以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは抵抗値、容量値を表すものとする。
図2は、実施の形態に係る車両用灯具100を備える灯具システム1のブロック図である。灯具システム1は、バッテリ2、車両ECU4よび車両用灯具100を備える。車両用灯具100は、バッテリ2からの直流電圧(バッテリ電圧)VBATを受ける。またCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)等を介して、車両ECU4と接続される。
車両用灯具100は、点灯回路200、光源300、灯具ECU(Electronic Control Unit)400を備える。灯具ECU400は、車両ECU4と接続され、車両ECU4からの制御信号や情報にもとづいて点灯回路200を制御する。車両ECU4から灯具ECU400には、点消灯の指示の他、自車両や周囲の状況を示す情報が送信される。この情報には、前方車や歩行者の位置情報、車速などが含まれる。
灯具ECU400は、スイッチ402とプロセッサ404を含む。スイッチ402は、バッテリ2から点灯回路200への電源電圧の供給経路上に設けられる。プロセッサ404は、CPU(Central Processing Unit)あるいはマイコンであり、車両ECU4からの点消灯の指示にもとづいてスイッチ402を制御する。スイッチ402が車両側からの点灯指令に応じてオンとなると、点灯回路200に電源が供給される。またプロセッサ404は、車両ECU4からの情報にもとづいて、配光パターンを決定し、点灯回路200を制御する。
光源300は直列に接続された複数N個(N≧2)の発光素子302_1〜302_Nを含む。点灯回路200は、バイパス方式により光源300それぞれの点消灯を独立に制御可能に構成される。
点灯回路200は、図1の点灯回路200Rと同様に、定電流回路202、バイパス回路280、バイパスコントローラ290を備える。バイパス回路280およびバイパスコントローラ290については図1と同様である。なおバイパスコントローラ290の機能をプロセッサ404に実装してもよい。
定電流回路202は、スイッチングコンバータ210、第1電流検出手段212、第2電流検出手段214およびコンバータコントローラ500を備える。スイッチングコンバータ210は、降圧(Buck)コンバータ、昇圧(Boost)コンバータ、あるいは昇降圧Cukコンバータである。
コンバータコントローラ500は、ランプ電流ILAMPがその目標量IREFに近づくように、スイッチングコンバータ210を制御する。第1電流検出手段212は、スイッチングコンバータ210の出力側に設けられ、ランプ電流ILAMPを直接的に監視し、ランプ電流ILAMPに応じた第1検出信号VCS1を生成する。第1電流検出手段212は、図1におけるセンス抵抗RSと電流検出回路206の組み合わせであってもよい。
第2電流検出手段214は、第1電流検出手段212とは別に設けられており、第1電流検出手段212が動作不能となる全消灯状態において、ランプ電流ILAMPを示す第2検出信号VCS2を生成可能に構成される。第2電流検出手段214は、ランプ電流ILAMPと相関を有する電流あるいは電圧を監視することにより、ランプ電流ILAMPを間接的に監視するものと言える。第2電流検出手段214は、たとえばスイッチングコンバータ210の入力電流や、スイッチングコンバータ210のコイルに流れるコイル電流、スイッチングコンバータ210のスイッチング素子に流れる電流などであってもよい。
コンバータコントローラ500は、第1コントローラ510、第2コントローラ520、ドライバ回路530および判定回路540を備える。第1コントローラ510は、第1電流検出手段212が生成する第1検出信号VCS1にもとづいて第1制御パルスSCNT1を生成する。第1コントローラ510は、ランプ電流ILAMPが第1目標量IREF1に近づくように、第1制御パルスSCNT1のデューティ比、周波数、オン時間、オフ時間の少なくともひとつを制御する。
