JP6887676B2 - 固定化光触媒およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、エアロゲルを担体とした固定化光触媒およびその製造方法に関し、詳細には、金属有機錯体を担持した固定化光触媒およびその製造方法に関する。
触媒は、均一系触媒と不均一系触媒とに大別される。均一系触媒は、分子触媒あるいは錯体触媒に代表され、反応液に溶解した状態で使用される。一方、不均一系触媒は、固体触媒に代表され、触媒と反応物質とが異なる相の状態で使用される。固体触媒は、分子触媒や錯体触媒と比べて、反応サイトの精密制御により目的とする反応への最適化を進めることは難しい。しかしながら、グリーンケミストリの観点から、生成物との分離が容易であり、再使用が可能であり、耐久性を有する不均一系触媒が有利とされる。
近年、分子触媒や錯体触媒と、固体触媒との両者を兼ね備えた、固定化触媒が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1は、細孔を有する炭素材料に所定の金属錯体を担持させた固体触媒を提供する。特許文献1では、金属錯体の配位子としてフェナントロリンを採用する。しかしながら、固体触媒の触媒活性は、金属錯体からなる均一系触媒のそれに比べて低下することが知られている。
配位子として別のフェナントロリンを採用する金属錯体からなる触媒が開発されている(例えば、非特許文献1〜3)。非特許文献1〜3は、Ru(II)に1,10−フェナントロリンを配位子とする金属錯体からなる光触媒を示す。しかしながら、これらの固定化触媒の開発はされていない。
特開2013−173622号公報
C.V.Krishnanら,J.Am.Chem.Soc.,1985,107,2005−2015 H.Ishidaら,Chem.Lett.,1987,6,1035−1038 D.M.Cropekら,Dalton Trans.,2012,41,13060−13073
本発明の課題は、金属有機錯体の触媒活性を低下させない固定化光触媒およびその製造方法を提供することである。
本発明による金属有機錯体を担持したエアロゲルからなる固定化光触媒は、前記金属有機錯体は、少なくとも、Ru、Pt、Re、Pd、RhおよびIrからなる群から少なくとも1つ選択される金属元素と、前記金属元素に配位する、フタロシアニン、ポルフィリン、ターピリジン、フェナントロリンおよびこれらの誘導体からなる群から選択される配位子とによって錯体形成されており、前記金属有機錯体は、水素結合または疎水性相互作用によって前記エアロゲルに担持されており、12nmより大きく40nm以下の平均細孔径を有し、これにより上記課題を達成する。
0.05g/cm以上2g/cm以下の範囲の密度を有してもよい。
12nmより大きく35nm以下の平均細孔径を有してもよい。
0.05g/cm以上0.5g/cm未満の範囲の密度を有してもよい。
前記エアロゲルは、シリカエアロゲル、カーボンエアロゲル、アルミナエアロゲル、および、シリコーンエアロゲルからなる群から選択されてもよい。
前記シリコーンエアロゲルは、ポリメチルシルセスキオサン(PMSQ)であってもよい。
前記金属有機錯体は、400nm以上700nm以下の範囲の波長に吸収ピークを有してもよい。
前記金属有機錯体は、400nm以上500nm以下の範囲の波長に吸収ピークを有してもよい。
前記配位子は、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基、グアニジノ基、カルボニル基およびアミド基からなる群から選択される官能基を有してもよい。
前記配位子は、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)、アリール基、アルキル基およびシリル基からなる群から選択される疎水基を有してもよい。
前記金属有機錯体は、式(1)で表されてもよい。ここで、Mは、前記金属元素を表す。
Figure 0006887676
前記ZがMPhenであり、前記PがPであり、前記QがQであり、前記RがOHであってもよい。
前記金属有機錯体は、式(2)で表されてもよい。
ここで、nは、2以上の自然数であり、Mは、前記金属元素であり、Zのそれぞれは、MTPy、MTPy、MPhenおよびMPhenからなる群から選択され、Pのそれぞれは、PまたはPである。
Figure 0006887676
前記金属有機錯体は、次式で表されてもよい。
Figure 0006887676
本発明による上述の固定化光触媒の製造方法は、金属有機錯体を含有する溶液にエアロゲルを含侵させるステップ包含し、これにより上記課題を解決する。
前記エアロゲルは、14nm以上50nm以下の平均細孔径を有してもよい。
前記エアロゲルは、0.05g/cm以上2g/cm以下の範囲の密度を有してもよい。
前記エアロゲルは、0.05g/cm以上0.5g/cm未満の範囲の密度を有してもよい。
前記溶液の溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエンおよびTHFからなる群から選択されるか、または、アルコールおよび/またはアセトニトリルと水との組み合わせであってもよい。
前記溶液中の前記金属有機錯体の濃度は、20μM以上60μM以下の範囲であってもよい。
