後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
一対の曳航ロープと、被曳航船の船尾に取り付けられる船尾用部材と、を有する曳航部材を収容するバッグであって、本体部と、前記本体部に対して開閉可能であり、前記本体部との間に前記曳航部材を収容する開閉部材と、前記本体部と前記曳航部材との間に設けられ、前記船尾用部材を前記被曳航船に固定する固定部を挿通可能な開口と、前記本体部と前記開閉部材との間に設けられ、左右それぞれにおいて前記曳航ロープを挿通可能な一対の挿通口とを備えることを特徴とするバッグが明らかとなる。このようなバッグによれば、被曳航船を安定して曳航するための曳航部材を簡易な作業でセットすることができる。
前記開口は、上側に設けられていることが望ましい。これにより、固定部を被曳航船に固定すれば、そのまま自然に被曳航船にバッグを吊り下げることができる。
前記固定部は、前記被曳航船に固定するための固定部材を有しており、前記開口の近傍に、前記固定部材を接続するための接続部が設けられていることが望ましい。これにより、固定部材を接続部に接続し易くなる。
前記曳航ロープの端部には、他の部材に接続するための接続部が設けられており、前記挿通口の近傍に、前記接続部を接続するための取付部が設けられていることが望ましい。これにより、曳航ロープの端部の接続部を取付部に接続し易くなる。
前記曳航ロープを挿通するための挿通部を有し前記被曳航船に巻き付けるためのベルトを収容する収容部を備えることが望ましい。これにより、被曳航船を安定して曳航するためのベルトを収容できる。
前記開閉部材は、左右に分割された右側部材及び左側部材を有しており、前記右側部材及び前記左側部材の一方を閉じた状態で他方を開くことが可能であることが望ましい。これにより、一対の曳航ロープを別々に取り出すことが可能になり、曳航部材を簡易な作業でセットすることができる。
前記本体部に一対の肩ベルトが設けられており、前記肩ベルトの中央部の中間ベルトは、両端の留め具を外すことによって前記本体部から取り外し可能であり、前記中間ベルトの前記両端の前記留め具を連結することが可能であることが望ましい。これにより、中間ベルトを被曳航船に巻き付けて固定することが可能になる。
前記中間ベルトは、長さを調整するための調整部を有することが望ましい。これにより、様々な大きさの部材に対して中間ベルトを巻き付けることが可能になる。
前記留め具によって、2本の前記中間ベルトを連結することが可能であることが望ましい。これにより、様々な大きさの部材に対して中間ベルトを巻き付けることが可能になる。
前記固定部は、前記被曳航船に固定するための固定部材を有しており、前記中間ベルトは、前記固定部材を接続可能な環状部材を有することが望ましい。中間ベルトの環状部材に曳航部材の固定部材を固定することが可能になる。
一対の曳航ロープと被曳航船の船尾に取り付けられる船尾用部材とを有する曳航部材と、前記曳航部材を収容するバッグとを備え、前記バッグは、本体部と、前記本体部に対して開閉可能であり、前記本体部との間に前記曳航部材を収容する開閉部材と、前記本体部と前記曳航部材との間に設けられ、前記船尾用部材を前記被曳航船に固定する固定部を挿通可能な開口と、前記本体部と前記開閉部材との間に設けられ、左右それぞれにおいて前記曳航ロープを挿通可能な一対の挿通口とを備えることを特徴とする曳航器材セットが明らかとなる。このような曳航器材セットによれば、被曳航船を安定して曳航するための曳航部材を簡易な作業でセットすることができる。
一対の曳航ロープと船尾用部材とを有する曳航部材を収容したバッグであって、本体部と、前記本体部との間に前記曳航部材を収容する開閉部材と、前記本体部と前記曳航部材との間に設けられ前記船尾用部材を被曳航船に固定する固定部を挿通した開口と、前記本体部と前記開閉部材との間に設けられ、左右それぞれにおいて前記曳航ロープを挿通した一対の挿通口とを備えるバッグを準備すること、前記固定部を前記被曳航船に固定すること、前記固定部を前記被曳航船に固定した後、前記バッグから一対の前記曳航ロープを取り出すとともに、前記被曳航船の船尾に前記船尾用部材を取り付けることを行うことを特徴とする曳航方法が明らかとなる。このような曳航方法によれば、被曳航船を安定して曳航するための曳航部材を簡易な作業でセットすることができる。
===比較例===
本実施形態の曳航器材を説明する前に、比較例の曳航方法について説明する。
図9A及び図9Bは、第1比較例の曳航方法の説明図である。第1比較例の曳航方法は、船舶(ここでは水上オートバイ)の船首部のバウアイに曳航ロープ(曳航索)を掛けて、船舶を曳航するものである。
一般的に、曳航ロープは、曳航船と被曳航船を足した長さの3倍以上の長さが必要であるとされている。このため、曳航ロープを被曳航船のバウアイに掛けると、この長さの曳航ロープの自重がバウアイにかかることになる。この結果、図9Aに示すように、前方向に向かう力と下方向に向かう力(曳航ロープの自重)との合力がバウアイにかかるため、図9Bに示すように、被曳航船の船首を下げる方向に被曳航船に力がかかり、被曳航船の姿勢が崩れるおそれがある。なお、バウアイは重心から比較的離れて位置するため、曳航ロープの自重がバウアイにかかると、被曳航船にピッチ軸回りのモーメント力がかかることによって、被曳航船の船首を下げる方向に被曳航船に力がかかり易い。
特に、水上オートバイは、一般的に、被曳航船の船首が下がり易く構成されている。このため、被曳航船が水上オートバイの場合、第1比較例の曳航方法では、曳航力によって被曳航船の船首が特に下がり易いため、曳航時に被曳航船の姿勢が特に崩れ易いおそれがある。
図10A〜図10Cは、第2比較例の曳航方法の説明図である。第2比較例の曳航方法は、船舶(ここでも水上オートバイ)のハンドルに曳航ロープ(曳航索)を掛けて、船舶を曳航するものである。第1比較例の曳航方法の場合、作業者が水中でバウアイに曳航ロープを掛ける作業が必要になるため、第2比較例のように、曳航ロープをハンドルに掛けることがある。
第2比較例では、図10Aに示すように、前方向に向かう力と下方向に向かう力(曳航ロープの自重)との合力がハンドルにかかるため、被曳航船にピッチ軸回りのモーメント力がかかることによって、被曳航船の船首を下げる方向に被曳航船に力がかかり、被曳航船の姿勢が崩れるおそれがある。更に、図10Aに示すように、ハンドルは、一般的に被曳航船の重心よりも高い位置にあるため、ハンドルに曳航力がかかると、被曳航船にピッチ軸回りのモーメント力がかかることによって、被曳航船の船首を下げる方向に被曳航船に力がかかり易い。
