JP6877714B2 - 組織細切器及び組織細切方法 - Google Patents

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Description

本発明は、組織細切器及びそれを用いた組織細切方法に関する。
創薬研究における薬剤スクリーニングやその薬理効果の試験では、通常、培養細胞を用いたin vitro系の実験が行われる。特に抗癌剤等の開発では、癌細胞から樹立した細胞株(株化細胞)の使用が不可欠である。細胞株は、作製、維持、及び管理が比較的容易な上に、実施に際してはクリーンルーム等の設備があればよく、大きな施設を必要としないという利点がある。一方で、細胞株を用いて得られたin vitroの知見は、臨床の結果と必ずしも一致しないという問題がある。例えば、細胞株は、通常非常に速い速度で増殖するが、生体内で癌組織が細胞株と同等の速度で増殖するとは考えにくい。また、本発明者らが行った網羅的遺伝子発現解析(クラスタ分析)の結果から、多くの細胞株では生体内の癌組織で高発現していた遺伝子群の発現が消失し、むしろ正常細胞に酷似した遺伝子発現のプロファイルを示すことが明らかとなっている(非特許文献1)。このように、従来の細胞培養方法では、癌組織を材料とした組織培養を行っても、細胞株が臨床における癌の特徴を維持しないという大きな問題がある。
抗癌剤等の薬理効果は、免疫不全動物に癌組織を移植した「担癌動物」を癌罹患モデルとしたin vivo系の実験で検証することもできる。例えば、ヌードマウス等の免疫不全マウスを用いた担癌マウスは、創薬研究において広く利用されている。担癌動物を用いて得られるin vivoでの知見は、生体内における癌組織の特徴を比較的よく反映しており、また個体における抗癌剤の影響を検証できるという利点がある。しかし、担癌動物は、その作製、維持、管理、設備、及び薬剤投与等において膨大なコストを要する上に、専用の施設を必要とし、さらに結果を得るまでに長時間を要するという問題がある。それ故に、スクリーニングレベルでの使用には適さない。
上記のように、従来のin vitro系及びin vivo系の実験方法は、いずれも一長一短を有する。そこで、上記2つの方法の利点を併せ持つシステム、すなわち、取扱いが容易な培養細胞を用いたin vitroの実験系でありながら、培養過程で由来細胞の特性を消失せずに維持し、in vivo実験系のように臨床における効果を予測できるシステムの開発が望まれている。
今井順一、渡辺慎哉:バイオサイエンスとインダストリー VOL.75, No.1, 57-61(2017)
本発明は、生体内の組織や細胞(癌組織や癌細胞を含む)の特性、すなわち、その組織や細胞に特有の遺伝子群の発現や形態的な特徴を培養過程で消失することなく、維持できる細胞調製方法、及びそのような細胞を容易に調製できる器具を開発し、提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明者らは、様々な癌組織とそれらから樹立した細胞についてクラスタ分析を行い、癌組織由来培養細胞をその癌組織分類マーカーで評価した。その結果、表1に示すように、元の癌細胞に比較的類似した細胞系統が8%程度の確率で樹立できるという知見を得た。
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また、一度株化した細胞(いわゆる細胞株)の性質は、少なくとも遺伝子発現プロファイル上では、培養器、培地、添加物等の条件で元の癌細胞の性質を再獲得することはなく、またそれは不可逆的である可能性が示唆された。この結果は、培養細胞が元の細胞の特性を維持するには、細胞を組織から培養系に移行する段階が重要なことを示している。
そこで、本発明者らが培養細胞の樹立段階での研究を進めた結果、組織を構成する細胞の特性を培養系でも維持するためには、組織を個々の細胞が完全に分散した単一細胞状態にまで小片化せずに、ある程度の大きさを保持した細胞塊で留め、その状態で培養することが重要なことを突き止めた。つまり、上記課題を解決するには、組織片から組織培養用細胞を調製する細胞細切方法が重要となってくる。
従来の細胞細切方法では、ディッシュ内に入れた組織片を2本のメスで押さえ込みながら、それぞれのメスを交互に引いて切断し、その操作を複数回繰り返すことによって細切していた。この方法は、特殊な器具を必要とせず、単純かつ簡便ではある反面、切断時にディッシュ上で組織片が滑り動くため細切は容易でなく、所望の大きさに調製できるようになるまで熟練を要するという問題がある。
また、組織を細胞塊に調製する方法として、伊藤らによる「おろし金を用いたウシ初期前胞状卵胞の機械的単離方法」(JRD, 47(5), 2001)がある。この方法では、おろし金で組織を削り、比較的大きな細胞塊を得た後に、それを適当な篩目のメッシュに通して細胞塊を得る。ただし、おろし金では細切ができないことから、粗大組織片等を除去し、所望の大きさの細胞塊を得るには篩目の異なる複数種のメッシュを通す必要があり、細胞調製までの工程数が多いという問題がある。通常、工程数が多いほど、細胞に与えるダメージは大きくなるため細胞調製上、好ましいとは言い難い。
