JP6875217B2 - 電子増倍体 - Google Patents

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Description

本発明は、荷電粒子の入射に応答して二次電子を放出する電子増倍体に関するものである。
電子増倍機能を有する電子増倍体として、チャネルを有する電子増倍体やマイクロチャネルプレート(Micro-ChannelPlate、以下、「MCP」と記す)等の電子デバイスが知られている。これらは、電子増倍管(Electron Multiplier Tube)、質量分析計、イメージインテンシファイヤ、光電子増倍管(Photo-MultiplierTube、以下、「PMT」と記す)等において使用される。上記の電子増倍体の基体としては鉛ガラスが使用されてきたが、近年、鉛ガラスを使用しない電子増倍体が求められており、鉛フリーの基体に設けられたチャネルに対して二次電子放出面等の成膜を精度よく行う必要性が増してきた。
このような精密な成膜制御を可能にする技術としては、例えば原子層堆積法(Atomic Layer Deposition、以下、「ALD」と記す)が知られており、係る成膜技術を用いて製造されたMCP(以下、「ALD−MCP」と記す)が、例えば以下の特許文献1に開示されている。特許文献1のMCPには、二次電子放出面の直下に形成される抵抗値調整が可能な抵抗層として、Al絶縁層を介して複数のCZO(亜鉛ドーピング酸化銅ナノ合金)導電層がALD法により形成された積層構造を有する抵抗層が採用されている。また、特許文献2には、抵抗値調整可能な膜をALD法により生成するため、絶縁層とW(タングステン)やMo(モリブデン)からなる複数の導電層とが交互に配置された積層構造を有する抵抗膜の生成技術が開示されている。
特表2011−525294号公報 米国特許第9,105,379号明細書
発明者らは、ALD法により二次電子放出層等の成膜が行われる従来のALD−MCPについて検討した結果、以下のような課題を発見した。すなわち、上記特許文献1および2の何れにも言及されていないが、ALD法により成膜された抵抗層を使用したALD−MCPは、従来までのPb(鉛)ガラスを使用したMCPと比較して、抵抗値の温度特性が優れないことが、発明者らの検討により判った。特に、イメージインテンシファイヤや、MCPが組み込まれたPMTの使用環境温度は低温から高温まで幅広く、動作環境温度の影響を小さくしたALD−MCPの開発が求められている。
なお、MCPの動作環境温度の影響を受ける要因の一つは、上述のような温度特性(当該MCPにおける抵抗値変動)である。このような温度特性は、MCP使用時の外気温に依存してどの程度MCP中を流れる電流(Strip電流)が変動するかを表わしている指標であり、抵抗値の温度特性が優れているほど、動作環境温度を変えた際にMCPに流れるStrip電流の変動が小さく、MCPの使用温度環境が広くなる。
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、より広い温度範囲において抵抗値変動を抑制かつ安定させるための構造を備えた電子増倍体を提供することを目的としている。
上述の課題を解決するため、本実施形態に係る電子増倍体は、電子増倍チャネルを構成する二次電子放出層等の成膜がALD法を用いて行われるマイクロチャネルプレート(MCP)、チャネルトロン等の電子デバイスに適用可能であり、少なくとも、基板と、二次電子放出層と、抵抗層と、を備える。基板は、上記二次電子放出層、抵抗層等が積層されるチャネル形成面を有する。二次電子放出面は、チャネル形成面に対面する底面と、該底面に対向するとともに荷電粒子の入射に応答して二次電子を放出する二次電子放出面と、を有する。抵抗層は、基板と二次電子放出層に挟まれた層であって、その抵抗値が正の温度特性を有する複数のPt塊が、チャネル形成面に一致または実質的に平行な層形成面上に互いに離間した状態で二次元的に配置されたPt(白金)層を含む。特に、抵抗層は、温度20℃における抵抗値に対して、−60℃における抵抗値が10倍以下であり、かつ、+60℃における抵抗値が0.25倍以上の範囲内に収まる温度特性を抵抗層が有する。
なお、本発明に係る各実施形態は、以下の詳細な説明及び添付図面によりさらに十分に理解可能となる。これら実施例は単に例示のために示されるものであって、本発明を限定するものと考えるべきではない。
