[1]実施例
図1は実施例に係る監視システム1の全体構成を表す。監視システム1は、定められた監視エリアに配置された監視員と監視センタにいるオペレータとが協同してその監視エリアを監視することを支援するシステムである。監視エリアとしては、デパートや遊園地、コンサート会場などの人が集まる施設内のエリアの他、マラソンやパレードのコース及びその周辺といった広域に亘るエリアなどが定められる。
監視システム1は、ネットワーク2と、イントラネット3と、複数の監視員端末10と、監視センタサーバ装置20と、オペレータ端末30とを備える。ネットワーク2は、移動体通信網及びインターネット等を含む通信システムであり、自システムに接続される装置同士のデータのやり取りを仲介する。ネットワーク2には、監視員端末10が例えば移動体通信又は無線LAN(Local Area Network)通信等の無線通信により接続される。
イントラネット3は、例えばLAN及びWAN(Wide Area Network)を含む通信システムであり、自システムに接続される装置同士のデータのやり取りを仲介する。イントラネット3は、ネットワーク2に接続されている。また、イントラネット3には、監視センタサーバ装置20及びオペレータ端末30が接続されている。なお、イントラネット3との接続は有線通信及び無線通信のどちらでもよい。
監視員端末10は、監視エリアの現場に配置される監視員が所持して持ち運ぶ端末である。監視員端末10は、例えばスマートフォンであるが、本システム専用に作られた端末であってもよい。
図2は監視員に装着された監視員端末10を表す。図2では、監視員A1が端末ケース4を身体に固定している。端末ケース4は、監視員端末10を格納する入れ物であり、バンドにより監視員の身体(詳細には胸部)に固定されている。
監視員端末10は、撮影手段を備えており、端末ケース4は、自ケースに監視員端末10が格納された場合に撮影手段のレンズの位置する部分が透明になっている(孔が空いていてもよい)。監視員の胸部に装着された監視員端末10は、監視員の前方の空間B1を撮影する。図中の二点鎖線は、監視員端末10の画角、すなわち撮影可能な範囲と撮影されない範囲との境界C1を表している。
監視員端末10は、位置の測定手段及び方位の測定手段も備えている。監視員端末10は、撮影手段による撮影画像と、測定手段による位置及び方位の測定結果とを監視センタサーバ装置20に送信する。なお、撮影画像及び測定結果を送信するとは、それらの情報を示すデータを送信することを意味する。以下でも、各種の情報に対して送信等の処理を行うことは、それらの情報を示すデータに対して処理を行うことを意味する。
監視センタサーバ装置20は、監視エリアの監視状況を管理するための処理を実行する情報処理装置である。監視センタサーバ装置20は、例えば、監視員端末10から送信されてきた撮影画像及び測定結果を蓄積したり、撮影画像をオペレータ端末30に出力したりする。また、監視センタサーバ装置20は、過去の一定期間において監視員の監視がなされていない未監視領域が存在した場合に、その旨をオペレータに報知する。監視センタサーバ装置20は、例えば、未監視領域を地図上で示す報知情報をオペレータ端末30に出力することでこの報知を行う。
オペレータ端末30は、監視センタのオペレータによって使用される端末である。オペレータ端末30は、監視センタサーバ装置20に蓄積されている情報(撮影画像及び測定結果等)を参照して表示したり、前述した報知情報等のように監視センタサーバ装置20から出力されてきた情報を表示したりする。オペレータは、こうして表示された情報を見ながら必要に応じて監視員に指示を行う。
図3は監視員端末10のハードウェア構成を表す。監視員端末10は、プロセッサ11と、メモリ12と、ストレージ13と、通信装置14と、入力装置15と、出力装置16と、撮像装置17と、位置センサ18と、方位センサ19とを備えるコンピュータである。プロセッサ11は、CPU(Central Processing Unit)等を備え、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ11は、プログラム及びデータ等をストレージ13及び通信装置14からメモリ12に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。
メモリ12は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のコンピュータが読み取り可能な記録媒体である。ストレージ13は、ハードディスクドライブ及びフラッシュメモリ等のコンピュータが読み取り可能な記録媒体である。通信装置14は、無線ネットワークを介してコンピュータ間の通信を行う。通信装置14は、例えば移動体通信又は無線LANの規格に準拠した無線通信を行う。
入力装置15は、外部からの入力を受け付ける入力デバイスであり、監視員端末10においては例えばタッチセンサ、ボタン及びマイクロフォン等である。出力装置16は、外部への出力を実施する出力デバイスであり、例えば、ディスプレイ及びスピーカー等である。なお、監視員端末10は、入力装置15のタッチセンサ及び出力装置16のディスプレイが一体となったタッチスクリーンを備える。
撮像装置17は、レンズ及びイメージセンサ等を備え、レンズから入射する光が表す周囲の人物や光景を撮影する。撮像装置17は、少なくとも動画像を撮影可能であり(もちろん静止画像も撮影可能であってもよい)、撮影した動画像(及び静止画像)をプロセッサ11に供給する。位置センサ18は、例えばGPS(Global Positioning System)モジュールであり、GPS衛星からの信号を用いて自身の位置を測定する。位置センサ18は、測定した位置を示す位置情報(緯度及び経度を示す情報)をプロセッサ11に供給する。
方位センサ19は、地磁気を検知して方位を測定するセンサである。方位センサ19は、自端末の基準となる方向が向いている方位を示す方位情報(例えば真北を0度として時計回りに各方位を360度で表した情報)をプロセッサ11に供給する。監視員端末10の基準となる方向は、本実施例では図2に表す基準方向D1であり、撮像装置17の撮影方向(視軸)と直交している。また、この基準方向D1は、水平方向に沿っており、且つ、監視員A1の正面方向D2と直交しているとみなせるものとする。つまり、この実施例では、撮像装置17の撮影方向と監視員A1の正面方向D2とは略一致しているものとする。
図4は監視センタサーバ装置20のハードウェア構成を表す。監視センタサーバ装置20は、プロセッサ21と、メモリ22と、ストレージ23と、通信装置24とを備えるコンピュータである。これらはいずれも、図2に表す同名の各装置と共通するハードウェアである。なお、通信装置24は、有線又は無線ネットワークを介してコンピュータ間の通信を行う。
