JP6887906B2 - 零相電流差動リレー - Google Patents

零相電流差動リレー Download PDF

Info

Publication number
JP6887906B2
JP6887906B2 JP2017145137A JP2017145137A JP6887906B2 JP 6887906 B2 JP6887906 B2 JP 6887906B2 JP 2017145137 A JP2017145137 A JP 2017145137A JP 2017145137 A JP2017145137 A JP 2017145137A JP 6887906 B2 JP6887906 B2 JP 6887906B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
phase
current
zero
region
neutral point
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017145137A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2019030073A (ja
Inventor
尾田 重遠
重遠 尾田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Electric Corp
Original Assignee
Mitsubishi Electric Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Electric Corp filed Critical Mitsubishi Electric Corp
Priority to JP2017145137A priority Critical patent/JP6887906B2/ja
Publication of JP2019030073A publication Critical patent/JP2019030073A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6887906B2 publication Critical patent/JP6887906B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Protection Of Transformers (AREA)

Description

本開示は、電力系統に設けられた変圧器または送電線などを保護するための零相電流差動リレーに関する。
電流差動リレーは、変圧器などの電力機器および送電線などにおいて、電流変成器(CT:Current Transformer)で囲まれた区間をCTからの電流信号の入力に基づいて保護するリレーである。電流差動リレーのうち、保護区間内の地絡故障を高感度で検出するために、零相電流を使ったものを零相電流差動リレーと称する。
具体的に、変圧器保護用の零相電流差動リレーでは、a相、b相、c相の相電流Ia,Ib,Icから算出された零相電流3×I0(=Ia+Ib+Ic)と、中性点電流INとの差電流によって差動量IDが計算される。すなわち、ID=|3×I0+IN|として計算される。ここで、|X|はXの振幅値を表す。
一方、抑制量IRについては、変圧器保護の場合には誤動作防止のために最大値抑制方式、すなわち、|Ia|、|Ib|、|Ic|、|IN|のうちの最大値を抑制量IRとする方式が一般に用いられる(たとえば、特許文献1参照)。これよって、スカラー和方式、すなわち、(|3×I0|+|IN|)を抑制量として用いる方式よりも大きな抑制量IRを得ることができる。
なお、零相電流差動リレーは、たとえば、ID>K1、かつID>p×IRを満たす場合に動作するように構成される。ここで、K1は最小動作感度の設定値であり、pは電流変成器の誤差などで動作しないよう設定される比率である。
特開平08−084433号公報
上記の最大値抑制方式は、通常時に大きな負荷電流が流れている場合は、電流変成器の誤差によって差動量が生じても、抑制量も負荷電流に比例して大きくなるので、誤動作が生じることはない。
しかしながら、最大値抑制方式は、抵抗性の内部地絡故障の場合のように比較的小さな地絡故障電流が負荷電流とともに変圧器を流れる場合に、検出感度の点で問題となる場合がある。この場合、差動量は地絡故障電流の振幅(スカラ値とも称する)であるが、抑制量は、負荷電流と地絡故障電流とが合成した電流の振幅となるので、抑制量が差動量よりも大きくなる。したがって、内部地絡故障を高感度に検出するためには、前述の比率(すなわち、p値)をなるべく小さな値に設定する必要がある。
一方、最大値抑制方式は、外部短絡故障の場合に誤動作する虞がある。たとえば、外部短絡故障によって1相のCTのみが大きく飽和したとすると、このCT飽和によって短絡故障電流が減少した部分が差動量になる。CT飽和の度合いが大きい場合は、差動量は短絡故障電流の振幅に近付く。これに対して抑制量は、CT飽和が生じていない相の短絡故障電流の振幅になる。したがって、零相電流差動リレーを誤動作させないようにするためには、前述の比率(すなわち、p値)を“1”近くに設定する必要がある。
上記のように、最大値抑制方式では、高感度検出と誤動作防止を両立するような比率設定が困難であるという問題がある。この開示は、上記の問題点を考慮したものであり、その目的は、高感度の故障検出と誤動作防止との両立が可能な零相電流差動リレーを提供することである。
一実施の形態による零相電流差動リレーは、Y結線巻線を含む三相変圧器を保護する。Y結線巻線の各相電流および中性点電流は中性点に向かう方向が互いに同極性となるように定義される。零相電流差動リレーは、リレー演算部と、位相判定部と、動作判定部とを備える。リレー演算部は、各相電流に基づく零相電流と中性点電流とに基づいて差動量および抑制量を演算し、差動量および抑制量が動作域にあるか否かを判定する。位相判定部は、零相電流に対する中性点電流の位相が同位相を含む第1の領域にあるか否かを判定する。動作判定部は、リレー演算部の判定結果と位相判定部の判定結果に基づいて、三相変圧器を保護するための保護信号を出力する。
上記の実施の形態によれば、リレー演算部の判定結果と位相判定部の判定結果に基づいて内部地絡故障であるか否かを判定できるので、高感度の故障検出と誤動作防止との両立が可能な零相電流差動リレーを提供することができる。
零相電流差動リレーとその保護対象である三相変圧器とを含む全体構成図である。 図1の零相電流差動リレー40のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。 零相電流差動リレーの動作特性図である。 図3の最小感度値K1の整定方法について説明する図である。 図1の1次側巻線31のb相とc相との間で外部短絡故障が生じた場合の電流の流れについて説明するための図である。 図1の1次側巻線31のb相とc相との間で内部短絡故障が生じた場合の電流の流れについて説明するための図である。 図1の1次側巻線31のa相で外部地絡故障が生じた場合の電流の流れについて説明するための図である。 図1の1次側巻線31のa相で内部地絡故障が生じた場合の電流の流れについて説明するための図である。 電流変成器が飽和した場合にリレーによって観察される電流波形の変化について説明するための図である。 リレーによって観察される零相電流と中性点電流との関係を示すベクトル図である。 実施の形態1の場合において、内部故障か外部故障かを判定する基準を説明するための図である。 現時点よりも90°前の値の生成方法を説明するためのベクトル図である。 中性点電流INがA1領域にあるか否かを判定する方法を説明するための図である。 実施の形態1の零相電流差動リレーのブロックシーケンス図である。 実施の形態2の零相電流差動リレーの場合において、零相電流と中性点電流との関係を示すベクトル図である。 実施の形態2の場合において、内部故障か外部故障かを判定する基準を説明するための図である。 実施の形態2の零相電流差動リレーのブロックシーケンス図である。 実施の形態3の零相電流差動リレーにおけるリレー演算部の動作特性図である。 実施の形態3の零相電流差動リレーのブロックシーケンス図である。
