以下、図面を参照し、本発明の車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。以下の実施形態では、車両制御装置が自動運転(自律運転)可能な車両に適用されるものとして説明する。自動運転は、例えば、車両に搭乗した乗員の操作に依らずに、車両の操舵または加減速のうち一方または双方を制御して車両を走行させる態様である。自動運転には、ACC(Adaptive Cruse Control)やLKAS(Lane Keeping Assist)等の運転支援が含まれてもよい。
図1は、実施形態の車両制御装置を利用した車両システム1の適用場面の一例を示す図である。例えば、車両m1〜mn(n:任意の自然数)の各車両には、車両システム1−1〜1−nのいずれか一つが搭載される。これらの車両は、他車両との間で車車間通信を行って、互いの車両が認識し合っていることを確認しながら自動運転を行う。
[車両システムの全体構成]
図2は、実施形態の車両システム1の構成図である。車両システム1が搭載される車両(以下、自車両Mと称する)は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機を備える場合、電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、ファインダ14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ナビゲーション装置50と、MPU(Map Positioning Unit)60と、車外表示装置70と、運転操作子80と、ランプ群90と、クラクション92と、リフレクタ展開装置94と、自動運転制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、図2に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載される車両(以下、自車両Mと称する)の任意の箇所に一つまたは複数が取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
レーダ装置12は、自車両Mの周辺にミリ波などの電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、自車両Mの任意の箇所に一つまたは複数が取り付けられる。レーダ装置12は、FM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
ファインダ14は、LIDAR(Light Detection and Ranging)である。ファインダ14は、自車両Mの周辺に光を照射し、散乱光を計測する。ファインダ14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。ファインダ14は、自車両Mの任意の箇所に一つまたは複数が取り付けられる。
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびファインダ14のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度などを認識する。物体認識装置16は、認識結果を自動運転制御装置100に出力する。また、物体認識装置16は、必要に応じて、カメラ10、レーダ装置12、およびファインダ14の検出結果をそのまま自動運転制御装置100に出力してよい。
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi−Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用して、自車両Mの周辺に存在する他車両mと通信し、或いは無線基地局を介して各種サーバ装置と通信する。他車両mは、例えば、自車両Mと同様に、自動運転が行われる車両であってもよいし、手動運転が行われる車両であってもよく、特段の制約はない。手動運転とは、前述した自動運転とは異なり、運転操作子80に対する乗員の操作に応じて自車両Mの加減速および操舵が制御されることをいう。
HMI30は、自車両Mの乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、車内表示装置32、スピーカ、ブザー、タッチパネル、スイッチ、キーなどを含む。車内表示装置32は、「車内出力部」の一例である。
図3は、車内表示装置32の設置位置の一例を示す図である。例えば、車内表示装置32は、第1表示装置32Aや第2表示装置32Bなどの各種表示装置を備える。第1表示装置32Aは、例えば、インストルメントパネルIPの中央付近に設置される。また、第2表示装置32Bは、例えば、インストルメントパネルIPにおける運転席(ステアリングホイールSTに最も近い座席)の正面付近に設置されると共に、運転席の乗員がステアリングホイールSTの間隙から、或いはステアリングホイールST越しに視認可能な位置に設置される。これらの表示装置は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)表示装置などである。第1表示装置32Aは、例えば、ナビゲーション装置50によるナビゲーション結果を示す情報(例えば地図など)を表示する。第2表示装置32Bは、例えば、自車両Mの速度、エンジン回転数、燃料残量、ラジエータ水温、走行距離、その他の情報を表示する。
