JP6893360B2 - 1,1’−ビナフチル誘導体の製造方法および1,1’−ビナフチル誘導体 - Google Patents

1,1’−ビナフチル誘導体の製造方法および1,1’−ビナフチル誘導体 Download PDF

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Description

本発明は、1,1’−ビナフチル誘導体の製造方法、具体的な例として、ビナフチル骨格の特定の位置に置換基が導入された1,1’−ビナフチル誘導体の製造方法、ナフタレン誘導体からの1,1’−ビナフチル誘導体の製造方法、および上記特定の位置に置換基が導入された誘導体からのさらなる1,1’−ビナフチル誘導体の製造方法に関する。本発明は、また、これらの製造方法により実現する新規な1,1’−ビナフチル誘導体に関する。
2つのナフタレン骨格の1位同士が結合した分子構造を有する1,1’−ビナフチルは、その骨格(ビナフチル骨格)の2位および2’位に置換基を有することにより、軸不斉化合物である1,1’−ビナフチル誘導体となる。このような1,1’−ビナフチル誘導体として、ジフェニルホスフィノ基(−PPh2)を2位および2’位に有する2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)、およびヒドロキシ基(水酸基;−OH)を2位および2’位に有する1,1’−ビ−2−ナフトール(BINOL)が知られている。BINAPおよびBINOLは、例えば、その軸不斉を利用して、遷移金属および典型金属の優れた不斉配位子として、触媒的不斉合成反応または不斉分子識別場の構築などに利用されている。
2位および2’位にメトキシ基のようなアルコキシ基または水酸基を有する1,1’−ビナフチル誘導体に対して、ビナフチル骨格の他の位置に置換基を導入することが試みられている。必要に応じて2位および2’位のアルコキシ基を加水分解により水酸基に変換できることもあって、このような他の位置への置換基の導入により、BINOL骨格またはBINOL類似の骨格を有するビナフチル誘導体の、より幅広い用途への応用が期待される。
非特許文献1には、2位および2’位に水酸基を有するBINOLに対して、ビナフチル骨格の3位、3’位、6位および6’位にヨウ素基(−I)またはペンタフルオロエチル基(−C25基)を導入する方法が開示されている。この方法では、ヒドロキシ基をメトキシメチル(MOM)基により保護する保護反応および保護基であるMOM基を脱離させる脱離反応を含む多段的な反応が必須であり、直接的な置換基の導入は実現していない。非特許文献2には、2位および2’位にメトキシ基を有する1,1’−ビナフチル誘導体に対して、Sc(OTf)3触媒の存在下、その骨格の6位および6’位にヨウ素基(−I)を導入する方法が開示されている。
特許文献1には、2位および2’位にメトキシ基を有する1,1’−ビナフチル誘導体に対して、ルイス酸の存在下、その骨格の3位および3’位、または3位、3’位、6位および6’位にヨウ素基(−I)を導入する方法が開示されている。特許文献1には、ルイス酸に代えて、ブレンステッド酸であるトリフルオロメタンスルホン酸を使用した場合、置換基導入の反応が進行しないことが、併せて記載されている。
BINOLをはじめとする1,1’−ビナフチル誘導体の8位および/または8’位に置換基を導入する方法はこれまで全く知られていない。本発明の目的の一つは、ビナフチル骨格の8位および/または8’位に置換基が導入された1,1’−ビナフチル誘導体の製造方法の提供である。
本開示の1,1’−ビナフチル誘導体の製造方法(第1の製造方法)は、1,1’−ビナフチル骨格の2位および2’位に、前記骨格に直接結合した酸素原子を含む電子供与性基をそれぞれ有する1,1’−ビナフチル前駆誘導体と、有機酸と、ヨウ素化剤または臭素化剤と、を混合して、前記骨格の8位および/または8’位に置換基が導入された1,1’−ビナフチル誘導体を得る方法である。
別の側面から見た本開示の1,1’−ビナフチル誘導体の製造方法(第2の製造方法)は、ナフタレン骨格の2位に置換基を有するナフタレン誘導体と、有機酸と、ヨウ素化剤または臭素化剤と、を混合して前記誘導体のカップリング反応を進行させて、1,1’−ビナフチル骨格の2位および2’位に置換基をそれぞれ有する1,1’−ビナフチル誘導体を得る方法である。
また別の側面から見た本開示の1,1’−ビナフチル誘導体の製造方法(第3の製造方法)は、以下の式(1)に示す1,1’−ビナフチル誘導体に対して、Y1、Y2、−OR1、−OR2および少なくとも1つのXから選ばれる少なくとも1つの基が関与する反応を進行させて、当該反応を反映した、前記式(1)に示す誘導体とは異なる1,1’−ビナフチル誘導体を得る方法である。式(1)において、Xはヨウ素基または臭素基、R1およびR2は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜50のアルキル基、アリル基、ベンジル基、トリフルオロメタンスルホニル基、シリル基、または水酸基の保護基であり、Y1およびY2は、互いに独立して、前記誘導体のビナフチル骨格に直接結合した酸素原子を含む有機酸基、または水酸基である。
Figure 0006893360
本開示の1,1’−ビナフチル誘導体は、ビナフチル骨格の8位および/または8’位に置換基を有する。
本発明によれば、ビナフチル骨格の8位および/または8’位に置換基が導入された1,1’−ビナフチル誘導体の製造方法が達成される。また、本発明によれば、ビナフチル骨格の8位および/または8’位に置換基が導入された新規な1,1’−ビナフチル誘導体が得られる。
本発明の製造方法により形成できる1,1’−ビナフチル誘導体の例を示す図である。 本発明の製造方法により形成できる1,1’−ビナフチル誘導体の別の例を示す図である。 本発明の製造方法により形成できる1,1’−ビナフチル誘導体のまた別の例を示す図である。 本発明の製造方法により形成できる1,1’−ビナフチル誘導体のさらにまた別の例を示す図である。 本発明の製造方法により形成できる1,1’−ビナフチル誘導体からのさらなる誘導体の例を示す図である。 本発明の製造方法により形成できる1,1’−ビナフチル誘導体からのさらなる誘導体の別の例を示す図である。 実施例1で作製した1,1−ビナフチル誘導体の1H−核磁気共鳴(NMR)プロファイルを示す図である。 実施例1で作製した1,1−ビナフチル誘導体の13C−NMRプロファイルを示す図である。 実施例1で作製した1,1−ビナフチル誘導体の19F−NMRプロファイルを示す図である。 実施例2で作製した1,1−ビナフチル誘導体の1H−NMRプロファイルを示す図である。 実施例2で作製した1,1−ビナフチル誘導体の1H−NMRプロファイルを示す図である。 実施例2で作製した1,1−ビナフチル誘導体の19F−NMRプロファイルを示す図である。 実施例2で作製した1,1−ビナフチル誘導体の1H−NMRプロファイルを示す図である。 実施例2で作製した1,1−ビナフチル誘導体の13C−NMRプロファイルを示す図である。 実施例2で作製した1,1−ビナフチル誘導体の19F−NMRプロファイルを示す図である。 実施例2において作製した(S)−4,4’,5,5’,6,6’,8,8’−オクタキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルのHMQC評価結果を示す図である。 実施例2において作製した(S)−4,4’,5,5’,6,6’,8,8’−オクタキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルのHMBC評価結果を示す図である。 実施例6で作製した1,1−ビナフチル誘導体の1H−NMRプロファイルを示す図である。 実施例6で作製した1,1−ビナフチル誘導体の19F−NMRプロファイルを示す図である。 実施例7で作製した1,1−ビナフチル誘導体の1H−NMRプロファイルを示す図である。 実施例7で作製した1,1−ビナフチル誘導体の19F−NMRプロファイルを示す図である。 応用例1で作製した(S)−4,4’,6,6’−テトラヒドロキシ−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフト−para−キノンのUV−Vis吸収スペクトルを示す図である。 応用例1で作製した(S)−4,4’,6,6’−テトラヒドロキシ−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフト−para−キノンの1H−NMRプロファイルを示す図である。 実施例9で作製した1,1−ビナフチル誘導体の1H−NMRプロファイルを示す図である。 実施例9で作製した1,1−ビナフチル誘導体の13C−NMRプロファイルを示す図である。 実施例10で作製した1,1−ビナフチル誘導体の1H−NMRプロファイルを示す図である。 実施例10で作製した1,1−ビナフチル誘導体の13C−NMRプロファイルを示す図である。 実施例10で作製した1,1−ビナフチル誘導体の19F−NMRプロファイルを示す図である。 実施例11で作製したペリレン誘導体の1H−NMRプロファイルを示す図である。 実施例11で作製したペリレン誘導体の13C−NMRプロファイルを示す図である。 実施例11で作製したペリレン誘導体の19F−NMRプロファイルを示す図である。 実施例12で作製したペリレン誘導体の1H−NMRプロファイルを示す図である。 実施例12で作製したペリレン誘導体の13C−NMRプロファイルを示す図である。 実施例12で作製したペリレン誘導体の19F−NMRプロファイルを示す図である。 実験例1で作製したナフタレン誘導体の1H−NMRプロファイルを示す図である。 実験例1で作製したナフタレン誘導体の13C−NMRプロファイルを示す図である。 実施例13で作製した1,1−ビナフチル誘導体の1H−NMRプロファイルを示す図である。 実施例13で作製した1,1−ビナフチル誘導体の13C−NMRプロファイルを示す図である。 実施例13で作製した1,1−ビナフチル誘導体の19F−NMRプロファイルを示す図である。 実施例14で作製した1,1−ビナフチル誘導体の1H−NMRプロファイルを示す図である。 実施例14で作製した1,1−ビナフチル誘導体の13C−NMRプロファイルを示す図である。 実施例14で作製した1,1−ビナフチル誘導体の19F−NMRプロファイルを示す図である。 実施例15で作製したペリレン誘導体の1H−NMRプロファイルを示す図である。 実施例15で作製したペリレン誘導体の13C−NMRプロファイルを示す図である。 実施例15で作製したペリレン誘導体の19F−NMRプロファイルを示す図である。
[1,1’−ビナフチル誘導体の製造方法]
(第1の製造方法)
第1の製造方法では、1,1’−ビナフチル前駆誘導体(A)と、有機酸と、ヨウ素化剤または臭素化剤とを混合して、ビナフチル骨格の8位および/または8’位に置換基Z1が導入された1,1’−ビナフチル誘導体(B)を得る。前駆誘導体(A)は、2位および2’位に電子供与性基Z2を有する1,1’−ビナフチル骨格(以下、「1,1’−ビナフチル骨格」を単に「ビナフチル骨格」ともいう)を有する。電子供与性基Z2は、ビナフチル骨格に直接結合した酸素原子を含む。
第1の製造方法では、前駆誘導体(A)、有機酸、およびヨウ素化剤または臭素化剤を含む反応系により、前駆誘導体(A)のビナフチル骨格の8位および/または8’位への置換基の導入反応が進行する。この導入反応は、ビナフチル骨格への直接的な置換基の導入反応でありうる。これまでビナフチル骨格の3位、3’位、6位、6’位への置換基の導入反応が知られている一方で(非特許文献1,2および特許文献1を参照)、このような、ビナフチル骨格の8位、8’位への置換基の導入は困難であった。これは、1位および1’位においてナフタレン骨格が互いに結合したビナフチル骨格の電子的および立体的な要因により、ビナフチル骨格の8位および8’位への置換基の導入が困難であったことに基づく。また、ビナフチル骨格の2位および2’位に結合した置換基、例えば水酸基あるいはメトキシ基、自体の反応性の高さから、ビナフチル骨格への置換基の導入を試みる際に、当該2位および2’位の置換基の保護基による保護およびその後の保護基の脱離が要求されていたこと(非特許文献1を参照)も、その困難性が増す要因であった。一方、第1の製造方法は、このような従来の技術常識では予想できない、ビナフチル骨格の8位および/または8’位に置換基を導入する方法である。また、第1の製造方法では、前駆誘導体(A)の2位および2’位の電子供与性基Z2の保護基による保護およびその後の保護基の脱離も省略することができ、このことは、ビナフチル骨格の8位および/または8’位への直接的な置換基の導入を達成できることを意味している。
前駆誘導体(A)がビナフチル骨格の2位および2’位に有する電子供与性基Z2は、ビナフチル骨格への電子供与性を有するとともに、ビナフチル骨格に直接結合した酸素原子を含む限り限定されない。電子供与性基Z2は、例えば−OR基であって、Rは、例えば水素原子、炭素数1〜50のアルキル基、アリル基、ベンジル基、トリフルオロメタンスルホニル基、シリル基、または、水酸基の保護基である。具体的なRの例は、メチル基、(メタ)アリル基、エチル基、エチニル基、ビニル基、n−プロピル基、プロパルギル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ミリスチル基、n−パルミチル基、n−ステアリル基、メトキシメチル基(MOM)、メチルチオメチル基(MTM)、2−メトキシエトキシメチル基(MEM)、テトラヒドロピラニル基(THP)、ベンジル基、o−ニトロベンジル基、p−メトキシベンジル基、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピル基、t−ブチルジフェニルシリル基、ホルミル基、アセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、ピバロイル基、ベンゾエート基、メタンスホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、ホスホナイト基、ホスフィナイト基、ホスファイト基、ホスホネート基、ホスホラミダイト基、ホスホロジアミダイト基、カルバミル基である。Rは、エステル基、シリル基、エーテル基を有していてもよく、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基でありうる。ビナフチル骨格の2位に結合した置換基Z2と、2’位に結合した置換基Z2とは同一であっても互いに異なってもよい。すなわち、前駆誘導体(A)がビナフチル骨格の2位に有する電子供与性基が−OR1基であり、2’位に有する電子供与性基が−OR2基であり、R1およびR2が、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜50のアルキル基、アリル基、ベンジル基、トリフルオロメタンスルホニル基、シリル基、または、水酸基の保護基でありうる。Rは、水素原子、炭素数1〜50のアルキル基、トリフルオロメタンスルホニル基が好ましく、水素原子、メチル基、トリフルオロメタンスルホニル基がより好ましい。同様に、R1およびR2は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜50のアルキル基、トリフルオロメタンスルホニル基が好ましく、水素原子、メチル基、トリフルオロメタンスルホニル基がより好ましい。
より具体的な水酸基の保護基は、例えば、(メタ)アリル基、メトキシメチル基、シリル基である。
R、R1およびR2が、アリル基、ベンジル基、トリフルオロメタンスルホニル基、またはシリル基である−OR基、−OR1基および−OR2基は、それぞれ、アリルオキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、シリルオキシ基である。
前駆誘導体(A)は、ビナフチル骨格の2位および2’位以外の他の位置に置換基Z3を有していてもよく、置換基Z3は電子供与性基Z2であってもなくてもよい。ただし、前駆誘導体(A)は、ビナフチル骨格の8位および8’位から選ばれる少なくとも1つの位置に置換基を有しておらず、典型的には、8位および8’位の双方の位置に置換基を有していない。前者の場合、第1の製造方法によって、ビナフチル骨格の8位および8’位のうち前駆誘導体(A)が置換基を有していない位置に置換基Z1が導入された1,1’−ビナフチル誘導体(B)が得られることになる。第1の製造方法では、ビナフチル骨格の8位および8’位の双方の位置に置換基Z1が導入された1,1’−ビナフチル誘導体(B)を形成できる。このとき、8位に導入された置換基Z1と8’位に導入された置換基Z1とは、同一であっても互いに異なっていてもよい。
第1の製造方法によって前駆誘導体(A)のビナフチル骨格の8位および/または8’位に導入される置換基Z1(ビナフチル誘導体(B)がビナフチル骨格の8位および/または8’位に有する置換基Z1)は、前駆誘導体(A)と有機酸とヨウ素化剤または臭素化剤との混合による反応を経た段階(ビナフチル骨格の8位および/または8’位に導入された段階)では、典型的には、有機酸基、水酸基、およびヨウ素基(ヨウ素化剤を使用した場合)または臭素基(臭素化剤を使用した場合)から選ばれる少なくとも1種である。上記反応後にさらなる反応を進行させることにより、当該少なくとも1種の基から誘導された他の置換基Z1が、ビナフチル誘導体(B)の8位および/または8’位に配置されうる。他の置換基Z1へ誘導する反応には、公知の反応を適用しうる。第1の製造方法は、前駆誘導体(A)と、有機酸と、ヨウ素化剤または臭素化剤と、を混合する工程を含み、上記さらなる反応を進行させる工程をさらに含みうる。
ビナフチル骨格の8位および/または8’位に導入された段階の置換基Z1が、有機酸基であるか、水酸基であるか、ヨウ素基または臭素基であるかは、反応条件の制御、例えば有機酸の種類および使用量(例えば、前駆誘導体(A)1当量あたりの当量)、ヨウ素化剤または臭素化剤の種類および使用量、反応温度、反応時間などにより制御できる。有機酸の使用量、および/またはヨウ素化剤もしくは臭素化剤の使用量という、定量的な反応条件の制御も可能である。通常、反応条件をより強くするに従い、ヨウ素基または臭素基の導入から有機酸基の導入へと反応が変化する。そして有機酸基は、加水分解反応により、比較的容易に水酸基へと変化させることができる。
置換基Z1が有機酸基または水酸基である場合、第1の製造方法では、ビナフチル骨格の8位および/または8’位の水素原子が酸化反応により直接的に酸素原子に置換される反応が進行していることになる。この反応は、第1の製造方法に特徴的であり、ビナフチル骨格に対するこのような反応はこれまで知られていない。また、これを、第1の製造方法において前駆誘導体(A)と混合する有機酸およびヨウ素化剤または臭素化剤の見地から見ると、ヨウ素化剤または臭素化剤を混合しているにもかかわらず、ビナフチル骨格の8位および/または8’位に有機酸基が直接結合する反応が進行していることになる。これらの反応は、ラジカル捕捉剤(例えばガルビノキシルフリーラジカル)を反応系に添加すると当該反応が停止することから、ラジカル反応であることが推定される。
有機酸は特に限定されず、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸およびパラトルエンスルホン酸から選ばれる少なくとも1種である。副反応物の生成が抑制されるとともに、ビナフチル骨格の8位および/または8’位への置換基Z1の導入が効率的に進行することから、有機酸はトリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)が好ましい。