また、図10Bに示すように、曳航時に曳航船(不図示)が針路を変更することがある。この結果、被曳航船には、ピッチ軸回りのモーメント力だけでなく、ロール軸回りのモーメント力も加わり、被曳航船の姿勢が崩れ易くなる。特に、図10Cに示すように、ハンドルが被曳航船のメタセンターから見て重心の反対側に位置する場合、例えば図中のハンドルに左方向に向かう力がかかると、船体の傾きを復元させる力(船体の重量によるメタセンター回りのモーメント力)とは反対方向のモーメント力が船体にかかるため、被曳航船のロール軸方向の姿勢が特に不安定になり易くなる。
上記の第1比較例及び第2比較例の曳航方法と比べて、次述する本実施形態によれば、被曳航船の姿勢を安定させることが可能である。以下、本実施形態について説明する。
===本実施形態===
<曳航器材>
図1A及び図1Bは、本実施形態の曳航器材1の使用時の様子の説明図である。
以下の説明では、図1A及び図1Bに示すように、被曳航船の前後方向に沿って、「前」及び「後」を定める。同様に、図1A及び図1Bに示すように、被曳航船の左右の方向に沿って、「左」及び「右」を定める。また、前後方向及び左右方向に垂直な方向を「上下方向」とし、被曳航船の船底の側を「下」とし、逆側を「上」とする。なお、船舶のロール軸方向は前後方向であり、ピッチ軸方向は左右方向であり、ヨー軸方向は上下方向である。
曳航器材1は、小型の船舶の曳航に用いられる器材である。図中には、小型の船舶の一例として、水上オートバイ(特殊小型船舶)が描かれている。本実施形態の曳航器材1は、特に水上オートバイを曳航する場合に好適に用いることができる。なお、本実施形態の曳航器材1は、被曳航船が水上オートバイに限られるものではなく、例えばモーターボートやミニボート(長さ3m未満のボート)などの他の種類の小型の船舶の曳航にも用いることが可能である。
曳航器材1は、曳航部材10と、ベルト50とを備えている。
図2は、曳航部材10の説明図である。
曳航部材10は、被曳航船を曳航するための部材である。曳航部材10は、一対の曳航ロープ20と、船尾用部材30とを有する。
曳航ロープ20は、被曳航船を曳航するためのロープである。曳航ロープ20は、曳航索や引き綱などと呼ばれることもある。曳航船が曳航ロープ20を引っ張ることによって、被曳航船を曳航することになる。曳航ロープ20は、被曳航船の前後方向の長さよりも長いロープである。曳航ロープ20の基端には、船尾用部材30が配置されている。曳航ロープ20の先端には、接続部21を構成する接続端部21A(アイ)が設けられている。つまり、曳航ロープ20の一端(基端)は船尾用部材30に固定されており、他端には接続部21が設けられている。
一対の曳航ロープ20が曳航部材10に設けられている。一対の曳航ロープ20は、船尾用部材30の左右の縁からそれぞれ延び出ている。図1A及び図1Bに示すように、一対の曳航ロープ20は、被曳航船の左右の舷側(右舷及び左舷)のそれぞれに前後方向に沿って配置されることになる。このため、曳航ロープ20は、少なくとも被曳航船よりも長いことが望ましい。
本実施形態では、一本のロープの中央部に船尾用部材30を取り付けることによって、一本のロープで一対の曳航ロープ20を構成し、一対のロープ20のそれぞれを船尾用部材30の左右の縁から延出させている。但し、一対の曳航ロープ20をそれぞれ別々のロープで構成し、それぞれのロープの端部を船尾用部材30の左右の縁に別々に固定しても良い。
接続部21は、曳航ロープ20の端部を他の部材に接続するための部位である。接続部21は、曳航ロープ20の端部に設けられている。一対の接続部21は、曳航時に被曳航船の前側で連結されることになる。ここでは、接続部21は、接続端部21Aと、接続部材21Bとを有する。
接続端部21Aは、接続部材21Bを取り付けるための部位である。ここでは、接続端部21Aは、曳航ロープ20の端部に設けられたアイ(輪っか)である。但し、接続端部21Aは、接続部材21Bを取り付けることができれば、アイに限られるものではない。
接続部材21Bは、曳航ロープ20の端部を他の部材に接続するための部材(部品)である。ここでは、接続部材21Bは、開閉可能な金属リングで構成されており、具体的にはカラビナである。但し、接続部材21Bは、曳航ロープ20の端部を他の部材に接続できれば、カラビナに限られるものではない。
なお、接続部21は、接続端部21A(アイ)及び接続部材21B(カラビナ)で構成されたものに限られない。例えば、接続部21を接続端部21A(アイ)のみで構成することによって、接続部21が接続部材21Bを有していなくても良い。但し、接続部21が接続部材21Bを有することによって、後述するように、曳航ロープ20の端部を器材携行バッグ70に接続することが可能になる。
また、曳航ロープ20の端部に接続部21が無くても良い。但し、曳航ロープ20の端部に接続部21を設けることによって、曳航時に曳航ロープ20を結び付けるなどのロープワークが不要になるため、被曳航船への曳航器材1の取り付けが容易になる。このため、接続部21が曳航ロープ20の端部に設けられることが望ましい。
本実施形態では、図1Aに示すように、一対の接続部21が連結部材23によって連結されることになる。連結部材23は、一対の接続部21を連結する部材である。また、連結部材23は、一対の曳航ロープ20の端部同士を連結するとともに、一対の曳航ロープ20の端部と曳航船側の部材(例えば曳航船側の曳航ロープ)とを連結するための部材である。連結部材23の被曳航船側の端部は、一対の接続部21(接続部材21B)を連結する。連結部材23の曳航船側(被曳航船側とは反対側)の端部は、開閉可能な連結部を有しており、曳航船側の部材(例えば曳航船側の曳航ロープ20の端部)と連結可能である。ここでは、連結部材23は、回転部を有する部材で構成されており、具体的にはスイベルである。連結部材23が回転部を有することによって、連結部材23の両端が互いに回転可能になり、曳航ロープのねじれを抑制できる。但し、連結部材23は、一対の接続部21を連結できれば、スイベルに限られるものではなく、例えば回転部の無いカラビナであっても良い。また、曳航部材10が連結部材23を備えなくても良い。例えば、一対の接続部材21B(カラビナ)及び連結部材23(スイベル)を1個のカラビナで代替しても良い。
船尾用部材30は、被曳航船の船尾に取り付けられる部材である。船尾用部材30は、一対の曳航ロープ20の間に設けられた部材である。船尾用部材30の左右の縁からそれぞれ曳航ロープ20が延び出ており、船尾用部材30を被曳航船の船尾に取り付けることによって、被曳航船の船尾に曳航力を付与することができる。ここでは、船尾用部材30は、ネット(網状の部材)で構成されている。船尾用部材30をネットで構成することによって、被曳航船の船尾を覆うように船尾用部材30を被曳航船に取り付けることができ、曳航時に被曳航船の船尾が損傷することを抑制できる。また、船尾用部材30をネットで構成することによって、水が網目を通過できるため、曳航時に船尾用部材30にかかる水流による負荷を軽減できる。但し、船尾用部材30を網状の部材(ネット)以外の部材で構成しても良い。
