JP6905616B1 - 位置検出器付き油圧機器 - Google Patents
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Abstract
【課題】製造過程での調整工程の簡便性と共に、母機への組み込み時の調整工程の簡便性をサーボアンプを一体化することなく実現できる位置検出器付き油圧機器の提供。【解決手段】サーボアンプによって指令信号の指令値と位置検出器からの位置検出値との偏差に基づいてフィードバック制御される位置検出器付き油圧機器において、位置検出値を検出信号として出力する演算処理部と、検出信号をサーボアンプに送信すると共にサーボアンプからの信号を受信する通信機と、油圧機器の特性情報が前記通信機を介して読み出し可能に格納されている記憶部と、を備え、前記油圧機器の特性情報には、少なくとも、予め油圧機器のテストスタンドで計測して取得した、位置検出器による位置検出値と油圧機器の特性値とを対応させた較正情報と、指令信号に対する油圧機器の流量とを対応させた流量特性情報とが含まれているものとした。【選択図】 図1
Description
本発明は、例えば、油圧サーボ弁のスプール等の弁部材の変位を検出する位置検出器を備えた油圧機器に関し、詳しくは、位置検出器に対する較正情報を含む油圧機器の特性情報を予め格納した記憶部を備えることによって、任意のサーボアンプにその特性情報を読み出させるだけで最適化でき、製造過程での調整工程および母機への組合せ時の調整工程の簡便化を可能とした油圧機器に関するものである。
例えば、各種の油圧装置やアクチュエータ等の母機を駆動する油圧サーボ弁は、電源に接続されたサーボアンプに、母機側のコントローラ等から指令信号が与えられ、該サーボアンプを介して指令信号に応じた制御電流がモータへ供給されることによって、指令された作動油の流れ方向と流量に対応する弁開度位置へスプールが移動される。サーボアンプでは、スプールの位置を検出する位置検出器による現在位置の位置検出値の信号と指令信号とが比較され、その偏差に基づいて電流供給が調整されて、スプールの移動量がフィードバック制御される。
油圧サーボ弁としては、通電励磁に応じた電磁ソレノイドの可動鉄心あるいはリニアモータのムービングコイル(ボイスコイル)の変位に伴うスプールの直線移動によって流量の変更および流路(方向)の切り換えが行われる比例電磁式の直動形方向・流量制御弁や直動形油圧リニアサーボ弁がある。このような油圧サーボ弁には、スプール位置のフィードバック制御を行うための位置検出器として、差動トランス、多くの場合LVDT(Linear Variable Differential Transformer:線形可変差動変圧器)が一体的に備えられている(例えば、特許文献1、2および3を参照。)。このような油圧サーボ弁は、位置検出器と共に接続されるサーボアンプを介して駆動制御される。
例えば、図8(a)に示す一対のソレノイド(ダブルソレノイド:SOLa,SOLb)とスプール位置検出用のLVDTを備え、図8(b)に示すようにサーボアンプ300と接続された比例電磁式の方向流量制御弁200は、供給源からの作動油流入ポートPと油圧制御用流入出口の2ポートA,Bおよびタンクへ戻すポートTを備えた4ポート構造において、指令信号に基づいて電流が供給され励磁駆動されたソレノイドによってバルブ内部でスプールが移動することで各ポートの流入出する流量が制御されるものであり、スプールがバルブ機構の中立点でポートA,Bの両方の流量がゼロとなる。即ち、指令信号に応じた第1のソレノイドSOLaの励磁駆動によってスプールが中立点から一方向へ変位するにつれてポートAの流出流量が増加すると共にポートBへの流入流量が増加し、また第2のソレノイドSOLbの励磁駆動によってスプールが逆方向に変位するにつれてポートBの流出流量が増加すると共にポートAへの流入流量が増加する。
なお、LVDTは、図9に示すように、通常、スプール201の端部からバルブ本体部の外方に延長されたロッド202を介して固定されたコア203と、該コア203が内部に挿入される管部材204と、該管部材204の外周中央に巻かれた一次コイル205の両側に一対の二次コイル206が対称に巻かれて成る検出コイルとを備えたものである。一次コイル205は、サーボアンプを介して供給される所定の振幅、周波数の交流電流によって通電されて一次励磁され、スプール201と共に変位するコイル内のコア203の位置に応じて変化する二次コイル206間の差動電圧が出力される。この電圧出力のアナログ信号は、A/D変換器によりデジタル化された後、信号処理する演算処理部を経て位置検出値としてのデジタル検出信号が得られる。
コア203の組み付け長さは、スプール201端部にロッド202を固定しているネジ構造210の締め付けで微調整可能とされており、管部材204が、バルブ本体部側に挟まれた調整バネ220に対向する外端部側からのナット230の締め付けによってLVDT本体の位置を可変可能に調整できる構成となっている。
このように、油圧機器にセンサが搭載される場合は、油圧機器の製造過程で位置検出器が実装され、実装後のテストスタンドにて油圧機器の制御機構と位置検出器の原点とを一致させる精密な調整作業が必須である。上記のような油圧サーボ弁も、予めスプールの中立ゼロ点と位置検出器原点を一致させる調整を完了させた状態で製品となる。
通常、油圧機器のテストスタンドでの調整、検査は、油圧機器製造工場に設置された検査用アンプを用いて行われている。そして実際に母機に組み込まれて油圧機器を駆動制御するためのサーボアンプは、電子機器専用の別工場で電気的な条件や電子式模擬負荷装置にて調整、検査されて出荷されたものである。従って、母機に組み付けられた油圧機器とサーボアンプとは、組み合わせて調整することによって実環境で使用可能となる。
即ち、上記のように製造過程にて原点調整を行っていても、油圧機器はそれぞれ油圧特性が異なっており、その制御機構と位置検出装置には位置に対する流量等の感度に個体差があるため、母機への組み付けの際に油圧機器とこれを駆動制御するサーボアンプとを組合せて流量特性等を調整することで実環境での使用を可能としている。