車両センサ40は、自車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
ナビゲーション装置50は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機51と、ナビHMI52と、経路決定部53とを備え、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に第1地図情報54を保持している。GNSS受信機51は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、自車両Mの位置を特定する。自車両Mの位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。ナビHMI52は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キーなどを含む。ナビHMI52は、前述したHMI30と一部または全部が共通化されてもよい。経路決定部53は、例えば、GNSS受信機51により特定された自車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI52を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、第1地図情報54を参照して決定する。第1地図情報54は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報54は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報などを含んでもよい。経路決定部53により決定された地図上経路は、MPU60に出力される。また、ナビゲーション装置50は、経路決定部53により決定された地図上経路に基づいて、ナビHMI52を用いた経路案内を行ってもよい。なお、ナビゲーション装置50は、例えば、乗員の保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。また、ナビゲーション装置50は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから返信された地図上経路を取得してもよい。
MPU60は、例えば、推奨車線決定部61として機能し、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に第2地図情報62を保持している。推奨車線決定部61は、ナビゲーション装置50から提供された経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報62を参照してブロックごとに推奨車線を決定する。推奨車線決定部61は、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部61は、経路において分岐箇所や合流箇所などが存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
第2地図情報62は、第1地図情報54よりも高精度な地図情報である。第2地図情報62は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、第2地図情報62には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報などが含まれてよい。第2地図情報62は、通信装置20を用いて他装置にアクセスすることにより、随時、アップデートされてよい。
車外表示装置70は、例えば、道路面などに光を照射して画像(コンピュータグラフィックス等)を描画するプロジェクタ72や、自車両Mの外装の一部または全部として形成されたLCDや有機EL表示装置などの外装表示装置74などを備える。車外表示装置70は、「車外出力部」の一例である。
運転操作子80は、例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、ステアリングホイールST、異形ステア、ジョイスティックその他の操作子を含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、自動運転制御装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一部または全部に出力される。
ランプ群90は、例えば、自車両Mの車体の前端に設置されたヘッドランプ90Aや、後端に設置されたリアランプ、ハザードランプなどを含む。クラクション92は音を鳴らす。ランプ群90は、「車外出力部」の他の例である。
リフレクタ展開装置94は、例えば、ボンネットなどの車体内部に格納されたリフレクタを車体外部に展開する。リフレクタとは、例えば、電波やレーザー光などを反射しやすい形状または材質などで構成された物体である。リフレクタ展開装置94は、「車体形状変形部」の一例である。
自動運転制御装置100は、例えば、第1制御部120と、第2制御部160と、第3制御部170とを備える。第1制御部120および第2制御部160の其々の構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
図4は、第1制御部120、第2制御部160、および第3制御部170の機能構成図である。第1制御部120は、例えば、認識部130と、行動計画生成部140とを備える。認識部130は、「第1認識部」および「第2認識部」の一例である。