また、特許第4156847号には、「組織細切器および組織細切方法」が開示されている。この発明は、筒状体の開放両端に格子状の金網を備えた組織細切器であり、上方の金網に組織片を載置して、その組織細切器を遠心チューブ内に設置した後、遠心分離することによって、組織片を2つの金網でブロック状に細切する方法である。この方法によれば、組織片の細切は容易になるが、複雑な構成を有する器具を必要とするため製造コストが高くなるという問題がある。また、組織片を溶液に浸漬させることなく細胞塊に調製するため、大気中で曝露する時間が長く、さらに、組織片が金網を通過する程度の遠心重力を付与する必要があるため、細胞に与えるダメージが少なくないという問題がある。
そこで、本発明者らは、上記問題を解決するために、熟練性を必要とすることなく、誰もが容易かつ簡便に、そして細胞に与えるダメージを最小限に留めながら適切な大きさの細胞塊を調製できる細切器の開発に取り組んだ。その結果、内壁底面に突起状手段を設けた比較的単純な構造の細切器の開発に成功した。この細切器内に入れた組織片は、突起状手段によって容器の内壁底面に係止されるため、組織片が容器内で滑ることなく、細切作業が容易になる。また、その組織の特性を維持した適切な大きさの細胞塊を容易に調製することが可能となる。本発明は、上記結果に基づくものであり、以下を提供する。
(1)凹状部、及びその内壁底面の全部又は一部に組織片を係止するための複数の突起状手段を備えた組織細切器。
(2)前記突起状手段の高さが0.2mm〜2.0mmの範囲内にある、(1)に記載の組織細切器。
(3)前記突起状手段が前記内壁底面から上方に向かう尖端形状を有する、(1)又は(2)に記載の組織細切器。
(4)前記突起状手段が前記内壁底面に整列して配置されている、(1)〜(3)のいずれかに記載の組織細切器。
(5)前記凹状部の内壁が底面中央部に向かって凹面形状である、(1)〜(4)のいずれかに記載の組織細切器。
(6)前記凹状部の外壁側面又は外壁底面の全部又は一部に回収溝を備えた、(1)〜(5)のいずれかに記載の組織細切器。
(7)前記凹状部の外壁側面又は外壁底面の全部又は一部から側方に張り出した縁手段を備え、該縁手段は組織細切器を収納可能な容器に収納したときに、前記凹状部の周囲と前記容器間に仮回収溝を形成することができる、(1)〜(5)のいずれかに記載の組織細切器。
(8)前記凹状部の上面形状が円形で、その直径が3cm〜12cmの範囲内にある、(1)〜(7)のいずれかに記載の組織細切器。
(9)組織細切方法であって、(1)〜(8)のいずれかに記載の組織細切器の前記凹状部に組織片を投入する投入工程、及び投入された前記組織片を溶液中で細切器具を用いて細切する細切工程を含む前記方法。
(10)前記細切工程後に得られる組織塊を回収する回収工程をさらにふくむ、(9)に記載の組織細切方法。
(11)前記組織片を0.1mm2〜1.5mm2の大きさに細切する、(9)又は(10)に記載の組織細切方法。
(10)に記載の組織細切方法。
(12)組織培養方法であって、(11)に記載の組織細切方法を経て回収された細胞塊を新たな培地に播種する播種工程、及び播種した細胞塊を培養条件下で培養する培養工程を含む前記方法。
本発明の組織細切器によれば、容器内に投入した組織片の細切作業が容易になり、かつその組織の特性を維持した細胞塊を簡便に調製することができる。
本発明の組織細切方法によれば、組織培養において各組織の特性を維持した状態で細胞培養ができる。
本発明の組織細切器の概念図である。Aは組織細切器(0100)の全体像の斜視図を、BはAにおいて破線円で示す領域の拡大図を示す。この図で例示する組織細切器は、凹状部(0101)の内壁底面(0104)が凹面形状を成し、回収溝(0103)を備える。 本発明の組織細切器の他の概念図である。この図で例示する組織細切器(0200)は、凹状部(0201)の内壁底面(0204)が凹面形状を成し、回収溝に代えて縁手段(0203)を凹状部の外壁底面の全部に有する。この図の縁手段は複数の孔(0207)を備えている。 本発明の組織細切器の他の概念図である。この図で例示する組織細切器(0300)は、選択構成要件である回収溝及び縁手段を有さないため凹状部(0301)の形状が組織細切器の形状を構成している。また、この図の凹状部(0301)の内壁底面(0304)は平面上を成し、その全面に突起状手段を有する。 本発明の組織細切器の他の概念図である。この図で例示する組織細切器(0400)は、回収溝(0403)を備え、凹状部(0401)の内壁底面(0404)の一部に、突起状手段(0402)を有する。回収溝は、回収溝底面(0405)と回収溝側壁(0406)で構成される。 本発明の組織細切器の使用概念図である。縁手段(0503)を備えた本発明の組織細切器(0500)をその組織細切器を収納可能な容器(0508)に収納したときに、凹状部(0501)と容器(0508)の間に仮回収溝(0509)が形成される。 腎臓組織の細切後の細胞塊の顕微鏡画像である。Aは対照用ディッシュを、またBは本発明の組織細切器を、それぞれ用いたときの結果を示す。各図の背景に写るメッシュ図は1mm方眼である。 図6で示した細切後の各細胞塊の面積分布をグラフ化した図である。Aは対照用ディッシュを、またBは本発明の組織細切器を、それぞれ用いたときの結果を示す。
