本発明は、特定の細胞培養条件により、特定の発現プロファイル及び改善された生物学的特徴を有し、肝疾患の治療のために投与することができる細胞ベースの医薬組成物又は化合物の有効性、代謝及び/又は毒性の特性化に用いることができる代謝活性細胞及び肝活性化細胞の作製に使用することができる新規の成体肝前駆細胞を得ることが可能になるという観察結果に基づく。
H2Stem Cellと称されるこれらの細胞は、特に少なくとも1つの間葉(例えばビメンチン、CD90、CD73、CD29、CD44、α平滑筋アクチンから選択される)及び少なくとも1つの肝臓マーカー(例えばアルブミン、HNF-3b、HNF-4から選択される)と組み合わせて肝臓特異的代謝活性(例えばCYP3A4活性)を生じるタンパク質の高い発現レベルに関して、ヒトドナーから単離されるか又は別の方法で作製される以前に記載の成体肝前駆細胞において同定されるものとは異なる形態学的及び機能的特徴を有する細胞集団を表す。加えて幾つかの実施の形態では、サイトケラチン19を発現する細胞の顕著な存在等の更なる細胞内マーカーがH2Stem Cellを特性化する関連基準をもたらし得る。
本発明の方法によって得られる又は得ることができるH2Stem Cellは、少なくとも1つの間葉マーカー(任意にASMA、ビメンチン、CD90、CD73、CD44及びCD29から選択される)に対して陽性であり、少なくとも1つの肝臓マーカー(任意にHNF-4、HNF-3B及びアルブミンから選択される)に対して陽性であり、少なくとも1つの肝臓特異的代謝活性(任意に尿素分泌、ビリルビン抱合及びCYP3A4活性から選択される)に対して陽性である細胞集団として規定される。さらに、H2Stem Cellは以下の更なる特性:少なくとも20 %、20 %〜90 %又は20 %〜40 %のサイトケラチン19陽性細胞を含む(フローサイトメトリーによって測定した場合)、Sushiドメイン含有タンパク質2のマーカーに対して陽性である、立方中上皮(meso-epithelial)形態(すなわち、中胚葉に由来する上皮細胞と同様の形態)を示す、及び/又は肝臓特異的代謝活性を示す三次元細胞クラスターを形成することが可能である、の1つ又は複数を更に有し得る。
本発明の主要な実施の形態は、以下のもの:
(a)アルブミン、HNF-3B、HNF-4、CYP1A2、CYP2C9、CYP2E1及びCYP3A4から選択される少なくとも1つの肝臓マーカーと、
(b)ビメンチン、CD90、CD73、CD44及びCD29から選択される少なくとも1つの間葉マーカーと、
(c)尿素分泌、ビリルビン抱合、α-1-アンチトリプシン分泌及びCYP3A4活性から選択される少なくとも1つの肝臓特異的活性と、
(d)Sushiドメイン含有タンパク質2(SUSD2)と、
(e)サイトケラチン-19(CK-19)と、
を含む生物活性の組合せ及びそれらの表面上、細胞内に及び/又は分泌されて同定され得るマーカーに対して陽性であると測定される成体肝前駆細胞を含む。
幾つかの実施の形態では、成体肝前駆細胞は一連の陰性マーカーによって更に特徴付けられてもよく、特にH2Stem CellはCD140b、CD45、CD117、CD31、CD133及びCD326の1つ又は複数に対して陰性であると測定され得る。更なる実施の形態では、H2Stem Cellは以下の活性及びマーカー:サイトケラチン-18(CK-18)、α平滑筋アクチン(ASMA)、1つ又は複数の凝固関連分泌タンパク質(フィブリノゲンα、フィブリノゲンβ、フィブリノゲンγ、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子及び第XIII因子等)、1つ又は複数の更なる肝臓特異的活性(スルホトランスフェラーゼ活性、トリプトファン-2,3-ジオキシゲナーゼ活性、肝臓カルボキシラーゼ活性、アンモニア代謝及びグリコーゲン貯蔵等)の1つ又は複数に対しても陽性であると測定され得る。
上に挙げた生物活性、マーカー及び形態学的/機能的特徴はH2Stem Cellに様々な異なる組合せで存在し得る。幾つかの実施の形態では、H2StemCellは、
(a)アルブミン、ビメンチン、CD90、CD73、尿素分泌、ビリルビン抱合、α-1-アンチトリプシン分泌、CYP3A4活性、Sushiドメイン含有タンパク質2、サイトケラチン-19及び肝臓カルボキシラーゼ活性に対して陽性であり、かつ更に、
(b)CD140bに対して陰性である、
と測定される。
任意の機能的及び技術的組合せの上記の実施の形態のH2Stem Cellについての更なる基準は、例えば、
HNF-3B、HNF-4、CYP1A2、CYP2C9、CYP2E1及びCYP3A4から選択される少なくとも1つの更なる肝臓マーカー、
CD44及びCD29から選択される少なくとも1つの更なる間葉マーカー、
スルホトランスフェラーゼ活性、トリプトファン-2,3-ジオキシゲナーゼ活性、アンモニア代謝及びグリコーゲン貯蔵から選択される少なくとも1つの更なる肝臓特異的活性、
サイトケラチン-18(CK-18)及びα平滑筋アクチン(ASMA)の少なくとも1つ、及び/又は、
フィブリノゲンα、フィブリノゲンβ、フィブリノゲンγ、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子及び第XIII因子から選択される少なくとも1つの凝固関連分泌タンパク質、
に対して陽性であると測定することによっても決定され得る。
上記の実施の形態の幾つかでは、H2Stem CellはCD45、CD117、CD31、CD133及びCD326から選択される少なくとも1つの更なるマーカーに対して陰性であると測定され得る。
また更なる実施の形態では、H2Stem Cellは特定の形態及び/又は機能的特徴を示す。特に、上記の実施の形態のH2StemCellは接着性であり、立方中上皮形態を示すことができる。さらに、上記の実施の形態のH2Stem Cellは浮遊状態で三次元細胞クラスターを形成することが更に可能であり得る(H3Stem Cellと称される)。図1にまとめられるように、H2Stem Cell及びH3Stemはどちらも、接着性細胞(H2Screen Cellと称される)及び浮遊状態の三次元細胞クラスター(H3ScreenCellと称される)である強い肝臓特異的活性を示す細胞へと更に分化することができる。
実際に、上記の実施の形態のいずれかのH2Stem Cellは、それらを細胞培養条件で継代することによって得られる上で規定されるH2Stem Cellを含む、H2Stem Progenyの名称でまとめて分類される更なる単離細胞集団を提供するために使用することができる。特に、H2Stem Progenyは所望の用途に応じて、特に三次元細胞クラスター(三次元H2StemProgeny)としての細胞培養条件でのH2Stem Cellの維持、増殖及び/又は分化によって(又は動物モデルへの移植後に)生じる。これらの三次元構造は改善された肝臓特異的代謝活性を示し、特定の細胞マーカーの組合せを維持するだけでなく、治療的使用及びハイスループットスクリーニングのための配合物の確立に特に適切なフォーマットでのH2Stem Progenyも生じる。
このため、上記の細胞集団の実施の形態は、大部分(例えば少なくとも60 %、少なくとも70 %、少なくとも80%、少なくとも90 %、少なくとも95 %又は少なくとも99 %)が上に挙げた生物活性、マーカー、形態及び/又は機能的特徴を示す細胞を含む単離H2StemProgenyを含む。好ましい実施の形態では、H2Stem Cellの集団は下記のように測定される細胞を少なくとも60 %又は60 %〜99 %又は70 %〜90 %含む:
(a)アルブミン、ビメンチン、CD90、CD73、尿素分泌、ビリルビン抱合、α-1-アンチトリプシン分泌、CYP3A4活性、Sushiドメイン含有タンパク質2、サイトケラチン-19及び肝臓カルボキシラーゼ活性に対して陽性であり、かつ、
(b)CD140bに対して陰性である。
加えて、かかるH2Stem Progenyは接着性細胞として得られるか、又は浮遊状態で三次元細胞クラスターを形成することができ、好ましくは誘導型第1相CYP依存性活性及びタウロコール酸、エストロン-3-スルフェート又は1-メチル-4-フェニルピリジニウムの取込みも示す。さらに、かかる細胞集団は肝臓特異的活性を示す細胞へと更に分化することができる。
H2Stem Cell及びH2Stem Progenyは、かかる細胞の任意の特性を適切に付加又は除外することを必要とする任意のin vivo又はin vitro使用のために1つ又は複数の化学剤、細胞培養培地、成長因子及び/又は核酸ベクターを用いて修飾されていてもよい。
更なる主要な実施の形態では、本発明は、
(a)成体肝臓又はその一部を解離して、初代肝細胞集団を形成することと、
(b)(a)の初代肝細胞の調製物を生成することと、
(c)(b)の調製物中に含まれる細胞を、細胞の接着及び成長並びに立方中上皮形態を有する細胞集団の出現を可能にする支持体上で培養することと、
(d)(c)の細胞を少なくとも1回継代することと、
(e)(d)の継代後に得られる、少なくとも1つの肝臓マーカー及び少なくとも1つの間葉マーカーに対して陽性であり、少なくとも1つの肝臓特異的活性を有し、立方中上皮形態を維持する細胞の集団を単離することと、
を含む成体肝前駆細胞を得る方法によってH2Stem Cell及びH2Stem Progenyを作製することを可能とする。
本発明の別の態様は、
(a)成体肝臓又はその一部を解離して、初代肝細胞の集団を形成することと、
(b)(a)の初代肝細胞の調製物を生成することと、
(c)(b)の調製物中に含まれる細胞を、細胞の接着及び成長並びに立方中上皮形態を有する細胞集団の出現を可能にする支持体上で培養することと、
(d)(c)の細胞を少なくとも1回継代することと、
(e)工程(d)の継代後に得られる、立方中上皮形態を維持し、少なくとも1つの肝臓マーカー、少なくとも1つの間葉マーカーに対して陽性であり、少なくとも1つの肝臓特異的活性を有する細胞の集団を単離することと、
を含み、工程(e)の全細胞集団の少なくとも20 %又は20%〜40 %の範囲であり得る工程(e)の細胞集団の少なくとも一画分が、フローサイトメトリーによりサイトケラチン-19に対して陽性である、成体肝前駆細胞を得る方法に関する。
本発明の方法は、適切な細胞培養条件で維持することでH2Stem Cellを生じることができる(その結果としてH2Stem Progenyも生じる)肝細胞の単離に関する。これらの方法は、ヒト起源の新鮮初代肝細胞及び/又は初代肝細胞の凍結保存調製物から開始して適用可能である。本方法の幾つかの実施の形態では、これらの方法は工程(e)及び/又は工程(c)において1つ又は複数のマーカーに対する陽性率を測定することも含み得る。
例えば、前記工程(c)の細胞及び/又は前記工程(e)の細胞集団はサイトケラチン19、アルブミン、α-1-アンチトリプシン分泌、Sushiドメイン含有タンパク質2及びCYP3A4から選択される少なくとも1つのマーカー又は活性に対して陽性であると測定することができる。好ましい実施の形態では、前記工程(c)の細胞及び/又は前記工程(e)の細胞集団は、
(i)ビメンチン、CD90、CD73、CD44及びCD29から選択される少なくとも1つの間葉マーカーと、
(ii)α-1-アンチトリプシン、HNF-3B、HNF-4、アルブミン、CYP1A2、CYP2C9、CYP2E1から選択される少なくとも1つの肝臓マーカーと、
(iii)尿素分泌、ビリルビン抱合、α-1-アンチトリプシン分泌及びCYP3A4活性から選ばれる少なくとも1つの肝臓特異的代謝活性と、
(iv)Sushiドメイン含有タンパク質2と、
(v)サイトケラチン-19(CK-19)と、
に対して陽性であると測定される。
前記工程(c)の細胞及び/又は前記工程(e)の細胞集団は、サイトケラチン-18(CK-18)及び/又はα平滑筋アクチン(ASMA)に対して陽性であると更に測定することができ、かつCD140bに対して陰性であると測定することができる。
本方法の実施の形態の幾つかでは、工程(c)の細胞及び/又は工程(e)の細胞集団は、集団中の少なくとも60 %、少なくとも70 %、少なくとも80%、少なくとも90 %、少なくとも95 %若しくは少なくとも99 %、又は60 %〜99 %若しくは70 %〜90 %の細胞がマーカーに対して陽性であると決定される場合に、そのマーカーに対して陽性であると測定される。上記の実施の形態の幾つかでは、工程(c)の細胞及び/又は工程(e)の細胞集団は、集団中の20 %未満又は10 %未満の細胞がマーカーに対して陰性であると決定される場合に、そのマーカーに対して陰性であると測定される。上記の実施の形態の幾つかでは、工程(e)の細胞集団は接着性細胞を含むか又は浮遊状態で三次元細胞クラスターを形成するが、上記の他の実施の形態では、工程(e)の細胞集団は誘導型第1相CYP依存性活性、並びにタウロコール酸、エストロン-3-スルフェート及び1-メチル-4-フェニルピリジニウムの少なくとも1つの取込みを示す。工程(c)の細胞及び/又は工程(e)の細胞集団は、その後の任意の適切なin vivo又はin vitro使用のために化学剤、細胞培養培地、成長因子及び/又は核酸ベクターを用いて修飾されていてもよい。
このため、上記の方法により上記の実施の形態のH2Stem Cell及びH2Stem Progenyを得ることが可能になる。本方法の幾つかの実施の形態では、工程(c)の細胞及び/又は工程(e)の細胞集団は、コラーゲン又は他の適切なペプチド若しくは細胞外マトリックスタンパク質でコーティングされ得る支持体上で培養することができ、肝臓マーカー、間葉マーカー及び肝臓特異的代謝活性の少なくとも特定の組合せに対する陽性率を測定することによって単離することができる。次いで、H2Stem Cell及びH2Stem Progenyの所望の用途に応じて、この方法によって得られる又は得ることができる細胞を接着性細胞、細胞懸濁液としての増殖を可能にする細胞培養条件中で、又は肝細胞様細胞若しくは肝活性化細胞としてそれらを維持する特定の条件を適用することで維持することができる。特に、三次元細胞クラスター(三次元H2Stem Progeny)は市販の低接着コンテナ(プレート又はU字形ウェルの形態)を用いて又はバイオリアクター内で特に効率的に形成され、その機能的、寸法的、形態学的及び/又は抗原的特徴に従って特性化され得る。本発明の方法は、工程(e)の細胞集団を細胞培養条件に維持して、肝臓特異的活性を示す細胞へと分化させる工程(f)を更に含み得る。
H2StemProgenyは、本発明の方法によって得ることができ、大部分(例えば少なくとも60 %、少なくとも70 %、少なくとも80 %、少なくとも90%、少なくとも95 %又は少なくとも99 %)が上に挙げた生物活性、マーカー、形態及び/又は機能的特徴を示す細胞を含む細胞集団である。好ましい実施の形態では、本発明の方法によって得ることができるH2Stem Cellの集団は、工程(e)に関して上に挙げた特徴を示す細胞を60 %〜99 %又は70 %〜90 %含む。
本発明の方法は、好ましくは同様に誘導型第1相CYP依存性活性、並びにタウロコール酸、エストロン-3-スルフェート及び1-メチル-4-フェニルピリジニウムの少なくとも1つの取込みを示す、接着性細胞としての又は浮遊状態で三次元細胞クラスターを形成するH2StemProgenyももたらす。さらに、かかる細胞集団は肝臓特異的活性を示す細胞へと更に分化することができる。本発明の方法によって得られるH2Stem Cellの集団は、任意の適切なin vivo又はin vitro使用のために化学剤、細胞培養培地、成長因子及び/又は核酸ベクターを用いて修飾してもよい。
本発明に従ってH2Stem Cell又はH2Stem Progenyを生成することで得られる生体物質は、特定の用途、特に異なる医学的用途を有し得る生物学的実体を同定するために更に使用することができる。これらの生体物質は、特定の特徴(例えばタンパク質又は核酸ベースのマーカー、生物活性及び/又は形態)を示すH2Stem Cell及びH2Stem Progeny(又はその亜集団、細胞系列及び画分)だけでなく、初代肝細胞の培養物からH2Stem Cell又はH2Stem Progenyの調製物を作製することで得られる任意の他の実体を含む。本発明の生体物質は例えば、細胞自体を特性化する他の特徴(例えば細胞表面抗原又は酵素活性)を伴い又は伴わずに、特に肝疾患に関して医学的興味の持たれる細胞を検出するためのマーカー又は医学的興味の持たれる活性若しくは分布を示す化合物として同定し、使用することができるタンパク質、代謝産物、膜小胞、抗原及び/又は核酸を含有し得る馴化細胞培養培地及びこれらの培地の画分を含む。実際に、H2Stem Cellから得られたタンパク質抽出物の比較分析により、Sushiドメイン含有タンパク質2をH2Stem Cellが陽性を示し、H2StemCell及びH2Stem Progenyの特性化に使用することができる更なるマーカーとして同定することが可能となった。
H2Stem Cell、H2Stem Progeny、H2Stem Cell又はH2Stem Progenyを生成することで得られる生体物質、及びかかる細胞又は生体物質を含む組成物(まとめて「H2Stem生成物」)は、in vivo又はin vitroで多数の方法及び用途に有用であり得る。特にH2Stem生成物は、in vivo又はin vitroで分化した後に所望の期間にわたって初代肝細胞について観察されるものと可能な限り同じ生物学的特徴(代謝的若しくは酵素活性又は抗原的プロファイル等)を示す細胞を必要とする疾患(例えば肝疾患)の治療、並びに方法及び生物学的アッセイの確立に使用することができる。好ましいH2Stem生成物はH2Stem Progeny、H2Stem Progenyを生成することで得られる生体物質、及びH2StemProgeny又はかかる生体物質を含む組成物である。より好ましくは、H2Stem生成物はH2Stem Progeny又はH2Stem Progenyを含む組成物である。
特に、H2Stem生成物は、肝疾患(先天性肝臓代謝異常、遺伝性血液凝固障害、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症1/2/3型、α1-アンチトリプシン欠乏症、肝細胞トランスポーター欠損、ポルフィリン症、脂肪肝又は他の線維症肝疾患、原発性胆汁性肝硬変、硬化性胆管炎、肝変性疾患、及び急性又は慢性肝不全等)の治療のために、例えばかかる細胞を含む医薬組成物の形態で(ヒト又は動物、例えば動物モデルへの)in vivo 投与に使用することができる。これらの医薬組成物はH2Stem Cell(又は所与のH2Stem Progeny)と、所望の治療、投与及び/又は貯蔵方法に適切な支持体(例えばマトリックス、カプセル、足場又はデバイス)及び/又は溶液(例えば細胞培養培地又は緩衝液)とを組み合わせたH2Stem生成物として、かかる医薬組成物を提供するのに好ましい手段(例えばキット)で提供することができる。任意の他の有用な効果をもたらし得る生物学的起源(例えば抗体又は成長因子)又は化学的起源(例えば薬物、保存化合物又は標識化化合物)の他の作用物質をかかる組成物と組み合わせてもよい。
疾患を予防及び/又は治療する方法は、H2Stem Cell又は所与のH2Stem Progeny等のH2Stem生成物を、好ましくは組成物中でそれを必要とする被験体に投与することを含む。特に、それを必要とする患者において疾患(例えば肝疾患)を治療する方法は、有効量のH2Stem生成物を患者に投与することを含む。
H2Stem生成物は生物製品(タンパク質、核酸、脂質又は糖等)又は化学化合物(塩又は金属を含む有機物又は無機物)等の1つ又は複数の外因性成分の有効性、代謝、安定性及び/又は毒性を評価するin vitro研究、特に薬理学的研究にも使用することができる。このアプローチは、H2Stem生成物に対する他の細胞(細菌又は好ましくはヒト起源の他の細胞等)の効果の研究、並びに後に精製するか又は別の方法で検出することができる肝臓特異的ウイルス(例えば肝炎ウイルス)の感染及び/又は複製の評価にも使用され得る。
このため、本発明は、
(a)H2Stem生成物を準備することと、
(b)H2Stem生成物を化学化合物、タンパク質、核酸、脂質、糖、金属、塩、ウイルス、細菌及び細胞から選択される1つ又は複数の外因性成分に曝露することと、
(c)上記H2Stem生成物に対する上記1つ若しくは複数の外因性成分の効果を検出すること、及び/又は該H2Stem生成物への曝露後の上記1つ若しくは複数の外因性成分の存在、局在化若しくは修飾を検出することと、
を含む、in vitro又はin vivoで1つ又は複数の外因性成分の有効性、代謝、安定性及び/又は毒性を評価する方法も提供する。
この一般的方法は幾つかの実施の形態では、特定の用途及び/又は技術に適用される更なる工程及び特徴を含み得る。例えば、上で規定される工程(c)は細胞形態、細胞生存性、肝臓特異的若しくは非特異的タンパク質の上方若しくは下方調節、及び/又はH2Stem生成物におけるタンパク質の分解、凝集、活性化若しくは阻害に対する効果を検出することを含み得る。さらに、上で規定される工程(c)は、かかる1つ又は複数の外因性成分のH2Stem生成物への内在化又はH2Stem生成物との物理的結合を検出することを含み得る。H2Stem生成物を工程(a)で動物に与えることもでき、次いで1つ又は複数の外因性成分を工程(b)で該動物に投与する。最後に、工程(c)は上記H2Stem生成物若しくは上記動物に対する上記1つ若しくは複数の外因性成分の効果を検出すること、及び/又は動物における上記H2Stem生成物への曝露後の上記1つ若しくは複数の外因性成分の存在、局在化若しくは修飾を検出することを含む。
H2Stem生成物を使用する方法は、工程(b)において細胞集団、組成物又は生体物質を、
(i)細胞形態、細胞生存性、肝臓特異的若しくは非特異的タンパク質の上方若しくは下方調節に対して効果を有する、及び/又はH2Stem生成物においてタンパク質を分解、凝集、活性化若しくは阻害する1つ若しくは複数の外因性成分、
(ii)H2Stem生成物におけるかかる効果を遮断又は回避することを目的とした1つ又は複数の外因性成分、
へと同時に又は任意の順序で順次に曝露することも含み得る。
幾つかの実施の形態では、本方法は任意のH2Stem生成物、特にH2Stem Progenyを、病原性物質である外因性成分に曝露した場合に、病原性物質及び/又はそれらの効果を特異的に標的とする候補薬物である更なる外因性成分が、病原性物質の任意の望ましくない効果(例えばウイルス感染、アポトーシス、発癌性形質転換、肝臓特異的活性の低減等)を予防又は遮断することで治療的特性を有するかどうかを決定する肝細胞モデルとして使用することを目的とする。特に、病原性物質である上記(i)の外因性成分は、感染性物質、腫瘍形成性物質、細胞毒性物質又は遺伝毒性物質を含み、病原性物質及び/又はそれらの効果を特異的に標的とする候補薬物である上記(ii)の更なる外因性成分はタンパク質、核酸、細胞、ウイルス又は化学化合物を含む。
H2Stem生成物は、例えばH2Stem生成物を臨床施設に移動させ、H2Stem生成物を患者に投与する手段を提供することを含む上記の使用及び適用方法のためのキット内で提供することができる。このキットはH2Stem生成物、並びに任意にH2Stem生成物及びそれらの活性の使用及び/又は検出、並びに任意の関連する更なる化合物の使用及び/又は検出を可能にする更なる要素を含み得る。このキットは、H2Stem生成物(例えばH2Stem Progeny又はH2Stem Progenyを含む組成物)を含有する1つ又は複数のバイアルと、特定の用途に従って選択される以下の要素:デバイス、使い捨て材料、溶液、化学製品、生物製品及び/又は上記キットの要素の使用説明書の1つ又は複数とを含み得る。
発明を実施するための形態及び実施例により、細胞、細胞集団、方法、これらの方法によって得ることができる細胞、並びに該方法及びH2Stem生成物と関連する本発明の更なる実施形態に関する更なる詳細を提示する。
本発明の主要な実施形態は、表面上、細胞内で及び/又は細胞培養培地中に分泌されて同定することができる生物活性及びマーカーの新規の組合せによって特性化されるH2Stem Cell及びH2Stem Progenyを含む。これらの特徴は形態学的及び機能的特徴とともに、H2Stem Cell及びH2Stem Progenyを細胞培養条件で作製する方法と関連して決定され、特に、
