JP6895165B2 - α1−アンチキモトリプシンを含むバイオマーカー - Google Patents

α1−アンチキモトリプシンを含むバイオマーカー Download PDF

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本発明は広く、α1−アンチキモトリプシンの新規用途、特にα1−アンチキモトリプシンを含むバイオマーカー等に関する。
劇症肝炎などの急性肝不全に伴う肝性脳症は、急速な脳浮腫により昏睡から呼吸停止、死亡に至る重篤な病態である。致死的肝性脳症で惹起される脳浮腫の本態は、星状膠細胞(アストロサイト)の細胞浮腫と言われている。肝臓疾患の中でも劇症肝炎は致死率が最も高い病気であり、日本では、年間約400人程度が劇症肝炎を発症すると言われている。劇症肝炎は、その生存率が急性型で約30%、亜急性型でわずか10%という極めて致死率の高い危険な肝疾患として知られている。
肝性脳症の最大の原因の一つとされているアンモニアは、正常時には肝臓の尿素回路によって処理される。肝臓疾患に罹患している患者においては、アンモニアなどの毒物が肝臓で処理できないため、そのまま脳にまで到達してしまう。その結果、脳内ではアンモニアの代謝産物であるグルタミンが増大し、これにより脳のアストロサイトが障害を受け、延いては脳浮腫が惹起されることになる。しかしながら、肝性脳症の発症機序は複雑であり、アンモニアの毒性のみでは説明することができない。
アストロサイト浮腫を引き起こす原因物質としては、急性肝不全時に血中で上昇するアンモニア以外に、血中アンモニアの上昇以外にもベンゾジアゼピン様物質、メルカプタン、芳香族アミノ酸などが想定されているが、その他の因子については未だに特定されていない。
Papadopoulos MC et al., " Aquaporin-4 and brain edema", Pediatr Nephrol. 2007 Jun;22(6):778-84. Epub 2007 Mar 9.
本発明は、新規な肝性脳症の惹起因子を同定した上で、これを含むバイオマーカー及びその用途を提供することを目的とする。
肝性脳症の合併症の一つである脳浮腫については、複数の論文においてアクアポリン4(AQP4)との関連が示唆されている(Metab Brain Dis. 2007;22:265-75; J. Neurosci17,171-180,1997;Biochem BiophysRes Commun 270, 495-503, 2000;Neurobiol Disease 6,245-258,1999)。しかしながら、AQP4の発現制御機構の詳細は明らかになっていない。
本願発明者らは、驚くべきことに、α1−アンチキモトリプシン(ACT)が、単独で又は水代謝調節に関与するアルギニンバソプレシンとの併用によりAQP4の発現を増強すること、そして、その発現増強がアルギニンバソプレシン受容体アンタゴニストにより抑制されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本願は以下の発明を包含する。
[1]α1−アンチキモトリプシン又はその断片、あるいはそれらをコードする核酸、それらに相補的な核酸、又はそれらの転写産物を含む、アクアポリン4の発現亢進に関連する疾患を診断するためのバイオマーカー。
[2]アクアポリン4の発現亢進に関連する疾患が、水分不均衡疾患、例えば浮腫[特に、脳および脊髄の浮腫(例えば、外傷または虚血性脳梗塞後の浮腫)、神経膠腫、髄膜炎、急性高山病、癲癇性発作、感染、代謝障害、低酸素症、水中毒、肝不全、肝性脳症、糖尿病性ケトアシドーシス、膿瘍、子癇、クロイツフェルト−ヤコブ病およびループス脳炎と関連のある浮腫、微小重力および/または放射線暴露の結果生じる浮腫、侵襲性の中枢神経系処置(例えば、神経外科手術、血管内血栓除去、脊椎穿刺、動脈瘤修復または深部脳刺激)の結果生じる浮腫ならびに網膜浮腫]、低ナトリウム血症および過剰水分貯留、また、癲癇、網膜虚血および他の眼圧および/または組織水和異常と関連した眼の疾患、心筋虚血、心筋虚血/再潅流障害、心筋梗塞、心筋低酸素症、うっ血性心不全、敗血症、および視神経脊髄炎ならびに片頭痛などの疾患から成る群から選択される、[1]に記載のバイオマーカー。
