性がある。しかしながら、ストッパ530が内側フランジ520の少なくとも鉛直下方向の移動を規制していることで、内側フランジ520を鉛直下方向に移動させる力が生じたとしても、内側フランジ520が外側フランジ510に対して相対的に鉛直下方向に移動することを抑制することができる。これにより、外側フランジ510と内側フランジ520との間が封止された状態を維持しつつ、内側フランジ520に対して電力ケーブル100のみを相対的に軸方向に移動させることができる。
このようにして、碍管200内の絶縁媒体20の封止性を維持しつつ、電力ケーブル100が軸方向の伸び出しを許容することができる。
次に、電力ケーブル100が軸方向に収縮した場合について説明する。
電力ケーブル100が通電され、ジュール熱によって電力ケーブル100が軸方向に伸び出した後、電力ケーブル100の通電を終了させると、電力ケーブル100が冷やされて、電力ケーブル100が伸び出した状態から収縮することがある。または、ケーブル終端接続構造10周辺の温度が下がり、電力ケーブル100が収縮することも考えられる。このとき、内側フランジ520は、電力ケーブル100との間が封止された状態を維持しながら、碍管200内への電力ケーブル100の軸方向の収縮を許容する。
具体的には、電力ケーブル100が軸方向に収縮したとき、金属筒600は、電力ケーブル100が軸方向に伸長した場合と反対の方向に、パッキン526内を滑るように動く。これにより、電力ケーブル100が軸方向に伸長した場合と同様の原理により、金属筒600と電力ケーブル100との間を封止する下側シール部620および上側シール部640の破断を抑制することができる。その結果、内側フランジ520と電力ケーブル100との間が封止された状態を維持しながら、電力ケーブル100を軸方向に収縮させることができる。例えば、封止性を維持しながら、碍管200内から伸び出していた電力ケーブル100の一部を碍管200内に引き戻すことができる。
このとき、電力ケーブル100が軸方向に収縮した際に、パッキン526と金属筒600との間の摩擦力によって、内側フランジ520を鉛直上方向に移動させる力が生じる可能性がある。しかしながら、本実施形態では、ストッパ530が内側フランジ520の鉛直下方向の移動だけでなく内側フランジ520の鉛直上方向の移動も規制していることで、内側フランジ520を鉛直上方向に移動させる力が生じたとしても、内側フランジ520が外側フランジ510に対して相対的に鉛直上方向に移動することを抑制することができる。これにより、外側フランジ510と内側フランジ520との間が封止された状態を維持しつつ、内側フランジ520に対して電力ケーブル100のみを相対的に軸方向に移動させることができる。
このようにして、碍管200内の絶縁媒体20の封止性を維持しつつ、電力ケーブル100が軸方向の収縮を許容することができる。
以上のように、本実施形態では、電力ケーブル100の軸方向の伸縮の両方を許容することができる。
(4)ケーブル終端接続構造の製造方法(ケーブル終端接続方法)
次に、本実施形態に係るケーブル終端接続構造の製造方法について説明する。
まず、本実施形態のケーブル終端接続構造10を取り付けるための架台を設置する。
次に、終端接続する電力ケーブル100を用意する。該電力ケーブル100を架台から鉛直方向に沿って立設させる。具体的には、架台の周りを囲むように足場を組む。足場を組んだら、電力ケーブル100を鉛直方向に沿って立ち上げる。このとき、足場の支柱間に単管パイプ等で渡りを作り、該渡りに対して電力ケーブル100を固定し、この状態を維持させる。
次に、防護管340を電力ケーブル100に通し、鉛直下側に逃がしておく。
次に、電力ケーブル100を一端から軸方向に段階的に剥がし、ケーブル導体110、ケーブル絶縁体130およびケーブル外部半導電層140を、電力ケーブル100の一端側からこの順で露出させる。