第1電流検出手段212をスイッチングコンバータ210の出力側に設ける場合、図1を参照して説明したように、光源300の全消灯状態において、第1電流検出手段212の電源電圧が不足し、第1検出信号VCS1とランプ電流ILAMPとの相関が失われ、第1コントローラ510が動作不能となる。
第2コントローラ520は、第1コントローラ510の動作不能状態において、ランプ電流ILAMPがゼロにならないように、第2制御パルスSCNT2を生成する。第2コントローラ520はフィードバックにより第2制御パルスSCNT2を生成することが好ましい。具体的には第2コントローラ520は、第2電流検出手段214が生成する第2検出信号VCS2にもとづいて、ランプ電流ILAMPが第2目標量IREF2に近づくように、第2制御パルスSCNT2のデューティ比、周波数、オン時間、オフ時間の少なくともひとつを制御する。
第2目標量IREF2は、第1目標量IREF1と同一であってもよいが、それより少ないことが好ましい。以下の説明では、IREF2<IREF1とする。
第1コントローラ510および第2コントローラ520の構成や、パルスの生成方式は特に限定されない。たとえば電圧モード、ピーク電流モード、平均電流モードのコントローラのアーキテクチャを採用してもよいし、リップル制御(ヒステリシス制御、ボトム検出・オン時間設定、アッパー検出・オフ時間設定)のアーキテクチャを採用してもよい。なお、光源300をバイパス方式で制御する場合、高速な応答性が求められることから、第1コントローラ510および第2コントローラ520は、リップル制御のコントローラであることが好ましい。なお、第2コントローラ520は、第1コントローラ510が正常動作している期間も動作し続けてもよい。
ドライバ回路530は、第1制御パルスSCNT1および第2制御パルスSCNT2にもとづいてスイッチングコンバータ210を駆動する。ドライバ回路530は、第1制御パルスSCNT1および第2制御パルスSCNT2の一方を選択して、ゲート駆動信号SGATEを生成してもよい。あるいはドライバ回路530は、第1制御パルスSCNT1および第2制御パルスSCNT2を合成して、ゲート駆動信号SGATEを生成してもよい。
以上が車両用灯具100の構成である。続いてその動作を説明する。
図3は、図2の車両用灯具100の動作波形図である。ここではN=3とする。期間T0では、すべてのバイパススイッチSWB1〜SWB3がオフであり、すべての発光素子302_1〜302_3が発光する。このときのスイッチングコンバータ210の出力電圧VOは3×VFとなる。VFは発光素子302の順電圧である。なおランプ電流ILAMPを直線で示しているが、実際にはリップルが含まれてもよい。
期間T1では、バイパススイッチSWB1がオンとなり発光素子302_1が消灯する。このときのスイッチングコンバータ210の出力電圧VOは2×VFとなる。期間T2では、バイパススイッチSWB1,SWB2がオンとなり発光素子302_1,302_2が消灯する。このときのスイッチングコンバータ210の出力電圧VOは1×VFとなる。
期間T0〜T2においては、第1電流検出手段212の電源電圧が、第1電流検出手段212の最低動作電圧VMINを超えており、第1電流検出手段212および第1コントローラ510が動作可能である。したがって、ランプ電流ILAMPは第1目標量IREF1に安定化される。
期間T3は、すべてのバイパススイッチSWB1〜SWB3がオンとなり、すべての発光素子302_1〜302_3が消灯する全消灯状態である。このときのスイッチングコンバータ210の出力電圧VOは実質的にゼロとなる。出力電圧VOがゼロになると、第1電流検出手段212の電源電圧が、最低動作電圧VMINを下回り、第1コントローラ510が動作不能となる。この状態では第2コントローラ520が有効となり、第2制御パルスSCNT2が生成される。第2制御パルスSCNT2によってスイッチングコンバータ210を駆動する結果、ランプ電流ILAMPは第2目標量IREF2に安定化される。
続く期間T4において、バイパススイッチSWB1がオフになると、出力電圧VOが1×VFとなり、第1電流検出手段212および第1コントローラ510が動作可能となる。その結果、スイッチングコンバータ210が第1制御パルスSCNT1によって駆動され、ランプ電流ILAMPが第1目標量IREF1に安定化される。
