以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲は図示した例に限定されない。なお、以下の説明において、同一の機能および構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
<各構成の概要>
本実施の形態に係る超音波診断装置Sは、図1および図2に示すように、超音波診断装置本体1と超音波探触子2とを備えている。図1は、超音波診断装置Sの外観構成を例示した図である。また、図2は、超音波診断装置Sの内部構成を例示したブロック図である。超音波探触子2は、図示しない生体等の被検体に対して超音波(送信超音波)を送信するとともに、この被検体で反射した超音波の反射波(反射超音波:エコー)を受信する。
超音波診断装置本体1は、超音波探触子2とケーブル3を介して接続され、超音波探触子2に電気信号の駆動信号を送信することによって超音波探触子2に被検体に対して送信超音波を送信させるとともに、超音波探触子2にて受信した被検体内からの反射超音波に応じて超音波探触子2で生成された電気信号である受信信号に基づいて被検体内の内部状態を超音波画像として画像化する。
超音波探触子2は、例えば圧電素子である振動子2aを備える。この振動子2aは、例えば、方位方向に一次元アレイ状に複数配列されている。本実施の形態では、超音波探触子2は、例えば、数十個〜数百個の振動子2aを備える。なお、振動子2aは、二次元アレイ状に配列されたものであってもよい。また、振動子2aの個数は、任意に設定することができる。
なお、本実施の形態では、超音波探触子2について、リニア走査方式の電子スキャンプローブを採用したが、電子走査方式あるいは機械走査方式のいずれを採用してもよい。また、超音波探触子2としては、リニア走査方式、セクタ走査方式あるいはコンベックス走査方式のいずれの方式を採用してもよい。また、後述するように、本実施の形態では、広帯域での超音波の送信を良好な感度にて行うことのできる超音波探触子2を採用することが好適である。
超音波診断装置本体1は、例えば、図2に示すように、操作入力部11と、送信部12と、受信部13と、音線信号生成部14と、信号処理部15と、画像処理変換部16と、表示部17と、制御部18とを備える。
操作入力部11は、例えば、診断開始を指示するコマンドや被検体の個人情報等のデータの入力等を行うための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を備えており、操作信号を制御部18に出力する。
また、図2に示すように、操作入力部11は、針強調モード選択部111を備える。針強調モード選択部111は、穿刺針を用いた超音波診断が行われる場合に、通常のBモード画像データに、穿刺針を強調して見やすくした針画像データを合成して表示する針強調モードの表示を行うことを選択可能とする。針強調モードの詳細については後述する。
送信部12は、制御部18の制御に従って、送信超音波を発生させるための電気信号である駆動信号を、ケーブル3を介して超音波探触子2に供給する。
より具体的には、送信部12は、クロック発生回路、パルス発生回路、デューティー設定部等を有し、駆動信号としてのパルス信号を生成する。クロック発生回路は、駆動信号の送信タイミングや送信周波数を決定するクロック信号を発生させる回路である。パルス発生回路は、所定の周期でパルス信号を発生させるための回路である。パルス発生回路は、例えば5値(+HV/+MV/0/−MV/−HV)の電圧を切り替えて出力することにより、矩形波によるパルス信号を発生させる。なお、パルス発生回路が切り替える電圧は5値に限定されず、適宜の値に設定してもよいが、5値以下が好適である。これにより、装置費用をさほど増大させることなく送信超音波に含まれる周波数成分を好適に制御することができる。なお、送信超音波に含まれる周波数成分は、広帯域であるほど検出可能な角度範囲が広がるため好適である。
デューティー設定部は、パルス発生回路から出力されるパルス信号のデューティー比を設定する。すなわち、パルス発生回路は、デューティー設定部によって設定されたデューティー比に従ったパルス波形によるパルス信号を出力する。デューティー比は、例えば、操作入力部11による入力操作に基づいて変更可能としてもよい。
本実施の形態では、デューティー設定部は、超音波探触子2の送信周波数帯域の中心周波数の低周波側および高周波側にそれぞれ超音波探触子2の送信周波数帯域に含まれるピークが発生するようなパルス信号のデューティー比を設定する。このようなパルス信号のデューティー比の設定方法については、例えば特開2014−168555号公報に開示された方法を適用することができる。
また、送信部12は、パルス発生回路から出力される駆動信号の同一電圧レベルの各区間の持続時間およびその電圧レベルを設定する時間および電圧設定部をさらに有していてもよい。換言すれば、パルス発生回路は、時間および電圧設定部によって設定された各区間の持続時間および電圧レベルに従ったパルス波形による駆動信号を出力する。時間および電圧設定部が設定する各区間の持続時間および電圧レベルは、例えば、操作入力部11による入力操作に基づいて変更可能としてもよい。
以上のように構成された送信部12は、制御部18の制御に従って、駆動信号を供給する複数の振動子2aを、超音波の送受信毎に所定数ずらしながら順次切り替え、出力の選択された複数の振動子2aに対して駆動信号を供給することによりスキャンを行う。特に、針強調モード選択部111に対する操作によって、針強調モードが選択された場合には、送信部12は後述する制御部18の送信遅延生成部181の制御に基づいて、複数の素子を複数のグループにまとめる素子グルーピングを行うことにより、意図的にグレーティングローブが画像視野内に送出される送信を行う。
なお、グレーティングローブとは、超音波探触子2が備えた振動子2a(圧電素子)の素子ピッチ(間隔)と送信超音波の波長との関係によって生じうる副極(サイドローブ)の一種である。図3は、メインローブ方向(0°)の連続波からなる平面波を送出した際に生成するグレーティングローブを説明するための図である。グレーティングローブは、図3に示すように、超音波探触子の複数の振動子同士の間隔(素子ピッチ(l))と波長(λ)の関係により、1波長以上ずれた角度(θ)において生じる。角度(グレーティング角度)θと、送信超音波の周波数λと、素子ピッチlとの関係の詳細については後述する。
通常の超音波診断用のBモード画像データを生成するためにはグレーティングローブは不要であるが、針強調モードでは、穿刺針を好適に検出するため、素子グルーピングにより見かけ上の素子ピッチを大きくして意図的に画像視野内に生成させたグレーティングローブを用いる。素子グルーピングとは、通常1素子毎に与えられる遅延時間を、隣接する2つ以上の素子を1つの素子と見なして同一の遅延時間を与える方法である。これにより、通常の送受信では画像視野内にグレーティングローブが生成しないように設計された超音波探触子でもグレーティングローブを画像視野内に生成させることができるようになる。
図4は、グレーティングローブとメインローブとの関係を例示した概念図である。図4に示すように、グレーティングローブはメインローブとは異なる方向に送出される。図4においては、簡単のためメインローブと左右一対のグレーティングローブのみが例示されているが、実際にはグレーティングローブは送受信される周波数に応じて、メインローブとは異なる種々の角度に生成されることとなる。
また、図5は、グレーティングローブを用いて穿刺針を検出する様子を説明するための概念図である。図5に示すように、針強調モードでは、メインローブを用いて被検体の内部構造を描出する通常のBモード画像データの生成を行うとともに、グレーティングローブを用いて被検体に刺入された穿刺針の検出を図っている。