有機酸基は、有機酸に由来する基であり、より具体的な例は、有機酸から水素原子が1つ外れて形成された基である。
有機酸としてTfOHを使用した場合、置換基Z1である有機酸基はトリフルオロメタンスルホン酸基(TfO基)である。同様に、有機酸基としてメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、パラトルエンスルホン酸を使用した場合、置換基Z1である有機酸基は、それぞれ、メタンスルホン酸基(MsO基)、トリフルオロ酢酸基、パラトルエンスルホン酸基である。
ヨウ素化剤は特に限定されず、例えば、1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントイン(DIH)およびN−ヨードスクシンイミド(NIS)から選ばれる少なくとも1種である。副反応物の生成が抑制されるとともに、ビナフチル骨格の8位および/または8’位への置換基Z1の導入が効率的に進行することから、ヨウ素化剤はDIHが好ましい。
臭素化剤は特に限定されず、例えば、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン(DBH)およびN−ブロモスクシンイミドから選ばれる少なくとも1種である。
ビナフチル骨格の8位および/または8’位への置換基Z1の導入が効率的に進行すること、臭素基である置換基Z1に比べてヨウ素基である置換基Z1の方が、上記さらなる反応、例えばクロスカップリング反応、への反応性に優れることから、反応系にはヨウ素化剤を使用することが好ましい。すなわち、第1の製造方法において、前駆誘導体(A)と有機酸とヨウ素化剤とを混合することが好ましい。
前駆誘導体(A)、有機酸、およびヨウ素化剤または臭素化剤の混合によってビナフチル骨格の8位および/または8’位への置換基Z1の導入反応が進行する限り、具体的な反応系は限定されないが、典型的には溶液系である。溶液系の溶媒は、前駆誘導体(A)、有機酸、ヨウ素化剤または臭素化剤、および生成したビナフチル誘導体(B)を溶解する溶媒であることが好ましい。溶液系の具体的な溶媒は、例えばジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエンであり、比誘電率および反応中間体の安定性の観点から、ジクロロメタン、ジクロロエタンが好ましい。
反応系は、必要に応じて、前駆誘導体(A)、有機酸、およびヨウ素化剤または臭素化剤以外の物質を含んでいてもよい。当該物質は、例えば、硫酸などの無機酸である。反応系が無機酸を含む場合、有機酸の種類によっては(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸)、有機酸の使用量を低減できる可能性がある。当該物質の別の例は、反応速度を制御するための触媒(助触媒を含む)、ラジカル捕捉剤である。
第1の製造方法では、反応条件の制御により、前駆誘導体(A)のビナフチル骨格の8位および/または8’位以外の位置に、さらに置換基Z4を導入できる。このような特徴も、従来の技術に比べて非常に有利な特徴となる。置換基Z4は、置換基Z1と同様でありうる。得られたビナフチル誘導体(B)において、置換基Z1とZ4とは同一であっても互いに異なっていてもよい。また、複数の位置に置換基Z4が導入された場合、置換基Z4の具体的な種類は、全て同一であっても、任意の位置の組み合わせで互いに異なっていてもよい。反応条件の制御は、例えば、有機酸の種類および使用量、ヨウ素化剤または臭素化剤の種類および使用量、反応温度、反応時間である。有機酸の使用量、および/またはヨウ素化剤もしくは臭素化剤の使用量という、定量的な反応条件の制御も可能である。反応条件の制御により、置換基Z4が導入されるビナフチル骨格上の位置も制御できる。通常、反応条件をより強くするに従い、8位および8’位への置換基Z1の導入に加えて、6位および/または6’位、さらには5位および/または5’位、4位および/または4’位の順に、置換基Z4の導入がさらに進行する。第1の製造方法では、ビナフチル骨格の4位、4’位、5位、5’位、6位および6’位から選ばれる少なくとも1つの位置に置換基Z4が導入されたビナフチル誘導体(B)を得てもよい。
なお、ビナフチル誘導体(B)におけるビナフチル骨格の2位および2’位の置換基は、前駆誘導体(A)におけるビナフチル骨格の2位および2’位の置換基Z2でありうるし、置換基Z2がさらなる反応により変化した置換基でありうる。反応は、例えば、アルコキシ基であるZ2の水酸基への変化である。また、ビナフチル誘導体(B)におけるビナフチル骨格の2位および2’位の置換基は、置換基Z1またはZ4と同様でありうる。
これに加えて第1の製造方法では、置換基Z1と同様に、上述した反応条件の制御によって置換基Z4の種類も制御できる。なお、このことは、例えば、前駆誘導体(A)が2位および2’位以外の場所に置換基を有する場合(前駆誘導体(A)が置換基Z3を有する場合)であって、当該置換基Z3がヨウ素基または臭素基である場合に、反応条件の制御によって、これらヨウ素基または臭素基を有機酸基または水酸基に置換(イプソ置換)できることを意味している。また、イプソ置換は、反応条件が強くなるに従ってビナフチル骨格に導入される置換基Z1およびZ4がヨウ素基または臭素基から有機酸基に変化する際にも、一度骨格に導入されたヨウ素基または臭素基が有機酸基に置換される反応機構として進行していると推定される。
これらの説明からわかるように、第1の製造方法では、例えば、複数の有機酸基、より具体的な例としてTfO基、がビナフチル骨格に置換基Z1、Z4として導入されたビナフチル誘導体(B)を形成しうる。また、複数の水酸基がビナフチル骨格に置換基Z1、Z4として導入されたビナフチル誘導体(B)を形成しうる。その一例は、ビナフチル骨格の全ての位置(ビナフチル骨格とするために必要な1位および1’位を除く)にTfO基のような有機酸基および/または水酸基を有するビナフチル誘導体(B)である。当該全ての位置に有機酸基を有するビナフチル誘導体(B)でも、当該全ての位置に水酸基を有するビナフチル誘導体(B)でもありうる。別の一例は、ビナフチル骨格の3位および3’位以外の全ての位置(ビナフチル骨格とするために必要な1位および1’位を除く)にTfO基のような有機酸基および/または水酸基を有するビナフチル誘導体(B)である。当該全ての位置に有機酸基を有するビナフチル誘導体(B)でも、当該全ての位置に水酸基を有するビナフチル誘導体(B)でもありうる。
第1の製造方法により形成できるビナフチル誘導体(B)の例を図1〜4に示す。
これまでの説明からわかるように第1の製造方法では、図1〜4に示す例に限られず、ビナフチル骨格の1位および1’位を除く各位置に任意の組み合わせの置換基Z1およびZ4を有するビナフチル誘導体(B)を形成しうる。もちろん、ビナフチル誘導体(B)のビナフチル骨格が、置換基を有さない位置を有していてもよい。例えば、図1〜4に示すビナフチル誘導体(B)の少なくとも1つのTfO基が他の有機酸基、例えばMsO基であるビナフチル誘導体(B)を形成しうる。例えば、図1〜4に示すビナフチル誘導体(B)のビナフチル骨格の2位および/または2’位に結合した置換基がメトキシ基ではなくTfO基であるビナフチル誘導体(B)、あるいは本明細書に具体的に例示された各ビナフチル誘導体(B)の2位および/または2’位に結合した置換基がメトキシ基ではなくTfO基であるビナフチル誘導体(B)を形成しうる。第1の製造方法により形成できるビナフチル誘導体(B)の例は、実施例にも示されている。
なお、図1〜4には、S体のみを示しているが、第1の製造方法では、R体であるビナフチル誘導体(B)も得ることができる。本明細書に示されたS体である他の誘導体の例においても同様である。S体とR体との混合体(ラセミ体)であるビナフチル誘導体(B)は、光学分割する工程(ラセミ体であるビナフチル誘導体からS体またはR体を選択的に得る工程)によって、S体およびR体に分離できる。第1の製造方法では、前駆誘導体(A)における軸不斉をそのまま保持してビナフチル誘導体(B)を形成できる可能性がある。この特徴は、従来の技術に比べて非常に有利である。S体およびR体のいずれかの光学異性体であるビナフチル誘導体(B)を得る際に、光学分割する工程を省略することが可能となるためである。
光学分割手法は、例えば、包接錯体法、優先富化、光学異性体分離カラムクロマトグラフィー法、酵素法である。
反応条件の例は次のとおりである。以下の式(2),(3)に示す2種類の前駆誘導体(A)を用いた場合、いずれの前駆誘導体(A)を用いた場合においても、8つのTfO基を置換基Z1およびZ4として有する、例えば以下の式(4)に示すビナフチル誘導体(B)を得るための最適な条件の例は、前駆誘導体(A)1当量に対して、ヨウ素化剤としてDIHが25当量、有機酸としてTfOHが50当量、溶媒がジクロロメタン、反応温度は室温、反応時間は12時間である。DIHを30当量、TfOHを60当量とした場合、溶媒および反応温度を同一として、反応時間を1時間とすることができる。式(2)に示す前駆誘導体(A)は、(S)−4,4’,6,6’−テトラヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルであり、式(3)に示す前駆誘導体(A)は、(S)−2,2−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルであり、式(4)に示すビナフチル誘導体(B)は、(S)−4,4’,5,5’,6,6’,8,8’−オクタキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルである。
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また、上記式(2),(3)に示す2種類の前駆誘導体(A)を用いた場合、いずれの前駆誘導体(A)を用いた場合においても、2つのTfO基を置換基Z1およびZ4として有する、例えば以下の式(5)に示すビナフチル誘導体(B)を得るための最適な条件の例は、前駆誘導体(A)1当量に対して、ヨウ素化剤としてDIHが3当量、有機酸としてTfOHが5当量、溶媒がジクロロメタン、反応温度は室温、反応時間は1時間である。式(5)に示すビナフチル誘導体(B)は、(S)−8,8’−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−4,4’,6,6’−テトラヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルである。
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また、上記式(2),(3)に示す2種類の前駆誘導体(A)を用いた場合、いずれの前駆誘導体(A)を用いた場合においても、6つのTfO基を置換基Z1およびZ4として有する、例えば以下の式(6)に示すビナフチル誘導体(B)、および/または7つのTfO基を置換基Z1およびZ4として有する、例えば以下の式(7)に示すビナフチル誘導体(B)を得るための最適な条件の例は、前駆誘導体(A)1当量に対して、ヨウ素化剤としてDIHが10当量、有機酸としてTfOHが20当量、溶媒がジクロロメタン、反応温度は室温、反応時間は1時間である。式(6)に示すビナフチル誘導体(B)は、(S)−5,5’,6,6’,8,8’−ヘキサキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−4,4’−ジヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルであり、式(7)に示すビナフチル誘導体(B)は、(S)−4,5,5’,6,6’,8,8’−ヘプタキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−4’−ヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルである。
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第1の製造方法において、反応系に加えるヨウ素化剤または臭素化剤の量は、得たいビナフチル誘導体(B)の分子構造(置換基Z1およびZ4の種類と、これら置換基が導入されるビナフチル骨格の位置)、ヨウ素化剤または臭素化剤の種類、ならびに反応温度および反応条件により異なるが、ヨウ素化剤がDIHの場合、前駆誘導体(A)1当量に対して、例えば2当量以上60当量以下とすることができ、2当量以上50当量以下、3当量以上30当量以下、あるいは5当量を超え50当量以下とすることもできる。ヨウ素化剤がNISである場合、およそ2〜8倍の当量でDIHと同様の結果を得ることができる。
第1の製造方法において、反応系に加える有機酸の量は、得たいビナフチル誘導体(B)の分子構造、有機酸の種類、ならびに反応温度および反応条件により異なるが、前駆誘導体(A)1当量に対して、例えば2当量以上120当量以下とすることができ、5当量以上60当量以下、あるいは10当量を超え100当量以下とすることもできる。
第1の製造方法における反応温度は、例えば、−30〜80℃であり、0〜60℃、あるいは20〜30℃とすることもできる。
第1の製造方法における反応時間は、例えば、0.5〜24時間であり、1〜15時間、あるいは1〜3時間とすることができる。
ビナフチル誘導体(B)における、置換基ZおよびZが導入された位置によってもたらされる効果の例は、次のとおりである。ビナフチル骨格の8位、8’位の置換基Zによって、例えば、ビナフチル誘導体(B)の二面角の制御が可能となる。ビナフチル骨格の2位および2’位の置換基(例えば、電子供与基Z;前駆誘導体(A)の電子供与基Zはそのまま残すことも、上記さらなる反応によって他の置換基とすることも、取り除くこともできる)によって、例えば、ビナフチル骨格の軸不斉の利用が可能となる。ビナフチル骨格の3位および3’位の置換基によって、例えば、ビナフチル誘導体(B)の不斉環境が向上する。ビナフチル骨格の6位および6’位の置換基によって、例えば、ビナフチル誘導体(B)のさらなる誘導化の自由度が高くなる。ビナフチル骨格の4位、4’位にトリメチルシリル基やt−ブチル基などの大きな置換基を導入することによっても、3位および3’位への置換基の導入と同様に、ビナフチル誘導体(B)の不斉環境が向上する。また、ビナフチル骨格の4位、4’位に直線型のアルキニル基(たとえばプロパルギル基)を導入してシリカゲルなどに固定化担持した場合、不斉軸の延長線であるため、2位および2’位における金属との配位が固定化に影響されず、安定した錯体形成が、不均一系においても可能となる。
ビナフチル誘導体(B)における置換基Z1およびZ4の種類によってもたらされる効果の例は、次のとおりである。
置換基Z1およびZ4は、その種類によって、ビナフチル誘導体(B)におけるさらなる反応の活性点となりうる。このことは、置換基Z1およびZ4により、ビナフチル誘導体(B)にさらなる誘導化の可能性がもたらされることを意味する。例えば、有機酸基(とりわけTfO基)、ヨウ素基または臭素基である置換基Z1およびZ4は、クロスカップリング反応において高い反応性を示す。これは、このような置換基Z1およびZ4を有するビナフチル誘導体(B)から、クロスカップリング反応により、生理活性物質および医薬有効成分などを含む多種多様の化合物および当該化合物の前駆体が合成可能であることを意味している。置換基Z4がビナフチル骨格に導入される位置を制御可能であることも、さらなる誘導化によって実現しうる化合物の範囲の広さに寄与する。クロスカップリング反応は、例えば、鈴木−宮浦カップリング、玉尾カップリング、根岸カップリング、小杉−右田−スティレカップリング、薗頭カップリング、檜山カップリング、溝呂木―ヘック反応、デンマークカップリングである。もちろん、他のクロスカップリング反応にも適用できる。なお、クロスカップリング反応に対する反応性は、ヨウ素基、TfO基、および臭素基の順に高い。
また、有機酸基である置換基Z1およびZ4は、加水分解によって比較的容易に水酸基とすることができる。これは、ビナフチル骨格を有するポリフェノールが得られることを意味する。ポリフェノールからは、例えば、ケトン構造、キノン構造、エーテル構造を誘導できる。キノン構造を有するさらなる誘導体の例を以下の式(8),(9)に、エーテル構造を有するさらなる誘導体の例を以下の式(10)に、それぞれ示す。なお、式(8)〜(10)に示す化合物は、ビナフチル誘導体(B)のさらなる誘導体のあくまでも一例である。
Figure 0006893360
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有機酸基である置換基Z1およびZ4を有するビナフチル誘導体(B)から、キノン構造を有するさらなる誘導体を形成する反応の一例を以下の式(11)に示す。
Figure 0006893360
式(11)の化合物におけるビナフチル骨格の2位および2’位のメトキシ基は、比較的容易に水酸基に変化させることができ、すなわち、式(11)に示す化合物からさらに式(9)に示す化合物を誘導できる。なお、式(9)および式(11)に示す化合物は、電子受容体(キノン構造に基づく)としても電子供与体(ポリフェノールのヒドロキシ基による)としても機能する。また、これら化合物はキラル(光学活性)であり、キラルな電子受容体または電子供与体としても機能しうる。
キノン構造等を有するさらなる誘導体の例を図5A,5Bに示す。
これらさらなる誘導体から、さらに反応を進行させて別の誘導体を形成してもよい。例えば、式(9)および式(11)に示す化合物は、ユビキノンあるいはビタミンKといった補酵素の基本骨格を有している。このため、式(9)および式(11)に示す化合物は、これら物質への展開が可能である。ユビキノンの一種に、コエンザイムQ10がある。また、例えば、キノン構造を有する誘導体である式(9)および式(11)に示す化合物に対して、ディールスアルダー反応により、さらなる誘導化を行ってもよい。ディールスアルダー反応によるさらなる誘導化の例は、skyrinの合成である。skyrinは、例えば、抗糖尿病薬あるいは膵臓癌の抑制薬剤として機能する。skyrinの分子構造を以下の式(12)に、skyrinへの誘導化の過程でとりうる中間体の分子構造を以下の式(13)に示す。また、式(9)および式(11)に示す化合物は、ビスアントラキノン構造を有する化合物(天然物にもこのような化合物が多く存在する)の化学合成中間体になりうる。
Figure 0006893360
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このようにビナフチル誘導体(B)は、さらなる反応を経ることにより、非常に多種多用の化合物に変化しうる。変化しうる化合物は、1,1’−ビナフチル誘導体に限られず、式(12)および式(13)に示す1,1’−ビアントラセニル誘導体のような、ビナフチル骨格以外の他の骨格を有する化合物でありうる。このようなビナフチル誘導体(B)を形成できる点で、第1の製造方法は非常に有利かつ有用である。また、置換基Z1,Z4を導入する反応の前後においてR体およびS体という光学活性を保持できる場合、第1の製造方法の有利な点を促進させる。
