以下、実施形態に係るトルク検出装置及びトルク検出装置付き回転工具について、図面を用いて説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本開示の様々な実施形態の一部に過ぎない。下記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
(実施形態1)
本実施形態のトルク検出装置付き回転工具1は、図1、2に示すように、回転工具5と、回転工具5に用いられるトルク検出装置2と、を備えている。
(回転工具の構成)
回転工具5は、駆動源51と、駆動軸53と、操作部6と、を備えている。回転工具5は、駆動制御部52と、ボディ54と、アーム55と、トリガ56と、伝達機構7(図3参照)と、を更に備えている。回転工具5は例えば、駆動軸53にドリルビット又はドライバビット等のビットが取り付けられる手持ち形電動工具である。駆動源51は、例えば電動モータである。駆動制御部52は、駆動源51の動作を制御する回路である。駆動源51は、電池パックに収容された複数(例えば4つ)の電池(2次電池)から電力が供給されることにより、動力(回転動力)を発生する。駆動軸53は、駆動源51から伝達機構7を介して伝達される動力によりトルクが加えられ回転する。トルク検出装置2は主として、ユーザが回転工具5を用いてねじ締め作業を行う場合に、ねじ締め作業の前に用いられる。ただし、トルク検出装置2は、ねじ締め作業以外の作業において回転工具5と共に用いられてもよい。また、トルク検出装置2は、ねじ締め作業等の作業中又は作業後に用いられてもよい。
ボディ54は、中空の円柱状に形成されている。ボディ54は、駆動源51と、伝達機構7(図3参照)と、を収容している。ボディ54の軸方向の先端には、操作部6が取り付けられている。
操作部6は、駆動軸53に加えられるトルクのトルク設定値を決定する操作を受け付ける。言い換えると、ユーザは、操作部6を操作することによりトルク設定値を決定することができる。操作部6は、円筒状の筒体61と、筒体61の軸方向の一端に設けられた円環状の枠部62と、を含む。筒体61の直径は、ボディ54から離れた位置ほど小さい。筒体61の軸方向は、ボディ54の軸方向及び駆動軸53の軸方向と一致している。筒体61には、操作部6の回転角とトルク設定値との対応を示す記号63が付されている。筒体61の外面には、複数の溝64が形成されている。複数の溝64の長手方向は、筒体61の軸方向に沿った方向である。筒体61の軸方向においてボディ54から離れた側の筒体61の先端に、枠部62が設けられている。枠部62の外縁620は、筒体61の先端に繋がっている。駆動軸53は、ボディ54及び操作部6の内側を通っており、操作部6におけるボディ54側とは反対側の端(枠部62)から突出している。
アーム55は、筒状に形成されている。アーム55は、ボディ54の側面から突出している。アーム55は、駆動制御部52を収容している。アーム55の外面からは、トリガ56が突出している。アーム55には、電池パックが取り付けられる。
図3に示すように、伝達機構7は、太陽歯車71と、リング歯車72と、複数(図3では2つ)の遊星歯車73と、キャリア74と、クラッチ機構8と、を含む。また、伝達機構7は、太陽歯車71、リング歯車72及び複数の遊星歯車73とは別の複数の歯車を更に含む。
太陽歯車71は、駆動源51で生じる動力が伝達されて自転する。リング歯車72は、太陽歯車71の軸方向から見て、太陽歯車71を中心とする円環状に形成されている。リング歯車72は、周方向に自転可能に配置されている。複数の遊星歯車73は、太陽歯車71とリング歯車72との間に配置されている。複数の遊星歯車73は、太陽歯車71とリング歯車72とに噛み合っている。複数の遊星歯車73は、太陽歯車71の周方向に沿って並んでいる。キャリア74は、複数の遊星歯車73を、各遊星歯車73が自転できるように保持している。リング歯車72は、クラッチ機構8により自転が規制されており、通常、自転しないようになっている。後述するように、リング歯車72は、駆動軸53に加えられるトルクがトルク設定値以上となった場合に自転する。キャリア74は、駆動軸53に連結されている。これにより、駆動軸53は、キャリア74が自転すると回転(自転)する。
ユーザがトリガ56(図2参照)を引く操作を行うと、駆動制御部52(図1)の制御により、駆動源51が動作する。これにより、駆動源51が動力を発生して駆動源51の出力軸511が回転(自転)すると、出力軸511の回転動力が複数の歯車を介して伝達されて、太陽歯車71が自転する。太陽歯車71が自転すると、太陽歯車71と、クラッチ機構8により自転が規制されているリング歯車72との間で複数の遊星歯車73が自転しながら太陽歯車71を中心に公転することにより、キャリア74が自転して駆動軸53が回転(自転)する。要するに、駆動軸53は、駆動源51から伝達される動力によりトルクが加えられ回転(自転)する。
次にクラッチ機構8について説明する。リング歯車72は、クラッチ機構8により、自転が規制されている。クラッチ機構8は、複数(図3では1つ)のボール81と、複数(図3では1つ)のピン82と、クラッチ板83と、ばね84と、複数(図3では1つ)の凸部85と、アジャストねじ86と、固定部87と、を含む。
