JP6872201B2 - 認知症の予防及び/又は治療のための薬剤 - Google Patents

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Description

本発明は、認知症の予防及び/又は治療のための薬剤に関する。
認知症は、脳の器質的な変化により、日常生活に支障が生じる程度にまで記憶機能及びその他の認知機能が低下した状態をいう。認知症の主な原因疾患として、アルツハイマー型認知症と血管性認知症が挙げられる。認知症には、中核症状といわれる記憶障害、見当識障害、遂行機能障害、書字や計算等の障害と、周辺症状といわれる不安、不眠、攻撃性増加、抑うつ、徘徊や譫妄等の障害とがある。
ヒト認知症患者における記憶障害及び見当識障害は、認知症モデル動物では空間記憶障害に相当する。空間記憶は、物体の位置・方向・姿勢・大きさ・形状・間隔等、物体が三次元空間に占めている状態や関係を把握して記憶する能力のことを意味し、空間記憶障害とはそのような空間記憶の障害を意味する。また、遂行機能障害は作業記憶の障害とも呼称される。作業記憶とは短い時間に心の中で情報を保持し、同時に処理する能力のことを意味し、作業記憶障害とはそのような作業記憶の障害を意味する。
認知症の予防及び治療は、患者のQOLの改善というだけでなく、介護による家族の負担の軽減、医療費の削減といった点からも重要な意味を持つ。我が国の認知症の主な原因疾患として、脳内アミロイド斑を伴うアルツハイマー型認知症と脳血管疾患に起因する血管性認知症が挙げられるが、特に前者は全認知症患者の半数近くを占める疾患として注目を浴びてきた。
しかし、近年ではアルツハイマー病の病態形成にも血管病理が深く関わっていることが示唆され、アルツハイマー病治療においても循環器方面からのアプローチが模索されている。
この一例として、シロスタゾールが挙げられる。シロスタゾールはラクナ梗塞等の脳梗塞後の再発予防薬として使用されている抗血小板薬であるが、最近では下記の作用も注目されている。即ち、シロスタゾール内服により、(i)アミロイドベータ(以下、Aβと略することがある。)の脳内での蓄積が抑制される(非特許文献1,2)、(ii)認知機能低下が抑制される(非特許文献1,2)、及び、(iii)椎骨動脈・内頚動脈・大脳皮質・視床下部等の脳血流量が増加する(シロスタゾール添付文書)という作用が報告されているが、特に(i)については、脳における老廃物排出系である脳血管周囲ドレナージ経路(脳間質流)の活性化が関係していると言われている。
脳血管周囲ドレナージ経路は、Aβだけでなくタウタンパクやα‐シヌクレインタンパク等神経有害物質の普遍的な除去経路である可能性が高く、シロスタゾール内服は多くの神経有害タンパク蓄積により発症する種々の認知障害(例:アルツハイマー病や前頭側頭葉変性症、レビー小体型認知症等)に対して効果があると期待される。また、脳血流低下/脳血管障害は認知症の発症及びその進行を促進する因子であるが、シロスタゾール内服はこの点でも脳血流改善及び脳梗塞予防の両者において明らかな効果を有している。
非特許文献3には、シロスタゾールを含有する餌をAPPSwDI遺伝子改変マウスに投与した結果、シロスタゾールを投与されたAPPSwDI遺伝子改変マウスでは、対照餌を投与されたAPPSwDI遺伝子改変マウスと比べて、Y型迷路試験における交替反応が増加したことが記載されており、シロスタゾールが認知症における作業記憶障害の改善に有益であることが示唆されている。
Park SH, et al. Protective effect of the phosphodiesterase III inhibitor cilostazol on amyloid β-induced cognitive deficits associated with decreased amyloid β accumulation. Biochem Biophys Res Commun 2011;408:602-608. Hiramatsu M, et al. Cilostazol prevents amyloid β peptide(25-35)-induced memory impairment and oxidative stress in mice. Br J Pharmacol 2010 161:1899-1912. Masafumi Ihara, et al. Phosphodiesterase III inhibitor promotes drainage of cerebrovascular b-amyloid, Annals of Clinical and Translational Neurology, 2014.
