以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
<ポリエステル系熱可塑性エラストマー>
本発明のエマルジョンに固形分として含まれるポリエステル系熱可塑性エラストマーは、通常、結晶性を有するハードセグメントと、柔軟性を有するソフトセグメントとを有するブロック共重合体であり、熱的特性が結晶性を有するハードセグメントに由来して発揮され、また、柔軟性を有するソフトセグメントに由来して柔軟性、相溶性が発揮される。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、環状ポリエステルからなるハードセグメントとポリアルキレングリコールからなるソフトセグメントとを有するブロック共重合体、環状ポリエステルからなるハードセグメントと鎖状脂肪族ポリエステルからなるソフトセグメントとを有するブロック共重合体等が挙げられる。これらの中でも好ましいのは環状ポリエステル−ポリアルキレングリコールブロック共重合体である。
環状ポリエステル−ポリアルキレングリコールブロック共重合体としては、芳香族ポリエステルユニットからなるハードセグメントとポリアルキレングリコールユニットからなるソフトセグメントを有するブロック共重合体、脂環族ポリエステルユニットからなるハードセグメントとポリアルキレングリコールユニットからなるソフトセグメントとを有するブロック共重合体等が挙げられ、これらの中でも芳香族ポリエステル−ポリアルキレングリコ−ルブロック共重合体が好ましい。
芳香族ポリエステル−ポリアルキレングリコールブロック共重合体の芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどが挙げられ、これらの中でもポリブチレンテレフタレートが好適に用いられる。即ち、芳香族ポリエステル−ポリアルキレングリコールブロック共重合体としては、ポリブチレンテレフタレート−ポリアルキレングリコールブロック共重合体が好ましい。
芳香族ポリエステル−ポリアルキレングリコールブロック共重合体は、特開平10−130451号公報等に記載されているように公知の熱可塑性エラストマーであり、芳香族ポリエステルユニットとポリアルキレングリコールユニットを含有する重合体であれば、各々のブロックは、単一重合体であっても共重合体であってもよい。
柔軟性を有するソフトセグメントの原料としては、ポリアルキレンエーテルグリコールが好ましく、ポリメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−及び1,3−)プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等の直鎖状及び分岐状の脂肪族エーテルの他、シクロヘキサンジオールの縮合体やシクロヘキサンジメタノールの縮合体等の脂環状エーテルの単一重合体又は共重合体が挙げられる。また、これらエーテルユニット内でのランダム共重合体でもよい。また、ポリアルキレングリコールユニットを有するブロック共重合体も用いることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、環状ポリエステル−ポリアルキレングリコールブロック共重合体に含まれるポリアルキレングリコールユニットの数平均分子量は600〜4,000、特に800〜2,500、とりわけ900〜2,100であることが好ましい。なお、ここでポリアルキレングリコールユニットの数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたポリスチレン換算した値を言う。
これらのポリアルキレングリコールユニットは、環状ポリエステル−ポリアルキレングリコールブロック共重合体中に1種のみが含まれていてもよく、数平均分子量や構成成分が異なるものの2種以上が含まれていてもよい。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーの製造方法としては、特に制限はなく、例えば、環状ポリエステル−ポリアルキレングリコールブロック共重合体のうち、芳香族ポリエステルとポリアルキレンエーテルグリコールを用いた芳香族ポリエステル−ポリアルキレングリコールブロック共重合体であれば、炭素数2〜12の鎖状脂肪族及び/又は脂環族ジオールと、芳香族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルと、ポリアルキレンエーテルグリコールとを原料とし、エステル化反応又はエステル交換反応により得られたオリゴマーを重縮合させて得ることができる。
上記の炭素数2〜12の鎖状脂肪族及び/又は脂環族ジオールとしては、ポリエステルの原料として通常用いられるものを使用することができる。例えば、鎖状脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキセングリコール等が挙げられるが、中でも1,4−ブチレングリコールが好ましい。脂環族ジオールとしては、1,4−シクロヘキセングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。これらの炭素数2〜12の鎖状脂肪族及び/又は脂環族ジオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物を用いてもよい。