さらに、送信部12は、ティッシュハーモニックイメージング(THI:Tissue Harmonic Imaging)に用いる高調波成分を抽出するために、パルスインバージョン法を実施してもよい。ティッシュハーモニックイメージングとは、送信信号の基本波成分に対する高調波成分を画像化することによって、コントラストの良いBモード画像を得ることができる撮像法である。また、パルスインバージョン法とは、極性あるいは時間反転させた第1および第2のパルス信号を、所定の時間間隔をおいて送信し、それぞれに対応する受信信号を合成して基本波成分を打ち消すことにより高調波成分を強調するものである。なお、本実施の形態のパルスインバージョン法において、第1のパルス信号の複数のデューティーのうちの少なくとも1つを異ならせて極性反転させた第2のパルス信号を送信するようにしてもよい。また、第2のパルス信号は、第1のパルス信号とは時間反転させたものであってもよい。以下の説明において、第1のパルス信号の送信を第1送波、第2のパルス信号の送信を第2送波と記載することがある。また、第1送波に対応する受信信号を第1受信信号、第2送波に対応する受信信号を第2受信信号と記載することがある。
受信部13は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2からケーブル3を介して電気信号の受信信号を受信する回路である。受信部13は、例えば、増幅器、A/D変換回路を備えている。増幅器は、受信信号を、振動子2a毎に対応した個別経路毎に、予め設定された所定の増幅率で増幅させるための回路である。A/D変換回路は、増幅された受信信号をアナログ−デジタル変換(A/D変換)するための回路である。
音線信号生成部14は、A/D変換された受信信号に対して整相加算を行って音線信号を生成する。図2に示すように、音線信号生成部14は、整相加算部141と、整相加算部142とを備える。整相加算部141はグレーティングローブを含まずメインローブ由来の信号のみを含む音線信号(以下、音線信号_1と記載する)を生成し、整相加算部142は各方向にグレーティングローブを含んだ音線信号(以下、音線信号_2と記載する)を生成する。なお、音線信号_1は本発明の第1音線信号に、音線信号_2は本発明の第2音線信号に、それぞれ対応している。
整相加算部141および整相加算部142は、上記したようにグレーティングローブが画像領域内に発生するように送出された超音波ビームに対する受信信号を受信部13から取得し、この受信信号に対して整相加算を行う。より具体的には、整相加算部141および整相加算部142は、振動子2a毎に対応した個別経路毎に遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算して音線データを生成する。ここで、整相加算部141と整相加算部142とは、それぞれ与える遅延時間が異なっている。
より詳細には、整相加算部141および整相加算部142は、以下のような処理を行う。整相加算部141は、受信信号に対して、素子グルーピングを行わない遅延時間にて整相加算を行い、音線信号_1を生成する。一方、整相加算部142は、受信信号に対して、素子グルーピングを行った遅延時間にて整相加算を行い、音線信号_2を生成する。すなわち、音線信号_2は、送信時と受信時に同数の素子グルーピングを行って生成された音線信号であり、送受信で同一方向にグレーティングローブが発生するため、メインローブ由来の成分に加えてグレーティングローブ由来の成分を含んだ音線信号となる。
なお、整相加算部142は、上記した針強調モードが選択されている場合のみ動作すればよい。
信号処理部15は、音線信号生成部が生成した音線信号に対して種々の処理を行う回路である。図2に示すように、信号処理部15は、高調波成分抽出部151、グレーティング信号抽出部152、高エコー領域抽出部153、周波数解析部154、座標演算部155、画像生成部156を備える。
高調波成分抽出部151は、ティッシュハーモニックイメージングを適用する場合に、音線信号_1に対してパルスインバージョン法を実施して高調波成分を抽出する。本実施の形態では、高調波成分抽出部151は、2次高調波成分を抽出するものとする。より具体的には、高調波成分抽出部151は、第1受信信号と第2受信信号とを加算(合成)し、加算した音線信号に含まれる基本波成分を除去した上で必要に応じてフィルター処理を行うことにより2次高調波成分を抽出する。なお、ティッシュハーモニックイメージングを適用するか否かは、例えば操作入力部11に対する操作に基づいて決定されるようにしてもよいし、強制的に適用するように決定されてもよい。
グレーティング信号抽出部152は、針強調モードが選択されている場合に、グレーティングローブ成分を含まずメインローブ成分のみを含む音線信号_1と、メインローブ成分とグレーティングローブ成分の両方を含む音線信号_2とに基づいて、グレーティングローブ成分のみを抽出する処理を行う。具体的には、グレーティング信号抽出部152は、音線信号_2から、音線信号_1に所定の係数を乗じて差し引くことにより、グレーティングローブ成分のみを含む音線信号(以下、音線信号_3と記載する)を生成する。ここで、グレーティング信号抽出部152は、音線信号_1と音線信号_2のそれぞれに含まれるメインローブ成分の強度比に応じて、音線信号_1に乗じる係数を変化させてもよいし、予め定められた固定係数を用いてもよい。
なお、グレーティング信号抽出部152は、高調波成分抽出部151によって加算された音線信号を用いてグレーティングローブ成分のみの抽出を行ってもよいが、ハーモニック生成の音圧依存性により音線信号_2に含まれるグレーティングローブ成分が減弱するため、加算前の音線信号、すなわち基本波信号のみを用いてグレーティングローブ成分のみの抽出を行うことが望ましい。
また、グレーティング信号抽出部152は、第1受信信号と第2受信信号の両方もしくはいずれか一方に対してグレーティングローブ成分のみの抽出処理を行うようにしてもよい。第1受信信号と第2受信信号のいずれに対して抽出処理を行うかについては、以下のように決定されればよい。すなわち、例えばS/N比を重視したい場合は両方の受信信号に対して抽出処理を行うようにし、処理負荷の低減を重視したい場合はいずれか一方の受信信号に対して抽出処理を行うようにする等、機器要求に基づいて決定されればよい。
なお、S/N比を重視して第1受信信号と第2受信信号の両方について抽出処理を行う場合には、グレーティング信号抽出部152は、例えば位相情報を有する音線情報の段階で減算処理を行うことにより、2次高調波等の偶数次高調波が相殺され、基本波や奇数次高調波成分を倍加抽出することができる。この減算処理においては、(第1受信信号)−(第2受信信号)、あるいは、(第2受信信号)−(第1受信信号)のいずれが行われてもよい。メインローブより音圧の低いグレーティングローブにおいて奇数次高調波は殆ど生成されないため、上記の方法により、実質的に2倍の信号強度を有するグレーティングローブ由来の基本波信号を得ることができる。
あるいは、グレーティング信号抽出部152は、第1受信信号および第2受信信号に対して検波処理を行い、位相情報を持たない絶対値信号とした後にこれを加算する方法を採用してもよい。この場合、原理的には基本波と偶数次・奇数次双方の高調波を含む信号を2倍の信号強度で得ることとなるが、前述のようにグレーティングローブにおいては音圧が低く高調波の生成が少ないため、実質的には基本波主体の受信信号を得ることができる。
高エコー領域抽出部153、周波数解析部154、座標演算部155は、針強調モードが選択されている場合に、グレーティング信号抽出部152が抽出した、グレーティングローブ由来の成分のみを含む音線信号_3に基づいて、穿刺針の反射エコーを抽出し、穿刺針の位置を特定する処理を行う。各構成の処理の詳細は以下の通りである。
高エコー領域抽出部153は、音線信号_3に対して、所定のしきい値以上の強度を有する高エコー領域を抽出する処理を行う。本発明において、高エコー領域の抽出処理は必須ではないが、穿刺針の正対反射強度は多くの生体組織より高いため、高エコー領域の抽出処理は後段の周波数解析部154による周波数解析演算の負荷を軽減するのに有効である。高エコー領域の抽出処理における抽出しきい値は予め定められた固定値でもよいし、1音線分の受信信号の最大値等に基づいて適応的に決める方法のいずれでもよい。