第1制御部120は、例えば、AI(Artificial Intelligence;人工知能)による機能と、予め与えられたモデルによる機能とを並行して実現する。例えば、「交差点を認識する」機能は、ディープラーニング等による交差点の認識と、予め与えられた条件(パターンマッチング可能な信号、道路標示などがある)に基づく認識とが並行して実行され、双方に対してスコア付けして総合的に評価することで実現される。これによって、自動運転の信頼性が担保される。
認識部130は、カメラ10、レーダ装置12、およびファインダ14から物体認識装置16を介して入力される情報に基づいて、自車両Mの周辺にある物体の位置、および速度、加速度等の状態を認識する。物体には、他車両mや静止した障害物などが含まれる。物体の位置は、例えば、自車両Mの代表点(重心や駆動軸中心など)を原点とした絶対座標上の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、表現された領域で表されてもよい。物体の「状態」とは、物体の加速度やジャーク、あるいは「行動状態」(例えば車線変更をしている、またはしようとしているか否か)を含んでもよい。また、認識部130は、カメラ10の撮像画像に基づいて、自車両Mがこれから通過するカーブの形状を認識する。認識部130は、カーブの形状をカメラ10の撮像画像から実平面に変換し、例えば、二次元の点列情報、或いはこれと同等なモデルを用いて表現した情報を、カーブの形状を示す情報として行動計画生成部140に出力する。
また、認識部130は、例えば、自車両Mが走行している車線(走行車線)を認識する。例えば、認識部130は、第2地図情報62から得られる道路区画線のパターン(例えば実線と破線の配列)と、カメラ10によって撮像された画像から認識される自車両Mの周辺の道路区画線のパターンとを比較することで、走行車線を認識する。なお、認識部130は、道路区画線に限らず、道路区画線や路肩、縁石、中央分離帯、ガードレールなどを含む走路境界(道路境界)を認識することで、走行車線を認識してもよい。この認識において、ナビゲーション装置50から取得される自車両Mの位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。
認識部130は、走行車線を認識する際に、走行車線に対する自車両Mの位置や姿勢を認識する。認識部130は、例えば、自車両Mの基準点の車線中央からの乖離、および自車両Mの進行方向の車線中央を連ねた線に対してなす角度を、走行車線に対する自車両Mの相対位置および姿勢として認識してもよい。また、これに代えて、認識部130は、走行車線のいずれかの側端部(道路区画線または道路境界)に対する自車両Mの基準点の位置などを、走行車線に対する自車両Mの相対位置として認識してもよい。
また、認識部130は、上記の認識処理において、認識精度を導出し、認識精度情報として行動計画生成部140に出力してもよい。例えば、認識部130は、一定期間において、道路区画線を認識できた頻度に基づいて、認識精度情報を生成する。
行動計画生成部140は、原則的には推奨車線決定部61により決定された推奨車線を走行し、更に、自車両Mの周辺状況に対応できるように、自動運転において順次実行されるイベントを決定する。イベントには、例えば、一定速度で同じ走行車線を走行する定速走行イベント、前走車両に追従する追従走行イベント、前走車両を追い越す追い越しイベント、障害物との接近を回避するための制動および/または操舵を行う回避イベント、カーブを走行するカーブ走行イベント、交差点や横断歩道、踏切などの所定のポイントを通過する通過イベント、車線変更イベント、合流イベント、分岐イベント、自動停止イベント、自動運転を終了して手動運転に切り替えるためのテイクオーバイベントなどがある。
行動計画生成部140は、起動したイベントに応じて、自車両Mが将来走行する目標軌道を生成する。目標軌道は、例えば、速度要素を含んでいる。例えば、目標軌道は、自車両Mの到達すべき地点(軌道点)を順に並べたものとして表現される。軌道点は、道なり距離で所定の走行距離(例えば数[m]程度)ごとの自車両Mの到達すべき地点であり、それとは別に、所定のサンプリング時間(例えば0コンマ数[sec]程度)ごとの目標速度および目標加速度が、目標軌道の一部として生成される。また、軌道点は、所定のサンプリング時間ごとの、そのサンプリング時刻における自車両Mの到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度や目標加速度の情報は軌道点の間隔で表現される。
図5は、推奨車線に基づいて目標軌道が生成される様子を示す図である。図示するように、推奨車線は、目的地までの経路に沿って走行するのに都合が良いように設定される。行動計画生成部140は、推奨車線の切り替わり地点の所定距離(イベントの種類に応じて決定されてよい)手前に差し掛かると、通過イベント、車線変更イベント、分岐イベント、合流イベントなどを起動する。各イベントの実行中に、障害物を回避する必要が生じた場合には、図示するように回避軌道が生成される。