船尾用部材30は、固定部31と、錘部33と、結索部35とを有する。
固定部31は、船尾用部材30を被曳航船に固定するための部位である。図1Bに示すように、固定部31を被曳航船のスターンアイに固定することによって、船尾用部材30を被曳航船に固定することが可能である。ここでは、固定部31は、上側接続部31Aと、固定部材31Bとを有する。
上側接続部31Aは、船尾用部材30(ネット)の上側に設けられたループ状の部位であり、固定部材31Bを取り付けるための部位である。但し、上側接続部31Aは、固定部材31Bを取り付けることができれば、ループ状に構成された部位に限られるものではない。例えば、船尾用部材30(ネット)の網目を上側接続部31Aにしても良い。
固定部材31Bは、船尾用部材30を被曳航船に固定するための部材(部品)である。ここでは、固定部材31Bは、開閉可能な金属リングで構成されており、具体的にはカラビナである。但し、固定部材31Bは、船尾用部材30を被曳航船に固定できれば、カラビナに限られるものではない。
なお、船尾用部材30に固定部31が無くても良い。但し、船尾用部材30に固定部31を設け、固定部31によって船尾用部材30を被曳航船に固定することによって、被曳航船に対する曳航部材10の左右方向の位置ズレを抑制できる。このため、固定部31が船尾用部材30に設けられることが望ましい。なお、固定部31によって船尾用部材30を被曳航船に固定することによって、船尾用部材30を被曳航船にセットするときに船尾用部材30を水没させてしまうことを防止できるという利点もある。
錘部33は、船尾用部材30の下部を水中に沈めるための部位である。ここでは、錘部33は、下側接続部33Aと、錘部材33Bとを有する。
下側接続部33Aは、錘部材33Bを取り付けるための部位である。下側接続部33Aは、船尾用部材30(ネット)の下側に設けられたループ状の部位である。但し、下側接続部33Aは、錘部材33Bを取り付けることができれば、ループ状に構成された部位に限られるものではない。例えば、船尾用部材30(ネット)の網目を下側接続部33Aにしても良い。
錘部材33Bは、船尾用部材30を水中に沈めるための錘(おもり)となる部材である。ここでは、錘部材33Bは、金属リングで構成されており、具体的にはシャックルである。但し、錘部材33Bは、船尾用部材30を水中に沈めることが可能な部材であれば、シャックルに限られるものではない。
なお、船尾用部材30に錘部33が無くても良い。但し、船尾用部材30が錘部33を有することにより、船尾用部材30の下部を水中に沈め易くなり、船尾用部材30を被曳航船の船尾に取り付ける作業が容易になる。このため、錘部33が船尾用部材30に設けられることが望ましい。加えて、錘部材33Bが被曳航船の船尾に配置されると、錘部材33Bが被曳航船の重心よりも後側に配置されるため、曳航時に被曳航船の船首が下がりにくくなり、被曳航船の姿勢を安定化させ易くなるという利点もある。このため、被曳航船が水上オートバイの場合には、錘部33が船尾用部材30に設けられることが特に望ましい。
結索部35は、船尾用部材30の縁を結び付けるための部位である。図1A及び図1Bに示すように、結索部35が船尾用部材30の左右それぞれの上縁と下縁とを結び付けることによって、船尾用部材30が袋状になり、船尾用部材30が船尾から外れにくくなる。但し、船尾用部材30に結索部35が無くても良い。
結索部35は、船尾用部材30の左右それぞれの上縁の網目に取り付けられた結索部材で構成されている。ここでは、結索部35は、開閉可能な金属リングで構成されており、具体的にはカラビナである。結索部35が開閉可能な金属リングで構成されることによって、曳航ロープ20をベルト50の挿通部52に挿通させた状態で、結索部35(カラビナ)に曳航ロープ20を挿通させることができる(後述;図7C〜図7D参照)。なお、船尾用部材30の左右それぞれの上縁にループ状の部位を設け、そのループ状の部位にカラビナを取り付けることによって結索部35を構成しても良い。
図2に示すように、本実施形態では、船尾用部材30の左右それぞれの下縁から曳航ロープ20が延び出るとともに、船尾用部材30の左右それぞれの上縁に結索部35が設けられている。そして、図1Bに示すように、曳航ロープ20を結索部35(カラビナ)に挿通させることによって、船尾用部材30の左右それぞれの上縁と下縁とを結び付けることによって、船尾用部材30が袋状になる。但し、船尾用部材30の上縁から曳航ロープ20が延び出るとともに、船尾用部材30の下縁に結索部35が設けられていても良い(曳航ロープ20の基端と結索部35との上下を逆にしても良い)。一方、本実施形態のように、船尾用部材30の下側の縁から曳航ロープ20が延び出るとともに、固定部31が設けられた船尾用部材30の上側の縁に結索部35が設けられていれば、曳航ロープ20を手繰ることによって船尾用部材30の下縁を上縁に向かって引き寄せられるため、曳航ロープ20を結索部35(カラビナ)に挿通させる作業が容易になる。
図3A〜図3Cは、ベルト50の説明図である。図3Aは、ベルト50の側面図である。図3Bは、ベルト50の底面図である。図3Cは、ベルト50の使用時の説明図である。なお、図3A及び図3Bでは、ベルト用錘部材54Bを外した状態でベルト50の本体が示されている。
ベルト50は、被曳航船の船体に巻き付けるための帯状の部材である。図1A及び図1Bに示すように、ベルト50は、被曳航船の船底に架け渡されて、上下方向に巻き付けられることになる。ベルト50は、被曳航船に対して曳航ロープ20を所定位置に配置するための部材である。ベルト50に曳航ロープ20を挿通させることによって、被曳航船に対する曳航ロープ20の位置が安定する。具体的には、図1Aに示すように、ベルト50に曳航ロープ20を挿通させることによって、被曳航船の舷側に沿って曳航ロープ20を配置できる。なお、ベルト50には曳航ロープ20を挿通させるだけなので、曳航力は、ベルト50には付与されず、曳航ロープ20を介して被曳航船の船尾に付与されることになる。
ベルト50は、結合部51と、挿通部52と、ベルト用錘部54とを有する。
