本発明の実施形態の走行制御装置は、鞍乗型の車両の走行を制御する装置であって、車両の位置および移動方向を検出する車両位置検出部と、道路の種類を認識する道路認識部と、道路がカーブしているか否かを検出するカーブ検出部と、車両の速度を制御する速度制御部とを備えている。
速度制御部は、車両位置検出部による車両の位置および移動方向の検出結果、並びに道路認識部による道路の種類の認識結果に基づき、車両が、高速走行路と他の場所とを接続する接続路を、高速走行路に進入する方向に走行していることが認識されたとき、基本的には、車両の速度を増加させる制御を自動的に行う。
ここで、「高速走行路」とは、例えば高速道路、高速自動車国道、自動車専用道路等であり、車両が高速(例えば時速80km以上)で移動することが許可された道路である。なお、道路が有料か無料かは問わない。
「他の場所」とは、車両が走行可能なあらゆる場所である。例えば、国道、都道府県道、市町村道等の一般道路は「他の場所」に当たる。また、インターチェンジにおいて「高速走行路」としての高速道路等にランプを介して接続している、他の高速道路、高速自動車国道、自動車専用道路等も「他の場所」に当たる。また、パーキングエリア、サービスエリア等も「他の場所」に当たる。
「接続路」とは、「高速走行路」と「他の場所」とを接続する道路である。例えば、インターチェンジにおいて上記一般道路と高速道路とを接続するランプ(ランプウェイと呼ばれることもある。)は「接続路」に当たる。また、インターチェンジにおいて高速道路と高速道路とを接続するランプも「接続路」に当たる。また、車両をパーキングエリアから高速道路へ進入させるために両者間を接続する道路も「接続路」に当たる。
上述したように、速度制御部は、車両が接続路を高速走行路に進入する方向に走行していることが認識されたとき、基本的には、車両の速度を増加させる制御を自動的に行う。しかしながら、速度制御部は、接続路の全区間において車両の速度を一律に増加させるのではない。
速度制御部は、カーブ検出部による検出結果に基づき、車両が接続路におけるカーブ区間と非カーブ区間とのいずれを走行しているかを認識する。そして、速度制御部は、車両が非カーブ区間を走行しているときには車両の速度を増加させる。一方、車両がカーブ区間を走行しているときには、車両制御部は、車両の速度を、車両が非カーブ区間を走行しているときに車両の速度を増加させる程度よりも小さい程度に増加させ、または車両の速度を増加させる制御を行わない。
なお、速度制御部による車両の速度制御は、運転者による手動の運転操作と矛盾しないように行われることが望ましい。すなわち、速度制御部は、車両の速度を増加させるとき、その速度増加量を、運転者の手動の運転操作に応じた通常の速度増加量よりも大きくすることが望ましい。また、速度制御部は、車両がカーブ区間を走行しているときに、車両の速度を増加させる制御を行わない場合があるが、これは運転者の手動の運転操作による車両の速度増加を禁止するものではない。
本発明の実施形態の走行制御装置によれば、車両が接続路を高速走行路に進入する方向に走行しているとき、接続路における非カーブ区間で車両の速度が自動的に増加する。これにより、運転者は車両の加速を容易に行うことができる。したがって、運転者は、自己の車両を、高速走行路を高速で走行する他の車両の列に容易に合流させることができる。また、接続路におけるカーブ区間では、車両の速度が自動的に増加するもののその増加の程度が小さく、または車両の速度が自動的に増加することがない。これにより、カーブ区間を走行している鞍乗型車両の運転者は、体感により車両の速度を確実に把握することができ、また、アクセル操作により車両の速度を自己の意図に沿うように調節することができる。したがって、カーブ区間を走行している車両の運転者は、車両の速度と車両の左右方向における傾斜(バンク角)とのバランスを容易に取ることができ、車両をカーブに沿って安全に走行させることができる。このように、本発明の実施形態の走行制御装置によれば、高速走行路進入時の鞍乗型車両の運転を適切に支援することができる。
図1は本発明の実施例の走行制御装置が設けられた車両1、および高速道路2のインターチェンジ3を示している。図1において、車両1は自動二輪車であり、車両1には本発明の実施例の走行制御装置11(図2参照)が設けられている。高速道路2のインターチェンジ3には、高速道路2と一般道路4とを接続するランプ5、6が設けられている。車両1は、ランプ5または6を高速道路2に進入する方向に走行しようとしている。なお、高速道路2は「高速走行路」の一例であり、一般道路4は「他の場所」の一例であり、ランプ5および6は「接続路」の一例である。