電力ケーブル100を段階的に剥がしたら、電力ケーブル100の外周に、電力ケーブル100との間を封止した状態で、リング状の内側フランジ520を外嵌させる。具体的には、まず、電力ケーブル100の外周に金属筒600を外嵌させ、金属筒600を露出したケーブル外部半導電層140の基端付近に配置する。電力ケーブル100の外周に金属筒600を外嵌させたら、金属筒600の軸方向の下端および上端に、それぞれ、下側シール部620および上側シール部640を形成する。これにより、電力ケーブル100と金属筒600との間を封止するとともに、電力ケーブル100に対して金属筒600を固定する。下側シール部620および上側シール部640を形成したら、内側フランジ520の内側凹溝524内にパッキン526を嵌合させ、金属筒600の外周面にパッキン526を密着させながら、金属筒600の外周に内側フランジ520を外嵌させる。
次に、内側フランジ520の径方向の外側に該内側フランジ520との間を封止した状態で、リング状の外側フランジ510を配置する。具体的には、内側フランジ520の径方向の外側に該内側フランジ520の周方向に沿ってパッキン514を配置する。パッキン514を配置したら、内側フランジ520の外周面にパッキン514を密着させながら、内側フランジ520の外周に外側フランジ510を外嵌させる。外側フランジ510を外嵌させたら、外側フランジ510の鉛直上側に該外側フランジ510の周方向に沿って締付金具512を配置する。これらが配置されたら、締付金具512をボルトによって外側フランジ510に固定し、締付金具512と外側フランジ510とによりパッキン514を圧縮して挟持する。
次に、ストッパ530により内側フランジ520を外側フランジ510に係止させる。具体的には、例えば、略扇形に複数分割されたストッパピースを用意する。複数のストッパピースのそれぞれの径方向の内側を内側フランジ520の嵌合部522内に嵌合させ、ストッパピースのそれぞれの鉛直上下両側を嵌合部522内に挟み込ませる。ストッパピースを嵌合部522内に嵌合させたら、外側フランジ510の鉛直下側に外側フランジ510の周方向に沿うように複数のストッパピースをボルトによって固定することで、リング状のストッパ530を構成する。これにより、ストッパ530が外側フランジ510から該外側フランジ510の径方向の内側に延在するよう形成され、ストッパ530によって内側フランジ520が外側フランジ510に係止される。
金属筒600、内側フランジ520、外側フランジ510およびストッパ530の取り付けが完了したら、予め電力ケーブル100に通しておいた防護管340を、ボルトによって外側フランジ510に固定する。防護管340を固定したら、防護管340の下側と電力ケーブル100との間を防護管シール部350によって封止する。なお、ここでの防護管340の固定等は、金属筒600、内側フランジ520、外側フランジ510およびストッパ530の取り付け、および下側シール部620の形成以降であれば、どのタイミングで実施してもよい。
電力ケーブル100に内側フランジ520、外側フランジ510およびストッパ530を装着したら、電力ケーブル100の外周に絶縁筒400を外嵌させ、絶縁筒400をケーブル外部半導電層140の一端付近に配置する。
絶縁筒400を配置したら、金属筒600の軸方向の上端と絶縁筒400との間に上側シール部640をさらに形成する。
また、ケーブル導体110の一端を導体引出棒310の基端側に圧縮接続する。
次に、電力ケーブル100の外周を囲むように碍管200を配置する。碍管200を配置したら、碍管200の鉛直下端部に碍管200の周方向に沿って外側フランジ510をボルトによって固定する。これにより、碍管200の鉛直下端側の開口が下側封止部50によって封止される(塞がれる)。また、これにより、碍管200が架台に固定される。
次に、例えば以下の手順で、碍管200内に絶縁媒体20を充填する。
碍管200内の真空引きを必要としないタイプ(エアチャンバタイプ)では、碍管200内を真空引きすることなく、大気圧下において、碍管200の鉛直上側から碍管200内の電力ケーブル100との間に絶縁媒体20としての絶縁油を一定量充填する。このとき、碍管200内の全体に絶縁媒体20としての絶縁油を充填せず、碍管200内の鉛直上側の一部に、空気を含む気体層を形成する。
