以下に、本発明の実施形態である駆動伝達装置及びそれを備える画像形成装置について説明する。
<第1実施形態>
[画像形成装置]
まず、図17を参照して画像形成装置100の概略構成と一連の画像形成動作について説明する。
図17は、4色(イエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックBk)の画像を形成する画像形成部を各々備えたカラー画像形成装置100の全体構成を示す概略断面図である。画像形成装置100は、画像形成するための主要な部材として、感光ドラム121、帯電ローラ117、現像ロータリ123、ベルト102、定着器125を有する。なお、感光ドラム121、帯電ローラ117、現像ロータリ123は、ベルト102へトナー像を形成するトナー像形成手段である。
現像ロータリ123はイエロー現像器120Y、マゼンタ現像器120M、シアン現像器120C、ブラック現像器120Bkを回転可能に支持する。イエロー現像器120Y、マゼンタ現像器120M、シアン現像器120C、ブラック現像器120Bkには、それぞれ現像ローラ120YS、120MS、120CS、120BkSが設けられ、それぞれ対応する色のトナーが収容されている。ベルト102は無端ベルト状で駆動ローラ106と従動ローラ124に掛け回されている。ベルト102は、その表面にトナー像を担持可能な中間転写体としての像担持体である。駆動ローラ106は不図示のモータから駆動力により回転し、ベルト102を回転駆動し、ベルト102の表面を移動させる。
記録材Sへの画像形成動作について説明する。画像形成装置100は、給紙ローラ129を回転させてカセット128内の記録材Sを1枚給紙し、レジストレーションローラ130へ搬送する。記録材Sは、レジストレーションローラ130の位置で回転可能な中間転写体としての無端状の搬送ベルトであるベルト102上に画像が形成されるまで待機する。
一方、トナー像を担持する像担持体である感光ドラム121は、回転しながら帯電ローラ117により表面を均一に帯電され、画像信号に応じた光を照射するレーザスキャナ118により露光され、イエロー画像用の静電潜像が形成される。イエロー現像器120Yは、イエローのトナーを収容し、現像ローラ120YSを備える。静電潜像が形成された感光ドラム121と対向した現像ローラ120YSに現像電圧を印加することにより、感光ドラム121上に形成された静電潜像がイエローのトナーにより現像される。感光ドラム21上に形成されたトナー像に逆極性の電圧を一次転写ローラ122に印加して、感光ドラム121のトナー像をベルト102上に一次転写する。
イエローのトナー像がベルト102へ一次転写されると、現像ロータリ123が回転し、次に画像形成を行うマゼンタ現像器20Mが回転移動し、感光ドラム121に画像形成を行うための現像位置に停止する。そして、イエローと同様に、感光ドラム121を帯電、露光して、現像ローラ120MSによりマゼンタのトナーで現像を行ってトナー像を形成し、ベルト102に一次転写する。この一次転写の際、マゼンタのトナー像は、既にベルト102上に担持されているイエローのトナー像に重なる位置に転写される(以下、「多重転写」という)。
次に、上記と同様にして、シアン現像器120C、ブラック現像器120Bkを用いてシアン、ブラックのトナー像をそれぞれ感光ドラム121上に形成して、ベルト102上へ多重転写する。これにより、ベルト102上にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー像が多重転写によって重畳されたカラーのトナー像が形成される。
ベルト102にカラー画像が形成された後、レジストレーションローラ130で待機させておいた記録材Sは二次転写部Aへ搬送される。二次転写部Aは、ベルト102の表面に当接離間可能な二次転写ローラ1と、駆動ローラ106(以下、「対向ローラ106」という)を備える。ベルト102を回転させながらベルト102上に各色のトナー像を多重転写している間は、既にベルト102上に形成されたトナー像が二次転写部Aを通過する際に乱さぬよう、二次転写ローラ101はベルト102から隙間Gだけ離間した位置(図17の実線で示した位置)にある。二次転写ローラ101は、ベルト102上に各色のトナー像を転写し終わった後で記録材Sが二次転写ローラ101とベルト102との間に搬送されてくる前に、移動してベルト102に当接する(図17の破線で示す位置)。その後、二次転写ローラ101にトナーと逆極性の電圧を印加することにより、二次転写ローラ101とベルト102の間で挟持搬送される被転写部材としての記録材S上にベルト102上のトナー像が転写される。
ベルト102上からトナー像が転写された記録材Sは、その後定着器125へ搬送され、加圧ローラ127と定着ローラ126間の定着ニップ部Nを通過し、その際トナー像が、加熱、及び、加圧されて記録材Sに定着する。そして、記録材Sは、排紙ローラ136を介して本体上部の排紙トレイ137上へ画像面を下向きにして排出され、画像形成動作が終了する。
[二次転写ローラ離間機構]
上述したように、二次転写ローラ101は、所定のタイミングで移動してベルト102に対して当接、離間するため、画像形成装置100は二次転写ローラ101の当接離間機構を有している。次にこの当接離間機構について説明する。
図1は二次転写部Aの斜視図であり、(a)は二次転写ローラ101がベルト102に当接している状態、(b)は二次転写ローラ101がベルト102から離間している状態を示す。二次転写ローラ101は回転自在にホルダ3に保持されている。なお、図1では、二次転写ローラ101長手方向の一端部側を記載しているが、他端側も同様に構成されている。
画像形成装置100内の不図示のフレームに支持された回転軸106aは対向ローラ106、及び、切換カム4を、回転軸106a回りに回転可能に支持している。切換カム4はギア部4aを一体的に備え、回転軸5aに回転可能に支持された切換ギア5と噛合う。ギア部4aの歯数と切換ギア5の歯数の比率は、2:1である。第1クラッチ装置B1を介したモータMからの駆動力により切換ギア5を回転させることで、ギア部4aと切換カム4が一体的に回転する。
また、ホルダ3はコロ3bを備える。ホルダ3は、バネ3aによって二次転写ローラ101が対向ローラ106に向かう方向に付勢(押圧)されている。切換カム4は、第1クラッチ装置B1により所定のタイミングで1/2回転(180°)枚に回転し、停止する。
図1(b)に示す状態では、コロ3bが切換カム4の表面に突き当たることで二次転写ローラ101の位置が規制され、二次転写ローラ101がベルト102から隙間Gで離間した状態となる。この状態から切換カム4が1/2回転することにより、図1(a)に示すように、切換カム4の表面がコロ3bから退避し、バネ3aの付勢力により二次転写ローラ101が対向ローラ106に当接する。この状態から更に切換カム4が1/2回転すると、切換カム4の表面がコロ3bに当接し、バネ3aの付勢力(弾性力)に抗してコロ3bを移動させ、図1(b)に示した、二次転写ローラ101がベルト102から隙間Gで離間した状態とする。このように、二次転写ローラ101がベルト102に当接した状態から離間させる際は、切換カム4にバネ3aの付勢力による回転負荷(回転トルク)がかかる。
[第1クラッチ装置B1]
次に、モータMからの切換カム4へ駆動力を伝達する駆動列の中に設けられ、間欠的に駆動力を伝達する駆動伝達装置としての第1クラッチ装置B1の構成について、図2を用いて説明する。図2は第1クラッチ装置B1の斜視図であり、(a)は第1クラッチ装置B1を切換ギア5の反対側から見た図で、(b)は第1クラッチ装置B1を切換ギア5の側から見た図である。以降は、第1クラッチ装置B1の切換ギア5の反対側を「第1クラッチ装置B1の表側」とし、切換ギア5の側を「第1クラッチ装置B1の裏側」とする。
第1クラッチ装置B1は、常時モータMと駆動連結されて回転するギア7(駆動回転体)と、ギア7と噛合可能なギア8と、ギア8と噛合可能なギア9と、ギア8の回転を規制する手段であるソレノイド10と、ねじりバネ11(弾性部材)を有する。モータMからの駆動力は、第1クラッチ装置B1のギア7、ギア8、ギア9を介して切換ギア5へ伝達され、切換カム4(被駆動部材)を回転させる。
ギア8は、ソレノイド10の係止爪10aに係止される係止部8aと、ギア7と噛合可能な欠歯ギア8b(従動回転体)と、ギア9と噛合する第一すべりギア8d(第1回転体)と、ねじりバネ11が当接するカム部8fと、を一体的に備える。ギア8が回転することにより、これら係止部8a、欠歯ギア8b、ギア8d、及び、カム部8fが一体的に回転する。欠歯ギア8bには、一部にギア7と噛合しない欠歯部8cが設けられている。第1すべりギア8dは26歯相当の歯数直径であるが、一部に第一すべりギア8dの回転中心と同心であって第一すべりギア8dのピッチ円の半径と同じ半径の円弧面である凸形状のすべり部8eが設けられている。このため、第1すべりギア8dはすべり部8e以外の部分に20歯を備えている。
ギア9は、第一すべりギア8dと噛合可能な第二すべりギア9a(第2回転体)と、ねじりバネ11を保持する軸9cと、図1における切換ギア5の回転軸5aに一体的に連結された回転軸9dと、を一体的に備えている。ギア9が回転することにより、これら第二すべりギア9a、軸9c、及び、回転軸9dが一体的に回転する。第二すべりギア9aには、一部に第1すべりギアと噛合せず、すべり部8eに沿うすべり部9bが設けられている。すべり部9bは、すべり部9bがすべり部8eに対向する位置にある時に、第一すべりギア8dの回転中心と同心の凹形状の円弧面である。このすべり部9bの円弧面は、半径が第1すべりギア8dのピッチ円の半径と同じであり、すべり部8eの円弧面に沿う円弧面である。第二すべりギア9aの歯車は22歯相当の歯数直径であるが、一部にすべり部9bが設けられているので、第二すべりギア9aは、すべり部9b以外の部分に19歯を備えている。このように、第二すべりギア9aの歯数(19歯)は第一すべりギア8dの歯数(20歯)より1歯分少ない。第一すべりギア8dと第二すべりギア9aとのギア比を1:1とするために、第二すべりギア9aは、第一すべりギア8dの20個の歯によって押圧されて回転させられる部分として、19個の歯とすべり部9bの端部(1歯分に相当)を備える構成となっている。つまり、第一すべりギア8dの歯数をZ1、第二すべりギア9aの歯数をZ2とすると、ギア比1:1でZ1=Z2+1という関係を満たす。また、第一すべりギア8dと第二すべりギア9aとは必ずしもギア比1:1である必要は無く、第二すべりギア9aが一回転する間に第一すべりギア8dが整数回回転するギア比であればよい。すべり部9bは第一すべりギア8dが一回転毎にすべり部8eと対向する位置に来るよう配置する。例えば、第一すべりギア8dの構成を変えることなく、ギア比2:1(第1すべりギア8dが1回転すると、第二すべりギア9aが1/2回転する)とする場合、すべり部9bを19歯毎に設ければよい。この時、Z1=(Z2+1)/2という関係を満たす。
ギア8とギア9は、凸形状の円弧面であるすべり部8eと凹形状の円弧面であるすべり部9bとが沿うように相対的な回転位相を合わせて組み立てられている。すべり部9bに対してすべり部8eが摺動しやすいよう、すべり部8eとすべり部9bは摩擦係数が小さな材料で形成されている。また、摺動性を良くするために、必要に応じてすべり部8eとすべり部9bとの間にグリース等の潤滑剤を塗布してもよい。
