JP6904777B2 - 無機基材用インクジェットインク - Google Patents
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Description
近年では、陶磁器やセラミックタイルなどの無機基材に画像を描画する際に、上記したインクジェット印刷を用いることが検討されている。具体的には、かかる無機基材の分野において模様や文字などを描画する際には、従来から手書きや有版印刷などが実施されていた。しかし、手書きのような熟練した職人的技術を必要とせず、かつ、有版印刷と異なり、オンデマンドで早期に印刷が可能である点からインクジェット印刷が注目されている。
例えば、無機基材の分野では、画像を描画した後の無機基材に800℃以上(例えば1000℃〜1100℃)の焼成処理が行われることがある。このときに、紙や布などに使用されているインクジェットインク(以下、単に「インク」ともいう)を用いていると、焼成処理中に顔料が変色(又は消色)してしまう虞がある。
そして、ここで開示される無機基材用インクジェットインクでは、光硬化性樹脂に一個の官能基を有する一官能モノマーと、二個の官能基を有する二官能モノマーとが少なくとも含まれていると共に、分散剤がカチオン系分散剤である。さらに、光硬化性樹脂の全重量に対する二官能モノマーの重量比率が25wt%〜75wt%であり、かつ、無機顔料の重量に対するカチオン系分散剤の重量比率が1.9wt%〜20wt%であることを特徴とする。
そこで、本発明者は、無機顔料と光硬化性樹脂とを含む無機基材用インクジェットインクを、インクジェット装置の吐出口から好適に吐出させることができるように、さらに実験と検討を重ねた。
かかる無機基材用インクジェットインクは、光硬化性樹脂と光重合開始剤とを含んだ光硬化性インクであるため、十分な厚みのインクを滲むことなく無機基材上に定着させることができる。そして、かかる無機基材用インクジェットインクでは、光硬化性樹脂の全重量に対する二官能モノマーの重量比率が適切に設定されており、光硬化性と吐出性とが高いレベルで両立した光硬化性樹脂が用いられている。さらに、分散剤としてカチオン系分散剤が使用されており、当該カチオン系分散剤の無機顔料に対する重量比率が適切な値に設定されているため、無機顔料の凝集による吐出性の低下を好適に抑制することができる。
従って、ここで開示される無機基材用インクジェットインクによれば、十分な厚みのインクを滲むことなく無機基材上に定着させ、所望の画像を精密に印刷することができる。
種々の光硬化性樹脂の中でも官能基がアクリル基であるモノマーは、無機顔料の分散性がよく、かつ、好適な光硬化性を有しているため、特に好ましく用いることができる。
官能基を除いたモノマーの残基の炭素数が多くなると、インクの粘度が上昇して吐出性が低下する虞がある。本態様は、かかる知見に基づいたものであり、炭素数3〜11の残基を有する一官能モノマーを用いている。これによって、インク粘度の低下を抑制して好適な吐出性を発揮することができる。
本態様についても上記した知見に基づいたものであり、炭素数6〜11の直鎖アルカンを残基として含む二官能モノマーを用いることによって、インク粘度の低下を抑制して好適な吐出性を発揮することができる。かかる残基として炭素数6〜11の直鎖アルカンを有する二官能モノマーとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートや1,9−ノナンジオールジアクリレートなどが挙げられる。
光硬化性樹脂に使用されるモノマーには、人体の皮膚に対する刺激性が強いものがあり、生産現場における作業者の健康面を考慮すると、このような皮膚刺激性が強い光硬化性樹脂の使用は避けた方が好ましい。本態様の無機基材用インクジェットインクでは、一次刺激性インデックス(P.I.I.)が5以下(好ましくは3以下)という低刺激性の樹脂材料を用いているため、作業者に掛かる負担を軽減させることができる。
なお、上記した一次刺激性インデックス(P.I.I.)とは皮膚感作性の程度を示す指標であり、小さいほど皮膚刺激性が弱くなる。かかる一次刺激性インデックスは、ISO 10993−10[Biological Evaluation of Medical Devices−Part10](2010)で求められる。
かかるZr系複合金属酸化物は、高温耐久性が高く、焼成処理時の変色(又は消色)の発生を好適に防止することができるため、無機基材用インクジェットインクの顔料として特に好適に用いることができる。
一般的なインクジェット装置の吐出口の径は20μm〜30μm(例えば25μm)程度であるため、D100粒径が1μm以下に微粒化された無機顔料を用いることによって、より好適な吐出性を発揮させることができる。
なお、上記したD100粒径は、動的光散乱法による粒度分布の測定結果おける無機顔料の微粒子側から累積100個数%に相当する粒径を指すものである。
かかるアミン系分散剤は、立体障害により無機顔料が凝集することを防止すると共に、当該無機顔料を安定化させることができる。また、無機顔料の粒子に同一の電荷を付与することができるため、この点においても、無機顔料の凝集を好適に防止することができる。
かかるα−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤は、高い反応性を発揮してインクの硬化速度を向上させることができ、薄膜硬化性や表面硬化性に優れているため、特に好ましく用いることができる。