図5はオペレータ端末30のハードウェア構成を表す。オペレータ端末30は、プロセッサ31と、メモリ32と、ストレージ33と、通信装置34と、入力装置35と、出力装置36とを備えるコンピュータである。これらはいずれも、図2に表す同名の各装置と共通するハードウェアである。なお、通信装置34は、有線又は無線ネットワークを介してコンピュータ間の通信を行う。また、入力装置35は、オペレータ端末30においては、キーボード、マウス及びマイクロフォン等である。
監視システム1が備える各装置のプロセッサがプログラムを実行して各部を制御することで、以下に述べる機能が実現される。
図6は監視システム1が実現する機能構成を表す。なお、図6では、監視員端末10が1つしか表されていないが、他の監視員端末10も同じ機能構成を備えている。
監視員端末10は、位置測定部101と、方位測定部102と、測定結果送信部103とを備える。監視センタサーバ装置20は、測定結果取得部201と、測定結果蓄積部202と、監視領域画像生成部203と、監視不足領域判断部204と、報知情報出力部205と、監視不足領域画像生成部206と、監視不足領域画像出力部207とを備える。オペレータ端末30は、報知情報表示部301と、監視不足領域画像表示部302とを備える。
監視員端末10の位置測定部101は、自端末の位置を測定し、測定した位置を示す位置情報を測定結果送信部103に供給する。方位測定部102は、上述した自端末の基準となる方向が向いている方位を測定し、測定した方位を示す方位情報を測定結果送信部103に供給する。自端末の位置及び方位は監視員の動きに応じて変動するため、位置測定部101及び方位測定部102は、常時あるいは短い周期で位置及び方位を測定する。
測定結果送信部103は、位置情報及び方位情報を監視センタサーバ装置20に送信する。監視員端末10は、監視センタサーバ装置20の宛先(IP(Internet Protocol)アドレス等)と、自端末を識別する識別情報として例えば端末ID(Identification)とを記憶している。測定結果送信部103は、位置測定部101から位置情報が供給され、方位測定部102から方位情報が供給されると、受け取った位置情報及び方位情報を自端末の端末IDに対応付けて監視センタサーバ装置20に送信する。
監視センタサーバ装置20の測定結果取得部201は、監視員端末10から送信されてきた位置情報、方位情報及び端末IDを取得する。監視員端末10は、図2に表すように監視員に装着されているので、監視員端末10の位置は装着者である監視員の位置とみなせる。また、測定される方位に向いている監視員端末10の基準方向D1は、上述したように監視員の正面方向D2と直交しているとみなせる。
つまり、測定結果取得部201が取得する位置情報、方位情報及び端末IDは、その端末IDの監視員端末10を所持する監視員の位置及び向き(正面方向)を示す情報である。測定結果取得部201は、複数の監視員端末10からそれぞれ位置情報、方位情報及び端末IDを取得することで、監視エリア内を移動する複数の監視員の各々の位置及び向きを示す情報を取得する。測定結果取得部201は本発明の「取得部」の一例である。
測定結果取得部201は、上記のとおり、複数の監視員がそれぞれ装着する監視員端末10から上記の位置及び向きを示す情報をそれぞれ取得する。測定結果取得部201は、取得した位置情報、方位情報及び端末IDと、それらの取得時刻とを示す取得情報を、測定結果蓄積部202及び監視領域画像生成部203に供給する。測定結果蓄積部202は、測定結果取得部201から供給された取得情報(位置情報、方位情報、端末ID及び取得時刻を含む情報)を、監視員端末10による測定結果として、その取得情報が示す取得時刻に対応付けて蓄積する。
監視領域画像生成部203は、測定結果取得部201により取得された位置情報が示す位置から同じく取得された方位情報が示す向きに広がる監視員の前方領域(監視員の前方に広がる領域であり、その監視員の視界を表す領域)を地図上で示す監視領域画像を生成する。監視センタサーバ装置20は、監視エリアを含む地図とその地図上の各位置の緯度及び経度を示す地図情報を予め記憶している。
監視領域画像生成部203は、測定結果取得部201から取得情報が供給されると、供給された取得情報が示す位置情報及び方位情報に基づいて、前述した監視領域画像を生成する。具体的には、監視領域画像生成部203は、位置情報が示す位置を頂点とし、方位情報が示す向きに弧を有する扇の形をした領域を前方領域として示す監視領域画像を生成する。
また、監視領域画像生成部203は、測定結果取得部201から取得情報が供給されると、その取得情報と同じ端末IDを示す取得情報を測定結果蓄積部202から読み出す。監視領域画像生成部203は、読み出した取得情報に基づいて、現在の前方領域に加えて過去の前方領域を地図上で示す画像を監視領域画像として生成する。
監視領域画像生成部203は、例えば、測定結果取得部201から供給された最新(現在)の取得情報と、測定結果蓄積部202に蓄積されている15分前までの取得情報とを用いて、15分前から現在に至るまでの各監視員の前方領域を地図上で示す監視領域画像を生成する。以下の実施例では、現在、5分前、10分前、15分前の4つの前方領域を地図上で示す監視領域画像を生成するものとする。また、その際に、監視領域画像生成部203は、前方領域を示す取得情報が取得された時期に応じた態様でその前方領域を示す画像を監視領域画像として生成する。
図7は監視領域画像において示される前方領域の一例を表す。図7の例では、監視員A1の現在を含む4つの時点の前方領域G11、G12、G13、G14(G11が現在の前方領域を表し、G14が最も古い時点の前方領域を表す)が表されている。以下では、これらをまとめて前方領域群画像G10という。各前方領域は、取得情報の取得された時期が新しいほど濃い色で(図7では色の濃さを斜線の本数の多さで表している)表されている。この例では前方領域ごとに態様(色の濃さ)が異なっているが、過去15分間の1分毎の前方領域を示す場合には、5分単位で前方領域の態様を異ならせてもよい。また、過去30分間の前方領域を示す場合には、10分単位で前方領域の態様を異ならせてもよい。
また、各前方領域は、互いに重なり合った場合に、取得情報の取得された時期が新しいほど上に来るように表されている(従って現在の前方領域G11が最も上に重なっている)。また、例えば前方領域G14は、監視員A1の位置J14において角度θ1の角を成す2辺H141及び142と、これらの2辺の他端を結ぶ弧H143とを有する扇形の画像である。角度θ1としては、監視員の視界の広さを表す角度が予め定められる。この角度θ1は、撮像装置17の画角とみなすこともできる。
