JP4156847B2 - 組織細切器および組織細切方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は組織細切器および組織細切方法に関し、特に、手術などで摘出した組織の細胞培養を行う際に当該摘出組織を細かく切断するための器具、および当該摘出組織の細切方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、患者の癌組織を手術などによって摘出し、癌細胞自体を治療や研究に使う試みが盛んに行われている。癌細胞を治療や研究に使うためには、摘出した組織から癌細胞を培養する必要がある。一般に、細胞培養を行うためには、摘出組織を2〜4mm立方程度の大きさのブロック状に細切する必要がある。
【0003】
図4は、従来の組織細切手法を示す図である。図4に示すように、従来は2本の手術用メスを用い、これらを交差させた状態で組織を挟み、2本のメスを左右に引くことによって組織を切断する。このような操作を何回か繰り返すことにより、組織を細かく切り刻んでいくものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の細切手法では、手技を確実に遂行するためには熟練を要するとともに、熟練者であっても、操作を完了するまでには約20分前後の長い時間がかかってしまうという問題があった。また、細切の操作中に細菌が組織中に混入する危険性が高くなるという問題もあった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、摘出組織から細胞培養を行うために必要な組織細切の操作を誰でも簡単に行うことができるようにすることを目的とする。
また、本発明は、細切の操作中に細菌が組織中に混入する危険性を低減できるようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の組織細切器は、筒状体の一方の開放端側に格子状の第1の切断部材を設けるとともに、上記筒状体の他方の開放端側に格子状の第2の切断部材を設け、細胞培養を行うために摘出した組織片を上記第1の切断部材の上に載置可能なように形成し、上記第1および第2の切断部材を所定の角度を成して互いに対向させるように形成したことを特徴とする。
【0007】
本発明の他の態様では、上記筒状体の一方の開放端側をすり鉢状に形成し、上記第1の切断部材を上記すり鉢状に形成された部分の底面部に設けている。
また、上記筒状体の他方の開放端側を斜めに切り落とされた形状に形成し、上記第2の切断部材を上記斜めに切り落とされた部分に設けている。
また、上記筒状体の一方の開放端に、把持用の柄を備えた枠を形成している。
【0008】
また、本発明の組織細切方法は、請求項1〜4の何れか1項に記載の組織細切器に組織片を載置して遠心管に設置し、上記組織細切器の設置された遠心管を遠心分離機にセットして遠心分離することにより、上記組織片を上記第1および第2の切断部材によってブロック状に細切するようにしたことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の組織細切器10を示す斜視図であり、図2は、本実施形態の組織細切器10を示す六面図である。
【0010】
図1および図2に示すように、本実施形態の組織細切器10は、円筒部1を有し、その一方の開放端側(入口部)6はすり鉢形状、他方の開放端側(出口部)7は斜めに切り落とされた形状になっている。
【0011】
円筒部1の上端には、円筒部1の外径より径が大きく設定されたリング状の枠2が設けられている。枠2の内側には、組織細切器10をピンセット等で把持するための柄5が設けられている。
【0012】
柄5を設けているのは、細菌感染をなるべく避けるために、ピンセット等で接触する場所を一箇所に決めて接触面をなるべく少なくするためである。後述するように、組織を実際に細切する際には、組織細切器10に枠2を覆うようにキャップをするので、柄5は枠2の内側に設けられる。
【0013】
円筒部1の入口部6に形成されたすり鉢状部分の底面部には格子状の上金網3が設けられ、出口部7の斜面部分には格子状の下金網4が設けられている。これにより、一対の金網3,4がある一定の角度を成して互いに対向する位置に設けられている。格子目の幅は、細切しようとする組織のサイズに合わせて2〜10mm(好ましくは2〜4mm)になっている。
【0014】
図3は、本実施形態による組織細切器10の使用状態を説明するための図である。図3に示すように、組織細切器10を使用するときは、既製のスクリューキャップ付ポリエチレン製50ml遠心管11に、その入口エッジ部12に枠2を引っ掛けるようにして組織細切器10を装着する(図3(a))。なお、組織細切器10の円筒部1は、その外径が既製の遠心管11にほぼ嵌合するサイズに形成されている。
【0015】