1.組織細切器
1-1.概要
本発明の第1の態様は、組織細切器である。本態様の組織細切器の概念図を図1で示す。Aは組織細切器全体の斜視図を、またBはAにおける破線円内の拡大図を表す。この図に示すように、本発明の組織細切器(0100)は、凹状部(0101)及び突起状手段(0102)を備える。器内の凹状部に投入された組織片を突起状手段が係止することで、器内での組織の滑りを押さえることができ、術者が熟練していなくても組織の細切化が容易になる。また、それによって組織の特性を維持した適切な大きさの細胞塊を容易に調製することができる。
1−2.用語の定義
本明細書で頻用する用語について、以下で定義をする。
本明細書において「組織」は、いわゆる生物学的な組織であって、原則として、同一の形態又は性質を有する細胞の集合体をいう。ただし、本明細書では、複数の組織によって構成される器官由来の組織を包含することから、各組織に由来する異なる形態や性質を有する細胞の集合体であってもよい。組織を構成する細胞は、野生型細胞、変異型細胞、又はその混合物のいずれであってもよい。例えば、変異型細胞として、癌組織を構成する癌細胞が挙げられる。
本明細書において「細切(化)」とは、細かく切り刻み、対象物を小片化することをいう。本明細書において「組織(の)細切」とは、組織片を細胞塊の状態にまで小片化することをいう。
本明細書において「細胞塊」とは数個から数千個の細胞、又は数十個から数百個の細胞の集合体をいう。細胞塊の形状は問わないが、後述する第2態様の組織細切方法によれば、細切器具を用いて小片化されることから、結果物である細胞塊は、直方体、略直方体、立方体又は略立方体であれば好ましい。
1−3.構成
本発明の「組織細切器」は、組織片を細切化するための容器である。主として組織片から組織培養用細胞を調製するために用いられる。以下、図1〜図3の概念図を用いて、本発明の「組織細切器」における構成について具体的に説明をする。
本発明の組織細切器(0100、0200、0300)は、凹状部(0101、0201、0301)及び突起状手段(0102)を必須の構成要素として、また回収溝(0103)又は縁手段(0203)を選択的な構成要素として、備える。
(1)凹状部
「凹状部」(0101、0201、0301)は、本態様の組織細切器に含まれる必須の構成要素であって、その内部に細切すべき組織片を保持できるように構成されている。
凹状部は、周辺部が高く、中央部が凹んだ皿状の形状をなす。凹状部の内壁底面は、図3の0304に示すような平面であってもよく、又は曲面であってもよい。曲面の場合、例えば、図1Aの0104や図2の0204に示すような凹状部上面が底面中央部に向かって緩やかに凹んだ凹面形状とすることができる。
凹状部の大きさ、形状及び厚さは、特に限定はしない。組織片を無理なく細切できる大きさと形状であればよい。形状の例としては、上方から見たときの形状(本明細書では、しばしば「上面形状」と表記する)が円形又は略円形、楕円形又は略楕円形、多角形又は略多角形、あるいはそれらの組み合わせ形状が挙げられる。通常は、円形又は楕円形の上面形状であることが好ましい。大きさについては、上面形状が円形であれば直径が、また楕円形であれば短径と長径が、3cm〜12cm、4cm〜10cm、又は5cm〜9.5cm範囲内にあればよい。本発明の組織細切器が後述する縁手段を備える場合、組織細切器は培養用ディッシュ等の他の容器に収納して使用される。この場合、細胞培養分野で一般的に使用される円形培養用ディッシュの直径が6cm又は9cmであることを考慮すれば、凹状部の大きさはそれに収納できる6cm以下、又は9cm以下であることが好ましい。また、厚さについては、メス等の細切器具を用いて組織片を細切する際に、細切器具の切断圧力により切断されることのない厚さを有していればよい。凹状部の素材にも依るが、プラスチックやガラス等の硬質素材であれば、例えば、0.3mm〜2.0mm、0.5mm〜1.8mm、0.8mm〜1.5mm、又は1.0mm〜1.2mmの範囲にあればよい。凹状部の高さは特に限定はしない。細切時に組織片や細切された細胞塊が凹状部からこぼれ出さない程度の高さがあればよい。例えば、内壁最底面部からの高さが3mm〜14mm、5mm〜12mm、又は7mm〜10mmの範囲にあればよい。「内壁最底面部」とは、内壁底面において最も低い位置をいう。例えば、凹状部が凹面形状の場合、中央部の底面が該当する。
なお、本発明の組織細切器の形状は、特に限定はしないが、通常は凹状部の形状とほぼ一致する。つまり、凹状部が組織細切器における全体形状を決定し得る。これは、凹状部が組織細切器の大部分を占める主要構成要素だからである。