ランプ5および6の始端部分は共通の1本の道路である。一方のランプ5の始端の位置P1と他方のランプ6の始端の位置P11とは同一であり、この位置には料金所7が設けられている。この料金所7には、ETC(電子料金収受システム)の路側通信機が設置されている。また、ランプ5および6は、高速道路2へ向かう途中で分岐している。一方のランプ5は、高速道路2の西側から高速道路2の下を潜って高速道路2の東側へ抜けた後、カーブし、その後、高速道路2において南へ向かう車線2Aに接続されている。他方のランプ6は、高速道路2の西側でカーブし、高速道路2において北へ向かう車線2Bに接続されている。
ランプ5はカーブ区間と非カーブ区間を有している。カーブ区間は、カーブしている区間である。非カーブ区間は、カーブしていない区間、すなわち略直線状に伸びている区間である。具体的には、ランプ5において、位置P1から位置P2までの区間は非カーブ区間である。また、位置P2から位置P3までの区間はカーブ区間である。また、位置P3から位置P4までの区間もカーブ区間である。位置P2から位置P3までのカーブ区間は、カーブの曲率半径が大きく、例えば曲率半径が100m以上であり、カーブの程度が緩やかである。一方、位置P3から位置P4までのカーブ区間は、カーブの曲率半径が小さく、例えば曲率半径が100m未満であり、カーブの程度が急である。また、位置P4から位置P5までの区間は非カーブ区間である。また、ランプ5は位置P5において高速道路2の車線2Aに接続されている。ランプにおいて、高速道路に接続している最終の非カーブ区間を終端区間という。位置P4から位置P5までの区間はランプ5における終端区間である。
また、ランプ6もカーブ区間と非カーブ区間を有している。具体的には、ランプ6において、位置P11から位置P12までの区間は非カーブ区間である。また、位置P12から位置P13までの区間はカーブ区間である。このカーブ区間のカーブは曲率半径が大きく、例えば曲率半径が100m以上であり、カーブの程度が緩やかである。また、位置P13から位置P14までの区間は非カーブ区間である。また、ランプ6は位置P14において高速道路2の車線2Bに接続されている。位置P13から位置P14までの区間はランプ6における終端区間である。
図2は走行制御装置11の構成を示している。走行制御装置11は、車両の速度を自動的に制御することにより、高速道路に進入する方向にランプを走行する車両の運転を支援する機能を有する装置である。図2に示すように、走行制御装置11は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)受信機12、車速センサ13、加速度センサ14、角速度センサ15、傾斜センサ16、雨滴センサ17、温度センサ18、超音波センサ19、制御部21および記憶部22を備えている。
GPS受信機12は、GPSによって測定された車両1の現在位置を示す測位情報を受信する装置であり、車両1の車体に取り付けられている。車速センサ13、加速度センサ14および角速度センサ15は、車両1の速度、加速度および角速度をそれぞれ検出する装置であり、車両1の車体にそれぞれ取り付けられている。後述するように、走行制御装置11の制御部21は、GPS受信機12から提供された測位情報、並びに車速センサ13、加速度センサ14および角速度センサ15から出力された検出信号を用いて、衛星航法および自律航法により車両1の現在位置および移動方向を検出する。なお、GPS受信機12、車速センサ13、加速度センサ14、角速度センサ15および制御部21は車両位置検出部の具体例である。
傾斜センサ16は車両1のバンク角(左右方向の傾斜角度)を検出する装置であり、車両1の車体に取り付けられている。制御部21は、傾斜センサ16から出力された検出信号を用いて車両1のバンク角を検出し、このバンク角に基づいて、車両1が走行しているランプがカーブしているか否か、およびカーブの程度を検出する。なお、傾斜センサ16および制御部21はカーブ検出部の具体例である。