ソレノイド10は、係止爪10aと、戻しバネ10bと、を備える。戻しバネ10bは係止爪10aをギア8に向かう方向に付勢しており、ソレノイド10に通電しておらず、係止部8aが係止爪10aと対向する位置にある時、係止爪10aは係止部8aを係止してギア8の回転を規制することができる。ソレノイド10に通電すると係止爪10aは戻しバネ10bの付勢力に抗してギア8から退避し、それまで係止爪10aで係止部8aを係止していた場合、係止爪10aによるギア8の係止部8aの係止を解除できる。
ねじりバネ11は、不図示の固定部に固定された固定腕11aと、ギア8のカム部8fに当接する可動腕11bと、を備え、軸9cによって保持されている。ギア8が所定の回転位相にある時、ねじりバネ11の弾性力によってカム部8fを押圧することで、ギア8が回転するよう付勢する。欠歯ギア8bの欠歯部8cがギア7と対向し、欠歯ギア8bがギア7と噛み合って十分な駆動力を得られない時でも、このねじりバネ11の押圧によりギア8を回転させることが可能となる。
[第1クラッチ装置B1の動作]
次に、第1クラッチ装置B1の駆動伝達動作について、図3〜図7を用いて説明する。
図3〜図7の(a)は第1クラッチ装置B1を表側から見た図、であり、(b)は第1クラッチ装置B1を裏側から見た図である。図3は、第1クラッチ装置B1の待機状態を示す。図4は、第1クラッチ装置B1の駆動伝達開始時を示す。図5は、第1クラッチ装置B1の駆動伝達中を示す。図6は、第1クラッチ装置B1の駆動伝達終了時を示す。図7は、第1クラッチ装置B1のギア8がホームポジションに到達する直前を示す。また、図3〜図7におけるギア7とギア8の回転方向は、各ギアの横に記載した円弧状の矢印の示す通りである。
第1クラッチ装置B1の待機状態では、図3(a)に示すように、欠歯ギア8bの欠歯部8cがギア7と対向していて、欠歯ギア8bがギア7と噛み合っていない。また、ねじりバネ11の可動腕11bはギア8を時計回りに回転するようにカム部8fを押圧しているが、係止爪10aに係止部8aが突き当たっている。このため、ギア8は係止爪10aに係止され、回転せず停止している。この時、ギア8はホームポジションにある。
また、図3(b)に示すように、ギア8のすべり部8eとギア9のすべり部9bが対向しており、これによりギア9(第2すべりギア9a)は回転が規制されて停止しており、回転しない。この時、ギア9はホームポジションにある。なお、ギア9がホームポジションにある時は、ギア9の回転が規制されているので、仮に切換カム4等が外力等によって回転させられそうになってもその回転は防止される。
次に、第1クラッチ装置B1の駆動伝達開始について説明する。図4(a)に示すように、ソレノイド10に通電して係止爪10aによるギア8の係止部8aの係止を解除すると、ねじりバネ11の弾性力によって可動腕11bがカム部8fを押圧し、ギア8が時計回りに回転し始め、欠歯ギア8bとギア7とが噛合う。この時のカム部8fは、ねじりバネ11の可動腕11bに押圧される被押圧面として機能する。欠歯ギア8bとギア7とが噛み合うと、ギア8はギア7から駆動力を伝達されて回転する。このように、ねじりバネ11の弾性力のみによって、ギア8をホームポジションから回転開始させるのは、ギア8をホームポジションで停止させつつモータMにより回転しているギア7と噛み合わせることができないからである。
また、ギア8が回転し始めると、ギア8は、第一すべりギア8dのすべり部8eが、第二すべりギア9aのすべり部9bに対して摺動することにより、ギア9を回転させることなく回転を開始する。
ギア9aを回転させることなくギア8が所定量だけ回転すると、図4(b)に示すように、第一すべりギア8dの、ギア8の回転方向に関してすべり部8eの上流側の端部の隣にある歯が、すべり部9bの端部に係合し、ギア9の回転を開始させる。これにより、第一すべりギア8dの歯に第二すべりギア9aの歯が噛み、第二すべりギア9aと第一すべりギア8dとが噛み合ってギア9が回転する。ギア9が回転を開始したことで、切換ギア5が回転を開始し、切換カム4へ切換ギア5を介して駆動力を伝達して回転を開始させる。
なお、ギア8がねじりバネ11の弾性力のみによって回転している間は、ギア8のすべり部8eがギア9のすべり部9bに対して摺動しながら回転し、ギア9は回転しない。ギア9が回転を開始するタイミングは、欠歯ギア8bがギア7と噛むタイミングよりも後であり、ギア8が既にギア7からの駆動力を受けて回転している期間内である。従って、ギア9から切換カム4へ駆動力を伝達して回転させている時、欠歯ギア8bとギア7とが噛み合いモータMからの駆動力がギア9へ伝達されていることになる。
その後、図5(a)、(b)に示すように、ギア8がギア7から駆動力を伝達されて回転している間に、ソレノイド10への通電を止める。これにより、ソレノイド10の係止爪10aが戻しバネ10bの付勢力によって、ギア8に向かって移動され、係止部8aを係止可能な位置に配置される。
その後、図6(b)に示すように、ギア8の回転によって第一すべりギア8dと第二すべりギア9aの噛合いが終わると、すべり部8eとすべり部9bとが互いに対向する。このため、ギア9は、ギア8からの駆動力が伝達されず、回転が停止し、再びホームポジションに配置される。このように、ギア9はギア8によって1回転させられて回転を停止する。このようなギア9の停止により、ギア9以降の駆動列へ駆動力が伝達されなくなり、切換ギア5、切換カム4も停止する。このとき、図6(a)に示すように、まだ欠歯ギア8bとギア7とが噛合っており、ギア8は回転している。
そして、ギア8の回転によって、カム部8fが、ねじりバネ11の可動腕11bを、固定腕11aに近づくよう、弾性力に抗して押圧し移動させる。つまり、カム部8fを回転させて、ねじりバネ11を縮ませて弾性力を増加(チャージ)させる。この時のカム部8fは、ねじりバネ11の可動腕11bを固定腕11aに近づくよう押圧する押圧面として機能する。
その後、ギア8が回転していくと、図7(a)に示すように、欠歯部8cがギア7に対向し、欠歯ギア8bがギア7に噛み合えず、ギア8はギア7からの駆動力を受けることができなくなる。この時、欠歯部8cが完全にギア7と対向する位置へ移動する前に止まってしまうと、回転するギア7と欠歯ギア8bの歯先とのわずかな衝突により音が出たりする虞がある。このようなことが起こらないよう、ギア7からの駆動力に頼らずギア8を更に回転さる。具体的には、ねじりバネ11の弾性力によりカム部8fを押圧することでギア8を回転させることで、欠歯部8cを完全にギア7と対向させ、ギア8の回転方向に関して、ギア7から欠歯ギア8bの歯を十分に退避させる。この時のカム部8fは、ねじりバネ11の可動腕11bに押圧される被押圧面として機能する。ギア8は、ねじりバネ11の弾性力により、係止部8aがソレノイド10の係止爪10aに係止されるまで回転する。係止部8aが係止爪10aに係止されると、図3(a)に示すように、ギア8は停止し、ホームポジションに位置する。
図7(b)に示すように、ギア8がねじりバネ11の弾性力のみによってホームポジションまで回転させられている間、ギア8は、すべり部8eをすべり部9bに対して摺動させ、ギア9を回転させることなくホームポジションまで回転し停止する。これは、欠歯ギア8bがギア7に噛み合わなくなるタイミングよりも前に、ギア8のすべり部8eとギア9のすべり部9bとが互いに対向し、ギア8の駆動力がギア9に伝達されなくなるからである。
その後、再びソレノイド10に通電して係止爪10aがギア8の係止部8aの係止を解除すると、上述した間欠駆動伝達動作を実行される。
このように、ギア8がホームポジションにある時に、所定のタイミングでソレノイド10に通電することによって、第1クラッチ装置B1により、駆動力を伝達して切換ギア5を1回転させ、切換カム4を1/2回転させることができる。
このように本実施形態によれば、第1クラッチ装置B1は、ギア8がギア7から駆動力を得られず、ねじりバネ11の弾性力のみによって回転させられている間、ギア8はギア9を回転させることなく回転可能な状態となっている。つまり、下記の間、ギア8はねじりバネ11の弾性力のみによって回転させられる。それは、係止爪10aと係止部8aの係止を解除してから欠歯ギア8bがギア7と噛み合うまでの間、及び、欠歯ギア8bとギア7との噛合いが終わってから係止部8aが係止爪10aに係止されるまでの間である。そして、この間、ギア8とギア9との間ではすべり部8eとすべり部9bが対向した状態となっており、ギア8はギア9及びそれ以降の駆動列に駆動力を伝達して回転させることなく回転可能となっている。このため、ギア8がギア7から駆動力を得られない時にギア8を回転させるための手段である、ねじりバネ11の弾性力は、ギア8単体の回転抵抗力を上回る程度の力で良い。
特許文献1の従来構成では、従動回転体が弾性部材の弾性力によって回転する間、従動回転体から被駆動部材までの全ての部材が常に回転する。一方で、本実施形態は、従動回転体(ギア8)が弾性部材(ねじりバネ11)の弾性力によって回転する間、第1回転体(第一すべりギア8d)は第2回転体(第二すべりギア9a)を回転させることなく回転する。このため、本実施形態の構成であれば、従動回転体を回転させる弾性部材の弾性力を従来構成と比べて小さくすることができる。
その結果、弾性部材は小さく安価なものを使用でき、その分装置の大型化、コストアップを避けることができる。また、従動回転体自体、従動回転体を係止する係止爪、弾性部材を支持する部分も、大きな弾性力に耐えられるだけの材質、形状にする必要がなく、その分装置の大型化、コストアップを避けることができる。
また、弾性部材が従動回転体を押圧する際に弾性部材が従動回転体に衝突することで発生する音や、弾性部材によって回転させられた従動回転体が係止爪に衝突することで発生する音を、弾性力が小さい分、小さくすることができる。
また、弾性部材の弾性力に抗して装置を組み立てる構成であれば、弾性力が小さい分、組み立て性や作業性が損なわれにくい。
また、駆動回転体と従動回転体とが噛み合った状態で従動回転体を回転させる際に弾性部材の押圧力が従動回転体の回転抵抗となる。しかしながら、弾性力が小さい分、弾性部材の押圧力による回転抵抗は小さくなるため、この分従動回転体を回転させる駆動源としてのモータMに必要とされる駆動力を下げることができる。従って、低出力の安価で小型な駆動源を用いることができる。
また、ギア9がホームポジションにあり、ギア8がねじりバネ11の弾性力によって回転する間、第一すべりギア8dから第二すべりギア9aへはモータMからの駆動力が伝達されない。しかし、すべり部8eとすべり部9bとが互いに沿う形状となっており、第二すべりギア9aの回転が規制されている。このため、第二すべりギア9aから切換カム4までの駆動列が外力等によって回転させられそうになっても回転することが規制される。
[別構成]
なお、本実施形態で説明した構成は、以下のように変形可能である。
ギア8のすべり部8eとギア9のすべり部9bとが対向した状態で第二すべりギア9aの回転が所定量規制されれば、すべり部8eとすべり部9bの円弧面同士の間に隙間があってもよい。
また、装置構成上、ギア9がホームポジションにある時、ギア9の回転を規制することが不要である場合は、単に、すべり部8eとすべり部9bとが対向した状態で、第一すべりギア8dが第二すべりギア9aを回転させることなく回転可能な構成であれば良い。