(a)成体肝臓又はその一部を解離して、初代肝細胞の集団を形成することと、
(b)(a)の初代肝細胞の調製物を生成することと、
(c)(b)の調製物中に含まれる細胞を、細胞の接着及び成長並びに立方中上皮形態を有する細胞の集団の出現を可能にする支持体上で培養することと、
(d)(c)の細胞を少なくとも1回継代することと、
(e)(d)の継代後に得られる、少なくとも1つの肝臓マーカー及び少なくとも1つの間葉マーカー、並びに少なくとも1つの肝臓特異的活性に対して陽性であり、立方中上皮形態を維持する細胞集団を単離することと、
を含む方法について、かかる細胞を特性化する陽性の(又は陰性の)基準が規定された。
本方法の工程(a)に関して解離工程は、完全に分化した肝細胞とともに、H2Stem Cellの作製に使用することができる或る量の初代細胞を含有する成体肝臓又はその一部を得ることを含む。初代肝細胞は成体肝臓から得ることができるヒト肝組織から優先的に単離される。
「肝臓」という用語は肝臓器官を指す。「肝臓の一部」という用語は概して、肝臓器官の任意の部分に由来する組織サンプルを指し、上記部分又はそれが由来する肝臓器官の領域の量に関して何ら限定されるものではない。好ましくは、肝臓器官中に存在する全細胞型が上記肝臓の一部に表されていてもよい。肝臓の一部の量は、少なくとも部分的に実際的な配慮から本発明の方法を合理的に実行するために十分な初代肝細胞を得る必要性までに従う可能性がある。したがって、肝臓の一部は肝臓器官の割合(例えば少なくとも1 %、10 %、20 %、50 %、70 %、90 %(通例w/w)以上)を表し得る。他の非限定的な例では、肝臓の一部は重量によって規定され得る(例えば少なくとも1 g、10 g、100 g、250 g、500 g以上)。例えば肝臓の一部は肝葉、例えば右葉若しくは左葉、又は肝臓分割操作時に切除された多数の細胞を含む任意の断片若しくは組織サンプルであってもよい。
「成体肝臓」という用語は出生後の、すなわち生後、好ましくは満期産後の任意の時点、例えば少なくとも生後1日、1週間、1ヶ月以上、又は少なくとも1年、5年、10年以上であり得る被験体の肝臓を指す。したがって、「成体肝臓」又は成熟肝臓は、そうでなければ「幼児」、「小児」、「青年」又は「成人」という従来の用語で記載され得るヒト被験体に見ることができる。肝臓又はその一部は脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを区別なく指す「被験体」又は「ドナー」から得られる。別の実施形態では、成体肝臓又はその一部は非ヒト動物被験体、好ましくは非ヒト哺乳動物被験体(例えば齧歯類又はブタ)に由来し得る。
ドナーは、「心肺」基準(循環及び呼吸機能の不可逆的停止を含む)又は「脳死」基準(脳幹を含む脳全体の全機能の不可逆的停止を含む)等の臨床的に認められる基準によって決定されるように生きていても又は死んでいてもよい。摘出は生検、摘除又は切除等の既知の手順を含み得る。生体ヒトドナーからの肝組織の摘出には、ドナーの生命の更なる持続に適合する必要がある場合もある。肝臓又はその一部は循環、例えば心拍が維持され、呼吸機能、例えば肺呼吸又は人工呼吸器が維持されたドナー、特にヒトドナーから得ることができる。肝臓の一部のみを通例、法的規範及び倫理規範によって要求されるようにドナーにおいて正常肝機能の適切なレベルが維持されるように、生体ヒトドナーから(例えば生検又は摘除によって)摘出することができる。
倫理規範及び法的規範の下では、ドナーは脳死である必要がある又は必要はない(例えば、ヒトドナーの更なる生存に適合しない肝臓全体又はその一部分の除去が脳死のヒトで可能であり得る)。組織が通常虚血(循環停止)によって生じる相当の酸素欠乏症(酸素供給の欠乏)を患わないため、かかるドナーからの肝臓又はその一部の摘出が有利である。人工呼吸器なしでは摘出時に組織の循環及び/又は呼吸機能が停止し得る。これらのドナーからの肝臓又はその一部は少なくとも或る程度の酸素欠乏症を患う可能性があり、死体ドナーからの肝臓は、例えばドナーの循環停止の後約1時間、3時間、6時間、12時間、24時間以内又はそれ以降に細胞培養条件でH2Stem Cellを得るために使用することができる。
上記のように摘出した組織を室温前後又は室温よりも低い温度まで冷却してもよいが、特にかかる凍結により核形成又は氷晶成長が生じる場合に、通常は組織又はその一部の凍結は回避される。例えば、組織は約1℃又は約4℃〜室温の任意の温度で維持することができ、有利には、例えば氷上で約4℃に維持することができる。組織は虚血時間、すなわちドナーにおける循環停止後の時間の全部又は一部にわたって冷却してもよい。すなわち、組織を温虚血、冷虚血又は温虚血と冷虚血との組合せに供してもよい。摘出した組織は、例えば処置前の最大48時間、好ましくは24時間未満、例えばより好ましくは12時間未満(例えば6時間、3時間又は1時間未満)にわたってそのように維持され得る。摘出した組織は必要なわけではないが有利には、例えば好適な培地に完全に若しくは少なくとも部分的に浸漬して維持しても、及び/又は必要なわけではないが組織の更なる処置の前に好適な培地で灌流させてもよい。当業者は、組織の細胞の生存を処置前の期間にわたって支持し得る好適な培地を選択することが可能である。
本発明の方法は、上記のような成体肝組織を解離して初代細胞集団を形成することを含む。「解離する」という用語は本明細書で使用される場合、概して組織又は器官の細胞構成を部分的又は完全に破壊すること、すなわち組織又は器官の細胞及び細胞成分の間の結合を部分的又は完全に破壊して、上記組織又は器官から細胞(細胞集団)の懸濁液を得ることを指す。懸濁液は単独又は単一の細胞、及び物理的に付着して2つ以上の細胞のクラスター又は集塊を形成する細胞を含み得る。解離は細胞生存性の低下を好ましくは引き起こさず、又は引き起こしても可能な限り小さい。肝臓又はその一部を解離してそれらから初代細胞の集団(懸濁液)を得るのに好適な方法は、酵素消化、機械的分離、濾過、遠心分離及びそれらの組合せを含むが、これらに限定されない当該技術分野で既知の任意の方法であり得る。特に、肝臓又はその一部を解離する方法は、肝細胞を放出する肝組織の酵素消化及び/又は肝細胞を放出する肝組織の機械的破壊若しくは解離を含み得る。
上記のように肝臓又はその一部を解離する方法は、全肝臓又は肝臓の断片を用いて行うように様々に適合及び変更された2つ以上の工程で広く用いられているコラゲナーゼ灌流法として文献中で実証される。肝組織を37℃に予熱した、カチオンキレート剤(例えばEDTA又はEGTA)を含有する二価カチオン無含有緩衝溶液で灌流させる。緩衝溶液は、とりわけNaCl及びKCl等の塩を含んでいてもよい塩溶液(例えばHEPES、Williams E培地)又は任意の他の平衡塩類溶液を含み得る。これにより、細胞をまとめるデスモソーム構造が破壊される。次いで、組織をCa2+及びMg2+等の二価カチオン(複数の場合もあり)並びに組織を消化するように作用するマトリックス分解酵素を含有する緩衝溶液で灌流させる。
初代肝細胞は通常、細胞解離プロセスを機械的に完了する穏やかな機械的破壊及び/又はフィルターを介したプレスによって放出される。かかるフィルターは約0.1 mm、0.25 mm、0.50 mm、1 mm以上の細胞の通過を可能にする篩サイズを有し得る。徐々に小さくなる篩サイズを有する一連のフィルターを使用して組織を徐々に解離させ、細胞を放出することができる。解離された細胞をプロテアーゼ阻害剤、血清及び/又は血漿を含有する緩衝液ですすぎ、灌流プロセスに使用されたコラゲナーゼ及び他の酵素を不活性化した後、低速遠心分離(例えば10×g〜500×g)によりペレット化することによって混合物から解離する。生存細胞の全てではないが大部分をペレット化することができ、死細胞及び細胞残屑を実質的に除去し、続いて氷冷緩衝溶液で洗浄し、細胞懸濁液を精製する。初代肝細胞の数及び品質は組織の品質、使用される種々の溶液の組成並びに酵素のタイプ及び濃度に応じて変わり得る。酵素は多くの場合コラゲナーゼであるが、プロナーゼ、トリプシン、ヒアルロニダーゼ、サーモリシン及びそれらの組合せを使用することもできる。コラゲナーゼは酵素の殆ど精製していないブレンドからなり、及び/又は生存細胞の品質及び量に影響を及ぼす不要な反応を引き起こし得るプロテアーゼ活性を示す場合もあるが、十分な純度及び品質の酵素調製物を選択することによって回避することができる。初代肝細胞を摘出する他の方法では酵素消化法は除外され、スクロースを含有する溶液で肝臓を灌流させ、その後機械的破壊を行うことを含み得る。
本方法の工程(b)に関して、肝組織の解離後に得られる初代肝細胞の調製物は通例、前駆又は幹細胞を含む任意の肝臓構成細胞型に属し、肝臓柔組織及び/又はその非柔組織中に存在し得る細胞を含む初代肝細胞の不均質集団であり得る。例示的な肝臓構成細胞型としては、幹細胞又は前駆細胞に加えて肝細胞、胆管細胞、クッパー細胞、肝星細胞及び肝臓内皮細胞が挙げられる。
「肝細胞」という用語は、異なるサイズ又は倍数性(例えば二倍体、四倍体、八倍体)の肝細胞を含むが、これらに限定されない上皮柔組織肝細胞を包含する。
「初代細胞」という用語は、かかる移植組織又は器官中に存在する細胞を適切な技法で解離することによって被験体の組織又は器官、例えば肝臓から得られる細胞の懸濁液中に存在する細胞を含む。
本発明の方法は、細胞培養条件で所望の成体肝前駆細胞が得られる範囲で全てではないが大部分の肝細胞型を代表する細胞集団から開始され得るのが好ましい。H2Stem Cellを得るのに好適な出発細胞集団は、肝臓を解離する方法、及び/又は任意の好適な技法を適用することで肝細胞及び/又は他の細胞型の初期調製物を物理特性(寸法、形態)、生存能力、細胞培養条件若しくは細胞表面マーカー発現に基づいて分画若しくは富化する任意の方法に応じて、肝細胞を異なる割合(全細胞の0.1 %、1 %、10 %以上)で含み得る。
本明細書で規定され、肝臓(又はその一部)を解離することによって得られる初代細胞の集団は、新鮮初代肝細胞としての細胞培養物の確立に即座に使用しても、又は好ましくはそれらの長期保存に一般的な技術を用いて初代肝細胞の凍結保存調製物として保管してもよい。実際に、凍結保存細胞調製物の使用は、H2Stem Cell及びH2Stem Progenyを後に細胞培養物中で作製する効率に対してプラスの効果を有するようである。これらのサンプル中の細胞は、成長因子、血清、緩衝溶液、グルコース、アルブミン、エチレングリコール、スクロース、デキストロース、DMSO又は任意の他の凍結保護物質等の他の化合物を添加した又は添加しない細胞培養培地又は細胞若しくは器官の保存用の溶液(例えばViaspan、Cryostor、Celsior)中で凍結することができる。各々の凍結保存調製物は、サンプルを適切に解凍し、必要に応じて残留細胞培養培地又は細胞若しくは器官の保存用の溶液を除去するために細胞を適切な緩衝液又は細胞培養培地で洗浄した後、細胞培養条件でより多量のH2Stem Cellを作製及び単離する範囲でクライオバイアル又はバッグ1つ当たり少なくとも103、104、105、106、107、108以上の細胞を含有し得る。
本方法の工程(c)に関して、初代肝細胞の調製物は、同様の初代細胞の接着及び増殖並びに立方中上皮形態を有する成体肝前駆細胞集団の出現を可能にする完全合成支持体(例えばプラスチック又は任意のポリマー物質)、又は支持細胞、タンパク質抽出物若しくは生体起源の任意の他の物質を予めコーティングした合成支持体上で直接培養することができる。好ましくは上記基質に接着した初代細胞集団に由来する細胞は、少なくとも7日間、好ましくは少なくとも10日間又は少なくとも12日間培養される。より好ましくは、初代細胞集団に由来する細胞は、H2Stem Cellを生じ得る生細胞について十分に富化した接着性細胞集団を得るために7日間及び12日間培養される。
「培養する」という用語は概して、細胞及び特にH2Stem及び/又はH2Stem Progenyを細胞培養物中で維持及び/又は成長させる条件を指す。細胞を培養し、細胞接着を可能にする(又は必要に応じて、浮遊状態での細胞クラスターの成長を可能にする)支持体等の要素、細胞培養培地の組成、細胞を播種及び維持する密度、02及びC02濃度は、発明を実施するための形態及び実施例において下記に詳述したようにH2Stem Cell及びH2Stem Progenyの培養に適合させることができる。
「肝前駆細胞」という用語は、肝臓から単離される細胞を培養することによって作製される特殊化していない増殖適格細胞を指し、該細胞又はその後代が少なくとも1つの比較的より特殊化した細胞型を生じることができる。肝前駆細胞は、1つ又は複数の系列に分化することができ、次第により特殊化した細胞(しかし、好ましくは肝細胞又は肝活性化細胞)を生じる子孫(かかる子孫自体が前駆細胞であってもよい)を生じ、又は更には最終分化した肝細胞(例えば完全に特殊化した細胞、特に初代ヒト肝細胞と同様の形態学的及び機能的特徴を示す細胞)を生じる。
本発明の方法に使用される肝組織が成体肝臓に由来することを考えると、H2Stem Cellは大きな透明細胞質、突出を有しない不規則な膜を有する立方中上皮形態を有し、細胞間接触及び結合を生じ、成長接触阻害を示す成体肝前駆細胞として規定され得る。細胞の接着性コロニー又はクラスターとしての発生及び増殖の後(図3を参照されたい)、H2Stem Cellは、この段階で(すなわち、工程(d)に示される細胞の継代の前に)既に存在し、1つの肝臓マーカー及び少なくとも1つの間葉マーカー及び少なくとも1つの肝臓特異的活性として下記工程(e)に記載のように後の段階で初めに特性化された関連マーカーの検出を可能にする技術によって更に特徴付けることができる。
かかるマーカーを同定し、陽性又は陰性として測定する技術の中でも、この工程で利用可能なH2Stem Cellが少量であっても、(ウエスタンブロット又はフローサイトメトリーの場合のように)H2Stem Cellを破壊することなくマーカー検出を可能にすることから、細胞培養培地の免疫細胞化学検査又は分析が好ましい。特に、サイトケラチン-19陽性細胞(図2Bに示される)又はアルブミン若しくはα-1-アンチトリプシンのような酵素(図8Bを参照されたい)を含む分泌肝臓タンパク質の検出を、細胞表面タンパク質(SUSD2、CD90、CD73、CD29、CD44及び/又は肝臓特異的輸送体等)、細胞内タンパク質(ビメンチン又はASMA等)、並びに肝臓酵素及び関連活性(肝臓カルボキシラーゼ、チロシントランスフェラーゼ、トリプトファン-2,3-ジオキシゲナーゼ、尿素分泌、CYP3A4又は任意の他の第I相シトクロムP450活性等)を含む下記のような他の関連マーカーの検出を伴い又は伴わずにこの段階で行うことができる。
H2Stem Cellは、かかる細胞の生存及び/又は成長を促進することが可能である、invitro環境での細胞の接着を可能にする基質上にプレーティングした肝細胞の初代集団から現れる。この環境は、(例えば実験室環境の汚染を回避することによって)該環境(すなわち細胞培養コンテナ)と周辺との間の望ましくない物質交換を防ぐ一方で、(例えば培養培地の一部又は全部の不定期の交換、ガスの連続交換によって)培養容器間の他の有用な構成要素の連続又は間欠交換を可能にし得る。
培養容器は様々なフォーマットの細胞培養フラスコ、ボトル、ウェルプレート、バイオリアクター及び皿であり得るが、プレーティングした細胞がこの基質と接触して接着性細胞培養物を維持することができるように、細胞接着に適合する1つ又は複数の基質表面を呈する。概して、細胞の接着を可能にする基質は任意の実質的に親水性の基質であり、概して親水性基質表面をもたらし、それにより(実施例に示されるようにCellBindの市販材料を使用することによって)効果的な細胞付着の可能性を高めるために成形及び処理されるガラス又は合成ポリマー材料(ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ポリリン酸塩、ポリエステル、ナイロン又はそれらの混合物等)であり得る。表面処理は表面コーティングの形態を取り、又は水と一般的親和性を有し、若しくは別の形で別の極性基との安定した吸着を可能にする十分な極性を示す化学基をポリマー表面上に生成することを含み得る。これらの官能基は親水性及び/又は表面酸素の増大をもたらし、そのように修飾された基質表面上で細胞成長を高めることが認識される特性である。かかる化学基は、特定の波周波数ベースの技術によって処理することで導入することもできるアミン、アミド、カルボニル、カルボキシレート、エステル、ヒドロキシル又はスルフヒドリル等の基を含み得る。
細胞接着は、処理プラスチック表面をマトリックスの層でコーティングすることによって促進することができる。コーティングは、単独又は様々な組合せで好適なポリカチオン(例えばポリオルニチン(polyornithine)又はポリリシン)、又は好ましくは細胞外マトリックスの1つ若しくは複数の構成要素:フィブリン、ラミニン、非/線維状コラーゲン(好ましくは1型コラーゲン)、グリコサミノグリカン(例えばヘパリン又はヘパラン硫酸)、若しくはフィブロネクチン、ゼラチン、ビトロネクチン、エラスチン、テネイシン、アグリカン、アグリン、骨シアロタンパク質、軟骨基質タンパク質、フィブリノゲン、フィビュリン(fibulin)、ムチン、エンタクチン、オステオポンチン、プラスミノーゲン、レストリクチン、セルグリシン、オステオネクチン、バーシカン、トロンボスポンジン1等のタンパク質、若しくはカドヘリン、コネキシン、セレクチンを含む細胞接着分子を含み得る。好ましい例としては、他の細胞外マトリックス構成要素を含む又は含まないコラーゲン組成物を挙げることができる。代替的には、断片又は別の形で上に挙げたタンパク質に由来する合成ペプチド、ゲル、分子足場並びに合成及び/又は生体物質から形成される他の三次元構造をこの範囲で使用することができる。
初代細胞懸濁液を、初代肝細胞集団を接着性基質に付着させるのに十分な期間(例えば少なくとも2時間、4時間、6時間、12時間、24時間以上)にわたって接着性表面と接触させた後、培地を培養系から捨て、任意に接着性細胞を一度又は繰り返し洗浄することによって、任意の非接着性物質(例えば、非生存又は死細胞及び細胞残屑)を培養系から除去することができる。次いで、培養系に任意の好適な培地又は等張緩衝液(例えばPBS)を供給する。ここでは、表面に接着した初代肝細胞集団に由来する細胞を更なる培養に選択し、上記表面1cm2当たりにプレーティングされた細胞の数(例えば10細胞/cm2〜105細胞/cm2)として表すことができるプレーティング密度を評価するために計数することができる。
初代細胞の調製物を、プレーティング時に直接又は細胞の洗浄後に、細胞の生存及び/又は成長を支持する液体培地中に維持する。培地を細胞の導入の前、同時又は後に系に添加することができる。培地は新鮮であっても(すなわち、先に細胞の培養に使用していない)、又は培地に肝臓起源(又は任意の他の起源)の細胞を先に培養することで馴化した少なくとも一画分を含んでいてもよい。特に、培地は文献に記載のように肝前駆細胞の培養に好適な任意の培養培地であっても、同じ又は異なる特徴(例えば組成、pH)を示す新鮮培地で定期的に(例えば1時間、3時間、12時間、24時間以上毎に)交換してもよい。培地の全容量を交換しても、又は代替的には細胞を先に培養することによって馴化した培地の画分が保持されるように、培地の一部分のみを交換してもよい。代替的には、細胞を別の培養容器に移すまで培地を交換せず、対象でない細胞(例えば肝細胞及び肝臓起源の他の完全に分化した細胞)の殆どが脱離されて死滅するように細胞の培養を延長し、新鮮培地を単に定期的に添加してもよい。
接着性初代細胞をウシ、ヒト又は他の動物の血清を添加した規定の化学培地に基づき、更に栄養素及び/又は成長促進剤を供給した、接着性細胞を成長させるための液体培養培地の存在下で培養することで、特定の細胞型の成長/接着又は除去/脱離も促進され得る。
この場合、基礎培地配合物(例えば、American Type Culture Collection(ATCC)又はInvitrogen, Carlsbad, Californiaから入手可能なもの)を用いて初代細胞を培養することができ、このような基礎培地配合物としては、イーグル最小必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、α変性最小必須培地(α-MEM)、基本必須培地(BME)、イスコブ改変ダルベッコ培地(IMDM)、BGJb培地、F-12栄養素混合培地(Ham)、Liebovitz L-15、DMEM/F-12、必須改変イーグル培地(EMEM)、RPMI-1640、Medium199、ウェイマスMB 752/1又はウィリアムス培地E、及びそれらを変更したもの及び/又はそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。これらの基礎培地の組成及び培地濃度を適合する基準及び/又は細胞培養に必要とされる培地サプリメントは概して既知である。好ましい基礎培地配合物は、成体肝細胞のin vitro培養を持続させることが報告されているWilliams Medium E、IMDM又はDMEM等の市販のものであり得る。
かかる基礎培地配合物は、無機塩(特にNa、K、Mg、Ca、Cl、P、場合によってはCu、Fe、Se及びZnを含有する塩)、生理的緩衝剤(例えばHEPES、炭酸水素塩)、ヌクレオチド、ヌクレオシド及び/又は核酸塩基、リボース、デオキシリボース、アミノ酸、ビタミン、酸化防止剤(例えばグルタチオン)、並びに炭素源(例えばグルコース、ピルビン酸塩)等のそれ自体が既知の哺乳動物細胞の発生に必要とされる成分を含有する。更なるサプリメントを使用して、細胞に最適な成長及び増加のための必須微量元素及び物質を供給することができる。かかるサプリメントとしては、インスリン、トランスフェリン、セレン塩及びそれらの組合せが挙げられる。これらの構成要素はハンクス平衡塩溶液(HBSS)、アール塩溶液等の塩溶液に含まれ得る。更なる酸化防止剤サプリメント、例えばβ-メルカプトエタノールを添加してもよい。多くの基礎培地がアミノ酸を既に含有するが、幾つかのアミノ酸、例えば溶液中であまり安定しないことが知られるL-グルタミンを後に添加してもよい。培地に、通例ペニシリン及びストレプトマイシン及び/又は他の化合物の混合物等の抗生物質及び/又は抗真菌化合物を更に供給してもよい。最も重要なことには、細胞培養培地に、細胞生存性及び増加に必要とされ、或る特定の条件下で合成構成要素と置き換えられ得る細胞因子及び構成要素を含有する哺乳動物血漿又は血清を補足することができる。
「血清」という用語は、慣例的に規定されるように、全血サンプルから初めにサンプル中で凝固を起こし、続いてそのように形成された血餅及び血液サンプルの細胞成分を液体構成要素(血清)から適切な技法、通例遠心分離によって分離することによって得られるものである。不活性触媒、例えばガラスビーズ又は粉末により凝固を促進することができる。有利に、血清は哺乳動物に対する不活性触媒を含有する血清分離容器(SST)を用いて調製することができる。
血清又は血漿は市販のものであってもよく、初代肝細胞を得る種と同じ種の生物に由来するものであってもよい。ヒト血清又は血漿を初代ヒト肝細胞の培養に使用することができる。代替的には、培地はウシ血清又は血漿、好ましくは胎仔ウシ(仔ウシ)血清又は血漿、より好ましくは胎仔ウシ(仔ウシ)血清(FCS又はFBS)を含む。培地は約0.5%〜約40 %(v/v)、好ましくは約5 %〜20 %(v/v)、例えば約5 %〜15 %(v/v)、例えば約10 %(v/v)の血清又は血漿又は血清代替物を含む。ヒト肝細胞を培養する培地はヒト血漿又は血清、好ましくはヒト血清及びウシ血漿又は血清、好ましくはウシ血清の混合物を含み得る。
貯蔵又は使用の前に、血漿又は血清を照射(例えばγ照射)又は熱不活性化することができる。熱不活性化は当該技術分野で主に補足物を除去するために用いられる。熱不活性化は通例、血漿又は血清を56℃で30分間〜60分間、例えば30分間、常に混合しながらインキュベートすることを含み、その後血漿又は血清を常温まで徐々に冷却する。任意に、血漿又は血清を(例えば細孔径1 μm未満の1つ又は複数のフィルターを通して濾過することで)滅菌した後、貯蔵又は使用することもできる。
基礎培地の通常の構成要素(血清又は血漿の添加前)は例えば、特に等張生理食塩水、緩衝剤、無機塩、アミノ酸、炭素源、ビタミン、酸化防止剤、pH指示薬及び抗生物質であり、当該技術分野で成長因子又は分化因子とみなされない。一方で、血清又は血漿は場合によっては1つ又は複数のかかる成長因子を含む複雑な組成物である。
