以下に本発明の実施の形態を説明するが、本発明の構成要件と、明細書又は図面に記載の実施の形態との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、本発明をサポートする実施の形態が、明細書又は図面に記載されていることを確認するためのものである。従って、明細書又は図面中には記載されているが、本発明の構成要件に対応する実施の形態として、ここには記載されていない実施の形態があったとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、実施の形態が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
本発明の位相差顕微鏡(例えば、図1の位相差顕微鏡11)は、ステージ(例えば、図1のステージ21)上に配置された容器(例えば、図8のウェルプレート191)内の標本を観察する位相差顕微鏡であって、前記標本に照射される照明光を通過させるスリット(例えば、図1のスリット41)が設けられた第1の位相差リング(例えば、図1の位相差リング27)と、位相板(例えば、図1の位相板42)が設けられた第2の位相差リング(例えば、図1の位相差リング28)と、前記スリットを通過した前記照明光を集光して前記第2の位相差リングに入射させるレンズ(例えば、図1の対物レンズ24)と、前記第1の位相差リングまたは前記第2の位相差リングの何れか一方を移動させるリング移動手段(例えば、図7の電動駆動部29)と、前記容器内の所定の観察位置の前記標本を観察する場合に、前記スリットを通過し、さらに前記標本を透過した前記照明光が前記位相板に入射する前記第1の位相差リングまたは前記第2の位相差リングの位置を示すリング位置情報を記録する記録手段(例えば、図7の記録部163)とを備える。
位相差顕微鏡には、前記ステージを移動させるステージ移動手段(例えば、図7のステージ駆動部164)をさらに設け、前記記録手段には、前記観察位置が前記位相差顕微鏡の視野内で観察されるときの前記ステージの位置を示すステージ位置情報をさらに記録させることができる。
また、本発明の位相差顕微鏡(例えば、図1の位相差顕微鏡11)は、ステージ(例えば、図1のステージ21)上に配置された容器内の標本を観察する位相差顕微鏡であって、前記標本に照射される照明光を通過させるスリット(例えば、図10のスリット233−1乃至スリット233−5)が設けられた第1の位相差リング(例えば、図10の位相差リング232−1乃至位相差リング232−5)と、位相板(例えば、図1の位相板42)が設けられた第2の位相差リング(例えば、図1の位相差リング28)と、前記スリットを通過した前記照明光を集光して前記第2の位相差リングに入射させるレンズ(例えば、図1の対物レンズ24)と、前記スリットの位置若しくは形状の少なくとも何れかが異なる複数の前記第1の位相差リング、または前記位相板の位置若しくは形状の少なくとも何れかが異なる複数の前記第2の位相差リングが配置され、それらの第1の位相差リングまたは第2の位相差リングを保持する保持手段(例えば、図10のターレット231)と、前記保持手段に保持されている複数の前記第1の位相差リングまたは前記第2の位相差リングのうちの何れかが、前記照明光の光路上に配置されるように、前記保持手段を移動させることで、前記第1の位相差リングまたは前記第2の位相差リングを移動させるリング移動手段(例えば、図7の電動駆動部29)とを備える。
位相差顕微鏡には、前記容器内の所定の観察位置の前記標本を観察する場合に、前記保持手段により保持されている前記第1の位相差リングまたは前記第2の位相差リングのうち、前記照明光の光路上に配置されたときに、前記スリットを通過し、さらに前記標本を透過した前記照明光が前記位相板に入射する前記第1の位相差リングまたは前記第2の位相差リングを特定するリング情報を記録する記録手段(例えば、図7の記録部163)をさらに設けることができる。
位相差顕微鏡には、前記ステージを移動させるステージ移動手段(例えば、図7のステージ駆動部164)をさらに設け、前記記録手段には、前記観察位置が前記位相差顕微鏡の視野内で観察されるときの前記ステージの位置を示すステージ位置情報をさらに記録させることができる。
以下、図面を参照して、本発明を適用した実施の形態について説明する。
図1は、本発明を適用した位相差顕微鏡の一実施の形態の構成例を示す図である。
位相差顕微鏡11には、ステージ21が設けられており、このステージ21上には、観察の対象となる標本が入れられたウェルプレートなどの容器が配置される。また、位相差顕微鏡11の図中、上側には、標本に照射するための照明光を射出する光源22が設けられており、光源22から射出した照明光は、図示せぬ光学系を介してコンデンサレンズ23に入射する。コンデンサレンズ23は光源22から入射した照明光を集光して、照明光をステージ21上に配置された容器内の標本に照射する。
さらに、標本に照射された照明光は、標本を透過するか、または標本において回析して観察光となり対物レンズ24に入射する。すなわち、対物レンズ24に入射する観察光は、標本を透過した照明光である直接光と、標本において回析した照明光である回析光とからなる。対物レンズ24は、標本からの観察光を集光し、観察光を図示せぬ光学系を介して接眼レンズ25およびカメラ26に入射させる。
接眼レンズ25は対物レンズ24から入射した観察光を集光して、観察光の像を結像させる。また、カメラ26は、対物レンズ24から入射した観察光の像を撮像し、撮像により得られた画像を、図示せぬ他の装置に供給して表示させる。これにより、観察者であるユーザは、接眼レンズ25から標本を観察することができ、また他の装置に表示された画像を見ることでも標本を観察することができる。
また、より詳細には、位相差顕微鏡11には、光源22とコンデンサレンズ23との間に位相差リング27が設けられており、対物レンズ24と、接眼レンズ25およびカメラ26との間に位相差リング28が設けられている。さらに、位相差顕微鏡11には、コンデンサレンズ23に近接して、位相差リング27を移動させる電動駆動部29が設けられている。