また、本実施形態では、欠歯ギア8bと第一すべりギア8dとが一体成型され同軸で回転する構成だったが、別々の軸で回転する構成であってもよい。つまり、第1すべりギア8dが、モータMから切換カム4までの駆動列で欠歯ギア8bよりも下流にあればよい。同様に、切換ギア5も第二すべりギア9aと同軸である必要はなく、モータMから切換カム4までの駆動列で第二すべりギア9aより下流にあればよい。
また、本実施形態では、ギア同士の噛み合いで駆動力を伝達する構成だが、回転して駆動力を伝達する構成であれば摩擦車等を使用してもよい。
また、本実施形態の第1クラッチ装置B1は、二次転写ローラ101の当接離間機構を駆動する為に用いられているが、これ以外の機構にも適用可能である。例えば、給紙ローラ29の間欠回転機構や、加圧ローラ27と定着ローラ26間の圧解除機構にも適用可能である。また、複数の感光ドラムを有するインラインの画像形成装置であれば、一次転写ローラの当接離間機構、現像ローラの当接離間機構にも適用可能である。更に、駆動源からの駆動力の伝達のON/OFFを切り換える機構、駆動源から感光ドラムへの駆動力の伝達のON/OFFを切り換える機構にも適用可能である。
<第2実施形態>
[第2クラッチ装置B2]
次に、本発明の第2実施形態の駆動伝達装置としての第2クラッチ装置B2について、図8、図9、図10を用いて説明する。
図8は第二実施形態における第2クラッチ装置B2の斜視図である。図8(b)は、図1の切換ギア5と対向する側から見た第2クラッチ装置B2の斜視図であり、図8(a)は、図8(b) とは反対方向から見たクラッチ装置の斜視図である。図9は、第2クラッチ装置B2の組み立て前の斜視図である。図10は、ギア12とギア13の組み立てを説明する斜視図であり、(a)はギア13側から見た図、(b)はギア12側から見た図である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明は省略する。
第2クラッチ装置B2は第1実施形態の第1クラッチ装置B1同様にモータMから切換ギア5へ駆動力を伝達する。第2クラッチ装置B2と第1クラッチ装置B1との違いは、第2クラッチ装置B2が、第1クラッチ装置B1のギア8に相当するギア13に加え、ホームポジションにあるギア13がギア7と噛み合えるようにギア13を回転させる為のギア12を備えることである。
まず、第2クラッチ装置B2の構成について説明する。なお、ギア7、ギア9については第1クラッチ装置B1と同様のため説明は省略する。
ギア12は、ギア7と噛合するトリガギア12bと、ソレノイド10の係止爪10aが係止して回転が規制される係止部12aと、トリガバネ14が配設されるボス12dを一体的に備えている。トリガギア12bの一部にギア7と噛合しない欠歯部12cが設けられている。
ギア13は、ギア7と噛合可能な欠歯ギア13aと、ギア9と噛合する第一すべりギア13cと、と、ねじりバネ11が当接してギア13に付勢力を与え回転させるカム部13eと、トリガバネ13が配設されるボス13fと、回転軸部13gを一体的に備える。欠歯ギア13aは一部にギア7と噛合しない欠歯部13bが設けられている。第一すべりギア13cは、一部に第一すべりギア8dのピッチ円の半径と同じ半径の円弧面である凸形状のピッチ円直径からなるすべり部13dを備える。また、第一すべりギア13cの歯車は、26歯相当の歯数直径を有し、第一すべりギア13cを形成する有歯部は、20歯で構成されている。
ソレノイド10の係止爪10aは、ギア12の係止部12aを係止してギア12の回転を規制することができる。
トリガバネ14は、一端をギア12のボス12dに固定され、他端をギア13のボス13fに固定されており、ギア13に対してギア12を引き寄せる方向に付勢している。また、ソレノイド10に通電して係止爪10aがギア12の係止部12aの係止を解除すると、トリガバネ14はギア12に起回転力を与え、トリガギア12bとギア7が噛合するよう構成されている。
ねじりバネ11は、固定腕11a側が固定され、可動腕11b側がギア13のカム部13eに当接しており、ギア13の回転軸部13g中心方向へ付勢している。
次に、ギア12とギア13の配設について説明する。図10(a)、図10(b)に示すように、ギア12は、軸受け部12eと複数の溝部12fを有しており、軸受け部12eはギア13の回転軸部13gに収納される。その際、ギア13に備わる複数のキー部13hは、溝部12fに収納される。キー部13hが溝部12fに収納された状態においては、キー部13hと溝部12fの間には遊びがあるように構成されており、ギア12は、ギア13に対し回転軸部13gを中心に遊びの量だけ回転することができる。
[第2クラッチ装置B2の動作]
次に、第二実施形態におけるクラッチ装置の駆動伝達動作について、図11〜図16を用いて説明する。図11〜図16の(a)は第2クラッチ装置B2を表側(切換ギア5側)から見た図、(b)は第2クラッチ装置B2を表側(切換ギア5側)から見た、ギア12の溝部12fとギア13のキー部13hとの遊び量を示す断面図、(c)は第1クラッチ装置B1を裏側(切換ギア5側と反対側)から見た図である。図11は、第2クラッチ装置B2の待機状態を示す。図12は、第2クラッチ装置B2のギア12の回転開始時を示す。図13は、第2クラッチ装置B2の駆動伝達開始時を示す。図14は、第2クラッチ装置B2の駆動伝達中の説明図ある。図15は、第2クラッチ装置B2の駆動伝達終了時を示す。図16は、ギア13がホームポジションに到達する直前を示す。
第2クラッチ装置B2の待機状態では、図11(b)に示すように、可動腕11bはカム部13eの平面部に当接して、ギア13の回転軸部13g中心方向へ付勢している。この状態においては、ギア13はホームポジションにあり、欠歯部13bがギア7と対向するため、ギア7から駆動力はギア13に伝達されない。また、溝部12fとキー部13hの間には遊びがある状態にある。
また図11(a)に示すように、ギア12はトリガバネ14によって時計回りに回転するよう付勢されているが、係止爪10aに係止部12aを係止されて停止している。この状態においては、欠歯部12cがギア7に対向したホームポジションにあり、ギア7の駆動力はギア12に伝達されない。
また図11(c)に示すように、ギア13のすべり部13dとギア9のすべり部9bが当接している。この状態においては、ギア9は回転が規制されるため、駆動力の出力先である回転軸9dに出力先から回転トルクを受けても回転することはできない。この時、ギア9はホームポジションに位置する。
次に、第2クラッチ装置B2による駆動伝達を行う為には、まずギア12を回転させる。このため、図12(a)に示すように、ソレノイド10に通電し係止爪10aをギア12から退避させ、係止爪10aによる係止部12aの係止を解除する。すると、トリガバネ14の弾性力によってギア12のボス12dがギア13のボス13fに近づく方向に移動させられ、ギア12が時計回りに回転を開始する。この時ギア13は、カム部13eがねじりバネ11によって押圧されることにより回転が規制されている為、トリガバネ14の弾性力を受けも回転しない。ギア12は所定量回転すると、トリガギア12bとギア7とが噛合い、ギア12がギア7から駆動力を受けて回転する。
また、図12(b)に示すように、トリガバネによってギア12が回転する際、ギア12の回転により溝部12fとキー部13hの間の遊びが無くなるまで、ギア13はねじりバネ11の押圧力よって待機位置に保持される。従って、図12(c)に示すように、ギア13が停止している間は、図11(c)と同様に、ギア13のすべり部13dとギア9のすべり部9bが当接しており、ギア9は回転することなくホームポジションに停止している。
図13(a)に示すように、トリガギア12bとギア7とが噛合い、ギア12がギア7から駆動力を受けて回転している時に、図13(b)に示すように、溝部12fとキー部13hの間の遊びが無くなり、溝部12fの縁部分がキー部13hを押圧する。これによりギア13が回転を開始する。その後、ギア13の欠歯ギア13aとギア7とが噛合い、ギア7からギア13に駆動力が伝達される。
なお、係止部12aの係止を解除してギア12が回転した後は、図13(a)に示すようにソレノイド10への通電を止める。このため、係止爪10aは、戻しバネ10bによってギア12に近づく方向へ移動し、係止爪10aが係止部12aを係止可能な位置に待機させる。
また、ギア13が回転し始めると、ギア13は、第一すべりギア13cのすべり部13dが、第二すべりギア9aのすべり部9bに対して摺動することにより、ギア9を回転させることなく回転を開始する。
ギア9aを回転させることなくギア13が所定量だけ回転すると、図13(c)に示すように、第一すべりギア13cの、ギア13の回転方向に関してすべり部13dの上流側の端部の隣にある歯が、すべり部9bの端部に係合し、ギア9の回転を開始させる。これにより、第一すべりギア13cの歯に第二すべりギア9aの歯を噛み、第二すべりギア9aと第一すべりギア13cとが噛み合ってギア9が回転する。
ギア9が回転を開始したことで、切換ギア5が回転を開始し、切換カム4へ切換ギア5を介して駆動力を伝達して回転を開始させる。
その後、図14(a)に示すように、ギア12のトリガギア12bとギア7が噛合ってギア12は回転し、図14(b)に示すように、ギア13の欠歯ギア13aとギア7とが噛合ってギア13は回転する。また、図14(c)に示すように、ギア9の第二すべりギア9aは、ギア13の第一すべりギア13cと噛合って回転しており、これにより、切換ギア5が回転し、切換カム4が回転する。このように、ギア9から切換カム4へ駆動力を伝達して回転させている時、ギア13とギア7とが噛み合っており、モータMからの駆動力がギア9へ伝達されていることになる。
ギア12が1回転する直前に、図15(a)に示すように、トリガギア12bの欠歯部12cがギア7と対向し、トリガギア12bがギア7と噛み合わなくなるため、ギア12はギア7から駆動力を受けられなくなる。この時、図15(b)も示すように、ギア13はギア7と噛み合って回転しているので、ギア13のボス13fが自然長のトリガバネ14を介してボス12d押圧することでギア12が回転する。そして、ギア12が1回転した所で、係止部12aが係止爪10aに突き当たり係止されることで、ギア12はホームポジションで停止する。
また、図15(b)に示すように、ギア13がギア7と噛み合って回転している間にカム部13eでねじりバネ11の弾性力に抗して可動腕11bを押圧し、ねじりバネ11を縮ませて弾性力をチャージする。
なお、係止爪10aに係止されてギア12が停止した時点で、溝部12fとキー部13hの間には再び遊びがある状態であるので、ギア13はギア12が停止した状態で所定量回転可能である。
また、図15(c)に示すように、ギア13がギア7と噛み合って回転している間に、ギア13の回転によって第一すべりギア13cdと第二すべりギア9aの噛合いが終わり、すべり部13cとすべり部9bとが互いに対向する。このため、ギア9は、ギア13からの駆動力が伝達されず、回転が停止し、再びホームポジションに配置される。このように、ギア9はギア13によって1回転させられて回転を停止する。このようなギア9の停止により、ギア9以降の駆動列へ駆動力が伝達されなくなり、切換ギア5、切換カム4も停止する。
