以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態
2.変形例
<1.実施の形態>
[位相差顕微鏡11の構成例]
図1及び図2は、本発明を適用した位相差顕微鏡の一実施の形態を示している。図1は、位相差顕微鏡11の外観構成例を示し、図2は、位相差顕微鏡11の光学系の構成例を示している。
位相差顕微鏡11には、ステージ27が設けられており、このステージ27上には、ウェルプレート又はシャーレなどの培養容器12(図2)が配置される。培養容器12には、観察対象となる細胞等のサンプル(不図示)及び培地が入れられる。
また、位相差顕微鏡11の図1内の上側には、サンプルに照射する照明光を発する光源21が設けられている。光源21の種類は特に限定されるものではないが、例えば、照明均一性と長寿命性、及び、培地内のフェノールレッドが培地の劣化により色が変化し、可視広域の光を吸収することにより、培養状態によって明るさが変化することを考慮して、赤色LEDが用いられる。
光源21から発せられた照明光は、後述する図2の光学系を介して、コンデンサレンズ25に入射する。コンデンサレンズ25は、照明光を集光して、ステージ27上の培養容器12内のサンプルに照射する。
ステージ27は、コンデンサレンズ25の光軸と垂直な方向(以下、X方向及びY方向と称する)、及び、コンデンサレンズ25の光軸と平行な方向(以下、Z方向と称する)に移動させることができる。また、ステージ27は、後述するように、コンデンサレンズ25の光軸に対して傾けることが可能である。
サンプルに照射された照明光は、サンプル又は培地を透過するか、又は、サンプルにおいて回析して対物レンズ28に入射する。すなわち、照明光を照射したサンプル及びその周囲から対物レンズ28に入射する観察光は、サンプル又は培地を透過した直接光と、サンプルにおいて回析し、サンプルの内部やサンプルと培地との境界等の形状情報を含む回析光とからなる。そして、観察光は、対物レンズ28により集光され、後述する光学系を介してカメラ39及び接眼レンズ43に入射する。
カメラ39は、対物レンズ28から入射した観察光による像を撮影し、得られた画像を、例えば、図示せぬ他の装置に供給して表示させたり、記憶装置に記憶させたりする。観察者であるユーザは、他の装置に表示された画像を見ることでもサンプルを観察することができる。
接眼レンズ43は、対物レンズ28から入射した観察光を集光して、観察光による像を結像させる。これにより、ユーザは、接眼レンズ43を介してサンプルを観察することができる。
ここで、図2を参照して、位相差顕微鏡11の光学系の詳細について説明する。なお、図2では、位相板37から接眼レンズ43までの光学系の図示を省略している。
光源21から発せられた照明光は、レンズ22を透過した後、コレクタレンズ23により集光され、コンデンサレンズ25の前側焦点面(対物レンズ28の入射瞳面又は入射瞳面に共役な面)に配置されている位相絞り24により光束の径が絞られる。位相絞り24の略円形の開口部を通過した照明光は、コンデンサレンズ25を経由し、ミラー26により光路が変更されて、培養容器12内のサンプルに照射される。
サンプルに照射された照明光は、上述したように直接光及び回析光からなる観察光となり、対物レンズ28に入射する。そして、観察光は、対物レンズ28により集光され、第2対物レンズ29を透過し、ミラー30により光路が変更され、1次像面P1において像を結ぶ。
1次像面P1の近傍には、一対の偏差プリズム31aと偏差プリズム31bからなる偏差プリズムユニット31が配置されている。偏差プリズム31aと偏差プリズム31bは、1次像面P1を挟んで対向し、対物レンズ28等と光軸が一致するように配置されている。また、偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bは、それぞれ光軸を中心に独立して回転させることができ、少なくとも一方が回転することにより、偏差プリズムユニット31から射出される観察光が偏向される。これにより、後述するように、位相板37への観察光の入射位置を調整し、観察光による位相絞り24の開口部の像(以下、絞り像と称する)の結像位置を調整することができる。
ここで、偏差プリズムとは、偏角プリズム(deviation prism)とも呼ばれるプリズムである。偏差プリズムの形状は様々である。本実施の形態では、例えば、くさび形状をした偏差プリズムが使用可能である。このくさび形状とは、円柱の上面の中心と下面の中心とを結ぶ軸に対して垂直な方向から斜めに円柱を切断した形状である。
例えば、図2の偏差プリズムユニット31の場合、各々が上記の様なくさび形状をした2つの偏差プリズム31aと偏差プリズム31bを光軸に沿って並設した状態で使用する。さらに、偏差プリズム31aと偏差プリズム31bは、円柱部材の上面と下面に相当する面どうしを対向させた状態で配置する。
なお、本実施の形態で使用可能な偏差プリズムは、上記のものに限定されるものではない。
偏差プリズムユニット31から射出された観察光は、レンズ32及びレンズ33を透過し、ミラー34により光路が変更され、レンズ35及びレンズ36を透過し、位相板37に入射する。
位相板37は、対物レンズ28の射出瞳面(対物レンズ28の後側焦点面)と共役な瞳共役面P2に配置されており、位相板37上で、位相絞り24の開口部の像(すなわち、絞り像)が結像する。
また、位相板37には、光軸を中心とする円形の位相膜37Aが設けられている。なお、位相膜37Aの面積は、瞳共役面P2の視野の10%程度に設定することが良いことが経験的に分かっている。この面積に設定することにより、培養容器12内の培地のメニスカスにより絞り像の形状が変形しても、絞り像を位相膜37A内に収めることが可能になる。
位相板37に入射した照明光のうち、位相膜37Aに入射した観察光は、光量が弱められるとともに、所定量(例えば、4分の1波長)だけ位相がシフトする。なお、位相膜37Aにより、観察光の位相を進めるようにしてもよいし、遅らせるようにしてもよい。一方、位相板37の位相膜37A以外の部分に入射した観察光は、そのまま位相板37を透過する。
従って、絞り像が位相膜37A内に収まるように調整されていれば、位相板37に入射する観察光のうち直接光がほぼ全て位相膜37Aに入射し、減光されるとともに、位相がシフトする。一方、回折光のほとんどが、位相板37の位相膜37A以外の部分に入射し、そのまま位相板37を透過する。その結果、直接光と回折光の干渉効果を高め、高コントラストで質の高いサンプルの観察像を得ることができる。
絞り像と位相膜37Aの位置合わせは、偏差プリズムユニット31を用いて行われる。
具体的には、上述したように偏差プリズムユニット31により観察光を偏向し、瞳共役面P2(位相板37)上の絞り像の結像位置を光軸と垂直な方向に移動させることにより位置合わせが行われる。
例えば、偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bを光軸を中心に異なる角速度で回転させた場合、図3に示されるように、絞り像Iが瞳共役面P2上で螺旋状に移動する。
また、図示は省略するが、偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bを光軸を中心に同じ方向に同じ角速度で回転させることにより、絞り像が瞳共役面P2上で光軸を中心とする円周上を周方向に移動する。さらに、図示は省略するが、偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bを光軸を中心に逆方向に同じ角速度で回転させることにより、絞り像が瞳共役面P2上で光軸を中心とする径方向に直線上に移動する。
そして、偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bの回転方向の位置を適切に調整することにより、絞り像が位相膜37A内に収まるように位置合わせをすることができる。
なお、偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bの回転方向の位置の調整は、手動又は電動のいずれで行うようにすることも可能である。ただし、絞り像と位相膜37Aの位置合わせを自動で行う場合には、少なくとも電動で調整できるようにする必要がある。
なお、以下、絞り像が位相膜37A内に収まることを、絞り像と位相膜37Aの位置が合うと表現し、特に、絞り像の中心と位相膜37Aの中心が一致することを、絞り像と位相膜37Aの位置が一致すると表現する。
位相板37を透過した観察光は、結像レンズ38により、1次像面P1と共役な像面に配置されているカメラ39内のイメージセンサ39A(の撮像面)において結像する。そして、イメージセンサ39Aにおいて、直接光と回折光が干渉することにより、サンプルの観察像(以下、サンプル像と称する)が形成される。
カメラ39は、イメージセンサ39A上に結像したサンプル像等を撮影する。また、カメラ39は、撮影の結果得られた画像を、図示せぬ他の装置に供給して表示させたり、制御部72(図4)に供給したり、図示せぬ記憶装置に記憶させたりする。
ベルトランレンズ40は、必要に応じて、位相板37と結像レンズ38の間の光路上の所定の位置に挿入される。ベルトランレンズ40が挿入されると、瞳共役面P2の像、すなわち、位相板37の像が、イメージセンサ39A(の撮像面)において結像する。位相板37上には絞り像が結像しているため、その結果、絞り像と位相膜の像(以下、位相膜像と称する)を含む位相板37の像をカメラ39により撮影することができる。