凹状部の素材は、組織片を細切可能な素材であれば限定はしない。例えば、プラスチック、金属、ガラス、セラミックス、又は化学繊維若しくは天然繊維又はそれらの集合体(例えば、紙、不織布、フィルター)が挙げられる。コスト面、形状加工面、及び扱いやすさ等を考慮すれば、プラスチックが便利である。プラスチックであれば、例えば、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリサルフォン、ポリアミド、アクリル樹脂を利用することができる。
本発明の凹状部は、二以上の素材からなる多層構造体とすることもできる。例えば、ガラス表面にプラスチック層が積層された場合が該当する。
(2)突起状手段
「突起状手段」は、前記凹状部の内壁底面の全部又は一部に複数個配置された手段である。本手段は、組織細切器において組織片を係止するという主要機能を果たす。
本明細書において「係止」とは、対象物との接触によって、その対象物を引っ掛けて捕捉することをいう。対象物を一過的にその場所に留める程度でよく、対象物を完全に捕捉し、保持する必要はない。
突起状手段の形状は、凹状部の内壁底面から上方に向かって突出した形状であれば限定はしない。ただし、突起状手段の機能を考慮すれば、投入された組織片を係止しやすい形状であることが好ましい。例えば、内壁底面から上方に向かう尖端形状や鉤(フック)形状が挙げられる。ここでいう「上方」とは、水平面に対して垂直上方ではなく、その突起状手段が配置されている凹状部内壁部位の底面に対して垂直上方であること意味する。したがって、例えば、内壁底面が凹面形状の場合、凹状部の外壁側面(後述)と内壁底面が接する凹状部上部外縁に近い位置の尖端形状や鉤形状は、水平方向に近い方向が、ここでいう上方となる。前記「上方に向かう尖端形状」の例として、例えば、円錐形状若しくは略円錐形状、又は多角錐形状(三角錐形状、四角錐形状、六角錐形状を含む)若しくは略多角錐形状が挙げられる。図1Bではピラミッド様の略四角錐形状の突起状手段が配置された凹状部を例示している。
突起状手段の大きさは特に限定はしないが、組織片を係止するためには、その高さが、例えば、0.2mm〜2.0mm、0.4mm〜1.5mm、0.5mm〜1.2mm、又は0.7mm〜1.0mmの範囲内にあることが好ましい。ここでいう「高さ」は、その突起状手段が配置されている凹状部内壁部位の底面部からの高さである。また、一の突起状手段の配置面の面積は、0.2mm2〜2.0mm2、0.3mm2〜1.5mm2、0.4mm2〜1.2mm2、又は0.5mm2〜1.0mm2の範囲内にあることが好ましい。
突起状手段の素材は、組織片を係止可能な素材であれば限定はしない。例えば、前述の凹状部に例示した素材を利用することができる。このとき突起状手段の素材は、凹状部と同一であってもよいし、異なっていてもよい。両者が同一素材の場合には、組織細切器の加工時に凹状部と突起状手段を一体成形することができる。両者の素材が異なる場合には、凹状部の内壁底面の所定の位置に、両者の素材を結合可能な公知の固定化法により突起状手段を配置し、固定すればよい。また、前述のように、凹状部が二以上の素材からなる多層構造体の場合、突起状手段は最内壁側の層における内壁底面に配置される。
組織細切器における突起状手段の数は複数個であれば、特に限定はしない。ただし、組織片を確実に係止するためには、数十個以上、又は数百個以上を有していることが望ましい。凹状部の内壁底面に配置される各突起状手段は、同一形状、又は異なる形状のいずれであってもよい。また、突起状手段は互いに隣接していてもよいし、離れていてもよいし、その組み合わせであってもよい。さらに、突起状手段は、凹状部の内壁底面上で、整列して配置されていてもよいし、ランダムに配置されていてもよい。一部領域を整列配置し、他の領域をランダム配置することもできる。本明細書において「整列して」とは、所定の規則に従って列をなすことをいう。整列パターンは限定しない、複数の縦列と複数の横列が互いに直交するパターンであってもよいし、底面中央部から同心円状に広がるパターンであってもよい。
突起状手段は、凹状部における内壁底面の全部又は一部に存在する。ここでいう「全部」とは内壁底面の全面をいう。例えば、図1や図3では、細胞細切器における内壁底面(0104、0304)の全面に突起状手段(0102)が配置されている。また、ここでいう「一部」とは、内壁底面における一以上の部分領域をいう。例えば、図4では、細胞細切器(0400)における内壁底面(0404)の中央部のみに突起状手段(0402)が配置されている。
凹状部の内壁底面の周囲に存在する内壁側面には、突起状手段があってもよいし、なくてもよい。前述のように凹状部の内壁が底面中央部に向かって凹面形状を有するときには、明確な内壁側面が存在しない場合がある。このようなときには凹状部の内壁全面が内壁底面に相当する。
(3)回収溝
「回収溝」は、図1の0103、又は図4の0403で示すように、組織細切器において前記凹状部の外壁側面又は外壁底面の全部又は一部に設けられた溝状手段である。原則として、凹状部(0101、0401)の周囲に形成される。回収溝は、回収溝底面(0405)と回収溝側壁(0406)によって構成される。以下、それぞれについて説明をする。
(3−1)回収溝底面
