JP6906225B2 - 魚類の生産方法および魚類の飼料利用効率向上方法および魚類のプラズマ活性化飼料の製造方法 - Google Patents
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第1の実施形態について説明する。第1の実施形態の魚類の生産方法および魚類の飼料利用効率向上方法に用いられる魚類のプラズマ活性化飼料は、後述するように、飼料成分を含有する水溶液に大気圧プラズマを照射したものである。そのため、まず、プラズマを照射するプラズマ照射装置について説明する。
1−1.プラズマ活性化飼料製造装置の構成
本実施形態のプラズマ活性化飼料製造装置PMは、図1に示すように、プラズマ照射装置P1と、アームロボットM1とを有している。プラズマ照射装置P1は、プラズマを発生させるとともに、そのプラズマを溶液に向けて照射するためのものである。
図2.Aはプラズマ発生装置P10の概略構成を示す断面図である。ここで、プラズマ発生装置P10は、プラズマを点状に噴出する第1のプラズマ発生装置である。図2.Bは、図2.Aのプラズマ発生装置P10の電極2a、2bの形状の詳細を示す図である。
図3.Aはプラズマ発生装置P20の概略構成を示す断面図である。ここで、プラズマ発生装置P20は、プラズマを線状に噴出する第2のプラズマ発生装置である。図3.Bは、図3.Aのプラズマ発生装置P20のプラズマ領域Pの長手方向に垂直な断面における部分断面図である。
図4は、第3のプラズマ発生装置P30の概略構成を示す概念図である。プラズマ発生装置P30は、収容している溶液にプラズマを照射するためのものである。
第1電極110は、筒形状部110aを有している。そして、その筒形状部110aの内部にプラズマガスを供給することができるようになっている。つまり、第1電極110の内部は、ガス供給部140と連通している。第1電極110は、筒形状部110aから第2電極210に向けてガスを吹き出すようになっている。そして、第1電極110の先端部は、注射針形状をしている。つまり、第1電極110の先端部は、第1電極110の軸方向に垂直な方向に対して傾斜する傾斜面を有している。そして、第1電極110の先端部には、マイクロホローが形成されている。
プラズマ発生装置P30は、前述したように、ガス供給部140と、ガス管結合コネクター150と、ガス管160と、を有している。そのため、ガス供給部140は、ガス管160およびガス管結合コネクター150を介して、第1電極110の筒形状部の内部にプラズマガスを供給する。ここで、ガス供給部160は、例えば、Arガスを供給する。もしくは、その他の希ガスを供給してもよい。もしくは、酸素ガス等その他の微量のガスを含んでいてもよい。そのため、プラズマガスは、第1電極110から溶液250に収容されている溶液に向けて吹き付けられることとなる。
図5は、プラズマ発生装置P30の上部構造を示す図である。図5に示すように、第1電極110は、先端部111を有している。先端部111は、図4に示すように、第2電極210に対面する位置に配置されている。第1電極110の先端部111は、傾斜面111aを有している。傾斜面111aは、第1電極110の軸方向に垂直な面に対して傾斜している面である。また、先端部111には、マイクロホロー111bが形成されている。マイクロホロー111bは、長さ0.5mm以上1mm以下、幅0.3mm以上0.5mm以下の微小な凹部である。
図6は、プラズマ発生装置P30の下部構造を示す図である。前述したように、プラズマ発生装置P30は、容器250と、封止部材260と、架台270と、を有している。容器250は、内部に溶液を収容することができるようになっている。ここで、溶液とは、水溶液や有機溶剤をも含むこととする。また、容器250は、第1電極110および第2電極210を内部に収容している。また、容器250は、目盛を有しているとよい。容器250の内部に収容されている溶液の量を計量するためである。
2−1.第1のプラズマ発生装置および第2のプラズマ発生装置
プラズマ発生装置P10、P20により発生されるプラズマは、非平衡大気圧プラズマである。ここで、大気圧プラズマとは、0.5気圧以上2.0気圧以下の範囲内の圧力であるプラズマをいう。
図7は、プラズマ発生装置P30がプラズマを発生させている様子を模式的に示す図である。プラズマ発生装置P30により発生されるプラズマは、非平衡大気圧プラズマである。
3−1.飼料浸漬工程(第1の飼料水溶液準備工程)
