以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
<画像形成装置の説明>
本実施例では、画像形成装置として電子写真方式のカラーレーザビームプリンタ1(以下、プリンタ1と表記する)を示す。図1は、プリンタ1の概略構成図である。
プリンタ1は、タンデム式のカラープリンタであり、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色の現像剤であるトナーを重ね合わせることで、記録紙P(記録材)にカラー画像を形成することができる。収容部の一例である2aは記録紙Pを収容するカセット、2bは記録紙Pを収容する手差しトレイである。プリンタ1には、カセット2aから記録紙Pを給紙する給紙ローラ4a、手差しトレイ2bから記録紙Pを給紙する給紙ローラ4bが設けられている。また、プリンタ1には、給紙ローラ4a又は4bによって給紙された記録紙Pを搬送する搬送ローラ対5、レジストレーションローラ対6(以下、レジローラ対6と表記する)が設けられている。レジローラ対6の近傍には、記録紙Pを検知するレジストレーションセンサ34(以下、レジセンサ34と表記する)が設けられている。レジセンサ34は記録紙Pの先端(記録紙Pの搬送方向において下流側の端部)と記録紙Pの後端(記録紙Pの搬送方向において上流側の端部)を検知する。
11(11Y、11M、11C、11K)はトナーを担持する感光ドラムであり、不図示の駆動源によって図1の矢印方向に回転する。12(12Y、12M、12C、12K)は感光ドラム11を一様に所定の電位に帯電する帯電ローラである。13(13Y、13M、13C、13K)は、帯電された感光ドラム11を露光し、感光ドラム11に静電潜像を形成するレーザスキャナである。14(14Y、14M、14C、14K)は、感光ドラム11に形成された静電潜像を可視化するためのトナーを収容するプロセスカートリッジである。15(15Y、15M、15C、15K)は、プロセスカートリッジ14に収容されたトナーを感光ドラム11に送り出し、感光ドラム11にトナー像を形成する現像ローラである。
16(16Y、16M、16C、16K)は、感光ドラム11に形成されたトナー像を中間転写ベルト17に一次転写する一次転写ローラである。中間転写ベルト17は、18の駆動ローラによって図1の矢印方向に回転する。19は、中間転写ベルト17上に形成された画像を記録紙Pに転写するための二次転写ローラ(転写部)である。20は、記録紙Pを搬送させながら、記録紙Pに二次転写されたトナー像を記録紙Pに溶融定着させる定着器(定着部)である。記録紙Pに画像を形成する画像形成部50は、以上説明した感光ドラム11から定着器20によって構成される。21は、定着器20によって定着が行われた記録紙Pを排紙する排紙ローラである。
30は記録紙Pの種類を判別するために、記録紙Pの特性を検知する記録材検知ユニット(以下、検知ユニット30と表記する)である。検知ユニット30は、記録紙Pの特性として記録紙Pの表面性を検知する表面性検知部32から構成される。表面性検知部32は、後述する照射部32a、結像部32b、撮像部32cから構成されており、記録紙Pの表面性(凹凸状態)を検知する。
10は、プリンタ1の動作を制御する制御部である。制御部10にはCPU33、プリンタ1を制御するのに必要なデータの演算や一時的な記憶等に使われるRAM(不図示)、プリンタ1を制御するプログラムや各種データを格納するROM(不図示)等が搭載されている。制御部10の役割について詳しくは後述する。
<記録材検知ユニットの説明>
次に、検知ユニット30について詳細に説明する。図2は、検知ユニット30に含まれる表面性検知部32の構成を示しており、異なる3つの方向から表面性検知部32を見た時の図をそれぞれ示している。
図2(a)は記録紙Pの搬送面と平行で、記録紙Pの搬送方向と直交する方向(記録紙Pの幅方向)から表面性検知部32を見た時の図である。表面性検知部32は、照射部32a、結像部32b、撮像部32cから構成される。照射部32aは記録紙Pの表面に光を照射する。照射部32aは記録紙Pの表面に対して10°から15°の角度で光を照射する。結像部32bは照射部32aから照射され、記録紙Pの表面で反射した光を撮像部32cに結像する。撮像部32cは、結像部32bにより結像された光を記録紙Pの表面画像として撮像する。