以上が車両用灯具100の動作である。
この車両用灯具100の動作は以下の比較技術との対比によって明確となる。比較技術では、全消灯状態T3において、スイッチングコンバータ210が完全に停止し、ランプ電流ILAMPがゼロとなる。通常、スイッチングコンバータ210が完全停止した後に、動作を再開させる際にはソフトスタート制御が行われるため、ランプ電流ILAMPがもとの目標電流に戻るまでには大きな遅延が発生する。
これに対して実施の形態に係る車両用灯具100によれば、全消灯状態T3においても、第2制御パルスSCNT2にもとづいてスイッチングコンバータ210のスイッチング動作を継続することができ、ランプ電流ILAMPを非ゼロに保っておくことができる。これにより、次に発光素子302を点灯する際には、ソフトスタート制御が不要となり、速やかに発光素子302を点灯させることができる。
また全消灯状態T3におけるランプ電流ILAMPは、発光素子302の発光には寄与せず、無駄に消費される。第2目標量IREF2を、第1目標量IREF1より低く設定することにより、バイパス回路280での消費電力を低下でき、ひいては発熱量を減らすことができる。このことは、バイパススイッチSWBとして、より熱容量の小さい小型で安価な部品を選定できることを意味する。
本発明は、図2のブロック図や回路図から把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、回路、方法に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や回路動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な実施例や変形例を説明する。
図4は、一実施例に係る点灯回路200Aのブロック図である。スイッチングコンバータ210は降圧コンバータであり、スイッチングトランジスタM1、インダクタL1、整流素子D1を含む。第1電流検出手段212は、ランプ電流ILAMPの経路上に設けられた第1センス抵抗RS1と、第1センス抵抗RS1の電圧降下を第1検出信号VCS1に変換する第1電流検出回路216を含む。
続いてコンバータコントローラ500Aの構成例を説明する。第1コントローラ510は、ヒステリシス制御のコントローラを含む。具体的には、第1目標量IREF1の近傍に、アッパーしきい値IUPPER1およびボトムしきい値IBOTTOM1が規定される。第1コントローラ510は、第1検出信号VCS1がアッパーしきい値IUPPER1に対応する電圧VUPPER1に達すると、第1制御パルスSCNT1をオフレベル(たとえばロー)に遷移させ、第1検出信号VCS1が、ボトムしきい値IBOTTOM1に対応する電圧VBOTTOM1まで低下すると、第1制御パルスSCNT1をオンレベル(たとえばハイ)に遷移させる。
第2電流検出手段214は、スイッチングコンバータ210の入力側に設けられ、スイッチングコンバータ210の入力電流IINを監視し、ランプ電流ILAMPに応じた第2検出信号VCS2を生成する。スイッチングトランジスタM1がオンの期間において、入力電流IINは、出力電流ILAMPと一致する。スイッチングトランジスタM1がオフの期間において、第2検出信号VCS2はランプ電流ILAMPと相関を有しない。
たとえば第2電流検出手段214は、入力電流IINの経路上に設けられた第2センス抵抗RS2と、第2センス抵抗RS2の電圧降下を第2検出信号VCS2に変換する第2電流検出回路218を含む。なお、第2センス抵抗RS2に代えて、スイッチングトランジスタM1のオン抵抗を利用してもよい。
第2電流検出回路218の電源電圧は、点灯回路200Aの入力電圧VINまたは入力電圧VINを安定化した内部電圧であってもよい。これにより、全消灯状態においても、第2電流検出回路218は動作を維持し続けることができる。
