JP6889473B2 - 着色材料の配合量の算出方法 - Google Patents

着色材料の配合量の算出方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6889473B2
JP6889473B2 JP2017090362A JP2017090362A JP6889473B2 JP 6889473 B2 JP6889473 B2 JP 6889473B2 JP 2017090362 A JP2017090362 A JP 2017090362A JP 2017090362 A JP2017090362 A JP 2017090362A JP 6889473 B2 JP6889473 B2 JP 6889473B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
numerical data
color
data
spectral
coloring
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017090362A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018191073A (ja
Inventor
三浦 仁志
仁志 三浦
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tokai Optical Co Ltd
Original Assignee
Tokai Optical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tokai Optical Co Ltd filed Critical Tokai Optical Co Ltd
Priority to JP2017090362A priority Critical patent/JP6889473B2/ja
Publication of JP2018191073A publication Critical patent/JP2018191073A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6889473B2 publication Critical patent/JP6889473B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Spectrometry And Color Measurement (AREA)
  • Image Processing (AREA)
  • Facsimile Image Signal Circuits (AREA)
  • Color Image Communication Systems (AREA)

Description

本発明は、複数の着色材料を使用して見本の色に合わせて物品に着色を施して人が見本と同じ色であると認識できる再現色を調整するための着色材料の配合量の算出方法に関するものである。
例えば、多くのカラーバリエーションを持つ物品(工業製品)では、その物品の製造コストが高ければ在庫を持つことは効率が悪いため、注文に応じてその都度彩色を施すことが合理的である。彩色を施す場合には注文に応じた見本を参照し、複数の異なる着色材料を混ぜ合わせたりあるいは重ね合わせることで物品に彩色を施してその見本と同じ色となるように(つまり同一性のあるように)再現色を調整することとなる。
しかし、実際には見本と同一性のある再現色を調整することは難しい。その理由としては、例えば、見本の素材と実際に製造する物品との素材の違いがあること、新しいカラーの種類ができたり、染料の種類が変わったりすること、見本がどのような染料や素材を用いているのかまったく不明であること、等が挙げられる。
そのため、見本の色に合わせて物品に着色を施すことを簡単に行う技術が求められていた。
特開2016−225940号公報
そのような技術の一例として特許文献1を挙げる。特許文献1は色推定システムや色推定方法に関する技術である。特許文献1では、濃度階調出現率テーブルをもとに原色インキCMYの量を決定している。網点を構成する各濃度階調の濃度階調領域の面積の比率)から分光反射率R'(s,λ)を算出する。そして、算出された算出分光反射率R'(s,λ)の各々と、測定分光反射率Rs(λ)との平均二乗誤差RMSEを、指令網点面積率毎に所定の波長範囲において求める。そして、濃度階調出現率算出部は、算出分光反射率R'(s,λ)と測定分光反射率Rs(λ)との平均二乗誤差(RMSE)が最も小さくなる濃度階調領域の各々の出現率を求めるものである。
しかしながら、分光反射率パターンを似せても、観察条件の不安定さがあるため、必ずしも同じ色に見えるとは限らないものである。「観察条件の不安定さ」とは、例えば人間が対象物に相対して観察するため、眼と対象物と照明の位置関係が毎回変動すること。見本物体と目的物体の配置(どちらを右側に置いて見るか)。光源となるランプの劣化に伴う分光強度の経時的な変化。色の見え方(感じ方)が人によって微妙に異なること等である。
また、観察条件の不安定だけではなく、そもそも色を写像する場合には非線形性が大きいことも挙げられる。
例えば、眼鏡レンズを例に取ると、眼鏡レンズにおける規格化された見本カラーレンズは、例えば数十種類から、百種類以上もある。それらのカラーを適当な色空間、例えばCIE1976 (L*、a*、b*) 色空間に配置することで、各カラーのL*a*b*座標からRYB設定量を得るための近似関数を作ることができる。例えば、見本カラー注文の見本レンズの分光透過率を測定し、その結果をもとにL*a*b*座標を求め、さらに近似関数によってRYB設定量を算出する方法が考えられる。
しかし、実際にその方法では、見本レンズと加工レンズの見た目の色を一致させることはできない。色空間の領域によってL*a*b*座標からRYB設定量を写像する近似関数が大きく異なるためである(非線形性が大きいためである)。この場合に、十分に有用な近似関数を得るためには、極めて膨大な数のデータが必要になる。さらに上記した観察条件の不安定性があるので、バラツキを含むデータをもとにするので、非常に多くのデータが必要となる。
これらのような課題から、観察条件の不安定さや写像の非線形性という条件があったとしても、見本の色に合わせて物品に着色を施すことを簡単に行うことができる技術が求められていた。
上記課題を解決するために手段1では、所定の照明環境で人が目視によって観察したときに見本物体と同じ色に見えるように複数の着色材料を配合して目的物体を色付けする際の前記着色材料の配合量を算出するためのコンピュータで実行される算出方法であって、ある1つの前記見本物体を測色することで得られる第1の分光数値データと、前記目的物体を前記ある1つの前記見本物体と同じ色に見えるように前記複数の着色材料を配合して色付けした際の前記複数の着色材料の配合量のデータ(以下、第1の配合数値データ)とを含む数値データを1セットとして、複数の前記見本物体と対応する複数の前記目的物体について第1の分光数値データと第1の配合数値データの複数のセットを取得し、得られた第1の分光数値データと第1の配合数値データの複数のセットに基づいて分光数値データと配合数値データの近似関数を最適化計算によって作成し、得られた前記近似関数に新たな前記見本物体を測色することで得られる第1の分光数値データを適用することで新たな前記見本物体と同じ色に見える新たな前記目的物体のための前記着色材料の配合量のデータを算出するようにした。
