JP6887776B2 - 造形物の製造方法 - Google Patents

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本発明は、例えば感光性を有するスラリーを用いて、各種の造形物を製造する造形物の製造方法に関するものである。
従来、光造形材料を含むスラリーに光を照射して造形物を製造するスラリー光硬化型積層造形法として、2つの方法が知られている。
例えば、タンク内のスラリーの任意部分をレーザ光等によって露光して硬化させ、タンクの高さを変えた後に、再度レーザ光等で任意部分を硬化させる等の工程を繰り返すタンク方式が知られている。
また、造形ステージ上にスラリーを塗布し、ブレード等で所望の厚みにスラリーを平坦化し、任意部分をレーザ光で露光して硬化させ、再度スラリーを塗布した後に硬化させる等の工程を繰り返す塗布方式が知られている。
このうち、塗布方式は、高精度の造形が可能な優れた方法であることが知られている。
この塗布方式の技術に関しては、例えばハイドロキシアパタイトからなる人工骨の製造方法として、スラリー状の光造形材料にレーザ光を照射して硬化させて多孔質人工骨を製造する技術が提案されている(特許文献1参照)。
この特許文献1に記載の技術では、例えば下記の手順で造形物を製造している。
まず、造形ステージ上に、スラリー状の光造形材料を塗布してスラリー層を形成する。次に、このスラリー層に対して、造形物の2次元断面データに基づいて、紫外線レーザ光のスキャンを行って、造形物の一部となる所定の箇所(即ち光を照射した箇所)を硬化させる。これによって、スラリー層の一部に硬化した部分が含まれる複合層が形成される。
次に、造形ステージを1層分の距離だけ降下させた後に、複合層の表面に新たな光造形材料を塗布して、新たなスラリー層を形成する。次に、ブレードを用いて、新たなスラリー層の表面を平坦化する。その後、平坦化した新たなスラリー層に対して、前記と同様に、紫外線レーザ光を照射して硬化させる等の工程を繰り返して、人工骨である造形物の製造を行う。
特開2012−232023号公報
しかしながら、上述した従来技術では、硬化した部分を含むスラリー層の上にスラリーを供給し、そのスラリーをブレードで平坦化して新たなスラリー層を形成する際に、ブレードの応力によって、新たなスラリー層の下層のスラリー層にズレが発生し、製品の不良が発生することがあった。
詳しくは、スラリー層は高い粘性を有しているので、ブレードで新たなスラリー層を平坦化する際に、新たなスラリー層に密着している下層のスラリー層もブレードの移動方向に引っ張られてしまう。その結果、下層のスラリー層は、硬化した部分ごと移動方向に移動して、硬化した部分(従って硬化した部分から形成される造形物)に位置ズレが発生するという問題があった。
そして、このような位置ズレが発生すると、造形物の寸法精度が低下するので好ましくない。
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ブレードにてスラリーの成形を行う際に、硬化した部分等のズレが生じにくい造形物の製造方法を提供することにある。
(1)本発明の第1局面は、基台上に配置されたベースフィルムの表面上に、スラリーを供給する第1工程と、スラリー上にて、ベースフィルムの表面に沿ってブレードを移動させることにより、スラリーの成形を行う第2工程と、成形されたスラリーの一部を硬化させる第3工程と、一部が硬化したスラリーの表面上に、スラリーを供給する第4工程と、を有する造形物の製造方法に関するものである。
この造形物の製造方法では、ベースフィルムの表面の算術平均粗さRaを、0.3μm以上とし、第1工程、第2工程、及び第3工程の後に、第4工程、第2工程、及び第3工程を、この順番にて1回又は複数回実施して、造形物を製造する。
このように、本第1局面では、ベースフィルムの表面の算術平均粗さRaを、0.3μm以上として、上述した工程を上述した順番にて実施して造形物を製造するので、硬化した部分等のズレ、従って造形物における目的とする形状からのズレの発生を抑制することができる。