第2コントローラ520は、アッパー検出・オフ時間設定モードのコントローラであってもよい。具体的には、第2コントローラ520は、第2目標量IREF2にもとづいて、アッパーしきい値IUPPER2が規定される。第2コントローラ520は、第2検出信号VCS2が、アッパーしきい値IUPPER2に対応する電圧VUPPER2に達すると、第2制御パルスSCNT2をオフレベル(たとえばロー)に遷移させる。そして、とあるオフ時間TOFFが経過すると、第2制御パルスSCNT2をオンレベル(たとえばハイ)に遷移させる。オフ時間TOFFは、一定であってもよいし、調節可能であってもよい。アッパー検出・オフ時間設定方式によれば、スイッチングトランジスタM1のオフ期間における電流情報が不要であるため、第2検出信号VCS2にもとづいて第2制御パルスSCNT2を生成できる。
コンバータコントローラ500Aはさらに、判定回路540を含んでもよい。判定回路540は第1コントローラ510が動作可能な状態であるか否かを判定し、動作不能である場合には、判定信号DETをアサートして、第2コントローラ520を有効化する。
図5は、コンバータコントローラ500Aの具体的な構成例を示す図である。第1コントローラ510は、ヒステリシスコンパレータを含む。ヒステリシスコンパレータは、たとえば可変電圧源512とコンパレータ514を含む。可変電圧源512は、コンパレータ514の出力(第1制御パルスSCNT1)の状態に応じて、2つの電圧VUPPER1,VBOTTOM1の一方を出力する。コンパレータ514は、第1検出信号VCS1を、可変電圧源512の出力と比較し、第1制御パルスSCNT1を生成する。
第2コントローラ520は、コンパレータ522およびパルス生成部524を含む。コンパレータ522は、第2検出信号VCS2を、アッパーしきい値IUPPER2に応じた電圧VUPPER2と比較し、第2検出信号VCS2が電圧VUPPER2に達するとアサート(たとえばハイレベル)されるオフ信号OFFを生成する。パルス生成部524は、オフ信号のアサートに応答してオフレベルに遷移し、その後、オンレベルに遷移する第2制御パルスSCNT2を生成する。パルス生成部524はフリップフロップ526およびオフ時間タイマー528を含む。フリップフロップ526のリセット端子にはオフ信号SOFFが入力される。オフ時間タイマー528は、第2制御パルスSCNT2がオフレベルに遷移してから、オフ時間TOFFの経過後に、オン信号SONをアサートする。オン信号SONはフリップフロップ526のセット端子に入力される。なおフリップフロップ526の構成は図5のそれに限定されない。
判定回路540は、光源300の両端間電圧(負荷電圧VL)に応じた電圧を、所定のしきい値電圧VTHと比較するコンパレータ542を含んでもよい。判定回路540は、スイッチングコンバータ210の出力電圧VOをしきい値電圧VTHと比較してもよい。コンパレータ542が生成する判定信号DETは、全消灯状態においてアサート(ハイレベル)、点灯状態においてネゲート(ローレベル)である。しきい値電圧VTHを発光素子302の順電圧VFより小さく規定することで、Vo<VFとなったことを根拠として全消灯状態を検出できる。なお、このコンパレータ542を、短絡検出回路と兼用してもよい。言い換えれば、全消灯状態に加えて、点灯回路200の出力の短絡状態を、第1コントローラ510の動作不能として扱ってもよい。
第2コントローラ520を、アッパー検出・オフ時間設定モードのコントローラで構成した場合、第2コントローラ520を、第1コントローラ510が動作可能な期間において完全に停止させるのではなく、過電流保護回路として動作させてもよい。この場合、第2アッパーしきい値IUPPER2を、第1値ITH1と第2値ITH2で切替えればよい。具体的には、第1コントローラ510が動作不能な状態では、第2コントローラ520のアッパーしきい値IUPPER2を、第2目標量IREF2に応じた第1値ITH1に設定すればよい。また第1コントローラ510が動作可能な状態では、アッパーしきい値IUPPER2を、第1目標量IREF1より高い過電流しきい値IOCPに応じた第2値ITH2に設定すればよい。
具体的には、判定信号DETがアサートのとき、電圧源523が生成する電圧を、第2目標量IREF2に応じた第1レベルVREF2とし、判定信号DETがネゲートのとき、電圧源523が生成する電圧を、過電流しきい値IOCPに応じた第2レベルVOCPとすればよい。