ミラー41は、必要に応じて、位相板37と結像レンズ38の間の光路上の所定の位置に挿入され、挿入された状態において、位相板37を透過した後の観察光を光検出器42に入射させる。
光検出器42は、例えば、PMT(光電子増倍管)等の入射光量の検出が可能なセンサにより構成される。光検出器42は、ミラー41により反射されて入射する観察光の光量を検出し、その結果を示す信号(以下、光検出信号と称する)を制御部72(図4)に供給する。
また、図2には図示されていていないが、接眼レンズ43は、位相板37を透過した観察光を集光して、観察光による像を結像させる。これにより、ユーザは、接眼レンズ43を介してサンプルを観察することができる。
図4は、位相差顕微鏡11の制御及び駆動等を行う部分の機能の構成例を示している。
入力部71は、例えば、ボタン、スイッチ、キー等の操作部材や入力デバイス等により構成される。ユーザは、入力部71を介して位相差顕微鏡11の各種の操作を行ったり、データの入力を行ったりすることができる。例えば、ユーザは、入力部71を介して、ステージ27の位置や傾き等を調整したり、偏差プリズムユニット31の回転方向の位置を調整したりすることができる。
制御部72は、カメラ39から供給される画像、光検出器42から供給される光検出信号、入力部71から供給される指令やデータ等に基づいて、位相差顕微鏡11の各部の制御を行う。例えば、制御部72は、駆動部73を制御することにより、ステージ27の位置や傾き等を調整したり、偏差プリズムユニット31の回転方向の位置を調整したりする。また、例えば、制御部72は、カメラ39の撮影処理の制御を行う。
駆動部73は、例えば、ステージ27、偏差プリズムユニット31等の位相差顕微鏡11の可動部分を駆動するためのアクチュエータやモータ等からなる機構により構成される。
図5は、制御部72の機能の一部である位置合わせ制御部101aの機能の構成例を示している。
位置合わせ制御部101aは、絞り像と位相板37の位相膜37Aとの位置合わせの制御を行う。位置合わせ制御部101aは、輝度検出部111及び調整部112を含むように構成される。
輝度検出部111は、カメラ39から供給される画像の輝度を検出し、検出結果を調整部112に供給する。
調整部112は、画像の輝度の検出結果に基づいて、駆動部73を制御して、絞り像と位相膜37Aの位置が合うように、偏差プリズムユニット31の回転方向の位置を調整する。
[位相差顕微鏡11の処理]
次に、位相差顕微鏡11の処理について説明する。
(観察処理)
まず、図6のフローチャートを参照して、位相差顕微鏡11により実行される観察処理について説明する。
ステップS1において、位相差顕微鏡11は、観察位置に培養容器12を移動させる。
具体的には、位相差顕微鏡11の制御部72は、駆動部73を制御して、培養容器12内の観察対象となるサンプルが対物レンズ28の光軸上に配置されるように、ステージ27を水平方向(XY方向)に移動させる。
なお、ステージ27の移動は、ユーザ操作によりマニュアルで行うようにしてもよいし、或いは、予め設定されている設定値に基づいて、位相差顕微鏡11が自動で行うようにしてもよい。
ステップS2において、位相差顕微鏡11は、ピント調整を行う。ピント調整の方法は、特に限定されるものはないが、例えば、位相差顕微鏡11の制御部72が、オートフォーカス機能を利用して、観察対象となるサンプルにピントが合うように、対物レンズ28の上下方向(Z方向)の位置を調整する。
ステップS3において、位相差顕微鏡11は、絞り像位置調整処理を実行する。ここで、図7及び図8のフローチャートを参照して、絞り像位置調整処理の詳細について説明する。
なお、この絞り像位置調整処理は、サンプルの像を撮影した画像(以下、サンプル画像と称する)、又は、位相板37の像を撮影した画像(以下、位相板画像と称する)のいずれかを用いて実行される。
(絞り像位置調整処理の第1の実施の形態)
まず、図7のフローチャートを参照して、サンプル画像を用いて絞り像位置調整処理を実行する場合について説明する。
ステップS21において、位相差顕微鏡11は、サンプルの画像を取得する。具体的には、この処理は、位相板37と結像レンズ38の間の光路上にベルトランレンズ40もミラー41も挿入されていない状態で行われ、カメラ39のイメージセンサ39A上には、位相板37を透過した後の観察光によるサンプル像が結像する。そして、カメラ39は、制御部72の制御の下に、サンプル像の撮影を行い、得られたサンプル画像を輝度検出部111に供給する。
ステップS22において、輝度検出部111は、画像(サンプル画像)全体の輝度を検出する。
ステップS23において、輝度検出部111は、輝度が閾値以下であるか否かを判定する。具体的には、位相板37上において絞り像と位相膜37Aが重なる面積が大きくなるほど、観察光に含まれる直接光が減光されないため、サンプル画像の輝度は低くなる。一方、絞り像と位相膜37Aが重なる面積が小さくなるほど、観察光に含まれる直接光が減光されるため、サンプル画像の輝度は高くなる。従って、サンプル画像の輝度により、絞り像と位相膜37Aの重なり具合を把握することができる。また、閾値を適切に設定することにより、サンプル画像の輝度に基づいて、絞り像が位相膜37A内に収まっているか、或いは、位相膜37A内に収まらずにはみ出しているかを判定することが可能になる。
そして、輝度検出部111が、サンプル画像全体の輝度が閾値を超えていると判定した場合、すなわち、絞り像が位相膜37A内に収まっていないと想定される場合、処理はステップS24に進む。
ステップS24において、位置合わせ制御部101aは、絞り像の位置を調整する。具体的には、輝度検出部111は、サンプル画像の輝度の検出結果を調整部112に供給する。調整部112は、サンプル画像全体の輝度を下げる方向に、駆動部73を介して偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bの回転方向の位置を調整する。これにより、絞り像が、位相板37上において位相膜37A内に収まる方向に移動する。
その後、処理はステップS21に戻り、ステップS23において、サンプル画像の輝度が閾値以下であると判定されるまで、ステップS21乃至S24の処理が繰り返し実行される。これにより、サンプル画像の輝度が下がるように、偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bの回転方向の位置が調整される。
なお、絞り像位置調整処理の開始時に、サンプル画像全体の輝度が下がる方向が不明である場合が想定される。この場合、例えば、まず偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bの回転方向や回転量を変化させながら、サンプル画像の輝度が下がる方向を特定するようにすればよい。
また、例えば、サンプル画像を所定の数の領域に分割し、各領域の輝度を検出し、輝度が最も明るい領域の位置に基づいて、絞り像が位相膜37Aからずれている方向を特定するようにしてもよい。これにより、絞り像を位相膜37A内に収めるのに必要な偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bの回転方向及び回転量を推定することができ、より迅速に絞り像の位置合わせをすることができる。
一方、ステップS23において、サンプル画像の輝度が閾値以下であると判定された場合、絞り像位置調整処理は終了する。
このようにして、培養容器12内の培地のメニスカスによる絞り像のズレが自動的に補正される。
(絞り像位置調整処理の第2の実施の形態)
次に、図8のフローチャートを参照して、位相板画像を用いて絞り像位置調整処理を実行する場合について説明する。
ステップS41において、位相差顕微鏡11は、位相板37の画像を取得する。具体的には、まず、駆動部73は、例えば、図示せぬターレット等を駆動して、位相板37と結像レンズ38の間の光路上の所定の位置にベルトランレンズ40を挿入する。これにより、カメラ39のイメージセンサ39A上には、絞り像及び位相膜像を含む位相板37の像が結像する。この状態で、カメラ39は、制御部72の制御の下に、位相板37の像の撮影を行い、得られた位相板画像を輝度検出部111に供給する。
なお、ベルトランレンズ40の挿入は、ユーザ操作によりマニュアルで行うようにしてもよいし、或いは、位相差顕微鏡11が自動で行うようにしてもよい。
ステップS42乃至S44の処理において、図6のステップS22乃至S24と同様の処理が行われ、ステップS43において、位相板画像の輝度が閾値以下であると判定されるまで、ステップS41乃至S44の処理が繰り返し実行される。
一方、ステップS43において、位相板画像の輝度が閾値以下であると判定された場合、絞り像位置調整処理は終了する。
なお、絞り像位置調整処理の終了後に、位相板37と結像レンズ38の間の光路上からベルトランレンズ40が除去される。なお、ベルトランレンズ40の除去は、ユーザ操作によりマニュアルで行うようにしてもよいし、或いは、位相差顕微鏡11が自動で行うようにしてもよい。
このようにして、サンプル画像を用いる場合と同様に、培養容器12内の培地のメニスカスによる絞り像のズレが自動的に補正される。また、位相板画像は、サンプル画像と比較して、絞り像の位置の変化に伴う輝度の変化量が大きいため、より正確に絞り像の位置を位相膜37Aに合わせることができる。
なお、サンプル画像又は位相板画像全体の輝度ではなく、例えば、画像の中央の所定の範囲の輝度など、画像の一部の輝度を用いて、絞り像の位置を調整するようにしてもよい。
また、例えば、閾値を用いずに、サンプル画像又は位相板画像の輝度が最小になるように、偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bの回転方向の位置を調整するようにしてもよい。