図2(b)は記録紙Pの搬送方向において、表面性検知部32を上流側から見た時の図である。図2(c)は記録紙Pの搬送面に対して垂直な方向から表面性検知部32を見た時の図である。図2(b)、図2(c)からわかる通り、照射部32aは記録紙Pの搬送方向と平行に光を照射する。また、撮像部32cは、CMOS(Complementary METAL Oxide Semiconductor)ラインセンサであり、図2(d)に示すように、光を受光する受光素子が238個配置されている。1つの受光素子は1つの画素に対応している。ゆえに、このCMOSラインセンサによって1回撮像をすることにより、238画素分の画像を得ることができる。1つの画素のサイズは42μm×42μmである。複数の受光素子は記録紙Pの搬送面と平行で、記録紙Pの搬送方向と直交する方向(記録紙Pの幅方向)に沿って並んで配置されている。また、記録紙Pを搬送させながら一連の撮像動作をくり返し、撮像したライン状の画像を記録紙Pの搬送方向につなげていくことによって、表面性検知部32は(撮像回数×238画素)のサイズの画像を得ることができる。
なお、画素のサイズ、画素の個数については一例であり、求める検知精度やコストまたはサイズの制約に応じて適時設定可能である。また、本実施例では一列分だけ画素を配置したCMOSラインセンサの構成で説明するものの、複数列に配置したCMOSエリアセンサの構成でも適応可能である。
次に、検知ユニット30を構成する表面性検知部32の動作概要について説明する。図3は検知ユニット30のブロック図を示している。検知ユニット30は前述した表面性検知部32に加え、照射制御部44と画像検知部45を有する。
まず、記録紙Pが一定の速度で表面性検知部32の検知位置まで搬送されてくると、制御部10は照射制御部44へ検知動作を開始する信号を送信する。照射部32aは照射制御部44の制御にしたがって記録紙Pの表面に光を照射する。記録紙Pに照射された光は、結像部32bを介し、撮像部32cにて撮像される。撮像された画像は記録紙Pの表面画像であり、画像検知部45へ出力される。ここで取得される表面画像は、記録紙Pの表面性(凹凸状態)によって変化する。詳しくは後述するが、画像検知部45は表面画像における凹凸の深さから記録紙Pの表面性を表す特徴量を求め、制御部10へ出力する。制御部10は特徴量を得ると、照射制御部44へ検知動作を停止する信号を送信する。制御部10は得られた特徴量から記録紙Pの種類(表面性)を判別し、判別した種類に応じて画像形成部50の画像形成条件を制御する。
例えば、同じ厚みをもつ場合、コート紙と呼ばれる表面が滑らかな記録紙Pは、ラフ紙と呼ばれる表面が粗い記録紙Pに比べて抵抗値が低い。そのため、ラフ紙に比べてトナー像を転写するために多くの転写電流や高い転写電圧が必要となる。また、コート紙はラフ紙に比べてトナー像を定着させるために必要な定着温度が低く、必要な定着時間も短いため、定着温度や記録紙Pの搬送速度などの定着条件を変更する必要がある。このように、様々な画像形成条件を記録紙Pの種類に応じて制御することによって、記録紙Pに形成される画像の画質を向上させることができる。
また、画像形成条件としては、例えば他に記録紙Pの搬送速度、一次転写ローラ16や二次転写ローラ19に印加する電圧値、定着器20で記録紙Pに画像を定着する際の温度等が考えられる。さらに制御部10は、画像形成条件として画像を転写する際における一次転写ローラ16や二次転写ローラ19の回転速度を制御してもよい。さらに制御部10は、画像形成条件として画像を定着する際における定着器20が有する定着ローラの回転速度を制御してもよい。また、制御部10は記録紙Pの種類を判別することなく、算出した特徴量の値から直接的に画像形成条件を制御してもよい。
<記録材の繊維方向に関する説明>
次に、記録紙Pの繊維方向(漉き目ともいう)が記録紙Pの種類の判別に対して与える影響について説明する。図4は所定の種類の記録紙Pの表面画像を撮像した際に確認される凹凸状態を示した図である。記録紙Pに線が記載されている部分は、凹凸における谷の部分(影となる部分)を示しており、線と線の間の部分は、凹凸における山の部分を示している。図4において記録紙Pの繊維方向は記録紙Pの長手方向と平行な方向である。このような記録紙Pを縦目の記録紙Pと表記する。また、図4には記載されていないが、記録紙Pの短手方向と平行な方向の繊維方向をもつ記録紙Pを横目の記録紙Pと表記する。記録紙Pの繊維方向は記録紙Pの種類ごとに異なるものの、同じ種類であれば大きく変わることはない。