つまり、上述したように、既に硬化した部分を含むスラリーの層、即ち下層のスラリー層の上にスラリーを供給し、そのスラリー上にて、ベースフィルムの表面に沿ってブレードを移動させて、スラリーの成形を行う、即ち新たなスラリー層を形成する際には、ブレードによる応力によって、新たなスラリー層に密着した下層のスラリー層、従って硬化した部分はズレ易い。
それに対して、本第1局面では、下層のスラリー層が載置されるベースフィルムの表面の算術平均粗さRaは、0.3μm以上であるので、その表面の凹凸によるアンカー効果によって、下層のスラリー層(従って硬化した部分)がズレ難いという顕著な効果を奏する。
従って、その後、同様に、順次、第4工程、第2工程、第3工程の処理を繰り返して、スラリー層を積層するように形成する際に、ブレードでスラリーの成形を行っても(例えば平坦化しても)、同様にズレが生じ難いので、結果として高い精度で造形物を製造できるという効果がある。
そのため、造形物(即ち製品)の不良が発生し難いという利点がある。
(2)本発明の第2局面では、スラリーは感光性を有し、スラリーを露光して硬化させる。
本第2局面では、感光性を有するスラリーを用い、そのスラリーを露光して硬化させることにより、所望の形状の造形物を容易に製造することができる。
(3)本発明の第3局面では、ベースフィルムのヘーズ値は、30%以上である。
従来、レーザ光でスラリー層の任意部分を露光して硬化させる際に、レーザ光がベースフィルムが載置された造形ステージまで到達して反射し、任意部分以外の所まで硬化させてしまい、造形物の精度が低下することがあった。
それに対して、本第3局面では、ベースフィルムのヘーズ値は30%以上であるので(即ちレーザ光の透過性が低いので)、レーザ光は造形ステージまで到達しにくい。そのため、造形ステージにて反射する光も少ないので、造形物の精度が向上する。
なお、前記ヘーズ値とは、透明なものに入射した光線が拡散する度合い(くもり度)を示す値であり、拡散光線透過率(τd)と全光線透過率(τt)との比{(τd/τt)×100}で表される。なお、全光線透過率(τt)、拡散光線透過率(τd)については、JIS K 7136に規定されている。
(4)本発明の第4局面では、ベースフィルムの表面の算術平均粗さRaが、2μm以下である。
本第4局面では、ベースフィルムの表面の算術平均粗さRaが、2μm以下であるので、ベースフィルムの表面には過度な凹凸が形成されていない。従って、ベースフィルムに接触する部分の造形物の表面の算術平均粗さRaも2μm以下である。そのため、造形物の表面として、凹凸の少ないものが要求される場合、例えば人工骨等の造形物に好適である。
(5)本発明の第5局面では、スラリー中に、セラミックスを30体積%以上含む。
本第5局面では、スラリー中にセラミックスを30体積%以上含むので、造形物を製造する材料であるスラリーとして好適なセラミック濃度を有している。つまり、スラリー中のセラミックスが30体積%未満の場合には、スラリーの粘度が低いため、所望の厚みにスラリーを保持することが困難となる可能性があり、また、造形物を加熱により脱脂処理する際に、クラック等の欠陥が生じやすくなる恐れがあるので、本第5局面の範囲が好適である。
なお、スラリー中のセラミックスの含有量の上限値としては、80体積%が好適である。これは、80体積%を上回ると、スラリーの粘度が高くなり、ブレードで平坦化するのが困難になるからである。
<以下に、本発明の各構成について説明する>
・前記ベースフィルムは、スラリーが供給される薄膜であり、その材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂などが挙げられる。
・前記ブレードとは、スラリーを移動させることができる刃状や板状等の部材であり、その材料としては、例えばステンレス等の金属やウレタンゴム等の合成樹脂などが挙げられる。