[3]更にアルギニンバソプレシン又はその断片、あるいはそれらをコードする核酸、それらに相補的な核酸又はそれらの転写産物を含む、[1]又は[2]に記載のバイオマーカー。
[4]前記疾患が肝性脳症に関連する疾患である、[2]又は[3]に記載のバイオマーカー。
[5]前記肝性脳症に関連する疾患が脳浮腫である、[4]に記載のバイオマーカー。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載のバイオマーカーを検出するためのキット。
[7]被験者由来の試料において、アクアポリン4の発現亢進に関連する疾患を検出する方法であって、被験者由来の試料において、[1]〜[5]のいずれかに記載のバイオマーカーを検出又は定量する工程を含む、方法。
[8]前記バイオマーカーが検出されるか、あるいはその濃度が健常者との比較で高い場合に、被験者がアクアポリン4の発現亢進に関連する疾患に罹患し易い、当該疾患に罹患している、又は当該疾患が進行していると決定する工程を更に含む、[7]に記載の方法。
[9]アクアポリン4の発現亢進に関連する疾患を治療又は予防するための医薬をスクリーニングするための方法であって、α1−アンチキモトリプシン又はその断片、あるいはそれらをコードする核酸、それらに相補的な核酸又はそれらの転写産物の発現を阻害する物質を当該医薬として選定する工程を含む、方法。
[10]前記物質が更にアルギニンバソプレシン受容体拮抗作用を有する、[9]に記載の方法。
[11]アクアポリン4の発現亢進に関連する疾患を治療又は予防する方法であって、α1−アンチキモトリプシン又はその断片、あるいはそれらをコードする核酸、それらに相補的な核酸又はそれらの転写産物の発現を阻害する物質を当該疾患に罹患した患者に投与する工程を含む、方法。
本発明者らにより初めて、α1−アンチキモトリプシンがアクアポリン4の発現亢進に関連する疾患の発生機序に関与することが明らかとなった。例えば、α1−アンチキモトリプシンは急性肝不全時に増大し、脳アストロサイトにおけるアクアポリン4の発現を増加させることから、致死的な肝性脳症惹起物質として働くものと考えられる。
したがって、本発明によれば、α1−アンチキモトリプシンを指標とするアクアポリン4の発現亢進に関連する疾患のバイオマーカー等が提供される。
図1は、ACT等を添加して培養した後のヒトアストログリア細胞を蛍光顕微鏡で観察した結果を示す。 図2は、ACT等を添加して48時間培養したヒトアストログリア細胞における死細胞の割合を数値化したグラフを示す。 図3は、ACT等を添加して培養したヒトアストログリア細胞におけるアクアポリン4遺伝子の発現量の経時的な変化をRT−PCRで解析した結果を示す。 図4は、ACT等を添加して培養したヒトアストログリア細胞におけるアクアポリン4タンパク質の発現量の経時的な変化をウェスタンブロットで解析した結果を示す。
バイオマーカー
第1の態様において、本発明は、α1−アンチキモトリプシンを含む、アクアポリン4の発現亢進に関連する疾患を診断するためのバイオマーカーを提供する。「バイオマーカー」とは、通常の生物学的過程、病理学的過程、もしくは治療的介入に対する薬理学的応答の指標として、客観的に測定され評価される特性を意味し、本明細書では、かかる特性有するタンパク質、遺伝子等の生体分子を意味する。
α1−アンチキモトリプシンに代えて、又はα1−アンチキモトリプシンとの組み合わせで、その断片、あるいはそれらをコードする核酸、それらに相補的な核酸又はそれらの転写産物をバイオマーカーとすることができる。
α1−アンチキモトリプシン(ACT)は、キモトリプシンのプロテアーゼ活性を阻害する分子量約68,000の糖タンパク質である。ACTは感染症、炎症、悪性腫瘍などで増加する急性期反応物質の一つであり、アルツハイマー病との関連も知られている。
ACTは433個のアミノ酸から構成されるタンパク質として、肝臓で合成される。その後25個のアミノ酸からなるシグナルペプチド部分がはずれ、408個のアミノ酸から構成されたタンパク質が血中に分泌される。この成熟型が血中ACTの90%を占める。さらに血中には、N末端から15個のアミノ酸がはずれた393アミノ酸からなるminor ACTも存在する。