結合部51は、ベルト50の本体の両端同士を着脱可能に結合する部位である。結合部51によってベルト50の両端を結合することによって、ベルト50を被曳航船に巻き付けた状態でベルト50を被曳航船に固定できる。結合部51は、被曳航船の船体の大きさに応じて調整可能に構成されていることが望ましい。ここでは、結合部51は、面ファスナーで構成されている。但し、結合部51は、ベルト50の本体の両端を結合できれば、面ファスナーに限られるものではなく、たとえばバックルなどの部材で構成されても良い。
挿通部52は、曳航ロープ20を挿通させる部位である。ここでは、挿通部52は、輪っかで構成されている。但し、挿通部52は、曳航ロープ20を挿通可能であれば、輪っかに限られるものではなく、例えば、ベルト50に形成された穴でも良い。挿通部52は曳航ロープ20の直径よりも大きな輪っかで構成されている。このため、挿通部52と曳航ロープ20との間に隙間が形成されており、挿通部52に対して曳航ロープ20の周囲に遊びがある(挿通部52に対して曳航ロープ20の若干の移動が許容されている)。挿通部52に曳航ロープ20を挿通させることによって、ベルト50に曳航力を付与させることなく、曳航ロープ20を被曳航船の舷側に配置できる。挿通部52は、ベルト50を被曳航船に巻き付けたときに、被曳航船の右舷及び左舷のそれぞれに配置されるように、ベルト50に設けられている。このため、挿通部52は、ベルト50の中央部(ベルト用錘部54)とベルト50の端部(結合部51)との間に設けられている。
ベルト50は、少なくとも2つの挿通部52(少なくとも一対の挿通部52;一対のデイジーチェーン53)を有しており、ベルト50を被曳航船に巻き付けたときに、被曳航船の右舷及び左舷のそれぞれに少なくとも1つの挿通部52が配置される。つまり、少なくとも1つの挿通部52が、ベルト50の一端(図3Aの左端)とベルト50の中央部(錘接続部54A)との間に設けられており、少なくとも1つの別の挿通部52が、ベルト50の他端(図3Aの右端)とベルト50の中央部(錘接続部54A)との間に設けられている。
本実施形態では、ベルト50を被曳航船に巻き付けたときに、被曳航船の右舷及び左舷のそれぞれに、複数の挿通部52が上下方向に並んで配置されている。右舷及び左舷のそれぞれに複数の挿通部52が上下方向に並んで配置されることによって、被曳航船の船体の大きさに応じた適切な位置の挿通部52に曳航ロープ20を挿通させることができ、様々な大きさの被曳航船に対して曳航ロープ20を適切な位置に配置できる。ここでは、ベルト50の本体に一対のデイジーチェーン53が設けられており、それぞれのデイジーチェーン53によって連続する複数の挿通部52(挿通部群)が構成されている。但し、連続する複数の挿通部52(挿通部群)は、デイジーチェーン53で構成されるものに限られない。
ベルト用錘部54は、ベルト50の下部を水中に沈めるための部位である。ここでは、ベルト用錘部54は、錘接続部54Aと、ベルト用錘部材54Bとを有する。
錘接続部54Aは、ベルト用錘部材54Bを接続するための部位である。錘接続部54Aは、ベルト50の中央部に設けられたループ状の部位である。但し、錘接続部54Aは、ベルト用錘部材54Bを接続することができれば、ループ状の形状に限られるものではない。また、ベルト50に錘接続部54Aが無くても良い。この場合、ベルト50を環状のベルト用錘部材54B(カラビナ)に挿通させるだけでも良い。但し、錘接続部54Aにベルト用錘部材54Bを取り付けることによって、ベルト用錘部材54Bの位置が安定する。このため、ベルト50が錘接続部54Aを有することが望ましい。
ベルト用錘部材54Bは、ベルト50を水中に沈めるための錘(おもり)となる部材である。ここでは、ベルト用錘部材54Bは、金属リングで構成されており、具体的にはカラビナである。但し、ベルト用錘部材54Bは、ベルト50を水中に沈めることが可能な部材であれば、カラビナに限られるものではない。
なお、ベルト50にベルト用錘部54が無くても良い。但し、ベルト50がベルト用錘部54を有することにより、ベルト50の中央部を水中に沈め易くなり、ベルト50を被曳航船に巻き付ける作業が容易になる。このため、ベルト50がベルト用錘部54を有することが望ましい。
ベルト50は、被曳航船の重心よりも前側の位置で被曳航船に巻き付けられることになる。被曳航船が水上オートバイの場合、図1A及び図1Bに示すように、ベルト50は、ハンドルとフードとの間の凹部で、被曳航船に巻き付けられる。ハンドルは、被曳航船の重心よりも前側にあるため、ハンドルとフードとの間の凹部でベルト50が被曳航船に巻き付けられると、ベルト50は、被曳航船の重心よりも前側に配置される。また、ベルト50を被曳航船に巻き付けると、ベルト50の挿通部52(複数の挿通部52のうちの少なくとも1つの挿通部52)は、ハンドルよりも下側に配置される。また、ベルト50を被曳航船に巻き付けると、ベルト50の挿通部52(複数の挿通部52のうちの少なくとも1つの挿通部52)は、メタセンター(図10C参照)よりも下側に配置される。
図1A及び図1Bに示すように、船尾に取り付けられた船尾用部材30から延び出た一対の曳航ロープ20は、舷側に配置されたベルト50の挿通部52にそれぞれ挿通された状態である。この状態では、曳航ロープ20の自重はベルト50にかかるが、第1比較例(図9A及び図9B参照)に示すバウアイと重心との距離に比べるとベルト50と重心との距離が短い。このため、本実施形態では、第1比較例と比べると、被曳航船にかかるピッチ軸回りのモーメント力を軽減することができるため、被曳航船の船首を下げる方向には被曳航船に力がかかり難くなる。この結果、本実施形態では、第1比較例と比べて、曳航時の被曳航船の姿勢を安定させることができる。
また、図1Bに示すように、曳航ロープ20は、ベルト50の挿通部52に挿通させることによって、被曳航船の船尾から前側に向かって舷側に沿って配置される。これにより、本実施形態では、曳航ロープ20の上下方向の位置と、被曳航船の重心の上下方向の位置との差を小さくすることができる。このため、本実施形態では、第2比較例(図10A参照)と比べると、曳航時に被曳航船にかかるピッチ軸回りのモーメント力を軽減することができるため、被曳航船の船首を下げる方向には被曳航船に力がかかり難くなる。この結果、本実施形態では、第2比較例と比べても、曳航時の被曳航船の姿勢を安定させることができる。
