JP6878777B2 - オーバーモールド用樹脂組成物及びオーバーモールド一体化成形品 - Google Patents

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Description

本発明は、圧縮成形された長繊維強化熱可塑性樹脂成形品を覆うオーバーモールド用樹脂組成物、及び該樹脂組成物で覆われたオーバーモールド一体化成形品に関する。詳しくは、擬似等方性の低線膨張係数を有する圧縮成形された長繊維強化熱可塑性樹脂成形品のオーバーモールド用樹脂組成物、及び該樹脂組成物で覆われたオーバーモールド一体化成形品に関する。更に詳しくは、線膨張係数が低く、かつその異方性の小さい成形品にオーバーモールドすることで、複合成形品の表面性に優れ、ソリが小さい複合体が得られるオーバーモールド用樹脂組成物、及び該樹脂組成物で覆われたオーバーモールド一体化成形品に関する。
近年、開発された長繊維強化熱可塑性樹脂材料を圧縮成形した成形品(例えば、非特許文献1参照)は、高い強度や剛性を有することから、部材の軽量化を狙い、金属代替できる可能性が大きいことが分かってきた。しかし、長繊維強化熱可塑性樹脂を圧縮成形して得られた成形品は、表面外観が悪く、面粗度が高く、また機械加工に工数が掛かることから、実用性には、多くの課題があった。圧縮成形する時、プリプレグ積層品の表層に強化繊維製のサーフェイスマットや強化繊維を含まない樹脂層を合わせて圧縮成形することも試みられている。しかし、層間の物性差が大きく、層間剥離やソリが発生し、一体化するには課題が多く問題は解決できなかった。繊維強化熱可塑性樹脂材料を圧縮成形して得られた成形品をプリカットし、予備加熱して、射出成形用型に移動して、射出成形により二次成形をして、表面に化粧して良外観の成形品とすること(非特許文献2参照)や、成形品にリブやボスを立てること(例えば、特許文献1参照)や、成形品の側面に枠を形成することや、複数の成形品を一体化すること(例えば特許文献2参照)が、試みられている。
連続繊維強化樹脂成形品や、強化繊維の織物や組み物強化樹脂成形品のコア材料に射出成形によりスキン材料を成形することも開示されている(例えば特許文献3)。しかし、これらの方法は、コア層材料とスキン層の材料構成が異なることから、密着力が小さく、また成形収縮率の違いから、スキン層とコア層が分離することや、成形品のソリが発現することから、実用化が困難であった。
長繊維強化熱可塑性樹脂を圧縮成形した成形品は、非常に高い強度を得るために、賦形性に劣るが、連続繊維や長繊維強化材を高充填している。このために、得られた成形品の精密性や外観の商品性に大きな課題があった。一方、オーバーモールドには、賦形性に優れた材料が好ましく、これらの成形品に関しても射出成形が可能な樹脂組成物の使用が試みられてきた。射出成形用樹脂材料としては、強化繊維を含まない非強化樹脂や、繊維長が1mm以下の強化繊維を含んだ強化樹脂が使用されてきた。高充填された長繊維強化熱可塑性樹脂成形品の成形収縮率や線膨張係数は、大変小さくなっている。このために、複合化した部材は、ソリが大きく、また、温度変化で界面が剥離することや、スキン層にクラックが発生するという問題があり、実用化が難しかった。
しかし、強度に優れた長繊維強化熱可塑性樹脂成形品をコア層として、それを覆うように、射出成形が可能で、表面外観性にすぐれており、工業的に一体化できるスキン層材料(オーバーモールド用樹脂組成物)の開発要請が強かった。すなわち、一体化成形品(複合体)のソリが小さく、コア層と密着性に優れたスキン層となりうる樹脂組成物の開発要請が強くあった。
工業材料、37(1)、53〜57(1989) 機能材料 36(No.2)、p26 (2016)
特開2014−148124号公報 特開2013−216078号公報 特表2012−526686号公報
本発明の狙いは、長繊維強化熱可塑性樹脂成形品、特に、擬似等方性を有する長繊維強化熱可塑性樹脂成形品の表面や側面に、射出成形によりオーバーモールドが可能で、得られた一体化成形品(複合体)において、優れた密着性、低ソリ性、良外観が達成し得るオーバーモールド用樹脂組成物、及び該樹脂組成物で覆われたオーバーモールド一体化成形品を提供することにある。
本発明者らは、長繊維強化熱可塑性樹脂成形品からなるコア層に対して、ソリが小さく、密着性のよいスキン層が得られる樹脂組成物を得るべき鋭意検討した結果、下記の構成からなる本発明に至った。
[1] 圧縮成形された擬似等方性の長繊維強化熱可塑性樹脂成形品の片面または両面を射出成形により覆うための樹脂組成物であって、流動方向に対して直角方向の線膨張係数が2×10−5〜8×10−5/degであることを特徴とするオーバーモールド用樹脂組成物。
[2] 無機充填材を3質量%〜55質量%含有することを特徴とする[1]に記載のオーバーモールド用樹脂組成物。
[3] 前記無機充填材が、板状充填材であることを特徴とする[2]に記載のオーバーモールド用樹脂組成物。
[4] 前記無機充填材が、層状の珪酸塩であることを特徴とする[2]に記載のオーバーモールド用樹脂組成物。
[5] 樹脂組成物の樹脂が、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂から選択された1種以上からなることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のオーバーモールド用樹脂組成物。
