JP6895842B2 - 地盤改良方法 - Google Patents
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軟弱地盤に対しては、セメントミルクや薬液注入剤等を土砂の間隙に注入して硬化させる地盤改良方法が広く採用されている。例えば、特許文献1には、水とセメントと尿素とを含む地盤改良組成物を地中に注入する地盤改良方法が開示されている。
また、地中に存在する空洞に対しては、モルタル等のセメント系材料や流動化処理土等を充填する方法が採用される場合がある。例えば、特許文献2には、流動性を備える第二の注入材を地中空洞に注入する前に、可塑性を備える第一の注入材を注入することで、第二の注入材を所定の範囲内に充填する空洞部の充填工法が開示されている。
緩い堆積層の上に空洞が形成されている場合等、緩い堆積層と地中空洞との両方が存在する地盤に対しては、緩い堆積層と地中空洞に対して、個々に前記の対策工(地盤改良方法および空洞部の充填工法)を施すことがある。緩い堆積層の空隙や地中空洞に対して地盤改良や充填工法を講じることで、さらなる地盤変状の併発防止やその上部に構造物を構築するための地耐力確保等の当該層の強度増加を図ることができる。
なお、何らかの原因により地下構造物内に土砂や地下水等が流入した場合において、地上から当該地下構造物内への空洞充填や堆積物への固化材注入を行い、遮水壁(遮水ゾーン)等を構築することができれば、遮水壁等でさえぎられたドライな環境下において復旧工事等の施工が可能となる。
このような観点から、本発明は、緩い堆積層と地中空洞とが存在する地盤に対して効率的に処置を施すことを可能とした地盤改良方法を提案することを課題とする。
かかる地盤改良方法によれば、外管と内管とからなる2重管をボーリング孔に設置した後、この2重管を利用して空洞と緩い堆積層とに注入材を注入するため、地中空洞と緩い堆積層とに対して個別に処置を行う従来の施工方法に比べて施工性に優れている。そのため、工期短縮化および費用の低減化を図ることができる。また、地盤注入材の注入に先立って空洞注入材によって地中空洞と緩い堆積層との境界部を閉塞しておくため、地盤注入材が内管の外面に沿って流出することを防止し、所定範囲に地盤注入材を効果的に注入することができる。ここで、空洞注入材には、可塑性を備える材料あるいは流動性が高い材料を使用することができる。可塑性を備える空洞注入材を使用した場合には、空洞注入材の注入範囲を限定することができ、ひいては、注入量の削減を図ることができる。一方、流動性が高い空洞注入材を使用した場合には、流し込むことで空洞注入材を広範囲に注入することができる。また、可塑性を備える材料(第一の空洞注入材)を先行して注入した後、流動性が高い材料(第二の空洞注入材)を注入することで、第二の空洞注入材の注入範囲を限定してもよい。
前記空洞注入材のフロー値は140mm〜300mmの範囲内であるのが望ましい。また、前記地盤注入材は、セメントに対する水の重量比が0.5〜5.0のセメントミルクを主体とした材料であるのが望ましい。さらに、前記空洞注入材は、前記セメントミルクとベントナイトミルクとの混合体であるのが望ましい。
本実施形態では、まず、図2(b)に示すように、ボーリングマシンを利用して、地盤を削孔しつつボーリングロッドを地中に圧入することによりボーリング孔1を形成する。ボーリングロッドは、φ75〜125mm程度の円筒状の鋼管からなる。なお、ボーリングロッドの構成は限定されるものではなく、ボーリングロッドの材質、内径、長さ等は適宜決定すればよい。本実施形態では、複数本のボーリングロッドを連結しながら地中に圧入することで、所定長さの外管2を形成する。外管2の先端(下端)は、緩い堆積層G2の底部(下面)近傍にまで到達している。なお、外管2の下端の位置は限定されるものではなく、例えば、緩い堆積層G2よりも深い位置まで到達させていてもよい。また、外管2(ボーリングロッド)は、地盤にボーリング孔1を形成してから、当該ボーリング孔1に挿入してもよい。
内管3は、φ40mm程度の複数本の塩化ビニル管を使用する。なお、内管3の構成は限定されるものではなく、内管3を構成する管材の材質、内径、長さ等は適宜決定すればよい。内管3の先端は、塩化ビニル製のキャップ(図示省略)により遮蔽されていて、貫入時の土砂等の流入や間詰め材5等の流入が防止されている。内管3へのキャップの固定方法は限定されるものではないが、例えば、有機溶剤を利用して一体化してもよいし、内管3の外面とキャップの内面にそれぞれネジ加工を施して締着してもよいし、接着剤等により接着してもよい。なお、内管3の先端の構造(遮蔽方法)は限定されるものではない。内管3には、直径5mm程度の微細な注入孔が複数形成されている。なお、注入孔の位置および形状は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。また、注入孔は、複数の深度(複数箇所)に形成してもよい。内管3の外面には、少なくとも注入孔を覆うようにゴム製のスリーブ4が設けられている。スリーブ4は、注入孔を保護するとともに、注入孔を介して内管3の内部に異物(土砂や間詰め材5等)が流入することを防止する。スリーブ4の構成は限定されるものではなく、例えば、所定の厚さを有する筒体を、内管3の外面に固定することにより形成すればよい。また、スリーブ4を構成する材料は限定されるものではない。さらに、スリーブ4は、必要に応じて設置すればよく、省略してもよい。なお、図面では、スリーブ4が内管3の外面よりも突出するように記載されているが、スリーブ4の外面は、内管3の外面と面一あるいは内管3の外面よりも内側に位置しているのが望ましい。