加えて、本実施形態では、曳航ロープ20の上下方向の位置と、被曳航船の重心の上下方向の位置との差が小さいため、第2比較例(図10C参照)と比べると、曳航船が針路を変更したときに被曳航船にかかるロール軸回りのモーメント力を軽減することができる。言い換えると、本実施形態では、ハンドルよりも下側に配置された挿通部52に曳航ロープ20を挿通することによって、第2比較例(図10C参照)と比べると、曳航船が針路を変更したときに被曳航船にかかるロール軸回りのモーメント力を軽減することができる。特に、本実施形態では、メタセンター(図10C参照)よりも下側に配置された挿通部52に曳航ロープ20を挿通することによって、船体の傾きを復元させる力(船体の重量によるメタセンター回りのモーメント力)とは反対方向のモーメント力が船体にかかることを抑制できる。この結果、本実施形態によれば、曳航船が針路を変更しても、被曳航船の姿勢を安定させることができる。
なお、本実施形態では、ベルト50は被曳航船の重心よりも前側に配置されているとともに、上記の通りピッチ軸方向及びロール軸方向の被曳航船の姿勢が安定しているため、曳航船が針路を変更しても、被曳航船は、ヨー軸方向に安定した状態で針路変更可能である。このため、本実施形態の曳航器材1によれば、被曳航船を安定して曳航可能である。
<器材携行バッグ>
図4は、曳航器材1を収容した状態の器材携行バッグ70を側面から見た図である。図5は、器材携行バッグ70を本体部71側(前側)から見た説明図である。図6A及び図6Bは、器材携行バッグ70を開閉部材72側(後側)から見た説明図である。なお、図6Aは、開閉部材72が閉じた状態での器材携行バッグ70の説明図である。図6Bは、開閉部材72が開いた状態での器材携行バッグ70の説明図である。
器材携行バッグ70は、前述の曳航部材10を収容するためのバッグ(収容部材)である。器材携行バッグ70には、それぞれ別々に巻き回された状態の一対の曳航ロープ20と、折り畳まれた状態の船尾用部材30と、が収容されている。なお、図4に示すように、曳航器材1を収容した器材携行バッグ70のことを「曳航器材セット」と呼ぶこともある。また、器材携行バッグ70のことを「バッグ」又は「収納部材」と呼ぶこともある。器材携行バッグ70は、本体部71と、開閉部材72と、上側開口81と、挿通口82とを有する。
本体部71は、器材携行バッグ70の本体を構成する部材である。本体部71と開閉部材72との間に形成される空間が、曳航部材10を収容するための収容空間となる。言い換えると、本体部71と開閉部材72との間に曳航部材10が収容されることになる。本体部71は、上側接続部71Aを有する。上側接続部71Aは、本体部71の上側に設けられた部位であり、曳航部材10の固定部材31Bを接続可能な部位である。本実施形態では、上側接続部71Aは、上側開口81の近傍に設けられている。上側接続部71Aは、ここではループ状の部位であるが、固定部材31Bを接続可能であれば、この形状に限られるものではない。また、本体部71に上側接続部71Aが無くても良い。
開閉部材72は、本体部71に対して開閉可能な部材である。開閉部材72を開くことによって、曳航部材10(特に船尾用部材30)を取り出すことが可能になる。なお、図6Bに示すように、開閉部材72の下部は本体部71に対して固定されており、開閉部材72の下部は本体部71に対して分離して構成されており、開閉部材72の上部が本体部71に対して開閉可能に構成されている。
本実施形態では、開閉部材72は、右側部材72Aと、左側部材72Bとを有する。つまり、本実施形態では、開閉部材72は、左右に分割された2部材で構成されている。但し、開閉部材72を分割せずに、開閉部材72を1部材で構成しても良い。なお、図6A及び図6Bに示すように、右側部材72Aの一部(左縁)は、左側部材72Bの内側に配置されている。但し、左側部材72Bを右側部材72Aの内側に配置しても良い。
開閉部材72の外面(後面)には、収容部73が設けられている。収容部73は、曳航器材1のベルト50(図3A〜図3C参照)を収容する部位である。但し、収容部73は、本体部71に設けられても良い。また、器材携行バッグ70に収容部73が無くても良い。この場合、曳航器材1のベルト50は、器材携行バッグ70の本体部71と開閉部材72との間に曳航部材10とともに収容されても良いし、器材携行バッグ70とは別の部材に収容されても良い。
また、開閉部材72の外面(後面)には、取付部74が設けられている。取付部74は、カラビナ等の部材(接続部材21B、連結部材23、錘部材33B、ベルト用錘部材54B、予備のカラビナ等)を取り付け可能な部位である。本実施形態では、取付部74は、挿通口82の近傍に設けられている。ここでは、取付部74は、デイジーチェーンで構成されており、複数のカラビナ等の部材を取り付け可能である。但し、取付部74は、この構成に限られるものではない。また、開閉部材72に取付部74が無くても良い。
本体部71及び開閉部材72にはファスナー75(第1ファスナー)が設けられている。ファスナー75は、着脱可能な接合部である。ここでは、ファスナー75は、面ファスナーであるが、線ファスナーや点ファスナーでも良い。ファスナー75は、本体側ファスナー75Aと、開閉側ファスナー75Bとを有する。本体側ファスナー75Aと開閉側ファスナー75Bとを留めることによって(ファスナー75を閉じることによって)、本体部71に対して開閉部材72を閉じることができる。また、ファスナー75を外すことによって、本体部71に対して開閉部材72を開くことができる。
本実施形態では、開閉部材72を構成する右側部材72A及び左側部材72Bにもファスナー76(第2ファスナー)が設けられている。ファスナー76は、右側部材72A及び左側部材72Bを着脱可能な接合部である。ここでは、ファスナー76は、面ファスナーであるが、線ファスナーや点ファスナーでも良い。ファスナー76は、内側ファスナー76Aと、外側ファスナー76Bとを有する。ここでは、右側部材72Aの一部が左側部材72Bの内側に配置されているため、内側ファスナー76Aは右側部材72Aに設けられており、外側ファスナー76Bは左側部材72Bに設けられている。内側ファスナー76A及び外側ファスナー76Bは、右側部材72Aと左側部材72Bとの重複部分に設けられている。内側ファスナー76Aと外側ファスナー76Bとを留めることによって(ファスナー76を閉じることによって)、右側部材72Aと左側部材72Bとを接合することができる(開閉部材72を実質的に1部材にできる)。また、内側ファスナー76Aと外側ファスナー76Bとを外すことによって、右側部材72Aと左側部材72Bとを分離することができる。
本実施形態では、右側部材72Aと左側部材72Bとを分離できるため、右側部材72Aを閉じた状態で、左側部材72Bを開けることが可能である。これにより、例えば、右側部材72Aを閉じた状態で左側部材72Bを開けて左側の曳航ロープ20を取り出して、左側の曳航ロープ20をベルト50の挿通部52に挿通させる作業を行った後に、右側部材72Aを開けて右側の曳航ロープ20を取り出して、右側の曳航ロープ20をベルト50の挿通部52に挿通させることができる。このように、一対の曳航ロープ20を別々に取り出すことができれば、一対の曳航ロープ20をそれぞれベルト50の挿通部52に挿通させる作業が容易になる。このため、開閉部材72が右側部材72Aと左側部材72Bとを有しており、右側部材72A及び左側部材72Bの一方を閉じた状態で他方を開くことが可能であることが望ましい。