芳香族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルとしては、ポリエステルの原料として一般的に用いられているものが使用でき、例えばテレフタル酸及びその低級(本明細書において「低級」は炭素数4以下を意味する。)アルキルエステルやイソフタル酸、フタル酸、2,5−ノルボナンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及びそれらの低級アルキルエステル等が挙げられる。これらの中では、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましく、特にテレフタル酸が好適である。これらの芳香族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルについても1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、前述の如く、ポリメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−及び1,3−)プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等の直鎖状及び分岐状の脂肪族エーテルグリコールの他、シクロヘキサンジオールの縮合体やシクロヘキサンジメタノールの縮合体等の脂環状エーテルの単一重合体又は共重合体が挙げられる。また、これらエーテルユニット内でのランダム共重合体でもよい。これらの中でも好ましいのはポリメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−及び1,3−)プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等の直鎖状及び分岐状の脂肪族エーテルグリコールであり、より好ましいのはポリメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−及び1,3−)プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールであり、特に好ましいのはポリテトラメチレングリコールである。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、脂環族ポリエステル−ポリアルキレングリコールブロック共重合体を製造する場合には、上記の芳香族ポリエステル−ポリアルキレングリコールブロック共重合体を製造する場合の原料として用いる芳香族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルに代えて脂環族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルを用いればよい。すなわち、炭素数2〜12の鎖状脂肪族及び/又は脂環族ジオールと、脂環族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルと、ポリアルキレンエーテルグリコールとを原料とし、エステル化反応又はエステル交換反応により得られたオリゴマーを重縮合させて得ることができる。
脂環族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルとしては、ポリエステルの原料として一般的に用いられているものが使用でき、例えばシクロヘキサンジカルボン酸及びその低級アルキルエステル、シクロペンタンジカルボン酸及び低級アルキルエステル等が挙げられる。これらの中では、シクロヘキサンジカルボン酸及びその低級アルキルエステルが好ましく、特にシクロヘキサンジカルボン酸が好適である。これらの脂環族ジカルボン酸及びそのアルキルエステルについても1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
環状ポリエステル−ポリアルキレングリコールブロック共重合体中の環状ポリエステルユニット及びポリアルキレングリコールユニットのそれぞれの含有量は限定されないが、ハードセグメントの結晶性とソフトセグメントの柔軟性とのバランスから、通常以下のような範囲となる。
即ち、環状ポリエステル−ポリアルキレングリコールブロック共重合体中の環状ポリエステルユニットの含有量の下限値は、通常10質量%以上、好ましくは20質量%以上である。また、環状ポリエステルユニットの含有量の上限値は、通常95質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。また、環状ポリエステル−ポリアルキレングリコールブロック共重合体中のポリアルキレングリコールユニットの含有量の下限値は、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。また、ポリアルキレングリコールユニットの含有量の上限値は、通常90質量%以下、好ましくは80質量%以下である。なお、環状ポリエステルユニットを有するブロック共重合体中の環状ポリエステルユニットの含有量は、核磁気共鳴スペクトル法(NMR)を使用し、その水素原子の化学シフトとその含有量に基づいて算出することができる。同様に、ポリアルキレングリコールユニットを有するブロック共重合体中のポリアルキレングリコールユニットの含有量は、核磁気共鳴スペクトル法(NMR)を使用し、その水素原子の化学シフトとその含有量に基づいて算出することができる。