図6に戻り、ステップS4において、位相差顕微鏡11は、サンプルの撮影等を行う。
例えば、カメラ39は、制御部72の制御の下に、サンプル像の撮影を行い、得られたサンプル画像を図示せぬ他の装置(例えば、パーソナルコンピュータ、ディスプレイ等)に供給して表示させる。ユーザは、その他の装置に表示された画像により、サンプルを観察する。或いは、ユーザは、接眼レンズ43を介して、位相板37を透過した観察光によるサンプル像を観察する。
その後、観察処理は終了する。
以上のようにして、絞り像と位相膜37Aの位置合わせを、簡単、迅速かつ適切に行うことができる。また、培養容器12内の培地のメニスカスの影響を受けずに、高コントラストで高品質のサンプル像を得ることができる。
さらに、位相絞り24をシフトさせるためのステージを設けることなく、偏差プリズムユニット31を回転させるだけのシンプルかつ安価な構成及び方法により、絞り像と位相膜37Aの位置合わせを行うことができる。
また、照明光が照射される領域が光軸の中心部の狭い領域内に限定され、対物レンズ28の実質的な開口数(NA)が小さくなるため、低倍率から高倍率の広い範囲で使用することができる。また、培養容器12の端部のサンプルを観察する場合に、照明光と培養容器12の壁面との干渉が発生しにくくなる。
さらに、例えば96穴のウェルプレートのように、穴の径に対する壁面の高さの比率が大きい培養容器12では、位相絞り24のシフトにより絞り像の位置合わせを行う場合、位相絞り24の僅かな動きで照明光が培養容器12の壁面と干渉してしまい、観察可能な範囲が狭くなってしまう。一方、この方法では、対物レンズ28より後段において、絞り像の位置を調整するので、そのような現象が発生しない。
なお、以上の説明では、図6のステップS3において、画像の輝度を用いて絞り像の位置合わせを行う例を示したが、画像の輝度以外を用いることも可能である。
(絞り像位置調整処理の第3の実施の形態)
まず、図9乃至図11を参照して、図6のステップS3の絞り像位置調整処理の第3の実施の形態について説明する。
図9は、位置合わせ制御部の第2の実施の形態である位置合わせ制御部101bの機能の構成例を示している。
位置合わせ制御部101bは、位置検出部131及び調整部132を含むように構成される。
位置検出部131は、カメラ39から供給される位相板画像における絞り像と位相膜像の位置を検出し、検出結果を調整部132に供給する。
調整部132は、絞り像と位相膜像の位置の検出結果に基づいて、駆動部73を制御して、絞り像と位相膜37Aの位置が合うように、偏差プリズムユニット31の回転方向の位置を調整する。
次に、図10のフローチャートを参照して、図6のステップS3の絞り像位置調整処理の第3の実施の形態について説明する。
ステップS61において、図8のステップS41の処理と同様に、位相板画像が取得され、取得された位相板画像が、カメラ39から位置検出部131に供給される。
ステップS62において、位置検出部131は、位相板画像の中から、絞り像と位相膜像の位置を検出する。
図11は、位相板画像の例を模式的に示す図である。絞り像Ia及び位相膜像Ibとも略円形であり大きさも既知である。また、絞り像Iaの方が位相膜像Ibより小さく、かつ、輝度が高い。従って、培地のメニスカスにより絞り像Iaの歪みが発生したとしても、形状認識等の方法により、位相板画像の中から2つの像を個別に検出し、各像の位置を検出することは容易である。
そこで、位置検出部131は、所定の方法により、位相板画像の中から絞り像及び位相膜像を個別に検出し、各像の位置(例えば、中心位置)を検出する。この検出結果に基づいて、絞り像と位相膜37Aの重なり具合を把握することができる。
ステップS63において、位置検出部131は、ステップS62の結果に基づいて、絞り像が位相膜像内に収まっているか否かを判定する。絞り像が位相膜像に収まっていないと判定された場合、処理はステップS64に進む。
ステップS64において、位置合わせ制御部101bは、絞り像の位置を調整する。具体的には、位置検出部131は、絞り像と位相膜像の位置の検出結果を調整部132に供給する。調整部132は、絞り像の中心が位相膜像の中心と一致する方向に絞り像が移動するように、駆動部73を介して偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bの回転方向の位置を調整する。
その後、処理はステップS61に戻り、ステップS63において、絞り像が位相膜像内に収まっていると判定されるまで、ステップS61乃至S64の処理が繰り返し実行される。
一方、ステップS63において、絞り像が位相膜像内に収まっていると判定された場合、絞り像位置調整処理は終了する。
なお、図8の絞り像位置調整処理と同様に、絞り像位置調整処理の終了後に、位相板37と結像レンズ38の間の光路上からベルトランレンズ40が除去される。
このようにして、培養容器12内の培地のメニスカスによる絞り像のズレが自動的に補正される。また、実際に絞り像と位相膜37Aの相対位置を検出して、絞り像の位置合わせを行うので、上述した画像の輝度に基づいて調整する場合と比較して、より正確に位置合わせを行うことができる。
(絞り像位置調整処理の第4の実施の形態)
次に、図12及び図13を参照して、図6のステップS3の絞り像位置調整処理の第4の実施の形態について説明する。
図12は、位置合わせ制御部の第3の実施の形態である位置合わせ制御部101cの機能の構成例を示している。
位置合わせ制御部101cは、サンプル検出部151、コントラスト検出部152、及び、調整部153を含むように構成される。
サンプル検出部151は、サンプル画像内のサンプル及びその細部を検出する。サンプル検出部151は、検出結果を及びサンプル画像とともにコントラスト検出部152に供給する。
コントラスト検出部152は、サンプル画像内のサンプルのコントラストの強度を検出し、検出結果を調整部153に供給する。
調整部153は、サンプル画像内のサンプルのコントラストの強度の検出結果に基づいて、駆動部73を制御して、絞り像と位相膜37Aの位置が合うように、偏差プリズムユニット31の回転方向の位置を調整する。
次に、図13のフローチャートを参照して、図6のステップS3の絞り像位置調整処理の第4の実施の形態について説明する。
ステップS81において、図7のステップS21の処理と同様に、サンプルの画像が取得され、取得されたサンプル画像が、カメラ39からサンプル検出部151に供給される。
ステップS82において、サンプル検出部151は、画像内のサンプルを検出する。例えば、サンプル検出部151は、観察対象となるサンプルが細胞である場合、既知の細胞の形態情報を用いて、サンプル画像内の細胞の核や細胞膜等を検出する。サンプル検出部151は、検出結果をサンプル画像とともにコントラスト検出部152に供給する。
ステップS83において、コントラスト検出部152は、サンプル画像内のサンプルのコントラストの強度を検出し、検出結果を調整部153に供給する。
ステップS84において、コントラスト検出部152は、コントラストの強度が閾値以上であるか否かを判定する。具体的には、位相板37上において絞り像と位相膜37Aが重なる面積が大きくなるほど、サンプル像における直接光と間接光の干渉が大きくなり、サンプル画像内のサンプル像のコントラストが強くなる。逆に、位相板37上において絞り像と位相膜37Aが重なる面積が小さくなるほど、サンプル像における直接光と間接光の干渉が小さくなり、サンプル画像内のサンプル像のコントラストが弱くなる。従って、サンプル像のコントラストに基づいて、絞り像と位相膜37Aの重なり具合を把握することができる。また、閾値を適切に設定することにより、サンプル画像のコントラストの強度に基づいて、絞り像が位相膜37A内に収まっているか、或いは、位相膜37A内に収まらずにはみ出しているかを判定することが可能になる。
そして、コントラスト検出部152が、コントラストの強度が閾値未満であると判定した場合、すなわち、位相板37上において絞り像が位相膜37A内に収まっていないと想定される場合、処理はステップS85に進む。
ステップS85において、位置合わせ制御部101dは、絞り像の位置を調整する。具体的には、コントラスト検出部152は、サンプル画像のコントラストの検出結果を調整部153に供給する。調整部153は、サンプル画像のコントラストが強くなる方向に、駆動部73を介して偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bの回転方向の位置を調整する。
その後、処理はステップS81に戻り、ステップS84において、サンプル画像のコントラストの強度が閾値以上であると判定されるまで、ステップS81乃至S85の処理が繰り返し実行される。これにより、サンプル画像のコントラストが強くなるように、偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bの回転方向の位置が調整される。
なお、絞り像位置調整処理の開始時に、サンプル画像のコントラストが強くなる方向が不明である場合が想定される。この場合、例えば、偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bの回転方向や回転量を変化させながら、サンプル画像のコントラストが強くなる方向を特定するようにすればよい。
一方、ステップS84において、サンプル画像のコントラストが閾値以上であると判定された場合、絞り像位置調整処理は終了する。
このようにして、培養容器12内の培地のメニスカスによる絞り像のズレが自動的に補正される。