本発明の固定化光触媒は、金属有機錯体を担持したエアロゲルからなるので、固体触媒として機能する。さらに、金属有機錯体は、少なくとも、Ru、Pt、Re、Pd、RhおよびIrからなる群から少なくとも1つ選択される金属元素と、これに配位する、フタロシアニン、ポルフィリン、ターピリジン、フェナントロリンおよびこれらの誘導体からなる群から選択される配位子とによって錯体形成されているため、光触媒活性を有する。金属有機錯体は、水素結合または疎水性相互作用によってエアロゲルに担持されているため、エアロゲルに十分な量を担持でき、高い光触媒活性を可能にする。本発明の固定化光触媒は、金属有機錯体を担持した状態で、12nmより大きく40nm以下の平均細孔径を有するので、反応物質が細孔を通過し、金属有機錯体と良好に接触可能であり、さらに、可視光を散乱することなく透過できるので、金属有機錯体の触媒活性の低下を抑制できる。
実施例/比較例1〜10で使用する有機金属錯体の一覧を示す図 RuPhen−OHを製造するスキームを示す図 PMSQの外観を示す図 PMSQ、MACROおよびODSの窒素吸脱着等温線(a)と細孔径分布(b)とを示す図 実施例3および実施例7の試料の様子を示す図 実施例1〜3、6および7の試料の製造に係る溶液のUV−vis吸収スペクトルを示す図 実施例/比較例8〜10の試料の製造に係る溶液のUV−vis吸収スペクトルを示す図 実施例3の試料の赤外吸収スペクトルを示す図 実施例8の試料の発光の様子(a)と、発光スペクトル(b)とを示す図 実施例8、比較例9〜10の試料の窒素吸脱着等温線(a)と細孔径分布(b)とを示す図 実施例8、比較例9〜10の試料を、反応物質(1H2)を含有する溶液中に浸漬させた様子を示す図 実施例8、比較例9〜10の試料の光触媒活性試験後のH NMRスペクトルを示す図 実施例8、比較例9〜10の試料の触媒回転数(TON)を示す図
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
本願発明者は、光触媒活性を有する金属有機錯体の担体としてエアロゲルに着目し、以下に説明する本発明の固定化光触媒およびその製造方法を見出した。
本発明の固定化光触媒は、金属有機錯体を担持したエアロゲルからなる。ここで、金属有機錯体は、少なくとも、Ru、Pt、Re、Pd、RhおよびIrからなる群から少なくとも1つ選択される金属元素と、これに配位する、フタロシアニン、ポルフィリン、ターピリジン、フェナントロリンおよびこれらの誘導体からなる群から選択される配位子とによって錯体形成されている。このような金属有機錯体は、可視光に対して光触媒活性を有する。
なお、本願明細書において、可視光とは、380nm以上の可視光線を含む光を意図し、そのような光は、太陽光、集光太陽光、あるいは、キセノンランプ、ハロゲンランプ、ナトリウムランプ、蛍光灯、発光ダイオード等の人工光源からの光である。また、本願明細書において、エアロゲルとは、ゲル中に含まれる溶媒を気体に置換した多孔性の任意の物質を意図する。
これら金属有機錯体は、エアロゲルと水素結合または疎水性相互作用によって結合している。これらの結合によってエアロゲルに担持されるので、光触媒活性を示すに十分な量の金属有機錯体を担持でき、担持された金属有機錯体が容易にエアロゲルから脱離することはない。なお、金属有機錯体とエアロゲルとの結合は、例えば、赤外分光法によって得られる赤外吸収スペクトルから確認できる。簡易的には、赤外吸収スペクトルにおいて、エアロゲル特有のOH基(エアロゲルが後述するポリメチルシルセスキオサン(PMSQ)である場合SiOH基)の伸縮振動に基づくピークを有する場合には、疎水性相互作用が生成しており、そのピークを有しない場合には、水素結合が生成されていると判別できる。
本発明の固定化光触媒は、金属有機錯体がエアロゲルに担持された状態で、12nmより大きく40nm以下の平均細孔径を有すれば、特に材料に制限がない。これにより、反応物質が細孔を通過し、金属有機錯体と良好に接触可能であり、さらに、可視光を散乱することなく透過できるので、金属有機錯体の触媒活性の低下を抑制できる。好ましくは、本発明の固定化光触媒は、12nmより大きく35nm以下の平均細孔径を有する。これにより上記効果を確実にする。さらに好ましくは、14nm以上32nm以下の平均細孔径を有する。
本発明の固定化光触媒は、好ましくは、0.05g/cm以上2g/cm以下の範囲の密度を有する。これにより、本発明の固定化光触媒は、透過性に優れる。本発明の固定化光触媒は、より好ましくは、0.05g/cm以上0.5g/cm未満の範囲の密度を有する。より軽い密度範囲に制御されることによって、可視光を80%以上透過できる。さらに好ましくは、本発明の固定化光触媒は、0.1g/cm以上0.5g/cm未満の範囲の密度を有する。
本発明の固定化光触媒において、エアロゲルは、好ましくは、シリカエアロゲル、カーボンエアロゲル、アルミナエアロゲル、および、シリコーンエアロゲルからなる群から選択されるエアロゲルである。これらのエアロゲルは、入手可能であり、製造方法が確立しているため、後述の所定の平均細孔径を有するエアロゲルを得ることができる。
エアロゲルは、好ましくは、シリコーンゲルの中でも、ポリメチルシルセスキオサン(PMSQ)である。PMSQは、SHSiO1.5の三次元ネットワーク構造を有しており、上述の平均細孔径ならびに密度を達成できる。PMSQは、例えば、Kanamoriら,Adv.Mater.,2007,19,1589−1593等に製造方法が開示されている。