本発明は、シロスタゾールを包含する認知症の予防及び/又は治療のための薬剤の更なる効果向上を目的とする。具体的には認知症の中核症状はもちろん周辺症状であっても効果的であり、更には症状が進行した状態であっても効果的な薬剤を提供することを目的とする。
本発明にかかる認知症の予防及び/又は治療のための薬剤は、下記式(1)からなるカルボスチリル誘導体(ここで、Rはシクロアルキル基であり、Aは低級アルキル基であり、カルボスチリル核の3位と4位との間は単結合又は二重結合である。)又はその塩と、
Figure 0006872201
ジヒドロケルセチン又はその塩と、を有することを特徴とする。
また本発明にかかる認知症の予防及び/又は治療のための薬剤は、有効成分の下記式(1)からなるカルボスチリル誘導体(ここで、Rはシクロアルキル基であり、Aは低級アルキル基であり、カルボスチリル核の3位と4位との間は単結合又は二重結合である。)又はその塩と、
Figure 0006872201
有効成分のジヒドロケルセチン又はその塩と、
を併用して投与する、ことを特徴とする。
本発明によれば、シロスタゾール単剤の場合よりも、更なる認知症の予防及び/又は治療効果が得られる。
各群のマウスにおいて、脳血管壁へのAβ沈着量を示す図である。 各群のマウスにおいて、5%CO2送気後の脳血流量の相対的増加率の平均値を示した図である。 水迷路試験で使用する円形プールの外観を示す図であり、そのうち(A)は横断面図であり、(B)は上面図である。 水迷路試験の結果を示す図であり、そのうち(A)は各群のマウスの総遊泳距離の平均値を示す図であり、(B)は各群のマウスの遊泳時間の平均値を示す図であり、(C)はプローブ試験における各群のマウスのZone-1の滞在時間の平均値を示す図である。 各群のマウスの累積生存率を示す図である。 各群のマウスの脱毛スコアの平均値を示す図である。 Y迷路試験の結果を示す図である。
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
本実施形態にかかる認知症の予防及び/又は治療のための薬剤は、下記式(1)からなるカルボスチリル誘導体(ここで、Rはシクロアルキル基であり、Aは低級アルキル基であり、カルボスチリル核の3位と4位との間は単結合又は二重結合である。)又はその塩と、
Figure 0006872201
ジヒドロケルセチン又はその塩と、を有する。
また本実施形態にかかる認知症の予防及び/又は治療のための薬剤は、有効成分の下記式(1)からなるカルボスチリル誘導体(ここで、Rはシクロアルキル基であり、Aは低級アルキル基であり、カルボスチリル核の3位と4位との間は単結合又は二重結合である。)又はその塩と、
Figure 0006872201
有効成分のジヒドロケルセチン又はその塩と、
を併用して投与するものである。
上記式(1)において、シクロアルキル基には、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルのようなC3〜C8シクロアルキル基が含まれる。好ましいシクロアルキル基はシクロヘキシルである。
上記式(1)において、低級アルキル基には、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、テトラメチレン、ブチレン及びペンチレンのようなC1〜C6アルキレン基が含まれ、好ましいのはテトラメチレンである。
本実施形態にかかる薬剤は、認知症の予防及び/又は治療の為のものであるが、本明細書において「予防」には疾患の発症を抑えること及び遅延させることが含まれ、疾患になる前の予防だけでなく、治療後の疾患の再発に対する予防も含まれる。一方、「治療」には、症状を治癒すること、症状を改善すること及び症状の進行を抑えることが含まれる。認知症には、特に限定されるものではないが、例えば、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、脳血管性認知症、パーキンソン病、ダウン症、又は、ハンチントン病等が含まれる。 本実施形態にかかる薬剤は、認知症の予防及び/又は治療の為のものであるが、認知症の中核症状のみならず中核症状に伴って起こる周辺症状の予防及び/又は治療も可能とする。周辺症状は、認知症が中等度から重度に進行するに従い頻繁に出現するようになる症状である。周辺症状には、攻撃的行動、妄想、睡眠障害、徘徊、介護への抵抗、多動による転倒、衝動的な盗食による窒息等が包含される。
本実施形態にかかる薬剤は、カルボスチリル誘導体又はその塩と、ジヒドロケルセチン又はその塩と、を有するものであるが、これらの組合せを同時に若しくは別々に、又は逐次的に投与する形態をも含む。例えば、カルボスチリル誘導体を有効成分として含む錠剤又は細粒剤、及び、ジヒドロケルセチンを有効成分として含む錠剤又は細粒剤を組み合わせたものであり、これらを逐次的に投与するものも、本実施形態にかかる薬剤に包含される。
換言すれば、「カルボスチリル誘導体又はその塩と、ジヒドロケルセチン又はその塩と、を有する薬剤」は、例えば、以下の形態が該当する。
・有効成分のカルボスチリル誘導体又はその塩と、有効成分のジヒドロケルセチン又はその塩とを、同時に若しくは別々に、又は逐次的に投与する形態。
・有効成分のカルボスチリル誘導体又はその塩と、有効成分のジヒドロケルセチン又はその塩とを含む形態。
好ましいカルボスチリル誘導体は、下記式(2)で示される6−[4−(1−シクロヘキシル−1H−テトラゾール−5−イル)ブトキシ]−3,4−ジヒドロカルボスチリルであり、抗血小板薬としてシロスタゾールの商品名で市場に出ている。