複数の凸部85は、リング歯車72からリング歯車72の軸方向に突出している。複数の凸部85は、リング歯車72の周方向に並んでいる。クラッチ板83は、円環状に形成されている。ボール81は、例えば鋼球である。複数のピン82は、リング歯車72の軸方向に沿って移動可能である。複数のピン82は、複数のボール81に一対一で対応している。各ピン82の一端は、クラッチ板83に接している。各ピン82の他端は、対応するボール81に接している。ボール81は、ピン82とリング歯車72とに挟まれている。ばね84は、圧縮コイルばねである。クラッチ機構8において、ばね84は、クラッチスプリングとして用いられる。ばね84は、クラッチ板83にばね荷重を加えて押すことにより、各ピン82をボール81に向かって押し、ボール81にリング歯車72を押させる。
アジャストねじ86は、円筒状の筒部861と、筒部861の先端から外向きに広がったフランジ部862と、を有している。筒部861の内周面には、ねじ部863が設けられている。ばね84の一端は、フランジ部862に接しており、他端は、クラッチ板83に接している。固定部87は、筒状に形成されている。固定部87は、ボディ54に固定されている。固定部87は、筒部861の内側に配置されている。固定部87の外周面には、アジャストねじ86のねじ部863と噛み合うねじ部871が設けられている。アジャストねじ86のフランジ部862は、操作部6の枠部62とばね84との間に位置している。アジャストねじ86は、操作部6の内部に配置されており、操作部6の回転に追従して回転して、操作部6と共に、ばね84の伸縮方向(図3では紙面左右方向)に沿って変位する。
(トルク検出装置の構成)
図1、2に示すように、トルク検出装置2は、検出部3と、出力部21と、を備えている。トルク検出装置2は、管理部22と、記憶部23と、撮影部24と、基板25と、取付部材26と、を更に備えている。出力部21、管理部22、記憶部23及び撮影部24は、基板25に実装されている。トルク検出装置2は、回転工具5に取り付けられた電池パックの電池から電力の供給を受けている。
トルク検出装置2の一部の構成は、中央処理装置などのプロセッサを有するマイクロコンピュータにより構成されている。本実施形態では、出力部21、管理部22、記憶部23及び撮影部24の少なくとも一部が、マイクロコンピュータにより構成されている。記憶部23等の記憶装置に記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示におけるトルク検出装置2の実行主体としての機能の一部が実現される。
検出部3は、ロータリエンコーダである。検出部3は、操作部6で決定されたトルク設定値を検出する。図2、4に示すように、検出部3は、回転検出素子30と、反射部材31と、環状部材32と、処理回路と、を含む。回転検出素子30は、基板25に実装されている。
反射部材31は、例えば、金属により形成されている。反射部材31は、円環形の板状に形成されている。反射部材31は、操作部6とボディ54との間に配置されている。反射部材31には、複数のスリット311が形成されている。複数のスリット311は、反射部材31の周方向に並んでいる。各スリット311の長手方向は、反射部材31の径方向に沿っている。また、反射部材31の径方向において複数のスリット311の内側には、複数のスリット311とは別のZ相スリットが設けられている。Z相スリットは、操作部6が回転するときの操作部6の原点を検出するためのスリットである。
環状部材32は、反射部材31よりも光反射率が小さい。反射部材31の厚みは、環状部材32の厚みと比較してごく小さい。例えば、反射部材31の厚みは、環状部材32の厚みの1/10以下である。環状部材32は、反射部材31に重なる円環形の板状に形成されている。環状部材32は、操作部6と反射部材31との間に配置されている。環状部材32は、操作部6に固定されており、反射部材31は、環状部材32に固定されている。反射部材31及び環状部材32は、操作部6と共に回転可能である。
回転検出素子30は、光を投光する投光部と、光を受光する複数(2つ)の第1受光部と、同じく光を受光する第2受光部と、を有している。投光部は、例えば発光ダイオードと、発光ダイオードから放射される光を平行光に配光するレンズと、を含む。複数の第1受光部及び第2受光部の各々は、例えば1又は複数のフォトダイオードで構成されている。複数の第1受光部は、反射部材31の回転方向(周方向)に沿って並んでいる。回転検出素子30は、複数のスリット311のうち一部のスリット311と向かい合っている。
操作部6が回転すると、操作部6と共に反射部材31及び環状部材32が回転する。これにより、回転検出素子30と複数のスリット311及びZ相スリットとの位置関係が変化する。操作部6が一方向に回転すると、回転検出素子30の投光部から投光された光の一部が反射部材31(すなわち、隣り合うスリット311の間の部分)に当たって第1受光部に向かって反射する場合と、複数のスリット311を通って環状部材32に到達する場合とが交互に繰り返される。また、操作部6が1回転する間に、回転検出素子30がZ相スリットに向かい合うと、回転検出素子30の投光部から投光された光の一部がZ相スリットを通って環状部材32に到達する。後述するように、検出部3の処理回路は、回転検出素子30がZ相スリットに向かい合ったことを、第2受光部で生じる電気信号に基づいて検出する。
取付部材26は、L字の板状に形成されている。取付部材26は、基板25をボディ54に取り付けるための部材である。取付部材26には、基板25が固定されている。取付部材26は、ねじ261を用いて、ボディ54に固定されている。