例えば、油圧サーボ弁のスプール変位に対する流量特性は一定の比例関係となる直線とは限らない。図8(a)の方向流量制御弁は、図10の指令信号に対する流量特性の線図に示すように、型別でもそれぞれサーボアンプへの指令信号(入力電圧VDC)に対して流量は単調な比例特性とはならない。バルブ機構に起因して入力電圧0VDCの付近には、流量変化がほとんど無い範囲、いわゆる不感帯が必ず存在し、最大入力電圧10VDCに近づくにつれて飽和する流量特性となっている。
また、油圧サーボ弁の流量制御機構部の形状や寸法のバラツキと位置検出器の変位検出にも直線性誤差やバラツキがあるため、スプール変位に対する流量特性は直線性誤差とバラツキが発生する。このような流量誤差はサーボアンプでのゼロ点とスパンによる調整のみでは完全に補正できないため、油圧シリンダ等の母機の制御として補正を行っている。
即ち、母機としての油圧シリンダに油圧サーボ弁とサーボアンプを組み込む際に、油圧シリンダを試運転させて、一定速度で往復動させながら、油圧サーボ弁のバルブ機構中立点と油圧シリンダの停止点に、またバルブ最大開度の最大流量が油圧シリンダの最大速度に適合するようにサーボアンプにて調整している。特に、指令信号に対してスプール変位によるバルブ開度に応じた流量が非線形な特性であるため、該バブル特性を考慮して、バルブ開度に応じた流量で制御される油圧シリンダ速度に指令信号に対する調整をアンプ調整にて実施している。
また、同一母機に対して油圧機器を変更する場合、既存のサーボアンプを再調整して適応させたりサーボアンプも共に変更する必要があった。特に油圧サーボ弁では、特殊設計の品種が多く、新設計の頻度も高いため、サーボアンプの設計後に新たな型式が設計されたり、設計変更された油圧サーボ弁に交換する場合、サーボアンプの再調整は非常に面倒であるため、新しい油圧サーボ弁と共に調整された対のサーボアンプと一緒に交換することが多い。即ち、油圧機器には、製造工場のテストスタンドにてサーボアンプと組合せ調整まで行って一体化した製品として出荷されるものがある。このような一体化した製品では、上記のような実環境での試運転調整が不要となるが、製造負担が大きく、また油圧機器とサーボアンプのうちの一方のみが故障した場合も両者を一対として交換する必要があった。
一方、専用サーボアンプを搭載させた油圧機器製品もある(例えば特許文献3を参照。)。この構成によれば、ケーブル配線が簡略化できると共に、製造過程での油圧機器テストスタンドにて、油圧機器の制御機構とセンサの個体差の調整を搭載サーボアンプの調整によって実施することで、母機組み込み時の簡便性を高めることができる。しかしながら、母機に組み付けられる油圧機器の設置環境は、高温であったり水がかかるなど、サーボアンプにとっては劣悪である場合が多い。また搭載サーボアンプには小型化などの設計的な制約が生じ、それによる電気的パワーの低下等、サーボアンプとしての機能や性能に妥協したものとなってしまう。特に大型の直動形油圧サーボ弁では、モータの駆動電力を大容量化するものであるため、サーボアンプの搭載化は困難で実際的ではない。
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、製造過程での調整工程の簡便性と共に、サーボアンプを対として一体化したり搭載した製品とすることなくそれと同等以上の母機への組み込み時の調整工程の簡便性を実現できる位置検出器付き油圧機器を提供することにある。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る位置検出器付き油圧機器は、サーボアンプによって指令信号に応じて駆動制御される油圧機器であって、弁開度と作動油流れ方向とを決定する弁部材の位置に応じた出力信号を発生する位置検出器を一体的に備え、前記サーボアンプによって、前記指令信号の指令値と前記出力信号に基づく位置検出値との偏差に基づいてフィードバック制御される位置検出器付き油圧機器において、
前記位置検出器からの出力を演算処理して前記位置検出値を検出信号として出力する演算処理部と、前記検出信号を前記サーボアンプに送信すると共に前記サーボアンプからの信号を受信する通信機と、前記油圧機器の特性情報が前記通信機を介して読み出し可能に格納されている記憶部と、を備え、
前記記憶部に格納されている前記油圧機器の特性情報には、少なくとも、予め前記油圧機器の製造過程のテストスタンドで計測して取得した、前記位置検出器による位置検出値と前記油圧機器の特性値とを対応させた較正情報と、前記指令信号に対する前記油圧機器の流量とを対応させた流量特性情報とが含まれているものである。
前記位置検出器からの出力を演算処理して前記位置検出値を検出信号として出力する演算処理部と、前記検出信号を前記サーボアンプに送信すると共に前記サーボアンプからの信号を受信する通信機と、前記油圧機器の特性情報が前記通信機を介して読み出し可能に格納されている記憶部と、を備え、
前記記憶部に格納されている前記油圧機器の特性情報には、少なくとも、予め前記油圧機器の製造過程のテストスタンドで計測して取得した、前記位置検出器による位置検出値と前記油圧機器の特性値とを対応させた較正情報と、前記指令信号に対する前記油圧機器の流量とを対応させた流量特性情報とが含まれているものである。
請求項2に記載の発明に係る位置検出器付き油圧機器は、請求項1に記載の位置検出器付き油圧機器において、前記記憶部に格納されている前記油圧機器の特性情報には、さらに、前記油圧機器に適合する制御プログラムと制御定数とが書換え可能に含まれているものである。
請求項3に記載の発明に係る位置検出器付き油圧機器は、請求項1または2に記載の位置検出器付き油圧機器において、前記記憶部には、前記油圧機器が組み込まれた母機の起動毎に前記弁部材を移動させて測定した駆動電流測定値と比較するための異常検知用電流設定値が格納されているものである。