「成長因子」という用語は本明細書で使用される場合、様々な細胞型の増殖、成長、分化、生存及び/又は移動に影響を与え、単独で又は他の物質によって変調されて生物において発生的、形態学的及び機能的変化を生じ得る生物活性物質を指す。成長因子は通例、リガンドとして細胞中に存在する受容体(例えば表面又は細胞内受容体)と結合することによって作用することができる。本明細書の成長因子は特に1つ又は複数のポリペプチド鎖を含むタンパク性実体であり得る。「成長因子」という用語は、線維芽細胞成長因子(FGF)ファミリー、骨形成タンパク質(BMP)ファミリー、血小板由来成長因子(PDGF)ファミリー、形質転換成長因子β(TGF-β)ファミリー、神経成長因子(NGF)ファミリー、上皮成長因子(EGF)ファミリー、インスリン関連成長因子(IGF)ファミリー、肝細胞成長因子(HGF)ファミリー、インターロイキン-6(IL-6)ファミリー(例えばオンコスタチンM)、造血成長因子(HeGF)、血小板由来内皮細胞成長因子(PD-ECGF)、アンジオポエチン、血管内皮細胞成長因子(VEGF)ファミリー、又はグルココルチコイドの成員を包含する。この方法をヒト肝細胞に対して用いる場合、本方法に使用される成長因子はヒト又は組み換え成長因子であり得る。本方法におけるヒト及び組み換え成長因子の使用は、かかる成長因子が細胞機能に対して望ましい効果を発揮することが予想されるため好ましい。
培地は、好ましくは特定の成長因子がin vitro培養細胞に対する効果を誘導することができる濃度での、血清又は血漿と1つ又は複数の外から添加された上で規定される成長因子との組合せを含み得る。例えば、培地はEGF及びインスリン又はEGF及びデキサメサゾン又はインスリン及びデキサメサゾン又は各々のEGF、インスリン及びデキサメサゾンを含み得る。EGFは通例約0.1 ng/ml〜1 μg/ml、好ましくは1 ng/ml〜100 ng/ml、例えば約25 ng/mlの濃度で使用することができ、インスリンは通例約0.1 μg/ml〜1 mg/ml、好ましくは約1μg/ml〜100 μg/ml、例えば約10 μg/mlの濃度で使用することができ、デキサメサゾンは通例約0.1 nM〜1 μM、好ましくは約1 nM〜100 nM、例えば約10 nMの濃度で使用することができる。
ホルモン、例えばD-アルドステロン、ジエチルスチルベストロール(DES)、デキサメサゾン、インスリン、エストラジオール、ヒドロコルチゾン、プロラクチン、プロゲステロン、チロトロピン(thyrotropin)、チロキシン、L-サイロニンを細胞培養に使用してもよい。肝細胞はトリヨードサイロニン(triiodothyronine)、α-トコフェロールアセテート及びグルカゴンとの培養によっても利益を得る場合がある。脂質及び脂質担体を細胞培養培地の補完に使用してもよい。かかる脂質及び担体は、とりわけシクロデキストリン、コレステロール、アルブミンに共役したリノール酸、アルブミンに共役したリノール酸及びオレイン酸、非共役リノール酸、アルブミンに共役したリノール−オレイン−アラキドン酸、アルブミンに共役しない及び共役したオレイン酸を含み得るが、これらに限定されない。アルブミンを同様に脂肪酸無含有配合物中で使用することもできる。
実施例に記載のH2Stem Cellの形態学的及び表現型特徴により、初代肝細胞の凍結保存調製物が低いプレーティング効率を有する場合だけでなく、異なる技術、条件及び/又は材料(例えば合成ポリマー材料、細胞外マトリックスの構成要素(複数の場合もあり)、細胞培養培地、量、又はインキュベーター内の酸素及び/又はC02、洗浄緩衝液等)を選択し、組み合わせることで初代細胞の不均質調製物から接着性細胞を調製する既知の技術を試験及び/又は適合することによってもかかる細胞を得ることが可能になる。特に、これらの他の要素の1つ又は複数の組合せとの(抗酸化化合物をミリモル以下の濃度で添加することで得られるような)低酸素条件での培養を、細胞培養物からH2Stem Cellをより多量に及び/又はより迅速に得るために適用することができる。
この上で規定される初代肝細胞を培養する工程は培養物におけるH2Stem Cellの発生及び増殖をもたらし、H2Stem Cellが十分に増殖するまで継続することができる。例えば、上記培養は細胞集団が或る程度のコンフルエンスに達する(例えば少なくとも50 %、70 %又は少なくとも90 %コンフルエント以上)まで継続することができる。「コンフルエンス」という用語は本明細書で使用される場合、細胞が互いに接触し、成長に利用可能な実質的に全ての表面を覆う(すなわち、完全にコンフルエントな)培養細胞の密度を指す。
本方法の工程(d)に関して、初代細胞を細胞培養培地中で培養し、均質な細胞集団の接着及び増殖及び発生を持続させ、その少なくとも1回の継代によりH2Stem Cellについて徐々に富化する。H2Stem Cellは急速に増加し、48時間〜72時間以内に得ることができる細胞倍加及び少なくとも2回、3回、4回、5回以上の継代にわたる所望の特性を有するH2Stem Progenyの維持によって、所望の特性を有するH2StemProgenyを得るのに十分な細胞(例えば所与の密度及び/又は分化状態の二次元接着性細胞又は三次元細胞クラスター)を生成し得る。
継代時に、培養した細胞を培養基質から及び互いに脱離及び解離する。細胞の脱離及び解離は、概して当該技術分野で既知のように、例えばタンパク質分解酵素(例えばトリプシン、例えばI型、II型、III型又はIV型コラゲナーゼ、ディスパーゼ、プロナーゼ、パパイン等から選ばれる)による酵素処理、二価イオンキレート剤(例えばEDTA又はEGTA)による処理、若しくは機械的処理(例えば、小口径ピペット又はピペットチップによる反復ピペット操作)、又はこれらの処理の任意の組合せによって行うことができる。
細胞脱離及び分散の好適な方法は、所望の程度の細胞脱離及び分散を確実にするものとし、培養物中の細胞の大部分が保存される。好ましくは、培養した細胞の脱離及び解離は単一の生存細胞として相当な割合(例えば細胞の少なくとも50 %、70 %、90 %以上)の細胞を生じる。残存細胞は、各々が比較的少数の細胞(例えば平均して1個〜100個の細胞)を含有する細胞クラスター中に存在し得る。
次に、(通例、等張緩衝液又は培地中の細胞懸濁液として)そのように脱離及び解離した細胞を、細胞の接着を可能にする基質に再プレーティングしてもよく、続いてH2Stem Cell及びH2Stem Progenyの更なる増殖を持続させる上記のような培地中で培養する。次いで、これらの細胞を10細胞/cm2〜105細胞/cm2の密度及び約1/16〜1/2、好ましくは約1/8〜1/2、より好ましくは約1/4〜1/2の分割比で再プレーティングすることによって培養することができる。分割比は細胞を得た容器と同じ表面積の空の(通例新たな)培養容器に播種する継代細胞の割合を表す。培養容器、及び培養容器への細胞接着を可能にする表面及び細胞培養培地のタイプは、初めに使用した上記のようなものと同じであっても又は異なっていてもよい。好ましくは、細胞を細胞外マトリックスタンパク質(コラーゲン、好ましくはI型コラーゲン等)又は合成ペプチドでコーティングしたCellBind又は任意の他の適切な支持体に維持する。
上記工程(e)に関して、H2Stem Cell集団の単離を、少なくとも1つの肝臓マーカー及び少なくとも1つの間葉マーカーに対して陽性であり、初めにH2Stem Cellを上記工程(c)で同定する基準を更に実証する少なくとも1つの肝臓特異的活性を有するが、継代後に利用可能な細胞がより多量である場合により容易に確立することができる立方中上皮形態を維持する細胞に適用する。
「単離する」又は「単離」という用語は、基準に対応する細胞の細胞培養物の検査及び特性化(及び可能であり、所望される場合に物理的分離)、又は抗原の存在/非存在及び/又は細胞サイズに応じた細胞の自動化選別(FACS等による)に基づく適切な細胞生物学技術を適用することによって行うことができる、細胞培養物又は生体サンプルからの細胞集団の物理的な同定及び単離の両方を指す。幾つかの実施形態では、「単離する」又は「単離」という用語は、特にフローサイトメトリーを行うことによる細胞の物理的分離及び/又は定量化の更なる工程を含み得る。
「細胞集団」及び「細胞の集団」という用語は概して細胞群を指す。他に指定のない限り、この用語は本明細書で規定の細胞から本質的になる又はそれを含む細胞群を指す。細胞集団は、共通の表現型を有する細胞から本質的になる又は共通の表現型を有する細胞の少なくとも画分を含み得る。細胞は形態学的外観、特定の細胞成分又は生成物(例えば、RNA又はタンパク質)の発現レベル、幾つかの生化学的経路の活性、増殖能及び/又は動態、分化能及び/又は分化シグナルに対する応答、又はin vitro培養時の挙動(例えば、接着又は単分子層成長)を含むが、これらに限定されない1つ又は複数の明らかな特徴が実質的に同様又は同一である場合に共通の表現型を有すると称される。したがって、かかる明らかな特徴により細胞集団又はその画分が規定され得る。細胞集団は細胞の相当部分が共通の表現型を有する場合に「実質的に均一」であり得る。「実質的に均一な」細胞集団は、具体的にH2Stem Cell(又はH2Stem Progeny)と称されるような表現型等の共通の表現型を有する細胞を少なくとも60 %、例えば、少なくとも70 %、少なくとも80 %、少なくとも90 %、少なくとも95%又は更には少なくとも99 %含み得る。さらに、集団中に存在する他のどの細胞も細胞集団の全特性を変えない又は細胞集団の全特性に重大な影響を与えない、したがって細胞系列として規定することができる場合、細胞集団はH2Stem Cell(すなわちH2Stem Progeny)の表現型等の共通の表現型を有する細胞から本質的になり得る。
概して、文献中で公開される特定の細胞型に対する細胞マーカー(例えば間葉、肝臓、造血、上皮、内皮マーカー)又は特定の局在化(例えば細胞内、細胞表面上又は分泌)を有する細胞マーカーを同定及び特性化する任意の技術が、H2Stem Cell及びH2Stem Progenyを特性化するのに適切とみなされ得る。かかる技術は、分析時の細胞の完全性を維持するもの及びかかる細胞を用いて生成する抽出物(タンパク質、核酸、膜等を含む)に基づくものの2つのカテゴリーに分類され得る。実施例は、かかる技術がH2Stem Cell及びH2Stem Progenyの特性化にどのように、例えばそれらの独特な特徴及び生物活性を評価するために、他の肝前駆細胞又は成体初代肝細胞とのより詳細な比較分析を行う前に細胞表面抗原の存在の分析を行うことによって用いられてきたかに関するデータを含む。
タンパク質レベルでは、フローサイトメトリー、FACS又は免疫細胞化学検査等の技術により、抗体又は他のタンパク質特異的試薬を用いてH2StemCellにおける表面又は細胞内タンパク質の存在/非存在を決定することができる。フローサイトメトリーは、単一又は多重染色法及び/又はサイズ及び粒度評価によって決定される表面又は細胞内マーカーの存在/非存在の組合せに応じて細胞集団を特性化する好ましい技術である。免疫細胞化学検査は表面、細胞骨格及び/又は他の細胞内マーカーの存在/非存在の組合せに関連する形態学的特徴の関連情報をもたらす。実際に、実施例によって幾つかの実施形態では、H2Stem Cellの調製物中の相当な割合の細胞がサイトケラチン-19(CK-19)、細胞骨格及び細胞内マーカーに対して陽性であることが示されている。この割合は、フローサイトメトリーによって検出される場合に少なくとも20 %又は20 %〜40 %であると推定され得るが、CK-19を免疫細胞化学検査によって検出するとはるかに高い(すなわち最大90 %以上)場合もある(図2Bを参照されたい)。この更なる特徴(すなわちCK-19に対する陽性率)は、H2Stem Cellとして初代肝細胞を培養することによって作製される細胞集団の確立及び同定を可能にする。
特に、少なくとも1つの間葉マーカー(特にASMAビメンチン、CD90、CD73から選択される)及び少なくとも1つの肝臓マーカーの存在は、受容体を提示する細胞の割合の評価を可能にするフローサイトメトリー、免疫細胞化学検査又は任意の他の技法(概して抗体、レクチン又は他のタンパク質を用い、タンパク質又は核酸抽出を必要としない)によって測定されるものとする。少なくとも60 %の細胞が所望のマーカー又は受容体を提示する場合のフローサイトメトリー及び免疫細胞化学検査による陽性率が本明細書で規定される(実施例に示される)。同様に、20 %未満の細胞が所与のマーカー又は受容体を提示する場合のフローサイトメトリー及び免疫細胞化学検査による陰性率が本明細書で規定される(実施例に示される)。幾つかの実施形態では、CD140bの場合のように10 %未満の細胞が所与の陰性マーカーを提示する(図10Bを参照されたい)。
幾つかの実施形態では、所与のマーカーを測定する場合、上で規定されるマーカーの検出に使用される作用物質又は細胞表面タンパク質を固相(例えばビーズ、プレート又は生体材料)に固定化し、標識し(例えば蛍光標識し)、及び/又は標識された別の化合物(例えば二次抗体)によって認識する。標識により外部手段、例えば望ましくは目視検査又は電磁放射、熱及び化学試薬によって検出可能なシグナルを発生し得る多数の方法が存在する。また、標識又は他のシグナル発生システムの構成要素を、特定の結合パートナー、別の分子又はビーズ等の支持体に当該技術分野で既知の任意の方法、例えば化学架橋によって又はビオチン−ストレプトアビジン系を用いて結合し得る。標識はシグナルを直接発生することができるため、シグナルを発生する更なる構成要素は必要とされない。多数の有機分子、例えば蛍光色素(FITC、PE、PC5、PC7、APC又はフローサイトメトリーに適合することが知られる任意の他の色素等)が紫外光及び可視光を吸収する。放射性同位体及び染料等の他のタイプの標識がシグナルを直接発生する。代替的には、標識はシグナルを発生する他の構成要素を必要とする場合があり、シグナル発生システムはこの場合、基質、補酵素、金属イオン又は酵素生成物と反応する物質を含み得る測定可能なシグナルの発生に必要とされる全ての構成要素を含む(例えばホースラディッシュペルオキシダーゼの化学発光検出)。
H2Stem Cellの肝臓特異的代謝活性は、概して肝細胞と他の組織中に存在する細胞とを区別する肝細胞(及び特に肝細胞)と関連する生物活性を含み、特に文献及び実施例に記載のタンパク質又は他の基質の結合、活性化及び/又は分解を伴う活性を含む。これらの生物活性はタンパク質/薬物結合活性、より好ましくは所与の基質に対する酵素活性であり得る肝臓特異的代謝活性の検出に基づいて、又はブロット法(ウエスタンブロット又はノーザンブロット)、シークエンシング、等電点分画電気泳動、ELISAによって検出される若しくは肝細胞において特異的に輸送及び代謝されることが知られる合成若しくは天然化合物の内在化によって検出される肝臓特異的分子と関連して確立される。
核酸レベルでは、全ゲノムシークエンシング、PCR又はRT-qPCRを用いてH2StemCell又はH2Stem Progenyを特性化することができる。ここでは、リアルタイムPCRを用いて、サイクル数に基づき、1つ又は複数の内因性対照に関して得られるサイクルに対して正規化して、研究中の遺伝子の発現を定量化することができる。特に、RT-PCR反応はH2Stem Cell及び適切なプライマー及び緩衝液を用いて行うことができるが、シグナルが得られるサイクル数は25サイクル、30サイクル又は35サイクルを超えないものとする。
活性レベルでは、肝臓特異的酵素の活性の存在及び/又はレベル評価を可能にし、好ましくはCYP450活性、解毒、グリコーゲン貯蔵、α1-アンチトリプシン又はアルブミンの分泌、胆汁生成、トロンボポエチン産生、アンギオテンシノーゲン産生、アンモニアの尿素への変換、コレステロール合成、グリコーゲン分解、グリコーゲン生成及び脂質生成を測定するための特定の最終生成物の所与の検出限界(文献及び市販の製品の支持体を用いて容易に確立することができる)で実際の酵素活性のin vitroでの定量化を可能にする任意の適切な技法によって、肝臓特異的代謝活性の存在を測定することができる。特に、活性が最終生成物の検出限界より統計上優れた(検出限界の少なくとも2倍、5倍又は10倍)又は初代肝細胞の活性レベルに近い(優れた、同一の又は10 %、25 %、50 %、75 %又は90 %低い)ように測定される場合の少なくとも肝臓特異的代謝活性の陽性率が本明細書で規定される。
特に酵素活性を特異的に誘導する化合物及びこれらの実験を行うために用いることができるフォーマットに関して、ヒト肝細胞におけるシトクロムP450活性をin vitroで評価する技術の広範な説明は文献に提示される(Baudoin R et al., 2012、Gerets HH et al., 2012、Gomez-Lechon MJ et al., 2012、Halladay JS etal., 2012、Hoffmann SA et al., 2012、Lubberstedt M et al., 2011、Smith CM et al., 2012)。種々の誘導因子の中でも、ミダゾラム、エトキシレゾルフィン、ベンゾキシレソルフォン、ブプロピオン、フェナセチン、ジクロフェナク、トルブタミド、フェノバルビタール、リファンピシン、カフェイン、β−ナフトフラボン、オメプラゾール、デキストロメトルファン、3-メチルコラントレン、レパグリニド、又はプローブとして知られる他の細胞毒性/肝毒性化合物を用いて、これらの細胞内の薬物代謝を評価することができる。代謝物の検出及び定量化は、CYP1A2(パラキサンチン又はアセトアミノフェンを検出することによる)、CYP3A4(1-OH-ミダゾラム又はオメプラゾールスルホンを検出することによる)、CYP2C6(HO-ブプロピオンを検出することによる)、CYP2C8(ヒドロキシル−レパグリニドを検出することによる)、CYP2C9(4'HO-ジクロフェナクを検出することによる)、CYP2C19(ヒドロキシ−オメプラゾール又はHO-メフェニトインを検出することによる)、CYP2D6(デキストロルファンを検出することによる)、CYP2E1(6-OH-クロルゾキサゾンを検出することによる)等の特異的な化合物に対する肝酵素の活性、及びCYP1A2、CYP2A6、CYP1B1、CYP2B6、CYP3A5、CYP3A7又はCYP7A1(単独で又は適切な組合せで)等の主要な他のシトクロムP450の活性に関連付けることができる。
発現又は(好ましくは)活性をH2Stem Cell及びH2Stem Progenyにて確立させることができる他の酵素は、UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT1A1、UGT2B4、UGT2B7等)、スルホトランスフェラーゼ(幾つかの薬学的に重要な内因性分子及び生体異物の硫酸抱合を触媒するものである)、チロシントランスフェラーゼ、トリプトファン-2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO2又はTDO)、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(ID01又はID02)、リジルオキシダーゼ(LOX)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(例えばGSTα)、多剤耐性タンパク質(MDR又はMRP-1/-2/-3)、肝臓特異的なトランスポーター(OATP1B1等)、及び他の第I/II/III相生体内変換酵素である。さらに、アルブミン/尿素産生及び分泌、アンモニア代謝、グリコーゲン貯蔵、胆汁生成、トロンボポエチン/アンギオテンシノーゲン産生及びガラクトース/ソルビトール除去速度を、十分に確立されたプロトコルを適用することによって観察及び比較することもできる。
H2Stem Cellの調製物が本発明の方法によって得られる場合、この細胞集団は分化なしの成長及び倍加を可能にする条件で維持及び/又は増殖し、又はこの状態での1若しくは複数の継代後に肝細胞様若しくは肝活性化細胞への分化を誘導することができる(図1、図4A及び図5B〜図5Eを参照されたい)。どちらの場合も、得られる細胞はH2Stem Progenyを示す。第1の場合では、H2Stem Cellを未分化H2Stem Progenyとして維持する条件は、利用可能な細胞の数を増大するか、又は実施例に示されるように三次元細胞クラスター(H3Stem Cell)を生成する目的でH2Stem Cellの元の集団を得るために使用されるのと同じ条件であり得る。第2の場合では、成体肝前駆細胞を肝細胞へと分化する細胞に典型的な形態学的、生物学的、機能的特徴を有する細胞へと分化する十分に確立された細胞培養条件を適用することができる。
本発明の方法の工程(e)に続いて、任意の更なる工程(f)は、H2StemCellを、肝臓特異的活性を示す細胞、例えば肝細胞様又は肝活性化細胞(すなわち、全てではないが殆どの間葉マーカーに対するそれらの陽性率を失い、全てではないが殆どの肝細胞の形態学的、生物学的な及び機能的特徴に対して陽性である成体肝前駆細胞)への分化を可能にする細胞培養条件に維持することを含み得る。実施例に、かかる肝細胞様又は肝活性化細胞を接着性細胞の形態のH2Stem Progeny(H3Screen-2b、H3Screen-2c又はH2Screen Cell)又は懸濁液中に容易に維持することができる三次元細胞クラスター(H3Screen-1 Cell又はH3Screen-2a Cell)として生成する方法の詳細を提示する。
この後者の態様について、実施例では、超低接着細胞培養プレート又はフラスコ及び更には適切に超低接着、U字形/円形培養マイクロプレートが三次元H2Stem Progenyを、肝細胞及び一般的肝活性化細胞を特性化する改善された機能的及び構造的特徴を示す浮遊状態の細胞クラスターとして生じることが示される。96ウェル又は384ウェルを含むU字形/円形培養マイクロプレート(又はU字形底部を有する種々の数のウェルを含み、細胞培養物を細胞培養培地0.5 ml未満、又は更に良好には0.25 ml未満の容量で維持することを可能にする任意の他の利用可能なフォーマット)が、三次元H2Stem Progenyを、それらをin vitro及びin vivo使用により適切なものとするより規則的なサイズ及び形状を有する浮遊状態の細胞クラスターとして生じる。
このため、上記工程(e)において作製及び単離される細胞集団は幾つかの実施形態では、特定の三次元H2StemProgenyを示す細胞クラスターの形成を可能にする細胞培養条件に維持することができる。この方法の工程は更なる工程(g)(例えばH2Screen CellからH3Screen-1 Cellを得る)、代替工程(f1)(例えばH2Stem CellからH3Stem Cellを得る)、又は三次元H2Stem Progenyのin vitro分化及び形成を組み合わせた更なる代替工程(f2)(例えばH2Stem Cellから直接H2Screen-2a Cellを得る)であり得る。
更なる継代(例えば細胞の脱離及び分散、再プレーティング等)及び培養(例えば、コンフルエンス後の培地の添加又は交換等)を、上記のような第1の継代と実質的に同一若しくは類似の条件で、又は文献に提案される及び/又は特に三次元細胞クラスター(三次元H2Stem Progeny)の形態のH2Stem Cell又はH2Stem Progenyの特定の用途のための変更を加えて行うことができる。このため、H2StemCell又はH2Stem Progenyを細胞培養物中に維持及び/又は分化する条件を、肝細胞様若しくは肝活性化細胞への分化のタイミング/培地、三次元細胞培養物を細胞懸濁液として維持するシステム、特定の基質若しくは足場の使用、低酸素症、細胞培養培地における成長因子及び化学化合物の組み合わせた若しくは連続添加、又は細胞密度等の異なる基準に応じて更に最適化することができる。
本発明の方法は、以前に記載された成体前駆肝細胞において同定されたものとは異なる形態学的、タンパク質発現及び機能的特徴を示すH2Stem Cellを提供する。その結果として、上記に規定の方法によって得られる又は得ることができるH2Stem Cellは本発明の更なる実施形態である。これらの方法は、高い割合(少なくとも30 %、40 %、50 %、60 %、70 %、80 %、90 %以上)の特定の細胞を含む細胞集団を提供することを可能にし、更には任意の適切な標準的な方法、例えばフローサイトメトリー又は任意の他の免疫染色アプローチによって評価することができる実質的に均一な細胞集団を生じる。所与のH2StemProgeny、特に肝活性化細胞及び三次元細胞クラスターにおける間質要素(図4A及び図5を参照されたい)は、かかる後代の一部とみなされ、かかる細胞クラスターを汚染する要素ではなく、構成要素とみなすべきである。