・前記スラリー(泥漿)とは、液体に固体粒子が混ざり込んだ懸濁体であり、ここでは、外部からの光や熱等の刺激によって、スラリーの一部が硬化する性質を有する。
スラリーを構成する液体(即ち硬化する材料)としては、例えば光もしくは熱硬化性樹脂が挙げられる。また、スラリーを構成する固体としては、例えばセラミックスが挙げられる。
・スラリーが感光性を有する場合には、スラリーの材料として、露光によって硬化する材料(光造形材料)が用いられる。この光造形材料としては、例えばアクリル系光硬化性樹脂が挙げられる。
・スラリー中に、セラミックスを含む場合には、そのセラミックスとして、例えばアルミナ、ジルコニア、ハイドロキシアパタイトが挙げられる。
実施形態の造形物を示す平面図である。 実施形態の造形物の一部を拡大して示す斜視図である。 実施形態の造形物の製造方法の一部を示す説明図である。
次に、本発明の造形物の製造方法の実施形態について説明する。
[1.実施形態]
ここでは、例えば光硬化性樹脂をレーザ光を用いて硬化させて、所定形状の造形物を製造する方法を例に挙げて説明する。
[1−1.造形物の構成]
まず、本実施形態の造形物の製造方法によって製造される造形物の構成について説明する。
図1及び図2に示す様に、本実施形態の造形物の製造方法によって製造される立体形状の造形物1は、平面視でメッシュ状であり、平行に配置された複数の角柱3の上に、同様に平行に配置された複数の角柱3が、平面視で直角に交差するように、井桁状に積み上げられた構造を有している。
つまり、複数の角柱3が同一平面上にて平行に配置された層5が複数積層された積層体構造を有している。
詳しくは、ある層(例えば最下層)5aにおいては、幅100μm×高さ50μm×長さ10mmの角柱3が、300μmの間隔をあけて、複数本(例えば25本)平行に配置されている。
また、例えば最下層5aの上の層5bでは、最下層5aの角柱3と(平面視で)直交するように、複数の角柱3が配置されている。この上の層5bの角柱3と最下層5aの角柱3とは、その向き(例えば長手方向の向き)が異なるだけで、角柱3の寸法や配置間隔や平行な配置については同一である。
このように、最下層5a等の下の層5aと上の層5bとは、(積層方向において)隣り合う各層5の角柱3の向きが直交するようにして、順次積層されて、複数層(例えば10層)からなる造形物1が構成されている。
なお、造形物1の寸法は、平面視で例えば10mm角であり、その高さは例えば0.5mmである。
[1−2.造形物の製造方法]
次に、本実施形態の造形体の製造方法について説明する。
本実施形態では、セラミックス粉末と光硬化性樹脂とを混合した光硬化性スラリーを用意した。そして、その光硬化性スラリーに対して紫外線レーザ光を照射して造形する光造形装置を用いて、3次元積層造形物である上述した造形物1の製造を行った。
ここでは、後述するように、図3に示す造形ステージ7に設置するベースフィルム9として、表面をサンドブラスト処理を施したPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(実施例1、3)、表面をケミカルエッチング処理したPETフィルム(実施例2)、表面の未処理のPETフィルム(比較例)を用いて、造形物1を製造した。
なお、後述するように、本実施形態では、ベースフィルム9の表面の算術平均粗さRaは、0.3μm〜2μmの範囲内であり、ベースフィルムのヘーズ値は30%以上であり、スラリー中に含まれるセラミックスは30体積%以上80体積%以下である。
以下、詳細に説明する。
<光硬化性スラリー>
まず、光硬化性スラリーの作製方法について説明する。
平均粒径が0.4μmのアルミナ粉末(住友化学製アドバンストアルミナAA−03)と、アクリル系光硬化性樹脂(例えば単官能もしくは複数の官能基を持つアルキルアクリレートと、光開始材の1−ヒドロキシシクロヘキサンフェニルケトンの混合物)とを、体積比で、アルミナ粉末が55%、光硬化性樹脂が45%となるように混合した。
