JP6904791B2 - 合成パルプとセルロースナノファイバーとの複合体、及びその製造方法 - Google Patents
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Description
[1]MFRが0.1g/10min以上200g/10minである樹脂からなる、平均繊維長が0.05mm以上50mm以下であり、かつ、繊維径の最小値が0.5μmであり繊維径の最大値が50μmであるミクロフィブリル繊維が集合してなる、カナディアンフリーネスが300ml以上740ml以下である合成パルプと、前記合成パルプに捕捉されたセルロースナノファイバーと、を含む複合体。
[2]前記合成パルプは、MFRが5.0g/10min以上150g/10min以下である樹脂からなる、平均繊維長が0.10mm以上1.15mm以下であり、かつ、平均繊維径が15μm以上35μm以下であるミクロフィブリル繊維が集合してなる、カナディアンフリーネスが300ml以上740ml以下である合成パルプである、[1]に記載の複合体。
[3]不織布材料である、[1]または[2]に記載の複合体。
[4]合成紙用の材料に含まれる、[1]または[2]に記載の複合体。
[5]塗料またはインク用の材料に含まれる、[1]または[2]に記載の複合体。
[5]MFRが0.1g/10min以上200g/10minである樹脂からなる、平均繊維長が0.05mm以上50mm以下であり、かつ、繊維径の最小値が0.5μmであり繊維径の最大値が50μmであるミクロフィブリル繊維が集合してなる、カナディアンフリーネスが300ml以上740ml以下である合成パルプと、セルロースナノファイバーと、を用いて、下羽根および上羽根の上下二段に設置された撹拌羽根を撹拌容器内に有するミキサーで、下羽根による回転力によって前記合成パルプおよび前記セルロースナノファイバーを流動させ、同時に上羽根による剪断力によって前記合成パルプおよび前記セルロースナノファイバーを撹拌および混合する工程を含む、複合体の製造方法。
本発明の一実施形態に係る合成パルプとセルロースナノファイバーとの複合体は、MFRが0.1g/10min以上200g/10minである樹脂からなる、平均繊維長が0.05mm以上50mm以下であり、かつ、繊維径の最小値が0.5μmであり繊維径の最大値が50μmであるミクロフィブリル繊維が集合してなる、カナディアンフリーネスが300ml以上740ml以下である合成パルプと、前記合成パルプに捕捉されたセルロースナノファイバー(以下、「CNF」と略す場合がある)と、を含む。
合成パルプは、合成された樹脂からなる複数の微小繊維が絡まり合って、分岐構造を有するより太い繊維を形成する構造を有する繊維(単に「ミクロフィブリル繊維」ともいい、このような構造を単に「ミクロフィブリル構造」ともいう。)が、全体として特定方向に整列せずに集合してなる繊維集合体である。
L:1つの級に含まれるミクロフィブリル繊維の実測繊維長(mm)
N:1つの級に含まれるミクロフィブリル繊維の本数
Nn:それぞれの級に含まれるミクロフィブリル繊維の本数
合成パルプは、種々の方法により製造し得るが、通常はフラッシュ法で製造することが可能である。フラッシュ法とは、樹脂が溶媒に溶解している高圧の樹脂溶液を減圧下に噴出することで上記溶媒を揮散させて上記樹脂からなる繊維を形成し、さらに必要に応じてワーリングブレンダーまたはディスクリファイナーなどで上記形成された繊維を切断および叩解する方法である。フラッシュ法は、不織布にしたときに強度が高い合成パルプを得られるため好ましい。特に、特開昭48−44523号公報に記載されているような、ポリオレフィン溶液を懸濁剤の存在下、水媒体に分散させたものをフラッシュさせる方法は、乱雑に分岐した形状を有する繊維状の樹脂を有する合成パルプが得られ、このような合成パルプはより強度が高い不織布を得られため、好ましい。
セルロースナノファイバーは、パルプ繊維を微細化(解繊)処理して得ることができる。原材料として用いるパルプ繊維としては、例えば、
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)等の広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)等の針葉樹クラフトパルプ(NKP)等の化学パルプ;
ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、晒サーモメカニカルパルプ(BTMP)等の機械パルプ;
茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙、更紙古紙等から製造される古紙パルプ;
古紙パルプを脱墨処理した脱墨パルプ(DIP)などが挙げられる。これらは、本発明の効果を損なわない限り、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
合成パルプとセルロースナノファイバーとの複合体は、上述したミクロフィブリル樹脂または上述したミクロフィブリル樹脂から製造した合成パルプと、CNFと、を混合して製造することができる。上記混合の方法は特に限定されず、たとえば、合成パルプをシート状に成形した後、溶液状のCNFを散布する方法、フラッフ化した合成パルプとCNFとをミキサーなどで混合する方法、フラッフ化した合成パルプとCNFとを解砕しながら同時に容器中を降下させて積層する方法、ミクロフィブリル樹脂または合成パルプとCNFとをミキサーなどで混合してCNFを捕捉した合成パルプを製造する方法などを用いることができる。合成パルプとCNFとをミキサーなどで混合する方法、またはフラッフ化した合成パルプとCNFとを解砕しながら同時に容器中を降下させて積層する方法が好ましい。
本発明の合成パルプとCNFとの複合体は、従来の合成パルプの代替として、公知の種々の用途に使用することができる。本発明の合成パルプとCNFとの複合体は、種々の形状に成形することができ、例えば、不織布状に成形することができる。本発明の複合体を不織布とすることにより、ティーバッグ紙、コーヒーバッグ紙、だしパック紙、エアフィルタ、マスク、浄水用フィルタ、ワインフィルタ、ビールフィルタ、ジュースフィルタ等などのフィルタ類;食品包装紙、脱酸素材包装紙、医療用包装紙、防虫包装紙等の包装材;合成紙、壁紙、透湿防水シート、耐熱ボード、ふすま紙、障子紙、グリーティングカード、パンフレット、名刺、ブックカバー、封筒、ランプシェード、ラベル用紙、印刷用紙、ポスター用紙等のカード・シート・ラベル類;セメント粒子捕捉材、チクソ性付与材等の住宅用資材;使い捨てのオムツ・ナプキン・シーツのトップシートや吸収体バインダー繊維、使い捨てのおしぼり・ワイパー・ティッシュのバインダー繊維、脂取り紙、滅菌紙等の衛生材料;加湿器用水蒸気揮散材、芳香剤芯材等の揮散材;および食品トレー・文具用品・大型部品緩衝材・自動車ドアパネルのバインダー用繊維等の多岐に渡って好適に使用することが出来る。
本発明の合成パルプとCNFとの複合体は、従来の合成パルプの代替として、合成紙用の材料とすることもできる。このような合成紙としては、本発明の複合体をパルプ代わりの原料とし、必要であればバインダーなどを加えて通常の抄紙機で製紙される「合成パルプ紙」が挙げられる。合成紙の材料となる複合体に特に限定はないが、複合体に含まれる合成パルプの原料樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、たとえば、エチレン系、プロピレン系、メチルペンテン系重合体からなる樹脂や、それらに、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン等との共重合体からなる樹脂を用いることができる。また、これらの樹脂はそれぞれ単独でも混合しても用いることができる。
本発明の合成パルプとCNFとの複合体は、塗料またはインク用の材料に含まれてもよい。従来の合成パルプと同様に、本発明の複合体も、塗料またはインク用の添加剤、特に増粘剤として使用することができる。塗料やインクの種類に特に制限はないが、本発明の複合体の親和性と分散性の観点から、水系での使用が好ましい。
平均繊維長が0.9mm、繊維径が30μm、MFRが7.0g/10minのミクロフィブリル繊維からなる、CSFが400mlの合成パルプである三井化学(株)製のSWP(登録商標)EST−2、または平均繊維長が0.1mm、繊維径が15μm、MFRが100g/10minのミクロフィブリル繊維からなる、CSFが300mlの合成パルプである三井化学(株)製のSWP ESS−5と、大王製紙(株)製のセルロースナノファイバー(CNF)であるB(針葉樹漂白化学パルプ)またはC(機械パルプ)とを、表1に示す組成となるように使用し、粉砕混合乾燥機で混合し、乾燥させて、合成パルプとセルロースナノファイバーとの複合体を製造した。なお、EST−2およびESS−5は、平均繊維径が1〜50μmの範囲にあり、分岐構造を有することが分っている。