本発明の固定化光触媒において、金属有機錯体は、可視光に対して触媒活性を有するが、中でも、400nm以上650nm以下の波長の範囲に吸収ピークを有する。このため、エネルギーの低い長波長の光を触媒に利用できる。さらに好ましくは、金属有機錯体は、400nm以上500nm以下の波長の範囲に吸収ピークを有するものが選択される。これにより、400nm以上500nm以下の可視光を有効に使用できる。
金属有機錯体の配位子は、好ましくは、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基、グアニジノ基、カルボニル基およびアミド基からなる群から選択される官能基を有する。これらの官能基を有せば、金属有機錯体は、エアロゲルと水素結合し得る。例えば、エアロゲルが上述したPMSQに代表されるシリコーンゲルである場合、SiOH基と上述の官能基との間で水素結合が形成される。中でも、金属有機錯体は、好ましくは、合成の観点からカルボキシル基を有する。
あるいは、金属有機錯体の配位子は、好ましくは、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)、アリール基、アルキル基およびシリル基からなる群から選択される疎水基を有する。これらの疎水基を有せば、金属有機錯体は、エアロゲルと疎水性相互作用を生じる。例えば、エアロゲルが上述したPMSQに代表されるシリコーンゲルである場合、その表面は疎水性であるため、その表面と上述の疎水基との間で疎水性相互作用が形成される。中でも、金属有機錯体は、好ましくは、Fmocを有する。
なお、上述の官能基および疎水基は、フタロシアニン、ポルフィリン、ターピリジン、フェナントロリンおよびこれらの誘導体に、炭素数が1〜6の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、炭素数が1〜6の直鎖状または分岐状のアルコキシ基、アリール基、スルホ基、これらの組み合わせ等を介して接続されてもよい。
本発明の固体光触媒において、金属有機錯体は、好ましくは、式(1)で表される。
Figure 0006887676
式(1)において、所定のZ、PおよびQの組み合わせであれば、可視光に対して触媒活性を示すことができ、エアロゲルと水素結合または疎水性相互作用により担持される。式(1)において、Mは上述した金属元素である。
なお、式(1)において、(X)は、同一または別異の、1価、2価および3価からなる群から選択されるカウンターアニオンであり、mは、Mに配位するカウンターアニオンの数であり、1以上の自然数である。1価のカウンターアニオンは、ハロゲン化物イオンまたはトリフルオロ酢酸イオンである。2価のカウンターアニオンは、例えば、炭酸イオン、硫酸イオン等である。3価のカウンターアニオンは、例えば、リン酸イオン(PO 3−)等である。
中でも、式(1)において、ZがMphenであり、PがPであり、QがQであり、RがOHである、次式で表される金属有機錯体は、波長400nm以上500nm以下に吸収ピークを有し、低エネルギーの光でも触媒活性を有するので、好ましい。また、この金属有機錯体は、エアロゲルとしてPMSQに容易に担持される。
Figure 0006887676
あるいは、本発明の固体光触媒において、金属有機錯体は、上述の金属元素とそれに配位する所定の配位子とによって錯体形成されているが、それらが複数からなってもよい。これにより、可視光の波長に応じた光触媒の設計が可能となり、光触媒活性を高めることができる。このような金属有機錯体は、好ましくは、式(2)で表される。
Figure 0006887676
式(2)において、nは繰り返し単位を表しており、2以上の自然数である。上限は特に制限がないが、製造の効率や光触媒活性を考慮すれば、5を上限とするのが好ましい。Zのそれぞれは、MTPy、MTPy、MPhenおよびMPhenからなる群から選択され、Pのそれぞれは、PまたはPである。ここでも、Mは上述した金属元素であり、(X)は、同一または別異の、1価、2価および3価からなる群から選択されるカウンターアニオンであり、mは、Mに配位するカウンターアニオンの数である。式(2)に示す金属有機錯体は、製造プロセスが確立しているため、所望の光触媒活性を有する固定化光触媒を提供できる。
中でも、式(2)において、次式で表される金属有機錯体が、異なる金属元素を部位選択的に導入する手法が確立しており、好ましい。
Figure 0006887676
上述してきた本発明の固定化光触媒は、主として可視光の照射によって、反応物質を分解し、水素を発生させることができるので、水素発生用の固定化光触媒として機能する。本発明の固定化光触媒は、可視光を照射するだけで、揮発性有機化合物(VOC)の分解・浄化、水中に溶解した汚染物質の分解・除去、悪臭の分解も可能にする。
本発明の固定化光触媒の製造方法は、特に制限はないが、例示的には以下の方法によって製造される。
上述した金属有機錯体を含有する溶液にエアロゲルを含侵させればよい。ここで、エアロゲルは、上述するエアロゲルを採用できるが、14nm以上50nm以下の範囲の平均細孔径を有するものが好ましい。これにより、金属有機錯体を担持後に12nmより大きく40nm以下の平均細孔径を有する固定化光触媒を提供できる。エアロゲルは、好ましくは、0.05g/cm以上2g/cm以下の範囲の密度を有する。これにより、可視光透過性に優れた固定化光触媒を提供できる。エアロゲルは、さらに好ましくは、0.05g/cm以上0.5g/cm未満の範囲の密度を有する。これにより、可視光透過性に優れた、高い光触媒活性を有する固定化光触媒を提供できる。さらに好ましくは、本発明の固定化光触媒は、0.1g/cm以上0.5g/cm未満の範囲の密度を有する。
