JP6880758B2 - 蓋材およびこれを用いた包装体 - Google Patents

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Description

本発明は、包装容器用の蓋材に関する。特に、ポリエステル系容器にヒートシール可能であり、かつ内面に防曇性を有する蓋材、ならびに該蓋材を用いた包装体に関する。
野菜などの青果物を包装する材料として、プラスチックフィルムやシートを成型した容器が使用されている。これらの中でも、透明性や光沢感といった外観の美麗さだけでなく、リサイクルできる素材であることを考慮して、ポリエチレンテレフタレートをはじめとするポリエステル系素材からなる容器が幅広く使用されている。ポリエステル系素材などのプラスチックからなる容器を用いる場合、内容物が容器に充填された後に、容器のフランジ部にプラスチック製の蓋材を接着することが多い。蓋材を容器に接着することによって包装体が完成し、内容物の保護、漏洩防止といった機能が備わる。さらに、蓋材の内面に防曇機能をもたせることにより、青果物からの水蒸気による曇りを防止する機能も付与することができる。蓋材を容器に接着する方法として、簡便さや衛生性の観点から、ヒートシールが一般的である。しかし従来、ヒートシールする面(内容物との接触面)に防曇剤を使用すると、容器とのヒートシール強度が低下する問題があった。
例えば特許文献1、2には、ポリエステル系素材からなる容器にヒートシールできる蓋材が提案されている。ただし、特許文献1の蓋材は、防曇剤の使用は想定されていない。特許文献2には、防曇性能のある蓋材が開示されている。特許文献2の実施例では、シール層がポリエステル系であるものの、基材層はポリエチレン等のオレフィン系素材で構成されており、実質的に蓋材すべてがポリエステル系素材ではない。消費者が内容物を取り出すために蓋材を剥離する際、容器からは完全に剥がしきらず、容器と蓋材がセットになったまま廃棄されることもあるため、特許文献2に記載の蓋材を用いた場合はポリエステル系素材としてのリサイクルが困難となる。
また、特許文献1、2に開示された蓋材は、シール層に隣接する中間層や接着剤層をもたせる設計となっており、容器から剥離するときにこれらの層を切断することでイージーピール性をもたせている。この設計では、剥離後にシール層が容器へ残ることは避けられず、いわゆる糊残りという外観不良が問題となっていた。
特許第4601768号公報 特開2004−25825号公報
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解消することを目的とするものである。すなわち本発明は、ポリエステル系素材からなり、防曇性能とヒートシール性能とが両立しており、かつ、容器から剥離しても糊残りの少ない蓋材を提供することを課題としている。
本発明は、以下の構成よりなる。
1.シール層と基材層の各層を少なくとも1層有する蓋材であって、前記シール層と前記基材層は、いずれもエチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステル系成分からなり、以下の(1)〜(5)を満たすことを特徴とする蓋材。
(1)幅方向、長手方向ともに最大熱収縮力が0N/100mm以上15N/100mm以下
(2)シール層と未延伸のポリエチレンテレフタレートシートとを200℃、0.2MPaで1秒間ヒートシールしたときのシール強度が2N/15mm以上20N/15mm以下
(3)シール層は、示差走査熱量計から算出される融解エンタルピーΔHmが1000J/mol以上5000J/mol未満であり、かつ融点が160℃以上200℃未満
(4)基材層は、ΔHmが8000J/mol以上12000J/mol以下であり、かつ融点が240℃以上280℃以下
2.幅方向、長手方向ともに引張破壊強度が80MPa以上300MPa以下であることを特徴とする1.に記載の蓋材。
3.シール層を構成するポリエステル成分のモノマーが、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸、及びジエチレングリコールの内、少なくとも1種を含むことを特徴とする1.または2.に記載の蓋材。
4.シール層を構成するポリエステル成分中に、1,4−ブタンジオールを含むことを特徴とする1.から3.いずれかに記載の蓋材。
5.前記1.〜4.いずれかの蓋材を用いていることを特徴とする包装体。
本発明の蓋材は、防曇性能とヒートシール性能とが両立しており、容器から剥離しても糊残りが少ない。さらに、素材はすべてポリエステル系からなるため、ポリエステル系容器とのリサイクルが可能である。
実施例1のシール層(フィルムNo.1)と基材層(フィルムNo.8)における示差走査熱量測定(DSC)から得られたヒートフローを示す図 実施例における容器の変形評価に用いた容器の模式図
1.蓋材の積層構成
本発明の蓋材は、シール層と基材層の各層を少なくとも1層有している必要がある。これは、蓋材を容器とヒートシールさせる際、ヒートシール強度と耐熱性という二律背反の特性を満たすためである。フィルムのヒートシール強度と耐熱性は、いずれも後述の融解エンタルピーΔHと融点で表現することができ、ΔHと融点の値が小さいほどヒートシール強度が向上する一方で耐熱性は低下する。ゆえに、シール層はΔHと融点が小さくなるよう、基材層はΔHと融点が大きくなるように制御することが必要となる。