図中、左側に示すように、位相差リング27には、リング状のスリット41が設けられている。位相差リング27においては、光源22から位相差リング27に入射した照明光のうち、スリット41に入射した光は、スリット41を通過してコンデンサレンズ23に入射し、スリット41以外の部分に入射した光は遮光される。つまり、光源22からの照明光のうち、スリット41に入射した光だけがコンデンサレンズ23に入射する。
また、位相差リング28にはスリット41とほぼ同じ形状、すなわちリング状の位相板42が設けられている。位相板42は、入射した照明光の位相をずらすとともに、入射した照明光の一部を吸収する。位相差リング28においては、対物レンズ24から入射した観察光のうち、位相板42に入射した光は、その位相が、例えば照明光の4分の1波長分だけ遅らされるか、または進められて接眼レンズ25およびカメラ26に入射する。また、位相差リング28に入射した観察光のうち、位相板42以外の部分に入射した光は、位相差リング28をそのまま透過して接眼レンズ25およびカメラ26に入射する。
さらにユーザは、位相差顕微鏡11から接眼レンズ25を取り外し、接眼レンズ25が取り付けられていた位置に、図示せぬ心出し望遠鏡を取り付けることで、図中、左下に示すように、スリット41の像と位相板42の像とを心出し望遠鏡において観察することができる。ユーザは、ステージ21に標本が配置されていない状態において、スリット41の像と位相板42の像とが重なるように、位相差顕微鏡11を操作して、位相差リング27を通る光の光路に対して垂直方向に位相差リング27を移動させ、位相差リング27の心合わせを行う。すなわち、電動駆動部29は、ユーザの操作に応じて位相差リング27を移動させる。
ここで、図2を参照して位相差観察について説明する。図2において、図示せぬ光源22から射出された照明光は、レンズ71において集光されて位相差リング27に入射する。そして、レンズ71から位相差リング27に入射した照明光のうち、スリット41に入射した光だけがスリット41を通過してコンデンサレンズ23に入射し、スリット41に入射しなかった光は遮光される。
また、位相差リング27からコンデンサレンズ23に入射した照明光は、コンデンサレンズ23において集光されてステージ21上の標本72に照射される。標本72に照射された照明光のうち、標本72を透過した光は、直接光となって対物レンズ24に入射する。また、標本72に照射された照明光のうち、標本72またはその境界において回折した光は回折光となって対物レンズ24に入射する。そして、それらの直接光および回折光は対物レンズ24により集光されて位相差リング28に入射する。
ここで、対物レンズ24から位相差リング28に入射する観察光のうち、直接光は位相板42に入射して、位相板42によりその光量が弱められるとともに、位相がずらされて接眼レンズ25に入射する。また、位相差リング28に入射する観察光のうちの回折光は、位相差リング28の位相板42の設けられていない部分に入射して位相差リング28を透過し、接眼レンズ25に入射する。
位相差リング28から接眼レンズ25に入射した直接光および回折光は、接眼レンズ25により集光されて、図示せぬ像面に到達する。ここで、回折光には、標本72の内部や、ウェル内に満たされた水溶液と標本72との境界などの形状の情報が含まれているので、像面に到達した回折光と直接光との干渉により、像面において標本72の像が観察される。
位相差顕微鏡11においては、図中、左側に示すようにスリット41の像と位相板42の像とが同心となる(重なる)ように、位相差リング27を通る光の光路に対して垂直方向に位相差リング27が移動されて、位相差リング27の心合わせが行われる。位相差リング27の位置が調整され、心出し望遠鏡から観察されるスリット41の像と、位相板42の像とが重なるようになされると、像面においてよりコントラストの高い像を得ることができる。
また、位相差顕微鏡11において、標本72よりも光源22側の光学系は、照明光学系と称され、標本72よりも接眼レンズ25側の光学系は、観察光学系と称されている。そして、位相差リング27は、対物レンズ24の照明光学系側の瞳と共役な位置に配置され、位相差リング28は、対物レンズ24の観察光学系側の瞳位置に配置される。つまり位相差リング27と位相差リング28は共役な位置に配置される。また、標本72は、接眼レンズ25の焦点位置と共役な位置に配置される。
ところで、位相差顕微鏡11のステージ21には、標本が入れられる容器として、例えば6穴,12穴,24穴,48穴,96穴,384穴などの複数のウェルが設けられたウェルプレートが配置される。例えば図3Aに示すように、ウェルプレートに設けられたウェル101は円筒形状をしており、図中、下側に設けられたウェル101の底は、プラスチックやガラスなどからなり、ウェル101の壁面はプラスチックなどで形成されている。
また、ウェル101は培養液などの水溶液102で満たされており、ウェル101の底には、標本としての複数の細胞103−1乃至細胞103−3が付着している。これらの細胞103−1乃至細胞103−3は、例えばウェル101の底に付着する接着細胞や、ウェル101の底に沈む浮遊細胞などとされる。なお、以下、細胞103−1乃至細胞103−3のそれぞれを個々に区別する必要のない場合、単に細胞103と称する。
例えば、ウェル101の壁面が親水性を有している場合、図3Bに示すように、ウェル101が水溶液102で満たされると、その水溶液102の液面は湾曲し、メニスカスが生じる。なお、図3Bは、ウェル101の断面図を示している。
図3Bでは、水溶液102の液面は、ウェル101の壁面に対して親水的に広がっており、この湾曲した水溶液102の液面の部分がメニスカスと呼ばれている。メニスカスの曲率は、ウェル101に満たされた水溶液102の量や親水度、ウェル101の壁面の親水性、撥水性などの有無や強さにより定まる。
