JP6893820B2 - 微細藻類における硝酸の基質アナログに対する耐性を向上させる方法 - Google Patents

微細藻類における硝酸の基質アナログに対する耐性を向上させる方法 Download PDF

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Description

本発明は、微細藻類における硝酸の基質アナログに対する耐性を向上させる方法、硝酸の基質アナログに対する耐性を有する微細藻類の形質転換体、及び硝酸の基質アナログに対する耐性を有する形質転換体の作製方法に関する。
一般にバイオ燃料や有用物質の生産のために行う微生物の培養は、目的とする微生物の純粋培養を前提としている。よって、目的とする微生物以外の微生物のコンタミネーションを防ぐため、通常、培地や培養機器に対して滅菌処理又は殺菌処理を施す。
しかし、培養スケールが大きくなるほど、培地等の滅菌処理や殺菌処理にかかるエネルギーや設備費がかさむ。さらに、滅菌処理、殺菌処理を施した培地を用いたとしても、処理後に生じるコンタミネーションに対して目的外の微生物の増殖を抑えることは困難である。特に、開放型のオープンポンド等を用いて屋外で微生物(特に、微細藻類)を培養した場合、コンタミネーションが発生するリスクは高まる。
このことから、目的外の微生物の増殖を抑え、長期間にわたって目的微生物を選択的に培養することを可能とする、微生物株や微生物の培養方法の開発が重要とされている。
微生物のコンタミネーションを防ぐ方法として、遺伝子組換え技術により抗生物質耐性遺伝子などの外来遺伝子マーカーを導入した微生物を用いることができる。しかし、外来遺伝子を導入して作製された株は遺伝子組換え体に該当し、自然環境に外来遺伝子が拡散するリスクとして、カルタヘナ法などの要請により、その使用には制限が設けられている。例えば、微生物の細胞内に導入された外来遺伝子は、水平伝播等によって他の生物種へ拡散してしまう可能性が懸念される。
そこで、外来遺伝子を利用することなく内在性の遺伝子を改変し、これにより獲得する性質を利用した、目的微生物を選択的に培養する技術が注目されている。
内在性の遺伝子として、硝酸還元酵素(Nitrate Reductase、以下「NR」ともいう)をコードする遺伝子(以下、「NR遺伝子」ともいう)が存在する(非特許文献1参照)。NRは窒素代謝酵素の1種であり、図1に示すように、硝酸イオン(NO3 -)を還元して亜硝酸イオン(NO2 -)を生成する反応を触媒する。また、このNRは硝酸イオンの基質アナログである塩素酸イオン(ClO3 -)を還元し、亜塩素酸イオン(ClO2 -)を生成する反応を触媒することもできる。一般に、亜塩素酸イオンは細胞毒性を示すこと、及び、NR遺伝子の発現を抑制することで塩素酸の存在下でも生育可能となること、が知られている。このことから、NR遺伝子の抑制によって塩素酸耐性を向上させ、この塩素酸耐性を利用して目的微生物の選択的な培養が可能であると期待される。
また、窒素同化に関連するタンパク質として、硝酸トランスポーター(Nitrate Transporter、以下「NRT」ともいう)が存在する。NRTは、生物における窒素同化(硝酸同化)の最初の段階で、外界から細胞内部へ、硝酸イオンを輸送するタンパク質である。そして、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)において、NRTをコードする遺伝子(以下単に、「NRT遺伝子」ともいう)の発現を抑制することで、塩素酸耐性を付与できることが知られている(非特許文献2参照)。
近年、バイオ燃料生産に有用であるとして、微細藻類が注目を集めている。特にナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する藻類など、真正眼点藻綱の微細藻類は、バイオディーゼル燃料として利用可能な油脂を光合成によって生産でき、しかも食料と競合しないことから、次世代のバイオマス資源として注目されている。
そこで、開放型のオープンポンド等を用いてこれら微細藻類を屋外で培養する場合のコンタミネーション対策として、外来の遺伝子を用いることなく内在性の遺伝子を利用し、何らかの薬剤耐性を指標とした、目的藻類の選択的な培養方法の開発が期待される。しかしこれまでに、真正眼点藻綱の内在性遺伝子を利用して、何らかの薬剤耐性を付与することについての報告はない。
Proceedings of the National Academy of Sciences, 2011, vol. 108(52), p. 21265-21269 Mol. Cell. Biology., 1995, vol. 15(10), p. 5762-5769
前述のように、真正眼点藻綱の微細藻類において、外来遺伝子を利用することなく内在性の遺伝子を改変し、何らかの薬剤に対して耐性が向上した微細藻類を作製する方法については、ほとんど報告がない。
そこで本発明は、内在性遺伝子を改変することで、外来の薬剤遺伝子マーカーを利用することなく、長期間にわたって選択的な純粋培養を可能とする藻類の提供を課題とする。
本発明者らは上記課題に鑑み、鋭意検討を行った。
本発明者らはまず、非特許文献1に記載の先行の知見を基に、真正眼点藻綱のナンノクロロプシスのNR遺伝子を破壊しその遺伝子の発現が抑制された株を取得し、硝酸の基質アナログである塩素酸に対する耐性を確認した。しかし、一般に報告されているような塩素酸耐性の向上は見られなかった。
さらに、非特許文献2に記載のコナミドリムシの知見を参考にNRT遺伝子の発現の抑制を試みた。しかし、ナンノクロロプシスのNRT遺伝子はこれまで同定されていなかった。
そこで、本発明者らは、ナンノクロロプシスのNRT遺伝子を新たに同定し、同定したNRT遺伝子を破壊して、得られた形質転換体の塩素酸耐性を測定した。その結果、NR遺伝子のみを破壊した場合と比較して、塩素酸耐性が向上した。
さらに、NRT遺伝子とNR遺伝子を破壊した形質転換体を作製し、塩素酸耐性を測定した。その結果、NRTとNRの活性が共に抑制されることで塩素酸耐性が飛躍的に向上することも見出した。
そして、塩素酸などの硝酸の基質アナログの存在下で培養を行うことによって、目的外の微生物の増殖を抑制し、前記形質転換体を選択的に培養できることを見出した。
本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。
本発明は、微細藻類のゲノム上の下記タンパク質(A)若しくは(B)をコードする遺伝子を欠失、又は下記タンパク質(A)若しくは(B)をコードする遺伝子の発現を抑制し、微細藻類における硝酸の基質アナログに対する耐性を向上させる方法に関する。
また本発明は、微細藻類のゲノム上の下記タンパク質(A)若しくは(B)をコードする遺伝子、並びに下記タンパク質(C)若しくは(D)をコードする遺伝子を、欠失又は発現を抑制し、微細藻類における硝酸の基質アナログに対する耐性を向上させる方法に関する。
(A)配列番号41で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列からなり、かつ硝酸トランスポーター活性(以下単に、「NRT活性」ともいう)を有するタンパク質。
(C)配列番号42で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(D)前記タンパク質(C)のアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列からなり、かつ硝酸還元酵素活性(以下単に、「NR活性」ともいう)を有するタンパク質。
また本発明は、ゲノム上の前記タンパク質(A)若しくは(B)をコードする遺伝子が欠失、又は前記タンパク質(A)若しくは(B)をコードする遺伝子の発現が抑制されている、硝酸の基質アナログに対する耐性を有する、微細藻類の形質転換体に関する。