請求項4に記載の発明に係る位置検出器付き油圧機器は、請求項3に記載の位置検出器付き油圧機器において、前記記憶部は、前記油圧機器の出荷前に前記弁部材を移動させて測定された駆動電流値が駆動電流初期値として格納されていると共に、前記母機の起動毎の駆動電流測定値を記憶して経時的に蓄積する機能を備えているものである。
請求項5に記載の発明に係る位置検出器付き油圧機器は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の位置検出器付き油圧機器において、前記演算処理部と前記通信機と前記記憶部とが、前記位置検出器と同一ハウジング内に一体的に設けられているものである。
請求項6に記載の発明に係る位置検出器付き油圧機器は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の位置検出器付き油圧機器において、前記演算処理部と前記通信機と前記記憶部とが、前記油圧機器の本体ハウジング側に設けられているものである。
本発明の位置検出器付き油圧機器においては、予め油圧機器の特性情報が読み出し可能に格納された記憶部を備えたものであり、油圧機器を駆動制御するサーボアンプに通信接続によって必要な特性情報を読み出させ、その特性情報に基づいて油圧機器と位置検出器との原点補正や流量特性の最適化が簡便に行われるため、製造過程での調整工程と現場での母機との組み合せ時の調整工程のいずれにても簡便性が実現できるという効果がある。
本発明による位置検出器付き油圧機器は、サーボアンプによって指令信号に応じて駆動制御される油圧機器であって、弁開度と作動油流れ方向とを決定する弁部材の位置に応じた出力信号を発生する位置検出器を一体的に備え、前記サーボアンプによって、前記指令信号の指令値と前記出力信号に基づく位置検出値との偏差に基づいてフィードバック制御される位置検出器付き油圧機器において、前記位置検出器から出力を演算処理して前記位置検出値を検出信号として出力する演算処理部と、前記検出信号を前記サーボアンプに送信すると共に前記サーボアンプからの信号を受信する通信機と、前記油圧機器の特性情報が前記通信機を介して読み出し可能に格納されている記憶部と、を備え、前記記憶部に格納されている前記油圧機器の特性情報には、少なくとも、予め前記油圧機器の製造過程のテストスタンドで計測して取得した、前記位置検出器による位置検出値と前記油圧機器の特性値とを対応させた較正情報と、前記指令信号に対する前記油圧機器の流量とを対応させた流量特性情報とが含まれているものである。
上記構成によって、記憶部から位置検出器による位置検出値と油圧機器の特性値とを対応させた位置検出器の較正情報を、任意のサーボアンプに読み出させることができるため、予め製造過程で油圧機器の制御機構と位置検出器との原点を一致させる精密な調整作業を実施することなく、サーボアンプによってこれら特性情報に基づいた原点補正が行える。これによって、例えば油圧サーボ弁のスプール端にLVDTの位置検出器を搭載させる際に従来行っていた、実際に通電して作動油の流量を見ながら手動でのネジ締め付けによる位置検出器の組み付け位置の調整やコア組み付け長さの微調整は必要なくなり、位置検出器は固定装着ですむため、製造過程は格段に簡便化する。
さらに、本発明においては、記憶部から指令信号に対する流量特性情報を通信機を介して任意のサーボアンプに読み出させることができるため、現場での母機の試運転による調整をする必要もなく、サーボアンプによって油圧機器固有の特性に適した制御が可能となる。
例えば、読み出された流量特性情報に基づいて、その油圧機器の流量特性で見られる中立不感帯を、アンプ制御によって無くして指令信号に対する流量特性を実質的に直線化することができる。これにより、システム調整では油圧機器のバルブ特性を考慮した制御を行う必要がなくなる。
また、油圧シリンダの制御精度を高めたい場合に、スプールゼロ位置においても若干ポートP→A流れとポートP→B流れとがあるゼロラップ構造の油圧サーボ弁が採用されるが、油圧シリンダ停止時にも常に油圧力が漏れ出すためにエネルギー損失が大きい。そこで、スプールゼロ位置での制御精度を重視しなくてもかまわない油圧シリンダの速度制御を主とした母機では、スプールゼロ位置では流れずにある程度変位した位置から流れ出すオーバーラップ構造の油圧サーボ弁が採用される。このオーバーラップ構造では、サーボアンプ機能として、速度指令信号がゼロから最小速度に変化した際にスプールをオーバーラップ端まで変位させて油圧シリンダを最小速度で動作させる調整機構を持った製品がある。しかし、ここでのスプールオーバーラップ端は規定変位量に対してのバラツキがあるため、従来は母機の立ち上げ時や油圧サーボ弁交換時に、油圧シリンダの動作を確認しながらの調整が必要であった。これに対して本発明においては、このような煩雑な調整作業なしに、記憶部から油圧サーボ弁の流量特性情報をサーボアンプに読み出させるだけで調整済みと同等の状態が得られるため、母機の立ち上げ時や油圧サーボ弁交換時に簡便に短時間で実使用が開始できる。
また、油圧シリンダの速度フィードバック制御をする母機の場合、油圧サーボ弁の流量特性が図4に示すように、油圧サーボ弁の流量特性が大流量と小流量とで大きく変化する設計であると、流量の変化点付近では、流量ゲイン変化が急激であるため、油圧シリンダのフィードバック制御が不安定となる場合がある。本発明においては、このような変化点を含む流量特性情報を記憶部からサーボアンプに読み出させることができるため、サーボアンプにその特性情報に基づいて変化点付近での流量ゲインを可変させて急激な変化を防止させることも可能となる。