このような構成においては、見本物体を測色した複数の第1の分光数値データと見本物体の色を目標として着色した際の第1の配合数値データのセットに基づいて分光数値データと配合数値データの近似関数を最適化する計算によって作成することによって、新たな見本物体と同等といえる色の目的物体を着色する際に、この近似関数に新たな見本物体を測色した第1の分光数値データを適用することで、そのための着色材料の配合量のデータを正確かつ簡単に算出することができる。
このような手法であれば、物体を目視する際の照明光源が多種類であっても、あるいは反射率や透過率が角度によって変わる影響で色の見え方が変わったとしても、着色材料の配合量のデータは妥当なものとなる。
手段1における「第1の分光数値データと第1の配合数値データの複数のセットに基づいて分光数値データと配合数値データの近似関数を最適化計算によって作成」することをわかりやすく模式化すると図4における左上Aからのデータセットによる最適化に相当する。
ここに、「近似関数」とは、本発明では着色材料の配合量を算出するために必要な精度を持った関数であって、新たなデータ又はデータセットを適用して最適化する計算をすることで精度を上げることができる。近似関数は例えば機械学習、特に深層学習により得られる非線形的な計算手段を含んでいる。
「第1の分光数値データと第1の配合数値データ」のセットは、複数セットが必要である。この発明は近似関数を最適化するための計算を行うために複数の見本物体の色を前提としているためである。見本物体は多いほど計算上精度が増す。
実際に目的物体をある1つの見本物体と同じ色に見えるように着色する場合においては、過去に同じ見本を着色した経緯があれば過去の配合量のデータを使用することができるが、まったく過去にデータがない場合や、材質も使用した着色材料の種類も不明な場合等では、目的物体を見本物体と同じ色に見えるように着色することはなかなか困難である。最適化計算の初期段階では精度を上げるために、そのような場合には見本物体と同じ色に見えるものを得るまで(つまり、第1の配合数値データを取得できるまで)何度も着色を繰り返すことも必要となる。見本物体と同じ色に見えない目的物体を得た場合には、手段2〜5において最適化の計算に使用することが可能である。
ここに「見本物体」とは製品の発注者と受注者が同一物(またはその複製)として参照するサンプルをいう。「見本物体の色」が必ずしも実際の製品に着色されているとは限らない。単に色見本である場合もある。見本物体の色は毎回異なり、過去に使用した見本物体であってもよい。
また「目的物体」は、基本的に「見本物体」と同じ色になるように着色したものであり、透明であっても非透明であってもよい。また、手段2のように「見本物体」と同じ色にならない場合であっても近似関数を最適化する計算に使用することができる。
また「複数の着色材料を配合して目的物体を色付け」する際の前提条件として複数の着色材料のそれぞれの配合量がデータとして把握できる必要がある。つまり、複数の着色材料は数値化できなければならない。複数の着色材料は複数であればいくつであってもよい。見本物品と同じ着色材料でもよく、異なる着色材料であってもよい。
発明に使用される「コンピュータ」はCPU(中央処理装置)及びROMやRAM等の周辺装置によって構成される。CPUは各種プログラムやオペレータの操作に従って入力装置(例えば、キーボードや、マウス)からのデータ入力に基づいて計算を行う。
また、手段2では、前記目的物体に色付けをし、その色付けをした前記目的物体を測色することで得られる第2の分光数値データと、前記目的物体を色付けした際の第2の配合数値データとを含む数値データを1セットとして、このセットを更に前記近似関数を最適化する計算に用いるようにした。
手段1では「見本物体を測色した複数の第1の分光数値データと見本物体の色を目標として着色した際の第1の配合数値データのセット」を複数セット取得することで分光数値データと配合数値データの近似関数を最適化計算によって算出するようにしていたが、手段2では、「色付けした目的物体を測色した複数の第2の分光数値データとその色付けした目的物体を着色した際の第2の配合数値データのセット」を手段1の近似関数の最適化計算のために手段1のセットに追加して加えるというものである。このようなセットのデータを加えることで、データ数が増えて近似関数を最適化する計算に貢献し、近似関数の精度が増すこととなる。「色付けした目的物体」は「見本物体」と同じ色であってもよく、違う色であってもよい。
手段2における最適化計算をわかりやすく模式化すると図4における左下Bからのデータセットによる最適化に相当する。
また、手段3では、第1の色付け処理で、ある1つの前記見本物体と同じ色に見えるように色付けしたにも関わらず前記目的物体の色が前記ある1つの前記見本物体と同じ色には見えないとき、第2の色付け処理として、前記ある1つの前記見本物体と同じ色に見えるように追加的に色付けしその追加的な色付けをした前記目的物体を測定することで第3の分光数値データを得、前記近似関数に前記第3の分光数値データを適用することで追加的に色付けした前記見本物体と同じ色に見える新たな前記目的物体のための前記着色材料の配合量のデータ(以下、第3の配合数値データ)量を算出し、前記ある1つの前記見本物体を測色することで得られる前記第1の分光数値データと前記第3の配合数値データとを含む数値データをセットとして、このセットを更に前記近似関数を最適化する計算に用いるようにした。
第1の色付け処理と第2の色付け処理では着色材料の配合量が別個独立であって、このように2つの処理を行うことで、追加的に色付けした目的物体を測色して第3の分光数値データを得ることはできるが、第1の色付け処理と第2の色付け処理の処理方法が異なる場合では色付けに使用したトータルの配合数値データを得ることはできない。
しかし、このように追加的に着色した目的物体を測色して得た第3の分光数値データを近似関数に入力した場合に出力される配合量と、見本物体を測色して得た第1の分光数値データを近似関数に入力した場合に出力される配合量は近似しているものである。そのため、この段階で第3の分光数値データを現段階で最適化して得ている近似関数に適用することで第3の配合数値データを算出し、第1の分光数値データとこの第3の配合数値データをセットとして、更に前記近似関数を最適化する計算に用いるようにして近似関数の精度を上げることができる。
手段3における最適化計算をわかりやすく模式化すると図4における右下Cからのデータセットによる最適化に相当する。
手段3は、例えば見本物体と同じ色に見えるように着色してみたところ、見本物体と同じ色に見えない目的物体を得てしまった場合に活用できる手法である。
ここに、第1の色付け処理とは例えば後述する手段11ではドライ染色が相当し、ウェット染色が第2の色付け処理に相当する。
また、手段4では、前記近似関数に前記ある1つの前記見本物体を測色することで得られる前記第1の分光数値データを適用することで新たな前記見本物体と同じ色に見える新たな前記目的物体のための前記着色材料の配合量のデータ(以下、第4の配合数値データ)量を算出し、前記第3の分光数値データと前記第4の配合数値データをセットとして、前記近似関数を最適化する計算に用いるようにした。