「回収溝底面」(0405)は、回収溝の底面を構成する平面又は曲面を有する板状の構成要素であり、凹状部の外壁側面又は外壁底面の全部又は一部から側方に張り出すように配置されている。「凹状部の外壁側面」とは、凹状部の周囲を取り巻く外部壁面をいう。また、「凹状部の外壁底面」とは、凹状部の外側底面をいう。例えば、凹状部の内壁底面が平面の場合、その内壁平面の反対面が外壁底面に該当する。本明細書において「側方」とは、組織細切器の垂直面に対して横方向をいう。ここでいう横方向は、前記垂直面に対して垂直方向である必要はない。例えば、前記垂直面に対して鋭角又は鈍角の方向であってもよい。鋭角の場合、回収溝底面は次述の回収溝側壁と一体化し得る。また、「張り出す」とは、一部を凹状部の外壁側面又は外壁底面に接しながら、側方に突き出た状態をいう。
後述の回収溝側壁は回収溝底面の端部に沿って構成されることから、回収溝は実質的に回収溝底面によって、その位置や形状等が決定される。回収溝が前記凹状部周囲の全部に設けられる場合、限定はしないが、回収溝底面の幅はいずれの箇所も同一であることが好ましい。ただし、必要に応じて一部の箇所の幅を他の箇所の幅よりも狭く、又は広くすることもできる。回収溝が凹状部周囲の一部に設けられる場合、その一部は凹状部の周囲の1箇所のみならず、複数箇所であってもよい。複数の場合、その数は限定しないが、数が増えるほど回収溝あたりの収容量が減ることから、通常は2ヶ所、3ヶ所、4ヶ所、5ヶ所、6ヶ所、7ヶ所、又は8ヶ所が適当である。回収溝が複数の場合、各回収溝の回収溝底面の形状や面積は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また個々の回収溝は凹状部の周囲で隣接していてもよいし、離れていてもよい。
(3−2)回収溝側壁
「回収溝側壁」(0406)は、前記回収溝底面の端部に沿って配置される側壁で、凹状部の外壁側面と共に回収溝の側壁を構成する。回収溝側壁は、組織細切器の水平面に対して概ね垂直となるように配置されている。ただし、回収溝内に捕捉された細胞塊を含む溶液が組織細切器の運搬等で容易にこぼれない範囲の角度であれば、組織細切器の水平面に対して鈍角又は鋭角であってもよい。
回収溝側壁の高さは、限定はしないが、凹状部の高さ以上であることが好ましい。このときの高さは、凹状部の高さの測定基準である内壁最底面部を基準とする。回収溝側壁の高さは、いずれの場所でも同一であることが好ましいが、一部が他の場所よりも低い場合や高い場合があってもよい。また回収溝側壁の一部が他の場所と異なる形状を有していてもよい。例えば、注ぎ口のように一部が窪んだ形状を有することができる。
回収溝の素材は、細切によって生じた細胞塊を溶液と共に回収し、保持できる素材であれば限定はしない。例えば、前述の凹状部に例示した素材を利用することができる。このとき回収溝の素材は、凹状部と同一であってもよいし、異なっていてもよい。両者が同一素材の場合には、組織細切器の加工時に凹状部と回収溝を一体成形することができる。
回収溝は、組織細切器の選択的構成要素である。しかし、細胞塊回収の効率や利便性を考慮すれば、組織細切器は回収溝又は後述する縁手段のいずれかを有することが好ましい。
回収溝は、前記凹状部で組織片を細切した結果得られる細胞塊が凹状部からこぼれ出た場合や、凹状部から洗浄により洗い出された場合に、それらを容易に回収できるように構成されている。例えば、細切後にバッファ等の適当な溶液を用いて凹状部の細胞塊を周囲の回収溝に洗い出すことによって、回収溝内に集積した細胞塊を溶液ごと回収することができる。ただし、細胞塊は、必ずしも回収溝から回収する必要はない。後述する第2態様の組織細切方法における回収工程に記載するように、細胞塊は凹状部から直接吸引回収してもよい。つまり、本発明の組織細切器は、回収溝を備えない場合も細胞塊を回収することは可能であり、組織細切器における回収溝は、細胞塊回収のための補助手段である。
(4)縁手段
「縁手段」は、図2の0203、又は図5の0503で示すように、凹状部(0201、0501)の外壁側面又は外壁底面の全部又は一部から側方に張り出すように構成された手段である。縁手段は、図5で示すように、組織細切器を、それを収納可能な容器(0508)に配置したときに、容器と凹状部の外周壁との間に仮回収溝(0509)を形成することができる。
縁手段の形状は、凹状部の周囲と容器間に間隙を形成できる形状であれば限定はしない。例えば、板状、棒状、又はその組み合わせが挙げられる。縁手段が図2や図5で示すような板状の場合、軽量化、強度保持、材料削減等の観点から、その面に、図2の0207で示すような一又は複数の孔を有していてもよい。この場合、孔の形状や大きさは限定しない。円形、略円形、楕円形、略楕円形、多角形、及び不定形のいずれであってもよい。また、孔が複数ある場合、個々の孔の大きさや形状は同一であっても、また異なっていてもよい。縁手段が棒状の場合、長軸に垂直な断面が円形、略円形、楕円形、略楕円形、多角形、及び不定形のいずれであってもよい。