芳香族ポリエステル−ポリアルキレングリコールブロック共重合体としては、特に結晶化速度が速く、成形性に優れることから、ポリブチレンテレフタレート−ポリアルキレングリコールブロック共重合体が好ましく、ここで、ポリアルキレングリコールユニットのアルキレン基の炭素数は、2〜12が好ましく、2〜8がより好ましく、2〜5が更に好ましく、4が特に好ましい。
なお、本発明に係る芳香族ポリエステル−ポリアルキレングリコールブロック共重合体に代表される、環状ポリエステル−ポリアルキレングリコールブロック共重合体には、上記成分以外に3官能のアルコールやトリカルボン酸及び/又はそのエステルの1種又は2種以上を少量共重合させてもよく、更に、アジピン酸等の鎖状脂肪族ジカルボン酸やそのジアルキルエステルを共重合成分として導入してもよい。
上記の環状ポリエステル−ポリアルキレングリコールブロック共重合体は、市販品としても入手することができる。このような市販品としては例えば、「ポリエスター(登録商標)」(日本合成化学工業社製)、「プリマロイ(登録商標)」(三菱化学(株)製)、「ペルプレン(登録商標)」(東洋紡績社製)、「ハイトレル(登録商標)」(デュポン社製)、「アーニテル(登録商標)」(アルケマ社製)等が挙げられる。
環状ポリエステル−ポリアルキレングリコールブロック共重合体等のポリエステル系熱可塑性エラストマーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明で用いるポリエステル系熱可塑性エラストマーは不飽和カルボン酸及び/又はその無水物で変性されていることが好ましい。
変性剤としての不飽和カルボン酸及びその無水物の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2,3−ジカルボン酸(ナジック酸(商標))、メチル−エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸(メチルナジック酸(商標))等の不飽和カルボン酸、及びこれらの無水物が挙げられる。
酸無水物としては、具体的には、無水マレイン酸、無水シトラコン酸などを挙げることができる。
これらの不飽和カルボン酸及び/又はその無水物の中では、アクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸が好ましい。
不飽和カルボン酸及び/又はその無水物は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。
上記ポリエステル系熱可塑性エラストマーを上記不飽和カルボン酸及び/又はその無水物で変性することにより変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーを得ることができる。変性の仕方には特に制限が無く、公知の手法に従って溶液変性、溶融変性、電子線や電離放射線の照射による固相変性、超臨界流体中での変性などが好適に用いられる。中でも設備やコスト競争力に優れた溶融変性が好ましく、連続生産性に優れた押出機を用いた溶融混練変性が更に好ましい。この時用いられる装置としては、例えば単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサーなどが挙げられる。中でも連続生産性に優れた単軸押出機、二軸押出機が好ましい。
一般にポリエステル系熱可塑性エラストマーへの不飽和カルボン酸及び/又はその無水物による変性は、ポリアルキレングリコールやジオール成分の炭素−水素結合を開裂させ炭素ラジカルを発生させ、これへ不飽和官能基が付加する、といったグラフト反応によって行われる。炭素ラジカルの発生源としては、上述した電子線や電離放射線の他、高温度とする方法や、有機、無機過酸化物などのラジカル発生剤を用いることもできる。ラジカル発生剤としては、コストや操作性の観点で有機過酸化物を用いることが好ましい。
変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーを製造する際に用いるラジカル発生剤としての有機過酸化物には限定はないが、例えば、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル及びケトンパーオキサイド群に含まれるもの、並びにアゾ化合物等が挙げられる。
具体的には、例えば、ハイドロパーオキサイド群にはキュメンハイドロパーオキサイド、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド等が含まれ、ジアルキルパーオキサイド群にはジクミルパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキシン−3などがあり、ジアシルパーオキサイド群にはラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等が含まれる。同様にパーオキシエステル群にはターシャリーパーオキシアセテート、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエイト、ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等が、さらにケトンパーオキサイド群にはシクロヘキサノンパーオキサイド等があり、アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、メチルアゾイソブチレートなどが含まれる。