H2Stem Cell及びH2Stem Progenyは、任意の即時の使用のための又は各々が少なくとも103、106、109以上の細胞を含有する凍結保存調製物として保管され、調製物を適切に解凍した後、必要に応じてH2Stem Cell及びH2Stem Progenyを(例えばバイオプロセス及び細胞増加を改善し、所望の細胞特性を維持するためにバイオリアクター、膜、ミクロスフェア、マイクロ流体又は任意の他の技術的解決法を使用して)工業規模で(at)作製するためにより多量のH2Stem Cell又はH2Stem Progenyを作製又は使用することを目的とする細胞培養物の確立に使用することができる。H2Stem Cell及びH2Stem Progenyのいずれかに対応する細胞集団のサンプルは、血清含有又は血清無含有保存培地(例えば市販の凍結保存配合物)中及び/又は低温保護剤(例えば適切な濃度のジメチルスルホキシド)の存在下で低温保持する(cryostored)ことができる。
特に、所定の数の細胞(例えば50000、100000、500000、100万、1000万、1億、10億以上の細胞)、又は各々がほぼ同数の細胞(例えば図6に示されるような1、10、100、1000以上のスフェロイド)を含む三次元細胞クラスターを含むH2Stem Cell及びH2Stem Progenyの調製物を1つ又は複数のバイアルに提供することができ、その結果としてH2Stem Cell及びH2Stem Progenyのin vivo(例えば患者又は動物への投与)又はin vitro(例えば候補薬物としての化合物の毒性又は有効性の試験)での使用のための適切に包装し、顧客に送ることができるかかるバイアル及び任意の他の適切なデバイス、使い捨て材料(例えばフィルター、シリンジ)、溶液(例えばPBS、細胞培養培地、希釈剤)、化学剤(例えば酵素基質、蛍光色素、薬物)、生物製品(例えば成長因子、抗体、プライマー)、及び/又はかかるキットの構成要素の使用説明書を含むキットに含めることができる。
細胞培養条件における(又は動物モデル若しくは患者への移植後の)H2Stem Cell及びH2Stem Progenyの維持、増殖及び/又は分化は、所望の用途のために必要に応じて行うことができる。文献には肝前駆細胞を維持する及び/又は肝前駆細胞から肝細胞様又は肝活性化細胞を生成する幾つかのプロトコルが提示されている。実施例には、H2Stem Cell及びH2Stem Progenyを細胞培養条件で得て、それらを接着性細胞の形態で又は三次元細胞クラスターとして肝臓特異的活性を示す細胞へと分化する手段を提示する。この後者の場合では、H2Stem Cell及びH2Stem Progenyは所望の用途のために、文献に従うと肝臓内又は肝臓外に投与した場合に生存能力及び機能性における顕著な改善を細胞に提供することができ、化合物の肝毒性の試験に使用され、凍結保存調製物として維持され、製造プロセスのスケールアップのためにバイオリアクター内で増加し、又は肝臓補助デバイスにおいて使用される肝臓スフェロイド又はオルガノイドと同様の三次元細胞クラスターとして提供することができる(非特許文献15、非特許文献16、Massie Iet al., 2011、非特許文献17、非特許文献18、Meng Q, 2010、非特許文献19)。実施例に記載の方法に加えて、H2Stem Cell及びH2Stem Progenyの三次元成長は、細胞を合成又は生体マトリックスに封入することによって得ることもできる。
H2Stem Cell及びH2Stem Progenyの維持、増殖及び/又は分化は、異なる起源の幹細胞、前駆細胞又は間葉細胞について当該技術分野で既知の技術的解決法を用いて細胞培養条件を適合することによって改善することができる。例えば、非細胞損傷低酸素雰囲気のex vivoプロトコル及びin vitro微小環境を適合する他のアプローチにより、かかる細胞の生存、遺伝安定性、増殖、生着後分化、パラクリン因子の分泌及び全治療可能性を促進することができる(Muscari C et al., 2013、Cigognini D et al., 2013)。そうでなければ、臍帯血清及び血小板溶解物等のヒト血液由来の構成要素を臨床的に関連する細胞用量を得るための胎児ウシ血清に対する非異種代替物であり、依然として製造管理及び品質管理に関する基準(GMP)のガイドラインに準拠し、血清の品質の変動性、汚染及び望ましくない免疫効果のリスクと関連する既知の問題のない細胞培養物の構成要素として試験及び開発する(Bieback K, 2013、Griffiths S et al., 2013)。
投与するか又は別の方法で使用する前に、H2Stem Cell及びH2Stem Progenyを、該細胞を異種生体物質又は化学剤へと曝露するか、又は上記作用物質を細胞に導入することによって一時的に又は安定に修飾することができる。特にH2Stem Cell及びH2Stem Progenyは、細胞を成長因子で処理し、及び/又は細胞の全発現プロファイル、好ましくは特定の肝臓特徴又は細胞培養を助ける特徴に影響を及ぼす核酸を導入することによって(例えば、マイクロRNA又は肝臓分化若しくは任意の他の細胞型への分化に影響を及ぼすことが知られる成長因子若しくは転写因子若しくは蛍光タンパク質等の組み換えタンパク質を発現するレンチウイルスベクターで細胞を形質導入することによって)、細胞培養物(例えばそれらの分化の後及び/又は前)中で修飾する(又は適切なベクターによるそれらの形質転換の後、操作する)ことができる。
特に、H2Stem Cell及びH2Stem Progenyは結果として、全範囲の肝臓特異的活性を示す細胞への分化の後及び/又は前にin vivo及び/又はin vitroで改善された及び/又は更なる生物活性を示し得る。好ましくは、H2Stem Cell及びH2Stem Progenyは分化前に操作され、かかる細胞の後代のいずれかが分化とは独立して改善された生物活性を有するように一貫して修飾される。
他の既知の肝前駆/幹細胞の他の非肝細胞型(例えば骨細胞、インスリン産生β細胞又は骨髄細胞)への分化を誘導することが知られる化学剤、細胞培養培地及び/又は核酸ベクターによるH2Stem Progenyの処理は同様にかかる非肝細胞型を生じ得る。文献で既知のこれらの技術をH2Stem Cell(又は任意の特定のタイプのH2Stem Progeny)に適用することで得られる非肝細胞集団は、かかる処理の結果としてH2Stem Progenyが失った及び/又は得た生物活性に応じてin vitro及び/又はin vivoで(特に治療的使用のために)使用することができる実施例に記載のもの(肝臓分化を誘導するための細胞培養培地を使用することによって得られる)とは異なる更なるタイプの分化H2Stem Progenyである(例えばインスリンを産生及び分泌する分化H2StemProgenyを糖尿病の治療に使用することができる)。
マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウムによる共沈、リポソーム又はウイルストランスフェクションを含む肝前駆細胞に適用可能な従来の遺伝子移入法を用いて、核酸をH2Stem Cell及びH2Stem Progenyに導入することができる。適切なベクターによるそれらの形質転換後に、H2Stem Cell及びH2Stem Progenyは、(例えば、遺伝子療法のための肝前駆細胞ベースのモデルを確立する範囲で)肝細胞様又は肝活性化細胞へのそれらの分化の後及び/又は前に上記細胞が改善された及び/又は更なる生物活性をin vivo及び/又はin vitroで示すことを可能にする組み換えタンパク質を発現するか又は核酸を含有し得る。ベクターがウイルスベクター(例えばレンチウイルスベクター)である場合、ベクターは最適な形質導入効率の条件及び増殖速度を選択し、発現プロファイル及び安全性を分析する力価の決定によって特徴付けられる。
肝臓は解剖学的に、血流への様々なタンパク質の効率的な放出を可能にするように循環系と接続する。したがって、in vivoで投与した場合の有効性、並びに生着及び維持を更に改善するために全身効果を有するタンパク質をコードする遺伝子を、(特に三次元細胞クラスターを得るために培養する前に)H2Stem Cell及びH2Stem Progenyに挿入してもよい。
例えば、ホルモン又は抗体をコードする様々な遺伝子を、循環への遺伝子産物の分泌のために本発明の肝細胞に挿入することができる。特に、H2Stem Cell及びH2Stem Progenyは、肝細胞によって通常発現される(場合によってはかかる細胞で既に発現されている)が、患者において欠損し又は存在せず(先天性肝臓代謝異常のように、この欠損は患者の病的状態の根底にある)、タンパク質の産生の回復を助け、それにより患者の治療の助けとなるタンパク質を構成的又は一時的に過剰発現するように修飾することができる。かかるタンパク質の例は、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギノコハク酸合成酵素、アルギニノコハク酸(argininosuccinate)リアーゼ、アルギナーゼ、カルバミルリン酸シンターゼ、N-アセチルグルタミン酸シンターゼ、グルタミン合成酵素、グリコーゲン合成酵素、グルコース-6-ホスファターゼ、アルカリホスファターゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ、グルコキナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、アセチルCoAカルボキシラーゼ、脂肪酸合成酵素、アラニンアミノトランスフェラーゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、フェリチン、低密度リポタンパク質(LDL)受容体、P450酵素及び/又はアルコールデヒドロゲナーゼ等の代謝タンパク質である。
代替的には、H2Stem Cell及びH2Stem Progenyはアルブミン、成長因子又はホルモン、インスリン、トランスフェリン、補体成分C3、α2-マクログロブリン、フィブリノゲンα/β/γ鎖、凝固因子(第V因子、第VII因子、第VIII因子、第XIII因子、第IX因子)、α1-アンチトリプシン等の分泌血漿タンパク質をコードするDNAを導入することによって修飾することができる。
H2Stem Cell及びH2Stem Progenyを生成することで得られる生体物質を、特定の用途、特に異なる医学的用途を有し得る生物学的実体の同定に更に使用することができる。これらの生体物質としては、特定のマーカー、活性及び/又は形態を示すH2Stem Cell又はH2Stem Progenyの亜集団(又は細胞系列)だけでなく、医学的興味の持たれる細胞を検出するバイオマーカー又は医学的興味の持たれる活性若しくは分布を示す化合物として使用することができるタンパク質、代謝産物、細胞小胞及び/又は核酸を含む、これらの細胞及び培地の馴化細胞培養培地及び画分等の中間体又は最終生成物として得られる任意の他の生物学的な実体が挙げられる。かかるアプローチは対象の細胞を用いて直接追求することができるが、H2Stem Cell及びH2Stem Progenyのセクレトーム、特にパラクリン効果についての関連情報を与え得る馴化細胞培養培地の含量を測定することによって更なる情報を決定することもできる。
H2Stem Cell又はH2Stem Progenyの関連する生物学的特徴はフローサイトメトリー、免疫細胞化学検査、質量分析、ゲル電気泳動、免疫測定(例えば免疫ブロット、ウエスタンブロット、免疫沈降、ELISA)、核酸増幅、酵素活性、オミックス技術(プロテオミクス、グライコミクス、トランスクリプトミクス、メタボロミクス)及び/又は他の生物活性等の技術を用いて同定することができる。特に、ゲノミクス、トランスクリプトミクス、プロテオミクス、リピドミクス、グライコミクス等の技術は、幹細胞又は前駆細胞、特に肝前駆細胞について公開されるデータベース及び他のデータセットを用いたH2Stem Cell又はH2Stem Progenyを比較する更なる手段をもたらすことができる(Yu J, et al., 2012、Santamaria E, et al., 2012、Slany A, et al., 2010)。このようにして、SUSD2等のタンパク質は、H2Stem Cellにおける顕著に高い存在によりADHLSC Cell等の同様の起源を有する細胞と区別されるマーカーとして同定することができる(又は反対に、図10に示されるように、CD140b発現の非存在によりH2Stem CellとADHLSC Cellとが区別される)。
これらのアプローチは、成体肝前駆細胞と関連する新規のバイオマーカーを(例えばその調製及び使用の前、最中又は後に細胞集団の量、品質及び均質性を確立するために)in vivo又はin vitroで規定する手段を提供し得る。特に、バイオマーカーは、全体的な又は特定のタンパク質、脂質、酵素、リン脂質及び/又はグリカンを示す細胞の濃度と組み合わせた生体サンプル又は細胞培養物における所与の細胞集団(H2Stem Cell及び/又はH2Stem Progeny)の濃度を用いて規定され得る。かかるバイオマーカーは、ペプチド、タンパク質、リン脂質、脂質、核酸、グリカン又はかかる要素構成要素の任意の組合せに相当し得る。バイオマーカーは、所与の用途の(例えば特定の肝疾患を治療する、化学剤及び/又は核酸ベクターによるin vitro分化又は修飾後に肝活性化細胞タイプを得る、特定の化合物の代謝を評価する)ためのH2Stem Cell又はH2Stem Progenyである細胞集団の適合性の評価に特異的であり得る。そうでなければ、バイオマーカーは、どのドナー及び/又はサンプルを選択することができるかを確立するために、所与の肝組織(又は新鮮な若しくは凍結保存した肝細胞のサンプル)がH2Stem Cellをより効率的に(例えば肝組織バンク、並びにタンパク質抽出物及びcDNAライブラリー等の他の肝臓由来生体サンプルのライブラリーのスクリーニングによって)得るのに適切であるか評価することを可能にする。
「バイオマーカー」又は「マーカー」という用語は、H2Stem Cell及び/又はH2Stem Progenyを特性化するものとして客観的に測定及び評価される分子、パラメーター、特性又は実体を指す。特定のサンプル(組織又は体液等)におけるH2Stem Cell及び/又はH2Stem Progenyと関連するバイオマーカーの定量的評価は、全細胞の定量的評価、H2Stem Cell及び/又はH2Stem Progenyを作製及び単離することができる効率、又は患者の特定の医学的状態と関連付けることができる。
H2Stem Cell及びH2Stem Progenyは、in vivo若しくはin vitroで分化した後、又は更にはより大きな数及び/又はより強い肝臓特異的活性(すなわち、肝活性化細胞)を示す細胞への完全分化の誘導の前に、所望の期間にわたって初代肝細胞について観察されるものと可能な限り同様の生物学的特徴(代謝活性若しくは酵素活性、抗原的プロファイル又は他の表現型等)を示す細胞を必要とする再生医学及び生物学的アッセイに使用することができる。H2Stem Cell及びH2Stem Progenyは、薬理学的又は毒物学的研究(例えば生体物質又は化学剤のスクリーニング及び特性化)等のin vitro用途にも使用することができ、H2Stem Cell及びH2Stem Progenyは毒物学、薬理学及び薬理遺伝学のin vitro及び動物モデルの確立(様々な起源の前駆細胞又は幹細胞に由来する初代肝細胞及び肝細胞様細胞について広く記載される)、又は特に肝疾患の診断、予防及び/又は治療に関して医学的興味の持たれるin vivo及び/又はin vitro細胞集団を同定するバイオマーカーの同定を可能にし得る。
「in vitro」という用語は本明細書で使用される場合、動物又はヒトの身体の外側又は外部を表す。「in vitro」という用語は本明細書で使用される場合、「ex vivo」を含むことが理解されるものとする。「ex vivo」という用語は通例、動物又はヒトの身体から摘出され、体外で、例えば培養容器又はバイオリアクター内で維持又は増殖する組織又は細胞を指す。
H2Stem Cell及びH3Stem Cellが好ましくはin vivo用途に使用され得る場合、H2Screen Cellに対応するH2Stem Progeny、H3Screen-1 Cell及び異なるカテゴリーのH3Screen-2 Cellが好ましくは薬物の発見/検証用の分化肝細胞様又は肝活性化細胞として使用され得る。
H2Stem Cell及びH2Stem Progeny(又はそれらを生成することで得られる対応する生体物質)は、それらを含む組成物中で、特にin vivo投与での(ヒト又は動物モデルにおける)治療方法又はかかる細胞を新鮮細胞若しくは長期貯蔵に好適な細胞(例えば凍結保存細胞)として含む組成物の形態でのin vitro用途に使用することができる医薬組成物として提供することができる。好ましくは、H2Stem Cell又はH2StemProgenyを含む組成物は少なくとも103、106、109以上の細胞を含み得る。かかる細胞ベースの組成物は、更なる治療、診断又は任意の他の有用な効果をもたらし得る他の生物学的起源(例えば抗体又は成長因子)又は化学的起源(例えば薬物、細胞保存又は標識化化合物)の作用物質を含み得る。文献に、組成物の各々の構成要素の量が(マイクログラム/ミリグラム、容量又は百分率の単位で)規定される更なる特定の緩衝剤、成長因子又はアジュバントを含み得る細胞ベースの医薬組成物に適合する任意の添加剤、賦形剤、ビヒクル及び/又は担体、並びにそれらをH2Stem Cell及びH2Stem Progenyと組み合わせる手段の幾つかの例が提示される。
H2Stem Cell及びH2Stem Progenyは、選ばれた投与方法に応じてバイオ人工肝臓デバイス、天然若しくは合成マトリックス又は細胞の生着及び機能性を可能にする他のシステムを含む、細胞がin vitro及び/又はin vivoで成長及び分化することができる細胞、スポンジ又は他の三次元構造の懸濁液であり得る組成物の形態で投与することができる。特に、H2Stem Cell及びH2Stem Progenyは注射(カテーテル投与も包含する)又は移植、例えば局所注射、全身注射、脾臓内若しくは腹腔内注射、門脈内注射、肝臓髄質、例えば肝包膜下への注射、非経口投与、又は胚若しくは胎児への子宮内注射によって投与することができる。さらに、H2Stem Cell及びH2Stem Progenyは、(他の幹細胞、分化肝細胞又は幹(stem)細胞に由来する細胞型のような)H2Stem Cell又はH2Stem Progenyを播種する硬質のプラスチック外部シェル及び中空半透膜線維を有する肝臓灌流又は肝臓補助デバイス等の解毒デバイスの生物学的要素に使用することができる。既知の手順に従って解毒デバイスを介して体液を灌流させた後、患者に戻すことができる。
H2Stem Cell、H2Stem Progeny又はそれらを含有する組成物は、肝内又は肝外位置における肝細胞移植(LCT)によって組織工学及び細胞療法に使用することができる。このアプローチを用いると、ヒト起源のH2Stem Cell、ヒト起源のH2Stem Progeny又はそれらを含有する組成物を、ヒト肝細胞に対する化合物の効果をより効果的に評価し、動物モデルにおける効果と区別することができる動物に移植することによってヒト肝疾患の動物モデルを得ることもできる。
H2Stem Cell又は特定のH2Stem Progenyを含む治療的組成物を投与する場合、治療的組成物は概して単位用量で配合され得る。いずれの場合にも、作用物質を含み、及び/又は例えば細胞を生体高分子又は合成ポリマーに組み込むことによってH2Stem Cell又はH2Stem Progenyの生存能力を確実にする細胞を患者に投与する既知の方法に適合することが望ましい可能性がある。好適なバイオポリマーの例としては、フィブロネクチン、フィブリン、フィブリノゲン、トロンビン、コラーゲン、及びプロテオグリカン、ラミニン、接着分子、プロテオグリカン、ヒアルロナン、グリコサミノグリカン鎖、キトサン、アルギン酸塩、このようなタンパク質に由来する天然又は合成的に修飾したペプチド、並びに合成、生分解及び生体適合性ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。これらの組成物は、サイトカイン、成長因子を含んで又は含まずに作製し、懸濁液又は細胞を包埋した三次元ゲルとして投与することができる。
本発明の方法は、H2Stem Cellを作製及び単離し、H2Stem Progeny又はそれらを含有する組成物を生成するためにH2Stem Cell又はH2Stem Progenyを生成する肝組織の任意のドナーを使用するだけでなく、患者自身の肝組織を使用することを企図する。かかる細胞は患者に対して自己であってもよく、患者に容易に投与することができる。そうでなければ、H2Stem Cellは患者自身ではない組織から作製及び単離することができる。患者へのかかる細胞の投与が企図される場合、H2Stem Cellを得るために本発明の方法に供した肝組織を、少なくとも達成可能な範囲内で患者と投与される細胞との組織適合性を最大化し、それにより投与された細胞の患者の免疫系による拒絶反応(例えば移植片対宿主拒絶反応)の可能性を低減するために選択するのが好ましい可能性がある。
H2Stem Cell及びH2Stem Progenyの治療的使用に関する問題は、最適な効果を達成するのに必要な細胞の量である。投与用量は変動する可能性があり、初期投与後の後続の投与を含み、本開示の教示を適用することで当業者によって確認することができる。通例、投与用量(単数又は複数)は、治療有効量の細胞を与え、投与される細胞の量の最適化が必要とされ得る。このため、投与される細胞の量は治療する被験体に対して変動する(例えば1サイクル又は処理の全サイクルにおいて各処理について102〜1010の細胞)。しかしながら、治療上効果的な用量の正確な決定は、サイズ、年齢、サイズ、組織損傷及び損傷が起こってからの期間を含む各患者の個々の因子に基づき得ることができる。
好ましくは、H2Stem Cell又は特定のH2Stem Progenyを含む組成物は、上で規定される実質的に均一な細胞集団を含有するものとし、各用量における細胞の量を結果として調整することができる。特に、組成物が三次元細胞クラスターを形成するH3Stem Cell又は任意の他のH2Stem Progenyを含む場合、かかる組成物は全細胞(又は細胞クラスター)数だけでなく、所与の範囲の直径(例えば50 μm〜200 μm又は50 μm〜100 μm)若しくは所与のサイズ未満/超(例えば100 μm、200 μm、500 μm又は1000 μm)を有し、及び/又は所与の数の細胞(例えば少なくとも10000、20000、50000、100000以上)を含む投与する細胞クラスターを選択することによって、それらの寸法に応じて調製することができる。
H2Stem Cell又はH2Stem Progenyの投与又は移植後の分布、分化及び/又は増殖(及び異なる治療剤の投与後/前のそれらの活性)は決定することができ、ヒト被験体又は動物モデル(好ましくは齧歯類)において試験することができる。例えば、H2Stem Cell又はH2Stem Progenyを脾臓内移植したSCIDマウスの肝臓の分析により、これらの細胞をヒトマーカーの検出によって生着し、ヒトアルブミン又は任意の他の典型的なヒト肝臓特異的マーカー(又は投与されるH2Stem Cell若しくはH2Stem Progenyに先にトランスフェクトした組み換え遺伝子)の検出によって活性成熟肝細胞へと分化することが可能であることが実証され得る。
本発明の別の態様は、H2Stem Cell、H2Stem Progeny又はそれらを含有する組成物を、それを必要とする被験体に投与することを含む肝疾患を予防及び/又は治療する方法である。H2Stem Cell及びH2Stem Progenyは、肝疾患、特に文献に従うと観察され、異なるカテゴリーに分類することができる肝重及び/又は機能の喪失を考えて肝臓移植、肝細胞移植又は肝臓再生を必要とする被験体における肝機能の恒久的(又は時限)再確立を必要とする肝疾患の治療に使用することができる。