一方、碍管200内の真空引きを必要とするタイプにおいて、碍管200内の鉛直上側が気体層である場合では、まず、碍管200の鉛直上側から碍管200内を真空引きする。碍管200内が充分に排気されたら、碍管200の鉛直下側から碍管200内の電力ケーブル100との間に絶縁媒体20としての絶縁油を一定量充填する。絶縁媒体20が充填されたら、碍管200内に絶縁ガスを所定圧力となるまで注入し、碍管200内の鉛直上側一部に気体層を形成する。
また、碍管200内の真空引きを必要とするタイプにおいて、碍管200内の全てが絶縁媒体20としての絶縁油で満たされる場合では、まず、碍管200の鉛直上側から碍管200内を真空引きする。碍管200内が充分に排気されたら、碍管200の鉛直下側から碍管200内の電力ケーブル100との間に絶縁媒体20としての絶縁油を所定圧力となるまで充填する。これにより、この場合では、碍管200内の全てが絶縁媒体20としての絶縁油で満たされ、碍管200内に気体層が形成されない。
碍管200内への絶縁媒体20の充填が完了したら、導体固定部320により碍管200の上端部にケーブル導体110の一端側を固定する。
導体固定部320を固定したら、導体固定部320の上側に上部覆い330を取り付ける。
以上により、本実施形態のケーブル終端接続構造10が製造される。
(5)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
(a)ストッパ530は、内側フランジ520に加わる絶縁媒体20の圧力が所定値未満であるときに内側フランジ520の少なくとも鉛直下方向の移動を規制し、内側フランジ520に加わる絶縁媒体20の圧力が所定値以上に達したときに変形することで内側フランジ520の鉛直下方向の移動を許容するよう構成されている。これにより、碍管200内で電力ケーブル100の地絡等が生じ、碍管200内の絶縁媒体20の圧力が上昇した場合に、外側フランジ510と内側フランジ520との間に形成された間隙から絶縁媒体20の一部を解放することができる。その結果、碍管200内の絶縁媒体20の過剰な圧力上昇を抑制することができ、碍管200の破裂を回避することができる。
一方で、内側フランジ520は、電力ケーブル100との間が封止された状態を維持しながら、電力ケーブル100の軸方向の少なくとも伸び出しを許容するよう構成されている。これにより、電力ケーブル100が通電され、ジュール熱によって電力ケーブル100が軸方向に伸長した場合に、電力ケーブル100の一部を碍管200内から軸方向に伸び出させることができる。また、ストッパ530が内側フランジ520の少なくとも鉛直下方向の移動を規制していることで、外側フランジ510と内側フランジ520との間が封止された状態を維持することができる。これにより、碍管200内の絶縁媒体20の封止性を維持しつつ、電力ケーブル100の軸方向の少なくとも伸び出しを許容することができる。
このように、本実施形態によれば、碍管200内の絶縁媒体20の過剰な圧力上昇を抑制することと、碍管200内の絶縁媒体20の封止性を維持しつつ電力ケーブル100の軸方向の少なくとも伸び出しを許容することとを両立することができる。その結果、ケーブル終端接続構造10の安全性を向上させることができる。
(b)電力ケーブル100が通電され、ジュール熱によって電力ケーブル100が軸方向に伸長した場合に、碍管200内の電力ケーブル100が碍管200の軸方向の長さよりも長く伸長した伸長分(余長分)を碍管200内から外側に出させることで、碍管200内での電力ケーブル100の撓みを抑制し、電力ケーブル100を直線状に維持することができる。これにより、碍管200内での絶縁筒400の傾斜を抑制し、碍管200内の絶縁筒400の位置を、碍管200の軸方向から見て碍管200の中心に維持することができる。その結果、段階的に剥がされた電力ケーブル100周辺の電界分布が偏ることを抑制し、局所的な電界集中を抑制することができる。