以下、各実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。
実施の形態1.
[零相電流差動リレーと三相変圧器の構成]
図1は、零相電流差動リレーとその保護対象である三相変圧器とを含む全体構成図である。
図1を参照して、零相電流差動リレー40は、1次側巻線31がY巻線であり2次側巻線32がΔ巻線であるY−Δ結線方式の三相変圧器30を保護する。三相変圧器30の1次側の各相に電流変成器CTa,CTb,CTcが設けられる。さらに、三相変圧器30の1次側巻線の中性点34と接地極35との間を接続する接地線36に電流変成器CTNが設けられる。電流変成器CTa,CTb,CTcによってa相電流Ia、b相電流Ib、c相電流Icがそれぞれ検出され、電流変成器CTNによって中性点電流INが検出される。これらの相電流Ia,Ib,Icを表す信号および中性点電流INを表す信号が零相電流差動リレー40に取り込まれる。
なお、a相電流Ia、b相電流Ib、c相電流Ic、および中性点電流INについて、図1に示すように三相変圧器30の中性点34に向かう方向の電流が互いに同極性となるように(たとえば、正に)定義される。
零相電流差動リレー40は、たとえば、マイクロコンピュータをベースに構成されたデジタル保護リレーによって構成される。マイクロコンピュータによってプログラムが実行されることによって、零相電流差動リレー40は、リレー演算部50、位相判定部60、および動作判定部70として機能する。
リレー演算部50は、通常の零相電流差動リレーの機能を拡張したものであり、基本的には差動量IDおよび抑制量IRに基づいた判定を行う。リレー演算部50の動作の詳細については、図3および図4を参照して後述する。
位相判定部60は、a相、b相、c相の相電流Ia,Ib,Icから算出された零相電流3×I0(=Ia+Ib+Ic)と、中性点電流INとの位相関係に基づいて、内部地絡故障か外部地絡故障かを判定する。なお、内部故障とは、電流変成器CTa,CTb,CTc,CTNで囲まれた内部の保護区間で生じる故障をいい、外部故障とはこれらの電流変成器の外部の区間で起きる故障をいう。位相判定部60の動作の詳細については、図5〜図13を参照して後述する。
動作判定部70は、リレー演算部50の判定結果と位相判定部60の判定結果に基づいて内部地絡故障が発生しているか否かを判定する。動作判定部70は、内部地絡故障が発生していると判定した場合には、三相変圧器30を保護するための保護信号(リレー出力とも称する)を出力する。動作判定部70の動作の詳細については、図14を参照して後述する。
[零相電流差動リレーのハードウェア構成]
図2は、図1の零相電流差動リレー40のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図2の零相電流差動リレー40は、いわゆるデジタルリレー装置と同様の構成を有している。具体的に図2を参照して、零相電流差動リレー40は、入力変換部100と、A/D変換部110と、演算処理部120と、I/O(Input and Output)部130とを備える。
入力変換部100は、各入力チャンネルごとに補助変成器101_1,101_2,…を備える。入力変換部100は、図1の電流変成器CTa,CTb,CTcから出力された相電流Ia,Ib,Icを表す信号および図1の電流変成器CTNから出力された中性点電流INを表す信号が入力される入力部である。各補助変成器101は、電流変成器CTa,CTb,CTcおよびCTNからの電流信号をA/D変換部110および演算処理部120での信号処理に適した電圧レベルの信号に変換する。
A/D変換部110は、アナログフィルタ(AF:Analog Filter)111_1,111_2,…と、サンプルホールド回路(S/H:Sample Hold Circuit)112_1,112_2,…と、マルチプレクサ(MPX:Multiplexer)113と、A/D変換器114とを含む。アナログフィルタ111およびサンプルホールド回路112は、入力信号のチャンネルごとに設けられる。
各アナログフィルタ111は、A/D変換の際の折返し誤差を除去するために設けられたローパスフィルタである。各サンプルホールド回路112は、対応のアナログフィルタ111を通過した信号を規定のサンプリング周波数でサンプリングして保持する。サンプリング周波数は、たとえば、4800Hzである。マルチプレクサ113は、サンプルホールド回路112_1,112_2,…に保持された電圧信号を順次選択する。A/D変換器114は、マルチプレクサ113によって選択された信号をデジタル値に変換する。
演算処理部120は、CPU(Central Processing Unit)121と、RAM(Random Access Memory)122と、ROM(Read Only Memory)123と、これらを接続するバス225とを含む。CPU121は、零相電流差動リレー40の全体の動作を制御する。RAM122およびROM123は、CPU121の主記憶として用いられる。ROM123は、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリを用いることにより、プログラムおよび信号処理用の設定値などを収納することができる。
I/O部130は、デジタル入力(D/I:Digital Input)回路132と、デジタル出力(D/O:Digital Output)回路133とを含む。デジタル入力回路132およびデジタル出力回路133は、CPU121と外部装置との間で通信を行う際のインターフェース回路である。
[リレー演算部の動作]
リレー演算部50は、まず、電流変成器CTa,CTb,CTcから受信した相電流Ia,Ib,Icの情報に基づいて対称座標法の零相電流I0、すなわち、
I0=(Ia+Ib+Ic)/3 …(1)
を計算する。この明細書では、便宜上、零相電流I0の3倍(すなわち、3×I0)を零相電流と称する場合がある。
次に、リレー演算部50は、算出した零相電流(3×I0)の値と、電流変成器CTNから受信した中性点電流INの情報とに基づいて差動量IDと抑制量IRとを計算する。差動量IDは、零相電流(3×I0)と中性点電流INのベクトル和の振幅、すなわち、
ID=|3×I0+IN| …(2)
で定義される。ここで、|…|は振幅値(スカラー値とも称する)を表す。また、抑制量IRは、零相電流(3×I0)の振幅と中性点電流INの振幅との和(すなわち、スカラー和)として、
IR=|3×I0|+|IN| …(3)
によって定義される。抑制量IRとして上記のようにスカラー和方式を採用した理由は、負荷電流の影響を取り除くためである。
次に、リレー演算部50は、上記の差動量IDおよび抑制量IRに基づいて、次式(4)および(5)に従って動作判定を行う。
ID>K1 …(4)
ID>p×IR …(5)
ここで、K1は最小動作感度を示す整定値(以下、最小感度値K1と称する)であり、pはCTの誤差などで動作しないよう整定される比率である。抑制量IRがK1/p以下の場合には(4)式に従って動作判定が行われ、抑制量IRがK1/pより大きい場合には(5)式に従って動作判定が行われる。
図3は、零相電流差動リレーの動作特性図である。図4は、図3の最小感度値K1の整定方法について説明する図である。
図3および図4を参照して、上式(4)および(5)が両方とも満たされる場合が動作域となるようにリレー演算部50は構成される。ここで、最小感度値K1は、図4に示すように、相電流Ia,Ib,Icおよび中性点電流INのうちの最大振幅に比例して増加するように設定される。
具体的に、|Ia|,|Ib|,|Ic|,|IN|のうちの最大値(max)をImaxと定義したとき、0<Imax≦K0/qの範囲では、最小感度値K1は、
K1=K0 …(6)
のように一定値に定義される。Imax>K0/qの範囲では、
K1=q×Imax …(7)