Figure 0006872201
シロスタゾールの平均粒径は、特に限定されるものではないが、例えば10μm〜2000μmとすることが好ましい。平均粒径が2000μmよりも大きくなれば樹脂粒子の調製ために高価な装置が必要となるからであり、また、平均粒径が10μmよりも小さくなれば消化管下部での吸収が悪くなる可能性があるからである。
カルボスチリル誘導体は、医薬的に許容される酸を作用させることによって容易に塩を形成し得る。酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸等の無機酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸等の有機酸を挙げることができる。
カルボスチリル誘導体及びその塩、並びにその製造方法については、特開昭55−35019号公報(対応米国特許第4,277,479号)に開示されている。
ジヒドロケルセチンは、下記式(3)で示される化合物である。
Figure 0006872201
ジヒドロケルセチンは、2位及び3位の立体配置により4種類の立体異性体が存在する。その1種である下記式(4)で示される化合物は、タキシフォリンと呼ばれる。
Figure 0006872201
ジヒドロケルセチンには、ジヒドロケルセチン誘導体も包含されるものとする。ジヒドロケルセチン誘導体には、例えばジヒドロケルセチンの3、3’、4’、5又は7位の少なくとも1以上の水酸基に糖が結合した配糖体が挙げられる。
ジヒドロケルセチンの塩としては、医薬的に許容される酸を作用させることによって容易に塩を形成し得る。そのような塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。
ジヒドロケルセチン又はこの塩は、例えば化学合成やシベリアカラマツからの抽出によって製造することができる。
カルボスチリル誘導体とジヒドロケルセチンとの配合比率については、特に限定されるものではないが、例えば重量比で、1:5〜1:20とすることが可能である。
本実施形態にかかる薬剤における有効成分の投与量は、患者の年齢、性別、体重、症状等により適宜設定することが可能であり、例えば、成人(体重50kg)で、カルボスチリル誘導体につき1日当り35〜400mg好ましくは100〜200mgを、ジヒドロケルセチンにつき1日当り150〜2000mg好ましくは500〜1000mgを、1回又は2〜数回に分けて投与することが可能である。
本実施形態にかかる薬剤の投与方法は特に限定されず、例えば、カルボスチリル誘導体とジヒドロケルセチンとの組合せを同時に若しくは別々に投与するか、又は数時間ないし数日の時間差をつけて逐次的に投与する等の投与方法が可能である。逐次的に投与する場合には、どちらの成分を先に投与してもよい。
本実施形態にかかる薬剤は、例えば、錠剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤等のような経口投与の製剤、経口投与に適した様々な液体製剤、又は注射剤、坐剤のような非経口投与用製剤とすることが可能である。
経口投与の製剤の場合、本実施形態にかかる薬剤の微粉末と分散剤及び/又は溶解改善剤を製剤担体と共に錠剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤等の形態で製剤化して得られる。分散剤及び/又は溶解改善剤を配合することによりカルボスチリル誘導体の微粉末の分散性及び/又は溶解吸収性を高めることができる。
製剤担体としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、及び可塑剤等を使用できる。賦形剤としては、例えば、白糖、塩化ナトリウム、マンニトール、乳糖、ブドウ糖、でんぷん、炭酸カルシウム、顔林、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ケイ酸塩等を使用できる。結合剤としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等を使用できる。崩壊剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースカルシウム、乾燥デンプン、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム等を使用できる。滑沢剤としては、例えば、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール、コロイド状ケイ酸、硬化油等を使用できる。可塑剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、トリアセチン、クエン酸トリエチル、ヒマシ油等を使用できる。