その後、ギア13はギア7から駆動力を受けて回転していく。この時、ギア12が停止しているので、キー部13hが溝部12f内を移動する。やがて、図16(b)に示すように、欠歯部13bがギア7に対向し、欠歯ギア13aがギア7に噛み合えず、ギア13はギア7からの駆動力を受けることができなくなる。この時、欠歯部13bが完全にギア7と対向する位置へ移動する前に止まってしまうと、回転するギア7と欠歯ギア13aの歯先とのわずかな衝突により音が出たりする虞がある。このようなことが起こらないよう、ギア7からの駆動力に頼らずギア13を更に回転さる。具体的には、ねじりバネ11の弾性力によりカム部13eを押圧することでギア13を回転させることで、欠歯部13bを完全にギア7と対向させ、ギア13の回転方向に関して、ギア7から欠歯ギア13bの歯を十分に退避させる。ギア13は、ねじりバネ11の弾性力により可動腕11bによるカム部13eの押圧でギア13が回転しなくなる位置まで回転して停止し、図11(b)に示すホームポジションに位置した状態となる。ねじりバネ11の弾性力により可動腕11bによるカム部13eの押圧でギア13が回転しなくなる位置とは、可動腕11bがカム部13eの平面部に沿って当接することで、可動腕11bの押圧力がギア13の回転モーメントとして作用しない位置である。
また、ギア12の回転が停止した状態でギア13が回転していく(キー部13hが溝部12f内を移動する)間、ギア13のボス13fがギア12のボス12dから離れていく為、トリガバネ14は伸びていき弾性力がチャージされる。従って、図12で示したように、係止爪10aによる係止部12aの係止を解除した際に、ギア12を回転させることができる。
また、図16(c)に示すように、ギア13がねじりバネ11の弾性力のみによってホームポジションまで回転させられている間、ギア13は、すべり部13dすべり部9bに対して摺動させ、ギア9を回転させることなくホームポジションまで回転し停止する。これは、欠歯ギア13aがギア7に噛み合わなくなるタイミングよりも前に、ギア13のすべり部13dとギア9のすべり部9bとが互いに対向し、ギア13の駆動力がギア9に伝達されなくなるからである。
このように本実施形態によれば、第2クラッチ装置B2は、ギア13がギア7から駆動力を得られず、ねじりバネ11の弾性力のみによって回転させられている間、ギア13はギア9を回転させることなく回転可能な状態となっている。つまり、欠歯ギア13aとギア7との噛合いが終わってから、ギア13が停止するまでの間、ギア13はねじりバネ11の弾性力のみによって回転させられる。そして、この間、ギア13とギア9との間ではすべり部13dとすべり部9bが対向した状態となっており、ギア13は、ギア9及びそれ以降の駆動列に駆動力を伝達して回転させることなく回転可能となっている。
このため、ギア13がギア7から駆動力を得られない時にギア13を回転させるねじりバネ11の弾性力は、摩擦力等のギア13単体の回転抵抗力と、トリガバネ14の弾性力に抗してギア13を所定量回転させる力との合計を上回る程度の力で良い。従って、特許文献1等に示した従来構成と比べ、ねじりバネ11の弾性力を小さくすることが可能となり、第1実施形態と同様に、装置の大型化、コストアップを避けることができる。また、弾性部材が従動回転体を押圧する際に弾性部材が従動回転体に衝突することで発生する音や、弾性部材によって回転させられた従動回転体が係止爪に衝突することで発生する音を、小さくすることができる。
また、組み立て性や作業性が損なわれにくく、駆動源(モータM)に必要とされる駆動力を下げることができるため、低出力の安価で小型の駆動源を用いることができる。
また、ギア9がホームポジションにあり、ギア13がねじりバネ11の弾性力によって回転する間、第二すべりギア9aから切換カム4までの駆動列が外力等によって回転させられそうになっても回転することが規制される。
なお、上述した本実施形態の構成は、第1実施形態で説明したものと同様の別構成に変形可能である。
<第3実施形態>
[第3クラッチ装置B3]
次に、本発明の第3実施形態の駆動伝達装置としての第3クラッチ装置B3について、図18、図19、図20を用いて説明する。なお、前述した第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明は省略する。図18は第3クラッチ装置B3の概略を説明する図である。第3クラッチ装置B3は、モータMから駆動力が伝達される駆動列中に設けられ、第1クラッチ部CL1と、第1クラッチ部CL1から駆動力が伝達され、切換ギア5へ駆動力を伝達する第2クラッチ部CL2と、を備える。
第2クラッチ部CL2の構成は、第1実施形態の第一すべりギア8dとギア9と同様の構成である。
第1クラッチ部CL1は、駆動伝達爪(駆動回転体)705が一体的に形成された入力ギア701、出力ギア(従動回転体)702、押圧レバー703、ソレノイドSLを有する。入力ギア701は、モータMから駆動力を伝達されて回転するギア707によりに回転されられる。また、出力ギア702から、ギア708、及び、不図示のアイドラギアを介して、第2クラッチ部CL2の第1すべりギア8dへ駆動力が伝達され、第1すべりギア8dは出力ギア702と同期して回転する。出力ギア702と第1すべりギア8dのギア比は1:1である。
入力ギア701及び出力ギア702は共に回転中心709回りに同軸で回転する。出力ギア702は、駆動伝達爪705と係合可能な駆動伝達レバー(係合部材)704を保持する。出力ギア702に保持された駆動伝達レバー704は、回転中心709とは異なる軸702a回りに揺動し、駆動伝達爪705と係合する位置と、駆動伝達爪705から退避して係合しない位置との間を移動可能である。出力ギア702の外周には、カム面706aを備えるカム部706か一体的に形成されている。バネ711により引っ張られる押圧レバー(押圧部材)703がこのカム面706aを押圧することで、出力ギア702に回転力を与える構成となっている。カム部は出力ギア702と一体的に回転可能である。
[第3クラッチ装置B3の動作]
次に、第3クラッチ装置B3の駆動伝達動作について、回転中心709の軸方向から駆動伝達装置を見た図である図19〜図20を用いて説明する。
第3クラッチ装置B3の待機状態では、第1クラッチ部CL1は、図19(a)に示すように、ソレノイドSLの通電が解除されており、駆動伝達レバー704を係止する係止部材としてのフラッパ207が駆動伝達レバー704を係止している。この時、駆動伝達レバー704は、駆動伝達爪705と駆動伝達レバー704との係合が解除された係合解除位置にある。このため、入力ギア701から出力ギア702へ駆動は伝達されず、出力ギア702はホームポジションで停止しており、入力ギア701及びギア707等の駆動伝達方向上流側のギアのみが回転している。なお、入力ギア701は矢印C方向に回転する。
この時、第2クラッチ部CL2は、第1すべりギア8dとギア9が、図3(b)に示したのと同様の状態で停止している。
次に、第3クラッチ装置B3の駆動伝達開始について説明する。第1クラッチ部CL1は、ソレノイドSLが通電され、フラッパ207が駆動伝達レバー704から退避して駆動伝達レバー704との係止を解除する。すると、出力ギア702と駆動伝達レバー704の間に設けられたバネ710が駆動伝達レバー704を押圧して矢印D1方向に回動させ、駆動伝達レバー704が係合位置へ移動し駆動伝達爪705と係合する。この係合によって、図19(b)に示すように、駆動伝達レバー704を介して入力ギア701と出力ギア702とが結合し一体的に矢印C方向に回転を開始し、出力ギア704から駆動出力ギア708へ駆動力を伝達する。なお、バネ710が駆動伝達レバー704を押圧する理由については後に説明する。
この時、第2クラッチ部CL2は、第1すべりギア8dとギア9が、図4(b)に示したのと同様の状態で停止している。
その後、第1クラッチ部CL1は、入力ギア701と出力ギア702とが結合し一体的に矢印C方向に回転する。この間に、ソレノイドSLの通電が解除され、退避していたフラッパ207が駆動伝達レバー704を係止可能な係止位置へ復帰した状態となる。
この時、第2クラッチ部CL2は、第1すべりギア8dとギア9が、図5(b)に示したのと同様の状態で互いに噛み合って回転する。
その後、出力ギア702がホームポジションから略一回転する直前に、図6(b)に示すように、第一すべりギア8dと第二すべりギア9aの噛合いが終わり、すべり部8eとすべり部9bとが互いに対向する。このため、ギア9は、第1すべりギア8dからの駆動力が伝達されず、回転が停止し、再びホームポジションに配置される。このように、ギア9は第1すべりギア8dによって1回転させられて回転を停止する。このようなギア9の停止により、ギア9以降の駆動列へ駆動力が伝達されなくなり、切換ギア5、切換カム4も停止する。この時、第1クラッチ部CL1ではまだ出力ギア702は入力ギア701と結合して一体的に回転している。
やがて、第1クラッチ部CL1において、図20(a)に示すように、出力ギア702と一体的に回転する駆動伝達レバー704が、フラッパ207と当接する位置に戻ってくると、フラッパ207により駆動伝達レバー704の一端部704aが係止される。駆動伝達レバー704は一端部704aがフラッパ207と当接した瞬間は、他端部704bが駆動伝達爪705に係合しているので、駆動伝達爪705に引っ張られる。このため、駆動伝達レバー704はフラッパ207と当接する一端部704aを支点として、他端部704bと駆動伝達爪705との係合が外れるまでD2方向に回動する。係合が外れると駆動伝達爪705から出力ギア702へ駆動力は伝達されなくなる。この時出力ギア702が停止すると、駆動伝達レバー704は駆動伝達爪705からそれ以上退避できず、出力ギア702が停止した時点で駆動伝達レバー704が駆動伝達爪705から十分距離を取って退避できていない状態となる虞がある。こうなると、回転し続ける駆動伝達爪705の先端に駆動伝達レバー704の他端部704bが衝突して音が発生し、騒音発生の原因となる。
そこで、本実施形態では、図20(b)に示すように、バネ711により付勢される押圧レバー703でカム部706のカム面706aを押圧して出力ギア702に回転力を付与して回転させる。そして、この出力ギア702の回転により、駆動伝達レバー704を駆動伝達爪705から十分距離を取って退避させる。なお、押圧レバー703は軸703aを中心に回動可能となっている。
詳しく説明すると、駆動伝達レバー704は一端部704aがフラッパ207と当接し、他端部704bが駆動伝達爪705に係合した状態で、押圧レバー703の先端がカム面706aの傾斜部Lを矢印E方向に押圧する。このようにカム面706aの傾斜部Lを押圧することで、出力ギア702に回転力を付与し、C方向に回転させる。出力ギア702の回転に伴い、軸702aも回転中心709回りにC方向に回転する。この回転力によって駆動伝達レバー704は一端部704aを支点としてD2方向に回動させられ、他端部704bと駆動伝達爪705との係合が外れた後も更にD2方向に回動させられる。この為、駆動伝達レバー704の他端部704bを駆動伝達爪705から十分な距離をとって退避させることができる。
なお、駆動伝達レバー704の他端部704bを駆動伝達爪705から十分な距離をとった適度な位置であるホームポジションで出力ギア702の回転が止まるようカム面706aの傾斜部Lの長さや傾きが設定されている。