次に、その混合物を、自転公転ミキサーで均一に撹拌して、光硬化性スラリーを作製した。
<実施例及び比較例>
次に、上述したベースフィルム9及び光硬化性スラリーを用いた実施例及び比較例について説明する。
(実施例1)
(1)まず、前記光硬化性スラリーを、図示しない光造形装置のスラリー供給装置にセットし、前記図1及び図2に示す造形物1に対応した造形モデルのCADデータから造形用データを準備した。
なお、造形モデルは、上述したように、ライン幅(角柱3の幅)が100μm、スペース幅(角柱3の間隔)が300μmの格子からなる10mm角のメッシュ状であり、1層毎の積層厚みは50μmである。
そして、この造形モデルを、ベースフィルム9上の造形エリアにおいて、縦5個×横5個の合計25個形成するように設定した。すなわち、サンプルを25個作製するようにした。
(2)次に、図3に示すように、造形ステージ7上に、ベースフィルム9として、サンドブラスト処理を施したPETフィルムをセットした。
このサンドブラスト処理を施したPETフィルム(ベースフィルム9)は、厚みが100μm、算術平均表面粗さRaは0.6μm、ヘーズ(HAZE)値は70%である。
なお、算術平均表面粗さRaやヘーズ値の調整は、サンドブラスト処理に用いる粒子の粒径や処理時間の調節により行うことができる。
(3)次に、第1工程として、スラリー供給装置から、ベースフィルム9上にスラリーを供給して塗布した。
(4)次に、第2工程として、ブレード11を用いてスラリーの表面を平坦化した。詳しくは、スラリーの表面をなぞるようにして、ブレード11を移動させて、スラリーの表面を平坦化して、スラリーの成形を行った。なお、ブレード11は、ベースフィルム9の表面に沿って(即ち表面に平行に)、矢印A方向に移動させた。これにより、スラリー層13が得られる。
(3)次に、第3工程として、スラリーの表面に対して紫外線レーザ光を照射して(スキャンして)、目的とする角柱3となる部分(前記ライン幅の部分)を硬化させた。即ち、紫外線レーザ光によって光硬化性樹脂を硬化させることにより、スラリー層13中に、角柱3となる硬化部分を形成した。
なお、紫外線レーザ光を照射する紫外線レーザとしては、例えば波長355nmの紫外線レーザ光を照射する紫外線レーザを用いた。そして、スポット径50μm、スキャン速度1000m/secの条件にてレーザ照射を行った。
また、1層のスラリー層13に硬化部分を成形した後には、次の(即ち上層の)スラリー層13の形成のために、造形ステージ7を一層分下降させる。
(4)次に、第4工程として、上述した一部が硬化したスラリー層13の表面に対して、スラリーを供給した。
(5)次に、この供給されたスラリーに対して、前記第2工程と同様にして、ブレード11を用いてスラリーの表面を平坦化した。
(6)次に、この平坦化されたスラリーの表面に対して、前記第3工程と同様にして、紫外線レーザ光を照射して、照射箇所を硬化させた。
以後、前記(4)〜(6)の工程を繰り返して、目的とする造形物1を製造した。つまり、前記第4工程の処理、前記第2工程の処理、第3工程の処理を、この順番で複数回実施し、目的とする造形物1を製造した。
なお、第1工程〜第3工程を実施することにより、最下層の(硬化部分を含む)スラリー層13が形成され、その後、第4工程、第2工程、第3工程を1回実施する毎に、1つのスラリー層13が形成される。従って、目的とする層5の積層回数に応じて上述した各工程を実施することにより、所望の造形物1が得られる。
また、上述したようにして得られた造形物1は、硬化していないスラリー中に存在しているので、その後、従来と同様に、硬化していないスラリーを除去して造形物1を取り出すことができる。
さらに、前記造形物1を焼成することにより、造形物1の形状を有するセラミックス構造物(図示せず)を得ることができる。
(実施例2)