[6] 前記長繊維強化熱可塑性樹脂成形品の面内方向の線膨張係数が、−5×10−6〜30×10−6/degであることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載のオーバーモールド用樹脂組成物。
[7] 擬似等方性の長繊維強化熱可塑性樹脂成形品の片面または両面が、[1]〜[5]のいずれかに記載のオーバーモールド用樹脂組成物で覆われたオーバーモールド一体化成形品。
[8] 前記長繊維強化熱可塑性樹脂成形品の面内方向の線膨張係数が、−5×10−6〜30×10−6/degである[7]に記載のオーバーモールド一体化成形品。
本発明により、強度や弾性率が非常に高く、金属代替可能な複合材成形品を、表面平滑性や表面光沢の優れた外観を有する部材として提供することが可能となり、部材の商品性を高められる。この部材は、自動車や機械の金属代替のエースになり得る。
実施例で作製した長繊維強化熱可塑性樹脂のハット型成形品の概観図 オーバーモールド用射出成形型(開状態)のA−A’断面図(Iは上型、IIは下型) オーバーモールド用射出成形型(閉状態)のA−A’断面図 実施例で作製した長繊維強化熱可塑性樹脂のハット型成形品のプリカット品断面図 オーバーモールド用射出成形型の凹型にスペーサー(厚み1mm)、凸型にプリカット品(厚み1mm)を配置して型閉めしたA−A’断面図 オーバーモールド一体化成形品のA−A’断面図(厚み1mmのプリカット品使用) オーバーモールド一体化成形品のA−A’断面図(厚み2mmのプリカット品使用) オーバーモールド一体化成形品のソリ測定位置(Iは側面図、IIは上面図)
以下、本発明を詳述する。
1.長繊維強化熱可塑性樹脂成形品
〔長繊維強化熱可塑性樹脂成形品の構成〕
本発明における長繊維強化熱可塑性樹脂成形品は、次の手順により得られるものである。強化繊維として、所定の繊維束からなる強化繊維ロービングを用い、これに、熱可塑性樹脂を含浸させてプリプレグテープを作製し、これを所定の長さにカットして、短冊状プリプレグとする。短冊状プリプレグを平面状に無作為にばらまき、熱可塑性樹脂の融点以上に加熱圧縮した後、冷却固化して、繊維束が面内ランダムに配向した擬似等方性シートとする。この擬似等方性シートを圧縮成形することにより、長繊維強化熱可塑性樹脂成形品が得られる。
本発明の長繊維強化熱可塑性樹脂成形品は、以下に詳しく説明するが、強化繊維40〜80質量%、熱可塑性樹脂60〜20質量%含有し、強化繊維の繊維長は、15〜50mmで、繊維束を形成しており、繊維束の長さ軸は面内において擬似等方性を有している。
本発明における擬似等方性について、説明する。
本発明に使用される長繊維強化熱可塑性樹脂成形品中の繊維束の長さ軸は、面内において、ランダム配向している。本願におけるランダム配向とは、擬似等方性を意味し、(1)式で示されるオ−バーモールド組成物が接合する長繊維強化熱可塑性樹脂成形品表面と平行な面(接合面)における配向関数fθが、好ましくは、−0.15〜0.15、より好ましくは、−0.1〜0.1である。
θ=(3<cosθ>−1)/2 ・・(1)
ここで、<cosθ>は、接合面内の任意の座表軸と繊維束の長さ軸と成す角θの二乗平均である。完全1軸配向のfθは1であり、完全垂直配向のfθは−0.5、fθ=0は完全ランダムを表す。断層面をマイクロスコープで100倍程度に拡大して、任意の視野に観察される繊維束50〜100本について配向角を求めて算定される。配向関数が−0.15未満か0.15を超えると、成形品の面内の弾性率に異方性が発生し、成形品内部に弱点が発生するから好ましくない。また、温度などの環境変化でソリ変形を起こすことがあり、好ましくない。
〔強化繊維〕
使用される強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、有機繊維などが挙げられる。本発明の目的のひとつである金属代替を狙うには、比強度や比弾性率の高い炭素繊維が好ましい。使用される炭素繊維は、ポリアクリロニトル繊維や、セルロース繊維を焼成処理して得られた単繊維径が5〜12μmである炭素繊維や、ピッチ系の炭素繊維フィラメントを酸化処理して、サイジング剤にて1000〜100000本の単繊維を集束したものが使用される。特に、高強度のアクリルニトリル系炭素繊維が好ましい。サイジング剤は、特に限定されないが、エポキシ系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系が好ましい。サイジング附着量は、作業性と開繊性が両立できるように、0.8〜5質量%が好ましい。
本発明には、強化繊維として、所定の繊維束からなる強化繊維ロービングを用いる。繊維束は、1000〜100000本の単繊維、好ましくは3000本〜50000本の単繊維、より好ましくは8000本〜30000本の単繊維からなる。繊維束を形成する単繊維は、1000本未満では、繊維の長さ軸に対する圧縮応力で繊維が座屈しやすく、繊維の補強効果は十分発揮されないので好ましくない。また100000本を超えると構成単位が大き過ぎて、不均一な応力分布となり、弱点が発現しやすく好ましくない。
〔熱可塑性樹脂〕