雨滴センサ17は雨滴を検出する装置である。温度センサ18は、車両1が走行している場所の気温を検出する装置である。超音波センサ19は車両1が走行している道路の路面の状態を検出する装置として用いられる。雨滴センサ17、温度センサ18および超音波センサ19は車両1の車体に取り付けられている。制御部21は、雨滴センサ17、温度センサ18および超音波センサ19から出力された検出信号を用いて、ランプの路面の状態、例えば路面が濡れているか、または路面が凍結しているかを検出または推測する。
制御部21はCPU(中央演算処理装置)を有し、後述する走行制御処理を行う。例えば、制御部21は、車両1に設けられたECU(エンジンコントロールユニット)に組み込まれたCPUに、走行制御処理を行うコンピュータプログラムを実行させることにより実現することができる。なお、制御部21は速度制御部の具体例である。記憶部22は例えばフラッシュメモリ、ハードディスクドライブ装置または光ディスクドライブ装置等を有し、車両1の車体に設けられている。記憶部22には地図データ23が記憶されている。制御部21は地図データ23を用いて車両1が走行する道路の種類を認識することができる。なお、制御部21は道路認識部の具体例である。
また、制御部21は、車両1に設けられた燃料噴射装置24および電子制御スロットル25を制御する。燃料噴射装置24は、車両1のエンジンのシリンダへ吸引される空気へ燃料を噴射し、混合気を生成する装置である。電子制御スロットル25は、エンジンのシリンダへ吸引される空気または混合気の量を変化させる装置である。電子制御スロットル25のスロットル開度は、基本的には、アクセルポジションセンサにより検出されたアクセルの操作量(アクセル開度)に応じて制御されるが、制御部21の制御により、アクセル開度とスロットル開度との関係を変化させることができる。制御部21は、運転者のアクセル操作に介入して燃料噴射装置24を制御し、エンジンへ供給される燃料の量を変化させることができる。また、制御部21は、運転者のアクセル操作に介入して電子制御スロットル25を制御し、エンジンに吸入される空気または混合気の量を変化させることができる。そして、制御部21はこのように燃料噴射装置24および電子制御スロットル25を制御することにより、車両1の速度を自動的に変化させることができる。
図3は走行制御装置11における走行制御処理を示している。走行制御装置11は車両1の走行中、図3に示す走行制御処理を行う。走行制御処理において、走行制御装置11の制御部21は、まず、車両1がランプを高速道路に進入する方向に走行しているか否かを判断する(ステップS1)。制御部21はこの判断を例えば次のように行う。すなわち、制御部21は、GPS受信機12、車速センサ13、加速度センサ14および角速度センサ15により車両1の現在位置を検出し、地図データ23を参照して車両1の現在位置に存在する道路を認識し、さらに地図データ23を参照して当該道路の種類がランプであることを認識する。さらに、制御部21は、GPS受信機12および角速度センサ15等により車両1の移動方向を検出し、地図データ23を参照して車両1の当該移動方向が高速道路に進入する方向であることを認識する。
車両1がランプを走行しておらず、または車両1がランプを走行しているがその移動方向が高速道路に進入する方向ではない間、制御部21はステップS1を繰り返し実行しつつ、車両1がランプを高速道路に進入する方向に走行し始めるのを待つ(ステップS1:NO)。
一方、車両1がランプを高速道路に進入する方向に走行しているとき(ステップS1:YES)、続いて、制御部21は、車両1がランプにおけるカーブ区間を走行しているか否かを判断する(ステップS2)。具体的には、制御部21は、傾斜センサ16により車両1のバンク角を検出し、このバンク角に基づいて、車両1がカーブ区間を走行しているか否かを判断する。例えば、制御部21は、車両1のバンク角が第1のバンク角基準範囲を超えているとき、車両1がカーブ区間を走行していると判断する。一方、車両1のバンク角が第1のバンク角基準範囲を超えていないとき、制御部21は、車両1がカーブ区間を走行していないと判断する。第1のバンク角基準範囲は、予め定められた範囲であり、例えば、−10度から10度までである。
車両1がランプにおけるカーブ区間を走行していないとき、すなわち、車両1がランプにおける非カーブ区間を走行しているとき(ステップS2:NO)、続いて、制御部21は、車両1がランプにおける終端区間を走行しているか否かを判断する(ステップS3)。制御部21はこの判断を例えば次のように行う。すなわち、制御部21は、GPS受信機12、車速センサ13、加速度センサ14および角速度センサ15により車両1の現在位置を検出し、地図データ23を参照して車両1の現在位置にランプの終端区間が存在するか否かを認識する。