認識部130は、自車両Mが走行する道路が狭路であることを認識する。例えば、認識部130は、第2地図情報62に含まれる車線数や幅員などの情報を参照し、自車両Mが走行する道路が、センターライン(中央線)が無く、道路幅が所定幅未満であるか否かを判定し、センターラインが無く、道路幅が所定幅未満である場合、自車両Mが走行する道路が狭路であると認識する。センターラインとは、自車線に隣接する一以上の隣接車線のうち、車両の流れる方向(車両の進行方向)が自車線の反対方向である車線(以下、対向車線と称する)と、自車線とを互いに区画する道路区画線である。所定幅とは、2台の車両が並走できない程度の幅であり、例えば、自車両Mの車幅、大衆車の平均的な車幅、普通自動車や中型自動車、大型自動車の規格として予め決められた車幅の、1.0倍〜2.0倍程度の幅である。また、認識部130は、カメラ10によって撮像された画像を基に走行車線が認識された場合、その認識された走行車線の数や幅に基づいて、自車両Mが走行する道路が狭路であることを認識してもよい。
第2制御部160は、行動計画生成部140によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220を制御する。
図4に戻り、第2制御部160は、例えば、第1取得部162と、速度制御部164と、操舵制御部166とを備える。
第1取得部162は、行動計画生成部140により生成された目標軌道(軌道点)の情報を取得し、これをメモリ(不図示)に記憶させる。速度制御部164は、メモリに記憶された目標軌道に付随する速度要素に基づいて、走行駆動力出力装置200またはブレーキ装置210を制御する。操舵制御部166は、メモリに記憶された目標軌道の曲がり具合に応じて、ステアリング装置220を制御する。速度制御部164および操舵制御部166の処理は、例えば、フィードフォワード制御とフィードバック制御との組み合わせにより実現される。一例として、操舵制御部166は、自車両Mの前方の道路の曲率に応じたフィードフォワード制御と、目標軌道からの乖離に基づくフィードバック制御とを組み合わせて実行する。
第3制御部170は、例えば、第2取得部172と、相互認識判定部174と、車載機器制御部176とを備える。
第2取得部172は、認識部130による認識結果を示す情報を取得し、これをメモリに記憶させる。相互認識判定部174は、メモリに記憶された認識結果を参照して、認識部130により対向車両OCVが認識されているか否かを判定し、認識部130により対向車両OCVが認識されていると判定した場合、その対向車両OCVと自車両Mとが相互認識しているか否かを判定する。対向車両OCVとは、例えば、自車両Mが存在する車線(以下、自車線と称する)に存在する一以上の他車両mのうち、自車両Mの進行方向に対して反対の方向を進行方向とする車両である。
車載機器制御部176は、メモリに記憶された認識結果を参照して、認識部130により対向車両OCVが認識されているか否かを判定し、認識部130により対向車両OCVが認識されていると判定した場合、通信装置20を制御して、対向車両OCVと車車間通信する。
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機などの組み合わせと、これらを制御するECUとを備える。ECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、運転操作子80に含まれるブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、上記説明した構成に限らず、第2制御部160から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
[処理フロー]
図6は、本実施形態の自動運転制御装置100により実行される処理の一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、例えば、認識部130によって自車両Mが走行する道路が狭路であることが認識された場合に実行される。また、本フローチャートの処理は、例えば、所定の周期で繰り返し実行されてよい。
まず、車載機器制御部176は、認識部130により自車線前方において対向車両OCVが認識されたか否かを判定し(ステップS100)、認識部130により自車線前方において対向車両OCVが認識されたと判定した場合、更に、認識部130によりセンターラインが認識されたか否かを判定する(ステップS102)。
なお、第2地図情報62が地図上において、目標車線が決定された経路に対向車線が存在しない一車線の区間が存在しており、自車両Mがその区間に到達することが予測される場合、S102の処理は省略されてもよい。
車載機器制御部176は、認識部130によって、自車線前方において対向車両OCVが認識されていない、またはセンターラインが認識されていると判定した場合、本フローチャートの処理を終了する。
図7は、センターラインが認識される場面の一例を示す図である。図中CLはセンターラインを表し、L1は自車線を表し、L2は対向車線を表している。図示の例では、認識部130によって、対向車両OCVが認識されているが、センターラインCLを挟んで対向車線L2が存在しているため、自車両Mが走行する道路が狭路ではないと認識される。
一方、車載機器制御部176は、認識部130によってセンターラインが認識されていないと判定した場合、通信装置20を制御して、自車両M側で対向車両OCVが認識されていることを示す情報(以下、自車側認識情報と称する)を、車車間通信によって対向車両OCVに送信する(ステップS104)。
次に、相互認識判定部174は、通信装置20によって、対向車両OCVに自車側認識情報が送信されてから所定時間が経過するまで、または自車両Mが所定距離を走行するまでに、自車側認識情報の送信対象である対向車両OCVから、対向車両OCV側で自車両Mが認識されていることを示す情報(以下、対向車側認識情報と称する)が受信されたか否かを判定する(ステップS106)。