上側開口81は、器材携行バッグ70の上側に設けられた開口である。上側開口81は、本体部71と開閉部材72との間に設けられた開口である。上側開口81には、ファスナー75が設けられていない。このため、上側開口81では、本体部71及び開閉部材72はファスナー75によって接合されておらず、非接合部になっている。
図4に示すように、上側開口81に曳航部材10の固定部31(上側接続部31A)を挿通させることによって、上側開口81から曳航部材10の固定部31を露出させた状態で、器材携行バッグ70に曳航部材10を収容することが可能である。曳航部材10の固定部31を器材携行バッグ70の外部に露出させることによって、曳航部材10の使用時に、固定部31を被曳航船に固定する作業が容易になる。また、器材携行バッグ70の上側から曳航部材10の固定部31が露出しているため、曳航部材10の使用時に固定部31を被曳航船に固定すれば、被曳航船に器材携行バッグ70(曳航部材10を収容した器材携行バッグ70)を吊り下げることができる。このため、器材携行バッグ70の上側に固定部31を挿通させる開口(上側開口81)が設けられていることが望ましい。
また、本実施形態では、固定部31が固定部材31B(カラビナ)を有しているため、図4に示すように、固定部材31Bを器材携行バッグ70の上側接続部71Aに接続することが可能である。固定部材31Bを器材携行バッグ70の上側接続部71Aに接続することによって、上側開口81から曳航部材10の固定部31を露出させた状態を安定的に保持できる。このため、図4に示すように、器材携行バッグ70に曳航部材10を収容した状態では、固定部材31Bを器材携行バッグ70の上側接続部71Aに接続することが望ましい。また、固定部材31Bを上側接続部71Aに接続し易くするために、上側接続部71Aは上側開口81の近傍に設けられることが望ましい。
挿通口82は、器材携行バッグ70の左右に設けられた開口である。挿通口82は、本体部71と開閉部材72との間に設けられた開口である。器材携行バッグ70は一対の挿通口82を備えており、器材携行バッグ70の左右それぞれに挿通口82が設けられている。挿通口82には、本体部71と開閉部材72とを接合するファスナー75が設けられていない。このため、挿通口82では、本体部71及び開閉部材72はファスナー75によって接合されておらず、非接合部になっている。
図4に示すように、挿通口82に曳航ロープ20を挿通させることによって、挿通口82から曳航ロープ20の端部(接続部21)を露出させた状態で、器材携行バッグ70に曳航部材10を収容することが可能である。曳航ロープ20の端部を器材携行バッグ70の外部に露出させることによって、曳航部材10の使用時に、器材携行バッグ70から曳航ロープ20を取り出す作業が容易になる。
また、本実施形態では、曳航ロープ20の端部に設けられた接続部21が接続部材21B(カラビナ)を有しているため、図4に示すように、接続部材21Bを器材携行バッグ70の取付部74に接続することが可能である。接続部材21Bを器材携行バッグ70の取付部74に接続することによって、挿通口82から曳航部材10の接続部21を露出させた状態を安定的に保持できる。このため、図4に示すように、器材携行バッグ70に曳航部材10を収容した状態では、接続部材21Bを器材携行バッグ70の取付部74に接続することが望ましい。また、接続部材21Bを取付部74に接続し易くするために、取付部74は挿通口82の近傍に設けられることが望ましい。
また、挿通口82にはファスナー75が設けられていないため、ファスナー75によって本体部71と開閉部材72とが閉じられた状態で(言い換えると、器材携行バッグ70に曳航部材10(主に船尾用部材30)が収容された状態で)、挿通口82から曳航ロープ20を引き出すことが可能である。つまり、曳航ロープ20は、挿通口82から引出可能に、器材携行バッグ70に収容されている。これにより、長尺な曳航ロープ20が絡まることなく、器材携行バッグ70から曳航ロープ20を取り出すことができる。但し、開閉部材72を開くことによって、器材携行バッグ70から曳航ロープ20を取り出すことも可能である。
なお、一対の曳航ロープ20が絡まることなく器材携行バッグ70から取り出せるように、一対の曳航ロープ20が器材携行バッグ70に収容されていることが望ましい。このため、器材携行バッグ70には、折り畳まれた状態の船尾用部材30が収容されるとともに、一対の曳航ロープ20のうちの一方の曳航ロープ20は器材携行バッグ70の本体部71と船尾用部材30(折り畳まれた状態の船尾用部材30)との間に収容されており、他方の曳航ロープ20は器材携行バッグ70の開閉部材72と船尾用部材30との間に収容されていることが望ましい。言い換えると、一対の曳航ロープ20は別々に巻き回された状態で器材携行バッグ70に収容されており、巻き回されたそれぞれの一対の曳航ロープ20の間に、折り畳まれた状態の船尾用部材30が収容されることが望ましい。
図4及び図5に示すように、本実施形態の器材携行バッグ70は、本体部71に一対の肩ベルト90を有する。肩ベルト90は、器材携行バッグ70を担ぐときに用いられる部材である。なお、器材携行バッグ70に肩ベルト90を設けなくても良い。
本実施形態の肩ベルト90は、上側ベルト91と、下側ベルト92と、中間ベルト93とを有する。上側ベルト91は、肩ベルト90の上部を構成する帯状の部材である。上側ベルト91の上端は、本体部71に固定されている。上側ベルト91の下端は、上側留め具94を介して中間ベルト93の上端に連結されている。下側ベルト92は、肩ベルト90の下部を構成する帯状の部材である。下側ベルト92の下端は、本体部71に固定されている。下側ベルト92の上端は、下側留め具95を介して中間ベルト93の下端に連結されている。中間ベルト93は、肩ベルト90の中央部を構成する帯状の部材であり、上側ベルト91と下側ベルト92との間に配置される部材である。中間ベルト93の上端は、上側留め具94を介して上側ベルト91の下端に連結されている。中間ベルト93の下端は、下側留め具95を介して下側ベルト92の上端に連結されている。これにより、本実施形態では、中間ベルト93は、両端の留め具(上側留め具94及び下側留め具95)を外すことによって、本体部71から取り外し可能である。