使用される熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6、ポリアミド6T共重合体、ポリアミド10T共重合体、ポリフェニレンスルフィド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ABS樹脂などが例示される。中でも、ポリプロピレン、ポリアミド6、ポリアミドMXD6、ポリアミド6T共重合体、ポリアミド10T共重合体、ポリフェニレンスルフィドから選択された1種以上が好ましい。更に好ましくはポリプロピレン、ポリアミド6、ポリアミドMXD6,ポリアミド10T共重合体から選択された1種以上である。ポリプロピレンは、強化繊維との接着性の面から、酸変性ポリプロピレンや、エポキシ変性ポリプロピレンが好ましい。
〔プリプレグテープ〕
プリプレグテープは、次のいずれかの方法により作製できる。
(1)開繊した強化繊維ロービングと、溶融した熱可塑性樹脂を含浸台に供給し、出口ダイを通して引き抜く。
(2)強化繊維の開繊したロービングの上下を熱可塑製樹脂フイルムに挟んで含浸台に供給し、出口ダイで引き抜く。
(3)熱可塑性樹脂を溶融押出する押出機の先端に、強化繊維ロービングを供給して、繊維ロービングを樹脂で被覆したストランドを、加熱ロールで賦形する。
(4)強化繊維と熱可塑性樹脂繊維を混繊して、熱可塑性樹脂を加熱賦形する。
プリプレグテープは、強化繊維40〜80質量%、熱可塑性樹脂60〜20質量%、好ましくは、強化繊維50〜75質量%、熱可塑性樹脂50〜25質量%、より好ましくは、強化繊維60〜75質量%、熱可塑性樹脂40〜25質量%を含有する。強化繊維が40質量%未満では、強度や弾性率が低く、構造材としての性能が不足するので好ましくない。一方、強化繊維が80質量%を超えると、強化繊維への樹脂含浸不良部分が発生しやすく、強度が低下するので好ましくない。
プリプレグテープ中の強化繊維の質量割合は、強化繊維と熱可塑性樹脂の含浸台等への供給比率で調節できる。質量割合は、強化繊維と熱可塑製樹脂の密度を予め測定して、これらと成形品の密度から計算で確認される。また、別の方法として、プリプレグ中の熱可塑性樹脂を窒素雰囲気中で500℃にて焼却して、質量減少分から、強化繊維の質量割合が求められる。
プリプレグテープには、本発明の効果を損なわない範囲で、サイジング剤、安定剤、成形性改良剤などの添加剤を添加しても良い。これら添加剤は合計で、プリプレグテープ中、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
ここで説明した強化繊維、熱可塑性樹脂及び添加剤の質量割合は、短冊状プリプレグ、擬似等方性シート、長繊維強化熱可塑性樹脂成形品でも同様である。
〔短冊状プリプレグ〕
プリプレグテープを繊維の補強効果と成形時の流動性を考慮して、適切な長さの短冊状にカットする。カット長は、好ましくは、15mmから50mm、より好ましくは、20mmから40mm、さらに好ましくは、25mmから35mmである。15mm未満では、補強効果が低下し、十分な強度が得られないので好ましくない。また50mmを超えると、成形するときの賦形性が不足するので好ましくない。
カット長は、強化繊維の繊維長となるが、繊維長は、擬似等方性シート、長繊維強化熱可塑性樹脂成形品でも同様である。
〔擬似等方性シート〕
短冊状プリプレグを仮の容器中に、平面状に無作為にばらまき、熱可塑性樹脂の融点以上に加熱圧縮した後、冷却固化して、繊維束が面内ランダムに配向した擬似等方性シートを得る。
〔長繊維強化熱可塑性樹脂成形品〕
擬似等方性シートから、金型のキャビティ容積分より僅か多くなる分を切り出し、遠赤外線ヒーターで、熱可塑性樹脂が溶融するまで加熱溶融する。溶融したシートを、温度調節された金型のキャビティに移動させ、圧縮成形して擬似等方性の長繊維強化熱可塑性樹脂成形品を得る。
本発明に使用される長繊維強化熱可塑性樹脂成形品中における繊維束は、短冊状である。ここで、単繊維の表面の間隔が30μm以下であり、それらの単繊維の長さ軸の方位角の差が15度以下である単繊維が、50本以上からなるものを一般的に繊維束と呼ぶ。繊維束を成す単繊維数は、プリプレグテープそのままの場合、ロービングを構成する単繊維の本数と同じである。プリプレグテープを1/nにスリットした場合は、ロービングを構成する本数/nの単繊維の本数とみなすことができる。また、長繊維強化熱可塑性樹脂成形品の場合、試験片を約500℃にて熱可塑性樹脂を焼却して、残存した繊維束をピンセットで取り出し、その質量を測定し、それに含まれる繊維束の数と繊維束の単繊維1本当たりの質量の積で除して平均単繊維数は求められる。短冊状を成す長さは、好ましくは、15mmから50mm、より好ましくは、20mmから40mm、さらに好ましくは、25mmから35mmである。15mm未満では、補強効果が低下し、十分な強度が得られないので好ましくない。また50mmを超えると、成形するときの賦形性が不足するので好ましくない。
長繊維強化熱可塑性樹脂成形品の面内方向の線膨張係数は、−5×10−6〜30×10−6/degであることが好ましい。上記の構成で得た長繊維強化熱可塑性樹脂成形品の面内方向の線膨張係数は、この範囲となる。
2.オーバーモールド用樹脂組成物
〔オーバーモールド用樹脂組成物の構成〕