分散剤及び/又は溶解改善剤としては、水溶性高分子及び界面活性剤等を使用できる。水溶性高分子としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸等を使用できる。界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等のアルキル硫酸塩;デカグリセリルモノラウレート、デカグリセリルモノミリステート等のポリグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンモノステアレート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレンヒマシ油及び硬化ヒマシ油;ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖バルミチン酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル等を使用できる。
本実施形態にかかる薬剤の微粉末1重量部に対して分散剤及び/又は溶解改善剤を0.001〜100重量部、好ましくは0.01〜10重量部配合することが好ましい。分散剤及び/又は溶解改善剤の添加量が0.001重量部よりも少ない場合は吸収が悪くなり、一方、添加量が100重量部よりも多い場合は粘膜障害性等の毒性や薬事法による制限を受ける可能性があるからである。
錠剤を調製するには、本実施形態にかかる薬剤を上記製剤担体を用いて常法により錠剤とする。顆粒剤又は細粒剤は、本実施形態にかかる薬剤の微粉末に上記製剤担体を添加し、流動層造粒、高速攪拌造粒、攪拌流動層造粒、遠心流動造粒、押し出し造粒等で顆粒化することにより調製できる。カプセル剤は、不活性な医薬充填剤又は希釈剤と共に混合して調製し、硬ゼラチンカプセル又は軟カプセルに詰められる。
本実施形態にかかる薬剤の平均粒子径の調整は、例えば、ハンマーミル、ジェットミル、回転ボールミル、振動ボールミル、シェーカーミル、ロッドミル、チューブミル等を用いて形成することができる。
本実施形態にかかる薬剤は、錠剤、顆粒剤、細粒剤に徐放性コーティング基剤をコーティングすることも可能である。徐放性コーティング基剤としては、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタアクリル酸コポリマー、エチルセルロース等を使用できる。これにより例えば消化管下部において薬剤の溶出能力を備えることが可能となる。
経口液体製剤は、本実施形態にかかる薬剤と、甘味料(例えば、ショ糖)、保存剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、着色料、香料等とを混合して調製する。
非経口投与用製剤のうち注射用製剤は、例えば、液剤、乳濁液、又は懸濁液の形態で調製され、血液に対して等張にされる。液体、乳濁液又は懸濁液の形態の製剤は、例えば、水性媒体、エチルアルコール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを用いて調製される。水性媒体としては、水又は水を含有する媒体が挙げられる。水としては、滅菌水が使用される。水を含有する媒体としては、例えば、生理食塩水、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)又は乳酸配合リンゲル液等が挙げられる。
注射用製剤において、当技術分野で通常使用されている添加剤を適宜用いることができる。添加剤としては、例えば、等張化剤、安定化剤、緩衝剤、保存剤、キレート剤、抗酸化剤、又は溶解補助剤等が挙げられる。等張化剤としては、例えば、ブドウ糖、ソルビトール、マンニトール等の糖類、塩化ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。安定化剤としては、例えば亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。緩衝剤としては、例えば、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、酢酸緩衝剤等が挙げられる。保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、ベンジルアルコール、クロロクレゾール、フェネチルアルコール、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。キレート剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等が挙げられる。溶解補助剤としては、例えば、デキストラン、ポリビニルピロリドン、安息香酸ナトリウム、エチレンジアミン、サリチル酸アミド、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体等が挙げられる。
注射用製剤にはpH調整剤が含有されていても良い。pH調整剤は、酸類であっても塩基類であってもよい。具体的には、酸類としては、例えば、アスコルビン酸、塩酸、グルコン酸、酢酸、乳酸、ホウ酸、リン酸、硫酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられる。塩基類としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
また、本実施形態にかかる薬剤は、ヒトのほか、例えばサル、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ラット、マウス等のヒト以外の哺乳動物にも適用できる。