したがって、例えば図3Bにおいては、ウェル101の壁面が親水性を有しているため、水溶液102の液面は図中、下側に凸となっているが、ウェル101の壁面が撥水性を有している場合には、水溶液102の液面は上側に凸となる。
このように、メニスカスが生じると、ウェル101内の空気と水溶液102との屈折率の差、およびメニスカスの形状により、標本としての細胞103に対して図中、上から下方向に照射される照明光は、水溶液102と空気との境界面において屈折する。つまり、ウェル101内に生じたメニスカスは、照明光学系において凹レンズとして機能する。
したがって、図4に示すように、ウェル101のどの位置を観察するかによって、すなわち位相差顕微鏡11の視野がウェル101内のどの位置であるかによって、照明光の光路は変化する。
例えば、位相差顕微鏡11の視野が矢印A11により示される位置、つまりウェル101の底の中央に位置する場合、照明光は、水溶液102の液面の中央の平らな部分に、液面に対して垂直に入射するため、照明光は液面において屈折せずに直進する。したがって、矢印B11に示すように、心出し望遠鏡で観察されるスリット41の像と、位相板42の像とは重なっており、この状態においては、ユーザはウェル101の底の中央の標本を適切に位相差観察することができる。
しかし、位相差顕微鏡11の視野がA12により示される位置、つまりウェル101の底の図中、左斜め下に位置する場合、照明光は、水溶液102の液面の左斜め下の湾曲した部分に入射するため、照明光は液面においてウェル101の壁面(外側)に向かう方向に屈折する。したがってB12に示すように、心出し望遠鏡で観察されるスリット41の像は、位相板42の像に対して左斜め下側にずれており、この状態においては、ユーザはウェル101の底の左斜め下の標本を適切に位相差観察することができない。
同様に、位相差顕微鏡11の視野がA13により示される位置、つまりウェル101の底の図中、左斜め上に位置する場合、照明光は、水溶液102の液面の左斜め上の湾曲した部分に入射するため、照明光は液面においてウェル101の外側に向かう方向に屈折する。したがってB13に示すように、スリット41の像は、位相板42の像に対して左斜め上側にずれ、ユーザが標本を適切に位相差観察することができなくなる。
また、位相差顕微鏡11の視野がA14により示される位置、つまりウェル101の底の図中、右斜め下に位置する場合、照明光は、水溶液102の液面の右斜め下の湾曲した部分に入射するため、照明光は液面においてウェル101の外側に向かう方向に屈折する。したがってB14に示すように、スリット41の像は、位相板42の像に対して右斜め下側にずれ、ユーザが標本を適切に位相差観察することができなくなる。
さらに、位相差顕微鏡11の視野がA15により示される位置、つまりウェル101の底の図中、右斜め上に位置する場合、照明光は、水溶液102の液面の右斜め上の湾曲した部分に入射するため、照明光は液面においてウェル101の外側に向かう方向に屈折する。したがってB15に示すように、スリット41の像は、位相板42の像に対して右斜め上側にずれ、ユーザが標本を適切に位相差観察することができなくなる。
このように、位相差顕微鏡11の視野が、ウェル101内のどの位置にあるかによって、照明光の光路は異なるので、標本を観察するのに適した位相差リング27の位置も異なる。例えば、図5のA41に示すように、位相差顕微鏡11の視野がウェル101の底の中央に位置する場合、つまり対物レンズ24の光軸がウェル101の底の中央に位置する場合に、ユーザが標本を適切に位相差観察することがきるとする。この場合、B41に示すように、心出し望遠鏡から観察されるスリット41の像と、位相板42の像とは重なっている。
この状態からA42に示すように、位相差顕微鏡11の視野がウェル101の底の図中、左側に移動されると、つまり対物レンズ24がウェル101に対して左方向に移動されると、B42に示すようにスリット41の像は位相板42の像に対して左側にずれる。したがって、標本を透過した直接光の一部しか位相板42に入射しなくなってしまい、ユーザは適切に標本を位相差観察することができなくなる恐れがある。
そこで、ユーザが位相差顕微鏡11を操作して、図中、右上に示すように位相差リング27を右側に移動させることにより、照明光の光路を右方向に移動させることができる。これにより、B43に示すようにスリット41の像が右方向に移動され、スリット41の像が位相板42の像と重なる。したがって、ユーザは、ウェル101の底の左側にある標本を適切に位相差観察することができるようになる。
位相差顕微鏡11には、ウェル101内の各位置にある標本を適切に位相差観察できるように、位相差リング27を移動させるための機構が設けられている。すなわち、位相差顕微鏡11には、例えば図6に示すように固定台131、移動台132、およびステッピングモータ133が設けられている。
固定台131は、位相差顕微鏡11に固定されており、固定台131の図中、上側には、固定台131に対して移動する移動台132が設けられている。また、移動台132の図中、上側の表面には位相差リング27が配置される。
さらに、電動駆動部29内に設けられているステッピングモータ133は、ユーザの操作に応じて駆動し、移動台132を移動させる。例えば、コンデンサレンズ23の光軸と平行な方向をz方向とし、互いに垂直であり、z方向と垂直な方向をx方向およびy方向とすると、移動台132は、x方向に平行な方向およびy方向に平行な方向に移動される。したがって、移動台132上に配置された位相差リング27もx方向と平行な方向およびy方向と平行な方向に移動される。なお、以下では、図中、横方向をx方向とし、x方向およびz方向に垂直な方向をy方向と称する。
また、位相差顕微鏡11には、位相差リング27を挿入するための挿入口が設けられており、ユーザは、対物レンズ24に応じた大きさのスリットが設けられた位相差リング27を挿入口から挿入することができるようになされている。挿入口から挿入された位相差リング27は、移動台132上に配置される。