これらのラジカル発生剤は1種のみを用いても数種を併用してもよい。
一般的に用いられる溶融押出変性の操作は、上記ポリエステル系熱可塑性エラストマー、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物、有機過酸化物を配合、ブレンドして混練機、押出機に投入し、加熱溶融混練しながら押出を行い、先端ダイスから出てくる溶融樹脂を水槽などで冷却して変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーを得るものである。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーと不飽和カルボン酸及び/又はその無水物との配合の比率に特に制限は無いが、好ましい配合の範囲としては、ポリエステル系熱可塑性エラストマー100質量部に対し、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物が0.2〜5質量部である。ポリエステル系熱可塑性エラストマーに対して不飽和カルボン酸及び/又はその無水物が少なすぎると、本発明の効果を奏するために必要な所定の変性量が得られない場合があり、また多すぎると未反応の不飽和カルボン酸及び/又はその無水物が多量に残留し、かえってエマルジョンの生成に困難を生じたり、塗工後の膜強度が低下する可能性がある。
不飽和カルボン酸及び/又はその無水物と有機過酸化物との配合の比率としては特に制限は無いが、好ましい配合の範囲としては、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物100質量部に対し、有機過酸化物が20〜100質量部である。不飽和カルボン酸及び/又はその無水物に対して有機過酸化物の量が少なすぎると、本発明の効果を奏するために必要な所定の変性量が得られず、また多すぎるとポリエステル系熱可塑性エラストマーの劣化を生じ、強度が大幅に悪化する可能性が生じる。
また溶融押出変性条件としては、例えば単軸、二軸押出機においては150〜300℃程度の温度にて押出すことが好ましい。
本発明で用いる変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定された重量平均分子量(Mw)が1万以上、特に1万5千以上で、5万以下、特に3万以下であることが好ましい。変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーのMwが上記下限より小さい場合は、エマルジョンの固形分としての強度や凝集力、接着力などの物性が低下するので好ましくない。また、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーのMwが上記上限より大きい場合は、乳化が困難となるので好ましくない。変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーのMwの具体的な測定方法は実施例の項に記載される通りである。
また、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーのJIS K7215(1986)に基づく硬度(ショアD)は25以上55以下が好ましい。硬度が上記範囲の下限を下回ると、エマルジョン固形分の機械強度が十分に高くならず、上記範囲の上限よりも高いものは乳化が困難となるので好ましくない。
また、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーの示差走査熱量計(DSC)による融解ピーク温度は140℃以上190℃以下であることが好ましい。融解ピーク温度が上記範囲の上限よりも高いものは乳化が困難となるので好ましくなく、融解ピーク温度が上記範囲の下限よりも低いものはポリブチレンテレフタレート−ポリアルキレングリコール共重合体では実質的に製造することが困難である。変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーの融解ピーク温度の具体的な測定方法は実施例の項に記載される通りである。
また、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーの不飽和カルボン酸及び/又はその無水物による変性量は0.1〜2質量%が好ましい。変性量が上記範囲の下限を下回ると、エマルジョンの分散粒径が小さくなりにくく、結果として塗膜強度が低下するので好ましくなく、変性量が上記範囲の上限を上回ると、臭気や色が悪化する傾向にあり好ましくない。変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーの変性量の具体的な測定方法は実施例の項に記載される通りである。