図1において、出力部21は、検出部3によるトルク設定値の検出値を出力する。出力部21は、例えば、チップアンテナにより構成されている。出力部21が検出値を出力する先は、例えば、トルク検出装置付き回転工具1の外部の構成である外部装置9である。
撮影部24は、例えば、基板25(図2参照)に実装されるサイズのカメラで構成されている。回転工具5を用いるユーザは、駆動軸53の回転により作業を行うことができる。撮影部24は、駆動軸53の回転による作業の作業対象を撮影する。駆動軸53の回転による作業とは、例えば、ねじ及びねじが締められる部材を作業対象として、駆動軸53に取り付けられたビットによりねじを回し、ねじを部材に締める作業である。撮影部24が撮影した作業対象の画像データ(静止画像データ又は動画データ)は、記憶部23に記憶される。
記憶部23は、例えば、SRAM(Static Random Access Memory)又はDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の記憶装置で構成されている。記憶部23は、トルク設定値の規格値を記憶している。規格値は、予め決められた値である。規格値は、回転工具5の仕様、及び、駆動軸53の回転による作業の作業対象の仕様等に基づいて決められている。
また、駆動軸53の回転による作業は複数あり、複数の作業は、予め決められた順序で行われる。例えば、トルク設定値を第1の規格値に設定して行う第1の作業の次に、トルク設定値を第2の規格値に設定して行う第2の作業を行い、第2の作業の次に、トルク設定値を第3の規格値に設定して行う第3の作業を行い、……というように、作業の順序が決められている。そして、複数の作業(第1の作業、第2の作業、第3の作業、……)の各々についてトルク設定値の規格値が予め決められている。記憶部23は、複数の作業の各々の規格値と、これら複数の規格値の順序と、を記憶している。複数の規格値の順序は、複数の作業の行われる順序に対応している。すなわち、複数の規格値の順序とは、最初に行われる第1の作業に対応する第1の規格値、2番目に行われる第2の作業に対応する第2の規格値、3番目に行われる第3の作業に対応する第3の規格値、……という順序である。
管理部22は、例えば、コンパレータとカウント回路とを含む論理回路及び、電子ブザー等の通知部により構成されている。管理部22の論理回路は、トルク設定値の検出部3による検出値と、記憶部23に記憶されている規格値とを比較する。検出値と比較される規格値は、複数の規格値のうち、次に実行される作業に対応する規格値である。例えば、次に実行される作業が第1の作業である場合、検出値と比較される規格値は、第1の規格値である。管理部22による比較の結果、規格値が検出値と異なる場合、管理部22は、通知部により所定の通知をする。所定の通知をするとは、例えば、通知部である電子ブザーが警告音を発することである。管理部22は、次に実行される作業がいずれの作業(何番目の作業)であるかを、例えば、トリガ56(図2参照)を引く操作が行われた回数を管理部22のカウント回路でカウントすることにより求める。
規格値が検出値と異なるとは、規格値と検出値とが一致しないということであるが、規格値と検出値とが一致する場合とは、規格値と検出値とが厳密に一致する場合に限らない。例えば、管理部22の論理回路は、規格値を検出値で割った値が0.9以上1.1以下の範囲なら、規格値と検出値とが一致するとしてもよい。そして、管理部22の論理回路は、規格値を検出値で割った値が0.9未満又は1.1より大きい場合に、規格値が検出値と異なるとしてもよい。
(回転工具の動作)
次に、図3を参照して、回転工具5の動作について説明する。トリガ56(図2参照)を引く操作が行われることにより、駆動源51の出力軸511が回転(自転)すると、リング歯車72に形成されたクラッチ機構8の凸部85にボール81が接することにより、リング歯車72の自転が規制される。したがって、太陽歯車71が自転したとき、太陽歯車71及びリング歯車72と噛み合っている遊星歯車73が公転して、駆動軸53が回転(自転)する。つまり、クラッチ機構8は、駆動源51から駆動軸53へトルクを伝達する。
ここで、駆動軸53に加えられるトルクが増加すると、遊星歯車73の単位時間当たりの回転数が増し、これによりリング歯車72がより大きな回転力を受けるので、ボール81が凸部85に対して更に強い力で押し付けられる。駆動軸53に加えられるトルクがトルク設定値以上となると、ボール81は、リング歯車72に形成されている凸部85を、ばね84のばね荷重に抗して乗り越えるので、リング歯車72が自転する。つまり、リング歯車72が空転する。したがって、この状態では、駆動源51の回転力が駆動軸53に伝達されない。これにより回転工具5は、駆動軸53に加えられるトルクが、トルク設定値以上とならないようになっている。言い換えると、クラッチ機構8では、駆動軸53に加えられるトルクがトルク設定値に達したときに、駆動源51から駆動軸53へのトルクの伝達が遮断される。したがって、回転工具5では、駆動軸53に取り付けられるビットで施工される作業対象(ねじ等)に与えるトルクが、トルク設定値に対応した所定の値以上とならないようになっている。