のようにImaxに比例するように定義される。ここで、K0とqは整定値である。なお、本明細書において、掛け算記号は「×」または「*」で示される。
[位相判定部の動作]
次に、図1の位相判定部60の動作について説明する。以下では、まず、故障の種類(すなわち、外部短絡、内部短絡、外部地絡、内部地絡)に応じて各電流変成器の一次側および二次側にどのような方向の電流が流れるかについて説明する。次に、電流変成器が飽和した場合に各電流変成器の二次側電流がどのように変化するかについて説明する。その次に、上記の考察に基づいて、内部地絡と外部地絡の相違ならびに電流変成器の飽和の有無に応じた、零相電流(3×I0)と中性点電流INとの位相関係について説明する。最後に、内部地絡故障か外部地絡故障かの判定方法について説明する。
(1.故障の種類に応じた電流変成器の一次側電流について)
図5は、図1の1次側巻線31のb相とc相との間で外部短絡故障が生じた場合の電流の流れについて説明するための図である。図5では、三相変圧器30の1次側および2次側の両方の電線路に電源が接続されている場合(すなわち、両端電源の場合)において、c相線路37cからb相線路37bに外部短絡電流41が流れたときの各線路に生じる電流が図5に模式的に示されている。外部短絡故障の場合には、b相の電流変成器CTbおよびc相の電流変成器CTcには、三相変圧器30の2次側の電源からの故障電流Ib,Icが流れる。
図6は、図1の1次側巻線31のb相とc相との間で内部短絡故障が生じた場合の電流の流れについて説明するための図である。図6では、三相変圧器30の1次側および2次側の両方の電線路に電源が接続されている場合において、b相線路37bからc相線路37cに内部短絡電流42が流れたときの各線路に生じる電流が模式的に示されている。内部短絡故障の場合には、b相の電流変成器CTbおよびc相の電流変成器CTcには、三相変圧器30の1次側の電源からの故障電流Ib,Icが流れる。
図5および図6に示すように、内部短絡故障であっても外部短絡故障であっても、b相の電流変成器CTb、C相の電流変成器CTc、および接地線36に設けられた電流変成器CTNの1次側をそれぞれ流れる電流Ib,Ic,INについて、
Ib=−Ic …(8)
IN=0 …(9)
が成立する。電流変成器CTb,CTcが飽和していないときには、電流変成器CTb,CTcの2次側についても上式(8)が成立する。これに対して、短絡電流が過大であるために、電流変成器CTb,CTcの少なくとも一方が飽和した場合には、電流変成器CTb,CTcの2次側について上式(8)は成立しない。なお、電流変成器CTb,CTcの飽和の有無にかかわらず、上式(9)は常に成立する。
図7は、図1の1次側巻線31のa相で外部地絡故障が生じた場合の電流の流れについて説明するための図である。図7の場合にも、三相変圧器30の1次側および2次側の両方の電線路に電源が接続されている場合が示されている。
図7を参照して、三相変圧器30の2次側電源からの故障電流は、1次側巻線31の中性点34を通ってY結線された1次側巻線31の各相に流れる。この1次側巻線31の各相の故障電流は、三相変圧器30のそれぞれの相の1次側線路に設けられた電流変成器CTa,CTb,CTcに流れる。
外部地絡電流43は、三相変圧器30の1次側のa相線路37aの故障点48から大地に流れる。この外部地絡電流43の一部は、接地極35、接地線36、中性点34、1次側の三相巻線33a、33b、33cをそれぞれ通って各相線路に設けられ電流変成器CTa、CTb、CTcに流れる。
したがって、電流変成器CTa,CTb,CTc,CTNの1次側をそれぞれ流れる電流Ia,Ib,Ic,INについて、
Ia+Ib+Ic=−IN …(10)
が成立する。
電流変成器CTa,CTb、CTc、CTNの2次側について、電流変成器CTa,CTb、CTc、CTNのいずれも飽和していない場合には、上式(10)の関係が成り立つ。通常、各相の電流Ia,Ib,Icのうち故障相電流Iaが大きいので、概ねIa=−INの関係が成り立つ。したがって、a相電流変成器CTaの2次側の電流位相は、中性点電流INの位相に対して概ね逆位相になる。さらに、a相の電流変成器CTaの2次側の電流位相は零相電流3×I0の位相にほぼ等しくなる。したがって、零相電流3×I0の位相は、中性点電流INの位相に対して概ね逆位相になる。
一方、電流変成器CTa,CTb、CTc、CTNの少なくとも1つが飽和している場合には、上式(10)の関係が成立しなくなる。この場合の、a相電流Iaと中性点電流INとの位相関係については、図9および図10を参照して後述する。
図8は、図1の1次側巻線31のa相で内部地絡故障が生じた場合の電流の流れについて説明するための図である。図8の場合にも、三相変圧器30の1次側および2次側の両方の電線路に電源が接続されている場合が示されている。
図8を参照して、三相変圧器30の2次側電源からの故障電流は、1次側巻線31の中性点34を通ってY結線された1次側の各相巻線33a,33b,33cに流れる。さらに、b相およびc相巻線33b,33cを流れる故障電流は、三相変圧器30の1次側の電流変成器CTb,CTcに流れる。a相巻線33aを流れる故障電流は、内部地絡電流44として故障点49から大地に流れる。
a相線路37aの故障点49から大地に流れる内部地絡電流44の一部は、接地極35、接地線36、中性点34を通って、Y結線された1次側巻線31の各相巻線33a,33b,33cに流れる。さらに、b相およびc相巻線33b,33cを流れる故障電流は、三相変圧器30の1次側の電流変成器CTb,CTcに流れる。a相巻線33aを流れる故障電流は、内部地絡電流44として故障点49から大地に流れる。
一方、三相変圧器30のa相巻線33aに接続された電流変成器CTaの1次側には、三相変圧器30の1次側に接続された電源からの電流Iaが流れる。このa相電流Iaの位相は、概ね中性点電流INと同位相になる。電流Iaは電流変成器CTaを通過した後、内部地絡電流44として故障点49から大地に流れる。
電流変成器CTa,CTb、CTc、CTNが飽和していない場合には、電流変成器CTa,CTb、CTc、CTNの2次側の電流についても電流変成器CTa,CTb、CTc、CTNの1次側と同様の関係が成立する。通常、各相の電流Ia,Ib,Icのうち故障相電流Iaが大きいので、a相の電流変成器CTaの2次側電流Iaの位相が零相電流3×I0の位相とほぼ同じになる。したがって、零相電流3×I0の位相は、中性点電流INの位相に対して概ね同位相になる。
電流変成器CTa,CTb、CTc、CTNの少なくとも1つが飽和している場合には、上記の位相関係は変化する。この場合のa相電流Iaと中性点電流INとの位相関係については、図9および図10を参照して次に説明する。
(2.電流変成器が飽和した場合の電流変成器の二次側電流の変化について)
図9は、電流変成器が飽和した場合にリレーによって観察される電流波形の変化について説明するための図である。
図9を参照して、電流変成器が非飽和の場合の電流変成器の2次側の電流波形を実線(CT非飽和)で示す。電流変成器が飽和すると図9の破線(CT飽和)で示すように、電流変成器の2次側の出力は磁気飽和によって急に減衰する。この波形が零相電流差動リレー40に入力されると、リレー内部のフィルタ回路(たとえば、図2の111)によって高周波成分が除去されるので、図9の一点鎖線(CT飽和+フィルタ)で示す波形が得られる。この一点鎖線の波形の信号がリレー演算に供される。したがって、電流変成器が飽和すると、リレーによって観察される波形は元の電流波形に比べて進み位相になる。
(3.零相電流と中性点電流の位相関係について)
図10は、リレーによって観察される零相電流と中性点電流との関係を示すベクトル図である。図10(A)〜(D)では、a相地絡外部故障とa相地絡内部故障との相違ならびに電流変成器の飽和の有無に応じて、4つのパターンに分けてベクトル図が示されている。
