実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る人型ロボット100の斜視図である。人型ロボット100の正面図、左側面図、背面図および平面図を、それぞれ図2、図3、図4および図5に示す。人型ロボット100の骨格構造を説明する斜視図を図6に示す。人型ロボット100を骨格だけにした場合の正面図、左側面図、背面図および平面図を、それぞれ図7、図8、図9および図10に示す。人型ロボット100の左右方向の軸をX軸とし、前後方向の軸をY軸とし、高さ方向の軸をZ軸とする。右から左への向きをX軸の正の向きとし、前から後への向きをY軸の正の向きとし、下から上への向きをZ軸の正の向きとする。
図1から図5に示す、人型ロボット100が直立し両腕を下ろした姿勢を基準状態と呼ぶ。基準状態は、人型ロボット100が使用される際によく取る姿勢である。基準状態は直立した姿勢でなくてもよい。さまざまな動作の起点となるような姿勢が、基準状態であることが望ましい。
人型ロボット100は、人の体に似た構造を有する。人型ロボット100は、体幹部1、体幹部1の上側中央に接続する頭部2、体幹部1の上部の左右から出る一対の上肢部3、体幹部1の下部から出る左右一対の下肢部4を有する。体幹部1は、上側の胸部5と下側の腰部6に分けられる。上肢部3は、上腕部7、前腕部8および手部9が直列に接続する。下肢部4は、腰部6から順に、大腿部10、下腿部11および足部12が直列に接続する。左右一対の上肢部3は、右の上肢部3と左の上肢部3とが鏡像の関係となる構造を有する。左右一対の下肢部4についても同様に鏡像の関係が成立する。左右の上肢部3は、鏡像の関係にならない部分があってもよい。左右の下肢部4も、鏡像の関係にならない部分があってもよい。
人型ロボット100では、骨格を回転可能に接続する各関節部は、筋肉に相当するアクチュエータが有する長さが変更可能なリンク(可変長リンク)が長さを変えることにより動かされる。各関節部を動かす可変長リンクの数は、その関節部で必要な回転自由度の次数と同数である。可変長リンクは、その可動範囲内で長さを変更でき、可動範囲内の任意の長さを維持することができる。アクチュエータは、可変長リンクの長さを変更する力を発生させる動力源であるモータも有する。符合XXのアクチュエータXXが有するリンクの符合をXXLとし、モータの符合をXXMと表記する。図には、可変長リンクの符合XXL、モータの符合XXMを表示する。アクチュエータの符合XXは、原則として図には表示しない。
この明細書では、「リンク」とは、一端と他端を有して、一端が取付けられる点と他端が取付けられる点との間を結ぶ部材である。リンクの回転自由度は、一端および他端がそれぞれ取付けられる箇所での回転自由度と、リンク自体の回転自由度の和である。リンク自体の回転自由度に関して、リンクがねじれることが可能な場合に、リンクは1回転自由度を有する。リンクがねじれることができない場合は回転自由度を有しない、すなわち0回転自由度とする。リンクAがリンクBに取付けられる場合は、リンク取付部の回転自由度は、リンクAの回転自由度に含まれ、リンクBの回転自由度には含まれない。
「アクチュエータ」とは、リンクを有して、リンクの一端が接続する第2部材を、他端が接続する第1部材に対して移動させるものである。第1部材が固定側の部材である。第2部材が第1部材に対して移動する部材である。第2部材を移動させる方法としては、以下の2つがある。
(方法1)リンクの長さを変更する。
(方法2)長さが固定されたリンクの他端を移動させる。
アクチュエータは、リンク、リンクの一端および他端がそれぞれ取付けられるリンク取付部および動力源を含むものである。リンクの他端を移動させるアクチュエータの場合は、移動させるための部材もアクチュエータに含む。
これまでの人型ロボットの多くは、各関節部にモータとギヤを配置し、その軸上に関節交点を配置している。そのため、関節部に要するスペースが大きくなり、コンパクトな関節部を作りにくい。それに対して、人型ロボット100では、関節部の近くにギヤを配置する必要が無いので、関節部をコンパクトにできる。また、関節部で接続される骨格と並行してリンクが存在するので、関節部だけの場合よりも関節部が大きな力に耐えることができる。各関節部に必要な次数の回転自由度を持たせているので、人型ロボット100は、人の動きに近い動きをすることができる。人と同様な動作ができることは、例えば、人が入れない区域などで人の替わりに作業するロボットとしては必要な条件である。
人型ロボット100の各関節部の自由度は、首部、手首部、股部、胸部5と腰部6の間は、前後左右に動かせ、捻りの動作もできる3回転自由度としている。肩部、肘部、足首部は前後左右に動かせる2回転自由度としている。膝部は、前後に動かせる1回転自由度としている。なお、肩部、足首部、肘部などを3回転自由度にしてもよい。
胸部5は、胸上部5Uと胸下部5Dとに分かれている。胸上部5Uには、上腕部7および頭部1が接続する。胸下部5Dは、腰部6に接続する。胸上部5Uは、1回転自由度で上下方向に胸下部5Dに対する角度を変更できる。胸部5は、胸上部5Uを胸下部5Dに1回転自由度を有して回転可能に接続する胸屈曲部C1(図26に図示)を有する。
図10から図24を参照して、体幹部1の構造を説明する。図11は、骨格構造での上半身を左の手部側の斜め前から見た斜視図である。図12は、骨格構造での上半身を右の手部側の斜め後から見上げる斜視図である。図13は、骨格構造での上半身を右の手部側の斜め後から見下ろす斜視図である。図14は、骨格構造での体幹部1を拡大した正面図である。図15は、骨格構造での体幹部1を拡大した背面図である。図16から図18は、胸上部5Uの正面図、左側面図、背面図である。図19は、胸上部5Uを上から見た平面図である。図20は、胸上部5Uを下から見た平面図である。図21は、骨格構造での腰部6から下の部分を上から見た平面図である。図22は、体幹部1を左の手部側の斜め前から見た斜視図である。図23は、体幹部1を左の手部側の斜め後から見た斜視図である。図24は、上肢部3が無い状態での体幹部1の左側面図である。
主に図10から図21を参照して、体幹部1を構成する骨格と、筋肉に相当するアクチュエータが有する可変長リンクが取付けられる箇所に関して説明する。胸部5は、肩部フレーム51、胸郭部フレーム52、胸郭部前後連結フレーム53、胸部中央連結フレーム54、胸部内関節部フレーム55、背骨部56、リンク取付用フレーム57を有する。胸上部5Uは、肩部フレーム51、胸郭部フレーム52、胸郭部前後連結フレーム53、胸部中央連結フレーム54および胸部内関節部フレーム55を有して構成される。胸下部5Dは、背骨部56およびリンク取付用フレーム57を有して構成される。胸部内関節部16は、胸上部5Uと胸下部5Dとを上下方向に回転可能な1回転自由度で接続する。
肩部フレーム51は、両肩に相当する位置を結ぶフレームである。胸郭部フレーム52は、肩部フレーム51の下側の左右に設けられた折れ曲がったフレームである。胸郭部フレーム52には、上腕部7を動かすための可変長リンクが取付けられる。胸郭部前後連結フレーム53は、胸郭部フレーム52を前後方向で連結するフレームである。胸部中央連結フレーム54は、左右の胸郭部前後連結フレーム53を連結するフレームである。胸部内関節部フレーム55は、左右の胸郭部前後連結フレーム53のそれぞれの下側に設けられた板状のフレームである。胸部内関節部フレーム55は、背骨部56と共に胸部内関節部16を構成する。
背骨部56は、正面から見るとT字状の棒である。背骨部56の上側の水平方向の円筒状の部分を、胸内回転軸部56Tと呼ぶ。2枚の胸部内関節部フレーム55が胸内回転軸部56Tを回転可能に挟んで保持することで、胸部内関節部16が構成される。
背骨部56の縦に延在する部分は円柱状である。背骨部56は、胸部5と腰部6とを連結する連結棒である。背骨部56の下端には、背骨部56を腰部6に3回転自由度を有して回転可能に接続する胸腰部関節部18が設けられる。胸腰部関節部18には、球面軸受が用いられる。リンク取付用フレーム57は、胸内回転軸部56Tの上側に接続する。リンク取付用フレーム57には、胸部5を腰部6に対して回転させる可変長リンクが取付けられる。なお、図16から図20では、胸部5を腰部6に対して回転させる可変長リンクの取付位置が分るように、胸上部5Uに含まれる部材だけでなく胸下部5Dに設けられたリンク取付用フレーム57も図示する。
肩部フレーム51は、図5に示すように左右の端部がX軸に対して角度ξ1だけ後方に曲がっている。肩部フレーム51の両端には、上腕部7を2回転自由度を有して回転可能に胸部5に接続する肩関節部13が接続する。肩関節部13は、直交する2つの回転軸を有する2軸ジンバルである。肩関節部13の2軸ジンバルは、肩部フレーム51の方向に存在する回転軸Rx1の回りを回転する部材(回転部材と呼ぶ)を、上腕部7に設けられたヨークが上腕部7と回転部材とがなす角度を変更可能(回転可能)に挟む形状である。ヨークとは、他の部材を回転可能に保持する穴または突起が設けられた互いに対向する部材である。ヨークに設けられた穴に保持され、他の部材を回転可能にする部材を軸部材と呼ぶ。2軸ジンバルでは、回転部材の回転軸と軸部材は直交する。肩関節部13では、回転部材の回転軸と直交する直線上に存在する2個の突起を、ヨークに設けた穴に入れる。そうすることで、ヨークは回転部材を回転可能に保持する。肩関節部13はこのような構造なので、上腕部7は、肩部フレーム51の方向の回転軸の回りを回転できる。また、上腕部7と肩部フレーム51とがなす角度も変更できる。
胸郭部フレーム52は、肩部フレーム51において左右の端部が後方に曲がる箇所よりも少し中央側で肩部フレーム51の下側に接続する。胸郭部フレーム52は、前後方向から見るとL字状であり、側面から見ると下側の辺を有しない長方形の上側の両角を切ったように見える形状である。肩部フレーム51から前後方向および下方に延在する胸郭部フレーム52は、L字状に折れ曲がって中央側に水平に延在する。胸郭部フレーム52の前側および背面側で水平に延在する部分は、中央側で胸郭部前後連結フレーム53により連結される。左右の胸郭部前後連結フレーム53は、胸部中央連結フレーム54により連結される。
胸郭部フレーム52の前側のL字状の角の部分に、胸側主リンク取付部J1が設けられる。胸側主リンク取付部J1に、上腕部7を動かすための上腕部駆動主アクチュエータ14が有する可変長リンクである上腕部駆動主リンク14L(図37に図示)が2回転自由度を有して回転可能に取付けられる。背中側のL字状の角の部分に、胸側補助リンク取付部J2が設けられる。胸側補助リンク取付部J2は、上腕部駆動補助リンク15Lが2回転自由度を有して回転可能に取付けられる2軸ジンバルである。肩部フレーム51の下側で胸郭部フレーム52の間には、上腕部駆動主アクチュエータ14および上腕部駆動補助アクチュエータ15が自由に動ける空間が存在する。
胸側主リンク取付部J1は、回転部材に取付けられたヨークが、上腕部駆動主リンク14Lに設けられた円柱状の突起(軸部材)を回転可能に挟んで保持する構造である。回転部材は、胸郭部フレーム52に垂直な回転軸(Y軸)の回りに回転する部材である。突起(軸部材)は、上腕部駆動主リンク14Lが有する角筒状の部分の対向する両側面から垂直に出る。胸側補助リンク取付部J2も、同様な構造である。つまり、胸側主リンク取付部J1および胸側補助リンク取付部J2は、胸郭部フレーム52側に回転部材とヨークを有する2軸ジンバルである。胸側主リンク取付部J1の回転部材が回転する回転軸および胸側補助リンク取付部J2の回転部材が回転する回転軸は、同一直線上に存在する。
胸郭部前後連結フレーム53の中央部下側には、YZ平面に平行な板状の胸部内関節部フレーム55が接続する。胸部内関節部フレーム55には、胸内回転軸部56Tを回転可能に保持する機構が設けられる。胸内回転軸部56Tは、背骨部56の上部に設けられた水平な円筒状の部分である。2枚の胸部内関節部フレーム55が胸内回転軸部56Tを回転可能に挟んで保持することで、胸部内関節部16が構成される。胸部内関節部16は、胸上部5Uと胸下部5Dとを前後方向に回転可能な1回転自由度で接続する。胸上部5Uと胸下部5Dとの間の接続角度は、胸上部5Uに一端が接続され、胸下部5Dに他端が接続される胸部内リンク17L(図22に図示)の長さにより決まる。胸部内アクチュエータ17は、胸部5の前側中央に設けられる。
胸部内リンク17Lの一端は、下側胸部内リンク取付部J3により背骨部56に回転可能に取付けられる。背骨部56から前方に下側胸部内リンク取付部J3のヨークが出て、胸部内リンク17Lを回転可能に挟む。胸部内リンク17Lのもう一端は、上側胸部内リンク取付部J4により胸部中央連結フレーム54に回転可能に取付けられる。上側胸部内リンク取付部J4のヨークは、胸部中央連結フレーム54に設けられる。胸屈曲部C1は、胸部内関節部16、胸部内アクチュエータ17、上側胸部内リンク取付部J4、下側胸部内リンク取付部J3を有して構成される。
胸部5と腰部6の間には、図22、図23および図24に示すように、3本の胸腰部中央アクチュエータ19、胸腰部右アクチュエータ20、胸腰部左アクチュエータ21が存在する。胸腰部中央リンク19Lは、胸部5の下部の背中側中央の点から腰部6の胸腰部関節部18の背中側中央の点を結ぶ。胸腰部右リンク20Lは、胸部5の下部の前側右の点から腰部6の背中側右の点を結ぶ。胸腰部左リンク21Lは、胸部5の下部の前側左の点から腰部6の背中側左の点を結ぶ。上から見ると、胸腰部右リンク20Lと胸腰部左リンク21Lは、背骨部56を挟むように存在する。胸腰部右リンク20Lと胸腰部左リンク21Lは、胸部5では正面側の位置から腰部6では背面側の位置に向かう。
リンク取付用フレーム57には、背中側の中央に胸部中央リンク取付部J5、前側右に胸部右リンク取付部J6、前側左に胸部左リンク取付部J7が設けられる。胸部中央リンク取付部J5、胸部右リンク取付部J6、胸部左リンク取付部J7は、基準状態で胸部内関節部16と同じ高さになるように設けられる。胸部中央リンク取付部J5、胸部右リンク取付部J6、胸部左リンク取付部J7には、それぞれ胸腰部中央リンク19L、胸腰部右リンク20L、胸腰部左リンク21Lの一端が2回転自由度を有して回転可能に取付けられる。
胸部中央リンク取付部J5は、リンク取付用フレーム57から背面側に出るY軸に平行な回転軸の回りに回転するヨークが胸腰部中央リンク19Lを回転可能に挟む構造である。胸部右リンク取付部J6は、リンク取付用フレーム57から右斜め前に出る回転軸の回りに回転するヨークが胸腰部右リンク20Lを回転可能に挟む構造である。胸部左リンク取付部J7は、リンク取付用フレーム57から左斜め前に出る回転軸の回りに回転するヨークが胸腰部左リンク21Lを回転可能に挟む構造である。
胸腰部中央アクチュエータ19が有する可変長リンクである胸腰部中央リンク19Lを例にして、可変長リンクの構造を説明する。図25は、アクチュエータが有する可変長リンクの構造を説明する断面図である。図25には、断面表示しないモータ19Mも示す。モータ19Mと円筒19Cとは、互いの位置関係が固定されている。胸腰部中央リンク19Lは、ねじ棒19A、ナット19B、円筒19C、ナット位置固定部19D、ナット回転保持部19E、ナットギヤ19Fを有する。ねじ棒19Aは、側面に雄ねじが設けられた断面が円形の棒である。ナット19Bは、ねじ棒19Aとかみ合う雌ねじが内面に設けられた貫通穴を有する雌ねじ部材である。円筒19Cは、ねじ棒19Aの一部およびナット19Bを内部に収容する。ナット位置固定部19Dは、円筒19Cに対するナット19Bの軸方向の位置を固定する。ナット回転保持部19Eは、ナット19Bを円筒19Cに対して回転可能に保持する。ナットギヤ19Fは、ナット19Bと共に回転するギヤである。
ナット位置固定部19Dは、ナット19Bを移動させないように円筒19Cの内部に周方向に設けられた突起である。ナット位置固定部19Dである突起は、ナット19Bが有する周方向に設けられた突起を挟むように設けられる。ナット位置固定部19Dは、3箇所に設けている。3箇所は、ナットギヤ19Fとナット19Bとの接続部分と、ナット回転保持部19Eの両側である。ナット位置固定部19Dは、円筒19Cに対するナット19Bの軸方向の相対位置を固定するものであれば、どのようなものでもよい。ねじ棒19Aの軸方向は、円筒19Cの長さ方向でもある。
ナットギヤ19Fは、円筒19Cの外側に配置される。ナットギヤ19Fは、モータ19Mの回転軸に設けられた駆動ギヤ19Gとかみ合う。駆動ギヤ19Gが回転すると、ナットギヤ19Fおよびナット19Bが回転する。ナット19Bが回転すると、ナット19Bはねじ棒19Aに対して移動することになる。ナット19Bの位置は円筒19Cの長さ方向に対して固定されているので、ナット19Bが回転すると、ねじ棒19Aがナット19Bおよび円筒19Cに対して移動する。ねじ棒19Aは、モータ19Mが発生する力により移動する。
ねじ棒19Aの一端が、胸部中央リンク取付部J5により、リンク取付用フレーム57に回転可能に取付けられる。円筒19Cの一端が、腰部中央リンク取付部J10により、腰部主フレーム61に回転可能に取付けられる。ねじ棒19Aが円筒19Cから出る方向に移動すると、胸部中央リンク取付部J5と腰部中央リンク取付部J10の距離が長くなる。ねじ棒19Aが円筒19Cに入る方向に移動すると、胸部中央リンク取付部J5と腰部中央リンク取付部J10の距離が短くなる。このように、胸腰部中央リンク19Lはその長さが変更可能であり、その両端が取付けられる2点間の距離を変更することができる。
胸腰部中央リンク19Lが有するねじ棒19Aの側の端は、胸部5ではなく、腰部6に取付けられてもよい。その場合には、円筒19Cは、胸部5に取付けられる。雄ねじが設けられたねじ棒19Aは、その一端が胸腰部中央リンク19Lの両側のリンク取付部のどちらかに取付けられる。円筒19Cの一端は、胸腰部中央リンク19Lの両端のリンク取付部の中で、ねじ棒19Aが取付けられていないリンク取付部に取付けられる。
ナット19Bは、ねじ棒19Aに設けられた雄ねじとかみ合う雌ねじが内面に設けられた貫通穴を有する。ナット19Bは、モータ19Mからの力が伝えられて回転する。ナット19Bは、貫通穴を有するので、有穴部材と呼ぶ。円筒19Cは、ねじ棒19Aおよびナット19Bを収容する筒である。ナット位置固定部19Dは、ねじ棒19Aの軸方向での円筒19Cに対するナット19Bの相対位置を固定する有穴部材位置固定部である。ナット回転保持部19Eは、ナット19Bと円筒19Cの間に設けられて、ナット19Bを円筒19Cに対して回転可能に保持する有穴部材保持部である。有穴部材保持部を有するので、可変長リンクである胸腰部中央リンク19Lは軸回りの回転を可能とする1回転自由度を有する。軸回りの回転とは、リンクの両端で軸回りの回転角度が異なることである。可変長リンクが1回転自由度を有するので、その両端を取付けるリンク取付部は2回転自由度を有するものでよい。可変長リンクが1回転自由度を有しない場合は、どちらかの端を取付けるリンク取付部は3回転自由度を有するようにする。ここで、可変長リンクがその両端が2回転自由度を有してリンク取付部に取付けられ軸回りに1回転自由度を有する場合、または、可変長リンクがその一端が3回転自由度を有してリンク取付部に取付けられ他端が2回転自由度を有してリンク取付部に取付けられる場合を、可変長リンクが5回転自由度を有すると定義する。
胸腰部右リンク20L、胸腰部左リンク21Lおよび他のアクチュエータが有する可変長リンクも同様な構造である。
ねじ棒とナットとの間のねじは、ボールネジや台ねじなどの回転時の摩擦係数が小さいものを使用する。ねじのピッチが同じであれば、摩擦係数が小さければ、可変長リンクの長さを変更するために必要な力が小さくなる。そのため、モータは、摩擦係数が大きい場合よりも最大出力が小さいものでよくなる。アクチュエータが動作する場合の消費電力も小さくなる。静止時の摩擦力の大きさは、モータが駆動力を発生させなくてもナットが回転しない程度の大きさとする。そうすることで、電力供給が遮断された場合にも、人型ロボットの各関節部において電力が途絶える前の角度を維持できる。人型ロボットが静止していた場合は、その姿勢を維持できる。人型ロボットが物体を保持していた場合は、物体を保持したままの状態を維持できる。
摩擦力の大きさは、電力供給が遮断された状況で、1人または複数人の力で、各関節部の角度を変更できるような大きさとする。電力供給が遮断された災害時などに、人型ロボットが負傷した人の救助などに邪魔になる可能性がある。人型ロボットの姿勢を変更できれば、例えば救助の邪魔にならないような姿勢に変更したり、移動させたりできる。可変長リンクの長さを変更させようとする力によりナットが回転するかどうかは、ねじの摩擦係数だけでなくピッチも関係する。摩擦係数が同じでもピッチを小さくすれば、ナットが回転する力の最小値を大きくできる。ねじのピッチと摩擦係数の大きさは、ナットが回転することで可変長リンクの長さを変更できる力の最小値が、適切な大きさになるように決める。
ねじ棒およびナットを収容する筒は、角筒でもよく、平面と曲面が組み合わさった側面を持つものでもよい。長さ方向で筒の径が変化してもよい。ねじ棒の一端が少なくとも2回転自由度を持たせてリンク取付部に取付けられ、筒またはモータ側の端が少なくとも2回転自由度を持たせてリンク取付部に取付けられるものであれば、可変長リンクはどのような構造でもよい。取付具を介して筒またはモータ側の端をリンク取付部に取付けてもよい。筒の端部でない部分をリンク取付部に取付けてもよい。その場合には、リンク取付部に取付けられる筒の箇所までが可変長リンクであり、可変長リンクの一端がリンク取付部に取付けられることになる。
腰部6は、胸腰部関節部18が設けられる腰部主フレーム61、下肢部4が接続される下肢部接続フレーム62、腰部主フレーム61の背面側の下部を覆う腰部カバー63を有する。下肢部接続フレーム62は、左右にそれぞれ1個が設けられる。腰部カバー63と腰部主フレーム61の間の空間には、電源装置を配置したり、配線などを通したりする。
腰部主フレーム61は、上から見ると長方形と円とが、長方形の前側で円の一部が重なるように組合された形状である。腰部主フレーム61は、背面側の左右対称な位置に長方形の部分から後方に出た2つの厚板状の部分を有する。上から見て円の部分は、胸腰部関節部18が存在する円筒である。胸腰部関節部18は、背骨部56の一端に設けられた球面を3回転自由度を有して保持する球面軸受けで構成される。図12に示すように、後方に出た2つの厚板状の部分の上側に、胸腰部右リンク20L、胸腰部左リンク21Lの他端が2回転自由度を有して回転可能にそれぞれ取付けられる腰部右リンク取付部J8、腰部左リンク取付部J9が設けられる。腰部主フレーム61の上部の背面側の中央に、胸腰部中央リンク19Lが2回転自由度を有して回転可能に取付けられる腰部中央リンク取付部J10が設けられる。
腰部右リンク取付部J8、腰部左リンク取付部J9、腰部中央リンク取付部J10は2軸ジンバルである。腰部右リンク取付部J8、腰部左リンク取付部J9は、貫通穴を有するヨークが回転可能に上向きに設けられる。貫通穴には、可変長リンクに設けられた軸部材が入る。腰部中央リンク取付部J10は、貫通穴を有するヨークが回転可能に背面側に向けて設けられる。
図26は、胸上部5Uと胸下部5Dの区分と胸部5を動かす可変長リンクの配置を説明する側面から見た模式図である。図26では、リンク配置を理解しやすくするため、胸部内リンク17Lを実際よりも前側に図示している。図27は、正面から見た模式図である。胸下部5Dは、ハッチングを付けて示す。胸下部5Dは、3本の可変長リンクにより胸腰部関節部18の回りをX軸、Y軸、Z軸の回りに回転できる。胸上部5Uは、胸下部5Dに対して1本の可変長リンクによりX軸の回りに回転できる。
胴体屈曲部C2は、胸部5を腰部6に3回転自由度を有して回転可能に接続する3回転自由度接続機構である。胴体屈曲部C2は、胸腰部関節部18、胸腰部中央アクチュエータ19、胸腰部右アクチュエータ20、胸腰部左アクチュエータ21、胸部中央リンク取付部J5、胸部右リンク取付部J6、胸部左リンク取付部J7、腰部中央リンク取付部J10、腰部右リンク取付部J8、腰部左リンク取付部J9を有する。3回転自由度とは、胸部5を腰部6に対して前後方向(X軸回りの回転)に傾けることで1自由度、左右方向(Y軸回りの回転)に傾けることで1自由度、背骨部56(Z軸)の回りに胸部5を腰部6に対して旋回させることで1自由度、合計で3自由度を有して回転できることである。
この発明に係る3回転自由度接続機構は、3回転自由度の関節部と3本のアクチュエータという簡素な構造である。3回転自由度接続機構は、より広く考えると、第2部材を第1部材に回転可能に接続する回転接続機構である。回転接続機構の中で関節部に3回転自由度を有するものが、3回転自由度接続機構である。
胴体屈曲部C2を3回転自由度接続機構として一般的に考えると、胴体屈曲部C2は、接続する側の第2部材である胸部5を、接続される側の第1部材である腰部6に対して3回転自由度を有して回転可能に接続する。胸腰部関節部18は、胸部5を腰部6に3回転自由度を有して回転可能に接続する関節部である。背骨部56は、胸部5に対して方向が固定された捻り軸である。胸部5は、背骨部56の回りを腰部6に対して回転可能である。3回転自由度接続機構では、腰部6に近い側を第1部材とする。腰部6から遠い側を第2部材とする。胸腰部関節部18は、捻り軸の回りに第2部材である胸部5を第1部材である腰部6に対して回転可能にし、かつ第2部材を第1部材に3回転自由度を有して回転可能に接続する。
胸腰部中央アクチュエータ19、胸腰部右アクチュエータ20および胸腰部左アクチュエータ21は、長さが変更可能な可変長リンク、可変長リンクの長さを変更する力を発生させるモータをそれぞれ有する3本のアクチュエータである。腰部中央リンク取付部J10、腰部右リンク取付部J8および腰部左リンク取付部J9は、腰部6(第1部材)に設けられた3個の第1部材側リンク取付部である。3個の第1部材側リンク取付部のそれぞれには、3本のアクチュエータのそれぞれの一端が少なくとも2回転自由度を有して回転可能に取付けられる。腰部中央リンク取付部J10、腰部右リンク取付部J8および腰部左リンク取付部J9は、胸腰部関節部18に対する相対的な位置関係が固定されている。胸部中央リンク取付部J5、胸部右リンク取付部J6および胸部左リンク取付部J7は、胸部5(第2部材)に設けられた3個の第2部材側リンク取付部である。3個の第2部材側リンク取付部のそれぞれには、3本のアクチュエータのそれぞれの他端が少なくとも2回転自由度を有して回転可能に取付けられる。胸部中央リンク取付部J5、胸部右リンク取付部J6および胸部左リンク取付部J7は、胸腰部関節部18に対する相対的な位置関係が固定されている。
人型ロボット100が直立した基準状態では、胴体屈曲部C2は、回転可能な3つの軸の中で捻り軸(背骨部、Z軸)および他の2つの回転軸(X軸とY軸)の何れも両方向に回転可能である。3本のリンクと捻り軸とがなす3個の角度の最大値が決められた角度δ0(例えば、3度程度)以上であるように、胸部中央リンク取付部J5、胸部右リンク取付部J6、胸部左リンク取付部J7、腰部中央リンク取付部J10、腰部右リンク取付部J8、腰部左リンク取付部J9は、配置されている。
人型ロボット100が有するすべての3回転自由度接続機構では、基準状態で捻り軸および他の2つの回転軸の少なくとも一つで両方向に回転可能に決められている。つまり、それぞれの3回転自由度接続機構の基準状態では、捻り軸を含む少なくとも2つの回転軸で両方向に回転可能である。
胴体屈曲部C2は、例えば、胸腰部関節部18から上の上半身を前方向に20度程度、後方向に20度程度、左右方向に20度程度傾けることができる。また、背骨部56の回りに両方向に20度程度、胸部5を腰部6に対して回転させる(捻る)ことができる。さらに、胸部内関節部16により胸上部5Uを胸下部5Dに対して前方向に例えば15度程度、後ろ方向に20度程度、前後に傾けることができる。そのため、例えば、胸下部5Dを前後方向に傾けても胸上部5Uを鉛直に保つことができる。また、両手を作業しやすい位置になるような姿勢をとることができる。なお、可動範囲は一例であって、より広くあるいはより狭く可動範囲を決めることも可能である。
人型ロボット100が直立した基準状態での胴体屈曲部C2での可変長リンクの配置を左の手部側斜め後から見た斜視図を図28に示す。胸下部5Dに設けられた3個の第2部材側リンク取付部J5、J6、J7と腰部6に設けられた3個の第1部材側リンク取付部J10、J8、J9とをそれぞれ結ぶ3本の可変長リンク19L、20L、21Lを、胴体屈曲部C2は有する。胸下部5Dに設けられた3個の第2部材側リンク取付部J5、J6、J7は、胸腰部関節部18に対して位置が固定されている。腰部6に設けられた3個の第1部材側リンク取付部J10、J8、J9は、胸腰部関節部18に対して位置が固定されている。3本の可変長リンク19L、20L、21Lの長さを変更することで、胸下部5Dの腰部6に対する接続角度を3回転自由度で変更できる。胸腰部関節部18のX軸回りの回転角度をαs、Y軸回りの回転角度をβs、Z軸回りの回転角度をγsとする。胸上部5Uは胸下部5Dに対して、胸部内関節部16によりX軸回りに回転できる。胸部内関節部16でのX軸回りの回転角度をψとする。
胸腰部関節部18などの関節部が回転することで変化する捻り軸が向く方向の取りうる範囲を、関節部の可動範囲と呼ぶ。胸腰部関節部18の前後方向、左右方向、背骨部56の回りに回転可能な角度範囲として前に示した例は、その回転軸での取りうる最大角度範囲を示すものである。ある回転軸で取りうる角度範囲は、他の回転軸が取っている角度の影響を受ける。そのため、各回転軸の角度範囲を任意に組み合わせて得られる領域がすべて可動範囲になる訳ではない。他の関節部に関しても同様である。
図29は、胴体屈曲部C2での可変長リンクの配置を背骨部が延在する方向から見た図である。図29では、捻り軸である背骨部56を、二重丸で表す。第2部材側リンク取付部である胸部中央リンク取付部J5、胸部右リンク取付部J6および胸部左リンク取付部J7を、白丸で表す。第1部材側リンク取付部である腰部中央リンク取付部J10、腰部右リンク取付部J8および腰部左リンク取付部J9は、黒丸で表す。可変長リンクである胸腰部中央リンク19L、胸腰部右リンク20Lおよび胸腰部左リンク21Lを、太線で示す。他の同種の図でも同様に表す。3個の第2部材側リンク取付部を結んでできる三角形を第2部材側三角形T1と呼ぶ。
図28および図29から以下のことが分る。可変長リンク20L、21Lが長く、捻り軸56に対してねじれの位置にあり、水平面に対して大きく傾斜している。捻り軸56の方向から見た場合は、可変長リンク20L、21Lがほぼ並行しており、捻り軸56を挟むように存在する。可変長リンク20Lを短くする捻り軸56の回りの回転方向と、可変長リンク21Lを短くする捻り軸56の回りの回転方向とは、互いに逆向きになっている。そのため、第2部材6を回転させると、可変長リンク20L、21Lの一方の長さが長くなり、もう一方の長さがが短くなる。そのため、捻り軸56の回りに回転する際に、伸びるリンクにより押される力と、短くなるリンクにより引かれる力の両方が発生して、捻り軸56の回りに回転しやすくなる。胴体屈曲部C2では、可動範囲内の各状態で、捻り軸の回りに回転する際に、長さが長くなる可変長リンクと短くなる可変長リンクとが存在する。
二重丸で表される捻り軸56は、第2部材側三角形T1の内部であり、かつ第2部材側三角形T1の底辺の2等分線上に存在する。第2部材側三角形の底辺の2等分線を対称軸線と呼び、底辺を対称軸垂直線と呼ぶ。可変長リンク20L、21Lを同じように伸ばし、可変長リンク19Lを縮めると、対称軸線の方向で第2部材6の傾きを変えることができる。可変長リンク20L、21Lを同じように縮め、可変長リンク19Lを伸ばせば、対称軸線の方向で第2部材6の傾きを反対向きに変えることができる。また、可変長リンク19Lの長さを変えないで、可変長リンク20Lを長くし可変長リンク21Lを短くする、あるいは、可変長リンク20Lを短くし可変長リンク21Lを長くすると、対称軸垂直線の方向で第2部材6の傾きを変えることができる。
可変長リンクの伸縮により捻り軸の回りに第2部材が回転できるリンク配置についての条件について考察する。図30に、捻り軸と可変長リンクの位置関係により可変長リンクの伸縮が捻り軸の回りに回転させるトルクが発生するかどうかを説明する図を示す。図30では、可変長リンクL3の下端(白丸で示す)は捻り軸との位置関係が固定であるとする。図30(a)には、捻り軸G1と可変長リンクL1とが平行である場合を示す。図30(b)には、捻り軸G2と可変長リンクL2とが同一平面上にあり平行でない場合を示す。図30(c)には、捻り軸G3と可変長リンクL3とがねじれの関係にある場合を示す。各場合では、捻り軸の方向から見た図を上側に、捻り軸に垂直な方向から見た図を下側に示す。図30(c)では、捻り軸に垂直かつ可変長リンクL3の下端P3が捻り軸G3上に来る方向(矢印Aで示す)から見た図も示す。
捻り軸G1と可変長リンクL1とが平行である場合は、図30(a)に示すように、捻り軸G1の方向から見ると、捻り軸G1と可変長リンクL1はそれぞれ点になる。したがって、可変長リンクL1の伸縮により、捻り軸G1に垂直な向きの力の成分、および捻り軸G1の回りに回転させるトルクが発生しない。捻り軸G2と可変長リンクL2とが同一平面上にあり平行でない場合は、図30(b)に示すように、可変長リンクL2が捻り軸G2の方向を向く。そのため、可変長リンクL2の伸縮により、捻り軸G2に垂直な向きの力の成分が発生するが、捻り軸G2の方向を向いているので、捻り軸G1の回りに回転させるトルクはゼロである。捻り軸G3と可変長リンクL3とがねじれの関係にある場合は、図30(c)に示すように、可変長リンクL3の伸縮により、捻り軸G3の回りに三角形U3の面積に比例する回転トルクが発生する。
可変長リンクL3の一端P3と捻り軸G3との距離Kは決まっているので、回転トルクの大きさは、捻り軸G3および一端P3とで決まる平面(リンク基準面と呼ぶ)と可変長リンクL3の他端Q3との距離Dにより決まることになる。距離Dと可変長リンクL3の長さ(Wで表す)の比(D/W)は、可変長リンクL3の長さが単位量だけ変化した場合に、距離Dが変化する量を表す。リンク基準面と可変長リンクL3とがなす角度(傾斜角度と呼ぶ)をθとすると、以下が成立する。