合成パルプの代わりにポリエチレンのショートカットファイバーを用い、表2に示す組成となるようにCNFと組み合わせ、上記実施例と同様に、粉砕混合乾燥機(日本コークス工業製FMミキサーFM20C/I)により混合した。使用した解砕物は、ミクロフィブリル構造を有さず、また分岐構造も有さなかった。
合成パルプとしてEST−2またはESS−5、CNFとしてB(針葉樹漂白化学パルプ)を用い、表2に示す組成となるように混合した。合成パルプとCNFとの混合を、FMミキサーに替えてそれぞれブレンダーミキサー(比較例3)またはタンブラーミキサー(比較例4)を用いて行った。
実施例1で得られた複合体を用い、角型抄紙機を用いて坪量20g/m3の合成紙を手漉きにて作成した。この合成紙の引張強度は10N/15mmであり、紙としての強度は十分であった。また、水性ボールペンにより文字を書いて印刷適性を確認したところ、十分な適性があることが確認できた。
比較例3で得られた混合物を用い、角型抄紙機を用いて坪量20g/m3の合成紙を手漉きにて作成した。この合成紙の引張強度は1.5N/15mmであり、紙としての十分な強度が得られなかった。また、紙の表面に凝集状態の異物(CNFの凝集物)が見られ、良好な地合とすることができなかった。さらに、水性ボールペンので文字を書いてもインクをはじいてしまい、印刷適性もなかった。
実施例1と同様の方法で、CNFを用いず合成パルプ(SWP EST−2)のみを粉砕乾燥し、複合化していない繊維を得た。得られた繊維を用いて、実施例9と同様に角型抄紙機で手漉きの紙を作成した。合成パルプ単独では水への分散性が悪く、均一な地合の紙を得ることができなかった。また、引張強度を測定したところ、1N/15mmであり、紙としての強度を十分持てないものであった。
実施例5で得られた複合体を市販のアクリル系水性塗料に1%添加、混合し、レオメーターにて塗料のレオロジー特性を測定した。比較例7としては、複合化していない単独のSWP ESS−5を、比較例8としては比較例4で得られた混合物を、それぞれ乾燥粉砕して、上記と同様に水性塗料に添加、混合し、レオロジー特性を測定した。その結果を図4に示す。
Claims (6)
- MFRが0.1g/10min以上200g/10min以下である樹脂からなる、平均繊維長が0.05mm以上50mm以下であり、かつ、繊維径の最小値が0.5μmであり、繊維径の最大値が50μmであるミクロフィブリル繊維が集合してなる、カナディアンフリーネスが300ml以上740ml以下である合成パルプと、
前記合成パルプに捕捉された、疎水化処理されていないセルロースナノファイバーと、を含む複合体。 - 前記合成パルプは、MFRが5.0g/10min以上150g/10min以下である樹脂からなる、平均繊維長が0.10mm以上1.15mm以下であり、かつ、平均繊維径が15μm以上35μm以下であるミクロフィブリル繊維が集合してなる、カナディアンフリーネスが300ml以上740ml以下である合成パルプである、請求項1に記載の複合体。
- 不織布材料である、請求項1または2に記載の複合体。
- 合成紙用の材料に含まれる、請求項1または2に記載の複合体。
- 塗料またはインク用の材料に含まれる、請求項1または2に記載の複合体。
- MFRが0.1g/10min以上200g/10min以下である樹脂からなる、平均繊維長が0.05mm以上50mm以下であり、かつ、繊維径の最小値が0.5μmであり、繊維径の最大値が50μmであるミクロフィブリル繊維が集合してなる、カナディアンフリーネスが300ml以上740ml以下である合成パルプと、
セルロースナノファイバーと、を用いて、
下羽根および上羽根の上下二段に設置された撹拌羽根を撹拌容器内に有するミキサーで、下羽根による回転力によって前記合成パルプおよび前記セルロースナノファイバーを流動させ、同時に上羽根による剪断力によって前記合成パルプおよび前記セルロースナノファイバーを撹拌および混合する工程を含む、
複合体の製造方法。
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