図10(A)を参照して、a相地絡外部故障で電流変成器CTaが飽和した場合について説明する。まず、電流変成器CTaが飽和していない場合には、図7で説明したように、零相電流(3×I0)の位相は、中性点電流INに対して概ね逆位相になる。ここで、電流変成器CTaが飽和した場合には、a相電流Iaが進み位相側に変化するので、図10(A)のハッチングで示した領域に零相電流(3×I0)のベクトルが移動する。
なお、電流変成器の飽和の程度によって進み位相の度合いは異なる。したがって、零相電流(3×I0)のベクトルの移動範囲にはばらつきがある。この点は、図10(B)〜(D)の場合も同様である。
図10(B)を参照して、a相地絡外部故障で電流変成器CTNが飽和した場合について説明する。まず、電流変成器CTNが飽和していない場合には、図7で説明したように、零相電流(3×I0)の位相は、中性点電流INに対して概ね逆位相になる。ここで、電流変成器CTNが飽和した場合には、中性点電流INが進み位相側に変化するので、図10(B)のハッチングで示した領域に中性点電流INのベクトルが移動する。
図10(C)を参照して、a相地絡内部故障で電流変成器CTaが飽和した場合について説明する。まず、電流変成器CTaが飽和していない場合には、図8で説明したように、零相電流(3×I0)の位相は、中性点電流INに対して概ね同位相になる。ここで、電流変成器CTaが飽和した場合には、a相電流Iaが進み位相側に変化するので、図10(C)のハッチングで示した領域に零相電流(3×I0)のベクトルが移動する。
図10(D)を参照して、a相地絡内部故障で電流変成器CTNが飽和した場合について説明する。まず、電流変成器CTNが飽和していない場合には、図8で説明したように、零相電流(3×I0)の位相は、中性点電流INに対して概ね同位相になる。ここで、電流変成器CTNが飽和した場合には、中性点電流INが進み位相側に変化するので、図10(D)のハッチングで示した領域に中性点電流INのベクトルが移動する。
以上から、外部故障と内部故障とで一部重なりがあるものの、外部地絡故障の場合には、電流変成器CTa,CTNの飽和の有無にかかわらず、中性点電流INのベクトルと零相電流(3×I0)のベクトルとの成す角度は概ね90°よりも大きくなる(互いに逆位相側)。一方、内部地絡故障の場合には、電流変成器CTa,CTNの飽和の有無にかかわらず、中性点電流INのベクトルと零相電流(3×I0)のベクトルとの成す角度は概ね90°よりも小さくなる(互いに同位相側)。
(4.内部地絡故障か外部地絡故障かの判定方法)
これまでの考察を総括し、零相電流(3×I0)と中性点電流INとの位相関係に基づいて、内部地絡故障か外部地絡故障かの判定する方法について説明する。
図11は、実施の形態1の場合において、内部故障か外部故障かを判定する基準を説明するための図である。図11では、零相電流(3×I0)に対する中性点電流INの位相の関係が示されている。具体的に零相電流(3×I0)に対する中性点電流INの位相は3つの領域に区分される。
A1領域は、−90°から0°の範囲における予め定める位相を下限とし、0°から90°の範囲における予め定める位相を上限とする位相領域である。零相電流(3×I0)を基準にしたとき中性点電流INがこのA1領域にある場合、位相判定部60は三相変圧器30が内部地絡故障であると判定する。
A2領域は、90°から180°の範囲における予め定める位相を下限とし、180°から270°の範囲における予め定める位相を上限とする位相領域である。もしくは、A2領域は、−270°から−180°の範囲における予め定める位相を下限とし、−180°から−90°の範囲における予め定める位相を上限とする位相領域である。零相電流(3×I0)を基準にしたとき中性点電流INがこのA2領域にある場合、位相判定部60は三相変圧器30が外部地絡故障であると判定する。
A3領域は、上記のA1領域でもA2領域でもない領域である。零相電流(3×I0)を基準にしたとき中性点電流INがこのA2領域にある場合、位相判定部60は、内部故障か外部故障かを判定するのが困難である。ただし、磁気飽和は過渡的なものであるので、2〜3サイクル程度待つと中性点電流INの位相はA1領域かA2領域に移行する。2〜3サイクル程度待っても中性点電流INの位相がA3領域から変化しない場合は、非常に大きな内部故障電流によって飽和したものと判断し、内部故障と判定する。この理由は、外部故障の場合には、故障相の電流変成器を通過する故障電流は必ず変圧器の巻線インピーダンスを通過するので、外部故障の故障電流の大きさは内部故障の故障電流の場合よりも小さくなると考えられるためである。
一例として、図11に示すように、零相電流(3×I0)に対してプラス側の位相とマイナス側の位相とが対称となるように位相範囲を区分してもよい。図11の例では、φ1、φ2、φ3の各々を0から90°の範囲での定められた位相角であるとし、さらに、φ1+φ2+φ3=180°の関係が成り立つとする。この場合、A1領域は−φ1から+φ1までの位相領域である。A2領域は、−180°から−(φ1+φ2)までと(φ1+φ2)から180°までの位相領域である。A3領域は、−(φ1+φ2)から−φ1までとφ1から(φ1+φ2)までの位相領域である。
さらに、一例として、φ1=φ2=φ3=60°としてもよい。なお、磁気飽和の様子は電流変成器に用いられている鉄心の磁気特性、三相変圧器および電力系統の特性などによって決まるので、実際のφ1、φ2、φ3の値は、実験またはシミュレーションなどによって最適な値に設定する必要がある。
(5.位相領域の具体的な判定方法)
零相電流(3×I0)および中性点電流INの時系列データから、両者の位相関係(すなわち、中性点電流INの位相がA1〜A3のどの領域にあるか)を決定する方法として公知の任意の方法を用いることができる。たとえば、以下の位相角の計算式を用いて判定することができる。
一般に、電流IAおよび電流IBのサンプリング間隔を30°毎とし、電流IAおよびIBの現在値をそれぞれIA[m]およびIB[m]とし、現時点よりも90°前の値をIA[m−3]およびIB[m−3]とする。そうすると、IA[m]に対するIB[m]の位相差θの余弦は、電流IAの振幅|IA|と電流IBの振幅|IB|とを用いて、
|IA|×|IB|×cosθ=IA[m]×IB[m]+IA[m-3]×IB[m-3] …(11)
と表される。
ここで、IA[m]×IB[m]+IA[m−3]×IB[m−3]≧0とすると、cosθ≧0となる。したがって、上式(11)の右辺が0以上の場合は、IA[m]に対してIB[m]が−90°〜+90°の位相差の範囲であることを示す。
IA[m−3]およびIB[m−3]の値は、図12に示すように、現時点の電流IA[m]およびIB[m]と現時点よりも30°前の値であるIA[m−1]およびIB[m−1]を用いて生成することができる。
図12は、現時点よりも90°前の値の生成方法を説明するためのベクトル図である。図12に示すように、現時点よりも30°前の値であるI[m−1]を2倍した値から、現時点の値であるI[m]を√3倍した値を減じることによって、現時点よりも90°前の値であるI[m−3]を生成することができる。
上記の方法を拡張すれば、現時点の値であるI[m]と現時点よりも30°前の値であるI[m−1]の線形結合によって、任意のサンプリング時点の値を生成することができる。
図13は、中性点電流INがA1領域にあるか否かを判定する方法を説明するための図である。なお、図11においてφ1=60°であるとする。
図13(A)を参照して、まず、中性点電流IN[m]が3×I0[m]に対して、図13(A)のハッチングされた領域(−30°のベクトルに対して、−90°から+90°の領域)にあるか否かを判定する。具体的には式(11)の右辺において、IA[m]に3×I0[m−1]を代入し、IB[m]にIN[m]を代入し、IA[m−3]に3×I0[m−4]を代入し、IB[m−3]にIN[m−3]を代入する。そして、式(11)の右辺の計算結果が正か負かによって、すなわちcosθが正か負かによって、中性点電流IN[m]の位相が図13(A)のハッチングされた領域にあるか否かを判定することができる。