縁手段の素材は、凹状部と組織細切器を収納可能な容器との間で仮回収溝を形成し、それを維持できる素材であれば限定はしない。例えば、前述の凹状部に例示した素材を利用することができる。縁手段の素材は、凹状部と同一であってもよいし、異なっていてもよい。両者が同一素材の場合には、組織細切器の加工時に凹状部と縁手段を一体成形することができる。
縁手段が外壁側面又は外壁底面の全部に配置される場合、それらの周囲を取り囲むように配置すればよい。例えば、凹状部の上面形状が円形であれば、縁手段を外壁側面又は外壁底面にリング状に配置するか、外壁側面にらせん状に配置することができる。また、縁手段が外壁側面又は外壁底面の一部に配置される場合、それらの周囲の所定の領域にのみ配置すればよい。このとき縁手段は、二以上の箇所に配置することができる。
「組織細切器を収納可能な容器」(0508)とは、内部に本発明の組織細切器全体を収納できる容器をいう。その大きさは、組織細切器の全体を収納することができれば限定はしない。ただし、過剰に大きい場合、組織片の細切作業時や細胞塊の回収時に容器内で組織細切器が安定しないため、取扱いが困難なる。したがって、組織細切器と容器との間に遊びがあまりない程度の大きさが好ましい。容器内に組織細切器が嵌合する大きさは特に好ましい。容器上面形状と組織細切器の上面形状は概ね同じ形状であることが好ましいが、異なる形状であってもよい。また、容器の素材は、回収した細胞塊に有害な影響を与えず、細胞塊を含む溶液によって変性しないものであれば、限定はしない。細胞培養用の容器に使用される素材は好適である。例えば、ポリスチレンやポリプロピレン等のプラスチックやガラス等が挙げられる。具体的な容器の好適な例として、本発明の組織細切器の上面形状が円形で、その直径が8.8cmの場合、直径9cmの円形細胞培養用ディッシュが挙げられる。
「仮回収溝」(0509)は、前記回収溝と同様の機能を有する。組織細切器内に直接備え付けられた回収溝とは異なり、通常状態では組織細切器には存在しない。組織細切器を収納可能な容器に収納したときに、縁手段に基づいて、はじめて凹状部の外周壁と容器との間に形成される。
2.組織細切方法
2−1.概要
本発明の第2の態様は組織細切方法である。本態様の方法によれば、第1態様に記載の組織細切器を用いて、組織片を細切し、組織の特性を維持した状態で、組織培養用の細胞塊を容易かつ効率的に調製することができる。
2−2.方法
本態様の組織細切方法は、投入工程及び細切工程を必須工程として含み、また選択工程として回収工程を含む。以下、それぞれの工程について具体的に説明をする。
なお、コンタミネーションを防ぎ、かつ細胞へのダメージを軽減するため、本態様及び後述する第3態様の方法は、いずれの工程も、クリーンベンチ内等の無菌環境の下で、滅菌済みの器具や試薬を用いて、室温下にて手早く行うように留意する。
(1)投入工程
「投入工程」は、第1態様に記載の組織細切器の凹状部に組織片を投入する工程である。投入する組織片の種類は問わない。組織培養用の対象となる所望の組織を用いればよい。例えば、生検や外科的切除によって摘出された癌組織等が挙げられる。
組織片の大きさは、凹状部内で細切可能な大きさであれば、特に限定はしない。複数の異なる大きさの組織片を投入してもよい。通常は、組織片の総体積量が3mm3〜10mm3、4mm3〜8mm3、又は5mm3〜6mm3程度あればよい。
組織片は、単独で投入するか、溶液と共に投入すればよい。単独で投入する場合、溶液を、予め凹状部に入れておくか、又は組織片投入後に注入する。細胞に与えるダメージの軽減、細胞の維持、操作のし易さ等から次の細切工程は、溶液中で行うことが望ましいからである。ここで使用する溶液は、細胞へのダメージを軽減できる溶液であれば、特に限定はしない。例えば、生理食塩水や細胞培養用バッファ(PBS、HEPES等)は好適である。
(2)細切工程
「細切工程」は、投入された組織片を溶液中で細切器具を用いて細切する工程である。
「細切器具」とは、組織片を切断し、細切できる器具である。通常はメスが好適に使用される。本工程において、細切器具は2本用いると便利である。凹状部において溶液中の組織片を細切するためには、凹状部に備えられた突起状手段に組織片を係止する必要がある。この係止は、組織片の上方から突起状手段方向に向かって多少の圧力をかけて押さえ込むことで達成し得る。1本の細切器具で組織片を細切する場合、一度手前に引いた細切器具を再度の切断に使用するためには、一旦組織片から離して前方に戻す必要がある。その際、一時的に組織片が押圧から解放されるため組織片に対する係止力が弱くなってしまう。そこで、細切器具を2本用いれば、一方の細切器具を一時的に組織片から離しても、他方の細切器具で組織片を押さえている限り、上記問題は発生しない。また、細切器具を2本用いれば、左右交互で組織片を切断できることから、細切作業の効率面からも好ましい。一方の細切器具を、他の押圧可能な器具に代えることもできる。例えば、ガラス棒等を使用してもよい。
本工程では、組織培養用細胞が調製できるまで、組織片を細切する。本明細書において「組織培養用細胞」とは、その組織における細胞の特性、例えば、組織特異的な遺伝子の発現や組織特異的な細胞形状等を維持した細胞塊をいう。細切は、組織片の大部分が0.1mm2〜1.5mm2、0.2mm2〜1.3mm2、0.3mm2〜1.0mm2、又は0.5mm2〜0.9mm2の範囲になるまで行えばよい。