また、手段5では、第1の色付け処理で、ある1つの前記見本物体と同じ色に見えるように色付けしたにも関わらず前記目的物体の色が前記ある1つの前記見本物体と同じ色には見えないとき、第2の色付け処理として、前記ある1つの前記見本物体と同じ色に見えるように追加的に色付けしその追加的な色付けをした前記目的物体を測色することで第3の分光数値データを得、前記近似関数に前記ある1つの前記見本物体を測色することで得られる前記第1の分光数値データを適用することで新たな前記見本物体と同じ色に見える新たな前記目的物体のための前記着色材料の配合量のデータ(以下、第4の配合数値データ)量を算出し、前記第3の分光数値データと前記第4の配合数値データをセットとして、前記近似関数を最適化する計算に用いるようにした。
追加的に着色した目的物体を測色して得た第3の分光数値データを近似関数に入力した場合に出力される配合量と、見本物体を測色して得た第1の分光数値データを近似関数に入力した場合に出力される配合量は近似しているものである。そのため手段4及び手段5において、第1の分光数値データを現段階で最適化して得ている近似関数に適用することで、第4の配合数値データを算出し、第3の分光数値データとこの第4の配合数値データをセットとして、更に前記近似関数を最適化する計算に用いるようにして近似関数の精度を上げることができる。
手段4又は5における最適化計算をわかりやすく模式化すると図4における右上Dからのデータセットによる最適化に相当する。
また、手段6では、前記第3の分光数値データは分光透過率データ又は分光反射率データであるようにした。
また、手段7では、前記第1又は第2の分光数値データは分光透過率データ又は分光反射率データであるようにした。
第1〜第3の分光数値データとして分光透過率データ又は分光反射率データを使用することは正確な分光数値データの取得手段として望ましい。
また、手段8では、数値データとして分光数値データ以外の前記見本物体の数値データを用いるようにした。
上記第1〜第3の分光数値データ以外の前記見本物体の数値データを用いることで近似関数の精度を上げることができるからである。例えば、基材の種類などのカテゴリデータやレンズであればレンズの度数等の数値データである。
また、手段9では、前記近似関数は、機械学習により得られる非線形的な計算手段を含むようにした。
機械学習の推定アルゴリズムは、線形回帰、ボルツマンマシン、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、ベイジアンネットワークを用いた統計的推定、強化学習、深層学習の内の1つまたは複数を含む。
機械学習とは、学習用データセットを使ってコンピュータプログラムを訓練した後に、未知の例について正確に判断できるようにすることである。本発明においてはコンピュータに分光数値データ(加えて、基材の種類などのカテゴリデータやレンズの度数等の)その他の数値データ)を近似関数に入力したときに出力される値が配合数値データに近づくよう機械学習をさせるようにすることがよい。
機械学習により得られる非線形写像を用いて近似関数を更新していくことが可能となる。機械学習では第1の分光数値データと第1の配合数値データのデータセット又は/及び第2の分光数値データと第2の配合数値データのデータセットによる教師あり学習によって近似関数を収束させることができ、更に手段3〜5のように第1の分光数値データと第3の配合数値データのデータセット又は/及び第3の分光数値データと前記第4の配合数値データのデータセット(これらは完全な教師あり学習ではなく、一部のみ教師ありの半教師あり学習となる)を組み合わせることによって、さらに好ましい推定値に収束させることができる。
また、手段10では、近似関数としてニューラルネットワークを用いるようにした。
ニューラルネットワークとは、脳機能に見られるいくつかの特性を計算機上のシミュレーションによって表現することを目指した数学モデルである。てニューラルネットワークは機械学習の一種である。ニューラルネットワークとしては3層以上のニューロンを重ねるディープニューラルネットワーク(以下、DNN)がよりよい。ニューラルネットワークを最適化する計算には誤差逆伝播法を用いることがよい。以下の実施の形態ではDNNを一例とした。
また、手段11では、前記見本物体及び前記目的物体は透明体であり、染料を染みこませて色付けするようにした。
また、手段12では、前記見本物体及び前記目的物体は眼鏡用レンズであるようにした。
特に眼鏡用レンズでは、次のような課題があるため、本発明を適用することが非常に適している。
眼鏡レンズを色付けして納品する「カラー注文」には、規格カラー注文と見本カラー注文がある。以後これらに対応する染色加工のことをそれぞれ規格染色・見本染色と呼ぶ。各種の規格カラーを表す見本レンズを眼鏡店とレンズメーカーが所持し、各カラーを表す名前または番号を用いて受発注を行い、製造時はメーカー側が、納品後は眼鏡店側がそれぞれの所持する見本レンズと色を比較する。これに対して見本染色用の見本レンズは、毎回異なるものが眼鏡店側から提示される。
規格染色のドライ染色条件を数値的に設定することは比較的容易である。ドライ染色後のレンズの色を所定の照明環境で見本と比較観察して、同じ色に見えるようにRYBの各設定量を定めれば良い。これは設定量を変えながら何回も加工を繰り返すことで、カラーごとの条件を決定することができる。ただし、レンズ基材の種類は屈折率別などで複数種類を扱うので、それぞれの基材に対応する条件を定めなくてはならない。だから「見本レンズがどこかのメーカーで加工されたのだから、それを作った条件で加工すれば良い」ということではない。また、レンズの厚さや色の付きやすさは度数や厚さによって少しずつ異なるので、それらに対応した条件を決定することは難しい。そのため、標準的なレンズ(たとえば度数の無いレンズ)で定めた条件をすべての度数のレンズに適用するなどして、妥協している。見本染色に関してこのようなことを行うと、受注するごとに何枚もレンズを無駄にすることになる。
一方、ウェット染色は再現性に劣るので、加工条件を数値で確定することは難しい。また、染色液を一定温度で維持する設備のコストがかかる。加工枚数が少なければ、1枚あたりコストが高くなる。加工枚数が多ければ、同じカラーのレンズを多く加工するのであればドライ染色のほうが有利になる。しかし、規格染色において加工したレンズの色の仕上がり具合が悪い場合などは、さらにウェット染色を追加で行って色を整える。これを調色という。
このような状況から、眼鏡店から提示される毎回カラーが異なる見本レンズに関して、そのドライ染色条件を簡単に決定する方法が望まれていた。しかし、上記のように観察条件の不安定さがあることや、写像の非線形性が大きいこと等からドライ染色条件を簡単に決定することは困難であった。更に、レンズでは入力データとしてL*a*b*座標または分光透過率データだけでなく、レンズの度数や厚さを含める必要がある。
本発明を眼鏡用レンズに適用すれば、基材・度数・厚さ・ハーフカラー(ハーフカラーについては後述する)などの多様な条件に対応し、近似関数に求められる非線形性にも対応し、観察条件の不安定性に由来するデータのバラツキを統計的に処理することで、見本レンズを測色したデータに基づいて最適なドライ染色条件を算出することができる。
また、この発明を眼鏡用レンズに適用すれば、規格カラーの条件を決定することもできる。カラーの規格が一斉に変わるときは、新しい見本レンズのセットに切り替えるが、その新しい見本レンズと同じ色に見えるようなレンズを加工するための近似関数は、見本染色の加工を行ううちに高い精度レベルで最適化されるからである。