図4(a)は記録紙Pの長手方向と平行な方向に記録紙Pが搬送されるように、カセット2aや手差しトレイ2bに記録紙Pを設置した状態(以下、縦搬送と表記する)を示している。図4(a)は、記録紙Pの繊維方向と記録紙Pの搬送方向が平行な状態である。表面画像は記録紙Pの搬送方向と直交する方向に複数のライン(第1ライン乃至第mライン)を有し、記録紙Pの搬送方向と平行な方向に複数のライン(第1ライン乃至第nライン)を有している。本実施例ではm×nのサイズの表面画像が得られており(図2を用いて説明した通りmは撮像回数、nは238)、各ライン上には複数の画素が並んでいる。図4(a)において、記録紙Pの搬送方向と直交する方向の各ライン上に並ぶ複数の画素の出力値の変化量を求めると、その値は大きくなる。これは記録紙Pの山の部分と谷の部分を交互に検知しているためである。一方、図4(a)において、記録紙Pの搬送方向と平行な方向の各ライン上に並ぶ複数の画素の出力値の変化量を求めると、その値は小さくなる。これは記録紙Pの山の部分のみまたは谷の部分のみを検知しているためである。
図4(b)は記録紙Pの短手方向と平行な方向に記録紙Pが搬送されるように、カセット2aや手差しトレイ2bに記録紙Pを設置した状態(以下、横搬送と表記する)を示している。図4(b)は、記録紙Pの繊維方向と記録紙Pの搬送方向が垂直な状態である。図4(b)において、記録紙Pの搬送方向と直交する方向の各ライン上に並ぶ複数の画素の出力値の変化量を求めると、その値は小さくなる。これは記録紙Pの山の部分のみまたは谷の部分のみを検知しているためである。一方、図4(b)において、記録紙Pの搬送方向と平行な方向の各ライン上に並ぶ複数の画素の出力値の変化量を求めると、その値は大きくなる。これは記録紙Pの山の部分と谷の部分を交互に検知しているためである。
図5は異なる2種類の記録紙Pの表面画像を撮像し、縦搬送と横搬送の場合においてそれぞれ得られた特徴量を示した図である。図5においては、表面が平滑な普通紙Aと、表面が粗い普通紙Bの結果を示している。記録紙Pのサイズは、いずれもA4(縦方向297mm×横方向210mm)である。
図5(a)は、特徴量として直交差分積算を求めた結果を示している。直交差分積算とは、記録紙Pの搬送方向と直交する方向の各ライン上に並ぶ複数の画素の出力値の変化量を積算した値である。ここで所定のラインにおける複数の画素の出力値の変化量は以下に示す方法で求められる。例えば、第1ライン上には連続して順番に並んだ第1の画素、第2の画素、第3の画素…第nの画素が存在している。画像検知部45は、第1の画素の出力値と第2の画素の出力値の差分の絶対値を求め、第2の画素の出力値と第3の画素の出力値の差分の絶対値を求める。そして、この2つの差分の絶対値を積算する。上記の計算を第1ライン上に存在する全ての画素について継続して行うことで、第1ラインにおける複数の画素の出力値の変化量を求める。画像検知部45はさらに他のライン(第2ライン乃至第mライン)についても同様の計算を行い、全てのラインの変化量を積算することで直交差分積算を求める。なお、所定のライン上に並んだ複数の画素の出力値の中から最大値と最小値を求め、最大値と最小値の差分の絶対値を求めることによって、所定のラインにおける複数の画素の出力値の変化量を求めてもよい。
ここで、図5(a)に記載されている通り、縦搬送の場合で表面が平滑な普通紙Aと表面が粗い普通紙Bの直交差分積算を比較すると、普通紙Bの方が普通紙Aよりも大きい値が得られている。従って、この2つの値の間に閾値を設けることによって制御部10は普通紙Aと普通紙Bを判別することができる。一方、横搬送の場合、図4に記載した通り、普通紙Aと普通紙Bのいずれもが記録紙Pの繊維方向の影響によって直交差分積算の値が小さくなっている。そのため、縦搬送の場合の普通紙Aと横搬送の場合の普通紙Bの直交差分積算の値が近いものになっており、縦搬送か横搬送か不明な状態では制御部10は普通紙Aと普通紙Bを判別することができない。
図5(b)は、特徴量として平行差分積算を求めた結果を示している。平行差分積算とは、記録紙Pの搬送方向と平行な方向の各ライン上に並ぶ複数の画素の出力値の変化量を積算した値である。ここで所定のラインにおける複数の画素の出力値の変化量は既に説明した方法と同じ方法で求められる。画像検知部45は全てのライン(第1ライン乃至第nライン)について変化量を求め、これらを積算することで平行差分積算を求める。