図6は、第2コントローラ520の動作を説明する図である。少なくともひとつの発光素子302が点灯した状態(点灯状態という)では、判定信号DETがネゲートされている。時刻t0より前において第1コントローラ510が正常に動作しており、第1コントローラ510が生成する第1制御パルスSCNT1に応じて、スイッチングトランジスタM1が制御され、ランプ電流ILAMPが、第1目標量IREF1に応じたIUPPER1とIBOTTOM1の範囲に収まるように安定化される。第1コントローラ510が正常であるとき、第2コントローラ520はスイッチングトランジスタM1の制御に影響を及ぼさない。
時刻t0より前において、第2コントローラ520のアッパーしきい値IUPPER2の値は、過電流しきい値IOCP2に応じた第2値ITH2である。時刻t0に第1コントローラ510に異常が発生する。異常状態において、第2コントローラ520のアッパーしきい値IUPPER2の値が、第2目標量IREF2を規定する第1値ITH1に低下する。
時刻t1に、第2コントローラ520においてオフ信号SOFFがアサートされる。それからオフ時間TOFFの経過後の時刻t2にオン信号SONがアサートされ、第2制御パルスSCNT2およびゲート駆動信号SGATEがオンレベルとなり、スイッチングトランジスタM1がターンオンする。スイッチングトランジスタM1がターンオンすると、入力電流IINが増大し、第2検出信号VCS2が増大する。そして、IIN>IOCPとなると、言い換えると、VCS2>VOCPとなると、第2コントローラ520においてオフ信号SOFFがアサートされ、第2制御パルスSCNT2がオフレベルに遷移し、ゲート駆動信号SGATEがオフレベルとなり、スイッチングトランジスタM1がターンオフする。そして、オフ時間TOFFの経過後の時刻t4にオン信号SONがアサートされ、第2制御パルスSCNT2がオンレベルに遷移する。
続いて図4の点灯回路200Aと同じ機能を、市販のLEDドライバIC(Integrated Circuit)を利用して実装する実施例を説明する。ここでは、LEDドライバICとして米国TEXAS INSTRUMENTS社のLM3409等を例に説明する。
図7は、ドライバIC600の簡略化したブロック図である。ドライバIC600は、図4のドライバ回路530および第2コントローラ520および第2電流検出回路218が集積化されたものと把握できる。
ドライバIC600は、アッパー検出・オフ時間設定方式のコントローラを内蔵している。本実施例では、このドライバIC600に内蔵されるコントローラを、図4の第2コントローラ520(および過電流保護回路)として利用する。
ドライバIC600のPGATE端子は、スイッチングトランジスタM1のゲートと接続される。電流設定(IADJ)端子は、アッパー検出・オフ時間設定方式に使用されるピーク電流IUPPERを設定するための端子である。電流検出用のCSP端子とCSN端子は、第2センス抵抗RS2と接続される。CSP端子とCSN端子の間には、入力電流IINに比例した電圧VCS2が発生する。
レベルシフタ610は抵抗R21,R22およびV/I変換回路612を含む。V/I変換回路612は、IADJ端子に入力される電圧VIADJに比例した電流IADJを生成する。抵抗R21には、アッパーしきい値IUPPER2に相当する電圧降下IADJ×R21が発生し、その低電位側の一端には、VCSP−IADJ×R21が発生する。抵抗R22の電圧降下は実質的にゼロである。レベルシフタ610は、図5の第2電流検出回路218および電圧源523に対応する。
コンパレータ614は、図5のコンパレータ522に対応する。コンパレータ614は、2つの抵抗R21,R22それぞれの一端の電圧を比較し、オフ信号SOFFを生成する。つまりコンパレータ614は、VCSP−IADJ×R21とVCSP−RS2×IINを比較する。これはIADJ×R21とRS2×IINを比較していることと等価である。オフ信号SOFFは、IIN>IADJ×R21/RS2となるとアサートされる。