図8は、自車両Mと対向車両OCVとが車車間通信を行う場面の一例を示す図である。例えば、図中(A)のように、自車両Mが走行中に同じ車線内で対向車両OCVと遭遇した場合、(B)のように、互いの車両が車線端に寄ってすれ違おうとする。このとき、(C)に示すように、自車両Mと対向車両OCVとが車車間通信を行って相互認識の確認を行う。上述したように、本実施形態では、対向車両OCVにも車両システム1が搭載されていることを前提にしている。そのため、自車両Mからは自車側認識情報が対向車両OCVに送信され、対向車両OCVからは対向車側認識情報が自車両Mに送信される。これらの情報の送受信によって双方の車両において相互認識の確認がなされる。
相互認識判定部174は、通信装置20によって対向車側認識情報が受信された場合、対向車両OCVと自車両Mとの間で相互認識が成立したと判定する(ステップS108)。また、相互認識判定部174は、対向車両OCVに自車側認識情報が送信されるよりも前に、通信装置20によって対向車側認識情報が受信された場合、対向車両OCVと自車両Mとの間で相互認識が成立したと判定してよい。
次に、車載機器制御部176は、相互認識判定部174により対向車両OCVと自車両Mとの間で相互認識が成立したと判定されると、車内表示装置32や、車外表示装置70、ランプ群90、クラクション、リフレクタ展開装置94などの各種車載機器を制御して、第1情報を出力する(ステップS110)。第1情報は、例えば、自車両M側の乗員に対して、対向車両OCVと自車両Mとの双方で相互認識が成立していることを通知するための情報や、対向車両OCV側の乗員に対して、自動運転制御装置100が対向車両OCVを認識していることを視覚や聴覚で感知させるための情報などを含む。
図9は、第1情報が出力された車内表示装置32の画面の一例を示す図である。図示のように、車載機器制御部176は、対向車両OCVと自車両Mとの双方で相互認識が成立している場合、車内表示装置32の画面に、「対向車両が自車両を認識しています」といった文字や画像を表示させることで、対向車両OCVと自車両Mとの双方で相互認識が成立していることを自車両Mの乗員に通知する。
図10は、車外表示装置70によって第1情報が出力される場面の一例を示す図である。例えば、車載機器制御部176は、車外表示装置70に含まれるプロジェクタ72を制御して、自車両Mが対向車両OCVとすれ違う時に走行する予定の道路領域RAに画像などを表示させる。これによって、対向車両OCV側の乗員に対して、自車両Mが対向車両OCVを認識した上で自動運転を行っていることを通知することができる。
一方、相互認識判定部174は、通信装置20によって対向車側認識情報が受信されなかった場合、対向車両OCVと自車両Mとの間で相互認識が成立していないと判定する(ステップS112)。
次に、車載機器制御部176は、相互認識判定部174により対向車両OCVと自車両Mとの間で相互認識が成立していないと判定されると、各種車載機器を制御して、第2情報を出力する(ステップS114)。第2情報は、例えば、自車両M側の乗員に対して、対向車両OCVと自車両Mとの双方で相互認識が成立していないことを通知するための情報や、対向車両OCVに自車両Mの存在をアピールするための情報などを含む。
図11は、第2情報が出力された車内表示装置32の画面の一例を示す図である。図示の例のように、車載機器制御部176は、対向車両OCVと自車両Mとの双方で相互認識が成立していない場合、車内表示装置32の画面に、「対向車両が自車両を認識していません」といった文字や画像を表示させることで、対向車両OCVと自車両Mとの双方で相互認識が成立していないことを自車両Mの乗員に通知してよい。
また、車載機器制御部176は、相互認識が成立していない場合、ランプ群90に含まれる一以上のランプを作動させてもよい。「作動」とは、例えば、ランプを継続的に点灯させることであってもよいし、断続的に点滅させることであってもよいし、点灯状態のランプを消灯させることであってもよい。
図12は、ランプの作動によって第2情報が出力される場面の一例を示す図である。例えば、自車側認識情報が送信された後に対向車側認識情報が受信されず、相互認識が成立しない場合、車載機器制御部176は、自車両Mの存在を対向車両OCVに通知するために、ヘッドランプ90Aを制御して、対向車両OCVを照らす(図中RB参照)。これによって、対向車両OCVから見た自車両Mの視認性が向上するため、例えば、対向車両OCVに搭載された各種センサによって自車両Mが検出(認識)されやすくなり、相互認識の成功確率を高めることができる。
図13は、車外表示装置70によって第2情報が出力される場面の一例を示す図である。例えば、車載機器制御部176は、車外表示装置70に含まれる外装表示装置74の画面を、より色相の明るい色で発光させる。例えば、自車両Mのボディカラーを黒色とするために、車載機器制御部176が、外装表示装置74を黒色で発光させている場合がある。このような場合において、通信装置20によって対向車側認識情報が受信されずに、相互認識が成立しなかった場合、対向車両OCVが自車両Mを認識できない蓋然性が高くなる。そのため、車載機器制御部176は、黒色よりも色相の明るい白色などで外装表示装置74の画面を発光させることで、対向車両OCVから見た自車両Mの視認性を向上させる。この結果、対向車両OCVにおいて自車両Mが認識されやすくなり、より相互認識が成功しやすくなる。