車両1がランプにおける終端区間を走行していないとき、すなわち、車両1がランプにおいて終端区間ではない非カーブ区間を走行しているとき(ステップS3:NO)、制御部21は、車両1の速度を自動的に増加させる制御(増速制御)を行う(ステップS4)。具体的には、制御部21は、燃料噴射装置24を制御して車両1のエンジンへ供給する燃料の量を増やし、かつ電子制御スロットル25を制御して車両1のエンジンに吸入される空気または混合気の量を増やすことにより、車両1の速度を増加させる。
ここで、走行制御処理において制御部21が行う車両1の速度増加の程度には、次に述べる通り、「大」、「中」、「小」の3通りの程度がある。
「大」:速度増加量を、運転者のアクセル操作に応じた通常の速度増加量よりも例えば30%大きくする。
「中」:速度増加量を、運転者のアクセル操作に応じた通常の速度増加量よりも例えば20%大きくする。
「小」:速度増加量を、運転者のアクセル操作に応じた通常の速度増加量よりも例えば10%大きくする。
ただし、速度増加の程度がいずれの場合であっても、速度の増加は、車両1の速度が、ランプについての法定制限速度を超えないように制御される。もっとも、車両1がランプにおける終端区間を走行している場合には、速度の増加が、当該ランプが接続する高速道路についての法定制限速度(最高速度)を超えないように制御される。
車両1がランプにおいて終端区間ではない非カーブ区間を走行しているとき、制御部21は、車両1の速度増加の程度を「中」に設定し、車両1の速度を自動的に増加させる制御を行う。
一方、車両1がランプにおける終端区間を走行しているとき(ステップS3:YES)、制御部21は、車両1の速度増加の程度を「大」に設定し、車両1の速度を自動的に増加させる制御を行う(ステップS5)。
他方、車両1がランプにおけるカーブ区間を走行しているとき(ステップS2:YES)、続いて、制御部21は、当該カーブ区間のカーブの曲率半径が小さいか否かを判断する(ステップS6)。具体的には、制御部21は、傾斜センサ16により車両1のバンク角を検出し、このバンク角に基づいて、車両1が走行しているカーブ区間のカーブの曲率半径が小さいか否かを判断する。例えば、制御部21は、車両1のバンク角が第2のバンク角基準範囲を超えているとき、車両1が走行しているカーブ区間のカーブの曲率半径が小さいと判断する。一方、車両1のバンク角が第2のバンク角基準範囲を超えていないとき、車両1が走行しているカーブ区間のカーブの曲率半径が小さくないと判断する。第2のバンク角基準範囲は、予め定められた範囲であり、第1のバンク角基準範囲よりも大きく、例えば、−30度から30度までである。
車両1が走行しているカーブ区間のカーブの曲率半径が小さくないとき(ステップS6:NO)、続いて、制御部21は、車両1が走行しているカーブ区間の路面の状態が滑りやすい状態であるか否かを判断する(ステップS7)。具体的には、制御部21は、雨滴センサ17により雨滴の有無または程度を検出し、温度センサ18により、車両1が走行している場所の気温を検出し、かつ超音波センサ19により路面の状態を検出し、これらの検出結果を総合して、路面が濡れているか否か、または路面が凍結しているか否かを認識する。そして、路面が濡れており、または凍結しているときには、制御部21は路面の状態が滑りやすい状態であると判断し、路面が濡れておらず、かつ凍結もしていないときには、制御部21は路面の状態が滑りやすい状態ではないと判断する。
車両1が走行しているカーブ区間の路面の状態が滑りやすい状態でないときには(ステップS7:NO)、制御部21は、車両1の速度増加の程度を「小」に設定し、車両1の速度を自動的に増加させる制御を行う(ステップS8)。
一方、車両1が走行しているカーブ区間のカーブの曲率半径が小さいとき(ステップS6:YES)、または、車両1が走行しているカーブ区間のカーブの曲率半径が小さくないが、当該カーブ区間の路面の状態が滑りやすい状態であるときには(ステップS7:YES)、制御部21は、車両1の速度を自動的に増加させる制御を行わない(ステップS9)。
以上の走行制御処理を、車両1が図1に示すランプ5を通って高速道路2へ進入する場合に当てはめて説明する。