本発明のエマルジョンには、上記のポリエステル系熱可塑性エラストマー、好ましくは変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーの1種のみが含まれていてもよく、ブロック共重合体組成や物性の異なるものの2種以上が含まれていてもよい。
<その他の成分>
本発明のエマルジョンには、前記のポリエステル系熱可塑性エラストマー、好ましくは不飽和カルボン酸及び/又はその無水物による変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー以外に、その他の成分として、樹脂組成物に常用されている配合剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができる。
このような配合剤としては、例えば熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、防錆剤、及び顔料等を挙げることができる。このうち、酸化防止剤、特にフェノール系、硫黄系、又はリン系の酸化防止剤を含有させるのが好ましく、酸化防止剤は、ポリエステル系熱可塑性エラストマー100質量部に対して0.1〜2質量部含有させるのが好ましい。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリエステル系熱可塑性エラストマー以外の樹脂成分やエラストマー成分を含有させてもよい。このような樹脂成分としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合樹脂、プロピレン−α−オレフィン共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アクリル系樹脂、及び石油樹脂スチレン−共役ジエンブロック共重合樹脂等が挙げられる。
これらのその他の成分の配合は、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの不飽和カルボン酸及び/又はその無水物による変性時でも構わないし、変性後でも構わない。また、後述するエマルジョンの製造時に添加してもよい。
<エマルジョン>
本発明のエマルジョンは、液中に、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを固形分として含む分散体である。
本発明のエマルジョンを構成する分散媒としての液体は、ポリエステル系熱可塑性エラストマーが溶解しないものであれば限定されず、水または水溶液であっても、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸ブチル、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤であっても、植物油、動物油、機械油、食用油などの油成分でもよいが、経済性や作業環境、取り扱いの容易さの観点から、水またはアルコール、低分子量ケトン化合物等の水溶液であることが好ましい。なお、分散媒として水溶液を用いる場合は、水溶性アルコール等の水溶性有機溶剤との混合溶液であってもよい。
エマルジョン中のポリエステル系熱可塑性エラストマーの含有量は固形分として通常20質量%以上、好ましくは25質量%以上であり、通常45質量%以下、好ましくは40質量%以下である。エマルジョン中のポリエステル系熱可塑性エラストマーの含有量が前記下限値未満の場合は塗工した際に、多量に塗工する必要が生じたり、水分を除去する効率が悪い等、経済性が悪化するので好ましくなく、前記上限値より高い場合はエマルジョンとしての粘度が高くなりすぎて塗工性が悪くなったり、エマルジョンの安定性が悪化して凝集するといった品質上の問題が生じるので好ましくない。
また、エマルジョン中での固形分の分散粒径は平均粒径で通常0.05μm以上、1.0μm以下であり、好ましくは0.5μm以下である。エマルジョン中の固形分の粒径は小さい方が塗工後の塗膜の凝集強度向上や透明性確保のために好ましいが、上記下限値未満の分散粒径のエマルジョンを製造することは実質的に困難である。ここで、エマルジョン中の固形分であるポリエステル系熱可塑性エラストマーの平均粒径の具体的な測定方法は実施例の項に記載される通りである。
本発明のエマルジョンは、前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーを公知の方法で乳化することにより得ることができる。
乳化の方法としては例えば直接法と間接法があり、何れを採用することもできる。
直接法においては、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、水等の分散媒、必要に応じて用いる界面活性剤や、その他中和用塩基を容器に加えて、乳化混合物を生成する。次いで、乳化混合物を、所望の乳化温度に加熱する。乳化混合物の温度は一般に、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの融点より高く、具体的には、約140〜約220℃、好ましくは165〜200℃の範囲であるが、その最適温度は用いるポリエステル系熱可塑性エラストマーの融点に強く依存する。