(3)回収工程
「回収工程」は、細切工程後に得られる組織塊を回収する工程である。本工程は、選択工程であり、本態様の組織細切方法において、必要に応じて行えばよい。
細切工程で調製された組織培養用細胞は、それを包含する溶液と共に回収することが望ましい。回収方法は限定しない。例えば、ピペット等を用いて凹状部内の組織培養用細胞を溶液ごと吸引回収してもよい。この場合、突起状手段間に入り込んだ組織培養用細胞をうまく回収できない可能性がある。そこで、組織細切器を傾斜させて、凹状部内の溶液を回収溝又は仮回収溝に流し込んで回収し、凹状部内に残った組織培養用細胞を新たな溶液等で洗浄して、再度回収溝又は仮回収溝に流し込んで回収する操作を数回繰り返すことで、凹状部内の組織培養用細胞を十分に回収することができる。回収溝又は仮回収溝内に移された組織培養用細胞を含む溶液は、ピペット等で吸引回収をするか、組織細切器を傾斜させてコニカルチューブ等の新たな容器に移せばよい。
3.組織培養方法
3−1.概要
本発明の第3の態様は、組織培養方法である。本態様の方法は、本質的に、当該分野で公知の従来の組織培養方法と同じであるが、培養対象の細胞が第2態様で調製した細胞塊を用いる点で異なる。本態様の組織培養方法を用いることで、培養細胞であっても元の組織における細胞の特性を維持した状態で細胞培養ができる新たな組織培養系を提供することができる。
3−2.方法
本態様の組織培養方法は、播種工程及び培養工程を必須工程として含む。以下、それぞれの工程について具体的に説明をする。
(1)播種工程
「播種工程」は、第2態様で調製し、回収された細胞塊を新たな培地に播種する工程である。ここで使用される細胞塊は、組織片から細切によって新たに調製された細胞塊であってもよいし、その細胞塊から樹立した細胞株であってもよい。
本工程において使用する新たな培地は、培養対象の細胞塊を培養可能な培地であれば限定はしない。培養する由来細胞の種類に応じて適宜選択すればよい。通常は、細胞培養分野で一般的に使用される公知の培地を利用できる。例えば、哺乳動物由来の様々な種類の細胞の培養に用いられる基本培地が挙げられる。具体的には、イーグルMEM(Eagle Minimum Essential Medium)、DMEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium)、ハムF10(Ham's Nutrient Mixture F10)培地、ハムF12(Ham's Nutrient Mixture F12)培地、M199培地、高性能改良199培地(Hight Performance Medium 199)、RPMI-1640(Roswell Park Memorial Institute-1640)培地、DMEM/F12(Dulbecco's Modified Eagle Medium/ Ham's Nutrient Mixture F12)培地が該当する。これらの培地の具体的な組成は、当該分野で公知であり、Kaech S. and Banker G.(2006, Nat. Protoc., 1(5): 2406-15)のような適当な文献に記載の組成を参考にして調製するか、又は各メーカー(Thermo fisher scientific社、Wako Pure Chemical Industries社)から市販されている製品を用いることができる。培地には、必要に応じて血清、抗生物質、サプリメント、添加物等を添加してもよい。血清は、いずれの生物種由来であってもよいが、好ましくは哺乳類由来である。例えば、ウシ胎児血清(FBS: Fetal Bovine Serum)が好適である。血清の好ましい濃度は、終濃度で1〜20%、好ましくは5〜15%、より好ましくは8〜12%、一層好ましくは10%である。抗生物質は、細菌のコンタミネーションを防ぐ目的で添加される。使用する抗生物質は限定しないが、通常はペニシリンとストレプトマイシンの混合液が広く使用される。抗生物質の濃度は、その種類に応じて定めればよく限定しないが、一般にペニシリンであれば100 IU/mL、またストレプトマイシンであれば100μg/mLの濃度で好ましく使用される。使用するサプリメントや添加物は限定しないが、L-グルタミン、成長因子、サイトカイン、ホルモン等を使用しても良い。
回収された細胞塊は、播種前に必要に応じて懸濁し、バッファ等の溶液内における細胞濃度をある程度均一化しておいてもよい。均一化は、例えば、容器内で細胞塊を含んだ溶液をピッペッティングすることで達成できる。
細胞塊を新たな培地に播種する際には、新たな培地を入れた容器(例えば、細胞培養用ディッシュ等)を培養温度下に配置して、培地を予熱しておくことが好ましい。
播種方法は限定しない。細胞培養分野で一般的に使用される方法のように、ピペット等を用いて細胞塊を含む溶液の一部を採取し、新たな培地を入れた容器に播種すればよい。