また、ユーザは、操作部6を操作することによりトルク設定値を決定することができる。ユーザが操作部6を回転させて、アジャストねじ86をボディ54の中心側(図3では紙面左側)へ変位させると、ばね84がフランジ部862に押されて圧縮される。これによりばね84からボール81へ加えられるばね荷重が増大する。するとボール81は、アジャストねじ86が変位する前の状態よりも強い力で、リング歯車72に押し付けられる。これにより、ボール81が凸部85を乗り越えてリング歯車72が空転を始めるときの駆動軸53のトルク(すなわちトルク設定値)を大きくすることができる。つまり、ユーザは、操作部6を第1の向きに変位させることで、トルク設定値をより大きい値に決定することができる。一方で、ばね84が圧縮されているときに、ユーザが操作部6を回転させて、アジャストねじ86をボディ54の中心から離れる向き(図3では紙面右向き)に変位させると、ばね84が伸長する。これにより、ばね84からボール81へ加えられるばね荷重が減少するので、トルク設定値を小さくすることができる。つまり、ユーザは、操作部6を上記第1の向きとは反対向きの第2の向きに変位させることで、トルク設定値をより小さい値に決定することができる。
このように、回転工具5では、トルク設定値を決定する操作は、操作部6を変位させる操作である。また、上記の通り、ばね84は、操作部6が操作されると伸縮し、ばね荷重が変化する。クラッチ機構8において、ばね84は、ばね荷重の変化によりトルク設定値を変更するクラッチスプリングである。ばね84は、トルク設定値の変更に応じて伸縮する、具体的には、ばね84が伸縮することによりトルク設定値が変更される。
(トルク検出装置の動作)
次に、図1、4を参照して、トルク検出装置2の動作について説明する。まずは、操作部6で決定されたトルク設定値を検出する検出部3の動作を説明する。
ユーザが回転工具5の電源を入れると、検出部3において、回転検出素子30の投光部は、反射部材31の複数のスリット311に向かって投光する。反射部材31(すなわち、隣り合うスリット311の間の部分)に光が当たると、光は反射されて、回転検出素子30の複数の第1受光部で受光され、受光量の大きさに応じた強度の電気信号に変換される。一方で、光がスリット311を通ると、光はほとんどが環状部材32で吸収されるので、回転検出素子30の複数の第1受光部では受光されないか、又は反射部材31で光が反射された場合よりも複数の第1受光部での受光量が小さい。ユーザの操作により操作部6が回転すると、回転検出素子30と複数のスリット311との位置関係が変化するので、複数の第1受光部で生じる電気信号の強度が時間的に変化する。複数(2つ)の第1受光部は反射部材31の回転方向(周方向)に沿って並んでいるので、複数の第1受光部で生じる電気信号は、互いに位相が90度ずれる。
また、Z相スリットが回転検出素子30に向かい合っていないとき、投光部からの光の一部は反射部材31で反射され、回転検出素子30の第2受光部で受光され、受光量の大きさに応じた強度の電気信号に変換される。Z相スリットが回転検出素子30に向かい合うとき、投光部からの光はZ相スリットを通って環状部材32に到達するので、第2受光部での受光量が低下し、第2受光部で生じる電気信号の強度が低下する。
ユーザは、回転工具5を使用する際に、まず、操作部6に付された記号63(図2参照)を参照して、操作部6の回転角を調節し、Z相スリットを回転検出素子30に向かい合わせる。これにより、第2受光部で生じる電気信号の強度が低下するので、検出部3の処理回路は、このときの操作部6の位置を操作部6の原点として検出する。
さらに、ユーザが操作部6を回転させると、検出部3の処理回路は、複数の第1受光部及び第2受光部で生じた電気信号に基づいて、操作部6の回転量及び回転方向を求める。また、処理回路は、操作部6の回転量及び回転方向に基づいて、操作部6で決定されたトルク設定値を算出し、算出した値をトルク設定値の検出値とする。処理回路で得られた検出値は、記憶部23に記憶され、出力部21で出力される。出力部21は検出値を、例えば、外部装置9に出力する。
このように、検出部3は、操作部6で決定されたトルク設定値を、操作部6の変位(回転量及び回転方向)を計測することで検出する。
出力部21は、駆動軸53(図2参照)が回転を停止する度に、トルク設定値の検出値を出力する。出力部21は、駆動制御部52に電気的に接続されている。ユーザがトリガ56(図2参照)を引く操作を行うと駆動制御部52の制御により駆動軸53が回転し、ユーザがトリガ56から手を離すと駆動制御部52の制御により駆動軸53が停止する。ユーザがトリガ56から手を離したとき、出力部21には、例えば、駆動制御部52から所定の信号が入力される。出力部21は、所定の信号が入力される度に、トルク設定値の検出値を出力する。
また、出力部21は、撮影部24が撮影した作業対象(例えば、ねじ及びねじが締められる部材)の画像データと、トルク設定値の検出値とを紐づけて出力する。例えば、ユーザが作業対象に対してねじ締め等の作業を実行する前に、ユーザが撮影部24を操作することにより、作業対象が撮影部24で撮影され、画像データが生成される。画像データと検出値との紐づけは、例えば、画像データと、直近に検出された検出値とを、同時に又は続けて出力部21が出力することで実現される。あるいは、画像データと検出値との紐づけは、画像データと検出値との対応を示す情報を出力部21が出力することで実現される。
既に述べた通り、管理部22は、駆動軸53の回転により実行される複数の作業のうち次に実行される作業がいずれの作業(何番目の作業)であるかを、例えば、トリガ56(図2参照)を引く操作が行われた回数を管理部22のカウント回路でカウントすることにより求める。また、管理部22は、次に実行される作業について予め決められた規格値が検出値と異なる場合に、所定の通知をする。すなわち、既に述べた通り、管理部22は、トルク設定値の検出部3による検出値と、次に実行される作業の規格値とを比較する。規格値が検出値と異なる場合、管理部22は所定の通知をする。