ここに、「ドライ染色」とは、所定の用紙に染料をインックジェットでプリントし、用紙をレンズに近接させた状態で保持して電気炉に入れて熱することで、染料をレンズに付着させて、基材中に侵入させる色付け方法である。「ウェット染色」とは溶媒に染料を溶かしこんだ液体に透明な目的物体を浸漬して染料を染みこませる方法である。
また、手段13では、前記見本物体及び前記目的物体は非透明体であり、表面に色素を付着させて色付けするようにした。
これは、例えば、物体表面に印刷するようなケースである。物体表面が白いことがよいが、色素を付着させることができれば必ずしも白くなくともよい。
本発明では、観察条件の不安定さや写像の非線形性があっても、正確かつ簡単に見本の色に合わせて物品に着色を施すことができる。
横軸を波長、縦軸を透過率×100%とした分光透過率のグラフ。 実施の形態におけるDNNの学習手法における入力層から複数の隠れ層を経て出力されるまでのネットワーク状態を説明する模式図。 他の実施の形態におけるDNNの学習手法における入力層から複数の隠れ層を経て出力されるまでのネットワーク状態を説明する模式図。 本発明における近似関数の最適化の概要を説明する模式図。 近似関数の計算に使用する入力値データの一例のグラフ。 近似関数の計算に使用する入力値データの一例のグラフ。 近似関数の計算に使用する入力値データの一例のグラフ。 近似関数の計算に使用する入力値データの一例のグラフ。
以下、図面に基づいて本発明の具体的な実施の形態の説明をする。
本実施の形態では、眼鏡店を通じてユーザーが選択した見本レンズをレンズメーカーに送付し、レンズメーカーにてこの見本レンズと同じ色になるようにドライ染色する場合のドライ染色用のR(赤)Y(黄)B(青)の三色の配合量を算出するものとする。レンズ情報としてはその他、基材の種類や処方等が提供されるものとする。近似関数としてDNNを用いる。
1.着色材料の配合量の算出について
DNNでは入力値を設定し、それに重みを乗じてノード(ニューロン)の値を算出し、最終段階でRYBの配合量を出力値として得る。出力値が適切になるように近似関数を最適化する点については後述する。まず、ここで使用する入力値の種類について説明する。入力値の一般形を次の数1のように表示する。 この一般形では入力の順序を表すkを下に添えて表す。本実施の形態では4種類41個の入力値を設定するが、これらは適宜変更可能である。
Figure 0006889473
1)見本レンズの分光透過率
例えば測定装置である分光透過率計を使用して分光透過率を測定することができる。図1は、横軸を波長、縦軸を透過率×100%としたカラーレンズの分光透過率の一例である。この図1ではa.見本レンズを測定した測色データ、b.見本レンズと同じ色に見えるようにドライ染色した新たなレンズを測定した測色データ、c.ドライ染色したが見本レンズと同じ色に見えなかったためウェット調色した新たなレンズを測定した測色データの3種類のレンズ特性が表示されたグラフである。本発明では、入力値としてはa.の見本レンズの分光透過率を使用するわけである。そして、出力値としてb.のようなレンズを作製するためのRYBの配合量を正確に計算で求めるというものである。本実施の形態では390〜730nmの帯域において10nm間隔で、35個の波長の分光数値データを取得したa.の見本レンズの35個の波長の分光数値データを取得する。この間隔や取得する波長帯域や取得個数は一例であって変更可能である。
2)見本レンズの度数
眼鏡店を通じて預かった見本レンズの度数をレンズメーターにて測定する。
3)加工するレンズの度数
ユーザーの処方に基づいてレンズメーカーで加工するレンズの度数。この値は眼鏡店からの発注情報にて指定される。
4)基材の種類を表すカテゴリ値
基材の種類は眼鏡店からの発注情報にて指定される。加工するレンズの種類はコートのバリエーションを加えると数が多くなるが、本実施の形態では4種類で例示する。定数を4個設定し、1番目の基材を{1,0,0,0}、2番目の基材を{0,1,0,0}・・・として表わす。例えば下記式のように1番目の基材のデータは表される。
Figure 0006889473
次に、入力値の基準化を図ることについて説明する。基準化をすることによって近似関数を最適化する計算を効率良く実行できることがわかっているためである。以下では、分光透過率の場合を例にとって説明する。基準化は各波長の透過率について、全データの平均値と標準偏差を求める。そして、各データから平均値を引いて標準偏差で割るという作業となる。数式で表すと下記数1〜数3となる。
Figure 0006889473
Figure 0006889473
Figure 0006889473
yの添え字1は、波長390nm(1番目の波長)を基準化した値であることを表している。尚、yにはデータの順番を表すpを添えない。1つのデータを基準化して入力値を作ったら、その入力値を近似関数に入力して出力を得るようにしているためである。見本レンズの度数と加工するレンズの度数を基準化する手順は同様なので省略する。また、本実施の形態では基材を表すカテゴリ値は、基準化しないで0と1のまま入力値y38〜y41とした。
次に、近似関数の計算プロセスについて説明する。以下の計算は複雑であるためコンピュータで実行される。伝達関数としてReLU(rectified linear unit整流された線形素子)を使用する。本実施の形態では隠れ層は4層で構成されている。以下の数6〜数17の計算を模式化したネットワーク図が図2である。
まず、41個の入力層の各ノードから第1層のノード20個のうち、第1〜19番目の19個のノードに対して41×19=779個の重みを設定する。入力ノードの値に重みの値を乗じて合計した値を第1層の各ノードの値とする。ただしマイナスの値は0にする。第1層の20番目のノードの値は常に1とする。
各層の重みの一般形は下記数6で示す。重みの値wに対して上の層を表すiを上に、下の層の順序を表すkと上の層の順序を表すjを下に添える。下記数7において関数fはReLUを表す。
重みはこの段階までの近似関数(つまり、ここではDNN)の最適化の計算において更新された最新の重みが適用される。
Figure 0006889473
Figure 0006889473
次に第1層の出力の一般形を表す式を示す。j=1〜19に関する式が数8で、j=20に関する式が数9である。
第1層のj番目の出力値を表す式ではi=1、入力層のノード数Ni−1=41とする。
Figure 0006889473
Figure 0006889473
次に、第1層のノード20個から第2層のノード15個のうち、第1〜14番目の14個のノードに対して20×14=280個の重みを設定する。ここでも、入力ノードの値に重みの値を乗じて合計した値を第2層の各ノードの値とする。ただしマイナスの値は0にする。第2層の15番目のノードの値は常に1とする。
ここで、数10に示すように第2層より上の第i層の出力の一般形は、入力yをzにおきかえて表す。第i−1層(下の層)のノード数をNi−1で表わす。
Figure 0006889473
第2層のj番目の出力値を表す式では、i=2、Ni−1=20となる。j=1〜14に関する式が数11で、j=15に関する式が数12である。
Figure 0006889473
Figure 0006889473