本実施形態にかかる薬剤は、カルボスチリル誘導体とジヒドロケルセチンとの組み合わせによる顕著な効果を有する。即ち、後述の実施例にて示されるように、シロスタゾールは作業記憶維持に有効であるものの、空間記憶維持には有効でない場合があるが、タキシフォリンを併用することにより空間記憶維持をも有効となる。その一方で、タキシフォリンの単独投与では興奮作用(ファイティング等)が発生する場合があるが、シロスタゾールを併用することにより興奮が鎮静される。即ち、タキシフォリン単独投与の場合には回避困難な周辺症状の発症を有効に予防でき、あるいは発症後の周辺症状に対しての抑制作用や改善作用を期待できる。認知症患者に対しては、その周辺症状を抑制するために抗精神病薬、気分安定薬、抗不安薬、睡眠薬等が使用される場合があるが、本実施形態にかかる薬剤によれば認知症の周辺症状を的確に抑制できるため、患者が服用する医薬品の種類や量を減少させることが期待できる。
このように、本実施形態にかかる薬剤は、記憶障害に代表される認知症中核症状に有効であるのみならず、攻撃性増加や不安等の周辺症状にも有効であり、認知症治療に極めて有効である。
1.免疫組織化学
8ヶ月齢の通常餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス(n=5)、シロスタゾール含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス(n=5)、タキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス(n=6)、シロスタゾール及びタキシフォリン含有餌(本実施例にかかる薬剤含有餌)投与APPSwDI遺伝子改変マウス(n=6)の計22匹で解析を行った。シロスタゾール含有餌、タキシフォリン含有餌、及びシロスタゾール及びタキシフォリン含有餌は4週齢から8ヶ月齢まで投与した。シロスタゾール含有餌におけるシロスタゾール濃度は0.3wt%で、タキシフォリン含有餌におけるタキシフォリン濃度は3wt%であった。シロスタゾール及びタキシフォリン含有餌におけるシロスタゾール濃度、タキシフォリン濃度は、それぞれ0.3wt%、3wt%であった。APPSwDI遺伝子改変マウスは全てホモ接合体雄性マウスを使用した。なお、4週齢のAPPSwDI遺伝子改変マウスは脳血管にAβが蓄積する初期段階、即ち脳アミロイド血管症の初期段階と考えられ、脳内の神経細胞の壊死はさほど進行していない段階と考えられる。
8ヶ月齢のAPPSwDI遺伝子改変マウスの脳を4%パラホルムアルデヒドを用いて灌流固定し、取り出した脳を1日かけて脱水処理を行ってから、固定した脳組織のパラフィンブロックを作製し、パラフィンブロックをミクロトームで6ミクロンにて薄切してプレパラートを作製し、Aβに対する免疫組織化学法により、血管壁に沈着しているAβを顕微鏡で観察した。正中部から1mm外側の組織切片で、海馬域をトレースし、関心領域内のAβ蓄積面積の割合を画像解析ソフトウェアImageJ (National Institutes of Health. USA)を用いて計測した。
図1は、マウスのAβ沈着量の各群の平均値を示している。エラーバーは標準偏差をあらわしている。
シロスタゾール含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス、タキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス、並びに、シロスタゾール及びタキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウスは、通常餌投与APPSwDI遺伝子改変マウスに比して、有意に脳内Aβ蓄積量が減少していた。
2.炭酸ガス吸入試験
12ヶ月齢の通常餌投与C57BL/6Jマウス(n=4)、通常餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス(n=10)、シロスタゾール含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス(n=4)、タキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス(n=5)、シロスタゾール及びタキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス(n=7)の計30匹で解析を行った。シロスタゾール、タキシフォリン、もしくはシロスタゾール及びタキシフォリン含有餌は4週齢から12ヶ月齢まで投与した。シロスタゾール含有餌におけるシロスタゾール濃度は0.3wt%で、タキシフォリン含有餌におけるタキシフォリン濃度は3wt%であった。APPSwDI遺伝子改変マウスは全てホモ接合体雄性マウスを使用した。
マウスはαクロラロース及びウレタンを腹腔内注射して固定した。そして気管内挿管を行い、ベースラインの脳血流を測定した。その後、5%CO2を送気し、継時的に5分間脳血流量を測定した。ベースラインと5%CO2送気後の脳血流量の変化から相対的増加率を計測した。脳血流量はレーザースペックル血流計(OZ-2, オメガウェーブ株式会社)で測定した。
図2は、各群のマウスの5%CO2送気後の脳血流量の相対的増加率の平均値を示したグラフである。横軸は5%CO2送気開始後の時間(秒)を示している。白丸群は、通常餌投与C57BL/6Jマウス、四角群は通常餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス、三角群はシロスタゾール含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス、菱型群はタキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス、黒丸群はシロスタゾール及びタキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウスを示している。エラーバーは標準誤差をあらわしている。