また本発明は、ゲノム上の前記タンパク質(A)若しくは(B)をコードする遺伝子、並びに前記タンパク質(C)若しくは(D)をコードする遺伝子が、欠失又は発現が抑制されている、硝酸の基質アナログに対する耐性を有する、微細藻類の形質転換体に関する。
また本発明は、微細藻類のゲノム上の前記タンパク質(A)若しくは(B)をコードする遺伝子を欠失、又は前記タンパク質(A)若しくは(B)をコードする遺伝子の発現を抑制し、硝酸の基質アナログに対する耐性を指標として形質転換体を取得する、硝酸の基質アナログに対する耐性を有する形質転換体の作製方法に関する。
さらに本発明は、微細藻類のゲノム上の前記タンパク質(A)若しくは(B)をコードする遺伝子、並びに前記タンパク質(C)若しくは(D)をコードする遺伝子を、欠失又は発現を抑制し、硝酸の基質アナログに対する耐性を指標として形質転換体を取得する、硝酸の基質アナログに対する耐性を有する形質転換体の作製方法に関する。
本発明の微細藻類における硝酸の基質アナログに対する耐性を向上させる方法によれば、外来遺伝子を導入することなく、長期間の選択的な純粋培養を可能にできる程度まで、微細藻類における硝酸の基質アナログ耐性を向上させることができる。
また本発明の形質転換体は、硝酸の基質アナログに対する耐性に優れ、選択圧条件下(硝酸の基質アナログ条件下)でも、長期間にわたって培養が可能である。
さらに本発明の形質転換体の作製方法は、外来遺伝子を導入することなく、硝酸の基質アナログに対する耐性を指標に、選択圧条件下(硝酸の基質アナログ条件下)でも、長期間にわたって培養が可能な形質転換体を作製できる。
微細藻類における、NRとNRTとが協働して行う、硝酸イオンとその基質アナログ(塩素酸イオン)の代謝経路を模式的に示す図である。 ナンノクロロプシス・オキュラータ(Nannochloropsis oculata)の野生株における、NRT遺伝子及びNR遺伝子周辺のゲノム配列を模式的に示す図である。 図3(a)は、実施例1で作製したNRT遺伝子相同組換え用プラスミドの模式図である。図3(b)は、実施例1で作製したNR遺伝子相同組換え用プラスミドの模式図である。図3(c)は、実施例1で作製したNRT-NR遺伝子相同組換え用プラスミドの模式図である。 図4(a)は、NR遺伝子相同組換え用カセットを用いたNR遺伝子破壊株の作製方法を模式的に示す図である。図4(b)は、ナンノクロロプシス・オキュラータの野生株とNR遺伝子破壊株について、相同組換え用カセットの導入を確認するために増幅するDNA断片のサイズを比較する模式図である。図4(c)は、PCRにより増幅されたゲノム断片の電気泳動写真(図面代用写真)である。 図5(a)は、NRT遺伝子相同組換え用カセットを用いたNRT遺伝子破壊株の作製方法を模式的に示す図である。図5(b)は、ナンノクロロプシス・オキュラータの野生株とNRT遺伝子破壊株について、相同組換え用カセットの導入を確認するために増幅するDNA断片のサイズを比較する模式図である。図5(c)は、PCRにより増幅されたゲノム断片の電気泳動写真(図面代用写真)である。 図6(a)は、NRT-NR遺伝子相同組換え用カセットを用いたNRT-NR遺伝子破壊株の作製方法を模式的に示す図である。図6(b)は、ナンノクロロプシス・オキュラータの野生株とNRT-NR遺伝子破壊株について、相同組換え用カセットの導入を確認するために増幅するDNA断片のサイズを比較する模式図である。図6(c)は、PCRにより増幅されたゲノム断片の電気泳動写真(図面代用写真)である。 実施例1で作製した各種形質転換体を寒天培地で培養した、図面代用写真である。 図8(a)は、実施例2で作製したNRT-NR遺伝子相同組換え用プラスミドの模式図である。図8(b)は、NRT遺伝子及びNR遺伝子相同組換え用カセットを用いたNRT遺伝子及びNR遺伝子破壊株の作製方法を模式的に示す図である。図8(c)は、ナンノクロロプシス・オキュラータの野生株とNRT遺伝子及びNR遺伝子破壊株について、相同組換え用カセットの導入を確認するために増幅するDNA断片のサイズを比較する模式図である。図8(d)は、PCRにより増幅されたゲノム断片の電気泳動写真(図面代用写真)である。
本明細書において、塩基配列及びアミノ酸配列の同一性は、Lipman-Pearson法(Science,1985,vol.227,p.1435-1441)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Winのホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
また本明細書において「ストリンジェントな条件」としては、例えばMolecular Cloning-A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION [Joseph Sambrook,David W.Russell.,Cold Spring Harbor Laboratory Press] 記載の方法が挙げられる。例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%SDS、5×デンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8〜16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。
さらに明細書において、遺伝子の「上流」とは、翻訳開始点からの位置ではなく、対象として捉えている遺伝子又は領域の5'末端側の部位又はこれに続く領域を示す。一方、遺伝子の「下流」とは、対象として捉えている遺伝子又は領域の3'末端側の部位又はこれに続く領域を示す。
また、本明細書において、宿主に対して所望の遺伝子の改変を行い得られた微細藻類を「形質転換体」という。
本発明の第1の実施態様では、特定の微細藻類のゲノム上のNRT遺伝子を欠失させる。あるいは、特定の微細藻類のゲノムにコードされるNRT遺伝子の発現を抑制する。特定の微細藻類において後述のNRT遺伝子の欠失又はその遺伝子の発現を抑制することで、微細藻類の生育性に影響を与える硝酸の基質アナログに対する耐性、好ましくは塩素酸耐性、が向上する。本発明の形質転換体は、向上した硝酸の基質アナログに対する耐性(好ましくは塩素酸耐性)を指標に選抜することもできる。
さらに前述のように、窒素代謝により塩素酸イオンが還元されて生成する亜塩素酸イオンは、通常の微生物に対して高い毒性を示す。これに対して本発明の形質転換体は塩素酸に対して高い耐性を有する。そのため、塩素酸を含有する培地で本発明の形質転換体を培養した場合、目的外の微生物のコンタミネーションを防止することができる。特に、本発明の形質転換体を、各種微生物やこれらの栄養源が混入する可能性が高い屋外で培養しても、培養途中でのコンタミネーションに対して十分に適宜対処できる。
なお、本明細書において「NRT遺伝子」とは、NRTをコードする領域の塩基配列からなるDNAの他、NRTの発現を調節する領域の塩基配列からなるDNAや、NRTをコードする領域とNRTの発現を調節する領域の塩基配列からなるDNAも包含する。
本発明におけるNRTは、前記タンパク質(A)又は(B)を指す。配列番号41で表されるアミノ酸配列は、ナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株由来のNRT(以下、「NoNRT」ともいう)である。なお、コナミドリムシ(非特許文献2に記載)のNRTのアミノ酸配列に対する、配列番号41で表されるアミノ酸配列の相同性は、約38%である。
前記タンパク質(A)及び(B)はいずれも、NRT活性を有する。本明細書において「NRT活性」とは、外界から細胞内部への硝酸イオンや塩素酸イオンの輸送能を意味する。