なお、例えば、閾値を用いずに、サンプル画像のコントラストが最大になるように、偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bの回転方向の位置を調整するようにしてもよい。
(絞り像位置調整処理の第5の実施の形態)
次に、図14及び図15を参照して、図6のステップS3の絞り像位置調整処理の第5の実施の形態について説明する。
図14は、位置合わせ制御部の第4の実施の形態である位置合わせ制御部101dの機能の構成例を示している。
位置合わせ制御部101dは、調整部171を含むように構成される。
調整部171は、光検出器42から供給される光検出信号に基づいて、駆動部73を制御して、絞り像と位相膜37Aの位置が合うように、偏差プリズムユニット31の回転方向の位置を調整する。
次に、図15のフローチャートを参照して、図6のステップS3の絞り像位置調整処理の第5の実施の形態について説明する。
ステップS101において、位相差顕微鏡11は、観察光の光量を検出する。具体的には、まず、駆動部73は、例えば、図示せぬターレット等を駆動して、位相板37と結像レンズ38の間の光路上の所定の位置にミラー41を挿入する。これにより、位相板37を透過した後の観察光が光検出器42に入射する。光検出器42は、入射する観察光の光量を検出し、検出結果を示す光検出信号を調整部171に供給する。
ステップS102において、調整部171は、観察光の光量が閾値以下であるか否かを判定する。具体的には、位相板37上において絞り像と位相膜37Aが重なる面積が大きくなるほど、観察光に含まれる直接光が減光される量が増えるため、観察光の光量が下がる。逆に、絞り像と位相膜37Aが重なる面積が小さくなるほど、観察光に含まれる直接光が減光される量が減るため、観察光の光量が上がる。従って、観察光の光量により、絞り像と位相膜37Aの重なり具合を把握することができる。また、閾値を適切に設定することにより、観察光の光量に基づいて、絞り像が位相膜37A内に収まっているか、或いは、位相膜37A内に収まらずにはみ出しているかを判定することが可能になる。
そして、調整部171が、観察光の光量が閾値を超えていると判定した場合、すなわち、絞り像が位相膜37A内に収まっていないと想定される場合、処理はステップS103に進む。
ステップS103において、調整部171は、絞り像の位置を調整する。具体的には、調整部171は、観察光の光量が下がる方向に、駆動部73を介して偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bの回転方向の位置を調整する。これにより、絞り像が、位相板37上において位相膜37A内に収まる方向に移動する。
その後、処理はステップS101に戻り、ステップS102において、観察光の光量が閾値以下であると判定されるまで、ステップS101乃至S103の処理が繰り返し実行される。これにより、観察光の光量が下がるように、偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bの回転方向の位置が調整される。
なお、絞り像位置調整処理の開始時に、観察光の光量が下がる方向が不明である場合が想定される。この場合、例えば、偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bの回転方向や回転量を変化させながら、観察光の光量が下がる方向を特定するようにすればよい。
また、例えば、光検出器42を複数のセンサにより構成し、観察光の光量を所定の領域毎に分割して検出し、光量が最も大きい領域の位置に基づいて、絞り像が位相膜37Aからずれている方向を特定するようにしてもよい。これにより、絞り像を位相膜37A内に収めるのに必要な偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bの回転方向及び回転量を推定することができ、より迅速に絞り像の位置合わせをすることができる。
一方、ステップS102において、観察光の光量が閾値以下であると判定された場合、絞り像位置調整処理は終了する。
このようにして、培養容器12内の培地のメニスカスによる絞り像のズレが自動的に補正される。
なお、例えば、閾値を用いずに、観察光の光量が最小になるように、偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bの回転方向の位置を調整するようにしてもよい。
(タイムラプス観察処理)
次に、図16のフローチャートを参照して、位相差顕微鏡11により実行されるタイムラプス観察処理について説明する。ここで、タイムラプス観察とは、例えば、予め設定されている撮影スケジュールに基づいて、所定の時間毎にサンプルを撮影することにより、サンプルの時系列の変化を観察するものである。なお、撮影スケジュールには、例えば、各観察位置に対応するステージ27の位置、撮影時刻等が設定されている。
なお、以下、1回の撮影タイミングにおいて、複数の観察位置において撮影を行う場合を例に挙げて説明する。これは、例えば、ウェルプレートの各ウェル内のサンプルを撮影する場合や、サンプルを複数の領域に分割してタイリング撮影を行う場合等である。
ステップS201において、位相差顕微鏡11は、次の観察位置に培養容器12を移動させる。具体的には、位相差顕微鏡11の制御部72は、撮影スケジュールに設定されている次の位置までステージ27を水平方向に動かすことにより、次の観察位置に培養容器12を移動させる。
ステップS202において、図6のステップS2の処理と同様に、ピント調整が行われる。
ステップS203において、図6のステップS3の処理と同様に、絞り像位置調整処理が実行される。なお、図7、図8、図10、図13又は図15を参照して上述したいずれの絞り像位置調整処理を採用することも可能である。ただし、処理時間を考慮すれば、ベルトランレンズ40やミラー41の挿脱が不要な図7又は図13の処理を採用することが望ましい。
なお、以下、図5の位置合わせ制御部101a及び図7の絞り像位置調整処理を採用した場合の例について説明する。
ステップS204において、調整部112は、ズレ補正量を記憶する。例えば、調整部112は、ステップS203の処理で絞り像の位置合わせを行った後の偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bの回転方向の位置と所定の基準位置との差を、現在の観察位置におけるズレ補正量として、図示せぬ記憶装置に記憶させる。すなわち、この場合、ズレ補正量は、絞り像を位相膜37Aに合わせるために必要な偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bの基準位置からの回転方向及び回転量を表す。例えば、偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bがステッピングモータにより駆動される場合には、ズレ補正量は、ステッピングモータの原点からのステップ位置により表される。
ステップS205において、位相差顕微鏡11は、撮影を行う。具体的には、カメラ39は、制御部72の制御の下に、サンプル像の撮影を行い、得られたサンプル画像を図示せぬ他の装置に送信したり、記憶装置に記憶させたりする。
ステップS206において、制御部72は、全ての観察位置の撮影が終了したか否かを判定する。まだ全ての観察位置の撮影が終了していないと判定された場合、処理はステップS201に戻る。
その後、ステップS201において、全ての観察位置の撮影が終了したと判定されるまで、ステップS201乃至S206の処理が繰り返し実行される。これにより、全ての観察位置において、絞り像の位置合わせが行われた後、サンプル像の撮影が行われる。また、各観察位置において、絞り像を適切な位置に設定するために必要なズレ補正量が検出され、記憶される。
一方、ステップS206において、全ての観察位置の撮影が終了したと判定された場合、処理はステップS207に進む。
ステップS207において、制御部72は、撮影スケジュールに基づいて、観察期間が終了したか否かを判定する。まだ観察期間が終了していないと判定された場合、処理はステップS208に進む。
ステップS208において、制御部72は、撮影スケジュールに基づいて、撮影時刻になったか否かを判定する。ステップS208の判定処理は、撮影時刻になったと判定されるまで、所定の間隔で繰り返し実行され、撮影時刻になったと判定された場合、処理はステップS209に進む。
ステップS209において、制御部72は、培地の液面の状態が変化したか否かを判定する。培地の液面の状態が変化していないと判定された場合、処理はステップS210に進む。
ステップS210において、ステップS201の処理と同様に、次の観察位置に培養容器12が移動する。
ステップS211において、図6のステップS2の処理と同様に、ピント調整が行われる。
ステップS212において、調整部112は、記憶したズレ補正量に基づいて、絞り像の位置合わせを行う。具体的には、調整部112は、現在の観察位置におけるズレ補正量を、図示せぬ記憶装置から読み出す。そして、調整部112は、駆動部73を制御して、偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bを、所定の基準位置から、読み出したズレ補正量により表される方向及び角度だけそれぞれ回転させる。
これにより、ステップS203の処理のような絞り像位置調整処理を行わずに、絞り像の位置合わせを適切かつ迅速に行うことができる。
ステップS213において、ステップS205の処理と同様に、撮影が行われる。