すなわち、車両1が位置P1(P11)を東方向へ通過した直後、制御部21は、車両1がランプ5およびランプ6のうちのいずれかを高速道路2に進入する方向に走行していると判断する。このとき、車両1は直進しているので、車両1のバンク角は略0度であり、第1のバンク角基準範囲を超えていない。また、この時点における車両1の位置は、ランプ5または6における終端区間の存在する位置ではない。この場合、制御部21は、車両1が、ランプ5または6において終端区間ではない非カーブ区間を走行していると判断する。したがって、制御部21は、車両1の速度増加の程度を「中」に設定し、車両1の速度を自動的に増加させる制御を行う。この結果、車両1の速度増加量が、運転者のアクセル操作に応じた通常の速度増加量よりも例えば20%大きくなる。
運転者は、高速道路2の利用料金を現金で支払う場合には、料金所7のある位置P1(P11)で車両1を一旦停止させる。一方、ETCのゲートを通って料金を支払う場合には、運転者は位置P1(P11)で車両1の速度を、ゲート通過のための制限速度まで下げる。このため、位置P1(P11)を通過した直後、運転者は高速道路2に向かって車両1を大きく加速させる必要がある。このときに、走行制御装置11の走行制御処理により、車両1の速度増加量が、運転者のアクセル操作に応じた通常の速度増加量よりも例えば20%大きくなるので、運転者は車両1を容易に加速させることができる。
続いて、車両1がランプ5とランプ6との分岐点を超えて、ランプ5における位置P2に向かって走行しているとき、制御部21は、車両1が、ランプ5における終端区間ではない非カーブ区間を高速道路2に進入する方向に走行していると判断する。したがって、制御部21は、車両1の速度増加の程度を「中」に設定して車両1の速度を自動的に増加させる制御を継続する。
続いて、車両1がランプ5における位置P2を東方向または北東方向へ通過した直後、制御部21は、車両1がランプ5を高速道路2に進入する方向に走行していると判断する。このとき、車両1は曲率半径の大きい緩やかなカーブを走行している。この場合、車両1のバンク角は、例えば15度程度であり、第1のバンク角基準範囲を超えているが、第2のバンク角基準範囲を超えていない。この場合、制御部21は、車両1が、ランプ5におけるカーブ区間を走行しており、当該カーブ区間のカーブの曲率半径は小さくないと判断する。したがって、制御部21は、車両1の速度増加の程度を「小」に設定して車両1の速度を自動的に増加させる制御を行う。この結果、車両1の速度増加量が、運転者のアクセル操作に応じた通常の速度増加量よりも例えば10%大きくなる。
鞍乗型の車両1でカーブを曲がるときには、運転者は車両1の速度を体感により把握し、把握した速度と車両1のバンク角とのバランスを取りながら、アクセル操作を慎重に行うことが求められる。走行制御装置11の走行制御処理によれば、車両1がランプ5におけるカーブ区間を走行しているときには、車両1が非カーブ区間を走行しているときと比較して車両1の速度増加量が小さく抑えられる。したがって、運転者の意に反して車両1が大きく加速することがなく、よって、運転者は車両1の速度とバンク角とのバランスを容易に取ることができ、カーブ区間を安全に走行することができる。
続いて、車両1がランプ5における位置P3を北西方向へ通過した直後、制御部21は、車両1がランプ5を高速道路2に進入する方向に走行していると判断する。このとき、車両1は曲率半径の小さい急なカーブを走行している。この場合、車両1のバンク角は、例えば35度程度であり、第1のバンク角基準範囲を超え、かつ第2のバンク角基準範囲をも超えている。この場合、制御部21は、車両1が、ランプ5におけるカーブ区間を走行しており、当該カーブ区間のカーブの曲率半径が小さいと判断する。したがって、制御部21は、車両1の速度を自動的に増加させる制御を行わない。この結果、車両1の速度増加量は、運転者のアクセル操作に応じた通常の速度増加量となる。