周波数解析部154は、音線信号_3に対して高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)等の周波数解析を行い、その結果を出力する。なお、周波数解析部154は、高エコー領域抽出部153が抽出した高エコー領域に対して周波数解析を行う場合、抽出された高エコー領域の周辺(時間軸における前後)領域を含めて解析を行うことが好ましい。また、周波数解析部154は、周波数解析を行う前に、間引き(デシメーション処理)を行ってもよい。なお、デシメーション処理を行う場合、周波数解析部154は、解析すべき周波数領域に影響を及ぼさない範囲で処理を行い、必要な周波数分解能を満たすように送データ数を選択する必要がある。また、抽出された高エコー領域が近接する場合、周波数解析部154は、各々が重ならないよう解析領域を設定する。ここで、周波数解析部154は、解析領域に含まれる高エコー領域数分の周波数値を出力する等の工夫を行うとより好適である。
座標演算部155は、穿刺針に対応する位置の座標情報を演算により求める座標演算処理を行う。穿刺針の座標情報の演算方法は、例えば以下のような方法を採用すればよい。すなわち、座標演算部155は、穿刺針によって反射されたグレーティングローブの角度と、穿刺針におけるグレーティングローブの反射点から振動子2aまでの距離情報を算出する。そして、座標演算部155は、グレーティングローブの角度と距離情報とに基づいて、穿刺針の位置に対応する候補座標を算出する。
グレーティングローブの角度(以下、グレーティングローブ角度と記載する)θは、送信超音波の波長と、複数の振動子2a同士の間隔(素子ピッチ)に基づいて、以下の式(1)によって求められる。
式(1)において、λは送信超音波の波長、lは素子ピッチ、mはグレーティングのオーダー数であり、1以上の整数である。なお、送信部12は、上記したように送信時に素子グルーピングを行うことにより、見かけ上の素子ピッチを変化させている。具体的には、例えば0.2mmピッチの振動子2aに対して、2素子グルーピングを行った場合、見かけ上の素子ピッチを0.2mm×2=0.4mmとなる。また、3素子グルーピングを行った場合、見かけ上の素子ピッチを0.2mm×3=0.6mmとなる。超音波診断装置Sでは、このように送信時に素子グルーピングを行うことで見かけ上の素子ピッチを大きくし、これにより、式(1)に基づいて、素子グルーピングを行わない場合と比較してグレーティングローブ角度θを小さくすることができる。
なお、グレーティングローブはアーティファクト(虚像)の一因となるため、一般的な超音波診断装置Sにおいては、送信超音波の周波数λおよび素子ピッチがθ>90°となるように設計されており、グレーティングローブが画像視野内に発生しないように、換言すればグレーティングローブに対する反射エコーが超音波探触子2に受信されないように設計される場合が多い。しかしながら、本発明に係る超音波診断装置では、針強調モードにおいてはグレーティングローブを利用して穿刺針を検出するため、素子グルーピングを行うことにより見かけ上の素子ピッチを大きくし、θ<90°となるようにしてグレーティングローブの反射エコーを超音波探触子2で受信できるようにしている。
なお、上記式(1)において、グレーティングのオーダー数であるmについては、m=1あるいは2とすればよい。この理由は以下の通りである。
オーダー数は波長のずれ数を表し、1であれば1波長分のずれ、2であれば2波長分のずれである。より高いオーダー数でグレーティングローブを生じさせるためには送信超音波の波連長(パルス持続時間)を長くする必要がある。ここで、波連長が長いことは、グレーティングローブ同士の重なり度合いが大きいことを意味する。異なる方向に送出されるグレーティングローブ同士の重なり度合いが大きいということは、換言すれば複数のグレーティングローブが死角なく同時に送出されることを意味するため、多様な刺入角度で被検体に刺入された穿刺針からの反射エコーを受信できるようになるため、好適である。
具体的には、例えば送信超音波の波形の波連長を前記超音波探触子の送信−6dB帯域の下限周波数成分の2波相当以上とすることが望ましい。これにより帯域の低周波においても1波長ずれ(グレーティングのオーダー数m=1)に対して1波長分以上の重なりを得ることができるようになり、グレーティングローブによる穿刺針反射エコー信号のS/Nを向上することができる。より具体的には特開2016−214622号公報に記載の送信方法、すなわち超音波探触子の送信周波数帯域中に広範な(ほぼ全域に亘る)周波数成分を含んでいるためグレーティングローブの死角が実質的になく、波連長が長いためグレーティングローブの重なりが大きく、かつ非線形成分の生成が制御されているためティッシュハーモニックイメージングによるBモード画質が良好である送波方法を用いることにより、Bモード画質、穿刺針検出角度範囲、穿刺針検出S/Nの全てを満たすことが可能となる。
しかしながら、グレーティングのオーダー数を大きくする(3波長以上ずれるようにする)と、グレーティングローブ同士の重なりがかなり小さくなる。また、オーダー数mが大きくなるほどθも大きくなり、振動子2aの指向角感度特性の影響も受ける。このため、m=3以上のグレーティングローブは穿刺針の検出のために有用ではなく、オーダー数mとしては1または2を用いることが好適である。
なお、オーダー数mが1と2のいずれであるかの判別は、振動子2aの指向角感度特性に基づいて行うことができるが、さらにグルーピング数を変えた送波を2回(グルーピング数=2&3)行ったり、空間コンパウンド法を実施することで行われるステアリング送波時に角度演算を行って双方の結果から角度を特定する方法を採用したりしてもよい。
座標演算部155は、このように算出した、穿刺針によって反射されたグレーティングローブ角度と、反射点から振動子2aまでの距離情報と、に基づいて、例えば振動子2aの位置を原点とした座標系における反射点(すなわち穿刺針の位置)の座標を算出する。なお、座標演算部155は、反射点から振動子2aまでの距離情報を、超音波診断装置において従来よく知られた算出方法によって算出すればよい。
このように、座標演算部155は、反射点により反射されたグレーティングローブ角度と、反射点までの距離を算出することができる。しかしながら、図4に示すようにグレーティングローブは左右対称に発生するため、グレーティングローブ成分のみを含む音線信号_3を用いても、0°方向に対して左右どちらに反射点が存在するかについては特定することができない。このため、座標演算部155は、まずメインローブの送信方向に対して左右対称に存在する穿刺針による反射点の座標を候補座標(右側の座標と左側の座標とを含む)として算出した後、左右いずれの候補座標が反射点の座標であるかを特定する必要がある。
本実施の形態においては、左右どちらの位置に反射点が存在するかを特定する方法として、以下の2つの方法のうちのいずれかを採用する。1つ目の方法は、針強調モードに左用と右用とを設けてユーザーに選択させることで、左右のうちの一方を特定する方法である。なお、左用の針強調モードとは、例えば左側から穿刺針が刺入される場合に使用されるべきモードであり、右用の針強調モードとは、右側から穿刺針が刺入される場合に使用されるべきモードである。左用のモードと右用のモードは、超音波診断装置Sの使用者が針強調モードを開始するときに、操作入力部11の針強調モード選択部111を操作することで選択されればよい。なお、何を基準として「左」「右」を定義するかについては本発明では特に限定しないが、例えば超音波診断画像における左側、および右側をそれぞれ「左」「右」とすればよい。
また、2つ目の方法は、左右の候補座標2点に対して送信超音波ビームのステアリングを行い、上記と同様の解析処理を行って得られるグレーティングローブ由来のエコー信号の周波数がステアリング角度によって異なることを利用して特定する方法である。Bモードのコントラスト・画質向上のために空間コンパウンド法を適用する場合、必然的に送信超音波ビームのステアリングを行うことになるため、2つ目の方法を採用することがより好適である。