2辺H141及び142は、いずれも長さL1の辺である。監視員から見える範囲というだけであれば、障害物がない限りはるか遠方までを含めることも可能であるが、監視という目的からすると、何が起きているか分からないような遠方までも視界に含めることは望ましくない。そこで、本実施例では、前方領域の2辺の長さは、周辺で発生している事象を監視員が把握可能な範囲を表す長さL1が定められている。
例えばどの監視員も自分から30m以内の範囲で発生した事象であれば把握可能だと考えられる場合には、地図上で30mを表す長さがL1として定められる。他の前方領域も、前方領域G14と同じ形及び大きさの画像である。このように、前方領域は、上述したように監視員が監視可能な視界を表す領域である。なお、監視員は監視中に頭だけを左右や後ろに向けることもあるが、長い監視時間の全体を考えると、前を向いている時間が最も長いことが普通なので、本実施例では、図7に表す前方領域を、監視員が監視可能な視界を表す領域とみなしている。
位置J11にいる現在の監視員A1は、図中の矢印が示す方向D11を向いている。前方領域G11は、この方向D11と扇形の2辺とがそれぞれ成す角度が等しくなる(この例ではいずれも角度θ2(θ2=θ1÷2)になっている)ように、すなわち監視員A1の向いている方向に弧の中心が位置するように配置されている。他の前方領域も、前方領域G11と同様に、その時点での監視員A1の向いている方向に弧の中心が位置するように配置されている。
図8は複数の前方領域が示された監視領域画像の一例を表す。図8の例では、監視エリアを含む地図M1と、監視エリアに配置された4人の監視員A1、A2、A3、A4、A5のそれぞれの前方領域群画像G10、G20、G30、G40、G50とを示した監視領域画像G100が表されている。地図M1には、南北に走るK1通り及びK3通りと、東西に走るK2通り及びK4通りと、K1通り及びK2通りが交わるK5交差点と、K2通り及びK3通りが交わるK6丁字路とが表されている。
監視員A1は、K1通りをK5交差点に向けて南向きに移動し、監視員A2は、K4通りを東向きに移動していてK3通りとの交差点の手前にいる。監視員A3は、K5交差点を背にしてK2通りを西向きに移動し、監視員A4は、K2通りを西向きに移動してK5交差点でK1通りに入り、南向きに移動している。監視員A5は、K2通りの一本南側の通りを東向きに移動している。このように、各前方領域群画像を見ることで、各監視員の移動の様子と、視界の移り変わりとが把握できるようになっている。監視領域画像生成部203は、監視領域画像を生成することで、複数の前方領域を求める(前方領域の監視エリアにおける位置及び向きを特定する)手段として機能している。
監視領域画像生成部203は、上記のとおり生成した監視領域画像を監視不足領域判断部204及び監視不足領域画像生成部206に供給する。監視不足領域判断部204は、監視エリアに監視不足領域が存在するか否かを判断する。監視不足領域とは、監視エリアにおいて十分な監視ができていない、すなわち監視が不足している領域である。監視不足領域判断部204は、監視不足領域が存在すると判断した場合、どの領域が監視不足領域であるかということも判断する。
監視不足領域判断部204は、監視領域画像生成部203により生成された(求められた)複数の前方領域との関係が定められた条件(以下「監視不足条件」という)を満たす領域を監視不足領域とみなして、上記の判断を行う。監視領域画像生成部203及び監視不足領域判断部204が協働することで本発明の「判断部」の一例として機能する。ここでいう複数の前方領域は、測定結果取得部201により取得された測定結果が示す複数の監視者の位置から各々の監視者の前方に広がる複数の領域のことである。
本実施例では、図8に表す例のように、現在の前方領域だけでなく、過去の前方領域も監視領域画像に示されている。このため、監視不足領域判断部204は、本実施例では、現在の複数の前方領域及び過去の複数の前方領域を合わせたもの(例えば図8に表す前方領域群画像G10、G20、G30、G40、G50)との関係が監視不足条件を満たす領域が存在する場合に、その領域が監視不足領域であると判断する。
より詳細には、監視不足領域判断部204は、複数の前方領域と重複しない所定の仮想領域が存在する場合に、その仮想領域が監視不足領域であると判断する。仮想領域とは、監視エリア上に存在すると仮定される領域である。本実施例では、監視不足領域判断部204は、監視エリアを分割して得られる複数の分割領域のそれぞれを仮想領域とする。つまり、監視不足領域判断部204は、それら複数の分割領域のうち、複数の前方領域と重複しない分割領域が存在する場合に、その分割領域が監視不足領域であると判断する。
図9は複数の分割領域の一例を表す。図9の例では、図を見やすくするため、図8に表す監視領域画像G100を地図抜きで表している。
監視不足領域判断部204は、監視領域画像G100に表された監視エリアを、縦3つ、横3つの合計9つの分割領域R1、R2、・・・、R9に分割している。前方領域群画像は、分割領域R6を除く各分割領域には重複しているが、分割領域R6には重複していない。そこで、監視不足領域判断部204は、前方領域群画像と重複しない分割領域R6が存在するので、この分割領域R6が監視不足領域であると判断する。監視不足領域判断部204は、分割領域R6が監視不足領域であると判断すると、監視不足領域があったことを報知情報出力部205に通知する。
報知情報出力部205は、この通知を受け取った場合、すなわち、監視不足領域判断部204により監視不足領域が存在すると判断された場合に、予め記憶している報知情報をオペレータ端末30に向けて出力する。この報知情報は、監視不足領域が存在することをオペレータに知らせる内容の情報である。報知情報出力部205は、本実施例では、この内容を文字列(テキスト)で示した情報を報知情報として出力する。この報知情報を出力することで、報知情報出力部205は、監視不足領域が存在することをオペレータに報知する。報知情報出力部205は本発明の「報知部」の一例である。
オペレータ端末30の報知情報表示部301は、監視センタサーバ装置20から出力されてきた報知情報を表示する。
図10は表示された報知情報の一例を表す。図10の例では、報知情報表示部301は、監視システム画面に、「警告:監視不足領域があります!」という文字列E1と、「監視不足領域を表示する」と書かれた表示ボタンE2とを表示している。文字列E1及び表示ボタンE2は、報知情報出力部205が予め記憶されている報知情報である。