本実施形態に係るインクは、焼成を伴う無機基材に使用されるインクジェットインク(無機基材用インクジェットインク)である。かかる無機基材用インクジェットインクは、金属化合物を含む無機顔料と、光硬化性樹脂と、光重合開始剤と、分散剤とを含んでいる。以下、かかる無機基材用インクジェットインクに含まれる各材料について説明する。
本実施形態に係る無機基材用インクジェットインクに含まれる顔料は、主成分として金属化合物を含む無機顔料である。かかる無機顔料は、耐熱性に優れているため、無機基材上に付着させた後、800℃以上(例えば、1000℃〜1100℃)の焼成処理を行った際に変色(又は消色)することを防止することができる。
なお、本実施形態における無機顔料には、従来から使用されている無機顔料を特に制限なく使用することができ、上記したZr系複合金属酸化物に限定されない。
本実施形態に係る無機基材用インクジェットインクは、光硬化性樹脂と後述の光重合開始剤とを備えた光硬化性インクである。光硬化性樹脂は、紫外線によって活性化した光重合開始剤によって重合(又は架橋)して硬化する樹脂材料である。かかる光硬化性樹脂を含む光硬化性インクを使用することによって、吸水性に乏しい無機基材を対象とした場合であっても、十分な厚みのインクを滲むことなく定着させることができる。
一官能モノマーは、一個の官能基と、当該官能基を除く残基とから構成されており、当該官能基が重合することによって光硬化性樹脂が硬化する。一官能モノマーの残基の構造は、特に限定されず、直鎖構造であってもよいし、環状構造であってもよい。但し、一官能モノマーの残基の炭素数が増加するに伴ってインクの粘度が高くなるため、吐出口からの吐出性を考慮して一官能モノマーの残基の炭素数を決定すると好ましい。例えば、直径25μmの吐出口からインクを好適に吐出させるためには、一官能モノマーの残基の炭素数を3〜11にすると好ましい。
また、無機顔料の分散性や光硬化性を考慮すると、官能基としてアクリル基を有する一官能モノマーが好ましく用いられる。かかるアクリル基を有する一官能モノマーの具体例としては、イソボルニルアクリレート(下記式(1)参照)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(下記式(2)参照)、メトキシエチルアクリレート(下記式(3)参照)、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、(2ーメチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートなどが挙げられる。なお、本実施形態における一官能モノマーには、上記したアクリル基を有するモノマー以外の一官能モノマー(例えば、エポキシモノマー)を用いることもできる。
二官能モノマーは、二個の官能基と、当該官能基を除く残基とから構成されており、上記した一官能モノマーと同様に、官能基が重合することによって硬化する。また、二官能モノマーの残基の構造についても、特に限定されず、直鎖構造であってもよいし、環状構造であってもよい。なお、吐出口からの吐出性を考慮すると、二官能モノマーの残基は、炭素数が6〜11(例えば炭素数9)の直鎖アルカンであると好ましい。このような残基を有する二官能モノマーを用いることによって、好適な吐出性を有するインクを提供することができる。
また、二官能モノマーについても、無機顔料の分散性や光硬化性の観点から、官能基としてアクリル基を有する二官能モノマーが好ましく用いられる。かかるアクリル基を有した二官能モノマーの具体例としては、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(下記式(4)参照)、1,9−ノナンジオールジアクリレート(下記式(5)参照)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(下記式(6)参照)、1,4−ブタンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAEO3.8モル付加物ジアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物などが挙げられる。
なお、上記したアクリル基を有する二官能モノマーの中でも、残基の炭素数が12を超えるトリシクロデカンジメタノールジアクリレートは、インク粘度が上昇し易く吐出性が低下し易い。一方、炭素数が6〜11の直鎖アルカンを残基として有している1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレートは、特に優れた吐出性を有し、精密な画像を描画する場合であってもインクの掠れを好適に防止することができるため、特に好ましく用いる事ができる。
ここで開示される無機基材用インクジェットインクの光硬化性樹脂には、上記した一官能モノマーと二官能モノマー以外の樹脂材料(例えば、三官能以上のモノマー、オリゴマーなど)が含まれていてもよい。但し、これらの三官能以上のモノマーやオリゴマーが多量に含まれていると、光硬化性樹脂の粘度が大きく上昇して吐出性を低下させる虞がある。このため、三官能以上のモノマーやオリゴマーを含む光硬化性樹脂を用いる場合には、光硬化性樹脂の総重量に対する三官能以上のモノマーとオリゴマーの合計重量を少量(例えば20wt%以下、好ましくは10wt%以下)にすると好ましい。