C57BL/6Jマウスに比して、通常餌投与APPSwDI遺伝子改変マウスでは5%CO2送気後の脳血流増加率が減少していた。シロスタゾール含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス及びタキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウスでは、通常餌投与APPSwDI遺伝子改変マウスに比して脳血流増加率が上昇していた。タキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウスでは5%CO2送気後から速やかに脳血流増加率が上昇するのに比して、シロスタゾール含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウスでは5%CO2送気後、一定時間経過後の脳血流増加率が上昇した。これらの結果はタキシフォリンとシロスタゾールが、それぞれ異なる機序によってAPPSwDI遺伝子改変マウスの血管反応性の異常を改善させたことを示している。しかしながら、反復測定分散分析では通常餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス群とタキシフォリン投与群及びシロスタゾール投与群との間で有意差はなく、通常餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス群とシロスタゾール及びタキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス群との間でのみ有意差が認められた(p < 0.001) 。薬理効果の作用機序が異なる薬剤を併用することにより、各薬剤の持つ作用の発現により認知症治療効果が高まることが示唆された。
3.水迷路試験
8ヶ月齢のC57BL/6Jマウス(n=15)、通常餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス(n=17)、シロスタゾール含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス(n=10)、タキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス(n=10)、シロスタゾール及びタキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス(n=9)の計61匹で水迷路試験を行った。シロスタゾール含有餌、タキシフォリン含有餌、並びに、シロスタゾール及びタキシフォリン含有餌は4週齢から8ヶ月齢まで投与した。シロスタゾール含有餌におけるシロスタゾール濃度は0.3wt%で、タキシフォリン含有餌におけるタキシフォリン濃度は3wt%であった。シロスタゾール及びタキシフォリン含有餌におけるシロスタゾール濃度、タキシフォリン濃度は、それぞれ0.3wt%、3wt%であった。APPSwDI遺伝子改変マウスは全てホモ接合体雄性マウスを使用した。
水迷路試験とは、水を忌避し、逃れようとする習性を利用してマウスの視空間認知能力を評価する試験である。本実験で使用した水迷路はブレインサイエンス・イデア社製のモーリス型水迷路で、内径120cm、壁の高さ30cmの水槽全体が黒色に塗られている円形プールを用いた。プールの中央から30cm、周囲から30cmのところに直径10cm、高さが10cmの透明アクリル製の逃避用の円形のプラットフォームを1箇所セットした。マウスが周囲の様々な空間的配置を記憶できるよう、壁にポスターや写真等の手がかりになるものを配置し、これらの手がかりの場所は実験中、常に一定とした。プールに深さ11cmとなるよう水を張り、図3(A)のように、水面下約1cmにプラットフォームを設置した。
試験は、全て図3(B)のZone-2をスタート位置として設定した。Zone-1〜Zone-4は円形プールの4分割領域を示している。プラットフォームの位置が見えないように、マウスをプールの壁に向けた状態で優しく水面に置いた。
試験は第1日目から第4日目まで、1日4試行を行った。各施行において、総遊泳距離とプラットフォームに到着するまでの時間(遊泳時間)を測定した。60秒以内にプラットフォーム上にプラットフォームに到達しなかった場合は、実験者がマウスをプラットフォーム上に15秒間乗せて終了し、60秒をそのマウスの遊泳時間とした。
第5日目はプールからプラットフォームをはずした状態でマウスを60秒間遊泳させた(プローブ試験)。この際、第1日目から第4日目までゴールを設置していたZone-1の滞在時間を測定した。
図4(A)は、第1日目から第4日目までの各群のマウスの総遊泳距離の平均値を、図4(B)は、第1日目から第4日目までの各群のマウスのプラットフォームに到着するまでの時間(遊泳時間)の平均値を示している。いずれも横軸は試行数である。白丸群は、通常餌投与C57BL/6Jマウス、四角群は通常餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス、三角群はシロスタゾール含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス、菱型群はタキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス、黒丸群はシロスタゾール及びタキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウスを示している。エラーバーは標準誤差をあらわしている。