肝疾患を治療する方法は、H2Stem Cell又は所与のH2Stem Progeny等のH2Stem生成物を、好ましくは組成物中でそれを必要とする被験体に投与することを含む。特に、それを必要とする患者において疾患を治療する方法は有効量のH2Stem Productを患者に投与することを含み、該疾患は好ましくは、肝臓代謝の先天異常、遺伝性血液凝固障害、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症1/2/3型、α1-抗トリプシン欠乏症、肝細胞トランスポーターの欠乏、ポルフィリン症、脂肪肝又は他の線維性肝疾患、原発性胆汁性肝硬変、硬化性胆管炎、肝変性疾患、又は急性若しくは慢性肝不全等の肝疾患である。肝疾患の第1のカテゴリーは肝臓代謝の先天異常によって表され、アミノ酸代謝の異常(メープルシロップ尿症、フェニルケトン尿症、チロシン血症、プロピオン酸血症、有機酸血症、並びにアルギニノコハク酸尿症、カルバモイルリン酸シンターゼI欠損症、シトルリン血症、高アルギニン血症及びオルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ欠損症を含む尿路回路障害等)、金属代謝の異常(ウィルソン病又はヘモクロマトーシス等)、及び炭水化物代謝の異常(I/II型糖原病、果糖血症又は乳糖血症等)、リソソーム障害(ウォルマン病、ニールマンピック病等)、ペルオキシソーム障害(レフサム病等)、家族性高コレステロール血症及び他の脂質代謝障害、ミトコンドリア病(ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症等)、並びに高ビリルビン血症(クリグラー−ナジャー症候群、ギルバート症候群又はデュビン−ジョンソン症候群等)へと更に識別することができる。第2のカテゴリーは、遺伝性血液凝固障害、例えば第V因子欠乏症、第VII因子欠乏症、第VIII因子欠乏症、第IX因子欠乏症、第XIII因子欠乏症、及び他の凝固関連因子(他の凝固因子及びフィブリノゲンのα/β/γ鎖を含む)又は特異的に発現し、肝臓により血流へと分泌される他のタンパク質(アルブミン等)の量が不十分であることに起因する他の欠乏症によって表される。第3のカテゴリーは凝固又は代謝の欠損に直接関連しない他の肝疾患によって表され、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症1/2/3型、α1-抗トリプシン欠乏症、カロリー病、肝細胞トランスポーターの欠乏、ポルフィリン症(急性間欠性ポルフィリン症等)、脂肪肝若しくは他の線維性肝疾患(NASH/NAFLD)、原発性胆汁性肝硬変、硬化性胆管炎、肝変性疾患、又は急性若しくは慢性肝不全(例えば肝臓切除後、劇症性、ウイルス誘導性、慢性肝不全の急性増悪(acute-on-chronic liver failure))を含む。
組成物中での治療方法における全体的なH2Stem Cell又はH2Stem Progeny(又はH3Stem Cell等の特定の細胞集団)の使用は、上に挙げたような肝疾患に対する治療効果をもたらすことができるが、初代肝細胞又は肝細胞系列の置換におけるin vitro研究とも関連し得る。特に、H2Stem Progenyは、化合物(例えば生物学的又は化学的実体)の有効性(H2Stem生成物が肝臓特異的又は非特異的疾患に対する潜在的薬物標的を発現する場合)、代謝、安定性及び/又は毒性の評価のための(初期)薬理学的及び毒物学的方法に使用することができる。
かかるin vitro方法及び使用は概して、以下の工程:
(a)H2Stem生成物(例えば細胞、細胞抽出物、又はH2Stem Cell若しくはH2Stem Progenyから得られる馴化培地の形態のH2Stem Cell又はH2Stem Progeny)の調製物を準備する工程と、
(b)上記H2Stem生成物を化学化合物、タンパク質、核酸、脂質、糖、金属、塩、ウイルス、細菌又は細胞から選択される1つ又は複数の外因性成分に曝露する工程と、
(c)H2Stem生成物に対する上記1つ若しくは複数の外因性成分の効果を検出する工程、及び/又はH2Stem生成物への曝露後の上記1つ若しくは複数の外因性成分の存在、局在化若しくは修飾を検出する工程と、
を含む。
H2Stem Cell及びH2Stem Progenyは、既に登録された薬物である化学剤、肝臓特異的効果について依然として開発及び予備臨床評価中の候補薬物、又は望ましくない(すなわち肝毒性化合物にとって)若しくは所望される(H2Stem Cell及びH2Stem Progenyはそれ自体が癌等の肝臓特異的又は非特異的疾患の候補薬物の標的であることが知られる酵素及び他の肝臓特異的タンパク質を発現する場合、化合物はかかる疾患の候補薬物とみなされる)可能性がある、肝臓特異的効果を有することが疑われる任意の他の化学剤の殆どを代謝することが知られる酵素及び他の肝臓特異的タンパク質を高レベルで発現する。
概して、細胞、細胞抽出物、又はH2Stem Cell若しくはH2Stem Progenyから得られる馴化培地の形態のH2Stem Cell又はH2Stem Progenyは、化学剤、無機化合物、生物物質、細菌、ウイルス又は細胞の代謝、除去及び毒性を細胞形態又は生存能力等の一般的特徴の分析によって(例えば細胞毒性試験において)評価するために上記工程(c)において評価することができる。しかしながら、肝臓特異的(又は非特異的)タンパク質の上方若しくは下方調節、又はH2Stem生成物(例えばH2Stem Cell、H2Stem Progeny若しくは細胞抽出物、又はH2Stem Cell若しくはH2Stem Progenyから得られる馴化培地)におけるタンパク質の任意の改変(例えば分解、凝集、活性化又は阻害)等の代替基準又は更なる基準が含まれ得る。
代替的には(又はH2Stem Cell若しくはH2Stem Progeny及び誘導生体物質を評価する基準と組み合わせて)、工程(c)は、これらの1つ又は複数の外因性成分がどのように内在化及び/又は修飾されているか否かについての、H2Stem Cell又はH2Stem Progeny及び誘導生体物質による分析を含み得る。これらの分析基準は、文献に記載の外因性成分のタイプ、例えば分解、他のタンパク質との結合、細胞培養における持続性、凝集、感染性(ウイルスの)又は分化若しくは生存能力(細胞の)に応じて異なる。
細胞及び誘導生成物(すなわち細胞抽出物、馴化培地)を含むin vitroアッセイに関する文献は、工程(a)〜(c)に示されるように、例えば濃度、タイミング、培養及びアッセイ条件並びに分析技術に関して細胞、組成物及び誘導生体物質の形態のH2Stem Cell又はH2Stem Progeny(すなわちH2Stem生成物)をin vitroでどのように使用することができるかについての指針を提示し得る。工程(a)においてH2Stem Cell又はH2StemProgenyを動物に導入した後、工程(b)において1つ又は複数の外因性成分を動物に投与し、工程(c)において、これらの動物で上記1つ若しくは複数の成分がどのようにH2Stem Cell若しくはH2Stem Progeny(又は関連生体物質)を修飾し及び/又はH2Stem Cell若しくはH2Stem Progenyによって修飾されるかを決定することによって同様のアッセイを行うこともできる。
H2Stem生成物及びH2Stem Cell及びH2Stem Progenyは特に、上記のようなキットにおける上記の化学剤又は生物物質を含むin vivo(すなわちかかる細胞の治療的使用のための)及びin vitro(例えば薬理−毒物学的使用のための)方法に使用することができる。特に、キットは、かかる細胞(又は誘導生体物質)に加えて、化合物パネル(試験する化合物の構造、代謝産物及び/又は濃度の少なくとも1つの変化によって生じる)、並びにH2Stem Cell及びH2Stem Progenyの使用を含むアッセイにおいて観察される効果を比較及び評価する助けとなる参照化合物、溶液及び/又は他の細胞に曝露する場合にそれら及びそれらの活性を使用及び/又は検出することを可能にする更なる要素を含み得る。
前臨床評価における薬物候補としての化学的実体の特性化には、関連代謝経路及び潜在的薬物間相互作用(シトクロムP450依存性誘導及び阻害による)を同定する(効力、安全性又は薬物動態に加えて)薬物代謝評価が必要とされる。この情報は、リード化合物を臨床段階開発へ移行することを決定する場合に製薬産業に不可欠である。初期前臨床開発のための革新的な高信頼性の予測的なin vitro細胞ベースのアッセイが、薬物候補の大半が特に肝毒性についての不適切な毒物学的評価のために臨床開発において失敗していることから緊急に必要とされている。
現時点では、かかる細胞ベースのモデルはヒト初代肝細胞又は齧歯類若しくはヒト肝細胞癌由来細胞系列(HepaRG又はHepG2細胞等)に基づく。利用可能なモデルのいずれも定期的な薬理学的及び毒性試験に完全には十分でない。培養物におけるそれらの肝臓機能性の確実な供給源及び長期維持を確立する、ヒト肝細胞の使用はその限定的な入手しやすさ及び技術的な困難による定性的及び定量的な理由の両方で制限される。
代替的には、齧歯類起源の細胞に基づく肝細胞ベースのモデルは、ヒト肝臓代謝の最適な表現をもたらさない。次いで、培養物中では、これらの細胞は急速に脱分化し(徐々に薬物代謝酵素等のそれらの主要な特徴を失う)、短い寿命を有する(in vitroで拡大しない)。ヒト肝細胞癌由来細胞系列はin vitroで容易に拡大するが、代謝及び毒性の決定に重要であり得る完全に分化した表現型を失う。したがって、高信頼性のハイスループット亜慢性及び慢性毒性評価は、利用可能なヒト肝細胞ベースのモデルを用いることで評価されない可能性がある。一方で、急性及び亜急性毒性スクリーニングは、ヒト肝細胞のアベイラビリティの制限及びヒト肝細胞が拡大不能であることによって阻まれる。
したがって、H2Stem Cell及びH2Stem Progeny(特に三次元細胞クラスターを形成する場合)は、特に「ADMET」(投与、分布、代謝、除去及び毒性)又は細胞毒性試験(すなわち肝細胞生存性及び/又は機能的効率に対する)における初代肝細胞の代替細胞として、培養物中で及びバッチ間で経時的に安定した酵素の肝細胞様パターンにおける変動性が制限された、連続及び容易に利用可能な細胞を含むより良好なin vitroモデルをもたらすことができる。
H2Stem Cell及びH2Stem Progeny(特に三次元細胞クラスターを形成する場合)、肝臓感染を治療する又は特に肝臓及び肝細胞に感染するウイルスの効率的な複製を可能にする作用物質を試験する方法において使用することができる。H2Stem Cell及びH2Stem Progenyを、ウイルス(例えば肝炎ウイルス)への曝露の前又は後に分化し及び/又は遺伝的に修飾することができる。次いで、感染細胞集団を、C型肝炎感染、肝線維症又は発癌に関して他の肝前駆細胞について示されるように、任意の有用な効果(例えばウイルス複製に対する)を観察するために感染を治療する所定の量の候補化合物に曝露し、ウイルス粒子の精製に使用するか、又はウイルス感染の任意の潜在的in vivo効果の評価に使用することができる(Wu X et al., 2012、Wang C et al., 2012、Torres DM and HarrisonSA, 2012)。
本明細書で具体的に言及される全ての参照文献の教示は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。ここで本発明を、本発明の範囲を何ら限定するものではない以下の実施例を用いて説明する。
実施例1:初代肝組織からのH2Stem Cell及びH2Stem Cell Progenyの調製及び特性化
材料及び方法
細胞培養のための培地及び他の材料
以下の材料を使用した:Williams' E培地(カタログ番号22551022、Invitrogen)、高グルコース濃度(4.5 g/l)及びL-グルタミンを含むDMEM(高グルコースDMEM、カタログ番号41965047、Invitrogen)、IMDM(カタログ番号21980032、Invitrogen)、フェノールレッドを含まないIMDM(カタログ番号21056023、Invitrogen)、肝細胞培養培地(HCM;カタログ番号CC-3198、Lonza)、ウシ胎仔血清(FBS;カタログ番号F7524、Sigma)、組み換えヒト表皮成長因子(EGF;カタログ番号AF-100-15、Peprotech)、組み換えヒト肝細胞成長因子(HGF;カタログ番号100-39、Peprotech)、組み換えヒトオンコスタチンM(OSM;カタログ番号300-10、Peprotech)、組み換えヒトインスリン(INS;カタログ番号HI0219、Lilly)、インスリン−トランスフェリン−セレン-G添加剤(ITS;カタログ番号41400045、Invitrogen)、ヒトアルブミン(50 g/L、カタログ番号1501466 Baxter)、ヘパリンナトリウム(Heparin LEO(商標))デキサメサゾン(Dex;カタログ番号D4902、Sigma)、液体ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S;カタログ番号15070063、Invitrogen)、ラット尾I型コラーゲンコーティングT-75フラスコ(Biocoat、カタログ番号356485、BD Biosciences)、ベントキャップ付きCorning(商標) CellBIND(商標) 75 cm2長方形カントネック細胞培養フラスコ(カタログ番号3290、Corning)。
初代ヒト肝細胞の調製
ヒト肝細胞を得る手順は、若干変更した以前に記載の以前の刊行物に基づく(非特許文献9)。摘出後、肝臓を初めに門脈系に接続したカニューレを介して氷冷ViaSpan溶液(Bristol-Myers Squibb Pharmaceuticals)で洗い、その後肝細胞単離のために低温滅菌条件のクリーンルームに移した。全ての微生物汚染を単離プロセスの前、最中及び後に厳密に制御した。クリーンルーム内で滅菌層流下の2工程コラゲナーゼ灌流法を用いてヒト肝細胞単離を行った。第1の灌流は、カルシウム及びマグネシウムを含まない37℃に予熱したEBSS溶液(カタログ番号14155-063、Life Tech、0.5mMエチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)-N,N,N',N'-四酢酸(EGTA;Sigma)、2 mg/Lゲンタマイシン(gentamicin)、100000 UI/LペニシリンGを添加した)からなるものであった。この第1の灌流により、細胞外イオン化カルシウムが除去され、柔組織の細胞間結合が弱くなる。第2の工程は、5 mM 4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES;カタログ番号11344-041、Life Tech.)、0.03 mg/mLトリプシン阻害剤(カタログ番号10109878001、Roche Applied Sciences)、2 mg/Lゲンタマイシン、100000 UI/LペニシリンGを添加したカルシウム及びマグネシウムを含むEBSS溶液(カタログ番号24010-043、Life Tech.)で希釈した0.8 mg/mLコラゲナーゼ(カタログ番号11213857001、Roche Applied Sciences)による酵素消化を含んでいた。これらの緩衝液の組成物は、更なる又は代替的なGMPグレード試薬(例えば特定の酵素又はN-アセチルシステイン)を用いた良好な製造プロセスの実際の要件に適合することができる。
各々の灌流工程には、肝臓を完全に消化し、その後機械的に破壊するのにおよそ10分かかった。残留コラゲナーゼ活性を、消化した柔組織を27.5 μg/mLトリプシン阻害剤、0.05 %ヒトアルブミン、2.4 mg/Lゲンタマイシン、100000 UI/LペニシリンGを含有する冷M199溶液(Lonza)で洗浄することによって停止した。消化肝細胞懸濁液を4.75 mm〜0.25 mmの細孔スチールメッシュで濾過した後、M199溶液で3回洗浄し、低速(例えば1200rpm)、4℃で3分間遠心分離し、細胞残屑及び非柔組織細胞の大部分を除去した。細胞を750 mlのViaSpan溶液に16 mgのデキサメサゾン、40 UIのインスリン、HEPES(0.5 %)、1 g/Lのグルコース(15 %)、ヒトアルブミン(20 %)、DMSO(10 %)を添加することによって調製した凍結保存培地に懸濁した後、ヒト細胞の長期貯蔵及び保存用の適切なバイアル、バッグ又は他のシステムを用いて液体窒素中に維持する。またこの段階で、これらの緩衝液の組成は、更なる又は代替的なGMPグレード試薬を用いた良好な製造プロセスの実際の要件に適合することができる。
得られる肝細胞調製物は主に、(調製物及び/又は特定のヒト肝臓の容量に依存して)各々106〜109細胞を含有する柔組織画分に由来する肝細胞によって構成される。凍結保存した肝細胞懸濁液を、37℃で迅速に解凍し、2.5 g/Lグルコース、0.084 g/L炭酸水素塩及び5000 IE/UI/ml Heparin LEO(商標)を添加した10倍容量の5 %ヒトアルブミン中で2回洗浄することによって使用する。224 g、4℃で10分間の遠心分離後に、細胞ペレットを必要な細胞培養培地に懸濁する。
ADHLSC Cellの調製
ADHLSC Cellは、以前に記載の方法(非特許文献9、Khuu DN et al., 2011)を若干変更して又は変更せずに適用することで得られる。簡潔に述べると、肝細胞調製物を10 % FBS、25 ng/ml EGF(調製をCellBindで行う場合、EGFは細胞培養培地中に存在しなくてもよい)、10 μg/ml INS、1 μM DEX及び1 % P/Sを添加したWilliams'E培地に再懸濁する。細胞をラット尾I型コラーゲンコーティングフラスコ又はCorning(商標)CellBIND(商標)フラスコで培養し、5 % C02を含有する完全加湿雰囲気中37℃で培養する。24時間後に、非接着性細胞を除去するために培地を取り替え、その後は週2回更新し、培養物を毎日顕微鏡によって追跡する。12日〜16日後に培養培地を9 %FBS及び0.9 % P/Sを添加した高グルコースDMEMに切り替えて肝細胞の除去を加速させ、ADHLSC Cellの増加を刺激する。間葉様形態を有する細胞型が現れ、増殖する。70%〜95 %コンフルエンスに達した時点で、細胞を組み換えトリプシン(trypLE;LifeTech)及び1mM EDTAでトリプシン処理し、1細胞/cm2〜10×103細胞/cm2の密度で再プレーティングした。
H2Stem Cellの調製
凍結保存した肝細胞懸濁液を、5000細胞/cm2〜20000細胞/cm2の細胞密度でのラット尾I型コラーゲンコーティングT-75フラスコでの細胞培養物の調製に使用し、5 % C02の完全加湿雰囲気中37℃でインキュベートする。代替的には、低酸素条件をインキュベーターに適用するか(5 %02等)又は抗酸化剤(1 mM又はより低濃度のN-アセチルシステイン等)を細胞培養培地に添加することで生成した。発生段階中、培地交換及び形態分析は培養培地として9 % FBS、0.9 % P/S、1 μM Dex、10 μg/ml INS及び12.5 ng/ml〜25 ng/ml EGFを添加したWilliams' E培地を用いて週2回行う。H2Stem Cellが細胞培養物中で優勢な接着性細胞クラスターとして現れた時点で、HGFの非存在下又は存在下(12.5 ng/ml〜50 ng/ml)で9 % FBS、0.9% P/S、1 μM Dex、10 μg/ml INS、12.5 ng/ml〜25 ng/ml EGFを添加したWilliams' E培地中で更なる増加を行う。
立方中上皮形態を有するH2Stem Cellは小さなクラスターとして生じ、その後7日〜12日以内に増加し始めた。次いで、かかる細胞によって形成されるクラスターを、その後2日〜3日以内(すなわち、初代肝細胞のプレーティング後10日〜15日以内)にトリプシン処理した後、同じ培地中で数回の継代のためにWilliams' Eベース培地中5000細胞/cm2〜8000細胞/cm2で培養した。トリプシン処理は、コラーゲンコーティングプレートにおいて80 %〜90 %コンフルエンスで継代1以降に行うことができる。
接着性肝細胞様細胞としての細胞の分化
BD BioCoat Cellware、I型コラーゲンコーティング6ウェルプレート(カタログ番号356400、BD Biosciences)において同じ増加培地中5000細胞/cm2〜20000細胞/cm2の密度で細胞を培養する。肝臓分化は、培地を20 ng/mlHGF、20 ng/ml OSM、1 μM Dex、1 % ITSを含有し、25 ng/ml EGFを含む(ADHLSC Cellの場合)又は含まない(H2Stem Cellの場合)IMDMに変えることによって95 %〜100%コンフルエンスで開始する。この肝臓分化用の細胞培養培地(HepDif培地)を、その後少なくとも2週間(H2Stem Cellの場合)又は4週間(ADHLSC Cellの場合)にわたって週2回交換する。
細胞培養条件における細胞の形態学的特性化
画像をOlympusカメラIX50及びCellsensデジタル画像ソフトウェアを用いた光学顕微鏡検査(位相差;Olympus UC30顕微鏡検査)によって、又は光学顕微鏡により同じ位置のリフォーカス画像を一定間隔で撮影するライブイメージング装置Cell-IQ(CM technologies)を用いて撮影する。Cell-IQ PC(位相差)は、画像データの自動同定、分析及び定量化のための内蔵AnalyserSoftware Package(Machine Vision Technology)により位相差及び明視野画像化能を組み込む完全に統合した連続生細胞画像化及び分析プラットホームである。
RT-qPCRを用いた細胞集団によって発現される遺伝子の特性化
DNA-free(商標)キット(カタログ番号AM1906、Ambion)によるDNアーゼ処理後に、GenEluteMammaliam Kit(カタログ番号RTN70、Sigma)を用いて全RNAを細胞から抽出する。ファーストストランドcDNAを、Transcriptor First Strand cDNA Synthesis Kit(カタログ番号04379012001、Roche)を用い製造業者の取扱説明書に従って合成し、続いてヌクレアーゼ無含有水(カタログ番号AM9938、Invitrogen)で10ng/μlのcDNAまで希釈する。RT-PCR増幅混合物(20 μl)は0.2 μgの鋳型cDNA、10 μlの2×Taqman Master Mix(カタログ番号4369514、Applied Biosystem)及び1 μlの20×PrimeTime qPCRアッセイ(IDT)を含有する。
サンプルは、Applied Biosystems ViiA(商標) 7 Real-Time PCR System又は任意の他のApplied BiosystemsのReal-Time PCR Cyclerに二連でかける。サイクリング条件は以下の通りである:95℃で10分間のポリメラーゼ活性化、95℃で15秒間及び60℃で45秒間の40サイクル。遺伝子転写産物特異的なプライマー配列対は下記表1にまとめるようにApplied Biosystemsから入手した。
遺伝子発現の相対定量化を、内在性(endogenous)対照転写産物GAPDH(グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ)又はPPIA(サイクロフィリンA)に対してシグナル強度を正規化することによって確立した。正規化の後、データをプロットし、細胞集団間で比較した。
フローサイトメトリーによる細胞の特性化