外管2を引き上げることにより緩い堆積層G2に形成された内管3とボーリング孔1の孔壁との隙間には、間詰め材5を注入する。間詰め材5は、外管2を引き上げながら外管2の先端から排出することにより隙間に充填する。内管3の注入孔はスリーブ4により覆われているため、外管2を引き上げた際に注入孔から土砂や間詰め材等が内管3の内部に流入することが防止されている。本実施形態では、間詰め材5として、セメントベントナイトを使用する。なお、間詰め材5を構成する材料は、内管3とボーリング孔1の孔壁との隙間への空洞注入材6の浸透を防ぐとともに、地盤注入作業S3における地盤注入材7の注入を妨げない材料であれば限定されるものではない。例えば、セメントベントナイトに代えて、シール充填用のグラウト等を使用してもよい。
間詰め材5の充填後、外管2をさらに引き上げることで、外管2の先端が地中空洞GA内に開口したら、図3(a)に示すように、外管2の先端から地中空洞GA内に空洞注入材6を注入する。本実施形態では、空洞注入材6の注入状況に応じて外管2を上昇させながら地中空洞GAへ空洞注入材6を注入する。なお、地中空洞GAへの空洞注入材6の注入は、外管2を固定させた状態で所定量注入してもよい。空洞注入材6には、可塑性を有した材料を使用する。本実施形態では、空洞注入材6として、セメントミルクとベントナイトミルクとの混合体であって、フロー値が140mm〜300mmの範囲内のものを使用する。なお、空洞注入材6を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、モルタル、流動化処理土または可塑性グラウトを使用してもよい。空洞注入材6は、図3(b)に示すように、外管2を回収することにより表層G1に形成された内管3とボーリング孔1の孔壁との隙間にも注入する。すなわち、本実施形態では、外管2の先端が表層G1内に到達した後も空洞注入材6を注入し続ける。
空洞注入材6として、可塑性を有した材料を使用しているため、限定した目的範囲のみに行き渡らせることができる。そのため、空洞注入材6が必要以上に広範囲に流出することを防止し、注入量を必要最小限に抑え、ひいては、材料費の低減化を図ることができる。なお、空洞注入材6として、可塑性を備えた材料に代えて流動性が高い材料(自己充填性が高い材料)を使用すれば、空洞注入材6を地中空洞GAに流し込むことで広範囲に注入することができる。流動性が高い材料としては、例えば、地盤注入材7と同じ材料を使用することができる。また、地中空洞GAには、可塑性を備えた第一の空洞注入材を注入した後、流動性が高い第二の空洞注入材を注入してもよい。こうすることで、地中空洞GA内における注入範囲を限定することができる。
また、外管2を引き上げることにより形成された内管3と緩い堆積層G2との隙間に間詰め材5を充填しているので、ボーリング孔1の孔壁が崩れることを防止することができるとともに、空洞注入材6が当該隙間に流入することを防止することができる。そのため、内管3の注入孔が空洞注入材6によって塞がれることはなく、地盤注入材7の注入が空洞注入材6によって妨げられることもない。
例えば、内管3の配管方法は限定されるものではなく、例えば、ダブルパッカー工法を採用する等、従来の工法を適宜採用してもよい。
空洞注入材6を構成する材料は、目的に応じて選定すればよい。例えば、地中空洞GA内に固化補強体を構築する場合にはセメントグラウトや注入薬液等を使用すればよいし、地中空洞GA内に止水構造を構築する場合にはモルタル、流動化処理土、可塑性グラウト等を使用すればよい。
本発明の地盤改良方法による改良の対象となる空洞は、構造物の直下や、地中構造物内に形成された空洞であってもよい。
2 外管
3 内管
4 スリーブ
5 間詰め材
6 空洞注入材
7 地盤注入材
71 地盤改良体
GA 地中空洞(空洞)
G2 緩い堆積層
S1 配管作業
S2 外管引上げ作業
S3 地盤注入作業
Claims (5)
- 地中に形成された空洞と、前記空洞の下方に存在する緩い堆積層とを有する地盤の地盤改良方法であって、
前記空洞を貫通して前記緩い堆積層内に至る外管と前記外管に内挿された内管とを配管する配管作業と、
前記外管を引き上げるとともに、当該外管を利用して前記空洞内に空洞注入材を注入する外管引上げ作業と、
前記内管から前記緩い堆積層内に地盤注入材を注入する地盤注入作業と、を備えていることを特徴とする地盤改良方法。 - 前記外管引上げ作業では、前記外管を引き上げることにより形成された前記内管と前記緩い堆積層との隙間に間詰め材を注入した後、前記空洞注入材を注入することを特徴とする、請求項1に記載の地盤改良方法。
- 前記空洞注入材のフロー値が140mm〜300mmの範囲内であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の地盤改良方法。
- 前記地盤注入材が、セメントに対する水の重量比が0.5〜5.0のセメントミルクを主体とする材料であることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の地盤改良方法。
- 前記空洞注入材が、前記セメントミルクとベントナイトミルクとの混合体であることを特徴とする、請求項4に記載の地盤改良方法。
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