実施例2では、造形ステージ7に、ベースフィルム9として、ケミカルエッチング処理したPETフィルムをセットし、その他は、前記実施例1と同様にして造形物1を製造した。
なお、ケミカルエッチング処理とは、アルカリ溶液によるフィルム表面の粗面化の処理である。
本実施例2では、 PETフィルム(即ちベースフィルム9)は、厚みが80μm、算術平均表面粗さRaは0.4μm、ヘーズ値は80%である。
(実施例3)
実施例3では、造形ステージ7に、ベースフィルム9として、サンドブラスト処理したPETフィルムをセットし、その他は、前記実施例1と同様にして造形物1を製造した。
本実施例3では、 PETフィルム(ベースフィルム9)は、厚みが100μm、算術平均表面粗さRaは0.3μm、ヘーズ値は30%である。
(比較例)
比較例では、造形ステージ7に、ベースフィルム9として、未処理のPETフィルムをセットし、その他は、前記実施例1と同様にして造形物1を製造した。
本比較例では、 PETフィルム(ベースフィルム9)は、厚みが100μm、算術平均表面粗さRaは0.03μm、ヘーズ値は10%である。
[1−3.評価]
次に、上述した実施例1〜3及び比較例に対する評価について説明する。
具体的には、前記実施例1〜3及び比較例について、造形時の造形物1のズレの発生状況と造形精度を調べた。その結果を、下記表1に記す。
ここで、ズレの発生状況は、ズレが発生したか否かを目視により確認した。詳しくは、最下層のスラリー層の上にスラリーを塗布し、ブレードによって表面を平坦化した際に、最下層のスラリー層において、硬化した部分と硬化していない部分との間に隙間(例えば0.1mm以上の隙間)が発生した場合に、ズレが発生したと判断した。
Figure 0006887776
なお、表1のズレ発生率とは、各実施例及び比較例において、各25個のサンプルにおいてズレが発生した割合[%]を示している。また、表1の造形精度は、造形物の各サンプルにおいて、(スペース幅の実測値/スペース幅の設計値(300μm))×100[%]を求めて、全サンプルの平均値を求めたものである。
この表1から明らかなように、実施例1〜3では、ベースフィルムの算術平均粗さRaは0.3μm以上であるので、ズレ発生率が10%以下と小さく好適である。
また、実施例1〜3では、ベースフィルムのヘーズ値が30%以上であるので、造形精度が80%以上と高く好適である。
それに対して、比較例では、ベースフィルムの算術平均粗さRaは0.03μmであるので、ズレ発生率が40%以下と大きく好ましくない。
また、比較例では、べースフィルムのヘーズ値が10%であるので、造形精度が67%と低く好ましくない。
なお、上述した評価とは別に、スラリーを作製する際に、セラミックスの体積%を30体積%未満(例えば25体積%)にしたところ、スラリーの粘度が低くなり、50μmの厚みでスラリーを保持するのが困難となった。また、造形物を加熱により脱脂処理した際に、クラックが発生した。さらに、セラミックスの体積%を80体積%を上回る範囲(例えば85体積%)にしたところ、スラリーを平坦化するのが困難となった。なお、他の条件は実施例1と同様である。
[1−4.効果]
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)本実施形態では、ベースフィルム9の表面の算術平均粗さRaを、0.3μm以上として、上述した工程を上述した順番にて実施して造形物1を製造するので、硬化した部分等のズレ(従って造形物1における目的とする形状からのズレ)の発生を抑制することができる。
つまり、本実施形態では、最下層のスラリー層13が載置されるベースフィルム9の表面の算術平均粗さRaは、0.3μm以上であるので、その表面の凹凸によるアンカー効果によって、スラリー層13(従って硬化した部分)がズレ難いという顕著な効果を奏する。
従って、その後、同様に、順次スラリー層13を積層するように形成する際に、ブレード11でスラリーを平坦化しても、同様にズレが生じ難いので、結果として高い精度で造形物1を製造できるという効果がある。そのため、造形物1(従って焼成後の製品)の不良が発生し難いという利点がある。