さらに、対象母機の種類、動作種別によって、求められる流量特性仕様と制御動作が異なり、対象母機に対応する油圧機器が選択されるが、その油圧機器には自己の制御に適した制御プログラムがある。この制御プログラムによって、サーボアンプは油圧機器を適切に駆動制御することができる。本発明の油圧機器においては、記憶部にその制御プログラムおよび制御定数も読み出し可能に格納しておくことによって、実際の母機への組み込みの際に、油圧機器と共に接続されたサーボアンプに、通信機を介して当該油圧機器の制御プログラムおよび制御定数を読み出させることができる。したがって、記憶部にその制御プログラムを備えた油圧機器であれば、サーボアンプは、アンプ自身に制御プログラムが記憶されていない様々な特殊設計の油圧機器にも対応可能となるため、各油圧機器に専用のサーボアンプを対として用意する必要はない。
例えば、母機としての油圧シリンダが射出成形機である場合、その射出成形機に適した流量特性となるように設計された油圧機器が選択されて組み合わされるが、そのスプールのゼロクロス近傍の制御精度は重要ではなく、母機の動作種別によって油圧シリンダの出力荷重に相当する油圧力を制御するか、油圧シリンダの速度に相当する流量を制御するかのいずれかに切り換えられる。このため、図5に示すように、スプールの変位可能範囲の中間に流量特性の変化点が存在することから、この中間変化点での再現性と外乱抑制を改善するようにスプール変位制御ゲインを高める制御プログラムによって当該油圧機器は適切に駆動制御される。よって油圧機器の記憶部にこの制御プログラムを格納しておくことによって、その制御プログラムを備えていない既存のサーボアンプでも、油圧機器の記憶部から読み出させて、油圧機器の適切な駆動制御を行うことができる。
また、油圧シリンダの位置制御が重要である場合に選択される油圧機器では、4ポート(A,P,B,T)構造において、図6に示すように、ポートP→A流れとポートP→B流れとが共にゼロとなるゼロクロス近傍の直線性と連続性が母機の性能への影響が大きいため、ゼロクロス近傍での油圧サーボ弁駆動電流がP→A方向とP→B方向との駆動力を拮抗させてスプール制御精度を高める制御プログラムが用いられる。当該油圧機器の記憶部にこの制御プログラムを格納しておけば、予めその制御プログラムが記憶されていないサーボアンプでも、記憶部から該制御プログラムを読み出させて油圧機器の適切な駆動制御を行うことができる。
以上のように、油圧機器に適合した制御プログラムと制御定数がその記憶部に格納されていれば、サーボアンプは、油圧機器との接続時に記憶部からその制御プログラムと制御定数を読み出して、当該油圧機器の駆動制御に利用することができるため、製造過程で油圧機器とサーボアンプとを対として一体化したり直接搭載することなく、それと同等以上の簡便性を母機への組み込み時の調整工程にて実現できる。
また、母機に組み込まれて長時間の使用が経過した後、サーボアンプのみが故障したとしても、新たに接続されたサーボアンプに再度油圧機器の特性情報としての流量特性情報や制御プログラムおよび制御定数を読み出させることができるため、油圧機器をも共に対として交換する必要がなくサーボアンプのみの交換ですむ。また、油圧機器を変更する場合でも、その新しい油圧機器の記憶部に特性情報が読み出し可能に記憶されていれば、既存のサーボアンプに新しい油圧機器の特性情報を読み出させて適合させることができる。
なお、制御プログラムと制御定数は、適合する油圧機器の種別によって作成された番号に紐付けて、この番号で対応する制御プログラムおよび制御定数の読み出し、書換え等の管理を行うのが簡便である。例えば、対象母機に油圧機器と共に組み合わされるサーボアンプにすでに各種油圧機器の制御プログラムが記憶されている場合も考えられるため、まず記憶部から番号を読み出して、サーボアンプにすでに対応する番号の制御プログラムが記憶されていれば、サーボアンプは自身に記憶されている制御プログラムを選択して使用することができる。そして、対象の油圧機器が特殊設計のもので、その制御プログラムが既存のものに一致しない番号のものであれば、サーボアンプはその特殊な制御プログラムを油圧機器の記憶部から読み出せばよい。なお、記憶部に制御プログラムと共に格納される制御定数は、プログラム内にセットされる形態としても、単独で扱われる形態としても良い。
サーボアンプは、指令信号に応じて、その指令値と位置検出器からの検出信号の位置検出値との偏差に基づいて油圧機器の制御機構をフィードバック制御する。この場合、図7に示すように、まず指令値CVと位置検出値DVとの関係を合わせるため、それぞれに対して較正演算が行われてから両者の差異である偏差量が得られる。このとき、ゼロ−スパン較正演算の係数定数(CZc−CSc、DZc−DSc)が存在し、されにそれぞれに対するフィルタ処理の係数定数(CFc、DFc)が必要となる。そして、これら較正後の指令値と位置検出値との偏差量に対してPID制御の各項係数定数(比例係数Pc、積分係数Ic、微分係数Dc)を用いた演算が行われ、駆動電流の制御指令値CCVが算出される。駆動電流も同様のフィードバック制御演算が行われ、駆動電流制御機構への制御指令値が決定される。
本発明では、記憶部にこれらPID制御定数などの制御補償に関わる値を格納しておくことによって、サーボアンプに、フィードバック制御に必要な係数定数を読み出させて制御補償演算プログラム上の係数値を更新させ、油圧機器の最適な制御を行わせることができる。さらに、油圧機器の設計変更や、新しい特殊設計の油圧機器への交換の際には、記憶部内の係数値を変更してこれをサーボアンプに読み出させて更新させるだけで対応することが可能となり、サーボアンプ自体の交換や再調整をする必要がなくなって簡便性が向上する。
また本発明においては、記憶部にさらに異常検知用電流設定値が格納されていれば、サーボアンプは、接続時に読み出されたこの異常検知用電流設定値を、油圧機器が組み込まれた母機の起動毎に測定される駆動電流測定値と比較して、該電流設定値以上の過電流が測定された場合に、警告信号を出力することができる。次の母機稼働の実使用直前でこの警告信号が発生されれば、ユーザーは、実使用前に容易に異常状態を把握できる。これにより、バルブ機構のメンテナンスを行ったり、部品を交換することができるため、異常状態での母機の稼働を回避できる。