また、本発明のさらなる応用範囲は、以下の詳細な説明から明らかになる。しかしながら、詳細な説明及び特定の事例はこの発明の好適な実施形態を示すものではあるが、例示のためにのみ示されているものであって、本発明の範囲における様々な変形および改良はこの詳細な説明から当業者には自明であることは明らかである。
本実施形態によれば、二次電子放出層の直下に形成される抵抗層を、その抵抗値が正の温度特性を有する材料、例えばPtからなる複数の金属塊が互いに離間した状態で二次元的に配置されたPt層を含むよう構成することにより、当該抵抗層における抵抗値の温度特性を効果的に向上させることが可能になる。
本実施形態に係る電子増倍体が適用可能な種々の電子デバイスの構造を示す図である。 本実施形態および比較例それぞれに係る電子増倍体の種々の断面構造の例を示す図である。 本実施形態に係る電子増倍体、特に抵抗層における温度と電気伝導度との関係を定量的に説明するための図である。 抵抗層として膜厚の異なる単一のPt層を含むサンプルそれぞれについて、電気伝導度の温度依存性を示すグラフである。 本実施形態に係る電子増倍体が適用されたMCPサンプルと比較例に係る電子増倍体が適用されたMCPサンプルそれぞれにおける規格化抵抗の温度特性(800V動作時)を示すグラフである。 本実施形態に係る電子増倍体に相当する測定用サンプル、比較例に係る電子増倍体に相当する測定サンプル、および本実施形態に係る電子増倍体に適用されたMCPサンプルそれぞれの、XRD(X線回折:X-Ray Diffraction)分析により得られたスペクトルである。
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施形態の対応それぞれを個別に列挙して説明する。
(1)本実施形態に係る電子増倍体は、その一態様として、電子増倍チャネルを構成する二次電子放出層等の成膜がALD法を用いて行われるマイクロチャネルプレート(MCP)、チャネルトロン等の電子デバイスに適用可能であり、少なくとも、基板と、二次電子放出層と、抵抗層と、を備える。基板は、上記二次電子放出層、抵抗層等が積層されるチャネル形成面を有する。二次電子放出層は、第1の絶縁材料からなるとともに、チャネル形成面に対面する底面と、該底面に対向するとともに荷電粒子の入射に応答して二次電子を放出する二次電子放出面と、を有する。抵抗層は、基板と二次電子放出層に挟まれた層であって、その抵抗値が正の温度特性を有する材料として、複数のPt塊が、チャネル形成面に一致または実質的に平行な層形成面上に互いに離間した状態で二次元的に配置されたPt層を含む。特に、抵抗層は、温度20℃における当該抵抗層の抵抗値に対して、−60℃における当該抵抗層の抵抗値が10倍以下であり、かつ、+60℃における当該抵抗層の抵抗値が0.25倍以上の範囲内に収まる温度特性を有する。
なお、抵抗層は、その抵抗値が正の温度特性を有する金属材料からなる金属塊として、複数のPt塊が、該抵抗層の上側に配置された二次電子放出層の一部(絶縁材料)を介して互いに隣接した状態で、チャネル形成面に一致または実質的に平行な層形成面上に二次元的に配置された1またはそれ以上のPt層を含む。また、本明細書において、「金属塊」は、二次電子放出層側から層形成面を見たとき、絶縁材料により完全に取り囲まれた状態で配置され、それぞれが明確な結晶性を示す金属片を意味するものとする。
(2)本実施形態の一態様として、抵抗層は、温度20℃における当該抵抗層の抵抗値に対して、−60℃における当該抵抗層の抵抗値が2.7倍以下であり、かつ、+60℃における当該抵抗層の抵抗値が0.3倍以上の範囲に収まる温度特性を有するのが好ましい。
(3)本実施形態の一態様として、Pt層を構成する各Pt塊は、XRD分析により得られるスペクトルに、半値幅が角度5°以下となる(111)面のピークおよび(200)面のピークがそれぞれ出現する程度の結晶性を有するのが好ましい。更に、本実施形態の一態様として、Pt層を構成する各Pt塊は、XRD分析により得られるスペクトルに、半値幅が角度5°以下となる(220)面のピークが更に出現する程度の結晶性を有するのが好ましい。
(4)本実施形態の一態様として、当該電子増倍体は、基板と二次電子放出層との間に設けられる下地層を備えてもよい。この場合、下地層は、第2の絶縁材料からなるとともに、二次電子放出層の底面に対面する位置に、Pt層が二次元的に配置される層形成面を有する。なお、第2の絶縁材料は、第1の絶縁材料と同じであっても、また、異なっていてもよい。
以上、この[本願発明の実施形態の説明]の欄に列挙された各態様は、残りの全ての態様のそれぞれに対して、または、これら残りの態様の全ての組み合わせに対して適用可能である。
[本願発明の実施形態の詳細]