なお、浸漬は、1時間以上24時間以下の範囲で行われる。24時間を超えて浸漬させても、エアロゲルに担持される金属有機錯体の量は変わらない。浸漬時間が1時間未満である場合、エアロゲルに担持される金属有機錯体の量が少なく、十分な光触媒活性が得られない場合がある。
金属有機錯体を含有させる溶媒の選択は重要である。これにより、上述した、水素結合または疎水性相互作用を生成できる。例えば、水素結合を生成する場合、上述の官能基を有する金属有機錯体を、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエンおよびテトラヒドロフラン(THF)からなる群から選択される溶媒に含有させると、金属有機錯体は溶解する。この溶液にエアロゲルを浸漬させると、金属有機錯体が有する官能基と、エアロゲルが有する−OH基(例えば、PMSQの場合にはSiOH)との間で水素結合が生成される。例えば、疎水性相互作用を生成する場合、上述の疎水基を有する金属有機錯体を、メタノールやエタノール等のアルコール、および/または、アセトニトリルと、水との組み合わせである溶媒(半水溶液とも称する)に含有させればよい。この溶液にエアロゲルを浸漬させると、金属有機錯体が有する疎水基と、エアロゲルの疎水性の表面との間で疎水性相互作用が生成される。アルコール/アセトニトリルと水との混合割合は、好ましくは、5:5〜9:1(体積比)を満たす。これにより疎水性相互作用の生成が促進する。
いずれの溶液においても、金属有機錯体の濃度は、20μM以上60μM以下の範囲を満たす。これにより、光触媒活性を示すに十分な量を担持させることができる。
なお、浸漬後、金属有機錯体を担持したエアロゲルは、そのまま溶媒中で保持してもよいし、乾燥させてもよい。なお、乾燥する際は、二酸化炭素などの超臨界流体を用いた超臨界乾燥技術を利用することにより、乾燥時にエアロゲルにクラックが入るなどを抑制できる。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明の実施の形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の範囲に限定されるものではない。
[試薬]
以降の参考例および実施例で用いた試薬について説明する。なお、すべての試薬は特級試薬であった。試薬は、東京化成工業株式会社、関東化学株式会社、アルドリッチ、Merck、YMCから購入し、CHClおよびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)以外は精製することなく、そのまま使用した。CHClおよびDMFは、Grubbsによる有機溶剤精製装置により精製された。
[金属有機錯体の準備]
図1は、実施例/比較例1〜10で使用する有機金属錯体の一覧を示す図である。
図1に示すように、金属有機錯体として、式(1)において、ZがMTPy(MはRh)であり、PがPであり、QがQであり、RがOHであるRhTPy−OHと、ZがMTPy(MはPt)であり、PがPであり、QがQであり、RがAlaであるPtTPy−Alaと、ZがMTPy(MはRu)であり、PがPであり、QがQであり、RがAlaであるRuTPy−Alaと、式(2)において、n=3であり、P〜PがそれぞれP、PおよびPであり、Z〜ZがそれぞれMTPy(MはPt)、MPhen(MはRe)およびMTPy(MはRu)であるPt−Re−Ruとを、P.Vairaprakashら,J.Am.Chem.Soc.,2011,133,759−761およびA.M.Fracaroliら,Inorg.Chem.,2012,51,6437−6439を参照して製造した。金属有機錯体として、式(1)において、ZがMPhen(MはRu)であり、PがPであり、QがQであり、RがOHであるRuPhen−OHを図2に示すスキームにより製造した。
図2は、RuPhen−OHを製造するスキームを示す図である。
図2におけるPhen−Sucを次のようにして製造した。こはく酸モノ−tert−ブチル(1.1g、6.1mmol)と、5−アミノ−1,10−フェナントロリン(1.1g、5.1mmol)と、O−(1H−6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロフォスフェート(HCTU、2.5g、6.1mmol)と、2,4,6−トリメチルピリジン(コリジン、1.4mL、10mmol)とを混合したDMF溶液(8.2mL)を、窒素雰囲気下、25℃で22時間攪拌した。反応混合物は、トルエンおよび水で処理された。分離したトルエン相に酢酸エチル(EtOAc)を添加し、得られた溶液を水で洗浄した。分離した有機相をNaSOで乾燥させ、濾過後、蒸発させた。残渣をエタノールで洗浄し、溶離剤としてCHClを用い、リサイクル分取サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を行った。クロマトグラフィは、JAIGEL−1H(排除限界1×10カラム)を備えたリサイクル分取HPLC装置(日本分析工業株式会社、LC−9201)を用い、流量は3.5mLmin−1であった。このようにして、最初の留分を収集し、乾燥させ、白色の粉末(0.145g、0.41mmol、収率8%)を得た。