このような母機起動毎の駆動電流の測定は、サーボアンプ起動毎に自動的にスプールをその全動作範囲にわたって一定速度で移動させ、その際のスプール駆動電流を数点で測定させればよい。通常、母機の油圧システムを起動する際には、前もってサーボアンプの電源が投入されるため、サーボアンプの電源投入直後は油圧機器のスプール位置が変化しても母機側は動作せず、またサーボアンプに油圧オフなどの信号を入力することで油圧機器のスプール位置を変化させても問題ない条件とすることは容易である。異常検知用電流設定値は、その油圧機器の駆動電流として異常と見なされる閾値より若干小さい過電流値を設定すればよい。スプールとスリーブとの間に異物が蓄積したり、引っかかったりしてスプール変位が困難となった場合には、前記電流設定値を超える過電流が発生し、サーボアンプはこれに基づいて警告信号を出力することも可能となる。
さらに、本発明の記憶部が、その油圧機器の出荷前に弁部材を移動させて測定された駆動電流値を駆動電流初期値として格納しており、母機起動毎の駆動電流測定値を記憶し経時的に蓄積する機能を備えたものとすることによって、サーボアンプは、駆動電流初期値からの経時的変化に基づいて異常検知用電流設定値に達する時期を予想診断することが可能となり、その時期を知らせたり、その直前に注意信号を出力することができる。ユーザーは注意信号によって、近づいたバルブ機構の寿命や故障の可能性を把握することができ、メンテナンスや交換の準備をしておくことができる。さらに、前回の測定値との比較によって、その電流値の変化が急激である場合にも、注意信号を出力する構成とすることによって、何らかの不良状態の発生の可能性を示すこともできる。
なお、スプール等の弁部材の位置検出工程は、従来同様に、位置検出器から出力されるアナログ信号がA/D変換器を介してデジタル化され、そのデジタル信号を演算処理してデジタルの検出信号として位置検出値が通信機を介してサーボアンプへ送信される。従って、本発明の通信機は、サーボアンプとの間でデジタル通信の送受信ができるものであればよく、好ましくは、いわゆる高速デジタル通信が可能でさらに長距離伝送も可能な送受信機能を備えた通信機とする。例えば、産業用フィールドバス通信システムや産業用イーサネット通信システムをサーボアンプと油圧機器との通信接続に採用できるが、実際のサーボアンプと母機側油圧機器との距離や環境に応じて適宜設定すれば良い。
また、本発明の記憶部としては、書換え可能な不揮発性メモリでよく、演算処理部としては、CPUやDSPまたはFPGA等のデジタル信号処理ICが挙げられる。よって、通信機に必要なデジタル通信機能は、演算処理部からの位置検出信号の送信、不揮発メモリからの読み出し値の送信および不揮発メモリへの書き込み値の受信、および通信の正確さを検出するためのチェックコードの送受信である。
なお、本発明においては、弁部材に直接的に装着される位置検出器以外の演算処理部、記憶部および通信機は、位置検出器付近に配置する構成と、位置検出器から離して油圧機器本体側に配置する構成とが可能である。例えば、位置検出器と同一ハウジング内に一体的に設ける場合には、位置検出装置としてまとめた形で製造しておくことができ、各種の油圧機器に簡便に取り付けることができる。また、この場合、位置検出器側に設けることで油圧機器としては部品点数が減り、製造時の組立てが簡便である。ただし、油圧機器や位置検出器の種類によっては、位置検出装置として油圧機器に合わせたケーシング設計が必要となる場合や、油圧機器側の取り付け部を適合させる形状設計が必要となることも考えられる。
一方、演算処理部と記憶部と通信機とが位置検出器から分離された状態で油圧機器の本体ハウジング側に設けられる構成とした場合には、油圧機器自体の形状にかかわらず、シンプルな箱状のケーシング内にセンサアンプとしてまとめることができ、油圧機器の本体ハウジングで取り付けやすい場所や外形占有寸法に余裕のある任意の場所に配置することが可能である。特に、位置検出器の形状が、検出可能な変位長や、例えばLVDTにおいてコア側へ油圧流入する構造である場合に必要とされる耐圧能力等の違いで、外形寸法も異なる場合にも、位置検出器と切り離されたセンサアンプ側の外形状を考慮する必要が無いため、油圧機器本体、位置検出器、センサアンプの設計上の自由度が大きい。
ただし、位置検出器から分離されたセンサアンプは、油圧機器の製造過程で製造され、取り付けられるため、位置検出器から出力される微弱アナログ信号配線の保護構造も必要となり、油圧機器としては部品点数と製造工程が増加する。従って、位置検出器側に一体的に設けて位置検出装置として油圧機器に装着する構成とするか、位置検出器と分離されたセンサアンプとして油圧機器の本体側に配置する構成とするかは、対象の油圧機器に応じて適宜選択すれば良い。
本発明の第1の実施例による位置検出器付き油圧機器として、油圧機器の特性情報を格納した記憶部も位置検出器11としてのLVDTと同一ハウジング内に備えた位置検出装置10がバルブ本体部2の端部に装着された直動形の油圧リニアサーボ弁1を、サーボアンプ30との接続状態で図1の概略構成図に示す。
本実施例の油圧リニアサーボ弁1は、略筒状のバルブ本体部2と、リニアモータ部5、位置検出装置10とから構成される。バルブ本体部2は、スリーブ3と該スリーブ3内を摺動するスプール4および4つのポート(P,A,B,T)によって構成されている。このバルブ本体部2は、スプール4が中立点にあるときにこれらのポート(P,A,B,T)が閉じ、中立点からスプール4が変位するとその変位量に応じてポートが開いて圧油が流れるゼロラップ構造となっている。
リニアモータ部5は、ボイスコイルモータで構成されており、指令信号Csに応じた駆動電流DIがサーボアンプ30から供給された可動コイル7が、ネオジウム・鉄・ホウ素の希土類永久磁石6が作る磁界内で往復運動することによって、該可動コイル7に連結されたスプール4を直接駆動させるものである。