さらに、固定台131および移動台132の中央には穴が設けられており、位相差リング27に対して図中、上から下方向に入射した照明光は、スリット41を通過し、さらに固定台131および移動台132に設けられた穴を通過してコンデンサレンズ23に入射する。
このように、位相差顕微鏡11には、位相差リング27を移動させるための機構が設けられているので、ユーザは、ウェル101内のどの位置を観察するかに応じて位相差リング27を適切な位置に移動させることができる。
また、位相差顕微鏡11は、ユーザがウェル101内の所定の観察位置を観察するときのステージ21の位置、および観察位置を適切に観察することのできる位相差リング27の位置を登録しておくことができるようになされている。したがって、例えば位相差顕微鏡11が登録された位置にステージ21および位相差リング27を移動させることにより、ユーザはいちいち心合わせを行うことなく、ウェル101内の所望の位置を位相差観察することができる。
次に、図7は、位相差顕微鏡11の機能的な構成例を示すブロック図である。
位相差顕微鏡11は、電動駆動部29、入力部161、制御部162、記録部163、およびステージ駆動部164から構成される。
入力部161は、ユーザにより操作され、ユーザの操作に応じた信号を制御部162に供給する。制御部162は、入力部161からの信号に基づいて、位相差顕微鏡11全体を制御する。例えば、制御部162は、入力部161からの信号に基づいて、電動駆動部29に位相差リング27の移動を指示したり、ステージ駆動部164にステージ21の移動を指示したりする。
また、制御部162は入力部161からの信号に応じて、電動駆動部29から位相差リング27の位置を示すリング位置情報を取得するとともに、ステージ駆動部164からステージ21の位置を示すステージ位置情報を取得し、これらの情報を記録部163に供給する。すなわち、ユーザが入力部161を操作してウェル101内の所定の位置を、標本を観察するための観察位置として登録するように指示すると、入力部161から制御部162には、ユーザの操作に応じた信号が供給される。すると、制御部162は、登録が指示された観察位置を観察するときのステージ21のステージ位置情報、および位相差リング27のリング位置情報を取得し、これらの情報を観察情報として記録部163に供給して記録させる。
記録部163は、制御部162から供給された観察情報を記録する。電動駆動部29は、制御部162の指示に応じてステッピングモータ133を駆動させ、位相差リング27を移動させる。また、ステージ駆動部164は、制御部162の指示に応じて、ステージ21を移動させる。
ところで例えば、ユーザがステージ21上に観察の対象となる標本が入れられたウェルプレートを配置して、ハイスループットスクリーニングにおける位相差観察を行う場合を考える。そのような場合、ステージ21には、例えば、図8に示すように複数のウェルが設けられたウェルプレート191が配置される。
ウェルプレート191には、図中、縦方向および横方向の両方の方向に一定の間隔でウェルが設けられている。ここで、図8の上側には、ウェルプレート191の一部分が拡大されて示されており、6個のウェル201−1乃至ウェル201−6が並べられて設けられている。
図において、左から右に向かう方向をx方向、下から上に向かう方向をy方向とすると、ウェル201−1乃至ウェル201−3は、図中、左側から距離Lxの間隔でx方向に並べられている。また、ウェル201−4乃至ウェル201−6のそれぞれは、ウェル201−1乃至ウェル201−3のそれぞれから距離Lyだけ下側の位置に並べられている。なお、以下、ウェル201−1乃至ウェル201−6のそれぞれを個々に区別する必要のない場合、単にウェル201と称する。また、ウェルプレート191に設けられた任意のウェルをウェル201と称することとする。
ハイスループットスクリーニングの位相差観察においては、例えばウェルプレート191に設けられた各ウェル201に観察の対象となる標本が入れられる。そして、各ウェル201内のいくつかの位置が観察位置として登録され、それらの登録された観察位置の画像が一定の時間間隔で撮像される。
位相差観察の準備段階の処理として、ユーザは1つのウェル201を選択し、そのウェル201内の観察位置とするいくつかの位置を位相差顕微鏡11に登録させる。例えばユーザは入力部161を操作しながらステージ21や位相差リング27を移動させ、選択したウェル201−1内の観察位置K1乃至観察位置Kn(但しnは自然数)のn箇所の位置の登録を指示したとする。ここで、各観察位置の登録の指示は、その観察位置においてスリット41の像と位相板42の像とが重なっている状態、つまりその観察位置における標本を適切に観察することができる状態において行われるものとする。
例えば、ユーザが入力部161を操作して、まず観察位置K1において心合わせを行い、観察位置K1で標本を適切に観察できるようにしたとする。この状態において、ユーザが入力部161を操作して登録を指示すると、制御部162は入力部161からの信号に応じて、観察位置K1を観察しているときのステージ21のステージ位置情報と、位相差リング27のリング位置情報とを取得する。
ここで、ステージ位置情報は、例えばステージ21が移動されていない状態における、その表面の中心の位置を原点とし、原点を通りx方向に平行な直線をx軸、y方向に平行な直線をy軸とするxy座標系上の移動後のステージ21の中心の座標を示す情報とされる。また、位相差リング27のリング位置情報は、例えば、位相差リング27が移動されていない状態における位相差リング27の中心の位置を原点とし、原点を通りx方向に平行な直線をX軸、y方向に平行な直線をY軸とするXY座標系上の移動後の位相差リング27の中心の座標を示す情報とされる。