また、車載機器制御部176は、相互認識判定部174により対向車両OCVと自車両Mとの間で相互認識が成立していないと判定されると、各種車載機器を制御して、自車両Mの車体形状を変形させることで、自車両Mの被視認性を向上させてもよい。
図14は、自車両Mの車体形状を変形させる場面の一例を示す図である。図示の例では、ヘッドランプ90Aがリトラクタブル型のヘッドランプである。リトラクタブル型のヘッドランプとは、例えば、非作動時にボンネット内部に格納されており、作動時にボンネット外部に展開される構造を持つ。例えば、図中(A)に示すように、ヘッドランプ90Aをボンネット内部に格納した状態で、通信装置20によって対向車側認識情報が受信されなかった場合、車載機器制御部176は、図中(B)に示すように、ヘッドランプ90Aをボンネット外部に展開させて自車両Mの車両形状を変形する。
また、車載機器制御部176は、リフレクタ展開装置94を制御して、リアバンパーなどの車体内部に格納されたリフレクタを車体外部に展開させることで、自車両Mの車両形状を変形させてもよい。
また、車載機器制御部176は、リトラクタブル型のヘッドランプ90Aやリフレクタを展開させるのに代えて、或いは加えて、フロントスポイラーなどの可動式のエアロパーツを稼働させることで、自車両Mの車両形状を変形させてもよい。
このように車両の形状を変形させることで、対向車両OCVから照射された電波やレーザー光がヘッドランプ90Aやリフレクタなどにおいて反射されやすくなり、対向車両OCVにおいて自車両Mが認識されやすくなる、この結果、より相互認識が成功しやすくなる。
なお、上述したフローチャートの処理を所定回数繰り返した結果、自車両Mと対向車両OCVとの間で相互認識が成立しない場合、行動計画生成部140は、自車両Mを減速させる目標軌道や自車両Mを後退させる目標軌道を生成してよい。例えば、行動計画生成部140は、速度制御部164によって参照されている目標軌道に比して、速度要素として含まれる目標速度が小さくした目標軌道を新たに生成することで、自車両Mを減速させる。また、前進方向の速度をプラスとした場合、行動計画生成部140は、速度要素として含まれる目標速度をマイナス成分の速度とすることで、自車両Mを後退させる。
また、行動計画生成部140は、これらの目標軌道を生成する代わりに、ナビゲーション装置50やMPU60に経路変更のリクエストを出力することで、経路変更を行ってもよい。経路変更のリクエストが出力されると、ナビゲーション装置50は、目的地に至る経路を別経路に決定し直し、MPU60は新たに決定された経路において推奨車線を決定する。これによって目的地までの経路が変更される。
以上説明した実施形態によれば、自車両Mの周辺に存在する他車両mを認識すると共に、自車両Mが走行する道路が狭路であることを認識する認識部130と、自車両Mに対向する対向車両OCVが他車両mとして認識され、且つ自車両Mが走行する道路が狭路であることが認識部130により認識されたことを含む所定条件を満たす場合、通信装置20に、自車側認識情報を対向車両OCVに送信させる第3制御部170と、を備えるため、他車両とすれ違う際に、互いの車両の認識状況を確認することができる。
[ハードウェア構成]
上述した実施形態の自動運転制御装置100は、例えば、図15に示すようなハードウェアの構成により実現される。図15は、実施形態の自動運転制御装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
自動運転制御装置100は、通信コントローラ100−1、CPU100−2、RAM(Random Access Memory)100−3、ROM(Read Only Memory)100−4、フラッシュメモリやHDD等の二次記憶装置100−5、およびドライブ装置100−6が、内部バスあるいは専用通信線によって相互に接続された構成となっている。ドライブ装置100−6には、光ディスク等の可搬型記憶媒体が装着される。二次記憶装置100−5に格納されたプログラム100−5aがDMAコントローラ(不図示)等によってRAM100−3に展開され、CPU100−2によって実行されることで、第1制御部120、第2制御部160、および第3制御部170が実現される。また、CPU100−2が参照するプログラムは、ドライブ装置100−6に装着された可搬型記憶媒体に格納されていてもよいし、ネットワークを介して他の装置からダウンロードされてもよい。
上記実施形態は、以下のように表現することができる。
他車両と通信する通信装置と、
情報を記憶するストレージと、
前記ストレージに格納されたプログラムを実行するプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記プログラムを実行することにより、
自車両の周辺に存在する他車両を認識し、
前記自車両が走行する道路が中央線の無い道路であることを認識し、
前記自車両に対向する対向車両を前記他車両として認識し、且つ前記自車両が走行する道路が中央線の無い道路であることを認識したことを含む所定条件を満たす場合、前記通信装置に、前記自車両が前記対向車両を認識していることを示す情報である自車側認識情報を前記対向車両に送信させるように構成された、
車両制御装置。
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。例えば、上述した実施形態の車両システム1は、ACCやLKAS等の運転支援を行うシステムに適用されてもよい。