車両1が走行するカーブの曲率半径が小さくなればなるほど、運転者は車両1の速度を遅くし、かつ車両1のバンク角を大きくする必要がある。車両1の速度が遅くなり、または車両1のバンク角が大きくなった場合、運転者は、車両1の挙動の安定性を維持すべく、アクセルをきめ細かく操作し、車両1の速度とバンク角とのバランスを慎重に取らなければならない。特に、バンク角が大きくなると、車輪が横滑りしやすくなるので、運転者は車輪の路面に対するグリップ感(接地感)を体感により把握しながら、速度の微調節を行うことが求められる。走行制御装置11の走行制御処理によれば、車両1がランプ5において曲率半径の小さいカーブ区間を走行しているときには、車両1の速度を自動的に増加させる制御を行わない。この結果、車両1の速度制御が、運転者のアクセル操作に応じて忠実に行われるようになるので、運転者は、アクセルをきめ細かく操作して車両1の速度とバンク角とのバランスを容易に取ることができ、車両1の挙動の安定性を維持することができる。
続いて、車両1がランプ5における位置P4を南方向へ通過した直後、制御部21は、車両1がランプ5を高速道路2に進入する方向に走行していると判断する。このとき、車両1は直進しているので、車両1のバンク角は第1のバンク角基準範囲を超えていない。また、この時点における車両1の位置は、ランプ5における終端区間上である。この場合、制御部21は、車両1が、ランプ5における終端区間を走行していると判断する。したがって、制御部21は、車両1の速度増加の程度を「大」に設定し、車両1の速度を自動的に増加させる制御を行う。この結果、車両1の速度増加量が、運転者のアクセル操作に応じた通常の速度増加量よりも例えば30%大きくなる。
車両1を、高速道路2を走行する他の車両の列に安全に合流させるためには、車両1の速度を、高速道路2を走行する他の車両の速度と同等の速度とすることが望ましい。したがって、車両1がランプ5における終端区間を走行しているとき、運転者は車両1の速度を、高速道路2を走行する他の車両の速度と同等の速度となるまで増加させなければならない。その結果、ランプ5において終端区間に達するまでの区間を走行中に車両1の速度が十分に増加していない場合には、運転者は終端区間において車両1を大幅に加速させることを求められる。走行制御装置11の走行制御処理によれば、車両1がランプ5における終端区間を走行しているときには、車両1がランプ5における終端区間以外の区間を走行しているときと比較して、車両1の速度増加量が大きくなる。したがって、運転者は車両1の大幅な加速を容易に行うことができ、車両1を、高速道路2を走行する他の車両の列に安全に合流させることができる。
続いて、ランプ5の終端である位置P5を車両1が通過した直後、制御部21は、車両1がランプを走行していない(ランプ5を走行し終えた)と判断し、これに応じ、車両1の速度を自動的に増加させる制御を停止させる。この結果、車両1の速度増加量は、運転者のアクセル操作に応じた通常の速度増加量となる。
ランプ5における終端区間で車両1の速度が十分に増加し、高速道路2を走行する他の車両の列に車両1が安全に合流した後は、例えば、運転者はアクセルを一定にしてその時点の速度を保持する。この場合には、走行制御装置11の走行制御処理による増速制御が停止するので、運転者はアクセル操作により速度を容易に保持することができる。
以上説明した通り、本発明の実施例の走行制御装置11によれば、カーブを曲がるときに車両が傾斜し、車両の速度とバンク角とのバランスを取るために運転者による慎重なアクセル操作が要求されるという鞍乗型車両の走行特性に適合した増速制御を行うことができる。したがって、増速制御によって鞍乗型車両の走行安定性が低下することを防止することができ、高速道路進入時の車両の運転を適切に支援することができる。
また、走行制御装置11によれば、ランプにおけるカーブ区間を車両1が走行しているか否かを車両1のバンク角に基づいて検出する構成としたから、カーブ区間を容易に検出することができ、かつ検出精度を高めることができる。
また、走行制御装置11によれば、燃料噴射装置24による燃料のエンジンへの供給量、および電子制御スロットル25による空気または混合気のエンジンへの吸引量を制御して車両1の速度を増加させる構成としたから、車両1の速度増加を高精度に行うことができる。具体的には、速度増加の程度をきめ細かく変化させることができ、「大」、「中」、「小」というように、速度増加の程度を多段階に設定することができる。したがって、車両1が、終端区間、終端区間ではない非カーブ区間、および曲率半径の大きいカーブ区間のうちのいずれを走行しているかに応じて、車両1の速度増加の程度を変えることができ、運転支援の品質を高めることができる。
また、走行制御装置11によれば、ランプのカーブ区間における路面の状態を検出または推測し、路面が滑りやすい場合には、車両1の速度を増加させる制御を行わない構成としたから、路面が滑りやすい雨天時等の走行の安全性を確保することができる。