制御部162は、取得した観察位置K1についてのステージ位置情報およびリング位置情報を観察情報として記録部163に供給して記録させる。同様に、ユーザは、入力部161を操作して、各観察位置K2乃至観察位置Knのそれぞれについて、観察位置において心合わせを行い、その観察位置で標本を適切に観察できる状態において観察位置の登録を指示する。制御部162は、ユーザの指示に応じて観察位置K2乃至観察位置Knについて、それぞれステージ位置情報およびリング位置情報を取得して観察情報とし、観察位置ごとの観察情報を記録部163に供給して記録させる。
これにより、記録部163には、1つのウェル201−1内の登録が指示された各観察位置の観察情報が記録される。すなわち、各観察位置K1乃至観察位置Knのそれぞれにおいて、標本を適切に観察できるステージ位置情報のそれぞれ、およびリング位置情報のそれぞれが記録部163に記録される。したがって、観察前に設定された観察位置ごとの観察情報を用いて、ステージ21および位相差リング27を移動させることで、観察時にユーザは心合わせを行うことなく各観察位置において標本を適切に観察することができる。
次に、制御部162は、選択されたウェル201−1の観察情報に基づいて、選択されなかった他のウェル201について、観察情報を生成する。例えば、記録部163には、予め、またはユーザによる入力部161の操作により、ウェルプレート191に関する情報であるウェル情報が記録されている。ウェル情報には、例えばウェルプレート191上に設けられた各ウェル201の位置に関する情報、ウェル201のx方向の間隔Lx、y方向の間隔Ly、ウェル201を特定する識別番号など、各ウェル201とその位置を特定するための情報が含まれている。
制御部162は、記録部163に記録されているウェル情報と、既に登録されたウェル201−1の各観察位置の観察情報とを用いて、他のウェル201の各観察位置の観察情報を生成する。ここで他のウェル201内の観察位置のそれぞれは、ウェル201−1内の観察位置K1乃至観察位置Knのそれぞれと相対的に同じ位置とされる。すなわち、他のウェル201の中心、より詳細にはウェル201の底の中央の位置を基準とするそのウェル201内の観察位置のそれぞれは、ウェル201−1の中心を基準とする観察位置K1乃至観察位置Knのそれぞれと同じ位置とされる。
例えば、図8のウェル201−1の観察位置K1のステージ位置情報により示されるステージ21の座標が(x1,y1)であり、位相差リング27のリング位置情報により示される座標が(X1,Y1)であるとする。
このとき、制御部162は、座標(x1−Lx,y1)を示す情報をステージ位置情報とし、座標(X1,Y1)を示す情報をリング位置情報とする観察情報を、観察位置K1に対応するウェル201−2の観察位置の観察情報として生成する。
すなわち、観察位置K1に対応するウェル201−2内の位置を観察位置K1’とすると、ウェル201−1の中心を基準とする観察位置K1の位置と、ウェル201−2の中心を基準とする観察位置K1’の位置とは同じ位置とされる。ここで、ウェル201−2は、ウェル201−1から距離Lxだけx方向側に位置するので、観察位置K1’を観察するためのステージ21の位置、すなわち観察位置K1’が視野の領域となるステージ21の位置は、座標(x1−Lx,y1)により示される位置となる。
そこで、制御部162は、座標(x1−Lx,y1)を示す情報を観察位置K1’のステージ位置情報として生成する。例えばステージ21上における観察位置K1の位置を示す座標、すなわちステージ21の中心を基準とし、x方向に平行な直線、およびy方向に平行な直線をx’軸およびy’軸とするx’y’座標系における観察位置K1の座標が(x1’,y1’)であるとする。この場合、x’y’座標系における観察位置K1’の座標は(x1’+Lx,y1’)となるので、ステージ位置情報(x1−Lx,y1)は、ステージ21上のx’y’座標系の座標(x1’+Lx,y1’)により特定される観察位置K1’を位相差顕微鏡11の視野内で観察するための情報となる。
また、ウェルプレート191においては、各ウェル201の大きさや材質は同じであり、ウェル201に満たされる水溶液の量および組成も同じであるとみなすことができる。したがって各ウェル201に生じるメニスカスの状態は同じであるとみなすことができる。さらに、ウェル201の中心の位置を基準とした場合に、観察位置K1の位置と観察位置K1’の位置は同じであるので、それらの観察位置にある標本を適切に観察するための位相差リング27の位置も同じとなる。したがって、制御部162は、観察位置K1のリング位置情報を、そのまま観察位置K1’のリング位置情報とする。
制御部162は、このようにして、ウェル201−2の観察位置K1’の観察情報を生成すると、同様に観察位置K2乃至観察位置Knのそれぞれに対応するウェル201−2内の観察位置K2’乃至観察位置Kn’のそれぞれの観察情報を生成する。そして、制御部162は、生成したウェル201−2の各観察位置についての観察情報を記録部163に供給して記録させる。
さらに、制御部162は、ウェルプレート191上の他の全てのウェル201について、観察情報を生成し、記録部163に供給して記録させる。
例えば、ウェル201−1の観察情報として、観察位置K1乃至観察位置K3のそれぞれのステージ位置情報(x1,y1),(x2,y2),(x3,y3)のそれぞれと、リング位置情報(X1,Y1),(X2,Y2),(X3,Y3)のそれぞれが生成されたとする。
また、観察位置K1乃至観察位置K3のそれぞれに対応する、ウェル201−1からx方向にi番目、y方向と逆方向にj番目(但し、i,jは自然数)に位置するウェル201の観察位置を、観察位置K1’乃至観察位置K3’のそれぞれとする。このとき、これらの観察位置K1’乃至観察位置K3’の観察情報として、ステージ位置情報(x1−iLx,y1+jLy),(x2−iLx,y2+jLy),(x3−iLx,y3+jLy)のそれぞれと、リング位置情報(X1,Y1),(X2,Y2),(X3,Y3)のそれぞれとが生成される。