オーバーモールド用樹脂組成物の母相となる熱可塑性樹脂のペレットの所定量と、無機充填材、並びに安定剤、成形性改良剤などの添加剤の所定量を計量し、予備混合する。これを、熱可塑性樹脂に適切な温度に調節された、押出機のホッパーに投入する。押出機中で溶融混錬し、出口ノズルから押し出されたストランドを水槽で冷却し、所定の長さにカットして、オーバーモールド用樹脂組成物を得る。
〔熱可塑性樹脂〕
オーバーモールド用樹脂組成物に使用される母相となる熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6、ポリアミド6T共重合体、ポリアミド10T共重合体、ポリフェニレンスルフィド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ABS樹脂などが例示される。ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂から選択された1種以上であることが好ましい。中でも、ポリプロピレン、ポリアミド6、ポリアミドMXD6,ポリアミド6T共重合体、ポリアミド10T共重合体から選択された1種以上がより好ましい。更に好ましくは、ポリプロピレン、ポリアミド6、ポリアミドMXD6,ポリアミド10T共重合体から選択された1種以上である。ポリプロピレンは、長繊維強化熱可塑性樹脂成形品との接着力が高い酸変性ポリプロピレンや、エポキシ変性ポリプロピレンが好ましい。
長繊維強化熱可塑性樹脂成形品の母相を成す熱可塑性樹脂と、オーバーモールド用樹脂組成物の母相を成す熱可塑性樹脂は、同じ熱可塑性樹脂の場合、同系の熱可塑性樹脂の場合、または異なる熱可塑性樹脂の場合があり、オーバーモールド成形する狙いにより選択されるもので、組み合わせは限定されない。例えば、同じ母相樹脂の組み合わせであれば、溶融接着して、表面の外観や装飾性を改善することができる。ポリプロピレン−ポリプロピレン、ポリアミド6−ポリアミド6、ポリアミド66−ポリアミド66、ポリアミドMXD6−ポリアミドMXD6,ポリアミド10T共重合体−ポリアミド10T共重合体、ポリアミド6T共重合体−ポリアミド6T共重合体、ポリブチレンテレフタレート−ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート−ポリブチレンナフタレート、ポリフェニレンスルフィド−ポリフェニレンスルフィド、ポリ乳酸−ポリ乳酸、ポリエーテルケトンケトン−ポリエーテルケトンケトン、ポリカーボネート−ポリカーボネート、ABS−ABS等の組み合わせがある。ポリプロピレン−ポリプロピレンの場合、酸やエポキシ変性されたものの組み合わせが好ましい。
溶融接着を確実にするためには、同系樹脂で融点の高い樹脂をオーバーモールド用樹脂組成物の母相とする組み合わせが好ましい。例えば、ポリアミド6−ポリアミド66、ポリアミド610−ポリアミド6、ポリアミド6−ポリアミドMXD6,ポリアミド6−ポリアミド6T共重合体、PBT−PET、ポリプロピレン−ポリメチルペンテンなどがある。
オーバーモールド用樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の含有量は、97〜45質量%が好ましく、97〜50質量%がより好ましく、95〜55質量%がさらに好ましい。97質量%を超えると、線膨張係数が大きく、ソリが大きくなる傾向がある。45質量%未満では、成形時に充填不足が発生することや表面粗度が高くなる傾向がある。
〔無機充填材〕
オーバーモールド用樹脂組成物に配合される無機充填材として、シリカ、石英、炭酸カルシュウム、珪酸カルシュウム、硫酸バリウムなどの微粒子、ワラストナイト、ガラス維、炭素繊維、硫酸カルシュウムなどの針状のもの、ガラスビーズ、ガラスバルーンなどの球状のもの、タルク、クレイ、マイカなどの板状のものがある。針状のものは、流動方向に配向しやすく、収縮率に異方性が発現しやすい。微粒子は、収縮率の低減効果が小さいため、充填量を高くすることが必要である。面状の成形品のオーバーモールド用としては、板状の無機充填材が収縮率の異方性が小さく、成形収縮率や線膨張係数を低減するので好ましい。
無機充填材としては、モンモリロナイトや雲母のような層状の珪酸塩は、配合量が少量でも線膨張係数低減効果が大きいことから好ましい。これは、層状の珪酸塩は、樹脂組成物中でナノ分散することが可能であり、質量当たりの表面積が飛躍的に大きいことから高い充填効果が発揮されるためである。狙いの線膨張係数に低減するために、無機充填材の配合量の低減が可能となり、その結果、オーバーモールド一体化成形品の表面平滑性や外観が良好となるので好ましい。
無機充填材の平均粒径は、特に限定されないが、好ましくは、0.1〜300μm、より好ましくは、0.5〜100μm、更に好ましくは、0.8〜50μmである。0.1μm未満では、成形収縮率低減効果が小さい。また300μmを超えると、成形品表面の平滑性が低下して、成形品光沢や表面性が低下する場合がある。平均粒径は、微粒子の場合、平均直径であり、針状の場合、球状に体積換算した直径であり、球状の場合、球の径であり、板状の場合、球状に体積換算した直径である。層状の珪酸塩の場合、剥離した層を球状に体積換算した球の直径である。