本願発明に係る電子増倍体の具体例を、以下に添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、これら例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図されている。また、図面の説明において同一の要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
図1は、本実施形態に係る電子増倍体が適用可能な種々の電子デバイスの構造を示す図である。具体的に、図1(a)は、本実施形態に係る電子増倍体が適用可能なMCPの代表的な構造を示す一部破断図であり、図1(b)は、本実施形態に係る電子増倍体が適用可能なチャネルトロンの断面図である。
図1(a)に示されたMCP1は、電子増倍用のチャネル12として機能する複数の貫通孔を有するガラス基板と、該ガラス基板の側面を保護する絶縁性リング11と、ガラス基板の一方の端面上に設けられた入力側電極13Aと、ガラス基板の他方の端面上に設けられた出力側電極13Bと、を備える。なお、入力側電極13Aと出力側電極13Bとの間には、電圧源15により所定の電圧が印加される。
また、図1(b)のチャネルトロン2は、電子増倍用のチャネル12として機能する貫通孔を有するガラス管と、ガラス管の入力側開口部分に設けられた入力側電極14と、該ガラス管の出力側開口部分に設けられた出力側電極17と、を備える。なお、このチャネルトロン2においても、入力側電極14と出力側電極17との間には、電圧源15により所定の電圧が印加される。入力側電極14と出力側電極17との間に所定の電圧が印加された状態でチャネルトロン2の入力側開口からチャネル12内に荷電粒子16が入射されると、該チャネル12内において、荷電粒子16の入射に応じた二次電子の放出が繰り返される(二次電子のカスケード増倍)。これにより、チャネルトロン2の出射側開口部分からは、チャネル12においてカスケード増倍された二次電子が放出される。この二次電子のカスケード増倍は、図1(a)に示されたMCPのチャネル12それぞれにおいても行われる。
図2(a)は、図1に示されたMCP1の一部(破線で示された領域Aの拡大図である。図2(b)は、図2(a)中に示された領域B2の断面構造を示す図であり、本実施形態に係る電子増倍体の断面構造の一例を示す図である。また、図2(c)は、図2(b)と同様に、図2(a)中に示された領域B2の断面構造を示す図であり、本実施形態に係る電子増倍体の断面構造の他の例を示す図である。なお、図2(b)および図2(c)に示された断面構造は、図1(b)に示されたチャネルトロン2の領域B1の断面構造と実質的に一致している(ただし、図1(b)中に示された座標軸は、図2(b)および図2(c)それぞれの座標軸と不一致である)。
図2(b)に示されたように、本実施形態に係る電子増倍体の一例は、ガラス又はセラミックからなる基板100と、該基板100のチャネル形成面101上に設けられた下地層130と、該下地層130の層形成面140上に設けられた抵抗層120と、二次電子放出面111を有するとともに、下地層130とともに抵抗層120を挟むよう配置された二次電子放出層110と、により構成される。ここで、二次電子放出層110は、Al、MgOなどの第1の絶縁材料からなる。電子増倍体のゲイン向上のためには二次電子放出能力の高いMgOを使用することが好ましい。下地層130は、Al、SiOなどの第2の絶縁材料からなる。下地層130と二次電子放出層110で挟まれた抵抗層120は、下地層130の層形成面140上に、その抵抗値が正の温度特性を有するとともに明確な結晶性を示す程度のサイズを有する金属塊と、これら金属塊間に充填された絶縁材料(二次電子放出層110の一部)から構成された金属層を含む。
なお、抵抗層120は、複数の金属層を含んでもよい。すなわち、抵抗層120は、基板100と二次電子放出層110との間に、絶縁材料(層形成面を有する下地層として機能する)を介して複数の金属層が設けられた多層構造を有してもよい。ただし、以下、説明を単純化させるため、一例として、基板100のチャネル形成面101から二次電子放出面111との間に存在する抵抗層120の層数が、1に制限された単層構造の抵抗層について説明する。
抵抗層120を構成する材料は、Ptなど、その抵抗値が正の温度特性を有する材料が好ましい。ここで、金属塊の結晶性は、XRD分析により得られるスペクトルで確認可能である。例えば金属塊がPt塊の場合、本実施形態では、図6(a)に示されたように、少なくとも(111)面および(200)面において半値幅が角度5°以下となるピークを有するスペクトルが得られる。図6(a)および図6(b)中、Ptの(111)面はPt(111)、Ptの(200)面はPt(200)で示されている。