(c)本実施形態では、ストッパ530は、内側フランジ520に加わる絶縁媒体20の圧力が所定値未満であるときに内側フランジ520の鉛直上下方向のそれぞれの移動を規制するよう構成され、内側フランジ520は、電力ケーブル100との間が封止された状態を維持しながら電力ケーブル100の軸方向の伸縮を許容するよう構成されている。例えば、電力ケーブル100が軸方向に収縮した場合に、内側フランジ520を鉛直上方向に移動させる力が生じたとしても、内側フランジ520が外側フランジ510に対して相対的に鉛直上方向に移動することを抑制することができる。これにより、外側フランジ510と内側フランジ520との間が封止された状態を維持しつつ、内側フランジ520に対して電力ケーブル100のみを相対的に軸方向に移動させることができる。その結果、碍管200内の絶縁媒体20の封止性を維持しつつ、電力ケーブル100の軸方向の収縮を許容することができる。つまり、本実施形態では、電力ケーブル100の軸方向の伸縮の両方を許容することが可能となる。
(d)本実施形態では、内側フランジ520は、電力ケーブル100との間が封止された状態を維持しながら電力ケーブル100の軸方向の伸縮を許容するよう構成されていることで、碍管200内の絶縁媒体20の圧力上昇によって、外側フランジ510に対して内側フランジ520が相対的に鉛直下方向に移動した際に、電力ケーブル100に対しても内側フランジ520を相対的に鉛直下方向に移動させることができる。つまり、内側フランジ520を鉛直下方向に移動させる力が電力ケーブル100に対して加わり難くすることができる。これにより、電力ケーブル100のケーブル導体110の一端側を固定する導体固定部320が外れることを抑制することができる。その結果、碍管200の鉛直上側から絶縁媒体20が飛散する事態を回避することができる。
(e)ストッパ530は、外側フランジ510から該外側フランジ510の径方向の内側に延在するよう設けられ、内側フランジ520は、ストッパ530が嵌合し、ストッパ530の鉛直上下両側を挟む嵌合部522を有している。これにより、ストッパ530によって内側フランジ520の鉛直上下方向のそれぞれの移動を規制することができる。
(6)本実施形態の変形例
上述の実施形態は、必要に応じて、以下に示す変形例のように変更することができる。以下、上述の実施形態と異なる要素についてのみ説明し、上述の実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
(変形例1)
図6は、本実施形態の変形例1に係るケーブル終端接続構造の一部を拡大した断面図である。
図6に示すように、変形例1のケーブル終端接続構造10では、ストッパ530は、内側フランジ520に加わる絶縁媒体20の圧力が所定値未満であるときに内側フランジ520の鉛直下方向のみの移動を規制するよう構成されている。
ストッパ530のうち外側フランジ510の径方向の内側に延在した部分は、内側フランジ520の鉛直下面に当接している。内側フランジ520は、上述の実施形態における嵌合部522を有していない。
変形例1によれば、ストッパ530が内側フランジ520の鉛直下方向のみの移動を規制するよう構成されていることで、下側封止部50の構造を簡略化することができる。その結果、ケーブル終端接続構造10の製造コストを低減することができる。
また、変形例1によれば、ストッパ530を容易に後付けすることができる。これにより、例えば、ストッパ530を非分割のリング状にすることができる。その結果、ストッパ530の剛性を向上させることができる。
ただし、変形例1では、電力ケーブル100が軸方向に収縮した場合に、パッキン526と金属筒600との間の摩擦力によって、外側フランジ510に対して内側フランジ520が相対的に鉛直上方向に移動する可能性がある。このため、変形例1は、電力ケーブル100が定常的に通電され、電力ケーブル100が軸方向に収縮することが少ない場合などに有効である。
(変形例2)
図7は、本実施形態の変形例2に係るケーブル終端接続構造の一部を拡大した断面図である。
図7に示すように、変形例1のケーブル終端接続構造10では、ストッパ530は、2つ設けられている。2つのストッパ530のうちの一方を「第1ストッパ531」とし、他方を「第2ストッパ532」とする。