細胞を採取し、500/μl〜1000/μlの濃度でPBS緩衝液(カタログ番号SH30028.03、Thermo Fisher)に懸濁し、製造業者により指定の濃度で用いられる指定の抗原に特異的な以下の蛍光色素標識抗体とともに4℃で30分間インキュベートする:CD45-PE Cy7(カタログ番号557748、BD Biosciences)、CD90-FITC(カタログ番号555595、BD Biosciences)、CD73-PE(カタログ番号550257、BD Biosciences)、CD29-APC(カタログ番号559883、BD Biosciences)、CD44-FITC(カタログ番号555478、BD Biosciences)、CD133-PE(カタログ番号130080901、Miltenyi Biotec)、アルブミン-FITC(カタログ番号CLFAG2140、Sanbio)、モノクローナルマウス抗ヒトサイトケラチン19(CK-19)(CloneRCK108;M0888、Dako)、抗マウスIgG-DyLight 488(カタログ番号715-485-150、Jackson Immunoresearch)、CD117-APC(カタログ番号333233、BD Biosciences)、CD31-FITC(カタログ番号555445、BD Biosciences)、CD31-PE(カタログ番号340297、BD Biosciences)、CD326(カタログ番号347200、BDBiosciences)。対応する対照アイソタイプ抗体をモノクローナル抗体の非特異的結合の評価に用いる。次いで、細胞を洗浄し、BD BiosciencesのFACSCanto II Flow Cytometerによる読取りのためにPBS/BSAに懸濁する。
免疫蛍光又は免疫細胞化学検査による細胞の特性化
細胞を室温で10分間〜15分間、4 %パラホルムアルデヒド(カタログ番号43368、Alfa Aesar)で固定し、PBSで3回洗浄する。必要に応じて、3%過酸化水素(カタログ番号31642、Sigma)との10分間のインキュベーションを用いて内因性ペルオキシダーゼを除去する。次に、PBS緩衝液中の1 % Triton X-100(カタログ番号T8787、Sigma)を用いて細胞を10分間〜15分間透過化する。免疫細胞化学検査のための5 %正常ロバ血清(カタログ番号017-000-121、Jackson ImmunoResearch)を含有するPBS緩衝液中での1時間のインキュベーション、又は免疫蛍光のための5 %ウシ血清アルブミン(BSA)(カタログ番号A2153、Sigma)を含有するPBS緩衝液中、37℃で1時間のインキュベーションにより非特異的免疫染色を防ぐ。一次抗体とのインキュベーションを室温で1時間(又は4℃で一晩)行う。次いで、サンプルを15分間にわたって3回すすぎ、二次抗体とともに室温で30分間(免疫細胞化学検査のため)又は1時間(免疫蛍光のため(for))インキュベートした。
以下の抗体を一次抗体として製造業者の取扱説明書に従って免疫細胞化学検査又は免疫蛍光に使用した:モノクローナルマウス抗ヒト血清アルブミン(カタログ番号A6684、Sigma)、モノクローナルマウス抗ヒトビメンチン(カタログ番号10515、Progen)、モノクローナルマウス抗ヒトα平滑筋アクチン(ASMA、カタログ番号M0851、Dako)、モノクローナルマウス抗ヒトサイトケラチン19(CK-19)(CloneRCK108;M0888、Dako)、モノクローナルマウス抗ヒトTDO2抗体(カタログ番号SAB1406519、Sigma)、モノクローナルマウス抗ヒトCK-18抗体(カタログ番号SAB3300015、Sigma)、モノクローナル抗ヒトUGT抗体(カタログ番号ab129729、Abcam)、モノクローナル抗ヒトMRP-2(カタログ番号ab3373、Abcam)、抗ヒト肝細胞核因子4(HNF-4;カタログ番号sc-8987、Santa Cruz)及びポリクローナルマウス抗ヒトCYP3A4(カタログ番号SAB1400064、Sigma)。
以下の標識抗体を二次抗体として製造業者の取扱説明書に従って免疫蛍光に使用した:Alexa Fluor(商標)488共役ロバ抗マウスIgG(カタログ番号715-545-151、Jackson ImmunoResearch)、Cy3共役ロバ抗ウサギIgG(カタログ番号711-165-152、Jackson ImmunoResearch)。免疫細胞化学検査については、Envision(商標)抗マウス(Dakocytomation、カタログ番号K4001、Dako)を用いた検出を室温で30分間行う。検出はペルオキシダーゼ標識ポリマー及び基質色原体(DAB、カタログ番号D416、Dako)との5分間のインキュベーション後に行い、その後PBSで3回洗浄する。免疫蛍光については4,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(Vectashield(商標)+DAPI、カタログ番号H-1200、ABCYS)又は免疫化学検査についてはマイヤーヘマトキシリン(カタログ番号MHS16、Sigma)を用いて核を対比染色する。細胞を免疫細胞化学検査のためにマウントし、次いで10倍、20倍及び40倍の倍率でカメラUC30と接続したOlympus倒立顕微鏡IX50を用いて検査する。Cellsensソフトウェアを用いてデジタル画像を取得する。ヒト初代肝細胞(上記のように得られる)を並行して肝臓マーカーの陽性対照及び間葉マーカーの陰性対照として染色する。OlympusカメラXC30及びCellsensソフトウェアを備える蛍光顕微鏡検査(Olympus AX70)によって画像を撮影する。
生物活性による細胞の特性化
発光CYP3A4活性アッセイについては、ADHLSC Cellから得られる分化肝細胞様細胞又はH2Stem Cellをトリプシン処理し、96ウェルマイクロプレート(カタログ番号734-1662、Costar)に100000細胞/ウェルの濃度で移し、ルシフェリン-IPA(カタログ番号V9002、Promega)によるP450-Glo(商標) CYP3A4 アッセイを用いて活性を測定する。Victor IV照度計(Perkin-Elmer Life Sciences)を用いて発光を測定する。非処理細胞を並行して測定し、バックグラウンドノイズを除去する。結果をヒトCYP3A4酵素系(カタログ番号V4820、Promega)によって得られるCYP3A4ミクロソーム標準に対して正規化し、ピコモル/細胞として算出する。
尿素分泌アッセイについては、細胞をトリプシン処理し、コラーゲンコーティング48ウェルマイクロプレート(カタログ番号356505、BD Biosciences)において、フェノールレッドを含まないIMDM(カタログ番号21056023、Invitrogen)中でインキュベートする。尿素分泌を増強する基質として、1 mMオルニチン(カタログ番号O2375、Sigma)及び5 mM NH4Cl(カタログ番号A0171、Sigma)を培養培地に添加する。2時間〜24時間後に、比色Quantichrome尿素アッセイキット(カタログ番号DIUR-500、BioAssay Systems)を用いて尿素分泌を測定する。色強度(サンプル中の尿素濃度に比例する)を、5分間〜20分間のインキュベーションの後に520 nmで読み取るが、これはサンプル中の尿素濃度に正比例する。培養上清中の全尿素(mg/dl)を、製造業者の取扱説明書によって推奨されるようにフェノールレッドを含まないIMDM中で作成した尿素標準曲線を用いて算出した後、分泌尿素の量をpg/細胞/2時間〜24時間として確立する。実際のシグナルの検出における任意の干渉を評価するために、オルニチン/塩化アンモニアを用いずにインキュベートしたオルニチン/塩化アンモニア及び細胞対照を含む培地での尿素分泌の評価を行う。これらのサンプルを陰性対照として特異性を決定し、偽陽性率を防ぐ。
ビリルビン抱合アッセイについては、細胞を20 μM〜50 μM非共役ビリルビン(カタログ番号B4126、Sigma)とともにインキュベートする。ビリルビンの共役及び総ビリルビンを2時間〜24時間後に比色直接ビリルビンアッセイ(カタログ番号DZ151A-K、Diazyme)及び総ビリルビンアッセイ(カタログ番号DZ150A-K、Diazyme)を用いて測定する。このアッセイでは、(非)共役ビリルビンを、洗浄剤及びバナジウム酸塩又はバナジウム酸塩(pH 3)のみを含有するDiazymeの即時使用試薬と混合した後、サンプル中の総ビリルビン又は直接ビリルビンをそれぞれビリベルジンへと酸化する。後者の酸化はビリルビンに特異的な吸光度の低下をもたらす。サンプル中の総/直接ビリルビン濃度は、バナジウム酸塩酸化の前及び後の吸光度を測定することによって決定することができる。培養上清中の直接/総ビリルビン濃度(mg/dl/細胞/2時間〜24時間)を、次に製造業者の取扱説明書によって推奨されるようにフェノールレッドを含まないIMDM中で作成したビリルビン較正物質標準曲線に対して算出する。任意の干渉を評価するために、ビリルビンを用いずにインキュベートした20 μM〜50 μMビリルビン及び細胞対照を含む培地でのビリルビン抱合評価を行う。これらのサンプルを陰性対照として特異性を決定し、偽陽性率を防ぐ。
結果
ADHLSC Cell及びH2Stem Cellはどちらも、正常成体ヒト肝臓を用いて作製される凍結保存ヒト初代肝細胞の調製物に由来する細胞集団である。しかしながら、初代ヒト肝細胞の調製物からのそれらの発生プロトコル及び細胞培養物における後続の増加手順は、特にコラーゲン(又は他の適切な基質)を細胞培養条件における接着及び成長に使用する場合に異なる(より詳細には材料及び方法を参照されたい)。プレーティング後7日〜12日以内に、立方中上皮形態を有し、突出を有しない大きく透明な細胞質を示し、細胞間結合を示し、成長接触阻害を示す細胞クラスターが自然に現れる。立方中上皮形態を有するH2Stem Cellはクラスター又はコロニーにおいて増殖し、出現(emergence)の約2日〜3日後に、トリプシン処理し、5000細胞/cm2〜20000細胞/cm2の密度で継代することができる。これらの特徴により、H2StemCellと非特許文献9に記載のより大きな後に現れる伸長ADHLSCCellとが区別される(図2A)。
CellBind又はコラーゲンコーティング支持体(例えばプレート、フラスコ)で培養したADHLSCCellと比較すると、H2Stem Cellはより速い増殖速度で成長し、細胞培養物から優先的に同定し、増加することができる。ADHLSC Cellの集団倍加時間(PDT)は約72時間〜96時間であり、H2StemCellは48時間〜72時間のPDTを示し、少なくとも4継代〜5継代で急速に増加する。
H2Stem Cellはフローサイトメトリー、免疫細胞化学検査及び/又はRT-PCR分析によって評価されるようにADHLSC Cell等の他のヒト肝前駆細胞に従って、細胞表面上(CD90、CD73、CD29、CD44を含む)又は細胞内(ビメンチン、ASMA等)の一連の間葉マーカー、及び肝臓マーカー(HNF-3B、アルブミン及びサイトケラチン18を含む)に対して陽性である(少なくとも60 %の細胞が所与の特徴を示す場合にマーカーに対する陽性率が規定される)。ADHLSC Cell及びH2Stem Cellの両方が、非常に低いレベル(すなわち試験細胞の15 %未満、殆どの場合10 %未満が特異的な染色を示す)のCD45、CD117、CD31、CD133及びCD326等の他の細胞系列の細胞表面マーカー(造血、上皮及び/又は内皮)を発現する。
しかしながら、H2Stem Cellは細胞内マーカーの存在を比較することによってもADHLSCCellから区別することができる。例えば、サイトケラチン19(CK-19;胆管細胞上皮マーカー)等の細胞骨格構成要素はADHLSC Cell及び肝細胞において殆ど検出不能である(非特許文献9)。H2Stem Cellでは(細胞培養物中に現れる初期段階であっても)、フローサイトメトリーによって評価した場合に、陰性率として規定することができず、H2Stem Cellの調製物全体で一貫して再生される差である20 %〜40 %を占める或る割合のH2Stem CellにおいてCK-19が発現されることが見出される。実際に、CK-19発現を免疫細胞化学検査(概して、細胞内タンパク質を検出するフローサイトメトリーよりも高感度な技法)によって評価する場合、CK-19が初期であってもH2Stemの大部分で発現されることが明白であり(図2B)、これによりH2Stem Cell及びH2Stem Progenyの集団の区別及び追跡に、それらを細胞培養物中で作製するプロセス全体を通して使用することができる更なるマーカーがもたらされる。
CK-19の検出は、特に肝臓機能に関連する転写因子等の他の細胞内タンパク質の検出と、直接(RT-PCR又は抗体ベースの方法によって)又は間接的に(肝臓特異的遺伝子の協調発現に基づいて)関連し得る。このようにして、H2Stem CellをHNF-3b及びHNF-4のようにADHLSC Cellと比較してより強く発現する転写因子として特性化した。細胞内レベルでは、これらの転写因子は例えば、H2Stem Cellの存在を評価するために細胞抽出物中で又は細胞培養上清中で直接検出することができる肝臓血清タンパク質(アルブミン及びα-1-アンチトリプシン等)及び(非)代謝機能の酵素(Snykers S et al., 2009)の両方の発現を活性化することによって肝細胞の形態学的、表現型及び機能的成熟を得るために最も重要なものの1つである。
H2Stem Cellを得るプロセスの初期段階におけるH2Stem Cellの出現を追跡することもでき、どの初代ヒト肝細胞が独特な形態を有し、免疫蛍光又は免疫組織化学検査によって分析することができる(can)接着性の増殖H2Stem Cellのクラスターに由来し得るかを同定する(図3)。
ADHLSC CellとH2Stem Cellとを区別する更なる特徴は、これらの細胞集団の特に接着性肝細胞様細胞へのin vitro分化中又は後に確立することができる。H2Stem Cellの分化プロセスをADHLSC Cellと比較する場合、後者の細胞はより長い時間(H2Stem Cellの1週間〜2週間に対して1ヶ月)、及び細胞培養培地中のEGFを必要とする。さらに、2つの細胞型を用いて生成する肝細胞様細胞の形態は異なり、H2Stem Cellから得られる細胞(H2Screen Cellとも称されるH2Stem Progeny;図1を参照されたい)は代謝的に活性な初代肝細胞とより類似した特徴を示す。H2Screen Cellは細胞内粒度を有する単核及び二核細胞の立方肝細胞様形態を取り、酵素活性の増大を示す(図4A)。
H2Stem Cellの肝臓特異的代謝活性は、肝臓中に蓄積し、肝細胞によって非効率的に代謝される場合に肝毒性(hepatotoxic)であり、肝疾患と関連する可能性がある化合物の分解を測定することによって他の成体肝前駆細胞(ADHLSC Cell等)と比較することができる。この分析は臨床用途への細胞の使用の評価だけでなく、薬物により誘導される肝毒性が薬物開発の後の段階における候補薬物の減少の重要な理由の1つであるため、製薬産業における薬物発見及び開発を対象とする。遺伝子発現応答及びCYP450特異的酵素活性に対する異なるCYP450誘導物質への曝露の効果は多くの場合、潜在的肝毒性及び非肝毒性化合物を区別するための肝臓起源の細胞に基づく異なるモデルにおいて、かかる化合物をin vivoで投与する前に測定されるが、研究中のいずれのモデルも肝毒性化合物の高信頼性の正確な初期検出の全ての基準を満たさない(Gerets HH et al., 2012)。
特に、肝臓CYP3A4は現在使用されている薬物のほぼ50 %並びに内因性及び外因性コルチコステロイドの代謝に寄与する。CYP3A4酵素は成体肝臓中の肝細胞において強く発現され、CYP3A4機能性の獲得は肝性分化及び成熟の重要な基準とみなされる。免疫細胞化学検査及びRT-PCRにより、CYP3A4発現がADHLSCCellよりもH2Stem Cellにおいて(すなわち、既に任意の肝臓特異的分化前に)はるかに高いことが既に示されており、これは活性レベルで確認された発見である。H2Stem Cellは、かかる特異的な活性を10-8 pMol/細胞/4時間の範囲で示すが(10-9 pMol/細胞で既に検出限界をはるかに超える)、H2Screen Cellへのin vitro分化後の10-7 pMol/細胞/4時間の範囲で増大し、ADHLSC Cellは分化後にのみ10-8 pMol/細胞/4時間の活性を示す(図4B)。
更なるin vitro肝臓特異的分化を有する又は有しない、このH2Stem CellとADHLSC Cellとの肝臓特異的代謝活性の比較は、(CYP1A2、CYP2C19、CYP2C9、CYP2E1又はCYP2D6に特異的なmRNA発現及び/又は酵素活性に関する)市販のキットを用いて又は文献中に記載の技法を適用することによって評価することができる他の代謝活性の指標を用いて行うことができる。特に、CYP1A2、CYP2C9及びCYP2E1発現における強い上方調節がH2Stem Cellについて観察された。これらの発見を、H2Screen Cellを分化ADHLSC Cellと比較することで確認し、更に他の肝臓特異的酵素活性の遺伝子の発現まで拡張した(オルニチントランスカルバミラーゼ、CYP2D6又はCYP2C19等)。
尿素分泌(別の主要な肝臓特異的代謝活性)の場合、現れるH2Screen Cellは、分化ADHLSC Cellと比較して実質的により高い代謝特性で、基質(塩化アンモニア及びオルニチン)の存在下で尿素を合成することが可能である。H2Screen Cellは1 log超に相当するこの活性の改善を示し、これらの細胞における非常に特異的な統合された肝臓機能性の存在を実証する(図4C)。
免疫組織化学検査により、H2Stem Cellと比較した場合にCK-19、CK-18及び幾つかの肝臓マーカー(アルブミン、TDO2及びUDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ等)の強い細胞内発現が維持され、H2ScreenCellにおいて更に増大しない場合、輸送体多型に関連する薬物により誘導される毒性を評価するのに主に重要な特徴である細胞間界面のMRP-2タンパク質等の主要排出輸送体タンパク質の発現を同様に示すことも確認される(図4D)。
UGT1A1遺伝子の発現による別の肝臓特異的生物活性である、分化ADHLSC Cell及びH2Screen Cellのビリルビンと共役する能力を比較すると定性的に同様の証拠が得られた。H2Screen Cellは、おそらくはHNF-3b及びHNF-4等の転写因子のより高い発現及び/又は核局在化の増大のためにはるかに高い活性を示す。分化ADHLSC CellにおけるUGT1A1関連ビリルビン活性を、24時間の曝露後に5 %〜35 %(例外的に50 %)の共役に相当する0.05 mg/dl〜0.3 mg/dl(例外的に0.5 mg/dl)で測定する。H2Screen CellにおけるUGT1A1関連ビリルビン活性は、24時間の曝露後に0.2 mg/dl〜0.6mg/dlで又は23 %〜70 %の共役として測定される。さらに、UGT1A1発現をRT-PCRによってヒト肝細胞と比較すると、in vitroでの他のタイプの肝前駆由来細胞の分化によって得られる細胞と比較して特に高いレベルである、初代肝細胞において観察されるレベルの10 %に達する。
このため、H2Stem Cellは、同じタイプの他の細胞(特にADHLSC Cell等のより長いより複雑な方法によって作製される細胞)と比較して異なる特徴(例えば増殖、細胞型特異的マーカーの発現又は肝臓特異的酵素活性)について幾つかの主な予期せぬ利点を示し、臨床適用及び薬理−毒物学的研究の両方の対象となる新規の成体肝前駆細胞として現れる。
実施例2:三次元細胞クラスターとしての異なるタイプのH2Stem Progenyの生成
材料及び方法
H2Stem CellからのH3Stem Cellの生成
H3Stem Cellを、超低接着細胞培養フラスコにおいて約1〜10×106のH2StemCellを15 mlの培地に懸濁した後、それらを超低接着細胞培養フラスコ(75 cm2;カタログ番号3814;Corning)にプレーティングすることによって生成する。
H3Stem Cellを、超低接着96ウェルマイクロプレートにおいて5000〜20000のH2StemCellを0.1 ml〜0.2 mlの培地に懸濁し、超低接着U字形/円形96ウェル培養マイクロプレート(カタログ番号7007;Corning)にウェル毎にプレーティングすることによって生成する。代替的には、75000〜100000のH2StemCellを2.0 ml〜3.0 mlの培地に懸濁し、超低接着6ウェル培養プレート(カタログ番号3471;Corning)にウェル毎にプレーティングする。
培養培地は、HGFの非存在下又は存在下(12.5 ng/ml〜50 ng/ml)の9 % FBS、0.9% P/S、1 μM Dex、10 μg/ml INS及び12ng/ml〜25 ng/ml EGFを添加したWilliamsE培地であるのが好ましい。Williams E培地の代わりに使用することができる代替的な市販の細胞培養培地は、Williams E培地について上で指定したように添加したIMDM又はDMEMである。新鮮細胞培養培地をフラスコ及びマルチウェルプレート/マイクロプレートフォーマットでそれぞれ週2回添加又は置換する。三次元H2Stem Progenyの形成を位相差顕微鏡検査によって追跡する。個々の細胞はこれらのクラスターを24時間後に形成し始め、クラスターが200 μmを超える寸法に達した時点でCYP3A4活性を測定し、免疫組織化学検査を行うか又はH3Screen-2 Cellを10日〜25日以内に生成するために採取される(最大600 μmの直径を有するH3StemCellのクラスターを得ることができる)。
H2Screen CellからのH3Screen-1 Cellの生成
実施例1に記載のように得られるH2Screen Cellをトリプシン処理して、この細胞懸濁液をH2Stem CellのH2Screen Cellへの分化のために使用される同じ培地及び適切な細胞培養系に維持することによって三次元H2Stem Progenyを得る。96ウェルプレートGravityPlusPlate(Insphero)等の「懸滴」培養系を使用する場合、培地の半分を20 μlを吸引し、20 μlの新鮮培地をプレートの各ウェルに添加することによって週2、3回交換した。代替的には、1〜10×106のH2Screen Cellを超低接着細胞培養フラスコにプレーティングし、同じ頻度で5 mlの新鮮細胞培養培地を添加した。そうでなければ、超低接着U字形/円形96ウェル培養マイクロプレートをH3Stem Cellの生成について上記のように使用した。
これらの細胞培養系におけるH3Screen-1 Cellの形成をH3Stem Cellと同様に追跡し、得て、評価した。
H3Stem CellからのH3Screen-2 Cellの生成
上記のような増加の際に得られるH3Stem Cellを、増加培地を除去するために224 gで5分間遠心分離する。次いで、同じ超低接着細胞培養フラスコにおいてHepDif細胞培養培地(実施例1を参照されたい)を使用して分化を開始し、5 mlの新鮮細胞培養培地を週2回添加する。そうでなければ、超低接着U字形/円形96ウェル培養マイクロプレートを分化に同じ細胞培養培地を使用して上記のように使用した。肝臓分化及びCYP3A4活性を10日〜20日以内に三次元細胞クラスターにおいて評価する。
H3Screen-2 CellからのH3Screen-2a Cell及びH3Screen-2b Cellの生成
H3Screen-2a Cellは超低接着細胞培養フラスコ、U字形/円形96ウェル培養マイクロプレート又は「懸滴」培養系及びHepDif培地を用いて浮遊状態に維持されるH3Screen-2 Cellに相当する(実施例1を参照されたい)。
H3Screen-2b Cellは、BD BioCoat CellwareのI型コラーゲンコーティングプレート(6ウェル、24ウェル又は48ウェル)の異なるマルチウェルフォーマットに移されるH3Screen-2 Cellに相当する。この条件で多角形及び顆粒状肝細胞は、HepDif培地へのプレーティングから3、4日以内に観察される(実施例1を参照されたい)。
H2Stem CellからのH3Screen-2 Cellの生成