画像生成部156は、音線信号生成部14の整相加算部141が生成した音線信号_1に基づいて、包絡線検波処理や対数増幅、ゲイン調整等の後、輝度変換を行って受信信号の強さを輝度によって表したBモード画像データを生成し、画像処理変換部16に対して出力する。画像生成部156によるBモード画像データの生成処理は、針強調モードが選択されている場合と、選択されていない場合のどちらの場合においても行われる。
なお、針強調モードが選択されており、グレーティング信号抽出部152がグレーティングローブ成分の抽出処理を、高調波成分を用いずに基本波信号を用いて行う場合でも、画像生成部156が音線信号_1を用いて生成するBモード画像はティッシュハーモニックイメージングを適用した画像であることが好ましい。ティッシュハーモニックイメージングを適用することで、その音圧依存性により、画像生成部156が生成するBモード画像において、送信時に含まれるグレーティングローブに起因する画質低下を低減させることができる。
画像処理変換部16は、信号処理部15が生成した画像データに対して種々の処理を行う回路である。図2に示すように、画像処理変換部16は、直線領域抽出部161、表示画像合成部162、DSC163を有する。
直線領域抽出部161は、針強調モードが選択されている場合に、複数のグレーティングローブによる反射点の座標に基づいて、音線信号_3に基づいて生成したグレーティングローブ成分のみ含む画像データから、穿刺針に対応する可能性が高い領域である直線領域を抽出する。そして、直線領域抽出部161は、抽出した直線領域に着色や輝度増幅等の強調処理を施して、穿刺針を示す針画像データを生成する。この場合、穿刺針に対応する画素の輝度、透過率や色については、穿刺角度や針の直径により最適値が異なるため、例えば操作入力部11に対する操作に応じて可変であることが好ましい。直線領域抽出部161における直線領域の抽出処理の具体的な方法としては、例えばHough変換等の特徴量抽出法を採用すればよい。
なお、抽出を容易にするため、直線領域抽出部161は、Hough変換の前に二値化処理を行うことが好ましい。また、直線領域抽出部161は、単一点でなく連続点を抽出するため、一定数以上の画素数からなる輝点を処理の対象とするような画素数フィルター処理を行ってもよい。さらに、画素数フィルターによる処理が過度になりすぎることを防止するため、直線領域抽出部161は、画素数フィルター前にガウシアンフィルター等を用いた平滑化等の抽出安定性を高める処理を行ってもよい。また、穿刺針は生体中の組織状態によって完全な直線でなく撓むことがあるため、直線領域抽出部161は、抽出した直線領域周辺に任意のウィンドウを設定し、ウィンドウ中の連続高輝度成分を穿刺針に対応する針画像データとして抽出してもよい。
表示画像合成部162は、Bモード画像データに針画像データを合成して針強調画像データを生成する。表示画像合成部162における合成方法については本発明では特に限定しないが、例えば、Bモード画像上に任意の透過率にて針画像データを重畳表示したオーバーレイ表示とすればよい。このようなオーバーレイ表示は、Bモード画像データにおける組織情報が失われないという観点から好ましい。
DSC163は、入力された画像データをテレビジョン信号の走査方式による画像信号に変換し、表示部17に出力する。DSC163に入力される画像データは、針強調モードが選択されていない場合にはBモード画像データであり、針強調モードが選択された場合には針強調画像データである。
なお、直線領域抽出部161における直線検出処理は、DSC163の処理の前後いずれで行ってもよい。例えばコンベックス方式やセクタ方式を採用した場合等、極座標変換を伴う場合には、直線検出処理はDSC163の処理の後に行われることが好ましい。
表示部17は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electronic Luminescence)ディスプレイ、無機ELディスプレイおよびプラズマディスプレイ等の表示装置が適用可能である。表示部17は、DSC163から出力された画像信号に従って表示画面上に超音波画像の表示を行う。
制御部18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備えて構成され、ROMに記憶されているシステムプログラム等の各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って超音波診断装置Sの各部の動作を集中制御する。ROMは、半導体等の不揮発メモリー等により構成され、超音波診断装置Sに対応するシステムプログラムおよび該システムプログラム上で実行可能な各種処理プログラムや、各種データ等を記憶する。これらのプログラムは、コンピューターが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。RAMは、CPUにより実行される各種プログラムおよびこれらプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
図2に示すように、制御部18は、送信遅延生成部181を有する。送信遅延生成部181は、駆動信号の送信タイミングを振動子2a毎に対応した個別経路毎に遅延時間を設定し、設定された遅延時間だけ駆動信号の送信を遅延させる。これにより、超音波探触子2において送信される送信ビームの集束が行われる。
また、送信遅延生成部181は、振動子2a毎に対応した個別経路毎に遅延時間を調節することで、複数の素子を複数のグループにまとめ、グループ毎に超音波の送信を行わせる素子グルーピングを行う。グループに含まれる振動子2aの数(素子グルーピング数)については、発生するグレーティングローブの角度が穿刺針の検出に好適な角度となるように、換言すれば上記式(1)において素子ピッチlが好適な値となるように予め設定されればよく、送信遅延生成部181は設定された素子グルーピング数で送信を行わせるように遅延時間を設定すればよい。
<超音波診断装置の動作の説明>
以上、本実施の形態に係る超音波診断装置Sの構成と各構成の概要について説明した。以下では、針強調モードにおける超音波診断装置Sの動作例について説明する。図6は、針強調モードにおける超音波診断装置Sの動作例を示すフローチャートである。
ステップS101において、制御部18は、操作入力部11に対する操作入力に基づいて、素子グルーピング数を決定する。素子グルーピング数の決定は、例えば操作入力部11を介して入力された、針強調モードの設定内容に基づいて設定されてもよい。例えば検出する穿刺角度範囲(低角度/高角度)に応じてグルーピング数を変化させる等が挙げられる。用いる超音波探触子に応じ、周波数帯域や素子の指向角感度特性が充分に広く、一種類のグルーピング数で必要な角度範囲がカバーできる場合は固定グルーピング数としても良い。
ステップS102において、超音波診断装置Sの各構成は、メインローブの送信方向が0°である場合の画像生成処理を行う。
[ステップS102の詳細]
図7は、メインローブのステア角が0°である場合の画像生成処理について説明するためのフローチャートである。以下では、図7を参照して、ステップS102の処理、すなわちメインローブのステア角が0°である場合の画像生成処理の詳細について説明する。
ステップS201において、送信遅延生成部181は、メインローブの送信角度(ステア角)が0°、すなわち超音波探触子2から直進する方向に超音波ビームのメインローブが送出される場合の、複数の振動子2aそれぞれに対する遅延情報を生成する。ここで、送信遅延生成部181は、ステップS101において決定された素子グルーピング数に応じて、各振動子2aに対する遅延情報を生成する。
ステップS202において、送信部12は、ステップS201にて生成された遅延情報に基づく駆動信号を生成して超音波探触子2に供給し、被検体に向けて送信超音波を送信させる。