得られた粉末がPhen−Sucであることを核磁気共鳴分光法(H NMR)およびマトリックス支援レーザ脱離イオン化飛行時間型質量分析計(MALDI−TOF)により同定した。H NMRスペクトルは、300MHzにてJEOL モデルAl300分光計で測定され、化学シフトは、非重水素化溶媒残渣を用いて決定された。MALDI−TOFは、マトリックスとしてジスラノールを用い、Shimidzu−Kratos AXIMA−CFRで行った。結果を示す。
H NMR(300MHz,DMSO−d6) 10.21(br.s,1H,Phen−NH),9.13(d,1H),9.04(d,1H),8.63(d,1H),8.45(d,1H),8.14(s,1H),7.83−7.72(m,2H),2.78(t,2H,Succi−CH),2.59(t,2H,Succi−CH),1.42(s,9H,C(CH)3);
MALDI−TOF−MS(ジスラノール)m/z C20の計算値351.39,実測値351.09
次いでRuPhen−O’Buを得た。cis−RuCl(26.6mg、0.05mmol)とPhen−Suc(24.5mg、0.07mmol)とを混合したエタノール懸濁液(5mL)を22時間還流し、25℃まで冷却した。得られた混合物を濾過し、濾液を蒸発させた。残渣をCHOHに溶解させ、溶離剤としてCHOHを用い、逆相HPLCを行った。HPLCは、Wakosil−II 5C18AR(250×20mm)を備えたリサイクル分取HPLC装置(日本分析工業株式会社、LC−9225NEXT)を用い、流量は5mLmin−1であった。このようにして、最初の留分を収集し、乾燥させ、橙色の粉末(35mg、0.040mmol、収率79%)を得た。
得られた粉末がラセミRuPhen−O’Buであることを核磁気共鳴分光法(H NMR、13C NMR)、MALDI−TOFおよび可視紫外分光法(UV−Vis)により同定した。13C NMRスペクトルは、75MHzにてJEOL モデルAl300分光計で測定され、化学シフトは、非重水素化溶媒を用いて決定された。H NMRおよびMALDI−TOFは上述したとおりに測定された。UV−visスペクトルは、JASCOモデルV−650DSまたはV−670DS分光光度計を用いて測定された。結果を示す。
H NMR(300MHz,DMSO−d6) 10.69(br.s,1H,Phen−NH),8.98(d,1H),8.78−8.69(m,5H),8.62(s,1H),8.38(s,4H),8.13−8.04(m,5H),7.96(d,1H),7.79−7.67(m,6H),2.85(t,2H,Succi−CH),2.61(t,2H,Succi−CH),1.41(s,9H,C(CH);
13C NMR(75MHz,CD3OD) 28.35,31.12,31.86,81.89,122.98,126.80,127.34,129.19,129.43,132.07,132.51,134.52,135.58,137.82,138.30,147.58,149.19,149.71,153.20,153.83,153.97,173.94,174.80;
MALDI−TOF−MS(ジスラノール)m/z C4437Ru([M−2Cl])の計算値812.87,実測値812.53;
UV−vis(CHCl/CHOH(体積比98/2),25oC)ε448=27390M−1cm−1
次いで、RuPhen−OHを得た。CFCOH(0.4mL)、EtSiH(0.1mL)および1,2−ジクロロエタン(2mL)の混合物にRuPhen−O’Bu(20mg、0.023mmol)を添加し、25℃で4時間攪拌した。反応混合物を蒸発させ、CHCl(2mL)に溶解した残渣を、一定の攪拌速度で攪拌されたエタノールにゆっくりと滴下した。得られた懸濁液を遠心分離機にかけ、分離した析出物を減圧下で乾燥させ、橙色の粉末(14mg、0.010mmol、収率43%)を得た。
得られた粉末がRuPhen−OHであることを核磁気共鳴分光法(H NMR、13C NMR、19F NMR)、MALDI−TOFおよび可視紫外分光法(UV−Vis)により同定した。19F NMRスペクトルは、282MHzにてJEOL モデルAl300分光計で測定され、化学シフトは、C(δ−164.9)を用いて決定された。H NMR、13C NMR、MALDI−TOFおよびUV−visは上述したとおりに測定された。結果を示す。
H NMR(300MHz,DMSO−d6) 12.19(br.s,1H,COH),10.50(s,1H,Phen−NH),8.90(d,1H),8.79−8.70(m,5H),8.62(s,1H),8.38(s,4H),8.11−8.04(m,5H),7.97(d,1H),7.00−7.67(m,6H),2.84(t,2H,Succi−CH),2.63(t,2H,Succi−CH);
13C NMR(75MHz,CD3OD) 29.77,31.84,123.07,126.82,127.31,129.23,129.43,132.08,132.51,134.51,135.55,137.83,138.31,147.58,149.19,149.70,153.17,153.82,153.94,174.86,176.38;
19F NMR(282MHz,DMSO−d6) 89.07(s,CFCO );
MALDI−TOF−MS(ジスラノール)m/z C4029Ru([M−2CFCO)の計算値757.13,実測値757.93;
UV−vis(CHCl/CHOH(体積比98/2),25oC)ε448=25530M−1cm−1
[エアロゲルの準備]