表示ボタンE2を押す操作が行われると、報知情報表示部301は、その旨を監視不足領域画像表示部302に通知する。監視不足領域画像表示部302は、この通知を受け取ると、後述するように監視センタサーバ装置20から出力されてくる監視不足領域画像を表示する。監視センタサーバ装置20が監視不足領域画像を出力する構成について説明する。
監視センタサーバ装置20の監視不足領域画像生成部206には、上記のとおり、監視領域画像生成部203から監視領域画像が供給される。また、監視不足領域判断部204は、監視不足領域であると判断した分割領域を識別する識別情報を監視不足領域画像生成部206に供給する。監視不足領域画像生成部206は、監視領域画像生成部203から供給された監視領域画像において、監視不足領域判断部204から供給された識別情報により識別される分割領域(つまり監視不足領域と判断された分割領域)の監視エリアにおける位置を示す画像を監視不足領域画像として生成する。この監視不足領域画像は本発明の「領域情報」の一例である。なお、領域情報は、監視不足領域の位置を文字列(交差点の名称など)又は音声等で示す情報であってもよい。
こうして監視領域画像生成部203及び監視不足領域画像生成部206が協働して生成した監視不足領域画像には、各監視員の前方領域と、監視不足領域とが監視エリアを表す地図上に示されている。各監視員の前方領域は本発明の「複数の第1領域」の一例であり、監視不足領域は本発明の「第2領域」の一例である。また、監視領域画像生成部203及び監視不足領域画像生成部206は、本発明の「生成部」の一例である。監視不足領域画像生成部206は、生成した監視不足領域画像を、監視不足領域と判断された分割領域の識別情報とともに監視不足領域画像出力部207に供給する。
監視不足領域画像出力部207は、監視不足領域画像生成部206から供給された監視不足領域画像及び識別情報をオペレータ端末30に出力する。監視不足領域画像出力部207は本発明の「出力部」の一例である。オペレータ端末30の監視不足領域画像表示部302は、例えば図10に表す表示ボタンE2を押す操作が行われた場合に、監視センタサーバ装置20から出力されてきた監視不足領域画像を表示する。
図11は表示された監視不足領域画像の一例を表す。図11の例では、監視不足領域画像表示部302は、図8に表す監視領域画像G100に各分割領域の境界を示す線(二点鎖線)と、分割領域R6の境界を強調した線(他の境界に比べて太い線)とを加えた監視不足領域画像G101を監視システム画面に表示している。この監視不足領域画像G101が表示されることで、オペレータは、監視エリアのうちで監視が不足している領域(監視不足領域)の位置を把握して、その監視不足領域を監視するよう監視員に指示することができる。
また、監視不足領域画像表示部302は、監視不足領域画像G101とともに出力されてきた識別情報に基づいて、「監視エリアの第6分割領域(K6丁字路周辺)の監視が不足しています。」という文字列E3も表示している。この例では、分割領域R1、R2、・・・、R9がそれぞれ第1分割領域、第2分割領域、・・・、第9分割領域という名称で表されている。
オペレータ端末30は、各分割領域の名称と地図上の地名を対応付けた情報を記憶しており(例えば第6分割領域と「K6丁字路周辺」という地名が対応付けられている)、監視不足領域画像表示部302は、この情報を用いて文字列E3を表示している。監視員が指定された場所に向かう際には、その場所の地名が分かっていた方が移動しやすい。図11の例では、監視不足領域の地名を含む文字列E3が表示されているので、これが表示されない場合に比べて、監視員を監視不足領域に向かわせる指示をオペレータが行いやすくなっている。
監視システム1が備える各装置は、上記の構成に基づいて、監視不足領域の存在を報知する報知処理を行う。
図12は報知処理における各装置の動作手順の一例を表す。この動作手順は、例えば、プログラムを起動させた監視員端末10を監視員が装着するとともに、オペレータが監視システム画面を表示させる操作を行うことを契機に開始される。
まず、監視員端末10(位置測定部101)は、自端末の位置を測定する(ステップS11)。また、監視員端末10(方位測定部102)は、自端末の基準となる方向が向いている方位を測定する(ステップS11)。次に、監視員端末10(測定結果送信部103)は、測定された位置情報及び方位情報を測定結果として監視センタサーバ装置20に送信する(ステップS12)。監視センタサーバ装置20(測定結果取得部201)は、監視員端末10から送信されてきた測定結果(位置情報及び方位情報)を取得する(ステップS13)。
次に、監視センタサーバ装置20(測定結果蓄積部202)は、取得された測定結果を蓄積する(ステップS14)。続いて、監視センタサーバ装置20(監視領域画像生成部203)は、取得された位置情報が示す位置から同じく取得された方位情報が示す向きに広がる監視員の前方領域を地図上で示す監視領域画像を生成する(ステップS21)。この際、監視センタサーバ装置20(監視領域画像生成部203)は、現在の前方領域に加えて過去の前方領域を地図上で示す画像を監視領域画像として生成する(ステップS21)。
次に、監視センタサーバ装置20(監視不足領域判断部204)は、監視エリアに監視不足領域が存在するか否かを判断し、存在する場合はどの領域が監視不足領域であるかということを判断する(ステップS22)。監視不足領域が存在すると判断した場合、監視センタサーバ装置20(報知情報出力部205)は、監視不足領域が存在することを知らせる報知情報をオペレータ端末30に出力する(ステップS23)。
オペレータ端末30(報知情報表示部301)は、監視センタサーバ装置20から出力されてきた報知情報を表示する(ステップS24)。監視センタサーバ装置20(監視不足領域画像生成部206)は、監視領域画像において監視不足領域と判断された分割領域を示す画像を監視不足領域画像として生成する(ステップS31)。次に、監視センタサーバ装置20(監視不足領域画像出力部207)は、生成された監視不足領域画像をオペレータ端末30に出力する(ステップS32)。オペレータ端末30(監視不足領域画像表示部302)は、監視センタサーバ装置20から出力されてきた監視不足領域画像を表示する(ステップS33)。
本実施例では、上記のとおり、動的に変化する監視員の視野或いは監視員端末の撮影範囲に対し、監視エリアに生じた監視不足領域を自動検出し、監視不足領域が存在すると判断された場合に、報知情報がオペレータ端末30に出力されてオペレータに対する報知が行われる。これにより、時間の経過に伴い監視エリアに監視が不十分な領域が発生した場合にそのことをオペレータが迅速に把握することができる。また、過去の前方領域も用いて監視不足領域の存在を判断することで、過去も含めて監視が不十分な領域を把握することができる。
