JP6871050B2 - 防振装置 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば自動車や産業機械等に適用され、エンジン等の振動発生部の振動を吸収および減衰する防振装置に関する。
この種の防振装置として、従来から、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される筒状の第1取付部材、および他方に連結される第2取付部材と、これら両取付部材を弾性的に連結する弾性体と、液体が封入された第1取付部材内の液室を第1液室と第2液室とに区画する仕切部材と、を備えるとともに、仕切部材に、第1液室と第2液室とを連通する制限通路が形成された液体封入型の防振装置が知られている。
この防振装置では、振動入力時に、両取付部材が弾性体を弾性変形させながら相対的に変位し、第1液室および第2液室のうちの少なくとも一方の液圧を変動させて制限通路に液体を流通させることで、振動を吸収および減衰している。
ところで、この防振装置では、例えば路面の凹凸等から大きな荷重(振動)が入力され、例えば第1液室の液圧が急激に上昇した後、弾性体のリバウンド等によって逆方向に荷重が入力されたときに、第1液室が急激に負圧化されることがある。すると、この急激な負圧化により液中に多数の気泡が生成されるキャビテーションが発生し、さらに生成した気泡が崩壊するキャビテーション崩壊に起因して、異音が生じることがある。
そこで、例えば下記特許文献1に示される防振装置のように、制限通路内に弁体を設けることで、大きな振幅の振動が入力されたときであっても、第1液室の負圧化を抑制する構成が知られている。
特開2012−172832号公報
しかしながら、前記従来の防振装置では、弁体が設けられることで構造が複雑になり、弁体のチューニングも必要となるため、製造コストが増加するといった課題がある。また、弁体を設けることで設計自由度が低下し、結果として防振特性が低下するおそれがあった。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、簡易な構造で防振特性を低下させることなく、キャビテーション崩壊に起因する異音の発生を抑えることができる防振装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明の防振装置は、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される筒状の第1取付部材、および他方に連結される第2取付部材と、これら両取付部材を弾性的に連結する弾性体と、液体が封入された前記第1取付部材内の液室を第1液室と第2液室とに区画する仕切部材と、を備えるとともに、前記仕切部材に、前記第1液室と前記第2液室とを連通する制限通路が形成された液体封入型の防振装置であって、前記制限通路は、前記第1液室に開口する第1連通部、前記第2液室に開口する第2連通部、および前記第1連通部と前記第2連通部とを連通する本体流路を備え、前記第1連通部および前記第2連通部のうちの少なくとも一方は、前記第1液室または前記第2液室に面する表面を有した障壁を貫通する複数の細孔を備え、前記障壁の表面における前記細孔の開口周縁部には、前記細孔を覆うひさし部が形成され、複数の前記ひさし部のうちの2つ以上は、前記障壁の平面視において、前記ひさし部の、前記障壁に接続された基端部における、前記細孔の中心軸線回りに沿う孔周方向の中央部から、前記ひさし部の開放端部における、前記孔周方向の中央部に向かう向きが互いに異なっていることを特徴とする。
本発明によれば、振動入力時に、両取付部材が、弾性体を弾性変形させながら相対的に変位して、第1液室および第2液室のうちの少なくとも一方の液圧が変動することで、液体が制限通路を通って第1液室と第2液室との間を流通しようとする。このとき液体は、第1連通部および第2連通部のうちの一方を通して制限通路に流入し、本体流路内を通過した後、第1連通部および第2連通部のうちの他方を通して制限通路から流出する。
ここで、液体は、複数の細孔を通して本体流路から第1液室または第2液室に流入する際に、これらの細孔が形成された障壁により圧力損失させられながら各細孔を流通するため、第1液室または第2液室に流入する液体の流速を抑えることができる。
しかも、液体が、単一の細孔ではなく複数の細孔を流通するので、液体を複数に分岐させて流通させることが可能になり、個々の細孔を通過した液体の流速を低減させることができる。これにより、仮に防振装置に大きな荷重(振動)が入力されたとしても、細孔を通過して第1液室または第2液室に流入した液体と、第1液室内または第2液室内の液体と、の間で生じる流速差を小さく抑えることが可能になり、流速差に起因する渦の発生、およびこの渦に起因する気泡の発生を抑えることができる。
また、仮に気泡が第1液室や第2液室ではなく本体流路で発生しても、液体を、複数の細孔を通過させることで発生した気泡同士を、第1液室内または第2液室内で離間させることが可能になり、気泡が合流して成長するのを抑えて気泡を細かく分散させた状態に維持しやすくすることができる。