図5(b)に記載されている通り、平行差分積算についても直交差分積算と同様のことがいえる。すなわち、縦搬送の場合で表面が平滑な普通紙Aと表面が粗い普通紙Bの平行差分積算を比較すると、普通紙Bの方が普通紙Aよりも大きい値が得られている。従って、この2つの値の間に閾値を設けることによって制御部10は普通紙Aと普通紙Bを判別することができる。一方、横搬送の場合、図4に記載した通り、普通紙Aと普通紙Bのいずれもが記録紙Pの繊維方向の影響によって平行差分積算の値が大きくなっている。そのため、横搬送の場合の普通紙Aと縦搬送の場合の普通紙Bの平行差分積算の値が近いものになっており、縦搬送か横搬送か不明な状態では制御部10は普通紙Aと普通紙Bを判別することができない。
従来は、特徴量として直交差分積算のみまたは平行差分積算のみを用いて記録紙Pの種類の判別を行っていた。そのため、上記の通り縦搬送と横搬送が混在する状態において記録紙Pの種類の判別精度が低下し、画像品質が劣化する場合があった。
<記録材の種類の判別方法に関する説明>
本実施例における記録紙Pの表面性(種類)の判別精度を改善する方法について説明する。本実施例では、異なる方向に沿って算出した2つの特徴量(直交差分積算、平行差分積算)を用いて記録紙Pの表面性(種類)の判別を行う。図6にフローチャートを示す。図6のフローチャートに基づく制御は、制御部10に含まれるCPU33等が不図示のROMに記憶されているプログラムに基づき実行する。
制御部10はPC等の外部機器(不図示)から印刷指示を受信後、カセット2aまたは手差しトレイ2bから記録紙Pの供給を開始させる(S101)。制御部10は記録紙Pが表面性検知部32の検知位置に到達したかどうか判断し(S102)、到達したと判断した場合は照射制御部44に対して検知動作を開始する指示を出す(S103)。画像検知部45は撮像部32cによって撮像された表面画像から、前述した方法によって直交差分積算と平行差分積算を求める(S104、S105)。制御部10は得られた直交差分積算と平行差分積算を平均し、得られた平均値に基づいて記録紙Pの表面性(種類)を判別する(S106)。そして、制御部10は判別した表面性(種類)に応じて画像形成部50を含む各プロセス部材の画像形成条件を決定し(S107)、決定した画像形成条件で記録紙Pに画像を形成させる(S108)。
図6のフローチャートに記載した通り、本実施例では直交差分積算と平行差分積算の平均を計算している。図7は、図5に記載した2種類の普通紙(普通紙A、普通紙B)の直交差分積算と平行差分積算の平均を示している。普通紙Aと普通紙Bのいずれも、縦搬送と横搬送においてほぼ同じ値が得られている。したがって、制御部10は搬送されてきた記録紙Pが縦搬送か横搬送か不明な状態であっても、精度良く記録紙Pの表面性を判別し、画像形成条件を決定することができる。なお、本実施例においては直交差分積算と平行差分積算の単純平均を用いたが、重みづけ平均など他の演算結果に基づいて判別するようにしてもよい。
図6のフローチャートにおいては、記録紙Pの表面性を判別した後に表面性に応じた画像形成条件を決定していたが、これに限定されない。例えば、図8に示すようなテーブルを不図示のROMに記憶させておき、制御部10が記録紙Pの表面性を判別することなく、得られた特徴量から直接的に定着温度などの画像形成条件を決定してもよい。図8のテーブルは、直交差分積算と平行差分積算の平均と設定すべき定着温度を対応付けて示している。例えば、本実施例において、粗い普通紙Bが横搬送で搬送された場合、直交差分積算は500〜550の間になり、平行差分積算は600〜650の間になる。その結果、直交差分積算と平行差分積算の平均値は、550〜600となるため、定着温度は180度と設定される。図8に示した関係は一例であり、検知ユニット30とプリンタ1の条件に合わせて適宜設定すればよい。
以上より、記録紙Pの表面画像から異なる方向に沿って2つの特徴量を求め、それらを組み合わせることによって、縦搬送や横搬送によらず記録紙Pの種類を精度良く判別することができる。また照射部32aである光源を2つ設けることもないので、コストを抑えることができる。従って、本実施例によれば、コストアップすることなく、記録材の繊維方向による影響を抑え、記録材の種類を精度良く判別し、高品質な画像を形成することができる画像形成装置を提供することができる。
(実施例2)
実施例1では、撮像された1つの表面画像に対して、異なる方向に沿って2つの特徴量を求め、その結果を平均することで、記録紙Pの表面性を精度良く判別し、画像形成条件を決定していた。本実施例では、異なる方向に沿って2つの特徴量を求め、その結果から記録紙Pの相対的な繊維方向を判別し、画像形成条件を決定する方法について説明する。主な部分の説明は実施例1と同様であり、ここでは実施例1と異なる部分のみを説明する。