sinθ=D/W
図30(a)、(b)では、傾斜角度θ=0となる。可変長リンクの伸縮により捻り軸の回りの必要な回転トルクを発生させるには、傾斜角度θが決められた角度δ0(例えば、3度程度)以上である必要がある。ここでは、可変長リンクが1本の場合で考えたが、可変長リンクが2本以上ある場合は、可変長リンクの傾斜角度の中の最大値がδ0以上であればよい。なお、リンク基準面は、可変長リンクごとに決まる平面である。具体的には、捻り軸の方向が第1部材に対して固定されている場合には、捻り軸およびその可変長リンクの第1部材側リンク取付部を含む平面である。捻り軸の方向が第2部材に対して固定されている場合には、捻り軸およびその可変長リンクの第2部材側リンク取付部を含む平面である。
傾斜角度θの場合の可変長リンクL3による回転トルクTAは、以下のようになる。
TA∝K*W*sinθ=K*D=2*三角形U3の面積
第2部材を捻り軸の回りに回転させる際に必要となる回転トルクは、第2部材の慣性モーメントも関係する。傾斜角度θに対する閾値δ0は、すべての3回転自由度接続機構で同じ値としてもよいし、3回転自由度接続機構ごとに決めてもよい。また、傾斜角度θを求める際に、可変長リンクの長さの変化量を単位量ではなく、可変長リンクの長さの変化可能範囲の幅を考慮した変化量としてもよい。
基準状態においては、可変長リンク19Lは捻り軸56と同一平面上にあり、可変長リンク19Lとリンク基準面がなす傾斜角度θs1は0度である。可変長リンク20Lおよび可変長リンク21Lは、捻り軸56とねじれの関係にある。可変長リンク20Lおよび可変長リンク21Lの傾斜角度θs2とθs3は、約41度である。3本の可変長リンク19L、20L、21Lが、リンク基準面となす傾斜角度の最大値θsmaxは、δ0以上である。
したがって、可変長リンク20L、21Lの何れかが伸縮すると、捻り軸56の回りの回転トルクを発生できる。
傾斜角度θs2とθs3が約41度なので、胸部5を大きく傾けても、少なくともθs2とθs3のどちからはδ0以上である。すなわち、胸腰部関節部18の可動範囲内の各状態で、3本の可変長リンク19L、20L、21Lの何れか少なくとも1本が捻り軸56とねじれの関係にある。さらに、リンク基準面と可変長リンク20Lとなす傾斜角度は、δ0以上である。捻り軸56の方向は第2部材5に固定されているので、リンク基準面は、第2部材側リンク取付部である胸部右リンク取付部J6または胸部左リンク取付部J7と捻り軸56を含む平面である。
図31は、胸部5を回転させて前方に傾けた状態での胴体屈曲部C2での可変長リンクの配置を背骨部が延在する方向から見た図である。図31では、胸部5(第2部材)を左に15度捻って、左に15度の方向に前に30度だけ傾けている。捻り軸56が胸部5に対して方向が固定なので、捻り軸56を傾けると、捻り軸56の方向から見た腰部6(第1部材)を傾ける方向に、傾ける角度に応じて腰部6が伸縮して見える。図31では、腰部6が、cos(30度)=約0.87倍に縮む。捻り軸56の回りに回転させているので、可変長リンク20Lが長くなり、可変長リンク21Lが短くなる。捻り軸56の回りに回転させる以外の場合は、以下のようになる。捻り軸56を前に傾ける場合は、可変長リンク20L、21Lの傾斜角度θs2、θs3がどちらも小さくなる。右に傾ける場合は、可変長リンク20Lの傾斜角度θs2が大きくなり、可変長リンク21Lの傾斜角度θs3が小さくなる。胴体屈曲部C2では、可動範囲の中でどのように傾けても、傾斜角度の最大値θsmaxは30度程度以上である。なお、関節部の可動範囲が、可動範囲内の境界付近などで捻り軸の回りの回転が不要なように決められている場合は、可動範囲内の境界付近などでは傾斜角度の最大値θsmaxは決められた角度δ0以上でなくてもよい。
腰部6の構造の説明に戻る。下肢部接続フレーム62は、略長方形の板材である。下肢部接続フレーム62は、腰部主フレーム61の下部の左右に前方が高くなるように固定される。下肢部接続フレーム62の内側(体の中心に近い側)で垂直に突起64が出ている。突起64の先端部には外側の斜め上に向けて大腿部10を腰部6に接続する股関節部22が設けられる。股関節部22は、腰部6側の球面を大腿部10側の窪みが囲む球面軸受を有する。股関節部22は、球面部材と、球面部材の球面を3回転自由度で回転可能に保持する大腿部10の端部に設けられた球面受部材とを有する。球面部材は、腰部6の一部である突起64から外側斜め上に出た球面を有する。こうすることで、大腿部10の可動範囲を大きくすることができる。
下肢部接続フレーム62の前側で突起65が出て、突起65の先端部の前側には股部正面リンク取付部J11が設けられる。股部正面リンク取付部J11には、股関節部22を回転させるための大腿部正面リンク23L(図57に図示)が取付けられる。突起65は折れ曲がっており、股部正面リンク取付部J11が設けられる部分の面は基準状態ではほぼ鉛直である。股部正面リンク取付部J11では、突起65に回転部材と回転部材により回転する円筒が設けられ、大腿部正面リンク23Lの一端にヨークおよび軸部材が設けられる。股部正面リンク取付部J11は、突起65に設けられた円筒の中を大腿部正面リンク23Lの一端に回転可能に設けられた軸部材が通る構造の2軸ジンバルである。
下肢部接続フレーム62の外側の背面側の角付近で突起66が出て、突起66の先端部の外側には股部外側リンク取付部J12が設けられる。股部外側リンク取付部J12には、大腿部外側リンク24Lが取付けられる。下肢部接続フレーム62の内側の背面側の角付近で垂直に突起67が出て、突起67の先端部の内側には股部内側リンク取付部J13が設けられる。股部内側リンク取付部J13には、大腿部内側リンク25Lが取付けられる。突起67は折れ曲がっており、股部内側リンク取付部J13は内側の斜め下に設けられる。股部外側リンク取付部J12と股部内側リンク取付部J13は、股部正面リンク取付部J11と同様な構造の2軸ジンバルである。
図5、図10、図12、図13、図32および図33を参照して、頭部2の構造について説明する。図32は、頭部2を拡大した側面図である。図33は、頭部2を拡大した斜視図である。肩部フレーム51の上面の中央から首部中心棒26が上方に伸びる。頭部2は、首部中心棒26の先端に設けられた首関節部27に接続している。首関節部27には、首部中心棒26の先端に球面が設けられた球面軸受が用いられる。首関節部27は、頭部2と胸部5を3回転自由度を有して回転可能に接続する。頭部2は、正方形の4つの角を切りとった八角形の板状の頭部基準板2Aを有する。頭部基準板2Aに目、耳、口などの機能を実現する装置が取付けられる。
頭部2は、3本の首部背面アクチュエータ28、首部右側アクチュエータ29、首部左側アクチュエータ30により首関節部27の回りを3回転自由度で回転できる。つまり、前後左右方向にそれぞれ例えば20度程度、頭部2を傾けることができる。さらに、首部中心棒26の回りに両方向に例えば60度程度、頭部2を回すことができる。
肩部フレーム51の上面には、首下部フレーム58が設けられる。首下部フレーム58には、頭部2を動かす3本のアクチュエータが有する可変長リンクの一端が取付けられる。首下部フレーム58は、水平面上で120度の間隔で中心から伸びる3枚の板状の部分を有する。3枚の板状の部分の先端は90度曲がって、曲がった部分に首部背面リンク取付部J14、首部右側リンク取付部J15、首部左側リンク取付部J16が設けられる。
首部背面リンク取付部J14は、肩部フレーム51の背側中央に位置する。首部右側リンク取付部J15は、肩部フレーム51の前側中央の少し右に位置する。首部左側リンク取付部J16は、肩部フレーム51の前側中央の少し左に位置する。
首部背面リンク取付部J14は、首下部フレーム58から背側に出る回転部材により回転するヨークに、首部背面リンク28Lの他端に設けられた軸部材が回転可能に保持される2軸ジンバルである。右側リンク取付部J15、首部左側リンク取付部J16も同様な構造の2軸ジンバルである。
頭部2の下部の背側中央には、頭部背面リンク取付部J17が設けられる。頭部2の下部の右側には、頭部右側リンク取付部J18が設けられる。頭部2の下部の左側には、頭部左側リンク取付部J19が設けられる。
首部背面リンク28L、首部右側リンク29L、首部左側リンク30Lのそれぞれは、その一端が頭部背面リンク取付部J17、頭部右側リンク取付部J18、頭部左側リンク取付部J19のそれぞれに2回転自由度を有して回転可能に取付けられる。他端は、首部背面リンク取付部J14、首部右側リンク取付部J15、首部左側リンク取付部J16のそれぞれに2回転自由度を有して回転可能に取付けられる。
首部背面リンク28Lは、リンク取付具28Nを介して頭部背面リンク取付部J17に取付けられる。首部背面リンク28Lの長さは、頭部背面リンク取付部J17と首部背面リンク取付部J14と間の距離よりも短い。リンク取付具28Nは、首部背面リンク28Lの円筒とモータ28Mの間からモータ28Mに沿って伸びる。リンク取付具28Nは、側面から見てL字状に曲がる部材である。L字状のリンク取付具28Nの先端は、首部背面リンク28Lが延長された位置で頭部背面リンク取付部17に取付けられる。モータ28Mの下端は、リンク取付具28Nの取付位置よりも下側に存在する。首部右側リンク29L、首部左側リンク30Lも同様な構造である。こうすることで、アクチュエータが有する可変長リンクの長さよりも長いモータを使用できる。
首部C3は、第2部材である頭部2を第1部材である胸部5に3回転自由度を有して回転可能に接続する3回転自由度接続機構である。首部C3は、関節部である首関節部27、3本の可変長リンクである首部背面リンク28L、首部右側リンク29Lおよび首部左側リンク30L、3個の第1部材側リンク取付部である首部背面リンク取付部J14、首部右側リンク取付部J15および首部左側リンク取付部J16、3個の第2部材側リンク取付部である頭部背面リンク取付部J17、頭部右側リンク取付部J18および頭部左側リンク取付部J19を有して構成される。
捻り軸である首部中心棒26は、胸部5に対して方向が固定されている。首部中心棒26は、頭部2に対する角度が変更可能である。首部背面リンク取付部J14、首部右側リンク取付部J15および首部左側リンク取付部J16では、首部中心棒26および首関節部27に対する相対的な位置関係は、固定されている。頭部背面リンク取付部J17、頭部右側リンク取付部J18および頭部左側リンク取付部J19でも、首関節部27に対する相対的な位置関係は、固定されている。
首部C3での可変長リンクの配置を説明する。図34は、首部C3での可変長リンクの配置を説明する斜視図である。首部C3は、3個の第2部材側リンク取付部J17、J18、J19と3個の第1部材側リンク取付部J14、J15、J16とをそれぞれ結ぶ3本の可変長リンク28L、29L、30Lを有する。そのため、3本の可変長リンク28L、29L、30Lの長さを変更することで、頭部2の胸部5に対する接続角度を3回転自由度で変更できる。首関節部27のX軸回りの回転角度をαp、Y軸回りの回転角度をβp、Z軸回りの回転角度をγpとする。
首関節部27は、第2部材側リンク取付部J18、J19を結ぶ線分上にある。第2部材側三角形T2は、二等辺三角形であり、首関節部27は底辺の中点にある。そのため、第2部材2を前後方向に傾ける場合には、可変長リンク28Lの長さを変えるだけでよい。第2部材2を左右方向に傾ける場合には、可変長リンク29L、30Lの一方を長くし、もう一方を短くすればよい。
他の関節部で、捻り軸との角度が変更可能な第1部材に設けられた2個の第1部材側リンク取付部を結ぶ線分上に関節部が存在するように第1部材側リンク取付部を配置する場合も、同様な効果がある。あるいは、捻り軸との角度が変更可能な第2部材に設けられた2個の第2部材側リンク取付部を結ぶ線分上に関節部が存在するように第2部材側リンク取付部を配置する場合も、同様な効果がある。
図35は、基準状態で首部C3での可変長リンクの配置を首部中心棒26が延在する方向から見た図である。基準状態で、可変長リンク29L、30Lと捻り軸26とはねじれの関係にある。可変長リンク28Lの第1部材側リンク取付部J14と捻り軸26とを含むリンク基準面と可変長リンク28Lとがなす傾斜角度θp1は、0度である。可変長リンク29L、30Lの傾斜角度θp2、θp3は、約16度である。3本の可変長リンク28L、29L、30Lのそれぞれが捻り軸26となす角度の最大値θpmaxは約16度であり、δ0(例えば、3度程度)以上である。可変長リンク28L、29L、30Lの長さを変化させた場合に、捻り軸26の回りに回転するトルクが発生し、捻り軸26の回りを回転させることができる。
頭部2を傾けた場合でも、3個の傾斜角角度の最大値θpmaxはδ0以上である。図36は、頭部2を回転させて前方に傾けた状態での首部C3での可変長リンクの配置を首部中心棒26が延在する方向から見た図である。図36では、頭部2を左に15度捻って、左に15度の方向に30度前に傾けた状態での可変長リンクの配置を示す。可変長リンク28L、30Lの傾斜角度θp1、θp3が大きくなり、可変長リンク29Lの傾斜角度θp2が小さくなる。捻り軸26の回りに回転させない場合は、第2部材(頭部)2を前後に傾けても、可変長リンク29L、30Lの傾斜角度θp2、θp3は、約16度で変化しない。第2部材2を左右に傾ける場合は、可変長リンク29L、30Lの傾斜角度θp2、θp3の一方が大きくなり、もう一方が小さくなる。したがって、可変長リンク28L、29L、30Lのそれぞれの長さが取りうる範囲内で変化する各場合で、どれか1本の可変長リンクは、捻り軸26に対してねじれの関係にあり、3本のリンクの傾斜角度の中での最大値θpmaxは、約16度以上である。
3個の第1部材側リンク取付部で決まる平面、または、3個の第2部材側リンク取付部で決まる平面を、リンク取付平面と呼ぶ。捻り軸である首中心棒26とリンク取付平面の交点を、捻り中心と呼ぶ。第1部材である胸部5側に存在する第1部材側リンク取付部J14、J15、J16は、リンク取付平面の上で、捻り中心から等距離にある円周上に中心角が120度となる3点に配置される。第2部材である頭部2側の第2部材側リンク取付部J17、J18、J19は、リンク取付平面の上で、首関節部27に対して等距離で、互いに90度、90度、180度の中心角を有する位置に配置される。そのため、首関節部27がどのように回転しても、可変長リンク28L、29L、30Lが3本とも、捻り軸26と同一平面上になることはない。すなわち、可変長リンク28L、29L、30Lの少なくとも1本は、捻り軸26とねじれの関係にある。
他の3回転自由度接続機構でも、第1部材側のリンク取付平面での捻り中心と3個の第1部材側リンク取付部とがなす3個の中心角と、第2部材側のリンク取付平面での捻り中心と3個の第2部材側リンク取付部とがなす3個の中心角とを異ならせている。そのため、3本の可変長リンクを含む平面が捻り軸も含むことが、3本の可変長リンクすべてで同時に発生することはない。1本の可変長リンク(リンクAと呼ぶ)が捻り軸と同一平面上に配置される状態で、リンクAと捻り軸が同一平面上であることを維持するように、その平面に垂直な回転軸の回りに関節部を可動範囲内で回転させる。この可動範囲内の関節部の回転では、以下のどちらかの状態になる。(A)残りの2本の可変長リンクの少なくとも一本は、捻り軸と同一平面上に配置されない。(B)残りの2本の可変長リンクは、それぞれ異なる回転角度で捻り軸と同一平面上に配置される。そのため、関節部がどのように回転しても、可変長リンクを含む平面が捻り軸も含むことが、3本の可変長リンクすべてで同時に発生することはない。すなわち、3本の可変長リンクの少なくとも1本は、捻り軸とねじれの関係にある。
首部中心棒26(捻り軸)の回りに回転する際に、首部右側リンク29Lおよび首部左側リンク30Lの一方は長くなり、もう一方は短くなる。そのため、捻り軸の回りに回転する際に、伸びるリンクにより押される力と、短くなるリンクにより引かれる力の両方が発生して、捻り軸の回りに回転しやすくなる。
図10から図16、図37を参照して肩部C4の構造を説明する。図37は、人型ロボット100の上半身の斜視図である。上腕部7は、肩関節部13により胸部5に2回転自由度を有して回転可能に接続する。上腕部7および前腕部8は真っすぐな棒状である。上腕部7の棒状の部分を上腕骨部7Bと呼ぶ。前腕部8の棒状の部分を前腕骨部8Bと呼ぶ。肩関節部13から決められた距離の位置の上腕骨部7Bに、上腕部駆動主リンク14Lが2回転自由度を有して回転可能に取付けられる上腕部主リンク取付部J20が設けられる。上腕部主リンク取付部J20は、上腕骨部7Bに設けられた回転部材を上腕部駆動主リンク14Lの一端に設けられた半円状のヨークが挟む構造の2軸ジンバルである。回転部材は、上腕骨部7Bが延在する方向の回り(軸回り)を回転するように上腕骨部7Bに設けられる。ヨークは、回転部材を上腕骨部7Bとなす角度を変更可能に挟む。回転部材の両側から出る突起を、上腕部駆動主リンク14L側のヨークが回転可能に挟む。突起は円柱状である。2個の突起は、回転部材に垂直な同一直線上に存在する。上腕部主リンク取付部J20は、上腕骨部7Bの軸回りの1回転自由度を含む2回転自由度を有する。
上腕部駆動主リンク14Lの上腕部主リンク取付部J20から決められた距離の位置に、上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21が設けられる。上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21に、上腕部駆動補助リンク15Lの一端が1回転自由度を有して回転可能に取付けられる。上腕部駆動主リンク14Lおよび上腕部駆動補助リンク15Lの中心線は同一平面上にある。上腕部駆動主リンク14Lおよび上腕部駆動補助リンク15Lの中心線が存在する平面を、リンク移動面と呼ぶ。上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21では、リンク移動面において上腕部駆動主リンク14Lと上腕部駆動補助リンク15Lがなす角度を変更できる1回転自由度を有して回転可能に、上腕部駆動補助リンク15Lが上腕部駆動主リンク14Lに取付けられる。上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21は、上腕部駆動主リンク14Lに設けられた突起(軸部材)を、上腕部駆動補助リンク15Lの一端に設けられたヨークが挟む構造である。上腕部駆動主リンク14Lに設けられた突起は、リンク移動面に垂直に設けられる。
リンク移動面は、胸側主リンク取付部J1、胸側補助リンク取付部J2、上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21により決まる平面である。上腕部駆動主リンク14Lおよび上腕部駆動補助リンク15Lの長さが変化すると、上腕部駆動主リンク14Lおよび上腕部駆動補助リンク15Lがリンク移動面において移動する。さらに、リンク移動面は、胸側主リンク取付部J1と胸側補助リンク取付部J2を通る直線(リンク移動面回転軸と呼ぶ)の回りを回転する。上腕部駆動主リンク14Lおよび上腕部駆動補助リンク15Lの長さがある条件を満足して変化する場合は、リンク移動面が回転しない場合がある。別の条件が満足して変化する場合は、リンク移動面だけが回転してリンク移動面内では上腕部駆動主リンク14Lおよび上腕部駆動補助リンク15Lが移動しない場合もある。リンク移動面回転軸は、胸側主リンク取付部J1の回転部材が回転する回転軸および胸側補助リンク取付部J2の回転部材が回転する回転軸でもある。
上腕部駆動主リンク14Lおよび上腕部駆動補助リンク15Lは、リンク移動面に存在する。リンク移動面においては、上腕部駆動主リンク14Lと上腕部駆動補助リンク15Lとの相対的な位置関係は、上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21で上腕部駆動主リンク14Lと上腕部駆動補助リンク15Lとがなす角度が変化するだけである。したがって、上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21はリンク移動面内での回転だけができる1回転自由度でよい。上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21は、2回転自由度を有してもよい。
図38は、左の肩関節部13での可変長リンクの配置を説明する斜視図である。肩関節部13、胸側主リンク取付部J1および胸側補助リンク取付部J2は、胸部5に固定されており、互いの相対的な位置関係は固定である。上腕部主リンク取付部J20は、肩関節部13からの距離が決まっている。上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21は、上腕部駆動主リンク14L上で、上腕部主リンク取付部J20から決められた距離の位置に存在する。上腕部主リンク取付部J20の3次元空間での位置が決まると、肩関節部13から上腕部主リンク取付部J20へ向かう方向に上腕骨部7Bは向く。上腕部主リンク取付部J20の位置を変更することで、胸部5に対して上腕骨部7Bを含む上腕部7を動かすことができる。上腕部駆動主リンク14Lおよび上腕部駆動補助リンク15Lは、トラス構造を構成する。
上腕部駆動主リンク14Lおよび上腕部駆動補助リンク15Lの長さが決まると、肩関節部13、胸側主リンク取付部J1および胸側補助リンク取付部J2のそれぞれからの上腕部主リンク取付部J20までの距離が決まる。3点からの上腕部主リンク取付部J20までの距離が決まるので、上腕部主リンク取付部J20の位置が決まる。
上腕部駆動主リンク14Lの長さを長くすることで上腕骨部7Bが上がり、短くすることで上腕骨部7Bが下がる。上腕部駆動補助リンク15Lを長くすることで上腕骨部7Bが前に出て、短くすることで上腕骨部7Bが背側に移動する。上腕骨部7Bは、肩関節部13を回転の中心にして決められた可動範囲内で自由に動くことができる。例えば、上下方向および前後方向に関して、下向きを0度とし、前向きを90度として、−30度から95度程度まで、上腕骨部7Bを回転できる。また、左右方向には、外側に95度程度、正面を越えて内側に5度(−5度)程度、上腕骨部7Bを回転できる。
肩関節部13で使用するタイプの2軸ジンバルでは、2軸ジンバルの回転部材の回転軸Rx1(図5に示す)の方向に上腕骨部7Bが向いた場合(特異点と呼ぶ)は、2軸ジンバルのヨークに直交する方向には上腕骨部7Bを傾けることができない。回転軸Rx1の方向を、水平面内で人型ロボット100の左右方向(X軸方向)に対して後側にξ1の角度をなす方向としている。そうすることで、特異点が肩関節部13よりも後側に存在することになる。そのため、上腕骨部7Bを左右方向よりも前側の可動範囲内で自由に動かすことができる。従来の人型ロボットでは、肩関節部の2軸ジンバルの特異点を避けて動くために不自然な動きをする場合がある。人型ロボット100では、可動範囲内では特異点を避けるための不自然な動きをしなくてもよい。つまり、人型ロボット100では、その動きを自然な人の動きに従来よりも近づけることができる。
肩関節部13は、胸部5の上部に存在して左右方向に延在する肩部フレーム51の端部に存在する。肩関節部13は、胸部5の中心から遠い側でかつ後方側に延びた回転軸Rx1の回りに回転可能である。さらに、回転軸Rx1と上腕骨部7Bとがなす角度を変更する回転が可能である。肩関節部13は、上腕骨部7Bを2回転自由度を有して回転可能に胸部5に接続する。胸側主リンク取付部J1は、肩関節部13よりも下側かつ前側の位置で胸部5に設けられる。胸側補助リンク取付部J2は、肩関節部13よりも下側かつ後側の位置で胸部5に設けられる。なお、胸側主リンク取付部J1を肩関節部13よりも後側に設け、胸側補助リンク取付部J2を前側に設けてもよい。胸側主リンク取付部J1および胸側補助リンク取付部J2を、前後方向に肩関節部13を挟む位置に設ければよい。
肩部C4は、第1部材である胸部5に第2部材である上腕部7を肩関節部13により回転可能に接続する回転接続機構である。肩関節部13は、胸部5に上腕骨部7Bを含む上腕部7を、2回転自由度を有して回転可能に接続する関節部である。肩部C4は、肩関節部13の角度を変更して上腕部7を胸部5に対して移動させる。
上腕部駆動主リンク14Lが、4回転自由度または5回転自由度を有する第1リンクである。上腕部主リンク取付部J20が、肩関節部13に対する相対的な位置関係が固定されて上腕部7に設けられた第2部材第1取付部である。上腕部主リンク取付部J20には、上腕部駆動主リンク14Lの一端が少なくとも2回転自由度を有して回転可能に取付けられる。胸側主リンク取付部J1が、上腕部駆動主リンク14Lの他端が少なくとも2回転自由度を有して回転可能に取付けられる第1部材第1取付部である。胸側主リンク取付部J1は、肩関節部13に対する相対的な位置関係が固定されて胸部5に設けられた第1基準点でもある。上腕部駆動主リンク14L自体が、1回転自由度を有する。上腕部駆動主リンク14L自体は、1回転自由度を有しなくてもよい。モータ14Mは、上腕部駆動主リンク14Lの長さを変更する力を発生させる第1動力源である。上腕部駆動主リンク14Lの長さは、上腕部主リンク取付部J20と胸側主リンク取付部J1の距離である。上腕部駆動主リンク14L、上腕部主リンク取付部J20、胸側主リンク取付部J1およびモータ14Mを有する上腕部駆動主アクチュエータ14が、第1アクチュエータである。
上腕部駆動補助リンク15Lが、3回転自由度または4回転自由度または5回転自由度を有する第2リンクである。上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21が、上腕部主リンク取付部J20に対する相対的な位置関係が固定されて上腕部駆動主リンク14Lに設けられた第1リンク第2取付部である。上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21には、上腕部駆動補助リンク15Lの一端が少なくとも1回転自由度を有して回転可能に取付けられる。胸側補助リンク取付部J2は、肩関節部13に対する相対的な位置関係が固定されて胸部5に設けられた第2基準点である。上腕部駆動補助リンク15L自体が、1回転自由度を有する。上腕部駆動補助リンク15L自体は、1回転自由度を有しなくてもよい。胸側補助リンク取付部J2が、上腕部駆動補助リンク15Lの他端が少なくとも2回転自由度を有して回転可能に取付けられる第1部材第2取付部である。モータ15Mは、上腕部駆動補助リンク15Lの長さを変更する力を発生させる第2動力源である。上腕部駆動補助リンク15Lの長さは、上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21と胸側補助リンク取付部J2の距離である。上腕部駆動補助リンク15L、上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21、胸側補助リンク取付部J2、モータ15Mを有する上腕部駆動補助アクチュエータ15が、第2アクチュエータである。
上腕部駆動主リンク14Lおよび上腕部駆動補助リンク15Lが伸縮しても、上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21は必ずリンク移動面上に存在する。したがって、上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21は、リンク移動面に垂直な回転軸(垂直回転軸と呼ぶ)の回りに回転可能な1回転自由度を持たせる。
胸側主リンク取付部J1および胸側補助リンク取付部J2が、リンク移動面回転軸と垂直回転軸とによる2回転自由度を有する。したがって、上腕部駆動主リンク14Lおよび上腕部駆動補助リンク15Lがどのように伸縮しても、上腕部駆動主リンク14Lおよび胸側補助リンク取付部J2はねじれることはない。そのため、上腕部駆動主リンク14Lおよび上腕部駆動補助リンク15Lは、軸回りの1回転自由度は不要である。上腕部駆動主リンク14Lは4回転自由度を有し、上腕部駆動補助リンク15Lは3回転自由度を有する。なお、胸側主リンク取付部J1において上腕部駆動主リンク14Lがリンク移動面回転軸の回りを回転すると、垂直回転軸もリンク移動面回転軸の回りを回転する。胸側補助リンク取付部J2において上腕部駆動補助リンク15Lがリンク移動面回転軸の回りを回転すると、垂直回転軸もリンク移動面回転軸の回りを回転する。
上腕部主リンク取付部J20には、上腕骨部7Bの軸回りの1回転自由度を含む2回転自由度を持たせる。そうすることで、上腕部主リンク取付部J20において上腕骨部7Bの軸回りの角度が変化すること、および上腕骨部7Bと上腕部駆動主リンク14Lとの間で角度が変化することに対応できる。
胸側主リンク取付部J1が、リンク移動面回転軸および垂直回転軸とは異なる方向の回転軸を含む2回転自由度である場合は、上腕部駆動主リンク14Lがねじれる。ねじれを吸収するために、上腕部駆動主リンク14Lに軸回りの1回転自由度を持たせる。あるいは、上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21を2回転自由度にしてもよい。上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21に追加する1回転自由度は、上腕部駆動主リンク14Lの軸回りの1回転自由度である。なお、胸側主リンク取付部J1が3回転自由度を有する場合は、上腕部駆動主リンク14Lは軸回りの1回転自由度を持たなくてもよく、上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21に回転自由度を追加しなくてもよい。
胸側補助リンク取付部J2が、リンク移動面回転軸および垂直回転軸とは異なる方向の回転軸を含む2回転自由度である場合は、上腕部駆動補助リンク15Lがねじれる。ねじれを吸収するために、上腕部駆動補助リンク15Lに軸回りの1回転自由度を持たせる。あるいは、上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21を2回転自由度にしてもよい。上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21に追加する1回転自由度は、上腕部駆動補助リンク15Lの軸回りの1回転自由度である。なお、上腕部駆動主リンク14Lがねじれることを防止するために上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21を2回転自由度にしている場合は、上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21を3回転自由度にする。胸側補助リンク取付部J2が3回転自由度を有する場合は、上腕部駆動補助リンク15Lは軸回りの1回転自由度を持たなくてもよく、上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21に回転自由度を追加しなくてもよい。
胸側主リンク取付部J1および胸側補助リンク取付部J2の一方が、リンク移動面回転軸と垂直回転軸とによる2回転自由度を有し、他方がリンク移動面回転軸および垂直回転軸とは異なる方向の回転軸を含む2回転自由度である場合は、胸側主リンク取付部J1の回転自由度のと胸側補助リンク取付部J2の回転自由度の合計を、8回転自由度にすればよい。つまり、上腕部駆動主リンク14Lまたは上腕部駆動補助リンク15Lに軸回りの1回転自由度を持たせるか、あるいは上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21を2回転自由度にすればよい。胸側主リンク取付部J1または胸側補助リンク取付部J2を3回転自由度にしてもよい。
胸側主リンク取付部J1および胸側補助リンク取付部J2の両方が、リンク移動面回転軸および垂直回転軸とは異なる方向の回転軸を含む2回転自由度である場合は、胸側主リンク取付部J1の回転自由度のと胸側補助リンク取付部J2の回転自由度の合計を、9回転自由度にすればよい。
胸側主リンク取付部J1および胸側補助リンク取付部J2の位置は固定されているが、どちらか少なくとも一方が移動可能な場合は、リンク移動面がリンク移動面回転軸の回りを回転するとは限らないので、上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21が少なくとも2回転自由度を持つ必要がある。
関節部が3回転自由度の場合は、第1リンクおよび第2リンクに5回転自由度を持たせると共に、第2部材と第1部材との間に5回転自由度を有する第3リンクを追加する。以上のことは、2回転自由度または3回転自由度で回転可能に第2部材を第1部材に接続する回転接続機構にあてはまる。
図11から図15、図39から図44を参照して肘部C5の構造を説明する。図39と図40は、左の上肢部3の正面図および側面図である。図41と図42は、左の上肢部3の肘関節部31までの部分を拡大した正面図および側面図である。図43は、左右の肘関節部31を90度曲げた状態での人型ロボット100の正面図である。図44は、左右の肘関節部31を90度曲げた状態での人型ロボット100の上から見た平面図である。図43と図44では、体幹部1と左右の上肢部3だけを示す。図43と図44では、右の上腕部7が体幹部1から離れるように移動し、左の上腕部7が体幹部1に近づくように移動し、左右の肘関節部31を90度曲げている。図44から分るように、左右の前腕骨部8Bは、体幹部1の正面方向に対してそれぞれ外側に開いた方向を向いている。つまり、肘関節部31の主に曲がる方向は、体幹部1の正面方向(Y軸)と角度ξ2をなす方向である。
上肢部3の正面方向は、肘関節部31が主に曲がる方向だけに90度曲げたときの前腕骨部8Bが向く方向である。人型ロボット100が直立して上肢部3を鉛直下向きにした時に、上肢部3の正面方向は、人型ロボット100の正面方向よりもξ2だけ外側を向いている。そのため、人型ロボット100の正面図である図2では、上肢部3を斜めから見ることになる。上肢部3の説明では、上肢部3の正面方向をY軸方向とし、上肢部3の正面方向と直交する方向をX軸方向とする。