ドライバIC600のIADJ端子は、アッパーしきい値IUPPER2(およびIOCP)を設定するための設定ピンである。IADJ端子には、第1コントローラ510が動作可能であるとき、IOCPに対応するレベルを有し、第1コントローラ510が動作不能であるとき、IUPPER2に対応するレベルを有する電圧VIADJが入力される。
COFF端子には、オフ時間設定用のキャパシタが外付けされる。GND端子は接地される。VIN端子には入力電圧VINが供給される。
パルス発生器616は、ロジック回路620およびオフ時間タイマー回路622を含む。ロジック回路620は、コンパレータ614の出力SOFFがアサートされると、第2制御パルスSCNT2をオフレベルに遷移させ、オフ時間タイマー回路622にスタートトリガを与える。ロジック回路620は図5のフリップフロップ526に相当し、オフ時間タイマー回路622は、図6のオフ時間タイマー528に相当する。
オフ時間タイマー回路622はスタートトリガに応答して動作開始し、オフ時間TOFFの経過後に、オン信号SONをアサートする。その限りではないが、たとえばオフ時間タイマー回路622は、COFF端子と接地間に外付けのキャパシタCtmと並列に設けられたスイッチと、COFF端子の電圧VCOFFを所定の電圧VOFFと比較するコンパレータと、を含む。またCOFF端子には、抵抗Rtmを介して充電電圧VCが印加される。オフ時間タイマー回路622のスイッチは、VCOFF>VOFFとなるとターンオンし、キャパシタCtmを放電する。オフ時間は、キャパシタCtmの容量値、充電電圧VC、抵抗値Rtm応じて設定可能となっている。ロジック回路620は、オン信号SONのアサートに応答して第2制御パルスSCNT2をオンレベルに遷移させる。
ドライバ回路530の出力は、PGATE端子を介してスイッチングトランジスタM1のゲートと接続される。
ドライバIC600は、イネーブル(EN)端子を備え、イネーブル端子にハイレベルが入力されるとき、イネーブル状態となる。ドライバIC600は、イネーブル端子にローレベルが入力される間、ディセーブル状態となり、ゲート出力PGATEがローレベルに固定され、スイッチングトランジスタM1がオフとなる。
図8は、図7のドライバIC600を備える点灯回路200Bの回路図である。ドライバIC600のイネーブル端子に、第1コントローラ510が生成した第1制御パルスSCNT1が入力される。つまり第1制御パルスSCNT1に応じてドライバIC600全体が、オン、オフすることにより、PGATE端子には、第1制御パルスSCNT1に応じたゲート駆動信号SGATEが発生する。第1コントローラ510が動作不能となると、イネーブル端子ENはハイレベルに固定され、PGATE端子には、ドライバIC600の内部で生成される第2制御パルスSCNT2に応じたゲート駆動信号SGATEが発生する。
判定回路540は、光源300に供給される負荷電圧VLを、しきい値電圧VTHと比較し、判定信号DETを生成する。判定信号DETが点灯状態を示すとき、IADJ端子には、第1の電圧レベルが供給され、これにより、ドライバIC600の内部のアッパー電流が、IOCPに設定され、過電流保護機能が有効になる。判定信号DETが全消灯状態を示すとき、IADJ端子には、第2の電圧レベルが供給され、これにより、ドライバIC600の内部のアッパー電流が、IUPPER2に設定され、アッパー検出・オフ時間設定モードによって第2制御パルスSCNT2が生成される。すなわち第2コントローラ520が有効になる。なお、スイッチングコンバータ210と光源300の間には、リップル除去用のフィルタ270を挿入してもよい。
点灯回路200は、さまざまな車両用灯具100に搭載可能であるが、特にスキャン方式の灯具に好適に用いることができる。図9は、スキャン方式の車両用灯具の斜視図である。図9の車両用灯具100は、走行シーンに応じて、複数の配光モードが選択可能である。