ビナフチル誘導体(B)からさらなる1,1’−ビナフチル誘導体を形成する誘導化の一例を、本開示の第3の製造方法として以下に示す。第3の製造方法は、以下の式(1)に示す1,1’−ビナフチル誘導体に対して、Y1、Y2、−OR1、−OR2および少なくとも1つのXから選ばれる少なくとも1つの基が関与する反応、例えば、当該基を反応点とする反応、を進行させて、当該反応を反映した、式(1)に示す誘導体とは異なる1,1’−ビナフチル誘導体を得る方法である。式(1)において、Xはヨウ素基または臭素基、R1およびR2は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜50のアルキル基、アリル基、ベンジル基、トリフルオロメタンスルホニル基、シリル基、または水酸基の保護基であり、Y1およびY2は、互いに独立して、当該誘導体のビナフチル骨格に直接結合した酸素原子を含む有機酸基、または水酸基である。
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第3の製造方法における反応の例は、第1の製造方法で形成したビナフチル誘導体(B)に対するさらなる反応(さらなる誘導化)として説明した反応である。より具体的な例は、置換反応および加水分解反応から選ばれる少なくとも1つの反応である。置換反応には、クロスカップリング反応が含まれる。
式(1)に示す1,1’−ビナフチル誘導体の例は、Xがヨウ素基であり、R1およびR2が水素原子、メチル基、またはトリフルオロメタンスルホニル基であり、Y1およびY2が互いに独立して、上記有機酸基または水酸基である化合物である。もちろん、これまでの説明から明らかであるように、X、R1、R2、Y1およびY2はこれらの基に限定されない。とりうる基は、置換基Z1,Z4と同様である。
第3の製造方法は、ビナフチル誘導体(B)からさらなる1,1’−ビナフチル誘導体を形成する誘導化のあくまでも一例であり、上述した他のビナフチル誘導体(B)からも同様の誘導化を実施することができる。
第1の製造方法では、上述した各効果から選ばれる少なくとも1つの効果(第3の製造方法を実行できることを含む)を示すビナフチル誘導体(B)を形成できることになる。
第1の製造方法において出発物質となる前駆誘導体(A)は、上述した条件を満たす限り限定されない。前駆誘導体(A)は、置換基Z3を有していてもいなくてもよい。置換基Z3は限定されないが、例えば、ヨウ素基および臭素基から選ばれる少なくとも1種である。前駆誘導体(A)がヨウ素基および/または臭素基である置換基Z3を有していてもよいことは、第1の製造方法がハロゲン化ビナフチルから開始できることを意味する。
また、ビナフチル誘導体(B)におけるビナフチル骨格の8位または8’位に置換基が存在しない限り、ビナフチル誘導体(B)を前駆誘導体(A)として第1の製造方法を実施できる。置換基Z3は、置換基Z4と同様でありうる。
ビナフチル誘導体(B)の形成は、それ自身がビナフチル骨格を有する化合物である前駆誘導体(A)からに限られない。ナフタレン誘導体から、前駆誘導体(A)および/またはビナフチル誘導体(B)を形成することも可能である。これは、ナフタレン誘導体と、有機酸と、ヨウ素化剤または臭素化剤とを混合することによってナフタレン誘導体のカップリング反応(ホモカップリング反応)が進行して、1,1’−ビナフチル誘導体が形成されることに基づく。このようなナフタレン誘導体のカップリング反応も、本発明者らが初めて見出した。そして、形成された1,1’−ビナフチル誘導体に対して、カップリング反応時に存在する有機酸、およびヨウ素化剤または臭素化剤が第1の製造方法と同様にそのまま作用して、ビナフチル骨格の8位および/または8’位に置換基を導入しうる。
すなわち、本開示の第2の製造方法は、ナフタレン骨格の2位に置換基Z5を有するナフタレン誘導体(C)と、有機酸と、ヨウ素化剤または臭素化剤と、を混合して誘導体(C)のカップリング反応を進行させて、1,1’−ビナフチル骨格の2位および2’位に置換基Z6をそれぞれ有する1,1’−ビナフチル誘導体(D)を得る方法である。第2の製造方法で形成されるビナフチル誘導体(D)は、これまで説明してきた前駆誘導体(A)でもビナフチル誘導体(B)でもありうる。置換基Z5は、置換基Z2でありうる。置換基Z5は、例えば、ナフタレン骨格に直接結合した酸素原子を含む電子供与基である。より具体的に、置換基Z5は、例えば−OR基である。ここで、Rは、水素原子、炭素数1〜50のアルキル基、アリル基、ベンジル基、トリフルオロメタンスルホニル基、シリル基、または水酸基の保護基であってもよく、水素原子、メチル基、またはトリフルオロメタンスルホニル基でありうる。置換基Z6は、置換基Z5でありうるし、置換基Z5が変化した基(例えば、上述した、置換基Z2が変化した基)でありうる。
第2の製造方法で形成されるビナフチル誘導体(D)がビナフチル誘導体(B)でありうることを考慮すると、第2の製造方法において、ビナフチル骨格の8位および/または8’位にさらに置換基が導入されたビナフチル誘導体(D)を得てもよい。
第2の製造方法によってどのようなビナフチル誘導体(D)が形成されるか、例えば、ビナフチル骨格のどの位置にどのような置換基が導入できるかは、第1の製造方法と同様の反応条件の制御によって制御可能である。
第2の製造方法により形成されるビナフチル誘導体(D)は、通常、ラセミ体であるが、このラセミ体を光学分割してR体またはS体を単独で取り出すことができる。光学分割の方法は限定されず、公知の方法を使用できる。
反応条件の例は次のとおりである。以下の式(14)に示すナフタレン誘導体(C)を用いた場合において、例えば以下の式(15)に示すビナフチル誘導体(D)を得るための最適な条件の例は、ナフタレン誘導体(C)1当量に対して、ヨウ素化剤としてDIHが25当量、有機酸としてTfOHが50当量、溶媒がジクロロメタン、反応温度は室温、反応時間は12時間である。
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本開示の製造方法の説明に関し、具体的に示す化合物は基本的に全てS体であったが、R体に対しても同じ説明が成立する。本開示の製造方法では、ナフタレン誘導体からのカップリング反応を経る方法(第2の製造方法)を除き、出発物質の軸不斉を保持できる可能性がある。一方、ナフタレン誘導体からカップリング反応を経て得たビナフチル誘導体はS体とR体とが混ざり合ったラセミ体であるが、光学分割によりS体またはR体を単独で得ることが可能である。
本開示の製造方法により得たビナフチル誘導体(B)およびビナフチル誘導体(D)の用途は限定されず、その具体的な分子構造に応じた様々な用途が考えられる。上述したものを含め、用途の例を以下に示す。
・種々の化学反応に供する前駆体としての使用
ビナフチル誘導体(B),(D)は、種々の化学反応に供する前駆化合物として使用できる。反応は、例えば、加水分解反応、置換反応、付加反応であり、より具体的には、クロスカップリング反応、ディールスアルダー反応、酸化反応、還元反応、環化反応でありうる。
・種々の化合物の前駆体としての使用
ビナフチル誘導体(B),(D)は、種々の化合物の前駆化合物として使用できる。化合物は、例えば、補酵素(ビタミン、ユビキノン)、あるいはskyrinなどの医薬有効成分である。
・光学活性体としての使用
ビナフチル誘導体(B),(D)をその軸不斉に基づいて光学活性体として使用することができ、これにより、例えば、触媒的不斉合成反応への使用の他、基材表面への不斉認識場を構築できる。基材は限定されず、例えば、シリカゲルあるいは有機−無機ハイブリッドゲルにより構成されるカラムでありうる。カラム表面の修飾にビナフチル誘導体(B),(D)を使用することにより、例えば、従来にない光学異性体分離カラムが得られる。
また、軸不斉化合物は高効率な円偏光発光を示すことから、ビナフチル誘導体(B),(D)を光学活性体として使用し、各種の基材表面に担持させることにより、例えば、有機円偏光発光フィルムのような光学部材が得られる。基材は、例えば、ガラス、PETなどのポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン(環状オレフィンポリマーを含む)、ポリカーボネート、トリアセチルセルロースなどのセルロース(セルロースナノファイバーを含む)である。
さらに、不斉触媒、あるいは体内不斉環境を有するレセプターへの選択的結合を利用したバイオ試薬としての使用も考えられる。
・ポリフェノールとしての使用(ビナフチル骨格に2以上の水酸基が置換基として結合している場合)
ポリフェノールであるビナフチル誘導体(B),(D)は、例えば、活性酸素の除去に使用できる。また、ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)との反応によりPMHS複合体を形成でき、当該複合体中のヒドロシリル基を用いた各種の基材表面の修飾が可能となる。基材は限定されず、例えば、上述の各材料の他、金属、金属酸化物でありうる。基材の形状は限定されず、例えば、シート、フィルム、繊維(ナノファイバーを含む)、粉末でありうる。これは、表面処理剤としての使用でもある。
[ビナフチル誘導体]
本開示の製造方法により、例えば、以下に示す新規なビナフチル誘導体(B),(D)を形成できる。その具体的な形成には、上述したビナフチル誘導体の製造方法を適用し、または応用すればよい。上述したビナフチル誘導体の製造方法をどのように適用し、また応用するかは、当業者であれば認識できる。
・ビナフチル骨格の8位および/または8’位に置換基Z7を有する1,1’−ビナフチル誘導体。置換基Z7は、ビナフチル骨格に直接結合した酸素原子を含む基、炭素数1〜50の脂肪族基、または炭素数6〜30のアリール基でありうる。置換基Z7が脂肪族基である場合、当該基の炭素数が多い、例えば炭素数が2以上、のときに、本発明の効果がより顕著となる。また、これとは別に、置換基Z7は、ビナフチル骨格に直接結合した酸素原子を含む基P1であり、当該骨格における3以上の他の位置に、当該骨格に直接結合した酸素原子を含む基P2を有しうる(P1およびP2は、同一であっても異なっていてもよい)。
置換基Z7は、例えば、有機酸基、水酸基、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、メチル基、エチル基のようなアルキル基、フェニル基、フェニル誘導体基、ナフチル基などのアリール基、ベンジル基などのアラルキル基、メチルチオ基のようなチオアルコキシ基、トリメチルシリル基、アリルシリル基のようなシリル基、トリフェニルホスフィノ基、トリフェニルホスフィニル基などのリン原子が直結した基、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などのアミノ基、臭素基、塩素基である。基P1およびP2は、例えば、互いに独立して、有機酸基、水酸基、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、アミノ基、シリル基、ホスフィニル基、ホスホニル基である。基P1,P2が脂肪族基である場合、当該基の炭素数が多い、例えば炭素数が2以上、のときに、本発明の効果がより顕著となる。
[ペリレンおよびペリレン誘導体の製造方法]
本発明者らは、第1の製造方法における反応条件を制御することによって、より具体的に、第1の製造方法と同様に、前駆誘導体(A)と有機酸とヨウ素化剤または臭素化剤とを混合し、当該混合により構築される反応系の反応条件を制御することによって、ペリレン誘導体が得られることをさらに見出した。
すなわち、本開示のさらなる製造方法(第4の製造方法)では、1,1’−ビナフチル骨格の2位および2’位に、前記骨格に直接結合した酸素原子を含む電子供与性基Z2をそれぞれ有する1,1’−ビナフチル前駆誘導体(A)と、有機酸と、ヨウ素化剤または臭素化剤と、を混合してペリレン誘導体を得る、ペリレン誘導体の製造方法である。得られたペリレン誘導体のペリレン骨格に結合した置換基を全て除去することによってペリレンを得ることも可能である。
第4の製造方法では、前駆誘導体(A)、有機酸、およびヨウ素化剤または臭素化剤を含む反応系により、前駆誘導体(A)のビナフチル骨格の8位と8’位とを結ぶ結合(単結合)が導入される反応が進行する。この導入反応により、ビナフチル骨格はペリレン骨格となる。
第1の製造方法と第4の製造方法とは、前駆誘導体(A)と、有機酸と、ヨウ素化剤または臭素化剤とを混合して、前駆誘導体(A)のビナフチル骨格の8位および/または8’位に新たな結合を導入する点で共通する。新たな結合は、水素原子以外との結合である。それぞれの製造方法によって得られるビナフチル誘導体(B)およびペリレン誘導体は、前駆誘導体(A)に由来する(より具体的に、前駆誘導体(A)のビナフチル骨格に由来する)多環芳香族構造を有する多環芳香族化合物である点で共通する。本開示は、前駆誘導体(A)と、有機酸と、ヨウ素化剤または臭素化剤とを混合して、前駆誘導体(A)のビナフチル骨格の8位および/または8’位に水素原子以外の原子との結合を導入する工程を含む、前駆誘導体(A)に由来する多環芳香族構造を有する多環芳香族化合物の製造方法(第5の製造方法)を含む。
第5の製造方法において、水素原子以外の原子は、例えば、前駆誘導体(A)のビナフチル骨格の8位および8’位において互いに独立して、炭素原子または酸素原子である。
第5の製造方法において、上記結合として、前駆誘導体(A)のビナフチル骨格の8位および/または8’位に置換基Z1を導入しうる。より具体的に、第5の製造方法において、上記結合として、ビナフチル骨格の8位および/または8’位に置換基Z1を導入して、ビナフチル骨格の8位および/または8’位に置換基Z1が導入されたビナフチル誘導体(B)を、多環芳香族化合物として得うる。これは、第1の製造方法に対応する。置換基Z1は、第1の製造方法の説明において上述したとおりである。
第5の製造方法において、上記結合として、前駆誘導体(A)のビナフチル骨格の8位および8’位を結ぶ結合(単結合)を導入しうる。より具体的に、第5の製造方法において、上記結合として、ビナフチル骨格の8位および8’位を結ぶ結合(単結合)を導入して、ペリレン誘導体(または当該ペリレン誘導体のペリレン骨格に結合した置換基をさらに全て除去することによって得たペリレン)を、多環芳香族化合物として得うる。これは、第4の製造方法に対応する。
第5の製造方法では、多環芳香族化合物として、例えば、1,1’−ビナフチル誘導体(B)、ペリレン、またはペリレン誘導体を得ることができる。
第4および第5の製造方法において、前駆誘導体(A)、有機酸、ヨウ素化剤、および臭素化剤は、第1の製造方法の説明において上述したとおりである。
第4の製造方法において、前駆誘導体(A)、有機酸、およびヨウ素化剤または臭素化剤の混合によってビナフチル骨格の8位と8’位とを結ぶ単結合の導入反応が進行する限り、具体的な反応系は限定されない。第5の製造方法において、前駆誘導体(A)、有機酸、およびヨウ素化剤または臭素化剤の混合によってビナフチル骨格の8位および/または8’位に水素原子以外の原子との結合の導入反応が進行する限り、具体的な反応系は限定されない。第4および第5の製造方法の反応系は、第1の製造方法の反応系と同様でありうる。
第5の製造方法において、前駆誘導体(A)のビナフチル骨格の8位および/または8’位に置換基Z1が導入されるか(第1の製造方法となるか)、あるいは前駆誘導体(A)のビナフチル骨格の8位と8’位とを結ぶ単結合が導入されるか(第4の製造方法となるか)は、反応条件により制御できる。ここでの反応条件は、例えば有機酸の種類および使用量(例えば、前駆誘導体(A)1当量あたりの当量)、ヨウ素化剤または臭素化剤の種類および使用量、反応温度、反応時間、ならびに前駆誘導体(A)の分子構造(例えば、前駆誘導体(A)のビナフチル骨格の2位および2’位に結合した電子供与性基Z2の種類)である。
第4の製造方法では、前駆誘導体(A)の電子供与性基Z2は、例えば有機酸基であり、トリフルオロメタンスルホニル基でありうる。
第4の製造方法、およびペリレン誘導体を得る第5の製造方法において、反応系に加えるヨウ素化剤または臭素化剤の量は、前駆誘導体(A)の分子構造、得たいペリレン誘導体の分子構造(例えば、ペリレン骨格に結合した置換基Z4の種類と、これら置換基が導入されるペリレン骨格の位置)、ヨウ素化剤または臭素化剤の種類、ならびに反応温度および反応条件により異なるが、ヨウ素化剤がDIHの場合、前駆誘導体(A)1当量に対して、例えば2当量以上60当量以下とすることができ、3当量以上30当量以下、あるいは10当量以上20当量以下とすることもできる。ヨウ素化剤がNISである場合、およそ2〜20倍の当量でDIHと同様の結果を得ることができる。
第4の製造方法、およびペリレン誘導体を得る第5の製造方法において、反応系に加える有機酸の量は、前駆誘導体(A)の分子構造、得たいペリレン誘導体の分子構造、有機酸の種類、ならびに反応温度および反応条件により異なるが、前駆誘導体(A)1当量に対して、例えば3当量以上120当量以下とすることができ、5当量以上60当量以下、あるいは10当量以上40当量以下とすることもできる。
第4の製造方法、およびペリレン誘導体を得る第5の製造方法における反応温度は、例えば、−78〜100℃であり、−30〜60℃、あるいは−10〜30℃とすることもできる。
第4の製造方法、およびペリレン誘導体を得る第5の製造方法における反応時間は、例えば、数秒〜48時間であり、10秒〜24時間、あるいは10秒〜18時間とすることができる。系によっては、後述の実施例に示すように、秒単位という非常に短時間で前駆誘導体(A)からペリレン誘導体を形成できる。
ビナフチル誘導体(B)を得る第5の製造方法における反応条件は、第1の製造方法の説明において上述したとおりである。
第4の製造方法および第5の製造方法では、反応条件の制御により、前駆誘導体(A)のビナフチル骨格の8位および/または8’位以外の位置に、さらに置換基Z4を導入できる。置換基Z4は、第1の製造方法の説明において上述したとおりである。
第5の製造方法においてビナフチル誘導体(B)を得る場合については、第1の製造方法の説明において上述したとおりである。すなわち、ビナフチル骨格の4位、4’位、5位、5’位、6位および6’位から選ばれる少なくとも1つの位置に置換基Z4が導入されたビナフチル誘導体(B)を多環芳香族化合物として得てもよい。
第4の製造方法、およびペリレン誘導体を得る第5の製造方法において、反応条件の制御により、置換基Z4が導入されるペリレン骨格上の位置も制御できる。通常、反応条件をより強くするに従い、前駆誘導体(A)のビナフチル骨格の6位および/または6’位、さらには5位および/または5’位、4位および/または4’位の順に、置換基Z4の導入がさらに進行する。これは、通常、反応条件をより強くするに従い、ペリレン骨格の5位および/または8位、さらには4位および/または9位、2位および/または10位に置換基Z4が導入されたペリレン誘導体が得られることを意味する。すなわち、第4の製造方法、およびペリレン誘導体を得る第5の製造方法において、ペリレン骨格の3位、4位、5位、8位、9位および10位から選ばれる少なくとも1つの位置に置換基Z4が導入されたペリレン誘導体を(多環芳香族化合物として)得てもよい。
第4の製造方法、およびペリレン誘導体を得る第5の製造方法において、第1の製造方法と同様に、上述した反応条件の制御によって置換基Z4の種類およびペリレン骨格上の位置も制御できる。なお、このことは、例えば、前駆誘導体(A)が2位および2’位以外の場所に置換基を有する場合(前駆誘導体(A)が置換基Z3を有する場合)であって、当該置換基Z3がヨウ素基または臭素基である場合に、反応条件の制御によって、これらヨウ素基または臭素基を有機酸基または水酸基に置換(イプソ置換)できることを意味している。また、イプソ置換は、反応条件が強くなるに従って前駆誘導体(A)のビナフチル骨格に導入される置換基Z4がヨウ素基または臭素基から有機酸基に変化する際にも、一度骨格に導入されたヨウ素基または臭素基が有機酸基に置換される反応機構として進行していると推定される。