また、有機溶剤エマルジョンの場合は、上記と同様の方法を取るか、或いは、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを熱した有機溶剤に溶解し撹拌した後、冷却することによっても得ることができる。
直接法の利点は、加圧しながら容器に材料を装入する必要がなく、製造コストの高騰につながる追加工程のない単純な方法であることである。
間接法においては、最初に、ポリエステル系熱可塑性エラストマー及び少なくとも1種の他の成分の一部を、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの融点より高温に加熱する。次いで、分散媒を含む残りのエマルジョン成分を、高温で任意の順序で又は一緒に添加する。
本発明のエマルジョンの製造には、重合と乳化を連続的に行う連続法を採用することもできる。連続乳化重合方法としては、管型反応器、連続槽型反応器、ループ型反応器などを用いる方法が従来より知られている。ここで、管型反応器を用いる連続乳化重合方法とは、一様な通路断面及び内径を有する反応管に単量体を含むエラストマー原料液を連続的に流しながら反応管の中で乳化重合を行わせる方法である。連続槽型反応器を用いる連続乳化重合方法とは、撹拌手段を有する反応槽を多段直列に連結し、エラストマー原料液を各反応槽に順次連続的に供給し、各反応槽で順次乳化重合を行わせる方法である。また、ループ型反応器を用いる連続乳化重合方法とは、ループ状の反応管にエラストマー原料液を連続的に供給し、該エラストマー原料液を反応管の中で周回させながら乳化重合を行わせるとともに、重合体を含む反応液を反応管の外へ導く方法である。本発明においては、これらの何れの方法も採用することができる。
乳化に用いられる界面活性剤としては限定されず、例えば、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等、従来公知のものを使用することができる。
カチオン系界面活性剤の具体例としては、RN+(CHCH3)3X−で示されるアルキルトリメチルアンモニウム塩類、RR’N+(CH3)2X−で示されるジアルキルジメチルアンモニウム塩類、RN+(CH2Ph)(CH3)2X−で示されるアルキルベンジルジメチルアンモニウム塩類などがあり、アニオン系界面活性剤の具体例としては、RCOO−Na+で示される脂肪酸ナトリウム(石鹸)、ROSO3 −M+で示されるモノアルキル硫酸塩類、RO(CH2CH2O)mSO3 −M+で示されるアルキルポリオキシエチレン硫酸塩類、RR’CH2CHC6H4SO3 −M+で示されるアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ROPO(OH)O−M+で示されるモノアルキルリン酸塩類などがあり、両性界面活性剤の具体例としては、R(CH3)2NOで示されるアルキルジメチルアミンオキシド類、R(CH3)2N+CH2COO−で示されるアルキルカルボキシベタイン類などがあり、非イオン性界面活性剤の具体例としては、RO(CH2CH2O)mHで示されるポリオキシエチレンアルキルエーテル類、RCON(CH2CH2OH)2で示される脂肪酸ジエタノールアミド類、OCH2CH(OH)CH2OHで示されるアルキルモノグリセリルエーテル類等のほか、脂肪酸ソルビタンエステル類、アルキルポリグルコシド類などが挙げられる。これらはその効果を阻害しない範囲であれば2種類以上を併用することもできる。(なお、ここで、R、R’はアルキル基、Xは主に塩素や臭素といったハロゲン元素、Mは主にナトリウム、カリウム、マグネシウムといったアルカリ金属、アルカリ土類金属、Phはフェニル基を表す。)
界面活性剤の添加量は限定されないが、ポリエステル系熱可塑性エラストマー100質量部に対して1〜30質量部、好ましくは10〜20質量部が好適である。
このようにして製造される本発明のエマルジョンは一般に透明ないし乳白色の液体となる。
エマルジョンとしての物性は特に限定されるものでは無いが、良好な塗工性を確保するためには、30℃におけるB型粘度計による粘度が1〜100mPa・sの範囲であることが好ましく、より好ましくは5〜50mPa・sの範囲である。 また、エマルジョンの水素イオン濃度(pH)としては特に限定されるものではないが、一般に中性に近いことが好まれ、pHの好ましい範囲としては4〜11、より好ましい範囲としては5〜10程度である。
<塗工基材>
本発明のエマルジョンは、樹脂シート、樹脂フィルム、紙又は金属箔といった基材表面に塗工した場合に、単体ではべた付かないが、その他の被貼合材との熱接着性、又は接着剤塗布による接着性に優れていている。