なお、上述した実施例では、高速走行路の一例として高速道路2をあげ、接続路の一例としてランプ5、6をあげたが、どのような道路を高速走行路にするか、またはどのような道路を接続路にするかは任意に指定することができる。例えば、地図データ23中の各道路につき、その道路を高速走行路または接続路として取り扱うべきか否かを示す指定データを設け、制御部21が、その指定データに基づいて、車両1が走行する道路が高速走行路であるか、または接続路であるかを判断するようにしてもよい。
また、上述した実施例では、接続路の一例として、高速道路と一般道路とを接続するランプをあげたが、接続路は、2つの高速道路間を接続するランプでもよい。このようなランプを車両が走行する場合、車両は、まず、ランプの前半区間を一方の高速道路から退出する方向に減速走行し、続いて、ランプの後半区間を他方の高速道路に進入する方向に加速走行する。したがって、走行制御装置よる増速制御は車両がランプの後半区間を走行しているときに行われる。また、接続路は、車両をパーキングエリアまたはサービスエリアから高速道路へ進入させるために両者間を接続する道路でもよい。
また、上述した実施例において、車両1が料金所7を通過したときに、ETCにおける路側通信機と車両側通信機との間で通信が行われたことを検出し、この検出に基づいて、車両1がランプ5(6)の始端の位置P1(P11)を通過したことを検出してもよい。
また、上述した実施例では、車両1のバンク角に基づいて、車両1がランプにおけるカーブ区間を走行しているか否か、およびカーブ区間の曲率半径の大小を判断する場合を例にあげたが、本発明はこれに限らない。車両1がランプにおけるカーブ区間を走行しているか否か、またはカーブ区間の曲率半径の大小を、車両1の現在位置と地図データとに基づいて判断してもよい。例えば、地図データ中の各接続路の各区間につき、その曲率半径を示す曲率半径データを設け、制御部21が、車両1の現在位置に存在する接続路の区間を特定した後、当該特定した区間の曲率半径を曲率半径データに基づいて認識し、この認識に基づいて、車両1がランプにおけるカーブ区間を走行しているか否か、またはカーブ区間の曲率半径の大小を判断するようにしてもよい。
また、上述した実施例では、車両1がランプのカーブ区間を走行している場合、当該カーブ区間におけるカーブの曲率半径が小さくないときには車両1の増速制御を行い、当該カーブ区間におけるカーブの曲率半径が小さいときには車両1の増速制御を行わない構成としたが、本発明はこれに限らない。車両操作に関して高度な技量を備えた者等については、場合によっては、車両1がランプのカーブ区間を走行している場合には、当該カーブ区間におけるカーブの曲率半径の大小に拘わらず、常に、車両1の増速制御を行わないようにしてもよい。
また、上述した実施例では、車両1がランプのカーブ区間を走行している場合に、当該カーブ区間の路面の状態が滑りやすい状態であるときには車両1の増速制御を行わない構成としたが、本発明はこれに限らない。カーブ区間の路面の状態が滑りやすい状態であるときには、カーブ区間の路面の状態が滑りやすい状態でないときと比較して、車両1の速度を増加させる程度を小さくして増速制御を行うようにしてもよい。また、車両1がランプの非カーブ区間を走行している場合にも、当該非カーブ区間の路面の状態が滑りやすい状態のときには、非カーブ区間の路面の状態が滑りやすい状態でないときと比較して、車両1の速度を増加させる程度を小さくして増速制御を行うようにしてもよい。また、ランプがカーブ区間を有する場合には、ランプにおいてカーブ区間よりも前の非カーブ区間において増速制御を行わないようにしてもよい。
また、上述した実施例では、制御部21が燃料噴射装置24および電子制御スロットル25を制御して車両1の速度を制御する場合を例にあげたが、燃料噴射装置24および電子制御スロットル25のうちのいずれか一方を制御して車両1の速度を制御するようにしてもよい。
また、本発明は、図1に示すようなネーキッド型またはスポーツ型の自動二輪車に限らず、オフロード型の自動二輪車や、スクータ、自動三輪車、他のタイプの鞍乗型車両にも適用することができる。
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う走行制御装置もまた本発明の技術思想に含まれる。