オーバーモールド用樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、3〜55質量%が好ましいく、3〜50質量%がより好ましく、5〜45質量%がさらに好ましい。無機充填材の含有量が3質量%未満の場合、線膨張係数やソリ低減の効果が小さく、55質量%を超えると、成形時に流動性が低下し、未充填が発生したり、表面外観が劣る場合がある。
〔その他の添加剤〕
安定剤としては、ヒーダードフェノール系のイルガノックス1010、イルガノックス1330、イルガノックス1076、イルガノックス1098、ホスファイト系のマルクPEP8、マルクPEP4、マルクPEP2112、イルガフォス12、イリガフォス168、チオエーテル系のマルクAO23,マルクAO503,シーノクス412S,シーノックス326M、シーノックス226Mなどが挙げられる。ヒンダードフェノール系とホスファイト系、ヒンダードフェノール系とチオエーテル系を組み合わせたものは耐久性が高く好ましい。安定剤はオーバーモールド用樹脂組成物中に、好ましくは0.1質量%〜3質量%配合される。0.1質量%未満では、安定効果が小さい。また3質量%を超えると熱変色を起こすことがある。
また、流動性や離型性を改善する成形性改良剤として、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸、低分子ポリオレフィン、ビスアミドなどが挙げられる。成形性改良剤はオーバーモールド用樹脂組成物中に、好ましくは、0.1質量%〜3質量%、より好ましくは、0.2質量%〜1質量%配合される。0.1質量%以下では、成形性改良効果は小さく、また、3重量%を超えると、成形品表面の外観が低下する場合がある。
無機充填材、安定剤及び成形性改良剤は、母相樹脂と溶融混練して、オーバーモールドに提供されることが好ましい。母相樹脂ペレットと無機充填材、安定剤及び成形性改良剤をブレンダーやミキサー中に投入して、羽を回転することで予備混合して、母相樹脂の融点〜融点+50℃に温度調節した、押出機やニーダーのホッパーに投入して、溶融混練して、出口ノズルからのストランドを水冷した後、ペレットとしてオーバーモールドに提供される。
〔オーバーモールド用樹脂組成物〕
本発明のオーバーモールド用樹脂組成物は、実施例の項に示す線膨張係数測定により測定された、流動方向に対する直角方向の線膨張係数が、2×10−5〜8×10−5/degである。オーバーモールド用樹脂組成物が上記の構成を有することで、このような線膨張係数を達成できる。このような線膨張係数を有するオーバーモールド用樹脂組成物を、前記の長繊維強化熱可塑性樹脂成形品の表面や側面に、射出成形によりオーバーモールドして得られた一体化成形品は、優れた密着性、低ソリ性を達成することができる。一般的に、射出成形の場合、流動方向には、繊維状の無機充填材が配向しやすく、線膨張係数も小さくなりやすいが、流動方向に対して直角方向は、繊維補強の効果は殆どなく、線膨張係数を小さくし難い。したがって、流動方向に対して直角方向の線膨張係数を小さくすることが重要となる。
また、流動方向の線膨張係数は、1×10−5〜8×10−5/degであることが好ましい。
3.(オーバーモールド)一体化成形品
〔オーバーモールド成形〕
圧縮成形された長繊維強化熱可塑性樹脂成形品を、必要に応じてトリミングした後、射出成形によるオーバーモールド用金型にセットする。長繊維強化熱可塑性樹脂成形品は、部分的にオーバーモールド用金型のキャビティの長さ、幅、厚さにおいて小さい成形品となっている。オーバーモールドのゲートから連通するその差異の部分に、射出でオーバーモールド用樹脂組成物が充填され、一体化される。オーバーモールド用キャビティのゲートは、サイドゲート、1点または多点ピンゲート、1点または多点のトンネルゲート、ダイレクトゲートが可能である。得られた一体化成形品の仕上げが簡単になるサイドゲート、1点または多点のピンゲートが好ましい。ゲートまでのランナーは、ホットランナー、セミホットランナー、コールドランナーが可能である。
オーバーモールドされた一体化成形品と長繊維強化熱可塑性樹脂成形品の寸法差は、長手方向で0〜50mm、好ましくは3〜40mm、短手方向で0〜50mm、好ましくは3〜30mm、厚さ方向で0.5〜3mm、好ましくは1〜2.5mmである。長手方向や短手方向で、差がマイナスで長繊維強化熱可塑性樹脂成形品が大きいと、オーバーモールドのキャビティに長繊維強化熱可塑性樹脂成形品がセットできないから成形できない。また、50mmを超えるとオーバーモールド後の一体化成形品の端部の強度や剛性が低く、実用上好ましくない。この差の両端への振り分け比率は、特に限定されない。オーバーモールド一体化成形品が、長繊維強化熱可塑性樹脂成形品を保持するためには、長手方向と短手方向での寸法差が、それぞれ両側とも3mm以上、好ましくは5mm以上あると実用上好ましい。長繊維強化熱可塑性樹脂成形品をオーバーモールド用樹脂組成物の成形収縮力で抱え込むことができる。
一体化成形品と長繊維強化熱可塑性樹脂成形品との厚さの差分(寸法差)は、オーバーモールド用樹脂組成物が長繊維強化熱可塑性樹脂成形品の表層(片面の場合)を覆う厚みとなる。長繊維強化熱可塑性樹脂成形品の表層にオーバーモールド用樹脂組成物を流し込むために、前記差分(オーバーモールド用樹脂組成物の層の厚み)は、0.5mm以上、好ましくは1mm以上である。0.5mm未満では、流動できる長さが小さいので、ゲート数が多く必要になり、好ましくない。また、オーバーモールド用樹脂組成物層の厚さは、3mm以下、より好ましくは2.5mm以下である。一体化成形品の厚みに対するオーバーモールド用樹脂組成物層の厚さは、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下、特に好ましくは20%以下である。この厚み比率が50%を超えると、オーバーモールド樹脂組成物の成形収縮力により、一体化成形品にソリが発生する場合がある。