このようにして、各ウェル201の観察情報が生成されて記録されると、ハイスループットスクリーニングの位相差観察の準備段階の処理が終了する。そして、位相差顕微鏡11は、位相差観察を指示されると、記録部163に記録されているウェルプレート191の各ウェル201の観察情報に基づいて、各観察位置の画像を撮像する。
例えば、図9の左下に示すように、ウェル201の底の中央の位置を観察位置Aとし、観察位置Aの図中、左上、右上、右下、および左下の位置を、それぞれ観察位置B、観察位置C、観察位置D、および観察位置Eとする。そして、位相差観察において、各ウェル201内の観察位置A乃至観察位置Eの順番で、それらの観察位置の画像を撮像していくものとする。
このとき、位相差観察が開始されると、制御部162は、記録部163から最初に観察すべきウェル201−1の観察位置Aの観察情報を記録部163から読み出して、電動駆動部29およびステージ駆動部164に位相差リング27およびステージ21の移動を指示する。すると、ステージ駆動部164は、制御部162の指示に応じて、ウェル201−1の観察位置Aが位相差顕微鏡11の視野において観察されるように、ステージ21を移動させる。
また、電動駆動部29は、制御部162の指示に応じて、リング位置情報により示される位置に位相差リング27を移動させる。ここで、例えば電動駆動部29は、リング位置情報により示される座標に基づいて、座標系上における移動距離に対応したステップ数だけステッピングモータ133の軸を回動させて移動台132を移動させる。これにより、接眼レンズ25またはカメラ26により撮像される画像上において、ウェル201−1内の観察位置Aの標本を適切に観察できるようになる。そして、制御部162は、カメラ26に撮像を指示し、カメラ26は、その指示に応じて標本の画像を撮像する。
その後、さらに制御部162は、ウェル201−1の観察位置B乃至観察位置Eの観察情報のそれぞれを順次読み出して、読み出した観察情報に基づいて、電動駆動部29およびステージ駆動部164に位相差リング27およびステージ21の移動を指示する。この指示に応じて、ステージ駆動部164はステージ21を駆動し、観察位置B乃至観察位置Eが視野内で観察される位置に順番にステージ21を移動させる。また、電動駆動部29は、ステージ21の移動に合わせて、観察位置B乃至観察位置Eのリング位置情報により示される位置に順番に位相差リング27を移動させる。そして、カメラ26は、制御部162の指示に応じて、ウェル201−1内の観察位置B乃至観察位置Eの画像を順番に撮像する。
さらに、ウェル201−1内の観察位置Eの画像が撮像されると、制御部162は、ステージ駆動部164に、ステージ21のウェル201−1の観察位置Aに対応する位置への移動を指示し、ステージ駆動部164は、その指示に応じてステージ21を移動させる。次に、制御部162は、ウェル201−1の次に観察すべきウェル201−2の観察位置の観察情報を順番に読み出し、それらの観察位置での画像をカメラ26に撮像させる。
すなわち、ステージ駆動部164は、ウェル201−1の観察位置Aから、ウェル201−2内の観察位置Aに位相差顕微鏡11の視野が移動するようにステージ21を移動させ、その後、順次、ウェル201−2内の観察位置B乃至観察位置Eに視野が移動するようにステージ21を移動させる。また、電動駆動部29は、観察位置A乃至観察位置Eのリング位置情報により示される位置に順番に位相差リング27を移動させ、カメラ26は、ウェル201−2内の観察位置A乃至観察位置Eの画像を順番に撮像する。
そして、制御部162は、順次、観察すべきウェル201の観察情報を記録部163から読み出して、各ウェル201内の観察位置のステージ位置情報により示される位置へのステージ21の移動をステージ駆動部164に指示する。また、制御部162は、各ウェル201内の観察位置のリング位置情報により示される位置への位相差リング27の移動を電動駆動部29に指示し、カメラ26にそれらの観察位置の画像の撮像を指示する。
このように、記録部163に記録されている観察情報に基づいて、各ウェル201内の各観察位置に位相差顕微鏡11の視野が移動され、それらの観察位置の画像がカメラ26により撮像されていく。したがって、図中、下側に示すように、位相差顕微鏡11の視野は、ウェル201−1内の観察位置A乃至観察位置Eに順番に移動された後、ウェル201−1内の観察位置Aに戻り、さらにウェル201−2内の観察位置A乃至観察位置Eに順番に移動される。さらに、位相差顕微鏡11の視野は、ウェル201−2内の観察位置Eから観察位置Aに戻り、ウェル201−3内の観察位置A乃至観察位置Eに順番に移動される。その後、位相差顕微鏡11の視野は、ウェル201−3内の観察位置Aに戻り、さらに順次、次のウェル201内の観察位置A乃至観察位置Eに順番に移動されていく。
ここで、ウェル201内の観察位置A乃至観察位置Eのリング位置情報を、リング位置情報A乃至リング位置情報Eとすると、電動駆動部29は、ステージ21の移動に合わせて、それらのリング位置情報により示される位置に位相差リング27を移動させる。すなわち、電動駆動部29は、位相差顕微鏡11の視野がウェル201−1内の観察位置A乃至観察位置Eに順番に移動するのに合わせて、位相差リング27をリング位置情報A乃至リング位置情報Eにより示される位置に順番に移動させる。
さらに、電動駆動部29は、位相差顕微鏡11の視野がウェル201−2内の観察位置A乃至観察位置Eに順番に移動すると、その移動に合わせて位相差リング27をリング位置情報A乃至リング位置情報Eにより示される位置に順番に移動させる。そして、その後、電動駆動部29は、位相差顕微鏡11の視野の移動、つまりステージ21の移動に合わせて、順次リング位置情報A乃至リング位置情報Eにより示される位置に位相差リング27を移動させていく。
以上のように、制御部162が記録部163に記録された各ウェル201の観察情報を読み出して、ステージ21および位相差リング27の移動を指示し、カメラ26に画像を撮像させていくことで、各ウェル201の各観察位置での画像を撮像することができる。