なお、図2(b)に示された下地層130の存在は、当該電子増倍体全体における抵抗値の温度依存性には影響しない。したがって、本実施形態に係る電子増倍体の構造は、図2(b)の例には限定されず、図2(c)に示されたような断面構造を有してもよい。図2(c)に示された断面構造は、基板100と二次電子放出層110との間に下地層が設けられていない点で、図2(b)に示された断面構造と異なっており、基板100のチャネル形成面101が、抵抗層120が形成される層形成面140として機能する。図2(c)におけるその他の構造は、図2(b)に示された断面構造と同じである。
以下の説明では、抵抗層120を構成する、抵抗値が正の温度特性を有する材料として、Ptが適用された構成(単一のPt層の例)について言及するものとする。
図3(a)〜図3(c)は、本実施形態に係る電子増倍体、特に抵抗層における温度と電気伝導度との関係を定量的に説明するための図である。特に、図3(a)は、下地層130の層形成面140上に形成された単一のPt層(抵抗層120)における電子伝導モデルを説明するための模式図である。また、図3(b)は、本実施形態に係る電子増倍体の断面モデルの例を示し、図3(c)は、本実施形態に係る電子増倍体の断面モデルの他の例を示す。
図3(a)に示された電子伝導モデルでは、下地層130の層形成面140上に、自由電子が存在できる非局在領域として、単一のPt層(抵抗層120に含まれる)を構成するPt塊121が、自由電子が存在しない局在領域(例えば下地層130の層形成面140に接する二次電子放出層110の一部)を介して距離Lだけ離れている。また、本実施形態に係る電子増倍体として想定しているモデルの断面構造の一例は、図3(b)に示されたように、基板100と、該基板100のチャネル形成面101上に設けられた下地層130と、該下地層130の層形成面140上に設けられた抵抗層120と、二次電子放出面111を有するとともに、下地層130とともに抵抗層120を挟むよう配置された二次電子放出層(絶縁材料)110と、により構成されている。図3(c)には、本実施形態に係る電子増倍体として想定しているモデルの断面構造の他の例が示されている。この図3(c)の例は、図3(b)に示された断面構造と同じ断面構造を有するが、抵抗層120を構成するPt塊121のサイズが小さく、隣接するPt塊121間の間隔が狭くなっている点において、図3(b)の例とは異なる。
基板100上に形成された各Pt層は、離散的に存在する複数のエネルギー準位のうち何れかのエネルギー準位を有するPt塊間に絶縁材料(例えばAl)が充填されており、あるPt塊121(非局在領域)内の自由電子は、トンネル効果により絶縁材料(局在領域)を介して隣接するPt塊121に移動ことになる(ホッピング)。このような二次元の電子伝導モデルにおいて、温度Tに対する電気伝導度(抵抗率の逆数)σは、以下の式により与えられる。なお、層形成面140上に複数のPt塊121が二次元に配置された層形成面140内のホッピングについて検討するため、以下、二次元の電子伝導モデルに限定して考える。
Figure 0006875217
図4は、上記の式に基づいて得られたフィッティング関数のグラフ(G410、G420)とともに、実際に測定された複数サンプルの実測値がプロットされたグラフである。なお、図4において、グラフG410は、Alからなる下地層130の層形成面140上にALDにより7「cycle」分に厚みが調整されたPt層が形成され、更にALDにより20「cycle」分の厚みに調整されたAl(二次電子放出層110)が形成されたサンプルの電気伝導度σを示し、記号「○」は、その実測値である。なお、単位「cycle」は、ALDによる原子打ち込み回数を意味する「ALDサイクル」である。この「ALDサイクル」を調整することにより形成される原子層の層厚が制御可能になる。また、グラフG420は、Alからなる下地層130の層形成面140上にALDにより6「cycle」分に厚みが調整されたPt層が形成され、更にALDにより20「cycle」分の厚みに調整されたAl(二次電子放出層110)が形成されたサンプルの電気伝導度σを示し、記号「△」は、その実測値である。図4のグラフG410およびG420から分かるように、抵抗層120を構成するPt塊121が平面的に配置される構成であっても、該抵抗層120の厚み(積層方向に沿ったPt塊121の平均厚みで規定)をより厚く設定された方が、抵抗層120の抵抗値に関して温度特性が改善されることが分かる。なお、本明細書において、Pt塊の「平均厚み」とは、層形成面上に二次元的に配置された複数の金属塊を平坦な膜状にならした場合の該膜の厚みを意味する。