ACTは公知の手法に検出可能であり、例えば、被験者由来の試料(例えば血清)におけるその存在を、例えば一次元免疫拡散法(SRIDS法)、ロケット電気免疫拡散法、 ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)法などの免疫学的手法、質量分析、アミノ酸配列又はその対応する塩基配列等の解析等により検出することができる。具体的には、ACT又はその断片、あるいは複合体を認識する抗体を用いてELISA法等の免疫学的手法で検出する方法(臨床化学 Vol. 21 (1992) No. 1 p. 55-60等を参照のこと)、試料からACT又はその断片、あるいは複合体を単離し、直接又は必要に応じ、酵素等で切断し、シーケンサーを利用して検出する方法、質量分析によりACT又はその断片、あるいは複合体を検出する方法が挙げられる。ACT断片の測定に関しては、ACT断片をそれぞれ特異的に認識する抗体によるELISA法や、液体クロマトグラフィー質量分析法(Liquid Chromatography-tandem Mass Spectrometry: LC-MS/MS)によって定量測定ができる。
ACTをコードする核酸を検出する場合、mRNA、cDNAなどの転写産物を測定してもよい。これらの測定としては、PCR法、マイクロアレイ法、ノーザンブロット法、分光光度法、蛍光光度法等が挙げられる。
ACTは血清又は血漿中で前立腺特異的抗原(PSA)と複合体(PSA−ACTなど)を形成している場合もあるため、ACTを検出する代わりに、又はより正確な定量分析を行うために、当該複合体を検出してもよい。
アクアポリンは、細胞への水取り込みに関与する、300以下のアミノ酸からなる比較的小さい膜貫通タンパク質である。アクアポリン4は、脳内のアストロサイトに最も多く存在しているサブタイプであり、脳浮腫との関連を示唆する報告が数多くされている。アクアポリン4欠損マウスでは脳浮腫形成が抑えられているとの報告もある(Nat Rev Neurosci. 2013 Apr;14(4):265-77; Nature Med 6, 159-163, 2000)。
アクアポリン4の発現亢進に関連する疾患は、水分不均衡疾患、例えば浮腫[特に、脳および脊髄の浮腫(例えば、外傷または虚血性脳梗塞後の浮腫)、神経膠腫、髄膜炎、急性高山病、癲癇性発作、感染、代謝障害、低酸素症、水中毒、肝不全、肝性脳症、糖尿病性ケトアシドーシス、膿瘍、子癇、クロイツフェルト−ヤコブ病およびループス脳炎と関連のある浮腫、微小重力および/または放射線暴露の結果生じる浮腫、侵襲性の中枢神経系処置(例えば、神経外科手術、血管内血栓除去、脊椎穿刺、動脈瘤修復または深部脳刺激)の結果生じる浮腫ならびに網膜浮腫]、低ナトリウム血症および過剰水分貯留、また、癲癇、網膜虚血および他の眼圧および/または組織水和異常と関連した眼の疾患、心筋虚血、心筋虚血/再潅流障害、心筋梗塞、心筋低酸素症、うっ血性心不全、敗血症、および視神経脊髄炎ならびに片頭痛などの疾患から成る群から選択される。アクアポリン4の発現亢進に関連する疾患のより具体的な例としては、例えば、脳浮腫、肺水腫、アレルギー疾患による鼻粘膜からの分泌亢進(鼻粘膜の浮腫)、及び気管支粘膜からの分泌亢進(気管支粘膜の浮腫)等が挙げられ、これらの疾患のうち、代表的なものとして脳浮腫が挙げられる。
本明細書で使用する場合、「転写産物」とは、遺伝子のDNAを鋳型として転写されるRNA鎖(RNAポリメラーゼにより合成されるRNA鎖)のみならず、転写後に細胞内で修飾を受けたRNA鎖を意味する。転写産物としてのRNA鎖は広く、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)に加え、タンパク質等に翻訳されないノンコーティングRNA、例えばリボソームRNA(rRNA)、転移RNA(tRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、核小体低分子RNA(snoRNA)を包含する。これらのRNA鎖は、転写後、細胞内でプロセッシングされたものであってもよい。