このようにして、駆動伝達レバー704が駆動伝達爪705から退避するが、この駆動伝達レバー704の退避動作を出力ギア702から見ると、駆動伝達レバー704は他端部704bが駆動伝達爪705から離れるよう軸702a回りに回転している。この時、駆動伝達レバー704は回動しながらバネ710を押し縮める。従って、出力ギア702が停止する際に、バネ710は押し縮められた状態となり、フラッパ207が駆動伝達レバー704の係止を解除すると、上述したようにバネ710が開放され駆動伝達レバー704を押圧して回動させる。
このように、第1クラッチ部CL1において、バネ711の弾性力により押圧レバー703でカム部706を押圧することにより、出力ギア702をホームポジションまで回転させている間、第2クラッチ部CL2は、図7(b)に示したのと同様の状態である。即ち、第1すべりギア8dがギア9を回転させることなく回転する。これは、駆動伝達レバー704が駆動伝達爪705から退避するタイミングよりも前に、第1すべりギア8dのすべり部8eとギア9のすべり部9bとが互いに対向し、第1すべりギア8dの駆動力がギア9に伝達されなくなるからである。
このように本実施形態では、第1クラッチ部CL1で、出力ギア702が、駆動伝達爪705から駆動力を得られず、バネ711の弾性力により押圧レバー703でカム部706を押圧することにより回転させられている間、第2クラッチ部CL2では、第1すべりギア8dはギア9を回転させることなく回転可能である。つまり、出力ギア702の駆動伝達レバー704と駆動伝達爪705との係合が解除されてから、出力ギア702が停止するまでの間、出力ギア702はバネ711の弾性力のみによって回転させられる。そして、この間、第1すべりギア8dとギア9との間ではすべり部8eとすべり部9bが対向した状態となっており、第1すべりギア8dは、ギア9及びそれ以降の駆動列に駆動力を伝達して回転させることなく回転可能となっている。
このため、出力ギア702が駆動伝達爪705から駆動力を得られない時に出力ギア702を回転させるバネ711の弾性力は、摩擦力等の出力ギア702から第1すべりギア8dまでの駆動列の回転抵抗力を上回る程度の力で良い。従って、バネ711の弾性力を小さくすることが可能となり、第1実施形態と同様に、装置の大型化、コストアップを避けることができる。また、弾性部材が従動回転体を押圧する際に弾性部材が従動回転体に衝突することで発生する音や、弾性部材によって回転させられた従動回転体が係止爪に衝突することで発生する音を、小さくすることができる。
また、組み立て性や作業性が損なわれにくく、駆動源(モータM)に必要とされる駆動力を下げることができるため、低出力の安価で小型の駆動源を用いることができる。
また、ギア9がホームポジションにあり、出力ギア702がバネ711の弾性力によって回転する間、第二すべりギア9aから切換カム4までの駆動列が外力等によって回転させられそうになっても回転することが規制される。
なお、上述した本実施形態の構成は、第1実施形態で説明したものと同様の別構成に変形可能である。
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態の駆動伝達装置DR及びそれを備える画像形成装置200について説明する。
[画像形成装置]
まず、図38を用いて本実施形態の画像形成装置の概略構成と一連の画像形成動作について説明する。
図38は、4色(イエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックBk)の画像を形成する画像形成部を各々備えたフルカラーレーザビームプリンタ200(以下、「画像形成装置200」と称す)の全体構成を示す概略断面図である。
図38に示すように、画像形成装置200は、水平方向に並設された4個のカートリッジ201(201Y,201M,201C,201B)を備えている。カートリッジ201は、像担持体としての感光ドラム202(202Y,202M,202C,202B)と、感光ドラム202の周囲には感光ドラム202表面を均一に帯電する帯電ローラ203(203Y,203M,203C,203B)と、感光ドラム2にトナーを付着させてトナー像として現像する現像部材としての現像ローラ204(204Y,204M,204C,204B)が一体的に備わっている。また、カートリッジ201内部には、所定色のトナー(図中不示)が収納されており、供給ローラ205(205Y,205M,205C,205B)の回転によって現像ローラ204の表面に供給される。
ベルト206は無端ベルト状で、駆動ローラ206aと従動ローラ206bとテンションローラ206cに掛け回されており、その表面にトナー像を担持可能な中間転写体としての像担持体である。また、ベルト206は駆動ローラ206aが反時計方向に回転することにより回転駆動し、ベルト206の表面を移動させる。
ベルト206の周囲には、感光ドラム202に対向した位置に、感光ドラム202表面のトナー像をベルト206に転写する4個の一次転写ローラ206dと、ベルト206表面に残留した転写残トナーを除去するクリーニング装置227が配設されている。
記録材Sへの画像形成動作について説明する。画像形成装置200は、給送ローラ208を反時計方向に回転させてカセット209内の記録材Sを1枚ずつ給送し、レジストレーションローラ210へ搬送する。記録材Sは、レジストレーションローラ210によってベルト206表面に形成するトナー画像の形成動作と同期して二次転写ローラ211に搬送される。
一方、記録材Sが給送される動作と同期して、感光ドラム202は時計方向に回転しながら帯電ローラ203により表面を均一に帯電される。更に、感光ドラム202は時計方向に回転しながら、画像信号に応じた光を照射するレーザスキャナ212(212Y,212M,212C,212B)により露光され、静電潜像が形成される。
感光ドラム202の静電潜像は現像ローラ204によって現像されてトナー像として可視化される。感光ドラム202はベルト206に接触しており、感光ドラム202表面のトナー像は一次転写ローラ206dによってベルト206に順次多重転写される。
その後、ベルト206に多重に現像されたトナー像は、駆動ローラ206a及び二次転写ローラ211までベルト206とともに移動した後、記録材S上に二次転写される。記録材Sに転写されたトナー像は、トナー定着手段である定着ローラ対213へ搬送され、定着ローラ対213のニップ部を通過する際に、トナー像が加熱加圧され記録材Sに定着する。そして、記録材Sは、排紙ローラ対214を介して画像形成装置200上部の排出トレイ215上へトナー像面を下向きにして排出され、画像形成動作が終了する。
以降の説明では、カートリッジ201Bの構成及びカートリッジ201Bへの駆動伝達構成について説明するが、他のカートリッジ201Y、201M、201Cについても同様である。
[カートリッジ駆動構成]
次に、図39を用いてカートリッジ201における感光ドラム202と、現像ローラ204の駆動方法について説明する。図39は、ブラックBkのカートリッジ201Bへの駆動伝達構成を示す図であり、斜視図で示したカートリッジ201B部分と概念図で示した駆動伝達装置DR部分を含む。
図39に示すように、カートリッジ201Bは、現像ローラ204Bを感光ドラム202Bに対して揺動自在に支持する支持軸216と、加圧バネ217と、リブ218を備えている。現像ローラ204Bは、支持軸216を回転中心にして加圧ばね218によって感光ドラム202Bに当接するよう付勢されている。カートリッジ201Bでは、画像形成動作時において現像ローラ204Bは感光ドラム202Bに当接しており、画像形成動作時以外では、離間している。現像ローラ204Bは加圧バネ217の付勢力により感光ドラム202Bに当接した状態が維持される。離間する際は、不図示の当接離間機構によって、リブ218を加圧バネ217の付勢力に対抗する方向へ押圧して移動させて固定することで、現像ローラ204Bを感光ドラム202から離間させた状態を保つ。
感光ドラム202Bと現像ローラ204Bの回転軸端部には、ドラムカップリング部材219Bと現像カップリング部材220Bが備わっており、その他のカートリッジ201Y,201M,201Cも上述したカートリッジ201Bと同じ様に構成されている。
カートリッジ201Bは、駆動源であるモータMBから駆動力を得ている。その他のカートリッジ201Y,201M,201Cにもそれぞれ対応するモータが設けられている。このモータMBから出力された回転力は、後述するドラム駆動軸D1と現像駆動軸D2とに分岐されており、ドラム駆動軸D1とドラムカップリング部材219Bが係合し、感光ドラム202Bを駆動する。また、現像駆動軸D2と現像カップリング部材220Bが係合して、現像ローラ204Bを駆動するよう構成されている。
モータMBから現像駆動軸D2への駆動伝達途中には、後述する第4クラッチ装置B4と第3クラッチ部CL3が配設されている。第4クラッチ装置B4を所定のタイミングで動作させることによって、第3クラッチ部CL3を駆動伝達状態(以下、ON状態と称する)と駆動切断状態(以下、OFF状態と称する)との切換えを行う。この駆動伝達状態、駆動切断状態の切換えにより、現像駆動軸D2の回転と停止を切り換える。第4クラッチ装置B4は、感光ドラム2に現像ローラ204Bが当接している際には、モータMBの駆動力を現像駆動軸D2へ伝達するよう第3クラッチ部CL3を動作させ、現像ローラ204Bを回転させる。また、感光ドラム202Bから現像ローラ204Bが離間している際には、現像駆動軸D2へのモータMBの駆動力が切断するよう第3クラッチ部CL3を動作させ、現像ローラ204Bは回転停止するよう構成されている。
[ドラムの駆動伝達]
モータMBから駆動軸D1と、駆動軸D2へ駆動力を伝達する構成について、図21と図22を用いて説明する。図21(a)と図21(b)は駆動伝達装置DRの斜視図であり、図21(a)は駆動伝達装置DRをカートリッジ201Bから見た図で、図21(b)は駆動伝達装置DRをカートリッジ201Bの反対側から見た図である。以降は、駆動伝達装置DRのカートリッジ201B側を「駆動伝達装置DRの表側」とし、カートリッジ201Bの反対側を「駆動伝達装置DRの裏側」とする。図22は、駆動伝達装置DRの組立て前の斜視図である。
駆動伝達装置DRは、駆動源であるモータMBと、ドラムギア21と、前述したドラム駆動軸D1を有しており、ドラム駆動軸D1は、ドラムギア21に同軸上で連結されている。モータ軸MBとドラムギア21は噛合っており、モータMBからの駆動は、モータ軸MB1からドラムギア21を介してドラム駆動軸D1を回転させる。これによって、ドラム駆動軸D1がドラムカップリング部材19Bと係合しモータMBが回転している際にはドラム202Bは常に回転する。
[現像ローラへの駆動伝達]
次に、モータMBから現像駆動軸D2へ駆動力を伝達する構成について説明する。駆動伝達装置DRは、ドラムギア21と噛合可能な第一アイドラギア22と、第一アイドラギア22と噛合可能なクラッチギア23を備えた第3クラッチ部CL3を有している。第3クラッチ部CL3は、前述した現像カップリング部材220Bと係合可能な駆動軸D2を備えている。これにより、モータMBからの駆動は、モータ軸MB1からドラムギア21を介して第一アイドラギア22とクラッチギア23を常に回転させる。