前腕部8は、上腕部7に肘関節部31により2回転自由度を有して回転可能に接続される。肘関節部31は、上腕部7と同じ方向の回転軸Rz2を有する2軸ジンバルである。2軸ジンバルでは、回転軸Rz2の回りに前腕部8が回転する。さらに、前腕部8の上腕部7に対する角度も変更できる。肘関節部31では、回転部材は上腕部7に設けられ、ヨークは前腕骨部8Bに設けられる。上腕部7および前腕部8には、肘部駆動外側リンク32および肘部駆動内側リンク33が取付けられる。肘部駆動外側リンク32および肘部駆動内側リンク33は、長さが決まったリンクであり、2本の肘駆動リンクである。肘部駆動外側リンク32および肘部駆動内側リンク33は、リンクのねじれを可能とする1回転自由度を有する。
肘部駆動外側リンク32および肘部駆動内側リンク33の上腕部7への取付位置は、移動可能である。そのために、上腕骨部7Bの両側に、2本のリニアガイドである上腕部外側リニアガイド34Gおよび上腕部内側リニアガイド35Gが、上腕骨部7Bに平行に設けられる。図11などに示すように、上腕部7の肩関節部13の近くには、上腕部外側リニアガイド34Gのモータ34Mと上腕部内側リニアガイド35Gのモータ35Mを保持するモータ保持具7Aが設けられる。
肘部駆動外側リンク32の上腕部7への取付位置である上腕部外側リンク取付部J22は、上腕部外側アクチュエータ34により移動する。肘部駆動内側リンク33の上腕部7への取付位置である上腕部内側リンク取付部J23は、上腕部内側アクチュエータ35により移動する。上腕部外側リンク取付部J22および上腕部内側リンク取付部J23には、肘部駆動外側リンク32および肘部駆動内側リンク33がそれぞれ2回転自由で取付けられる。肘部駆動外側リンク32および肘部駆動内側リンク33は、トラス構造を構成する。
図41を参照して、上腕部外側アクチュエータ34の構造を説明する。上腕部外側アクチュエータ34は、上腕部外側リニアガイド34G、肘部駆動外側リンク32、肘部駆動外側リンク取付部J25、上腕部外側リンク取付部J22およびモータ34Mを有する。上腕部外側リニアガイド34Gは、枠体である上腕部外側フレーム34Fの内部にねじ棒34A、ナット34B、レール34Cおよび把持部34Dを有する。
モータ34Mは、上腕部外側リニアガイド34Gの裏に配置している。そうすることで、上腕部外側リニアガイド34Gおよびモータ34Mをコンパクトにできる。モータ34Mは、肩関節部13に近い側でタイミングベルトにより力をねじ棒34Aに伝えて、ねじ棒34Aを回転させる。タイミングベルトを使用することで、ギヤで力を伝える場合よりも軽量にできる。ねじ棒34Aの雄ねじとかみ合う雌ねじが設けられた貫通穴を有するナット34Bは、ねじ棒34Aの長さ方向に移動可能である。ナット34Bをねじ棒34Aの回りに回転させない機構が設けられている。そのため、ねじ棒34Aが回転すると、ナット34Bがねじ棒34Aに沿って移動する。上腕部外側リンク取付部J22はナット34Bに取付けられており、ナット34Bが移動すると上腕部外側リンク取付部J22も移動する。ナット34Bは、上腕部外側アクチュエータ34により移動する移動部材である。
ナット34Bをねじ棒34Aの回りに回転させない機構は、ねじ棒34Aと平行に設けられたレール34Cと、レール34Cを挟みナット34Bに接続した把持部34Dを有する。把持部34Dは、レール34Cと間の摩擦は小さくなるように設けられる。把持部34Dがレール34Cを挟んでいるので、把持部34Dおよびナット34Bはねじ棒34Aの回りを回転しない。他の機構により、ナット34Bをねじ棒34Aの回りに回転しないようにしてもよい。
上腕部内側アクチュエータ35も、上腕部外側アクチュエータ34と同様な構造である。上腕部内側リニアガイド35G、肘部駆動内側リンク33、肘部駆動内側リンク取付部J24、上腕部内側リンク取付部J23およびモータ35Mを有する。上腕部内側リニアガイド35Gは、枠体である上腕部内側フレーム35Fの内部にねじ棒35A、ナット35B、レール35Cおよび把持部35Dを有する。上腕部内側リンク取付部J23はナット35Bに取付けられている。ナット35Bは、上腕部内側アクチュエータ35により移動する移動部材である。
上腕部外側フレーム34Fと上腕部内側フレーム35Fは一体に製造している。一体に製造することで、コンパクトにでき、強度も高くできる。なお、上腕部外側フレーム34Fと上腕部内側フレーム35Fを、別体に製造してもよい。
レール34Cおよびレール35Cは、長方形の板材の両側の辺である。レール34C、レール35C、ねじ棒34Aおよびレール35Cを互いに平行に配置する必要がある。上腕部外側リニアガイド34Gおよび上腕部内側リニアガイド35Gを決められた精度で配置する必要がある。そのための作業には、時間を要する。
把持部35Dは、ナット35Bに設けられている。把持部35Dは、レール35Cに係合する。把持部35Dとレール35Cは、第1移動部材であるナット35Bがねじ棒35Aの回りに回転することを防止する第1回転防止部である。
把持部34Dは、ナット34Bに設けられている。把持部34Dは、レール34Cに係合する。把持部34Dとレール34Cは、第2移動部材であるナット34Bがねじ棒34Aの回りに回転することを防止する第2回転防止部である。
上腕部外側リンク取付部J22は、次のような構造を有する2軸ジンバルである。上腕部外側アクチュエータ34により移動する移動部材であるナット34Bに回転部材、回転部材により回転するヨーク、およびヨークが回転可能に挟む軸部材が設けられる。肘部駆動外側リンク32の端部には、軸部材が入る貫通穴が設けられる。上腕部内側リンク取付部J23も、同様な構造の2軸ジンバルである。
前腕骨部8Bの肘関節部31から決められた距離の位置に、肘部駆動内側リンク取付部J24が設けられる。肘部駆動内側リンク取付部J24には、肘部駆動内側リンク33の一端が2回転自由度を有して回転可能に取付けられる。肘部駆動内側リンク取付部J24は、上腕部外側リンク取付部J22と同様な構造の2軸ジンバルである。肘部駆動内側リンク33の肘部駆動内側リンク取付部J24から決められた距離の位置に、肘部駆動外側リンク取付部J25が設けられる。肘部駆動外側リンク取付部J25には、肘部駆動外側リンク32の他端が2回転自由度を有して回転可能に取付けられる。肘部駆動外側リンク取付部J25は、肘部駆動内側リンク33に設けられた突起を、肘部駆動外側リンク32の一端から伸びるヨークが挟む構造である。肘部駆動外側リンク取付部J25のヨークは、肘部駆動外側リンク32と肘部駆動内側リンク33とがなす角度が小さい場合でも突起を挟めるように、十分な長さを持たせる。肘部駆動内側リンク33の突起が設けられた部分は、肘部駆動内側リンク33の回りを回転可能である。肘部駆動外側リンク32の一端から伸びるヨークは、肘部駆動内側リンク33とヨークとがなす角度が変更可能なように突起を挟む。肘部駆動外側リンク取付部J25は、肘部駆動内側リンク33の軸回りの1回転自由度を含む2回転自由度を有する。
上腕部外側リンク取付部J22および肘部駆動外側リンク取付部J25のどちらか少なくとも一方を、3回転自由度を有するようにしてもよい。上腕部内側リンク取付部J23および肘部駆動内側リンク取付部J24のどちらか少なくとも一方を、3回転自由度を有するようにしてもよい。
図45は、左の肘部C5でのリンク配置を説明する斜視図である。肘関節部31、上腕部外側アクチュエータ34および上腕部内側アクチュエータ35は、上腕部7に固定されている。上腕部外側リンク取付部J22は、上腕部外側アクチュエータ34により上腕骨部7Bに沿って移動する。上腕部内側リンク取付部J23は、上腕部内側アクチュエータ35に沿って移動する。前腕部8に設けられる肘部駆動内側リンク取付部J24は、肘関節部31から決められた距離K1uの位置に存在する。肘部駆動内側リンク33に設けられる肘部駆動外側リンク取付部J25は、肘部駆動内側リンク取付部J24(厳密には、その回転中心)から決められた距離K2uの位置に存在する。前腕部8は、肘関節部31(厳密には、その回転中心)から距離K1uの位置にある肘部駆動内側リンク取付部J24の方向に向く。肘部駆動内側リンク取付部J24の位置を変更することで、上腕部7に対して前腕部8を動かすことができる。
肘部駆動内側リンク33および肘部駆動外側リンク32は、長さが決まっている。上腕部外側リンク取付部J22および上腕部内側リンク取付部J23が上腕骨部7Bに沿って移動することで、肘部駆動内側リンク取付部J24の位置が変化する。
肘部C5は、肘関節部31、肘部駆動内側リンク33、肘部駆動外側リンク32、前腕側主リンク取付部である肘部駆動内側リンク取付部J24、肘部駆動内側リンク33に設けられた肘部駆動主リンク側補助リンク取付部である肘部駆動外側リンク取付部J25、2個の上腕側リンク取付部である上腕部内側リンク取付部J23および上腕部外側リンク取付部J22、2本のリニアガイドである上腕部外側リニアガイド34Gおよび上腕部内側リニアガイド35Gを有して構成される。
上腕部外側リンク取付部J22および上腕部内側リンク取付部J23が共に肩関節部13に近くなるように移動すると、肘関節部31が曲がって前腕部8が上腕部7に近づく。肩関節部13から遠くなるように移動すると、肘関節部31が伸びて前腕部8が上腕部7から離れる。上腕部外側リンク取付部J22を肩関節部13に近くなるように移動させ、上腕部内側リンク取付部J23は遠くなるように移動させると、前腕部8が外側を向く。上腕部内側リンク取付部J23を肩関節部13に近くなるように移動させ、上腕部外側リンク取付部J22は遠くなるように移動させると、前腕部8が内側を向く。
肘関節部31は、上腕骨部7Bと前腕骨部8Bが1直線になる状態から、上腕骨部7Bと前腕骨部8Bとの間の角度が例えば70度程度になるまで、上肢部3の正面方向と上腕骨部7Bとを含む平面内(肘主駆動面)で角度を変化させることができる。上腕骨部7Bに垂直な平面内(肘副駆動面)では、肘関節部31を直角に曲げた状態で、内側および外側に例えば70度程度は回転できる。肘主駆動面での肘関節部31の回転角度が直角(90度)でない場合は、肘副駆動面での回転角度は直角の場合よりも小さくなる。肘関節部31の回転角度が180度の状態すなわち肘関節部31を伸ばした状態では、肘副駆動面で回転できない。
肘関節部31を駆動する2本のリンクを固定長にして上腕部においてリンク取付部の位置を移動させる方式とすることで、肘関節部31を駆動する機構をコンパクトにできる。肘関節部を2本の可変長リンクで駆動する場合には、肘関節部を肘副駆動面で回転させるために、2本のリンクが前腕部の取付位置でなす角度を決められた角度以上にする必要がある。そのためには、2本の可変長リンクの取付位置の間隔は、この実施の形態で使用する2本のリニアガイドの間隔よりも広くする必要がある。
肘部駆動内側リンク33は、長さが決まった肘部駆動主リンクである。肘部駆動外側リンク32は、長さが決まった肘部駆動補助リンクである。肘部駆動内側リンク取付部J24は、肘部駆動内側リンク33一端が少なくとも2回転自由度を有して回転可能に取付けられる前腕側主リンク取付部である。肘部駆動外側リンク取付部J25は、肘部駆動外側リンク32の一端が少なくとも2回転自由度を有して回転可能に取付けられる肘部駆動主リンク側補助リンク取付部である。上腕部内側リンク取付部J23および上腕部外側リンク取付部J22は、肘部駆動内側リンク33および肘部駆動外側リンク32の他端がそれぞれ少なくとも2回転自由度を有して回転可能に取付けられ、上腕骨部7Bに沿って移動可能に上腕部7に設けられた2個の上腕側リンク取付部である。
肘部駆動外側リンク32の前腕部8側の一端を、肘部駆動内側リンク33ではなく前腕部8に取付けるようにしてもよい。その場合には、2個の前腕側リンク取付部が前腕部8に設けられることになる。2個の前腕側リンク取付部のそれぞれには、2本の肘部駆動リンクである肘部駆動外側リンク32および肘部駆動内側リンク33の一端がそれぞれ少なくとも2回転自由度を有して回転可能に取付けられる。
上腕部外側アクチュエータ34が有するナット34Bは、肘部駆動外側リンク32を移動させる移動部材である。上腕部内側アクチュエータ35が有するナット35Bは、肘部駆動内側リンク33を移動させる移動部材である。ねじ棒34Aおよびねじ棒35Aは、ナット34Bおよびナット35Bをそれぞれ上腕骨部7Bに沿って移動させるガイド部である。モータ34Mは、ねじ棒34Aに対するナット34Bの位置を変更する力を発生させる動力源である。モータ35Mは、ねじ棒35Aに対するナット35Bの位置を変更する力を発生させる動力源である。上腕部外側リニアガイド34Gは、ナット34B、ねじ棒34Aおよびモータ34Mを有するリニアガイドである。上腕部内側リニアガイド35Gは、ナット35B、ねじ棒35Aおよびモータ35Mを有するリニアガイドである。
肘部C5は、第1部材である上腕部7に第2部材である前腕部8を肘関節部31により回転可能に接続する回転接続機構である。肘関節部31は、上腕部7に前腕部8を、2回転自由度を有して回転可能に接続する関節部である。肘部C5は、肘関節部31の角度を変更して前腕部8を上腕部7に対して移動させる。
肘部駆動内側リンク33が、5回転自由度を有する長さが固定された第1リンクである。肘部駆動内側リンク取付部J24が、肘関節部31に対する相対的な位置関係が固定されて前腕部8に設けられた第2部材第1取付部である。肘部駆動内側リンク取付部J24には、肘部駆動内側リンク33の一端が少なくとも2回転自由度を有して回転可能に取付けられる。上腕部内側リンク取付部J23が、肘部駆動内側リンク33の他端が少なくとも2回転自由度を有して回転可能に取付けられる第1部材第1取付部である。ナット35Bが、上腕部内側リンク取付部J23が設けられた第1移動部材である。ねじ棒35Aが、ナット35Bが沿って移動する第1移動軸である。上腕部内側リニアガイド35Gは、上腕部内側フレーム35Fにより両端が保持されたねじ棒35Aなどを有する。上腕部内側リニアガイド35Gが、ナット35Bをねじ棒35Aに沿って移動するようにガイドする第1ガイド部を構成する。
モータ35Mが、ねじ棒35Aに対するナット35B位置を変更させる力を発生させる動力源である。点P1N(図82に図示)は、ねじ棒35Aの中心を通る直線が上腕部内側フレーム35Fの上端と交わる点である。点P1Nが、肘関節部31に対する相対的な位置関係が固定されて上腕部7に設けられた第1基準点である。モータ35Mが回転してねじ棒35Aが回転することで、ナット35Bがねじ棒35Aに沿って移動する。ナット35Bが移動すると、点P1Nと肘部駆動内側リンク取付部J24の距離が変化する。モータ35Mは、点P1Nと肘部駆動内側リンク取付部J24の距離を変更する力を発生させる動力源である。肘部駆動内側リンク33、上腕部内側リニアガイド35G、肘部駆動内側リンク取付部J24、上腕部内側リンク取付部J23およびモータ35Mを有する上腕部内側アクチュエータ35が、第1アクチュエータである。
肘部駆動外側リンク32が、5回転自由度を有する長さが固定された第2リンクである。肘部駆動外側リンク取付部J25が、肘部駆動内側リンク取付部J24に対する相対的な位置関係が固定されて肘部駆動内側リンク33に設けられた第1リンク第2取付部である。肘部駆動外側リンク取付部J25には、肘部駆動外側リンク32の一端が少なくとも2回転自由度を有して回転可能に取付けられる。肘部駆動外側リンク取付部J25の回転自由度は、肘部駆動内側リンク33の軸回りの1回転自由度を含む。上腕部外側リンク取付部J22が、肘部駆動外側リンク32の他端が少なくとも2回転自由度を有して回転可能に取付けられる第1部材第2取付部である。ナット34Bが、上腕部外側リンク取付部J22が設けられた第2移動部材である。ねじ棒34Aが、ナット34Bが沿って移動する第2移動軸である。上腕部内側リニアガイド34Gは、上腕部内側フレーム34Fにより両端が保持されたねじ棒34Aなどを有する。上腕部内側リニアガイド34Gが、ナット34Bをねじ棒34Aに沿って移動するようにガイドする第2ガイド部を構成する。
モータ34Mが、ねじ棒34Aに対するナット34Bの位置を変更させる力を発生させる動力源である。点P2N(図82に図示)は、ねじ棒34Aの中心を通る直線が上腕部外側フレーム34Fの上端と交わる点である。点P2Nが、肘関節部31に対する相対的な位置関係が固定されて上腕部7に設けられた第2基準点である。モータ34Mが回転してねじ棒34Aが回転することで、ナット34Bがねじ棒35Aに沿って移動する。ナット34Bが移動すると、点P2Nと肘部駆動外側リンク取付部J25の距離が変化する。モータ34Mは、点P2Nと肘部駆動外側リンク取付部J25の距離を変更する力を発生させる動力源である。肘部駆動外側リンク32、上腕部外側リニアガイド34G、肘部駆動外側リンク取付部J25、上腕部外側リンク取付部J22およびモータ34Mを有する上腕部外側アクチュエータ34が、第2アクチュエータである。
図46から図49を参照して、手首部C6の構造を説明する。図46、図47、図48、図49は、骨格構造での左の肘関節部31から先の部分を拡大した斜視図、正面図、左側面図、裏面図である。
人間の手に似た手部9は、前腕部8に手首関節部36により3回転自由度を有して回転可能に接続される。手首関節部36には、棒状の前腕骨部8Bの一端に設けられた球面を回転可能に保持する球面軸受が用いられる。球面を受ける部材は手首板部91に設けられる。手部9は、手首関節部36の回りを3回転自由度で回転できる。3本のアクチュエータすなわち前腕部正面アクチュエータ37、前腕部外側アクチュエータ38、前腕部内側アクチュエータ39の長さが変化すると、手部9と前腕骨部8Bとの間の角度が変化する。手部9を前腕骨部8Bに対して、例えば、手の平の方向(正面方向)に20度程度、手の甲の方向(裏面方向)に20度程度、前腕骨部8Bの方向および正面から裏面に向かう方向に垂直な方向の両側にそれぞれ20度程度、傾けることができる。前腕骨部8Bの回りに両方向に70度程度、手部9を回転できる。
手首部C6の正面方向および裏面方向の可動範囲の角度が小さいが、肘部C5と合わせて90度、曲げることができる。手の平を壁などにあてて押しつける際は、例えば、手首部C6で手の甲側に20度曲げて、残りは、肘部C5を70度程度曲げて、結果的に体の上下軸と平行な手の平の面を作り出し、胸面と平行に手の平を押し出す動作となる。
前腕部正面リンク37L、前腕部外側リンク38Lおよび前腕部内側リンク39Lの一端を前腕部8に取付けるために、前腕部8の手首関節部36から決められた距離の位置に前腕部正面リンク取付部J26、前腕部外側リンク取付部J27および前腕部内側リンク取付部J28が設けられる。前腕部正面リンク取付部J26は、前腕部8の正面に設けられる。前腕部外側リンク取付部J27は、前腕部8に垂直な平面で前腕部正面リンク取付部J26に対して90度の角度をなす位置に設けられる。前腕部内側リンク取付部J28は、前腕部外側リンク取付部J27との間の角度が180度になる位置に設けられる。前腕部外側リンク取付部J27と前腕部内側リンク取付部J28を結ぶ線分の中点が、前腕部8の断面の中心と一致する。
手部9は、手首板部91、板状の掌板部92、掌板部92を手首板部91に垂直に接続する手部取付部98、4本の普通指部である第1指部93、第2指部94、第3指部95、第4指部96、および対向可能指部97を有する。手首板部91は、長い辺と短い辺が交互に並ぶ6角形の板状である。4本の普通指部は、掌板部92の手首板部91と反対側に接続される。対向可能指部97は、4本の普通指部とは異なる方向で掌板部92に4接続し、普通指部と対向する位置に移動できる。手首板部91は、手首関節部36を介して前腕骨部8Bと接続する。4本の普通指部は、ほぼ同じ方向を向いて並ぶ。
手部9は、人間の手に似ている。対向可能指部97は親指に相当し、第1指部93、第2指部94、第3指部95、第4指部96はそれぞれ、人差指、中指、薬指、小指に相当する。
掌板部92において、指部が曲がる側に存在する面を手の平側とよび、その反対側の面を手の甲側と呼ぶ。手部では、手の平側を正面とし、手の甲側を裏面とする。掌板部92と平行な平面において、普通指部が延在する方向を指先方向と呼ぶ。指先方向は、手首から指先に向かう方向である。指先方向と直交する方向を手幅方向と呼ぶ。
前腕部正面リンク取付部J26は、前腕部8の正面側に出る回転部材により回転するヨークに、前腕部正面リンク37Lの一端に設けられた軸部材が回転可能に保持される2軸ジンバルである。前腕部外側リンク取付部J27、前腕部内側リンク取付部J28も同様な構造の2軸ジンバルである。前腕部8の正面から裏面に向かう方向は、手部9において第1指部93から第4指部96が並ぶ方向とほぼ平行である。
前腕部正面リンク37Lでは、手部9側でモータ37Mが発生する力がタイミングベルトによりナット37Bに伝えられる構造である。前腕部正面リンク37Lは、可変長リンクの円筒とモータの間からL字状に伸びるリンク取付具37Nを介して前腕部正面リンク取付部J26に取付けられる。モータの一端は、片側の取付位置よりも肘関節部31に近い位置に存在する。前腕部外側リンク38L、前腕部内側リンク39Lも同様な構造である。
手首板部91が前腕骨部8Bに垂直であり対向可能指部97が上肢部3の正面方向に存在する状態が、手部9の基準状態である。手首板部91に前腕部正面リンク37L、前腕部外側リンク38Lおよび前腕部内側リンク39Lのもう一端を取付けるために、手首板部91の前腕部8側の面に手部側正面リンク取付部J29、手部側外側リンク取付部J30および手部側内側リンク取付部J31が設けられる。
手部側正面リンク取付部J29、手部側外側リンク取付部J30、手部側内側リンク取付部J31および手首関節部36は、同一平面上に存在する。手部側正面リンク取付部J29、手部側外側リンク取付部J30および手部側内側リンク取付部J31は、正三角形を構成する位置に配置される。手首関節部36、その正三角形の重心に位置する。そのため、手首関節部36は、手部側外側リンク取付部J30および手部側内側リンク取付部J31を結ぶ線分の二等分線上に存在する。手部側正面リンク取付部J29は、前腕骨部8Bと前腕部正面リンク取付部J26で決まる平面上に基準状態では存在する。
手部側正面リンク取付部J29は、手首板部91の前腕部8側の面に設けられた突起から手首関節部36の方向に出る回転部材により回転するヨークに、前腕部正面リンク37Lの一端に設けられた軸部材が回転可能に保持される2軸ジンバルである。手部側外側リンク取付部J30、手部側内側リンク取付部J31も同様な構造の2軸ジンバルである。
前腕部正面リンク37L、前腕部外側リンク38Lおよび前腕部内側リンク39Lのそれぞれは、その一端が手部側正面リンク取付部J29、手部側外側リンク取付部J30および手部側内側リンク取付部J31のそれぞれに2回転自由度を有して回転可能に取付けられる。それぞれの他端は、前腕部正面リンク取付部J26、前腕部外側リンク取付部J27、前腕部内側リンク取付部J28のそれぞれに2回転自由度を有して回転可能に取付けられる。
手首部C6は、第2部材である手部9を第1部材である前腕部8に3回転自由度を有して回転可能に回転可能に接続する3回転自由度接続機構である。手首部C6は、関節部である手首関節部36、3本の可変長リンクである前腕部正面リンク37L、前腕部外側リンク38Lおよび前腕部内側リンク39L、3個の第1部材側リンク取付部である前腕部正面リンク取付部J26、前腕部外側リンク取付部J27および前腕部内側リンク取付部J28、3個の第2部材側リンク取付部である手部側正面リンク取付部J29、手部側外側リンク取付部J30および手部側内側リンク取付部J31を有して構成される。
前腕骨部8Bは、第1部材である前腕部8に対して方向が固定された捻り軸である。前腕骨部8Bは、手部9に対する角度が変更可能である。前腕部正面リンク取付部J26、前腕部外側リンク取付部J27および前腕部内側リンク取付部J28では、手首関節部36に対する相対的な位置関係は、固定されている。第2部材である手部9に設けられたリンク取付部である手部側正面リンク取付部J29、手部側外側リンク取付部J30および手部側内側リンク取付部J31でも、手首関節部36に対する相対的な位置関係は、手首板部91により固定されている。
手首部C6での可変長リンクの配置を説明する。図50は、左の手首部C6での可変長リンクの配置を説明する斜視図である。3個の第1部材側リンク取付部J26、J27、J28と3個の第2部材側リンク取付部J29、J30、J31とをそれぞれ結ぶ3本の可変長リンク37L、38L、39Lを、手首部C6は有する。そのため、3本の可変長リンク37L、38L、39Lの長さを変更することで、手部9の前腕骨部8Bに対する接続角度を3回転自由度で変更できる。手首関節部36のX軸回りの回転角度をαv、Y軸回りの回転角度をβv、Z軸回りの回転角度をγvとする。
手首関節部36は、第2部材側リンク取付部J29、J30、J31で決まるリンク取付平面の上にある。そのため、手首関節部36は、リンク取付平面と捻り軸8との交点である捻り中心でもある。第2部材三角形T3は、正三角形である。手首関節部36は、第2部材三角形T3の重心の位置に存在する。第2部材側リンク取付部J29と捻り中心を通る直線に対して、第2部材側リンク取付部J30、J31は対称に配置される。
図51は、基準状態で左の手首部C6での可変長リンクの配置を前腕部が延在する方向から見た図である。基準状態で、可変長リンク38L、39Lは、捻り軸8とねじれの関係にある。可変長リンク37Lの第1部材側リンク取付部J26と捻り軸8とを含むリンク基準面と可変長リンク37Lとがなす傾斜角度θv1は、0度である。可変長リンク38L、39Lの傾斜角度θv2、θv3は、約8.1度である。基準状態では、3本の可変長リンク37L、38L、39Lの傾斜角度の最大値θvmaxは約8.1度であり、δ0(例えば、3度程度)以上である。可変長リンク38L、39Lの長さを変化させる場合に、捻り軸8の回りに回転するトルクが発生し、捻り軸8の回りを回転させることができる。
手部9を前腕骨部8Bに対して可動範囲内で傾けたり捻ったりした場合でも、3本の可変長リンク37L、38L、39Lの少なくとも1本は捻り軸8とねじれの関係にあり、その傾斜角度の最大値θvmaxは、δ0以上である。基準状態では、可変長リンク37Lは捻り軸8と同一平面上にあり、可変長リンク38L、39Lは捻り軸8とねじれの関係にある。可変長リンク38L、39Lの傾斜角度θv2、θv3の両方が小さくなるのは、手部9を第4指部96側に傾ける場合である。手部9を第4指部96側に傾ける場合には、可変長リンク37Lは捻り軸8と同一平面上にある。図52は、左の手首部C6を第4指部96側に傾けた状態での可変長リンクの配置を前腕骨部8Bが延在する方向から見た図である。図52では、第4指部96側に20度、手部9を傾けている。可変長リンク38L、39Lの傾斜角度θv2、θv3は、約7.4度である。手首部C6を手の平の方向または手の甲方向に傾ける場合、および手首部C6を捻り軸8の回りに回転させる場合は、可変長リンク38L、39Lの傾斜角度θv2、θv3の一方が大きくなり、もう一方が小さくなる。
図11、図21、図22、図53から図61を参照して、大腿部10を腰部6に対して動かす股部C7の構造を説明する。図53、図54、図55は、骨格構造での腰部から下の部分の正面図、左側面図および背面図である。図56は、骨格構造での膝関節部40から下の部分の斜視図である。図57、図58、図59は、大腿部を拡大した正面図、左側面図および背面図である。図60は、大腿部を右斜め前から見た斜視図である。図61は、大腿部を右斜め後から見た斜視図である。
図53に示されるように、基準状態では、正面から見た大腿部10を通る直線を股関節部22よりも上側に延ばした直線上に、股部正面リンク取付部J11が存在する。股部外側リンク取付部J12は、水平に外側に出ている。股部内側リンク取付部J13は、内側で斜め前下の方向に出ている。基準状態では、正面から見ると、股関節部22、膝関節部40、足首関節部41が鉛直な同一直線上に存在する。図58に示すように、平板上の下肢部接続フレーム62は、水平面(XY平面)に対して角度ξ3(約45度)で傾斜し、前方が高い。そのため、股部正面リンク取付部J11、股部外側リンク取付部J12および股部内側リンク取付部J13で決まる平面は、その法線が前方斜め下を向く。
大腿部10は、棒状の大腿骨部10A、大腿骨部10Aに垂直に設けられた膝部側リンク取付板10B、膝部側リンク取付板10Bと膝関節部40をつなぐ2個のフレームである膝部接続フレーム10Cを有する。膝部接続フレーム10Cは、膝関節部40が大腿骨部10Aよりも後方に位置するように、大腿骨部10Aに対して傾斜して膝部側リンク取付板10Bと接続する。膝部側リンク取付板10Bに設けられた3個のリンク取付部に、股関節部22を3回転自由度で回転させる3本の可変長リンクの一端がそれぞれ取付けられる。膝関節部40が大腿骨部10Aよりも後方に存在することで、基準状態で股関節部22、膝関節部40、足首関節部41が、正面から見て鉛直線上に存在するように配置しやすい。
大腿部正面リンク23L、大腿部外側リンク24Lおよび大腿部内側リンク25Lは、大腿部10に垂直な膝部側リンク取付板10Bに設けられた膝部正面リンク取付部J32、膝部外側リンク取付部J33および膝部内側リンク取付部J34にそれぞれ取付けられる。膝部側リンク取付板10Bは、中心側でつながった3個の長方形が互いに120度の角度を有する方向に伸びた形状である。膝部正面リンク取付部J32が設けられる長方形は、大腿部10の正面側に存在する。
膝部正面リンク取付部J32は、2個の円筒が十字型に接合した十字部材を使用して2回転自由度で回転可能とする構造である。膝部側リンク取付板10Bに、十字部材の一方の円筒を回転可能に保持するヨークが設けられる。大腿部正面リンク23Lの一端には、十字部材の他方の円筒を回転可能に保持するヨークが設けられる。
膝部外側リンク取付部J33、膝部内側リンク取付部J34も、膝部正面リンク取付部J32と同様な構造である。
股部C7は、第2部材である大腿部10を第1部材である腰部6に3回転自由度で回転可能に接続する3回転自由度接続機構である。股部C7は、関節部である股関節部22、3本の可変長リンクである大腿部正面リンク23L、大腿部外側リンク24Lおよび大腿部内側リンク25L、3個の第1部材側リンク取付部である股部正面リンク取付部J11、股部外側リンク取付部J12および股部内側リンク取付部J13、3個の第2部材側リンク取付部である膝部正面リンク取付部J32、膝部外側リンク取付部J33および膝部内側リンク取付部J34を有して構成される。
捻り軸である大腿骨部10Aは、大腿部10に対して方向が固定されている。大腿骨部10Aは、腰部6に対する角度が変更可能である。股部正面リンク取付部J11、股部外側リンク取付部J12および股部内側リンク取付部J13では、股関節部22に対する相対的な位置関係は、下肢部接続フレーム62により固定されている。膝部正面リンク取付部J32、膝部外側リンク取付部J33および膝部内側リンク取付部J34でも、股関節部22に対する相対的な位置関係は、大腿骨部10Aおよび膝部側リンク取付板10Bにより固定されている。
股関節部22を動かすための可変長リンクの配置を説明する。図62は、左の股部C7での可変長リンクの配置を説明する斜視図である。3個の第1部材側リンク取付部J11、J12、J13と3個の第2部材側リンク取付部J32、J33、J34とをそれぞれ結ぶ3本の可変長リンク23L、24L、25Lを、股部C7は有する。そのため、3本の可変長リンク23L、24L、25Lの長さを変更することで、大腿部10の腰部6に対する接続角度を3回転自由度で変更できる。股関節部22のX軸回りの回転角度をαq、Y軸回りの回転角度をβq、Z軸回りの回転角度をγqとする。
股部C7は、大腿部10を前方に例えば90度程度上げることができ、後方に例えば10度上げることができる。左右方向には、内側に例えば10度程度、外側に30度程度、大腿部10を動かすことができる。また、大腿骨部10Aの回りに、例えば、外側(股を開く向き)に20度程度、内側に10度の捻り回転ができる。
図63は、左の股部C7での可変長リンクの配置を大腿骨部が延在する方向から見た図である。基準状態で、可変長リンク24L、25Lと捻り軸10Aとはねじれの関係にある。可変長リンク23Lの第2部材側リンク取付部J32と捻り軸10Aとを含むリンク基準面と可変長リンク23Lとがなす傾斜角度θq1は、0度である。可変長リンク24Lの傾斜角度θq2は、約1.9度である。可変長リンク25Lの傾斜角度θq3は、約3.9度である。3本の可変長リンク23L、24L、25Lの傾斜角度の最大値θqmaxは、δ0(例えば、3度程度)以上である。可変長リンク24L、25Lの長さを変化させた場合に、捻り軸10Aの回りに回転するトルクが発生し、捻り軸10Aの回りを回転させることができる。
図64は、左の股部C7の大腿部10を左前方に上げた状態での可変長リンクの配置を大腿骨部10Aが延在する方向から見た図である。図64は、左前方15度の方向に大腿部10を30度上げた状態である。大腿部10を上げると、図64から分るように、下肢部接続フレーム62が図における上下方向に長くなり、可変長リンク25Lの傾斜角度θq3は、図63の場合よりも大きくなっている。また、可変長リンク23Lの傾斜角度θq1も、大きくなっている。大腿部10を可動範囲内で動かす際に、すなわち股関節部22の可動範囲内の各状態で、少なくとも1本の可変長リンク23L、24L、25Lは捻り軸10Aとねじれの関係にある。また、股関節部22の可動範囲内の各状態で、3本の可変長リンク23L、24L、25Lの傾斜角度の最大値θqmaxは、δ0(例えば、3度程度)以上である。
股関節部22が大腿骨部10Aの回りに回転可能であることは、人型ロボット100が方向を変えて歩く際に必要である。股関節部22が大腿骨部10Aの回りに回転できない場合には、人型ロボット100は正面を向いたまま斜め方向に歩くことになる。また、下肢部3を動かして体全体の向きを変える際には、股関節部22で開脚方向を変更できる必要がある。
図65により、股関節部22を動かす可変長リンクを正面側で高く裏面側で低く取付けることによる効果を説明する。図65では、図を簡明にするため、可変長リンク23L、24Lだけを示す。図65では、左側にこの実施の形態1のように股関節部22を動かす可変長リンク23L、24L、25Lを正面側で高く裏面側で低く取付けた場合の側面図を示す。右側に、股関節部22を動かす可変長リンク23L、24L、25Lをすべて同じ高さに取付けた場合の側面図を示す。直立した状態を実線で示し、大腿部を前に45度および可動範囲の限界まで上げた状を破線で示す。