本発明においては、対象の疾患を高精度に診断するために、アクアポリン4の発現亢進に関連する疾患を検出するための別の指標を用いることもできる。例えば、アルギニンバソプレシンは、ACTの存在下でアクアポリン4の発現を増強するため、アルギニンバソプレシン又はその断片、あるいはそれらをコードする核酸、それらに相補的な核酸又はそれらの転写産物をACTと併用することもできる。
アルギニンバソプレシンは、抗利尿ホルモンとして脳の水の恒常性を保ち、GFAP(glial fibrillary acidic protein)を増加させ、アクアポリン4とV1a受容体を共に増加させることが報告されている。アルギニンバソプレシンが結合するアルギニンバソプレシン受容体は細胞膜を7回貫通する典型的なGタンパク共役型受容体であり、V1a、V1b及びV2の3つのサブタイプに分類される。中でも、血中や脳脊髄液で上昇するアルギニンバソプレシン、例えばV1aとV2は脳浮腫に関与することが知られている。V1aは、ニューロンや内皮細胞、アストロサイトに広く分布しており、特にアストロサイト細胞膜への水の輸送を促進することも知られている。V1a受容体拮抗薬は、脳外傷や脳卒中に伴い増加したアクアポリン4の発現量を抑制することが報告されている。
肝硬変患者においては、増大したアルギニンバソプレシンがV2受容体に結合し、その結果、アクアポリン2水チャネルが開き、水を体内に再吸収する。V2受容体阻害剤は水の再吸収を阻害し、尿量を増加させる。
バイオマーカーは更に、アルギニンバソプレシンに代えて、又はアルギニンバソプレシンとともに、アルギニンバソプレシン受容体作動薬を含んでもよい。
検出用キット
第2の態様において、本発明は、α1−アンチキモトリプシンを含む、アクアポリン4の発現亢進に関連する疾患を診断するためのバイオマーカーを検出するためのキットを提供する。
本発明のキットには、バイオマーカーの存在又はその発現量を測定するための試薬を含む。例えば、免疫測定法によりバイオマーカーの発現量を測定する場合には、各マーカーに対する抗体が試薬として使用される。また、必要に応じて、被検者に由来する体液の希釈液、抗体固定化固相、反応緩衝液、洗浄液、標識された二次抗体又はその抗体断片、標識体の検出用試薬、標準物質などもキットに含めることができる。希釈液としては、生理食塩水や、界面活性剤、緩衝液などに牛血清アルブミン(BSA)やカゼインなどのタンパク質を含む水溶液などが挙げられる。
抗体固定化固相としては、各種高分子素材を用途に合うように成型した素材に、抗体又はそれらの抗体断片を固相化したものが用いられる。固相化相の形状としてはチューブ、カップ、ビーズ、プレート、スティック等が挙げられ、その素材としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルトルエン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリメタクリレート、ゼラチン、アガロース、セルロース、ポリエチレンテレフタレート等の高分子素材、ガラス、セラミックスや金属等が挙げられる。抗体を固相化する方法としては、物理的方法と化学的方法、あるいはこれらを併用する方法など、公知の方法が挙げられる。
反応緩衝液は、抗体固定化固相の抗体と被検動物に由来する体液中の抗原とが結合反応をする際の溶媒環境を提供するものであればいかなるものでもよいが、界面活性剤、緩衝液、BSAやカゼインなどのタンパク質、防腐剤、安定化剤、反応促進剤等を含む反応緩衝液が挙げられる。
標識された二次抗体又はその抗体断片としては、バイオマーカーがコードに対する抗体を認識する抗体又はその抗体断片に、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、ウシ小腸アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ等の標識用酵素をラベルしたもの、緩衝液、BSAやカゼインなどのタンパク質、防腐剤等を混合したものを用いることができる。