次に、第2層のノード15個から第3層のノード10個のうち、第1〜9番目の9個のノードに対して15×9=135個の重みを設定する。ここでも、入力ノードの値に重みの値を乗じて合計した値を第3層の各ノードの値とする。ただしマイナスの値は0にする。第3層の10番目のノードの値は常に1とする。第3層のj番目の出力値を表す式では、i=3、Ni−1=15となる。j=1〜9に関する式が数13で、j=10に関する式が数14である。
Figure 0006889473
Figure 0006889473
次に、第3層のノード10個から第4層のノード7個のうち、第1〜6番目の6個のノードに対して10×6=60個の重みを設定する。ここでも、入力ノードの値に重みの値を乗じて合計した値を第4層の各ノードの値とする。ただしマイナスの値は0にする。第4層の7番目のノードの値は常に1とする。第4層のj番目の出力値を表す式では、i=4、Ni−1=10とする。j=1〜6に関する式が数15で、j=7に関する式が数16である。
Figure 0006889473
Figure 0006889473
最後に、第4層のノード7個から第5層(出力層)の3個のノードに対して7×3=21個の重みを設定する。ここでも、入力ノードの値に重みの値を乗じて合計した値を第5層の各ノードの値とし、そのまま出力値とする。出力層においては、マイナスの値もそのまま出力する。したがって、ReLUを表す関数fは用いない。第5層のj番目の出力値を表す式では、i=5、Ni−1=7とする。j=1〜3に関する式が数17である。
3個の出力値の指数から1を引けば、数18のようにRYBの設定量(配合量)を得る。出力値の指数をとって1を引く理由は段落0047で後述する。
この計算では重みの数は779(第1層)+280(第2層)+135(第3層)+60(第4層)+21(第5層)=1275個であった。
Figure 0006889473
Figure 0006889473
2.近似関数の更新について
次に、上記のようなDNNの計算を行う際に用いる重みを更新して計算精度を向上させる手法について説明する。出力された値がRYBの参照値に近似するように、すべての重みの値を最適化するようにした。本実施の形態ではバックプロパゲーション(誤差逆伝播法)を用いて最適化を行った。バックプロパゲーションでは出力値と参照値との差の二乗和が最小になるような最適化計算を行う。下記数19で最小化すべき残差2乗和の一般式を示す。nはデータの総数。係数1/2は計算の都合で付してある。opjはp番目のRYB配合量の出力値j(但し、j=1〜3)であり、下記数20のように上記「1.着色材料の配合量の算出について」の出力と等価である。tpjは同じくp番目のRYB配合量の参照値jである。
Figure 0006889473
Figure 0006889473
出力値とはここでは上記「1.着色材料の配合量の算出について」で直近のある見本レンズAの分光数値データ及びその他の数値データを入力値としてDNNによって算出したRYBの配合量である。
一方、参照値は近似関数の出力すべき目標値であって、以下の1)〜4)のいずれかに属するものである。
1)見本レンズAと同じ色に見えるようにドライ染色したレンズに使用したRYBの配合量
2)任意のある色にドライ染色した際のそのレンズのドライ染色に使用したRYBの配合量
3)見本レンズAを目標にドライ染色したが同じ色に見えなかったのでウェット調色して見本レンズAと同じ色に見えるように調色したレンズについて分光数値データ及びその他の数値データを入力値として上記「1.着色材料の配合量の算出について」でDNNによって算出したRYBの配合量
4)見本レンズAの分光数値データ及びその他の数値データを入力値として上記「1.着色材料の配合量の算出について」でDNNによって算出したRYBの配合量
図5〜図8に、本実施の形態で扱う具体的な入力値データの一例を示す。図5〜図7はDNNに必要な項目のみを表示するようにして、計算に無関係なデータは割愛した。また、このようなデータは近似関数の更新については多ければ多いほど精度が上がる。図5は上記の参照値1)のケースでの入力値データの例である。また、図6は上記の参照値2)のケースでの入力値データの例である。これらは実際に測色しているためRYBの配合量をデータとして使用している。図7は上記の参照値3)の図8は4)のケースでの入力値データの例である。図7及び図8ではRYBの配合量は計算で得られた出力値を使用しているため、データ情報としては使用していない。
尚、参照値は下記式21のようにRYB設定量(配合量)に1を加えた値の対数で表される。
RYB設定量(配合量)に1を加えるのは、設定量を0とすることもあるので、対数関数の引数が0になることが無いようにするための、便宜上の処理である。また、1を加えた後でその対数をとる理由は次の通りである。まず1つは、ランベルト・ベールの法則から、ある物質の透過率は exp(−αx)で表わされるためである。ここでαは吸収係数でxは経路長である。レンズの染色においては染色の程度を表す量がxに相当するので、対数をとることによって設定量と透過率の関係を線形に近くできる。その結果、近似関数をより精度よく作ることができる。もう1つの理由は、設定量の数値が大きいデータと小さいデータに関して、誤差の比率を平等にして最適化するためである。もし対数をとらなければ、数19の式で与えられるEへの寄与は、設定量の数値が大きいデータのほうが大きくなってしまうため、設定量の小さいデータに関して誤差の割合が大きくなり、うまく最適化することができない。
以上の理由から参照値はRYB設定量に1を加えた値の対数とするので、近似関数の3個の出力値の指数から1を引いてRYBの設定量を得る。
Figure 0006889473
近似関数を最適化するためには、全データに関する残差2乗和を最小化するが、近似関数の更新は個別のデータについて逐次的に行う。すなわち、第p番目のデータに関して、下記数22のEを最小化する。その更新手順を全データに関して繰り返し行うことによって、近似関数を最適化する。その手順においては、重要なデータ(類似のデータが少ない稀なデータ)の使用頻度を多くしたり、確率的にランダムにデータを選択したりする工夫をしてもよい。
Figure 0006889473
まず、第4層のノード7個から第5層(出力層)の3個のノードへの21個の重みを更新する計算方法を示す。数23は重みを表す一般式である(但し、j=1〜3、k=1〜7)。尚、以下の計算は複雑であるためコンピュータで実行される。
Figure 0006889473
を特定の重み(第4層k番目のノードから第5層j番目のノードへの重み)で微分したときの値(微分値)を求める
Figure 0006889473
ここで数24の右辺の左側は、数25のようにEを実際に偏微分することで、「近似関数のj番目の出力」と「出力するべき目標値」との差であることがわかる。「近似関数の出力」は第p番目の測色データを近似関数に入力して得られる。「出力するべき目標値」は第p番目の数値データに1を加えて対数をとった値である。
Figure 0006889473
また、数24の右辺の右側は、数26のように「第5層j番目のノードの出力値の変化量」の「第4層k番目のノードから第5層j番目のノードへの重みの変化量」に対する比である。それは、第4層k番目のノードの値に相当する。
Figure 0006889473
こうして、Eを特定の重み(第4層k番目のノードから第5層j番目のノードへの重み)で微分したときの値を求めることができる。その値に学習係数ηをかけて、重みから引くことにより更新する(数27)。学習係数ηは近似関数を構成するすべての重みについて共通に適用する値であり、典型的には10の−3乗から−8乗といった小さい値を用いる。近似関数を最適化する学習の初期においては学習係数ηを大きな値とし、最適化が進んだら小さくするといった工夫をしてもよい。