現像駆動軸D2が現像カップリング部材220Bと係合し、第3クラッチ部CL3がON状態であると、クラッチギア23の駆動力は現像駆動軸D2を回転させ現像カップリング部材220B及び、現像ローラ4Bを回転させる。一方、第3クラッチ部CL3がOFF状態にあると、現像駆動軸D2は回転せず、現像カップリング部材220B及び、現像ローラ4Bは回転しないように構成されている。
第3クラッチ部CL3のON状態とOFF状態とを切り換えは第4クラッチ装置B4によってスライド部材31を移動させることで行われる。駆動伝達装置DRの第一アイドラギア22の駆動下流には、第一アイドラギア22と噛合可能な第二アイドラギア24と、第二アイドラギア24と噛合可能な第三アイドラギア25と、第三アイドラギア25と噛合可能な第4クラッチ装置B4を有している。駆動回転体である第三アイドラギア25は、第二アイドラギア24と噛合するギア部25aと、第4クラッチ装置B4と噛合可能なギア部25bを備えており、モータMBが回転している際には常に回転する。第4クラッチ装置B4は、第一すべりギア29と噛合可能で、第三アイドラギア25と同軸上で回転可能な第二すべりギア30を有している。更に、第二すべりギア30の駆動下流には、第二すべりギア30の回転によってスライド動作するスライド部材31と、スライド部材31を付勢するスライドバネ32を備えている。スライドバネ32は不図示の固定部に固定された固定端32aと、スライド部材31の収納部31aに配設される動作端32bを備え、スライド部材31を、固定端32aから動作端32b方向に付勢する。第4クラッチ装置B4の第二すべりギア30が回転することでスライド部材31がスライド動作(往復移動)し、これによって第3クラッチ部CL3のON状態とOFF状態が交互に切り換わる。つまり第4クラッチ装置B4はスライド部材31を移動させる駆動列である。
[第3クラッチ部CL3の構成]
まず、第3クラッチ部CL3の構成を図23と図24を用いて説明する。図23は、第3クラッチ部CL3の構成を示す斜視図であり、図24は、第3クラッチ部CL3の組立て前の斜視図である。現像駆動軸D2には、現像カップリング部材220Bと係合する係合部D2aを複数備えており、平行ピン37は、現像駆動軸D2の穴D2bに配設される。駆動回転体である第一アイドラギア22と噛合するクラッチギア23は、現像駆動軸D2に対して回転可能且つ軸線方向の位置を決められている。クラッチギア23の内側は大きく肉抜きされており、中心近傍の摺動ボス23aの内周部は従動側の現像駆動軸D2に対する軸線方向の位置決め及び回転のための摺動面となっている。そして、摺動ボス23aの外周部は駆動係合部材33の軸線方向の位置決め及び回転のための摺動面となる。同じくクラッチギア23の内側には4ヶ所の回り止め23bがあり、駆動係合部材33の回り止めとなっている。
駆動係合部材33は、内周面がクラッチギア23の摺動ボス23aの外周部と嵌め合うことにより摺動可能に支持される。そして、外周部に設けられた回り止め33aがクラッチギア23の回り止め23bと噛合うことにより、クラッチギア23と一緒に回転する。また、駆動係合部材33には4ヶ所の突起33bがあり、これが従動係合部材34の突起34aと噛合うことで、従動係合部材34に回転力が伝達される。 駆動係合部材33の突起33bの突起34aと噛合う面は、回転により相手部品と食い込む方向に傾けて形成している。これにより、第3クラッチ部CL3をON状態にしても確実に噛合い、大きなトルクが加わっても歯飛びが生じない。また、駆動係合部材33の突起33b同士の間を緩やかな斜面33cでつなげることにより、回転中に第3クラッチ部CL3をOFF状態からON状態にするときでもスムーズに係合することができる。
駆動係合部材33の従動係合部材34側端面には、解除部材35と回転摺動する摺動部33dを有している。また、駆動係合部材33は弾性部材としてのコイルバネ36により常に従動係合部材34方向に付勢されている。従動係合部材34の内周面には、現像駆動軸D2が、溝34bには平行ピン37がそれぞれ嵌合している。また、従動係合部材34は4ヶ所の突起34aを備え、これが駆動係合部材33の突起33bと噛合うと回転力が伝達される。突起34aの駆動係合部材33の突起33bと噛合う面は、相手部品突起33bと同様に食い込む方向に傾けており、また、従動係合部材34の突起34a同士の間は緩やかな斜面34cでつないでいる。駆動係合部材33、従動係合部材34、コイルバネ36は、クラッチギア23内側に設けられている。このような構成により、スペースを有効に利用してコンパクトにできるとともに、歯面から伝えられた回転力をそのまま伝えるため、係合部材にねじれや倒れの力が発生せず部品強度を確保しやすく大トルクの伝達が可能となる。
解除部材35とレバー部材38、軸受39は、現像駆動軸D2と同軸上に設けられており、軸受39は、回転止め部39aが図不示の固定部材によって固定され回転を制限されている。解除部材35は、複数のガイド部35aを備えており、軸受39の穴部39bにガイド部35aが嵌め合うことで、現像駆動軸D2に対して回転を制限され且つ軸線方向に移動可能に設けられている。また、解除部材35は、駆動係合部材33の摺動部33dに当接して解除部材35を軸線方向に移動させる当接部35bと、レバー部材38によって押圧される押圧部35cを備えている。
レバー部材38は軸受39に対して回転可能に設けられ、スライド部材31に備わるスライド係合部31bと係合するレバー係合部38aと、解除部材35の押圧部35cに当接する押圧部38bを備えている。レバー部材38はスライド部材31がスライド動作することによって回動する。解除部材35の押圧部35cと、レバー部材38の押圧部38bは、それぞれ軸心に対して対称に複数個設けられている。
[第3クラッチ部CL3の動作説明]
第3クラッチ部CL3の動作について図25を用いて説明する。図25(a)は、第3クラッチ部CL3のON状態の説明図であり、図25(b)はOFF状態の説明図である。図25(a)に示すように、レバー部材38の押圧部38bと、解除部材35の押圧部35cとが当接しない状態においては、コイルバネ112の弾性力により解除部材35はクラッチギア23と反対方向に押圧される。これにより、駆動係合部材33が従動係合部材34に押圧されて噛合う状態(図不示)になる。従って、モータMBからの回転力は、クラッチギア23から現像駆動軸D2に伝達されるON状態になる。
一方、図25(b) に示すように、スライド部材31がスライドバネ32を圧縮する方向にスライドすると、レバー部材38が反時計方向に回動する。これにより、レバー部材38の押圧部38bが解除部材35の押圧部35cに当接した状態になり、解除部材35は現像駆動軸D2の軸線方向に押され移動する。これにより、解除部材35の当接部35bが駆動係合部材33の摺動部33dと当接して、コイルバネ36の付勢力に反して駆動係合部材33を従動係合部材34から引き離なす。従って、モータMBからの回転力は、クラッチギア23から現像駆動軸D2には伝達されないOFF状態になる。
ここで、レバー部材38を回動させる際の負荷抵抗は、コイルバネ36が最も縮んだOFF状態がコイルバネ36の弾性力の影響により最大である。一方で、ON状態においては、コイルバネ36の弾性力は駆動係合部材33を従動係合部材34に押圧するために使われるため、レバー部材38を回動させる際の負荷抵抗は、レバー部材38と軸受39との回転摺動負荷程度と少ない状態になる。そのため、スライド部材31をON状態の位置に戻すためのスライドバネ32の付勢力は、OFF状態のレバー部材38を動作させる際の負荷抵抗より大きい付勢力で構成される。
[第4クラッチ装置B4の構成]
次に、第4クラッチ装置B4の構成を図26(a)と図26(b)、図27(a)、図27(b)、図28(a)、図28(b)、図29(a)、図29(b)を用いて説明する。図26(a)は、第4クラッチ装置B4を駆動伝達装置DRの表側から見た説明図で、図26(b)は、第4クラッチ装置B4を駆動伝達装置DRの裏側から見た説明図である。図27(a)と図27(b)は、第4クラッチ装置B4の組立てを説明する斜視図であり、(a)はトリガギア側から見た図で、(b)は従動ギア側から見た図である。
第4クラッチ装置B4は、第三アイドラギア(駆動回転体)25のギア部25bと噛合可能な従動ギア40とトリガギア41を有しており、第一すべりギア29の回転軸29aの軸線上に配設される。
第4クラッチ装置B4の近傍には、第4クラッチ装置B4の動作を制御するソレノイド26と、バネ支持軸27と、ねじりバネ28(弾性部材)が配設されている。従動ギア(従動回転体)40は、二つの従動ギア部40aと二つの従動欠歯部40bとカム部40cとボス40dと摺動軸部40eと係合部40fとキー部40gとを一体的に備えている。二つの従動ギア部40aは第三アイドラギア25のギア部25bと噛合可能である。二つの従動欠歯部40bは、従動ギア部40aの一部に設けられたギア部25bと噛合しない部分である。カム部40cは、ねじりバネ28が当接して従動ギア40に付勢力を与え回転させる。ボス40dにはトリガバネ42が配設される。係合部40fは第一すべりギアと係合する。また、従動ギア部40aと従動欠歯部40bは、従動ギア40の回転軸中心に対してそれぞれ対象に設けられている。従動ギア部40aの歯車は、36歯相当の歯数直径を有し、従動ギア部40aを形成する有歯部は、それぞれ15歯で構成され、従動欠歯部40bは、それぞれ従動ギア部40aの3歯相当の大きさで構成されている。
トリガギア(別の従動回転体)41は、二つのトリガギア部41aと、二つのトリガ欠歯部41bと、二つの係止部41cと、収納部41dと、摺動面41eと、爪41fとを一体的に備えている。二つのトリガギア部41aは第三アイドラギア25のギア部25bと噛合可能である。二つのトリガ欠歯部41bはトリガギア部41aの一部に設けられたギア部25bと噛合しない部分である。二つの係止部41cはソレノイド26の係止爪26aに係止される。収納部41dにはトリガバネ42が収納される。摺動面41eは従動ギア40の摺動軸部40eによって回転支持される。爪41fは従動ギア40と軸方向の位置決めを行う。また、トリガギア部41aとトリガ欠歯部41bと、係止部41cは、トリガギア41の回転軸中心に対してそれぞれ対象に設けられている。トリガギア部41aの歯車は、36歯相当の歯数直径を有し、トリガギア部41aを形成する有歯部は、それぞれ15歯で構成され、トリガ欠歯部41bは、それぞれトリガギア部41aの3歯相当の大きさで構成されている。爪41fによってトリガギア41が従動ギア40に配設される際には、従動ギア40のキー部40gは、トリガギア41の収納部41dに収納される。キー部40gが収納部41dに収納された状態においては、キー部40gと収納部41dとの間には遊びがあるように構成されており、トリガギア41は従動ギア40に対し回転軸中心で遊びの量だけ回転することができる。
ソレノイド26は、係止爪26aと戻しバネ26bと、を備える。戻しバネ26bは係止爪26aをトリガギア41に向かう方向に付勢しており、ソレノイド26に通電しておらず、係止部41cが係止爪26aと対向する位置にある時、係止爪26aは係止部41cを係止してトリガギア41の回転を規制することができる。ソレノイド26に通電すると係止爪26aは戻しバネ26bの付勢力に抗してトリガギア41から退避し、それまで係止爪26aで係止部41cを係止していた場合、係止爪26aによるトリガギア41の係止部41cの係止を解除できる。