播種量は限定しない。新たな培地の容量や、培養開始時の所望する細胞濃度、培養すべき対象細胞の種類等を勘案し、適宜定めればよい。例えば、播種後の細胞数が103〜105cells/mLとなるように培地やバッファで調整して播種すればよい。播種後は、容器を軽く揺する等して、播種した細胞塊が容器内である程度均一に分散されるようにするとよい。
(2)培養工程
「培養工程」は、播種した細胞塊を培養条件下で培養する工程である。個々でいう「培養条件下」とは、培養する細胞塊の由来細胞種に応じた当該分野で公知の培養条件をいう。通常は、いずれの細胞も5%CO2下、37℃の培養条件で足りる。
培養期間は、培養する細胞塊の由来細胞種や、播種時の細胞濃度に応じて適宜定めればよい。例えば、組織片から細胞株を樹立する場合には、20日〜180日、30日〜120日、45日〜100日、又は60日〜90日程度培養すればよい。その間、2〜7日毎、3〜4日毎に、古い培地を播種時に使用した新しい培地と交換することが好ましい。また樹立した細胞株を継代する場合には、2日〜30日、3日〜25日、4日〜20日、又は5日〜15日程度培養すればよい。
<本発明の組織細切器を用いた組織細切>
(目的)
本発明の組織細切器の使用による組織片の細切効果を検証した。
(方法)
図1で示す本発明の組織細切器を3Dプリンター(AGILISTA(アジリスタ):キーエンス社)で複数個製造した。Aに示すように、この組織細切器(0100)は、直径8.8cm、高さ1.65cmのディッシュ状で、凹状部(0101)が凹面形状の内壁底面を有し、そのほぼ全面に四角錐又は略四角錐の突起状手段(0102)を、また凹状部周囲全部に回収溝(0103)を備えた構成を有する。作製した組織細切器は、ウレタン/アクリル系複合素材で構成されている。対照用ディッシュとして、グライナー社製の9cmディッシュを用いた。
マウス(NOGマウス、13週齢、雄)から外科的に左右の腎臓(右:約204 mg、左:約179 mg)を摘出し、一方の腎臓を本発明の組織細切器の凹状部に、また他方の腎臓を対照用ディッシュに載置してPBSバッファを加えた。続いて、2本のメス(フェザー社)を左右に持ち、器内の腎臓組織片を室温で約5分間、交互にメスを引く作業を繰り返して細切した。
(結果)
図6及び図7に結果を示す。図6において、Aは対照用ディッシュでの、またBは本発明の組織細切器での、腎臓組織の細切後の細胞塊の顕微鏡画像である。Aの方法は、従来の組織細切方法に相当する。この方法では、平均約2.3mm2の細胞塊を調製できるが、図7に示すように、各細胞塊の大きさが1.8〜2.6mm2にも及び、均一性の高い細胞塊を調製することが困難なことが示唆された。一方、本発明の組織細切器を用いたBの方法は、Aの方法で得られる細胞塊よりも小片で、平均約0.85mm2であり、その幅も0.7〜0.95mm2と狭く、均一性の高い細胞塊が調製できることが示された。

Claims (11)

  1. 凹状部、の内壁底面の全部又は一部に組織片を係止するための複数の突起状手段、及び前記凹状部の外壁側面又は外壁底面の全部又は一部に回収溝を備えた組織細切器。
  2. 前記突起状手段の高さが0.2mm〜2.0mmの範囲内にある、請求項1に記載の組織細切器。
  3. 前記突起状手段が内壁底面から上方に向かう尖端形状を有する、請求項1又は2に記載の組織細切器。
  4. 前記突起状手段が内壁底面に整列して配置されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組織細切器。
  5. 前記凹状部の内壁が底面中央部に向かって凹面形状である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組織細切器。
  6. 前記凹状部の外壁側面又は外壁底面の全部又は一部から側方に張り出した縁手段を備え、該縁手段は組織細切器を収納可能な容器に収納したときに、凹状部の周囲と容器間に仮回収溝を形成することができる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組織細切器。
  7. 前記凹状部の上面形状が円形で、その直径が3cm〜12cmの範囲内にある、請求項1〜のいずれか1項に記載の組織細切器。
  8. 組織細切方法であって、
    請求項1〜のいずれか1項に記載の組織細切器の凹状部に組織片を投入する投入工程、及び
    投入された組織片を溶液中で細切器具を用いて細切する細切工程
    を含む前記方法。
  9. 細切工程後に得られる組織塊を回収する回収工程をさらにふくむ、請求項に記載の組織細切方法。
  10. 前記組織片を0.1mm2〜1.5mm2の大きさに細切する、請求項又はに記載の組織細切方法。
  11. 組織培養方法であって、
    請求項10に記載の組織細切方法を経て回収された細胞塊を新たな培地に播種する播種工程、及び
    播種した細胞塊を培養条件下で培養する培養工程
    を含む前記方法。
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