H3Screen Cellは、H2Stem CellからH3Stem Cellとしての中間増加工程なしに直接生成することができる。この場合、5000〜20000のH2Stem Cellを0.1ml〜0.2 mlのHepDif培地に懸濁し(実施例1を参照されたい)、超低接着96ウェル培養プレートにプレーティングする。代替的には、75000〜100000のH2StemCellを2.0 ml〜3.0 mlの培地に懸濁し、超低接着6ウェル培養プレートのウェル毎にプレーティングする。H3Stem CellをH2Stem Cellから生成し、細胞をHepDif培地に維持し、同様の寸法のH3Screen-2 CellのクラスターをH3Stem Cellのクラスターについて示されるように比較可能な期間にわたって観察することに関する細胞培養の更なる工程を行う。
H3Stem CellからのH3Screen-2c Cellの生成
H3Screen-2c Cellは、BD BioCoat CellwareのI型コラーゲンコーティングプレート(6ウェル、24ウェル又は48ウェル)の異なるマルチウェルフォーマットに移し、HepDif培地中で培養したH3Stem Cellに相当する(実施例1を参照されたい)。
三次元H2Stem Progenyの免疫細胞化学検査(IHC)、免疫蛍光(IF)及び形態学的特性化
三次元細胞クラスターのサイズ及び画像を、OlympusのカメラIX50及びCellsensプログラムを用いた光学顕微鏡検査(位相差;Olympus UC30顕微鏡検査)によって撮影する。
異なるタイプの三次元H2Stem Progenyを採取した後、4 %パラホルムアルデヒド(カタログ番号43368、Alfa Aesar)中、4℃で一晩固定し、続いて65℃の2 %アガロース(カタログ番号16500、Invitrogen)、次いでパラフィンに包埋した。5 μm幅の切片を脱パラフィンし、段階的アルコール系列で再水和する。
免疫組織化学検査を行う前に、切片をクエン酸一水和物溶液(pH 6.0)中、97℃で90分間インキュベートする。スライドを3 %過酸化水素メタノール溶液中で15分間インキュベートすることによって、内因性ペルオキシダーゼ活性を遮断する。切片を1 %ウシ血清アルブミン(BSA、カタログ番号A2153-50G、Sigma)を含有するPBS緩衝液中室温で1時間インキュベートすることによって、非特異的な免疫染色を防ぐ。
次いで、切片を0.1 % BSAで希釈した以下の一次抗体の1つとともに製造業者の取扱説明書に従って4℃で一晩インキュベートする:モノクローナルマウス抗ヒト血清アルブミン(カタログ番号A6684、Sigma;IHC用)、モノクローナルマウス抗ヒトCYP3A4(カタログ番号SAB1400064、Sigma;IHC用)、ポリクローナルウサギ抗ヒトオルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ(カタログ番号HPA000570、Sigma;IHC用)、ポリクローナルウサギ抗ヒトUDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ1A1(カタログ番号sc-27415、Santa Cruz;IHC用)、MRP-2(カタログ番号ab3373、Abcam;IHC用)、モノクローナルマウス抗ヒトサイトケラチン19(CK-19)(クローン RCK108;M0888、Dako;IHC用)、モノクローナル抗CK19(カタログ番号SAB3300018、SIGMA、IF用)、モノクローナル抗CK-18(カタログ番号SAB3300015、SIGMA;IF用)、モノクローナルマウス抗ヒトビメンチン(カタログ番号10515、Progen;IHC用)、モノクローナル抗ビメンチン(カタログ番号V6630、SIGMA;IF用)、抗ヒト肝細胞核因子4(HNF-4)(カタログ番号sc-8987、Santa Cruz;IHC用)、モノクローナル抗HNF4(カタログ番号SAB4501409、SIGMA;IF用)、モノクローナル抗HNF3B(カタログ番号SAB2500409、SIGMA;IF用)。以下の標識抗体を、免疫蛍光(IF)のために製造業者の取扱説明書に従って二次抗体として使用した:Alexa Fluor(商標)488共役ロバ抗マウスIgG(カタログ番号715-545-151、Jackson ImmunoResearch)、Cy3共役ロバ抗ウサギIgG(カタログ番号711-165-152、Jackson ImmunoResearch)。免疫組織化学検査については、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)ベースの染色を用い、Envision抗マウス(カタログ番号K4001、Dakocytomation)、抗ウサギ(カタログ番号K4003、Dakocytomation)又は抗ヤギIgG-HRP(カタログ番号sc-2020、Santa Cruz)及びSIGMAFAST(商標) 3,3'-ジアミノベンジジン錠剤(カタログ番号D4168、Sigma)を発色基質として使用して一次抗体を検出する。免疫蛍光のために4,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(Vectashield(商標)+DAPI、カタログ番号H-1200、ABCYS)、又は免疫組織化学検査のためにマイヤーヘマトキシリン(カタログ番号MHS16、Sigma)を用いて核を対比染色する。カメラUC30と接続したOlympus倒立顕微鏡IX50を用いて分析を行う。デジタル画像はCellsensソフトウェアを用いて取得する。
ウエスタンブロット分析による三次元H2Stem Progenyの特性化
細胞(1 ml当たり5×106細胞の濃度)を、10 mM HEPES(pH 7.4)、80mMKCl、2 mM EDTA、15 mM β-メルカプトエタノール、0.1 % Triton X-100及び(et)1 % PIC(プロテアーゼ阻害剤カクテル)を含有する緩衝液に溶解させる。タンパク質抽出物を攪拌下、4℃で30分間インキュベートした後、PotterDounce(10 A.R.)を用いて氷中で均質化する。次いで、細胞溶解物を4000 gで10分間遠心分離し、細胞残屑をペレット化する。得られる上清中のタンパク質濃度を、次に古典的ブラッドフォード法に従って市販のキット(Bio-Rad)を用いて決定する。タンパク質抽出物をSDS-PAGEを用いた電気泳動によって分離した後、ニトロセルロース膜(Amersham、UK)上に電気泳動転写する。次いで、膜をスキムミルク(5 %(W/v);Merck)を含有するTBS-t緩衝液(Tris Buffered Salin-tween:Tris/HCl 50 mM、NaCl 150 mM、Tween(商標) 20 0.1%)中、室温で2時間インキュベートする。次いで、膜を製造業者の取扱説明書に従って一次抗体を含有する同じTBS-t/5 %ミルクにおいて攪拌下、4℃で一晩インキュベートする。TBS-t緩衝液で15分間3回洗浄した後、膜をTBS-t/5 %ミルク緩衝液中でペルオキシダーゼ標識二次抗体とともに室温で2時間インキュベートする。TBS-t緩衝液で15分間3回洗浄した後、タンパク質シグナルが化学発光(chemiluminescence)(ECLキット、Amersham Pharmacia Biotech.)によって明らかとなる。
以下の抗体を一次抗体として製造業者の取扱説明書に従って使用する:ポリクローナルウサギ抗ヒトCYP3A4(カタログ番号AB1254、Chemicon)、ポリクローナル抗ウサギ抗UGT1A1(カタログ番号4371、CellSignaling Technology)及び抗SULT1(カタログ番号sc-32928、Santa Cruz)。
RT-qPCRを用いた三次元H2Stem Progenyによって発現される遺伝子の特性化
6ウェルプレートのウェル(又は96ウェルマイクロプレートの1ウェル〜10ウェル)から三次元H2StemProgenyを1.5 ml容チューブに回収し、1 mlのPBSですすぎ、細胞クラスターが重力によってチューブの下部に落ちるのを待ち、その後PBSを除去する。350 μlのRLT緩衝液Plusを用いて細胞クラスターを溶解させ、チューブを30秒間ボルテックスし、スフェロイドを、RNアーゼ無含有ピストン(カタログ番号W5290W、FisherScientific)を備えるピストンを回転させる電動システム(カタログ番号W14044、FisherScientific)を用いた機械的作用によって破壊する。
DNA-free(商標)キット(カタログ番号AM1906、Ambion)によるDNアーゼ処理後に、RNeasy(商標)Plus Miniキット(カタログ番号74134 QIAGEN)を用いて全RNAを細胞から抽出する。ファーストストランドcDNAを、Transcriptor First Strand cDNA Synthesis Kit(カタログ番号04379012001、Roche)を用い製造業者の取扱説明書に従って合成し、続いてヌクレアーゼ無含有水(カタログ番号AM9938、Invitrogen)で10ng/μlのcDNAまで希釈する。RT-PCR増幅混合物(20 μl)は0.2 μgの鋳型cDNA、10 μlの2×Taqman Master Mix(カタログ番号4369514、Applied Biosystem)及び1 μlの20×PrimeTime qPCRアッセイ(IDT)を含有する。サンプルは、Applied Biosystems ViiA(商標) 7 Real-Time PCR System又は任意の他のApplied BiosystemsのReal-Time PCR Cyclerに二連でかける。サイクリング条件は以下の通りである:95℃で10分間のポリメラーゼ活性化、95℃で15秒間及び60℃で45秒間の40サイクル。遺伝子転写産物特異的なプライマー配列対は実施例1に記載のようにApplied Biosystemsから入手した。
生物活性による三次元H2Stem Progenyの特性化
三次元H2Stem ProgenyのCYP3A4活性は、接着性細胞について行ったものと同様の手順による発光アッセイを用いて測定することができる(実施例1を参照されたい)。各々がおよそ20000の細胞を含有する最大5個の三次元細胞クラスターを、PBS緩衝液で洗浄して残留培地を除去した後、BD BioCoat(商標)コラーゲン48ウェルプレート(カタログ番号356505、BD Biosciences)に移す。0.2 μLのルシフェリン-IPA(カタログ番号V9002、Promega)を含有する200μlのIMDM(カタログ番号21980032、Invitrogen)との4時間のインキュベーションの後、細胞懸濁液(培地100 μl)を96ウェルプレート(カタログ番号734-1662、Costar)に移し、実施例1に記載のように分析する。三次元細胞クラスターとインキュベートしていない細胞培養培地を、バックグラウンドノイズ対照として使用する。
肝臓特異的代謝(metabolic)活性を試験するための尿素分泌及びビリルビン抱合アッセイを、各々が実施例1に上記したような適切な試薬とともにインキュベートしたおよそ100000の細胞(H3Stem Cell又はH3Screen-2a Cellの5つの球に等しい)を含有する三次元細胞クラスターを用いて行った。
SULT活性を、反応の基質としてパラセタモールを用いてUGT1A(UGT1A1及び他のUGT1Aアイソフォームを含む)と組み合わせて試験した。パラセタモールのグルクロン酸抱合及びスルフェート共役生成物を記載のようにHPLCによって定量化する(Lau G and Crichley J, 1994)。簡潔に述べると、細胞を5 mMパラセタモール(カタログ番号A7302、Sigma)とともに24時間インキュベートする。インキュベーションの後、培地上清を遠心分離し、濾過し、UV-HLPCを用いて254 nmで分析する。2-アセトアミノフェノールを内部標準として添加する。定量化の特定の標準は、パラセタモール−スルフェート(カタログ番号UC448、Sigma)及びP-アセトアミドフェニル-β-D-グルクロニド(カタログ番号A4438、Sigma)である。Nova-Pak C18 Radial-Pakカラム、60Å、4 μm、8.0 mm×100 mm(Waters)を固定相として適用する。移動相は0.1 M KH2P04、0.1 %酢酸及び0.75 %プロパン-2-オール(pH3.8)(1.5 ml/分のデビット)からなる。結果は1分及びタンパク質1 mg当たりのpmolのグルクロン酸(glucu-)又は(ou)スルフェート(sulfo-)代謝産物の産生として表される。タンパク質濃度を古典的ブラッドフォード法に従いBio-Radキットを用いて評価する。
CYP依存性酵素活性を、細胞を基質カクテル(10 mMフェナセチン、100 mMブプロピオン、10 mMジクロフェナク及び3 mMミダゾラム)とともにインキュベートした後LC/MS/MSによって決定した。輸送体機能を評価するために、細胞を10 μM(0.5 μCi/mL)で[14C]輸送体マーカー基質を含有する500 μLのHBSS中37℃(又は一部の実験については4℃)でインキュベートした。以下の基質を使用した:タウロコール酸(TC)、エストロン-3-スルフェート(E3S)及び1-メチル-4-フェニルピリジニウム(MPP)。インキュベーションの終了時に、上清を除去し、単分子層を氷冷PBSで3回洗浄した。次いで、300 μLの0.1 N NaOHを各ウェルに添加し、細胞を溶解させた。アリコート(100 μL)をとり、Tri CarbCounterにより細胞内におけるマーカー基質の濃度を評価するために2 mLのUltima Gold scintillantと混合する。第I相CYP依存性活性の誘導能は、リファンピシン(10 μM)(CYP3A4、CYP2C9、CYP2B6)及びβ-ナフトフラボン(naphthoflavone)(25 μM)(CYP1A2)との3日間の同時処理後に明らかであった。
カルボキシルエステラーゼ-1(CES-1)の酵素活性を、ELISAキット(カタログ番号ab109717、Abcam)を用い、H2Stem、H3Stem、ADHLSCの細胞培養物から採取したタンパク質を使用し、初代ヒト肝細胞及びHepG2を陽性対照として使用して測定した。プロトコルは製造業者の取扱説明書に従って使用した。H2Stem及びADHLSCに由来する馴化培養培地において分泌α-アンチトリプシンを、ELISAキット(カタログ番号ab108799、Abcam)を用いて製造業者の取扱説明書に従って定量化した。
結果
H2Stem Cell及びH2Screen Cellと未分化及び分化ADHLSC Cell(又は他のヒト肝前駆細胞)とを区別する更なる特徴として、実施例1に記載のこれらの新たな細胞集団は、細胞培養条件に応じて肝前駆細胞又は肝細胞様細胞を含む異なるタイプの三次元細胞クラスター(すなわち三次元H2Stem Progeny)の懸濁液を生じる。
H2Stem Cell又はH2Screen Cellを懸滴培養系又は低接着プレートに維持する場合、50 μm〜100 μmの直径を有する三次元細胞クラスターが最初の2日〜4日間に急速に形成され、15日〜25日後には300 μm超、更には最大600 μmのサイズに達する(図5及び図6)。細胞間に幾らかの支持間質を示すこれらの細胞クラスターを、細胞培養物中で少なくとも1、2ヶ月維持することができる。対照的に、ADHLSC Cell(未分化又は分化の、同じ条件で培養した)は、三次元細胞クラスターを形成するH2Stem Progenyについて観察される強い肝臓特異的代謝活性を示さない大きくとも20μmのサイズの本質的に二次元の凝集物を生じる。未分化(H3StemCell)又は分化(H3Screen Cell)細胞を含む三次元H2Stem Progenyを懸滴培養系、超低接着細胞培養フラスコ、プレート又はU字形/円形ウェルを有するマイクロプレートで生成することができる。これらのコンテナは、胚様体又は他の細胞を浮遊状態のスフェロイドとして培養するために開発された。細胞培養物に曝露される表面は親水性、中性荷電であり、細胞固定化を阻害する共有結合ヒドロゲル層で覆われる(Saleh F. et al. 2012)。
更なる用途に応じて、単一ウェル、プレート又はフラスコの内容物(三次元H2Stem Progenyの5、10以上の球を得るためのマイクロプレートにおけるウェルの内容物のプールの結果)又は各々の球様クラスターは、同じウェルで別個に使用若しくは試験することができるか、又は別の形で所与の三次元H2Stem Progenyに対する他の基準(酵素活性又は遺伝子/タンパク質発現等)と並行した化合物又は細胞培養条件の効果のハイスループット評価を可能にする。
H3Stem Cellは肝前駆細胞により主に構成され、H2Stem Cellの培養によって得ることができる三次元H2Stem Progenyである。三次元H2Stem Progenyは適切な培地におけるインキュベーション後に肝活性化細胞を含有する(H3Screen-1 Cell及びH3Screen-2 Cellの場合と同様)。特に、H3Screen Cellは細胞培養条件に応じて、すなわちこれらの異なるタイプの三次元H2StemProgenyを生成する条件を特定の順序で又は同時に適用する場合、接着性の(H3Screen-2b Cell及びH3Screen-2c Cellの場合)又は浮遊状態の(H3Screen-2a Cell及びH3Screen-1 Cellの場合)三次元H2Stem Progenyとして維持することができる。形態学的及び表現型レベルでは、三次元H2Stem Progenyは支持間質足場及び内部肝細胞塊からなる微小肝臓足場に似ている(図5)。U字形/円形96ウェルマイクロプレートの使用により、各々のウェルにおいて細胞クラスターのより均一なサイズ及びより制御された生成を有する、より標準化された三次元H2Stem Progenyが得られる。実際に、細胞培養のためのかかるシステムに移されたH2StemProgenyは、100000超の細胞を含有し得る細胞の単一の球様クラスターに急速に凝集する(図5D及び図6)。
三次元H2Stem Progenyは依然として、ビメンチンのような間葉マーカー及びアルブミンのような肝臓マーカー等のH2Stem Cellで同定されるマーカーを発現する。さらに、三次元H2StemProgenyは概して、ADHLSC Cellだけでなく、H2StemCell及びH2Screen Cellと比較してより高い主要な肝臓特異的代謝活性の発現レベルを直接(CYP3A4、CYP1A2、CYP2B6、CYP2C9、CYP2E1、オルニチントランスカルバミラーゼ及びUGT1A1等)又は間接的に(HNF-3b及びHNF-4等の転写因子について)示す。これらの観察結果から、三次元H2StemProgenyが、三次元構造組織化だけでなく、肝細胞がin vivoで呈する機能性をはるかに良好に再生することが可能であることが示唆される。免疫組織化学検査によって分析すると、H3Screen-1 Cellは強いCK-19及びCK-18発現とともにアルブミン、CYP3A4、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC;尿素サイクルの酵素)及びUDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ1A1(UGT1A1;ビリルビン抱合の酵素)の強い発現を示す。
酵素活性のレベルで、肝細胞様細胞を含む三次元H2Stem ProgenyにおけるCYP3A4活性を、初代肝細胞及びH2Stem Cell及びH2Screen Cellと比較して測定した。絶対値を比較すると(図7A)、分化の前又は後のADHLSC Cellと比較して既に顕著に高いH2Stem CellのCYP3A4活性(実施例1及び図4Bを参照されたい)が既にH3StemCellによって達成され、H3Screen-2a Cell等のH3ScreenCellで更に増大する。細胞数に基づいて規定した場合のこれらの値から、(細胞の総数及び密度に応じて)10-5pmol/細胞〜10-6 pmol/細胞の範囲に相当する10-2 pmol/細胞〜10-3pmol/細胞クラスターの範囲のH3Screen-2a CellのCYP3A4活性が示され、H2Screen Cellと比較して少なくとも更に1 logの改善が得られる。かかる値は、分化ADHLSC Cellにおいて測定されるCYP3A4活性のレベルをはるかに上回り、初代肝細胞において測定されるレベルに近づく。
異なるタイプのH3Screen Cellの肝臓特異的代謝活性の更なる実証を、尿素分泌等の実施例1においてH2Stem Cell及びH2Screen Cellについて記載したものと同様に行うことができる(図4を参照されたい)。代替的には、代謝活性の他の指標を、市販のキットを用いて、又は関連マーカーに対するmRNA及び/又はタンパク質発現レベル及び/又は酵素活性の決定について(例えばCYP1A2、CYP2C19、CYP2C9又はCYP2D6に特異的な化合物の代謝に関して)文献に記載の技法を適用することによって評価することができる。
さらに、リファンピシン及びβ-ナフトフラボンによる誘導(薬物間相互作用の測定可能な効果を評価する試験)後にH3ScreenCell(特にH3Screen-2a及び-2b Cell)において、H2Stem Cell又はH2Screen Cellと比較して顕著に高い酵素活性が測定され、CYP1A2活性については36.22倍、CYP2B6活性については93.71倍、CYP2C9活性については2.13倍、CYP3A4活性については31.23倍という倍誘導が得られた。
H3Stem Cell及びH3Screen Cellは、相当のUGT1A及びSULTタンパク質発現及び活性も示し(図7B及び図7C)、この場合、10 %〜最大でほぼ100 %の初代肝細胞において測定されるレベルにも近い。この広範なグルクロン酸抱合能は毒物学的スクリーニングモデルの開発に主に重要であるだけでなく、例えばクリグラーナジャー症候群に対するこれらの新規の細胞の臨床適用可能性を明らかにする。H3Screen Cellは基質(塩化アンモニア及びオルニチン)の存在下で尿素を合成することが更に可能であり、実質的に増大又は蓄積した経時的な尿素産生によりそれらの広範な代謝能が確認される。
取込み輸送体ナトリウムタウロコール酸共輸送ポリペプチド(NTCP)、有機アニオン輸送ポリペプチド(OATP、例えばOATP1B1及びOATP1B3)及び有機カチオン輸送体(OCT(OCT1及び2))の機能性をタウロコール酸、エストロン-3-スルフェート又はMPPの取込みを測定することによって評価した。H3Stem及びH3Screen-2a Cellの両方が、15分〜60分にわたるかかる化合物の取込みの増大を示した(図7D)。さらに、H3Stem Cell及びH2Stem Cellの両方が、ADHLSC Cell又は一般に使用されるHepG2のような細胞系列より優れているだけでなく、in vitroで初代ヒト肝細胞について検出されるものに近いCES1(肝臓カルボキシラーゼ)のような肝臓特異的活性を示す(図8A)。同様に、H2Stem Cellによるα-1-アンチトリプシンの分泌はADHLSC Cellについて観察されるより大幅に優れており(図8B)、これはH3Stem Cell及びH3Screen Cellにおいて更に評価することができる更なる特徴である。これらの証拠から、候補薬物の試験に利用することができるH3Stem及びH3Screen Cellにおける特定の化合物の能動取込み及び代謝の存在が確認される。
このため、H2Stem Cellを使用して、肝前駆細胞又は肝活性化細胞を含む三次元細胞クラスター(三次元H2Stem Progeny)として維持することができ、細胞培養条件で効率的に成長し、代謝的に活性な及び/又は増殖する細胞の提供に有用なH2Stem Progenyを提供することができる。代謝及び増殖関連特徴を、どのタイプの上で同定される三次元H2Stem Progeny(又は機能的又は形態学的に決定することができる更なる亜タイプ)が所与の用途により適切な機能的、形態学的又は抗原的プロファイルを有するかを決定するために、他の特徴(細胞型若しくは活性特異的な表面マーカーの存在/非存在、直径、間質構造のタイプ又は他の生物活性)と組み合わせることができる。
例えば、特定の直径範囲(細胞の平均数及びタンパク質/DNAの量に相当する)、in vitro分化を組み合わせる又は組み合わせないプロセス(図1及び図6を参照されたい)、組み換えタンパク質を発現するベクターによる形質転換、及び/又は特定の抗原的プロファイルが、三次元H2Stem Progenyが(例えば門脈内注射又は肝内/肝外移植による、トリプシンによる任意の前処理を有する又は有しない、デバイス又は生体適合性マトリックスの中又は外での)in vivo投与を対象とする場合に好ましい可能性がある。