中間ベルト93は、調整部93Aを有する。調整部93Aは、長さを調整する部位である。調整部93Aによって肩ベルト90の長さを調整可能である。なお、調整部93Aが中間ベルト93に設けられずに上側ベルト91又は下側ベルト92に設けられても良いし、肩ベルト90に調整部93Aが無くても良い。但し、中間ベルト93が調整部93Aを有することによって、器材携行バッグ70から外した中間ベルト93の長さが調整可能になる。
上側留め具94は、上側ベルト91と中間ベルト93とを連結する部材である。下側留め具95は、下側ベルト92と中間ベルト93とを連結する部材である。上側留め具94及び下側留め具95は、例えばバックルで構成されており、それぞれ雄部材と雌部材をそれぞれ有する。上側留め具94及び下側留め具95を外すことによって、器材携行バッグ70(詳しくは本体部71)から中間ベルト93を取り出すことが可能である。
本実施形態では、中間ベルト93の一端に雄部材が設けられており、中間ベルト93の他端に雌部材が設けられている。これにより、器材携行バッグ70から中間ベルト93を外した後に、中間ベルト93の両端の留め具(雄部材と雌部材)を連結することが可能である。中間ベルト93の両端の留め具を連結することによって、中間ベルト93を環状にすることが可能であり、取り外した中間ベルト93を被曳航船(例えば船外機)に巻き付けて固定することが可能である(後述;図8A参照)。
また、本実施形態では、一対の肩ベルト90のそれぞれの中間ベルト93を取り外し、2本の中間ベルト93を連結するとともに、連結した2本の中間ベルト93を環状にすることも可能である。また、本実施形態では、中間ベルト93に調整部93Aが設けられている。これらの構成によって、取り外した中間ベルト93を被曳航船に巻き付けて固定する際に、様々な大きさの部材(例えば被曳航船の船外機)に対して中間ベルト93を巻き付けることが可能である。
また、中間ベルト93は、環状部材93Bを有する。環状部材93Bは、リング状の部材である。ここでは、環状部材93Bは、金属製のD環(D字状の金属リング)である。但し、環状部材93Bは金属製に限られるものではなく、D字状の形状に限られるものではない。中間ベルト93に環状部材93Bが設けられることによって、取り外した中間ベルト93を被曳航船(例えば船外機)に巻き付けて固定した後に、中間ベルト93の環状部材93Bに曳航部材10の固定部材31B(カラビナ)を固定することが可能になる。但し、中間ベルト93に環状部材93Bが無くても良い。
<曳航器材1及び器材携行バッグ70の使用方法>
図7A〜図7Dは、曳航器材1及び器材携行バッグ70の使用方法の説明図である。言い換えると、図7A〜図7Dは、器材携行バッグ70に収容された曳航器材1を被曳航船にセットする方法の説明図である。
まず、作業者は、曳航器材1を収容した器材携行バッグ70を準備する。そして、作業者は、図7Aに示すように、固定部材31B(カラビナ)を被曳航船のスターンアイに固定する。固定部材31B(カラビナ)を被曳航船に固定することによって、被曳航船に対する曳航部材10の左右方向の位置ズレを抑制できる。この結果、曳航部材10が被曳航船の中央位置に配置されるため(曳航部材10が被曳航船に対して左右対称に配置されるため)、後述する作業において、左右それぞれの曳航ロープ10を適切に配置し易くなる。また、固定部材31B(カラビナ)を被曳航船に固定することによって、曳航器材1を被曳航船にセットするときに曳航部材10を水没させてしまうことを防止できるという利点もある。
このとき、作業者は、器材携行バッグ70の本体部71を被曳航船側(前側)とし、開閉部材72を外側(後側)に向けて、器材携行バッグ70を被曳航船に固定する。これにより、開閉部材72の開閉が容易になる。なお、図4に示すように、器材携行バッグ70の外側には、曳航部材10(詳しくは船尾用部材30)の固定部31が露出している。このため、作業者が固定部31を被曳航船に固定する作業は容易である。
また、本実施形態では、図4に示すように、器材携行バッグ70の上側に設けられた上側開口81から曳航部材10の固定部31が露出している。このため、固定部31を被曳航船に固定すれば、そのまま自然に、被曳航船に器材携行バッグ70(曳航部材10を収容した器材携行バッグ70)を吊り下げることができる。これにより、この後の曳航器材1を被曳航船にセットする作業が容易になる。
なお、作業者は、固定部材31B(カラビナ)を被曳航船のスターンアイに固定する際に、固定部材31Bによって器材携行バッグ70の上側接続部71Aもスターンアイに固定することが望ましい。若しくは、作業者は、固定部材31B(カラビナ)を被曳航船のスターンアイに固定する際に、船尾用部材30の上側接続部31Aを器材携行バッグ70の上側接続部71Aに挿通させておくことが望ましい。これにより、曳航器材1を被曳航船にセットするときに、器材携行バッグ70を水没させてしまうことを防止できる。
固定部材31B(カラビナ)を被曳航船のスターンアイに固定した後、図7Aに示すように、作業者は、器材携行バッグ70の収容部73からベルト50(図3A〜図3C参照)を取り出す。そして、作業者は、図7Bに示すように、被曳航船の船体にベルト50を巻き付ける。このとき、作業者は、ベルト50の中央部を船底に架け渡しつつ、結合部51によってベルト50の両端を結合することによって、ベルト50を上下方向に沿って被曳航船に巻き付けた状態で、ベルト50を被曳航船に固定する。ベルト50の中央部の錘接続部54Aにベルト用錘部材54Bが取り付けられていれば、ベルト50の中央部を水中に沈め易くなり、ベルト50の中央部を船底に架け渡す作業が容易になり、この結果、ベルト50を被曳航船に巻き付ける作業が容易になる。なお、ベルト用錘部材54Bは、錘接続部54Aに取り付けられた状態で収容部73に収容されていても良いし、作業者が、収容部73から取り出したベルト50の錘接続部54Aに、取付部74から外したベルト用錘部材54B(カラビナ)を取り付けても良い。
なお、図7B(及び図1B)に示すように、作業者は、ハンドルとフードとの間の凹部でベルト50を被曳航船に巻き付ける。ハンドルは、被曳航船の重心よりも前側にあるため、ハンドルとフードとの間の凹部でベルト50が被曳航船に巻き付けられると、ベルト50は、被曳航船の重心よりも前側に配置される。また、ベルト50が被曳航船に巻き付けられると、ベルト50の挿通部52(複数の挿通部52のうちの少なくとも1つの挿通部52)は、被曳航船の舷側(右舷及び左舷)に配置される。