第1の飼料を準備する。第1の飼料は、粗蛋白質と、粗脂肪と、粗灰分と、を含有する。第1の飼料は、乾物換算値として0%以上100%以下の粗蛋白質と、0%以上100%以下の粗脂質と、0%以上100%以下の粗灰分と、を含有する。望ましくは、第1の飼料は、乾物換算値として10%以上90%以下の粗蛋白質と、1%以上50%以下の粗脂質と、1%以上50%以下の粗灰分と、を含有する。実際には、第1の飼料は、魚粉と魚油と澱粉とを含む。また、第1の飼料は、粗蛋白質と粗脂質と粗灰分の他に、粗繊維と、カルシウムと、りんと、動物性飼料と、を含んでもよい。このように第1の飼料は、養魚用配合飼料であってもよい。
次に、図10に示すように、プラズマ活性化飼料製造装置PMによりプラズマ発生領域に発生させた大気圧プラズマを第1の飼料水溶液に照射する。プラズマの照射により第1の飼料水溶液の成分が局所的に変性するおそれがある。そのため、第1の飼料水溶液に大気圧プラズマを照射している期間内に、第1の飼料水溶液を撹拌する。第1の飼料水溶液の全体にプラズマ生成物を供給するためである。また、プラズマの照射により第1の飼料水溶液の温度がある程度上昇する。そのため、第1の飼料水溶液に大気圧プラズマを照射している期間内に、第1の飼料水溶液を冷却する。第1の飼料水溶液に含まれている蛋白質等が熱により変性することを抑制するためである。これにより、第2の飼料水溶液が製造される。第2の飼料水溶液は、プラズマ活性化飼料水溶液(Plasma Activated Dietary Solution:PADs)である。
条件 数値範囲
液面−噴出口距離 0.1cm以上 3cm以下
プラズマ密度 1×1014cm-3以上 1×1017cm-3以下
プラズマ温度 1000K以上 2500K以下
次に、図11に示すように、プラズマを照射された第2の飼料水溶液と第2の飼料とを混合する。第2の飼料は、固形の配合飼料である。第2の飼料は、粗蛋白質と、粗脂肪と、粗灰分と、を含有する。また、第2の飼料は、粗繊維と、カルシウムと、りんと、動物性飼料と、を含有するとよい。第2の飼料の成分比は、第1の飼料の成分比と同じである。つまり、第2の飼料は、第1の飼料と同じ種類のものである。ここで、第2の飼料の重量と、第2の飼料水溶液に含まれていた第1の飼料の重量とは、同じである。この状態で静置することにより、図12に示すように、第2の飼料は、第2の飼料水溶液の水分を吸収するとともに固化する。これにより、魚類に餌として与えることできる第3の飼料(固形飼料)が得られる。第3の飼料は、プラズマ活性化飼料(PAD)である。プラズマ活性化飼料(PAD)は、プラズマ活性化飼料水溶液(PADs)の成分を含有する。
4−1.飼料浸漬工程(第1の飼料水溶液準備工程)
前述したように、飼料浸漬工程では、第1の飼料を第1の水溶液に浸漬させて第1の飼料水溶液を製造する。
次に、前述したようにプラズマ照射工程を実施する。第1の飼料水溶液に大気圧プラズマを照射して第2の飼料水溶液を製造する。第2の飼料水溶液は、プラズマ活性化飼料水溶液(PADs)である。
次に、第2の飼料と第2の飼料水溶液とを混合して第3の飼料を製造する。第3の飼料は、固形飼料である。また、第3の飼料は、プラズマ活性化飼料水溶液(PADs)の成分を含有する。
次に、魚類育成工程を実施する。図13に示すように、プラズマ活性化飼料である第3の飼料を魚類に供給する。魚類は、この第3の飼料を食べて成長する。
本実施形態のプラズマ活性化飼料は、養魚用配合飼料を溶かした飼料水溶液にプラズマを照射したものである。このプラズマ活性化飼料は、魚類の成長を促進する成長促進剤である。つまり、生育期間が同じであれば、このプラズマ活性化飼料を与えた魚類は、通常の配合飼料を与えた魚類よりも大きい。
6−1.第1の飼料水溶液準備工程
本実施形態では、第1の飼料を第1の水溶液に浸漬させることにより第1の飼料水溶液を製造する。第1の飼料水溶液が第1の飼料の成分を含有していれば、プラズマ活性化飼料を製造することができる。そのため、第1の飼料を第1の水溶液に浸漬させることなく、第1の飼料を含む第1の飼料水溶液を準備してもよい。
本実施形態では、第2の飼料と第2の飼料水溶液とを混合することにより固形の第3の飼料を製造する。第2の飼料水溶液(プラズマ活性化飼料水溶液(PADs))を固形飼料にすることができれば、その他の方法であってもよい。第2の飼料水溶液がプラズマ活性化飼料水溶液(PADs)であるためである。そのため、生体に悪影響を及ぼさない固化材料を用いて第2の飼料水溶液を固化してもよい。例えば、カルボキシメチルセルロースを第2の飼料水溶液に添加した後にその水溶液を乾燥させればよい。また、その他の造粒方法を用いてもよい。