これらの説明からわかるように、第4の製造方法、およびペリレン誘導体を得る第5の製造方法において、例えば、複数の有機酸基、より具体的な例としてTfO基、がペリレン骨格に置換基Z4として導入されたペリレン誘導体を形成しうる。また、複数の水酸基がペリレン骨格に置換基Z4として導入されたペリレン誘導体を形成しうる。その一例は、ペリレン骨格の全ての位置にTfO基のような有機酸基および/または水酸基を有するペリレン誘導体である。当該全ての位置に有機酸基を有するペリレン誘導体でも、当該全ての位置に水酸基を有するペリレン誘導体でもありうる。
置換基Z4は、その種類によって、ペリレン誘導体におけるさらなる反応の活性点となりうる。このことは、置換基Z4により、ペリレン誘導体にさらなる誘導化の可能性がもたらされることを意味する。例えば、有機酸基(とりわけTfO基)、ヨウ素基または臭素基である置換基Z4は、クロスカップリング反応において高い反応性を示す。これは、このような置換基Z4を有するペリレン誘導体から、クロスカップリング反応により、生理活性物質および医薬有効成分などを含む多種多様の化合物および当該化合物の前駆体が合成可能であることを意味している。置換基Z4がペリレン骨格に導入される位置を制御可能であることも、さらなる誘導化によって実現しうる化合物の範囲の広さに寄与する。具体的なクロスカップリング反応の例は、第1の製造方法の説明において上述したとおりである。クロスカップリング反応に対する反応性は、ヨウ素基、TfO基、および臭素基の順に高い。
有機酸基である置換基Z4は、加水分解によって比較的容易に水酸基とすることができる。これは、ペリレン骨格を有するポリフェノールが得られることを意味する。ポリフェノールからは、例えば、ケトン構造、キノン構造、エーテル構造を誘導できる。
これらさらなる誘導体から、さらに反応を進行させて別の誘導体を形成してもよい。
このようにペリレン誘導体は、さらなる反応を経ることにより、非常に多種多用の化合物に変化しうる。変化しうる化合物は、ペリレン骨格以外の他の骨格を有する化合物でありうる。
これまでの説明から明らかであるように、ビナフチル誘導体(B)、例えば第1の製造方法により得たビナフチル誘導体(B)から、第4の製造方法、またはペリレン誘導体を得る第5の製造方法によって、ペリレン誘導体を形成できる。また、ビナフチル誘導体(B)、例えば第1の製造方法により得たビナフチル誘導体(B)から、ビナフチル誘導体を得る第5の製造方法によって、さらなる誘導化がなされた1,1’−ビナフチル誘導体を形成できる。
ナフタレン誘導体から前駆誘導体(A)および/またはビナフチル誘導体(B)を形成可能であることは上述のとおりである(第2の製造方法)。そして、ナフタレン誘導体のカップリング反応により形成された1,1’−ビナフチル誘導体に対して、カップリング反応時に存在する有機酸、およびヨウ素化剤または臭素化剤が第4の製造方法および第5の製造方法と同様にそのまま作用して、ペリレン誘導体を形成しうる。本開示は、ナフタレン骨格の2位に置換基Z5を有するナフタレン誘導体(C)と、有機酸と、ヨウ素化剤または臭素化剤と、を混合して誘導体(C)のカップリング反応を進行させて、1,1’−ビナフチル骨格の2位および2’位に置換基Z6をそれぞれ有する1,1’−ビナフチル誘導体(D)を形成する工程を含む、当該1,1’−ビナフチル骨格に由来する多環芳香族構造を有する多環芳香族化合物の製造方法(第6の製造方法)を含む。多環芳香族化合物は、例えば、1,1’−ビナフチル誘導体、ペリレン、またはペリレン誘導体である。
第6の製造方法における上記工程は、第2の製造方法の説明において上述したとおりである。
第6の製造方法は、置換基Z6がビナフチル骨格に直接結合した酸素原子を含む電子供与性基であり、ナフタレン誘導体(C)のカップリング反応により得られた1,1’−ビナフチル誘導体(D)のビナフチル骨格の8位および/または8’位に水素原子以外の原子との結合を導入する工程をさらに含んでいてもよい。結合は、例えば、ビナフチル骨格の8位および8’位を結ぶ結合(単結合)であり、これにより、ペリレン誘導体(またはペリレン)を(多環芳香族化合物として)得ることができる。第6の製造方法におけるこのさらなる工程、およびペリレン誘導体は、第4の製造方法および第5の製造方法の説明において上述したとおりである。
本開示の製造方法により得たペリレン誘導体の用途は限定されず、その具体的な分子構造に応じた様々な用途が考えられる。用途の例を以下に示す。
・種々の化学反応に供する前駆体としての使用
ペリレン誘導体は、種々の化学反応に供する前駆化合物として使用できる。反応は、例えば、加水分解反応、置換反応、付加反応であり、より具体的には、クロスカップリング反応、ディールスアルダー反応、酸化反応、還元反応、環化反応でありうる。
・種々の化合物の前駆体としての使用
ペリレン誘導体は、種々の化合物の前駆化合物として使用できる。
・ポリフェノールとしての使用(ペリレン骨格に2以上の水酸基が置換基として結合している場合)
ポリフェノールであるペリレン誘導体は、例えば、活性酸素の除去に使用できる。また、ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)との反応によりPMHS複合体を形成でき、当該複合体中のヒドロシリル基を用いた各種の基材表面の修飾が可能となる。基材は限定されず、例えば、上述の各材料の他、金属、金属酸化物でありうる。基材の形状は限定されず、例えば、シート、フィルム、繊維(ナノファイバーを含む)、粉末でありうる。これは、表面処理剤としての使用でもある。
・光学材料および電子材料としての使用
ペリレン骨格が有する発光能および/または電子移動能に基づき、ペリレン誘導体の光学材料、電子材料としての使用が考えられる。
[ナフタレン誘導体の製造方法]
本開示の第7の製造方法では、1,1’−ビナフチル骨格の2位および/または2’位に、当該骨格に直接結合した酸素原子を含む電子供与性基Z2をそれぞれ有する1,1’−ビナフチル誘導体と、有機酸と、を混合して当該誘導体のデカップリング(解裂)反応を進行させて、置換基を有するナフタレン骨格を有するナフタレン誘導体を得る。ビナフチル誘導体は、上述したビナフチル前駆誘導体(A)およびビナフチル誘導体(B)でありうる。ナフタレン誘導体は、上述したナフタレン誘導体(C)でありうる。
第7の製造方法により形成したナフタレン誘導体は、出発物質であるビナフチル誘導体が有する置換基をそのまま有しうるし、その一部のみを有しうる。例えば、得られたナフタレン誘導体は、そのナフタレン骨格の2位に上記電子供与性基Z2を有しうる。第7の製造方法により形成したナフタレン誘導体に対してさらなる反応を進行させて、さらなる誘導体を得てもよい。このさらなる反応は、デカップリング反応に続いて連続して進行させてもよい。
この反応系は、ヨウ素化剤および臭素化剤を含まない反応系でありうる。有機酸は、第1の製造方法において上述した有機酸でありうる。
ビナフチル誘導体および有機酸の混合によってデカップリング反応が進行する限り、具体的な反応系は限定されないが、典型的には溶液系である。溶液系の溶媒は、ビナフチル誘導体、有機酸、および生成したナフタレン誘導体を溶解する溶媒であることが好ましい。溶液系の具体的な溶媒は、例えばジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサンであり、比誘電率および反応中間体の安定性の観点から、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンが好ましい。
反応系は、必要に応じて、ビナフチル誘導体および有機酸以外の物質を含んでいてもよい。当該物質は、例えば、硫酸などの無機酸である。反応系が無機酸を含む場合、有機酸の種類によっては(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸)、有機酸の使用量を低減できる可能性がある。当該物質の別の例は、反応速度を制御するための触媒(助触媒を含む)、ラジカル捕捉剤である。
第7の製造方法において、反応系に加える有機酸の量は、有機酸の種類、ならびに反応温度および反応条件により異なるが、ビナフチル誘導体1当量に対して、例えば3当量以上120当量以下とすることができ、5当量以上60当量以下、あるいは10当量以上50当量以下とすることもできる。
第7の製造方法における反応温度は、例えば、−78〜120℃であり、−30〜80℃、あるいは−10〜30℃とすることもできる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
(実施例1)
実施例1では、以下の反応式に示すように、(S)−4,4’,6,6’−テトラヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルから、8位および8’位にトリフルオロメタンスルホン酸基(CF3SO2基;TfO基)が導入された8,8’−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−4,4’,6,6’−テトラヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1−ビナフチルを合成した。
Figure 0006893360
最初に、空気雰囲気下において、(S)−4,4’,6,6’−テトラヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル(81.8mg,0.1mmol)およびDIH(日宝化学社製、114mg,0.3mmol)を塩化メチレン(5mL)に溶解させた後、溶解物にトリフルオロメタンスルホン酸(TfOH;44μL,0.5mmol)を滴下して、全体を室温で1時間撹拌した。撹拌終了後、反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液をゆっくりと滴下して中和を行った。次に、中和物に亜硫酸ナトリウムを加えた後、塩化メチレンにより有機層を抽出し、抽出した有機層を水洗後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。次に、エバポレーターを用いて溶媒を除去し、粗生成物を得た。その後、得られた粗生成物をゲル濾過クロマトグラフィーにより濾過して、8,8’−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−4,4’,6,6’−テトラヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1−ビナフチル(66mg,収率59%)を得た。得られた化合物はS体とR体との混合体(ラセミ体)であり、公知の光学分割手法によって、上記反応式に示すS体とR体とに分離できた。
得られた化合物は、1H−NMR測定、19F−NMR測定および大気圧固体試料プローブ(ASAP)を用いた質量分析(ASAP−MS)により同定した。同定されたケミカルシフトおよび質量電荷数比(m/z)は次のとおりである。なお、1H−NMR測定および19F−NMR測定の重溶媒にはCDCl3を使用した。特に記載がない限り、以降の実施例においても同じである。同定された値は、次のとおりである。
1H−NMR:δ(ppm)=8.47(s,2H),7.99(s,2H),7.57(d,J=8.4Hz,2H),7.44(d,J=8.8Hz,2H),6.72(d,J=8.4Hz,2H),3.75(s,6H)
19F−NMR:δ(ppm)=−73.28
MS(ASAP):Calcd for C24126482:m/z=1113,6056,Found m/z=1113.6072
1H−NMRスペクトルを図6に、13C−NMRスペクトルを図7に、19F−NMRスペクトルを図8に、それぞれ示す。
(実施例2)
実施例2では、以下の反応式に示すように、(S)−4,4’,6,6’−テトラヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルから、8位および8’位にトリフルオロメタンスルホン酸基が導入された、5,5’,6,6’,8,8’−ヘキサキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−4,4’−ジヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1−ビナフチル、4,5,5’,6,6’,8,8’−ヘプタキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−4’−ヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1−ビナフチル、および4,4’,5,5’,6,6’,8,8’−オクタキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−1,1−ビナフチルを合成した。
Figure 0006893360
最初に、空気雰囲気下において、(S)−4,4’,6,6’−テトラヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル(81.8mg,0.1mmol)およびDIH(379.3mg,1.0mmol)を塩化メチレン(5mL)に溶解させた後、溶解物にトリフルオロメタンスルホン酸(0.17mL,2.0mmol)を滴下して、全体を室温で1時間撹拌した。撹拌終了後、反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液をゆっくりと滴下して中和を行った。次に、中和物に亜硫酸ナトリウムを加えた後、塩化メチレンにより有機層を抽出し、抽出した有機層を水洗後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。次に、エバポレーターを用いて溶媒を除去し、粗生成物を得た。その後、得られた粗組成物をゲル濾過クロマトグラフィーにより濾過して、5,5’,6,6’,8,8’−ヘキサキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−4,4’−ジヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1−ビナフチル(17.1mg,収率12%)、4,5,5’,6,6’,8,8’−ヘプタキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−4’−ヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1−ビナフチル(42.5mg,収率29%)、および4,4’,5,5’,6,6’,8,8’−オクタキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−1,1−ビナフチル(31.2mg,収率21%)を得た。得られた化合物はラセミ体であり、公知の光学分割手法によって、上記反応式に示すS体とR体とに分離できた。
得られた化合物は、1H−NMR測定、13C−NMR測定、19F−NMR測定およびASAP−MSにより同定した。同定されたケミカルシフトおよび質量電荷数比(m/z)は次のとおりである。
・5,5’,6,6’,8,8’−ヘキサキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−4,4’−ジヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1−ビナフチルについて
1H−NMR:δ(ppm)=7.70(s,2H),7.41(s,2H),3.70(s,6H)
MS(ASAP):Calcd for C2810182206:m/z=1453.59,Found m/z=1454.4027
1H−NMRスペクトルを図9に示す。
・4,5,5’,6,6’,8,8’−ヘプタキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−4’−ヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1−ビナフチルについて
1H−NMR;δ(ppm)=7.76(s,1H),7.60(s,1H),7.57(s,1H),7.45(s,1H),3.79(s,6H)
MS(ASAP):Calcd for C291021IO237:m/z=1475.64,Found m/z=1476.4651
1H−NMRスペクトルを図10に、19F−NMRスペクトルを図11に、それぞれ示す。
・4,4’,5,5’,6,6’,8,8’−オクタキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−1,1−ビナフチルについて
1H−NMR:δ(ppm)=7.62(s,2H),7.57(s,2H),3.82(s,6H)
13C−NMR:δ(ppm)=156.869, 145.351, 144.131, 137.133, 133.662, 127.417, 227.301, 116.128, 114.469, 112.123, 57.347
19F−NMR:δ(ppm)=−72.00,−72.12,−72.21,−73.81
MS(ASAP):Calcd for C301024482:m/z=1497.68,Found m/z=1498.5033
1H−NMRスペクトルを図12に、13C−NMRスペクトルを図13に、19F−NMRスペクトルを図14に、それぞれ示す。
4,4’,5,5’,6,6’,8,8’−オクタキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルの同定にあたっては、1H−NMR測定および13C−NMR測定を利用したHMQC(Hetero-nuclear Multiple Quantum Coherence)およびHMBC(Hetero-nuclear Multiple-Bond Connectivity)による評価を併用した。図15にHMQCの結果を、図16にHMBCの結果を、それぞれ示す。まず、メトキシ基のプロトンとδ=7.62ppmのHaに20%のnOeが観測されたことから、δ=7.62ppmのHaはビナフチル骨格の3位および3’位に位置する水素原子であることが確認された(以下の化学式を参照)。さらに、HMQCの結果より、δ=7.62ppmのHaは112.123ppmの13Cピークと、また、δ=7.57ppmのHaは、114.47ppmの13Cピークと、に相関が見られた。一方、HMBCの結果より、δ=7.62ppmのHaは、116.13,117.30,145.35,156.87ppmの13Cピークとに相関が見られ、δ=7.57ppmのHbは、127.42,133.66,137.13,144.13ppmの13Cピークとに相関が見られ、HaおよびHbの両方とのクロスピークが現れた炭素原子は存在しなかった。このことから、Hbはビナフチル骨格の7,7’位に位置する水素原子であることが確認された。すなわち、作製した誘導体ではビナフチル骨格の3,3’,7,7’位に置換基が存在しておらず、4,4’,5,5’,6,6’,8,8’−オクタキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルが合成されていることをより確実に同定できた。
Figure 0006893360
(実施例3)
実施例3では、以下の反応式に示すように、(S)−4,4’,6,6’−テトラヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルから、8位および8’位にトリフルオロメタンスルホン酸基が導入された4,4’,5,5’,6,6’,8,8’−オクタキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルを選択的に合成した。