股関節部22を動かす可変長リンク23L、24L、25Lをすべて同じ高さに取付けると、正面側で高くした場合よりも股関節部22の前側の可動範囲が小さくなる。大腿部10および膝関節部40が前方に位置する方向に股関節部22を回転させると、可変長リンク23Lと下肢部接続フレーム62とが干渉するからである。正面側の可変長リンク23Lを高い位置にすると、可変長リンク23Lと下肢部接続フレーム62とが干渉しにくくなり、股関節部22を前側に大きく回転させることができ、大腿部10をより上まで上げることができる。
すべて同じ高さに取付ける場合には、可動範囲が狭いにも関わらず、可動範囲の限界まで股関節部22を動かす際に、正面側を高く取付けた場合よりも、可変長リンク24Lを長くする必要がある。逆に、可変長リンク23Lは短くする必要がある。
図53から図62を参照して、下腿部11を大腿部10に対して動かす膝部C8の構造を説明する。図56に示すように、膝関節部40は、板状の下腿部11を2個の膝部接続フレーム10Cが挟んで、回転軸を通した構造である。基準状態では、回転軸はX軸に平行である。2個の膝部接続フレーム10Cは、強度を高めるために正面側で連結板10Dにより連結している。連結板10Dは、膝関節部40が逆方向に曲がることを防止する機能も持つ。図58などに示すように、膝関節部40は、大腿部10の裏側に設けられた1本の膝部駆動アクチュエータ42が有する膝部駆動リンク42Lが長さを変えることにより、角度が変更される。下腿部11は、膝関節部40の近くで曲がり、足首関節部41から決められた距離の位置でも曲がった板状の部材である。下腿部11は、膝関節部40と足首関節部41とを結ぶ直線よりも前側に存在する。
膝部駆動アクチュエータ42は、膝関節部40の側で動力源であるモータ42Mからの力がギヤで膝部駆動リンク42Lに伝えられる構造である。
股関節部22に近い大腿骨部10Aの後側の位置に、膝部駆動リンク42Lの一端が1回転自由度を有して回転可能に取付けられる膝部駆動リンク取付部J35が設けられる。
膝部駆動リンク取付部J35は、大腿骨部10A側にヨークが設けられ、膝部駆動リンク42Lの一端に円柱状の軸部材が設けられた構造である。
膝部駆動リンク42Lは、膝関節部40側では2個の補助具を使用して、大腿部10と下腿部11の両方に接続している。2個の補助具とは、大腿部側補助具43と下腿部側補助具44である。大腿部側補助具43は、一端が膝部駆動リンク42Lの一端に回転可能に取付けられる。大腿部側補助具43の一端と膝部駆動リンク42Lの一端が取付けられる箇所を、膝部駆動リンク補助具接続部J37と呼ぶ。大腿部側補助具43の他端は、大腿部10の後側に設けられた大腿部側補助具取付部J36に回転可能に取付けられる。下腿部側補助具44の一端も、膝部駆動リンク補助具接続部J37に回転可能に取付けられる。下腿部側補助具44の他端は、下腿部11の後側に設けられた下腿部側補助具取付部J38に回転可能に取付けられる。
大腿骨部10Aの膝部側リンク取付板10Bよりも少し手前の位置から棒状の大腿部側補助具取付部10Dが後側に伸びる。大腿部側補助具取付部10Dの先端に、大腿部側補助具取付部J36が設けられる。大腿部側補助具取付部J36は、膝部側リンク取付板10Bの近くに存在する。大腿部側補助具43は、2個のフレームの側面を連結した形状である。大腿部側補助具取付部10Dの先端には貫通穴が設けられている。また、大腿部側補助具43の両端にも貫通穴が設けられている。大腿部側補助具取付部J36は、それぞれの貫通穴の位置が一致するように大腿部側補助具43が大腿部側補助具取付部10Dを挟み、それらの貫通穴を回転軸が通る構造である。
大腿部側補助具43の反対側の端は、膝部駆動リンク補助具接続部J37で下腿部側補助具44および膝部駆動リンク42Lと1回転自由で接続する。下腿部側補助具44は、2個のフレームの側面を連結した形状である。膝部駆動リンク補助具接続部J37では、大腿部側補助具43が膝部駆動リンク42Lを挟む。さらに、下腿部側補助具44が、大腿部側補助具43および膝部駆動リンク42Lを挟む。この挟んだ箇所には、下腿部側補助具44、大腿部側補助具43および膝部駆動リンク42Lに、それぞれ貫通穴が設けられる。それらの貫通穴を通る軸部材により、大腿部側補助具43、下腿部側補助具44および膝部駆動リンク42Lは互いに1回転自由度で回転可能である。
下腿部11が膝関節部40の側で曲がる箇所の近くに、下腿部側補助具取付部J38が設けられる。下腿部側補助具取付部J38には、下腿部側補助具44の一端が1回転自由度を有して回転可能に取付けられる。下腿部側補助具取付部J38は、下腿部11および下腿部側補助具44に設けられた貫通穴に回転軸を通した構造である。下腿部側補助具取付部J38により、下腿部側補助具44は、下腿部11に1回転自由度を有して回転可能に取付けられる。
図66は、左の膝関節部40を動かす可変長リンクの配置を説明する斜視図である。膝関節部40、膝部駆動リンク取付部J35および大腿部側補助具取付部J36は、大腿部10に固定されており、互いの相対的な位置関係は固定である。下腿部側補助具取付部J38は、下腿部11に固定されている。下腿部側補助具取付部J38は、膝関節部40からの距離が決まっている。膝部駆動リンク補助具接続部J37は、大腿部側補助具取付部J36および下腿部側補助具取付部J38からの距離がそれぞれ決まっている。したがって、膝関節部40の回転角度が決まると、パンタグラフのように大腿部側補助具43と下腿部側補助具44が動き、膝部駆動リンク補助具接続部J37の位置が決まる。逆に、膝部駆動リンク補助具接続部J37の位置が決まると、膝関節部40の回転角度が決まる。
膝部駆動リンク42Lの長さは、膝部駆動リンク取付部J35と膝部駆動リンク補助具接続部J37との間の距離になる。よって、膝部駆動リンク42Lの長さを変えることで、膝関節部40の回転角度を変えることができる。
膝部C8は、膝関節部40、膝部駆動アクチュエータ42、大腿部10の後側に設けられた膝部駆動リンク取付部J35、大腿部側補助具43、大腿部10の後側に設けられた大腿部側補助具取付部J36、下腿部側補助具44、下腿部の後側に設けられた下腿部側補助具取付部J38を有して構成される。膝関節部40は、大腿部10と下腿部11を1回転自由度を有して回転可能に接続する。膝部駆動アクチュエータ42は、長さが変更可能な膝部駆動リンク42Lとモータ42Mを有する。膝部駆動リンク取付部J35には、膝部駆動リンク42の一端が回転可能に取付けられる。大腿部側補助具43には、一端が膝部駆動リンク42Lの他端に回転可能に取付けられる。大腿部側補助具取付部J36には、大腿部側補助具43の他端が回転可能に取付けられる。下腿部側補助具44には、一端が膝部駆動リンク42Lの他端に回転可能に取付けられる。下腿部側補助具取付部J38には、下腿部側補助具44の他端が回転可能に取付けられる。
膝部C8は、股関節部22、膝関節部40および足首関節部41が同一直線上に配置される状態から、大腿部10と下腿部11の間の角度が例えば40度程度まで曲げることができる。
大腿部側補助具43および下腿部側補助具44を有するので、膝部駆動リンク42Lの伸縮による力をパンタグラフのようにして大腿部側補助具取付部J36および下腿部側補助具取付部J38に伝えることができる。そのため、大腿部10と下腿部11とが平行に近くなるほどに膝関節部40を大きく曲げた場合に、膝関節部40を回転させる力を伝えやすくなる。その結果、膝部駆動アクチュエータ42が発生する力が小さくても、膝関節部40の屈伸運動をよりスムーズにできるようになる。
図53から図56、図67から図70を参照して、足部12を下腿部11に対して動かす足首部C9の構造を説明する。図67、図68、図69および図70は、下腿部11から下の部分の正面図、左側面図、背面図および斜視図である。
足首関節部41は、足部12を下腿部11に対して前後および左右の2回転自由度を有して回転可能に接続する2軸ジンバルである。下腿部11の下端には、下腿部11が前後方向に回転できるように左右方向の円柱状の部分が設けられている。下腿部11のこの円柱状の部分を前後回転ヨーク41Aが挟んで回転可能に保持し、下腿部11が前後回転ヨーク41Aに対して前後方向に回転できる。前後回転ヨーク41Aの前後方向の面には円柱状の部分(軸部材)が設けられている。足部10に設けられた左右回転ヨーク41Bが、前後回転ヨーク41Aの軸部材を前後から挟んで回転可能に保持し、下腿部11および前後回転ヨーク41Aが足部12に対して左右方向に回転できる。
足部12は、下腿部外側アクチュエータ45および下腿部内側アクチュエータ46により、足首関節部41の回りを前後および左右の2回転自由度で回転できる。板状の下腿部11の左右の面に、下腿部外側リンク45L、下腿部内側リンク46Lの一端を2回転自由度を有して回転可能に取付ける下腿部外側リンク取付部J39、下腿部内側リンク取付部J40が設けられる。下腿部外側リンク取付部J39は、回転部材、ヨーク、軸部材が下腿11側に設けられており、下腿部外側リンク45Lの一端に設けられた円筒の中に軸部材が入る構造である。下腿部内側リンク取付部J40も同様な構造である。
下腿部外側アクチュエータ45は、足部12の側でモータ45Mからの力がギヤで下腿部外側リンク45Lに伝えられる構造である。下腿部内側アクチュエータ46も、同様な構造である。
足部12の後部の左右の位置に、下腿部外側リンク45L、下腿部内側リンク46Lのもう一端をそれぞれ2回転自由度を有して回転可能に取付ける足部外側リンク取付部J41、足部内側リンク取付部J42が設けられる。足部外側リンク取付部J41、足部内側リンク取付部J42は、下腿部外側リンク取付部J39、下腿部内側リンク取付部J40と同様な構造の2軸ジンバルである。
足部外側リンク取付部J41と足部内側リンク取付部J42の間隔は、下腿部外側リンク取付部J39と下腿部内側リンク取付部J40の間隔よりも大きい。そうすることで、足首関節部41を左右方向に回転させやすくなる。
足部12は、足首関節部41、足本体部12Aと、足本体部12Aの前側に設けられたつま先部12Bとを有する。足本体部12Aには、足部外側リンク取付部J41および足部内側リンク取付部J42が設けられる。足本体部12Aとつま先部12Bとの間には、つま先関節部12Cが設けられる。つま先関節部12Cにより、つま先部12Bの足本体部12Aに対する上下方向の角度を変更できる。つま先部12Bと足本体部12Aとの間には図示しないバネが設けられており、つま先部12Bを曲げる力が加えられるとつま先部12Bが力に応じて適度に曲がる。
足本体部12Aの後端の中央に、かかと車輪部12Dが設けられる。かかと車輪部12Dは、適度な回転摩擦を有する車輪である。かかと車輪部12Dが有ることで、人型ロボット100が歩く際に、足部12の後側の角(かかと)がなめらかに着地できる。また、かかとの着地を回転しながら知らせるタッチセンサーの役目を、かかと車輪部12Dは有する。つま先関節部12C付近の足部12の側面には、適度な回転摩擦を有する足側面車輪部12Eが設けられる。足側面車輪部12Eは、かかとだけでなく足部12の全体が着地したことを知らせるタッチセンサーの役目を有する。足側面車輪部12Eにより、移動する際につま先部12Bが床または地面と接触していることを回転しながら検出し、その後、離間したことを検出することができる。
図71は、左の足首関節部41を動かす可変長リンクの配置を説明する斜視図である。
足首関節部41、足部外側リンク取付部J41および足部内側リンク取付部J42は足本体部12Aに固定されており、互いの相対的な位置関係は固定である。下腿部外側リンク取付部J39および下腿部内側リンク取付部J40は、下腿部11に固定されている。足首関節部41、下腿部外側リンク取付部J39および下腿部内側リンク取付部J40は、互いの相対的な位置関係は固定である。下腿部外側リンク45Lと下腿部内側リンク46Lは、長さが変更可能な可変長リンクである。下腿部外側リンク45Lは、下腿部外側リンク取付部J39と足部外側リンク取付部J41とを結ぶ。下腿部内側リンク46Lは、下腿部内側リンク取付部J40と足部内側リンク取付部J42とを結ぶ。下腿部外側リンク45Lおよび下腿部内側リンク46Lの長さを変更すると、下腿部41の足本体部12Aに対する接続角度を、X軸回りおよびY軸回りに変更することができる。足首関節部41のX軸回りの回転角度をαm、Y軸回りの回転角度をβmとする。
足首部C9は、足首関節部41、下腿部外側アクチュエータ45および下腿部内側アクチュエータ46を有する。足首関節部41は、下腿部11の下部と足部12を少なくとも2回転自由度を有して回転可能に接続する。下腿部外側アクチュエータ45および下腿部内側アクチュエータ46は、下腿部外側リンク45Lおよび下腿部内側リンク46Lと、モータ45Mおよびモータ46Mをそれぞれ有する2本の足首部アクチュエータである。
足首部C9は、さらに、下腿部外側リンク取付部J39および下腿部内側リンク取付部J40、足部外側リンク取付部J41および足部内側リンク取付部J42を有する。下腿部外側リンク取付部J39および下腿部内側リンク取付部J40は、下腿部外側リンク45Lおよび下腿部内側リンク46Lの一端がそれぞれ回転可能に取付けられる下腿部11に設けられた2個の下腿部側リンク取付部である。足部外側リンク取付部J41および足部内側リンク取付部J42は、下腿部外側リンク45Lおよび下腿部内側リンク46Lの一端がそれぞれ回転可能に取付けられる2個の足部側リンク取付部である。足部外側リンク取付部J41および足部内側リンク取付部J42は、足首関節部41よりも後の位置で足本体部12Aに設けられる。
足首部C9は、足首関節部41を、足首関節部41と膝関節部40を結ぶ直線が足部12に対して例えば前方60度程度から後方30度程度の角度をなす範囲で回転させることができ、左右方向には例えば15度程度傾けることができる。
下腿部外側リンク45Lおよび下腿部内側リンク46Lを両方とも長くすると、下腿部41を前に傾けることができる。下腿部外側リンク45Lおよび下腿部内側リンク46Lを両方とも短くすると、下腿部41を後に傾けることができる。下腿部外側リンク45Lを長くし、下腿部内側リンク46L短くすると、下腿部41を内側に傾けることができる。下腿部外側リンク45Lを短くし、下腿部内側リンク46L長くすると、下腿部41を外側に傾けることができる。
図72から図79を参照して、手部9の構造を説明する。図72は、左の手部9を手の平側から見た斜視図である。図73は、左の手部9を手の甲側から見た斜視図である。図74、図75、図76、および図77は、左の手部9の正面図、対向可能指部97が存在する側から見た側面図、裏面図、および対向可能指部97が存在しない側から見た側面図である。図78は、左の手部9を指先側から見た図である。図79は、左の手部9の第2指部94を断面で表示した図である。
手首板部91に掌板部92を取付ける手部取付部98は、図74および図79から分るように、取付板部98Aと掌板接続部98Bとが、横から見るとL字状に接続した部材である。取付板部98Aは、手首板部91に接続する。掌板接続部98Bには、掌板部92が接続される。取付板部98Aと向き合う掌板部92の辺に、第1指部93、第2指部94、第3指部95および第4指部96が接続する。基準状態では、第1指部93、第2指部94、第3指部95および第4指部96は、掌板部92と略平行な方向に延在する。第2指部94が手首板部91のほぼ中央に位置する。第1指部93、第2指部94、第3指部95、第4指部96は、根元側よりも先端側の間隔が広くなるように設けられる。図76から分るように、第2指部94は取付板部98Aに対して垂直で、第2指部94の中心と取付板部98Aの中心は一致している。
対向可能指部97は、第1指部93などにほぼ直交する方向に回転可能に、第1指部93などよりも取付板部98Aに近い側かつ第1指部93側の掌板部92に設けられる。掌板部92は、指部が接続する基部である。手部9の基準状態では、掌板部92に垂直な方向から見ると、対向可能指部97は掌板部92と並んで延在する。
第1指部93、第2指部94、第3指部95および第4指部96は、同様な構造である。第1指部93、第2指部94、第3指部95、第4指部96を普通指部と呼ぶ。図において符合が付けやすい第4指部96で、普通指部の構造を説明する。
第4指部96は、掌板部92に近い側から第1指節部96A、第2指節部96Bおよび第3指節部96Cが直列に接続する。掌板部92と第1指節部96Aとの間には、第1指関節部96Dが存在する。第1指関節部96Dは、第1指節部96Aを掌板部92に回転可能に接続する。第1指節部96Aと第2指節部96Bとの間には、第2指関節部96Eが存在する。第2指関節部96Eは、第2指節部96Bを第1指節部96Aに回転可能に接続する。第2指節部96Bと第3指節部96Cとの間には、第3指関節部96Fが存在する。第3指関節部96Fは、第3指節部96Cを第2指節部96Bに回転可能に接続する。第1指関節部96D、第2指関節部96Eおよび第3指関節部96Fの回転軸は、互いに平行である。
掌板部92、第1指節部96A、第2指節部96Bおよび第3指節部96Cの中の隣接する2個に関して、掌板部92に近い側の部材を基部側部材、基部側部材でない側の部材を先端側部材と呼ぶ。第1指関節部96D、第2指関節部96E、第3指関節部96Fは、第1指節部96A、第2指節部96B、第3指節部96Cの何れかである先端側部材を基部側部材に回転可能に接続する3個の指関節部である。
基準状態では、第1指関節部96Dは、掌板部92の裏面側に存在する。図77に示すように、基準状態での手部9を側面から見ると、第1指関節部96D、第2指関節部96E、第3指関節部96Fの回転軸は、取付板部98Aにほぼ垂直な1個の平面上にある。
この平面上または近くを、基準状態で前腕骨部8Bを手部9の方に延長した線が通る。基準状態では、取付板部98Aに対して前腕部7が垂直である。
第1指関節部96Dの回転軸は、掌板部92の裏面側に設けられた指元ヨーク96Gに保持される。第1指関節部96Dの回転軸は、掌板部92から少し外側に出た決められた位置に配置される。指元ヨーク96Gの間には、指部第1モータ96Hが配置される。第1指部モータ96Hの回転軸に直結した第1ウォーム96J(ねじ歯車)が、第1指関節部96Dの回転軸の回りを回転する第1ウォームホイール96K(斜歯歯車)とかみ合う。第1ウォーム96Jは、掌板部92側で第1ウォームホイール96Kとかみ合う。指部第1モータ96Hおよび第1ウォーム96Jは、掌板部92に対して傾斜して設けられる。第1ウォームホイール96Kは第1指節部96Aに取付けられている。第1指部モータ96Hが回転すると、第1ウォーム96Jが回転し、第1ウォームホイール96Kが第1指節部96Aと共に回転する。
第1指関節部96Dは、掌板部92に配置され指部第1モータ96H、指部第1モータ96Hにより回転する第1ウォーム96J、第1ウォーム96Jとかみ合い第1指節部96Aと共に第1指関節部96Dの回転軸の回りを回転する第1ウォームホイール96Kを有するウォームギヤ機構により第1指節部96Aを掌板部92に対して回転させる。
第1指節部96Aは、第1ウォームホイール96Kと共に回転する部材と、第2指関節部96Eの回転軸を保持するヨーク部材とが指先に向かう方向で結合した構造である。第1指節部96Aに、指部第2モータ96Lが取付けられる。指部第2モータ96Lの回転軸に直結した第2ウォーム96Mが、第2指関節部96Eの回転軸の回りを回転する第2ウォームホイール96Nとかみ合う。指部第2モータ96Lおよび第2ウォーム96Mは、第1指節部96Aに対して傾斜して設けられる。第2ウォームホイール96Nは第2指節部96Bに取付けられている。指部第2モータ96Lが回転すると、第2ウォーム96Mが回転し、第2ウォームホイール96Nが第2指節部96Bと共に回転する。
第2指関節部96Eは、第1指節部96Aに配置され指部第2モータ96L、指部第2モータ96Lにより回転する第2ウォーム96M、第2ウォーム96Mとかみ合い第2指節部96Bと共に第2指関節部96Eの回転軸の回りを回転する第2ウォームホイール96Nを有するウォームギヤ機構により第2指節部96Bを第1指節部96Aに対して回転させる。
第1指関節部96Dと第2指関節部96Eは、それぞれ別のモータにより駆動されるので、第1指関節部96Dの回転角度と第2指関節部96Eの回転角度は独立に決めることができる。
基準状態において、第1指関節部96Dが第1指節部96Aを回転させる方向、第2指関節部96Eが第2指節部96Bを回転させる方向、第3指関節部96Fが第3指節部96Cを回転させる方向は、すべて手の平側に向かう方向である。
指部第1モータ96Hおよび第1ウォーム96Jを掌板部92に対して傾斜して設けることで、掌板部92を小さくすることができる。指部第2モータ96Lおよび第2ウォーム96Mを第1指節部96Aに対して傾斜して設けることで、第1指節部96Aを短くすることができる。その結果、手部9を人の手と同程度の大きさにできる。
第1指節部96Aは、ウォームギヤ機構を有する第1指関節部96Dにより掌板部92に対して回転し、かつウォームギヤ機構を有する第2指関節部96Eにより第2指節部96Bと回転可能に接続する。このように、手部9では、4本の普通指部では手の平側から2個の指関節部である第1指関節部と第2指関節部にウォームギヤ機構を適用している。
図79を参照して、第3指関節部94Fを回転させる機構を説明する。第3指関節部94Fには、第3指節駆動歯車94Pが設けられる。第3指節駆動歯車94Pは、第3指節部94Cと共に回転する。第2指節部94Bには、3個のアイドラギヤ94Q、94R、94Sが設けられる。3個のアイドラギヤ94Q、94R、94Sは、第2ウォームホイール94Nの回転を第3指節駆動歯車94Pに伝える。アイドラギヤ94Qは第2ウォームホイール94Nとかみ合い、第2ウォームホイール94Nが回転すると、反対方向に回転する。アイドラギヤ94Rはアイドラギヤ94Qとかみ合い、アイドラギヤ94Qが回転すると、反対方向に回転する。アイドラギヤ94Sはアイドラギヤ94Rとかみ合い、アイドラギヤ94Rが回転すると、反対方向に回転する。第3指節駆動歯車94Pはアイドラギヤ94Sとかみ合い、アイドラギヤ94Sが回転すると、反対方向に回転する。アイドラギヤ94Q、94R、94Sが3個と奇数個なので、第2ウォームホイール94Nが回転すると、第3指節駆動歯車94Pが同じ方向に回転する。
アイドラギヤ94Q、94R、94Sは、第2指関節部94Eが有する第2ウォームホイール94Nにより駆動される奇数個の回転軸で回転する歯車である。第3指節駆動歯車94Pは、アイドラギヤ94Q、94R、94Sにより駆動される第3指関節部94Fに設けられた歯車である。第2ウォームホイール94Nは、第2指関節部94Eの回転と連動して回転する歯車である。
第2ウォームホイール94N、アイドラギヤ94Q、94R、94S、第3指節駆動歯車94Pのギヤ比は、第2ウォームホイール94Nの回転角度φ2と第3指節駆動歯車94Pの回転角度φ3が同じになるように決めている。つまり、φ3のφ2に対する比の値f=φ3/φ2を、f=1としている。第2ウォームホイール94Nすなわち第2指節部94Bの回転角度φ2に対する第3指節駆動歯車94Pすなわち第3指節部94Cの回転角度φ3の比の値f=φ3/φ2は、1に近い適切な値であればよい。
第3指関節部を第2指関節部に連動させて回転させることで、1本の指部あたり2個のモータで3個の指関節部を回転させることができる。第2指関節部を曲げないで第3指関節部だけを曲げるような動作をする必要がある場合はほとんどないので、手部9を使用する上で問題にはならない。なお、第3指関節部も、第1指関節部および第2指関節部と同様にウォームギヤ機構で回転させるようにしてもよい。ある指では第3指関節部を第2指関節部に連動させて回転させ、別の指では第3指関節部をウォームギヤ機構で回転させるようにしてもよい。
対向可能指部97の構造を説明する。図76に示すように、対向可能指部97の第1指関節部97Dの回転軸を保持する指元ヨーク97Gは、第2指部94とほぼ直交する方向で掌板部92の裏面側の取付板部98Aに近い位置に設けられる。指元ヨーク97Gの間には、指部第1モータ97Hが配置される。第1指部モータ97Hの回転軸に直結した第1ウォーム97Jが、第1指関節部97Dの回転軸の回りを回転する第1ウォームホイール97Kとかみ合う。第1ウォームホイール97Kは第2指節部97Bに取付けられている。第1指部モータ97Hが回転すると、第1ウォームホイール97Kが第1指節部97Aと共に回転する。第1指節部97Aが回転すると、第1指部93などと対向する位置に第2指節部97Bおよび第3指節部97Cが移動する。
対向可能指部97の第1指節部97Aは、第1ウォームホイール97Kと共に回転する第1指節元部97T、第1指節元部97Tの回転方向と約70度の角度を有する方向を向いた第1指節先部97Uとを有する。なお、第1指節先部97Uが向く方向は、第1指節部93Aなどが向く方向と略平行である。第1指節元部97Tの第1指関節部97Dに接続する側とは反対側の端は平板状になっている。第1指節元部97Tの平板状の部分に、第1指節先部97Uが結合する。第1指節先部97Uには、指部第2モータ97Hが配置され、第2指関節部93Eの回転軸を保持するヨーク部材が設けられる。
対向可能指部97では、第1指関節部97Dが第1指節部97Aを回転させる方向が、第2指関節部97Eが第2指節部97Bを回転させる方向とは異なる。対向可能指部97の第2指関節部97Eから指先側の構造は、第1指部93などと同様である。
手部9では、指関節部を駆動するためのすべての機構が手部9の内部に設けられている。そのため、手部9だけを取外してメンテナンスや故障の修理などができる。
動作を説明する。人型ロボット100の姿勢は、胸部内関節部16、胸腰部関節部18、肩関節部13、肘関節部31、手首関節部36、股関節部22、膝関節部40、足首関節部41、首関節部27がとる角度により決まる。これらの関節部の角度は、その関節部を駆動するリンクの長さにより決まる。人型ロボット100の各関節部を駆動するリンクを、指定された姿勢をとることができる各関節部の角度である指定角度から決まる値になるようにすることで、人型ロボット100が指定された姿勢をとることができる。人型ロボット100が動く場合も、姿勢の変化に対応する指定角度の時系列をリンクの長さの時系列に変換して、リンクの長さを決められた時系列に応じて変化させることで、指定されたように人型ロボット100を動かすことができる。
各関節部について、その関節部が指定角度をとることができるような可変長リンクの長さの決め方、およびリニアガイドではリンク取付部の位置の決め方を説明する。なお、指定角度は、その関節部の可動範囲内であることが必要である。まず、胸部内関節部16と胸腰部関節部18について説明する。なお、胸腰部関節部18は、胸下部5Dの腰部6に対する接続方向を変更する。胸部内関節部16は、胸上部5Uの胸下部5Dに対する接続方向を変更する。
胸部内関節部16と胸腰部関節部18での関節部およびリンク取付部の間隔を、以下の変数により表現する。図80は、胸部内関節部と胸腰部関節部での関節部およびリンク取付部の間隔を表現する変数を説明する図である。
まず、各点の位置を表す変数を以下のように定義する。
P0s:胸腰部関節部18の位置。
P1s:腰側中央リンク取付部J10の位置。
P2s:腰側右リンク取付部J8の位置。
P3s:腰側左リンク取付部J9の位置。
P4s:胸側中央リンク取付部J5の位置。
P4s0:胸側中央リンク取付部J5の基準状態での位置。
P5s:胸側右リンク取付部J6の位置。
P5s0:胸側右リンク取付部J6の基準状態での位置。
P6s:胸側左リンク取付部J7の位置。
P6s0:胸側左リンク取付部J7の基準状態での位置。
P0As:胸腰部関節部18の位置を3点P4s、P5s、P6sで決まる平面に投影した位置。
P7s:胸部内関節部16の位置。
P7s0:胸部内関節部16の基準状態での位置。
P8s:下側胸部内リンク取付部J3の位置。
P8s0:下側胸部内リンク取付部J3の基準状態での位置。
P9s:上側胸部内リンク取付部J4の位置。
P9s0:上側胸部内リンク取付部J4の基準状態での位置。
各点の間隔を、以下の変数で表現する。
Ws1:線分P0sP1s、線分P0sP2sのX軸に投影した長さ。
Ds1:線分P0sP1sのY軸に投影した長さ。
Ds2:線分P0sP2s、線分P0sP3sのY軸に投影した長さ。
Ws2:線分P0As0P5s0、線分PoAs0P6s0のX軸に投影した長さ。
Ds3:線分P0AsP4s0のY軸に投影した長さ。
Ds4:線分P0AsP5s0、線分P0AsP6s0のY軸に投影した長さ。
Ds5:線分P7s0P8s0、線分P7s0P9s0のY軸に投影した長さ。
Hs1:線分P0sP7sの長さ。3点P4s、P5s、P6sで決まる平面と点P0sの距離。
Hs2:線分P0sP1s、線分P0sP2s、線分P0sP3sのZ軸に投影した長さ。
Hs3:線分P7s0P8s0のZ軸に投影した長さ。
Hs4:線分P7s0P9s0のZ軸に投影した長さ。
上で定義した変数を使用することにより、各点の座標は以下のように表される。ここで、胸腰部関節部18の位置P0sを、座標の原点とする。
P0s=(0,0,0)
P1s=(0,Ds1,-Hs2)
P2s=(Ws1,Ds2,-Hs2)
P3s=(-Ws1,Ds2,-Hs2)
P4s0=(0,Ds3,Hs1)
P5s0=(Ws2,-Ds4,Hs1)
P6s0=(-Ws2,-Ds4,Hs1)
P7s0=(0,0,Hs1)
P8s0=(0,-Ds5,Hs1-Hs3)
P9s0=(0,-Ds5,Hs1+Hs3)
胸腰部関節部18および胸部内関節部16の回転角度を、以下の変数で表現する。
αs:胸腰部関節部18のX軸回りの回転角。基準状態でαs=0
βs:胸腰部関節部18のY軸回りの回転角。基準状態でβs=0
γs:胸腰部関節部18のZ軸回りの回転角。基準状態でγs=0
[Rs]:胸腰部関節部18の回転行列。
ψ:胸部内関節部16のX軸回りの回転角。基準状態でψ=0
[Rs2]:胸部内関節部16の回転行列。
胸腰部関節部18の回転行列[Rs]は、以下のようになる。
胸部内関節部16の回転行列[Rs2]は、以下のようになる。
胸下部5Dに存在する任意の点PDの基準状態での位置を点PD0とすると、胸腰部関節部18での回転後の点PDの位置は、以下のように表現できる。
PD=[Rs]*PD0
胸上部5Uに存在する任意の点PUの基準状態での位置を点PU0とすると、胸部内関節部16および胸腰部関節部18での回転後の点PUの位置は、以下のように表現できる。
PU=[Rs]*([Rs2]*(PU0-P7s0)+P7s0)
リンクの長さを、以下の変数で表現する。
L1s:胸腰部中央リンク19Lの長さ。線分P1sP4sの長さ。
L2s:胸腰部右リンク20Lの長さ。線分P2sP5sの長さ。
L3s:胸腰部左リンク21Lの長さ。線分P3sP6sの長さ。
L1s0:基準状態での胸腰部中央リンク19Lの長さ。線分P1sP4s0の長さ。
L2s0:基準状態での胸腰部右リンク20Lの長さ。線分P2sP5s0の長さ。
L3s0:基準状態での胸腰部左リンク21Lの長さ。線分P3sP6s0の長さ。
L4s:胸部内リンク17Lの長さ。線分P8sP9sの長さ。
まず、基準状態で、胸部内関節部16を指定された角度ψにするための胸部内リンク17Lの長さL4sの求め方を説明する。胸上部5Uに存在する上側胸部内リンク取付部J4の位置P9sは、以下のようになる。
P9s=(x9s,y9s,z9s)
=[Rs2]*(0,-Ds5,Hs4)t+(0,0,Hs1)
変数ごとに表現すると、以下となる。
x9s=0
y9s=-Ds5*cosψ-Hs4*sinψ
z9s=-Ds5*sinψ+Hs4*cosψ+Hs1
胸下部5Dに存在する下側胸部内リンク取付部J3の位置P8sは、胸部内関節部16での回転では変化しない。そのため、位置P8sは、基準状態での位置P8s0である。胸部内リンク17Lの長さL4sは、以下で計算できる。
L4s=√((Ds5*(1-cosψ)-Hs4*sinψ)2
+(-Ds5*sinψ+Hs4*cosψ+Hs3)2)
胸下部5Dに存在する3点の位置P4s、P5s、P8sは、胸腰部関節部18での回転により、以下のようになる。
P4s=(x4s,y4s,z4s)
=[Rs]*P4s0=[Rs]*(0,Ds3,Hs1)t
P5s=(x5s,y5s,z5s)
=[Rs]*P5s0=[Rs]*(Ws2,-Ds4,Hs1)t
P6s=(x6s,y6s,z6s)
=[Rs]*P6s0=[Rs]*(-Ws2,-Ds4,Hs1)t
P4s、P5s、P6sが求められたので、リンクの長さL1s、L2s、L3sは以下の式で計算できる。
L1s=√(x4s2+(y4s-Ds1)2+(z4s+Hs2)2)
L2s=√((x5s-Ws1)2+(y5s-Ds2)2+(z5s+Hs2)2)
L3s=√((x6s+Ws1)2+(y6s-Ds2)2+(z5s+Hs2)2)
L1s0=√((Ds3-Ds1)2+(Hs1+Hs2)2)
L2s0=√((Ws2-Ws1)2+(Ds2+Ds4)2+(Hs1+Hs2)2)
L3s0=√((Ws2-Ws1)2+(Ds2+Ds4)2+(Hs1+Hs2)2)
基準状態からZ軸回りに微小に回転させた場合に、各リンクの長さがどのように変化するかを考察する。P4s、P5s、P6sは以下のようになる。ここで、γsが微小として、sinγs≒γs、cosγs≒1で近似する。
P4s=(x4s,y4s,z4s)
=(-Ds3*sinγs,Ds3*cosγs,Hs1)
≒(-Ds3*γs,Ds3,Hs1)
P5s=(x5s,y5s,z5s)
=(Ws2*cosγs+Ds4*sinγs,
Ws2*sinγs-Ds4*cosγs,Hs1)
≒(Ws2+Ds4*γs, Ws2*γs-Ds3, Hs1)
P6s=(x6s,y6s,z6s)
=(-Ws2*cosγs+Ds4*sinγs,
-Ws2*sinγs-Ds4*cosγs,Hs1)
≒(-Ws2-Ds4*γs, -Ws2*γs-Ds4, Hs1)
リンクの長さを計算すると、以下のようになる。
L1s=√((Ds3*γs)2+(Ds3-Ds1)2+(Hs1+Hs2)2)