以上説明した通り、トルク設定値の検出値は、出力部21から外部装置9へ出力される。外部装置9は例えば、記憶装置(例えばSRAM又はDRAM等)に検出値を記憶する。このように、本実施形態のトルク検出装置2によれば、ユーザが回転工具5を用いて作業を行ったときに設定されていたトルク設定値を外部装置9に記憶させることができる。これにより、回転工具5を用いた作業の作業品質を外部装置9で管理することができる。また、出力部21は、作業対象の画像データを検出値と紐づけて出力するので、外部装置9では、画像データと検出値とを容易に管理することができる。
また、検出部3は、回転している駆動軸53に加えられているトルクを検出するのではなく、トルク設定値を検出する。したがって、検出部3の構成を、駆動軸53に加えられているトルクを検出するための構成よりも簡素化したり、検出部3のコストを削減したりできる場合がある。
(実施形態1の変形例)
以下に、実施形態1の変形例を列挙する。以下の変形例は、適宜組み合わせて実現されてもよい。
回転工具5は、駆動軸53にドリルビット又はドライバビット等のビットが取り付けられる手持ち形電動工具に限定されず、例えば、インパクトレンチ又は電動ドリルドライバ等であってもよい。また、回転工具5は、電池ではなく商用電源等の外部電源から電力が供給されてもよい。また、電池を回転工具5の電源に用いる場合に、電池は1次電池でも、2次電池でもよい。また、回転工具5はモータを駆動源51とする電動工具に限定されない。回転工具5は、例えば空圧ポンプを駆動源とし空圧ポンプから供給される圧縮空気により動力を発生する空圧式の回転工具でもよいし、油圧ポンプを駆動源とし油圧源から供給される油圧により動力を発生する油圧式の回転工具でもよい。
また、回転検出素子30の複数の第1受光部及び第2受光部で生じた電気信号に基づいて、操作部6の回転量及び回転方向を求める処理は、外部装置9で行われてもよいし、トルク検出装置2で行われてもよい。また、操作部6の回転量及び回転方向に基づいて、トルク設定値を算出する処理は、外部装置9で行われてもよいし、トルク検出装置2で行われてもよい。
また、管理部22は、駆動軸53の回転により実行される予め決められた複数の作業のうち次に実行される作業について予め決められた規格値がトルク設定値の検出値と異なる場合に、所定の通知をする代わりに又は所定の通知をするのに加えて、駆動軸53の回転を停止させてもよい。この場合に管理部22は、例えば、駆動制御部52に所定の信号を出力することにより、駆動制御部52に駆動軸53の回転を停止させる。管理部22は、例えば出力部21を介して所定の信号を駆動制御部52に出力する。
この場合に、管理部22が駆動軸53の回転を停止させるタイミングは、例えば、管理部22が規格値と検出値とを比較した直後であってもよいし、駆動軸53に取り付けられたビットをユーザが、作業対象のねじ等に当てたときであってもよい。
また、管理部22は、トルク設定値の検出値と比較する規格値を複数の規格値の中から選択することに限定されない。管理部22は、常に一定の規格値を検出値と比較してもよい。この場合に、検出値が一定の規格値と異なる場合に、管理部22は、所定の通知をすることと、駆動軸53の回転を停止させることとのうち少なくとも一方を行えばよい。
また、所定の通知の内容は、電子ブザーが警告音を発することに限定されない。所定の通知の内容は、音を発すること、光を発すること、又は、文字又は記号等をディスプレイに表示すること等であってもよい。
また、出力部21は、トルク設定値の検出値及び作業対象の画像データを外部装置9に出力することに限定されない。出力部21は、検出値及び画像データを、トルク検出装置付き回転工具1に取り付けられたメモリカード等の非一時的記録媒体に出力して記録させてもよい。また、出力部21は、検出値及び画像データを回転工具5に出力してもよい。
また、出力部21は、トルク設定値の検出値のみを出力してもよいし、トルク設定値の検出値に加えて、作業対象の画像データ、作業者(ユーザ)に関する情報、及び、ユーザが操作部6を操作してトルク設定値を設定(決定)した時刻等を出力してもよい。作業者に関する情報とは、例えば、作業者の識別情報等である。ユーザが操作部6を操作してトルク設定値を設定した時刻は、トルク検出装置2が時計を更に備えることにより、時計から取得される。
また、出力部21の通信方式は、無線通信であっても、有線通信であってもよい。
また、検出部3は、ロータリエンコーダに限定されない。検出部3は、操作部6の直線的な変位を検出してもよい。例えば、検出部3は、操作部6の軸方向の変位を検出するリニアポテンショメータ等を含む構成であってもよい。あるいは、検出部3は、操作部6の回転角を電気抵抗値として計測する回転型ポテンショメータを含む構成であってもよい。あるいは、操作部がスライド式スイッチである場合は、検出部3は、操作部のスライド方向の変位を検出するリニアポテンショメータ等を含む構成であってもよい。
また、ばね84は、コイルばねに限定されない。ばね84は、例えばねじりばねであってもよい。
また、管理部22は、回転工具5で駆動軸53の回転により次に実行される作業がいずれの作業(何番目の作業)であるかを、撮影部24で撮影された作業対象の画像データに基づいて判断してもよい。この場合に、ユーザは、作業前に作業対象を撮影部24で撮影すればよい。