従来、ユーザの操作を必要とせずに、顕微鏡において一定の時間間隔でウェル内のいくつかの位置の画像が撮像される場合には、メニスカスの影響により、画像を撮像する位置によっては適切な画像を得ることができなくなり、結果としてウェルの中央の位置の観察結果しか得ることができなかった。
また、メニスカスの状態は、ウェル内の水溶液の量や親水度、ウェルの壁面の親水性、撥水性などによって異なる。そのため、従来のメニスカスを打ち消すレンズアレイを配置する方法では、ウェルプレート自体、またはウェルを満たす水溶液の量や組成を変えるたびに、メニスカスの状態に応じたレンズアレイを作成しなければならなかった。
これに対して、位相差顕微鏡11では、ウェル201内の各観察位置を観察するためのステージ位置情報と、リング位置情報とを観察情報として記録部163に記録させ、その観察情報を用いて各観察位置を順番に観察するようにすることで、より簡単かつ迅速に標本を観察することができる。
すなわち、ユーザは1つのウェルを選択して、観察前にそのウェル内のいくつかの位置を観察するときのステージ21の位置と、位相差リング27の位置とを記録させるだけで、位相差観察時には何ら操作をすることなく、全ての各ウェル内の観察位置の画像を撮像させることができる。したがって、メニスカスが生じたウェル内の複数の観察位置を順番に位相差観察する場合においても、各ウェルについて位相差観察時に位相差リング27の心合わせを行うことなく、ウェル内の複数の位置を簡単かつ迅速に観察することができる。これにより、1つのウェル内の標本からより多くの良好な情報を得ることができる。
なお、以上においては、位相差リング27をx方向と平行な方向、およびy方向と平行な方向(位相差リング27を通る光の光路に対して垂直方向)に移動させると説明したが、位相差リング27をZ軸方向と平行な方向(位相差リング27を通る光の光路と平行な方向)にも移動させるようにしてもよい。そのような場合、コンデンサレンズ23の光軸方向と平行な直線をZ軸とし、X軸、Y軸、およびZ軸を軸とするXYZ座標系上の位相差リング27の位置を示す情報がリング位置情報として記録部163に記録される。このように、位相差リング27をZ軸方向と平行な方向にも移動させることで、メニスカスのレンズ効果により、リング状の直接光の直径の長さが変化する場合にも、直接光を確実に位相板42に入射させることができる。
また、カメラ26により撮像された画像に基づいて、制御部162が電動駆動部29に位相差リング27の移動を指示し、心合わせが行われるようにしてもよい。そのような場合、制御部162は、カメラ26により撮像された標本の画像のコントラストが最大になるように、位相差リング27を移動させ、画像のコントラストが最大となったときの位相差リング27の位置を示す情報を、リング位置情報として取得する。
さらに、図10に示すように、ウェル内のどの位置を観察するかによって、観察位置に応じた複数の位相差リングのうちのいずれかが用いられるようにしてもよい。なお、図10において、図5における場合と対応する部分には同一の符号を付してあり、その説明は省略する。
図10では、円盤形状のターレット231に複数の位相差リング232−1乃至位相差リング232−5のそれぞれが配置されて保持されている。位相差リング232−1乃至位相差リング232−5のそれぞれには、照明光を通過させるためのスリット233−1乃至スリット233−5のそれぞれが設けられており、これらのスリットは、それぞれ位相差リングの異なる位置に設けられている。
なお、以下、位相差リング232−1乃至位相差リング232−5のそれぞれを個々に区別する必要のない場合、単に位相差リング232と称する。また、以下、スリット233−1乃至スリット233−5のそれぞれを個々に区別する必要のない場合、単にスリット233と称する。
また、ターレット231の中央には軸234が設けられており、ターレット231は、軸234を軸として図中の矢印の方向に回動するようになされている。位相差リング232はターレット231に保持されているので、ターレット231が回動すると、位相差リング232が移動する。
さらに、位相差リング232−1乃至位相差リング232−5は、その中心が軸234を中心として同心円上に配置されており、ターレット231が回動することで、それらの位相差リング232の何れかが、照明光の光路上に配置される。すなわち、何れかの位相差リング232の中心が、対物レンズ24(コンデンサレンズ23)の光軸上に位置するように電動駆動部29によりターレット231が回動されて位相差リング232が移動される。
また、位相差リング232によってスリット233が設けられている位置は異なるので、どの位相差リング232が照明光の光路上に配置されたかによって、対物レンズ24の光軸を基準とするスリット233の位置は異なる。例えば、位相差リング232−1が照明光の光路上に配置された場合、スリット233−1の中心は、対物レンズ24の光軸上に位置する。また、例えば、位相差リング232−2が照明光の光路上に配置された場合、スリット233−2の中心は、対物レンズ24の光軸に対して、図中、左下側に位置する。
したがって、ウェル101のどの位置を観察するかによって、すなわちウェル101に生じたメニスカスに応じて、適切な位相差リング232が照明光の光路上に配置されるようにターレット231を回動させることで、心合わせを必要とせずに簡単に標本を観察することができる。
また、複数の位相差リング232が設けられる場合、例えばハイスループットスクリーニングの位相差観察の準備段階において、ユーザは入力部161を操作しながらターレット231を回動させ、予めメニスカスを考慮したスリット位置とされている観察位置を観察するのに適した位相差リング232を選択する。