定性的には、図3(b)に示されたモデルの場合、基板100のチャネル形成面101から二次電子放出面111との間に単一のPt層のみが形成されている。すなわち、本実施形態では、XRD分析により得られるスペクトルで少なくとも(111)面および(200)面において半値幅が角度5°以下のピークが確認できる程度の結晶性を有するPt塊121が、層形成面140上に形成される。このように、本実施形態では、導電領域が層形成面140内に制限され、かつ、Pt塊121間をトンネル効果により移動する自由電子のホッピング回数が少ない。
一方、図3(c)に示されたモデルの場合、図3(b)の例と比較して、抵抗層120が、それぞれが小さなサイズを有するとともに隣接するPt塊121の間隔も狭くなっている複数のPt塊121が二次元的に配置された構造を有する。特に、小さくかつ間隔が狭まった複数のPt塊121が二次元的に配置された構造では、隣接するPt塊121間を自由電子が移動するホッピングの回数が多くなる。その結果、図3(b)の例と比較して図3(c)の例では、抵抗値に対する温度特性が劣化する傾向がある。
次に、本実施形態に係る電子増倍体が適用されたMCPサンプルと比較例に係る電子増倍体が適用されたMCPサンプルの比較結果について図5および図6を用いて説明する。
用意された第1〜第3サンプルのうち、第1サンプルは、基板上に、Alからなる下地層、単一のPt層、およびAlからなる二次電子放出層が順に積層された構造を備える。第1サンプルの下地層は、ALDにより100[cycle]分にその厚みが調整され、Pt層は、ALDにより14[cycle]分にその厚みが調整され、二次電子放出層は、ALDにより68[cycle]分にその厚みが調整されている。単一のPt層(抵抗層120)は、Pt塊121の間に絶縁材料(二次電子放出層の一部)が充填された構造を有する。第2サンプルは、基板上に、それぞれAlからなる下地層とPt層で構成された10組の積層構造(抵抗層120)、およびAlからなる二次電子放出層が順に積層された構造を備える。第2サンプルの積層構造を構成する各組において、Alからなる下地層は、ALDにより20[cycle]分にその厚みが調整され、Pt層は、ALDにより5[cycle]分にその厚みが調整されている。また、二次電子放出層は、ALDにより68[cycle]分にその厚みが調整されている。各Pt層は、Pt塊121の間に絶縁材料が充填された構造を有する。比較例である第3サンプルは、基板上に、それぞれAlからなる下地層とTiO層で構成された48組の積層構造(抵抗層120)、およびAlからなる二次電子放出層が順に積層された構造を備える。第3サンプルの積層構造を構成する各組において、Alからなる下地層は、ALDにより3[cycle]分にその厚みが調整され、TiO層は、ALDにより2[cycle]分にその厚みが調整されている。また、二次電子放出層は、ALDにより38[cycle]分にその厚みが調整されている。
図5は、上述のような構造を有する本実施形態の第1および第2サンプルと比較例の第3サンプルそれぞれにおける規格化抵抗の温度特性(800V動作時)を示すグラフである。具体的に、図5において、グラフG510は、第1サンプルにおける抵抗値の温度依存性を示し、グラフG520は、第2サンプルにおける抵抗値の温度依存性を示し、グラフG530は、第3サンプルにおける抵抗値の温度依存性を示す。図5から分かるように、グラフG530の傾きに対し、グラフG520の傾きが小さくなっており、グラフG510の傾きは更に小さい。すなわち、抵抗層120が、単一のPt層または複数のPt層で構成された多層構造を有する場合、他の金属材料からなる金属層を含む抵抗層と比較して、抵抗値に関して温度依存性が向上する。更に、抵抗層120がPt層を含む構成であっても、単一のPt層のみで構成された抵抗層の場合、複数のPt層で構成された多層構造を有する抵抗層と比較して、より抵抗値に関して温度依存性が向上する(グラフの傾きが小さくなる)。このように、本実施形態によれは、比較例よりも広い温度範囲において温度特性が安定する。具体的に、本実施形態に係る電子増倍体を質量分析等の技術分野への適用を考えると、許容可能な温度依存性は、温度20℃における抵抗値を基準として、−60℃における抵抗値が10倍以下であり、かつ、+60℃における抵抗値が0.25倍以上となる範囲(図5中に示された領域R1)である。本実施形態に係る電子増倍体をイメージインテンシファイヤ等の技術分野への適用を考えると、より好ましくは、許容可能な温度依存性は、温度20℃における抵抗値を基準として、−60℃における抵抗値が2.7倍以下であり、かつ、+60℃における抵抗値が0.3倍以上となる範囲(図5中に示された斜線領域R2)である。