シール層と基材層を積層させるには、製膜ライン中で共押し法によってそれぞれの層を積層させる方法のほか、ドライラミネートや押出ラミネート等の公知の方法を採用することができる。ドライラミネートの場合、市販のドライラミネーション用接着剤を用いることができる。代表例としては、DIC社製ディックドライ(登録商標)LX−703VL、DIC社製KR−90、三井化学社製タケネート(登録商標)A−4、三井化学社製タケラック(登録商標)A−905などがある。
本発明において、ヒートシール強度や耐熱性を妨げない限りは、シール層と耐熱層以外の層を複数層重ねてもよく、例えばシール層と耐熱層との間に他の層を設けてもよい。他の層としては、シール層、耐熱層とは異なる組成物からなる層であってもよいが、ポリエステル素材とのリサイクルを考慮すると、ポリエステル系素材であることが好ましい。好ましい層構成は、シール層と基材層からなる2種2層である。
本発明の蓋材において、好ましいシール層の厚みは3μm以上100μm以下である。シール層の厚みが3μm未満だと、未延伸のポリエチレンテレフタレートシートと200℃でヒートシールしたときのシール強度が2N/15mm未満となってしまうため好ましくない。一方、シール層の厚みが100μmを超えるとシール強度が20N/15mmを超えてしまうだけでなく、後述する蓋材の最大熱収縮力が高くなってしまうため好ましくない。また、好ましい基材層の厚みは3μm以上100μmである。基材層の厚みが3μm未満だと、ヒートシールするときに蓋材に穴があいてしまうため好ましくない。一方、基材層の厚みが100μmを超えると耐熱性は高くなって好ましいが、蓋材のコストが増えてしまうだけでなく、蓋材の最大熱収縮力が高くなってしまうため好ましくない。上記のシール層と基材層の好ましい厚みの範囲より、蓋材の好ましい厚みは6μm以上200μmである。蓋材の厚みが6μm未満の場合、蓋材が薄すぎるために取り扱いが困難となってしまう(ハンドリング性が悪くなる)。一方、蓋材が200μmを越えるとコストが増えるだけでなく、最大熱収縮力が高くなってしまうため好ましくない。
2.蓋材の特性
2.1.シール層のヒートシール強度
本発明の蓋材を構成するシール層は、無延伸のポリエチレンテレフタレートシートと200℃、0.2MPaで1秒間ヒートシールしたときのシール強度が2N/15mm以上20N/15mm以下でなければならない。シール強度が2N/15mm未満であると、蓋材が容器から容易に剥がれてしまい、内容物の漏洩等が起きるため好ましくない。一方、シール強度が20N/15mmを上回ると、蓋材を容器から剥がしにくくなるため好ましくない。シール強度の好ましい範囲は、4N/15mm以上18N/15mm以下であり、より好ましい範囲は6N/15mm以上16N/15mm以下である。
2.2.融解エンタルピー(ΔH)、融点
2.2.1シール層
本発明の蓋材を構成するシール層は、示差走査熱量測定(DSC)の融解ピークから算出される融解エンタルピーΔHが1000J/mol以上5000J/mol未満、かつ融点が160℃以上200℃未満でなければならない。
フィルムのΔHと融点は示差走査熱量計(DSC)により得られる値である。ΔHはフィルムの結晶性(製膜時の配向、及び昇温中の冷結晶化によって生成する結晶量)の目安となる値、融点は加熱によってフィルムが溶融する温度である。一般的に、フィルムのΔHと融点はフィルムの融けやすさの指標と考えられている。ΔHと融点が低いほど加熱によって融けやすくなるため、ヒートシール強度が向上すると考えられる。
ΔHが5000J/mol以上、ならびに融点が200℃以上であると、ヒートシール強度が2N/15mm以下となってしまうため好ましくない。一方、ΔHと融点は低ければ低いほどヒートシール強度が向上して好ましいが、現在の技術水準では、ΔHは5000J/mol、融点は160℃が下限である。好ましいΔHの範囲は1500J/mol以上4500J/mol未満、より好ましい範囲は2000J/mol以上4000J/mol未満である。また、好ましい融点の範囲は165℃以上195℃未満、より好ましい範囲は170℃以上190℃未満である。
2.2.2.基材層
本発明の蓋材を構成する基材層は、ΔHが8000J/mol以上12000J/mol・K以下、かつ融点が240℃以上280℃以下でなければならない。本発明の蓋材は、シール層は熱によって容易に融解して容器と接着する必要がある一方、基材層にはヒートシールしても融解しない特性が要求される。上述の通り、ΔHと融点はフィルムの融けやすさを示しており、いずれも値が大きいほど融けにくいことを意味する。基材層のΔHが8000J/mol未満かつ融点が230℃以下であると、ヒートシールによってシール層だけでなく基材層まで融解するため、蓋材が破れてしまったり、シールバーに粘着してしまったりするなどの問題が起きるため好ましくない。基材層のΔHと融点は高ければ高いほど耐熱性が高くなり好ましいが、現在の技術水準では、ΔHは12000J/mol、融点は270℃が上限である。好ましいΔHの範囲は、8500J/mol以上11500J/mol以下、さらに好ましい範囲は、9000J/mol以上11000J/mol以下である。また、好ましい融点の範囲は245℃以上275℃以下、さらに好ましい範囲は250℃以上270℃以下である。
2.3.シール層の防曇性