位置検出装置10では、非接触・高応答な磁気式のスプール位置検出器11としてのLVDTが、スプール4の端部に装着されている。即ち、スプール4に延設されたロッド12の先端にコア13が固定され、該コア13が内部に挿入される管部材14がバルブ本体部2のハウジング側面から突設されており、管部材14の外周で、中央に巻かれた一次コイル15とその両側に対称に巻かれた一対の二次コイル16とで検出コイルが構成されている。一次励磁された一次コイル15に対してスプール4と共に変位する検出コイル内のコア13の位置に応じて変化する二次コイル16間の差動電圧が出力される。この電圧出力のアナログ信号は、A/D変換器17によってデジタル化された後、演算処理部18でデジタル信号処理を経て位置検出値としてのデジタル検出信号が得られる。得られた位置検出信号は、通信機20から高速デジタル通信により後述するサーボアンプ30の通信機31へ送信される。
さらに、本実施例における位置検出装置10には、不揮発性メモリからなる記憶部19が備えられており、この記憶部19には、油圧リニアサーボ弁1の特性情報が読み出し可能に格納されていると共に、該油圧リニアサーボ弁1に適合する制御プログラムと制御定数とが番号を付されて読み出し可能に且つ書換え可能に格納されている。即ち、位置検出装置10は、位置検出器(LVDT)11と、A/D変換器17と、D/A変換器21と、演算処理部18と、記憶部19および通信機20とが同一ハウジング内に一体的にまとめて配置されている。
サーボアンプ30は、油圧リニアサーボ弁1と接続されて起動されると、位置検出装置10の通信機20との間で高速デジタル通信接続を確立する通信機31が内蔵されていればよい。そして、従来と同様に、母機側のコントローラからの指令信号Csと位置検出装置10からフィードバックされる検出信号との偏差に基づいて、制御指令値を求め、この制御指令値に応じて、リニアモータ部5への供給電流を制御する演算処理部32が備えられている。この演算処理部32では、位置検出装置10との通信接続時に、通信機31、20を介して記憶部19から油圧リニアサーボ弁1の特性情報を読み出すことができるため、特性情報に含まれる油圧機器に適合した制御プログラムおよび制御定数や流量特性等を用いて、リニアモータ部5に対して適切な制御が簡便に行われる。なお、サーボアンプ30には、アンプメモリ35に過去に読み込まれた各種油圧機器の番号付き制御プログラムが記憶されている場合もある。
記憶部19に格納されている具体的な特性情報の例を以下に挙げる。
(1) 位置検出器(本実施例ではLVDT)の型式と製造番号
(2) 位置検出器の較正値(位置検出器の製造検査時のみ使用)
(3) 油圧機器(本実施例ではリニアサーボ弁)の型式と製造番号
(4) 油圧機器に適合した制御プログラム番号
(5) (4)の制御プログラムのバイナリコード
(6) 油圧機器に最適な制御定数
(7) 油圧機器の製造検査時に測定された位置検出値に対する流量値(較正情報)と指令信号に対する流量(流量特性情報)
(8) 油圧機器の製造検査時のスプールを一定速度で移動させて測定された位置検出値に対する駆動電流初期値および異常検知用電流設定値(駆動電流特性情報)
(9) 油圧機構の駆動経過時間と起動回数
(10)油圧機器の起動毎の経過時間とスプールを一定速度で移動させて測定された位置検出値に対する駆動電流値(予想診断用)
(1) 位置検出器(本実施例ではLVDT)の型式と製造番号
(2) 位置検出器の較正値(位置検出器の製造検査時のみ使用)
(3) 油圧機器(本実施例ではリニアサーボ弁)の型式と製造番号
(4) 油圧機器に適合した制御プログラム番号
(5) (4)の制御プログラムのバイナリコード
(6) 油圧機器に最適な制御定数
(7) 油圧機器の製造検査時に測定された位置検出値に対する流量値(較正情報)と指令信号に対する流量(流量特性情報)
(8) 油圧機器の製造検査時のスプールを一定速度で移動させて測定された位置検出値に対する駆動電流初期値および異常検知用電流設定値(駆動電流特性情報)
(9) 油圧機構の駆動経過時間と起動回数
(10)油圧機器の起動毎の経過時間とスプールを一定速度で移動させて測定された位置検出値に対する駆動電流値(予想診断用)
本実施例の位置検出装置10付きの油圧リニアサーボ弁1の製造過程で行われる調整工程として、以下が挙げられる。まず位置検出装置10において、位置検出器11としてのLVDTの型式と製造番号と共に、その機種の有効変位範囲を記憶部19に記憶させておく。さらに該LVDTの機械的中立点と定格変位点とにコア13を配置し、各点でデジタル信号を出力するように調整データを記憶部19に記憶させておく。また、記憶部19には、該位置検出装置10が装着される油圧リニアサーボ弁1の型式と製造番号も記憶される。
一方、油圧リニアサーボ弁1に位置検出装置10が装着される際に、バルブ本体部2のスリーブ3内で、スプール4が位置するバルブ機構の中立点とLVDTの機械的中立点とが一致するように、LVDT11の本体とスプール4とが組み立てられる。組み立て後、検査用アンプを用いてスプール4を移動させながら、LVDTのコアの変位位置によって出力される位置検出値に対するバルブ流量を計測し、バルブの流出ポートが切り替わる中立点の位置検出値と各ポートの定格流量となる位置検出値とを記憶部19に記憶させる。この位置検出値に対する流量特性は、実使用前にサーボアンプ30による原点補正で較正情報 として利用され、LVDTの取り付け位置の精密な微調整は不要となる。
さらに、計測結果から位置検出値に対する流量値の係数を算出して、この係数が明らかに変化する位置をこの油圧リニアサーボ弁1に固有の変化点として判定し、各変化点に対応する位置検出値と係数とを記憶部19に記憶させる。また、位置検出値に対する駆動電流値を測定し、その駆動電流特性も記憶部19に記憶させる。この駆動電流特性は、後の予測診断用の基準として利用される。さらに、出荷前に、記憶部19には、油圧リニアサーボ弁1に適合された制御プログラムと制御定数も番号を付与されて記憶される。
次に、本実施例による油圧リニアサーボ弁1がサーボアンプ30に接続され、該サーボアンプ30が起動された後の動作を図2のフロー図に沿って以下に示す。まず、サーボアンプ30が起動されると、位置検出装置10との間に通信接続が確立される(S100)。