光重合開始剤は、従来から使用されている光重合開始剤を適宜選択し得る。かかる光重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤やアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤などのラジカル系光重合開始剤が挙げられる。かかるアルキルフェノン系光重合開始剤としては、例えば、α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤(例えば、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンなど)が好ましく用いられる。また、アルキルフェノン系光重合開始剤の他の例として、α−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンなど)を用いることができる。
上記した種々の光重合開始剤の中でも、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(下記式(7)参照)などのα−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤は、高い反応性を発揮してインクの硬化速度を向上させることができ、薄膜硬化性や表面硬化性に優れているため、特に好ましく用いることができる。
本実施形態に係る無機基材用インクジェットインクでは、分散剤としてカチオン系分散剤が用いられる。かかるカチオン系分散剤は、酸塩基反応によって無機顔料の表面に効率良く付着するため、リン酸系分散剤などの他の分散剤と異なり、上記した無機顔料の凝集を抑制して好適に分散させることができる。かかるカチオン系分散剤の一例としてアミン系分散剤が挙げられる。かかるアミン系分散剤は、立体障害により無機顔料が凝集することを防止すると共に、当該無機顔料を安定化させることができる。また、無機顔料の粒子に同一の電荷を付与することができるため、この点においても、無機顔料の凝集を好適に防止することができる。このため、インクの粘度を好適に低下させて吐出性を大きく向上させることができる。かかるアミン系分散剤の例としては、脂肪酸アミン系分散剤、ポリエステルアミン系分散剤などが挙げられ、例えば、ビックケミー・ジャパン株式会社製のDISPERBYK−168など好ましく用いることができる。
また、本実施形態に係る無機基材用インクジェットインクには、上記した材料以外に種々の添加物を添加することができる。かかる添加物としては、例えば、焼成処理において無機顔料と無機基材とを付着させるためのガラスバインダや粘度調整用に微量添加される有機溶媒などが挙げられる。
無機基材用インクジェットインクは、上記した各材料を所定の割合で混合することによって調製される。このとき、本実施形態に係る無機基材用インクジェットインクでは、光硬化性樹脂の総重量に対する二官能モノマーの重量比率と、無機顔料の重量に対するカチオン系分散剤の重量比率とが所定の範囲内に設定されている。これによって、無機基材上に適切に定着させることができると共に、好適な吐出性を有するインクを得ることができる。以下、各々の重量比率について説明する。
一般に、官能基数が多いモノマーが光硬化性樹脂に多く含まれていると、インクの光硬化性が向上して当該インクの滲みを好適に防止することができる一方で、インクの吐出性が低下して画像を精密に描画することが難しくなる。
本実施形態に係る無機基材用インクジェットインクでは、上記したトレードオフの関係を有する光硬化性と吐出性とが高いレベルで両立した光硬化性樹脂を得るために、光硬化性樹脂の全重量に対する二官能モノマーの重量比率が所定の範囲に設定されている。
具体的には、本実施形態に係るインクでは、光硬化性樹脂の全重量に対する二官能モノマーの重量比率の下限値が25wt%以上(好ましくは30wt%以上、例えば45wt%以上)に設定され、上限値が75wt%以下(好ましくは70wt%以下、例えば60wt%以下)に設定される。これによって、光硬化性と吐出性とが高いレベルで両立した光硬化性樹脂を得ることができる。
また、無機基材用インクジェットインクでは、上記したように、焼成処理において変色(又は消色)が生じないように無機顔料が使用されているが、かかる無機顔料は、光硬化性樹脂中に好適に分散させることが難しく、当該無機顔料が凝集することによって吐出性が低下する虞がある。
本実施形態に係る無機基材用インクジェットインクでは、上記した無機顔料の凝集による吐出性の低下を抑制するために、無機顔料の重量に対して所定の割合でカチオン系分散剤が添加されている。
具体的には、本実施形態に係るインクでは、無機顔料の重量に対するカチオン系分散剤の重量比率の下限値が1.9wt%以上(好ましくは3wt%以上、例えば10wt%以上)に設定され、上限値が20wt%以下(好ましくは18wt%以下、例えば15wt%以下)に設定される。これによって、無機顔料の凝集による吐出性の低下を抑制し、掠れのない精密な画像を描画することができる。
次に、上記した実施形態に係る無機基材用インクジェットインクを製造する方法について説明する。図1は無機基材用インクジェットインクの製造に用いられる撹拌粉砕機を模式的に示す断面図である。なお、以下の説明は、ここで開示される無機基材用インクジェットインクを限定することを意図したものではない。