そして、ユーザが入力部161を操作して、観察位置の登録を指示すると、制御部162は、ステージ駆動部164からステージ位置情報を取得するとともに、電動駆動部29から、複数の位相差リング232のうちの何れかを特定するリング特定情報を取得する。ここで、電動駆動部29は、制御部162からリング特定情報の供給が指示されたときに、照明光の光路上に位置されていた位相差リング232を特定する情報を、リング特定情報として制御部162に供給する。すなわち、このリング特定情報により特定される位相差リング232は、照明光の光路上に配置された場合、登録が指示されたときのウェル101の位置を観察するときに、スリット233を通過した照明光(直接光)が位相板42に入射するようなものとなる。
制御部162は、ステージ位置情報およびリング特定情報を取得すると、それらの情報を観察情報として記録部163に供給し、記録させる。また、位相差観察時には、制御部162は、観察情報を順次、記録部163から読み出す。そして、制御部162はステージ位置情報に基づいて、ステージ駆動部164にステージ21を移動させるとともに、電動駆動部29に、リング特定情報により特定される位相差リング232が照明光の光路上に配置されるように、ターレット231を回動させる。
したがって、ユーザは、1つのウェルを選択して、そのウェル内のいくつかの位置を観察するときのステージ21の位置と、位相差リング27とを記録させるだけで、位相差観察時には何ら操作をすることなく、各ウェル内の観察位置を適切に観察することができる。
なお、位相差リング232の同じ位置にスリット233が設けられているものがターレット231に配置されるようにしてもよい。そのような場合、例えば位相差リング232が照明光の光路上に配置されたときに、対物レンズ24の光軸に対してスリット233が異なる位置にくるように、各位相差リング232が配置される。
また、任意の形状の複数のトレーのそれぞれに、位相差リング232のそれぞれが配置されて保持され、何れかの位相差リング232が照明光の光路上に配置されるように、トレーが移動されるようにしてもよい。そのような場合、ユーザにより選択された位相差リング232が照明光の光路上に配置されるように、その位相差リング232を保持しているトレーが移動され、これにより位相差リング232が移動される。
さらに、位相差リング28に入射する直接光の形状は、メニスカスの状態に応じてスリット233の形状とは異なる形状に変化する場合がある。そこで、位相差リング232に設けられるスリット233を、それぞれ位置だけでなく、その形状が他のスリット233と異なるようにしてもよい。
さらに、また、図11に示すように、対物レンズ24とカメラ26との間にリレー光学系261を設け、位相差リング28がリレー光学系261内に配置されるようにしてもよい。なお、図11は、図1における右から左方向に位相差顕微鏡11を見た図である。
リレー光学系261は、対物レンズ24から入射した観察光の中間像を平行光に変換するレンズ271、レンズ271から位相差リング28を介して入射した観察光を集光してカメラ26に入射させるレンズ272、および位相差リング28から構成される。また、位相差リング28は、レンズ271とレンズ272との間に配置されている。
このように、観察光をリレーするリレー光学系261を設けることで、そのリレー光学系261内に位相差リング28を配置することができる。
なお、照明光学系に配置された位相差リングではなく、観察光学系に配置された位相差リング28が、位相差リング28を通る光の光路に対して垂直方向または平行な方向に移動されたり、複数の位相差リング28のうちの1つが選択されたりするようにしてもよい。
すなわち、例えば図1または図11の位相差リング28が電動駆動部29により移動され、制御部162は、位相差リング28の位置を示す情報をリング位置情報として、電動駆動部29から取得する。また、例えば図11のリレー光学系261に、複数の位相差リング28が配置されて保持されるターレットが設けられる。そして、電動駆動部29がターレットを回動させることにより、位相差リングを移動させ、標本を観察するのに適した位相差リング28が観察光の光路上に配置される。
一般的に位相差リング28は、対物レンズ24の筐体の内部に設けられるが、特に、図11に示したように、リレー光学系261を設けるようにした場合には、位相差リング28を対物レンズ24の鏡筒の外部に配置することができる。したがって、位相差リング28を移動させたり、複数の位相差リング28のうちの何れかを観察光の光路上に配置したりするための機構をより簡単に位相差顕微鏡11に設けることができる。また、位相差リング28が対物レンズ24鏡筒の外にあるので対物レンズ24の性能が制約を受けずに済む。なお、複数の位相差リング28がターレットに配置される場合、それらの位相差リング28に設けられる位相板42の位置や形状のうちの少なくともいずれかが互いに異なるものとされる。
また、以上においては、ステージ21に配置される容器として、ウェルプレートの場合を例として説明したが、その他、メニスカスの生じる容器であればどのようなものに対しても位相差顕微鏡11を適用することができる。
以上の実施形態は、位相差観察の実施例を説明したが、体外受精の研究時に用いられるホフマンコントラスト観察にも応用可能である。例えば、卵子と精子を水滴中に保持し、さらにこれをミネラルオイルの層中に保持させた状態で観察する場合、水とミネラルオイルとの屈折率の差が発生してしまう。このとき、卵子や精子の観察を良好に行う場合、屈折率の差異を考慮し、本発明を適用すれば良好な観察が実現できるようになる。
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
11 位相差顕微鏡, 21 ステージ, 23 コンデンサレンズ, 24 対物レンズ, 25 接眼レンズ, 26 カメラ, 27 位相差リング, 28 位相差リング, 29 電動駆動部, 41 スリット, 42 位相板, 101 ウェル, 131 固定台, 132 移動台, 133 ステッピングモータ, 161 入力部, 162 制御部, 163 記録部, 164 ステージ駆動部, 231 ターレット, 232−1乃至232−5,232 位相差リング, 233−1乃至233−5,233 スリット, 261 リレー光学系