Figure 0006893360
最初に、空気雰囲気下において、(S)−4,4’,6,6’−テトラヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル(81.8mg,0.1mmol)およびDIH(945mg,2.5mmol)を塩化メチレン(5mL)に溶解させた後、溶解物にトリフルオロメタンスルホン酸(0.44mL,5.0mmol)を滴下して、全体を室温で12時間撹拌した。撹拌終了後、反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液をゆっくりと滴下して中和を行った。次に、中和物に亜硫酸ナトリウムを加えた後、塩化メチレンにより有機層を抽出し、抽出した有機層を水洗後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。次に、エバポレーターを用いて溶媒を除去し、粗生成物を得た。その後、得られた粗組成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3)により濾過して、4,4’,5,5’,6,6’,8,8’−オクタキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル(62.8mg,収率42%)を得た。得られた化合物はラセミ体であり、公知の光学分割手法によって、上記反応式に示すS体とR体とに分離できた。
(実施例4)
実施例4では、以下の反応式に示すように、(S)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルから、8位および8’位にトリフルオロメタンスルホン酸基が導入された4,4’,5,5’,6,6’,8,8’−オクタキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルを合成した。
Figure 0006893360
最初に、空気雰囲気下において、(S)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル(31.3mg,0.1mmol)およびDIH(945mg,2.5mmol)を塩化メチレン(5mL)に溶解させた後、溶解物にトリフルオロメタンスルホン酸(0.44mL,5.0mmol)を滴下して、全体を室温で12時間撹拌した。撹拌終了後、反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液をゆっくりと滴下して中和を行った。次に、中和物に亜硫酸ナトリウムを加えた後、塩化メチレンにより有機層を抽出し、抽出した有機層を水洗後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。次に、エバポレーターを用いて溶媒を除去し、粗組成物を得た。その後、得られた粗組成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3)により濾過して、4,4’,5,5’,6,6’,8,8’−オクタキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル(49.4mg,収率32%)を得た。得られた化合物はラセミ体であり、公知の光学分割手法によって、上記反応式に示すS体とR体とに分離できた。
用いたDIHの量を3.0mmol、トリフルオロメタンスルホン酸の量を6.0mmolに変更した場合、室温で20分間の反応により収率27%で4,4’,5,5’,6,6’,8,8’−オクタキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルが得られた。
(実施例5)
実施例5では、以下の反応式に示すように、2−メトキシナフタレンから、8位および8’位にトリフルオロメタンスルホン酸基が導入されたrac−4,4’,5,5’,6,6’,8,8’−オクタキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルを合成した。
Figure 0006893360
最初に、空気雰囲気下において、2−メトキシナフタレン(15.8mg,0.1mmol)およびDIH(945mg,2.5mmol)を塩化メチレン(5mL)に溶解させた後、溶解物にトリフルオロメタンスルホン酸(0.44mL,5.0mmol)を滴下して、全体を室温で12時間撹拌した。撹拌終了後、反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液をゆっくりと滴下して中和を行った。次に、中和物に亜硫酸ナトリウムを加えた後、塩化メチレンにより有機層を抽出し、抽出した有機層を水洗後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。次に、エバポレーターを用いて溶媒を除去し、粗生成物を得た。その後、得られた粗組成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3)により濾過して、rac−4,4’,5,5’,6,6’,8,8’−オクタキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル(27.1mg,収率36%)を得た。
(実施例6)
実施例6では、DIHの使用量を76mg(0.2mmol)とし、トリフルオロメタンスルホン酸の使用量を0.035mL(0.4mmol)とした以外は、実施例1と同様にして、(S)−4,4’,6,6’−テトラヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル(81.8mg,0.1mmol)から、以下の反応式に示すように、モノトリフルオロメタンスルホニルオキシ体である8−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−4,4’,6,6’−テトラヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル(14mg,収率15%)、およびビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)体である8,8’−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−4,4’,6,6’−テトラヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル(23mg,収率21%)を得た。得られた化合物はラセミ体であり、公知の光学分割手法によって、以下の反応式に示すS体とR体とに分離できた。
Figure 0006893360
得られた化合物は、1H−NMR測定、19F−NMR測定およびASAP−MSにより同定した。同定されたケミカルシフトおよび質量電荷数比(m/z)は次のとおりである。
・8−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−4,4’,6,6’−テトラヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルについて
1H−NMR:δ(ppm)=8.61(s,1H),8.44(s,1H),8.01(s,1H),7.91(s,1H),7.55(s,1H),7.44(d,J=8.8Hz,1H),6.72(d,J=9.2Hz,3H),3.76(s,3H),3.69(s,3H)
19F−NMR:δ(ppm)=−73.14
MS(ASAP):Calcd for C2313345S:m/z=965.66,Found m/z=965.6702
1H−NMRスペクトルを図17に、19F−NMRスペクトルを図18に、それぞれ示す。
・8,8’−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−4,4’,6,6’−テトラヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルについて
1H−NMR:δ(ppm)=8.47(s,2H),7.99(s,2H),7.57(d,J=8.4Hz,2H),7.44(d,J=8.8Hz,2H),6.72(d,J=8.4Hz,2H),3.75(s,6H)
19F−NMR:δ(ppm)=−73.28
MS(ASAP):Calcd for C24126482:m/z=1113.6056,Found m/z=1113.6072
(実施例7)
実施例7では、DIHの使用量を114mg(0.3mmol)とし、トリフルオロメタンスルホン酸の使用量を0.088mL(1.0mmol)とした以外は、実施例1と同様にして、(S)−4,4’,6,6’−テトラヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル(81.8mg,0.1mmol)から、以下の反応式に示すように、6,8,8’−トリス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−4,4’,6’−トリヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル(53mg,収率47%)を得た。得られた化合物はラセミ体であり、公知の光学分割手法によって、以下の反応式に示すS体とR体とに分離できた。
Figure 0006893360
得られた化合物は、1H−NMR測定、19F−NMR測定およびASAP−MSにより同定した。同定されたケミカルシフトおよび質量電荷数比(m/z)は次のとおりである。
1H−NMR:δ(ppm)=8.59(s,1H),8.45(s,1H),8.00(s,1H),7.61(s,1H),7.56(s,1H),7.43(s,1H),3.71(s,3H),3.70(s,3H)
19F−NMR:δ(ppm)=−72.68,−73.17,−73.58
MS(ASAP):Calcd for C251293113:m/z=1135.65,Found m/z=1136.5051
1H−NMRスペクトルを図19に、19F−NMRスペクトルを図20に、それぞれ示す。
(実施例8)
実施例8では、DIHの使用量を189mg(0.5mmol)とし、トリフルオロメタンスルホン酸の使用量を0.170mL(2.0mmol)とした以外は、実施例1と同様にして、(S)−4,4’,6,6’−テトラヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル(81.8mg,0.1mmol)から、以下の反応式に示すように、6,6’,8,8’−テトラ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−4,4’−ジヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル、および4,6,6’,8,8’−ペンタ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−4’−ヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルを得た。得られた化合物はラセミ体であり、公知の光学分割手法によって、以下の反応式に示すS体とR体とに分離できた。
Figure 0006893360
得られた化合物は、分子量測定およびASAP−MSにより同定した。同定された質量電荷数比(m/z)は次のとおりである。
・6,6’,8,8’−テトラ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−4,4’−ジヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルについて
MS(ASAP):Calcd for C2612122144:m/z=1157.701,Found m/z=1157.5494
・4,6,6’,8,8’−ペンタ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−4’−ヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルについて
MS(ASAP):Calcd for C271213IO175:m/z=1179.6013,Found m/z=1179.6013
(応用例1)
応用例1では、以下の反応式に示すように、実施例2,3で作製した(S)−4,4’,5,5’,6,6’,8,8’−オクタキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルの加水分解を経て、キノン化合物である(S)−4,4’,6,6’−テトラヒドロキシ−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフト−para−キノンを合成した。
Figure 0006893360
最初に、空気雰囲気下において、(S)−4,4’,5,5’,6,6’,8,8’−オクタキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル(149mg,0.1mmol)を、1,4−ジオキサン(10mL)およびメタノール(5mL)の混合溶液に溶解させた後、溶解物に濃度1Mの水酸化ナトリウム水溶液(2.4mL,2.4mmol)を加え、全体を60℃で20時間撹拌した。撹拌終了後、反応混合物に濃度10重量%の塩酸を加えて中和を行い、ジエチルエーテルで有機層を抽出した後、抽出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。次に、エバポレーターを用いて溶媒を除去し、粗生成物を得た。その後、得られた粗生成物をクロロホルムにより再結晶させて、橙色固体の(S)−4,4’,6,6’−テトラヒドロキシ−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフト−para−キノン(21.5mg,収率51%)を得た。
水酸化ナトリウムの代わりに水素化ナトリウム2.0mmolを使用した場合、室温および20時間の反応により、収率98%超(quant)で(S)−4,4’,6,6’−テトラヒドロキシ−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフト−para−キノンが得られた。
得られた化合物は、1H−NMR測定およびASAP−MSにより同定した。同定されたケミカルシフトおよび質量電荷数比(m/z)は次のとおりである。なお、1H−NMR測定の重溶媒には、(CD32COを使用した。
1H−NMR:δ(ppm)=12.48(br),9.79(br),6.79(s,2H),5.91(s,2H),3.76(s,6H)
MS(ASAP):Calcd for C221410:m/z=438.06,Found m/z=439.1201
図21に、(S)−4,4’,6,6’−テトラヒドロキシ−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフト−para−キノンのUV−Vis(紫外−可視光)吸収スペクトルを示す。なお、試料濃度は1×10-5M、セル長は1cm、λmaxは308nmとした。
1H−NMRスペクトルを図22に示す。
(実施例9)
実施例9では、DIHの使用量を76mg(0.2mmol)とし、トリフルオロメタンスルホン酸の代わりにメタンスルホン酸(0.026mL,0.4mmol)とした以外は、実施例1と同様にして、(S)−4,4’,6,6’−テトラヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル(81.8mg,0.1mmol)から、以下の反応式に示すように、8,8’−ビス(メタンスルホニルオキシ)−4,4’,6,6’−テトラヨード−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル(18.1mg,収率18%)を得た。得られた化合物はラセミ体であり、公知の光学分割手法によって、以下の反応式に示すS体とR体とに分離できた。
Figure 0006893360
得られた化合物は、1H−NMR測定、およびASAP−MSにより同定した。同定されたケミカルシフトおよび質量電荷数比(m/z)は次のとおりである。
1H−NMR:δ(ppm)=8.46(s,2H),7.98(s,2H),7.86(s,2H),3.68(s,6H),2.02(s,6H)
MS(ASAP):Calcd for C2418482:m/z=1005.662,Found m/z=1005.6544
1H−NMRスペクトルを図23に、13C−NMRスペクトルを図24に、それぞれ示す。
(実施例10)
実施例10では、以下の反応式に示すように、5,5’−ジヨード−2,2’−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1’−ビナフチルから、8位にヨウ素基が導入されるとともに、6位および6’位にもヨウ素基が導入された、5,5’,6,6’,8−ペンタヨード−2,2’−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1’−ビナフチルを合成した。このとき、5,5’,6,6’−テトラヨード−2,2’−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1’−ビナフチルが併せて得られた。
Figure 0006893360
最初に、空気雰囲気下において、5,5’−ジヨード−2,2’−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1’−ビナフチル(40.1mg,0.05mmol)およびDIH(57.0mg,0.15mmol)を塩化メチレン(5mL)に溶解させた後、溶解物にトリフルオロメタンスルホン酸(0.022mL,0.25mmol)を滴下して、全体を室温で1時間撹拌した。撹拌終了後、反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液をゆっくりと滴下して中和を行った。次に、中和物に亜硫酸ナトリウムを加えた後、塩化メチレンにより有機層を抽出し、抽出した有機層を水洗後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。次に、エバポレーターを用いて溶媒を除去し、組成生物を得た。その後、得られた粗組成物をゲル濾過クロマトグラフィーにより濾過して、5,5’,6,6’,8−ペンタヨード−2,2’−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1’−ビナフチルを得た。得られた5,5’,6,6’,8−ペンタヨード−2,2’−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1’−ビナフチルはラセミ体であり、公知の光学分割手法によって、R体とS体とに分離できた。
得られた5,5’,6,6’,8−ペンタヨード−2,2’−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1’−ビナフチルは、1H−NMR測定、13C−NMR測定、19F−NMR測定およびASAP−MSにより同定した。同定されたケミカルシフトおよび質量電荷数比(m/z)は次のとおりである。