(実施形態1及び実施形態1の変形例のまとめ)
以上説明したように、本実施形態に係るトルク検出装置2は、駆動源51と、駆動軸53と、操作部6と、を備える回転工具5に用いられる。駆動源51は、動力を発生する。駆動軸53は、駆動源51から伝達される動力によりトルクが加えられ回転する。操作部6は、駆動軸53に加えられるトルクのトルク設定値を決定する操作を受け付ける。トルク検出装置2は、検出部3と、出力部21と、を備える。検出部3は、トルク設定値を検出する。出力部21は、検出部3によるトルク設定値の検出値を出力する。
上記の構成によれば、検出部3は、回転している駆動軸53に加えられているトルクを検出するのではなく、トルク設定値を検出する。したがって、駆動軸53の回転による作業が行われる前であっても、駆動軸53に加えられるトルクに関する情報であるトルク設定値を検出することができる。
また、本実施形態に係るトルク検出装置2において、トルク設定値を決定する操作は、操作部6を変位させる操作であることが好ましい。検出部3は、操作部6の変位を計測することでトルク設定値を検出することが好ましい。
上記の構成によれば、検出部3は、操作部6の変位を計測するという簡素な手段でトルク設定値を検出することができる。
また、本実施形態に係るトルク検出装置2において、出力部21は、駆動軸53が回転を停止する度に検出値を出力することが好ましい。
上記の構成によれば、駆動軸53が回転を複数回停止する度に、検出部3で検出された検出値を出力部21が出力する場合と比較して、出力部21は、検出値を迅速に出力できる。
また、本実施形態に係るトルク検出装置2は、管理部22を更に備えることが好ましい。管理部22は、予め決められた規格値が検出値と異なる場合、又は、駆動軸53の回転により実行される予め決められた複数の作業のうち次に実行される作業について予め決められた規格値が検出値と異なる場合に、所定の通知をすることと、駆動軸53の回転を停止させることとのうち少なくとも一方を行う。
上記の構成によれば、ユーザが、トルク設定値を規格値と異なる値に決定した状態で作業を行う可能性を低減することができる。
また、本実施形態に係るトルク検出装置2は、撮影部24を更に備えることが好ましい。撮影部24は、駆動軸53の回転による作業の作業対象を撮影する。出力部21は、撮影部24が撮影した作業対象の画像データと検出値とを紐づけて出力することが好ましい。
上記の構成によれば、出力部21で出力される情報がより充実する。
また、本実施形態に係るトルク検出装置付き回転工具1は、トルク検出装置2と、回転工具5と、を備える。
上記の構成によれば、トルク検出装置2の検出部3は、回転している駆動軸53に加えられているトルクを検出するのではなく、トルク設定値を検出する。したがって、駆動軸53の回転による作業が行われる前であっても、駆動軸53に加えられるトルクに関する情報であるトルク設定値を検出することができる。
(実施形態2)
次に、実施形態2に係るトルク検出装置2aについて、図5を参照して説明する。回転工具5の構成は実施形態1と同様であるので、同一の符号を付して説明を省略する。トルク検出装置2aについても、実施形態1のトルク検出装置2と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
トルク検出装置2aにおいて、検出部3aは、誘導型近接センサである。検出部3aは、検出環30aを有している。検出環30aは、金属等の導体により形成されている。検出環30aは、筒状部31aと、複数の突起32aと、を含む。筒状部31aは、円筒状に形成されている。筒状部31aは、操作部6とボディ54との間に配置されている。筒状部31aは、操作部6に固定されている。検出環30aは、操作部6と共に回転可能である。
複数の突起32aは、筒状部31aの側面から突出している。複数の突起32aは、筒状部31aの周方向に並んでいる。隣り合う突起32aの間隔は、略等間隔である。筒状部31aの径方向における複数の突起32aの長さは、互いに略等しい。
複数の突起32aは、筒状部31aの軸方向における長さが最も長い突起と、2番目に長い突起と、3番目に長い突起と、を同数ずつ含む。筒状部31aの軸方向における長さが最も長い突起32aはいずれも、筒状部31aの軸方向における長さが2番目に長い突起32a及び3番目に長い突起32aに隣り合っている。筒状部31aの軸方向における長さが2番目に長い突起32aはいずれも、筒状部31aの軸方向における長さが最も長い突起32a及び3番目に長い突起32aに隣り合っている。筒状部31aの軸方向における長さが3番目に長い突起32aはいずれも、筒状部31aの軸方向における長さが1番目に長い突起32a及び2番目に長い突起32aに隣り合っている。
検出部3aは、コアと、コアに巻かれたコイルと、発振回路と、発振状態検出回路と、処理回路と、コア、コイル、発振回路、発振状態検出回路及び処理回路を収容した筐体33aと、第1取付部材34aと、第2取付部材35aと、を更に有している。筐体33aは、第1取付部材34a及び第2取付部材35aに挟持されている。第1取付部材34a及び第2取付部材35aは、ボディ54にねじ止めされている。
筐体33aのうち、コイルの軸方向においてコイルに向かい合う検出面36aは、筒状部31aの側面に向かい合っている。