L2s=√((Ws2-Ws1-Ds4*γs)2+(Ds2+Ds4-Ws2*γs)2
+(Hs1+Hs2)2)
L3s=√((Ws2-Ws1+Ds4*γs)2+(Ds2+Ds4+Ws2*γs)2
+(Hs1+Hs2)2)
基準状態でのリンクの長さとの差を求めると、以下のようになる。ここで、γs>0とする。
L1s 2 -L1s0 2=(Ds2*γs)2>0
L2s 2 -L2s0 2=(Ws2-Ws1-Ds4*γs)2-(Ws2-Ws1)2
+(Ds2+Ds4-Ws2*γs)2-(Ds2+Ds4)2<0
L3s 2 -L3s0 2=(Ws2-Ws1+Ds4*γs)2-(Ws2-Ws1)2
+(Ds2+Ds4+Ws2*γs)2-(Ds2+Ds4)2>0
基準状態では、胸腰部右リンク20Lの長さL2s、胸腰部左リンク21Lの長さL3sのどちらか一方が長くなり、他方が短くなることが分る。したがって、捻り軸の回りに回転する際に、伸びるリンクにより押される力と、短くなるリンクにより引かれる力の両方が発生して、捻り軸の回りに回転しやすくなる。
肩関節部13に関して、指定角度をとることができるような可変長リンクの長さの決め方を説明する。肩関節部13での関節部およびリンク取付部の間隔を、以下の変数により定義する。図81は、肩関節部13での関節部およびリンク取付部の間隔を表現する変数を説明する図である。なお、Q1tとQ2tは、図82に示す。
まず、各点の位置を表す変数を以下のように定義する。
P0t:肩関節部13の位置。
P1t:胸部側主リンク取付部J1の位置。
P2t:胸部側補助リンク取付部J2の位置。
Q1t:上腕部主リンク取付部J20の位置。Q1t=(x1t,y1t,z1t)
Q1t0:上腕部主リンク取付部J20の基準状態での位置。
Q2t:上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21の位置。Q2t=(x2t,y2t,z2t)
Q2t0:上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21の基準状態での位置。
各点の間隔を、以下の変数で表現する。なお、K1tとK2tは、図82に示す。
Wt1:線分P0tP1t、線分P0tP2tのX軸に投影した長さ。
Dt1:線分P0tP1tのY軸に投影した長さ。
Dt2:線分P0tP2tのY軸に投影した長さ。
Ht1:線分P0tP1t、線分P0tP2tのZ軸に投影した長さ。
K1t:線分P0tQ1tの長さ。
K2t:線分Q1tQ2tの長さ。
上で定義した変数を使用することにより、各点の座標は以下のように表される。ここで、肩関節部13の位置P0tを、座標の原点とする。
P0t=(0,0,0)
P1t=(-Wt1,-Dt1,-Ht1)
P2t=(-Wt1,Dt2,-Ht1)
Q1t0=(0,0,-K1t)
肩関節部13の回転角度を、以下の変数で表現する。
αt:肩関節部13のX軸回りの回転角。基準状態でαt=0
βt:肩関節部13のY軸回りの回転角。基準状態でβt=0
[Rt]:肩関節部13の回転行列。
回転行列[Rt]は、以下のようになる。
リンクの長さを、以下の変数で表現する。
L1t:上腕部駆動主リンク14Lの長さ。線分P1tQ1tの長さ。
L2t:上腕部駆動補助リンク15Lの長さ。線分P2tQ2tの長さ。
肩関節部13では、上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21が上腕部駆動主リンク14L上にあるので、上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21の位置Q2tは、以下を満足する必要がある。
Q2t=(K2t/L1t)*P1t+(1−K2t/L1t)*Q1t
また、リンク取付部の間隔に関して、以下の制約条件が成立する必要がある。
√(x1t2+y1t2+z1t2)=K1t
肩関節部13の角度行列[Rt]を用いて、上腕部側主リンク取付部J20の位置Q1tを以下のようにして求める。
Q1t=[Rt]*Q1t0
この式を変数ごとに表現すると、以下のようになる。
x1t=K1t*cosαt*sinβt
y1t=−K1t*sinαt
z1t=−K1t*cosαt*cosβt
位置Q1tが求められると、以下の式でL1tが計算できる。
L1t=√((x1t+Wt1)2+(y1t+Dt1)2+(z1t+Ht1)2)
位置Q2tに関する制約式を変数ごとに表現すると、以下のようになる。
x2t=x1t-(x1t+Wt1)*(K1t/L1t)
y2t=y1t-(y1t+Dt1)*(K1t/L1t)
z2t=z1t-(z1t+Ht1)*(K1t/L1t)
位置Q2tが求められると、以下の式でL2tが計算できる。
L2t=√((x2t+Wt1)2+(y2t-Dt2)2+(z2t+Ht1)2)
肘関節部31に関して、指定角度をとることができるような上腕部でのリンク取付部の位置の決め方を説明する。肘関節部31での関節部およびリンク取付部の間隔を、以下の変数により定義する。図82は、肘関節部31での関節部およびリンク取付部の間隔を表現する変数を説明する図である。
まず、各点の位置を表す変数を以下のように定義する。
P0u:肘関節部31の位置。
P1u:上腕部外側リンク取付部J22の位置。
P1u0:上腕部外側リンク取付部J22の基準状態での位置。
P2u:上腕部内側リンク取付部J23の位置。
P2u0:上腕部内側リンク取付部J23の基準状態での位置。
P3u:肘部駆動外側リンク取付部J25の位置。P3u=(x3u,y3u,z3u)
P3u0:肘部駆動外側リンク取付部J25の基準状態での位置。
P4u:肘部駆動内側リンク取付部J24の位置。P4u=(x4u,y4u,z4u)
P4u0:肘部駆動内側リンク取付部J24の基準状態での位置。
各点の間隔を、以下の変数で表現する。
Wu1:線分P0uP1uのX軸に投影した長さ。
Wu2:線分P0uP2uのX軸に投影した長さ。
Du1:線分P0uP1u、線分P0uP2uのY軸に投影した長さ。
Hu1:線分P0uP1u0、線分P0uP2u0のZ軸に投影した長さ。
K1u:線分P0uP4u0のZ軸に投影した長さ。
L1u0:線分P1uP3uの長さ。肘部駆動外側リンク32の長さ。
L2u0:線分P2uP4uの長さ。肘部駆動内側リンク33の長さ。
K2u:線分P3uP4uの長さ。
上で定義した変数を使用することにより、各点の座標は以下のように表される。ここで、肘関節部31の位置P0uを、座標の原点とする。
P0u=(0,0,0)
P1u0=(Wu1,Du1,Hu1)
P2u0=(-Wu2,Du1,Hu1)
P4u0=(0,Du1,-K1u)
上腕部外側アクチュエータ34と上腕部内側アクチュエータ35は、上腕部9(Z軸)に平行に設けられている。上腕部外側アクチュエータ34、上腕部内側アクチュエータ35によりそれぞれ移動される上腕部外側リンク取付部J22、上腕部内側リンク取付部J23の位置P1u、P2uはZ軸に平行な方向に移動する。つまり、P1u、P2uは、以下のように表現できる。
P1u=(Wu1,Du1,z1u)
P2u=(-Wu2,Du1,z2u)
肘部駆動外側リンク32は肘部駆動内側リンク33に取付けられているので、P2u、P3u、P4uは、同一直線上に存在することになる。したがって、以下が成立する。
P3u=(K2u/L2u0)*P2u+(1−K2u/L2u0)*P4u
基準状態でこの式を適用することで、P3u0は以下のようになる。
P3u0=(-(K2u/L2u0)*Wu1,Du1,-(K2u/L2u0)*(Hu1+K1u)-K1u)
固定長である肘部駆動外側リンク32、肘部駆動内側リンク33の長さは、以下のようになる。
L2u0=√(Wu22+(Hu1+K1u)2)
L1u0=√(Wu12+(Hu1+K1u)2
+K2u*(K2u-Hu1-K1u+Wu1)/(Wu12+(Hu1+K1u)2))
肘関節部31の回転角度を、以下の変数で表現する。
αu:肘関節部31のX軸回りの回転角。基準状態でαu=0
γu:肘関節部31のZ軸回りの回転角。基準状態でγu=0
[Ru]:肘関節部31の回転行列。
回転行列[Ru]は、以下のようになる。
[Ru]が与えられると、以下の式で、P4uを求める。
P4u=(x4u,y4u,z4u)=[Ru]*P4u0
=[Ru]*(0,Du1,-K1u)t
L2u0が一定であることから、以下の式で、P4uからz2uを求める。
L2u 2=(x4u+Wu2)2+(y4u-Du1)2+(z4u-z2u)2=L2u0 2
z2u=z4u+√(L2u0 2-(x4u+Wu2)2-(y4u-Du1)2)
P2u、P3u、P4uが同一直線上に存在することを表す制約式を適用して、P2uとP4uからP3uを求める。変数ごとに表現すると、以下のようになる。
x3u=x4u-(Wu1+x4u)*(K2u/L2u0)
y3u=y4u+(Du1-y4u)*(K2u/L2u0)
z3u=z4u+(z2u-z4u)*(K2u/L2u0)
L1u0が一定であることから、以下の式で、P3uからz1uを求める。
L1u 2=(x3u-Wu1)2+(y3u-Du1)2+(z3u-z1u)2=L1u0 2
z1u=z3u+√(L1u0 2-(x3u-Wu1)2-(y3u-Du1)2)
手首関節部36に関して、指定角度をとることができるような可変長リンクの長さの決め方を説明する。手首関節部36での関節部およびリンク取付部の間隔を、以下の変数により定義する。図83は、手首関節部36での関節部およびリンク取付部の間隔を表現する変数を説明する図である。
まず、各点の位置を表す変数を以下のように定義する。
P0v:手首関節部36の位置。
P1v:前腕部正面リンク取付部J26の位置。
P2v:前腕部外側リンク取付部J27の位置。
P3v:前腕部内側リンク取付部J28の位置。
P4v:手部側正面リンク取付部J29の位置。
P4v0:手部側正面リンク取付部J29の基準状態での位置。
P5v:手部側外側リンク取付部J30の位置。
P5v0:手部側外側リンク取付部J30の基準状態での位置。
P6v:手部側内側リンク取付部J31の位置。
P6v0:手部側内側リンク取付部J31の基準状態での位置。
ここで、P0v、P4v、P5vおよびP6vは、同一平面上にある。
各点の間隔を、以下の変数で表現する。
Wv1:線分P0vP1v、線分P0vP2vのX軸に投影した長さ。
Dv1:線分P0vP1vのY軸に投影した長さ。
Hv1:線分P0vP2vの長さ。
Dv2:線分P0vP4vの長さ。
上で定義した変数を使用することにより、各点の座標は以下のように表される。ここで、手首関節部36の位置P0vを、座標の原点とする。
P0v=(0,0,0)
P1v=(0,Dv1,-Hv1)
P2v=(Wv1,0,-Hv1)
P3v=(-Wv1,0,-Hv1)
P4v0=(0,Dv2,0)
P5v0=(Dv2*cos(π/6),-Dv2*sin(π/6),0)
P6v0=(-Dv2*cos(π/6),-Dv2*sin(π/6),0)
手首関節部36の回転角度を、以下の変数で表現する。
αv:手首関節部36のX軸回りの回転角。基準状態でαv=0
βv:手首関節部36のY軸回りの回転角。基準状態でβv=0
γv:手首関節部36のZ軸回りの回転角。基準状態でγv=0
[Rv]:手首関節部36の回転行列。
回転行列[Rv]は、以下のようになる。
リンクの長さを、以下の変数で表現する。
L1v:前腕部正面リンク37Lの長さ。線分P1vP4vの長さ。
L2v:前腕部外側リンク38Lの長さ。線分P2vP4vの長さ。
L3v:前腕部内側リンク39Lの長さ。線分P3vP6vの長さ。
L1v0:基準状態での前腕部正面リンク37Lの長さ。線分P1vP4v0の長さ。
L2v0:基準状態での前腕部外側リンク38Lの長さ。線分P2vP5v0の長さ。
L3v0:基準状態での前腕部内側リンク39Lの長さ。線分P3vP6v0の長さ。
[Rv]が与えられて、以下の式で、P4v、P5v、P6vを求める。
P4v=(x4v,y4v,z4v)
=[Rv]*(0,Dv2,0)t
P5v=(x5v,y5v,z5v)
=[Rv]*(Dv2*cos(π/6),-Dv2*sin(π/6),0)t
P6v=(x6v,y6v,z6v)
=[Rv]*(-Dv2*cos(π/6),-Dv2*sin(π/6),0)t
P4v、P5v、P6vが求められたので、リンクの長さL1v、L2v、L3vは以下の式で計算できる。
L1v=√(x4v2+(Dv1-y4v)2+(Hv1+z4v)2)
L2v=√((Wv1-x5v)2+y5v2+(Hv1+z5v)2)
L3v=√((Wv1+x6v)2+y6v2+(Hv1+z6v)2)
L1v0=√((Dv1-Dv2)2+Hv12)
L2v0=√((Wv1-Dv2*cos(π/6))2+(Dv2*sin(π/6))2+Hv12)
L3v0=√((Wv1-Dv2*cos(π/6))2+(Dv2*sin(π/6))2+Hv12)
基準状態からZ軸回りに微小に回転させた場合に、各リンクの長さがどのように変化するかを考察する。P4v、P5v、P6vは以下のようになる。ここで、γvが微小として、sinγv≒γv、cosγv≒1で近似する。
P4v=(x4v,y4v,z4v)
=(-Dv2*sinγv,Dv2*cosγv,0)
≒(-Dv2*γv,Dv2,0)
P5v=(x5v,y5v,z5v)
=(Dv2*cos(π/6-γv),Dv2*sin(π/6-γv), 0)
≒(Dv2*cos(π/6)+Dv2*sin(π/6)*γv,
Dv2*cos(π/6)*γv-Dv2*sin(π/6),0)
P6v=(x6v,y6v,z6v)
=(-Dv2*cos(π/6+γv),-Dv2*sin(π/6+γv), 0)
≒(-Dv2*cos(π/6)+Dv2*sin(π/6)*γv,
-Dv2*cos(π/6)*γv-Dv2*sin(π/6),0)
リンクの長さを計算すると、以下のようになる。
L1v=√((Dv2*γv)2+(Dv1-Dv2)2+Hv12)
L2v=√((Wv1-Dv2*cos(π/6)-Dv2*sin(π/6)*γv)2
+(Dv2*cos(π/6)*γv-Dv2*sin(π/6))2+Hv12)
L3v=√((Wv1-Dv2*cos(π/6)+sin(π/6)*γv)2
+(Dv2*cos(π/6)*γv+Dv2*sin(π/6))2+Hv12)
基準状態でのリンクの長さとの差を求めると、以下のようになる。ここで、γv>0とする。
L1v 2-L1v0 2=(Dv2*γv)2>0
L2v 2-L2v0 2=(Wv1-Dv2*cos(π/6)-Dv2*sin(π/6)*γv)2
-(Wv1-Dv2*cos(π/6))2
+(Dv2*sin(π/6)-Dv2*cos(π/6)*γv)2
-(Dv2*sin(π/6))2<0
L3v 2-L3v0 2=(Wv1-Dv2*cos(π/6)+Dv2*sin(π/6)*γv)2
-(Wv1-Dv2*cos(π/6))2
+(Dv2*sin(π/6)+Dv2*cos(π/6)*γv)2
-(Dv2*sin(π/6))2>0
基準状態では、前腕部外側リンク38Lの長さL2v、前腕部内側リンク39Lの長さL3vのどちらか一方が長くなり、他方が短くなることが分る。したがって、捻り軸である前腕骨部8Bの回りに回転する際に、伸びるリンクにより押される力と、短くなるリンクにより引かれる力の両方が発生して、捻り軸の回りに回転しやすくなる。
首関節部27も、手首関節部36と同様に、3本の可変長リンクの長さを変更することにより3回転自由度で接続角度を変更する。首関節部27でも、手首関節部36と同様な方法で、決められた接続角度になるような3本の可変長リンクの長さを決めることができる。
足首関節部41に関して、指定角度をとることができるような可変長リンクの長さの決め方を説明する。足首関節部41での関節部およびリンク取付部の間隔を、以下の変数により定義する。図84は、足首関節部41での関節部およびリンク取付部の間隔を表現する変数を説明する図である。
まず、各点の位置を表す変数を以下のように定義する。
P0m:足首関節部41の位置。
P1m:足部外側リンク取付部J41の位置。
P2m:足部内側リンク取付部J42の位置。
P3m:下腿部外側リンク取付部J39の位置。
P3m0:下腿部外側リンク取付部J39の基準状態での位置。
P4m:下腿部内側リンク取付部J40の位置。
P4m0:下腿部内側リンク取付部J40の基準状態での位置。
各点の間隔を、以下の変数で表現する。
Wm1:線分P0mP1m、線分P0mP2mのX軸に投影した長さ。
Wm2:線分P0mP3m0、線分P0mP4m0のX軸に投影した長さ。
Dm1:線分P0mP1m、線分P0mP2mのY軸に投影した長さ。
Dm2:線分P0mP3m0、線分P0mP4m0のY軸に投影した長さ。
Hm1:線分P0mP1m、線分P0mP2mのZ軸に投影した長さ。
Hm2:線分P0mP3m0、線分P0mP4m0のZ軸に投影した長さ。
Dm1:線分P0mP1mのY軸に投影した長さ。
上で定義した変数を使用することにより、各点の座標は以下のように表される。ここで、足首関節部41の位置P0mを、座標の原点とする。
P0m=(0,0,0)
P1m=(Wm1,Dm1,-Hm1)
P2m=(-Wm1,Dm1,-Hm1)
P3m0=(Wm2,-Dm2,Hm2)
P4m0=(-Wm2,-Dm2,Hm2)
足首関節部41の回転角度を、以下の変数で表現する。
αm:足首関節部41のX軸回りの回転角。基準状態でαm=0
βm:足首関節部41のY軸回りの回転角。基準状態でβm=0
[Rm]:足首関節部41の回転行列。
回転行列[Rm]は、以下のようになる。
リンクの長さを、以下の変数で表現する。
L1m:下腿部外側リンク45Lの長さ。線分P1mP3mの長さ。
L2m:下腿部内側リンク46Lの長さ。線分P2mP4mの長さ。
[Rm]が与えられて、以下の式で、P3m、P4mを求める。
P3m=(x3m,y3m,z3m)=[Rm]*(Wm2,-Dm2,Hm2)t
P4m=(x4m,y4m,z4m)=[Rm]*(-Wm2,-Dm2,Hm2)t
P3m、P4mが求められたので、リンクの長さL1m、L2mは以下の式で計算できる。
L1m=√((x3m-Wm1)2+(y3m-Dm1)2+(z3m+Hm1)2)
L2m=√((x4m+Wm1)2+(y4m-Dm1)2+(z4m+Hm2)2)
股関節部22に関して、指定角度をとることができるような可変長リンクの長さの決め方を説明する。股関節部22での関節部およびリンク取付部の間隔を、以下の変数により定義する。図85は、股関節部22での関節部およびリンク取付部の間隔を表現する変数を説明する図である。
まず、各点の位置を表す変数を以下のように定義する。
P0q:股関節部22の位置。
P1q:股部正面リンク取付部J11の位置。
P1q0:股部正面リンク取付部J11の基準状態での位置。
P2q:股部外側リンク取付部J12の位置。
P2q0:股部外側リンク取付部J12の基準状態での位置。
P3q:股部内側リンク取付部J13の位置。
P3q0:股部内側リンク取付部J13の基準状態での位置。
P4q:膝部正面リンク取付部J32の位置。
P5q:膝部外側リンク取付部J33の位置。
P6q:膝部内側リンク取付部J34の位置。
各点の間隔を以下の変数で定義する。なお座標系として、互いに直交するU軸、V軸およびW軸を使用する。UVW座標系は、大腿骨部10Aと共に移動する座標系である。W軸を、大腿骨部10Aが延在する方向とする。U軸を、基準状態でX軸と一致する軸とする。
Wq2:線分P0qP2q0をU軸に投影した長さ。
Wq3:線分P0qP3q0をU軸に投影した長さ。
Dq1:線分P0qP1q0をV軸に投影した長さ。
Dq2:線分P0qP2q0をV軸に投影した長さ。
Dq3:線分P0qP3q0をV軸に投影した長さ。
Dq4:線分P0qP4qをV軸に投影した長さ。
Hq1:線分P0qP1q0をW軸に投影した長さ。
Hq2:線分P0qP2q0をW軸に投影した長さ。
Hq3:線分P0qP3q0をW軸に投影した長さ。
Hq4:線分P0qP4q0、線分P0qP5q0、線分P0qP6q0をW軸に投影した長さ。
上で定義した変数を使用することにより、基準状態での各点の座標はUVW座標系では、以下のように表される。股関節部22の位置を座標の原点とする。
P0q=(0,0,0)
P1q0=(0,-Dq1,Hq1)
P2q0=(Wq2,Dq2,-Hq2)
P3q0=(-Wq3,Dq3,-Hq3)
P4q=(0,-Dq3,-Hq4)
P5q=(Dq4*cos(π/6),Dq4*sin(π/6),-Hq4)
P6q=(-Dq4*cos(π/6),Dq4*sin(π/6),-Hq4)
リンクの長さを以下の変数で表現する。
L1q:大腿部正面リンク23Lの長さ。線分P1qP4qの長さ。
L2q:大腿部外側リンク24Lの長さ。線分P2qP5qの長さ。
L3q:大腿部内側リンク25Lの長さ。線分P3qP6qの長さ。
L1q0:基準状態での大腿部正面リンク23Lの長さ。線分P1q0P4qの長さ。
L2q0:基準状態での大腿部外側リンク24Lの長さ。線分P2q0P5qの長さ。
L3q0:基準状態での大腿部内側リンク25Lの長さ。線分P3q0P6qの長さ。
股関節部22の回転角度を、以下の変数で定義する。
αq:股関節部22のX軸回りの回転角。基準状態でαq=αq0。
βq:股関節部22のY軸回りの回転角。基準状態でβq=0。
γq:股関節部22のY軸回りの回転角。基準状態でγq=0。
[Rq]:股関節部22のUVW座標系での回転行列。
大腿骨部10Aが延在する方向がXYZ座標系で基準状態(αq0,0,0)から(αq,βq,γq)に回転する場合には、XYZ座標系で固定された点は、UVW座標系では(αq0-αq,-βq,-γq)だけ回転することになる。したがって、回転行列Rqは以下のようになる。
XYZ座標系で固定された点P1q、P2q、P3qのUVW座標系での座標は、以下のようになる。大腿骨部10Aと共に移動する点P4q、P5q、P6qは、UVW座標系では座標が変化しない。
P1q=(u1q,v1q,w1q)
=[Rq]*(0,-Dq1,Hq1)t
P2q=(u2q,v2q,w2q)
=[Rq]*(Wq2,Dq2,-Hq2)t
P3q=(u3q,v3q,w3q)
=[Rq]*(-Wq3,Dq3,-Hq3)t
点P1q、P2q、P3qのUVW座標系での座標が求められたので、リンクの長さは以下のようになる。
L1q=√(u1q2+(v1q+Dq4)2+(w1q+Hq4)2)
L2q=√((u2q-Dq4*cos(π/6))2+(v2q-Dq4*sin(π/6))2+(w2q+Hq4)2)
L3q=√((u3q+Dq4*cos(π/6))2+(v3q-Dq4*sin(π/6))2+(w3q+Hq4)2)
基準状態からW軸回りに微小に回転させた場合に、各リンクの長さがどのように変化するかを考察する。点P1q、P2q、P3qは以下のようになる。ここで、γqは微小として、sinγq≒γq、cosγq≒1で近似する。
P1q=(u1q,v1q,w1q)
=(-Dq1*sinγq,-Dq1*cosγq,Hq1)
≒(-Dq1*γq,-Dq1,Hq1)
P2q=(u2q,v2q,w2q)
=(Wq2*cosγq+Dq2*sinγq,-Wq2*sinγq+Dq2*cosγq,-Hq2)
≒(Wq2+Dq2*γq,-Wq2*γq+Dq2,-Hq2)
P3q=(u3q,v3q,w3q)
=(-Wq3*cosγq+Dq3*sinγq,Wq3*sinγq+Dq3*cosγq,-Hq3)
≒(-Wq3+Dq3*γq,Wq3*γq+Dq3,-Hq3)
リンクの長さを計算すると、以下のようになる。
L1q=√((Dq1*γq)2+(-Dq1+Dq4)2+(Hq1+Hq4)2)
L2q=√((Wq2+Dq2*γq-Dq4*cos(π/6))2
+(-Wq2*γq+Dq2-Dq4*sin(π/6))2+(-Hq2+Hq4)2)
L3q=√((-Wq3+Dq3*γq+Dq4*cos(π/6))2
+(Wq3*γq+Dq3-Dq4*sin(π/6))2+(-Hq3+Hq4)2)
基準状態でのリンクの長さとの差を求めると、以下のようになる。
L1q 2−L1q0 2=(Dq1*γq)2>0
L2q 2−L2q0 2=(Wq2+Dq2*γq-Dq4*cos(π/6))2-(Wq2-Dq4*cos(π/6))2
+(-Wq2*γq+Dq2-Dq4*sin(π/6))2-(Dq2-Dq4*sin(π/6))2
=γq*((Dq22+Wq22)*γq+2*(Wq2*sin(π/6)-Dq2*cos(π/6))*Dq4)
L3q 2−L3q0 2=(-Wq3+Dq3*γq+Dq4*cos(π/6))2-(-Wq3+Dq4*cos(π/6))2
+(Wq3*γq+Dq3-Dq4*sin(π/6))2-(Dq3-Dq4*sin(π/6))2
=γq*((Dq32+Wq32)*γq-2*(Wq3*sin(π/6)-Dq3*cos(π/6))*Dq4)
上に示す式から、Wq2*sin(π/6)-Dq2*cos(π/6)>0、かつWq3*sin(π/6)-Dq3*cos(π/6)>0が成立する場合、あるいは、Wq2*sin(π/6)-Dq2*cos(π/6)<0、かつWq3*sin(π/6)-Dq3*cos(π/6)<0が成立する場合には、基準状態からW軸回りに微小角度回転すると、大腿部外側リンク24Lの長さL2q、大腿部内側リンク25Lの長さL3qのどちらか一方が長くなり、他方が短くなることが分かる。図85に示すように、線分P0qP2q0がV軸となす角度と線分P0qP3q0がV軸となす角度は、どちらもπ/6(=60度)より大きい。つまり、Wq2*sin(π/6)-Dq2*cos(π/6)>0、かつWq3*sin(π/6)-Dq3*cos(π/6)>0が成立する。股関節部22では、基準状態からW軸回りに微小角度回転する場合に、大腿部外側リンク24Lの長さL2q、大腿部内側リンク25Lの長さL3qのどちらか一方が長くなり、他方が短くなることが分かる。
膝関節部40に関して、指定角度をとることができるような膝部駆動リンク42Lの長さの決め方を説明する。膝関節部40、膝部駆動リンク取付部J35、大腿部側補助具取付部J36の位置は、大腿骨部10Aに対して決まっている。膝関節部40の角度αnが決まると、下腿部側補助具取付部J38の位置が決まる。大腿部側補助具43と下腿部側補助具44の長さは固定なので、下腿部側補助具取付部J38の位置が決まると、膝部駆動リンク補助具接続部J37の位置が決まる。膝部駆動リンク42Lの長さを、決まった膝部駆動リンク補助具接続部J37と膝部駆動リンク取付部J35との距離にすれば、膝関節部40を指定した角度αnにすることができる。
手部9は、各指部の第1指関節部、第2指関節部が指定された角度になるように、各指関節部のウォームギヤが指定された角度に対応する位置になるように、モータが駆動される。対向可能指部97が普通指部と対向でき、第1指関節部だけを曲げることができるので、指部を伸ばして薄い紙などを挟んで持つことができる。対向可能指部97を持たず、あらかじめ対向するように指部を配置してもよい。指部は5本でなくてもよく、少なくとも3本を有すればよい。手部9のように、1本の対向可能指部と4本の普通指部を有する方が、物を掴む、ボタンを押す、レバーを操作するなど人と同様な動作をする上で有利である。
人型ロボット100では、各関節部をアクチュエータの伸縮により駆動する方式としている。そのため、関節部に減速機(ギヤ)を配置するする必要がなく、関節部をコンパクトにできる。関節部にギヤを配置すると、ギヤに大きなスペースが必要になり関節部が大きくなる。関節部にギヤを配置する人型ロボットで、大きな力を出そうとすると大きな関節部となって、人型ロボットとしての外観から離れていき、いびつさが感じられる外観となる可能性が考えられる。人型ロボット100では関節部がコンパクトなので、人型ロボットの外観をより自然に人間に近づけることができる。関節部を人間の関節と同様な次数の回転自由度を持たせているので、人と同様な動作をすることができる。
既に開発されている人型ロボット(ヒューマノイドロボット)は、関節部の曲げ剛性が十分でないものや、実運用する上で必要となる推力または剛性が十分でないという課題が残っていると思われる。この発明に係る人型ロボットは、これらの課題の解決策の一つになると考えられる。
ねじ棒とナットによるアクチュエータを使用しているので、ねじ部の逆効率が大きくなり、静止状態での関節部の把持力が大きくなる。ねじ部での摩擦に相当する力以下の大きさの力が、アクチュエータで駆動される部材を動かそうとして外部から作用する場合も、関節部は動かない。摩擦に相当する力よりも大きい力が外部から作用する場合は、ねじ部が動きを弱めるダンパとして働きながら関節部が外力により動かされる。減衰作用(ダンピング作用)を有するので、外力や外乱に対するロバスト性が向上する。
手部9は、親指に相当する対向可能指部97を有する。対向可能指部97を4本の普通指部93、94、95、96と対向させることができ、対向可能指部97と普通指部93、94、95、96とで物を掴むことができる。各指関節部は、ウォームとウォームホイールを使用するウォームギヤ機構で駆動するようにしたので、指曲げの力を大きくすることができる。
第1指関節部および第2指関節部をそれぞれウォームギヤ機構で駆動するので、第1指関節部と第2指関節部のどちらか一方だけを曲げたり、両方を曲げたりできる。そのため、手部9が持つ物体の形状に合わせて各指部の各指関節部を適切に曲げてよりフィットした状態で物体を保持できる。また、電源供給が遮断された場合にも、ウォームギヤ機構により把持力を維持できる。
モータが駆動力を発生させない場合に、指関節部は回転しない。その理由は、ウォームギヤ機構の逆効率が大きく、ウォームギヤ機構での摩擦力などが指関節部に作用する外力よりも大きいからである。ウォームギヤ機構で移動される側の部材に外部から移動させる力が作用しても、その力の大きさがウォームギヤ機構での摩擦力以下である場合は、指関節部は回転しない。指関節部にさらに大きな力が働く場合は、ウォームギヤ機構が動きを弱めるダンパとして働きながら指関節部は回転する。そのため、手部が物体を持った状態でロボットが例えば上腕部を動かすなどの動作をしても、上腕部の運動により物体に働く力の反力を手部の指関節部が出すことができ、物体を手に保持したままにできる。モータが駆動力を発生させない場合に指関節部が動く力の大きさは、1人または複数人の人間が出せる力とする。そうすることで、電力供給が遮断された災害時などに、例えば人型ロボットが保持している物体を手部から離すことができる。
この発明に係る人型ロボットは、人に近い動きを可能とする構造を有するものである。そのため、人型ロボットが通常の人の作業を代替することが可能となる。人工知能が搭載されれば、あるいは人により遠隔操作されることで、産業上、高齢化社会、労働力不足の解消に利用可能と判断される。特に、長時間作業が厳しい環境(放射線環境、高温環境、低温環境、宇宙環境等)下、危険が伴う作業や単純作業での労働力不足の解消に利用可能と推測される。
3回転自由度接続機構は、胸屈曲部C1、肩部C4、肘部C5、膝部C8、足首部C9で使用してもよい。3回転自由度接続機構は、胴体屈曲部C2、首部C3、手首部C6、股部C7のすべてではなく、胴体屈曲部C2、首部C3、手首部C6、股部C7、胸屈曲部C1、肩部C4、肘部C5、膝部C8、足首部C9の少なくとも一つで使用してもよい。
人型ロボットは、胸部、頭部および上肢部だけを備えるものでもよい。人型ロボットは、腰部、胸部、頭部および上肢部だけを備えるものでもよい。人型ロボットは、腰部および下肢部だけを備えるものでもよい。人型ロボットは、頭部を備えなくてもよい。そのような人型ロボットが有する少なくとも一つの関節部に、3回転自由度接続機構を使用してもよい。腰部を有せず上肢部を有する人型ロボットでは、手部から遠い側を第1部材とする。
人型ロボットではなく、手部と、手部から直列に接続された1個または複数個の腕区間部とを有するロボットアームに、この発明に係る3回転自由度接続機構を適用してもよい。手部および腕区間部の何れかを第2部材として、手部から遠い側の第1部材に第2部材を3回転自由度を有して回転可能に接続するように、3回転自由度接続機構を使用すればよい。そのようなロボットアームは、手部を適切な位置に適切な角度で向けることができる。
この発明に係る手部は、手部だけをロボットハンドとして使用することもできる。また、この実施の形態1とは異なる手部を使用してもよい。
関節部およびリンク取付部に2回転自由度を持たせる2軸ジンバルは、実施の形態で示したものとは異なる構造のものを使用してもよい。関節部およびリンク取付部が適用される箇所に応じて、適切なものを使用すればよい。
実施の形態1での胴体屈曲部、胸屈曲部、首部、肩部、肘部、手首部、股部、膝部、足首部が有する各特徴は、3回転自由度接続機構を有さない人型ロボットにも適用できる。
アクチュエータは、ねじ棒などを使用するスクリュー系のものでなくてもよく、油圧を利用するものなどでもよい。2点間の距離を変更し維持できるものであれば、アクチュエータはどのような構成のものでもよい。アクチュエータで、モータの回転をねじ棒に伝える機構は、ギヤ、タイミングベルトなど適切なものを使用すればよい。
対向可能指部は、掌板部の側面の位置から掌板部と交差して普通指部と対向する位置に移動可能であり、かつ普通指部と同様に3個の指関節部を持たせるようにしてもよい。そのためには、対向可能指部が、第4指節部と、第4指節部を第3指節部に回転可能に接続する第4指関節部をさらに有する。そして、第3指関節部は、ウォームギヤ機構により第3指節部を第2指節部に対して回転させるようにする。第4指関節部は、第3指関節部と連動して回転してもよいし、第3指関節部とは独立に回転してもよい。手部が、常に普通指部と対向する位置に存在する指部を備えてもよい。普通指部とは異なる方向に曲げられる指部を手部が、備えてもよい。
人型ロボット、ロボットアーム、ロボットハンドは、遠隔操作される。また、ロボットに自動動作するプログラムを持たせ、プログラムにしたがって自律動作させてもよい。自律動作中でも、外部からロボットの動きを止めることを可能にする。また、自律動作から遠隔操作への切替も可能にする。ロボットを自律動作中にロボットが人などの生物あるいは想定外の物体と接触する場合は、ロボットが自動で検知して動きを止める機能をロボットに持たせる。
以上のことは、他の実施の形態でもあてはまる。
実施の形態2.