また、本実施例では、上記の報知とともに、各監視員の前方領域及び監視不足領域を示す監視不足領域画像がオペレータ端末30に出力されている。これにより、オペレータは、監視不足領域がどこにあって、その監視不足領域の近くにどの監視員がいるのかということを迅速に把握することができる。
[2]変形例
上述した実施例は本発明の実施の一例に過ぎず、以下のように変形させてもよい。また、実施例及び各変形例は、必要に応じて組み合わせて実施してもよい。
[2−1]分割領域と前方領域の重複
監視不足領域判断部204は、上記実施例とは異なる方法で監視不足領域の判断を行ってもよい。監視不足領域判断部204は、複数の前方領域との重複部分の大きさが閾値以下となる所定の仮想領域が存在する場合に、その仮想領域が監視不足領域であると判断する。仮想領域として実施例で述べた分割領域を用いる場合、監視不足領域判断部204は、分割領域と複数の前方領域との重複部分の面積を算出し、算出した面積の分割領域の面積に対する割合が閾値以下の分割領域が存在する場合に、その分割領域が監視不足領域であると判断する。
図13は各分割領域の重複部分の面積の割合の一例を表す。図13の例では、図9で表した9つの分割領域R1からR9における重複部分の面積の割合が表されている。なお、図7に表す前方領域群画像G10のように同じ監視員の前方領域自身も互いに重複しているが、この重複部分は面積を累積しないで、1つの前方領域の面積のみを加算している。
例えば前方領域群画像G10であれば、監視不足領域判断部204は、まず前方領域G11の重複面積(対象の分割領域と重複している部分の面積)を算出し、次に前方領域G12のうち前方領域G11に重複していない部分の重複面積を算出し、次に前方領域G13のうち前方領域G11及びG12に重複していない部分の重複面積を算出し、最後に前方領域G14のうち前方領域G11、G12及びG13に重複していない部分の重複面積を算出して、それらの面積を合計する。
図13の例において、例えば閾値を10%と定めると、監視不足領域判断部204は、重複部分の面積の割合が5%の分割領域R5と、同割合が0%の分割領域R6とを監視不足領域であると判断する。これにより、重複部分の面積の割合を考慮しない場合に比べて、分割領域R5のようにわずかしか監視がされていない分割領域の存在を迅速に把握することができる。
なお、重複部分の面積の割合を算出する際に、状況に応じて各前方領域の面積を補正してもよい。例えば、監視不足領域判断部204は、前方領域を示す情報(実施例では位置情報及び方位情報)の取得時期が古いほどその前方領域の面積を小さく補正する。監視不足領域判断部204は、例えば取得時期と面積の補正方法とを対応付けた時期補正テーブルを用いてこの補正を行う。
図14は時期補正テーブルの一例を表す。図14の例では、「最新」、「5分前」、「10分前」、「15分前」という取得時期に対して、「補正なし」、「−10%」、「−20%」、「−30%」という面積の補正方法が対応付けられている。監視不足領域判断部204は、例えば前述したように前方領域群画像G10の重複面積を算出する場合、前方領域G11について算出した重複面積は補正せず、前方領域G12について算出した重複面積は−10%の補正をし、前方領域G13について算出した重複面積は−20%の補正をし、前方領域G14について算出した重複面積は−30%の補正をする。
監視員が監視してから経過した時間が長い分割領域ほど、監視後に状況が変化している可能性が高くなる。上記の例では、過去の前方領域の重複面積を小さく補正することで、このように監視後に状況が変化している可能性が高い分割領域ほど、監視不足領域と判断されやすいようにすることができる。
また、監視不足領域判断部204は、環境条件(天気及び時間帯等)に応じて前方領域の面積を補正してもよい。監視不足領域判断部204は、例えば環境条件と面積の補正方法とを対応付けた環境補正テーブルを用いてこの補正を行う。
図15は環境補正テーブルの別の一例を表す。図15の例では、「晴れ、曇り」、「雨」、「霧」、「夜間」という環境条件に対して、「補正なし」、「−10%」、「−20%」、「−30%」という面積の補正方法が対応付けられている。
この例では、監視不足領域判断部204は、例えば天気情報を提供する事業者のサーバ装置から監視エリアを含む地域の天気情報を取得し、取得した天気情報及び現在の時刻から、現在の環境条件を判断する。監視不足領域判断部204は、判断した環境条件に環境補正テーブルで対応付けられている方法で、前方領域群画像(全ての前方領域)の重複面積を補正する。
日中で天気が晴れ又は曇りである場合に比べて、雨天時、霧が出たとき、夜間は視認性が悪くなり、監視員の監視可能な範囲が狭くなる。本変形例では、上記のとおり前方領域の重複面積を小さく補正することで、視認性を悪化させる環境条件のときには監視不足領域が存在すると判断されやすいようにすることができる。
[2−2]外接する定形領域の大きさ
監視不足領域判断部204は、上記の各例とは異なる方法で監視不足領域の判断を行ってもよい。本変形例では、監視不足領域判断部204は、大きさは固定されていないが、形が固定された定形の領域(定形領域)を仮想領域とする。定形領域は、例えば円形、長方形、楕円形又は多角形等の形をした領域であり、以下では定形領域が円形の場合を説明する。
監視不足領域判断部204は、複数の前方領域と重複せずに外接する定形領域の大きさ(面積)が閾値以上である場合に、その定形領域を監視不足領域と判断する。監視エリアにおいて前方領域に外接する定形領域には2種類ある。1種類目は、前方領域とだけ外接する定形領域であり、2種類目は、前方領域に加えて監視エリアの境界と外接する定形領域である。
前述の判断方法(第1判断方法とする)を用いると、1種類目の定形領域が監視不足領域である場合には必ず監視不足領域と判断される。一方、2種類目の定形領域は1つの前方領域だけと外接する場合がある。そこで、監視不足領域判断部204は、複数の前方領域と重複せずに、且つ、それらのうち1以上の前方領域及び監視エリアの境界と外接する定形領域の大きさ(面積)が閾値以上である場合にも、その定形領域を監視不足領域と判断する(第2判断方法とする)。
図16は監視エリアに存在する定形領域の例を表す。図16の例では、図を見やすくするため、図8に表す監視領域画像G100を地図抜きで表している。監視不足領域判断部204は、定形領域T1、T2、・・・、T10までの10個の定形領域を描いている。T4、T6、T8は前述した1種類目の定形領域であり、他は2種類目の定形領域である。定形領域が外接するとは、定形領域の外周上の点が他の領域の境界(この例では前方領域の境界及び監視エリアの境界)に接触することをいうが、2点だけだと定形領域が無数にできるので、図16の例では、外周上の3つ以上の点で他の領域の境界に接触するものを定形領域としている。