ステップS214において、ステップS206の処理と同様に、全ての観察位置の撮影が終了したか否かが判定される。まだ全ての観察位置の撮影が終了していないと判定された場合、処理はステップS210に戻る。
その後、ステップS214において、全ての観察位置の撮影が終了したと判定されるまで、ステップS210乃至S214の処理が繰り返し実行される。これにより、全ての観察位置において、記憶しているズレ補正量を用いて絞り像の位置合わせが行われた後、サンプル像の撮影が行われる。従って、各観察位置において、高コントラストで高品質のサンプル画像を迅速に撮影することができる。
一方、ステップS214において、全ての観察位置の撮影が終了したと判定された場合、処理はステップS207に戻り、ステップS207以降の処理が実行される。
また、ステップS209において、培地の液面の状態が変化したと判定された場合、処理はステップS201に戻る。これは、例えば、前回の撮影が終了してから今回の撮影までの間に培地の交換が行われた場合等である。
その後、ステップS206において、全ての観察位置の撮影が終了したと判定されるまで、ステップS201乃至S206の処理が繰り返し実行される。すなわち、培地の液面の状態が変化した場合、再度各観察位置において、絞り像の位置調整をしながら撮影が行われるとともに、各観察位置におけるズレ補正量が記憶される。
一方、ステップS207において、観察期間が終了したと判定された場合、タイムラプス観察処理は終了する。
以上のようにして、タイムラプス観察を行う場合も同様に、培養容器12内の培地のメニスカスの影響を受けずに、高コントラストで高品質のサンプル像を得ることができる。
<2.変形例>
以下、上述した本技術の実施の形態の変形例について説明する。
[絞り像の位置合わせ方法の変形例]
以上の説明では、偏差プリズムユニット31を用いて、絞り像の位置合わせを行う例を示したが、他の方法を採用することも可能である。
(平行平板ガラス(ハービング)を用いる方法)
例えば、図17に示されるように、偏差プリズムユニット31の代わりに、平行平板ガラス201を用いることが可能である。
平行平板ガラス201は、例えば、一次像面P1の近傍(一次像面P1上を含む)に、対物レンズ28等と光軸が一致するように配置される。平行平板ガラス201は、例えば、駆動部73により観察光に対する傾きを調整できるように設置される。
或いは、平行平板ガラス201を、例えば、位相板37の入射側の近傍に、位相板37と光軸が一致するように配置することも可能である。より正確には、平行平板ガラス201を、位相板37の入射側に配置されているレンズ36の入射側の近傍に、レンズ36及び位相板37と光軸が一致するように配置することも可能である。
いずれの位置に平行平板ガラス201を設置した場合も、平行平板ガラス201を観察光に対して傾けることにより、平行平板ガラス201に入射される観察光の中心軸に対して、平行平板ガラス201から出射される観察光の中心軸を平行にずらすことができる。
従って、平行平板ガラス201の傾きを調整することにより、位相板37への観察光の入射位置を調整し、その結果、位相板37上の絞り像の位置を調整することができる。
従って、平行平板ガラス201を傾けるだけのシンプルかつ安価な構成及び方法により、絞り像と位相膜37Aの位置合わせを行うことができる。
なお、平行平板ガラス201を、一次像面P1の近傍及び位相板37の入射側の近傍の両方に配置することも可能である。
また、平行平板ガラス201の傾きの調整は、手動又は電動のいずれで行うようにすることも可能である。ただし、上述したように絞り像と位相膜37Aの位置合わせを自動で行う場合には、少なくとも電動で調整できるようにする必要がある。
(培養容器12を傾ける方法)
また、例えば、培養容器12を直接または間接的に照明光に対して傾けて、培養容器12の底面をプリズムとして機能させることにより、絞り像の位置合わせを行うことも可能である。ここで、培養容器12を直接傾けるとは、例えば、培養容器12を直接動かして傾けることである。一方、培養容器12を間接的に傾けるとは、例えば、培養容器12が置かれているステージ27を傾けることにより、培養容器12を傾けることである。
図18は、培養容器12を傾ける方法を採用した場合の位相差顕微鏡11の光学系の構成例を示している。図18の光学系は、図2の光学系から偏差プリズムユニット31を削除した構成を有している。
ここで、図19を参照して、図18の光学系を有する位相差顕微鏡11における絞り像の位置合わせの方法について説明する。
図19Aは、ステージ27を観察光に対して傾ける前の状態を模式的に示し、図19Bは、ステージ27を観察光に対して傾けた後の状態を模式的に示している。
図19Aに示されるように、駆動部73を介してステージ27を照明光に対して傾けることにより、培養容器12の底面が照明光に対して傾き、培養容器12の底面で照明光が屈折する。従って、例えば、図19Bに示されるように、培養容器12の底面を左斜め上(右斜め下)に傾けることにより、観察光の進行方向は、傾ける前と比較して右方向にシフトする。一方、例えば、図19Bとは逆に、培養容器12の底面を右斜め上(左斜め下)に傾けることにより、観察光の進行方向は、傾ける前と比較して左方向にシフトする。
従って、ステージ27を傾ける方向及び角度を変えることにより、位相板37への観察光の入射位置を調整し、その結果、位相板37上の絞り像の位置を調整することができる。そして、ステージ27を傾ける方向及び角度を適切に調整することにより、絞り像の位置を位相膜37Aに合わせることができる。
従って、ステージ27を傾けるだけのシンプルかつ安価な構成及び方法により、絞り像と位相膜37Aの位置合わせを行うことができる。
なお、培養容器12内の観察対象となるサンプルの位置(すなわち観察位置)近傍を中心にしてステージ27を傾けることにより、対物レンズ28のピント位置を観察位置に合わせたままステージ27を傾けることができる。これにより、ステージ27を傾けた後のピント調整が不要になる。
ここで、図20を参照して、観察位置近傍を中心にしてステージ27を傾ける方法の一例について説明する。
図20Aは、ステージ27を傾ける前の状態を示している。ステージ27は、点P1乃至P3の3点で支持される傾斜ステージにより構成され、3点のうちのいずれか1点を支点にして傾けることが可能である。また、点Qは、観察位置を示している。なお、点P1乃至P3と点Qとの位置関係は既知であるものとする。
図20Bは、点P1を支点としてステージ27を所望の向きに所望の角度だけ傾けた状態を示している。ステージ27を傾けることにより、点Qは、図20Aに示される最初の位置から移動する。
ここで、点P1乃至P3と点Qとの位置関係は既知なので、ステージ27のチルト量に基づいて、点QのX方向、Y方向、Z方向のシフト量をそれぞれ算出することができる。
従って、点Qのシフト方向と逆方向に、ステージ27全体をX方向、Y方向、Z方向に平行移動させることにより、点Qを元の位置(図20Aの位置)に戻すことができる。
これにより、図20Cに示されるように、結果的に点Qを中心にステージ27を所望の向き及び角度に傾けることができる。その結果、ステージ27を傾ける前後で、対物レンズ28のピント位置が点Qに合った状態が維持され、ステージ27の傾きを調整した後のピント調整が不要になる。
なお、以上の説明では、ステージ27を傾けることにより、間接的に培養容器12を傾ける例を示したが、上述したように培養容器12を直接傾けるようにしてもよい。例えば、ステージ27上に設けた複数のピンにより培養容器12を支持し、各ピンを個別に上下方向に移動させることにより、培養容器12の傾きを調整することが可能である。
また、ステージ27又は培養容器12の傾きの調整は、手動又は電動のいずれで行うようにすることも可能である。ただし、上述したように絞り像と位相膜37Aの位置合わせを自動で行う場合には、少なくとも電動で調整できるようにする必要がある。
また、培養容器12を傾けて絞り像の位置合わせを行う場合、位相板37を対物レンズ28の射出瞳面に配置するようにすることも可能である。
(培養容器12のチルトと位相絞り24のシフトを組み合わせる方法)
例えば、培養容器12の端部にあるサンプルを観察しようとした場合、図21に模式的に示されるように、培養容器12(ステージ27)の傾きが大きくなると、照明光が培養容器12の壁面と干渉し、照野が制限される。これを防止するために、例えば、ステージ27又は培養容器12を傾けるのに加えて、位相絞り24を光軸と垂直な方向にシフトさせることが考えられる。
図22は、位相絞り24から位相膜37Aまでの照明光及び観察光の光路を模式的に示している。なお、図22では、位相絞り24と位相膜37Aの間のコンデンサレンズ25及び対物レンズ28以外の光学部品、及び、光路の折り曲げの図示を省略している。
図22Aは、位置合わせ前の照明光及び観察光の光路を示している。この図では、培地のメニスカスにより観察光による絞り像の結像位置が位相膜37Aの外にはみ出している。
そこで、まず、照明光と培養容器12の壁面との干渉の発生の有無に関わらず、位相絞り24をシフトさせ、絞り像の位置を位相膜37Aに合わせる。この時点で照明光と培養容器12の壁面との干渉が発生しなければ(照明光の一部が培養容器12の壁面にぶつからなければ)、ここで位置合わせは終了する。
一方、図22Bに示されるように、位相絞り24をシフトさせた後、照明光と培養容器12の壁面が干渉し、照明光のケラレが発生している場合には、図22Cに示されるように、ステージ27を傾けることにより、照明光と培養容器12の壁面の干渉を解消させる。このとき、図19を参照して上述した、ステージ27のみを傾けて絞り像の位置合わせをする場合と逆方向に、ステージ27が傾けられる。