本発明のエマルジョンの塗工基材としての樹脂シートや樹脂フィルムの素材としては特に限定されるものでは無く、例えばポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリブテン−1、ポリ−3−メチルペンテン等のα−オレフィン重合体、又は、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン及びこれらの共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、塩化ゴム、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−シクロヘキシルマレイミド共重合体等の含ハロゲン樹脂;石油樹脂;クマロン樹脂;ポリスチレン;ポリ酢酸ビニル;アクリル樹脂;スチレン及び/又はα−メチルスチレンと他の単量体(例えば、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、メタクリル酸メチル、ブタジエン、アクリロニトリル等)との共重合体(例えば、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、耐熱ABS樹脂等);ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンンテレフタレート等の直鎖ポリエステル;ポリフェニレンオキサイド、ポリカプロラクタム及びポリヘキサメチレンアジパミド等のポリアミド、ポリカーボネート、ポリカーボネート/ABS樹脂、分岐ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリウレタン、繊維素系樹脂等の熱可塑性樹脂及びこれらのブレンド物あるいはフェノール樹脂;並びに、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
更に、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム、スチレン・ブタジエン共重合ゴム等のエラストマー等へのコーティング及び接着にも本発明のエマルジョンを使用することができる。
これらの樹脂等からなるシートやフィルムは未延伸でも延伸されていても構わない。
紙の種類としては特に限定されるものではなく、上質紙、中質紙、塗工紙、微塗工紙、アート紙、コート紙、軽量コート紙、インディアペーパー、色上質紙、ファンシーペーパー、再生紙、白板紙、チップボール、黄色板紙、色板紙、段ボールなどが好適に用いられる。連続塗工、連続積層を目的とした場合は紙器用板紙が用いられることが多い。
金属箔の金属の種類としては特に限定されるものでは無く、例えばアルミニウム、鉄、銅、チタン、銀、金、これらを含む合金などを用いることができる。連続生産性を考慮すると延伸した金属箔が好適に用いられる。
また、上記の樹脂シート、樹脂フィルム、紙又は金属箔よりなる基材の表面に、本発明のエマルジョンを塗工するに先立ち、これらの基材の表面に必要に応じて、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガスもしくは窒素ガス等を用いる低温プラズマ処理、グロ−放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他の表面処理を任意に施すことができる。上記の表面処理は、エマルジョンを塗工する前に別工程で実施してもよく、例えば、フィルム基材表面に、予めプライマーコート剤層、アンダーコート剤層として任意に形成することにより行うこともできる。
<塗膜の形成>
前記樹脂シート、樹脂フィルム、紙又は金属箔よりなる基材への本発明のエマルジョンの塗工(コーティング)方法は特に限定されるものでは無く、例えばグラビアコーティング、ロールコーティング、バーコーティング、ダイコーティング、ディッピング、ナイフコーティング、ホットメルトコーティング、スプレーコーティング、静電塗装法、マイヤーバーコート、ハケによる塗工などがある。これらのうち、ロールを用いた連続塗工が好適に用いられるが、エマルジョンの粘度や塗工温度によって各種塗工方法は選択されるべきものである。
上記塗工後は、基材上の塗膜を60〜120℃で、0.1〜5時間程度乾燥させる。
本発明のエマルジョンにより形成される塗膜(塗工、乾燥膜)の厚みは、その用途に応じた要求特性によっても異なるが、通常0.1〜2.0μm程度であることが好ましく、特に0.5〜1μm程度であることがより好ましい。
<用途>
前記樹脂シート、樹脂フィルム、紙又は金属箔などに本発明のエマルジョンを塗工したものは、各種の樹脂シート、樹脂フィルム、紙、織布、不織布、金属箔等の別基材と容易に熱や接着剤によって貼合することができ、多層積層体を得ることができる。特に熱ラミネートによって多層積層体を得た場合は、有害な有機溶剤を使うことなく、屋内外環境にも配慮した製造を行うことができる。
この様な手法で得られる多層積層体の用途としては、各種食品、医療医薬品、化粧品、建材などの包装用材料などが挙げられる。包装の形態としては三方シール袋や四方シール袋、スティック包装袋の様な小袋包装の他、ポーションパック、トレイパック、パウチ包装、ひねり包装、クリップ包装、カートン充填包装、液体充填包装などがある。これら包装形態を用いて包装される内容物としては、粉末コーヒーや砂糖、薬の様な粉末、一般的なお菓子類、錠剤、電子部品などの様な固形物、洗剤やジュース、牛乳、醤油、酒類、潤滑油などの液体ものなど多岐にわたる。
以下、本発明を実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例では、以下の原料及び測定方法を用いた。
[ポリエステル系熱可塑性エラストマー]
・三菱化学(株)製「プリマロイGQ131」