車両用灯具100は、主として、光源部110、スキャン光学系120、投影光学系130および上述の点灯回路200を備える。光源部110は、複数の発光ユニット112を含む。光源部110、発光ユニット112は、図2の光源300、発光素子302に対応する。複数の発光ユニット112は、コネクタ114を介して図示しない点灯回路200と接続される。発光ユニット112は、LED(発光ダイオード)やLD(半導体レーザ)などの半導体光源を含む。ひとつの発光ユニット112は、輝度および点消灯の制御の最小単位を構成している。ひとつの発光ユニット112は、ひとつのLEDチップ(LDチップ)であってもよいし、直列および/または並列に接続された複数のLEDチップ(LDチップ)を含んでもよい。
スキャン光学系120は光源部110の出射光L1を受け、所定の周期運動を繰り返すことによりその反射光L2を車両前方で横方向(図中、H方向)に走査する。投影光学系130は、スキャン光学系120の反射光L2を車両前方の仮想スクリーン10上に投影する。投影光学系130は反射光学系、透過光学系、それらの組み合わせで構成することができる。
具体的にはスキャン光学系120は、リフレクタ122およびモータ124を備える。リフレクタ122は、モータ124のロータに取り付けられており、回転運動を行なう。本実施の形態においてリフレクタ122は2枚設けられており、モータ124の1回転で、出射光L2は2回、走査される。したがって走査周波数は、モータの回転数の2倍となる。なおリフレクタ122の枚数は特に限定されない。
ある時刻t0において光源部110の出射光L1は、リフレクタ122の位置(ロータの回転角)に応じた角度で反射され、そのときの反射光L2は、車両前方の仮想スクリーン10上に、ひとつの照射領域12を形成する。図1では説明の簡素化のため、照射領域12を矩形で示すが、後述のように照射領域12は矩形とは限らない。
別の時刻t1においてリフレクタ122の位置が変化すると、反射角が変化し、そのときの反射光L2’は、照射領域12’を形成する。さらに別の時刻t2においてリフレクタ122の位置が変化すると反射角が変化し、そのときの反射光L2”は、照射領域12”を形成する。
スキャン光学系120を高速に回転させることにより、照射領域12が仮想スクリーン10上を走査し、これにより車両前方に配光パターンが形成される。
図10(a)〜(d)は、配光パターンの形成を説明する図である。図10(a)には、光源部110における複数の発光ユニット112のレイアウトが示される。本実施の形態において複数の発光ユニット112の個数は9である。
複数の発光ユニット112は高さ方向に2段以上で、この例では3段で配置され、最下段の発光ユニット112の個数が最も多くなっている。これにより、仮想スクリーン上のH線の近傍に、照度の高い領域を形成できる。
本実施の形態に係る車両用灯具100は、スキャンによる配光と、非スキャンによる配光の重ね合わせにより、配光パターンを形成する。光源部110は、スキャン用の複数の発光ユニット112_1〜112_9に加えて、非走査で車両前方を広く照射するための少なくともひとつの発光ユニット113_1,113_2を備える。発光ユニット113_1,113_2の出射光は、スキャン光学系120とは異なる光学系(不図示)を経由して、仮想スクリーン10に照射される。
図10(b)は、リフレクタ122が所定の位置にあるときに、各発光ユニット112、113の出射光が仮想スクリーン10上に形成する照射スポットを示す図である。
スキャン用の発光ユニット112が形成する照射スポットを集光スポットScと称する。Sciは、i番目(1≦i≦9)の発光ユニット112_iが形成する集光スポットを表す。図10(b)の複数の集光スポットSc1〜Sc9の集合が、図1の照射領域12に相当する。
また、拡散用の発光ユニット113が仮想スクリーン10上に形成する照射スポットを、拡散スポットSdと称する。Sdiは、i番目の発光ユニット113_iが形成する集光スポットを表す。拡散スポットSdはリフレクタ122の回転とは無関係である。拡散スポットSd1,Sd2の集合を、拡散領域14と称する。
図10(b)には右側灯具による照射スポットSc,Sdのみが示される。右側灯具と左側灯具を左右対称に構成した場合、図10(b)の照射スポットをV線で左右反転したものが、左側灯具によって形成される。
