JP6891491B2 - ポリエステル樹脂 - Google Patents
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Description
また、バイオマス資源由来ポリエステルの製造方法が開示されている(特許文献2)。ここでは、窒素や硫黄を精製により特定範囲とし、かつポリマー末端の酸価を制御することで加水分解性を改善したバイオマス資源由来ポリエステルが開示されているが、ポリマーのカラー、重合性、フレーバー性に問題がある。
即ち、本発明の要旨は、以下の通りである。
[1] ジカルボン酸成分及びジオール成分を構成単位とするポリエステル樹脂であって、該ジオール成分がバイオマス資源由来のジオールを含み、該バイオマス資源由来のジオールをガスクロマトグラフィーで分析した際に、リテンションタイムが14.4〜14.6分で検出される成分Aが1000ppm以下であることを特徴とするポリエステル樹脂。
[2] 前記バイオマス資源由来のジオール成分が、エチレングリコールである[1]に記載のポリエステル樹脂。
本発明の対象とするポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分およびジオール成分を構成単位とするポリエステル樹脂である。該ポリエステル樹脂は、モノマー由来の不純物や重縮合時に用いた触媒成分等を含むもので、純粋なポリエステルと言う化学物質のみからなるものではなく一種の組成物と考えられるが、不純物や触媒成分等は微量であることから、本発明においては「ポリエステル樹脂」と表す。
ジカルボン酸成分をモノマーとして用いる際、ジカルボン酸化合物のほか、ジカルボン酸の誘導体も使用可能である。ジカルボン酸の誘導体としては、ジカルボン酸の低級アルキルエステル、具体的には、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等が挙げられる。
ジカルボン酸成分及びジオール成分以外に、ヒドロキシカルボン酸成分やラクトン成分を共重合しても構わない。その使用量は、全モノマー成分に対して、30モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましく、10モル%以下がさらに好ましい。
バイオマス資源から得られたジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール,1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール,2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。このうち、工業的にも安定して生産されているエチレングリコールが好ましい。
本発明において、バイオマスエチレングリコールとはバイオマス資源のみから製造したエチレングリコールであり、後述の手法にて測定して得られたバイオ化率の値がおよそ100%のエチレングリコールのことを指す。ここで、バイオマス資源のみから製造した原料であっても、核実験などによる放射性炭素の人工的な導入や補正により、ちょうど100%を示すとは限らないため、実質的には、石油資源由来のエチレングリコールを含有しないものを、バイオマスエチレングリコールと記載する。
バイオマスエチレングリコールをガスクロマトグラフィーで分析した際のリテンションタイムが14.4〜14.6分で検出される成分Aの含有量の下限は、0ppmであることが好ましいが、コストを度外視した精製は非現実的である。成分Aの含有量の下限は、現実的には0.1ppmである。
ポリエステル樹脂の製造方法としては、例えば、エステル交換法、直接エステル化法などでジカルボン酸成分とジオール成分を反応させてプレポリマーとした後、減圧下250〜290℃で重縮合反応させる方法が挙げられる。この際にはエステル交換反応やエステル化反応の触媒、重縮合反応触媒を適宜用いることができる。
以上のように、予備結晶化を行ったポリエステルペレットを、続いて固相重合する。
本発明のポリエステル樹脂の極限粘度は、0.5〜1.5dl/gであることが好ましく、0.6〜1.2dl/gであることがより好ましい。
<評価方法>
(バイオマスエチレングリコール中の成分Aの分析方法)
ガスクロマトグラフィー/水素炎イオン化型検出器法による定量分析を行った。島津製作所製ガスクロマト分析装置「GC−2010Plus」にて、Agilent社製カラム「HP−INNOWAX(長さ30m、内径0.53mm、膜厚1.0μm)」を使用した。成分Aの定量は、1,4−ブタンジオール換算にて成分Aを定量した。つまり、1,4−ブタンジオールについて「GCピーク面積/溶液濃度(μg/mL)」の検量線をとっておき、成分Aのピーク面積からAの濃度(μg/mL)を算出した。測定時の条件は、注入口温度250℃、キャリアガスはヘリウム、カラム線速度40cm/sec、スプリット比5とした。またカラムオーブン温度は、50℃で2分間保持した後、毎分15℃で240℃まで昇温し、240℃で20分間保持した。さらに水素炎イオン化型検出器温度は250℃とした。このような条件において、リテンションタイムが14.4〜14.6分で検出された成分を、成分Aとした。標準1,4−ブタンジオールは1,4−ブタンジオールをメタノールで希釈し、エチレングリコールと同条件で分析した。