次に、図1に示すような撹拌粉砕機100を用いて、スラリーの撹拌と当該スラリー中の無機顔料の粉砕を行う。具体的には、上記したスラリーに粉砕用ビーズ(例えば、直径0.5mmのジルコニアビーズ)を添加した後に、供給口110から撹拌容器120内にスラリーを供給する。この撹拌容器120内には、複数の撹拌羽132を有したシャフト134が収容されている。かかるシャフト134の一端はモータ(図示省略)に取り付けられており、当該モータを稼働させてシャフト134を回転させることによって複数の撹拌羽132でスラリーを送液方向Aの下流側に送り出しながら撹拌する。このとき、スラリーに添加されている粉砕用ビーズによって無機顔料が粉砕され、微粒化した無機顔料の表面に分散剤が付着する。これによって、各々の無機顔料が凝集することを防止して、光硬化性樹脂中に好適に分散させることができる。
次に、本実施形態に係る無機基材用インクジェットインクを用いて、無機基材に画像を描画する手順を簡単に説明する。
図2はインクジェット装置の一例を模式的に示す全体図である。図3は図2中のインクジェット装置のインクジェットヘッドを模式的に示す断面図である。
このとき、本実施形態に係る無機基材用インクジェットインクでは、好適な吐出性を発揮することができるように、二官能モノマーの重量比率とカチオン系分散剤の重量比率とが設定されているため、インクの掠れや吐出口17の詰まりなどを生じさせることなく、無機基材Wに精密な画像を描画することができる。
具体的には、上記の説明では、印刷方法の一例として、無機基材の表面に直接インクを付着させて画像を描画する方法を挙げている。しかし、ここで開示される無機基材用インクジェットインクを用いて画像を描画するに際しては、必ずしも無機基材の表面に直接吐出しなくてもよい。例えば、所定の転写紙にインクを付着させて画像を描画した後に、当該転写紙に描画された画像を無機基材に転写してもよい。このように、転写紙を使用して無機基材を加飾する場合でも、ここで開示されるインクを用いることによって、十分な厚みのインクを滲むことなく無機基材上に定着させ、所望の画像を精密に印刷することができる。
以下、本発明に関する試験例を説明するが、かかる試験例は本発明を限定することを意図したものではない。
本試験例においては、所定の材料を混合したスラリーに粉砕用ビーズ(直径0.5mmのジルコニアビーズ)を添加した後、図1に示す撹拌粉砕機100を用いて撹拌・粉砕することによって試験例1〜試験例28のインクジェットインクを作製した。以下、各試験例のインクジェットインクの材料を説明する。
表1に示すように、試験例1〜試験例3においては、一官能モノマーのみからなる光硬化性樹脂を使用した。
具体的には、光硬化性樹脂(一官能モノマー)として、試験例1ではイソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製:IBXA)を使用し、試験例2ではテトラヒドロフルフリルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製:THFA)を使用し、試験例3ではメトキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製:2−MTA)を使用した。また、試験例1〜試験例3では、インクジェットインクの全重量に対する一官能モノマーの重量比率を60.7%に設定した。
具体的には、試験例4〜試験例28では、一官能モノマーとしてイソボルニルアクリレート(IBXA)を使用した。そして、試験例4〜試験例13、試験例16、および試験例18〜試験例28では、二官能モノマーとして1,9−ノナンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製:1,9−NDDA)を使用した。また、試験例14および試験例15では、二官能モノマーとしてトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製:A−DCP)を使用し、試験例17では1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製:HDDA)を使用した。
なお、試験例4〜試験例28では、インクジェットインクの全材料の重量に対する各モノマーの重量比率を表1に示すように設定した。そして、試験例4〜試験例28においては、光硬化性樹脂の全重量(一官能モノマーと二官能モノマーの合計重量)に対する二官能モノマーの重量比率(二官能モノマー/光硬化性樹脂)を計算した。計算結果を表1および図4に示す。
表1に示すように、試験例1〜試験例22においては、ZrSiO4−Prを含むイエローの無機顔料を使用した。また、試験例23〜試験例27においては、ZrSiO4−Vを含むシアンの無機顔料を使用し、試験例28においては、ZrSiO4−Feを含むマゼンダの無機顔料を使用した。そして、インクジェットインクの全重量に対する無機顔料の重量比率を表1に示すように設定した。
表1に示すように、本試験では、試験例6を除く全ての試験例において、アミン系分散剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製:DISPERBYK−168)を使用した。一方、試験例6では、直鎖リン酸系の分散剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製:DISPERBYK−111)を使用した。そして、インクジェットインクの全重量に対する無機顔料の重量比率を表1に示すように設定した。