本発明の蓋材を構成するシール層には、防曇剤を存在させなければならない。防曇剤は、シール層表面と水との接触角を低下させることにより、付着した水滴を水膜にして曇りを防ぐ役割を担う。防曇性能を付与するには、シール層の原料となる樹脂へ防曇剤を練り込む、またはシール層の表面に防曇剤を塗布する方法が挙げられるが、特に限定されるものではない。防曇剤としては、本発明の作用を阻害しない範囲で特に限定されないが、食品への直接接触を考慮すると、アニオン系またはノニオン系界面活性剤が好ましい。具体的には、例えば、多価アルコールの脂肪酸エステル類、高級脂肪酸のアミン類、高級脂肪酸のアマイド類、高級脂肪酸のアミンやアマイドのエチレンオキサイド付加物などを典型的なものとして挙げることができ、その中でも、多価アルコール脂肪酸エステルが好ましい。
また、防曇剤層には防曇性を阻害しない他の成分を含有していてもよい。
本発明のシール層において、防曇剤の存在量は、防曇性能を発現できる限りは特に限定されない。練り込みの場合はシール層中に0.1重量%以上10重量%あると好ましく、0.2重量%以上5重量%以下であるとさらに好ましい。防曇剤の配合量が0.1重量%未満だと防曇性能が発現しない場合があり、10重量%を越えるとシール層のヒートシール強度が低下するだけでなく、表面のべたつきやブロッキングが発生しやすい。表面への塗布の場合は、乾燥時の厚みで10nm以上60nm以下あると好ましく、15nm以上50nmあるとさらに好ましい。防曇剤の厚みが10nm以下であると防曇性能が発現しない場合があり、60nmを超えるとシール層のヒートシール強度が低下するだけでなく、表面のべたつきやブロッキングが発生しやすい。
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、滑り性や帯電防止性などの品質向上のための各種添加剤、例えば、生産性の向上のためにワックス、金属石鹸などの潤滑剤、可塑剤、加工助剤やポリプロピレン系フィルムに通常添加される公知の熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などや、フィルムの耐ブロッキング性や滑り性を確保するための、無機質あるいは有機質の微細粒子を基材層、熱融着層の一方あるいはいずれの層にも配合することも可能である。
2.4.最大熱収縮力
本発明の蓋材は、室温から200℃まで昇温したときの長手方向と幅方向における100mmあたりの最大熱収縮力がいずれも0N/100mm以上15N/100mm以下であることが好ましい。容器とヒートシールする際、シールバーからの熱によって蓋材に収縮力が発生する。この収縮力が15N/100mm以上あると、蓋材が縮もうとする力によって容器が変形してしまうため好ましくない。また、熱収縮力の下限は0N/100mmである(すなわち収縮力が発生しない)。最大熱収縮力は13N/100mm以下であると好ましく、11N/100mm以下であるとさらに好ましい。
2.5.ヘイズ
本発明の蓋材は、ヘイズが0%以上15%以下であると好ましい。ヘイズが15%を超えると蓋材の透明性が悪くなるため、内容物の視認性が劣ることになる。ヘイズの上限は12%以下であるとより好ましく、9%以下であると特に好ましい。ヘイズは低くければ低いほど透明性は高くなり好ましいが、現状の技術水準では1%が下限であり、2%以上であっても実用上十分といえる。
2.6.引張破壊強度
本発明の蓋材は、長手方向と幅方向の引張破壊強度が80MPa以上300MPa以下であることが好ましい。長手方向と幅方向の引張破壊強度が80MPa未満であると、蓋材を印刷加工する際の張力によって破断が生じたり、容器に接着させてから剥がす際に破れが生じたりするため好ましくない。長手方向と幅方向の引張破壊強度は90MPa以上であるとより好ましく、100MPa以上であると特に好ましい。長手方向と幅方向の引張破壊強度は高ければ高いほど破れに強くなって好ましいが、現在の技術水準では300MPaが上限である。
3.ポリエステル原料の種類
本発明の蓋材の原料として用いるポリエステルは、シール層と基材層のいずれもエチレンテレフタレートユニットを主たる構成成分とするものである。ここで、主たる構成成分とするとは、全構成成分中の50モル%以上となることをさす。エチレンテレフタレートユニットは、ポリエステルの構成ユニット100モル%中、52モル%以上が好ましく、54モル%以上がより好ましい。蓋材を構成するシール層と基材層の原料種はいずれもポリエステル系であるが、それぞれの層で担う機能が異なるため、好ましい組成が異なる。以下、シール層と基材層それぞれの好ましい組成について記述する。
3.1.シール層
シール層に用いるポリエステルには、エチレンテレフタレートユニット以外の成分として、非晶成分となりうる1種以上のモノマー成分(以下、単に非晶成分と記載する)を含むことが好ましい。これは、非晶成分が存在することによってシール層のΔHと融点を下げ、ヒートシール強度を向上させることができるためである。
非晶成分となりうるカルボン酸成分のモノマーとしては、例えばイソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。また、非晶成分となりうるジオール成分のモノマーとしては、例えばネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、2,2−ジエチル1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、ヘキサンジオールを挙げることができる。これらのなかでも、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコールのいずれか1種以上を用いることでシール層のΔHmと融点を下げてヒートシール強度を2N/15mm以上としやすくなる。ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのいずれか1種以上を用いることがより好ましく、ネオペンチルグリコールを用いることが特に好ましい。