該通信接続状態にて、通信機20,31を介して記憶部19から(1) 位置検出器の型式と製造番号、の読み出し(S101)がなされ、この型式と製造番号の適合判定(S102)が行われる。適合否であれば、警告信号の出力とサーボアンプ30の起動中止(S103)が行われる。適合と判定されれば、記憶部19から(3) 油圧機器(油圧リニアサーボ弁1)の型式と製造番号の読み出し(S104)がなされ、その型式と製造番号の適合判定(S105)が行われる、適合否であれば、警告信号の出力とサーボアンプ30の起動中止(S106)が行われる。適合と判定されれば、記憶部19から(4) 制御プログラム番号の読み出し(S107)がなされる。その番号が異常か正常かの番号判定(S108)がなされ、異常番号と判定された場合は警告信号の出力とサーボアンプ30の起動中止(S109)が行われる。
番号が正常であると判定された場合、その番号に相当する制御プログラムが適合か特殊かの判定(S110)がなされる。即ち、サーボアンプ30のアンプメモリ35にすでに記憶されている制御プログラムのうちのいずれかに適合しているか、あるいはアンプメモリ35には存在しない特殊なものであるかがその制御プログラム番号で判定される。その番号から適合する制御プログラムが既存すると判断されれば、サーボアンプ30においてアンプメモリ35からその番号の制御プログラムの選択(S111)がなされる。
一方、制御プログラム番号の適合・特殊判定(S110)で番号から特殊な制御プログラムであると判定された場合には、記憶部19からその(5) 制御プログラムのバイナリコード、が読み出され、制御プログラムが配置されるアンプメモリ35の範囲が書換えられる(S120)。以上の過程で制御プログラムが特定された後、さらにその最適な制御定数の読み出しと、前記制御プログラム定数の書換え(S112)が行われる。次いで記憶部19からの(7) 油圧機器の製造検査時の流量特性情報の読み出しと、サーボアンプ30への指令値CVに対する位置の目標値補正曲線の更新(S113)が行われる。
その後、記憶部19からの(8) 駆動電流特性情報の読み出しがなされ、自律的にリニアモータ部5を駆動させてスプール4を全動作範囲で一定速度で移動させての駆動電流測定(S114)が行われる。そして、読み出された駆動電流特性に含まれる異常検知用電流設定値としての過電流設定値と駆動電流測定値とを比較した診断判定(S115)が行われる。診断が異常判定の場合は、警告信号の出力(S116)がなされる。ユーザーは、この警告信号によって、油圧リニアサーボ弁1のバルブ機構が不良状態であると判断でき、具体的な検査を行い、メンテナンスや部品交換が行える。
診断が正常判定であれば、記憶部19から、前回までの(9) 油圧機器の駆動経過時間と起動回数、および前回までの(10)油圧機器の起動毎の経過時間とスプールを一定速度で移動させて測定された位置検出値、が読み出され、今回の起動回数が更新されると共に、ステップS114で行った駆動電流値の測定結果が記憶、蓄積される(S117)。ここで、駆動電流特性としての駆動電流初期値からの経時変化も更新され、その変化率の延長や大きな変化点の検出から、異常駆動電流値に達する時期を予想診断しても良い。そして、制御定数が書換えられて最適化された制御プログラムに従って、母機側のコントローラからの指令信号に応じて油圧リニアサーボ弁1に対する通常駆動制御(S118)が行われる。通常動作が完了してサーボアンプ30の電源が遮断された際に、アンプ内部の蓄電部電力によって位置検出器10への通信が行われ、今回起動した経過時間のデータ信号が送られ、記憶部19にて駆動経過時間と起動回数が更新される(S119)。
以上のように、本実施例の油圧リニアサーボ弁1においては、記憶部19に予め格納された油圧機器の特性情報を任意のサーボアンプに読み込ませて簡便に調整できるため、製造過程での精密な調整工程も、現場での母機を試運転させながら行う調整工程も必要なくなり、優れた簡便性が得られる。
以上の第1の実施例においては、記憶部19を含む、位置検出器11から出力されたアナログ信号のデジタル化から検出信号を出力するまでに必要な機器を位置検出器11と同一ハウジング内に配置して位置検出装置10としてまとめた構成を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、位置検出器11とそれ以外の機器とを分離した配置も可能である。
そこで、本発明の第2の実施例として、油圧機器の特性情報を格納した記憶部を位置検出器から離して油圧機器のバルブ本体部のハウジング側に搭載した構成の油圧リニアサーボ弁51を、サーボアンプ30との接続状態で図3の概略構成図に示す。本実施例では、記憶部73をはじめ、第1の実施例で位置検出装置10内に配置されていた位置検出器以外の機器を箱形ケーシング内に納めたセンサアンプ70として、バルブ本体部52のハウジング側に装着したものであり、それ以外のバルブ本体部52の構成は、図1のバルブ本体部2と共通するものである。
即ち、本実施例の油圧リニアサーボ弁51のバルブ本体部52は、略筒状形状であり、一端側にリニアモータ部55を、他端側に位置検出器61としてのLVDTを備えたものであり、スリーブ53と該スリーブ53内を摺動するスプール54および4つのポート(P,A,B,T)によって構成され、ゼロラップ構造を有するものである。
リニアモータ部55は、ボイスコイルモータの可動コイル57が、指令信号Csに応じた駆動電流DIをサーボアンプ30から供給されて、永久磁石56の磁界内で往復運動することによって、スプール54を直接駆動させるものである。
位置検出器61としてのLVDTは、コア63がスプール54に延設されたロッド62の先端に固定され、バルブ本体部52のハウジング側面に突設された管部材64の内部を往復移動可能である。本実施例においては、管部材64の外周で検出コイルを構成する中央の一次コイル65とその両側の一対の二次コイル66とから位置検出器61のハウジング外へ延びる微弱アナログ信号配線60がセンサアンプ70まで配設されている。