トリガバネ42は、一端を従動ギア40のボス40dに固定され、他端をトリガギア41の収納部41dに収納され、従動ギア40に対してトリガギアを回転方向で引き離す方向に付勢している。また、ソレノイド26に通電して係止爪26aがトリガギア41の係止部41cの係止を解除すると、トリガバネ42はトリガギア41に起回転力を与え、トリガギア部41aとギア部25bが噛合するよう構成されている。
ねじりバネ28は、不図示の固定部に固定された固定腕28aと、従動ギアのカム部に当接する可動腕28bと、を備え、バネ支持軸27によって保持されている。従動ギア40が所定の回転位相にある時、ねじりバネ28の弾性力によって従動ギア40のカム部40cを押圧することで、従動ギア40が回転するよう付勢する。従動ギア40の従動欠歯部40bが第三アイドラギア25のギア部25bと対向し、従動ギア40が第三アイドラギア25から十分な駆動力を得られない時でも、このねじりバネ28の押圧により従動ギア40を回転させることが可能となる。
第一すべりギア(第1回転体)29は、係合部29bと第一すべり部29dを備えている。係合部29bは従動ギア40の係合部40fと係合する。第一すべり部29dは、第一ギア部29c(第1回転体)と、ギア部が形成されておらず、第一ギア部29cのピッチ円の半径と同じ半径の円弧面である凸形状のピッチ円直径である。第一すべりギア29は、係合部29bと従動ギア40の係合部40fとで同軸上で連結されており、従動ギア40が第三アイドラギア25と噛合して回転すると一緒に回転する。また、第一すべりギア29の歯車は、16歯相当の歯数直径を有し、第一ギア部29cを形成する有歯部は、11歯で構成され、第一すべり部29dは第一ギア部29cの5歯相当の大きさで構成されている。
次に、トリガギア41と従動ギア40の配設について図28説明する。図28(a)は、トリガギア41の係止部41cを係止している状態図であり、図28(b)は、トリガギア41の係止部41cの係止を解除している状態図である。図28(a)に示すように、係止爪26aが、トリガギア41の係止部41cを係止している状態で、トリガギア41は回転を規制され、トリガギア部41aとトリガ欠歯部41bはそれぞれ従動ギア部40aと従動欠歯部40bと同じ位相になる。図28(b)に示すように、ソレノイド26に通電して係止爪26aが係止部41cの係止を解除すると、トリガギア41はトリガバネ42(図不示)の起回転力によって時計方向に回転する。本実施例においては、前述したキー部40gと収納部41dとの遊びの量として、トリガギア部41a の歯車が従動ギア部40aの歯車に対して3歯分回転するよう構成されている。
第二すべりギア30とスライド部材31について図29説明する。図29(a)は、第4クラッチ装置B4近傍を表側から見た図で、図29(b)は、第4クラッチ装置B4近傍を裏側から見た説明図である。なお、構成の説明を容易にするため必要でないものは図示していない。第二すべりギア(第2回転体)30は、第一すべりギア29の第一ギア部29cと噛合可能な3ヶ所の第二ギア部30a(第2回転体)と、ギア部が形成されておらず第一ギア部29cと噛合しない第二すべり部30bが3ヶ所設けられている。第二すべり部30bは、第二すべり部30bが第一すべり部29dに対向する位置にある時、第一すべりギア29の回転中心と同心の凹形状の円弧面であり、円弧面は、半径が第一ギア部29cのピッチ円半径と同じである。
第二ギア部30aと第二すべり部30bは、第二すべりギア30の回転中心に対してそれぞれ等しい位相で設けられている。第二すべりギア30の歯車は39歯相当の歯数直径を有し、第二ギア部30aを形成する有歯部は、10歯で構成され、第二すべり部30bは第二ギア部30aの3歯相当の大きさで構成されている。このように、第二ギア部30aの歯数(10歯)は第一ギア部29cの歯数(11歯)より1歯少ない。第一すべりギア29と第二すべりギア30は、凸形状の円弧面である第一すべり部29dと凹形状の円弧面である第二すべり部30bとが沿うように相対的な回転位相を合わせて組み立てられている。
第二すべり部30bに対して第一すべり部29dが摺動しやすいよう、第一すべりギア29と第二すべりギア30は摩擦係数が小さな材料で形成されている。また、摺動性を良くするために、必要に応じて第一すべり部30bと第二すべり部29dとの間にグリース等の潤滑剤を塗布してもよい。また、第二すべりギア30は、回転中心に対してそれぞれ等しい位相で3ヶ所のボス30cを備えており、第二すべりギア30が回転することでスライド部材31をスライド動作させる。スライド部材(被駆動部材)31は、第3クラッチ部CL3のレバー部材38と係合する係合部31bと、第二すべりギアの動作に当接する当接部31cを備えている。スライド部材31は、不図示のガイド部材によってガイドされ、スライド部材31の長手方向前後にスライド可能に配設された移動部材である。また、スライド部材31はスライドバネ32によって、当接部31cが第二すべりギア30のボス30cに当接する方向に付勢されている。当接部31cがボス30cに当接していない時は、この付勢力により、第3クラッチ部CL3をOFF状態からON状態となるよう付勢している。
[駆動伝達装置の動作説明]
次に、駆動伝達装置DRの動作について、図30〜図37を用いて説明する。図30〜図37の(a)は第4クラッチ装置B4近傍を表側から見た斜視図であり、(b)は第4クラッチ装置B4近傍を裏側から見た説明図である。図30は、第4クラッチ装置B4の第一待機状態を示す。図31は、第4クラッチ装置B4のトリガギアの回転開始時を示す。図32は、第4クラッチ装置B4の駆動伝達状態を示す。図33は、第4クラッチ装置B4の駆動伝達終了直前を示す。図34は、第4クラッチ装置B4の第二待機状態を示す。図35は、第4クラッチ装置B4の第二待機状態からの駆動伝達状態を示す。図36は、第4クラッチ装置B4の第二待機状態からの駆動伝達から駆動伝達終了状態を示す。図37は、第4クラッチ装置B4の第二待機状態からの駆動伝達から従動ギアがホームポジションに到達する直前を示す。また、図30〜図37における各構成部材の回転方向は、各構成部材の横に記載した円弧状の矢印の示す通りである。
第4クラッチ装置B4の第一待機状態では、図30(a)に示すように、可動腕28bはカム部40cの平面部に沿って当接して、従動ギア40の回転軸中心方向へ付勢している。この状態においては、可動腕28bの押圧力が従動ギア40の回転モーメントとして作用することなく従動ギア40はホームポジションにあり、従動欠歯部40bがギア部25bと対向するため、ギア部25bから従動ギア40に駆動力は伝達されない。また、第4クラッチ装置B4の第一待機状態においては、前述した図28(a)に示すように、トリガギア41はトリガバネ42によって時計回りに回転するよう付勢されているが、係止爪26aが係止部41cを係止していて停止している。このとき、トリガ欠歯部41bもギア部25bと対向したホームポジションにあり、ギア部25bの駆動力はトリガギア41に伝達されない。
スライド部材31はボス30cによってスライドバネ32を圧縮する方向にスライドされ第1位置で位置を固定されており、このスライド部材31の状態によって、レバー部材38を第3クラッチ部CL3がOFF状態になる位置に回動させている。また、図30(b)に示すように、第一すべり部29dと第二すべり部30bが当接している。この状態においては、第二すべりギア30は回転が規制されるため、スライドバネ32の付勢力によってスライド部材31から回転トルクを受けても回転することはできない。この状態が第二すべりギア30がそのホームポジションにある状態である。第3クラッチ部CL3が OFF状態にあり、第一すべり部29dと第二すべり部30bが当接している第二すべりギア30のホームポジション(停止位相)を、以降、第二すべりギア30のOFFホームホームポジション(第1停止位相)と称する。
次に、第4クラッチ装置B4による駆動伝達を行う為には、まずトリガギア41を回転させる。このため、図31(b)に示すように、ソレノイド26に通電し係止爪26aを係止部41cから退避させ、係止爪26aによる係止部41cの係止を解除する。すると、前述した図28(b)に示すように、トリガバネ42の弾性力によってトリガギア41が時計回りに回転を開始する。この時、従動ギア40はカム部40cが可動腕28bによって押圧されていることにより回転が規制されているため回転しない。
トリガギア41は所定量回転すると、図31(b)に示すように、トリガギア部41aとギア部25bとが噛合い、トリガギア41がギア部25bから駆動力を受けて回転する。 また、図28(b)に示すようにトリガギア41のトリガギア部41aが、従動ギア部40aの歯車に対して3歯分回転するまで従動ギア40は、可動腕28bの押圧力よってホームポジションに保持される。従って、従動ギア40が停止している間は第一すべりギア29と第二すべりギア30は回転しない。
第4クラッチ装置B4の駆動伝達状態では、図32(a)に示すように、トリガギア部41aが、従動ギア部40aの歯車に対して3歯分回転すると、従動ギア40が回転を開始する。その後、従動ギア部40aとギア部25bとが噛合い、ギア部25bから従動ギア40に駆動力が伝達される。また、従動ギア40が回転し始めると、第一すべりギア29は第二すべりギア30を回転させることなく、第一すべり部29dが第二すべり部30bに対して摺動しながら回転する。
第一すべりギア29が所定量だけ回転すると、図32(b)に示すように第一ギア部29cの第一すべりギア29の回転方向に関して、第一すべり部29dの下流側端部の隣にある歯が、第二すべり部30bの端部に係合し第二すべりギア30の回転を開始させる。これにより、第一ギア部29cと第二ギア部30aが噛み合って第二すべりギア30が反時計方向に回転する。このとき第二すべりギア30は、ボス30cと当接部31cが摺動しながら回転しており、スライド部材31はスライドしない。
なお、係止部41cの係止を解除して従動ギア40が回転した後は、ソレノイド26への通電を止める。このため、係止爪26aは戻しバネ26bによってトリガギア41に近づく方向へ移動し、係止爪26aが係止部41cを係止可能な位置に待機させる。また、従動ギア40がギア部25bと噛み合って回転している間に、カム部40cでねじりバネ28の弾性力に抗して可動腕28bを押圧し、ねじりバネ28を縮ませて弾性力をチャージする。
第4クラッチ装置B4の駆動伝達終了直前では、図33(b)に示すように、トリガギア41の係止部41cが係止爪26aに係止されてホームポジションで回転を停止する。また、第二すべりギア30が回転したことで、ボス30cが当接部31cから離間し、スライド部材31がスライドバネ32の付勢力によってスライドバネ32が伸長する方向へスライドし不図示の突当部に突き当たる。これによって、レバー部材38を第3クラッチ部CL3がON状態になる位置に移動させている。