オーバーモールド成形時、成形時の樹脂圧力とオーバーモールド樹脂のホットメルト接着力で、長繊維強化熱可塑性樹脂成形品と接着される。さらに溶融樹脂が持ち組む熱量により、長繊維強化熱可塑性樹脂成形品の表面が溶融することで接着力は増大する。オーバーモールド成形時は、単体の射出成形に適正な樹脂温度より、10〜50℃高い方が好ましい。
オーバーモールド成形時、オーバーモールド樹脂は、本来、溶融状態から固化状態への成形収縮による寸法変化を伴うが、一方、長繊維強化熱可塑性樹脂成形品は固体状態を保持し、温度差は小さく、寸法変化は小さい。これらが複合された界面では、この差により内部応力が発生し、有る限界を超えるとバイメタル式にソリが発生する。そのソリの大きさは、寸法変化の差と弾性率差に依存する。ソリは、外観が低下するばかりでなく,嵌合や接合が出来ず、部品の組み立てが出来なくなり、実用化の大きな障壁になる。
オーバーモールドの場合、キャビティの間隙が小さく、樹脂の流動性が低くなる。高い流動性と低い成形収縮の相反する物性を有するオーバーモールド用樹脂組成物により、本発明の目的が達成される。
なお、本発明のオーバーモールド一体化成形品や長繊維強化熱可塑性樹脂成形品の形状や大きさは、特に限定されない。例えば、平板状、箱型状、L型状、H型状、T型状の成形品でも使用される。長繊維強化熱可塑性樹脂成形品の形状は、オーバーモールド一体化成形品のキャビティに納まる形状であればよく、相似形状にこだわらない。相対位置の寸法比に関しても、特に限定されない。
以上説明したように、本発明のオーバーモールド用樹脂組成物を長繊維強化熱可塑性樹脂成形品の片面または両面に対して、射出成形することにより、一体化した部品が製造できる。得られるオーバーモールド一体化成形品の平滑性や外観は優れており、射出成形では得ることができない高い強度や弾性率を有している。特に、仕上げの必要がなく、部材として応用できる。
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の記載によって限定されない。
[線膨張係数測定]
オーバーモールド用樹脂組成物;
オーバーモールド用樹脂組成物を100℃で3時間乾燥後、熱可塑性樹脂の融点より40℃高い温度にシリンダー温度が制御された東芝機械社製射出成形機IS80のホッパーに投入した。
金型温度80℃に温度制御されたISO294−1に規定された多目的試験片型を使用して、射出成形して得られたダンベル形試験片の中央平行直線部から10mm×4mm×10mmの試験片を切削した。切り出した試験片を23℃に温度調節された試験室中のデシケーター中で48時間保管した後、試験規格ISO11359−2に準じ、理学電機社製熱物理試験機TMAを使用し、1mmφのプローベ上に3gの荷重を掛け、0℃まで冷却後10℃/分にて120℃まで加熱し、プローベの変位を測定した。試験片の直線部の流動方向と流動方向に対して直角方向について、それぞれ測定した。
20℃から100℃までの変位から、次式により線膨張係数を求めた。
β=(X120−X20)/(120−20)/L
ここで、β:線膨張係数、L:試験片高さ、X120:120℃におけるプローベ位置、X20:20℃にけるプローベ位置(L、X120、X20の単位は同じ)である。
長繊維強化熱可塑性樹脂成形品;
厚さ3.1mmの擬似等方性シートから、390mm×390mmの大きさに切り出し、遠赤外線ヒーターで、熱可塑性樹脂が溶融するまで加熱溶融した。溶融したシートを、温度調節された400mm×400mmの金型のキャビティに移動させ、プレス成形機にて圧縮成形して、厚さ約3mmの擬似等方性の長繊維強化熱可塑性樹脂成形品を得た。この成形品の中央部から、10mm×10mm×3mmの試験片を切削した。切り出した試験片を23℃に温度調節された試験室中のデシケーター中で48時間保管した後、試験規格ISO11359−2に準じ、理学電機社製熱物理試験機TMAを使用し、1mmφのプローベ上に3gの荷重を掛け、0℃まで冷却後10℃/分にて120℃まで加熱し、プローベの変位を測定した。試験片の直交する二方向について、それぞれ測定した。上記のオーバーモールド用樹脂組成物の成形品と同様に、線膨張係数を求めた。
[配向関数]
配向関数fθは、下記の式(1)より求めた。
θ=(3<cosθ>−1)/2 ・・(1)
上記で得た厚さ約3mmの擬似等方性の長繊維強化熱可塑性樹脂成形品の表面をマイクロスコープで100倍に拡大して、任意の視野に観察される繊維束100本について、任意に特定した座表軸と繊維束の長さ軸と成す配向角θを求めた。繊維束100本における配向角θから、二乗平均<cosθ>を求め、(1)式より算出した。
[ソリ測定]