LVDTにおいて、一次励磁された一次コイル65に対してスプール54と共に変位する検出コイル内のコア63の位置に応じて変化する二次コイル66間の差動電圧として出力されたアナログ信号は、微弱アナログ信号配線60を介してセンサアンプ70へ送信され、A/D変換器71によってデジタル化された後、演算処理部72でデジタル信号処理を経て位置検出値としてのデジタル検出信号が得られる。得られた位置検出信号は、通信機74から高速デジタル通信によりサーボアンプ30の通信機31へ送信される。また、センサアンプ70のケーシング内には、記憶部73も備えられており、該記憶部73には、油圧リニアサーボ弁51に関する特性情報(1) 〜(10)が格納されている。
本実施例のように、A/D変換器71とD/A変換器75と、演算処理部72と記憶部73および通信機74とが、位置検出器61から分離されたセンサアンプ70として油圧機器の本体ハウジング側に装着される構成の場合、単独のセンサアンプ70は、様々な外形状の油圧機器への装着に容易に対応できる。したがって、結果的に、油圧機器本体、位置検出器、センサアンプそれぞれの設計上の自由度が大きくなる。
また、本実施例では、センサアンプ70と位置検出器61とが分離配置されているが、サーボアンプ30が接続されて起動され、センサアンプ70とサーボアンプ30との間で通信機74,31を介した高速デジタル通信接続が確立された後は、第1の実施例と同様に図2に示す動作が行われる。
なお、以上の実施例においては、位置検出器としてLVDTを備えた油圧機器の場合を示したが、本発明はこれに限定するものではなく、弁部材の位置検出が可能な他の磁気式センサや光学式センサ、あるいは磁歪式センサを装着する場合でも同様に有効であることは言うまでも無い。
1,51:油圧リニアサーボ弁
2,52:バルブ本体部
3,53:スリーブ
4,54,201:スプール
5,55:リニアモータ部
6,56:永久磁石
7,57:可動コイル
10:位置検出装置
11,61:位置検出器(LVDT)
12,62,202:ロッド
13,63,203:コア
14,64,204:管部材
15,65,205:一次コイル
16,66,206:二次コイル
17,33,71:A/D変換器
18,72:演算処理部
19,73:記憶部
20,74:通信機
21,34,75:D/A変換器
30,300:サーボアンプ
31:通信機
32:演算処理部
35:アンプメモリ
60:微弱アナログ信号配線
70:センサアンプ
200:比例電磁式方向流量制御弁
210:ネジ構造
220:調整バネ
230:ナット
2,52:バルブ本体部
3,53:スリーブ
4,54,201:スプール
5,55:リニアモータ部
6,56:永久磁石
7,57:可動コイル
10:位置検出装置
11,61:位置検出器(LVDT)
12,62,202:ロッド
13,63,203:コア
14,64,204:管部材
15,65,205:一次コイル
16,66,206:二次コイル
17,33,71:A/D変換器
18,72:演算処理部
19,73:記憶部
20,74:通信機
21,34,75:D/A変換器
30,300:サーボアンプ
31:通信機
32:演算処理部
35:アンプメモリ
60:微弱アナログ信号配線
70:センサアンプ
200:比例電磁式方向流量制御弁
210:ネジ構造
220:調整バネ
230:ナット
Claims (6)
- サーボアンプによって指令信号に応じて駆動制御される油圧機器であって、弁開度と作動油流れ方向とを決定する弁部材の位置に応じた出力信号を発生する位置検出器を一体的に備え、前記サーボアンプによって、前記指令信号の指令値と前記出力信号に基づく位置検出値との偏差に基づいてフィードバック制御される位置検出器付き油圧機器において、
前記位置検出器からの出力を演算処理して前記位置検出値を検出信号として出力する演算処理部と、前記検出信号を前記サーボアンプに送信すると共に前記サーボアンプからの信号を受信する通信機と、前記油圧機器の特性情報が前記通信機を介して読み出し可能に格納されている記憶部と、を備え、
前記記憶部に格納されている前記油圧機器の特性情報には、少なくとも、予め前記油圧機器の製造過程のテストスタンドで計測して取得した、前記位置検出器による位置検出値と前記油圧機器の特性値とを対応させた較正情報と、前記指令信号に対する前記油圧機器の流量とを対応させた流量特性情報とが含まれていることを特徴とする位置検出器付き油圧機器。 - 前記記憶部に格納されている前記油圧機器の特性情報には、さらに、前記油圧機器に適合する制御プログラムと制御定数とが書換え可能に含まれていることを特徴とする請求項1に記載の位置検出器付き油圧機器。
- 前記記憶部には、前記油圧機器が組み込まれた母機の起動毎に前記弁部材を移動させて測定した駆動電流測定値と比較するための異常検知用電流設定値がさらに格納されていることを特徴とする請求項1または2に記載の位置検出器付き油圧機器。
- 前記記憶部は、前記油圧機器の出荷前に前記弁部材を移動させて測定された駆動電流値が駆動電流初期値として格納されていると共に、前記母機の起動毎の駆動電流測定値を記憶して経時的に蓄積する機能を備えていることを特徴とする請求項3に記載の位置検出器付き油圧機器。
- 前記演算処理部と前記通信機と前記記憶部とが、前記位置検出器と同一ハウジング内に一体的に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の位置検出器付き油圧機器。
- 前記演算処理部と前記通信機と前記記憶部とが、前記油圧機器の本体ハウジング側に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の位置検出器付き油圧機器。
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