そして、ステージ27とともに培養容器12が傾けられることにより、絞り像の位置がシフトする。その結果、絞り像が位相膜37Aからはみ出した場合には、再度位相絞り24をシフトさせて、位相膜37A内に収まるように絞り像の位置を調整すればよい。
これにより、照明光と培養容器12の壁面との干渉を発生させずに、培養容器12の端部にあるサンプルを観察することが可能になる。
なお、位相絞り24の位置の調整は、手動又は電動のいずれで行うようにすることも可能である。ただし、上述したように絞り像と位相膜37Aの位置合わせを自動で行う場合には、少なくとも電動で調整できるようにする必要がある。
(偏差プリズムユニット31又は平行平板ガラス201と位相絞り24のシフトを組み合わせる方法)
また、図2又は図17の光学系において、位相絞り24をシフトできるようにしてもよい。すなわち、偏差プリズムユニット31又は平行平板ガラス201と、位相絞り24のシフトを組み合わせて、絞り像の位置合わせを行うようにすることも可能である。
例えば、まず、図23の点線で示されるように、照明光と培養容器12の壁面との干渉が発生しているか否かに関わらず、偏差プリズムユニット31又は平行平板ガラス201を用いて、絞り像の位置を位相膜37Aに合わせる。照明光と培養容器12の壁面との干渉が発生していない場合には、ここで位置合わせは終了する。
一方、照明光と培養容器12の壁面との干渉が発生している場合には、位相絞り24の光軸が培養容器12の中央に近づく方向に位相絞り24をシフトする。これにより、図23の実線で示されるように、照明光と培養容器12の壁面との干渉が解消される一方、メニスカスの影響が大きくなり、位相板37上において、位相絞り24をシフトさせた方向と逆方向に絞り像がシフトする。その結果、絞り像が位相膜37Aからはみ出した場合には、再度偏差プリズムユニット31又は平行平板ガラス201を用いて、絞り像の位置を調整するようにすればよい。
これにより、照明光と培養容器12の壁面との干渉を発生させずに、培養容器12の端部にあるサンプルを観察することが可能になる。
なお、位相絞り24とコンデンサレンズ25の間に照明光の輝度ムラを軽減するためのフライアイレンズを設け、位相絞り24の代わりに、フライアイレンズを光軸と垂直な方向にシフトすることにより、絞り像の位置を調整するようにしてもよい。
また、位相絞り24のシフトのみを用いて、絞り像と位相膜37Aの位置合わせを行うようにすることも可能である。
[光学系を複数設ける例]
以上の説明では、位相差顕微鏡11に光学系を1つのみ設ける例を示したが、2つ以上設けるようにすることも可能である。
(同じ光学系を複数設ける場合)
例えば、図2、図17又は図18に示される光学系を複数設けるようにすることが可能である。この場合、各光学系を全く独立させることも可能であるし、一部を共有することも可能である。一部を共有する場合、例えば、ステージのみを共有することが考えられる。また、例えば、光源21からコンデンサレンズ25までの照明系及び対物レンズ28を光学系毎に個別に設け、対物レンズ28より後の部品を共有することが考えられる。なお、図18の光学系を採用する場合には、ステージの傾きにより絞り像の位置を調整するため、光学系毎にステージを個別に設けるようにすることが望ましい。
例えば、同じ光学系を2つ設けるようにした場合、一方の光学系(以下、光学系Aと称する)でウェルプレートの1つのウェル内のサンプルを観察するのに並行して、他方の光学系(以下、光学系Bと称する)で次に観察するウェルに対する絞り像の位置合わせを行うことができる。そして、光学系Aによる観察が終わると直ぐに光学系Bによる観察を開始し、それと並行して、光学系Aにより次に観察するウェルに対する絞り像の位置合わせを行うことができる。これを繰り返すことにより、ウェルプレートの各ウェル内のサンプルを迅速に観察しながら、サンプルの像質を向上させることも可能になる。
また、光学系Aと光学系Bが全く独立している場合、全く独立に並行してサンプルの観察を行うようにすることも可能であるし、各光学系で役割を分担するようにすることも可能である。後者の場合、例えば、光学系Aでズレ補正量の検出を用い、光学系Bで検出されたズレ補正量を用いて絞り像と位相膜37Aの位置合わせを行い、サンプルの観察を行うようにすることが可能である。
(メニスカスによる光束のズレを検出するための光学系を独立して設ける場合)
また、例えば、図24に模式的に示されるように、サンプルの観察を行うための観察光学系301とは別に、培養容器12内の培地のメニスカスによる光束のズレを計測するための計測光学系302を独立して設けるようにすることも可能である。
なお、以下、培養容器12としてウェルプレート303を用いた場合の例について説明する。
観察光学系301には、図2、図17又は図18を参照して上述した光学系のうちのいずれかを用いることが可能である。ただし、観察光学系301では、上述したような絞り像と位相膜37Aの重なり具合を示すデータの検出は行われない。
なお、以下、観察光学系301に図2の光学系を採用した場合の例について説明する。
計測光学系302は、計測光を用いて、ウェルプレート303の各ウェル内の培地を透過することによる光束のズレ、すなわち、培地のメニスカスによる光束のズレを計測するための光学系である。
計測光には、指向性に優れ、径が十分に小さい光を用いることが望ましい。また、計測光の光源に、観察光学系301と同じ光源21を用いるようにしてもよいし、或いは、別の光源を用いるようにしてもよい。観察光学系301と同じ光源21を用いる場合には、例えば、光源21から発せられる照明光からピンホールやレンズ等を用いて計測光を生成し、その計測光を、光ファイバ等を用いてコレクタレンズ23に入射させることが考えられる。
そして、計測光は、傾斜させずに水平な状態のステージ27に対して垂直な方向にコンデンサレンズ25から出射され、ステージ27上のウェルプレート303の各ウェルの観察位置に、ウェルの底面に対して垂直に入射される。そして、観察位置がウェルのほぼ中央である場合、図24の計測光L1のように、そのまま直進し、観察位置がウェルの壁面に近い場合、計測光L2のように、培地のメニスカスにより屈折される。
ウェルプレート303及びステージ27を透過した計測光は、観察光学系301の対物レンズ28等の光学部品を介さずに、直接イメージセンサ39Aに入射する。なお、計測光の光路を変更し、イメージセンサ39Aに導くためのミラーを、観察光学系301のもの(例えば、図2のミラー30及びミラー34)と共用するようにしてもよいし、観察光学系301とは別に設けるようにしてもよい。
また、それぞれ個別に光学部品、ステージ及びイメージセンサを設け、観察光学系301と計測光学系302を独立させるようにしてもよい。なお、観察光学系301と計測光学系302を独立させた場合でも、光源は共有することが可能である。
図25は、図24の光学系を位相差顕微鏡11に採用した場合に、制御部72(図4)により実現される機能の一部である位置合わせ制御部351の機能の構成例を示している。
位置合わせ制御部351は、ズレ検出部361及び調整部362を含むように構成される。
ズレ検出部361は、カメラ39から供給される、計測光の像を撮影した画像に基づいて、計測光の(中心軸の)ズレ量を検出する。具体的には、図24に示されるように、計測光の(中心軸の)光路は、計測光L1のようにウェル内の培地のメニスカスにより屈折しない場合に、イメージセンサ39Aの所定の基準位置(画素)に入射するように調整されている。そこで、ズレ検出部361は、イメージセンサ39Aへの計測光の入射位置と基準位置との差を計測光のズレ量として検出する。ズレ検出部361は、検出結果を調整部362に供給する。
調整部362は、計測光のズレ量に基づいて、駆動部73を制御して、絞り像と位相膜37Aの位置が合うように、偏差プリズムユニット31の回転方向の位置を調整する。
従って、この光学系では、ウェルプレート303の1つのウェル内のサンプルの観察と並行して、これから観察するウェルにおける計測光のズレ量の検出を行うことができる。
これにより、複数のサンプルを迅速に観察するとともに、各サンプルの像質を向上させることができる。
同様に、例えば、シャーレやウェルプレートのウェル内のサンプルを複数の領域に分割してタイリング撮影を行う場合に、1つの観察位置の撮影を行いながら、これから撮影する観察位置における計測光のズレ量の検出を行うことができる。これにより、迅速にタイリング撮影を行うとともに、タイリング撮影により得られる画像の画質を向上させることができる。
なお、観察光学系301と計測光学系302を独立させた場合、例えば、観察光学系301を用いて1つのウェルプレートを観察しながら、計測光学系302を用いて別のウェルプレートにおける計測光のズレ量の検出を行うことができる。また、例えば、観察光学系301を用いてタイリング撮影を行いながら、計測光学系302を用いて別の培養容器のタイリング撮影の各観察位置における計測光のズレ量の検出を行うことができる。
ここで、図26のフローチャートを参照して、図24の光学系を位相差顕微鏡11に採用した場合に位相差顕微鏡11により実行されるタイムラプス観察処理について説明する。
ステップS301において、図16のステップS201の処理と同様に、次の観察位置に培養容器12が移動される。
ステップS302において、位相差顕微鏡11は、計測光のズレ量を検出する。具体的には、カメラ39は、制御部72の制御の下に、照明光を照射せずに計測光のみを照射した状態で撮影を行い、得られた画像をズレ検出部361に供給する。