タンパク質がNRT活性を有することは、例えば、宿主細胞内で機能するプロモーターの下流に前記タンパク質をコードする遺伝子を連結したDNAを、硝酸イオンの輸送体が欠損した宿主細胞へ導入し、導入した遺伝子が発現する条件下で細胞を培養し、硝酸を窒素源として生育が可能かどうかを分析することで確認できる。
タンパク質(B)は、前記タンパク質(A)のアミノ酸配列との同一性が70%以上のアミノ酸配列からなり、かつNRT活性を有する。
一般に、タンパク質をコードしているアミノ酸配列は、必ずしも全領域の配列が保存されていなければタンパク質としての機能を示さないというものではなく、アミノ酸配列が変化しても機能に影響を与えない領域も存在することが知られている。このような機能に必須でない領域においては、アミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加といった変異が導入されてもタンパク質本来の活性を維持することができる。本発明においても、このようにNRT活性が保持され、かつアミノ酸配列が一部変異したタンパク質を用いることができる。
前記タンパク質(B)において、NRT活性の点から、前記タンパク質(A)のアミノ酸配列との同一性は75%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また、前記タンパク質(B)として、前記タンパク質(A)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上141個以下、好ましくは1個以上117個以下、より好ましくは1個以上94個以下、より好ましくは1個以上71個以下、より好ましくは1個以上47個以下、より好ましくは1個以上38個以下、より好ましくは1個以上24個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上5個以下)のアミノ酸を欠失、置換、挿入又は付加したタンパク質が挙げられる。
前記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子として、下記DNA(a)又は(b)からなる遺伝子が挙げられる。

(a)配列番号39で表される塩基配列からなるDNA。
(b)前記DNA(a)の塩基配列と同一性が55%以上の塩基配列からなり、かつNRT活性を有するタンパク質をコードするDNA。

配列番号39の塩基配列は、NoNRTをコードする遺伝子の塩基配列である。
前記DNA(b)において、NRT活性の点から、前記DNA(a)の塩基配列との同一性は60%以上がより好ましく、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また前記DNA(b)として、前記DNA(a)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上634個以下、好ましくは1個以上563個以下、より好ましくは1個以上493個以下、より1個以上423個以下、好ましくは1個以上352個以下、より好ましくは1個以上282個以下、より好ましくは1個以上212個以下、より好ましくは1個以上141個以下、より好ましくは1個以上113個以下、より好ましくは1個以上71個以下、より好ましくは1個以上29個以下、より好ましくは1個以上15個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつNRT活性を有する前記タンパク質(A)又は(B)をコードするDNAも好ましい。さらに前記DNA(b)として、前記DNA(a)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつNRT活性を有する前記タンパク質(A)又は(B)をコードするDNAも好ましい。
NRT遺伝子は、通常の遺伝子工学的手法により得ることができる。例えば、配列番号41に示すアミノ酸配列又は配列番号39に示す塩基配列に基づいて、NRT遺伝子を人工的に合成できる。NRT遺伝子の合成は、例えば、インビトロジェン社等のサービスを利用することができる。また、ナンノクロロプシス・オキュラータからクローニングによって取得することもできる。例えば、Molecular Cloning-A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION [Joseph Sambrook, David W. Russell, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001) ] 記載の方法等により行うことができる。また、実施例で用いたナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145は、国立環境研究所(NIES)より入手することができる。
本発明の第2の実施態様は、前述のNRT遺伝子に加えて、NR遺伝子についても欠失又は発現を抑制させる。これらの遺伝子を欠失又は発現を抑制することで硝酸の基質アナログに対する耐性がより向上する。そのため、硝酸の基質アナログ、好ましくは塩素酸、をより高い濃度で含有する条件下であっても、得られる形質転換体は生育が可能である。よって、本発明の形質転換体は、向上した硝酸の基質アナログに対する耐性(好ましくは塩素酸耐性)を指標に選抜することができる。ここで、本明細書における「NR」とは、硝酸イオンを還元して亜硝酸イオンを生じる酵素である。また、硝酸イオンの基質アナログとして塩素酸イオンを還元し、亜塩素酸イオンの生成も行う。
なお、本明細書において「NR遺伝子」とは、NRをコードする領域の塩基配列からなるDNAの他、NRの発現を調節する領域の塩基配列からなるDNAや、NRをコードする領域とNRの発現を調節する領域の塩基配列からなるDNAも包含する。
なお本明細書において、NRT遺伝子及びNR遺伝子を「欠失又は発現を抑制する」とは、下記(I)、(II)、(III)及び(IV)に示す遺伝子操作を意味する。
(I)NRT遺伝子及びNR遺伝子をそれぞれ欠失する。
(II)NRT遺伝子及びNR遺伝子の発現をそれぞれ抑制する。
(III)NRT遺伝子を欠失し、NR遺伝子の発現を抑制する。
(IV)NRT遺伝子の発現を抑制し、NR遺伝子を欠失する。
本明細書におけるNRは、前記タンパク質(C)又は(D)を指す。配列番号42のアミノ酸配列からなるタンパク質は、ナンノクロロプシス属に属する微細藻類であるナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株由来のNR(以下、「NoNR」ともいう)である。
前記タンパク質(C)及び(D)はいずれも、NR活性を有する。本明細書において「NR活性」とは、硝酸イオンを還元して亜硝酸イオンを生成する反応を触媒する活性、又は塩素酸イオンを還元して亜塩素酸イオンを生成する反応を触媒する活性を意味する。
タンパク質(D)は、前記タンパク質(C)のアミノ酸配列との同一性が70%以上のアミノ酸配列からなり、かつNR活性を有する。
一般に、酵素タンパク質をコードしているアミノ酸配列は、必ずしも全領域の配列が保存されていなければ酵素活性を示さないというものではなく、アミノ酸配列が変化しても酵素活性に影響を与えない領域も存在することが知られている。このような酵素活性に必須でない領域においては、アミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加といった変異が導入されても酵素本来の活性を維持することができる。本発明においても、このようにNR活性が保持され、かつアミノ酸配列が一部変異したタンパク質を用いることができる。