シール層に含まれる非晶成分は、後述の製膜工程において無延伸とするか、一軸または二軸延伸とするかによって好ましい非晶成分量が異なる。無延伸の場合、延伸による結晶化(ΔHの低下)が少ないため、非晶成分量は0モル%であっても必要なヒートシール強度を達成することができる。一方、一軸または二軸延伸する場合、非晶成分量が多いほど延伸による結晶化が少なくなる。一軸または二軸延伸の場合、好ましい非晶成分量は10モル%以上30モル%以下である。非晶成分量が10モル%未満であると、必要なヒートシール強度を達成することが困難となる。非晶成分量が30モル%を超えるとシール層の耐熱性が極端に低下するため、ヒートシールするときにシール部の周囲がブロッキング(加熱用部材からの熱伝導によって、意図した範囲よりも広い範囲でシールされてしまう現象)してしまい、適切なヒートシールが困難となる。一軸または二軸延伸の場合の好ましい非晶成分量は12モル%以上28モル%以下であり、さらに好ましくは14モル%以上26モル%以下である。
本発明に用いるポリエステルにおいては、エチレンテレフタレートや非晶成分以外の成分を含んでいてもよい。ポリエステルを構成するジカルボン酸成分としては、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、および脂環式ジカルボン酸等を挙げることができる。ただし、3価以上の多価カルボン酸(例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの無水物等)はポリエステル中に含有させないことが好ましい。
また、ポリエステルを構成するエチレングリコール以外のジオール成分としては、1,4−ブタンジオール等の長鎖ジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、ビスフェノールA等の芳香族系ジオール等を挙げることができる。ただし、ポリエステルには炭素数8個以上のジオール(例えば、オクタンジオール等)、または3価以上の多価アルコール(例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ジグリセリンなど)を含有させないことが好ましい。
上記に挙げたエチレンテレフタレートや非晶成分以外の成分の中でも、1,4−ブタンジオールを用いることにより、ポリエステル系シーラントのΔHと融点を下げてヒートシール強度を2N/15mm以上としやすくなるためより好ましい。
シール層に含まれる1,4−ブタンジオール成分量は、後述の製膜工程において無延伸とするか、一軸または二軸延伸とするかによって好ましい範囲が異なる。無延伸の場合、延伸による結晶化(ΔHの低下)が少ないため、非晶成分量は0モル%であっても必要なヒートシール強度を達成することができる。一方、一軸または二軸延伸する場合、非晶成分量が多いほど延伸による結晶化が少なくなる。一軸または二軸延伸の場合、好ましい1,4−ブタンジオール成分量は5モル%以上30モル%以下である。1,4−ブタンジオール成分量が5モル%未満であると、必要なヒートシール強度を達成することが困難となる。1,4−ブタンジオール成分量が30モル%を超えるとシール層の耐熱性が極端に低下するため、ヒートシールするときにシール部の周囲がブロッキング(加熱用部材からの熱伝導によって、意図した範囲よりも広い範囲でシールされてしまう現象)してしまい、適切なヒートシールが困難となる。一軸または二軸延伸の場合の好ましい1,4−ブタンジオール成分量は7モル%以上28モル%以下であり、さらに好ましくは9モル%以上26モル%以下である。
3.2.基材層
本発明の蓋材を構成する基材層に用いるポリエステルは、ΔHと融点を上げて耐熱性を高く保つため、上記に挙げた非晶成分量を低く抑えることが好ましい。ΔHと融点は、原料組成や後述の延伸、熱固定も含めた複数の製膜条件によって決まる。非晶成分の存在は、ΔHと融点を低下させるため、耐熱性の観点からは好ましくないが、ΔHが8000mol/J・Kを下回らない限りは含んでいても良い。基材層に含まれる非晶成分量は、0モル%以上6モル%以下である。
3.3.シール層、基材層共通
本発明のシール層、基材層に用いるポリエステルの中には、必要に応じて各種の添加剤、例えば、ワックス類、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、減粘剤、熱安定剤、着色用顔料、着色防止剤、紫外線吸収剤などを添加することができる。また、フィルムのすべり性を良好にする滑剤としての微粒子を、少なくともシール層、基材層どちらか一方の表層に添加することが好ましい。微粒子としては、任意のものを選択することができる。例えば、無機系微粒子としては、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウムなどをあげることができ、有機系微粒子としては、アクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子などを挙げることができる。微粒子の平均粒径は、コールターカウンタにて測定したときに0.05μm以上3.0μm以下の範囲内で必要に応じて適宜選択することができる。微粒子の好ましい配合量は、100ppm以上800ppm以下である。微粒子の配合量が100ppm未満であると、必要なすべり性を確保することが困難となる。一方、微粒子の配合量が800ppmを超えると、ヘイズが15%を超えてしまうため好ましくない。