代替的には、H2Screen Cell(H3Screen-1 Cell)又はH3Stem Cell(H3Screen-2a Cell又はH3Screen-2b Cell)から浮遊状態で生成するより大きな三次元H2StemProgenyが、肝臓を標的とするウイルスへの曝露、組み換えタンパク質を発現するベクターによる形質転換、及び/又は化合物パネルへの曝露を含むin vitro用途により適切であり得る。これらの実験により、かかるモデルがウイルス若しくはヒトタンパク質の効率的な発現、又は肝臓代謝に対する化合物の治療的有効性、代謝、安定性及び/又は毒性の評価、特に薬理学的又は毒物学的予備臨床スクリーニング及び試験をどのように可能にするかについての関連情報を得ることができる。
実施例3:H2Stem Cellを特性化する分子的特徴
材料及び方法
ADHLSC Cell及びH2Stem Cellのプロテオーム分析
プロテオーム分析を、二次元(2D)ゲルにおいてEttan(商標)DIGEシステム(2D-DIGE;GE HealthcareLife Sciences)を用いて、先に記載のように(Vanheel A et al., 2012)幾らか僅かに適合させて行った。簡潔に述べると、細胞ペレットを、95 %コンフルエンスで培養物中の細胞を採取し、計数し、300 g、4℃で5分間遠心分離することによって調製した。細胞を、45 mlのリン酸緩衝食塩水(PBS)、5mlのEDTA溶液(50 mM;カタログ番号17-1324-01、GE Healthcare)及び1錠のプロテアーゼ阻害剤カクテル(cOmplete;カタログ番号11873580001、Roche Applied Sciences)を用いて調製される10 ml(5×106細胞当たり)の氷冷洗浄緩衝液で洗浄する。均質化の後、細胞を洗浄し、5×106細胞当たり1 mlの氷冷洗浄緩衝液中で2回遠心分離した。最後に上清を除去し、細胞ペレットを液体窒素で急速凍結し、-80℃に保管した。
細胞抽出物におけるタンパク質濃度を決定した後、N-ヒドロキシスクシンイミジル−エステル染料Cy2、Cy3及びCy5(GEHealthcare Life Sciences)による最小標識化を製造業者によって説明されるように行った。CyDye標識2D-DIGEゲルをEttan DIGE Imager(GE Healthcare Life Sciences)でスキャンした。3つ全てのCyDyeによるゲル画像をDeCyder 7.0ソフトウェア(GE Healthcare Life Sciences)にロードし、分析した。
主成分分析(PCA)
群間の変化の大きさに対する群内の存在量の変動の統計的有意性は、スチューデントt検定及び分散分析(ANOVA)を用いて算出した。70 %のゲル画像中に存在し、統計的に有意なANOVA(p≦0.05)を有するスポットを更なる分析に検討した。主成分分析(PCA)は、DeCyder拡張データ分析(EDA)モジュール(GE Healthcare)を用いて行った。各々のスポットの蛍光強度をこの内部標準に対して正規化することで、ゲル間の比較が可能となる。このプロセスはDeCyderソフトウェア(GE Healthcare)によって行う。
タンパク質ベースの細胞検出
フローサイトメトリー又はウエスタンブロット分析を、プロテオミクス分析によって同定された潜在的表面バイオマーカーの選択について行った。FACSCANTO血球計算器及びFACSDivaソフトウェアを使用した(BD biosciences)。細胞を一次抗体PEマウス抗ヒトCD140b(BD Pharmingen;カタログ番号558821)及びPE抗ヒトSUSD2(W5C5及びW3D5抗原、カタログ番号327406及び327506、BioLegend)で固定した後インキュベートし、分析した。生存性を7AAD(カタログ番号559925、BDPharmingen)を用いて測定した。ウエスタンブロット分析については、市販の抗β-アクチン抗体を対照として製造業者の取扱説明書に従って使用した。フローサイトメトリーについては、陽性細胞の割合を適切な対照アイソタイプの3 %の陽性率で正規化した。
結果
実施例1及び2には、H2Stem Cell及びH2Stem Progenyと他の細胞型とを市販の製品(抗体、PCR プライマー及び/又はキット)を用いて区別することを可能にする第一の分子又は酵素特徴系列に関する実験データを提示する。しかしながら、H2Stem Cell及びH2Stem Progenyのより一般的な定性的及び定量的な特性化を、これらの細胞のトランスクリプトーム、リピドーム、メタボローム及び/又はプロテオームを広く分析する異なる技術によって行うことができる。次いで、一連の結果を互いに又は異なる細胞集団(例えばH2Stem Cell、H2Stem Progeny、初代ヒト肝細胞又はADHLSC Cellの異なる調製物)から得られる同様のデータと比較することによって、異なる細胞集団間の区別を助けることができるバイオマーカー(複数の場合もあり)を同定することで、H2Stem Cell及びH2Stem Progenyのより正確な生物学的プロファイルを確立することができる。
第1のアプローチとして、ADHLSC Cell及びH2Stem Cellのプロテオームを、これらの細胞の増殖培養物から全タンパク質含量を抽出し、二次元ゲル分析に供して発現、回転及び/又はタンパク質修飾の変化を同定することによって比較した。差次的発現分析を用いて差次的スポットを選び取り、実験群間の変動性の分析に用いられる教師なし多変量統計法である主成分分析(PCA)を行うために一元ANOVAによって定量化した。全てのANOVA 0.05関連スポットでPCAを行い、2つの細胞集団の異なる調製物間の異なるバイオマーカープロファイルを(機能的特徴に加えて)示すスポットの2つの異なるクラスターを得た(図9)。
これらの差次的スポットのより徹底的な分析は、関連タンパク質を実際に同定した後、これらの証拠を他の技術及び市販の製品によって(例えば、ウエスタンブロット又はフローサイトメトリーに抗体、RT-PCRにプライマーを使用することによって)確認する質量分析を用いたタンパク質シークエンシングによって行うことができる。代替的には、遺伝子特異的検出剤(プライマー、標識抗体又はレクチンである)の大きなパネルをもたらすアレイベースの技術及び他のアプローチにより、異なるサンプルにおける(活性、局在化又は他の基準によって分類される)特定のタンパク質の量を比較した後、異なる細胞集団及び/又は細胞培養条件においてより詳細な分析を受けるに値するタンパク質の数を制限することが可能となる。
免疫学的分析、トランスクリプトミクス分析及び/又は糖鎖生物学分析によるデータを組み合わせることで、H2Stem Cell又はH2Stem Progenyに関する更なる情報により、(医学的使用、パラクリン効果、及び他の細胞、細胞外マトリックス又は他の生物学的エフェクターとの相互作用を含む)更なる検証に潜在的に興味の持たれるこれらの細胞の特徴を示すことができる。かかるアプローチは、他の細胞集団(例えば、接着性細胞又は三次元細胞クラスターとして維持される初代ヒト肝細胞、H2Stem Cell又は異なるH2Stem Progenyの異なる調製物)及びかかる細胞集団に由来する生体物質(馴化培地又は特定の細胞又はタンパク質画分等)との比較を含み得る。
種々の技術により、ADHLSC Cellだけでなく、成体肝前駆細胞集団又は更には初代ヒト肝細胞と比較される、H2Stem Cell及び異なるタイプのH2Stem Progenyに由来するかかる生体物質における特定のタンパク質の過剰又は過小提示に関する予備データを得ることが可能になる。異なる細胞集団における特定のタンパク質の過剰又は過小提示に関するこれらの証拠は、それらの作製プロセスの初期段階及び後の継代(上記の発明を実施するための形態に規定される)において適切に確認されたバイオマーカーを用いて、特に全体的な成体肝前駆細胞集団及びH2Stem Cell(又は1つ若しくは複数のタイプのH2Stem Progeny)の品質及び/又は量の確立を必要とする種々のin vivo及び/又はin vitro用途に使用することができる。
かかるバイオマーカーを決定する好ましいアプローチは、低スループット又は試験及び破壊する細胞量の多さにより限定されることなく確認することができるものである。このため更なる研究は、細胞培養培地の上清中で及び/又はフローサイトメトリーによって評価することができるバイオマーカーに着目するものであり得る。この範囲でタンパク質の存在量を、初めにH2Stem Cell及びADLHSC Cell中で二次元(2D)ゲル電気泳動法を用いて評価することができる。細胞表面上の及び/又は細胞培養上清中に分泌して見られるタンパク質は、2つの細胞集団について異なる蛍光プローブを用いて先に染色されるか、又は特異的に富化されたタンパク質調製物中で(例えば、Pierce細胞表面タンパク質単離キット、Thermo scientificを用いる)ビオチン化及び親和性クロマトグラフィーを用いて単離される。並行して、全タンパク質抽出物及び他の内部対照/標準も各々の細胞集団について調製する。次いで、サンプルを2Dゲル電気泳動によってタンパク質を分離するゲルに適用する。次いで、バイオインフォマティクス及び画像化法を用いてゲルにおける細胞表面及び/又は分泌タンパク質の存在量を比較した後、関心のスポット(存在量の統計的有意差を細胞集団間で検出する)をゲルから選び取り、かかるスポットにおけるタンパク質の同一性を質量分析によって同定する範囲でトリプシンを用いて消化する。
かかる方法を用いてH2Stem CellとADHLSC Cellとで差次的に発現されるとして同定されたタンパク質の中でも、Sushiドメイン含有タンパク質2(SUSD2)及びフィブリノゲンβ鎖(FGB)又は他の凝固関連分泌タンパク質が、H2Stem CellにおいてADHLSC Cellと比較して強く発現することが見出され、(別個に又は組合せで)H2StemCell及びH2Stem Progenyのバイオマーカーの対象とすることができる。
SUSD2の生物学的機能はこれまで完全に確立されていないが、文献から大きな細胞外ドメインを有するこの細胞表面タンパク質に関して幾らかの関連情報が得られる。このタンパク質は、遺伝子及び/又はタンパク質発現を比較する多くの研究で同定されており、例えば部分肝切除の直後に過剰発現することが見出されている(White P et al, 2005)。SUSD2及び対応するマウスタンパク質(SVS-1)は、少なくとも天然(フィブロネクチン又はガレクチン-1等)又は合成(マトリゲル等)分子を用いて試験した場合に、細胞外マトリックスとのそれらの相互作用を変化させることにより、癌細胞の活性にin vitro又は動物モデルで影響を及ぼすようである(Sugahara T etal., 2007、Watson A et al., 2013)。最後に、SUSD2は、ヒト骨髄、子宮内膜、軟骨及び他の組織に由来する間葉幹細胞を特性化すると規定される細胞表面エピトープ(W5C5、W3D5)を含有するとして同定されている(Sivasubramaniyan K et al., 2013、Benz K etal., 2013、Masuda H et al., 2012、Pilz G et al., 2011、Buehring HJ et al., 2007)。
H2Stem Cellにおけるはるかに強いSUSD2発現に関する2Dゲル電気泳動を用いて得られた最初の発見は、ヒトSUSD2に対する市販の抗体(精製抗ヒトSUSD2;カタログ番号327401、Biolegend)を使用して、ウエスタンブロット(図10A)及び免疫蛍光において共焦点顕微鏡を用いて確認した。SUSD2細胞外ドメインも細胞培養培地中に可溶性タンパク質として存在し、H2Stem Cell及び特定のH2Stem Progenyをそれらの出現及び産生において特性化するか、又は特定のin vitro及び/又はin vivo用途を示す特徴を同定する分泌バイオマーカーとして使用することができる分泌タンパク質(FGB、CES1又はα-1-アンチトリプシン及びそれらの対応する活性等)とともに同定することができる。
興味深いことに、幾つかの他の表面タンパク質がH2Stem CellよりもADHLSC Cellによってより多く発現されると特性化され、H2Stem Cell及び特定のH2Stem Progenyをそれらの出現及び産生中に特性化する代替アプローチが示された。例えば多くの場合、間葉幹細胞を特性化するマーカーとして挙げられるCD140bは、フローサイトメトリーによって決定することができるSUSD2の1つとは逆の発現プロファイルを有するようである。実際に、かかるアプローチは補完的であり、ウエスタンブロット分析と組み合わせて、SUSD2が大半のH2Stem Cellにおいてどれほど強く発現され、SUSD2発現がはるかに低い割合のADHLSC Cellにおいてどれほど低いかを示すことができる(図10B及び図10C)。バイオマーカー陽性率/陰性率のこの組合せは機能的特徴とともに、H2Stem CellとADHLSC Cell及び肝臓マーカー又は肝臓特異的活性を示さない以前に記載される間葉幹細胞(Benz K et al., 2013)との更なる区別を可能にする。
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本発明は、以下を包含する。
1.(a)アルブミン、HNF-3B、HNF-4、CYP1A2、CYP2C9、CYP2E1及びCYP3A4から選択される少なくとも1つの肝臓マーカーと、
(b)ビメンチン、CD90、CD73、CD44及びCD29から選択される少なくとも1つの間葉マーカーと、
(c)尿素分泌、ビリルビン抱合、α-1-アンチトリプシン分泌及びCYP3A4活性から選択される少なくとも1つの肝臓特異的活性と、
(d)Sushiドメイン含有タンパク質2(SUSD2)と、
(e)サイトケラチン-19(CK-19)と、
に対して陽性であると測定されることを特徴とする、成体肝前駆細胞。
2.CD140b、CD45、CD117、CD31、CD133及びCD326の1つ又は複数に対して陰性であると測定されることを特徴とする、前項1に記載の細胞。
3.更にサイトケラチン-18(CK-18)及び/又はα平滑筋アクチン(ASMA)に対して陽性であると測定される、前項1又は2に記載の細胞。
4.更にスルホトランスフェラーゼ活性、トリプトファン-2,3-ジオキシゲナーゼ活性、肝臓カルボキシラーゼ活性、アンモニア代謝及びグリコーゲン貯蔵から選択される少なくとも1つの肝臓特異的活性に対して陽性であると測定される、前項1〜3のいずれか一項に記載の細胞。
5.更にフィブリノゲンα、フィブリノゲンβ、フィブリノゲンγ、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子及び第XIII因子から選択される少なくとも1つの凝固関連分泌タンパク質に対して陽性であると測定される、前項1〜4のいずれか一項に記載の細胞。
6.(a)アルブミン、ビメンチン、CD90、CD73、尿素分泌、ビリルビン抱合、α-1-アンチトリプシン分泌、CYP3A4活性、Sushiドメイン含有タンパク質2、サイトケラチン-19及び肝臓カルボキシラーゼ活性に対して陽性であり、かつ、
(b)CD140bに対して陰性である、
と測定される、前項1〜5のいずれか一項に記載の細胞。
7.接着性であり、立方中上皮形態を示す、前項1〜6のいずれか一項に記載の細胞。
8.浮遊状態で三次元細胞クラスターを形成し、及び/又は肝臓特異的活性を示す細胞へと分化することが可能である、前項1〜7のいずれか一項に記載の細胞。
9.前項1〜8のいずれか一項に記載の細胞を少なくとも60 %又は60 %〜99 %又は70 %〜90 %含む単離細胞集団。
10.接着性細胞を含むか又は浮遊状態で三次元細胞クラスターを形成する、前項9に記載の細胞集団。
11.誘導型第1相CYP依存性活性並びにタウロコール酸、エストロン-3-スルフェート及び1-メチル-4-フェニルピリジニウムの少なくとも1つの取込みを示す、前項10に記載の細胞集団。
12.肝臓特異的活性を示す細胞へと分化する、前項9〜11のいずれか一項に記載の細胞集団。
13.1つ又は複数の化学剤、細胞培養培地、成長因子及び/又は核酸ベクターを用いて修飾される、前項1〜12のいずれか一項に記載の細胞又は集団。
14.(a)成体肝臓又はその一部を解離して、初代肝細胞の集団を形成することと、
(b)前記(a)の初代肝細胞の集団の調製物を生成することと、
(c)前記(b)の調製物中に含まれる細胞を、細胞の接着及び成長並びに立方中上皮形態を有する細胞の集団の出現を可能にする支持体上で培養することと、
(d)前記(c)の細胞を少なくとも1回継代することと、
(e)前記工程(d)の継代後に得られる、立方中上皮形態を維持し、少なくとも1つの肝臓マーカー及び少なくとも1つの間葉マーカーに対して陽性であり、少なくとも1つの肝臓特異的活性を有する細胞の集団を単離することと、
を含む、成体肝前駆細胞を得る方法。
15.前記工程(a)の初代肝細胞がヒト起源である、前項14に記載の方法。
16.前記工程(b)の初代肝細胞の調製物を凍結保存する、前項14又は15に記載の方法。
17.前記工程(c)の細胞及び/又は前記工程(e)の細胞集団がサイトケラチン19、アルブミン、α-1-アンチトリプシン分泌、Sushiドメイン含有タンパク質2及びCYP3A4から選択される少なくとも1つのマーカーに対して陽性であると測定される、前項14〜16のいずれか一項に記載の方法。
18.前記工程(c)の細胞及び/又は前記工程(e)の細胞集団が、
(i)ビメンチン、CD90、CD73、CD44及びCD29から選択される少なくとも1つの間葉マーカーと、
(ii)HNF-3B、HNF-4、アルブミン、CYP1A2、CYP2C9、CYP2E1及びCYP3A4から選択される少なくとも1つの肝臓マーカーと、
(iii)尿素分泌、ビリルビン抱合、α-1-アンチトリプシン分泌及びCYP3A4活性から選ばれる少なくとも1つの肝臓特異的代謝活性と、
(iv)Sushiドメイン含有タンパク質2と、
(v)サイトケラチン-19(CK-19)と、
に対して陽性であると測定される、前項14〜17のいずれか一項に記載の方法。
19.前記工程(c)の細胞及び/又は前記工程(e)の細胞集団が、サイトケラチン-18(CK-18)及び/又はα平滑筋アクチン(ASMA)に対して陽性であると測定され、かつCD140bに対して陰性であると測定される、前項18に記載の方法。
20.前記工程(e)の細胞集団が、浮遊状態での三次元細胞クラスターの形成を可能にする細胞培養条件で維持される、前項14〜19のいずれか一項に記載の方法。
21.前記細胞集団を低接着コンテナ又はバイオリアクター内で作製及び維持する、前項20に記載の方法。
22.前記工程(e)の細胞集団を細胞培養条件で維持して、肝臓特異的活性を示す細胞へと分化させる工程(f)を更に含む、前項14〜21のいずれか一項に記載の方法。
23.前項14〜22のいずれか一項に記載の方法によって得ることができ、前項18又は19に記載の特徴を示す細胞を少なくとも60 %又は60 %〜99 %又は70 %〜90 %含む細胞集団。
24.前記細胞が接着性細胞であるか又は浮遊状態で三次元細胞クラスターを形成する、前項23に記載の細胞集団。
25.前記細胞が誘導型第1相CYP依存性活性及びタウロコール酸、エストロン-3-スルフェート又は1-メチル-4-フェニルピリジニウムの取込みを示す、前項24に記載の細胞集団。
26.前記細胞が肝臓特異的活性を示す、前項23〜25のいずれか一項に記載の細胞集団。
27.1つ若しくは複数の化学剤、細胞培養培地、1つ若しくは複数の成長因子及び/又は1つ若しくは複数の核酸ベクターを用いて修飾される、前項23又は24に記載の細胞集団。
28.1つ又は複数の単離タンパク質、核酸、代謝産物及び/又は抗原を含む馴化細胞培養培地、タンパク質抽出物、膜小胞又はその任意の画分である、前項1〜13又は前項23〜27のいずれか一項に記載の細胞又は集団から単離される生体物質。
29.前項1〜13若しくは前項23〜27のいずれか一項に記載の細胞若しくは集団、又は前項28に記載の生体物質を含む組成物。
30.肝疾患の治療における前項1〜13若しくは前項23〜27のいずれか一項に記載の細胞若しくは集団、前項28に記載の生体物質又は前項29に記載の組成物の使用。
31.前記肝疾患が先天性肝臓代謝異常、遺伝性血液凝固障害、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症1/2/3型、α1-アンチトリプシン欠乏症、肝細胞トランスポーター欠損、ポルフィリン症、脂肪肝若しくは他の線維症肝疾患、原発性胆汁性肝硬変、硬化性胆管炎、肝変性疾患、又は急性若しくは慢性肝不全である、前項30に記載の使用。
32.(a)前項1〜13又は前項23〜27のいずれか一項に記載の細胞若しくは集団、前項29に記載の組成物又は前項28に記載の生体物質を準備することと、
(b)前記細胞、前記細胞集団、前記組成物又は前記生体物質を化学化合物、タンパク質、核酸、脂質、糖、金属、塩、ウイルス、細菌及び細胞から選択される1つ又は複数の外因性成分に曝露することと、
(c)前記細胞集団、前記組成物若しくは前記生体化合物に対する前記1つ若しくは複数の外因性成分の効果を検出すること、及び/又は前記細胞集団、前記組成物若しくは前記生体物質への曝露後の前記1つ若しくは複数の外因性成分の存在、局在化若しくは修飾を検出することと、
を含む、1つ又は複数の外因性成分の有効性、代謝、安定性及び/又は毒性を評価する方法。
33.前記方法の工程(c)が細胞形態、細胞生存性、肝臓特異的若しくは非特異的タンパク質の上方若しくは下方調節、及び/又は前記細胞、前記細胞集団、前記組成物若しくは前記生体物質におけるタンパク質の分解、凝集、活性化若しくは阻害に対する効果を検出することを含む、前項32に記載の方法。
34.前記方法の工程(c)が、前記1つ又は複数の外因性成分の前記細胞、前記細胞集団、前記組成物若しくは前記生体物質への内在化又は該細胞、該細胞集団、該組成物若しくは該生体物質との物理的結合を検出することを含む、前項32又は33に記載の方法。
35.工程(a)において前記細胞、前記細胞集団、前記組成物又は前記生体物質を動物に与え、工程(b)において1つ又は複数の外因性成分を動物に投与し、工程(c)が前記1つ又は複数の外因性成分の前記細胞、前記細胞集団、前記組成物、前記生体物質又は前記動物に対する効果を検出すること、及び/又は前記動物における前記細胞、前記細胞集団、前記組成物又は前記生体物質への曝露後の前記1つ又は複数の外因性成分の存在、局在化又は修飾を検出することを含む、前項32〜34のいずれか一項に記載の方法。
36.工程(b)において前記細胞、前記細胞集団、前記組成物又は前記生体物質を、
(i)細胞形態、細胞生存性、肝臓特異的若しくは非特異的タンパク質の上方若しくは下方調節に対して効果を有し、及び/又は前記細胞、前記細胞集団、前記組成物若しくは前記生体物質においてタンパク質を分解、凝集、活性化若しくは阻害する1つ又は複数の外因性成分、並びに、
(ii)前記細胞、前記細胞集団、前記組成物又は前記生体物質における前記(i)の1つ又は複数の外因性成分の効果を遮断又は回避することを目的とした1つ又は複数の外因性成分、
へと同時に又は任意の順序で順次に曝露する、前項32〜35のいずれか一項に記載の方法。
37.前記(i)の1つ又は複数の外因性成分が感染性物質、腫瘍形成性物質、細胞毒性物質又は遺伝毒性物質を含み、前記(ii)の更なる外因性成分がタンパク質、核酸、細胞、ウイルス又は化学化合物を含む、前項36に記載の方法。
38.化学化合物、タンパク質、核酸、脂質、糖、金属、塩、ウイルス、細菌及び細胞から選択される1つ又は複数の外因性成分の有効性、代謝、安定性及び/又は毒性を評価するための前項1〜13若しくは前項23〜27のいずれか一項に記載の細胞若しくは細胞集団、前項29に記載の組成物又は前項28に記載の生体物質の使用。
39.前項1〜13若しくは前項23〜27のいずれか一項に記載の細胞、細胞集団、前項29に記載の組成物又は前項28に記載の生体物質を含むキット。
40.前記細胞集団、前記組成物又は前記生体物質を含有する1つ又は複数のバイアルと、以下の要素:デバイス、使い捨て材料、溶液、化学製品、生物製品、及び/又は前記キットの要素の使用説明書の1つ又は複数とを更に含む、前項39に記載のキット。