実施の形態2は、油圧機構を可変長リンクに使用した場合である。人型ロボット100Zは、油圧機構を使用したアクチュエータを有する。各アクチュエータの駆動源は電気モータを使用し、油圧ポンプをモータで駆動し、油圧シリンダ内部の軸方向にピストンを移動させる構成である。ねじ機構を電気モータで駆動する場合の制御の方法を、油圧機構を利用する場合もそのまま利用できる。図86は、実施の形態2に係る人型ロボットが有するアクチュエータが有する可変長リンクの構造を説明する断面図である。
胸腰部中央アクチュエータ19Zを例にして、油圧機構を使用するアクチュエータの構造を説明する。アクチュエータ19Zは、可変長リンク19LZとモータ19Mとを有する。可変長リンク19LZは、円筒状のシリンダ19Hと、シリンダ19Hの内部を移動するピストン19Jと、配管19Kと、ポンプ19Nとを有する。シリンダ19Hには、鉱物油などの液体が充填される。ピストン19Jは、シリンダ19Hの内部を第1の部屋19Pと第2の部屋19Qとに区分する。ピストン19Jは、シリンダ19Hの内部で軸回りに回転できる。配管19Kは、第1の部屋19Pと第2の部屋19Qとを結ぶ。配管19Kには、液体が充填される。ポンプ19Nは、配管19Kの途中に設けられる。ポンプ19Nは、モータ19Mにより駆動される。ポンプ19Nは、モータ19Mにより駆動される。ポンプ19Nは、液体を第1の部屋19Pから第2の部屋19Qへ移動させることができ、液体を第2の部屋19Qから第1の部屋19Pへ移動させることができる。
ピストン19Jの一端が胸側中央リンク取付部J5に取付けられる。シリンダ19Hの一端が腰側中央リンク取付部J10に取付けられる。
ポンプ19Nが、第1の部屋19Pから第2の部屋19Qへ液体を移動させると、ピストン19Jが胸側中央リンク取付部J5に近づく方向へ移動する。ポンプ19Nが、第2の部屋19Qから第1の部屋19Pへ液体を移動させると、ピストン19Jが胸側中央リンク取付部J5から遠ざかる方向へ移動する。第1の部屋19Pとの第2の部屋19Qとの間で液体が移動しなければ、ピストン19Jの位置は変化しない。したがって、可変長リンク19LZの長さは変化可能であり、可動範囲内の任意の長さを維持できる。
モータ19Mがポンプ19Nを駆動することで、ねじ棒19Aなどを使用するスクリュー系のアクチュエータの替わりに油圧機構を使用するアクチュエータを使用することができる。
配管19Kを液体が流れるか流れないかを切替えるバルブを設けてもよい。可変長リンク19LZの長さを変化させる場合には、バルブを開く。可変長リンク19LZの長さを固定する場合には、バルブを閉じる。
実施形態2の構成であればモータで駆動される油圧機構がピストンを移動させる。ねじ棒を使用する場合に必要であるモータの回転をねじ棒に伝える回転連結部品が不要になる。部品数の減少により、信頼性が向上する。また、各駆動軸の制御も電気駆動モータの各軸回転制御と同じ手法で各アクチュエータを制御することが可能であり、そのまま置き換えが可能である。油圧アクチュエータで駆動させた場合の効果として、電気モータでねじ機構を駆動する場合に比べてより大きな推力を発生させることが可能となり、防災時の使用に耐え得る高ロバスト性、高把持力を有した人型ロボットが実現できる。
また実施形態2の構成であれば、油圧によるダンピング特性を考慮したアクチュエータを構成することが可能となる。外乱に対してダンピング特性を発揮しながら動作して、外乱に対するロバスト性が向上する。さらに、将来のロボットの大型化や把持力増加に対応できる。
実施の形態3.
実施の形態3は、対向可能指部の替わりに普通指部と常に対向する対向指部を有する手部を人型ロボットが有する場合である。図87は、実施の形態3に係る人型ロボットが有する左の手部9Aを手の甲側から見た斜視図である。図88は、左の手部9Aを手の平側から見た斜視図である。図89、図90、および図91は、左の手部9Aの正面図、第1指部83が存在する側から見た側面図、および背面図である。手部9Aの手の平側から見た図を正面図とする。左の手部9Aは、手の平を正面に向けており第1指部83から第4指部86を上に向けた状態で図示している。図92は、左の手部9Aを指先側から見た側面図である。図93は、左の手部9Aを手首側から見た側面図である。図94は、対向指部87を曲げた状態での第1指部が存在する側から見た側面図である。図93では、図を見やすくするために、手部取付部81を省略した状態で図示している。
手部9Aの構造を説明する。手部9Aは、手部取付部81により手首板部91に取付けられる。手部取付部81は、側面から見るとL字状の部材である。手部取付部81は、手首板部91に取付けられる円形の取付板部81Aと、掌板部82と接続する長方形状の掌板接続部81Bとを有する。取付板部81Aと掌板接続部81Bとは、約90度の角度で接続する。ここでは、手部取付部81と手首板部91の間に円筒状の部材を挟んでいる。
円筒状の部材を挟まなくてもよい。
図95は、左の手部の掌板部の平面図である。図95に示すように、掌板部82において、第1指部83、第2指部84、第3指部85、第4指部86および対向指部87が取付けられる略長方形の部分を、それぞれ第1指取付部82A、第2指取付部82B、第3指取付部82C、第4指取付部82Dおよび対向指取付部82Eと呼ぶ。掌板部82のそれ以外の部分を、掌板本体部82Fと呼ぶ。第1指取付部82A、第2指取付部82B、第3指取付部82Cおよび第4指取付部82Dは、掌板本体部82Fの指先方向の指先側に接続する。対向指取付部82Eは、指先方向の手首側であり手幅方向では第1指取付部82A側である掌板部82の角に存在する。
第1指取付部82A、第2指取付部82B、第3指取付部82C、第4指取付部82Dおよび対向指取付部82Eは、指部の第1指節部が接続される指部ごとに分離した指取付部である。掌板本体部82Fは、指取付部が接続する本体部である。
第1指取付部82Aと第2指取付部82Bとは直接は接続せず、掌板本体部82Fを介して接続する。第2指取付部82Bと第3指取付部82Cも、掌板本体部82Fを介して接続する。第3指取付部82Cと第4指取付部82Dも、掌板本体部82Fを介して接続する。第1指取付部82A、第2指取付部82B、第3指取付部82Cおよび第4指取付部82Dは、隣接するものとの間に間隔を持たせて掌板本体部82Fと接続する。第1指部83、第2指部84、第3指部85および第4指部86は、指先側が開くように掌板部82に取付けられる。そのため、第1指取付部82A、第2指取付部82B、第3指取付部82Cおよび第4指取付部82Dは、それぞれが第1指部83、第2指部84、第3指部85および第4指部86と同じ方向になるように、掌板本体部82Fと接続する。
第1指取付部82A、第2指取付部82B、第3指取付部82Cおよび第4指取付部82Dは、指先方向と直交する手幅方向の幅が狭くなる幅減少部を介して掌板本体部82Fと接続する。そのため、第1指取付部82A、第2指取付部82B、第3指取付部82Cおよび第4指取付部82Dが掌板本体部82Fと接続する箇所には、切り込みまたは段差を設ける。第1指取付部82Aには、第2指取付部82Bでない側は幅を狭くする段差82Gを設け、第2指取付部82B側には半円状の切り込み82Hを設ける。第2指取付部82Bには、両側に半円状の切り込み82J、82Kを設ける。第3指取付部82Cには、両側に半円状の切り込み82L、82Mを設ける。第4指取付部82Dには、第3指取付部82C側に切り込み82Nを設け、第3指取付部82Cでない側に段差82Pを設ける。
切り込み82H、82J、82K、82L、82M、82Nは、すべて同じ形状である。切り込み82H、82Jの間は、直線で結ぶ。切り込み82M、82Nの間は、直線で結ぶ。切り込み82K、82Lの間は、直線で結ぶ。切り込み82H、82Jと、これらを結ぶ直線をまとめて、掌板本体部82Fに設けた切り込みと考えてもよい。切り込み82K、82Lで1個の切り込み、切り込み82M、82Nで1個の切り込みを、掌板本体部82Fに設けていると考えてもよい。
第1指取付部82A、第2指取付部82B、第3指取付部82Cおよび第4指取付部82Dの手幅方向の幅は同じであり、幅減少部の幅も同じになる。幅減少部は、切り込みまたは段差を設けられて幅が小さくなっている箇所である。
物体を手部9Aで把持する時に、第1指部83、第2指部84、第3指部85、第4指部86および対向指取付部82Eが、適度に曲がる。その理由は、第1指取付部82A、第2指取付部82B、第3指取付部82C、第4指取付部82Dおよび対向指取付部82Eが互いに分離しているからである。また、第1指取付部82A、第2指取付部82B、第3指取付部82Cおよび第4指取付部82Dは、幅減少部を介して掌板本体部82Fと接続するからである。
掌板部82の第1指部83側には、対向指取付部82Eと第1指取付部82Aとを分離する切り込み82Qを設けている。切り込み82Qは、対向指取付部82E側では手首側の外形線と平行であるが、第1指取付部82A側では間隔が内部に入るほど狭くなるような直線部分と、対向指取付部82E側と平行な部分とを有する。切り込み82Kは、手幅方向で端から最も遠い部分では半円状である。対向指取付部82Eには、第1ウォーム87Jを通す貫通穴82Uを設ける。なお、図95では、掌板部82に部材を取付けるための穴などは、図示を省略している。
掌板本体部82Fの掌板接続部81Bが取付けられる箇所には、2個の切り込み82Rが設けられる。2個の切り込み82Rで挟まれる部分の掌板本体部82Fを、手首取付部82Sと呼ぶ。掌板接続部81Bは、手首取付部82Sに1個のねじでねじ留めされ、2個の切り込み82Rの指先側の掌板本体部82Fにそれぞれ1個のねじでねじ留めされる。切り込み82Rで挟まれており、手首取付部82Sは幅が狭い。手首取付部82Sを介して手部9Aを手首板部91に取付けるので、指先方向に向かう軸の回りに手部9Aを適度に回転させることができる。
掌板本体部82Fは、3本の直線で折れ曲がっている。折れ曲がった各部分に1個の普通指部が接続する。そのため、第1指取付部82A、第2指取付部82B、第3指取付部82C、第4指取付部82Dがそれぞれ接続する部分が、互いに異なる角度になる。折れ曲がる角度は1か所で6度程度である。掌板部82を折り曲げることにより、掌板部82で物体を包み込むように把持することが、掌板部82に折れ曲がりが無い場合よりも容易になる。3か所の折れ曲がりで発生する線の方向は、指先方向に略平行な方向である。
掌板部82の手の平側には、複数の掌肉部82Tが設けられる。掌肉部82Tの形状は、掌板部82から遠い側の角および辺が面取りされた直方体である。掌肉部82Tは、物体を掴んだ場合に物体に掌板部82から加えられる荷重を緩和するためのクッションの役割を果たす。掌肉部82Tは、例えばゴムなど、適度な弾性を持つ材料で製造する。
掌肉部82Tは、第1指取付部82A、第2指取付部82B、第3指取付部82C、第4指取付部82Dおよび対向指取付部82Eに、それぞれ1個が設けられる。掌板本体部82Fには、折れ曲がった部分ごとに3個の掌肉部82Tが設けられる。対向指部87が存在する部分の掌板本体部82Fには、掌肉部82Tは設けない。
4本の普通指部である第1指部83、第2指部84、第3指部85および第4指部86は、根元側よりも指先側が開くように掌板部82に接続する。図91から分かるように、第2指部84は取付板部81Aに対して垂直で、第2指部84の中心と取付板部81Aの中心は一致している。第1指部83、第2指部84、第3指部85および第4指部86は、同様な構造である。
手部9Aが手部9と大きく異なる点は、対向指部87である。対向指部87から、その構造を説明する。対向指部87は、掌板部82の手の平側に掌板部82と交差する方向に指先が延在するように設けられる。対向指部87は、第1指部83から第4指部86と向き合うように設けられている。対向指部87は、掌板部82の手首側かつ第1指部83側の角に近い位置に設ける。対向指部87が回転する方向は、第1指部83および第2指部83と交差する方向である。図89に示すように、対向指部87を伸ばした状態で掌板部82との角度を小さくすると、指先が第2指部84に近づく方向に移動する。
対向指部87は、第1指部83などと同様に、掌板部82に近い側から第1指節部87A、第2指節部87B、第3指節部87Cが直列に接続する。掌板部82と第1指節部87Aとの間には、第1指関節部87Dが存在する。第1指関節部87Dは、第1指節部87Aを掌板部82に回転可能に接続する。第1指節部87Aと第2指節部87Bとの間には、第2指関節部87Eが存在する。第2指関節部87Eは、第2指節部87Bを第1指節部87Aに回転可能に接続する。第2指節部87Bと第3指節部87Cとの間には、第3指関節部87Fが存在する。第3指関節部87Fは、第3指節部87Cを第2指節部87Bに回転可能に接続する。第1指関節部87D、第2指関節部87Eおよび第3指関節部87Fの回転軸は、互いに平行である。つまり、対向指部87では、第1指関節部87Dが第1指節部87Aを回転させる方向、第2指関節部87Eが第2指節部87Bを回転させる方向、および第3指関節部87Fが第3指節部8CBを回転させる方向が、すべて同じ方向である。対向指部87が常に第1指部83から第4指部86と対向する位置にあり3個の指関節部を有するので、手部9Aは手部9よりも、物体をより適切に掴むことができる。
掌板部82、第1指節部87A、第2指節部87Bおよび第3指節部87Cの中の隣接する2個に関して、掌板部82に近い側の部材を基部側部材、基部側部材でない側の部材を先端側部材と呼ぶ。第1指関節部87D、第2指関節部87E、第3指関節部87Fは、第1指節部87A、第2指節部87B、第3指節部87Cの何れかである先端側部材を基部側部材に回転可能に接続する3個の指関節部である。第1指部83、第2指部84、第3指部85、第4指部86に関しても同様である。
対向指部87は、手幅方向には移動できない。つまり、図72から図78に示す手部9のように、対向指部87は掌板部82の側面の位置に移動して、指先を第1指部83から第4指部86と略同じ方向に向けることはできない。対向指部87にさらに1個の指関節部とモータを追加すれば、対向指部87は、手幅方向にも移動させることは可能である。
手部9Aでは、指関節部とモータの数を手部9と同じにしている。
対向指部87の第1指関節部87Dを回転させる動力源となる指部第1モータ87Hは、掌板部82の手の甲側に垂直に固定する。指部第1モータ87Hの回転軸側には、回転数を変換する第1ギヤヘッド87Tが設けられる。第1ギヤヘッド87Tは、外形が四角柱状である。第1ギヤヘッド87Tと指部第1モータ87Hは、互いに動かないように固定されている。第1ギヤヘッド87Tが掌板部82に垂直に固定される。第1ギヤヘッド87Tを垂直に固定することで、指部第1モータ87Hおよび第1ギヤヘッド87Tを掌板部82に剛性を高くして固定できる。
指部第2モータ87Lにも第2ギヤヘッド87Uが固定されている。第2ギヤヘッド87Uも、外形が四角柱状である。他の指の指部第1モータまたは指部第2モータも、それぞれ第1ギヤヘッドまたは第2ギヤヘッドが固定されている。
指元ヨーク部87Gから指先側の対向指部87は、掌板部82の手の平側に存在する。
第1ウォーム87Jに対応する位置には、掌板部82には貫通穴82Uが設けられる。指部第1モータ87Hの回転軸に直結された第1ウォーム87Jは、手の平側の指元ヨーク部87Gにより回転可能に支持される第1ウォームホイール87Kとかみ合い回転させる。
第1指関節部87Dは、掌板部82に配置され指部第1モータ87H、指部第1モータ87Hにより回転する第1ウォーム87J、第1ウォーム87Jとかみ合い第1指節部87Aと共に第1指関節部87Dの回転軸の回りを回転する第1ウォームホイール87Kを有するウォームギヤ機構により第1指節部87Aを掌板部82に対して回転させる。
対向指部87が大きな力で物体を掴む場合には、反作用として第1ウォームホイール87Kを回転させる力も大きくなる。第1ウォームホイール87Kを回転しないようにする力を指部第1モータ87Hが出す。指部第1モータ87Hが強固に掌板部82に固定されていないと、第1ウォームホイール87Kを回転させる力により、指部第1モータ87Hおよび第1ギヤヘッド87Tが掌板部82から剥がれてしまう。指部第1モータ87Hおよび第1ギヤヘッド87Tを掌板部82に垂直にすることで、指部第1モータ87Hを掌板部82から分離させようとする力に対抗する力を発生させやすくなる。
第1指節部87Aは、第1ホイール連動部87AAと、第1ヨーク部87ABと、第2モータ設置部87ACとで構成される。第1ホイール連動部87AAは、第1ウォームホイール87Kを挟んでと共に回転する箱状の部材である。第1ヨーク部87ABは、第2指関節部87Eの回転軸を挟んで保持する部材である。第1ホイール連動部87AAの長さは、対向指部87の指先と普通指部の指先との間で物体を挟める程度の長さとする。
第2モータ設置部87ACには、指部第2モータ87Lが設置される。第2モータ設置部87ACは、第1ヨーク部87ABに接して手首側に存在する部材である。第1ホイール連動部87AAと、第2モータ設置部87ACとは一体に製造される。第1ホイール連動部87AAは、対向指部87の側面から見ると第2指関節部87Eの側が幅広の多角形である。第1ホイール連動部87AAには、第2指関節部87Eの側に2枚の板材である第1ヨーク部87ABがねじ止めされる。第1ヨーク部87ABの先端には、突起87ADが設けられる。突起87ADは、第2指関節部87Eが手の甲側への回転を許容回転角度に制限するストッパである。
第2モータ設置部87ACは、第1ヨーク部87ABに垂直なモータ設置面と、第1ヨーク部87ABよりも間隔が広く第1ヨーク部87ABに平行な側面と、第1ホイール連動部87AAと接続する底面とを有する。側面はモータ設置面よりも高さが低く、指元側の角が大きく面取りされている。モータ設置面の上側の角も面取りされている。モータ設置面には、指部第2モータ87Lおよび第2ギヤヘッド87Uが垂直に固定される。モータ設置面には貫通穴が設けられており、第2ギヤヘッド87Uの回転軸がこの貫通穴を通る。
指部第2モータ87Lの回転軸には、第2ウォーム87Mが取付けられる。第2ウォーム87Mは、第1ヨーク部87ABに回転可能に保持される第2ウォームホイール87Nとかみ合う。第2ウォーム87Mと第2ウォームホイール87Nとによるウォームギヤ機構により、指部第2モータ87Lの回転が第2指関節部87Eを回転の軸として、第2指節部87Bが第1指節部87Aに対して回転する。
第2指節部87Bは、第2ウォームホイール87Nを挟んで保持し、第2ウォームホイール87Nと共に回転する。第2指節部87Bは、2枚の板材である。第2指節部87Bの第3指節部87C側の端部には、第3指関節部87Fの回転軸が設けられる。第2指節部87Bは、厚さは一定である。第2指節部87Bは、第2ウォームホイール87Nを挟み第1ヨーク部87ABで挟まれる部分、中間部分、第3指関節部87Fの回転軸が設けられる部分で、小さい段差を有する階段状になっている。2枚の第2指節部87Bの間隔は、第2指関節部87Eの側で狭く、第3指関節部87Fの側で広い。第1ヨーク部87ABの先端に設けたストッパ87ADは、第1ヨーク部87ABで挟まれる部分と側面が接する。中間部分との間に存在する第2指節部87Bの段差にストッパ87ADが当たることで、第2指関節部87Eが手の平と反対側に回転する角度が制限される。
第2指関節部87Eは、第1指節部87Aに配置され指部第2モータ87L、指部第2モータ87Lにより回転する第2ウォーム87M、第2ウォーム87Mとかみ合い第2指節部87Bと共に第2指関節部87Eの回転軸の回りを回転する第2ウォームホイール87Nを有するウォームギヤ機構により第2指関節部87Eを第1指節部87Aに対して回転させる。
図96を参照して、第2指関節部87Eに連動させて第3指関節部87Fを回転させるギヤについて説明する。図96は、対向指部87の第2指節部87B付近を拡大した斜視図である。第2指節部87Bには、第2指関節部87Eの回転に連動して第3指関節部87Fを回転させるための複数のギヤが設けられる。第2指節部87Bの外側に存在するアイドラギヤ87Rは、第1ヨーク部87ABの先端に設けられた部分ギヤ87Qとかみ合う。アイドラギヤ87Rと部分ギヤ87Qの組は、第2指節部87Bの両側面に存在する。アイドラギヤ87Rは、部分ギヤ87Qとかみ合うことで、第2ウォームホイール87Nと同じ回転方向に回転する。アイドラギヤ87Rは指先側でアイドラ外ギヤ87SAとかみ合う。アイドラ外ギヤ87SAの回転軸には、第2指節部87Bに挟まれてアイドラ内ギヤ87SBが固定されている。アイドラ外ギヤ87SAおよびアイドラ内ギヤ87SBは、アイドラギヤ87Rとは反対方向に回転する。アイドラ外ギヤ87SAおよびアイドラ内ギヤ87SBは、同じ回転軸の周りに回転する。アイドラ内ギヤ87SBは、第3指節部87ACと共に第3指関節部87Fの回転軸の回りを回転する第3指節駆動歯車87Pとかみ合う。第3指節駆動歯車87Pは、アイドラ内ギヤ87SBとは反対側に回転する。第3指節駆動歯車87Pは、第2ウォームホイール87Nと同じ方向に回転する。
第2ウォームホイール87Nと第3指節駆動歯車87Pの間のギヤ比は、1に近い適切な値になるように調整する。
アイドラギヤ87Rは、第2指関節部87Bの回転と連動して回転する歯車である。アイドラ外ギヤ87SA(アイドラ内ギヤ87SBも含む)は、アイドラギヤ87Rにより駆動される奇数個の回転軸で回転する歯車である。第3指節駆動歯車87Pは、アイドラ内ギヤ87SBにより駆動される第3指関節部87Fに設けられた歯車である。
第3指節部87Cは、指先部87CAと、指先基部87CBとで構成する。指先部87CAは、円筒の先端に半球が接続した形状である。指先基部87CBは、第3指節駆動歯車87Pと共に回転する部材である。指先基部87CBの指先側には、角が丸い長方形の板状の部材が設けられる。この板状の部材に、指先部87CAが取付けられる。そのため、指先部87CAを用途に合わせた形状のものに容易に取り替えることができる。
第1指部83は、指部第1モータ83Hも含めて手の甲側にすべての部材が存在する。
指部第1モータ83Hは、第1モータ固定部83Vに取付けられる。第1モータ固定部83Vは、直方体状の箱体である。第1モータ固定部83Vは、第1指取付部82Aに取付けられる。第1モータ固定部83Vは、指先側の面と第1指取付部82A側の面は、開口している。指元側には補強のためのリブが設けられており、側面から見ると指元側の辺は斜めに見える。第1モータ固定部83Vは、掌板部82Bに垂直であり、掌板部82Bに平行な面に指部第1モータ83Hおよび第1ギヤヘッド83Tが取付けられる。第1モータ固定部83Vと掌板部82Bの間に、第1ギヤヘッド83Tの回転軸に取付けられた第1ウォーム83Jが入る。
指部第1モータ83Hを第1モータ固定部83Vに垂直に固定することで、指部第1モータ83Hと第1モータ固定部83Vとを剛性を高くして固定できる。
第1ウォーム83Jは、指元ヨーク部83Gに保持される回転軸の回りに回転する第1ウォームホイール83Kとかみ合う。第1指節部83Aは、第1ウォームホイール83Kと共に第1指関節部83Dの回りを回転する。
第1指節部83Aから指先側の構造は、対向指部87と同様である。第1ホイール連動部83AAの長さは、対向指部87の第1ホイール連動部87AAよりも短い。
第2指部84、第3指部85および第4指部86の構造は、第1指部83の構造と同様である。
第1指部83を例にして、ウォームギヤ機構の配置について説明する。第1指関節部83Dにおいて、図90に示されているように、ウォームギヤ機構は、掌板部82が延在する方向では指元ヨーク部83Gが存在する範囲または指元ヨーク部83Gよりも掌板部82が存在する側の範囲に存在する。同時に、ウォームギヤ機構は、掌板部82に垂直な方向では掌板部82よりも回転軸が存在する側の範囲に存在する。第2指部84などでも同様にウォームギヤ機構を配置している。第1指関節部のウォームギヤ機構をこのような範囲に配置しているので、手部9Aで物体を保持する際に、ウォームギヤ機構が物体を保持する上で邪魔または障害になることはない。なお、図90は、第1指関節部83Dおよび第2指関節部83Eの回転軸に平行な方向から手部9Aを見た図である。
第2指関節部83Eにおいて、図90に示されているように、ウォームギヤ機構は、第1指節部83Aが延在する方向と直交する方向では、第1指節部83Aが存在する範囲または第1指節部83Aよりも掌板部82から遠い側の範囲に存在する。第1指節部83Aが延在する方向と直交する方向で第1指節部83Aよりも掌板部82から遠い側の範囲は、手の甲側である。第1指部83は、各指関節部は伸ばした状態から手の平側に回転できる。各指関節部を手の平側に回転させると、第1指部83は掌板部82に近づく。第1指部83の手の甲側は、第1指部83よりも掌板部82から遠い側である。第2指部84などでも、第2指関節部では同様にウォームギヤ機構を配置している。第2指関節部のウォームギヤ機構をこのような範囲に配置しているので、手部9Aで物体を保持する際に、ウォームギヤ機構が物体を保持する上で邪魔または障害になることはない。
動作を説明する。手部9Aは、各指部の第1指関節部、第2指関節部が指定された角度になるように、各指関節部のウォームギヤが指定された角度に対応する位置になるように、モータが駆動される。
各指関節部は、ウォームとウォームホイールを使用するウォームギヤ機構で駆動するようにしたので、指曲げの力を大きくすることができる。第1指関節部および第2指関節部をそれぞれウォームギヤ機構で駆動するので、第1指関節部と第2指関節部のどちらか一方だけを曲げたり、両方を曲げたりできる。また、電源供給が遮断された場合にも、ウォームギヤ機構により把持力を維持できる。
対向指部87は、第1指関節部87Dに加えて、第2指関節部87Eおよび第3指関節部87Fも有するので、図102に示すように、第2指関節部87Eを曲げて物体を保持することができる。第2指関節部87Eおよび第3指関節部87Fは、第1指関節部87Dと平行な回転軸を有する。そのため、手部9Aでは、第1指関節部87Dだけを曲げて、第2指関節部87Eおよび第3指関節部87Fを伸ばして、紙のような薄い物体を持つこともできる。
手部9では、第1ウォーム93Jが第1指節部93Aよりも掌板部92の側に出ている。それに対して、手部9Aでは、第1ウォーム83Jは手の甲側に存在する。第1指部83では、第1指節部83A、第2指節部83Bおよび第3指節部83Cが掌板部82に面している。第1指部83などと掌板部82との間で物体を保持する際に、第1ウォーム83Jなどが物体と接触することを防ぐ部材などが不要になり、手部9Aは手部9よりも構造が簡単になる。
第1指部83、第2指部84、第3指部85および第4指部86を、同じ構造としたが、指により構造を変更してもよい。ウォームギヤ機構を有するすべての指関節部で、モータで駆動されるウォームを基部側部材に対して垂直としたが、少なくとも1本の指部の少なくとも1個のウォームギヤ機構で基部側部材に対して垂直としてもよい。
3個の指関節部を有する対向指部を、対向可能指部のように掌板部に対して手幅方向に回転可能にしてもよい。
以上のことは、他の実施の形態にもあてはまる。
実施の形態4.
実施の形態4は、対向指部の替わりに手幅方向に指全体が回転する手幅回転指を有する手部を人型ロボットが有するように実施の形態3を変更した場合である。図97は、実施の形態4に係る人型ロボットが有する左の手部9Bを手幅回転指部88が伸びた状態で手の甲側から見た斜視図である。図98は、左の手部9Bを手幅回転指部88が掌板部82に交差する方向を向いた状態で手の甲側から見た斜視図である。図99、図100、図101、図102、および図103は、手幅回転指部88が伸びた状態での左の手部9Bの正面図、第1指部83が存在する側から見た側面図、背面図、第4指部86が存在する側から見た側面図、および指先側から見た側面図である。図104、図105、図106、図107、および図108は、手幅回転指部88が掌板部82に交差する方向を向いた状態での左の手部9Bの正面図、第1指部83が存在する側から見た側面図、背面図、第4指部86が存在する側から見た側面図、および指先側から見た側面図である。図109と図110は、手幅回転指部88を拡大した斜視図である。図109は、手幅回転指部88が伸びた状態での斜視図である。図110は、手幅回転指部88が掌板部82に交差する方向を向いた状態での斜視図である。
図97から図110では、手首板部91までを図示している。掌板部82、第1指部83、第2指部84、第3指部85および第4指部86は、実施の形態1の場合と同じ構造である。これらの図では、実施の形態3の図87から図97では省略しているカバーなども図示している。
第1指節カバー83Xは、第1ヨーク部83ABを第1ホイール連動部83AAに取付ける部分を覆うカバーである。第1指節カバー83Xは、略長方形の板材をUの字状に曲げた部材である。略長方形の板材は、一辺の中央に略長方形の突起を有する。第1指節カバー83Xは、手の平側から第1指節部83Aに被せる。略長方形の突起の部分は角を丸くしており、途中で段差ができるように折り曲げている。
第2指節カバー83Yは、第2ウォームホイール83N、2枚の第2指節部83Bに挟まれない側に存在する部分ギヤ83Q、アイドラギヤ83Rおよびアイドラ外ギヤ83SAなどを覆うカバーである。第2指節カバー83Yは、第1指節カバー83Xと同様な形状である。第1指部83に沿う方向の長さは、第2指節カバー83Yの方が、第1指節カバー83Xよりも長い。
第2ウォームカバー83Zは、第2ウォーム83Mを手の甲側から覆うカバーである。
第2ウォームカバー83Zは、一方にだけ底があり他方にフランジを有する円筒を軸方向に半分に切ったような形状である。円筒の部分の内部に、第2ウォーム83Mが存在する。第2モータ設置部83ACのモータ設置面の裏面に、フランジを取付ける。フランジの外形は、モータ設置面と同じような形状である。
手部9Aと異なる点を説明する。手部9Bは、対向指部87の替わりに手幅回転指部88を有する。手幅回転指部88は、手幅方向に指全体が回転可能に掌板部82に取付けられる。手幅回転指部88は、対向指部87と同様な位置で掌板部82に取付けられる。手幅回転指部88は、掌板部82の一部である手幅回転指取付部82Vに取付けられる。手幅回転指取付部82Vは、対向指部指取付部82Eと同様に、指先方向の手首側であり手幅方向では第1指取付部82A側である掌板部82の角に存在する。手幅回転指取付部82Vの形状は、対向指部指取付部82Eと同様な形状である。
手幅回転指部88は、指元ヨーク部88Gから指先側は対向指部87と同じ構造である。手幅回転指部88と対向指部87とが異なるのは、掌板部82への取付け方向だけである。
手幅回転指部88は、手幅方向に回転するように、2面が開いた箱状の手幅指元部88Wを介して掌板部82に取付けられる。手幅指元部88Wは、手幅回転指取付部82Vの手の甲側に、手首に向かうように20度程度の角度を持たせて取付ける。指部第1モータ88Hおよび第2ギヤヘッド88Tは、手幅指元部88Wの内部に収納され、手幅指元部88Wの手幅方向の面であるモータ設置面に取付けられる。モータ設置面には貫通穴があり、第2ギヤヘッド88Tの回転軸が貫通穴を通る。モータ設置面の外面には、指元ヨーク部88Gが取付けられる。指元ヨーク部88Gは、その軸部材がモータ設置面に平行であり掌板部82に対して約65度の角度をなすように取付けられる。そうすることで、手幅回転指部88を伸ばした状態で第1指関節部88Dを回転させた場合に、第3指節部88Cが掌板部82よりも指先側に位置して、手幅回転指部88と掌板部82との間に物体を保持しやすい。手幅指元部88Wは、モータ設置面および掌板部82への取付面の両側に側面を有する。2個の側面の角は大きく直線で切取った形状である。手幅指元部88Wの側面は、上底が短く下底に垂直な辺を有する台形状である。手首側の側面では、掌板部82への取付面の側の辺が、もう一方の側面よりも短い。
手幅回転指部88は、対向指部87と同様に、第1指節部88Aが第1指節部83Aなどよりも長い。そのため、第1指節カバー83Xは、第2指節カバー83Yよりも長い。
動作を説明する。手部9Bは、各指部の第1指関節部、第2指関節部が指定された角度になるように、各指関節部のウォームギヤが指定された角度に対応する位置になるように、モータが駆動される。
各指関節部は、ウォームとウォームホイールを使用するウォームギヤ機構で駆動するようにしたので、指曲げの力を大きくすることができる。第1指関節部および第2指関節部をそれぞれウォームギヤ機構で駆動するので、第1指関節部と第2指関節部のどちらか一方だけを曲げたり、両方を曲げたりできる。また、電源供給が遮断された場合にも、ウォームギヤ機構により把持力を維持できる。
手幅方向に回転する手幅回転指部88を備えることで、手幅回転指部88を伸ばした際の手部9Bの手幅方向の長さが手部9Aよりも大きくなる。そのため、手部9Bの方が手部9Aよりも大きな物体を保持することができる。掌板部82を上側に向けて、左右の手部9Bが同じ高さに並ぶようにすれば、両手で大きな物体を持つこともできる。
実施の形態5.