本発明のシール層と基材層の中に粒子を配合する方法として、例えば、ポリエステル系樹脂を製造する任意の段階において添加することができるが、エステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコールなどに分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めるのが好ましい。また、ベント付き混練押出し機を用いてエチレングリコールや水、そのほかの溶媒に分散させた粒子のスラリーとポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法や、乾燥させた粒子とポリエステル系樹脂原料とを混練押出し機を用いてブレンドする方法なども挙げられる。
また、本発明のシール層と基材層には、フィルム表面の接着性を良好にするためにコロナ処理、防曇剤以外のコーティング処理や火炎処理などを施した層を設けることも可能であり、本発明の要件を逸しない範囲で任意に設けることができる。
4.製膜条件
4.1.溶融押し出し
本発明の蓋材を構成するシール層、基材層は、上記3.「ポリエステル原料の種類」で記載したポリエステル原料を押出機により溶融押し出しして未延伸フィルムを形成し、それを以下に示す所定の方法により得ることができる。シール層および基材層は無延伸、一軸延伸、二軸延伸のどの延伸方式を採用しても構わないが、強度の観点からは二軸延伸により得られたフィルムが好ましい。ただし、蓋材は基材層を用いて耐熱性や強度を発現させるため、シール層はヒートシール強度を高めるために無延伸フィルムを用いることもできる。シール層と基材層は、未延伸フィルムを形成するときに積層させ、それを後工程の延伸、熱固定を一緒に経てもよい。この場合、それぞれの原料樹脂を別々の押出機によって溶融押し出しして、フィードブロックでそれぞれの溶融樹脂を合流させることによって積層した未延伸フィルムを形成することができる。また、上述のように、シール層と基材層は別々の延伸方式をとることもできるため、それぞれのフィルムは別々に製膜した後、上記「1.蓋材の積層構成」で説明した内容で積層させることもできる。シール層と基材層は好ましいΔHと融点の範囲が異なるため、それぞれ別々のフィルムを製膜した後に積層させることが好ましい。なお、ポリエステルはジカルボン酸成分とジオール成分の種類と量を選定して重縮合させることで得ることができる。また、チップ状のポリエステルを2種以上混合した原料も使用することもできる。
原料樹脂を溶融押し出しするとき、ポリエステル原料をホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥するのが好ましい。そのようにポリエステル原料を乾燥させた後、押出機を利用して200〜300℃の温度で溶融して積層フィルムとして押し出す。押し出しはTダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。
その後、押し出しで溶融されたフィルムを急冷することにより、未延伸のフィルムを得ることができる。なお、溶融樹脂を急冷する方法としては、溶融樹脂を口金から回転ドラム上にキャストして急冷固化することにより実質的に未配向の樹脂シートを得る方法を好適に採用することができる。基材層となるフィルムは、縦(長手)方向、横(幅)方向のいずれか少なくとも一方向に延伸されていればよい。すなわち、一軸延伸フィルムあるいは二軸延伸フィルムであればよい。以下では、最初に横延伸、次に縦延伸を実施する横延伸-縦延伸による逐次二軸延伸法について説明するが、順番を逆にする縦延伸−横延伸であっても、主配向方向が変わるだけなので構わない。また同時二軸延伸法でも構わない。
4.2.横延伸
溶融押出後に急冷して得られた未延伸のフィルムをテンター(第1テンター)内でフィルムの幅方向の両端際をクリップによって把持した状態で横方向へ延伸する。横延伸の条件は、65℃〜100℃で3倍〜5倍程度の倍率とすることが好ましい。延伸温度が65℃よりも低いと横延伸によるフィルムの配向結晶化が促進されるため、横延伸だけでなく後工程の縦延伸でも破断しやすくなる虞がある。一方、横延伸温度が100℃よりも高いと、幅方向の厚みムラが18%を超える虞がある。横延伸に先立って、予備加熱を行うのが好ましく、予備加熱はフィルム表面温度が60℃〜100℃になるまで行うとよい。横延伸倍率は3倍よりも低いと、幅方向の厚みムラが18%を超えやすくなってしまう。一方、横延伸倍率が5倍よりも高いと、幅方向の厚みムラは低減できて好ましいが、フィルムを構成する分子が幅方向へ極端に配向しすぎてしまい、次工程の縦延伸へ入る際にパスラインのテンションで破断する、または縦延伸中に延伸応力が増加しすぎてしまい破断するおそれがある。
横延伸の後は、積極的な加熱操作を実行しない中間ゾーンにフィルムを通過させることが好ましい。第1テンターの横延伸ゾーンと中間熱処理ゾーンで温度差がある場合、中間熱処理ゾーンの熱(熱風そのものや輻射熱)が横延伸工程に流れ込み、横延伸ゾーンの温度が不安定になりフィルム品質が安定しなくなることがある。したがって、横延伸後で中間熱処理前のフィルムは、所定時間をかけて中間ゾーンを通過させた後に、中間熱処理ゾーンへと供給するのが好ましい。この中間ゾーンにおいては、フィルムを通過させていない状態で短冊状の紙片を垂らしたときに、その紙片がほぼ完全に鉛直方向に垂れ下がるように、横延伸ゾーンや中間熱処理ゾーンからの熱風を遮断すると、安定した品質のフィルムが得られる。中間ゾーンの通過時間は、1秒〜5秒程度で充分である。1秒より短いと、中間ゾーンの長さが不充分となって、熱風の遮断効果が不足する。また、中間ゾーンの通過時間は長い方が好ましいが、あまりに長いと設備が大きくなってしまうので、5秒程度で充分である。