まず、相対的な繊維方向とは、記録紙Pの搬送方向に対する繊維方向であり、本実施例においては実際に縦目の記録紙Pか横目の記録紙Pかを判別するものではない。つまり、縦目の記録紙Pを縦搬送で搬送した場合と、横目の記録紙Pを横搬送で搬送した場合は、いずれも記録紙Pの搬送方向に対して平行な方向の繊維方向をもつことなる。本実施例においてはこの2つは相対的に同じ繊維方向をもつものとして取り扱う。
本実施例におけるフローチャートを図9に示す。図9のフローチャートに基づく制御は、制御部10に含まれるCPU33等が不図示のROMに記憶されているプログラムに基づき実行する。
図9のフローチャートにおけるS201乃至S205の制御は、図6のフローチャートにおけるS101乃至S105の制御と同じであるため説明を省略する。S206において、制御部10は得られた直交差分積算と平行差分積算の比率を求め、得られた比率に基づいて記録紙Pの相対的な繊維方向(種類)を判別する。そして、制御部10は判別した繊維方向(種類)に応じて画像形成部50を含む各プロセス部材の画像形成条件を決定し(207)、決定した画像形成条件で記録紙Pに画像を形成させる(S208)。
また、相対的な繊維方向に応じて決定する画像形成条件としては、例えば定着温度がある。相対的な記録紙Pの繊維方向は大まかに2つに分けることができる。1つは記録紙Pの搬送方向と平行な方向の繊維方向であり、もう1つは記録紙Pの搬送方向と直交する方向の繊維方向である。一般的に搬送方向と垂直な方向の繊維方向をもつ記録紙Pは、搬送方向と平行な方向の繊維方向をもつ記録紙Pに比べてカールしやすく、定着器20に巻き付きやすいことが知られている。そのため、画像形成条件を決定する上では、記録紙Pのカールを抑えるために、搬送方向と平行な方向の繊維方向をもつ記録紙Pに比べて、搬送方向と垂直な方向の繊維方向をもつ記録紙Pの定着温度を低くすることが好ましい。
図9のフローチャートに記載した通り、本実施例では直交差分積算と平行差分積算の比率を計算している。図10は、図5に記載した2種類の普通紙(普通紙A、普通紙B)の直交差分積算と平行差分積算の比率(平行差分積算値/直交差分積算値)を示している。この比率が小さい状態とはすなわち、平行差分積算値よりも直交差分積算値の方が大きい状態を示すので、記録紙Pの繊維方向は記録紙Pの搬送方向と平行な方向に近いと判別できる。一方、この比率が大きい状態とはすなわち、直交差分積算値よりも平行差分積算値の方が大きい状態を示すので、記録紙Pの繊維方向は記録紙Pの搬送方向と直交する方向に近いと判別できる。
図10において、縦搬送の場合は、普通紙Aと普通紙Bのいずれも0.9から1.0の値を示している。また、横搬送の場合は、普通紙Aと普通紙Bのいずれも1.15から1.3の値を示している。これは、縦搬送の場合、普通紙Aと普通紙Bのいずれも搬送方向と平行な方向に近い繊維方向をもつことを示し、横搬送の場合、普通紙Aと普通紙Bのいずれも搬送方向と直交する方向に近い繊維方向をもつことを示している。すなわち、普通紙Aと普通紙Bのいずれも図4に示した所定の種類の記録紙Pと似た繊維方向をもつことを示している。なお、本実施例においては直交差分積算と平行差分積算の比率を用いたが、差分など他の演算結果に基づいて判別するようにしてもよい。
図9のフローチャートにおいては、記録紙Pの相対的な繊維方向を判別した後に繊維方向に応じた画像形成条件を決定していたが、これに限定されない。例えば、図11に示すようなテーブルを不図示のROMに記憶させておき、制御部10が記録紙Pの相対的な繊維方向を判別することなく、得られた特徴量から直接的に定着温度などの画像形成条件を決定してもよい。図11のテーブルは、平行差分積算値及び直交差分積算と平行差分積算の比率と設定すべき定着温度を対応付けて示している。例えば、本実施例において、粗い普通紙Bが横搬送で搬送された場合、直交差分積算は500〜550の間になり、平行差分積算は600〜650の間になる。その結果、直交差分積算と平行差分積算の比率は、1.15〜1.3となるため、定着温度は183度と設定される。図11に示した関係は一例であり、検知ユニット30とプリンタ1の条件に合わせて適宜設定すればよい。
以上より、記録紙Pの表面画像から異なる方向に沿って2つの特徴量を求め、それらを組み合わせることによって、記録紙Pの搬送方向に対する記録紙Pの相対的な繊維方向を判別することができる。また照射部32aである光源を2つ設けることもないので、コストを抑えることができる。従って、本実施例によれば、コストアップすることなく、記録材の繊維方向による影響を抑え、記録材の種類を精度良く判別し、高品質な画像を形成することができる画像形成装置を提供することができる。