エアロゲルとして、ポリメチルシルセスキオサン(PMSQ)、マクロポーラスシリカゲル(MACRO)およびオクタデシルジメチルシリレートシリカゲル(ODS)を用いた。PMSQおよびMACROは、K.Kanamoriら,Adv.Mater.,2007,19,1589−1593およびK.Nakanishiら,J.Non−Cryst.Solids,1992,139,1−13に基づいて製造した。ODS(ODS−AL)は、YMCから購入した。製造したゲルを観察し、これらの窒素吸脱着測定を、BELSORP−max(マイクロトラックベル株式会社)を用いて77Kで行った。なお、測定には80℃で24時間脱ガスした試料を用いた。比表面積および細孔径分布を、それぞれ、Brunauer−Emmett−Teller(BET)法およびBarrett−Joyner−Halenda(BJH)法により求めた。吸着枝をBJHの計算に用いた。結果を図3および図4に示す。
図3は、PMSQの外観を示す図である。
図3には、超臨界乾燥後のPMSQの外観が示される。図3によれば、PMSQは、向こう側の文字もはっきりと読み取ることができ、極めて透光性に優れることが確認された。一方、MSCROおよびODSは、白濁して見え、透光性が低かった。
図4は、PMSQ、MACROおよびODSの窒素吸脱着等温線(a)と細孔径分布(b)とを示す図である。
図4(a)によれば、PMSQ、MACROおよびODSの比表面積は、それぞれ、719m−1、311m−1および24m−1であり、PMSQはもっとも比表面積が大きかった。図4(b)によれば、PMSQ、MACROおよびODSの細孔径分布は、それぞれ、14nm以上32nm以下、1μm以上および9nm以上14nm以下であった。
[実施例/比較例1〜10]
実施例/比較例1〜10は、表1に示すように、エアロゲルを、所定の濃度の金属有機錯体を含有する溶液(7mL)に浸した。得られた金属有機錯体担持エアロゲルを観察した。結果を図5に示す。
Figure 0006887676
図5は、実施例3および実施例7の試料の様子を示す図である。
図5ではグレースケールで示すが、実施例3の試料は、赤色の透明体であり、実施例7の試料は、淡黄色の透明体であった。図3と図5との比較から、実施例で得られた試料は、金属有機錯体が担持されたエアロゲルであり、本発明の方法が有効であることが示された。他の実施例1、2、4〜6、8の試料も同様に透明体であったが、比較例9および10は、不透明であった。
実施例/比較例1〜10の試料を製造後に残った金属有機錯体を含有する溶液についてUV−vis吸収スペクトルを測定した。UV−vis吸収スペクトルは、上述のJASCOモデルV−650DSまたはV−670DS分光光度計を用いて測定された。実施例/比較例1〜10の試料の赤外(IR)吸収スペクトルを測定した。赤外吸収スペクトルは、TermoscientificモデルNioclet4700を用いた。結果を図6〜図8に示す。
図6は、実施例1〜3、6および7の試料の製造に係る溶液のUV−vis吸収スペクトルを示す図である。
図7は、実施例/比較例8〜10の試料の製造に係る溶液のUV−vis吸収スペクトルを示す図である。
図6(a)〜(e)は、それぞれ、実施例1〜3、6および7の試料のUV−vis吸収スペクトルを示し、光路長は2cmであった。図7(a)〜(c)は、それぞれ、実施例/比較例8〜10の試料のUV−vis吸収スペクトルを示し、光路長は1cmであった。図6および図7には、金属有機錯体を担持する前に調製した各溶液のUV−vis吸収スペクトルも示す。
図6および図7によれば、担持前の吸収スペクトルは、いずれも、担持後の吸収スペクトルよりも吸光度が小さいが、ピーク位置に変化はないことが分かった。この吸光度の低下からも、実施例/比較例1〜10で得られた試料は、金属有機錯体がエアロゲルに担持されたものであることが示される。この吸光度の低下からエアロゲルに担持された金属有機錯体のモル数および質量を算出した。結果を表2に示す。
Figure 0006887676
図8は、実施例3の試料の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図8には、金属有機錯体を担持する前のエアロゲルのIRスペクトルも示す。担持前のエアロゲルのIRスペクトルは、波数3734cm−1において孤立したSiO−H伸縮振動の明瞭な吸収ピークを示した。しかしながら、金属有機錯体を担持後、この吸収ピークは消失した。このことから、金属有機錯体は、金属有機錯体が有する官能基(実施例3ではカルボキシル基)と、エアロゲルの有するOH基との間に生成される水素結合によってエアロゲルに担持されていることが分かった。図示しないが、実施例1〜3、7および8の試料についても同様の結果が得られた。
一方、実施例4〜6の試料においては、上述の吸収ピークが明瞭に観察された。このことは、試料4〜6の試料においては、金属有機錯体が、エアロゲルと水素結合ではなく、疎水性相互作用によって結合していることを示唆する。さらに、表1および表2の実施例3〜5の実験条件および金属有機錯体の担持量の変化を参照する。金属有機錯体が溶解する溶媒(CHCl)から溶解しにくい溶媒(メタノール)に代えることにより、担持量が低減し、水素結合の生成が抑制されたことを確認した(実施例3および4)。さらに溶媒を金属有機錯体が溶解しにくくなるように水を添加し、疎水性相互作用によりいったん減少した担持量が増大した(実施例4および5)。