4.3.縦延伸
続いて縦延伸を行う。縦延伸工程では、まず、横一軸延伸フィルムを複数のロール群を連続的に配置した縦延伸機へと導入する。縦延伸に当たっては、予熱ロールでフィルム温度が65℃〜110℃になるまで予備加熱することが好ましい。フィルム温度が65℃より低いと、縦方向に延伸し難くなる傾向がある(すなわち、破断が生じやすくなる)。一方110℃より高いとロールにフィルムが粘着しやすくなり、連続生産においてロール汚れの発生が早期に生じる虞がある。
フィルム温度が前記範囲になったら、縦延伸を行う。縦延伸はロールの速度差によって行う。延伸倍率は1.5倍〜5倍とするのが好ましい。またこのとき、延伸に使用するロールが低速・高速の2つである一段延伸だけでなく、低速・中速・高速の3つである二段延伸、低速・中低速・中高速・高速の4つである3段延伸と延伸段数を増加させることもできる。縦延伸の後は、一旦フィルムを冷却することが好ましく、表面温度が20℃〜40℃の冷却ロールで冷却することが好ましい。
4.4.熱処理
次に、縦延伸および冷却後のフィルムを第2テンターへと導入して熱処理を行う。熱処理温度は、90℃〜230℃が好ましい。熱処理温度が90℃より低いとフィルムの収縮率が高くなるため好ましくない。一方、熱処理温度は高ければ高いほどフィルムの収縮率を低減できて好ましいが、230℃より高いと、フィルムのヘイズが高くなり、蓋材としたときの透明性が低下するため好ましくない。さらに、最終熱処理温度が230℃より高い場合には、フィルムがテンター内に接触すると粘着して滞留してしまうおそれがある。
最終熱処理後は、フィルム両端部を裁断除去しながら巻き取れば、ポリエステル系のフィルムロールが得られる。
次に実施例および比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
蓋材の評価方法は以下の通りである。
<蓋材の評価方法>
[融解エンタルピーΔH、融点]
蓋材に含まれるシール層、基材層は、示差走査熱量計(DSC、セイコー電子工業株式会社製DSC220)を用いて、それぞれ別々に融解エンタルピーΔHと融点を評価した。具体的には、サンプルをアルミニウムパンに10mg秤量し、20℃から300℃まで10℃/分で昇温を行い、あらわれる吸熱ピークの極小値を示す温度を融点とし、吸熱ピークとベースラインで囲まれる面積(融解ピーク面積)が示す熱量の絶対値(ΔHm)を融解エンタルピーΔHとした。100℃付近に冷結晶化の発熱ピークがあらわれる場合は、発熱ピークとベースラインで囲まれる面積(冷結晶化ピーク面積)が示す熱量の絶対値(ΔHc)を用いて、以下の式1によってΔHを算出した。

ΔH[J/mol]=ΔHm[J/mol]−ΔHc[J/mol] 式1

吸熱ピークは、60〜90℃の温度帯と、160〜280℃の温度帯の2つが現れる場合があるが、この場合はより高温側のもの融解ピークとして選択した。
蓋材からシール層と基材層を別々に得る際、共押出しフィルムの場合はヒートシール層側の表層をフェザー刃で削りとった。削ったフィルムサンプルは、電子走査顕微鏡(SEM)により断面を観察し、ヒートシール層以外の層が削られていないかを確認した。ラミネートフィルムの場合、フィルムにノッチを入れて手で引き裂き、引き裂いた部分の層間剥がれ(切欠)をピンセットで剥がした。剥がしたヒートシール層は、切欠から1cm以上離れた部分をサンプリングした。
[ヒートシール強度]
JIS Z1707に準拠して蓋材のヒートシール強度を測定した。具体的な手順を簡単に示す。ヒートシーラーにより、蓋材のシール面と未延伸のポリエチレンテレフタレートシート(200μm、コーティング処理やコロナ処理等の表面処理は行っていない)を熱シールした。シール条件は、上バー温度200℃、下バー温度30℃、圧力0.2MPa、時間1秒とした。接着サンプルは、シール幅が15mmとなるように切り出した。剥離強度は、万能引張試験機「DSS−100」(島津製作所製)を用いて引張速度200mm/分で測定した。剥離強度は、15mmあたりの強度(N/15mm)で示す。
[ヘイズ]
JIS−K−7136に準拠し、ヘイズメータ(日本電色工業株式会社製、300A)を用いて測定した。なお、測定は2回行い、その平均値を求めた。
[引張破壊強度]
JIS K7113に準拠し、測定方向が140mm、測定方向と直交する方向が20mmの短冊状のフィルムサンプルを作製した。万能引張試験機「DSS−100」(島津製作所製)を用いて、試験片の両端をチャックで片側20mmずつ把持(チャック間距離100mm)して、雰囲気温度23℃、引張速度200mm/minの条件にて引張試験を行い、引張破壊時の強度(応力)を引張破壊強さ(MPa)とした。
[防曇評価]
蓋材から30cm×30cmの正方形にサンプルを切り出し、50℃温湯を200mL入れたプラスチックカップ(容積500mL、口部分の直径約10cm)の口部分を覆って評価用サンプルを作製した。このとき、蓋材のシール(防曇)面が温湯側となるようにし、口部分からはみ出た蓋材は輪ゴムで留めることによって密閉した。このサンプルを15℃環境下に24時間保管した後に取り出し、蓋材のシール面に付着した水滴を以下の基準で目視評価した。