第1ストッパ531は、内側フランジ520の鉛直下方向の移動を規制するよう構成されている。具体的には、第1ストッパ531は、例えば、外側フランジ510と別体として設けられ、外側フランジ510の鉛直下側にボルト(符号不図示)によって固定されている。第1ストッパ531は、外側フランジ510から該外側フランジ510の径方向の内側に延在するよう設けられている。第1ストッパ531のうち外側フランジ510の径方向の内側に延在した部分は、内側フランジ520の鉛直下面に当接している。
第2ストッパ532は、内側フランジ520の鉛直上方向の移動を規制するよう構成されている。具体的には、第2ストッパ532は、例えば、外側フランジ510と別体として設けられ、外側フランジ510の鉛直上側にボルト(符号不図示)によって固定されている。第2ストッパ532は、外側フランジ510から該外側フランジ510の径方向の内側に延在するよう設けられている。第2ストッパ532のうち外側フランジ510の径方向の内側に延在した部分は、内側フランジ520の鉛直上面に当接している。
変形例2によれば、ストッパ530が2つ設けられていることで、2つのストッパ530のそれぞれに、内側フランジ520の鉛直下方向の移動を規制する機能と、内側フランジ520の鉛直上方向の移動を規制する機能とをそれぞれ分担させることができる。これにより、2つのストッパ530のそれぞれを、それぞれの機能に適した構成とすることができる。具体的には、例えば、第1ストッパ531の剛性と第2ストッパ532の剛性とを異ならせることができる。例えば、電力ケーブル100が軸方向に収縮する力が弱い場合には、第2ストッパ532を第1ストッパ531よりも薄くすることができる。
また、変形例2によれば、2つのストッパ530のそれぞれを容易に後付けすることができる。これにより、例えば、2つのストッパ530のそれぞれを非分割のリング状にすることができる。その結果、ストッパ530の剛性を向上させることができる。
(変形例3)
図8は、本実施形態の変形例3に係るケーブル終端接続構造の一部を拡大した断面図である。
図8に示すように、変形例3のケーブル終端接続構造10では、ストッパ534は、内側フランジ520から該内側フランジ520の径方向の外側に延在するよう設けられている。ストッパ534は、例えば、リング状に構成されている。ストッパ534は、例えば、内側フランジ520と一体として設けられ、内側フランジ520の外周面の周方向に沿って内側フランジ520の外周全体に亘って設けられている。つまり、ストッパ534は、内側フランジ520の拡径部として考えてもよい。
外側フランジ510は、ストッパ534が嵌合する嵌合部516を有している。嵌合部516は、ストッパ534の鉛直上下両側を挟むよう構成されている。
具体的には、嵌合部516は、例えば、外側フランジ510のうち碍管200に固定される部分(外側フランジ本体部511)と別体として設けられている。嵌合部516は、例えば、外側フランジ本体部511の鉛直下側にボルト(符号不図示)によって固定されている。これにより、嵌合部516を容易に後付けすることができる。
また、嵌合部516は、例えば、リング状(円筒リング状)に構成され、外側フランジ510の鉛直下側に該外側フランジ510の周方向に沿って配置されている。また、嵌合部516は、該嵌合部516の内周面から径方向の外側に向かう方向に凹む内側凹溝517を有している。嵌合部516の軸方向に直交する断面では、嵌合部516の内側凹溝517は、C字状となっている。また、嵌合部516の内側凹溝517は、嵌合部516の周方向に沿って嵌合部516の内周全体に亘って設けられている。ストッパ534のうち内側フランジ520の径方向の外側に延在した部分は、嵌合部516の内周全体に亘って嵌合部516の内側凹溝517内に嵌合している。これにより、ストッパ534により内側フランジ520を外側フランジ510に均等に係止することができ、内側フランジ520の傾斜を抑制することができる。
また、嵌合部516は、例えば、平面視で略扇形に複数分割された嵌合部ピース(符号不図示)を有している。なお、本変形例の嵌合部516は、例えば、2分割された嵌合部ピースを有している。複数の嵌合部ピースは、例えば、外側フランジ510の鉛直下側に外側フランジ510の周方向に沿うように並べられることで、リング状の嵌合部516を構成している。これにより、内側フランジ520を外側フランジ510の径方向の内側に外側フランジ510との間が封止された状態で配置した後に、ストッパ534を、外側フランジ510の内周全体に亘って嵌合部516の内側凹溝517内に容易に嵌合させることができる。