これらのことから、金属有機錯体とエアロゲルとの結合の様態は、製造時の溶媒によって制御でき、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエンおよびTHF等の金属有機錯体が完全に溶解する溶媒を用いることによって水素結合を生成し、アルコールおよび/またはアセトニトリルと水との組み合わせである半水溶液の溶媒を用いることによって疎水性相互作用を生成できることが分かった。
次に、実施例/比較例1〜10のうち実施例8の試料を用いて、担持された金属有機錯体について調べた。
まず、実施例8の試料をトルエンに浸漬させた。トルエン中では担持された金属有機錯体がエアロゲルから外れることはなく、担持されたままであることを確認した。実施例8の試料の発光の様子を、室内下、および、紫外光(波長365nm)の照射下で観察した。次いで、トルエンに浸漬させた実施例8の試料の発光スペクトルを測定した。発光スペクトルは、JASCOモデルFP−6500蛍光光度計(励起波長450nm)を用いた。結果を図9に示す。
図9は、実施例8の試料の発光の様子(a)と、発光スペクトル(b)とを示す図である。
図9(a)の左図および右図は、それぞれ、室内下およびUV照射下での実施例8の試料の様子を示す。図9ではグレースケールで示されるが、室内下では淡黄色であり、UV照射によって橙色に発光した。図9(b)によれば、実施例8の試料は、波長600nmを中心とする発光ピークを有し、橙色に発光することが分かった。図9(b)には、実施例8の試料の製造時に用いた溶液(RuPhen−OHを含有するCHCl溶液)の発光ピークも示すが、同様に波長600nmを中心とする発光ピークを有した。これらから、金属有機錯体(ここでは、RuPhen−OH)は、エアロゲルの担持前後もそれ固有の光応答特性は維持されることが確認された。
次に、実施例/比較例1〜10のうち実施例8、比較例9〜10の試料を用いて、金属有機錯体が担持されたエアロゲルの窒素吸脱着測定を行い、BET法およびBJH法により比表面積および細孔径分布を調べた。結果を図10に示す。
図10は、実施例8、比較例9〜10の試料の窒素吸脱着等温線(a)と細孔径分布(b)とを示す図である。
図10(a)によれば、実施例8、比較例9〜10の試料の比表面積は、それぞれ、796m−1、3m−1および255m−1であり、エアロゲルとしてPMSQを用いた試料がもっとも比表面積が大きかった。図10(b)によれば、実施例8、比較例9〜10の試料の細孔径分布は、それぞれ、11nm以上32nm以下、1μm以上および8nm以上12nm以下であった。これらの結果は、図4の結果を反映しており、金属有機錯体を担持後も用いたエアロゲルの多孔性を基本的に維持するが、細孔径分布はわずかに小さくなる傾向を示し、比表面積は用いるエアロゲルの種類によって異なる傾向を示した。なお、実施例8の試料は、0.1g/cm以上0.5g/cm未満の密度を有することを確認した。
次に、実施例/比較例1〜10のうち実施例8、比較例9〜10の試料を用いて、光学触媒活性を調べた。光学触媒活性は、反応物質としてHantzschエステルである1,4−ジヒドロピリジン(1H2)を用い脱水素反応で評価した。実施例8、比較例9〜10の試料を、1H2(2.4mM)の無水トルエン溶液(5mL)に浸漬させ、観察した。脱水素反応は、窒素雰囲気中、可視光(波長≧420nm)を0.5時間照射した後の溶液のH NMRを測定し、評価した。測定は、上述の装置を用い、重水素化溶媒としてCDCNを用い、25℃で行った。H NMRスペクトルから触媒回転数(TON)を算出した。結果を図11〜図13に示す。
図11は、実施例8、比較例9〜10の試料を、反応物質(1H2)を含有する溶液中に浸漬させた様子を示す図である。
図11(a)〜(c)は、それぞれ、実施例8、比較例9および比較例10の試料を溶液に浸漬させた様子を示す。図11(d)は、RuPhen−OHを、1H2の無水トルエンおよびCHCNの混合溶液(混合割合は体積比で1:1であった)に分散させた様子を示す。図11(a)によれば、容器の向こう側に位置する線が視認でき、実施例8の試料は透過性に優れていることが分かった。図11(b)および(c)によれば、いずれも、線を確認できず、比較例9および比較例10の試料はいずれも透過性を有しなかった。図11(d)は、いわゆる均一系であり、全体に均一にRuPhen−OHが分散していることを確認した。
図12は、実施例8、比較例9〜10の試料の光触媒活性試験後のH NMRスペクトルを示す図である。
図12(a)〜(c)は、それぞれ、実施例8および比較例9〜10の試料の光触媒活性試験後のH NMRスペクトルを示し、図12(d)は、図11(e)に示した均一系の光触媒活性試験後のH NMRスペクトルを示す。また、図12には、1H2から水素が脱離した反応式を示す。
図12において、1H2から水素が脱離した化合物1の1dのピークに着目すると、図12(a)および(d)の1dのピークの強度は、図12(b)および(c)のそれに比べて顕著に大きかった。このことから、実施例8の試料および均一系においては、可視光の照射によって、1H2の脱水素反応が進んだことが分かった。
図13は、実施例8、比較例9〜10の試料の触媒回転数(TON)を示す図である。
図13には均一系の結果も併せて示す。均一系触媒のTONは44と算出された。実施例8の試料のTONは、均一系触媒のそれよりは劣るものの、遜色のない33が得られた。比較例9および比較例10の試料のTONは、11および16であった。このことから、実施例8の試料は、固定化光触媒として機能し、比較例9および比較例10の試料よりも光触媒活性に顕著に優れることが確認された。