図13(B)を参照して、上記と同様の方法で、中性点電流IN[m]の位相が3×I0[m]に対して、図13(B)のハッチングされた領域(+30°のベクトルに対して、−90°から+90°の領域)にあるか否かを判定することができる。この場合、式(11)の右辺において、IA[m]に3×I0[m+1]を代入し、IB[m]にIN[m]を代入し、IA[m−3]に3×I0[m−2]を代入し、IB[m−3]にIN[m−3]を代入することになる。しかしながら、[m+1]は現時点より30°後のデータになるので、実際には、全てのデータを30°分遅らせて、IA[m]に3×I0[m]を代入し、IB[m]にIN[m−1]を代入し、IA[m−3]に3×I0[m−3]を代入し、IB[m−3]にIN[m−2]を代入する。これらの判定の結果、IN[m]がいずれの場合もハッチング領域にあると判定できた場合に、IN[m]はA1領域にあると判定できる。
[動作判定部を含む零相電流差動リレー動作]
次に、図1の動作判定部70を含む零相電流差動リレー40全体の動作について説明する。
図14は、実施の形態1の零相電流差動リレーのブロックシーケンス図である。
図14を参照して、リレー演算部50は、前述の式(4)が満たされているか否かを判定する判定部51と、前述の式(5)が満たされているか否かを判定する判定部52と、ANDゲート53とを含む。ANDゲート53の出力は、判定部51および判定部52の判定結果がいずれも満たされている場合にアサートされる。
位相判定部60は、中性点電流INが図11のA1領域にあるか否かを判定する判定部61と、中性点電流INが図11のA3領域にあるか否かを判定する判定部62と、零相電流(3×I0)の振幅および中性点電流INの振幅がいずれも閾値k3よりも大きいか否かを判定する判定部63とを含む。零相電流(3×I0)の振幅および中性点電流INの振幅の少なくとも一方が極めて小さい場合は、位相計算の精度が保証できないので、上記の判定部63が設けられている。
動作判定部70は、ANDゲート73,74と、動作時間t1のオンディレイ(On-delay)タイマ71と、動作時間t2のオンディレイ(On-delay)タイマ72と、ORゲート75とを含む。動作時間t1はたとえば数ミリ秒であり、動作時間t2はたとえば数サイクルである。
ANDゲート73の出力は、判定部61および判定部63の判定結果が満たされており、かつANDゲート53の出力がアサートされている場合にアサートする。ANDゲート73の出力は、オンディレイタイマ71およびORゲート75を介してリレー出力として外部に出力される。
したがって、判定部61によって中性点電流INがA1領域にある(すなわち、内部故障である)と判定され、リレー演算部50によって零相電流差動リレーの動作域であると判定された場合には、零相電流差動リレー40は、数msecその状態が継続した後に内部故障を表す信号を外部に出力する。
一方、ANDゲート74の出力は、判定部62および判定部63の判定結果が満たされており、さらにANDゲート53の出力がアサートされている場合にアサートする。ANDゲート74の出力は、オンディレイタイマ72およびORゲート75を介してリレー出力として外部に出力される。
したがって、判定部62によって中性点電流INがA3領域にある(すなわち、内部故障か外部故障かが判定困難である)と判定され、リレー演算部50によって零相電流差動リレーの動作域であると判定された場合には、零相電流差動リレー40は数サイクルその状態が継続した場合に限って内部故障を表す信号を外部に出力する。
[効果]
以上説明した実施の形態1の零相電流差動リレーによれば以下の効果を奏する。
(i) 前述の式(3)で説明したように、本実施の形態によれば抑制量として線路側のIa,Ib,Icによる零相電流(3×I0)と中性点電流INとのスカラー和が採用されている。この場合、負荷電流は3相でバランスしているので、抑制量IRは負荷電流の影響を受けず、地絡故障電流のみで決まる。したがって、零相電流(3×I0)と中性点電流INとがほぼ同位相となる内部地絡故障時には、差動量は抑制量とほぼ同等量になる。このため、比率整定値を極端に減らさなくても地絡故障検出を高感度に行うことができる。
(ii) 前述の図4および式(6),(7)で説明したように、零相電流差動リレー40の差動量IDの最小感度値K1を負荷電流の振幅に比例して設定できるようにした。負荷電流の増加に比例して電流変成器の誤差も増加するが、最小感度値K1を負荷電流に比例して増加するようにしたので、誤出力を防止することができる。
なお、最小感度K1の設定には電流変成器の誤差のみ考慮し、電流変成器の飽和まで考慮する必要はない。したがって、上記(i)で説明した高感度検出のメリットを損なうことはない。
(iii) 電流変成器の飽和に対する対策として、零相電流(3×I0)と中性点電流INとの間の位相角に基づいて内部地絡故障か外部地絡故障かを判定できるようにした。この場合、電流変成器の飽和のために内部地絡故障か外部地絡故障かが判定困難な場合には、数サイクルの動作時間を有するオンディレイタイマを用いて動作時間が経過した後に零相電流差動リレー40が動作するようにした。したがって、外部地絡故障で電流変成器が飽和した場合に、零相電流に対して中性点電流INが上記の内部・外部故障の判定の困難な領域に過渡的に入ったとしても、この過渡的な領域に中性点電流INが存在する時間は上記のオンディレイタイマによって判定結果を出力しないようにしている。よって、零相電流差動リレー40を誤動作しないようにすることができる。
実施の形態2.
通常状態では、電流変成器CTa,CTb,CTcに負荷電流が流れ、一方、中性点電流IN用の電流変成器CTNには電流が流れない。そのため、電流変成器CTa,CTb,CTcと比較して飽和電圧の低い安価な電流変成器が中性点電流IN用の電流変成器CTNに安易に選択される傾向にある。すなわち、電流変成器CTNは、電流変成器CTa,CTb,CTcに比べて磁気飽和し易い場合が多い。このため、外部地絡故障が発生した場合、磁気飽和は中性点電流IN用の電流変成器CTNで発生し、線路の電流変成器CTa,CTb,CTcで発生しない場合が多い。もしくは、これらの双方に磁気飽和が発生しても電流変成器CTNの方が、飽和度が大きい。
そこで、実施の形態2では、電流変成器CTNの飽和のみ考慮し、電流変成器CTa,CTb,CTcの飽和を考慮しない場合について説明する。
図15は、実施の形態2の零相電流差動リレーの場合において、零相電流と中性点電流との関係を示すベクトル図である。図15(A)は図10(B)に対応し、a相地絡外部故障で電流変成器CTNが飽和した場合を示している。図15(B)は図10(D)に対応し、a相地絡内部故障で電流変成器CTNが飽和した場合を示している。
図15(A),(B)に示すように、電流変成器CTNの飽和のみ考慮した場合には、外部地絡故障と内部地絡故障とで、中性点電流INのベクトルの重なりがない。したがって、図11で説明したA3領域を設定する必要がない。
図16は、実施の形態2の場合において、内部故障か外部故障かを判定する基準を説明するための図である。図16では、零相電流(3×I0)に対する中性点電流INの位相の関係が示されている。具体的に零相電流(3×I0)に対する中性点電流INの位相は2つの領域に区分される。
A1領域は、−90°から0°の範囲における予め定める位相を下限とし、90°から180°の範囲における予め定める位相を上限とする位相領域である。零相電流(3×I0)を基準にしたとき中性点電流INの位相がこのA1領域にある場合、位相判定部60Bは三相変圧器30が内部地絡故障であると判定する。
A2領域は、上記のA1領域以外の位相領域である。零相電流(3×I0)を基準にしたとき中性点電流INの位相がこのA2領域にある場合、位相判定部60Bは三相変圧器30が外部地絡故障であると判定する。
図16に示すように、位相角φ4、φ5、φ6を用いて上記の関係を表すことができる。ここで、φ4+φ5+φ6=360°、0°<φ4<90°、90°<φ5<180°とする。この場合、A1領域は、−φ4から+φ5までの位相範囲である。A2領域は、+φ5から(φ5+φ6)までの位相範囲である。たとえば、φ4=60°、φ5=120°、φ6=180°とすることができる。