図6(a)は、本実施形態に係る電子増倍体に相当する測定用サンプルとして、ガラス基板上に、MCP用の成膜と同等の膜(Pt層を用いた図3(b)のモデル)が成膜されたサンプル、および比較例に係る電子増倍体に相当する測定サンプルとして、ガラス基板上に、MCP用の成膜と同等の膜(Pt層を用いた図3(c)のモデル)が成膜されたサンプルそれぞれの、XRD分析により得られたスペクトルである。一方、図6(b)は、上述のような構造を有する本実施形態のMCPサンプルの、XRD分析により得られたスペクトルである。具体的に、図6(a)において、スペクトルG810は、本実施形態の測定サンプルのXRDスペクトルを示し、スペクトルG820は、比較例の測定サンプルのXRDスペクトルを示す。一方、図6(b)は、本実施形態のMCPサンプルの、Ni−Cr系合金(インコネル:登録商標「Inconel」)の電極を除去した後のXRDスペクトルである。なお、図6(a)および図6(b)に示されたスペクトルの測定条件は、X線源管電圧が45kV、管電流200mA、X線入射角が0.3°、X線照射間隔が0.1°、X線スキャンスピードが5°/min、X線照射スリットの長手方向の長さが5mmに設定された。
図6(a)において、本実施形態の測定サンプルのスペクトルG810には、(111)面、(200)面、(220)面それぞれにおいて半値幅が角度5°以下となるピークが出現している。一方、比較例の測定サンプルのスペクトルG820には、(111)面のみにおいてピークが出現するが、このピークの半値幅は角度5°よりも遥かに大きくなっている(ピーク形状が鈍る)。このように、比較例と比べて本実施形態では、抵抗層120を構成するPt層に含まれる各Pt塊の結晶性が大きく向上している。
以上の本発明の説明から、本発明を様々に変形しうることは明らかである。そのような変形は、本発明の思想および範囲から逸脱するものとは認めることはできず、すべての当業者にとって自明である改良は、以下の請求の範囲に含まれるものである。
1…MCP(マイクロチャネルプレート)、2…チャネルトロン、12…チャネル、100…基板、101…チャネル形成面、110…二次電子放出層、111…二次電子放出面、120…抵抗層、121…Pt塊(金属塊)、130…下地層、140…層形成面。

Claims (4)

  1. チャネル形成面を有する基板と、
    前記チャネル形成面に対面する底面と、前記底面に対向するとともに荷電粒子の入射に応答して二次電子を放出する二次電子放出面と、を有する二次電子放出層と、
    前記基板と前記二次電子放出層に挟まれた抵抗層であって、前記チャネル形成面に一致または実質的に平行な層形成面上に二次元的に形成されたPt層を含む抵抗層と、
    を備え、
    前記抵抗層は、温度20℃における当該抵抗層の抵抗値に対して、−60℃における当該抵抗層の抵抗値が10倍以下であり、かつ、+60℃における当該抵抗層の抵抗値が0.25倍以上の範囲内に収まる温度特性を有
    前記Pt層は、XRD分析により得られるスペクトルに、半値幅が角度5°以下となる(111)面のピークおよび(200)面のピークがそれぞれ出現する程度の結晶性を有するPt塊を含む、
    電子増倍体。
  2. 前記抵抗層は、温度20℃における当該抵抗層の抵抗値に対して、−60℃における当該抵抗層の抵抗値が2.7倍以下であり、かつ、+60℃における当該抵抗層の抵抗値が0.3倍以上の範囲に収まる温度特性を有することを特徴とする請求項1に記載の電子増倍体。
  3. 前記Pt層は、XRD分析により得られるスペクトルに、半値幅が角度5°以下となる(220)面のピークが更に出現する程度の結晶性を有するPt塊を含むことを特徴とする請求項に記載の電子増倍体。
  4. 前記基板と前記二次電子放出層との間に設けられ、前記二次電子放出層の前記底面に対面する位置に前記層形成面を有する下地層を更に備えたことを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の電子増倍体。
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