ステップS203において、受信部13は、超音波探触子2が送信超音波の反射エコーに基づいて生成した受信信号を受信する。
ステップS204において、整相加算部141は、受信信号に基づいて、素子グルーピングを行わない遅延時間を用いて整相加算を行い、グレーティングローブ成分が含まれない音線信号_1を生成する。
ステップS205において、整相加算部142は、受信信号に基づいて、素子グルーピングを行った遅延時間を用いて整相加算を行い、グレーティングローブ成分が含まれる音線信号_2を生成する。
ステップS206において、高調波成分抽出部151は、ステップS204にて生成された音線信号_1に対してパルスインバージョン法を実施し、高調波成分を抽出する。
ステップS207において、画像生成部156は、抽出された高調波成分を用いてBモード画像データを生成する。すなわち、ステップS207において生成されるBモード画像データは、ティッシュハーモニックイメージングを適用した画像データである。これにより、ステップS202にて送信された送信超音波にグレーティングローブが含まれていても、ティッシュハーモニックイメージングの音圧依存性によりグレーティングローブ成分の画像データに対する影響が抑えられ、高品質の(コントラストが高く画質がよい)Bモード画像データを生成することができる。ステップS207にて生成されたBモード画像データは、図6に示すステップS105にて使用される。
一方、ステップS208において、グレーティング信号抽出部152は、ステップS204にて生成された音線信号_1と、ステップS205にて生成された音線信号_2とに基づいて、グレーティングローブ成分のみが含まれる音線信号_3を生成する。
ステップS209において、高エコー領域抽出部153は、音線信号_3における高エコー領域を抽出する。
ステップS210において、周波数解析部154は、音線信号_3に対して周波数解析を行う。
ステップS211において、座標演算部155は、図6のステップS101において決定された素子グルーピング数、素子ピッチ、送信超音波の波長に基づいて、上記式(1)を用いてグレーティングローブ角度を算出する。
ステップS212において、座標演算部155は、音線信号_3に基づいて、穿刺針によるグレーティングローブの反射点の候補座標を算出する。なお、上記したように、メインローブの送信方向を中心とした左右どちらに候補座標が存在するかについては、本ステップS212では特定できない。以下、ステップS212において座標演算部155が算出する左右の候補座標を、それぞれCL(左側)、CR(右側)と記載する。
なお、図7に示すフローチャートでは、ステップS204〜S207の処理と、ステップS205〜S212の処理とは、同時に並行して行われてもよいし、別々に行われてもよい。
図6の説明に戻る。ステップS103において、超音波診断装置Sの各構成は、メインローブのステア角を任意のステア角x°とした場合の画像生成処理を行う。ステア角x°は超音波探触子の形状や指向角感度特性により予め定められた角度で行うことが好ましい。例えば、空間コンパウンド法を適用し、空間コンパウンドの角度が−10,0,+10°と設定されている場合、グレーティングローブ角度解析処理を行うステア角x°は−10°、+10°、あるいは両方であることが好ましい。さらに、複数のコンパウンド角度(例えば−10,0,+10°/−15,0,+15°)の中からユーザー操作等によりいずれかが選択される場合等は、針強調モード選択操作が行われる前の空間コンパウンド角度に準じてステア角が選択されることがさらに好ましい。これにより、針強調モードにおいても操作前の画像から変化のないBモード画像を得ることが可能となる。ステップS103における、メインローブのステア角を任意のステア角x°とした場合の画像生成処理の詳細について、以下図8に関連付けて説明する。
[ステップS103の詳細]
図8は、メインローブのステア角がx°である場合の画像生成処理について説明するためのフローチャートである。以下では、図8を参照して、ステップS103の処理、すなわちメインローブのステア角がx°である場合の画像生成処理の詳細について説明する。
ステップS301において、送信遅延生成部181は、メインローブの送信角度(ステア角)がx°、すなわち超音波探触子2からx°だけ傾いた方向に超音波ビームのメインローブが送出される場合の、複数の振動子2aそれぞれに対する遅延情報を生成する。ここで、送信遅延生成部181は、ステップS101において決定された素子グルーピング数に応じて、各振動子2aに対する遅延情報を生成する。
ステップS302において、送信部12は、ステップS301にて生成された遅延情報に基づく駆動信号を生成して超音波探触子2に供給し、被検体に向けて送信超音波を送信させる。
ステップS303において、受信部13は、超音波探触子2が送信超音波のエコー信号に基づいて生成した受信信号を受信する。
ステップS304において、整相加算部141は、受信信号に基づいて、素子グルーピングを行わない遅延時間を用いて整相加算を行い、グレーティングローブ成分が含まれない音線信号_1を生成する。
ステップS305において、整相加算部142は、受信信号に基づいて、素子グルーピングを行った遅延時間を用いて整相加算を行い、グレーティングローブ成分が含まれる音線信号_2を生成する。
ステップS306において、高調波成分抽出部151は、ステップS304にて生成された音線信号_1に対してパルスインバージョン法を実施し、高調波成分を抽出する。
ステップS307において、画像生成部156は、抽出された高調波成分を用いてBモード画像データを生成する。すなわち、ステップS307において生成されるBモード画像データは、ティッシュハーモニックイメージングを適用した画像データである。ステップS307にて生成されたBモード画像データは、図6に示すステップS105にて使用される。
一方、ステップS308において、グレーティング信号抽出部152は、ステップS304にて生成された音線信号_1と、ステップS305にて生成された音線信号_2とに基づいて、グレーティングローブ成分のみが含まれる音線信号_3を生成する。
ステップS309において、座標演算部155は、図7のステップS212にて算出した、候補座標CL,CRと、素子ピッチ、素子グルーピング数、およびステア角度x°に基づいて、上記式(1)を用いて、候補座標CLを通過するグレーティングローブの角度ALと送信超音波の周波数fL、および候補座標CRを通過するグレーティングローブの角度ARと送信超音波の周波数fRを算出する。
ステップS310において、座標演算部155は、音線信号_3と、周波数fL、fRとに基づいて、振動子2aから候補座標CL,CRまでのそれぞれの距離に該当する部分のエコー信号に対して周波数解析を行う。
ステップS311において、座標演算部155は、周波数fLの送信超音波に対する反射エコー強度と周波数fRの送信超音波に対する反射エコー強度とを判定条件に基づいて比較し、候補座標CL,CRのいずれが穿刺針に対応する座標であるかを決定する。
図6の説明に戻る。ステップS104において、直線領域抽出部161は、音線信号_3と、穿刺針に対応する座標とに基づいて、穿刺針に対応する可能性が高い領域である直線領域を抽出し、直線領域に基づいて針画像データを生成する。
ステップS105において、座標演算部155は、図7に示すステップS207において生成されたステア角0°のBモード画像データと、図8に示すステップS307において生成されたステア角x°のBモード画像データと、を合成して合成Bモード画像データを生成する空間コンパウンド処理を行う。
ステップS106において、表示画像合成部162は、合成Bモード画像データと、針画像データとを合成して針強調画像データを生成する。
ステップS107において、表示部17は、DSC163によって走査方式が変換された針強調画像データを表示する。
なお、以上説明した図6から図8のフローチャートにおいて、図6のステップS102の画像生成処理(図7に示すステップS201−S212の処理)と、図6のステップS103の画像生成処理(図8に示すステップS301−S311の処理)とは、それぞれフレーム毎に音線位置を変更して繰り返される。