標識体の検出用試薬としては、前記の標識用酵素に応じて、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼを使用する場合には、テトラメチルベンジジンやオルトフェニレンジアミンなどの吸光測定用基質、ヒドロキシフェニルプロピオン酸やヒドロキシフェニル酢酸などの蛍光基質、ルミノールなどの発光基質が挙げられ、アルカリホスファターゼを使用する場合には、4−ニトロフェニルフォスフェートなどの吸光度測定用基質、4−メチルウンベリフェリルフォスフェートなどの蛍光基質等が挙げられる。
また、PCR法によりバイオマーカーの発現量を測定する場合、例えば、バイオマーカーの一部又は全体を特異的に増幅することが可能なプライマーをキットに含めることができる。また、必要に応じて、逆転写酵素、Taqポリメラーゼ、反応用緩衝液等を含めてもよい。リアルタイムPCRの場合には、蛍光試薬等も含まれる。
本発明のキットには、使用方法等を示す添付文書を適宜含めることもできる。また、本発明のキットは広く、バイオマーカーの検出に使用される装置などを含んでもよい。
検出・診断方法
第3の態様において、本発明は、被験者由来の試料におけるアクアポリン4の発現亢進に関連する疾患を検出する方法を提供する。本発明の方法は、臨床検査技師がin vitroで疾患に関する検査情報を評価する際に使用され得る。したがって、本発明の方法は、直接的又は間接的に、医師がアクアポリン4の発現亢進に関連する疾患を適切に診断又は治療するために使用することもできる。
本発明の検出方法は、被験者由来の試料において、1又は複数のバイオマーカーを検出又は定量する工程を含む。
本明細書で使用する場合、「被験者」は、ヒトや非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル、アカゲザル、チンパンジーなどのサル)、その他の哺乳動物、例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラットおよびマウス)を含む、任意の脊椎動物を意味する。実施形態によって、被験者はヒト又はヒト以外の動物であってよい。実施形態によって、被験者は、アクアポリン4の発現亢進に関連する疾患を発病するリスクのある患者又は既にこのような疾患を発病している患者であってよい。
本明細書で使用する場合、「試料」は、広く、α1−アンチキモトリプシンなどの標的を含有すると考えられる生物学的材料を意味する。試料を得るために、任意の細胞、組織又は体液が利用され得る。そのような細胞、組織及び体液は、生検や剖検サンプルなどの組織の切片、組織学の目的のために採取された凍結切片、(全血などの)血液、血漿、血清、痰、便、涙、粘液、唾液、気管支肺胞洗浄(BAL)液、毛、皮膚、赤血球、血小板、間質液、眼球水晶体液、脳脊髄液、汗、鼻汁、滑液、帯下、羊水、精液などを含み得る。細胞及び組織は、リンパ液、腹水、婦人科学的な液体、尿、腹腔液、脳脊髄液等を含んでもよい。目的に応じて試料から標的タンパク質等の単離や精製が行われることもある。
被験者から採取された試料は、バイオマーカーの検出を行うに際し、適宜必要とされる前処理を行うことができる。例えば、血清などの検体を試料として用いる場合は、血清を適宜希釈して用いることが好ましい。希釈に用いる溶液は、バイオマーカーの検出に影響を与えないものであれば特に限定されない。
試料において、バイオマーカーが検出されるか、あるいはその濃度が健常者(例えば、健常者の血中のα1−アンチキモトリプシン濃度は通常210〜380μg/mlの範囲内である)との比較で高い場合に、被験者がアクアポリン4の発現亢進に関連する疾患に罹患し易い、当該疾患に罹患している、又は当該疾患が進行していると決定することができる。
スクリーニング方法
第4の態様において、本発明はアクアポリン4の発現亢進に関連する疾患を治療又は予防するための医薬をスクリーニングするための方法を提供する。本発明のスクリーニング方法は、α1−アンチキモトリプシン又はその断片、あるいはそれらをコードする核酸、それらに相補的な核酸又はそれらの転写産物の発現を阻害する物質を医薬の候補物質として選定する工程を含んでもよい。
好ましい態様において、α1−アンチキモトリプシンの発現を阻害する物質のうち、アルギニンバソプレシン受容体拮抗作用を有する物質を上記疾患の治療又は予防に有用な医薬として選択することができる。本発明のスクリーニング方法により得られた医薬は、所望の効果、特にα1−アンチキモトリプシン発現阻害効果、延いてはアクアポリン4の発現亢進に関連する疾患を治療又は予防する効果を発揮する限り、その投与経路、投与量、用法、剤形などは特に限定されない。