ポリエステル樹脂サンプル0.1gを精秤し、25mLのフェノール/テトラクロロエタン=3/2(質量比)の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
色差計(日本電色工業(株)製、ZE−2000)を用いて、ポリエステル樹脂のペレットの色差(L、a、b)を測定した。ペレットは測定セルに入れて反射法で測定した。
ポリエステル樹脂(極限粘度が[IV]i)を冷凍粉砕して20メッシュ以下の粉末にした。この粉末を130℃で12時間真空乾燥し、粉末300mgを内径約8mm、長さ約140mmのガラス試験管に入れ70℃で12時間真空乾燥した。次いで、シリカゲルを入れた乾燥管を試験管上部につけて乾燥した空気下で、230℃の塩バスに浸漬して15分間加熱した後の極限粘度[IV]f1を測定した。この結果を利用し、耐熱性の指標としてTOSを以下の式に従い算出した。ただし、[IV]iおよび[IV]f1はそれぞれ加熱試験前と加熱試験後のIV(dL/g)を指す。冷凍粉砕は、フリーザーミル(米国スペックス社製、6750型)を用いて行った。専用セルに約2gのポリエステル樹脂と専用のインパクターを入れた後、セルを装置にセットし液体窒素を装置に充填して約10分間保持し、次いでRATE10(インパクターが1秒間に約20回前後する)で5分間粉砕を行った。
TOS=0.245{[IV]f1 −1.47−[IV]i −1.47}
TOSの値が小さい程、耐熱性が高いと判断できる。
ヤマト科学製真空乾燥器DP61型を用いて、予め減圧乾燥したポリエステル樹脂チップを用い、成形中にチップの吸湿を防止するために、成形材料ホッパー内は乾燥不活性ガス(窒素ガス)パージを行った。
M−150C(DM)射出成形機による可塑化条件としては、フィードスクリュウ回転数:70%、スクリュウ回転数:120rpm、背圧:0.5MPa、金型温度:50℃、シリンダー温度はホッパー直下から順に45℃、250℃、以降ノズルを含め290℃に設定して段付き成形板を成形し、得られた成形板のうち3mm板を切り出した。この3mm板を70℃のイオン交換水に浸漬させ、その容器を密栓し、30分保持した。室温へ冷却し1ケ月間放置し、開栓後風味、臭い等の試験を行った。比較用のブランクとして、イオン交換水を使用した。官能試験は10人のパネラ−により次の基準により点数付けし、平均値で比較した。
2点:異味、臭いを感じない。1点:ブランクとの差を感じる。0点:ブランクとの非常に大きな差を感じる。
○:1.7点以上 △:1.0点以上1.7点未満 ×:1.0点未満
(バイオマスエチレングリコール精製例1)
バイオマスエチレングリコールは、イオン交換ポリマーやシリカゲル基材のODSカラム(オクタデシルシリル基を化学結合にて修飾したシリカゲル担体が充填されたカラム)にて精製することで、ガスクロマトグラフィー法でリテンションタイムが14.5分に検出される成分Aを効果的に低減させることが出来る。一般的な方法、すなわちサトウキビから発酵法を利用し糖類、さらにはエタノールを経て得られたバイオマスエチレングリコールは、ガスクロマトグラフィー法でリテンションタイムが14.5分に検出される成分Aが1325ppmであった。このバイオマスエチレングリコールを、イオン交換ポリマーで精製した後にシリカゲル基材のODSカラムで3回精製することで、成分Aが検出限界である0.1ppmのバイオマスエチレングリコールを得た。
サトウキビから発酵法を利用し糖類、さらにはエタノールを経て得られたバイオマスエチレングリコールを、シリカゲル基材のODSカラムで3回精製することで、ガスクロマトグラフィー法でリテンションタイムが14.5分に検出される成分Aが54ppmであるバイオマスエチレングリコールを得た。
サトウキビから発酵法を利用し糖類、さらにはエタノールを経て得られたバイオマスエチレングリコールを、シリカゲル基材のODSカラムで2回精製することで、ガスクロマトグラフィー法でリテンションタイムが14.5分に検出される成分Aが328ppmであるバイオマスエチレングリコールを得た。
サトウキビから発酵法を利用し糖類、さらにはエタノールを経て得られたバイオマスエチレングリコールを、シリカゲル基材のODSカラムで1回精製することで、ガスクロマトグラフィー法でリテンションタイムが14.5分に検出される成分Aが974ppmであるバイオマスエチレングリコールを得た。