発振回路は、コイルに高周波信号を供給し、これによりコイルは高周波磁束を発生する。すると、検出環30aで誘導電流が発生し、誘導損失が生じるので、発振回路の発振振幅が減衰する。発振回路の発振振幅の減衰量は、検出面36aと検出環30aとの間の距離、及び、検出面36aに近接している突起32aの検出面36aから見た面積によって異なる。発振状態検出回路は、発振回路の発振振幅の時間的変化を検出することにより、検出環30aの回転量及び回転方向を計測する。検出部3aの処理回路は、検出環30aの回転量及び回転方向に基づいてトルク設定値を算出し、算出した値をトルク設定値の検出値とする。このように、検出部3aは、検出環30aと共に回転する操作部6の回転量及び回転方向(操作部6の変位)を計測することで、トルク設定値を検出する。
以上説明したように、本実施形態によれば、誘導型近接センサを検出部3aとして用いたトルク検出装置2aを実現することができる。
(実施形態3)
次に、実施形態3に係るトルク検出装置付き回転工具1bについて、図6を参照して説明する。実施形態1と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図6では、ボディ54(図2参照)の内部を簡略的に示してある。回転工具5bは、ワッシャ88と、複数(2つ。図6では1つのみ図示)のスペーサ89と、を更に備えている。トルク検出装置2bにおいて、検出部3bは、感圧センサである。検出部3bは、基板であるフレキシブル基板36と、フレキシブル基板36に実装された感圧素子37及び処理回路と、を含む。感圧素子37は、例えば、導電性ゴムと、導電性ゴムに接続された一対の電極と、により形成されている。感圧素子37は、矩形板状に形成されている。感圧素子37は、加えられている圧力が変化すると、電気抵抗値が変化する。
ワッシャ88は、ばね84の伸縮方向の一端(図6では左端)に接している。より詳細には、ワッシャ88は、ばね84と、クラッチ板83との間に配置されている。ワッシャ88は、ボディ54(図2参照)に対して回転しないように固定されている。ワッシャ88には、ばね84のばね荷重が加えられている。ワッシャ88とクラッチ板83との間には、フレキシブル基板36の一部及び感圧素子37が挟まれている。複数のスペーサ89は、例えば、ゴムにより形成されている。複数のスペーサ89は、ワッシャ88とクラッチ板83との間であって、フレキシブル基板36及び感圧素子37が存在しない領域に配置されている。すなわち、複数のスペーサ89及び感圧素子37は、ばね84の伸縮方向の一端に配置されている。複数のスペーサ89の各々の厚みは、フレキシブル基板36の厚みと感圧素子37の厚みとの和に略等しい。複数のスペーサ89は、ワッシャ88の周方向に沿って並んでいる。複数のスペーサ89が配置されていることにより、ワッシャ88及びばね84が感圧素子37を支点として傾くことが抑制されている。複数のスペーサ89及び感圧素子37は、ワッシャ88を介してばね84のばね荷重が加えられており、ばね荷重の大きさの変化により伸縮する。
操作部6(図3参照)が操作されてばね84が圧縮され、ばね荷重が増加すると、感圧素子37の電気抵抗値が低下する。逆に、操作部6が操作されてばね84が伸長し、ばね荷重が低下すると、感圧素子37の電気抵抗値が増加する。このように、感圧素子37は、ばね84のばね荷重を電気抵抗値に変換する。検出部3bの処理回路は、感圧素子37の電気抵抗値に基づいてトルク設定値を算出し、算出した値をトルク設定値の検出値とする。このように、検出部3bは、ばね84のばね荷重を計測することでトルク設定値を検出する。
また、ワッシャ88からは、ばね84側へ突起部881が突出している。これにより、ばね84が周方向に回転しようとすると、ばね84を構成する線材の第1の端841に突起部881が接触して、ばね84の回転が妨げられる。このように、突起部881がばね84の回転を妨げることにより、感圧素子37に加わるばね84のばね荷重のばらつきが抑えられる。つまり、ばね84の伸縮方向以外の方向のばね荷重が感圧素子37に加わる可能性が低減される。これにより、検出部3bは、トルク設定値をより正確に検出することができる。
なお、ばね84の第1の端841側に突起部881を設けるだけではなく、第2の端842側にも突起部881と同様の突起部を設けてもよい。第2の端842側の突起部は、例えば、フランジ部862から、ばね84の伸縮方向に沿ってばね84側へ突出していればよい。
本実施形態では、検出部3bの少なくとも一部がボディ54(図2参照)に収容されることにより、トルク検出装置付き回転工具1bを、実施形態1及び2のトルク検出装置付き回転工具1、1aよりもコンパクト化できる。
なお、ばね84は、クラッチスプリングに限定されない。ばね84は、トルク設定値の変更に応じて伸縮するように構成されていればよい。つまり、ばね84の長さに対応して、トルク設定値が1つの値に決まればよい。
(実施形態3の変形例1)
次に、実施形態3の変形例1について説明する。実施形態3と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図7は、ばね84の一端が接するワッシャ88を、ばね84(図6参照)側から見た図である。実施形態3と同様に、フレキシブル基板36cの上に感圧素子37cが、感圧素子37cの上にワッシャ88が重なっている。本変形例の感圧素子37cは、円環状である。感圧素子37cは、ばね84のうち、ワッシャ88との接触面に沿った形状である。つまり、ばね84の伸縮方向から見て、感圧素子37cがばね84の略全体に重なるように、感圧素子37cが形成されている。フレキシブル基板36cは、一部が感圧素子37cの形状に合わせて円環状に形成されている。なお、スペーサ89(図6参照)は不要である。