変形例3によれば、ストッパ534は、内側フランジ520から該内側フランジ520の径方向の外側に延在するよう設けられ、外側フランジ510は、ストッパ534が嵌合し、ストッパ534の鉛直上下両側を挟む嵌合部516を有している。これにより、ストッパ534によって内側フランジ520の鉛直上下方向のそれぞれの移動を規制することができる。
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
上述の実施形態では、外側フランジ510の内径が碍管200の内径よりも小さい場合について説明したが、外側フランジの内径は、碍管の内径と等しくてもよい。つまり、外側フランジは、碍管の径方向の内側に延在していなくてもよい。
上述の実施形態では、内側フランジ520は、パッキン526が嵌合される内側凹溝524を有している場合について説明したが、内側フランジは、軸方向に2分割され、2分割された一方および他方の間にパッキンが挟持されるようになっていてもよい。
上述の実施形態では、内側フランジ520は、ストッパ530が嵌合する嵌合部522としての外側凹溝を有している場合について説明したが、上述のように、内側フランジは、軸方向に2分割され、2分割された一方および他方の間にストッパが挟持されるようになっていてもよい。
上述の実施形態では、内側フランジ520の径方向の幅が、外側フランジ510のうち絶縁媒体20が当接する部分の径方向の幅よりも広い場合について説明したが、絶縁媒体の圧力による力が内側フランジに加わり易くなっていれば、上記の場合に限られない。例えば、(内側フランジが外側フランジに引っかからない構造となっていれば)内側フランジのうち絶縁媒体が当接する面(鉛直上面)が凹部を有していたり、全体として湾曲面になっていたりしてもよい。または、例えば、内側フランジのうち絶縁媒体が当接する面の面粗さが内側フランジの外周面または内周面の面粗さよりも大きくなっていてもよい。これらの場合、内側フランジのうち絶縁媒体が当接する面の表面積を大きくすることで、絶縁媒体の圧力によって内側フランジに加わる力を大きくすることができる。
上述の実施形態では、ストッパ530がリング状に構成されている場合について説明したが、ストッパは、非リング状に構成され、内側フランジを囲んでいなくてもよい。例えば、ストッパは、平面視で三角形または四角形等に構成され、その一部が内側フランジの嵌合部内に嵌合していてもよい。
上述の実施形態では、ストッパ530が板状に構成されている場合について説明したが、ストッパが変形可能であれば、板状でなくてもよい。例えば、ストッパは、ピン状であってもよい。
上述の実施形態では、ストッパ530が、折れ曲がることで、内側フランジ520の鉛直下方向の移動を許容するよう構成されている場合について説明したが、ストッパの変形は、折れ曲がる場合に限られない。例えば、ストッパの変形は、破断、分離等であってもよい。
上述の実施形態では、ストッパ530が外側フランジ510と別体として設けられている場合について説明したが、ストッパは外側フランジと一体として設けられていてもよい。この場合、嵌合部が内側フランジと別体として設けられているか、或いは、内側フランジが軸方向に2分割され、2分割された一方および他方の間に嵌合部が形成されていることが好ましい。
上述の変形例2では、2つのストッパのうち一方および他方が外側フランジ510の鉛直上側および鉛直下側にそれぞれ設けられている場合について説明したが、2つのストッパのうち一方および他方は、内側フランジの鉛直上側および鉛直下側にそれぞれ設けられていてもよい。
上述の変形例3では、ストッパ534が内側フランジ520と一体として設けられている場合について説明したが、ストッパは内側フランジと別体として設けられていてもよい。この場合、嵌合部が外側フランジと一体として設けられていてもよい。