(実施例3)
実施例1や実施例2では、撮像された1つの表面画像に対して、異なる方向に沿って2つの特徴量を求め、記録紙Pの表面性や記録紙Pの相対的な繊維方向を判別していた。本実施例ではさらに、記録紙Pのサイズや記録紙Pの向きを検知することにより、より精度良く画像形成条件を制御する方法について説明する。主な部分の説明は実施例1と同様であり、ここでは実施例1と異なる部分のみを説明する。
図13に本実施例におけるカセット2a(載置部)の内部構造を示す。図13(a)はカセット2aに記録紙Pを載置する様子を示す上面図である。図13(b)はカセット2aに記録紙Pが収容されている様子を示す正面図である。カセット2aは記録紙Pの端部の位置を規制するサイド規制板50a、50b、後端規制板51を有する。サイド規制板50a、50bは図13(a)の矢印Y方向において記録紙Pの端部の位置を規制する。後端規制板51は図13(a)の矢印X方向において記録紙Pの端部の位置を規制する。これにより、カセット2a内で記録紙Pが移動しないように、記録紙Pの収容位置が固定される。また、カセット2aにはサイド規制板50a、50bと後端規制板51の位置を検知する機構が設けられており、それらの位置を検知することによって制御部10は記録紙Pのサイズ及び記録紙Pの向きを特定することができる。
具体的な例を示す。図14(a)、(b)、(c)は図13(a)と同じ方向から見たカセット2aの上面図である。図14(a)は、小サイズ(例えばA4サイズ)の記録紙P1を横搬送の状態で収容した様子を示している。図14(b)は、小サイズの記録紙P1を縦搬送の状態で収容した様子を示している。図14(c)は、大サイズ(例えばA3サイズ)の記録紙P2を縦搬送の状態で収容した様子を示している。大サイズの記録紙P2の収容方法は縦搬送に一意に決定されるのに対して、小サイズの記録紙P1の収容方法は縦搬送又は横搬送に任意に設定が可能である。
また、本実施例においてはカセット2aから記録紙Pを給紙する場合の制御について説明したがこれに限定されない。本実施例の制御は、トレイ2bから記録紙Pを給紙する場合にも適用できる。ただし、トレイ2bにサイド規制板50a、50bや後端規制板51が設けられているものとする。
以上説明した方法によって、制御部10は記録紙Pのサイズと向きを検知することができる。そして、実施例1又は2により得られた記録紙Pの表面性や記録紙Pの相対的な繊維方向といった情報に加え、記録紙Pのサイズや向きといった情報を用いることで、さらに精度良く画像形成条件を制御する。以下、その方法について具体的に説明する。
まず、A3サイズの記録紙P2(長辺の長さLa、短辺の長さLbとする)について図15、16を用いて説明する。A3サイズの記録紙P2は縦目の記録紙P2−Tと、横目の記録紙P2−Yに分類される。そのため、図15に縦目の記録紙P2−Tを縦搬送した場合について示し、図16に横目の記録紙P2−Yを縦搬送した場合について示している。また、図14で説明した通り、本実施例においてはA3サイズの記録紙P2を横搬送することはできず、縦搬送しかすることができない。
図15及び図16において(a)(b)(c)はそれぞれ上面、正面、側面の3方向から転写ニップ付近を拡大して見た時の様子を示している。また、(c)には記録紙P2の漉き目の状態が理解し易いように2点鎖線MDを記載しており、(a)(b)には漉き目を有する記録紙P2の表面状態をデフォルメした波型で表現している。また、(b)において中間転写ベルト17の移動方向、記録紙P2の搬送方向をそれぞれ矢印で示している。また、(a)において二次転写ローラ19の幅方向における長さをLrで示し、(c)において記録紙P2の長辺の長さをLa、短辺の長さをLbで示している。
A3サイズの記録紙P2について二次転写ローラ19の転写電流値を設定する方法について説明する。図15(a)においては記録紙P2−Tの表面が漉き目の影響により波目状態であるため、二次転写ローラ19と接触する面積が小さくなっている。一方、図16(a)においては二次転写ローラ19の表面に対して記録紙P2−Yの漉き目が平行な状態であるため、二次転写ローラ19と接触する面積は大きくなっている。従って、図15(a)の場合は、図16(a)の場合に比べて電気抵抗値が大きくなる。以上より、図15(a)の場合は、図16(a)の場合に比べて転写電流値を大きく設定する。