判定○ 水滴の付着した面積が全面積の1/4未満
判定△ 水滴の付着した面積が全面積の1/4以上1/2未満
判定× 水滴の付着した面積が全面積の1/2以上
[最大熱収縮力]
蓋材から25mm×2mmのサイズのサンプルを切り出し、熱機械分析装置(TMA、セイコーインスツルメンツ社製)を用いて最大熱収縮応力を測定した。なお、測定方向は長手方向と幅方向の両方で行い、測定方向が25mmとなるようにした。チャック間距離は15mmとし、専用のチャックを用いてサンプルをプローブに取り付けた。サンプルをセットした後、炉内温度を室温〜160℃まで10℃/minで昇温したときの熱収縮応力を記録し、ピーク応力を最大熱収縮応力とした。得られた最大熱収縮応力を用いて、以下の式2より最大熱収縮力を算出した。

最大熱収縮力[N/100mm]
=最大熱収縮応力[MPa]×厚み[mm]×100 式2
[容器の変形評価]
蓋材から13cm×8.5cmのサイズのサンプルを切り出し、図2に示したポリエチレンテレフタレート製の容器の開口部にアイロン(東芝ライフスタイル株式会社製 東芝裁縫こて TA−A20)でヒートシールすることで評価した。このとき、蓋材のシール層が開口部のフランジ部分と接触するようにした。加熱条件は、アイロンの目盛りを「高」とし、加熱時間は10秒とした。容器と蓋材をヒートシールした後の、蓋材の収縮による容器の変形度合いを評価した。容器の変形量は、変形の最も大きい部分を採用した。判定基準は以下の通りである。

判定○ 容器開口部の変形量が1cm未満
判定× 容器開口部の変形量が1cm以上
[ヒートシール剥離後の糊残り]
上記の評価項目[ヒートシール強度]にてシール強度を測定した後のサンプルについて、糊残りを評価した。糊残りは、未延伸のポリエチレンテレフタレートシート側のヒートシールした部分(シールバー接触部分;面積=バー幅10mm×サンプル幅15mm=150mm)に残ったシール層の面積を目視で判定した。判定基準は以下の通りである。

判定○ シール層の付着面積がヒートシール全部分の半分以下
判定× シール層の付着面積がヒートシール全部分の半分よりも多い
[蓋材の穴あき評価]
蓋材のシール面と未延伸のポリエチレンテレフタレートシート(200μm、コーティング処理やコロナ処理等の表面処理は行っていない)とが向かい合うようにし、ヒートシーラーのバーで熱シールした。シール条件は、上バー温度230℃、下バー温度30℃、圧力0.6MPa、時間1秒とした。接着したサンプルのシール線より、蓋材の穴あきを目視で評価した。判定基準は以下の通りである。

判定○ 穴あきなし
判定× 穴あきあり
<ポリエステル原料の調製>
[合成例1]
撹拌機、温度計および部分環流式冷却器を備えたステンレススチール製オートクレーブに、ジカルボン酸成分としてジメチルテレフタレート100モル%と、多価アルコール成分としてエチレングリコール100モル%とを、エチレングリコールがモル比でジメチルテレフタレートの2.2倍になるように仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛を0.05モル%(酸成分に対して)用いて、生成するメタノールを系外へ留去しながらエステル交換反応を行った。その後、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.225モル%(酸成分に対して)を添加し、280℃で26.7Paの減圧条件下、重縮合反応を行い、固有粘度0.75dl/gのポリエステル(A)を得た。このポリエステル(A)は、ポリエチレンテレフタレートである。
[合成例2]
合成例1と同様の手順でモノマーを変更したポリエステル(B)〜(F)を得た。各ポリエステルの組成を表1に示す。表1において、TPAはテレフタル酸、IPAはイソフタル酸、EGはエチレングリコール、BDは1,4−ブタンジオール、NPGはネオペンチルグリコール、CHDMは1,4−シクロヘキサンジメタノール、DEGはジエチレングリコールである。なお、ポリエステル(F)の製造の際には、滑剤としてSiO2(富士シリシア社製サイリシア266)をポリエステルに対して7,000ppmの割合で添加した。各ポリエステルは、適宜チップ状にした。各ポリエステルの固有粘度は、それぞれ、B:0.74、C:0.73、D:0.73dl/g,E:0.80dl/g,F:0.75dl/gであった。
Figure 0006880758
以下に各フィルムの製膜方法について記載する。
(ポリエステルフィルムNo.1の製膜)
ポリエステルAとポリエステルCとポリエステルEとポリエステルFを質量比5:66:24:5で混合し、二軸スクリュー押出機に投入して270℃で溶融させたTダイから押し出した後、表面温度30℃に設定したチルロール上で冷却することによって未延伸の単層フィルムを得た。
未延伸の単層フィルムを、横延伸ゾーン、中間ゾーン、中間熱処理ゾーンを連続的に設けたテンター(第1テンター)に導いた。なお、中間ゾーンにおいては、フィルムを通過させていない状態で短冊状の紙片を垂らしたときに、その紙片がほぼ完全に鉛直方向に垂れ下がるように、延伸ゾーンからの熱風および熱処理ゾーンからの熱風が遮断されている。
そして、テンターに導かれた未延伸フィルムを横延伸ゾーンで78℃、3.8倍の条件で横延伸し、中間ゾーンを通過させた後に(通過時間=約1.2秒)、中間熱処理ゾーンへ導き、97℃の温度で8秒間に亘って熱処理しながら、テンターのクリップ幅を縮めてリラックスを6%実施することによって横一軸延伸フィルムを得た。