ベルト50を被曳航船に巻き付けた後、図7Cに示すように、作業者は、器材携行バッグ70から曳航ロープ20を取り出す。本実施形態では、ファスナー75によって本体部71と開閉部材72とが閉じられた状態で、器材携行バッグ70の挿通口82から曳航ロープ20を引き出すことが可能である。このため、長尺な曳航ロープ20が絡むことなく、作業者は、器材携行バッグ70から曳航ロープ20を取り出すことができる。なお、図4に示すように、器材携行バッグ70の外部には、曳航ロープ20の端部(接続部21)が露出している。このため、作業者は、露出している曳航ロープ20の端部を引っ張れば、器材携行バッグ70から曳航ロープ20を引き出すことができるため、曳航ロープ20を取り出す作業は容易である。但し、作業者は、器材携行バッグ70の開閉部材72を開けてから、曳航ロープ20を器材携行バッグ70から取り出しても良い。
また、図7Cに示すように、作業者は、曳航ロープ20をベルト50の挿通部52に挿通させる。図7Cに示すように、ベルト50の挿通部52は、被曳航船のハンドル付近の舷側に配置されているため、作業者は、被曳航船に搭乗しながら、曳航ロープ20をベルト50の挿通部52に挿通させることができる。本実施形態では、被曳航船の舷側に複数の挿通部52が上下方向に並んで配置されているため、作業者は、適切な高さの挿通部52を選択して、曳航ロープ20をベルト50の挿通部52に挿通させることになる。なお、既に説明した通り、図4に示すように、器材携行バッグ70の外部には、曳航ロープ20の端部(接続部21)が露出している。このため、作業者は、曳航ロープ20の端部を把持し易いため、ベルト50の挿通部52に曳航ロープ20の端部から挿通させる作業は容易である。作業者は、被曳航船の右舷及び左舷のそれぞれにおいて、曳航ロープ20をベルト50の挿通部52に挿通させることになる。
また、作業者は、一対の曳航ロープ20を右舷及び左舷のそれぞれの挿通部52に挿通させた後、図7Dに示すように、器材携行バッグ70の開閉部材72を開き、船尾用部材30を器材携行バッグ70から取り出し、船尾用部材30を被曳航船の船尾に取り付ける。船尾用部材30の下側接続部33Aに錘部材33Bが取り付けられていれば、船尾用部材30の下部を水中に沈め易くなり、船尾用部材30を被曳航船の船尾に取り付ける作業が容易になる。なお、錘部材33Bは、船尾用部材30の下側接続部33Aに取り付けられた状態で器材携行バッグ70に収容されていても良いし、作業者が、器材携行バッグ70から取り出した船尾用部材30の下側接続部33Aに、取付部74から外した錘部材33B(シャックル)を取り付けても良い。
作業者は、船尾用部材30を被曳航船の船尾に取り付けた後(船尾用部材30を左右方向に広げた状態で船尾用部材30の下部を水中に沈めた後)、船尾用部材30の上縁の結索部35(カラビナ)に曳航ロープ20を挿通させるとともに、曳航ロープ20を引っ張ることによって、船尾用部材30の左右それぞれにおいて、上縁と下縁とを結び付ける。これにより、船尾用部材30が袋状になり、被曳航船の船尾が船尾用部材30に包み込まれるため、船尾用部材30が船尾から外れにくくなる。なお、本実施形態では、図2に示すように、船尾用部材30の下側の縁から曳航ロープ20が延び出ているため、作業者が曳航ロープ20を手繰ることによって船尾用部材30の下縁が上縁の結索部35に向かって引き寄せられるため、曳航ロープ20を結索部35(カラビナ)に挿通させる作業が容易である。
作業者は、一対の曳航ロープ20を右舷及び左舷のそれぞれの挿通部52に挿通させた後、図1Aに示すように、曳航ロープ20の端部の一対の接続部21を連結部材23によって連結する。そして、作業者(若しくは、曳航船側の作業者)は、連結部材23を介して、一対の曳航ロープ20の端部と曳航船側の部材(例えば曳航船側の曳航ロープ20の端部)とを連結することになる。
上記の通り、本実施形態の器材携行バッグ70に曳航部材10を収容することによって、曳航部材10を被曳航船にセットする作業が容易になる。
<別の使用方法>
図8A及び図8Bは、曳航器材1及び器材携行バッグ70の別の使用方法の説明図である。図8A及び図8Bに示す被曳航船は、長さ3m未満のいわゆるミニボートである。このように、曳航器材1は、水上オートバイとは別の小型の船舶の曳航にも使用可能である。
図8Aに示すように、作業車は、器材携行バッグ70から中間ベルト93を外した後に、中間ベルト93の一端の雄部材と他端の雌部材とを連結することによって、被曳航船の船外機に中間ベルト93を巻き付けて固定する。このとき、作業者は、中間ベルト93の調整部93Aを調整することによって、被曳航船の船外機の大きさに適合させて中間ベルト93を巻き付けることが可能である。また、作業者は、2本の中間ベルト93を連結するとともに、連結した2本の中間ベルト93を被曳航船の船外機に巻き付けることが可能である。
また、図8Aに示すように、作業者は、中間ベルト93を被曳航船の船外機に巻き付けて固定した後に、中間ベルト93の環状部材93Bに曳航部材10の固定部材31B(カラビナ)を固定する。固定部材31B(カラビナ)を中間ベルト93の環状部材93Bに固定することによって、固定部材31B(カラビナ)を被曳航船に固定することができる。既に説明した通り、固定部材31B(カラビナ)を被曳航船に固定することによって、曳航器材1を被曳航船にセットするときに曳航部材10を水没させてしまうことを防止できる。なお、前述の使用方法と同様に、このとき、作業者は、器材携行バッグ70の本体部71を被曳航船側(前側)とし、開閉部材72を外側(後側)に向けて、器材携行バッグ70を被曳航船に固定する。これにより、開閉部材72の開閉が容易になる。なお、図4に示すように、器材携行バッグ70の外側には、曳航部材10(詳しくは船尾用部材30)の固定部31が露出している。このため、作業者が固定部31を被曳航船に固定する作業は容易である。
固定部材31B(カラビナ)を被曳航船に固定した後、作業者は、既に説明した使用方法(図7A〜図7D参照)と同様の手順で、図8Bに示すように、曳航器材1を被曳航船にセットする。すなわち、まず、作業者は、被曳航船にベルト50を巻き付ける。そして、作業者は、ベルト50に設けられた挿通部52に曳航ロープ20を挿通するとともに、被曳航船の船尾に船尾用部材30を取り付ける。なお、図8Bに示すように、船尾用部材30は、船外機越しに船尾に取り付けても良い。これにより、ミニボートのような水上オートバイとは別の小型の船舶に対しても、曳航器材1を使用することができる。また、ミニボートのような水上オートバイとは別の小型の船舶に対しても、器材携行バッグ70に曳航器材1を収容することによって、曳航器材1を被曳航船にセットする作業が容易になる。
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。