ズレ検出部361は、画像内の計測光の像の位置を検出し、その像の位置と所定の基準位置との差を計測光のズレ量として検出する。なお、この基準位置は、計測光が屈折せずにイメージセンサ39Aに入射した場合の計測光の像の画像上の位置に設定されている。
ステップS303において、位置合わせ制御部351は、ズレ量を記憶する。具体的には、ズレ検出部361は、ズレ量の算出結果を調整部362に供給する。調整部362は、現在の観察位置とズレ量を対応付けて、図示せぬ記憶装置に記憶させる。
ステップS304において、ズレ検出部361は、全ての観察位置においてズレ量を検出したか否かを判定する。まだ全ての観察位置においてズレ量を検出していないと判定された場合、処理はステップS301に戻る。
その後、ステップS304において、全ての観察位置においてズレ量が検出されたと判定されるまで、ステップS301乃至S304の処理が繰り返し実行される。これにより、タイムラプス観察を行う前に、全ての観察位置において計測光のズレ量が検出される。
一方、ステップS304において、全ての観察位置においてズレ量が検出されたと判定された場合、処理はステップS305に進む。
ステップS305において、図16のステップS209の処理と同様に、培地の液面の状態が変化したか否かが判定される。培地の液面の状態が変化していないと判定された場合、処理はステップS306に進む。
ステップS306において、図16のステップS208の処理と同様に、撮影時刻になったか否かが判定される。撮影時刻になっていないと判定された場合、処理はステップS305に戻る。
その後、ステップS305において、培地の液面の状態が変化したと判定されるか、ステップS306において、撮影時刻になったと判定されるまで、ステップS305及びS306の処理が繰り返し実行される。
一方、ステップS306において、撮影時刻になったと判定された場合、処理はステップS307に進む。
ステップS307において、図16のステップS201の処理と同様に、次の観察位置に培養容器12が移動される。
ステップS308において、図6のステップS2の処理と同様に、ピント調整が行われる。
ステップS309において、調整部362は、記憶したズレ量に基づいて、絞り像の位置合わせを行う。具体的には、調整部362は、現在の観察位置におけるズレ量に基づいて、位相板37上における絞り像と位相膜37Aのズレ量を算出する。この絞り像と位相膜37Aのズレ量は、例えば、絞り像の中心と位相膜37Aの中心との差により表される。
なお、観察光学系301及び計測光学系302を構成する部品の特性及び位置は既知なので、それらのデータを用いることにより、計測光のズレ量に基づいて、絞り像の中心と位相膜37Aのズレ量を容易に算出することができる。
さらに、調整部362は、絞り像のズレ量に基づいて、絞り像を位相膜37Aに一致させるために必要な偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bの回転方向及び回転量を算出する。そして、調整部362は、駆動部73を制御して、偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bを、所定の基準位置から算出した回転方向及び回転量だけそれぞれ回転させる。これにより、絞り像と位相膜37Aの位置が一致する。
なお、各観察位置における絞り像と位相膜37Aのズレ量を事前に算出し、光軸のズレ量の代わりに記憶しておき、絞り像の位置合わせに用いるようにしてもよい。
ステップS310において、図16のステップS205の処理と同様に、撮影が行われる。
ステップS311において、図16のステップS206の処理と同様に、全ての観察位置の撮影が終了したか否かが判定される。まだ全ての観察位置の撮影が終了していないと判定された場合、処理はステップS307に戻る。
その後、ステップS311において、全ての観察位置の撮影が終了したと判定されるまで、ステップS307乃至S311の処理が繰り返し実行される。
一方、ステップS311において、全ての観察位置の撮影が終了したと判定された場合、処理はステップS312に進む。
ステップS312において、図16のステップS208の処理と同様に、観察期間が終了したか否かが判定される。まだ観察期間が終了していないと判定された場合、処理はステップS305に戻り、ステップS305以降の処理が実行される。
一方、ステップS305において、培地の液面の状態が変化したと判定された場合、処理はステップS301に戻り、ステップS301以降の処理が実行される。すなわち、培地の液面の状態が変化した場合、各観察位置における計測光のズレ量の再検出が行われる。
また、ステップS312において、観察期間が終了したと判定された場合、タイムラプス観察処理は終了する。
以上のようにして、タイムラプス観察を行う場合に、培地のメニスカスの影響を受けずに、高コントラストで高品質のサンプル像を得ることができる。
また、培地交換等により培地の液面の状態が変化した場合、撮影処理を行う前に、計測光のズレ量の再検出が行われるため、撮影処理のスループットが向上し、1回あたりの撮影時間を短縮することができる。
なお、計測光のズレ量の検出処理時に、サンプルの位置情報や光量情報を取得するようにしてもよい。これにより、撮影時の位置出し、光量調整の処理時間を短縮することができ、撮影処理のスループットをさらに向上させることができる。
また、例えば、タイリング撮影を行う場合、互いに近接する観察位置では、メニスカスによる光束の屈折率は大きく変化しないため、計測光のズレ量の差は小さいと考えられる。そこで、タイリング撮影を行う場合には、例えば、適度に観察位置を間引いてズレ量の検出を行い、補間法等の各種の手法を用いて、未検出の観察位置におけるズレ量を求めるようにしてもよい。
さらに、計測光学系302において、培養容器12の下方から計測光を入射した場合も同様に、培地のメニスカスにより計測光が屈折する。従って、培養容器12の下方から底面に対して垂直に計測光を入射し、培養容器12の上方でイメージセンサにより計測光を受光して、計測光のズレ量を検出するようにすることも可能である。
また、以上の説明では、計測光の入射位置を検出するための受光部としてイメージセンサを用いる例を示したが、例えば、複数の光センサを用いるようにしてもよい。
[培地の液面の形状に基づいて絞り像の位置合わせを行う例]
また、例えば、計測光学系302を用いて検出した計測光のズレ量に基づいて、培地の液面の形状(R形状)を算出し、培地の液面の形状に基づいて、絞り像の位置合わせを行うようにしてもよい。
図27は、培地の液面の形状により絞り像の位置合わせを行う場合に、制御部72(図4)により実現される機能の一部である位置合わせ制御部371の機能の構成例を示している。
位置合わせ制御部371は、ズレ検出部381、液面形状算出部382、及び、調整部383を含むように構成される。
ズレ検出部381は、図25のズレ検出部361と同様の機能を有しており、培地の液面の複数の位置における計測光のズレ量を検出し、検出結果を液面形状算出部382に供給する。
液面形状算出部382は、培地の液面の各位置における計測光のズレ量に基づいて、培地の液面の形状を算出し、その結果を調整部383に供給する。例えば、計測光のズレ量から、培地の液面の各位置における計測光の屈折方向及び屈折角等を求めることができ、その結果から培地の液面の形状を容易に検出することができる。
調整部383は、培地の液面の形状に基づいて、位相板37上における絞り像と位相膜37Aのズレ量を算出し、そのズレ量を補正するように、駆動部73を制御して、偏差プリズム31a及び偏差プリズム31bを回転させ、絞り像の位置合わせを行う。
これにより、計測光のズレ量に基づいて絞り像の位置合わせを行う場合と比較して、絞り像のズレ量の計算量が少なくてすみ、絞り像の位置合わせの処理時間を短くすることができる。
また、例えば、同じ培養容器及び同じ培地を使用する場合、培地の液面の形状は、基本的にほぼ同じになる。従って、一度培地の液面の形状を求めておけば、以降同じ培養容器及び同じ培地を使用する場合に、そのデータを流用することができ、培地の液面の形状の再検出が不要になる。
[培地の液面情報の取得方法の変形例]
なお、培地の液面に関する情報(以下、液面情報と称する)を他の方法により取得し、取得した液面情報に基づいて、絞り像の位置合わせを行うようにしてもよい。そのような液面情報として、例えば、液面の高さ及び曲率を用いることが考えられる。
液面の高さを計測する方法としては、例えば、以下の2つの方法が考えられる。
1.パルスレーザを液面から鉛直方向に照射し、培養容器12の底面からの反射光が検出器に到達するまでの時間を計測する方法
2.導電性のプローブを培地に挿入して液深を直接計測する方法
液面の曲率を計測する方法としては、例えば、以下の6つの方法が考えられる。
1.導電性のプローブを液面に直接接触させて、接触位置の高さ方向の情報をマッピングして求める方法。なお、この方法では、液面の高さと曲率を同時に計測することが可能である。
2.斜めから光を当てて撮影した容器全体のマクロ画像の輝度分布から求める方法
3.ミクロ画像の輝度情報の2次元配列からR面を近似して算出する方法
4.培養容器12の横からR形状と高さを読み取る方法
5.入射角0<θ<90°で液面に入射させた光の正反射光を検出して2次元マッピングして算出する方法
6.液面の上から風を吹きつけて、曲率が大きいほど波紋間距離が小さくなる関係に基づいて、波紋の伝搬パターンから計算する方法
なお、培地の液面の高さと曲率を適切に間引いて計測し、補間法等の各種の手法を用いて、間引いた位置の液面の高さと曲率を求めるようにしてもよい。