なお、各々の試験例において無機顔料の重量に対する分散剤の重量比率(二官能モノマー/光硬化性樹脂)を計算した。計算結果を表1および図4に示す。
本試験例においては、光重合開始剤として、α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤である2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(豊通ケミプラス株式会社製:IIRGACURE907)を使用した。そして、インクジェットインクの全重量に対する光重合開始剤の重量比率を表1に示すように設定した。
上記した各試験例のインクを、インクジェット装置(富士フィルム株式会社製:マテリアルプリンター DMP−2831)を使用し、主成分が骨灰、カオリン、長石などからなる陶磁器の表面に模様を描画した。試験例5のインクを用いて模様を印刷した陶磁器の写真を図5に示し、試験例16インクを用いて模様を印刷した陶磁器の写真を図6に示す。
そして、陶磁器に印刷された模様について適切に描画されているか否かを目視で評価した。評価結果を表1に示す。なお、表1中の「吐出不可」は、インクジェットヘッドからインクが吐出されず、模様が印刷できなかった場合を示しており、「掠れ」は図5中のPに示すように模様に掠れが生じた場合を指す。そして、「良好」は、一時間継続して印刷しても図6に示すように模様の掠れが生じなかった場合を指す。
このことから、無機基材を加飾対象とする無機基材用インクジェットインクを作製する場合には、試験例16〜試験例28のように、二官能モノマーの重量比率とカチオン系分散剤の重量比率とを図4中の点線で囲まれた範囲内(すなわち、二官能モノマーの重量比率が25wt%〜75wt%、カチオン系分散剤の重量比率が1.9wt%〜20wt%の範囲内)に設定すればよいことが分かった。
10 インクジェットヘッド
12 ケース
13 貯蔵部
15 送液経路
16 吐出部
17 吐出口
18 ピエゾ素子
20 ガイド軸
30 UV照射手段
40 印刷カートリッジ
100 撹拌粉砕機
110 供給口
120 撹拌容器
132 撹拌羽
134 シャフト
140 フィルター
150 排出口
A 送液方向
X ガイド軸の軸方向
Y ガイド軸の垂直方向
Claims (9)
- 焼成を伴う無機基材に使用されるインクジェットインクであって、
金属化合物を含む無機顔料と、光硬化性樹脂と、光重合開始剤と、分散剤とを含み、
前記光硬化性樹脂に一個の官能基を有する一官能モノマーと、二個の官能基を有する二官能モノマーとが少なくとも含まれていると共に、前記分散剤がカチオン系分散剤であり、
前記光硬化性樹脂の全重量に対する前記二官能モノマーの重量比率が45wt%〜75wt%であり、かつ、
前記無機顔料の重量に対する前記カチオン系分散剤の重量比率が1.9wt%〜20wt%であり、
前記官能基を除いた前記二官能モノマーの残基が炭素数6〜11の直鎖アルカンであり、
前記光硬化性樹脂の全重量に対する三官能以上のモノマーとオリゴマーの合計重量の比率が20wt%以下であることを特徴とする、無機基材用インクジェットインク。 - 前記一官能モノマーおよび前記二官能モノマーの官能基がアクリル基である、請求項1に記載の無機基材用インクジェットインク。
- 前記官能基を除いた前記一官能モノマーの残基の炭素数が3〜11であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の無機基材用インクジェットインク。
- 前記光硬化性樹脂に含まれる樹脂材料の一次刺激性インデックスが5以下である、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の無機基材用インクジェットインク。
- 前記無機顔料がZr系複合金属酸化物であることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の無機基材用インクジェットインク。
- 前記無機顔料の微粒子側から累積100個数%に相当する粒径であるD100粒径が1μm以下である、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の無機基材用インクジェットインク。
- 前記カチオン系分散剤がアミン系分散剤であることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の無機基材用インクジェットインク。
- 前記光重合開始剤がα−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤であることを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の無機基材用インクジェットインク。
- 前記光硬化性樹脂の全重量に対する三官能以上のモノマーとオリゴマーの合計重量の比率が10wt%以下である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の無機基材用インクジェットインク。
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