成形直後、ゲート部をカットしたオーバーモールド一体化成形品を23℃、50%RHに調節された試験室の定盤上に24時間静置した。定盤上で、図6や図7に図示された、ハット型のオーバーモールド一体化成形品について、図9のP1位置の上部を定盤に錘で固定し、天板表面のP1、P2、P3、P4の高さをミツトヨ製作所製三次元測定器のプローベを接し、その点の座標を求め、それぞれがH1、H2、H3、H4(単位:mm)としたとき、次式により平面度を求めて、これをソリとした。
ソリ(mm)=〔(H2−H1)+(H3−H1)+(H4−H1)〕/3
[面粗度測定]
成形直後、ゲート部をカットしたオーバーモールド一体化成形品を23℃、50%RHに調節された試験室の常盤上に24時間静置した。株式会社ミツトヨ製SURFTEST SV−600形を使用して、JIS B0601:1994に準じて、触針式により10mmトレースして、十点平均粗さRzを求めた。
〔オーバーモールド用樹脂組成物に使用した原料〕
PP1:無水マレイン酸1質量%変性アイソタクチックポリプロプロピレン(東洋紡試作品)、メルトフローレート(230℃、21.2N)45dg/min、無水マレイン酸変性)
PP2:アイソタクチックポリプロピレン(プライムポリマー製、プライムポリプロJ37M、メルトフローレート(230℃、21.2N) 30dg/min
PA1:ポリアミド6(東洋紡製 T802)
TA1:タルク(林化成製 タルカンPK)平均粒径10μm
MC1:マイカ(ヤマグチマイカ製 A―21S)平均粒径18μm
CaC:重質炭酸カルシュウム(林化成製 KS#500)平均粒径2μm
N−MM:層状珪酸塩(クニミネ社製 クニピア、ナノ分散モンモリロナイト)平均粒径0.02μm
C−CF:チョップド炭素繊維(三菱レイヨン製 TCR3229B)繊維径7μm、3mmカット
〔長繊維強化熱可塑性樹脂成形品〕
CF−PP1:
230℃、21.2N荷重下におけるマスメルトフローレートが60.3g/10分の無水マレイン酸0.52%変性されたポリプロピレン樹脂を、シリンダー温度230℃に温度調節された押出機のホッパーに投入して、溶融したポリプロピレン樹脂を含浸台に供給した。一方、東邦テナックス社製炭素繊維UTS50(12000本フィラメント)を加熱開繊して含浸台を通して、出口ダイから30m/分で引き抜き、回転ロールで厚さ0.14mm、幅15mmのテープ状に賦形した。得られたプリプレグテープ中の樹脂分率は、65質量%であった。
プリプレグテープを30mmにカットして得られた短冊状プリプレグ416gを、縦400mm、横400mm、高さ30mmのキャビティに均一に分散した。
キャビティを230℃に加熱後、1MPaのプレス圧を掛けて5分間保持した後、50℃まで冷却して、繊維長30mm、単繊維数12000本からなる繊維束が板面内にランダムに配向した厚さ2.0mmの擬似等方性シートを得た。
得られた擬似等方性シート中央部から縦380mm、横150mmのサイズに切削して、ブランク材とし、遠赤外線加熱装置で220〜230℃に予熱した。予熱されたブランク材を130℃に温度制御されたハット型キャビティ金型にセットして、1分間5MPaの加圧下に保持した後、脱型して、図1に示したような天板部長さ350mm、天板部幅80mm、フランジ幅20mm、厚み2mmのハット型の長繊維強化熱可塑性樹脂成形品を得た。得られたハット型成形品の天板部長さ方向20mm、フランジ幅3mmをトリミング(プリカット)し、インサート用の(オーバーモールドに供する)長繊維強化熱可塑性樹脂成形品とした。CF−PP1の配向関数fθは、0.046で、直交する面内方向の線膨張係数は、それぞれ−0.42×10−6/deg、−0.41×10−6/degであった。
CF−PP2:
擬似等方性シート作成時に、短冊状プリプレグ208gを用い、厚さ1.0mmの擬似等方性シートを得て、厚み1mmのハット型の長繊維強化熱可塑性樹脂成形品を得た以外は、CF−PP1と同様に作製した。CF−PP2の配向関数fθは、0.33で、直交する面内方向の線膨張係数は、それぞれ−0.61×10−6/deg、−0.63×10−6/degであった。
CF−PP3:
擬似等方性シート中央部から縦380mm、横150mmのサイズに切削して、ブランク材とし、ブランク材を1.5枚使用して、厚み3mmのハット型の長繊維強化熱可塑性樹脂成形品を得た以外は、CF−PP1と同様に作製した。CF−PP3の配向関数fθは、−0.021で、直交する面内方向の線膨張係数は、それぞれ−0.27×10−6/deg、−0.26×10−6/degあった。
GF−PP1:
炭素繊維の代わりに、ガラス繊維を用い、厚さ2mmの擬似等方性シートとした以外は、CF−PP1と同様に作製した。GF−PP1の配向関数fθは、0.042で、直交する面内方向の線膨張係数は、それぞれ4.9×10−6/deg、4.8×10−6/degあった。
GF−PP2:
炭素繊維の代わりに、ガラス繊維を用い、厚さ3mmとした擬似等方性シート中央部から縦380mm、横150mmのサイズに切削して、ブランク材とし、ブランク材を1.5枚使用して、厚み3mmのハット型の長繊維強化熱可塑性樹脂成形品を得た以外は、CF−PP1と同様に作製した。GF−PP2の配向関数fθは、−0.19で、直交する面内方向の線膨張係数は、それぞれ5.2×10−6/deg、5.0×10−6/degあった。
〔実施例1〕
表1に示した原料を計量し、予備混合した。これを、熱可塑性樹脂の融点プラス40℃の温度に調節された、池貝鉄工社製二軸押出機PCM30のホッパーに投入した。押出機中で溶融混錬し、出口ノズルから押し出さされたストランドを水槽で冷却し、3mmにカットして、オーバーモールド用樹脂組成物を得た。