図17は、実施の形態2の零相電流差動リレーのブロックシーケンス図である。図17のブロックシーケンス図は実施の形態1の図14に対応するものである。
図17を参照して、実施の形態2の零相電流差動リレー40Bは、リレー演算部50と、位相判定部60Bと、動作判定部70Bとを含む。図17のリレー演算部50の構成は図14の場合と同じであるので説明を繰り返さない。
位相判定部60Bは、中性点電流INが図16のA1領域にあるか否かを判定する判定部61と、零相電流(3×I0)の振幅および中性点電流INの振幅がいずれも閾値k3よりも大きいか否かを判定する判定部63とを含む。
動作判定部70Bは、ANDゲート73と、動作時間t1のオンディレイタイマ71とを含む。動作時間t1はたとえば数ミリ秒である。ANDゲート73の出力は、判定部61および判定部63の判定結果が満たされており、さらにANDゲート53の出力がアサートされている場合にアサートする。ANDゲート73の出力は、オンディレイタイマ71を介してリレー出力として外部に出力される。
したがって、判定部61によって中性点電流INがA1領域にある(すなわち、内部故障である)と判定され、リレー演算部50によって零相電流差動リレーの動作域であると判定された場合には、零相電流差動リレー40Bは、その状態が数msec継続した後に内部地絡故障を表す信号を外部に出力する。
[効果]
以上のとおり、中性点電流IN用の電流変成器CTNのみ磁気飽和が生じる場合には、装置構成を簡略することができる。その他の効果は、実施の形態1と同様であるので、説明を繰り返さない。
実施の形態3.
実施の形態3では、リレー演算部50Cの動作域の設定が変更可能な場合について説明する。この場合、位相判定部60の判定結果に応じて、リレー演算部50Cの動作域とオンディレイタイマの動作時間とが変更される。なお、差動量IDおよび抑制量IRの定義は実施の形態1の式(2)および式(3)で説明したものと同じであるので説明を繰り返さない。
図18は、実施の形態3の零相電流差動リレーにおけるリレー演算部の動作特性図である。図18の動作判定領域は、図11のA3領域の場合に適用される。
図18を参照して、リレー演算部50Cは、図11のA1領域の場合には、次式(12)および(13)に従って動作判定を行い、図11のA3領域の場合には、次式(12)〜(14)に従って動作判定を行う。
ID>K1 …(12)
ID>p×IR …(13)
ID>r×IR−K4 …(14)
上式(14)のrおよびK4は整定値(ただし、r>p)である。上式(12)かつ(13)かつ(14)を満たす動作域(A3領域で適用される)は図18でハッチングを付した領域である。図18に示すように、抑制量IRがK1/p以下の場合には(12)式に従って動作判定が行われる。抑制量IRがK1/pより大きくかつK4/(r−p)以下の場合には(13)式に従って動作判定が行われる。抑制量IRがK4/(r−p)よりも大きい場合には(14)式に従って動作判定が行われる。
上式(12)かつ(13)のみを満たす動作域(A1領域で適用される)は図3でハッチングを付した領域である。図3の動作域と比較して、図18の動作域は抑制量IRがK4/(r−p)という閾値を超える範囲で狭くなっている。
式(14)の条件は、外部故障時のCT飽和時に、式(13)の動作域に過渡的に入る可能性があるので、その可能性をできるだけ避けるために設定されている。
図19は、実施の形態3の零相電流差動リレーのブロックシーケンス図である。
図19を参照して、零相電流差動リレー40Cは、リレー演算部50Cと、位相判定部60と、動作判定部70とを含む。
リレー演算部50Cは、前述の式(12)が満たされているか否かを判定する判定部51と、前述の式(13)が満たされているか否かを判定する判定部52と、前述の式(14)が満たされているか否かを判定する判定部54と、ANDゲート53,55とを含む。ANDゲート53の出力は、判定部51および判定部52の判定結果がいずれも満たされている場合にアサートされる。ANDゲート55の出力は、判定部51、判定部52、および判定部54の判定結果がいずれも満たされている場合にアサートされる。
位相判定部60の構成は実施の形態1の図14の場合と同じであるので説明を繰り返さない。動作判定部70の構成は図14の場合と同じであるが、ANDゲート73,74に入力される判定条件が図14の場合と異なる。
具体的に、ANDゲート73の出力は、判定部61および判定部63の判定結果が満たされており、かつANDゲート53の出力がアサートされている場合にアサートする。ANDゲート73の出力は、オンディレイタイマ71およびORゲート75を介してリレー出力として外部に出力される。
したがって、判定部61によって中性点電流INの位相がA1領域にある(すなわち、内部故障である)と判定され、リレー演算部50によって差動量IDおよび抑制量IRが図3に示す動作域(すなわち、上式(12)かつ(13))であると判定された場合には、零相電流差動リレー40は、その状態が数msec継続した後に内部故障を表す信号を外部に出力する。
一方、ANDゲート74の出力は、判定部62および判定部63の判定結果が満たされており、さらにANDゲート55の出力がアサートされている場合にアサートする。ANDゲート74の出力は、オンディレイタイマ72およびORゲート75を介してリレー出力として外部に出力される。
したがって、判定部62によって中性点電流INの位相がA3領域にある(すなわち、内部故障か外部故障かが判定困難である)と判定され、リレー演算部50によって差動量IDおよび抑制量IRが図18に示す動作域(すなわち、上式(12)かつ(13)かつ(14))であると判定された場合には、零相電流差動リレー40は数サイクルその状態が継続した場合に限って内部故障を表す信号を外部に出力する。
[効果]
上記の構成によれば、電流変成器の飽和のために外部故障であっても差動量IDが抑制量IRに近くなって図3に占めす動作域(図19のゲート53の判定)を満たしたとしても、位相判定部60によってA3領域であると判定された場合には、比率差動リレーの動作域が変更される。すなわち、図3に示す動作域(すなわち、図19のゲート53の判定)から図18に示す動作域(すなわち、図19のゲート55の判定)に比率差動リレーの動作域が変更される。図18に示す動作域は、図3に示す動作域に比べて外部故障時のCT飽和時に差動量IDおよび抑制量IRが存在する可能性のある領域を狭くしたものである。さらに、位相判定部60によってA3領域であると判定された場合には、オンディレイタイマ72が作用するので、CT飽和に対する誤動作防止の点で信頼性を高くすることができる。実施の形態3のその他の効果は実施の形態1の場合と同じであるので説明を繰り返さない。
変形例.
上式の実施の形態1〜3において、抑制量として、ベクトル差電流(すなわち、|3×I0−IN|を用いてもよいし、零相電流(3×I0)の振幅および中性点電流INの振幅のうちの大きいほう(以下、零相最大値と称する)を用いてもよい。
抑制量IRとしてベクトル差電流を用いた場合には、外部故障(a相地絡外部故障時にIaとINは逆位相)での抑制量が増加する一方、内部故障(a相地絡外部故障時にIaとINはほぼ同位相)での抑制量が低下するので、より安定した動作特性が得られる。
また、抑制量IRとして零相最大値を用いた場合は、スカラー和に比較して外部故障で抑制量が1/2になるので比率設定をその分考慮する必要があるが、スカラー和とほぼ同様の効果を得る。なお、上記のベクトル差電流および零相最大値のいずれの場合も、零相電流を使った抑制量であるので、負荷電流の影響を受けないというメリットがある。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
30 三相変圧器、33 巻線、34 中性点、35 接地極、36 接地線、37a,37b,37c 線路、40,40B,40C 零相電流差動リレー、50,50C リレー演算部、60,60B 位相判定部、70,70B 動作判定部、71,72 オンディレイタイマ、CTN,CTa,CTb,CTc 電流変成器。