治療・予防方法
第5の態様において、本発明はアクアポリン4の発現亢進に関連する疾患を治療又は予防する方法を提供する。本発明の治療・予防方法は、α1−アンチキモトリプシン又はその断片、あるいはそれらをコードする核酸、それらに相補的な核酸又はそれらの転写産物の発現を阻害する物質を患者に投与する工程を含む。
以下に実施例、比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(材料と方法)
細胞株は、SV40T抗原遺伝子を導入した培養ヒトアストログリア細胞(ATCC CRL‐8621; Manassas,VA, USA)を用いた。培養は、ASF104N(Ajinomoto,Tokyo,Japan)に仔ウシ血清Newborn CalfSerum(NCS)10%を添加した培地を用いて行った。NCS は、56℃で30 分間非働化処理したものを用いた。
実験結果は平均±標準誤差で表し、危険率(p)5%以下を有意差ありとした。統計学的解析はStudent’s t‐testを用いて行った。
(細胞障害性試験)
ACTがアストロサイトに直接障害性をもたらすかどうかを検証するため、in vitroで細胞障害性試験を行った。
上記培地で培養したヒトアストログリア細胞を1×105細胞/ウェルずつ6ウェルプレートに播種し、37℃で24時間培養した。その後、同じ培地で交換するのと同時にヒト血漿由来ACT(0.5 mg/ml)を添加し、37℃で4時間さらにインキュベートした。
ACTと同様の条件で、肝性脳症の原因物質として指摘されている以下の物質を培養ヒトアストログリア細胞に添加して同様に細胞障害性試験を行った。
アンモニア(NH4Cl)(和光純薬工業株式会社製 5mM);
急性肝不全による血管内脱水によって上昇し、脳下垂体後葉から分泌される抗利尿ホルモンであるアルギニン・バソプレシン(AVP)(シグマ アルドリッチ株式会社製 100nM);
ACT(0.5mg/ml)とAVP(100nM)の組み合わせ;
ACT(0.5mg/ml)と、AVP(100nM)と、OPC−21268(シグマ アルドリッチ株式会社製 100nM)との組み合わせ。
バソプレシン1aレセプターの阻害剤であるOPC−21268は、AVPがV1a受容体を介してアクアポリン4の発現調節に関与することが報告されているため、発現の変化を確認するために使用した。コントロールには培地を添加した。
その後、培地に対してHoechest33342(H33342)及びPropidium lodidie(PI)を同時に添加し、37℃で30分間インキュベートすることで核染色した。核染色した細胞を蛍光顕微鏡のもと観察した。結果を図1に示す。また、死細胞の割合を数値化したグラフを図2に示す。
図1及び2に示すとおり、コントロール群に比べ、NH4Clを添加した細胞では細胞障害性の増加が観察された。また、ACTはアストロサイトに対してより多くの細胞障害をもたらした。一方、AVPを添加した細胞群でも死細胞は観察されたものの、細胞傷害の程度は比較的に弱かった。しかし、ACTとAVPを同時に添加することによって、細胞障害性はより憎悪したことが認められた。
(AQP4遺伝子発現)
アストロサイト障害をもたらすメカニズムについてさらに検証した。本実施例では、アストロサイトにおける水チャネルタンパク質であるAQP4の発現に着目した。
上記ヒト培養アストロサイト株に対してヒト血漿由来のACTを添加し、脳浮腫形成に関連する水チャネルタンパク質AQP4遺伝子発現量の変化をReverse Transcription PolymLerase Chain Reaction(RT−PCR)法及びウェスタンブロット法により評価した。同様に、NH4Cl等の上記物質をACTの代わりに添加してACTとの比較を行った。結果を図3及び4に示す。
図3に示すとおり、急性肝不全時に上昇するNH4Clは時間依存的にAQP4のmRNAを増加させた。また、ACT単独によるAQP4の有意な増加も認められた。一方、AVP単独によるAQP4の増加は認められなかった。しかし、ACTとAVP