例えば定形領域のうち大きい方から2つの定形領域T4、T5の大きさ(面積)が閾値以上である場合、監視不足領域判断部204は、定形領域T4、T5が監視不足領域であると判断する(T4は第1判断方法で、T5は第2判断方法で判断される)。ここでいう定形領域の大きさは、地図上の面積であってもよいし、実空間における面積であってもよい。監視不足領域画像生成部206は、監視領域画像において、監視不足領域と判断された定形領域を示す画像を監視不足領域画像として生成する。監視不足領域画像表示部302は、こうして生成された監視不足領域画像を表示する。
図17は表示された監視不足領域画像の一例を表す。図17の例では、監視不足領域画像表示部302は、図8に表す監視領域画像G100に定形領域T4及びT5の境界を強調した線(他の境界に比べて太い線)を加えた監視不足領域画像G102と、「K6丁字路周辺及びK5交差点の北東角周辺の監視が不足しています。」という文字列E4とを監視システム画面に表示している。監視不足領域画像G102が表示されることで、オペレータが監視不足領域の位置を把握することができる。また、文字列E4が表示されることで、図11の例と同様に、監視員を監視不足領域に向かわせる指示をオペレータが行いやすくなっている。
[2−3]基準領域の走査
監視不足領域判断部204は、上記の各例とは異なる方法で監視不足領域の判断を行ってもよい。本変形例では、監視不足領域判断部204は、監視エリア内の各位置に配置される領域であり且つ形及び大きさ(面積)が固定された領域を仮想領域とする。以下ではこの領域のことを「基準領域」という。監視不足領域判断部204は、まず、この基準領域を用いて監視エリア全体を走査する。走査するとは、基準領域をその位置を少しずつ変えながら監視エリア全体の各位置に配置することをいう。
監視不足領域判断部204は、この走査を行って、複数の前方領域と重複しない又は複数の前方領域との重複部分の大きさが閾値以下となる位置に配置された基準領域が存在する場合に、その基準領域が監視不足領域であると判断する。以下の例では、特に、この基準領域の面積を第1面積として、監視エリア内の各位置に基準領域を配置した場合にその基準領域と前方領域との重複部分の面積(これを第2面積とする)を求め、第2面積の第1面積に対する割合が閾値以下となる位置が存在する場合に、その位置に配置された基準領域が監視不足領域であると判断する。
図18は監視エリアに配置された基準領域の例を表す。図18の例では、図を見やすくするため、図8に表す監視領域画像G100を地図抜きで表している。監視不足領域判断部204は、正方形の基準領域U1を、監視エリアの左上端に配置し、基準領域U1と前方領域との重複部分の面積(第2面積)の基準領域U1の面積(第1面積)に対する割合を算出する。監視不足領域判断部204は、基準領域U1を矢印F1に示すように右にずらしながら上記割合の算出を繰り返し行う。
監視不足領域判断部204は、基準領域U1が監視エリアの右端に到達したら、基準領域U1を矢印f1に示すように下にずらして左端に配置し、再び矢印F2に示すように右にずらしながら上記割合の算出を繰り返し行う。監視不足領域判断部204は、この割合の算出を基準領域U1が右下の端に到達するまで続ける。監視不足領域判断部204は、算出した割合が閾値以下であった基準領域U1の位置が複数ある場合は、それらの位置に配置した基準領域U1を統合した領域を監視不足領域であると判断する。このように、監視不足領域判断部204は、基準領域U1を監視エリア全体に走査させながら監視不足領域を抽出する。
監視不足領域画像生成部206は、監視領域画像において、互いに重複する複数の監視不足領域が存在する場合には、それらを1つの監視不足領域として統合した領域を示す画像を監視不足領域画像として生成する。監視不足領域画像表示部302は、こうして生成された監視不足領域画像を表示する。
図19は表示された監視不足領域画像の一例を表す。図19の例では、監視不足領域画像表示部302は、図8に表す監視領域画像G100に複数の基準領域U1(基準領域U1−1からU1−2までと、基準領域U1−3からU1−4まで)が統合された領域U103の境界を強調した線(他の境界に比べて太い線)を加えた監視不足領域画像G103を表示している。
また、監視不足領域画像表示部302は、「K6丁字路周辺、K5交差点の北東角周辺、K5交差点とK6丁字路の間のK2通り周辺の監視が不足しています。」という文字列E5とを監視システム画面に表示している。監視不足領域画像G103が表示されることで、オペレータが監視不足領域の位置を把握することができる。また、文字列E5が表示されることで、図11の例と同様に、監視員を監視不足領域に向かわせる指示をオペレータが行いやすくなっている。
なお、基準領域U1と前方領域との重複部分の面積を算出する際に、図14の例のように、前方領域を示す取得情報の取得時期に応じて前方領域の面積を補正してもよいし、図15の例のように、環境条件に応じて前方領域の面積を補正してもよい。
[2−4]特定領域を考慮
監視不足領域判断部204は、監視不足領域の判断を行う際に、例えば監視が特に必要な重要な領域については、例外的な判断を行ってもよい。例えば、監視不足領域判断部204は、監視エリアにおいて予め定められた特定領域については、上記の方法で監視不足領域ではないと判断していても、その特定領域に前方領域が重複されていなければ、その特定領域が監視不足領域であると判断する。
図20は特定領域の一例を表す。図20の例では、図11に表す監視不足領域画像G101において、K5交差点の北西の角を含む特定領域V1が表されている。特定領域V1は、分割領域とは関係なく形、大きさ及び位置が定められている。この例では、特定領域V1に前方領域が重複されていないので、監視不足領域判断部204が、特定領域V1が監視不足領域であると判断している。
なお、監視不足領域判断部204は、特定領域における前方領域との重複部分の大きさ(面積)が閾値以下である場合に、その特定領域が監視不足領域であると判断してもよい。或いは、監視不足領域判断部204は、特定領域が前方領域のいずれとも重複しない場合に、その特定領域が監視不足領域であると判断してもよい。いずれの場合も、例えば監視する上で重要な領域を特定領域として定めることで、特定領域が監視不足領域だと判断されやすくなり、特定領域の監視を強化することができる。
[2−5]死角を反映