Figure 0006889473
次に、第3層のノード10個から第4層の7個のノードへの70個の重みを更新する計算方法を示す。下記数28は重みを表す一般式である(但し、j=1〜7、k=1〜10)。
Figure 0006889473
数29のようにEを特定の重み(第3層k番目のノードから第4層j番目のノードへの重み)で微分したときの値(微分値)を求める。
Figure 0006889473
数29の右辺には項が3つある。以下では第1項の値を求める計算についてのみ説明するが、第2項と第3項の計算も同様に行うことができる。
右辺第1項の左側は「第5層1番目のノードの値」と「第1番目のノードが出力するべき目標値」との差である。その値を得るための式を数30として示す。
Figure 0006889473
右辺第1項の右側は、「第5層の第1番目のノードの出力値の変化量」の「第3層k番目のノードから第4層j番目のノードへの重みの変化量」に対する比である。それは、次の式で与えられる。
Figure 0006889473
数31において、右辺の左側は、「第5層1番目のノードの値の変化量」の「第4層j番目のノードの値の変化量」に対する比である。その値はReLU関数の出力なので、数32のように「第4層j番目のノードの値」が負のときは0であり、正のときは「第4層j番目のノードから第5層1番目のノードへの重み」に相当し、0のときは微分値を定義できないが便宜上どちらかを選択して値を決める。
Figure 0006889473
また、数31において、右辺の右側は、「第4層j番目のノードの出力値の変化量」の「第3層k番目のノードから第4層j番目のノードへの重みの変化量」に対する比である。そしてそれは、下記数33のように第3層k番目のノードの値に相当する。
Figure 0006889473
こうして、第3層k番目のノードから第4層j番目のノードへの重みでEを微分したときの値を求めることができる。その値に学習係数ηをかけて、重みから引くことにより更新する(数34)。
Figure 0006889473
以下、計算方法が複雑になっていくが、第2層のノードから第3層のへの重み、第1層のノードから第2層のへの重みを更新する式を同様の計算で得ることができる。但し、入力ノードから第1層のへの重みを更新する際は、入力ノードの値にReLU関数を適用しないことを考慮する。
上記実施の形態は本発明の原理およびその概念を例示するための具体的な実施の形態として記載したにすぎない。つまり、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明は、例えば次のように変更した態様で具体化することも可能である。
・上記実施の形態では物体の例として透明な眼鏡レンズを挙げたが、非透明な物体の表面に着色するようにしてもよい。図3はそのような場合のDNNによるネットワーク図である。ここでは上記実施の形態と同様に入力値を決めて、出力値としての4つの色C(シアン)M(マゼンタ)Y(イエロー)K(ブラック)のプリンターで使用する着色剤の配合量を算出するというものである。ここでは、実施の形態に倣って見本について波長ごとの35個の分光反射率(分光反射率は分光反射率測定装置によって測定)と、紙やインクの種類等のカテゴリ値(変数)を数値データとして入力値とし、重みを適用してDNNを行って出力値としてC、M、Y、Kの各色の配合量を算出する。また、上記実施の形態に倣ってDNNの重みを更新する。また、上記実施の形態ではドライ染色(第1の色付け処理)に対して追加的な調色(第2の色付け処理)としてウェット調色を採用したが、印刷においての追加的な調色では、例えばプリント後に追加印刷で調色するようにする。
尚、印刷装置を制御する条件を表す量的変数を入力に追加してもよい。
・上記実施の形態で使用した近似関数では、重みの値を合計で1295個とした。これは若干多いため適宜重みを減らすようにしてもよい。しかし、パラメタの最適化を無理なく行うには、参照データは少なくとも500〜1000個は必要である。少ないデータを用いて近似関数を作ると過学習を生じるが、その場合は参照データとの違いが大きい特殊な入力値(参照データに含まれないような分光透過率パターン)から、異常な値が出力されてしまうことがあるためである。この問題に対応するためには、使用可能なデータが少ないうちは重みの数が少ないような近似関数を作るとよい。すなわち、5層よりも少ない層数にしたり、あるいは測定波長を20nm間隔にして18個とする方法が考えられる。初期は小さなモデルで受注・加工・測定を行い、データが蓄積されたらモデルを変えて計算の精度を高めればよい。
・上記実施の形態ではDNNは5層で計算したが、5層よりも多層にしてもよい。
・上記実施の形態の入力値の条件は適宜変更可能である。例えば、レンズ基材のカテゴリ数を増やすこと、カテゴリをレンズ基材に限定せずに、コート別に設定することなども自由である。
・実施の形態のレンズの染色におけるドライ加工は赤(R)黄(Y)青(B)の3色で行う例を示したが、黒(K)緑(G)シアン(C)マゼンタ(M)などを加えて4色以上で色付けを行ってもよい。
図6〜図8の入力値データを近似関数の入力として使用する際、見本レンズの度数を常に0としてもよい。それは、これら入力値データは、染色加工したレンズの分光透過率を測定したものであり、近似関数の出力は「結果的にレンズの色がそのように見える」条件のRYB設定量なので、入力・出力ともに見本レンズの度数とは無関係だからという考え方に基づく。
また、図6〜図8の入力値データを近似関数の入力として使用する際、見本レンズの度数を加工するレンズの度数と同じ値としても良い。それは、前回のドライ染色によってできたレンズと同じ色に見える同度数のレンズを新たな加工において製造するとしたら、前回のドライ染色によってできたレンズを見本レンズとするので、前回の図6の入力値データをそのまま図5の入力値データとして用いればよく、前回のドライ染色加工にて用いたRYB設定量を参照値とするべきという考え方に基づく。
・実施の形態ではレンズ全面を同じ色に染める全面加工の例を示したが、部分的な加工に適用するようにしてもよい。部分的な加工とは例えばハーフ加工がある。これは一般にレンズ上部を濃いカラーに、レンズ下部を薄いカラーに染める方法である。色の濃さが上部から下部にかけて徐々に変わる(グラデーション)効果がある。これをドライ染色で行うには、用紙の領域別に色の濃さを変えてプリントする。徐々に変える方法や、3〜5段階程度に分けて数値を設定する方法により加工できる。ウェット染色で行うには、レンズを上部のみを染色液につけた状態で、上下に揺動する方法により加工できる。
ハーフ加工に本発明を適用するには、レンズの上部と下部の所定の位置でそれぞれ分光透過率測定を行い、分光透過率から加工条件を算出する近似関数の最適化を、上部と下部それぞれで行うとよい。ある見本レンズについて所定位置2ヶ所を分光透過率測定し、2組のRYB設定量を算出する。そして上中下の3領域にプリントするのであれば、2組の値を上部と下部に適用し、中部は中間的な値とする方法が考えられる。中間的な値とは、たとえば平均値であり、あるいは2つの値の対数の平均値のさらに指数を用いる方法が考えられる。
本願発明は上述した実施の形態に記載の構成に限定されない。上述した各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。