図10(c)には、リフレクタ122を回転させたときに、各集光スポットScが通過する領域(スキャン領域と称する)SRが示される。SRiは、i番目の集光スポットSciが通過する領域を示す。スキャン領域SR1〜SR9の集合、言い換えれば照射領域12が走査される領域を集光領域15と称する。集光領域15は拡散領域14とオーバーラップしている。
図10(d)には、最下段の発光ユニット112_1〜112_5が形成するH線近傍の配光パターンの水平方向の照度分布が示される。
実際に形成される配光パターンは、右側灯具の配光パターンと左側灯具の配光パターンの重ね合わせとなる。この例では、右側灯具の集光領域15と、左側灯具の集光領域15は実質的にオーバーラップしている。また右側灯具の拡散領域14は主としてV線より右側を照射し、左側灯具の拡散領域14(不図示)が主としてV線より左を照射することとなる。
このように、スキャン用の複数の発光ユニット112_1〜112_9は、それぞれの出射光が仮想スクリーン上で異なる箇所を照射するように配置される。図10(a)に示すように、複数の発光ユニット112をU字型に配置するとよい。U字型(あるいは図10のE字型)に配置することにより、1段目、2段目、3段目の集光領域の右端および左端を揃えることができる。
複数の発光ユニット112とチャンネルの対応関係はたとえば以下の通りである。
第1チャンネルCH1=発光ユニット112_1,112_2
第2チャンネルCH2=発光ユニット112_3
第3チャンネルCH3=発光ユニット112_4,112_5
第4チャンネルCH4=発光ユニット112_6,112_7
第5チャンネルCH5=発光ユニット112_8,112_9
拡散領域用の発光ユニット113_1、113_2は、第6チャンネルCH6となる。
複数の発光ユニット112は高さ方向に3段に配置されており、同じ高さを照射する発光ユニット112は、同一量の駆動電流が供給されるように、同一チャンネルに分類される。同一チャンネルに含まれる複数の発光ユニット112は、ひとつの光源300を形成するように直列に接続される。
このようなスキャン方式の灯具では、同一チャンネルの複数の発光ユニット112が同時に消灯する全消灯状態が、走査周期で間欠的に発生しうる。したがって上述の点灯回路200によって駆動することにより、消費電力を抑制できる。
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
(第1変形例)
複数の発光素子302の点灯、消灯は、バイパスコントローラ290によって制御される。したがってバイパスコントローラ290は、いつ全消灯状態が発生するかを知っている。そこで判定回路540は、バイパスコントローラ290からの情報にもとづいて全消灯状態か点灯状態かを判定してもよい。あるいは判定回路540の機能を、バイパスコントローラ290に実装してもよい。
(第2変形例)
実施例では、スイッチングコンバータ210を降圧コンバータとしたが、昇圧コンバータや昇降圧コンバータであってもよい。
(第3変形例)
実施の形態では、第2コントローラ520が第2電流検出手段214からの第2検出信号VCS2にもとづいて第2制御パルスSCNT2を生成することとしたが、その限りではない。第2コントローラ520は、完全にオープンループで、第2制御パルスSCNT2を生成してもよい。この場合、ランプ電流ILAMPが安定するレベルは、入力電圧に依存することとなるが、第2コントローラ520を簡素化できる。たとえば第2コントローラ520を、オシレータで構成してもよい。
(第4変形例)
実施の形態では、第1コントローラ510の動作不能状態を、全消灯状態として説明したが、本発明の適用はそれに限定されない。バイパス方式以外の点灯回路においても、たとえばコンバータの出力が短絡(地絡)すると、第1コントローラ510が動作不能に陥る。第2コントローラ520を設けることにより、地絡状態でもスイッチングコンバータ210のスイッチング動作を維持できる。地絡が一時的なものであった場合、地絡の原因が除去された後、速やかに光源300の輝度を高めることができる。第2目標量IREF2を小さく設定しておけば、地絡経路に流れる電流も低減できる。
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。