監視領域画像生成部203は、前方領域を示す監視領域画像を生成する際に、監視員の視界に建物等の障害物が存在する場合に、それらの障害物により見えなくなる領域、すなわち死角を反映してもよい。具体的には、監視領域画像生成部203は、地図上で前方領域に障害物が存在する場合、その障害物及び監視員の位置から見て障害物の後方を前方領域から除いた画像を監視領域画像として生成する。
図21は死角を反映した前方領域の一例を表す。図21の例では、監視領域画像生成部203が、前方領域G51を示す監視領域画像G104を生成している。本変形例では、監視センタサーバ装置20が、監視エリアの地図情報として、地図上に存在する建物の輪郭を示す情報を記憶している。監視領域画像生成部203は、まずは、位置情報が示す位置J15を頂点とし、方位情報が示す向きに弧を有する扇の形をした領域を示す扇形画像g51を生成する。
監視領域画像生成部203は、生成した扇形画像g51を地図上に配置するとその扇形画像g51に建物O1が重なっているので、それらが重なった重複領域g52と位置J15から見て重複領域g52の後方になる後方領域g53とを扇形画像g51から除いた前方領域G51を示す画像を、監視領域画像G104として生成する。監視不足領域判断部204は、こうして生成された監視領域画像に基づいて、上述した各種の方法で監視不足領域の判断を行う。
なお、障害物は、建物に限らず、例えば街路樹、植込み及び横断歩道等が用いられてもよい。また、監視員が坂道にいる場合、坂道の頂上から向こうの死角を反映してもよい。また、例えば監視員が装着した監視員端末10により撮影された監視画像に群集又は渋滞等が写っている場合に、それらを障害物としてオペレータが登録することで、登録された障害物の死角を反映してもよい。
障害物の登録は、例えば地図上の障害物が存在する範囲をマウス等で指定することで行われる。これらの障害物は、時間の経過とともにその範囲が変化したりなくなったりするので、一定時間ごとに範囲の変更を求めたり、一定時間が経過すると障害物を削除したりしてもよい。また、監視センタサーバ装置20が、監視画像から人又は車等を認識し、認識した人の人数又は車の台数が閾値以上である場合に障害物と判断してもよい。
その場合、さらに、監視センタサーバ装置20は、認識した人又は車の監視画像における位置及び大きさから地図上におけるそれらの人又は車の位置を判断し、判断した人又は車が存在する範囲を地図上に指定することで障害物を登録してもよい。本変形例では、以上のとおり死角を反映した監視領域画像に基づいて監視不足領域の判断が行われることで、死角を反映しない場合に比べて、監視エリアにおいて監視員の監視が不十分である領域をより正確にオペレータが把握することができる。
[2−6]複数の前方領域の位置関係
監視不足領域判断部204は、複数の前方領域の位置関係によって監視不足条件が満たされる領域(すなわち監視不足領域)の有無を判断してもよい。監視不足領域判断部204は、例えば、複数の前方領域の位置関係が予め定められた条件(以下「位置関係条件」という)を満たす場合に、監視エリアに監視不足領域(すなわちそれら複数の前方領域との関係が監視不足条件を満たす領域)が存在すると判断する。
例えば上述した定形領域が仮想領域として用いられる場合を説明する。監視不足領域判断部204は、複数の前方領域の位置関係が、大きさが閾値以上の上記の1種類目の定形領域(前方領域とだけ外接する定形領域)が存在する位置関係である場合に、位置関係条件が満たされると判断する。図16の例であれば、1種類目の定形領域である定形領域。T4、T6、T8のうち、T4の大きさ(面積)が閾値以上であったから、監視不足領域判断部204は位置関係条件が満たされると判断する。この方法を用いれば、監視エリアの境界が明確でない場合でも、複数の前方領域の位置関係だけを用いて監視不足領域の有無を判断することができる。
また、上述した分割領域を用いるのであれば、監視不足領域判断部204は、複数の前方領域の監視エリアにおける位置関係が、それら複数の前方領域と重複しない分割領域が存在する位置関係になっている場合に、その分割領域が監視不足領域であると判断する。また、基準領域を用いるのであれば、監視不足領域判断部204は、上記の走査を行って、複数の前方領域の監視エリアにおける位置関係が、それら複数の前方領域と重複しない基準領域が存在する位置関係になっている場合に、その基準領域が監視不足領域であると判断する。
[2−7]前方領域
上記実施例では、現在を含む4つの時点の前方領域が地図上で示されたが、これに限らない。例えば、現在の前方領域だけが地図上で示されてもよいし、現在を含む2つ、3つ又は5つ以上の時点の前方領域が地図上で示されてもよい。
[2−8]監視員の位置及び向きを示す情報
上記実施例では、GPSモジュールを用いて監視員の位置を示す情報が取得されたが、これに限らない。例えば、A−GPS(Assisted GPS)や無線LANの電波を利用して位置を検出する方法などが用いられてもよい。また、実施例では、方位センサを用いて監視員の向きを示す情報が取得されたが、これに限らない。例えば、GPS衛星からの信号やジャイロセンサの出力を用いて方位を検出する方法などが用いられてもよい。要するに、監視員の位置及び向きを示す情報が得られるのであれば、どのような方法が用いられてもよい。
[2−9]固定カメラの利用
上記実施例では、監視員が装着した監視員端末10から位置情報及び方位情報を示す測定結果が取得されたが、位置情報及び方位情報の取得方法はこれに限らない。例えば、監視エリアに設置された固定カメラで撮影された画像が、監視員の位置及び向きを示す情報として用いられてもよい。
図22は本変形例の監視システム1aの全体構成を表す。監視システム1aは、複数の固定カメラ10aと、監視センタサーバ装置20aとを備える。固定カメラ10aは、監視エリアに設置されて、自カメラの周辺を撮影する。固定カメラ10aは、周辺を撮影した周辺画像を監視センタサーバ装置20aに送信する。
図23は監視センタサーバ装置20aが実現する機能構成を表す。監視センタサーバ装置20aは、図6に表す測定結果取得部201及び測定結果蓄積部202に代えて、周辺画像取得部208と、周辺画像蓄積部209とを備える。周辺画像取得部208は、固定カメラ10aにより撮影された周辺画像を取得する。周辺画像取得部208は、取得した周辺画像を、取得時刻に対応付けて監視領域画像生成部203及び周辺画像蓄積部209に供給する。
周辺画像蓄積部209は、周辺画像取得部208から供給された周辺画像を取得時刻に対応付けて蓄積する。監視領域画像生成部203は、周辺画像取得部208により取得された周辺画像及び周辺画像蓄積部209に蓄積された周辺画像に基づいて、監視員の前方領域を地図上で示す監視領域画像を生成する。具体的には、監視領域画像生成部203は、例えば監視員の服装の特徴量を記憶しておき、周辺画像に含まれる人物のうち服装の特徴量が記憶した特徴量と一致する人物の画像を監視員の画像として抽出する。