餌が肉に変換される利用効率を高める本実施形態のプラズマ活性化飼料(第1の種類の成長促進剤)と、餌の嗜好性を高めることにより魚類がより多くの餌を摂取することを促進する成長促進剤(第2の種類の成長促進剤)と、の両方を用いて魚類を成長させてもよい。
また、第2の飼料水溶液(プラズマ活性化飼料水溶液(PADs))を保存するために冷凍工程を実施してもよい。冷凍工程は、あくまで第2の飼料水溶液を保存するためのものである。したがって、この冷凍工程については実施しなくともよい。また、第2の飼料水溶液の代わりに固形飼料であるプラズマ活性化飼料(PAD)を冷凍してもよい。
冷凍工程の前に、第2の飼料水溶液に増粘剤を添加してもよい。増粘剤として例えば、カルボキシメチルセルロースが挙げられる。
第1の飼料と第2の飼料とは異なる種類であってもよい。また、第1の飼料および第2の飼料は、養魚用の配合飼料であればよい。第1の飼料および第2の飼料は、前述した成分を必ずしも含有していなくともよい。
第1の水溶液は、生理食塩水である。しかし、生理食塩水以外の水または水溶液であってもよい。ただし、養魚用配合飼料が容易に溶解するものであるとよい。
上記の変形例を自由に組み合わせてもよい。
以上詳細に説明したように、本実施形態の魚類の生産方法は、第1の飼料を含有する第1の飼料水溶液を準備する工程と、第1の飼料水溶液に大気圧プラズマを照射して第2の飼料水溶液を製造する工程と、第2の飼料水溶液の成分を含有する固形飼料を製造する工程と、固形飼料を魚類に供給する工程と、を有する。この第2の飼料水溶液は、魚類の成長を促進させる成長促進剤である。
1−1.魚類
本実験において育成する魚類はチョウザメの稚魚である。チョウザメを第1グループ(実施例)と第2グループ(比較例)とに分けて飼育した。第1グループのチョウザメの尾数は5尾である。第2グループのチョウザメの尾数は5尾である。
第1グループと第2グループとで異なる点は与えるエサのみである。それ以外の飼育環境は、第1グループと第2グループとで共通である。飼育槽の水量は160Lである。濾過槽の水量は65Lである。そのため、チョウザメを飼育するために用いた水量は225Lである。なお、飼育槽の大きさは900mm×450mm×450mmである。
本実験で用いた配合飼料は、日清丸紅飼料株式会社製のオトヒメEP2である。この飼料が対応する魚種はまだい等である。飼料の形態は、エクストルーダーにより処理されたペレットである(EP沈降)。飼料の粒径は2.3mmである。オトヒメEP2の原材料は、動物質性飼料と、穀類と、その他の成分である。魚粉、オキアミミール等の動物質性飼料が74%である。小麦粉、馬鈴薯澱粉等の穀類が16%である。精製魚油等のその他の成分が10%である。上記の原材料を元に製造されたオトヒメEP2は、粗蛋白質と、粗脂肪と、粗繊維と、粗灰分と、カルシウムと、りんと、を含有する。粗蛋白質の含有量は48%である。粗脂肪の含有量は12%である。粗繊維の含有量は2%である。粗灰分の含有量は17%である。カルシウムの含有量は2.2%である。りんの含有量は1.7%である。この飼料の組成は、標準的なものである。他のメーカーの飼料における原材料および組成は、オトヒメEP2における原材料および組成とほとんど変わらない。
そして、第1グループに第1のエサを与えた。第2グループに第2のエサを与えた。飼育開始から28日目までの給餌量(合計)は46.5g程度であった。29日目から56日目までの給餌量(合計)は87g程度であった。そのため、1尾あたりの給餌量(合計)は、これらの数値の1/5である。
第1グループ 第2グループ
(プラズマ有り) (プラズマ無し)
給餌量
0−28日目 46.5g 46.7g
29−56日目 86.5g 87.3g
表3は、チョウザメの平均体重を示す表である。表3に示すように、第1グループのチョウザメは、第2のグループのチョウザメに比べて、大きく成長している。なお、56日経過後においても、第1グループおよび第2グループのチョウザメは全て生存している。
第1グループ 第2グループ
(プラズマ有り) (プラズマ無し)
平均体重
0日目 18.7g 18.4g
28日目 34.8g 30.4g
56日目 62.9g 56.1g
第1グループ 第2グループ
(プラズマ有り) (プラズマ無し)
増重率
0−28日目 86.6% 65.0%
29−56日目 80.7% 84.9%
0−56日目 237.1% 205.1%
第1グループ 第2グループ
(プラズマ有り) (プラズマ無し)