ポリブチレンテレフタレート−ポリテトラメチレングリコールブロック共重合体の無水マレイン酸変性物
Mw=10900
ショアD硬度=28
融解ピーク温度=150℃
変性量=0.25質量%
・三菱化学(株)製「プリマロイGQ430」
ポリブチレンテレフタレート−ポリテトラメチレングリコールブロック共重合体の無水マレイン酸変性物
Mw=10900
ショアD硬度=35
融解ピーク温度=166℃
変性量=0.2質量%
・三菱化学(株)製「プリマロイGQ730」
ポリブチレンテレフタレート−ポリテトラメチレングリコールブロック共重合体の無水マレイン酸変性物
Mw=10900
ショアD硬度=55
融解ピーク温度=204℃
変性量=0.16質量%
[ポリブチレンテレフタレート樹脂]
・三菱エンジニアリングプラスチック(株)製「ノバデュラン5020」
Mw=18100
ショアD硬度=90(上限値)以上
融解ピーク温度=224℃
[マレイン酸変性ポリプロピレン]
・三菱化学(株)製「モディックP908」
Mw=123,000
ショアD硬度=71
融解ピーク温度=160℃
変性量=0.7質量%
[測定方法]
・重量平均分子量:ウォーターズ製「GPC 150C型」、東ソー(株)製カラム「TSK GEL G5000H+G3000H」を使用し、溶媒として、クロロホルム+0.5%酢酸(プリマロイ及びノバデュランの場合)、又はオルソジクロルベンゼン(モディックの場合)を用い、紫外吸光検出器(波長254nm)にてポリスチレン換算分子量を算出した。
・ショアD硬度:JIS K7215(1986)に基づいて測定した。
・融解ピーク温度:セイコーインスツル(株)製示差走査熱量計「DSC6220」を用いて以下の通り測定した。
窒素気流下、250℃まで100℃/分で昇温後、降温速度10℃/分にて−60℃まで冷却し、3分保持後、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温し、2度目の昇温時の吸熱ピーク温度を融解ピーク温度とした。
・不飽和カルボン酸変性量:日本電子(株)製「JEOL−GSX270」を用い、濃度:300mg/2ml溶媒(オルソジクロルベンゼン)で、13C−NMR法によって測定した。
・分散粒子の平均粒径:(株)堀場製作所製粒子径分布測定装置「LA−950」を用いて測定し、算術平均径を平均粒径とした。
・接着状態の評価:各実施例及び比較例でヒートシールして作成した試料からクラフト紙を剥がし取り、その際の剥離状況を調べた。
クラフト紙の紙毛羽のみが取れる場合は、クラフト紙に対してもPETフィルムに対しても高強度に接着している。
クラフト紙が剥がれる場合はPETフィルムに対しては接着しているが、クラフト紙に対しては若干接着強度が弱い。
PETフィルムと塗工層との間で剥がれる場合は、PETフィルムに対して接着していない。
[実施例1]
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとして、「プリマロイGQ131」を用い、攪拌機付きの200mLオートクレーブ中に、ポリエステル熱可塑性エラストマーを35g、水酸化ナトリウムを0.06g、ポリプロピレングリコールを0.75g、ソルビタンモノステアレートを0.25g、脱イオン水を65g投入し、この混合物を高速攪拌しながら175℃で0.5時間加熱し、その後室温まで攪拌しながら放冷することでエマルジョン(固形分濃度約35質量%、平均粒径0.1μm)を得た。
次にマイヤーバーを用いて二軸延伸ポリエステル(PET)フィルム上に得られたエマルジョンを5g/m2の塗工量で塗布し、80℃のオーブンに8時間投入することで水分を乾燥させ、塗膜厚み1.8μmの塗工フィルムを得た。
次に塗工面に対し、クラフト紙(坪量75g/m2)を重ね、ヒートシーラーにて所定の温度で2MPaにて2秒間ヒートシールを行い、接着状態を評価した。ヒートシール温度としては、160℃、180℃、200℃で各々評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例2]
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとして、「プリマロイGQ430」を用いる以外は実施例1と同様にしてヒートシール後の接着状態を評価した。評価結果を表1に示す。
[比較例1]
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとして、「プリマロイGQ730」を用い、実施例1と同様にしてエマルジョン作成を試みたが、エマルジョンは作成できなかった。
[比較例2]
ポリエステル系熱可塑性エラストマーの代わりに「ノバデュラン5020」を用い、実施例1と同様にしてエマルジョン作成を試みたが、エマルジョンは作成できなかった。
[比較例3]
ポリエステル系熱可塑性エラストマーの代わりに「モディックP908」を用い、実施例1と同様にしてエマルジョンを作成した(固形分濃度約30質量%、平均粒径1.8μm)。但し仕込み量として、P908を30g、脱イオン水を70gとした。その後は実施例1と同様にしてヒートシール後の接着状態を評価した。評価結果を表1に示す。
表1より、本発明のエマルジョンによれば、塗工基材と被貼合材の双方に対して高い接着性を有する多層積層体を得ることができることが分かる。