Claims (13)

  1. 所定の照明環境で人が目視によって観察したときに見本物体と同じ色に見えるように複数の着色材料を配合して目的物体を色付けする際の前記着色材料の配合量を算出するためのコンピュータで実行される算出方法であって、
    ある1つの前記見本物体を測色することで得られる第1の分光数値データと、前記目的物体を前記ある1つの前記見本物体と同じ色に見えるように前記複数の着色材料を配合して色付けした際の前記複数の着色材料の配合量のデータ(以下、第1の配合数値データ)とを含む数値データを1セットとして、複数の前記見本物体と対応する複数の前記目的物体について第1の分光数値データと第1の配合数値データの複数のセットを取得し、得られた第1の分光数値データと第1の配合数値データの複数のセットに基づいて分光数値データと配合数値データの近似関数を最適化計算によって作成し、得られた前記近似関数に新たな前記見本物体を測色することで得られる第1の分光数値データを適用することで新たな前記見本物体と同じ色に見える新たな前記目的物体のための前記着色材料の配合量のデータを算出するとともに、
    第1の色付け処理で、ある1つの前記見本物体と同じ色に見えるように色付けしたにも関わらず前記目的物体の色が前記ある1つの前記見本物体と同じ色には見えないとき、第2の色付け処理として、前記ある1つの前記見本物体と同じ色に見えるように追加的に色付けしその追加的な色付けをした前記目的物体を測定することで第2の分光数値データを得、
    前記近似関数に前記第2の分光数値データを適用することで追加的に色付けした前記見本物体と同じ色に見える新たな前記目的物体のための前記着色材料の配合量のデータ(以下、第2の配合数値データ)量を算出し、
    前記ある1つの前記見本物体を測色することで得られる前記第1の分光数値データと前記第2の配合数値データとを含む数値データをセットとして、このセットを更に前記近似関数を最適化する計算に用いるようにしたようにしたことを特徴とする着色材料の配合量の算出方法。
  2. 所定の照明環境で人が目視によって観察したときに見本物体と同じ色に見えるように複数の着色材料を配合して目的物体を色付けする際の前記着色材料の配合量を算出するためのコンピュータで実行される算出方法であって、
    ある1つの前記見本物体を測色することで得られる第1の分光数値データと、前記目的物体を前記ある1つの前記見本物体と同じ色に見えるように前記複数の着色材料を配合して色付けした際の前記複数の着色材料の配合量のデータ(以下、第1の配合数値データ)とを含む数値データを1セットとして、複数の前記見本物体と対応する複数の前記目的物体について第1の分光数値データと第1の配合数値データの複数のセットを取得し、得られた第1の分光数値データと第1の配合数値データの複数のセットに基づいて分光数値データと配合数値データの近似関数を最適化計算によって作成し、得られた前記近似関数に新たな前記見本物体を測色することで得られる第1の分光数値データを適用することで新たな前記見本物体と同じ色に見える新たな前記目的物体のための前記着色材料の配合量のデータを算出するとともに、
    第1の色付け処理で、ある1つの前記見本物体と同じ色に見えるように色付けしたにも関わらず前記目的物体の色が前記ある1つの前記見本物体と同じ色には見えないとき、第2の色付け処理として、前記ある1つの前記見本物体と同じ色に見えるように追加的に色付けしその追加的な色付けをした前記目的物体を測色することで第2の分光数値データを得、
    前記近似関数に前記ある1つの前記見本物体を測色することで得られる前記第1の分光数値データを適用することで新たな前記見本物体と同じ色に見える新たな前記目的物体のための前記着色材料の配合量のデータ(以下、第3の配合数値データ)量を算出し、
    前記第2の分光数値データと前記第3の配合数値データをセットとして、前記近似関数を最適化する計算に用いるようにしたことを特徴とする着色材料の配合量の算出方法。
  3. 所定の照明環境で人が目視によって観察したときに透明体に着色した見本物体と同じ色に見えるように着色材料として複数の染料を使用して透明な目的物体を色付けする際の前記着色材料の配合量を算出するためのコンピュータで実行される算出方法であって、
    ある1つの前記見本物体を測色することで得られる第1の分光数値データと、前記目的物体を前記ある1つの前記見本物体と同じ色に見えるように前記複数の染料を配合して色付けした際の前記複数の染料の配合量のデータ(以下、第1の配合数値データ)とを含む数値データを1セットとして、複数の前記見本物体と対応する複数の前記目的物体について第1の分光数値データと第1の配合数値データの複数のセットを取得し、得られた第1の分光数値データと第1の配合数値データの複数のセットに基づいて分光数値データと配合数値データの近似関数を最適化計算によって作成し、得られた前記近似関数に新たな前記見本物体を測色することで得られる第1の分光数値データを適用することで新たな前記見本物体と同じ色に見える新たな前記目的物体のための前記染料の配合量のデータを算出するようにしたことを特徴とする着色材料の配合量の算出方法。
  4. 前記見本物体及び前記目的物体は眼鏡用レンズであることを特徴とする請求項3に記載の着色材料の配合量の算出方法。
  5. 前記見本物体及び前記目的物体は非透明体であり、表面に色素を付着させて色付けすることを特徴とする請求項1又は2に記載の着色材料の配合量の算出方法。
  6. 前記近似関数に前記ある1つの前記見本物体を測色することで得られる前記第1の分光数値データを適用することで新たな前記見本物体と同じ色に見える新たな前記目的物体のための前記着色材料の配合量のデータ(以下、第3の配合数値データ)量を算出し、
    前記第2の分光数値データと前記第3の配合数値データをセットとして、前記近似関数を最適化する計算に用いるようにしたことを特徴とする請求項1、2及び5のいずれかに記載の着色材料の配合量の算出方法。
  7. 前記目的物体に色付けをし、その色付けをした前記目的物体を測色することで得られる第4の分光数値データと、前記目的物体を色付けした際の第4の配合数値データとを含む数値データを1セットとして、このセットを更に前記近似関数を最適化する計算に用いるようにしたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の着色材料の配合量の算出方法。
  8. 前記第4の分光数値データは分光透過率データ又は分光反射率データであることを特徴とする請求項7に記載の着色材料の配合量の算出方法。
  9. 前記第2の分光数値データは分光透過率データ又は分光反射率データであることを特徴とする請求項1、2又は6のいずれかに記載の着色材料の配合量の算出方法。
  10. 前記第1の分光数値データは分光透過率データ又は分光反射率データであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の着色材料の配合量の算出方法。
  11. 数値データとして分光数値データ以外の前記見本物体の数値データを用いることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の着色材料の配合量の算出方法。
  12. 前記近似関数は、機械学習により得られる非線形的な計算手段を含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の着色材料の配合量の算出方法。
  13. 前記近似関数としてニューラルネットワークを用いることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の着色材料の配合量の算出方法。
JP2017090362A 2017-04-28 2017-04-28 着色材料の配合量の算出方法 Active JP6889473B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017090362A JP6889473B2 (ja) 2017-04-28 2017-04-28 着色材料の配合量の算出方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017090362A JP6889473B2 (ja) 2017-04-28 2017-04-28 着色材料の配合量の算出方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018191073A JP2018191073A (ja) 2018-11-29
JP6889473B2 true JP6889473B2 (ja) 2021-06-18