飼料効率
0−28日目 173.7% 128.2%
29−56日目 162.5% 147.6%
0−56日目 166.4% 140.9%
第1グループ 第2グループ
(プラズマ有り) (プラズマ無し)
増肉係数
0−28日目 0.58 0.78
29−56日目 0.62 0.68
0−56日目 0.60 0.71
第1グループ 第2グループ
(プラズマ有り) (プラズマ無し)
肥満度 42.2±8.4 41.2±8.2
比肝重(%) 4.8±0.2 5.2±0.7
比腸長(%) 75.0±1.5 79.4±5.0
以上説明したように、本実験では、プラズマ活性化飼料(PAD)を与えたチョウザメは、プラズマ活性化飼料(PAD)を与えなかったチョウザメよりも良く成長した。市販の飼料は、十分に最適化されたものである。そのため、本実験の結果は、非常に好ましい結果であると評価できる。また、プラズマ活性化飼料(PAD)をチョウザメに与えることによるデメリットはみあたらなかった。
第1の態様における魚類の生産方法は、第1の飼料を含有する第1の飼料水溶液を準備する工程と、第1の飼料水溶液に大気圧プラズマを照射して第2の飼料水溶液を製造する工程と、第2の飼料水溶液の成分を含有する固形飼料を製造する工程と、固形飼料を魚類に供給する工程と、を有する。
M1…ロボットアーム
PM…プラズマ活性化飼料製造装置
P10、P20、P30…プラズマ発生装置
10、11…筐体部
10i、11i…ガス導入口
10o、11o…ガス噴出口
2a、2b…電極
P…プラズマ領域
H…凹部(ホロー)
110…第1電極
120…第1の電位付与部
130…第1のリード線
140…ガス供給部
150…ガス管結合コネクター
160…ガス管
170…第1電極保護部材
210…第2電極
220…第2の電位付与部
230…第2のリード線
240…第2電極保護部材
250…容器
260…封止部材
270…架台
Claims (9)
- 第1の飼料を含有する第1の飼料水溶液を準備する工程と、
前記第1の飼料水溶液に大気圧プラズマを照射して第2の飼料水溶液を製造する工程と、
前記第2の飼料水溶液の成分を含有する固形飼料を製造する工程と、
前記固形飼料を魚類に供給する工程と、
を有すること
を特徴とする魚類の生産方法。 - 請求項1に記載の魚類の生産方法において、
前記第1の飼料水溶液を準備する工程では、
前記第1の飼料を第1の水溶液に浸漬させることにより前記第1の飼料水溶液を製造すること
を特徴とする魚類の生産方法。 - 請求項1または請求項2に記載の魚類の生産方法において、
前記固形飼料を製造する工程では、
第2の飼料と前記第2の飼料水溶液とを混合することにより前記固形飼料を製造すること
を特徴とする魚類の生産方法。 - 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の魚類の生産方法において、
前記第1の飼料は、
粗蛋白質と粗脂質と粗灰分との少なくとも一つを含有すること
を特徴とする魚類の生産方法。 - 請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の魚類の生産方法において、
前記第1の飼料は、
魚粉と魚油と澱粉との少なくとも1つを含むこと
を特徴とする魚類の生産方法。 - 請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の魚類の生産方法において、
前記第2の飼料水溶液を冷凍する冷凍工程を有し、
前記冷凍工程では、
前記第2の飼料水溶液を−196℃以上0℃以下の範囲内で冷凍すること
を特徴とする魚類の生産方法。 - 第1の飼料を含有する第1の飼料水溶液を準備する工程と、
前記第1の飼料水溶液に大気圧プラズマを照射して第2の飼料水溶液を製造する工程と、
前記第2の飼料水溶液の成分を含有する固形飼料を製造する工程と、
前記固形飼料を魚類に供給する工程と、
を有すること
を特徴とする魚類の飼料利用効率向上方法。 - 第1の飼料を含有する第1の飼料水溶液を準備する工程と、
前記第1の飼料水溶液に大気圧プラズマを照射して第2の飼料水溶液を製造する工程と、
を有すること
を特徴とする魚類のプラズマ活性化飼料の製造方法。 - 請求項8に記載の魚類のプラズマ活性化飼料の製造方法において、
前記第2の飼料水溶液の成分を含有する固形飼料を製造する工程を有すること
を特徴とする魚類のプラズマ活性化飼料の製造方法。
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