上記図6から図8に関連付けて説明した超音波診断装置Sの動作例において、穿刺針の左右の候補座標CL,CRのうち、送信ステア角を変化させて左右いずれかを特定する場合について説明した。ここで、操作入力部11への入力に基づいて左右いずれかを特定する方法を採用した場合、ステップS305以降の処理(メインローブのステア角がx°である場合のグレーティングローブのみ信号抽出、解析処理)は不要である。
また、上記図6から図8に関連付けて説明した超音波診断装置Sの動作例において、空間コンパウンドを行う場合について説明した。空間コンパウンドを行わず、操作入力部11への入力に基づいて左右いずれかを特定する方法(上記1つ目の方法)を採用した場合、図6に示すステップS103の処理は不要である。
また、上記図6から図8に関連付けて説明した超音波診断装置Sの動作例において、ステア角0°とx°で2回の送受信を行って、穿刺針に対応する座標が左右の候補座標のいずれかを特定しているが、例えば−x°の送受信時にも同様の処理を行う等、より多くの送信ビームステアリングを利用して解析を行うようにしてもよい。
<実施例>
以上、本実施の形態に係る超音波診断装置Sの各構成について説明、および超音波診断装置Sの動作例についての説明を行った。以下では、本発明を具体的に実施した場合の例(実施例)と、本発明を実施しない場合の比較例とを挙げて本発明の効果について具体的に示す。なお、以下説明する実施例はあくまで本発明の実施の一例であって、本発明はこれらに限定されない。
[設定条件]
まず、以下説明する各比較例および角実施例において使用した超音波診断装置の設定条件について説明する。
図9Aおよび図9Bは、比較例および実施例に使用する超音波探触子の周波数特性を説明するための図である。図9Aは、超音波探触子の送受信の規格化感度の周波数特性を示す図であり、図9Bは、超音波探触子の送信の規格化感度の周波数特性を示す図である。
図9Aおよび図9Bにおいて、横軸は周波数[MHz]を、縦軸は規格化感度[dB]を示している。規格化感度の最大値は0[dB]である。
図9Aにおいて、送受信の−6dB感度帯域を示す送受信−6dB帯域を黒の両矢印で、送受信の−20dB感度帯域を示す送受信−20dB帯域を白の両矢印で示している。図9Aでは、送受信−20dB帯域が、4.0〜18.3[MHz]であり、送受信−6dB帯域の中心周波数FC6が、10.25[MHz]であるものとする。
図9Bにおいて、送信の−6dB感度帯域を示す送信−6dB帯域を黒の両矢印で、送信−20dB感度帯域を示す送信−20dB帯域を白の両矢印で示している。図9Bでは、送信−20dB帯域が、3.4〜21.3[MHz]であり、−6dB送信感度帯域の下限である周波数TxFL6が、5.0[MHz]であるものとする。
超音波探触子の−6dB素子指向角感度特性は、5MHz=±55°、10MHz=±30°、15MHz=±20°であった。
送受信条件については、以下の通りである。送信は、駆動周波数=240MHz(遅延時間分解能=4.17nsec)の駆動回路を用いて行い、送信焦点距離はいずれも20mmとした。送信振動子数は、後述の比較例3のみ84素子とし、それ以外の実施例および比較例では28素子とした。また、画像視野深度はいずれも40mmとした。受信開口は深度毎に開口を変化させる、所謂ダイナミックフォーカスを用い、F値=2近傍となるよう制御して行った。
高エコー領域抽出処理は、以下の実施例および比較例の全てで行った。具体的な処理内容は以下の通りである。すなわち、8bit画像輝度において輝度20以上に相当するエコー領域のみを抽出する固定しきい値法を用いて抽出を行った。
駆動波形は、以下の通りである。後述の実施例6以外の実施例、および比較例では、図10Aおよび図10Bに示す駆動波形を用いた。図10Aは、実施例6以外の実施例および比較例における駆動信号の信号強度の時間特性を示す図である。また、図10Bは、実施例6以外の実施例および比較例における駆動信号のパワースペクトルを示す図である。また、図11Aは、実施例6以外の実施例および比較例における送信超音波の信号強度の時間特性を示す図である。また、図11Bは、実施例6以外の実施例および比較例における送信超音波のパワースペクトルを示す図である。
一方、実施例6のみ、図12Aおよび図12Bに示す駆動波形を用いた。図12Aは、実施例6における駆動信号の信号強度の時間特性を示す図である。また、図12Bは、実施例6における駆動信号のパワースペクトルを示す図である。また、図13Aは、実施例6における送信超音波の信号強度の時間特性を示す図である。また、図13Bは、実施例6における送信超音波のパワースペクトルを示す図である。
その送信音波波連長(パルス持続時間)は、−6dB送信感度帯域の下限であるTxFL6(5MHz)で換算したときの波数で各々1.48波、3.41波相当であった。換言すれば、実施例6以外の実施例、および比較例で使用した送信波形の波連長は、実施例6で使用した送信波形の波連長と比較して、長くなっている。
画像モードは、パルスインバージョン法によるティッシュハーモニックイメージングにて行い、第2送波は上記説明した各駆動波形を極性反転させた波形を送波した。
空間コンパウンドによる画像合成は、以下の実施例および比較例の全てで行った。具体的には、正面への送波を0°としたときに、0,−15,+15°の方向へそれぞれ送受信を行って合成を行う、3方向空間コンパウンドを行った。
[比較例1]
上記説明した設定条件を用いて、素子グルーピングを行わない通常の送信を空間コンパウンドの各方向について行った。受信は、−15,+15°方向送信に対しては通常のBモード画像生成時と同様の遅延加算のみを行い、0°方向送信に対しては通常の整相加算と平行して穿刺針刺入方向への30°ステア受信を行った。30°ステア受信に対してはパルスインバージョン法によるBモードのティッシュハーモニックイメージングを行わず、基本波成分からなる画像を得た。ティッシュハーモニックイメージングは、第1送波の受信時のみに行った。そして、30°ステア受信のエコー信号に対して、上記説明した固定値しきい値法により高エコー領域抽出処理を行い、得られた結果を通常の処理により得られたBモード画像データに加算合成した。
比較例1において、Bモード画像データについては通常と同様の処理にて生成したため良好な画像が得られた。しかしながら、穿刺針の可視性については、以下の通りであった。すなわち、空間コンパウンドによるステア送受信が穿刺針の可視化に寄与する15°では視認性は良好であったが、30°ステア受信を行っていても30°における穿刺針視認性は大きく劣化し、45°における視認性は殆どなかった。
[比較例2]
比較例2では、0°方向送信時に行う30°ステア受信を、送信焦点を通過するよう受信開口中心を移動させて行う方法とした点を除いて、比較例1と同様にして画像を得た。比較例1と同様にBモード画像の描出や15°穿刺の視認性は問題なかったが、30°以上の穿刺角度における視認性は改善されなかった。これは、送信焦点20mmへの28素子送信に対して、送信焦点を通過する30°ステア受信を行うと受信開口中心は送信開口端部より外側となって合成波面経路から外れるためであると考えられる。
[比較例3]
比較例3では、30°送信焦点通過ステア受信の開口中心が送信開口端部より外側にならないよう、送信開口を84素子まで増加させて送受信を行った。送信開口以外の条件は、比較例2と同様である。比較例3では、受信音線が送信合成波面経路内となるため、30°における穿刺針視認性は改善した。しかしながら、45°においては大きな効果はなかった。また、送信ビームのフォーカス依存性が強くなることによって、焦点付近以外のBモード画像の画質が大きく劣化してしまった。
[実施例1]