1H−NMR:δ(ppm)=8.691(d,J=9.6Hz,1H),8.581(d,J=8.8Hz,1H),7.824(d,J=8.8Hz,1H),7.788(s,1H),7.616(d,J=9.6Hz,1H),7.577(d,J=9.6Hz,1H),6.846(d,J=9.2Hz,1H)
13C−NMR:δ(ppm)=107.823, 112.066, 114.412, 114.650, 116.395, 119.865, 122.173, 122.297, 122.678, 122.802, 126.473, 127.779, 131.698, 133.214, 134.673, 135.836, 137.304, 138.401, 140.946, 142.176, 146.124, 146.200
19F−NMR:δ(ppm)=−73.936,−74.028
MS(ASAP):Calcd for C2276562:m/z=1179.48,Found m/z=1179.2793
1H−NMRスペクトルを図25に、13C−NMRスペクトルを図26に、19F−NMRスペクトルを図27に、それぞれ示す。
(実施例11)
実施例11では、以下の反応式に示すように、(S)−2,2’−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1’−ビナフチルから、ペリレン誘導体である1,3,4,6,7,9,10,12−オクタ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ペリレン、および1,3,4,6,7,9,12−ヘプタ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ペリレンまたは1,3,4,6,7,9,10−ヘプタ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ペリレンを合成した。このとき、5,5’,6,6’−テトラヨード−2,2’,8,8’−テトラ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1’−ビナフチルが併せて得られた。
Figure 0006893360
最初に、空気雰囲気下において、(S)−2,2’−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1’−ビナフチル(55.0mg,0.1mmol)およびDIH(759.8mg,2.0mmol)を塩化メチレン(10mL)に溶解させた後、溶解物にトリフルオロメタンスルホン酸(0.354mL,4.0mmol)を滴下して、全体を0℃で10秒間撹拌した。撹拌終了後、反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液をゆっくりと滴下して中和を行った。次に、中和物に亜硫酸ナトリウムを加えた後、塩化メチレンにより有機層を抽出し、抽出した有機層を水洗後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。次に、エバポレーターを用いて溶媒を除去し、組成生物を得た。その後、得られた粗組成物をゲル濾過クロマトグラフィーにより濾過し、さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt:Hexane=1:5)により単離して、ペリレン誘導体である1,3,4,6,7,9,10,12−オクタ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ペリレン、および1,3,4,6,7,9,12−ヘプタ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ペリレンまたは1,3,4,6,7,9,10−ヘプタ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ペリレンを得た。1,3,4,6,7,9,10,12−オクタ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ペリレンと、1,3,4,6,7,9,12−ヘプタ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ペリレンまたは1,3,4,6,7,9,10−ヘプタ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ペリレンとの比は、NMR比で0.51:1であった。
得られた1,3,4,6,7,9,12−ヘプタ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ペリレンまたは1,3,4,6,7,9,10−ヘプタ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ペリレンは、1H−NMR測定、13C−NMR測定、19F−NMR測定およびASAP−MSにより同定した。同定されたケミカルシフトおよび質量電荷数比(m/z)は次のとおりである。
1H−NMR:δ(ppm)=8.804(d,J=8.4Hz,1H),7.914(d,J=8.4Hz,1H),7.840(s,1H),7.767(s,1H),7.764(s,1H)
13C−NMR:δ(ppm)=113.849, 114.192, 117.196, 118.016, 118.435, 118.569, 119.217, 119.408, 119.694, 120.399, 122.535, 123.336, 124.985, 131.212, 132.079, 132.737, 142.977, 143.931, 144.169, 144.398, 144.808, 145.485
19F−NMR:δ(ppm)=−71.631,−71.724,−71.785,−71.939,−72.707,−72.768,−72.861
MS(ASAP):Calcd for C27521217:m/z=1287.7,Found m/z=1287.6708
1H−NMRスペクトルを図28に、13C−NMRスペクトルを図29に、19F−NMRスペクトルを図30に、それぞれ示す。
(実施例12)
実施例12では、以下の反応式に示すように、(S)−5,5’,6,6’−テトラヨード−2,2’−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1’−ビナフチルから、ペリレン誘導体である1,12−ジヨード−3,4,5,6,7,9,10−ヘプタ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ペリレンを合成した。このとき、5,5’,6,6’−テトラヨード−2,2’,8,8’−テトラ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1’−ビナフチルが併せて得られた。
Figure 0006893360
最初に、窒素雰囲気下において、5,5’,6,6’−テトラヨード−2,2’−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1’−ビナフチル(105.3mg,0.1mmol)およびDIH(759.8mg,2.0mmol)を塩化メチレン(10mL)に溶解させた後、溶解物にトリフルオロメタンスルホン酸(0.354mL,4.0mmol)を滴下して、全体を0℃で1分間撹拌した。撹拌終了後、反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液をゆっくりと滴下して中和を行った。次に、中和物に亜硫酸ナトリウムを加えた後、塩化メチレンにより有機層を抽出し、抽出した有機層を水洗後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。次に、エバポレーターを用いて溶媒を除去し、組成生物を得た。その後、得られた粗組成物をゲル濾過クロマトグラフィーにより濾過して、ペリレン誘導体である1,12−ジヨード−3,4,5,6,7,9,10−ヘプタ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ペリレン(10.1mg,収率6.6%)を得た。
得られた1,12−ジヨード−3,4,5,6,7,9,10−ヘプタ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ペリレンは、1H−NMR測定、13C−NMR測定、19F−NMR測定およびASAP−MSにより同定した。同定されたケミカルシフトおよび質量電荷数比(m/z)は次のとおりである。
1H−NMR:δ(ppm)=8.976(s,1H),7.717(s,1H),7.707(s,1H)
13C−NMR:δ(ppm)=118.836, 119.637
19F−NMR:δ(ppm)=−71.216,−71.508,−71.662(s,2F),−72.277,−72.707,−72.768
MS(ASAP):Calcd for C273212217:m/z=1539.5,Found m/z=1539.3623
1H−NMRスペクトルを図31に、13C−NMRスペクトルを図32に、19F−NMRスペクトルを図33に、それぞれ示す。
(実験例1)
実験例1では、以下の反応式に示すように、4,4’,6,6’−テトラメチル−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルをデカップリング(解裂)して、2−メトキシ−4,6−ジメチルナフタレンを得た。
Figure 0006893360
最初に、空気雰囲気下において、4,4’,6,6’−テトラメチル−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル(74mg,0.2mmol)を塩化メチレン(10mL)に溶解させた後、溶解物にトリフルオロメタンスルホン酸(0.885mL,10mmol)を滴下して、室温で1時間撹拌した。撹拌終了後、反応混合物に過剰量の飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和亜硫酸ナトリウム水溶液とを加えた。次に、塩化メチレンにより有機層を抽出し、抽出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、これを濾過および濃縮して粗生成物を得た。次に、得られた粗組成物をヘキサンを用いて濾過した後、濃縮し、さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt:Hexane=1:5)により単離して、2−メトキシ−4,6−ジメチルナフタレン(35mg,収率47%)を得た。
得られた2−メトキシ−4,6−ジメチルナフタレンは、1H−NMR測定、13C−NMR測定およびASAP−MSにより同定した。同定されたケミカルシフトおよび質量電荷数比(m/z)は次のとおりである。
1H−NMR:δ(ppm)=7.712(s,H),7.682(d,1H),7.329(d,1H),7.021(s,1H),7.007(s,1H),3.922(s,3H),2.667(s,3H),2.555(s,3H)
13C−NMR:δ(ppm)=156.578, 135.526, 132.904, 128.527, 128.318, 127.298, 123.303, 119.374, 103.842, 55.159, 21.864, 19.376
MS(ASAP):Calcd for C1314O:m/z=186.1045,Found m/z=186.1567
1H−NMRスペクトルを図34に、13C−NMRスペクトルを図35に、それぞれ示す。
(実施例13)
実施例13では、以下の反応式に示すように、(S)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルから、キノン構造を有するビナフチル誘導体である1−(2−メトキシ−4,5,6,8−テトラキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−2−メトキシ−6−ヨード−5,8−ジオキソ−4,7−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−ナフトキノンを合成した。
Figure 0006893360
最初に、空気雰囲気下において、(S)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル(62.8mg,0.2mmol)およびDIH(1900mg,5mmol)を塩化メチレン(30mL)に溶解させた後、溶解物にトリフルオロメタンスルホン酸(0.885mL,10mmol)を滴下して、全体を室温で18時間撹拌した。撹拌終了後、反応混合物に過剰量の飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和亜硫酸ナトリウム水溶液とを加えた。次に、塩化メチレンにより有機層を抽出し、抽出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、これを濾過および濃縮して粗生成物を得た。その後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt:Hexane=1:5)により精製して、1−(2−メトキシ−4,5,6,8−テトラキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−2−メトキシ−6−ヨード−5,8−ジオキソ−4,7−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−ナフトキノン(52mg,収率20%)を得た。得られた化合物はラセミ体であり、公知の光学分割手法によって、R体とS体とに分離できた。
得られた1−(2−メトキシ−4,5,6,8−テトラキス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−2−メトキシ−6−ヨード−5,8−ジオキソ−4,7−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−ナフトキノンは、1H−NMR測定、13C−NMR測定、19F−NMR測定およびASAP−MSにより同定した。同定されたケミカルシフトおよび質量電荷数比(m/z)は次のとおりである。
1H−NMR:δ(ppm)=7.601(s,2H),7.535(s,2H),7.136(s,2H),3.866(s,3H),3.818(s,3H)
13C−NMR:δ(ppm)=175.113(s,1C), 173.931(s,1C), 162.919(s,1C), 156.206(s,1C), 155.930(s,1C), 150.171(s,1C), 144.984(s,1C), 143.754(s,1C), 137.023(s,1C), 133.600(s,1C), 130.978(s,1C), 126.954(s,1C), 126.611(s,1C), 118.845(q,1C), 118.764(q,1C), 118.672(q,1C), 118.602(q,1C), 118.235(q,1C), 117.908(q,1C), 117.248(s,1C), 116.009(s,1C), 115.961(s,1C), 115.789(s,1C), 114.34(s,1C), 111.871(s,1C), 110.917(s,1C), 57.276(s,1C), 57.228(s,1C)
19F−NMR:δ(ppm)=−71.785,−72.031,−72.277,−72.400,−72.768,−72.598
MS(ASAP):Calcd for C28918IO226:m/z=1357.6667,Found m/z=1358.7473
1H−NMRスペクトルを図36に、13C−NMRスペクトルを図37に、19F−NMRスペクトルを図38に、それぞれ示す。
(実施例14)
実施例14では、以下の反応式に示すように、(S)−2,2’−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1’−ビナフチルから、5,5’,6,6’−テトラヨード−2,2’,8,8’−テトラ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1’−ビナフチルを合成した。
Figure 0006893360
最初に、窒素雰囲気下において、(S)−2,2’−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1’−ビナフチル(55.0mg,0.1mmol)、DIH(759.8mg,2.0mmol)およびラジカル補足剤であるGalvinoxyl(42.2mg,0.1mmol)を塩化メチレン(10mL)に溶解させた後、溶解物にトリフルオロメタンスルホン酸(0.354mL,4.0mmol)を滴下して、全体を0℃で1時間撹拌した。撹拌終了後、反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液をゆっくりと滴下して中和を行った。次に、中和物に亜硫酸ナトリウムを加えた後、塩化メチレンにより有機層を抽出し、抽出した有機層を水洗後、硫酸ナトリウマグネシウムで乾燥させた。次に、エバポレーターを用いて溶媒を除去し、粗成生物を得た。その後、得られた粗組成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt:Hexane=1:10)により精製して、5,5’,6,6’−テトラヨード−2,2’,8,8’−テトラ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1’−ビナフチル(71.5mg,収率53%)を得た。得られた化合物はラセミ体であり、公知の光学分割手法によって、R体とS体とに分離できた。
得られた5,5’,6,6’−テトラヨード−2,2’,8,8’−テトラ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1’−ビナフチルは、1H−NMR測定、13C−NMR測定、19F−NMR測定およびASAP−MSにより同定した。同定されたケミカルシフトおよび質量電荷数比(m/z)は次のとおりである。
1H−NMR:δ(ppm)=8.736(d,J =9.6Hz,2H),7.889(s,2H),7.619(d,J=9.6Hz,2H)
13C−NMR:δ(ppm)=108.529, 113.992, 116.280, 119.465, 121.658, 122.850, 124.204, 128.027, 136.579, 141.490, 145.685, 146.505
19F−NMR:δ(ppm)=−74.059,−74.274
MS(ASAP):Calcd for C246124124:m/z=1349.47,Found m/z=1349.6476
1H−NMRスペクトルを図39に、13C−NMRスペクトルを図40に、19F−NMRスペクトルを図41に、それぞれ示す。
(実施例15)
実施例15では、以下の反応式に示すように、(S)−2,2’−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1’−ビナフチルから、ペリレン誘導体である1,3,4,6,7,9,10,12−オクタ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ペリレンを合成した。このとき、5,5’,6,6’−テトラヨード−2,2’,8,8’−テトラ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1’−ビナフチルが併せて得られた。