前記タンパク質(D)において、NR活性の点から、前記タンパク質(C)のアミノ酸配列との同一性は75%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また、前記タンパク質(D)として、前記タンパク質(C)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上255個以下、好ましくは1個以上212個以下、より好ましくは1個以上170個以下、より好ましくは1個以上128個以下、より好ましくは1個以上85個以下、より好ましくは1個以上68個以下、より好ましくは1個以上43個以下、より好ましくは1個以上17個以下、より好ましくは1個以上9個以下)のアミノ酸を欠失、置換、挿入又は付加したタンパク質が挙げられる。
なお、ナンノクロロプシス・オキュラータ等の藻類は、私的又は公的な研究所等の保存機関より入手することができる。例えば、ナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145株は、国立環境研究所(NIES)から入手することができる。
前記NR、好ましくはタンパク質(C)又は(D)、をコードする遺伝子として、下記DNA(c)又は(d)からなる遺伝子が挙げられる。

(c)配列番号40で表される塩基配列からなるDNA。
(d)前記DNA(c)の塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列からなり、かつNR活性を有するタンパク質をコードするDNA。

配列番号40の塩基配列は、NoNRをコードする遺伝子の塩基配列である。
前記DNA(d)において、NR活性の点から、前記DNA(c)の塩基配列との同一性は75%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。また前記DNA(d)として、配列番号40で表される塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上764個以下、好ましくは1個以上636個以下、より好ましくは1個以上509個以下、好ましくは1個以上382個以下、より好ましくは1個以上255個以下、より好ましくは1個以上204個以下、より好ましくは1個以上128個以下、より好ましくは1個以上51個以下、より好ましくは1個以上26個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつNR活性を有する前記タンパク質(C)又は(D)をコードするDNAも好ましい。さらに前記DNA(d)として、前記DNA(c)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつNR活性を有する前記タンパク質(C)又は(D)をコードするDNAも好ましい。
NR遺伝子は、通常の遺伝子工学的手法により得ることができる。例えば、配列番号42に示すアミノ酸配列又は配列番号40に示す塩基配列に基づいて、NR遺伝子を人工的に合成できる。NR遺伝子の合成は、例えば、インビトロジェン社等のサービスを利用することができる。また、ナンノクロロプシス・オキュラータからクローニングによって取得することもできる。例えば、Molecular Cloning-A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION [Joseph Sambrook, David W. Russell, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001) ] 記載の方法等により行うことができる。また、実施例で用いたナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145は、国立環境研究所(NIES)より入手することができる。
本発明において、ゲノム上のNRT遺伝子やNR遺伝子の欠失又は発現を抑制する方法としては特に制限はなく、常法より適宜選択することができる。NRT遺伝子やNR遺伝子が欠失又はこれらの発現が抑制されていることは、形質転換体のゲノム配列の解析や、NRT活性、NR活性を常法に測定することで確認できる。
例えば、ゲノム上のNRT遺伝子やNR遺伝子を破壊することで、NRT遺伝子やNR遺伝子を欠失させることができる。具体的には、NRT遺伝子やNR遺伝子の一部を含む適当なDNA断片を微細藻類の細胞内に取り込ませ、NRT遺伝子やNR遺伝子の一部領域に於ける相同組換えによってゲノム上のNRT遺伝子やNR遺伝子の全部又は一部を他の任意のDNA断片(例えば、任意の選択マーカー)で置換し、又は任意のDNA断片(例えば、任意の選択マーカー)を挿入してNRT遺伝子やNR遺伝子を分断し、NRT遺伝子やNR遺伝子を欠失することが可能である。
また、ランダムな遺伝子の発現の抑制方法として、N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジンなどの変異誘発剤の使用、紫外線やガンマ線等の照射によりNRT遺伝子やNR遺伝子の突然変異を誘発する方法、NRT遺伝子やNR遺伝子中(例えば、活性部位、基質結合部位、並びに転写若しくは翻訳開始領域)に部位特異的点突然変異(例えば、フレームシフト突然変異、インフレーム突然変異、終止コドンの挿入など)を誘発する方法、アンチセンス法、RNA干渉法、プロモーター競合等が挙げられる。
本発明において、ゲノム上のNRT遺伝子やNR遺伝子を破壊し、これら遺伝子を欠失させることが好ましい。
NRT遺伝子やNR遺伝子の破壊に用いる相同組換え用DNAカセットのサイズは、微細藻類への導入効率や、相同組換え効率、前記各種遺伝子のサイズなどを考慮し、適宜設定することができる。例えば、400bp以上が好ましく、500bp以上がより好ましい。またその上限値は、2.0kbpが好ましく、2.5kbpがより好ましい。
また、相同組換えにより欠損させるゲノムの長さは、15kbp以下が好ましく、10kbp以下がより好ましい。さらに、導入する各種遺伝子の長さは、10kbp以下が好ましく、8kbp以下がより好ましい。
前記相同組換え用DNAカセットを微細藻類に導入する形質転換方法は、微細藻類の種類に応じて常法より適宜選択することができる。
例えば、カルシウムイオンを用いる形質転換方法、一般的なコンピテントセル形質転換方法、プロトプラスト形質転換法、エレクトロポレーション法、LP形質転換方法、アグロバクテリウムを用いた方法、パーティクルガン法等が挙げられる。また、本発明では、Nature Communications, DOI:10.1038/ncomms1688, 2012等に記載のエレクトロポレーション法を用いて形質転換を行うこともできる。
本発明で用いる微細藻類は、遺伝子改変技術が確立している観点から、真正眼点藻綱の微細藻類が好ましく、ユースチグマトス目(Eustigmatales)の微細藻類がより好ましく、ナンノクロロプシス属の微細藻類がより好ましい。ナンノクロロプシス属の微細藻類の具体例としては、ナンノクロロプシス・オキュラータ、ナンノクロロプシス・オセアニカ(Nannochloropsis oceanica)、オキュラータ、ナンノクロロプシス・ガディタナ(Nannochloropsis gaditana)、ナンノクロロプシス・サリナ(Nannochloropsis salina)、ナンノクロロプシス・アトムス(Nannochloropsis atomus)、ナンノクロロプシス・マキュラタ(Nannochloropsis maculata)、ナンノクロロプシス・グラニュラータ(Nannochloropsis granulata)、ナンノクロロプシス・エスピー(Nannochloropsis sp. )等が挙げられる。このうち、ナンノクロロプシス・オキュラータ、ナンノクロロプシス・オセアニカ又はオキュラータ、ナンノクロロプシス・ガディタナが好ましく、ナンノクロロプシス・オキュラータがより好ましい。
NRT遺伝子やNR遺伝子が欠失又はそれらの発現が抑制された形質転換体の選択は、常法により行えるが、硝酸の基質アナログに対する耐性を指標として行うことが好ましく、塩素酸耐性を指標として行うことがより好ましい。