次に、遠心管11の中に組織培養液20を5ml程度注入し、上金網3の上に細切したい組織片30を置く(図3(b))。そして、遠心管11のキャップ13を組織細切器10の上から装着する(図3(c))。このように組織細切器10を装着した遠心管11を、円筒部1の正面が回転の外側を向くように既製の遠心分離機(図示せず)に設置して、800〜3000回転/分(通常1200〜1500回転/分)で1〜5分間遠心分離をする。この回転速度は、組織片30を傷めずに細切可能な程度の遠心力を生むものである。これにより、組織片30が以下のように細切される。
【0016】
すなわち、遠心管11を遠心分離機にかけると、遠心力によって、遠心管11がその上端側を軸として水平方向に傾く。このとき、円筒部1上方の上金網3に置かれた組織片30は、遠心力によって円筒部1下方に引かれ、上金網3を通過して柱状に切断される。柱状になった組織は、更に円筒部1下方に引かれ、円筒部1の正面側の内側壁を伝って下金網4の上に到達する。
【0017】
下金網4に到達した柱状の組織は、円筒部1下方に更に引かれて下金網4を通過することにより、更に切断される。下金網4は上金網3に対して一定の角度を成しているので、ここでは上金網3による切断の方向と異なる方向に組織が切断される。これにより、組織は2〜10mm(好ましくは2〜4mm)立方程度のブロック状に細切される。細切された組織は、遠心管11の底部に貯留する。本実施形態の組織細切器10は滅菌されており、一度使用したら再利用はせずに、使い捨てにする。
【0018】
以上詳しく説明したように、本実施形態によれば、遠心管11にセットした組織細切器10の上金網3に細切したい組織片30を置いて遠心分離機にかけるだけで、組織片30を2〜10mm(好ましくは2〜4mm)立方程度のブロック状に細切することができる。したがって、組織細切の手技に熟練を必要としなくなり、誰でも簡単に組織を細切することができるようになる。また、密封した用器の中で、かつ短時間で細切することができるので、その細切の操作中に細菌が組織中に混入する危険性を低減することもできる。
【0019】
なお、上記実施形態では組織細切器10の本体形状を円筒により形成しているが、必ずしも円筒である必要はなく、筒状体であれば良い。また、上記実施形態では金網を用いているが、組織を切断できれば他の素材を用いても良い。また、細切する組織は癌組織のほか、正常組織であっても良い。
【0020】
また、上記実施形態では、遠心管11として50mlサイズのものを用いているが、15mlなど他のサイズのものを用いても良く、組織細切器10のサイズをそれに合わせて形成しても良い。ただし、組織片等を入れる操作は50mlサイズの方が行いやすく、より好ましい。
【0021】
その他、上記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、組織細切の手技に熟練を要することがなくなり、誰でも簡単に組織を細切することができるとともに、短時間でかつ無菌的に組織を細切することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の組織細切器を示す斜視図である。
【図2】本実施形態の組織細切器を示す六面図である。
【図3】本実施形態による組織細切器の使用状態を説明するための図である。
【図4】従来の組織細切手法を示す図である。
【符号の説明】
1 円筒部
2 枠
3 上金網
4 下金網
5 柄
6 入口部
7 出口部
10 組織細切器
11 スクリューキャップ付ポリエチレン製50ml遠心管
12 遠心管の入口エッジ部
13 遠心管のキャップ
20 組織培養液
30 組織片

Claims (5)

  1. 筒状体の一方の開放端側に格子状の第1の切断部材として2〜10mmの幅の格子からなる第1の金網を設けるとともに、上記筒状体の他方の開放端側に格子状の第2の切断部材として2〜10mmの幅の格子からなる第2の金網を設け、
    細胞培養を行うために摘出した組織片を上記第1の金網の上に載置可能なように形成し、
    上記第1の金網の面および上記第2の金網の面を0度より大きく90度より小さい所定の角度を成して互いに対向させ、上記第2の金網の面が上記第1の金網の面と異なる方向を向くように形成したことを特徴とする組織細切器。
  2. 上記筒状体の一方の開放端側をすり鉢状に形成し、上記第1の切断部材を上記すり鉢状に形成された部分の底面部に設けたことを特徴とする請求項1に記載の組織細切器。
  3. 上記筒状体の他方の開放端側を斜めに切り落とされた形状に形成し、上記第2の切断部材を上記斜めに切り落とされた部分に設けたことを特徴とする請求項1に記載の組織細切器。
  4. 上記筒状体の一方の開放端に、把持用の柄を備えた枠を形成したことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の組織細切器。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載の組織細切器に組織片を載置して遠心管に設置し、上記組織細切器の設置された遠心管を遠心分離機にセットして遠心分離することにより、上記組織片を上記第1および第2の切断部材によってブロック状に細切するようにしたことを特徴とする組織細切方法。
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