ここで、図10を参照して説明した細孔径分布を考慮する。エアロゲルとしてMACROを用いると、細孔径が大きいため可視光が散乱され、可視光が金属有機錯体(ここではRuPhen−OH)に照射されず光触媒活性の効果が得られない。また、エアロゲルとしてODSを用いると、可視光の散乱を抑制できるが、細孔径が小さいため反応物質が細孔に入らず金属有機錯体とが接触しない。このことから、金属有機錯体をエアロゲルに担持させた固定化光触媒においては、担持後の細孔径が、12nmより大きく40nm以下の平均細孔径を有することが、可視光を利用した光触媒活性には有利であることが示された。
本発明の固定化光触媒は、可視光に対して優れた光触媒活性を有しており、その光触媒活性は、均一系触媒のそれと同等と言える。このような固定化光触媒は、水素発生用の光触媒と使用できるが、揮発性有機化合物(VOC)の分解・浄化、水中に溶解した汚染物質の分解・除去、悪臭の分解も可能にする。

Claims (20)

  1. 金属有機錯体を担持したエアロゲルからなる固定化光触媒であって、
    前記金属有機錯体は、少なくとも、Ru、Pt、Re、Pd、RhおよびIrからなる群から少なくとも1つ選択される金属元素と、前記金属元素に配位する、フタロシアニン、ポルフィリン、ターピリジン、フェナントロリンおよびこれらの誘導体からなる群から選択される配位子とによって錯体形成されており、
    前記金属有機錯体は、水素結合または疎水性相互作用によって前記エアロゲルに担持されており、
    12nmより大きく40nm以下の平均細孔径を有する、固定化光触媒。
  2. 0.05g/cm以上2g/cm以下の範囲の密度を有する、請求項1に記載の固定化光触媒。
  3. 12nmより大きく35nm以下の平均細孔径を有する、請求項1または2に記載の固定化光触媒。
  4. 0.05g/cm以上0.5g/cm未満の範囲の密度を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の固定化光触媒。
  5. 前記エアロゲルは、シリカエアロゲル、カーボンエアロゲル、アルミナエアロゲル、および、シリコーンエアロゲルからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の固定化光触媒。
  6. 前記シリコーンエアロゲルは、ポリメチルシルセスキオサン(PMSQ)である、請求項5に記載の固定化光触媒。
  7. 前記金属有機錯体は、400nm以上700nm以下の範囲の波長に吸収ピークを有する、請求項1〜6のいずれかに記載の固定化光触媒。
  8. 前記金属有機錯体は、400nm以上500nm以下の範囲の波長に吸収ピークを有する、請求項7に記載の固定化光触媒。
  9. 前記配位子は、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基、グアニジノ基、カルボニル基およびアミド基からなる群から選択される官能基を有する、請求項1〜8のいずれかに記載の固定化光触媒。
  10. 前記配位子は、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)、アリール基、アルキル基およびシリル基からなる群から選択される疎水基を有する、請求項1〜9のいずれかに記載の固定化光触媒。
  11. 前記金属有機錯体は、式(1)で表される、請求項1に記載の固定化光触媒。ここで、Mは、前記金属元素を表す。
    Figure 0006887676
  12. 前記ZがMPhenであり、前記PがPであり、前記QがQであり、前記RがOHである、請求項11に記載の固定化光触媒。
  13. 前記金属有機錯体は、式(2)で表される、請求項1に記載の固定化光触媒。
    ここで、nは、2以上の自然数であり、Mは、前記金属元素であり、Zのそれぞれは、MTPy、MTPy、MPhenおよびMPhenからなる群から選択され、Pのそれぞれは、PまたはPである。
    Figure 0006887676
  14. 前記金属有機錯体は、次式で表される、請求項13に記載の固定化光触媒。
    Figure 0006887676
  15. 金属有機錯体を含有する溶液にエアロゲルを含侵させるステップ包含する、請求項1〜14に記載の固定化光触媒の製造方法。
  16. 前記エアロゲルは、14nm以上50nm以下の平均細孔径を有する、請求項15に記載の方法。
  17. 前記エアロゲルは、0.05g/cm以上2g/cm以下の範囲の密度を有する、請求項15または16に記載の方法。
  18. 前記エアロゲルは、0.05g/cm以上0.5g/cm未満の範囲の密度を有する、請求項17に記載の方法。
  19. 前記溶液の溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエンおよびTHFからなる群から選択されるか、または、アルコールおよび/またはアセトニトリルと水との組み合わせである、請求項15〜18のいずれかに記載の方法。
  20. 前記溶液中の前記金属有機錯体の濃度は、20μM以上60μM以下の範囲である、請求項15〜19のいずれかに記載の方法。
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