Claims (8)

  1. Y結線巻線を含む三相変圧器を保護するための零相電流差動リレーであって、
    前記Y結線巻線の各相電流および中性点電流は中性点に向かう方向が互いに同極性となるように定義され、
    各前記相電流に基づく零相電流と前記中性点電流とに基づいて差動量および抑制量を演算し、前記差動量および前記抑制量が動作域にあるか否かを判定するリレー演算部と、
    前記零相電流に対する前記中性点電流の位相が同位相を含む第1の領域にあるか否かを判定する位相判定部と、
    前記リレー演算部の判定結果と前記位相判定部の判定結果に基づいて、前記三相変圧器を保護するための保護信号を出力する動作判定部とを備え
    前記動作判定部は、前記零相電流に対する前記中性点電流の位相が前記第1の領域にありかつ前記差動量および前記抑制量が前記動作域にあると判定された状態が、第1の期間維持された場合に、前記保護信号を出力する、零相電流差動リレー。
  2. 前記位相判定部は、前記零相電流に対する前記中性点電流の位相が、前記第1の領域、第2の領域、および第3の領域のいずれにあるかを判定し、
    前記第1の領域は、−90°から0°の範囲における予め定める位相を下限とし、0°から90°の範囲における予め定める位相を上限とする位相領域であり、
    前記第2の領域は、0°から180°の範囲における予め定める位相を下限とし、180°から270°の範囲における予め定める位相を上限とする位相領域であり、
    前記第3の領域は、前記第1の領域および前記第2の領域のいずれでもない位相領域である、請求項1に記載の零相電流差動リレー。
  3. 記動作判定部は、前記零相電流に対する前記中性点電流の位相が前記第3の領域にありかつ前記差動量および前記抑制量が前記動作域にあると判定された状態が前記第1の期間よりも長い第2の期間維持された場合に、前記保護信号を出力する、請求項2に記載の零相電流差動リレー。
  4. 前記リレー演算部は、前記差動量および前記抑制量が第1の動作域に含まれるか否かと、前記第1の動作域よりも狭い第2の動作域に含まれるか否かとを判定し
    記動作判定部は、前記零相電流に対する前記中性点電流の位相が前記第3の領域にありかつ前記差動量および前記抑制量が前記第2の動作域にあると判定された状態が前記第1の期間よりも長い第2の期間維持された場合に、前記保護信号を出力する、請求項2に記載の零相電流差動リレー。
  5. Y結線巻線を含む三相変圧器を保護するための零相電流差動リレーであって、
    前記Y結線巻線の各相電流および中性点電流は中性点に向かう方向が互いに同極性となるように定義され、
    各前記相電流に基づく零相電流と前記中性点電流とに基づいて差動量および抑制量を演算し、前記差動量および前記抑制量が動作域にあるか否かを判定するリレー演算部と、
    記零相電流に対する前記中性点電流の位相が、同位相を含む第1の領域第2の領域のいずれにあるかを判定する位相判定部とを備え
    前記第1の領域は、−90°から0°の範囲における予め定める位相を下限とし、90°から180°の範囲における予め定める位相を上限とする位相領域であり、
    前記第2の領域は、前記第1の領域でない位相領域であ
    前記零相電流差動リレーは、さらに、前記リレー演算部の判定結果と前記位相判定部の判定結果に基づいて、前記三相変圧器を保護するための保護信号を出力する動作判定部とを備える、零相電流差動リレー。
  6. 前記動作判定部は、前記零相電流に対する前記中性点電流の位相が前記第1の領域にあり、かつ、前記差動量および前記抑制量が前記動作域にあると判定された場合に、前記保護信号を出力する、請求項5に記載の零相電流差動リレー。
  7. 前記動作域の最低感度値は、各前記相電流の振幅および前記中性点電流の振幅のうちの最大値が大きくなるにつれて大きくなるように設定される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の零相電流差動リレー。
  8. 前記抑制量は、前記零相電流の振幅の3倍と前記中性点電流の振幅との和である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の零相電流差動リレー。
JP2017145137A 2017-07-27 2017-07-27 零相電流差動リレー Active JP6887906B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017145137A JP6887906B2 (ja) 2017-07-27 2017-07-27 零相電流差動リレー