Figure 0006893360
最初に、窒素雰囲気下において、(S)−2,2’−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1’−ビナフチル(55.0mg,0.1mmol)およびDIH(759.8mg,2.0mmol)を塩化メチレン(10mL)に溶解させた後、溶解物にトリフルオロメタンスルホン酸(0.354mL,4.0mmol)を滴下して、全体を0℃で18時間撹拌した。撹拌終了後、反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液をゆっくりと滴下して中和を行った。次に、中和物に亜硫酸ナトリウムを加えた後、塩化メチレンにより有機層を抽出し、抽出した有機層を水洗後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。次に、エバポレーターを用いて溶媒を除去し、組成生物を得た。その後、得られた粗組成物をゲル濾過クロマトグラフィーにより濾過して、ペリレン誘導体である1,3,4,6,7,9,10,12−オクタ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ペリレン(68.9mg,収率48%)を得た。本実施例では、実施例11の反応時間を増加させている。なお、5,5’,6,6’−テトラヨード−2,2’,8,8’−テトラ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1’−ビナフチルの生成量は痕跡量であった。
得られた1,3,4,6,7,9,10,12−オクタ(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ペリレンは、1H−NMR測定、13C−NMR測定、19F−NMR測定およびASAP−MSにより同定した。同定されたケミカルシフトおよび質量電荷数比(m/z)は次のとおりである。
1H−NMR:δ(ppm)=7.83(s,4H)
13C−NMR:δ(ppm)=116.90, 116.99, 117.98, 131.44, 143.70, 144.70
19F−NMR:δ(ppm)=−73.23,−72.23
MS(ASAP):Calcd for C29424248:m/z=1435.65,Found m/z=1435.6671
1H−NMRスペクトルを図42に、13C−NMRスペクトルを図43に、19F−NMRスペクトルを図44に、それぞれ示す。
(応用例2)
応用例2では、以下の反応式に示すように、実施例1で作製した(S)−8,8’−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラヨード−1,1’−ビナフチルから、加水分解により、8,8’−ジヒドロキシ−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラヨード−1,1’−ビナフチル(ラセミ体)を合成した。
Figure 0006893360
乾燥した内容積50mLのシュレンクチューブに、(S)−8,8’−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラヨード−1,1’−ビナフチルを基準として10当量の水素化ナトリウム(24.0mg,1.0mmol)を収容した。次に、窒素雰囲気下において、溶媒として1,4−ジオキサン2mLを加え、0℃まで冷却した。次に、チューブ内の溶液に、1,4−ジオキサン2mLとメタノール2mLとの混合溶液に溶解させた(S)−8,8’−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラヨード−1,1’−ビナフチル(111.4mg,0.10mmol)を滴下し、撹拌した。撹拌開始から12時間経過後、チューブ内の反応混合物に塩化アンモニウム水溶液を加えて中和した後、有機層を酢酸エチルにより抽出し、抽出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。次に、エバポレーターを用いて溶媒を除去し、粗生成物を得た。その後、得られた粗組成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)により精製して、8,8’−ジヒドロキシ−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラヨード−1,1’−ビナフチル(66.3mg,0.078mmol)(Rf=0.25)を単離収率78%で得た。
得られた化合物は、1H−NMR測定、13C−NMR測定、およびASAP−MSにより同定した。同定されたケミカルシフトおよび質量電荷数比(m/z)は次のとおりである。
1H−NMR:δ(ppm)=8.12(s,2H),7.93(s,2H),7.09(s,2H),5.57(s,2H),3.70(s,6H)
13C−NMR:δ(ppm)=155.348(s), 154.013(s), 132.932(s), 132.341(s), 126.706(s), 124.628(s), 124.189(s), 117.915(s), 95.852(s), 88.854(s), 56.580(s)
MS(ASAP):Calcd for C221444:m/z=849.71,Found m/z=849.7335
(応用例3)
応用例3では、以下の反応式に示すように、応用例2で作製した8,8’−ジヒドロキシ−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラヨード−1,1’−ビナフチルから、8,8’−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラヨード−1,1’−ビナフチルを合成した。
Figure 0006893360
乾燥した内容積50mLのシュレンクチューブに、8,8’−ジヒドロキシ−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラヨード−1,1’−ビナフチル(170.0mg,0.2mmol)および当該ビナフチル誘導体を基準として4.4当量のt−ブチルジメチルクロロシラン(132.6mg,0.88mmol)を収容した。次に、窒素雰囲気下において、溶媒としてテトラヒドロフラン10mLを加え、0℃まで冷却した。次に、チューブ内の溶液に、2.2当量のn−ブチルリチウム/n−ヘキサン溶液(濃度1.64M,0.27mL,0.44mmol)を滴下して撹拌した。撹拌開始から2時間経過後、チューブ内の反応混合物に塩化アンモニウム水溶液を加えて中和した後、有機層をジエチルエーテルにより抽出し、抽出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。次に、エバポレーターを用いて溶媒を除去し、粗生成物を得た。その後、得られた粗組成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)により精製して、8−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−8’−ヒドロキシ−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラヨード−1,1’−ビナフチル(23.1mg,0.024mmol)(Rf=0.4)を単離収率12%で、また、8,8’−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラヨード−1,1’−ビナフチル(153.1mg,0.14mmol)(Rf=0.5)を単離収率71%で得た。
得られた化合物は、1H−NMR測定、13C−NMR測定、およびASAP−MSにより同定した。同定されたケミカルシフトおよび質量電荷数比(m/z)は次のとおりである。
・8−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−8’−ヒドロキシ−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラヨード−1,1’−ビナフチルについて
1H−NMR:δ(ppm)=8.13(s,1H),8.06(s,1H),7.91(s,1H),7.82(s,1H),7.08(s,1H),7.05(s,1H),5.85(s,1H),3.64(s,3H),3.60(s,3H),0.66(s,9H),−0.35(s,3H),−0.55(s,1H)
・8,8’−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラヨード−1,1’−ビナフチルについて
1H−NMR:δ(ppm)=8.07(s,2H),7.79(s,2H),6.96(s,2H),3.54(s,6H),0.68(s,18H),−0.25(s,6H),−0.71(s,6H)
13C−NMR:δ(ppm)=153.337(s), 153.222(s), 134.124(s), 133.295(s), 126.735(s), 126.506(s), 123.827(s), 122.101(s), 96.577(s), 88.683(s), 56.808(s), 19.395(s), −4.289(s), −4.728(s)
MS(ASAP):Calcd for C344244Si2:m/z=1077.88,Found m/z=1078.9579
(応用例4)
応用例4では、以下の反応式に示すように、応用例3で作製した8,8’−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラヨード−1,1’−ビナフチルから、8,8’−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビナフチルを合成した。
Figure 0006893360
乾燥した内容積50mLの二口ナスフラスコに、8,8’−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラヨード−1,1’−ビナフチル(111.4mg,0.10mmol)および20mol%の[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ニッケル(II)ジクロリド(13.68mg,0.02mmol)を収容した。次に、窒素雰囲気下において、溶媒としてジエチルエーテル10mLを加え、50℃まで加熱した後、ビナフチル誘導体を基準に6当量の3.00Mメチルマグネシウムブロミド/テトラヒドロフラン溶液(0.20mL,0.60mmol)を滴下して撹拌した。撹拌開始から12時間経過後、フラスコ内の反応混合物に塩化アンモニウム水溶液を加えて中和した後、有機層をジエチルエーテルにより抽出し、抽出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。次に、エバポレーターを用いて溶媒を除去し、粗生成物を得た。その後、得られた粗組成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)により精製して、8,8’−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビナフチル(60.5mg,0.096mmol)(Rf=0.4)を単離収率96%で得た。
得られた化合物は、1H−NMR測定、13C−NMR測定、およびASAP−MSにより同定した。同定されたケミカルシフトおよび質量電荷数比(m/z)は次のとおりである。
1H−NMR:δ(ppm)=7.28(s,2H),7.06(s,2H),6.51(s,2H),3.45(s,6H),2.68(s,6H),2.39(s,6H),0.65(s,18H),−0.34(s,6H),−0.71(s,6H)
13C−NMR:δ(ppm)=153.365(s), 152.259(s), 132.608(s), 131.798(s), 131.197(s), 126.897(s), 122.311(s), 116.743(s), 116.028(s), 115.065(s), 57.266(s), 21.931(s), 20.815(s), 19.318(s), −4.118(s), −4.642(s)
MS(ASAP):Calcd for C38544Si2:m/z=630.36,Found m/z=631.4206
(応用例5)
応用例5では、以下の反応式に示すように、応用例4で作製した8,8’−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビナフチルから、8,8’−ジヒドロキシ−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビナフチルを合成した。
Figure 0006893360
乾燥した内容積20mLのシュレンクチューブに、8,8’−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビナフチル(111.4mg,0.1mmol)およびビナフチル誘導体を基準に2.4当量のフッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム(13.68mg,0.02mmol)を収容した。次に、窒素雰囲気下において、溶媒としてテトラヒドロフラン10mLを加え、さらに2.4当量のピリジン(0.20mL,0.60mmol)を滴下して、室温で撹拌した。撹拌開始から12時間経過後、チューブ内の反応混合物に塩化アンモニウム水溶液を加えて中和した後、有機層をジエチルエーテルにより抽出し、抽出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。次に、エバポレーターを用いて溶媒を除去し、粗生成物を得た。その後、得られた粗組成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)により精製して、8,8’−ジヒドロキシ−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビナフチル(29.8mg,0.074mmol)(Rf=0.2)を単離収率74%で得た。
得られた化合物は、1H−NMR測定、13C−NMR測定、およびASAP−MSにより同定した。同定されたケミカルシフトおよび質量電荷数比(m/z)は次のとおりである。
1H−NMR:δ(ppm)=7.35(s,2H),7.20(s,2H),6.69(s,2H),6.10(s,2H),3.72(s,6H),2.75(s,6H),2.43(s,6H)
13C−NMR:δ(ppm)=154.042(s), 153.479(s), 138.290(s), 134.916(s), 130.682(s), 121.405(s), 116.457(s), 115.179(s), 114.483(s), 112.261(s), 57.066(s), 21.797(s), 21.178(s)
MS(ASAP):Calcd for C26264:m/z=402.18,Found m/z=403.1710
(応用例6)
応用例6では、以下の反応式に示すように、応用例5で作製した8,8’−ジヒドロキシ−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビナフチルから、8,8’−ビス{(1S,4R)−[3−オキソ−4,7,7−トリメチル−2−オキサビシクロ[2.2.1]へプタン]−1−カルボニル}オキシ−(aR)−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビナフチル、および8,8’−ビス{(1S,4R)−[3−オキソ−4,7,7−トリメチル−2−オキサビシクロ[2.2.1]へプタン]−1−カルボニル}オキシ−(aS)−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビナフチルを合成した。
Figure 0006893360
乾燥した内容積20mLのシュレンクチューブに、8,8’−ジヒドロキシ−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビナフチル(40.2mg,0.10mmol)、ビナフチル誘導体を基準に2当量の(‐)‐カンファン酸クロリド(43.33mg,0.20mmol)および40mol%のN,N‐ジメチル‐4‐アミノピリジン(9.77mg,0.080mmol)を収容した。次に、窒素雰囲気下において、溶媒として塩化メチレン5mLおよび6当量のトリエチルアミン(0.084mL,0.60mmol)を加えて室温で撹拌した。撹拌開始から18時間経過後、チューブ内の反応混合物に塩化アンモニウム水溶液を加えて中和した後、有機層をジエチルエーテルにより抽出し、抽出した有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。次に、エバポレーターを用いて溶媒を除去し、粗生成物を得た。その後、得られた粗組成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:塩化メチレン:トルエン:ジエチルエーテル=3:2:2:1)により精製して、8,8’−ビス{(1S,4R)−[3−オキソ−4,7,7−トリメチル−2−オキサビシクロ[2.2.1]へプタン]−1−カルボニル}オキシ−(aR)−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビナフチル(29.7mg,0.039mmol)(Rf=0.3)を単離収率39%で、8,8’−ビス{(1S,4R)−[3−オキソ−4,7,7−トリメチル−2−オキサビシクロ[2.2.1]へプタン]−1−カルボニル}オキシ−(aS)−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビナフチル(25.9mg,0.032mmol)(Rf=0.2)を単離収率32%で、それぞれ得た。
得られた化合物は、1H−NMR測定および13C−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトおよび質量電荷数比(m/z)は次のとおりである。
・8,8’−ビス{(1S,4R)−[3−オキソ−4,7,7−トリメチル−2−オキサビシクロ[2.2.1]へプタン]−1−カルボニル}オキシ−(aR)−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビナフチルについて
1H−NMR:δ(ppm)=7.64(s,2H),7.15(s,2H),6.76(s,2H),3.54(s,6H),2.72(s,6H),2.50(s,6H),1.59(t,2H),1.45(t,2H),1.33(t,2H),1.01(t,2H),0.94(s,6H),0.84(s,6H),0.70(s,6H)
13C−NMR:δ(ppm)=177.859(s), 166.628(s), 153.775(s), 147.196(s), 134.792(s), 132.599(s), 130.997(s), 126.087(s), 122.330(s), 122.158(s), 117.019(s), 116.047(s), 90.113(s), 56.961(s), 54.520(s), 54.244(s), 29.463(s), 28.691(s), 21.597(s), 20.815(s), 16.630(s), 16.515(s), 9.688(s)