次に、A4サイズの記録紙P1(長辺の長さLc、短辺の長さLdとする)について図17乃至20を用いて説明する。A4サイズの記録紙P1は縦目の記録紙P1−Tと、横目の記録紙P1−Yに分類される。また、図14で説明した通り、本実施例においてはA4サイズの記録紙P1を縦搬送することもできるし、横搬送することもできる。従って、図17に縦目の記録紙P1−Tを縦搬送した場合について示し、図18に縦目の記録紙P1−Tを横搬送した場合について示している。そして、図19に横目の記録紙P1−Yを縦搬送した場合について示し、図20に横目の記録紙P1−Yを横搬送した場合について示している。
図17及び図18は、図15と同様に異なる3方向から転写ニップ付近を拡大して見た時の様子を示している。図15と異なるのは記録紙P1のサイズであり、(c)において記録紙P1の長辺の長さをLc、短辺の長さをLdで示している。
A4サイズの縦目の記録紙P1−Tについて二次転写ローラ19の転写電流値を設定する方法について説明する。図17(a)においては、二次転写ローラ19の幅方向における長さLrと記録紙P1−Tの短辺の長さLdの差分だけ、転写ニップにおいて記録紙P1−Tが介在しない領域がある。この領域は、記録紙P1−Tの両側に(Lr−Ld)/2の長さだけ存在する。この領域では記録紙P1−Tが介在する領域に比べて、転写電流が流れ易くなる。そのため、図17(a)の場合において記録紙P1−Tにトナー像を転写させるためには、図15(a)の場合に比べて転写電流値を大きく設定する。また、A4サイズの縦目の記録紙P1−Tを横搬送する場合、転写ニップの様子は図18(a)の方向から見ると図16(a)と変わらない。従って、図18(a)の場合は、図16(a)と同じ転写電流値を設定すれば良い。
図19及び図20は、図15と同様に異なる3方向から転写ニップ付近を拡大して見た時の様子を示している。図15と異なるのは記録紙P1のサイズであり、(c)において記録紙P1の長辺の長さをLc、短辺の長さをLdで示している。
A4サイズの横目の記録紙P1−Yについて二次転写ローラ19の転写電流値を設定する方法について説明する。図19(a)においては、二次転写ローラ19の幅方向における長さLrと記録紙P1−Tの短辺の長さLdの差分だけ、転写ニップにおいて記録紙P1−Tが介在しない領域がある。この領域は、記録紙P1−Tの両側に(Lr−Ld)/2の長さだけ存在する。この領域では記録紙P1−Tが介在する領域に比べて、転写電流が流れ易くなる。そのため、図19(a)の場合において記録紙P1−Yにトナー像を転写させるためには、図16(a)の場合に比べて転写電流値を大きく設定する。また、A4サイズの横目の記録紙P1−Tを横搬送する場合、転写ニップの様子は図20(a)の方向から見ると図15(a)と変わらない。従って、図20(a)の場合は、図15(a)と同じ転写電流値を設定すれば良い。
なお、画像形成条件としては二次転写ローラ19の転写電流値に限らない。本実施例における定着器20の定着温度の設定方法について説明する。
A3サイズの縦目の記録紙P2−Tの場合、従来設定されていた定着温度よりも、低温側に定着温度を設定することにより、搬送方向と平行な軸方向にカールの曲率中心軸を持つようなカールの発生を回避することができる。このような、搬送方向に対してU字状(またはその逆U字)のカール状態の記録紙P2−Tの搬送は、定着後の搬送工程において搬送障害を起こし易いので回避させる事が重要である。また、A3サイズの横目の記録紙P2−Yの場合、記録紙P2−Yの先端側を低温側に定着温度を設定することにより、搬送方向と直交軸方向にカールの曲率中心軸を持つようなカールの発生を回避することができる。また、定着器20を構成するローラ部への巻付き等を予防することができる。これは記録紙P2−Yの搬送方向先端部は白地の余白部分が設定されていると共にオフィス等で使用される文書等では実質的に画像が形成されていない場合が多い。これらを含んだ先端部では、画像形成用のトナーが記録紙P2−Yに転写されていないのでトナーを溶融させる定着熱を加える必要が低い。それ故、先端側において定着温度を低温に設定することが十分可能な事により、トナーが紙面上で定着溶融時に定着ローラ側に移着しようとして定着ローラ部から記録紙が分離しにくい状態の発生を回避することができる。記録紙P2−Yがローラ部からの分離が正常に行われなかった場合には、ローラ部へ記録紙P2−Yが巻き付いてしまい、画像形成プロセスが中断してしまう事が起きる可能性がある。しかし、先端部がローラ部から分離した状態で記録紙P2−Yを搬送することができれば、記録紙P2−Yは後端部に向けて連続的に搬送されるのでローラ部への巻付きを防止することができる。