具体的には、宿主の種類に応じて、培地に含まれる硝酸の基質アナログ(好ましくは塩素酸)又はその塩の濃度と、形質転換体の培養期間を適宜選択し、硝酸の基質アナログ(好ましくは塩素酸)の存在下で培養したとき生育可能な株を、硝酸の基質アナログ(好ましくは塩素酸)耐性を獲得した形質転換体として選抜する。
培地に含まれる塩素酸又はその塩の濃度は、3mM以上が好ましく、5mM以上がより好ましい。また培養期間は、1週間以上が好ましく、2週間以上がより好ましく、8週間以下が好ましい。
NRT遺伝子やNR遺伝子を欠失又はそれらの発現を抑制した形質転換体では、硝酸資化性が低下している場合がある。その場合、尿素、アンモニア、亜硝酸などを窒素源として含有する培地で形質転換体を培養することが好ましい。
培地に含まれる前記窒素源の濃度は適宜設定することができる。具体的には、前記窒素源の濃度は、窒素原子等量で、1mg/L以上が好ましく、5mg/L以上がより好ましく、10mg/L以上がより好ましい。またその上限値は、2,000mg/Lが好ましく、1,000mg/Lがより好ましく、500mg/Lがより好ましく、200mg/Lがより好ましい。
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の微細藻類における硝酸の基質アナログに対する耐性を向上させる方法、形質転換体、を開示する。
<1>微細藻類のゲノム上の下記タンパク質(A)若しくは(B)をコードする遺伝子を欠失、又は下記タンパク質(A)若しくは(B)をコードする遺伝子の発現を抑制し、微細藻類における硝酸の基質アナログに対する耐性を向上させる方法。
(A)配列番号41で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつNRT活性を有するタンパク質。
<2>微細藻類のゲノム上の下記タンパク質(A)若しくは(B)をコードする遺伝子、並びに下記タンパク質(C)若しくは(D)をコードする遺伝子を、欠失又は発現を抑制し、微細藻類における硝酸の基質アナログに対する耐性を向上させる方法。
(A)配列番号41で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつNRT活性を有するタンパク質。
(C)配列番号42で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(D)前記タンパク質(C)のアミノ酸配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつNR活性を有するタンパク質。
<3>ゲノム上の前記タンパク質(A)若しくは(B)をコードする遺伝子が欠失、又は下記タンパク質(A)若しくは(B)をコードする遺伝子の発現が抑制されている、硝酸の基質アナログに対する耐性を有する、微細藻類の形質転換体。
<4>ゲノム上の前記タンパク質(A)若しくは(B)をコードする遺伝子、並びに前記タンパク質(C)若しくは(D)をコードする遺伝子が、欠失又は発現が抑制されている、硝酸の基質アナログに対する耐性を有する、微細藻類の形質転換体。
<5>微細藻類のゲノム上の前記タンパク質(A)若しくは(B)をコードする遺伝子を欠失、又は前記タンパク質(A)若しくは(B)をコードする遺伝子の発現を抑制し、硝酸の基質アナログに対する耐性を指標として形質転換体を取得する、硝酸の基質アナログに対する耐性を有する形質転換体の作製方法。
<6>微細藻類のゲノム上の前記タンパク質(A)若しくは(B)をコードする遺伝子、並びに前記タンパク質(C)若しくは(D)をコードする遺伝子を、欠失又は発現を抑制し、硝酸の基質アナログに対する耐性を指標として形質転換体を取得する、硝酸の基質アナログに対する耐性を有する形質転換体の作製方法。
<7>前記の、硝酸の基質アナログが、塩素酸である、前記<1>〜<6>のいずれか1項記載の方法、又は形質転換体
<8>前記形質転換体が、塩素酸又はその塩を3mM以上、好ましくは5mM以上で含有する培地で、1週間以上、好ましくは2週間以上、8週間以下、を培養したとき、生育可能である、前記<1>〜<7>のいずれか1項記載の方法、又は形質転換体。
<9>前記形質転換体を、尿素、アンモニア、及び亜硝酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を窒素源として含有する培地で培養する、前記<1>〜<8>のいずれか1項記載の方法、又は形質転換体。
<10>培地に含まれる前記窒素源の濃度が、窒素原子等量で、1mg/L以上、好ましくは5mg/L以上、より好ましくは10mg/L以上、であり、2,000mg/L以下、好ましくは1,000mg/L以下、より好ましくは500mg/L以下、より好ましくは200mg/L以下、である、前記<9>項記載の方法、又は形質転換体。
<11>前記タンパク質(B)が、前記タンパク質(A)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上141個以下、より好ましくは1個以上117個以下、より好ましくは1個以上94個以下、より好ましくは1個以上71個以下、より好ましくは1個以上47個以下、より好ましくは1個以上38個以下、より好ましくは1個以上24個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上5個以下、のアミノ酸を欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<1>〜<10>のいずれか1項記載の方法、又は形質転換体。
<12>前記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子が、下記DNA(a)又は(b)からなる遺伝子である、前記<1>〜<11>のいずれか1項記載の方法、又は形質転換体。
(a)配列番号39で表される塩基配列からなるDNA。
(b)前記DNA(a)の塩基配列と同一性が55%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつNRT活性を有するタンパク質をコードするDNA。
<13>前記DNA(b)が、前記DNA(a)の塩基配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上634個以下、より好ましくは1個以上563個以下、より好ましくは1個以上493個以下、より好ましくは1個以上423個以下、より好ましくは1個以上352個以下、より好ましくは1個以上282個以下、より好ましくは1個以上212個以下、より好ましくは1個以上141個以下、より好ましくは1個以上113個以下、より好ましくは1個以上71個以下、より好ましくは1個以上29個以下、より好ましくは1個以上15個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつNRT活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(a)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつNRT活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<12>項記載の方法、又は形質転換体。
<14>前記タンパク質(D)が、前記タンパク質(C)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上523個以下、より好ましくは1個以上457個以下、より好ましくは1個以上392個以下、より好ましくは1個以上327個以下、より好ましくは1個以上261個以下、より好ましくは1個以上196個以下、より好ましくは1個以上130個以下、より好ましくは1個以上104個以下、より好ましくは1個以上65個以下、より好ましくは1個以上26個以下、さらに好ましくは1個以上13個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<2>、<4>、及び<6>〜<13>のいずれか1項記載の方法、又は形質転換体。