従動ギア部40aは図33(b)に示すように、ギア部25bと1歯のみ噛合っており、ギア部25bとの噛合いが終わる直前状態にある。従動ギア部40aが更に回転すると、従動欠歯部40bがギア部25bと対向し、従動ギア部40aがギア部25bと噛み合えず、従動ギア40はギア部25bからの駆動力を受けることができなくなる。この時、従動欠歯部40bが完全にギア部25bと対向する位置へ移動する前に止まってしまうと、回転するギア部25bと従動ギア部40aの歯先とのわずかな衝突により音が出たりする虞がある。このようなことが起こらないよう、ギア部25bからの駆動力に頼らず従動ギア40を更に回転させる構成となっている。具体的には、ねじりバネ28の弾性力によりカム部40cを押圧することで従動ギア40を回転させることで、従動欠歯部40bを完全にギア部25bと対向させ、ギア部25bの回転方向に関して、ギア部25bから従動ギア部40aの歯を十分に退避させる。従動ギア40は、ねじりバネ28の弾性力により可動腕28bによるカム部40cの押圧で従動ギア40が回転しなくなる位置まで回転させる。これにより第4クラッチ装置B4は第二待機状態となる。
第4クラッチ装置B4の第二待機状態では、図34(a)に示すように、第一すべりギア29、従動ギア40、トリガギア41がそれぞれ、図30(a)の状態から180度回転してトリガギア41はホームポジションにある。従って、従動ギア40も従動欠歯部40bがギア部25bと対向するホームポジションにあり、ギア部25bから、トリガギア41と従動ギア40には駆動力は伝達されない。
次に、図34(b)に示すように、ボス30cはスライド部材31の当接部31cに当接する寸前にある。図33(b)の状態と同様にスライド部材31は、スライドバネ32の付勢力によって不図示の突当部に突き当たり、レバー部材38を第3クラッチ部CL3がON状態になる第2位置で位置が決まっている。また、第一ギア部29cと第二すべりギア30の第二ギア部30aは噛合った状態にある。第3クラッチ部CL3がON状態にあり、トリガギア41と従動ギア40がホームポジションにあり、第一ギア部29cと第二ギア部30aが噛合った第二すべりギア30の位相を、第二すべりギア30のONホームホームポジション(第2停止位相)と称す。
第4クラッチ装置B4の第二待機状態からの駆動伝達状態では、図35(a)に示すように、ソレノイド26に通電し係止爪26aを係止部41cから退避させ、係止爪26aによる係止部41cの係止を解除する。すると、図31(a)と同様に、まずトリガギア41が回転した後、従動ギア40が回転を開始する。従動ギア40の回転によって従動ギア40と一緒に第一すべりギア29が回転し、第二すべりギア30が回転する。また、従動ギア40がギア部25bと噛み合って回転している間に、カム部40cでねじりバネ28の弾性力に抗して可動腕28bを押圧し、ねじりバネ28を縮ませて弾性力をチャージする。
また、第二すべりギア30の回転によって、ボス30cがスライド部材31の当接部31cに当接し、スライド部材31をスライドバネ32の付勢力に抗してスライドバネ32が圧縮する方向にスライド動作させる。これによって、スライド部材31は第3クラッチ部CL3がON状態からOFF状態になる位置にレバー部材38を回動させる。
第4クラッチ装置B4の第二待機状態からの駆動伝達から駆動伝達終了状態では、図36(a)に示すように、従動ギア部40aとギア部25bは噛合っており、従動ギア40はギア部25bからの駆動力を受けて回転する。また、図36(b)に示すように、トリガギア41は係止爪26aが係止部41cを係止して回転を停止しており、トリガギア41はホームポジションにあり停止している。
第二すべりギア30は、第一ギア部29cと第二ギア部30aの噛合いが終わり、第一すべり部29dと第二すべり部30bとがお互いに対向するまで回転する。これによって、第二すべりギア30は、従動ギア40と一緒に回転する第一すべりギア29から駆動力が伝達されず、再び、OFFホームホームポジションに配置される。また、スライド部材31は、ボス30cによって第3クラッチ部CL3がOFF状態になる位置にレバー部材38を移動させられ固定される。
第4クラッチ装置B4の第二待機状態からの駆動伝達から駆動伝達が終了し従動ギア40がホームポジションに到達する直前の状態は、図37(a)に示すように、従動ギア部40aはギア部25bと1歯のみ噛合っている。この状態は、ギア部25bとの噛合いが終わる直前状態である。この状態から従動ギア40が回転すると図33(b)と同様に、従動欠歯部40bがギア部25bと対向し、従動ギア部40aがギア部25bと噛み合えず、従動ギア40はギア部25bからの駆動力を受けることができなくなる。このため、従動ギア40は、ねじりバネ28の弾性力により可動腕28bをカム部40cに押圧することによってホームポジションまで回転する。
また、図37(b)に示すように、従動ギア40が、ねじりバネ28の弾性力のみによってホームポジションまで回転させられている間、第一すべり部29dが第二すべり部30bに対して摺動する。このため、第一すべりギア29は第二すべりギア30を回転させることなく回転してホームポジションへ移動し停止する。これにより第4クラッチ装置B4は再び図30に示した第一待機状態となる。つまり、従動ギア部40aがギア部25bと噛み合わなくなるタイミングよりも前に、第一すべり部29dと第二すべり部30bとが互いに対向する。これにより、従動ギア部40aがギア部25bと噛み合わなくなるタイミングよりも前に第一すべり部29dが第二すべり部30bに対して摺動し、第一すべりギア29の駆動力が第二すべりギア30に伝達されなくなる。
このように本実施形態によれば、第二すべりギア30をOFFホームホームポジションに移動させる際、スライドバネ32の付勢力に抗してスライド部材31を第1位置へ移動させる。一方で第二すべりギア30をONホームホームポジションに移動させる際は、スライドバネ32の付勢力はスライド部材31を第2位置へ移動させる際の抗力にならない。つまり、スライド部材31を移動させるのに必要な負荷は、スライド部材31を第1位置に移動させる時の方が、第2位置に移動させる時よりも大きい。このため、第二すべりギア30をOFFホームホームポジションに移動させる際が第二すべりギア30の回転抵抗が最も大きい。そして、第4クラッチ装置B4では、従動ギア40がギア部25bから駆動力を得られず、ねじりバネ28の弾性力のみによって回転させられる。しかし、この時、第一すべり部29dと第二すべり部30bとが互いに対向状態となっており、第一すべりギア29は、第二すべりギア30を回転させることなく回転可能な状態となっている。また、第二すべりギア30が、OFFホームホームポジションに配置されている際には、スライドバネ32の付勢力によるスライド部材31からの回転トルク以外の外力等を受けても回転することが規制される。
このため、従動ギア40を回転させるねじりバネ28の弾性力は下記のように設定すればよい。即ち、ねじりバネ28の弾性力は、従動ギア40がギア部25bから駆動力を得られない時にトリガバネ14の弾性力に抗して従動ギア40を所定量回転させる力と、摩擦力等の第一すべりギア29単体の回転抵抗力と、の合計を上回る程度の力であれば良い。
従って、弾性部材であるねじりバネ28の弾性力を小さくすることが可能となり、弾性部材が従動回転体を押圧する際に弾性部材が従動回転体に衝突することで発生する打突音を小さくすることができる。また、組み立て性や作業性が損なわれにくくなる。また、弾性部材であるねじりバネ28は、従動回転体である従動ギア40のカム部40cに常に当接して摺動している。このため、弾性部材であるねじりバネ28の弾性力を小さくすることで、摺動負荷が低減され、駆動源(モータMB)に必要とされる駆動力を下げることができ、低出力の安価で小型の駆動源を用いることができる。
また、第二すべりギア30が受ける回転抵抗は、OFFホームホームポジションに移動する際が、スライド部材31を介したスライドバネ32の付勢力とレバー部材38を回動させる際の負荷抵抗とを受けて最大である。このため、第二すべりギア30がOFFホームホームポジションに移動する際には、第一すべり部29dが第二すべり部30bに対して摺動しながら回転するように第二すべりギア30の第二すべり部30bを形成している。これにより、上述のように、ねじりバネ28の弾性力を小さく設定することが可能である。
一方、ONホームホームポジションに移動する際の第二すべりギア30の回転抵抗は、第二すべりギア30のボス30cがスライド部材31の動作部31cに当接しない。このため、第二すべりギア30自体の回転摺動負荷程度となり、上述のように小さく設定されたねじりバネ28の弾性力で回転可能である。このため、第二すべりギア30がONホームホームポジションに移動する際には、第1すべりギア29と第2すべりギア30とにすべり部を形成せず、第一ギア部29cと第二ギア部30aは噛合った状態となるようにしている。
このように、第二すべりギア30において、第二すべりギア30が大きな回転抵抗を受ける所(OFFホームポジションとなる所)でのみ第二すべり部30bを配設した。そして、第二すべりギア30において、第二すべりギア30が受ける回転抵抗が比較的小さい所(ONホームポジションとなる所)ではすべり部を配設せず、第二ギア部30aを配設した。つまり、第二すべりギア30が停止する停止位相(ONホームポジション、OFFホームポジション)のうち、第1すべりギア29が第二すべりギア30を回転させるのに必要な負荷の大きい停止位相にのみすべり部(第二すべり部30b)を配置し、負荷の比較的小さい停止位相ではギア部(第二ギア部30a)を配置している。これにより、必要最低限の数だけすべり部(第二すべり部30b)を設けることができる。つまり、すべり部の数が第2すべりギアの1周期における停止位相の総数よりも少ない。第二すべり部30bは第二ギア部30aの3歯相当の大きさに相当するので、必要最低限の数だけ第二すべり部30bを設けすることで、第二すべりギア30の歯数直径を必要以上に大きくする必要が無い。従って、駆動伝達装置DRを構成する第二すべりギア30の歯数直径の大きさを抑えることができる。
このように、本実施形態によれば、第一すべりギア29と第二すべりギア30を用いることで、ねじりバネ28の弾性力を小さく設定することができる。このため、第1実施形態と同様に、装置の大型化、コストアップを避けることができる。また、弾性部材が従動回転体を押圧する際に弾性部材が従動回転体に衝突することで発生する音や、弾性部材によって回転させられた従動回転体が係止爪に衝突することで発生する音を、小さくすることができる。
また、組み立て性や作業性が損なわれにくく、駆動源(モータM)に必要とされる駆動力を下げることができるため、低出力の安価で小型の駆動源を用いることができる。
また、複数の位置(位相)で被駆動部材であるスライド部材31の位置を決める構成でも、一部の全ての位置では無く一部の位置の時のみ第二すべり部30bを活用する構成とした。これにより、第二すべりギア30の歯数直径を必要以上に大きくする必要が無く、駆動伝達装置DRを構成する第二すべりギア30の歯数直径の大きさを抑えることができる。
なお、被駆動部材であるスライド部材31は第二すべりギア30により直線往復移動する構成であったが、被駆動部材はこれに限られない。つまり被駆動部材は位相によって移動負荷が相対的に大きい場合と小さい場合とがあればよく、被駆動部材の移動は回転でもよいし、往復でなく一方向移動であってもよい。
なお、上述した本実施形態の第4クラッチ装置B4のように、停止位相のうちの一部の停止位相にのみすべり部を設け、他の停止位相ではギア部を設けた構成は、第1〜3実施形態で説明した第1〜第3クラッチ装置B1〜B3と同様の構成にも適用可能である。
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために以下の請求項を添付する。