また、A4サイズで縦目の記録紙P1−Tの縦搬送時には定着温度を主走査方向において制御することにより、幅方向での端部昇温を防止し、搬送方向と平行軸側にカールの曲率中心を持つようなカールの発生を回避することができる。また、A4サイズで縦目の記録紙P1−Tの横搬送時であれば、記録紙の先端側を低温側に定着温度を設定することにより、定着器20を構成するローラ部への巻付き等を予防することが可能となる。
ここで、A3機用の定着器20を構成しているローラ対で構成されるニップ部に、A4サイズの記録紙P1を横搬送する時のように通紙時に記録紙P1がローラ全幅に存在していれば、定着熱が均等に記録紙P1に伝達するので熱的な問題は無い。しかし、A4サイズの記録紙P1を縦搬送する時には、A3機用の定着器20の主走査方向における端部では記録紙P1が存在しない領域が存在してくるので、定着器20のローラ端部側で昇温が著しく発生する場合がある。これを端部昇温と称する。
また、A4サイズで横目の記録紙P1−Yの縦搬送時には定着温度を主走査方向において制御することにより、幅方向での端部昇温を防止し、記録紙P1−Yの先端側を低温側に定着温度を設定する。これにより定着器20を構成するローラ部への巻付き等を予防することが可能となる。また、A4サイズで横目の記録紙P1−Yの横搬送時には、従来設定されていた定着温度よりも、低温側に定着温度を設定することにより、搬送方向と平行軸側にカールの曲率中心を持つようなカールの発生を回避することができる。
以上より、本実施例によれば実施例1に加えて以下の効果がある。つまり、記録材のサイズや記録材の向きを検知することにより、さらに精度良く記録材の種類を判別し、高品質な画像を形成することができる画像形成装置を提供することができる。
なお、上記の実施例1乃至3において、図2に記載された通り、照射部32aから照射される光の方向と記録紙Pの搬送方向は平行であった。しかし、これに限定されない。例えば、図12に示すような表面性検知部32の構成であってもよい。図12(a)乃至(c)は図2(a)乃至(c)にそれぞれ対応し、異なる3つの方向から表面性検知部32を見た時の図を示している。図12(b)や(c)に記載されている通り、照射部32aは記録紙Pの搬送方向に対して45°斜めの角度から光を照射している。図12の構成において得られる直交差分積算と平行差分積算の差は、図2の構成によって得られる直交差分積算と平行差分積算の差よりも小さくなる。しかしながら、上記の実施例に示した同様の効果が得られる。
また、上記の実施例1乃至3において、画像検知部45は直交差分積算と平行差分積算の2つの特徴量を算出していた。しかし、これに限定されない。2つだけでなく3つ以上の特徴量を求め、それらを組み合わせることによって記録紙Pの種類を判別し、画像形成条件を決定してもよい。また、直交差分積算と平行差分積算のように、直交する方向に沿って2つの特徴量を求めなくてもよい。少なくとも異なる(交差する)方向に沿って2つの特徴量を求めればよい。
また、上記の実施例1及び2は、カセット2aや手差しトレイ2bに収容されている記録紙Pの向きやサイズを検知するための端部規制板などがない構成において特に有用である。上記の実施例においては縦搬送か横搬送か事前に検知することができない構成であっても、精度良く記録紙Pの種類を判別し、画像形成条件を決定することができる。
また、上記の実施例1乃至3において、検知ユニット30はプリンタ1に固定して設けられている構成であったが、検知ユニット30はプリンタ1に対して着脱可能な構成であってもよい。検知ユニット30を着脱可能な構成にすれば、例えば、検知ユニット30が故障した場合にユーザが容易に交換することができる。または単純に検知ユニット30がプリンタ1に対して追加で装着可能な構成であってもよい。
また、上記の実施例1乃至3において、検知ユニット30と制御部10を一体化して記録材判別装置とし、プリンタ1に対して着脱可能な構成にしてもよい。このように、検知ユニット30と制御部10を一体化して交換可能であれば、検知ユニット30の機能を更新したり追加したりする場合に、新たな機能を有するセンサにユーザが容易に交換することができる。または単純に検知ユニット30と制御部10が一体化され、プリンタ1に対して追加で装着可能な構成であってもよい。
また、上記の実施例1乃至3においては、レーザビームプリンタの例を示したが、本発明を適用する画像形成装置はこれに限られるものではなく、インクジェットプリンタ等、他の印刷方式のプリンタ、又は複写機でもよい。