を併用することによって、時間依存的にAQP4の増加が認められた。
更に、図4に示すとおり、mRNAと同様にNH4ClはAQP4タンパク質の発現を増強させた。また、ACT単独の投与は、投与12時間後からAQP4の発現を増強させた。一方、AVP単独投与によるAQP4の増加は認められなかった。しかし、ACT はAVPと併用することによりAQP4の発現を更に増強させた。
(考察)
ACTは、血液脳関門(B1ood brain barrier;BBB)の透過性を亢進する作用を持ち、肝性脳症時に急激に増加する。そのため、ACTが単独で又はAVPとの併用により強い細胞障害性をもたらしたのは、ACTによるBBBの破綻が原因として考えられる。
AQP4は、脳内のアストロサイトに最も豊富に存在しており、上皮細胞および毛細血管に接するアストロサイト足突起に局在している。BBBはこのアストロサイト足突起と脳微小血管間のバリア機能により保たれていることから、AQP4は明らかに脳浮腫の形成過程に関係していると考えられる。しかしながら、ACTとAQP4との関係についての報告はない。本発明により初めて、ACTが細胞障害性とともにAQP4の発現を有意に増加させることが明らかとなった。
さらにACTとAVPの併用により、AQP4タンパク質の更なる増加が認められたが、これは、AVPがACTのAQP4発現増強作用をさらに強めることを示唆している。
以上の結果により、ACT単独もしくはACTとAVPの併用は、アクアポリン4の発現亢進に関連する疾患の治療又は予防に有用であると考えられる。

Claims (12)

  1. α1−アンチキモトリプシン又はその断片、あるいはそれらをコードする核酸、それらに相補的な核酸、又はそれらの転写産物を含む、アクアポリン4の発現亢進に関連する疾患を診断するためのバイオマーカー。
  2. アクアポリン4の発現亢進に関連する疾患が浮腫である、請求項1に記載のバイオマーカー。
  3. 更にアルギニンバソプレシン又はその断片、あるいはそれらをコードする核酸、それらに相補的な核酸又はそれらの転写産物を含む、請求項1又は2に記載のバイオマーカー。
  4. 前記疾患が肝性脳症に関連する疾患である、請求項2又は3に記載のバイオマーカー。
  5. 前記肝性脳症に関連する疾患が脳浮腫である、請求項4に記載のバイオマーカー。
  6. 血中に存在するα1−アンチキモトリプシン又はその断片、あるいはそれらをコードする核酸、それらに相補的な核酸、又はそれらの転写産物が指標とされる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のバイオマーカー。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載のバイオマーカーを検出するためのキット。
  8. 被験者由来の試料において、アクアポリン4の発現亢進に関連する疾患を検出する方法であって、被験者由来の試料において、請求項1〜のいずれか1項に記載のバイオマーカーを検出又は定量する工程を含む、方法。
  9. 前記バイオマーカーが検出されるか、あるいはその濃度が健常者との比較で高い場合に、被験者がアクアポリン4の発現亢進に関連する疾患に罹患し易い、当該疾患に罹患している、又は当該疾患が進行しているとの決定を補助する工程を更に含む、請求項に記載の方法。
  10. アクアポリン4の発現亢進に関連する疾患を治療又は予防するための医薬をスクリーニングするための方法であって、α1−アンチキモトリプシン又はその断片、あるいはそれらをコードする核酸、それらに相補的な核酸又はそれらの転写産物の発現を阻害する物質を当該医薬として選定する工程を含む、方法。
  11. 前記物質が更にアルギニンバソプレシン受容体拮抗作用を有する、請求項10に記載の方法。
  12. 血中に存在するα1−アンチキモトリプシン又はその断片、あるいはそれらをコードする核酸、それらに相補的な核酸又はそれらの転写産物の発現を阻害する物質が医薬として選定される、請求項10又は11に記載の方法。
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