図2に示したように、キャビティの中央に根元8mmφのダイレクトゲート(符号11)を有する金型を、東芝機械製射出成形機IS280に装着した。金型の配管に油を循環した温調機を用いて、金型表面を80℃に制御した。シリンダー温度を250℃に温度制御した東芝機械社製射出成形機IS280のホッパーに、オーバーモールド用樹脂組成物を投入した。凹金型(上型)にアルミ合金製のゲート部に孔を有するスペーサー(1mm厚)を固定し、凸金型(下型)のキャビティの中央に、プリカットしたCF−PP1(天板とフランジの厚さが2mm)の長繊維強化熱可塑性樹脂成形品を固定した。長繊維強化熱可塑性樹脂成形品とキャビティの間隙の厚さ約1mmに、射出時間15秒、冷却時間20秒で、射出圧力と射出速度を調節してハット型成形品の天板部とフランジ部の外側全面に、オーバーモールド成形した。脱型後、直ぐゲート部をカットした。
得られた一体化成形品を23℃に温度調節した実験室に24時間静置した後、成形品のソリと天板の面粗度を測定した。測定結果を、表1に示した。
〔実施例2〜10〕
実施例1の構成要件を表1に示したようにそれぞれ変更した以外は、同様にして、オーバーモールド一体化成形品を作製し、評価を行った。測定結果を表1に合わせて示した。
〔実施例11〕
長繊維強化熱可塑性樹脂成形品として、プリカットしたCF−PP2(天板とフランジの厚さが1mm)を用い、凹金型のスペーサーを2mm厚さとした以外は、実施例1同様にして、オーバーモールド一体化成形品を作製し、評価を行った。測定結果を表1に合わせて示した。
〔比較例1〜5〕
構成要件を表2に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして、オーバーモールド一体化成形品を作製し、評価を行った。測定結果を表2に合わせて示した。
〔比較例6、7〕
長繊維強化熱可塑性樹脂成形品として、プリカットしたCF−PP3(天板とフランジの厚さが3mm)、またはGF−PP2(天板とフランジの厚さが3mm)を用い、オーバーモールドは行わず、評価を行った。測定結果を表2に合わせて示した。
長繊維強化熱可塑性樹脂成形品の単一圧縮成形品は、ソリは小さいが、表面の面粗度が高く、部材としての商品性が乏しいことを示している。
表1と表2は、本発明により、面粗度が2μmより低くて、ソリが2.5mmより小さい外観のよい成形品が得られることを示している。特に、板状の充填材やナノ分散した層状珪酸塩配合品が、表面平滑性が好ましいことを示している。
Figure 0006878777
Figure 0006878777
本発明により得られた長繊維強化熱可塑性樹脂成形品のオーバーモールド一体化成形品は、非常に高い曲げ剛性を有し、面粗度は小さく、またソリが小さく構造部材に適していることから、自動車の部品など大量生産が必要な部材で、部材内の各部分で適材適所の使用が可能になる。部材の軽量化、低価格化により、自動車の部材として利用が可能になる。
1:上型
2:下型
11:射出用ゲート
12:キャビティ
PL:パーティングライン
101:長繊維強化熱可塑性樹脂成形品
13:スペーサー
111:オーバーモールド樹脂組成物層
102:長繊維強化熱可塑性樹脂成形品
112:オーバーモールド樹脂組成物層
200:オーバーモールド一体化成形品
203:定盤

Claims (7)

  1. 圧縮成形された、強化繊維40〜80質量%、熱可塑性樹脂60〜20質量%含有し、強化繊維の繊維長は、15〜50mmで、繊維束を形成しており、繊維束の長さ軸は面内において擬似等方性を有している、擬似等方性の長繊維強化熱可塑性樹脂成形品の片面または両面を射出成形により覆うための樹脂組成物であって、無機充填材を5質量%〜50質量%含有し、流動方向に対して直角方向の線膨張係数が2×10−5〜8×10−5/degであることを特徴とするオーバーモールド用樹脂組成物。
  2. 前記無機充填材が、板状充填材であることを特徴とする請求項に記載のオーバーモールド用樹脂組成物。
  3. 前記無機充填材が、層状の珪酸塩であることを特徴とする請求項に記載のオーバーモールド用樹脂組成物。
  4. 樹脂組成物の樹脂が、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂から選択された1種以上からなることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のオーバーモールド用樹脂組成物。
  5. 前記長繊維強化熱可塑性樹脂成形品の面内方向の線膨張係数が、−5×10−6〜30×10−6/degであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のオーバーモールド用樹脂組成物。
  6. 擬似等方性の長繊維強化熱可塑性樹脂成形品の片面または両面が、請求項1〜のいずれかに記載のオーバーモールド用樹脂組成物で覆われたオーバーモールド一体化成形品。
  7. 前記長繊維強化熱可塑性樹脂成形品の面内方向の線膨張係数が、−5×10−6〜30×10−6/degである請求項に記載のオーバーモールド一体化成形品。
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