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017145137A JP6887906B2 (ja) 2017-07-27 2017-07-27 零相電流差動リレー

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019030073A JP2019030073A (ja) 2019-02-21
JP6887906B2 true JP6887906B2 (ja) 2021-06-16

Family

ID=65478908

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017145137A Active JP6887906B2 (ja) 2017-07-27 2017-07-27 零相電流差動リレー

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6887906B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112240992B (zh) * 2020-09-30 2022-08-30 中国南方电网有限责任公司 基于线路空充暂态电流的保护极性校验方法、装置和设备
JP6935044B1 (ja) * 2021-01-08 2021-09-15 三菱電機株式会社 零相電流差動リレー

Also Published As

Publication number Publication date
JP2019030073A (ja) 2019-02-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CA3012838C (en) Systems and methods for detecting turn-to-turn faults in windings
EP0316203B1 (en) Protective relay
US20170227591A1 (en) Systems and methods for detecting turn-to-turn faults in windings
US20160134102A1 (en) Method and circuit arrangement with means for a leakage current compensation in a photovoltaic system with multiple differential current sensors
JP6887906B2 (ja) 零相電流差動リレー
JP5821014B2 (ja) 漏電判定装置
JP7008551B2 (ja) 故障判定装置、および保護継電装置
JP5441625B2 (ja) 母線保護装置
JP2000261958A (ja) 地絡電流抑制装置の保護装置および地絡抑制方法
JP2009198442A (ja) 電圧異常検出装置および電圧保護継電装置
WO2022149256A1 (ja) 零相電流差動リレー
JP6369775B2 (ja) 漏電検出装置
KR102115243B1 (ko) 보호 릴레이 장치
US11355915B2 (en) Protection relay
Kletsel’ et al. Specific features of the development of differential-phase transformer protection systems on the basis of magnetic reed switches
JP7408029B1 (ja) 零相電流差動リレーおよび三相変圧器の保護方法
JP5645578B2 (ja) 電流差動保護継電器
RU2787362C1 (ru) Фильтр тока обратной последовательности на герконах
Bouchahdane et al. Maintenance testing of numerical differential protection relay
JP3833821B2 (ja) 母線保護継電装置
JP6689099B2 (ja) 保護継電器
Smith et al. Review of application of ground distance protection
KR20230151599A (ko) 전류 비율 차동 계전기 및 그의 동작 방법
JPH01170318A (ja) 比率差動リレー
JPS6059915A (ja) 事故電流保護装置および事故電流保護システム

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200225

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20201222

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210202

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210323

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210421

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210519

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6887906

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250