次に、監視領域画像生成部203は、画像処理により人体の向きをリアルタイムに認識する周知技術(特開2007−066094号公報等)を用いて、抽出した監視員の画像からその監視員の向きを特定する。このように、本変形例では、固定カメラが撮影した周辺画像は、監視員の位置及び向きを示す情報として用いられる。以降は、実施例と同様に監視領域画像生成部203が監視領域画像(過去の前方領域を示したもの)を生成し、監視不足領域判断部204が生成された監視領域画像に基づいて監視不足領域の判断を行う。
以上のとおり、本変形例では、監視員が監視員端末を装着していない監視エリアでも、監視不足領域の存在をオペレータが把握することができる。一方、実施例では、監視員が装着した監視員端末からの測定結果が監視員の位置及び向きを示す情報として取得されることで、固定カメラが設置されていない場所でも監視不足領域の存在をオペレータが把握することができる。
[2−10]監視エリアの監視者
実施例では、監視エリアに配置された監視員が監視エリアの現場で監視の役割を果たす監視者であったが、これに限らない。例えば、監視エリア内で働く監視員以外のスタッフが監視者であってもよい。スタッフとは、具体的には、例えばマラソン会場が監視エリアである場合、会場の案内員、コース整理員、給水スタッフ、観客の誘導員などであり、遊園地やデパートが監視エリアである場合、監視員に相当する警備員の他、チケットの販売員、店舗の店員、清掃員などである。
また、人間に限らず、例えば監視用のカメラが内蔵された自走式のロボットや監視員端末を装着した動物(警察犬のように訓練された犬等)などであってもよい。これらの者は、いずれも、監視エリアにおいて何らかの事象が発生した際に、その事象が発生したことをしかるべき連絡先又はしかるべき担当者又は責任者に伝える能力及び役割を有しており、監視者としての役割を果たすことができる。
これらの監視者には、監視員端末10のような端末を装着させてもよいし、図22の例のように固定カメラを利用することで、監視員端末10のような端末を装着させなくても監視者としての役割が果たせるようにしてもよい。なお、監視者自身が事象の発生を伝える能力を有していなくても、監視員端末10のような端末を装着することで、その端末の機能により事象の発生を伝えることができるのであれば、監視者としての役割を果たすことができる。
[2−11]報知情報
報知情報出力部205は、実施例では、監視不足領域が存在することをオペレータに知らせる内容の文字列(テキスト)を示す情報を報知情報として出力したが、これに限らない。例えば、報知情報出力部205は、この内容を音声で示す情報を報知情報として出力してもよい。その場合、オペレータ端末30は報知情報をスピーカーから音声で出力する。
また、オペレータ端末30が音又は光で警報を発する警報器を備えている場合に、報知情報出力部205は、その警報器を動作させる指示を示す情報を報知情報として出力してもよい。その場合、オペレータ端末30は、報知情報を受け取ると、警報器を動作指させて音又は光を発生させる。この警報器の動作が監視不足領域の存在を示していることをオペレータが知っていれば、オペレータは監視不足領域の存在に気付いて、監視員に監視を指示することができる。このように、報知情報出力部205は、監視不足領域の存在をオペレータに気付かせることができる情報を報知情報として出力すればよい。
[2−12]情報の出力先
報知情報出力部205及び監視不足領域画像出力部207による各情報(報知情報及び監視不足領域画像)の出力先は、オペレータ端末に限らず、例えば監視員端末であってもよい。その場合は監視員端末が報知情報及び監視不足領域画像を表示する。この場合、監視員は、監視員端末を端末ケースから取り出して報知情報及び監視不足領域画像を見てもよいし、端末ケースのバンドを伸ばしたりバンドから端末ケースを外したりして監視員端末を端末ケースに入れたままこれらの情報を見てもよい。また、監視センタサーバ装置が出力装置を備えている場合に、その出力装置を出力先としてもよい。
[2−13]機能を実現する装置
図6等に表す機能を実現する装置は、前述した装置に限らない。例えば、監視センタサーバ装置が入力装置及び出力装置を備えておいて、報知情報表示部301及び監視不足領域画像表示部302を実現してもよい。また、反対に、監視センタサーバ装置が実現していた機能をオペレータ端末30が実現してもよい。
また、複数の監視員端末のうちの1台を代表として定めて、監視センタサーバ装置及びオペレータ端末が実現していた全ての機能をその代表の監視員端末が実現してもよい。この場合は代表の監視員端末が本発明の「監視システム」の一例となる。なお、この場合を含む各例において、監視者は1人であってもよい。いずれの場合も、視界画像によって、監視エリアにおいて監視が不足している領域を用意に把握できるようになる。
また、監視センタサーバ装置が実現する機能を、複数の情報処理装置が分担して実現してもよい。例えば、第1装置が測定結果取得部201から監視不足領域判断部204までを実現し、第2装置が報知情報出力部205から監視不足領域画像出力部207までを実現するという具合である。いずれの場合も、監視システムが備える装置全体で、上述した機能を実現していればよい。
[2−14]指示の自動化
実施例では、オペレータ端末30を使用するオペレータが監視員に対して指示を行ったが、将来は、この指示が自動化されてもよい。例えば、AI(Artificial Intelligence、人工知能)を活用して、撮影画像から対応すべき事象の有無を判断し、対応可能な監視員を特定して、特定した監視員に必要な情報を伝達する。また、生成された監視不足領域画像が示す監視の不足している領域を監視させる指示を示すテキスト又は音声のデータを生成して、そのデータを監視員端末に送信することで、監視員に監視不足領域の監視を指示してもよい。
[2−15]発明のカテゴリ
本発明は、監視員端末10、監視センタサーバ装置20及びオペレータ端末30のような情報処理装置の他、それらの装置を備える監視システムとしても捉えられる。また、本発明は、各装置が実施する処理を実現するための情報処理方法としても捉えられる。また、各装置を制御するコンピュータを機能させるためのプログラムとしても捉えられる。このプログラムは、それを記憶させた光ディスク等の記録媒体の形態で提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してコンピュータにダウンロードさせ、それをインストールして利用可能にするなどの形態で提供されてもよい。