<15>前記タンパク質(C)又は(D)をコードする遺伝子が、下記DNA(c)又は(d)からなる遺伝子である、前記前記<2>、<4>、及び<6>〜<14>のいずれか1項記載の方法、又は形質転換体。
(c)配列番号40で表される塩基配列からなるDNA。
(d)前記DNA(c)の塩基配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつNR活性を有するタンパク質をコードするDNA。
<16>前記DNA(d)が、前記DNA(c)の塩基配列に、1又は複数個、好ましく1個以上764個以下、より好ましくは1個以上636個以下、より好ましくは1個以上509個以下、好ましくは1個以上382個以下、より好ましくは1個以上255個以下、より好ましくは1個以上204個以下、より好ましくは1個以上128個以下、より好ましくは1個以上51個以下、より好ましくは1個以上26個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつNR活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(c)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつNR活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<15>項記載の方法、又は形質転換体。
<17>前記微細藻類が、真正眼点藻綱、好ましくはユースチグマトス目の微細藻類、より好ましくはナンノクロロプシス属の微細藻類、である、前記<1>〜<16>のいずれか1項に記載の方法、又は形質転換体。
<18>前記微細藻類が、ナンノクロロプシス・オキュラータ、ナンノクロロプシス・オセアニカ、オキュラータ、ナンノクロロプシス・ガディタナ、ナンノクロロプシス・サリナ、ナンノクロロプシス・アトムス、ナンノクロロプシス・マキュラタ、ナンノクロロプシス・グラニュラータ、及びナンノクロロプシス・エスピーからなる群より選ばれる、好ましくはナンノクロロプシス・オキュラータ、ナンノクロロプシス・オセアニカ、オキュラータ、及びナンノクロロプシス・ガディタナからなる群より選ばれる、より好ましくはナンノクロロプシス・オキュラータ、である、前記<1>〜<17>のいずれか1項に記載の方法、又は形質転換体。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。ここで、本実施例で用いるプライマーの塩基配列を表1に示す。
Figure 0006893820
実施例1 ナンノクロロプシス・オキュラータへの塩素酸耐性の付与
(1)ゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドの構築
ゼオシン耐性遺伝子(配列番号1)を人工合成し、これを鋳型として表1に示すプライマー番号2及びプライマー番号3のプライマー対を用いてPCRを行い、ゼオシン耐性遺伝子を増幅した。
また、ナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株(独立行政法人国立環境研究所(NIES)より入手)のゲノムを鋳型として、表1に示すプライマー番号4及びプライマー番号5のプライマー対、並びにプライマー番号6及びプライマー番号7のプライマー対をそれぞれ用いてPCRを行い、VCP1プロモーター配列(配列番号8)及びVCP1ターミネーター配列(配列番号9)を増幅した。
さらに、プラスミドベクターpUC118(タカラバイオ社製)を鋳型として、表1に示すプライマー番号10及びプライマー番号11のプライマー対を用いてPCRを行い、プラスミドベクターpUC118を増幅した。
得られた4つの断片をIn-Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて融合し、ゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドを構築した。
(2)ナンノクロロプシス内在性NRT遺伝子及びNR遺伝子の相同組換え用プラスミドの構築
ナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株より抽出したゲノムを鋳型として、表1に示すプライマー番号12及びプライマー番号13のプライマー対、プライマー番号14及びプライマー番号15のプライマー対、プライマー番号16及びプライマー番号17のプライマー対、並びにプライマー番号18及びプライマー番号19のプライマー対をそれぞれ用いてPCRを行い、図2に示すNRT遺伝子及びNR遺伝子(以下、「NRT-NR遺伝子」ともいう)周辺のゲノム配列(配列番号20)の部分配列(ゲノム配列(W)(配列番号20の2254〜3849位(配列番号21))、ゲノム配列(X)(配列番号20の5969〜7479位(配列番号22))、ゲノム配列(Y)(配列番号20の6816〜8286位(配列番号23))、ゲノム配列(Z)(配列番号20の8516〜10053位(配列番号24))を増幅した。
また、前述のゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドを鋳型に、表1に示すプライマー番号25及びプライマー番号26のプライマー対を用いてPCRを行い、ゼオシン耐性遺伝子発現用カセットPvcp1-ble-Tvcp1を取得した。
その後、得られたゲノム配列(W)断片、ゲノム配列(X)断片、ゼオシン耐性遺伝子発現用カセット、及び前述のプラスミドベクターpUC118をIn-Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて融合し、NRT遺伝子相同組換え用プラスミド(以下、「NRT遺伝子KO用プラスミド」ともいう)を構築した。
同様に、ゲノム配列(Y)断片、ゲノム配列(Z)断片、ゼオシン耐性遺伝子発現用カセット断片、及びプラスミドベクターpUC118を融合し、NR遺伝子相同組換え用プラスミド(以下、「NR遺伝子KO用プラスミド」ともいう)を構築した。
さらに、ゲノム配列(W)断片、ゲノム配列(Z)断片、ゼオシン耐性遺伝子発現用カセット断片、及びプラスミドベクターpUC118を融合し、NRT-NR遺伝子相同組換え用プラスミド(1)(以下、「NRT-NR遺伝子KO用プラスミド(1)」ともいう)を構築した。
なおこれらのプラスミドは、配列番号20の上流ゲノム配列(ゲノム配列(W)断片又はゲノム配列(Y)断片)、VCP1プロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、VCP1ターミネーター配列、及び配列番号20の下流ゲノム配列(ゲノム配列(X)断片又はゲノ配列(Z)断片)の順に連結したインサート配列と、pUC118ベクター配列からなる(図3(a)〜(c)参照)。
(3)相同組換え用プラスミドのナンノクロロプシス・オキュラータへの導入
前記NRT遺伝子相同組換え用プラスミドを鋳型として、表1に示すプライマー番号27及びプライマー番号28のプライマー対を用いてPCRを行い、NRT遺伝子相同組換え用カセット(図3(a)に示すプラスミドのインサート配列)を増幅した。
同様に、前記NR遺伝子相同組換え用プラスミドを鋳型として、表1に示すプライマー番号29及びプライマー番号30のプライマー対を用いてPCRを行い、NR遺伝子相同組換え用カセット(図3(b)に示すプラスミドのインサート配列)を増幅した。