Family

ID=64479988

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017090362A Active JP6889473B2 (ja) 2017-04-28 2017-04-28 着色材料の配合量の算出方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6889473B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7014701B2 (ja) * 2018-12-14 2022-02-01 株式会社堀場製作所 光学分析装置、並びに光学分析装置に用いられる機械学習装置及びその方法
JP7460122B2 (ja) * 2020-03-11 2024-04-02 東海光学株式会社 光学レンズのクラス判別方法
JP7493776B2 (ja) 2020-09-02 2024-06-03 東海光学株式会社 着色方法及び着色料の種類と使用量の算出方法

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3212101B2 (ja) * 1991-01-10 2001-09-25 倉敷紡績株式会社 カラーマッチング方法およびその装置
JP3617298B2 (ja) * 1998-03-30 2005-02-02 東洋インキ製造株式会社 色分解装置
JP2007101436A (ja) * 2005-10-06 2007-04-19 Nisshinbo Ind Inc 着色サンプル作成システム
JP6393911B2 (ja) * 2014-06-18 2018-09-26 東海光学株式会社 着色材料の使用条件の決定方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018191073A (ja) 2018-11-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Dupont Study of the reconstruction of reflectance curves based on tristimulus values: comparison of methods of optimization
CA2439839C (en) System and method for organizing color values using an artificial intelligence based cluster model
JP6889473B2 (ja) 着色材料の配合量の算出方法
Jawahar et al. Artificial neural networks for colour prediction in leather dyeing on the basis of a tristimulus system
JP6703639B1 (ja) 塗料の製造方法及び色彩データを予測する方法
US20020184168A1 (en) System and method for determining acceptability of proposed color solution using an artificial intelligence based tolerance model
CA2903466C (en) Systems and methods for texture assessment of a coating formulation
CN108431561B (zh) 计算机辅助确定毛发颜色性能的方法和数据处理装置
CA2439968C (en) System and method for converting a color formula using an artificial intelligence based conversion model
KR20180074756A (ko) 도료의 텍스쳐 파라미터의 확인 방법
JP6936416B1 (ja) 塗料の製造方法及び色彩データを予測する方法
WO2021132654A1 (ja) 塗料の製造方法、色彩データを予測する方法及びコンピュータ調色システム
Ruiz et al. A learning system for adjustment processes based on human sensory perceptions
JP6393911B2 (ja) 着色材料の使用条件の決定方法
CN103645142A (zh) 预测纺织品染色配方的方法
JP3870421B2 (ja) コンピュータカラーマッチング方法および装置
WO2023076032A1 (en) Method and system for determining color match for surface coatings
Senthilkumar Use of artificial neural networks (ANNs) in colour measurement
Tam et al. Research on Textile Dyeing Formulation Based on Young's Double-Slit Interference Experiment Optimization Algorithm
JPH04235322A (ja) カラーマッチング方法およびその装置
Shams-Nateri Estimation of fabric color by camera based neuro-fuzzy technique
JP7493776B2 (ja) 着色方法及び着色料の種類と使用量の算出方法
JP2664813B2 (ja) 光学フィルター用着色材の設計方法
Muhtashima et al. Automated fabric color prediction
Draus et al. Formulation of colors using a genetic algorithm

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200129

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20201221

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210106

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210226

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210331

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210416

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210512

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210514

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6889473

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150