5群のマウスにおいて総遊泳距離に有意差はなく、マウスの運動機能に大きな差異がないことを示している。一方、ゴールに到達するまでの遊泳時間では、C57BL/6Jマウスは施行毎にプラットフォームに到達するまでの時間が短縮するが、通常餌投与APPSwDI遺伝子改変マウスでは短縮せず、視空間記憶の障害が示唆された。この異常はシロスタゾール含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウスでも同様であり、シロスタゾールにおけるAPPSwDI遺伝子改変マウスの視空間記憶障害改善効果は限定的であると考えられた。一方、タキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス、シロスタゾール及びタキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウスについては、C57BL/6Jマウスと同様の結果を示した。これにより、本実施例にかかる薬剤は、APPSwDI遺伝子改変マウスの視空間記憶障害を改善させることが示された。また、タキシフォリンはAPPSwDI遺伝子改変マウスの視空間記憶障害を劇的に改善させることが示された。
図4(C)は、それまで設置していたゴールを取り外したプローブ試験における各群のマウスのZone-1の滞在時間の平均値(秒)を示している。エラーバーは標準誤差をあらわしている。
C57BL/6Jマウスに比して、通常餌投与APPSwDI遺伝子改変マウスではもともとゴールを設置していたZone-1の滞在時間が短く、視空間記憶の障害が示唆された。この異常はシロスタゾール含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウスでも同様であり、シロスタゾールにおけるAPPSwDI遺伝子改変マウスの視空間記憶障害改善効果は限定的であると考えられた。一方、タキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス、シロスタゾール及びタキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウスについては、C57BL/6Jマウスと同様の結果を示した。これにより、本実施例にかかる薬剤は、APPSwDI遺伝子改変マウスの視空間記憶障害を改善させることが示された。また、タキシフォリンはAPPSwDI遺伝子改変マウスの視空間記憶障害を劇的に改善させることが示された。
4.生存曲線
2014年4月1日から2015年11月30日に誕生した通常餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス(n=40)、シロスタゾール含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス(n=65)、タキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス(n=33)、シロスタゾール及びタキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス(n=33)について、マウスの生存曲線を作成し、解析した。マウスの死亡に、動物実験実施に伴う屠殺は含めていない。
図5は、各群のマウスの累積生存率を縦軸で、横軸には出生後の日数を示している。
Aは通常餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス群、Bはシロスタゾール含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス群、Cはタキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス群、Dはシロスタゾール及びタキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス群を示している。
通常、マウスの寿命は2年以上であり、今回観察を行った500日以内でマウスが死亡することは比較的稀である。しかしながら、タキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウスでは他のマウスに比して明らかに死亡が多かった。一方、驚くべきことに、シロスタゾール及びタキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウスではマウスの死亡が見られなかった。これにより、本実施にかかる薬剤は、攻撃性増加や不安等の周辺症状にも有効であることが示された。
5.脱毛スコア
マウスはファイティング(けんか)が生じると、脱毛が生じる。そのため、各マウスの脱毛の程度をGrade:0〜3の4段階で記述し、脱毛スコアとした。ほぼ正常な状態をGrade:0とし、ほぼ全身にわたった脱毛が見られる状態をGrade:3とした。全体表の50%未満と50%以上でGrade:1とGrade:2に分類した。