撹拌機、蒸留塔、圧力調整器を備えたステンレス製オートクレーブにテレフタル酸、バイオマスエチレングリコール精製例1で得たバイオマスエチレングリコール、さらに触媒として、三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を、得られるポリエステルの質量に対しアンチモン原子として180ppmとなるよう加え、240℃、ゲージ圧3.5MPaで、エステル化で生成する水を逐次除去しながら2時間エステル化反応を行った。続いて、1時間で系の温度を280℃まで昇温して、この間に系の圧力を徐々に減じて150Paとし、この条件下でさらに1時間重縮合反応を行い、IV=0.63dl/gのポリエステル樹脂を得た。
バイオマスエチレングリコール精製例2で得たバイオマスエチレングリコールを原料として使用すること以外は実施例1と同様に反応を行い、IV=0.62dl/gのポリエステル樹脂を得た。
バイオマスエチレングリコール精製例3で得たバイオマスエチレングリコールを原料として使用すること以外は実施例1と同様に反応を行い、IV=0.63dl/gのポリエステル樹脂を得た。
バイオマスエチレングリコール精製例4で得たバイオマスエチレングリコールを原料として使用すること以外は実施例1と同様に反応を行い、IV=0.62dl/gのポリエステル樹脂を得た。
撹拌機、蒸留塔、圧力調整器を備えたステンレス製オートクレーブにテレフタル酸、ガスクロマトグラフィー法でリテンションタイムが14.5分に検出される成分Aの無い石油由来のエチレングリコールを原料として使用すること以外は、実施例1と同様に反応を行い、IV=0.63dl/gのポリエステル樹脂を得た。
サトウキビから発酵法を利用し糖類、さらにはエタノールを経て得られたバイオマスエチレングリコールで、ガスクロマトグラフィー法でリテンションタイムが14.5分に検出される成分Aが1325ppmであったバイオマスエチレングリコールをそのまま原料として使用すること以外は、実施例1と同様に反応を行い、IV=0.56dl/gのポリエステル樹脂を得た。
撹拌機、蒸留塔、圧力調整器を備えたステンレス製オートクレーブにテレフタル酸、バイオマスエチレングリコール精製例4で得たバイオマスエチレングリコールをジオール成分全体のうち80モル%、またガスクロマトグラフィー法でリテンションタイムが14.5分に検出される成分Aの無い石油由来のネオペンチルグリコールを、ジオール成分全体のうち20モル%となるように原料として添加した。さらに触媒として、三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を、得られるポリエステルの質量に対しアンチモン原子として180ppmとなるよう加え、240℃、ゲージ圧3.5MPaで、エステル化で生成する水を逐次除去しながら2時間エステル化反応を行った。続いて、1時間で系の温度を280℃まで昇温して、この間に系の圧力を徐々に減じて150Paとし、この条件下でさらに2時間重縮合反応を行い、IV=0.72dl/gのネオペンチルグリコール共重合ポリエステル樹脂を得た。
バイオマスエチレングリコールの代わりに、ガスクロマトグラフィー法でリテンションタイムが14.5分に検出される成分Aの無い石油由来のエチレングリコールを原料として使用すること以外は、実施例5と同様に反応を行い、IV=0.71dl/gのネオペンチルグリコール共重合ポリエステル樹脂を得た。
Claims (1)
- ジカルボン酸成分及びジオール成分を構成単位とするポリエステル樹脂の製造方法であって、
該ジカルボン酸成分はテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸、及びアントラセンジカルボン酸から選ばれる芳香族ジカルボン酸を全ジカルボン酸成分に対して50モル%以上含み、
該ジオール成分がバイオマス資源由来のジオールを全ジオール成分に対して50モル%以上含み、前記バイオマス資源由来のジオール成分が、発酵法を用いたエチレングリコールであって、該バイオマス資源由来のジオールをガスクロマトグラフィーで下記の条件にて分析した際に、リテンションタイムが14.4〜14.6分で検出される成分Aが1000ppm以下であり、
該ジオール成分をイオン交換ポリマーとシリカゲル基材のカラムで精製する方法、もしくはシリカゲル基材のカラムで精製する方法により得て、
該ジオール成分を用いることを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
ガスクロマトグラフィー(ガスクロマトグラフィー/水素炎イオン化型検出器法)の条件
Agilent社製カラム「HP−INNOWAX(長さ30m、内径0.53mm、膜厚1.0μm)」を使用し、注入口温度250℃、キャリアガスはヘリウム、カラム線速度40cm/sec、スプリット比5とする。カラムオーブン温度は、50℃で2分間保持した後、毎分15℃で240℃まで昇温し、240℃で20分間保持する。水素炎イオン化型検出器温度は250℃とする。
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