さらに、前記NRT-NR遺伝子相同組換え用プラスミド(1)を鋳型として、表1に示すプライマー番号27及びプライマー番号30のプライマー対を用いてPCRを行い、NRT-NR遺伝子相同組換え用カセット(1)(図3(c)に示すプラスミドのインサート配列)を増幅した。
増幅した各DNA断片を、High Pure PCR Product Purification Kit(Roche Applied Science社製)を用いて精製した。
培養したナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株を遠心回収し、384mMのソルビトール溶液で洗浄し、ソルビトールで懸濁した細胞液を宿主として用いた。
上記で増幅した3種の相同組換え用カセット約500ngをそれぞれ宿主細胞と混和し、50μF、500Ω、2,200v/2mmの条件でエレクトロポレーションを行った。
尿素液体培地(尿素400mg、NaH2PO4・2H2O 30mg、ビタミンB12 0.5μg、ビオチン0.5μg、チアミン100μg、Na2SiO3・9H2O 10mg、Na2EDTA・2H2O 4.4mg、FeCl3・6H2O 3.16mg、FeCl3・6H2O 12μg、ZnSO4・7H2O 21μg、MnCl2・4H2O 180μg、CuSO4・5H2O 7μg、Na2MoO4・2H2O 7μg/人工海水1L)(以下、「尿素培地」という)にて24時間回復培養を行った。その後、2μg/mLのゼオシンを含有する尿素寒天培地に塗布し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて2〜3週間培養した。
(4)NR遺伝子破壊株、NRT遺伝子破壊株、並びにNRT遺伝子及びNR遺伝子破壊株の選抜
ゼオシン耐性を指標に得られたコロニーの中から、相同組換え用カセットによってナンノクロロプシス・オキュラータのNR遺伝子、NRT遺伝子、又はNRT-NR遺伝子が破壊された株をそれぞれPCRにより選抜した。
NR遺伝子破壊株(以下、「ΔNR株」ともいう)は、図4(a)に示すように、野生(WT)株のゲノムDNAと前記NR遺伝子相同組換え用カセット(NR-KO断片)の相同配列を利用した組換えにより、ゲノム上にコードされたNR遺伝子を破壊することで取得できる。
ΔNR株の選抜は、表1に示すプライマー番号31及びプライマー番号32のプライマー対を用いてPCRを行い、増幅される断片の長さの違いを指標として行った(図4(b)及び(c)参照)。
図4(c)に示すように、WT株では、約3.4kbpの遺伝子断片の増幅が確認された。これに対して、ΔNR株では、約5.0kbpの遺伝子断片の増幅が確認された。
NRT遺伝子破壊株(以下、「ΔNRT株」ともいう)は、図5(a)に示すように、WT株のゲノムDNAと前記NRT遺伝子相同組換え用カセット(NRT-KO断片)の相同配列を利用した組換えにより、ゲノム上にコードされたNRT遺伝子を破壊することで取得できる。
ΔNRT株の選抜は、表1に示すプライマー番号33及びプライマー番号34のプライマー対を用いてPCRを行い、断片増幅の有無を指標として行った(図5(b)及び(c)参照)。
図5(c)に示すように、WT株では、遺伝子断片の増幅は行われない。これに対して、ΔNR株では、約3.3kbpの遺伝子断片の増幅が確認された。
NRT-NR遺伝子の破壊株(以下、「ΔNRTΔNR株」ともいう)は、図6(a)に示すように、WT株のゲノムDNAと前記NRT-NR遺伝子相同組換え用カセット(1)(NRT-NR-KO断片(1))の相同配列を利用した組換えにより、ゲノム上にコードされたNRT遺伝子及びNR遺伝子を破壊することで取得できる。
ΔNRTΔNR株の選抜は、表1に示すプライマー番号35及びプライマー番号36のプライマー対を用いてPCRを行い、増幅される断片の長さの違いを指標として行った(図6(b)及び(c)参照)。
図6(c)に示すように、WT株では、約6.9kbpの遺伝子断片の増幅が確認された。これに対して、ΔNRTΔNR株では、約4.1kbpの遺伝子断片の増幅が確認された。
(5)ΔNR株、ΔNRT株、ΔNRTΔNR株の塩素酸耐性評価
ΔNR株、ΔNRT株、及びΔNRTΔNR株をそれぞれ、尿素寒天培地、尿素寒天培地の窒素源である尿素を硝酸に置き換えた硝酸寒天培地(硝酸1.1g、NaH2PO4・2H2O 30mg、ビタミンB12 0.5μg、ビオチン 0.5μg、チアミン 100μg、Na2SiO3・9H2O 10mg、Na2EDTA・2H2O 4.4mg、FeCl3・6H2O 3.16mg、FeCl3・6H2O 12μg、ZnSO4・7H2O 21μg、MnCl2・4H2O 180μg、CuSO4・5H2O 7μg、Na2MoO4・2H2O 7μg/人工海水1L)、及び5mM塩素酸カリウム(KClO3)を含有する尿素寒天培地の3種の寒天培地それぞれに播種し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて2〜3週間培養した。
対照としてWT株についても同様の検討を行った。
培養後の寒天培地の様子を図7に示す。
図7に示すように、硝酸寒天培地を用いた場合、WT株についてのみ生育は可能であったが、ΔNR株、ΔNRT株、及びΔNRTΔNR株では生育は確認できなかった。一方で、WT株、ΔNR株、ΔNRT株、及びΔNRTΔNR株はいずれも、尿素寒天培地での生育は可能であった。これら結果から、ナンノクロロプシス属に属する藻類においてNRT遺伝子やNR遺伝子が破壊されると、硝酸の資化性が喪失する。また、ナンノクロロプシスは硝酸の代わりに尿素を窒素源とすることも可能であることを示している。
また、前述の通り、塩素酸はNRにより変換されることで細胞毒性を示すことが、一般に知られている。そこで、ナンノクロロプシスの塩素酸に対する感受性について、WT株、ΔNR株、ΔNRT株、及びΔNRTΔNR株の塩素酸含有寒天培地上での生育を比較することで評価した。
その結果、図7の下段に示すように、WT株は塩素酸暴露によって死滅した。また、一般に言われているようにNR遺伝子の発現を抑制した株(ΔNR株)でも生育性を評価したが、5mMの塩素酸条件下において生育は確認されず、NR遺伝子の破壊だけでは塩素酸耐性を向上させることはできなかった。これに対して、ΔNRT株では塩素酸暴露条件下においても生育が確認され、NRT活性の抑制により、WT株に比べ塩素酸耐性が向上することを確認した。更に、ΔNRTΔNR株では、ΔNRT株と比較しても良好な生育が見られ、NRTとNRの活性が共に抑制されることで塩素酸耐性が飛躍的に向上することが示された。
さらに、尿素寒天培地に添加する塩素酸カリウム濃度を変えて、前述と同様の方法により、WT株、ΔNR株、ΔNRT株、及びΔNRTΔNR株の生育性を評価した(spot後3週間)。なお、生育性の評価は、下記の評価基準により行った。
(評価基準)
−:生育せず
+:生育抑制、(若干の)色素退色
++:生育抑制
+++:十分に生育
その結果を表2に示す。
Figure 0006893820
表2に示すように、ΔNRT株では塩素酸の濃度が5mMの条件下においても生育が確認され、NRT活性の抑制によりWT株やΔNR株に比べ塩素酸耐性が向上することを確認した。更に、ΔNRTΔNR株では塩素酸耐性が飛躍的に向上し、塩素酸の濃度が30mMの条件下においても生育が可能であった。
以上のように、真正眼点藻綱において、NRT遺伝子を欠失又は発現を抑制することで、塩素酸などの硝酸の基質アナログに対する耐性を向上させることができる。
さらに、NRT遺伝子に加えて、NR遺伝子も欠失又は発現を抑制することで、硝酸の基質アナログに対する耐性が顕著に向上し、高濃度の塩素酸存在下でも生育が可能な形質転換体を作製することができる。
実施例2 ナンノクロロプシス・オキュラータの塩素酸耐性を指標としたΔNRTΔNR株の取得
(1)ナンノクロロプシス内在性NRT-NR遺伝子の相同組換え用プラスミドの構築