そして、例えば、計測した液面情報をステージ27上の位置と対応付けて記憶しておき、観察対象となるサンプルのステージ27上の位置に基づいて、そのサンプルの位置における培地の液面の高さと曲率から当該位置における照明光の屈折方向を算出することができる。さらに、その結果に基づいて、位相板37上における絞り像のズレ量を算出し、算出したズレ量に基づいて、絞り像の位置合わせを行うことができる。
なお、例えば、液面情報の実測を行わずに、サンプルを保持する培養容器12の形状及び大きさに基づいて、標準的な液面情報を算出して用いるようにしてもよい。この場合、培養容器12の形状及び大きさ、並びに、培養容器12の中心のステージ27上での位置(以下、単に中心位置とも称する)の各情報が必要になる。
それらの各情報を取得する方法として、例えば、以下の3つの方法が考えられる。
1.事前に使用することが想定される全ての培養容器12の形状及び大きさを含む情報(以下、容器情報と称する)を取得し、ステージ27上の設置位置(設置座標)とともに記憶しておき、使用する培養容器12を判別して、該当する容器情報を取得する方法
なお、使用する培養容器12を判別する方法として、例えば、以下の2つの方法が考えられる。
1a.ユーザに培養容器12のメーカ、製品名等の製品情報を入力させる方法
1b.ステージ27の端から移動しながらミクロ画像を撮影し、培養容器12全体の輪郭を検出し、検出した輪郭の形状を、記憶している容器情報と照合する方法。ミクロ画像から容器の輪郭を求める方法としては、例えば、輝度値、又は、隣接微小空間間のコントラスト差の2次元マップを作成し、その分布に基づいて求めることが可能である。
なお、培養容器12がウェルプレートにより構成される場合、ミクロ画像を連続撮影することより、容器の輪郭(外形及びウェル部分)と各ウェルの中心位置を検出することが可能である。この場合、容器全体の輪郭を実測してもよいし、輪郭の一部を計測して等倍することで全体の値を得てもよい。
2.マクロ撮影により培養容器12全体を撮影し、得られた画像に基づいて、容器の形状及び大きさ並びに中心位置を検出する方法。なお、この方法では、テンプレート画像を用いたパターンマッチングの手法を適用することが可能である。
3.レーザ光等の計測光を培養容器12に入射し、容器の底面から容器の形状と中心位置を検出する方法
培養容器12がプラスチック製である場合、プラスチック容器の成型の特性上、容器の端部において底面に凸状構造が形成される。従って、対物レンズ28の中心を通るレーザ光を容器の底面に当てると、容器端では底面の表面が平らでないため、戻り光が減少する。一方、容器の中心部では底面が平坦なため、容器全体を2次元的にスキャンして戻り光の強度のマッピングを行うことにより、容器端と中心位置を検出することができ、その結果から容器の形状と大きさを割り出すことができる。
なお、計測光は、必ずしも対物レンズ28を通す必要はなく、例えば、対物レンズ28の近傍から入射して、別途設けた検出器により反射光を検出するようにしてもよい。
また、底面がガラス製の場合でも、底面自体の平坦性は一様であるが、側面(壁面)部があるので、この3番目の方法を応用することが可能である。
そして、例えば、上述した3つの方法のいずれかにより、培養容器12の形状及び大きさ、並びに、中心位置を求める。また、培養容器12の形状及び大きさに基づいて、培地の液面の高さ及び曲率を推測する。さらに、サンプルの観察位置のステージ27上の位置、及び、培養容器12の中心位置に基づいて、当該観察位置の培養容器12内における位置を求め、その位置の培地の液面の高さと曲率から当該位置における照明光の屈折方向を算出することができる。そして、その結果に基づいて、位相板37上における絞り像のズレ量を算出し、算出したズレ量に基づいて、絞り像の位置合わせを行うことができる。
[計測光のズレ量を用いた画像補正]
また、計測光のズレ量に基づいて、サンプル画像の補正を行う画像処理部を設けるようにすることも可能である。
例えば、培地のメニスカスにより照明光が屈折することにより、対物レンズ28の射出瞳面及び瞳共役面において絞り像の輝度のムラが生じ、これにより、イメージセンサ39Aにより撮影されるサンプル画像上でシェーディングが発生する。
そこで、例えば、各観察位置における計測光のズレ量及びその方向に基づいて、シェーディングの方向を特定することが可能なので、特定した方向に対してシェーディング補正を行うことにより、サンプル画像の輝度のムラを補正することが可能である。
[位相絞り及び位相膜の形状の変形例]
また、以上の説明では、位相絞り24の開口部及び位相膜37Aの形状を円形にする例を示したが、他の形状にすることも可能である。例えば、従来の位相差顕微鏡と同様にリング状にすることも可能である。
なお、円形にした場合とリング状にした場合とを比較すると、サンプルに照射する照明光の光量が同じになるように、位相絞り24の開口部の面積を同じにした場合、開口部の径は、円形よりリング状の方が大きくなる。従って、円形の方が、リング状よりも培地のメニスカスによる形状の歪みが小さくなり、絞り像と位相膜37Aの位置合わせが容易になり、サンプル像のコントラストがより鮮明になる。一方、リング状の方が、円形よりも実質的な開口数(NA)が大きくなるため、サンプル像の解像度が向上する。
[絞り像と位相膜37Aの位置合わせ方法の変形例]
以上の説明では、絞り像を移動させて、絞り像と位相膜37Aの位置合わせを行う例を示したが、位相板37(位相膜37A)、又は、絞り像と位相板37(位相膜37A)の両方を移動させて、絞り像と位相膜37Aの相対位置を調整するようにしてもよい。
なお、位相板37を移動させるようにした場合には、位相板37を、瞳共役面ではなく、対物レンズ28の射出瞳面に配置することも可能である。
また、位相板37を物理的に動かすことにより位相膜37Aを移動させる方法以外にも、例えば、AOMやAOTF等の音響光学素子により位相板37を構成し、位相板37内で電子的な位相膜37Aを生成及び移動させるようにしてもよい。
上述した制御部72、位置合わせ制御部101a乃至101d、位置合わせ制御部351、及び、位置合わせ制御部371の一連の処理は、ハードウエアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。ここで、コンピュータには、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータや、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどが含まれる。
図28は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウエアの構成例を示すブロック図である。
コンピュータにおいて、CPU(Central Processing Unit)501,ROM(Read Only Memory)502,RAM(Random Access Memory)503は、バス504により相互に接続されている。
バス504には、さらに、入出力インタフェース505が接続されている。入出力インタフェース505には、入力部506、出力部507、記憶部508、通信部509、及びドライブ510が接続されている。
入力部506は、キーボード、マウス、マイクロフォンなどよりなる。出力部507は、ディスプレイ、スピーカなどよりなる。記憶部508は、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる。通信部509は、ネットワークインタフェースなどよりなる。ドライブ510は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリなどのリムーバブルメディア511を駆動する。
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU501が、例えば、記憶部508に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース505及びバス504を介して、RAM503にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
コンピュータ(CPU501)が実行するプログラムは、例えば、パッケージメディア等としてのリムーバブルメディア511に記録して提供することができる。また、プログラムは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供することができる。
コンピュータでは、プログラムは、リムーバブルメディア511をドライブ510に装着することにより、入出力インタフェース505を介して、記憶部508にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部509で受信し、記憶部508にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM502や記憶部508に、あらかじめインストールしておくことができる。
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
さらに、本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
また、上述のフローチャートで説明した各ステップは、1つの装置で実行する他、複数の装置で分担して実行することができる。
さらに、1つのステップに複数の処理が含まれる場合には、その1つのステップに含まれる複数の処理は、1つの装置で実行する他、複数の装置で分担して実行することができる。