以下、本発明を適用した場合の実施例について説明する。実施例1では、0°方向への送信遅延制御において、2素子グルーピングにより2素子毎に遅延時間を与え、グレーティングローブを利用した穿刺針の検出を試みている。また、実施例1では、穿刺針に対応する座標が左右の候補座標のうちのいずれであるかを、操作入力部11を介した左右限定操作によって行っている。これ以外の条件は、上記比較例1と同様である。
図14Aおよび図14Bは、素子グルーピング数と、グレーティングローブ角度と送信周波数との関係を示す図である。図14Aはオーダー数m=1、図14Bはオーダー数m=2に、それぞれ対応している。図14Aに示すように、オーダー数m=1かつ2素子グルーピングの場合、30°方向には約7.6MHzのグレーティングローブが生成され、送波成分にはこの7.6MHz成分が含まれる。換言すれば、素子グルーピング数が2の場合に、7.6MHzのグレーティングローブが受信されると、30°方向に穿刺針の候補座標が存在することになる。上記説明したしたように、グレーティングローブ成分のみを抽出することで、30°ステア受信時には穿刺針に由来するエコー信号を得ることができる。
このため、実施例1では、比較例1でも視認できていた15°穿刺の場合に加え、30°穿刺における視認性が大きく向上した。45°穿刺における視認性は充分とは言えないものの、ティッシュハーモニックイメージングによるBモード画像データの画質劣化も生じておらず、フレームレートを低減させずに穿刺針視認性を改善することができた。
[実施例2]
実施例2では、0°方向送信時に行うステア受信を45°ステア受信とした。これ以外の条件は、上記実施例1と同様である。図14Aに示すように、オーダー数m=1かつ2素子グルーピングの場合、45°方向には約5.4MHzのグレーティングローブが生成され、送波成分にはこの5.4MHz成分が含まれる。換言すれば、素子グルーピング数が2の場合に、5.4MHzのグレーティングローブが受信されると、45°方向に穿刺針の候補座標が存在することになる。なお、45°は5MHzの−6dB指向角感度である55°よりも角度が小さいため、45°ステア受信時には穿刺針に由来するエコー信号を得ることができる。このため、比較例1でも視認できていた15°穿刺に加え、45°穿刺時の視認性が大きく向上した。30°穿刺に対する視認性は充分とは言えないものの、ティッシュハーモニックイメージングによるBモード画像データの画質劣化も生じておらず、フレームレートを低減させずに穿刺針視認性を改善することができた。
[実施例3]
実施例3では、0°方向送信時に行う受信として、2素子グルーピングによる整相加算受信とした。これ以外の条件は、上記実施例1と同様である。なお、実施例3では、メインローブに加えてグレーティングローブ由来の成分を含む基本波受信信号から、通常の整相加算により得られたメインローブ由来の成分のみなる基本波受信信号(パルスインバージョン前の第1受信信号)を減じる演算を行い、グレーティングローブ由来の成分のみを含む受信信号を得た。
また、実施例3では、比較例1と同様に固定しきい値法により高反射成分抽出処理を行い、得られた高エコー領域の周波数解析を実施し、得られた周波数の値と、図14Aに示す周波数とグレーティング角度との関係から、グレーティング角度情報を得た。このようにして得られた高エコー領域の距離情報と周波数解析による角度情報、および穿刺方向の左右限定操作に基づいて、高エコー領域における穿刺針の座標を決定する処理を繰り返して穿刺針画像を生成し、Bモード画像に加算合成した。
実施例3では、送波成分には30°にグレーティングローブを生成する7.6MHz、45°にグレーティングローブを生成する5.4MHzのいずれの成分も含まれる。このため、30°および45°のいずれの角度の穿刺針に由来するエコーも受信することができる。また実施例3では、周波数解析と左右限定操作により穿刺針の位置も特定できる。このため、実施例3では、Bモード画像データを劣化させることなく、30°および45°のいずれの角度においてもフレームレートを低減させずに穿刺針の視認性を向上させることができた。なお、オーダー数m=2では、図14Bに示すように、実施例3に用いた超音波探触子2では、グレーティング角度が−6dB指向角感度角度より大幅に大きい角度となって実質的に送受信ができない(θ=90°を超えてしまい反射エコーを受信できない)ことが分かるため、m=1とm=2の判別の必要なく角度を決定できる。
[実施例4]
実施例4では、0°方向送信時のみでなく、−15°および+15°の空間コンパウンドステア送受信時にも通常の整相加算受信に加えて2素子グルーピングを行った整相加算受信によるグレーティングローブ含有エコーの受信、グレーティングローブ由来のみの信号抽出、周波数解析による座標決定処理を行った。これ以外の条件は、穿刺方向の左右限定操作を行わない点を除いて上記実施例3と同様である。すなわち、実施例4では、穿刺方向の左右判別を、0°方向送信の周波数解析結果と−15°および+15°のステア送受信時の周波数解析結果を組み合わせることにより行った。
具体的には、0°方向のグレーティングローブ由来の信号に対して周波数解析を行った場合に、7.6MHzの周波数が得られれば穿刺針角度が30°であることが分かるが、左右いずれかを決定することはできない。しかしながら、例えば+15°送受信時(表示画面上左向き)において、0°方向と同様にグレーティングローブの周波数解析を行うことにより、同一距離からのグレーティングローブ由来エコーの周波数が5.4MHzであれば、+15°送受信とのなす角が45°であることが分かるため、穿刺針の位置は表示画面上右側であると判別できる。一方、穿刺針が表示画面上左側にあるとすると、+15°送受信とのなす角が15°となるため、5.4MHzのグレーティングローブ由来エコーは得られない。このため、穿刺針の位置は表示画面上左側ではないと判別できる。
このように、実施例4では、Bモード画像データの画質を劣化させることなく、また左右の限定操作の必要もなく、フレームレートを低減させずに任意の角度に対して穿刺針視認性を向上させることができた。
[実施例5]
実施例5では、穿刺針画像生成時にHough変換による直線抽出処理を行い、Bモード画像データにこれを合成した。これ以外の条件は、上記実施例4と同様である。このような直線抽出処理によって、高エコー領域において、直線でない組織由来の画像合成が抑制されるため、実施例4と比較して穿刺針の視認性が向上した。
[実施例6]
実施例6では、上記したように、送信波形を図12A,12Bおよび図13Aおよび図13Bに示す送信波形を用いた。実施例6にて用いた送信波形は、図10A,10Bおよび図11A,11Bに示す比較例1〜3および実施例1〜5にて用いた送信波形と比較して、波連長が短くなっている。これ以外の条件は、上記実施例4と同様である。
実施例6では、グレーティグローブの受信に必要な周波数成分が送信波形に含まれており、実施例4と同様の効果を得られる。送信波形の波連長が短くなったことによって、1波長ずれ合成波面である穿刺針による反射グレーティングローブのエコー強度が小さくなり、穿刺針視認性が実施例4と比較して若干低下している。しかしながら、比較例1から3と比較すれば、穿刺針視認性は大きく改善されている。
<画質評価>
上記説明した比較例1〜3、および実施例1〜6の駆動信号および送信超音波の各種指標値と、超音波診断装置Sにおける、当該駆動信号および送信超音波を用いて生成された画像データの超音波画像の画質評価結果を以下の表1に示す。
上記表1において、「画像評価結果」欄の「穿刺針可視性」欄における、穿刺針の可視性の評価は、以下のように行った。すなわち、24ゲージ穿刺針を用いて、穿刺角度が任意可変の穿刺ガイドを用いてスライスの中心を確保しながら、豚腿肉に穿刺を行い、この場合の穿刺針視認性を、超音波ガイド下で穿刺手技を行う整形外科医10人が10点満点で採点した。最終的に、その平均値を穿刺針可視性の画像評価結果とした。
また、上記表1において「Bモード画質」欄に示すBモード画像データの画質の評価は、以下のように行った。すなわち、穿刺針可視性評価とは別に、同一条件にて同一被験者の肩回旋腱板を観察した。この場合の描出性を、穿刺針の可視性と同様に、整形外科医10人が10点満点で採点した。最終的に、その平均値をBモード画像画質の評価結果とした。