さらに、その横延伸したフィルムを、低速・高速ロールを含むロール群を連続的に配置した縦延伸機へ導き、予熱ロール上でフィルム温度が70℃になるまで予備加熱した後、低速、高速ロール上で延伸倍率が2.8倍となるよう延伸した。しかる後、縦延伸したフィルムを、表面温度25℃に設定された冷却ロールによって強制的に冷却した。
そして、冷却後のフィルムに理研ビタミン製ポエムJ0021(ポリグリセリン脂肪酸エステル)を、乾燥後の厚みが0.02g/mとなるように塗布した後、テンター(第2テンター)へ導き、第2テンター内で93℃の雰囲気下で10秒間に亘って熱処理、かつ17%横方向(フィルム幅方向)にリラックスした後に冷却し、両縁部を裁断除去しながら連続的に巻き取ることによって、厚みが約12μmのポリエステル系フィルムロールを得た。
(ポリエステルフィルムNo.2〜8の製膜)
原料の配合比率、樹脂の押出条件、横延伸、中間熱処理、縦延伸、最終熱処理条件を種々変更したポリエステル系フィルムを製膜し、評価した。なお、防曇剤は全て実施例1と同じものを用い、乾燥後の厚みが0.02g/mとなるようにした。各実施例の製造条件と特性を表2に示す。
上述したポリエステルフィルムNo.1〜8の平均厚み、融解エンタルピーΔH、融点を測定し、その結果を製造方法と一緒に表2にまとめた。
Figure 0006880758
[実施例1]
フィルムNo.1とフィルムNo.8をドライラミネーション用接着剤(三井化学社製タケラック(登録商標)A−950)を用いて積層することによって、2層の蓋材を作製した。なお、フィルムNo.1の防曇剤塗布面は、フィルムNo.8とは反対の面となるように積層した。蓋材の合計厚みは24μmであった。得られた蓋材の物性を測定した結果を表3に示す。
[実施例2〜5]
実施例2〜5は、実施例1で用いたフィルムを変更し、実施例1と同じ方法で種々の蓋材を作製し、その物性を評価した。得られた蓋材の物性を表3に示す。
[比較例1]
フィルムNo.6とフィルムNo.8をドライラミネーション用接着剤(三井化学社製タケラック(登録商標)A−950)を用いて積層することによって、2層の蓋材を作製した。蓋材の合計厚みは24μmであった。得られた蓋材の物性を測定した結果を表3に示す。
[比較例2〜4]
比較例2〜4は、実施例1で用いたフィルムを変更し、実施例1と同じ方法で種々の蓋材を作製し、その物性を評価した。得られた蓋材の物性を表3に示す。
Figure 0006880758
[フィルムの評価結果]
実施例1から5までの蓋材はいずれも表3に掲載した物性に優れており、良好な評価結果が得られた。
一方、比較例1〜4は以下の理由により、いずれも蓋材としては好ましくない結果となった。
比較例1は、防曇評価が×で内容物の視認性に劣っていただけでなく、ヒートシール強度が20N/15mmを超えていた。
比較例2はヒートシール強度がゼロとなり、容器とシールできなかった。
比較例3は蓋材の最大熱収縮力が高いため、シール後に容器の変形が大きくなり、外観不良を起こした。
比較例4は、容器(または無延伸のポリエチレンテレフタレートシート)とのシール後に穴あきが生じた。また、蓋材に穴あきが生じたため、正確な容器の変形評価は不可能だった。
本発明の蓋材は、ポリエステル系素材からなり、防曇性能とヒートシール性能とが両立しており、かつ、容器から剥離しても糊残りの少ないので、様々な容器の蓋材に適用することが可能であり、特にポリエステルからなる容器の蓋材として好適に用いることができる。

Claims (5)

  1. シール層と基材層の各層を少なくとも1層有する蓋材であって、前記シール層と前記基材層は、いずれもエチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステル系成分からなり、以下の(1)〜()を満たすことを特徴とする蓋材。
    (1)幅方向、長手方向ともに最大熱収縮力が0N/100mm以上15N/100mm以下
    (2)シール層と未延伸のポリエチレンテレフタレートシートとを200℃、0.2MPaで1秒間ヒートシールしたときのシール強度が2N/15mm以上20N/15mm以下
    (3)シール層は、示差走査熱量計から算出される融解エンタルピーΔHmが1000J/mol以上5000J/mol未満であり、かつ融点が160℃以上200℃未満
    (4)基材層は、ΔHmが8000J/mol以上12000J/mol以下であり、かつ融点が240℃以上280℃以下
  2. 幅方向、長手方向ともに引張破壊強度が80MPa以上300MPa以下であることを特徴とする請求項1に記載の蓋材。
  3. シール層を構成するポリエステル成分のモノマーが、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸、及びジエチレングリコールの内、少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の蓋材。
  4. シール層を構成するポリエステル成分中に、1,4−ブタンジオールを含むことを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の蓋材。
  5. 請求項1〜4いずれかの蓋材を用いていることを特徴とする包装体。
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