実施の形態5は、人型上半身ロボットを移動可能で高さが変更可能な台座に載せた場合である。図111から図113を参照して、人型上半身ロボットの全体構成を説明する。この発明の実施形態5に係る人型上半身ロボットの全体斜視図、全体正面図、全体側面図を、それぞれ図111、図112、図113に示す。
人型上半身ロボット100Cは、腰部から上の上半身のロボットである。人型上半身ロボット100Cは、人型上半身ロボット100Cを制御するための制御装置(図示せず)を収納する制御装置収納部150の上面に載せる。人型上半身ロボット100Cの腰部が、制御装置収納部150の上面に固定される。制御装置収納部150は、直方体の形状である。人型上半身ロボットおよび制御装置は、開発中であるため、制御装置の改造が容易なように、制御装置収納部150は大きめにしている。実際に人型ロボットを使用する際には、制御装置を小型の鞄程度の大きさにして、例えば人型ロボットの背面に配置する。
制御装置収納部150は、台座昇降部160の上に載せられる。台座昇降部160は、台車170の上に載せられる。台座昇降部160は、図では簡易的に書いているが、上面と下面を結ぶリンクの角度が変化して上面の高さを変更できる。台車170は、人などに押される、あるいは自動走行の機能を持たせる。台座昇降部160は、人型上半身ロボット100Cが搭載され、上半身ロボット100Cを上下方向に移動させる高さ調整部である。台車170は、上半身ロボット100Cおよび台座昇降部160を移動させる移動部である。台座昇降部および台車は図に示すもの以外の構成のものでもよい。人型上半身ロボット100Cは、台車170により使用する場所に移動し、台座昇降部160により操作する対象に対して適切な高さにする。さらに、上半身ロボット100Cに作業に適切な姿勢をとらせることができる。人型上半身ロボット100C、台座昇降部160および台車170とで1体のロボットと考えることもできる。
実施の形態1の人型ロボット100のように、人と同様な形状の下半身を持たせてもよい。腰部を有さず胸部までの上半身のロボットでもよい。腰部を持たない上半身ロボットは、胸部が制御装置収納部150の上面に固定されることで、制御装置収納部150に搭載される。
図114から図119に示すように、人型上半身ロボット100Cは、人の腰から上と同様な構造を有する。図114、図115および図116は、人型上半身ロボット100Cの斜視図である。図114は、前方から見た場合の斜視図である。図115は、左側面から見た場合の斜視図である。図116は、背面から見た斜視図である。人型上半身ロボット100Cの正面図、平面図および底面図を、それぞれ図117、図118および図119に示す。
人型上半身ロボット100Cは、体幹部1C、体幹部1Cの上部の左右から出る一対の上肢部3Cを有する。なお、人型上半身ロボット100Cは、頭部を有しない。体幹部1Cの中央上側に頭部を有するようにしてもよい。
体幹部1Cは、上側の胸部5Cと下側の腰部6Cに分けられる。上肢部3Cは、上腕部7C、前腕部8Cおよび手部9Cが直列に接続する。左右一対の上肢部3Cは、右の上肢部3Cと左の上肢部3Cとが鏡像の関係となる構造を有する。左右の上肢部3Cは、鏡像の関係にならない部分があってもよい。
人型上半身ロボット100Cの各関節部の自由度の次数は、手首部、胸部5Cと腰部6Cの間は、前後左右に動かせ、捻りの動作もできる3回転自由度としている。肩部、肘部は前後左右に動かせる2回転自由度としている。なお、肩部、肘部などを3回転自由度にしてもよい。
図114から図132を参照して、体幹部1Cの構造を説明する。図120、図121、図122および図123は、それぞれ人型上半身ロボット100Cが有する胴体屈曲部の斜視図、正面図、左側面図および右側面図である。図120から図123では、人型上半身ロボット100Cは上肢部3Cおよび肩部C4Cを駆動するアクチュエータなどを取外した状態である。図127、図128および図129は、それぞれ人型上半身ロボット100Cが有する肩部の正面図、平面図および左側面図である。図120から図123では、人型上半身ロボット100Cは上腕部7Cから先を肩部C4Cから取外した状態である。図130は、人型上半身ロボット100Cの左肩を下から見た図である。図131、図132は、人型上半身ロボット100Cの左肩の斜視図である。図131は、人型上半身ロボット100Cの左肩を前方上から見た斜視図である。図132は、人型上半身ロボット100Cの左肩を後方上から見た斜視図である。
胸部5Cは、肩部フレーム51Cおよび胸部骨格板52Cを有する。胸部骨格板52Cは、人型上半身ロボット100Cの左右方向および上下方向に延在する板状の部材である。人型ロボット100が有する胸部5は、多くのフレームを有する構造である。胸部5と比較すると、胸部5Cは、簡単な構造である。
胸部骨格板52Cは、人型上半身ロボット100Cの前後方向の中心に位置する。胸部骨格板52Cは、正面から見ると略長方形である。長方形の上に、左右方向の幅がしだいに広くなる部分が接続し、さらにその上の部分では左右方向の幅が階段状に狭くなる。この階段状の部分に、左右から肩部フレーム51Cが接続する。左右方向の幅が階段状に狭くなる部分での高さは、左右方向の両端の肩部フレーム51Cで接続する部分でだけ高い。長方形の下端の左右の端部には、半円状に出る部分が存在する。
胸部骨格板52Cは、側面から見ると上下方向に延在する板状の部分と、上下方向の板状の部分の上と下に前後方向に延在する板状の部分とを有する。上側の板状の部分は、前後方向の幅が左右方向で同じである。下側の板状の部分は、前後方向の幅が左右方向の中央で大きい。胸部骨格板52Cは、中央付近の2箇所に上下に伸びる補強リブが前面および背面にある。また、胸部骨格板52Cは、軽量化のために補強リブで挟まれる部分に2個、左右の補強リブの外側にそれぞれ1個の開口を有する。
胸部骨格板52Cの上側で左右の端に近い部分すなわち両肩に相当する部分には、肩部フレーム51Cが接続する。肩部フレーム51Cは、後方に曲がって延在する。肩部フレーム51Cの外側の端には、肩関節部装着穴51Hが設けられている。肩関節部装着穴51Hには、肩関節部13が装着される。
図120および図121などに示すように、胸部骨格板52Cの左右の端付近には、上下に並んで肩部第1装着穴52Hおよび肩部第2装着穴52Lが設けられている。肩部第2装着穴52Lは、胸部骨格板52Cの下端の左右の端部の半円状に出る部分に設けられる。上側の肩部第1装着穴52Hには、前方から胸側主リンク取付部J1が装着される。下側の肩部第2装着穴52Lには、後方から胸側補助リンク取付部J2が装着される。なお、人型ロボット100では、胸側主リンク取付部J1が胸郭部フレーム52の前側の部分から後方に向けて取付けられている。また、胸側補助リンク取付部J2は、胸郭部フレーム52の後側の部分から前方に向けて取付けられている。
胸側主リンク取付部J1は、胸部骨格板52Cに垂直な回転軸の回りに回転する回転部材に設けられたヨークが上腕部駆動主リンク14Lを挟む2軸ジンバルである。胸側補助リンク取付部J2は、胸部骨格板52Cに垂直な回転軸の回りに回転する回転部材に設けられたヨークが上腕部駆動補助リンク15Lを挟む2軸ジンバルである。胸側主リンク取付部J1および胸側補助リンク取付部J2の回転部材を回転させる回転軸は、胸側主リンク取付部J1と胸側補助リンク取付部J2とを通るリンク移動面回転軸とは、方向が異なる。したがって、上腕部駆動主リンク14Lおよび上腕部駆動補助リンク15Lは、軸回りの1回転自由度が必要である。
胸部骨格板52Cの下側には、円柱状の背骨部56が設けられる。背骨部56は、胸部骨格板52Cの前後方向の幅が広い下面に垂直である。背骨部56の下端には、背骨部56を腰部6に3回転自由度を有して回転可能に接続する胸腰部関節部18が設けられる。胸腰部関節部18には、球面軸受が用いられる。捻り軸である背骨部56は、胸部5Cに対して方向が固定されている。
腰部6Cは、円盤状である。円盤の中心に胸腰部関節部18が設けられる。胸腰部関節部18の周囲の腰部6Cは、円筒状になっており他の部分よりも厚い。
胸部5Cと腰部6Cの間には、図120から図123に示すように、3本の胸腰部中央アクチュエータ19C、胸腰部右アクチュエータ20C、胸腰部左アクチュエータ21Cが設けられる。胸腰部中央アクチュエータ19Cは、胸腰部中央リンク19LCを有する。胸腰部右アクチュエータ20Cは、胸腰部右リンク20LCを有する。胸腰部左アクチュエータ21Cは、胸腰部左リンク21LCを有する。
胸部骨格板52Cの下面には、胸部中央リンク取付部J5Cおよび胸部右リンク取付部J6Cが設けられる。胸部中央リンク取付部J5Cおよび胸部右リンク取付部J6Cには、胸腰部中央リンク19LCおよび胸腰部右リンク20LCの一端がそれぞれ2回転自由度を有して回転可能に接続する。胸部中央リンク取付部J5Cは、胸部骨格板52Cに設けられたヨークが胸腰部中央リンク19LCの一端を回転可能に挟む構造である。胸部中央リンク取付部J5Cのヨークは、胸部骨格板52Cから背面側に出るY軸に平行な回転軸の回りを回転する回転部材に設けられる。胸部右リンク取付部J6Cは、胸部骨格板52Cに設けられたヨークが胸腰部右リンク20LCの一端を回転可能に挟む構造である。胸部右リンク取付部J6Cのヨークは、胸部骨格板52Cから前面側に出るX軸と約25度の角度をなす水平な回転軸の回りを回転する回転部材に設けられる。
胸部中央リンク取付部J5C、胸部右リンク取付部J6Cは、同じ高さに存在する。背骨部56において、胸部5Cに設けられた胸部中央リンク取付部J5C、胸部右リンク取付部J6Cの高さの箇所を背骨上端部56Bと呼ぶ。
中央リンク左リンク取付部J7Cは、胸腰部中央リンク19LCの胸部中央リンク取付部J5Cから決められた距離の位置に設けられる。中央リンク左リンク取付部J7Cには、胸腰部左リンク21LCの一端が2回転自由度を有して回転可能に接続する。中央リンク左リンク取付部J7Cは、胸腰部左リンク21LCの一端に設けられたヨークが、胸腰部中央リンク19LCに設けられた突起を挟む構造である。突起は、胸腰部中央リンク19LCに設けられた直方体の両側面に出る同一直線上に設けられる。突起が設けられる直方体は、胸腰部中央リンク19LCの軸回りに回転可能である。中央リンク左リンク取付部J7Cは、胸腰部中央リンク19LCの軸回りの1回転自由度を含む2回転自由度を有する。胸部中央リンク取付部J5C、胸部右リンク取付部J6Cおよび中央リンク左リンク取付部J7Cは、2軸ジンバルである。
腰部6Cの上面には、腰部中央リンク取付部J10C、腰部右リンク取付部J8Cおよび腰部左リンク取付部J9Cが設けられる。腰部中央リンク取付部J10C、腰部右リンク取付部J8Cおよび腰部左リンク取付部J9Cには、胸腰部中央リンク19LC、胸腰部右リンク20LCおよび胸腰部左リンク21LCの他端がそれぞれ2回転自由度を有して回転可能に接続する。2軸ジンバルである腰部中央リンク取付部J10C、腰部右リンク取付部J8Cおよび腰部左リンク取付部J9Cは、胸腰部関節部18と同じ高さに存在する。腰部中央リンク取付部J10Cは、腰部6Cに設けられたヨークが胸腰部中央リンク19LCの他端を回転可能に挟む構造である。腰部中央リンク取付部J10Cのヨークは、腰部6Cから背面側に出るY軸に平行な回転軸の回りを回転する回転部材に設けられる。腰部右リンク取付部J8Cは、腰部6Cに設けられたヨークが胸腰部右リンク20LCの他端を回転可能に挟む構造である。腰部右リンク取付部J8Cのヨークは、腰部6Cから右腕側に出るX軸と平行な回転軸の回りを回転する回転部材に設けられる。腰部左リンク取付部J9Cは、腰部6Cに設けられたヨークが胸腰部左リンク21LCの他端を回転可能に挟む構造である。腰部左リンク取付部J9Cのヨークは、腰部6Cの背面側に出る水平な回転軸の回りを回転する回転部材に設けられる。回転軸は、X軸と約25度の角度をなす。
胸腰部中央リンク19LC、胸腰部右リンク20LCおよび胸腰部左リンク21LCは、腰部6Cには取付具を介して取付けられる。取付具は、ねじ棒と平行な部材である。取付具を介するので、胸腰部中央リンク19LC、胸腰部右リンク20LCおよび胸腰部左リンク21LCは、ねじ棒が延在する直線から決められた方向に決められた距離の位置で腰部6Cに取付けられる。決められた方向は、リンク取付部のヨークを回転させる回転軸およびリンクが存在する平面内でリンクと直交する方向である。
胴体屈曲部C2Cは、胸腰部関節部18の回りに3回転自由度を有して胸部5Cを腰部6Cに対して回転可能に接続する回転接続機構である。図124から図125を参照して、胴体屈曲部C2Cでのリンクとリンク取付部の配置を説明する。図124は、人型上半身ロボット100Cが有する胴体屈曲部C2Cのリンク配置を示す斜視図である。図125は、胴体屈曲部C2Cの基準状態でのリンク配置を背骨部が延在する方向から見た図である。
図125から分かるように、胸腰部中央リンク19LCは背骨部56の真後ろに背骨部56との角度が数度以下で存在する。胸腰部右リンク20LCは、背骨部56の右側(正面から見ると左側)に存在する。胸腰部左リンク21LCは、腰部6Cの左側(正面から見ると右側)の端付近から背骨部56の後ろを結ぶ。腰部6C側では、腰部中央リンク取付部J10C、腰部左リンク取付部J9Cおよび腰部右リンク取付部J8Cが背骨部56の背面側で左右方向および前後方向に十分な幅を有して配置されている。そのため、胸部5Cの荷重を背骨部56、胸腰部中央リンク19LC、胸腰部右リンク20LC、胸腰部左リンク21LCに分散させて安定して支持できる。胸部中央リンク取付部J5C、胸部右リンク取付部J6C、背骨上端部56Bで形成される三角形では、背骨上端部56Bに対応する頂点での角度が110度程度である。胸部中央リンク取付部J5C、胸部右リンク取付部J6Cは、背骨上端部56Bから腰部6Cの半径程度離れている。そのため、胸腰部中央リンク19LCを伸縮させると、胸部5Cを主に前後方向に傾けることができる。胸腰部右リンク20LCを伸縮させると、胸部5Cを主に左右方向に傾けることができる。胸腰部左リンク21LCを伸縮させると、背骨部56の回りに胸部5Cを主に回転させることができる。
図126により、胴体屈曲部でのリンク取付部の配置に関する条件を表現するための線分などを定義する。図126は、胴体屈曲部の基準状態でのリンク配置を評価する変数を示す図である。図126(A)では、腰部6Cでのリンク取付部の配置を示す。図126(B)では、胸部5Cでのリンク取付部の配置を示す。腰部中央リンク取付部J10C、腰部左リンク取付部J9Cおよび腰部右リンク取付部J8Cで決定される平面を、腰部基準平面と呼ぶ。図126(A)には、腰部基準平面での胸腰部関節部18、腰部中央リンク取付部J10C、腰部左リンク取付部J9Cおよび腰部右リンク取付部J8Cの位置関係を示す。腰部基準平面と背骨部56の交点を、第1捻り中心と呼ぶ。胴体屈曲部C2Cでは、第1捻り中心は胸腰部関節部18と一致する。なお、胸腰部関節部18が腰部基準平面上にない場合は、第1捻り中心は胸腰部関節部18とは異なる位置になる。また、胸腰部関節部18での接続角度が変化すると、第1捻り中心の位置が僅かに変化する。胸腰部関節部18と腰部基準面との距離は、上限値以下であるように決める。
腰部中央リンク取付部J10Cと胸腰部関節部18(第1捻り中心)を結ぶ線分を第1線分S11と呼ぶ。腰部右リンク取付部J8Cと胸腰部関節部18を結ぶ線分を第3線分S13と呼ぶ。腰部左リンク取付部J9Cと胸腰部関節部18を結ぶ線分を第2線分S12と呼ぶ。第1線分S11、第2線分S12および第3線分S13の長さを、変数L11、L12およびL13で表す。第1線分S11と第3線分S13とがなす角度を、変数η1で表す。
胴体屈曲部C2Cでは、η1は約90度である。すなわち、第1線分S11と第3線分S13はほぼ直交する。そのため、腰部中央リンク取付部J10C、腰部左リンク取付部J9Cおよび胸腰部関節部18で形成される三角形(第1部材三角形)は、どの方向から見ても十分な幅を有する。胸部5Cの荷重を第1部材三角形で安定して支持することができる。η1は、直交(90度で交差)でなくても、例えば60度から120度などのように90度を含むように決められた第1交差角範囲内に存在すればよい。
第1線分S11が、第2線分S12と第3線分S13の間に存在する。そのため、第1部材三角形の幅は、第1線分S11が第2線分S12と第3線分S13の間に無い場合よりも広くでき、胸部5Cの荷重を第1部材三角形で安定して支持することができる。また、第1線分S11の長さL11および第3線分S13の長さL13の何れか短い方を長い方で割った値を長短比と呼ぶ。長短比を変数λで表す。λ=約0.93である。そのため、胸部5Cの荷重を腰部左リンク取付部J9Cおよび胸腰部関節部18でほぼ均等に支持できる。長短比λは、例えば0.8などの決められた下限比以上であればよい。
胸部中央リンク取付部J5Cを通り背骨部56に垂直な平面と背骨部56の交点を、第2捻り中心56Bと呼ぶ。ここで、第2捻り中心56Bは、背骨上端部56Bでもある。胸部中央リンク取付部J5C、第2捻り中心56Bおよび胸部右リンク取付部J6Cを通る平面を、胸部基準平面と呼ぶ。人型上半身ロボット100Cでは、胸部基準平面が背骨部56に垂直である。図126(B)には、胸部基準平面での第2捻り中心56B、胸部中央リンク取付部J5Cおよび胸部右リンク取付部J6Cの位置関係を示す。ここで、胸部基準平面において、第2捻り中心56Bと胸部中央リンク取付部J5Cを結ぶ線分を、第4線分S14と呼ぶ。第2捻り中心56Bと胸部右リンク取付部J6Cを結ぶ線分を、第5線分S15と呼ぶ。第4線分S14と第5線分S15がなす角度を、変数η2で表す。
胴体屈曲部C2Cでは、η2は約119度である。また、中央リンク左リンク取付部J7Cで、胸腰部左リンク21LCは胸腰部中央リンク19LCに対する角度ζは、ζ=約32度の角度で接続する。
η2は約119度と、例えば55度から125度のなどのように90度を含むように決められた第2交差角範囲内である。そのため、胸部中央リンク取付部J5Cおよび胸部右リンク取付部J6Cの一方の位置が変化するようにリンクを伸縮させることで胸部5Cが傾く方向と、他方の位置が変化するようにリンクを伸縮させることで傾く方向が十分に異なる。その結果、胸部5Cをどの方向にも適切に傾けることができる。ζ=約32度と、例えば20度などのように決められた第3交差角以上である。そのため、胸腰部左リンク21LCを伸縮させることで、胸部5Cを背骨部56の回りを効率的に回転させることができる。
胴体屈曲部C2Cは、第1部材である腰部6Cに第2部材である胸部5Cを胸腰部関節部18により回転可能に接続する回転接続機構である。胸腰部関節部18は、腰部6Cに胸部5Cを、3回転自由度を有して回転可能に接続する関節部である。胴体屈曲部C2Cは、胸腰部関節部18の角度を変更して胸部5Cを腰部6Cに対して移動させる。
胸腰部中央リンク19LCが、5回転自由度を有する第1リンクである。胸部中央リンク取付部J5Cは、胸部5Cに設けられた第2部材第1取付部である。胸部中央リンク取付部J5Cは、胸腰部関節部18に対する相対的な位置関係が固定されている。胸部中央リンク取付部J5Cに、胸腰部中央リンク19LCの一端が少なくとも2回転自由度を有して回転可能に取付けられる。腰部中央リンク取付部J10Cが、腰部6Cに設けられた第1部材第1取付部である。腰部中央リンク取付部J10Cに、胸腰部中央リンク19LCの他端が少なくとも2回転自由度を有して回転可能に取付けられる。腰部中央リンク取付部J10Cは、胸腰部関節部18に対する相対的な位置関係が固定されている。腰部中央リンク取付部J10Cは、腰部6Cに設けられた第1基準点でもある。胸腰部中央リンク19LC自体が、1回転自由度を有する。モータ19Mは、胸腰部中央リンク19LCの長さを変更する力を発生させる第1動力源である。胸腰部中央リンク19LCの長さは、胸部中央リンク取付部J5Cと腰部中央リンク取付部J10Cの距離である。胸腰部中央リンク19LC、胸部中央リンク取付部J5C、腰部中央リンク取付部J10Cおよびモータ19Mを有する胸腰部中央アクチュエータ19が、第1アクチュエータである。
胸腰部左リンク21LCが、5回転自由度を有する第2リンクである。中央リンク左リンク取付部J7Cが、胸腰部中央リンク19LCに設けられた第1リンク第2取付部である。中央リンク左リンク取付部J7Cは、胸部中央リンク取付部J5Cに対する相対的な位置関係が固定されている。中央リンク左リンク取付部J7Cに、胸腰部左リンク21LCの一端が少なくとも2回転自由度を有して回転可能に取付けられる。腰部左リンク取付部J9Cが、腰部6Cに設けられた第1部材第2取付部である。腰部右リンク取付部J8Cには、胸腰部左リンク21LCの他端が少なくとも2回転自由度を有して回転可能に取付けられる。腰部左リンク取付部J9Cは、胸腰部関節部18に対する相対的な位置関係が固定されている。腰部左リンク取付部J9Cは、腰部6Cに設けられた第2基準点でもある。胸腰部左リンク21LC自体が、1回転自由度を有する。モータ21Mは、胸腰部左リンク21LCの長さを変更する力を発生させる第2動力源である。胸腰部左リンク21LCの長さは、中央リンク左リンク取付部J7Cと腰部左リンク取付部J9Cの距離である。胸腰部左リンク21LC、中央リンク左リンク取付部J7C、腰部左リンク取付部J9C、モータ21Mを有する胸腰部左アクチュエータ21が、第2アクチュエータである。
胸腰部右リンク20LCが、5回転自由度を有する第3リンクである。胸部右リンク取付部J6Cが、胸部5Cに設けられた第2部材第3取付部である。胸部右リンク取付部J6Cは、胸部5Cに対する相対的な位置関係が固定されている。胸部右リンク取付部J6Cに、胸腰部右リンク20LCの一端が少なくとも2回転自由度を有して回転可能に取付けられる。腰部右リンク取付部J8Cが、腰部6Cに設けられた第1部材第3取付部である。腰部右リンク取付部J8Cに、胸腰部右リンク20LCの他端が少なくとも2回転自由度を有して回転可能に取付けられる。胸腰部右リンク20LC自体が、1回転自由度を有する。モータ20Mは、胸腰部右リンク20LCの長さを変更する力を発生させる第3動力源である。胸腰部右リンク20LCの長さは、胸部右リンク取付部J6Cと腰部右リンク取付部J8Cの距離である。胸腰部右リンク20LC、胸部右リンク取付部J6C、腰部右リンク取付部J8C、モータ20Mを有する胸腰部右アクチュエータ20が、第3アクチュエータである。
腰部基準平面は、第1部材第1取付部、第1部材第2取付部および第1部材第3取付部を通る平面である第1部材基準平面である。第1捻り中心は、第1部材基準平面と捻り軸との交点である。第1線分は、第1捻り中心と第1部材第1取付部を結ぶ線分である。第2線分は、第1捻り中心と第1部材第2取付部を結ぶ線分である。第3線分は、第1捻り中心と第1部材第3取付部を結ぶ線分である。
胸部5Cのように捻り軸との間の角度が固定されている第2部材では、第2部材第1取付部を通り捻り軸に垂直な平面と捻り軸との交点を第2捻り中心と呼ぶ。第2捻り中心、第2部材第1取付部および第2部材第2取付部を通る平面を第2部材基準平面と呼ぶ。胸部5Cでは、胸部基準平面が第2部材基準平面である。第2部材基準平面において、第2捻り中心と第2部材第1取付部を結ぶ線分が、第4線分である。第5線分は、第2捻り中心と第2部材第1取付部を結ぶ線分である。
胸腰部中央リンク19LC、胸腰部右リンク20LCおよび胸腰部左リンク21LCが軸回りの1回転自由度を持たないようにして、胸部5Cまたは腰部6Cに設けられたリンク取付部が3回転自由度を有するようにしてもよい。
肩部C4Cの構造は、肩部C4と基本的に同じである。胸側主リンク取付部J1が、上腕部主リンク取付部J20とほぼ同じ高さにある。胸側補助リンク取付部J2は、胸側主リンク取付部J1よりも低いすなわち腰部6Cに近い位置にある。上腕部駆動補助リンク15Lが、斜め上に向かって延在する。上腕部駆動補助リンク15Lが斜め下から上腕部駆動主リンク14Lと、上腕部駆動主リンク側補助リンク取付部J21で接続する。上腕部7Cを上下させる際に、主に上腕部駆動補助リンク15Lが伸縮する。上腕部7Cを左右方向に移動させる際に、主に上腕部駆動主リンク14Lが伸縮する。上腕部駆動補助リンク15Lが斜め下から上腕部駆動主リンク14Lと接続するので、上腕部7Cを上げる際に必要な力を上腕部駆動補助アクチュエータ15で発生させやすい。胸側補助リンク取付部J2を胸側主リンク取付部J1よりも低い段違いの位置に配置する。つまり、上腕部駆動補助リンク15Lは、上腕部駆動主リンク14Lを介して、上腕部7Cを下側から付き上げるように支持する。そうすることで、人型上半身ロボット100Cは、上腕部7Cを含む上肢部3Cの上下方向の位置をより安定的に保持できる。
図134から図137を参照して、肘部C5Cの構造を説明する。図134、図135、図136は、人型上半身ロボット100Cが有する肘部C5Cの斜視図、正面図および側面図である。図137は、肘部C5Cのリンク配置を説明する斜視図である。
上腕骨部7Bは、上腕部内側フレーム34Fの上面に設けられた上腕骨部装着部7Hにはめ込まれる。肘部駆動内側リンク取付部J24には、前腕部8Cと接続するための肘部先端部8Dが設けられる。肘部先端部8Dは、前腕部8Cの肘部装着穴8H(図138などに図示)に装着される。また、肘関節部31のヨークには、根元側に肘関節部先端31Dが設けられる。肘関節部先端31Dは、前腕部8Cの肘関節部接続穴8J(図138などに図示)に装着される。
肘部C5Cの構造は、肘部C5と基本的に同じである。肘部C5Cが、肘部C5と異なる点を説明する。上腕部外側アクチュエータ34Pは、ナット34B、レール34Cおよびレール34Cに係合する把持部34Dを有さない。それらの替りに、スプライン軸34Eおよびナット34Jを有する。ナット34Jは、スプライン軸34Eが通るガイド穴およびねじ棒34Aが通る駆動軸穴(貫通穴)を有する有穴部材である。ガイド穴は、ナット34Jを貫通するように設けられる。ねじ棒34Aおよびスプライン軸34Eは平行である。スプライン軸34Eおよびねじ棒34Aが通っているので、ねじ棒34Aが回転してもナット34Jは回転しない。スプライン軸34Eは、ガイド穴を通りねじ棒34Aに平行に設けられたガイド軸である。ガイド穴とスプライン軸34Eが、ナット34Jが回転することを防止する第2回転防止部を構成する。上腕部外側リンク取付部J22は、ナット34Jのガイド穴および駆動軸穴で挟まれる部分に設けられる。
駆動軸穴の内面には、ねじ棒34Aの外面に設けられた雄ねじとかみ合う雌ねじが設けられている。モータ34Mが回転すると、その回転がタイミングベルトによりねじ棒34Aに伝えられる。ねじ棒34Aが回転すると、ナット34Jは回転できないので、ナット34Jはねじ棒34Aおよびスプライン軸34Eに沿って移動する。
スプライン軸34Eは、表面が滑らかな金属の円筒である。ガイド穴の内面には、スプライン軸34Eとの摩擦が小さくなるようにベアリングなどが設けられる。
上腕部外側リニアガイド34GCは、ねじ棒34A、スプライン軸34E、ナット34J、上腕部外側フレーム34Fを有する。上腕部外側フレーム34Fは、ねじ棒34A、スプライン軸34E、ナット34Jを収納する。ねじ棒34Aを通る直線が、上腕部外側フレーム34Fの最も肩側の部分と交差する点を第2基準点P2Nとする。第2基準点P2Nは、図135に図示する。上腕部外側リニアガイド34GCが、ナット34Jをねじ棒34Aに沿って移動するようにガイドする第2ガイド部を構成する。上腕部外側リニアガイド34GCは、肘関節部31および第2基準点P2Nに対する相対的な位置関係が固定されて上腕部7Cに設けられる。
上腕部内側アクチュエータ35Pも、上腕部外側アクチュエータ34Pと同様に、スプライン軸35Eおよびナット35Jを有する。ナット35Jに設けられたガイド穴とスプライン軸35Eが、ナット35Jが回転することを防止する第1回転防止部を構成する。上腕部内側リニアガイド35GCは、上腕部外側リニアガイド34GCと同様な構造である。上腕部内側リニアガイド35GCは、ねじ棒35A、スプライン軸35E、ナット35J、上腕部内側フレーム35Fを有する。上腕部外側フレーム35Fは、ねじ棒35A、スプライン軸35E、ナット35Jを収納する。ねじ棒35Aを通る直線が、上腕部内側フレーム35Fの最も肩に近い部分と交差する点を第1基準点P1Nとする。第1基準点P1Nは、図135に図示する。上腕部内側リンク取付部J23は、ナット34Jのガイド穴および駆動軸穴で挟まれる部分に設けられる。上腕部内側リニアガイド35GCが、ナット35Jをねじ棒35Aに沿って移動するようにガイドする第1ガイド部を構成する。上腕部内側リニアガイド35GCは、肘関節部31および第1基準点P1Nに対する相対的な位置関係が固定されて上腕部7Cに設けられる。
ナット34Jにねじ棒34Aとスプライン軸34Eとが通っているので、ナット34Jに働く力を2本の棒で分散して受けることができる。ナット35Jに関しても同様である。
肘関節部に3回転自由度を持たせてもよい。肘関節部が3回転自由度を有する場合は、上腕部と前腕部を、3本目のリンクである可変長リンク(第3リンク)により結ぶ。可変長リンクは、5回転自由度を有し、上腕部に少なくとも2回転自由度を有して回転可能に取付けられ、前腕部に少なくとも2回転自由度を有して回転可能に取付けられる。第3リンクである可変長リンクは、ねじ機構を利用するものでも、油圧機構を利用するものでもよい。3本目のリンクは、リンクの他端を移動させるリニアアクチュエータを用いたものでもよい。
図138から図144を参照して、手首部C6Cの構造を説明する。図138は、人型上半身ロボット100Cが有する手首部C6Cの斜視図である。図139は、手首部C6Cの別の斜視図である。図140は、手首部C6Cの正面図である。図141は、手首部C6Cの右側面図である。図142は、手首部C6Cのリンク配置を説明する斜視図である。図143は、手首部C6Cの基準状態でのリンク配置を前腕部が延在する方向から見た図である。図144は、手首部C6Cの基準状態でのリンク配置を評価する変数を示す図である。
手首部C6Cが手首部C6と異なる点は、前腕部外側リンク38LCが手首板部91Cではなく、前腕部正面リンク37LCの途中に取付けられる点である。前腕部正面リンク37LCの一端は、手部側正面リンク取付部J29Cで手首板部91Cに取付けられる。前腕部正面リンク37LCの他端は、前腕部正面リンク取付部J26Cで前腕部8Cに取付けられる。前腕部外側リンク38LCの一端は、正面リンク側外側リンク取付部J30Cで前腕部正面リンク37LCに取付けられる。前腕部外側リンク38LCの他端は、前腕部外側リンク取付部J27Cで前腕部8Cに取付けられる。前腕部内側リンク39LCの一端は、手部側内側リンク取付部J31Cで手首板部91Cに取付けられる。前腕部内側リンク39LCの他端は、前腕部外側リンク取付部J27Cで前腕部8Cに取付けられる。
図143に示すように、手首板部91Cは、ほぼ正方形の1つの角を大きく切り、残りの3つの角を小さく同じように切った八角形の板状の形状である。手首板部91Cにおいて、手首関節部36、手部側正面リンク取付部J29Cおよび手部側内側リンク取付部J31Cは、ほぼ直角二等辺三角形になるように配置されている。この三角形は、手首板部91Cの八角形の辺からの距離が各辺でほぼ同じである。手首板部91Cは、捻り軸である前腕骨部8Bとの角度が変更可能である。
手首関節部36は球面軸受けである。手首関節部36は、3回転自由度を有する。手首板部91Cには、手首関節部36が設けられた面に2個の突起が設けられる。2個の突起は、手首関節部36との間の距離がほぼ同じである。2個の突起のそれぞれと手首関節部36を結ぶ2本の線分は、手首関節部36においてほぼ直交する。2個の突起のそれぞれには、手首関節部36に向かう方向の手首板部91Cに平行な回転軸の回りを回転する回転部材と、回転部材と共に回転するヨークが設けられる。1個のヨークは、手部側正面リンク取付部J29Cを構成する。もう1個のヨークは手部側内側リンク取付部J31Cを構成する。手部側正面リンク取付部J29Cが有するヨークは、前腕部正面リンク37LCの他端に設けられた貫通穴を通る軸部材を挟んで保持する。手部側内側リンク取付部J31Cが有するヨークは、前腕部内側リンク39LCの他端に設けられた貫通穴を通る軸部材を挟んで保持する。正面リンク側外側リンク取付部J30Cでは、ヨークが前腕部外側リンク38LCの一端に設けられる。前腕部正面リンク37LCには、その延在する方向である軸回りに回転可能な部材が装着されている。正面リンク側外側リンク取付部J30Cが有するヨークは、回転可能な部材から出る突起を回転可能に挟んで保持する。正面リンク側外側リンク取付部J30Cは、前腕部正面リンク37LCの軸回りの1回転自由度を含む2回転自由度を有する。
前腕部正面リンク取付部J26C、前腕部外側リンク取付部J27Cおよび前腕部内側リンク取付部J28Cは、前腕部8Cの3方向に張り出した部分に設けられる。3方向に張り出した部分は、手首関節部36から同じ長さの位置に設けられる。前腕部正面リンク取付部J26C、前腕部外側リンク取付部J27Cおよび前腕部内側リンク取付部J28Cは、この張り出した部分から前腕部8Cに垂直に外側に向く回転軸の回りに回転するヨークを有する。前腕部正面リンク取付部J26Cでは、ヨークが前腕部正面リンク37LCの一端に設けられた貫通穴を通る軸部材を挟んで保持する構造である。前腕部外側リンク取付部J27Cおよび前腕部内側リンク取付部J28Cも同様な構造である。前腕部正面リンク取付部26C、前腕部外側リンク取付部J27Cおよび前腕部内側リンク取付部J28Cにおいて、ヨークが回転する回転軸が向く方向は、約70度の等間隔な方向である。前腕部正面リンク取付部26Cの回転軸が中央に配置される。