また、上記表1において「総合スコア」欄に示す総合的な評価は、Bモード画像データの画質、および穿刺針視認性の評価に加え、左右限定操作の要否も加味した際の総合的な評価を、整形外科医10人が10点満点で採点し、その平均値を総合スコアとした。
これら「画像評価結果欄」と「総合スコア」欄の評価基準は、以下の通りである。
10:組織状態の把握に対して申し分ない程度の描出性
8:組織状態の把握に対して実用上問題ない程度の描出性
6:良好ではないが組織状態の把握は可能な程度の描出性
4:組織状態の把握に支障がある程度の描出性
2:組織状態の把握が困難な程度の描出性
以上説明したように、本発明に係る超音波診断装置Sの実施例1〜6によれば、素子グルーピングを行わず、グレーティングローブを利用しない比較例1〜3と比較して、フレームレートを低減させずに穿刺針の視認性が大きく改善された。同時に、Bモード画像データはティッシュハーモニックイメージングを利用したメインローブ受信信号に基づいて生成しているため、実施例1〜6のいずれにおいても良好な画質のBモード画像データを得ることができた。換言すれば、素子グルーピングによりグレーティングローブが画像視野内に発生するような送信方法を採用したことによる、Bモード画像データの画質への悪影響は特に見られなかった。
0°方向送信時に30°ステア受信とした実施例1では30°における穿刺針視認性が、45°ステア受信とした実施例2では45°における穿刺針視認性が、それぞれ大きく向上した。また、0°方向送信時の受信を2素子グルーピングによる整相加算受信とした実施例3〜6では、30°および45°の両方における穿刺針視認性が向上した。
さらに、実施例4〜6では、空間コンパウンドステア送受信時の異なる2方向の整相加算受信を利用することで、穿刺針が左右いずれの方向に存在するかを判別することができた。実施例5では、Hough変換により直線検出を行うことにより、全体的な穿刺針の視認性が向上した。実施例6では、波連長が短い送信波形を用いて実施例4と同様の送受信を行ったところ、波連長が短くなったことにより視認性が実施例4と比較して多少低下したものの、比較例1〜3と比較すると大きく改善された。
<作用・効果>
本発明の超音波診断装置は、例えば穿刺針等の鏡面反射体が刺入される被検体に向けて送信超音波の送信と反射超音波の受信とを行う超音波探触子を備えた超音波診断装置であって、駆動信号を生成して前記超音波探触子の有する複数の振動子のそれぞれに対して出力することにより、前記振動子から前記送信超音波を送信させる送信部と、画像視野内にメインローブに加えてグレーティングローブが発生するように、前記駆動信号の遅延時間を前記振動子毎に制御する送信遅延生成部と、前記複数の振動子のそれぞれから受信信号を受信する受信部と、前記複数の振動子からの受信信号を整相加算して音線信号を生成する音線信号生成部と、前記音線信号から前記グレーティングローブに由来する成分のみを抽出し、当該グレーティングローブに由来する成分のみを含む音線信号に基づいて、当該グレーティングローブの角度、および、当該グレーティングローブが前記鏡面反射体によって反射した反射点までの距離情報を算出し、当該角度および距離情報に基づいて前記鏡面反射体の位置に対応した座標情報を生成する信号処理部と、前記グレーティングローブに由来する成分のみを含む音線信号および前記座標情報に基づいて、前記鏡面反射体を示す鏡面反射体画像データを生成する画像処理変換部と、を有する。
また、本発明の超音波診断装置によれば、前記送信遅延生成部は、隣接する所定数の振動子から同時に送信超音波が送信されるように前記遅延時間を制御する。
また、本発明の超音波診断装置によれば、前記音線信号生成部は、前記受信信号に対して前記送信遅延生成部が与えた前記遅延時間を用いずに整相加算を行い、前記グレーティングローブに由来する成分を含まない第1音線信号を生成する第1整相加算部と、前記受信信号に対して前記送信遅延生成部が与えた前記遅延時間を用いて整相加算を行い、前記グレーティングローブに由来する成分を含む第2音線信号を生成する第2整相加算部と、を有する。
また、本発明の超音波診断装置によれば、前記信号処理部は、前記第1音線信号および前記第2音線信号に基づいて、前記グレーティングローブに由来する成分のみを含む音線信号を生成するグレーティング信号抽出部を有する。
また、本発明の超音波診断装置によれば、前記信号処理部は、前記グレーティングローブに由来する成分のみを含む音線信号に対して周波数解析を行う周波数解析部と、前記周波数解析の結果に基づいて前記グレーティングローブの角度および前記距離情報を算出し、当該角度および距離情報に基づいて前記鏡面反射体の座標情報を生成する座標演算部と、を有する。
このような構成により、画像視野内にグレーティングローブが生成される送信を行い、受信信号に対して、グレーティングローブに由来する信号のみを抽出し、反射点の位置を鏡面反射体の位置として、鏡面反射体に対応する針画像データを生成することができる。これにより、フレームレートを低下させずに、鏡面反射体の視認性を向上させることができる。
また、本発明の超音波診断装置において、前記信号処理部は、前記第1音線信号に基づいて被検体の内部を示すBモード画像データを生成する画像生成部を有し、前記画像処理変換部は、前記Bモード画像データと前記鏡面反射体画像データとを合成する表示画像合成部を有する。
また、本発明の超音波診断装置において、前記画像処理変換部は、前記グレーティングローブに由来する成分のみを含む音線信号および前記座標情報に基づいて直線領域を抽出し、当該直線領域を前記鏡面反射体画像データとする直線領域抽出部を有する。
このような構成により、精度よく鏡面反射体画像データ(針画像データ)を生成することができるとともに、直線領域を強調した画像データを生成することで、鏡面反射体の位置を認識しやすい合成画像データを生成することができる。
また、本発明の超音波診断装置において、前記信号処理部は、前記第1音線信号から高調波成分を抽出する高調波成分抽出部をさらに有し、前記画像生成部は、前記高調波成分に基づいて前記Bモード画像データを生成する。
このような構成により、グレーティングローブが画像視野内に発生する送信を行っても、高調波成分を用いてBモード画像データを生成するティッシュハーモニックイメージングによって、画質の良好なBモード画像データを生成することができる。すなわち、鏡面反射体の視認性向上と、Bモード画像データの画質向上とを両立させることができる。
また、本発明の超音波診断装置において、前記座標演算部は、1の送信方向に送信された送信超音波に対する受信信号と、異なる送信方向に送信された送信超音波に対する受信信号とに基づいて、左右対称に送信されるグレーティングローブにより生成される前記鏡面反射体の左右の候補座標のうちのいずれかを前記鏡面反射体の座標として特定する。
このような構成により、左右の候補座標のうちいずれかを選択せずとも、鏡面反射体の座標を特定することができる。
また、本発明の超音波診断装置において、前記送信部は、前記送信超音波の−20dBの比帯域を110%以上とする。
このような構成により、広い角度範囲、より具体的には中心周波数が10MHzの場合、約5〜約15MHzの周波数領域に亘って送受信が可能となる。また、このような構成により、15MHzでのグレーティング角度をθとした場合、θ〜3θの角度範囲内にあるグレーティングローブ信号を送受信できるようになるため、実用的な穿刺角度範囲をほぼカバーすることが可能となる。
以上、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。特許請求の範囲の記載範囲内において、当業者が想到できる各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
上記した実施の形態では、鏡面反射体の一例として穿刺針を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えばカテーテル等にも適用することができる。