上述の実施形態では、製造方法の一例を説明したが、製造方法における各工程の順番は、可能な限り入れ替えても良い。
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様を付記する。
(付記1)
鉛直方向に沿って立設された状態で、電力ケーブルが下方から挿入され、前記電力ケーブルとの間に絶縁媒体が充填される碍管と、
前記碍管の鉛直下端部に前記碍管の周方向に沿って固定されるリング状の外側フランジと、
前記外側フランジの径方向の内側に前記外側フランジとの間が封止された状態で設けられ、前記電力ケーブルの外周を囲み、前記電力ケーブルとの間が封止された状態で設けられるリング状の内側フランジと、
前記内側フランジを前記外側フランジに係止するストッパと、
を有し、
前記ストッパは、前記内側フランジに加わる前記絶縁媒体の圧力が所定値未満であるときに前記内側フランジの少なくとも鉛直下方向の移動を規制し、前記内側フランジに加わる前記絶縁媒体の圧力が所定値以上に達したときに変形することで前記内側フランジの鉛直下方向の移動を許容するよう構成され、
前記内側フランジは、前記電力ケーブルとの間が封止された状態を維持しながら前記電力ケーブルの軸方向の少なくとも伸び出しを許容するよう構成される
ケーブル終端接続構造。
(付記2)
前記ストッパは、前記内側フランジに加わる前記絶縁媒体の圧力が所定値未満であるときに前記内側フランジの鉛直上下方向のそれぞれの移動を規制するよう構成され、
前記内側フランジは、前記電力ケーブルとの間が封止された状態を維持しながら前記電力ケーブルの軸方向の伸縮を許容するよう構成される
付記1に記載のケーブル終端接続構造。
(付記3)
前記ストッパは、前記外側フランジから該外側フランジの径方向の内側に延在するよう設けられ、
前記内側フランジは、前記ストッパが嵌合し、前記ストッパの鉛直上下両側を挟む嵌合部を有する
付記2に記載のケーブル終端接続構造。
(付記4)
前記ストッパは、前記内側フランジから該内側フランジの径方向の外側に延在するよう設けられ、
前記外側フランジは、前記ストッパが嵌合し、前記ストッパの鉛直上下両側を挟む嵌合部を有する
付記2に記載のケーブル終端接続構造。
(付記5)
前記ストッパは、2つ設けられ、
前記2つのストッパのうちの一方は、前記内側フランジの鉛直下方向の移動を規制するよう構成され、
前記2つのストッパのうちの他方は、前記内側フランジの鉛直下方向の移動を規制するよう構成される
付記2に記載のケーブル終端接続構造。
(付記6)
前記内側フランジの径方向の幅は、前記外側フランジのうち前記絶縁油が当接する部分の径方向の幅よりも広い
付記1〜5のいずれか1つに記載のケーブル終端接続構造。
(付記7)
前記内側フランジのうち前記絶縁媒体が当接する面の面粗さは、前記内側フランジの外周面または内周面の面粗さよりも大きい
付記1〜6のいずれか1つに記載のケーブル終端接続構造。
(付記8)
電力ケーブルを鉛直方向に沿って立設させる工程と、
前記電力ケーブルの外周に前記電力ケーブルとの間を封止した状態でリング状の内側フランジを外嵌させる工程と、
前記内側フランジの径方向の外側に該内側フランジとの間を封止した状態で、リング状の外側フランジを配置する工程と、
ストッパにより前記内側フランジを前記外側フランジに係止させる工程と、
前記電力ケーブルの外周を囲むように碍管を配置する工程と、
前記碍管の鉛直下端部に前記碍管の周方向に沿って前記外側フランジを固定する工程と、
前記碍管内の前記電力ケーブルとの間に絶縁媒体を充填する工程と、
を有し、
前記ストッパにより係止させる工程では、
前記内側フランジに加わる前記絶縁媒体の圧力が所定値未満であるときに前記内側フランジの少なくとも鉛直下方向の移動を規制し、前記内側フランジに加わる前記絶縁媒体の圧力が所定値以上に達したときに変形することで前記内側フランジの鉛直下方向の移動を許容するよう前記ストッパを構成し、
前記内側フランジを外嵌させる工程では、
前記電力ケーブルとの間を封止した状態を維持しながら前記電力ケーブルの軸方向の伸縮を許容するよう前記内側フランジを構成する
ケーブル終端接続構造の製造方法。