本変形例によれば、感圧素子37cが円環状であることにより、感圧素子37cには、ばね84(図6参照)のばね荷重が均一に加えられる。これにより、検出部3cは、トルク設定値をより正確に検出することができる。
(実施形態3の変形例2)
次に、実施形態3の変形例2に係るトルク検出装置について説明する。実施形態3(図6参照)と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
本変形例では、検出部は、リニアポテンショメータと、処理回路と、リニアポテンショメータ及び処理回路が実装された基板と、を含む。リニアポテンショメータ、処理回路及び基板は、ボディ54(図2参照)に収容されている。リニアポテンショメータの摺動子が、ばね84の伸縮方向に沿った方向にスライドすることにより、リニアポテンショメータの電気抵抗値が変化する。摺動子は、ばね84の伸縮方向の一端側に取り付けられている。具体的には、摺動子は、フランジ部862に取り付けられている。
操作部6(図3参照)が操作されると、フランジ部862と、フランジ部862に取り付けられている摺動子とが変位する。摺動子の変位により、リニアポテンショメータの電気抵抗値が増加又は減少する。また、フランジ部862が変位することにより、ばね84がフランジ部862に押されて圧縮又は伸長すると、ばね84の伸縮方向の端である第2の端842が変位する。このように、リニアポテンショメータは、ばね84の一部である第2の端842の変位を電気抵抗値に変換する。検出部の処理回路は、リニアポテンショメータの電気抵抗値に基づいてトルク設定値を算出し、算出した値をトルク設定値の検出値とする。このように、検出部は、ばね84の一部である第2の端842の変位を計測することでトルク設定値を検出する。
本変形例では、検出部の少なくとも一部がボディ54(図2参照)に収容されることにより、トルク検出装置付き回転工具を、実施形態1及び2のトルク検出装置付き回転工具1、1aよりもコンパクト化できる。
(実施形態3のその他の変形例)
以下に、実施形態3のその他の変形例を列挙する。以下の各変形例では、実施形態3の変形例2と同様に、検出部は、ばね84の少なくとも一部の変位を計測することでトルク設定値を検出する。
トルク検出装置の検出部は、複数の電気的な接点を含む構成であってもよい。複数の接点のうち少なくとも1つの接点は、ばね84の伸縮に応じて変位するように構成されていればよい。例えば、少なくとも1つの接点は、フランジ部862に取り付けられていればよい。そして、ばね84の長さが所定の長さ以上になると、ばね84の伸縮に応じて変位する接点が別の接点と接触するように構成されていればよい。この場合に、検出部は、これらの接点が接触しているか否か、すなわち、これらの接点を含む回路の通電の有無を検出することにより、ばね84の第2の端842の変位を検出すればよい。検出部の処理回路は、第2の端842の変位に基づいて、トルク設定値を算出すればよい。
また、検出部は、光電センサ、超音波センサ、誘導型近接センサ、静電容量型近接センサ又は磁気近接センサ等、検出対象との間の距離を測定するセンサであってもよい。これらのセンサが、ばね84の少なくとも一部(例えば、第2の端842)の変位を計測すればよい。
(実施形態3及び実施形態3の変形例のまとめ)
実施形態3で説明したように、回転工具5は、ばね84を更に備えることが好ましい。ばね84は、トルク設定値の変更に応じて伸縮する。検出部3は、ばね84のばね荷重を計測することでトルク設定値を検出することが好ましい。
上記の構成によれば、検出部3は、ばね84のばね荷重を計測するという簡素な手段でトルク設定値を検出することができる。
また、実施形態3に係るトルク検出装置2bにおいて、検出部3b(又は3c)は、感圧素子37(又は37c)を含む感圧センサであることが好ましい。感圧素子37(又は37c)は、ばね84の伸縮方向の少なくとも一端に配置されることが好ましい。
上記の構成によれば、検出部3b(又は3c)の構成を、感圧素子37(又は37c)がばね84の伸縮方向の少なくとも一端に配置されるという簡素な構成にすることができる。
また、実施形態3に係るトルク検出装置2bにおいて、回転工具5は、クラッチ機構8を更に備えることが好ましい。クラッチ機構8は、駆動源51から駆動軸53へトルクを伝達し、駆動軸53に加えられるトルクがトルク設定値に達したときに駆動源51から駆動軸53へのトルクの伝達を遮断する。ばね84は、クラッチ機構8に備えられるクラッチスプリングであることが好ましい。
上記の構成によれば、トルク設定値を検出するためのばね84としてクラッチスプリングを用いるので、トルク設定値を検出するためのばねをクラッチスプリングとは別に設ける場合と比較して、回転工具5の部品点数を減らすことができる。
また、実施形態3の変形例2で説明したように、回転工具5(又は5b)は、ばね84を更に備えることが好ましい。ばね84は、トルク設定値の変更に応じて伸縮する。検出部は、ばね84の少なくとも一部(例えば、第2の端842)の変位を計測することでトルク設定値を検出することが好ましい。
上記の構成によれば、検出部は、ばね84の少なくとも一部の変位を計測するという簡素な手段でトルク設定値を検出することができる。
上述した各実施形態は、変形例も含めて、適宜組み合わせて実現されてもよい。