・8,8’−ビス{(1S,4R)−[3−オキソ−4,7,7−トリメチル−2−オキサビシクロ[2.2.1]へプタン]−1−カルボニル}オキシ−(aS)−2,2’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビナフチルについて
1H−NMR:δ(ppm)=7.66(s,2H),7.25(s,2H),6.71(s,2H),3.62(s,6H),2.72(s,6H),2.48(s,6H),1.49(t,2H),1.27(t,2H),1.18(t,2H),1.14(t,2H),0.97(s,6H),0.95(s,6H),0.81(s,6H)
13C−NMR:δ(ppm)=178.260(s), 166.246(s,6H), 154.481(s), 146.729(s), 135.068(s), 131.674(s), 130.720(s), 125.391(s), 122.387(s), 121.405(s), 116.714(s), 115.999(s), 90.418(s), 56.599(s), 54.787(s), 54.654(s), 28.910(s), 28.062(s), 21.588(s), 20.777(s), 17.078(s), 16.591(s), 9.727(s)
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本開示には、以下の各項目に記載の事項が含まれている。
1.1,1’−ビナフチル骨格の2位および2’位に、前記骨格に直接結合した酸素原子を含む電子供与性基をそれぞれ有する1,1’−ビナフチル前駆誘導体と;有機酸と;ヨウ素化剤または臭素化剤と;を混合して、前記骨格の8位および/または8’位に水素原子以外の原子との結合を導入する工程を含む、前記1,1’−ビナフチル前駆誘導体に由来する多環芳香族構造を有する多環芳香族化合物の製造方法。
2.前記水素原子以外の原子が、前記骨格の8位および8’位において互いに独立して、炭素原子または酸素原子である、項目1に記載の製造方法。
3.前記結合として前記骨格の8位および/または8’位に置換基(置換基Z1)を導入する、項目1または2に記載の製造方法。
4.前記結合として前記骨格の8位および/または8’位に置換基(置換基Z1)を導入して、前記骨格の8位および/または8’位に前記置換基が導入された1,1’−ビナフチル誘導体を、前記多環芳香族化合物として得る、項目1〜3のいずれかに記載の製造方法。
5.前記置換基(置換基Z1)が、有機酸基、水酸基、ヨウ素基、および臭素基から選ばれる少なくとも1種である、項目3または4に記載の製造方法。
6.前記結合として前記骨格の8位および8’位を結ぶ結合を導入する、項目1または2に記載の製造方法。
7.前記結合として前記骨格の8位および8’位を結ぶ結合を導入して、ペリレンまたはペリレン誘導体を前記多環芳香族化合物として得る、項目1,2および6のいずれかに記載の製造方法。
8.前記多環芳香族化合物が1,1’−ビナフチル誘導体、ペリレン、またはペリレン誘導体である、項目1〜7のいずれかに記載の製造方法。
9.前記前駆誘導体と前記有機酸と前記ヨウ素化剤とを混合する、項目1〜8のいずれかに記載の製造方法。
10.前記電子供与性基が−OR基であり、
前記Rは、水素原子、炭素数1〜50のアルキル基、アリル基、ベンジル基、トリフルオロメタンスルホニル基、シリル基、または水酸基の保護基である、項目1〜9のいずれかに記載の製造方法。
11.前記Rが水素原子、メチル基、またはトリフルオロメタンスルホニル基である、項目10に記載の製造方法。
12.前記ヨウ素化剤が、1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインおよびN−ヨードスクシンイミドから選ばれる少なくとも1種である、項目1〜11のいずれかに記載の製造方法。
13.前記有機酸が、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸およびパラトルエンスルホン酸から選ばれる少なくとも1種である、項目1〜12のいずれかに記載の製造方法。
14.前記骨格の4位、4’位、5位、5’位、6位および6’位から選ばれる少なくとも1つの位置にさらに前記置換基(置換基Z4)が導入された前記1,1’−ビナフチル誘導体を前記多環芳香族化合物として得る、項目1〜5および8〜13のいずれかに記載の製造方法。
15.ペリレン誘導体であって、当該誘導体の骨格(ペリレン骨格)の3位、4位、5位、8位、9位および10位から選ばれる少なくとも1つの位置に前記置換基(置換基Z4)が導入された前記ペリレン誘導体を前記多環芳香族化合物として得る、項目1,2および6〜13のいずれかに記載の製造方法。
16.1,1’−ビナフチル骨格の2位および2’位に、前記骨格に直接結合した酸素原子を含む電子供与性基をそれぞれ有する1,1’−ビナフチル前駆誘導体と;有機酸と;ヨウ素化剤または臭素化剤と;を混合して、前記骨格の8位および/または8’位に置換基(置換基Z1)が導入された1,1’−ビナフチル誘導体を得る、1,1’−ビナフチル誘導体の製造方法。
17.前記前駆誘導体と前記有機酸と前記ヨウ素化剤とを混合する、項目16に記載の製造方法。
18.前記電子供与性基が−OR基であり、前記Rは、水素原子、炭素数1〜50のアルキル基、アリル基、ベンジル基、トリフルオロメタンスルホニル基、シリル基、または水酸基の保護基である、項目16または17に記載の製造方法。
19.前記Rが水素原子、メチル基、またはトリフルオロメタンスルホニル基である、項目18に記載の製造方法。
20.前記ヨウ素化剤が、1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインおよびN−ヨードスクシンイミドから選ばれる少なくとも1種である、項目16〜19のいずれかに記載の製造方法。
21.前記有機酸が、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸およびパラトルエンスルホン酸から選ばれる少なくとも1種である、項目16〜20のいずれかに記載の製造方法。
22.前記置換基(置換基Z1)が、有機酸基、水酸基およびヨウ素基または臭素基から選ばれる少なくとも1種である、項目16〜21のいずれかに記載の製造方法。
23.前記骨格の4位、4’位、5位、5’位、6位および6’位から選ばれる少なくとも1つの位置にさらに前記置換基(置換基Z4)が導入された前記ビナフチル誘導体を得る、項目16〜22のいずれかに記載の製造方法。
24.1,1’−ビナフチル骨格の2位および2’位に、前記骨格に直接結合した酸素原子を含む電子供与性基をそれぞれ有する1,1’−ビナフチル前駆誘導体と;有機酸と;ヨウ素化剤または臭素化剤と;を混合してペリレン誘導体を得る、ペリレン誘導体の製造方法。
25.前記前駆誘導体と前記有機酸と前記ヨウ素化剤とを混合する、項目24に記載の製造方法。
26.前記電子供与性基が−OR基であり、前記Rは、水素原子、炭素数1〜50のアルキル基、アリル基、ベンジル基、トリフルオロメタンスルホニル基、シリル基、または水酸基の保護基である、項目24または25に記載の製造方法。
27.前記Rが水素原子、メチル基、またはトリフルオロメタンスルホニル基である、項目26に記載の製造方法。
28.前記ヨウ素化剤が、1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインおよびN−ヨードスクシンイミドから選ばれる少なくとも1種である、項目24〜27のいずれかに記載の製造方法。
29.前記有機酸が、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸およびパラトルエンスルホン酸から選ばれる少なくとも1種である、項目24〜28のいずれかに記載の製造方法。
30.ペリレン骨格の3位、4位、5位、8位、9位および10位から選ばれる少なくとも1つの位置にさらに置換基(置換基Z4)が導入された前記ペリレン誘導体を得る、項目24〜29のいずれかに記載の製造方法。
31.ナフタレン骨格の2位に置換基(置換基Z5)を有するナフタレン誘導体と、有機酸と、ヨウ素化剤または臭素化剤と、を混合して前記誘導体のカップリング反応を進行させて、2位および2’位に置換基(置換基Z2、Z5またはZ6)を有する1,1’−ビナフチル骨格を形成する工程を含む、前記1,1’−ビナフチル骨格に由来する多環芳香族構造を有する多環芳香族化合物の製造方法。
32.前記ビナフチル骨格の2位および2’位に前記置換基(置換基Z2、Z5またはZ6)をそれぞれ有する1,1’−ビナフチル誘導体を前記多環芳香族化合物として得る、項目31に記載の製造方法。
33.前記置換基(置換基Z2、Z5またはZ6)が、前記ビナフチル骨格に直接結合した酸素原子を含む電子供与性基であり、
前記1,1’−ビナフチル骨格の8位および/または8’位に水素原子以外の原子との結合を導入する工程をさらに含む、項目31または32に記載の製造方法。
34.前記結合として前記ビナフチル骨格の8位および8’位を結ぶ結合を導入する、項目31〜33のいずれかに記載の製造方法。
35.前記結合として前記ビナフチル骨格の8位および8’位を結ぶ結合を導入して、ペリレンまたはペリレン誘導体を前記多環芳香族化合物として得る、項目31〜34のいずれかに記載の製造方法。
36.前記多環芳香族化合物が1,1’−ビナフチル誘導体、ペリレン、またはペリレン誘導体である、項目31〜35のいずれかに記載の製造方法。
37.前記ナフタレン誘導体と前記有機酸と前記ヨウ素化剤とを混合する、項目31〜36のいずれかに記載の製造方法。
38.前記ヨウ素化剤が、1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインおよびN−ヨードスクシンイミドから選ばれる少なくとも1種である、項目31〜37のいずれかに記載の製造方法。
39.前記有機酸が、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸およびパラトルエンスルホン酸から選ばれる少なくとも1種である、項目31〜38のいずれかに記載の製造方法。
40.前記置換基(置換基Z2、Z5またはZ6)が−OR基であり、前記Rは、水素原子、炭素数1〜50のアルキル基、アリル基、ベンジル基、トリフルオロメタンスルホニル基、シリル基、または水酸基の保護基である、項目31〜39のいずれかに記載の製造方法。
41.前記Rが水素原子、メチル基、またはトリフルオロメタンスルホニル基である、項目40に記載の製造方法。
42.ペリレン骨格の3位、4位、5位、8位、9位および10位から選ばれる少なくとも1つの位置に前記置換基(置換基Z4)が導入されたペリレン誘導体を前記多環芳香族化合物として得る、項目31〜41のいずれかに記載の製造方法。
43.ナフタレン骨格の2位に置換基を有するナフタレン誘導体と、有機酸と、ヨウ素化剤または臭素化剤と、を混合して前記誘導体のカップリング反応を進行させて、1,1’−ビナフチル骨格の2位および2’位に置換基(置換基Z2、Z5またはZ6)をそれぞれ有する1,1’−ビナフチル誘導体を得る、1,1’−ビナフチル誘導体の製造方法。
44.前記置換基(置換基Z2、Z5またはZ6)が、前記ビナフチル骨格に直接結合した酸素原子を含む電子供与基である、項目43に記載の製造方法。
45.前記置換基(置換基Z2、Z5またはZ6)が−OR基であり、前記Rは、水素原子、炭素数1〜50のアルキル基、アリル基、ベンジル基、トリフルオロメタンスルホニル基、シリル基、または水酸基の保護基である、項目43または44に記載の製造方法。
46.前記Rが水素原子、メチル基、またはトリフルオロメタンスルホニル基である、項目45に記載の製造方法。
47.前記ビナフチル骨格の8位および/または8’位にさらに置換基(置換基Z1)が導入された前記ビナフチル誘導体を得る、項目43〜46のいずれかに記載の製造方法。
48.以下の式(1)に示す1,1’−ビナフチル誘導体に対して、Y1、Y2、−OR1、−OR2および少なくとも1つのXから選ばれる少なくとも1つの基が関与する反応を進行させて、当該反応を反映した、前記式(1)に示す誘導体とは異なる1,1’−ビナフチル誘導体を得る、1,1’−ビナフチル誘導体の製造方法。
式(1)において、Xはヨウ素基または臭素基、R1およびR2は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜50のアルキル基、アリル基、ベンジル基、トリフルオロメタンスルホニル基、シリル基、または水酸基の保護基であり、Y1およびY2は、互いに独立して、前記誘導体のビナフチル骨格に直接結合した酸素原子を含む有機酸基、または水酸基である。
Figure 0006893360
49.前記Xがヨウ素基であり、前記R1およびR2が水素原子、メチル基、またはトリフルオロメタンスルホニル基であり、Y1およびY2が互いに独立して、前記有機酸基または水酸基である、項目48に記載の製造方法。
50.前記反応が、置換反応および加水分解反応から選ばれる少なくとも1つの反応である、項目48または49に記載の製造方法。
51.1,1’−ビナフチル骨格の2位および/または2’位に置換基(置換基Z2、Z5またはZ6)をそれぞれ有する1,1’−ビナフチル誘導体と、有機酸と、を混合して前記誘導体のデカップリング(解裂)反応を進行させて、置換基(置換基Z2、Z5またはZ6)を有するナフタレン骨格を有するナフタレン誘導体を得る、ナフタレン誘導体の製造方法。
52.ビナフチル骨格の8位および/または8’位に置換基(置換基Z1)を有する1,1’−ビナフチル誘導体。
53.前記置換基(置換基Z1)が、前記骨格に直接結合した酸素原子を含む基、炭素数1〜50の脂肪族基、または炭素数6〜30のアリール基である、項目52に記載の1,1’−ビナフチル誘導体。
54.前記置換基(置換基Z1)が、前記骨格に直接結合した酸素原子を含む基P1であり、
前記骨格における3以上の他の位置に、前記骨格に直接結合した酸素原子を含む基P2を有する、項目52に記載の1,1’−ビナフチル誘導体。P1およびP2は、同一であっても異なっていてもよい。
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本発明は、その意図および本質的な特徴から逸脱しない限り、他の実施形態に適用しうる。この明細書に開示されている実施形態は、あらゆる点で説明的なものであってこれに限定されない。本発明の範囲は、上記説明ではなく添付したクレームによって示されており、クレームと均等な意味および範囲にあるすべての変更はそれに含まれる。
本開示の製造方法により得られた1,1’−ビナフチル誘導体および本開示の1,1’−ビナフチル誘導体は、当該誘導体自身が種々の用途に利用可能であるとともに、さらなる誘導化を経て形成された化合物についても、種々の用途に利用することができる。
本開示の製造方法により得られたペリレン誘導体およびペリレン、ならびに本開示のペリレン誘導体は、当該誘導体自身が種々の用途に利用可能であるとともに、さらなる誘導化を経て形成された化合物についても、種々の用途に利用することができる。
本開示の製造方法により得られたナフタレン誘導体、および本開示のナフタレン誘導体は、当該誘導体自身が種々の用途に利用可能であるとともに、さらなる誘導化を経て形成された化合物についても、種々の用途に利用することができる。

Claims (9)

  1. 1,1’−ビナフチル骨格の2位および2’位に、前記骨格に直接結合した酸素原子を含む電子供与性基をそれぞれ有する1,1’−ビナフチル前駆誘導体と、
    有機酸と、
    ヨウ素化剤または臭素化剤と、を混合して、
    前記骨格の8位および/または8’位に置換基Z1が導入された1,1’−ビナフチル誘導体を得ることを含み、
    前記有機酸が、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸およびパラトルエンスルホン酸から選ばれる少なくとも1種であ
    前記置換基Z 1 が、有機酸基、水酸基およびヨウ素基または臭素基から選ばれる少なくとも1種である、1,1’−ビナフチル誘導体の製造方法。
  2. 前記骨格の4位、4’位、5位、5’位、6位および6’位から選ばれる少なくとも1つの位置にさらに置換基Z4が導入された前記ビナフチル誘導体を得る、請求項に記載の1,1’−ビナフチル誘導体の製造方法。
    ただし、前記置換基Z 4 は、有機酸基、水酸基およびヨウ素基または臭素基から選ばれる少なくとも1種であり、前記置換基Z1と前記置換基Z4とは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
  3. 1,1’−ビナフチル骨格の2位および2’位に、前記骨格に直接結合した酸素原子を含む電子供与性基をそれぞれ有する1,1’−ビナフチル前駆誘導体と、
    有機酸と、
    ヨウ素化剤または臭素化剤と、を混合して、
    前記骨格の8位および/または8’位に置換基Z1が導入された1,1’−ビナフチル誘導体を得ることを含み、
    前記置換基Z1が、有機酸基、水酸基およびヨウ素基または臭素基から選ばれる少なくとも1種である、1,1’−ビナフチル誘導体の製造方法。
  4. 前記骨格の4位、4’位、5位、5’位、6位および6’位から選ばれる少なくとも1つの位置にさらに置換基Z4が導入された前記ビナフチル誘導体を得る、請求項に記載の1,1’−ビナフチル誘導体の製造方法。
    ただし、前記置換基Z 4 は、有機酸基、水酸基およびヨウ素基または臭素基から選ばれる少なくとも1種であり、前記置換基Z1と前記置換基Z4とは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
  5. 1,1’−ビナフチル骨格の2位および2’位に、前記骨格に直接結合した酸素原子を含む電子供与性基をそれぞれ有する1,1’−ビナフチル前駆誘導体と、
    有機酸と、
    ヨウ素化剤または臭素化剤と、を混合して、
    前記骨格の8位および/または8’位に置換基Z1が導入された1,1’−ビナフチル誘導体を得ることを含み、
    前記骨格の4位、4’位、5位、5’位、6位および6’位から選ばれる少なくとも1つの位置にさらに置換基Z4が導入された前記ビナフチル誘導体を得る、1,1’−ビナフチル誘導体の製造方法。
    ただし、前記置換基Z 1 およびZ 4 は、有機酸基、水酸基およびヨウ素基または臭素基から選ばれる少なくとも1種である。前記置換基Z1と前記置換基Z4とは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
  6. 前記前駆誘導体と前記有機酸と前記ヨウ素化剤とを混合する、請求項1〜のいずれかに記載の1,1’−ビナフチル誘導体の製造方法。
  7. 前記電子供与性基が−OR基であり、
    前記Rは、水素原子、炭素数1〜50のアルキル基、アリル基、ベンジル基、トリフルオロメタンスルホニル基、シリル基、または水酸基の保護基である請求項1〜のいずれかに記載の1,1’−ビナフチル誘導体の製造方法。
  8. 前記Rが水素原子、メチル基、またはトリフルオロメタンスルホニル基である請求項に記載の1,1’−ビナフチル誘導体の製造方法。
  9. 前記ヨウ素化剤が、1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインおよびN−ヨードスクシンイミドから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜のいずれかに記載の1,1’−ビナフチル誘導体の製造方法。
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