(2)また、本実施形態では、ベースフィルム9のヘーズ値は30%以上であるので(即ちレーザ光の透過性が低いので)、レーザ光は造形ステージ7まで到達しにくい。そのため、造形ステージ7にて反射する光も少ないので、造形物1の寸法精度が向上する。
(3)更に、本実施形態では、ベースフィルム9の表面の算術平均粗さRaが、2μm以下であるので、ベースフィルム9の表面には過度な凹凸が形成されていない。従って、ベースフィルム9に接触する部分の造形物1の表面の算術平均粗さRaも2μm以下である。そのため、造形物1の表面として、凹凸の少ないものが要求される場合(例えば人工骨等)に好適である。
(4)また、本実施形態では、スラリー中にセラミックスを30体積%以上含むので、造形物1を製造する材料であるスラリーとして好適なセラミック濃度を有している。
[1−5.特許請求の範囲との対応関係]
ここで、実施形態と特許請求の範囲との文言の対応関係について説明する。
本実施形態の、造形物1、造形ステージ7、ベースフィルム9、ブレード11は、それぞれ、本発明の、造形物、基台、ベースフィルム、ブレードの一例に相当する。
[2.他の実施形態]
本発明は前記実施形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
(1)例えば、前記実施形態では、レーザ光を用いて光硬化性樹脂を用いて造形物の製造を行ったが、それとは別に、熱により硬化する材料を用いて造形物を製造してもよい。
例えば熱硬化性樹脂を含むスラリーに対して、例えばCOレーザを用いてレーザ光を照射して加熱し、その熱によって所定部分を硬化させて造形物を製造してもよい。
(2)また、スラリーに添加するセラミックスとしては、上述したアルミナに限らず、ジルコニア、ハイドロキシアパタイト、窒化珪素、窒化アルミニウム、炭化珪素等を採用できる。
(3)さらに、製造する造形物としては、スラリーの材料(例えばセラミック材料)に応じて、人工骨、切削工具、ベアリング部材、絶縁部材、耐摩耗部材等が挙げられる。
(4)なお、本実施形態の構成を適宜組み合わせることができる。
1…造形物
3…角柱
7…造形ステージ
9…ベースフィルム
11…ブレード

Claims (5)

  1. 基台上に配置されたベースフィルムの表面上に、スラリーを供給する第1工程と、
    前記スラリー上にて、前記ベースフィルムの表面に沿ってブレードを移動させることにより、前記スラリーの成形を行う第2工程と、
    前記成形されたスラリーの一部を硬化させる第3工程と、
    前記一部が硬化したスラリーの表面上に、前記スラリーを供給する第4工程と、
    を有し、
    前記第1工程、前記第2工程、及び前記第3工程の後に、前記第4工程、前記第2工程、及び前記第3工程を、この順番にて1回又は複数回実施して、造形物を製造する造形物の製造方法であって、
    前記ベースフィルムの前記表面の算術平均粗さRaが、0.3μm以上であることを特徴とする造形物の製造方法。
  2. 前記スラリーは感光性を有し、該スラリーを露光して硬化させることを特徴とする請求項1に記載の造形物の製造方法。
  3. 前記ベースフィルムのヘーズ値は、30%以上であることを特徴とする請求項2に記載の造形物の製造方法。
  4. 前記ベースフィルムの前記表面の算術平均粗さRaが、2μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の造形物の製造方法。
  5. 前記スラリー中に、セラミックスを30体積%以上含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の造形物の製造方法。
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