13ヶ月齢のC57BL/6Jマウス(n=5)、通常餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス(n=14)、タキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス(n=4)、シロスタゾール及びタキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス(n=12)の計35匹で解析について、マウスの情報を伏せた状態で、2名の評価者が独立に脱毛スコアを評価し、各々の評価の平均値を当該マウスの脱毛スコアとした。
図6は、各群のマウスの脱毛スコアの平均値を示している。エラーバーは標準誤差をあらわしている。
タキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウスは通常餌投与APPSwDI遺伝子改変マウスに比して明らかに重度の脱毛が認められた。しかし、シロスタゾール及びタキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウスではそのような傾向が認められず、ファイティングの減少が示唆された。これにより、本実施にかかる薬剤は、攻撃性増加や不安等の周辺症状にも有効であることが示された。
6.Y迷路試験
13ヶ月齢のC57BL/6Jマウス(n=4)、通常餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス(n=14)、タキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス(n=7)、シロスタゾール及びタキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス(n=14)の計39匹でY迷路試験を行った。シロスタゾール含有餌、タキシフォリン含有餌、並びに、シロスタゾール及びタキシフォリン含有餌は4週齢から13ヶ月齢まで投与した。シロスタゾール含有餌におけるシロスタゾール濃度は0.3wt%で、タキシフォリン含有餌におけるタキシフォリン濃度は3wt%であった。シロスタゾール及びタキシフォリン含有餌におけるシロスタゾール濃度、タキシフォリン濃度は、それぞれ0.3wt%、3wt%であった。APPSwDI遺伝子改変マウスは全てホモ接合体雄性マウスを使用した。
なお、「シロスタゾール及びタキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウス(n=3) 」において、上述のようにシロスタゾール及びタキシフォリン含有餌を投与後、このマウスの血中濃度を測定したが、血中においてシロスタゾール(又はシロスタゾールの代謝物)及びタキシフォリン(又はタキシフォリンの代謝物)の代謝物が検出されている。そのため、このマウス体内において、シロスタゾール及びタキシフォリンが存在することを確認している。
Y迷路試験では、一般的な実施法に従い、8分間の試験の結果から交替反応率を計測した。この交代反応が多いほど作業記憶に優れていると見なされている。
図7は、各群のマウスの交代反応率の平均をグラフで示している。エラーバーは標準誤差をあらわしている。
交替反応率はC57BL/6Jマウスに比して、APPSwDI遺伝子改変マウスでは低下しており、作業記憶の障害が示唆された。タキシフォリン投与マウスでは有意な改善は見られなかったが、シロスタゾール及びタキシフォリン含有餌投与APPSwDI遺伝子改変マウスでは交替反応が多くなる傾向が見られた。これにより、シロスタゾールとタキシフォリンの併用が、認知症がかなり進行した状態においてもAPPSwDI遺伝子改変マウスの作業記憶の障害を改善させうることが示された。
認知症の予防及び/又は治療に利用できる。

Claims (4)

  1. 下記式(1)からなるカルボスチリル誘導体(ここで、Rはシクロアルキル基であり、Aは低級アルキル基であり、カルボスチリル核の3位と4位との間は単結合又は二重結合である。)
    Figure 0006872201

    又はその塩と、ジヒドロケルセチン又はその塩とを含有する
    認知症における空間記憶障害を改善、及び/又は認知症における攻撃性を抑制するための薬剤。
  2. 認知症における空間記憶障害を改善、及び/又は認知症における攻撃性を抑制するための、下記式(1)からなるカルボスチリル誘導体(ここで、Rはシクロアルキル基であり、Aは低級アルキル基であり、カルボスチリル核の3位と4位との間は単結合又は二重結合である。)
    Figure 0006872201

    又はその塩を有効成分として含有する薬剤であって、
    前記薬剤が、ジヒドロケルセチン又はその塩を有効成分として含有する薬剤組み合わせて、同時に若しくは別々に、又は逐次的に投与されことを特徴とする、薬剤。
  3. 前記カルボスチリル誘導体が、6−[4−(1−シクロへキシル−1H−テトラゾ一ル−5−イル)ブトキシ]−3,4−ジヒドロカルボスチリルである請求項1又は2に記載の薬剤。
  4. 前記認知症が、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、脳血管性認知症、パーキンソン病、ダウン症、又は、ハンチントン病である、請求項1乃至の何れか1項に記載の薬剤。
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