図144により、手首部でのリンク取付部の配置に関する条件を表現するための線分などを定義する。図144は、手首部の基準状態でのリンク配置を評価する変数を示す図である。図144(A)では、上腕部8Cでのリンク取付部の配置を示す。図144(B)では、手首関節部36側でのリンク取付部の配置を示す。前腕部正面リンク取付部J26C、前腕部外側リンク取付部J27Cおよび前腕部内側リンク取付部J28Cで決定される平面を、前腕部基準平面と呼ぶ。前腕部基準平面は、図144(A)には、前腕部基準平面での前腕骨部8B、腰部前腕部正面リンク取付部J26C、前腕部外側リンク取付部J27Cおよび前腕部内側リンク取付部J28Cの位置関係を示す。前腕部基準平面と前腕骨部8Bの交点を第1捻り中心と呼ぶ。第1捻り中心の符号は、前腕骨部と同じ8Bとする。捻り軸である前腕骨部8Bの方向は、第1部材である前腕部8に固定されている。そのため、手首関節部36の接続角度が変化しても、第1捻り中心の位置は変化しない。
前腕部正面リンク取付部J26Cと第1捻り中心8Bを結ぶ線分を、第1線分S21と呼ぶ。前腕部外側リンク取付部J27Cと第1捻り中心8Bを結ぶ線分を、第3線分S23と呼ぶ。前腕部内側リンク取付部J28Cと第1捻り中心8Bを結ぶ線分を、第2線分S22と呼ぶ。第1線分S21、第2線分S22および第3線分S23の長さを、変数L21、L22およびL23で表す。第1線分S21と第3線分S23とがなす角度を、変数η1Aで表す。
手首部C6Cでは、η1Aは約90度である。すなわち、第1線分S21と第3線分S23はほぼ直交する。すなわちη1Aは、例えば60度から120度に決められた第1交差角範囲内の角度である。第1線分S21が、第2線分S22と第3線分S23の間に存在する。L21およびL23の中で短い方を長い方で割った値である長短比λは、λ=0.99である。長短比λは、例えば0.8に決められた下限比以上である。胴体屈曲部C2Cの場合と同様に、手首部C6Cでも手部9Cの荷重を前腕部8Cの3箇所のリンク取付部で安定して支持できる。
手首関節部36、手部側正面リンク取付部J29Cおよび手部側内側リンク取付部J31Cを通る平面を、手首部基準平面と呼ぶ。手首部基準平面は、第2部材基準平面である。図144(B)には、手首部基準平面での手首関節部36、手部側正面リンク取付部J29Cおよび手部側内側リンク取付部J31Cの位置関係を示す。手首関節部36と手部側正面リンク取付部J29Cを結ぶ線分を、第4線分S24と呼ぶ。手首関節部36と手部側内側リンク取付部J31Cを結ぶ線分を、第5線分S25と呼ぶ。第4線分S24と第5線分S25がなす角度を、変数η2Aで表す。
手首部C6Cでは、η2Aは約92度である。η2Aは、例えば55度から125度に決められた第2交差角範囲内の角度である。胴体屈曲部C2Cの場合と同様に、手首部C6Cでも手部9Cをどの方向にも適切に傾けることができる。正面リンク側外側リンク取付部J30Cで、前腕部正面リンク37LCと前腕部外側リンク38LCとがなす角度ζAは、ζA=約26度である。ζAは、例えば20度などのように決められた第3交差角以上である。そのため、手部9Cを前腕骨部8Bの回りを効率的に回転させることができる。
手首部C6Cは、第1部材である前腕部8Cに第2部材である手部9Cを手首関節部36により回転可能に接続する回転接続機構である。手首関節部36は、前腕部8Cに対する方向が固定された捻り軸の回りに手部9Cを前腕部8Cに対して回転可能にし、かつ前腕部8Cに手部9Cを、3回転自由度を有して回転可能に接続する関節部である。
前腕部正面リンク37LCが、5回転自由度を有する第1リンクである。前腕部正面リンク取付部J26Cが、前腕部8Cに設けられた第1部材第1取付部である。前腕部正面リンク取付部J26Cは、手首関節部36に対する相対的な位置関係が固定されている。前腕部正面リンク取付部J26Cは、前腕部8Cに設けられた第1基準点でもある。前腕部正面リンク取付部J26Cに、前腕部正面リンク37LCの他端が少なくとも2回転自由度を有して回転可能に取付けられる。手部側正面リンク取付部J29Cが、手部9Cに設けられた第2部材第1取付部である。手部側正面リンク取付部J29Cに、前腕部正面リンク37LCの一端が少なくとも2回転自由度を有して回転可能に取付けられる。手部側正面リンク取付部J29Cは、手首関節部36に対する相対的な位置関係が固定されている。前腕部正面リンク37LC自体が1回転自由度を有する。モータ37Mが、前腕部正面リンク37LCの長さを変更する力を発生させる第1動力源である。前腕部正面リンク37LCの長さは、前腕部正面リンク取付部J26Cと手部側正面リンク取付部J29Cの距離である。前腕部正面リンク37LC、前腕部正面リンク取付部J26C、手部側正面リンク取付部J29C、モータ37Mを有する前腕部正面アクチュエータ37が、第1アクチュエータである。
前腕部外側リンク38LCが、5回転自由度を有する第2リンクである。前腕部外側リンク取付部J27Cが、前腕部8Cに設けられた第1部材第2取付部である。前腕部外側リンク取付部J27Cは、手首関節部36に対する相対的な位置関係が固定されている。前腕部外側リンク取付部J27Cは、前腕部8Cに設けられた第2基準点でもある。前腕部外側リンク取付部J27Cに、前腕部外側リンク38LCの他端が少なくとも2回転自由度を有して回転可能に取付けられる。正面リンク側外側リンク取付部J30Cが、前腕部正面リンク37LCに設けられた第1リンク第2取付部である。正面リンク側外側リンク取付部J30Cは、正面リンク側正面リンク取付部J29Cに対する相対的な位置関係が固定されている。正面リンク側外側リンク取付部J30Cに、前腕部外側リンク38LCの一端が少なくとも2回転自由度を有して回転可能に取付けられる。前腕部外側リンク38LC自体が1回転自由度を有する。モータ38Mが、前腕部外側リンク38LCの長さを変更する力を発生させる第2動力源である。前腕部外側リンク38LCの長さは、前腕部外側リンク取付部J27Cと正面リンク側外側リンク取付部J30Cの距離である。前腕部外側リンク38LC、前腕部外側リンク取付部J27C、正面リンク側外側リンク取付部J30C、モータ38Mを有する前腕部外側アクチュエータ38が、第2アクチュエータである。
前腕部内側リンク39LCが、5回転自由度を有する第3リンクである。前腕部内側リンク取付部J28Cが、前腕部8Cに設けられた第1部材第3取付部である。前腕部内側リンク取付部J28Cは、手首関節部36に対する相対的な位置関係が固定されている。前腕部内側リンク取付部J28Cに、前腕部内側リンク39LCの他端が少なくとも2回転自由度を有して回転可能に取付けられる。手部側内側リンク取付部J31Cが、手部9Cに設けられた第2部材第3取付部である。手部側内側リンク取付部J31Cは、手首関節部36に対する相対的な位置関係が固定されている。手部側内側リンク取付部J31Cに、前腕部内側リンク39LCの一端が少なくとも2回転自由度を有して回転可能に取付けられる。前腕部内側リンク39LC自体が1回転自由度を有する。モータ39Mが、前腕部内側リンク39LCの長さを変更する力を発生させる第3動力源である。前腕部内側リンク39LCの長さは、前腕部内側リンク取付部J28Cと手部側内側リンク取付部J31Cの距離である。前腕部内側リンク39LC、前腕部内側リンク取付部J28C、手部側内側リンク取付部J31C、モータ39Mを有する前腕部外側アクチュエータ38が、第3アクチュエータである。
前腕部基準平面は、第1部材基準面である。手部9Cは、捻り軸である前腕骨部8Bとの角度が変更可能な第2部材である。手部基準面は、第2部材第1取付部、第2部材第3取付部および関節部を通る第2部材基準平面である。第2部材基準平面において、関節部と第2部材第1取付部を結ぶ線分が第4線分である。関節部と第2部材第3取付部を結ぶ線分が第5線分である。なお、捻り軸の方向が第2部材に対して固定されている場合は、第2部材第1取付部を通る捻り軸に垂直な平面と捻り軸との交点である第2捻り中心を、関節部の替わりに使用して、第4線分と第5線分を定義する。つまり、第2捻り中心と第2部材第1取付部を結ぶ線分が第4線分である。第2捻り中心と第2部材第3取付部を結ぶ線分が第5線分である。
図145から図152を参照して、手部9Cの構造を説明する。図145は、手首部を含めて手部9Cを手の甲側から見た図である。図146は、手首部を含めて手部9Cを側面から見た図である。図147から図149は、手部9Cを手の甲側から、手の平側から、側面からそれぞれ見た図である。図150および図151は、手部9Cが有する2方向回転指を指元の軸回りに回転させる指元部の斜視図である。図150および図151では、指元部80を掌板部82から分離した状態を示している。図151は、指元部80を第1指部83側から見た斜視図である。図152は、指元部80を掌板部82側から見た斜視図である。
手部9Cでは、第1指部83、第2指部84、第3指部85、第4指部86は、実施の形態4の手部9Bと同じである。手部9Bが有する親指に相当する手幅回転指88の替わりに、2方向回転指89を手部9Cは有する。2方向回転指89は、指先から第1指関節部89Dまでは、手幅回転指88の指先から第1指関節部88Dまでと同じである。2方向回転指89は、第1指関節部89Dと掌板部82との間に第1指関節部89Dから指先を回転させる指元部80を有する。
指元部80は、指元指節部80A、指元モータ固定部80B、指元指関節部80C、指元モータ80D、指元ギヤヘッド80E、指元ウォーム80F、指元ウォームホイール80Gを有する。指元指節部80Aは、掌板部82にほぼ平行に第1指部83が延在する方向とほぼ直交する方向に延在する。内部に空間を有する指元モータ固定部80Bは、掌板部82に固定される。指元モータ固定部80Bの側面に指元指節部80Aが接続する。指元指節部80Aには、第1指関節部89Dにより第1指節部89Aが回転可能に接続する。
指元指関節部80Cは、指元指節部80Aが延在する方向を向く回転軸Rx3を有する。指元モータ80Dおよび指元ギヤヘッド80Eは、掌板部82に直交するように指元モータ固定部80Bの外面に固定される。指元モータ80Dにより駆動される回転軸には、指元ウォーム80Fが接続する。互いに歯がかみ合う指元ウォーム80Fおよび指元ウォームホイール80Gは、指元モータ固定部80Bの内部に存在する。指元ウォームホイール80Gと接続する回転軸Rx3が、指元モータ固定部80Bの壁面に設けられた貫通穴を通り、指元指節部80Aと接続する。指元モータ80Dが回転すると、指元指節部80Aが回転軸Rx3の回りを回転する。つまり、指元指関節部80Cは、回転軸Rx3を有するウォームギヤ機構により指元指節部80Aを指元モータ固定部80Bおよび掌板部82に対して回転させる。ウォームギヤ機構を使用しているので、指元指関節部80Cは大きな力を出すことができる。また、電源供給が断たれた場合でも、回転軸Rx3回りの回転角を維持できる。
回転軸Rx3は、第1指節部89Aに対して決められた角度の方向に延在する回転軸である指元回転軸である。決められた角度の方向とは、Y軸に平行な回転軸Rx3に対して第1指節部89Aは約30度の角度をなす方向である。指元部80は、回転軸Rx3の回りに指元指節部80Aを回転させる。
指元指節部80Aには、2個の突起80AAおよび突起80ABが設けられる。指元モータ固定部80Bには、突起80BAが設けられる。突起80BAは、指元指節部80Aと共に回転軸Rx3の回りを回転する突起80AAおよび突起80ABの間に存在する。突起80BAと、突起80AAおよび突起80ABとは、指元指節部80Aが回転軸Rx3の回りで回転できる範囲を制限する。
指元指節部80Aは、第1モータ固定部89Vが掌板部82に対して手の平側を向くように第1モータ固定部89Vと接続する。第1モータ固定部89Vは、指元指節部80Aに対して手の平側に傾いて接続する。第1モータ固定部89Vは、側面から見るとL字状に折れ曲がった板材である。L字の一方の面で、第1モータ固定部89Vに指元指節部80Aが斜めに接続する。第1モータ固定部89VのL字をなす2面の内側に、指元ヨーク部89Gが接続される。指元ヨーク部89Gの内部には、第1指関節部89Dの回転軸と連動して回転する第1ウォームホイール89K、第1ホイール連動部89AAおよび第1ウォーム89Jが存在する。第1モータ固定部89VのL字の他方の面には、指部第1モータ89Hおよび第1ギヤヘッド89Tが固定される。第1指関節部89Dの回転軸Rz3は、指元ヨーク部89Gおよび回転軸Rx3に垂直である。指部第1モータ89Hおよび第1ギヤヘッド89Tが固定される面と対向する面として、ウォーム先端保持部89VBが指元ヨーク部89Gに取付けられる。ウォーム先端保持部89VBには、第1ウォーム89Jの先端が挿入される穴が設けられている。
指部第1モータ89Hの回転軸には、指元ヨーク部89Gおよび第1モータ固定部89Vで囲まれる位置で第1ウォーム89Jが接続する。第1ウォーム89Jの歯は第1ウォームホイール89Kの歯とかみ合う。指部第1モータ89Hが回転すると第1ウォーム89Jおよび第1ウォームホイール89Kが回転して、第1ホイール連動部89AAと指元ヨーク部89Gとの間の角度が変化する。こうして、第1指関節部89Dで第1指節部89Aを曲げ伸ばしができる。
2方向回転指89は、直交する回転軸Rx3および回転軸Rz3の回りの2方向で回転可能である。回転軸Rz3の回りに回転することで、2方向回転指89は指先が掌板部82から離れる方向に回転する。回転軸Rx3の回りに回転することで、2方向回転指89は第1指部83と並ぶ方向から掌板部82と直交する方向まで回転できる。
2方向回転指89が2方向に回転できるので、手部9Cは持つ物体の形状に応じて5本の指を適切に曲げて物体を適切に持つことができる。大きい物体の場合は、2方向回転指89を第1指部83と並ぶ位置に移動させて、掌板部82および5本の指の上に物体を載せることができる。2方向回転指89を有する手部9Cは、人と同程度の指駆動を実現し、いろいろな手を使う高度な作業をこなせる効果を有する。なお、2本以上の指部を、指元部を有する2方向回転指としてもよい。
動作を説明する。人型上半身ロボット100Cの姿勢は、胸腰部関節部18、肩関節部13、肘関節部31、手首関節部36がとる角度により決まる。これらの関節部の角度は、その関節部を駆動するリンクの長さにより決まる。人型上半身ロボット100Cの各関節部を駆動するリンクを、指定された姿勢をとることができる各関節部の角度である指定角度から決まる値になるようにする。そうすることで、人型上半身ロボット100Cが指定された姿勢をとることができる。人型上半身ロボット100Cが動く場合も、姿勢の変化に対応する指定角度の時系列をリンクの長さの時系列に変換して、リンクの長さを決められた時系列に応じて変化させることで、指定されたように人型上半身ロボット100Cを動かすことができる。
各関節部について、その関節部が指定角度をとることができるような可変長リンクの長さの決め方、およびリニアガイドではリンク取付部の位置の決め方を説明する。なお、指定角度は、その関節部の可動範囲内であることが必要である。まず、胸腰部関節部18について説明する。胸腰部関節部18は、胸部5Cの腰部6Cに対する接続方向を変更する。
胸腰部関節部18での関節部およびリンク取付部の位置を、以下の変数により表現する。図153は、胸腰部関節部での関節部およびリンク取付部の位置を表現する変数を説明する図である。
各点の位置を表す変数を以下のように定義する。
P0s:胸腰部関節部18の位置。
P1s:腰側中央リンク取付部J10Cの位置。
P2s:腰側右リンク取付部J8Cの位置。
P3s:腰側左リンク取付部J9Cの位置。
P4s:胸側中央リンク取付部J5Cの位置。
P4s0:胸側中央リンク取付部J5の基準状態での位置。
P5s:胸側右リンク取付部J6Cの位置。
P5s0:胸側右リンク取付部J6Cの基準状態での位置。
P6sA:中央リンク左リンク取付部J7Cの位置。
P10s:腰側中央リンク取付部J10Cを通り胸腰部中央リンク19LCに垂直な平面と胸腰部中央リンク19LCとの交点の位置。
P11s:腰部左リンク取付部J9Cを通り胸腰部左リンク21LCに垂直な平面と胸腰部左リンク21LCとの交点の位置。
P12s:腰側右リンク取付部J8Cを通り胸腰部右リンク20LCに垂直な平面と胸腰部右リンク20LCとの交点の位置。
胸腰部関節部18の回転角度は、実施の形態1の場合と同様に以下の変数で表現する。
αs:胸腰部関節部18のX軸回りの回転角。基準状態でαs=0
βs:胸腰部関節部18のY軸回りの回転角。基準状態でβs=0
γs:胸腰部関節部18のZ軸回りの回転角。基準状態でγs=0
[Rs]:胸腰部関節部18の回転行列。回転行列[R2]は、以下のようになる。
リンクの長さを、以下の変数で表現する。
L1s:胸腰部中央リンク19LCの長さ。線分P10sP4sの長さ。
L1sd:線分P1sP4sの長さ。
L2s:胸腰部右リンク20LCの長さ。線分P11sP5Sの長さ。
L2sd:線分P2sP5sの長さ。
L3s:胸腰部左リンク21LCの長さ。線分P12sP6sAの長さ。
L3sd:線分P3sP6sAの長さ。
Hd:胸腰部中央リンク19LC、胸腰部右リンク20LC、胸腰部左リンク21LCでの腰部6Cに設けられたリンク取付部とねじ棒との間の距離。
ここでは、各点および各リンクの長さを計算する手順を説明する。点P0s、P1s、P2s、P3sの位置は、固定である。胸腰部関節部18の角度が決まると、[Rs]が決まる。そして、点P4s、P5sの位置が、以下のように決まる。
P4s=[Rs]*P4s0
P5s=[Rs]*P5s0
点P4s、P5sの位置が決まると、L1sd、L2sdも決まる。
点P1s、P4sの位置から、点P10sの位置を決める。腰側中央リンク取付部J10Cのヨークを回転させる回転軸と点P1sとを含む平面を第1リンク平面と呼ぶ。点P10sは、第1リンク平面上に存在する。三平方の定理により、L1sを以下のように決める。
L1s=√(L1sd 2−Hd2)
点P10sの位置は、第1リンク平面において点P1sからHdの距離であり、点P4sからL1sの距離の点である。
点P10sの位置が決まると、次に点P6sAの位置を決める。点P6sAの位置は、点P4s、P10sを通る直線において点P4sから決められた距離の位置である。点P6sAの位置が決まると、L3sdも決まる。
点P3s、P6sAの位置から、点P12sの位置を決める。腰部右リンク取付部J8Cのヨークを回転させる回転軸と点P3sとを含む平面を第2リンク平面と呼ぶ。点P12sは、第2リンク平面上に存在する。三平方の定理により、L3sを以下のように決める。
L3s=√(L3sd 2−Hd2)
点P12sの位置は、第2リンク平面において点P3sからHdの距離であり、点P6sAからL3sの距離の点である。
点P2s、P5sの位置から、点P11sの位置を決める。腰部左リンク取付部J9Cのヨークを回転させる回転軸と点P2sとを含む平面を第3リンク平面と呼ぶ。点P11sは、第3リンク平面上に存在する。三平方の定理により、L2sを以下のように決める。
L2s=√(L2sd 2−Hd2)
点P11sの位置は、第3リンク平面において点P2sからHdの距離であり、点P5sからL2sの距離の点である。こうして、すべてのリンク取付部の位置と各リンクの長さを決めることができる。
各リンクの長さを決めると、胸腰部関節部18の回転角度がどのように決まるかを検討する。胴体屈曲部C2Cでは、胴体屈曲部C2よりもリンクの長さの変化が胸腰部関節部18の回転角度へもたらす影響が考慮しやすくなる。
図154は、人型上半身ロボット100Cが有する胴体屈曲部C2Cでリンクの長さを決めることで位置が固定される点を示す図である。図154(A)が3本のリンクの長さが未定の状態である。図154(B)が、第1リンクである胸腰部中央リンク19LCと、第2リンクである胸腰部左リンク21LCの長さを決めた状態である。図154(C)が、3本のリンクの長さを決めた状態である。図において、長さが決まったリンクを太い実線で表現し、長さが未定のリンクを細い点線で表現する。位置が決まった点を二重丸で表現し、位置が未定の点を白丸で表現する。関節部である胸腰部関節部18を表す点では、その回転角度が決まった場合に二重丸で表現する。
図154(A)に示すように、3本の可変長リンクの長さが決まっていない状態では、胸腰部関節部18の回転角度および第2部材である胸部5Cに存在する点の位置は未定である。第1リンク19LCと第2リンク21LCの長さを決めると、点P4Sは点P0S、P1S、P3Sからの距離が決まる。その結果、図154(B)に示すように、点P4Sの位置は一意に決まる。点P4Sの位置が決まるということは、胸部5Cの捻り軸である背骨部56の回りの回転角度と、第2部材第1取付部である腰側中央リンク取付部J10Cの方向への背骨部56の傾き角度が決まることである。
図154(B)に示す状態では、胸腰部関節部18は、点P0Sおよび点P4Sを通る回転軸R11の回りに回転可能である。そのため、点P5Sは、点P0Sからの距離および点P4Sからの距離が一定のまま回転軸R11の回りを回転する。点P0S(関節部)と点P4S(第2部材第1取付部)を結ぶ回転軸R11を、第1取付部方向軸と呼ぶ。なお、図154(B)では回転軸R11がXZ平面上にあるように書いているが、必ずしもそうなる訳ではない。第1リンク19LCと第2リンク21LCの長さにより決まる点P4Sの位置が、XZ平面上に存在しなければ、回転軸R11はXZ平面と交差する方向になる。
さらに、第3リンク20LCの長さを決めると、点P5Sおよび胸腰部関節部18の回転角度が決まる。こうして、図154(C)に示す状態になる。
この発明に係る3回転自由度を有する関節部を有する回転接続機構では、第1リンクおよび第2リンクの長さを決めることで捻り軸の回りの回転角度と、捻り軸と第2部材第1取付部を含む平面(第1取付部存在面と呼ぶ)内での捻り軸の傾き角度(第1取付部傾斜角度と呼ぶ)を決めることができる。第1取付部存在面に直交する回転軸を、第1取付部傾斜軸と呼ぶ。第1取付部傾斜角度は、第1取付部傾斜軸の回りの回転角度である。
第1リンクおよび第2リンクの長さを決めた状態では、第3リンクの長さを変更することで、第1取付部方向軸の回りに関節部は回転可能である。
第3リンクである胸腰部右リンク20LCの長さを決めると、図154(C)に示す状態になる。点P5Sは、点P0Sおよび点P4Sに加えて点P2Sからの距離も決まる。3点からの距離が決まるので、点P5Sの位置は一意に決まる。点P5Sの位置も決まると、関節部18の角度も決まる。
このように、第1リンクおよび第2リンクの長さを決めることで捻り軸の回りの回転角度と、第1取付部傾斜角度を決めることができる。さらに、第3リンクの長さを決めると、第1取付部方向軸の回りの回転角度を決めることができる。なお、第1リンクの長さだけを決めた状態では、3点P0S、P1S、P4Sで決まる三角形の形状が決まることになる。この状態で、第2リンクの長さを変更すると、この三角形の頂点P4Sは点P0Sおよび点P1Sを通る回転軸の回りを回転する。胴体屈曲部C2Cは、各リンクの長さに対する関節部の角度の関係が解析しやすいという特徴を有する。
比較例として実施の形態1での胴体屈曲部C2の場合について説明する。図155は、人型ロボット100が有する胴体屈曲部C2でリンクの長さを決めることで位置が固定される点を示す図である。図155(A)が3本のリンクの長さが未定の状態である。図155(B)が、第1リンクである胸腰部中央リンク19Lと、第2リンクである胸腰部左リンク21Lの長さを決めた状態である。図155(C)が、3本のリンクの長さを決めた状態である。
図155(A)に示すように、3本の可変長リンクの長さが決まっていない状態では、第2部材である胸部5に存在する点の位置は未定である。第1リンク19Lと第2リンク21Lの長さを決めると、図155(B)に示す状態になる。第1リンク19Lは、胸部5と点P4Sで接続する。第2リンク21Lは、胸部5と点P6Sで接続する。そのため、点P4Sの位置も点P5Sの位置も一意に決めることはできない。
図155(B)に示す状態では、3点P1S、P2S、P4Sで決まる三角形である第1三角形と、3点P2S、P4S、P6Sで決まる三角形である第2三角形とが、点P2Sおよび点P4Sを結ぶ底辺S30を共有して形成される。第1三角形の底辺S30に対応する頂点P1Sの角度をε1とする。第2三角形の底辺S30に対応する頂点P6Sの角度をε2とする。角度ε1と角度ε2の間には、底辺S30の長さが同じになるという制約条件がある。この制約条件が守られれば、角度ε1および角度ε2は変化可能である。
角度ε1および角度ε2が変化すると、点P5Sの位置も変化する。点P5Sの位置が変化すると、第3リンクである胸腰部右リンク20Lの長さが変化する。そのため、第3リンク20Lの長さを決めると、点P5S、P4S、P6Sの位置および関節部である胸腰部関節部18の角度も一意に決まる。第3リンク20Lの長さも決めた状態が、図155(C)である。このように、胴体屈曲部C2では、3本の可変長リンクの長さを決めた時だけ関節部の角度を決めることができる。胴体屈曲部C2では、2本の可変長リンクの長さを決めた時点では、関節部の角度の3成分の中の一部だけを決めることはできない。
肩部C4Cのリンクおよびリンク取付部の接続関係は、肩部C4と同じである。肩関節部13が指定角度を取るような可変長リンクの長さの決め方は、肩部C4Cの場合でも肩部C4の場合と同じである。肩関節部13は、2回転自由度を有する関節部である。第2リンクである上腕部駆動補助リンク15Lを第1リンクである上腕部駆動主リンク14Lに接続しているので、第1リンク14Lおよび第2リンク15Lの長さを決めることで、関節部13の回転角度を一意に決めることができる。
第2リンク15Lを第2部材である上腕骨部7Bに接続する場合でも、第1リンク14Lおよび第2リンク15Lの長さを決めることで、関節部13の回転角度を一意に決めることができる。ただし、第2部材7Bに2個のリンク取付部を設けるので、関節部13の回転角度を決める方法は少し複雑になる。
肘部C5Cでのリンクおよびリンク取付部の接続関係は、肘部C5と同じである。肘関節部31が指定角度を取るような第1リンクおよび第2リンクの取付位置の決め方は、肘部C5Cの場合でも肘部C5の場合と同じである。肘関節部31は、2回転自由度を有する関節部である。
手首部C6Cは、胴体屈曲部C2Cと同様なリンク配置を有している。したがって、3回転自由度を有する関節部である手首関節部36が指定角度を取るような、3本の可変長リンクの長さは、胴体屈曲部C2Cと同様な方法で決めることができる。手首部C6Cではリンクの両側のリンク取付部が同一直線上に存在するので、胴体屈曲部C2Cよりも処理が簡単になる。
手部9Cは、各指関節部のウォームギヤが指定された角度に対応する位置になるように、モータが駆動される。手部9Cでは、各指関節部のウォームギヤが指定された角度に対応する位置になると、各指部の第1指関節部、第2指関節部が指定された角度になる。2方向回転指89では、第1指関節部から指先全部を回転させる指元部80を有する。2方向回転指89では、指を指定した方向に向けるように指元部のウォームギヤが指定された角度に対応する位置になるようにモータが駆動される。指元部を有する指は、2本以上でもよい。
人型ロボット100が有する首部C3、股部C7、膝部C8、足首部C9の少なくとも1個に、この発明に係る2回転自由度または3回転自由度を有する関節部を有する回転接続機構を適用してもよい。
人型ロボットではなく、手部と、手部から直列に接続された1個または複数個の腕区間部とを有するロボットアームに、この発明に係る回転接続機構を適用してもよい。手部および腕区間部の何れかを第2部材として、手部から遠い側の第1部材に第2部材を2回転自由度または3回転自由度を有して回転可能に接続するように、回転接続機構を使用すればよい。そのようなロボットアームは、手部を適切な位置に適切な角度で向けることができる。
手部としては、実施の形態1の手部9、実施の形態3の手部9A、実施の形態4の手部9Bあるいは他の手部を使用してもよい。
以上のことは、他の実施の形態でもあてはまる。
実施の形態6.
実施の形態6は、人型上半身ロボットの胴体屈曲部の関節部の位置を背骨部の上端に移動させるように実施の形態5を変更した場合である。図156は、この発明の実施形態6に係る人型上半身ロボットの正面図である。人型上半身ロボット100Dでは、背骨部56と胸部5Eと接続する端(上端)に胸腰部関節部18Dを設けている。そのため、背骨部56の軸方向は、腰部6Dに対して垂直な方向に固定される。背骨部56において、腰部中央リンク取付部J10Cの高さの箇所を背骨下端部56Dと呼ぶ。背骨下端部56Dは、腰部基準平面と捻り軸である背骨部56の交点である第1捻り中心である。
胸腰部関節部18Dは、球面軸受けを有する。胸腰部関節部18Dは、胸部5Eを腰部6Dに3回転自由度を有して回転可能に接続する。第2部材である胸部5Eは、背骨部56との角度が変更可能である。その他の点では、人型上半身ロボット100Dは人型上半身ロボット100Cと同様である。
図157は、実施形態6に係る人型上半身ロボットが有する胴体屈曲部のリンク配置を示す斜視図である。人型上半身ロボット100Cに対する図124と比較すると、胸腰部関節部18Dが背骨部56の上端にある点が異なる。胸腰部関節部18Dが背骨部56の上端にあるので、胸部5Eを回転させるX軸およびY軸が、図124の場合よりも高い位置にあることになる。
人型上半身ロボット100Dが有する胴体屈曲部C2Dは、第1部材である腰部6Dに第2部材である胸部5Eを関節部である胸腰部関節部18Dにより回転可能に接続する回転接続機構である。
動作を説明する。人型上半身ロボット100Dの姿勢は、胸腰部関節部18D、肩関節部13、肘関節部31、手首関節部36がとる角度により決まる。 各関節部について、その関節部が指定角度をとることができるような可変長リンクの長さの決め方、およびリニアガイドではリンク取付部の位置の決め方は、人型上半身ロボット100Cと同様である。
胴体屈曲部C2Dでも、リンクの長さの変化の胸腰部関節部18Dの回転角度への影響が考慮しやすい。図158は、人型上半身ロボット100Dが有する胴体屈曲部C2Dでリンクの長さを決めることで位置が固定される点を示す図である。図158(A)が3本のリンクの長さが未定の状態である。図158(B)が、第1リンクである胸腰部中央リンク19LCと、第2リンクである胸腰部左リンク21LCの長さを決めた状態である。図158(C)が、3本のリンクの長さを決めた状態である。図に表示する記号の意味は、図154の場合と同じである。
図158(A)に示すように、3本の可変長リンクの長さが決まっていない状態では、関節部である胸腰部関節部18Dの回転角度および第2部材である胸部5Eに存在する点の位置は、未定である。なお、関節部18Dに対応するP0Sの位置は、各リンクの長さが変化しても変化しない。第1リンク19LCと第2リンク21LCの長さを決めると、点P4Sは3点P0S、P1S、P3Sからの距離が決まるので、図158(B)に示すように、点P4Sの位置は一意に決まる。点P4Sの位置が決まるということは、胸部5Eの捻り軸である背骨部56の回りの回転角度と、第2部材第1取付部である腰側中央リンク取付部J10Cの方向への背骨部56の傾き角度が決まることである。
図158(B)に示す状態では、関節部18Dは、2点P0S、P4Sを通る回転軸R21の回りに回転可能である。そのため、点P5Sは、点P0Sからの距離および点P4Sからの距離が一定のまま回転軸R21の回りを回転する。回転軸R21を、第1取付部方向軸と呼ぶ。なお、図158(B)では回転軸R21がXZ平面上にあり、かつX軸に平行なように書いているが、必ずしもそうなる訳ではない。
さらに、第3リンク20LCの長さを決めると、点P5Sおよび胸腰部関節部18Dの回転角度が決まる。こうして、図158(C)に示す状態になる。
このように、人型上半身ロボット100Dでも、人型上半身ロボット100Cと同様に第1リンクおよび第2リンクの長さを決めることで捻り軸の回りの回転角度と、第1取付部傾斜角度を決めることができる。さらに、第3リンクの長さを決めると、第1取付部方向軸の回りの回転角度を決めることができる。人型上半身ロボット100Dでも、各リンクの長さに対する関節部の角度の関係が解析しやすいという特徴がある。
胸腰部関節部18Dだけでなく、他の関節部の位置は変更可能である。第1部材および第2部材に対する相対的な位置が固定されており、決められた次数の回転自由度を有して第2部材を第1部材に回転可能に接続するものであれば、関節部はどこに配置されてもよい。3回転自由度を有する関節部の場合は、捻り軸の方向は第1部材または第2部材のどちらに対して方向が固定されていてもよい。
以上のことは、他の実施の形態にもあてはまる。
る。
本発明はその発明の精神の範囲内において各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の変形や省略が可能である。