実施例1で作製したNRT-NR遺伝子KO用プラスミド(1)(図3(c)参照)を鋳型として、表1に示すプライマー番号37及びプライマー番号38のプライマー対を用いてPCRを行い、図2に示すNRT-NR遺伝子周辺のゲノム配列(配列番号20)の部分配列(ゲノム配列(W)(配列番号21)、ゲノム配列(Z)(配列番号24))がpUC118ベクター配列によって連結された断片を増幅した。
この増幅断片を実施例1と同様の方法にて融合し、薬剤耐性遺伝子(ble)発現用カセットを含まないNRT-NR遺伝子相同組換え用プラスミド(2)(以下、「NRT-NR遺伝子KO用プラスミド(2)」ともいう)を構築した。
なお、本発現プラスミドは、図2に示すナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株のゲノム配列(W)とゲノム配列(Z)を順に連結したインサート配列と、pUC118ベクター配列からなる(図8(a)参照)。
(2)相同組換え用プラスミドのナンノクロロプシス・オキュラータへの導入
前記NRT-NR遺伝子相同組換え用プラスミド(2)を鋳型として、表1に示すプライマー番号27及びプライマー番号30のプライマー対を用いてPCRを行い、NRT-NR遺伝子相同組換え用カセット(2)(図8(a)に示すプラスミドのインサート配列)を増幅した。
増幅したDNA断片を用いて、実施例1と同様の方法でナンノクロロプシス・オキュラータへ導入し、回復培養を行った。回復培養後、20mM塩素酸カリウム(KClO3)含有尿素寒天培地に塗布し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて2〜3週間培養し、塩素酸耐性を指標としてコロニーを取得した。
(3)塩素酸耐性株のNRT-NR周辺ゲノムの解析
塩素酸耐性を指標に取得された形質転換体について、NRT-NR遺伝子周辺のゲノムを確認した。
表1に示すプライマー番号35及びプライマー番号36のプライマー対を用いてPCRを行い、NRT-NR遺伝子周辺ゲノムを増幅した。その結果、塩素酸耐性を指標として取得した株では全て約2.2kbpの断片が増幅された。
図8(b)に示すとおり、WT株のゲノムDNAと、前記NRT-NR遺伝子相同組換え用カセット(2)(NRT-NR-KO断片(2))の相同配列箇所において相同組換えが生じると、ΔNRTΔNR株が取得される。よって、上記条件でのPCRにより増幅される断片は、WT株で約6.9kbp、ΔNRTΔNR株で約2.2kbpの断片が増幅される(図8(c)及び(d)参照)。
以上の結果より、塩素酸耐性を指標に取得された株は全てΔNRTΔNR株であることが明らかとなった。このことから、塩素酸耐性を指標とした形質転換体の取得も可能であることが示された。

Claims (12)

  1. 微細藻類のゲノム上の下記タンパク質(A)若しくは(B)をコードする遺伝子を欠失、又は下記タンパク質(A)若しくは(B)をコードする遺伝子の発現を抑制し、微細藻類における硝酸の基質アナログに対する耐性を向上させる方法。
    (A)配列番号41で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ硝酸トランスポーター活性を有するタンパク質。
  2. 微細藻類のゲノム上の下記タンパク質(A)若しくは(B)をコードする遺伝子、並びに下記タンパク質(C)若しくは(D)をコードする遺伝子を、欠失又は発現を抑制し、微細藻類における硝酸の基質アナログに対する耐性を向上させる方法。
    (A)配列番号41で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ硝酸トランスポーター活性を有するタンパク質。
    (C)配列番号42で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (D)前記タンパク質(C)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ硝酸還元酵素活性を有するタンパク質。
  3. 前記の、硝酸の基質アナログが、塩素酸である、請求項1又は2記載の方法。
  4. 前記微細藻類がナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する藻類である、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
  5. ゲノム上の下記タンパク質(A)若しくは(B)をコードする遺伝子が欠失、又は下記タンパク質(A)若しくは(B)をコードする遺伝子の発現が抑制されている、硝酸の基質アナログに対する耐性を有する、微細藻類の形質転換体。
    (A)配列番号41で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ硝酸トランスポーター活性を有するタンパク質。
  6. ゲノム上の下記タンパク質(A)若しくは(B)をコードする遺伝子、並びに下記タンパク質(C)若しくは(D)をコードする遺伝子が、欠失又は発現が抑制されている、硝酸の基質アナログに対する耐性を有する、微細藻類の形質転換体。
    (A)配列番号41で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ硝酸トランスポーター活性を有するタンパク質。
    (C)配列番号42で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (D)前記タンパク質(C)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ硝酸還元酵素活性を有するタンパク質。
  7. 前記の、硝酸の基質アナログが、塩素酸である、請求項5又は6記載の形質転換体
  8. 前記微細藻類がナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する藻類である、請求項5〜のいずれか1項記載の形質転換体。
  9. 微細藻類のゲノム上の下記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子を欠失、又は下記タンパク質(A)若しくは(B)をコードする遺伝子の発現を抑制し、硝酸の基質アナログに対する耐性を指標として形質転換体を取得する、硝酸の基質アナログに対する耐性を有する形質転換体の作製方法。
    (A)配列番号41で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ硝酸トランスポーター活性を有するタンパク質。
  10. 微細藻類のゲノム上の下記タンパク質(A)若しくは(B)をコードする遺伝子、並びに下記タンパク質(C)若しくは(D)をコードする遺伝子を、欠失又は発現を抑制し、硝酸の基質アナログに対する耐性を指標として形質転換体を取得する、硝酸の基質アナログに対する耐性を有する形質転換体の作製方法。
    (A)配列番号41で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ硝酸トランスポーター活性を有するタンパク質。
    (C)配列番号42で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (D)前記タンパク質(C)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ硝酸還元酵素活性を有するタンパク質。
  11. 前記の、硝酸の基質アナログが、塩素酸である、請求項9又は10記載の方法。
  12. 前記微細藻類がナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する藻類である、請求項9〜11のいずれか1項記載の方法。
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