また、障壁の表面における細孔の開口周縁部に、細孔を覆うひさし部が形成されているので、細孔から第1液室または第2液室に流入した液体を、ひさし部に衝突させることにより圧力損失を生じさせることが可能となり、このように流入した液体と、第1液室内または第2液室内の液体と、の間で生じる流速差を効果的に抑えることができる。
以上のように、気泡の発生そのものを抑えることができる上、たとえ気泡が発生したとしても、気泡を細かく分散させた状態に維持しやすくすることができるので、気泡が崩壊するキャビテーション崩壊が生じても、発生する異音を小さく抑えることができる。
また、複数の前記ひさし部のうちの2つ以上は、前記障壁の平面視において、前記ひさし部の、前記障壁に接続された基端部における、前記細孔の中心軸線回りに沿う孔周方向の中央部から、前記ひさし部の開放端部における、前記孔周方向の中央部に向かう向きが互いに異なってもよい。
この場合には、複数のひさし部のうちの2つ以上は、障壁に接続された基端部における、孔周方向の中央部から、開放端部における孔周方向の中央部に向かう向き(以下、延在方向という)が、互いに異なっているので、各細孔から第1液室または第2液室に液体が流入する際に、或いは、本体流路を液体が流通する際に、仮に気泡が発生したとしても、発生した気泡それぞれが第1液室内または第2液室内で流れる方向を、互いに異ならせることが可能となり、気泡が第1液室内または第2液室内で合流して成長するのを抑えて気泡を細かく分散させた状態に更に維持しやすくすることができる。
これにより、気泡が崩壊するキャビテーション崩壊が生じても、発生する異音をより一層効果的に小さく抑えることができる。
また、互いに隣り合う前記細孔を覆う前記ひさし部同士は、前記平面視において、前記ひさし部の前記基端部における前記孔周方向の中央部から、前記ひさし部の前記開放端部における前記孔周方向の中央部に向かう向きが互いに異なってもよい。
この場合には、隣り合う細孔を覆うひさし部同士における前記延在方向が、互いに異なっているので、隣り合う細孔から第1液室または第2液室に流入した液体それぞれの流れる方向を、互いに異ならせることができる。このため、各細孔から第1液室または第2液室に液体が流入する際に、或いは、本体流路を液体が流通する際に、仮に気泡が発生したとしても、気泡それぞれが第1液室内または第2液室内で流れる方向が互いに異なる方向となり、気泡が第1液室内または第2液室内で合流して成長するのを効果的に抑えることができ、気泡を細かく分散させた状態に、より一層維持しやすくすることができる。
また、前記細孔は、前記障壁に、前記本体流路の流路方向に間隔をあけて複数形成され、前記ひさし部は、前記障壁の表面において、複数の前記細孔のうち、少なくとも、前記流路方向に沿って前記第1連通部および前記第2連通部のうちのいずれか他方から最も離間して位置する前記細孔の開口周縁部に形成されてもよい。
この場合には、複数の細孔のうち、流路方向に沿って第1連通部および第2連通部のうちのいずれか他方から最も離間して位置し、本体流路を流れる液体の慣性によって流量が多くなる細孔がひさし部により覆われることとなる。このため、このように流量の多い細孔から流出された液体をひさし部に衝突させることで圧力損失を生じさせることが可能となり、第1液室または第2液室に流入した液体と、第1液室内または第2液室内の液体と、の間で生じる流速差をより一層効果的に抑えることができる。
本発明によれば、簡易な構造で防振特性を低下させることなく、キャビテーション崩壊に起因する異音の発生を抑えることができる。
本発明の第1実施形態に係る防振装置の縦断面図である。 図1に示す防振装置の仕切部材の平面図である。 図1に示す第1障壁の斜視図である。 図1に示す細孔およびひさし部の縦断面図である。 本発明の第2実施形態に係る第1障壁の斜視図である。 本発明の第3実施形態に係る第1障壁の斜視図である。
(第1実施形態)
以下、本発明に係る防振装置の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、防振装置10は、振動発生部および振動受部のいずれか一方に連結される筒状の第1取付部材11と、振動発生部および振動受部のいずれか他方に連結される第2取付部材12と、第1取付部材11および第2取付部材12を互いに弾性的に連結する弾性体13と、第1取付部材11内を後述する主液室(第1液室)14と副液室(第2液室)15とに区画する仕切部材16と、を備える液体封入型の防振装置である。
以下、第1取付部材11の中心軸線O1に沿う方向を軸方向という。また、軸方向に沿う第2取付部材12側を上側、仕切部材16側を下側という。また、防振装置10を軸方向から見た平面視において、中心軸線O1に直交する方向を径方向といい、中心軸線O1周りに周回する方向を周方向という。
なお、第1取付部材11、第2取付部材12、および弾性体13はそれぞれ、平面視した状態で円形状若しくは円環状に形成されるとともに、中心軸線Oと同軸に配置されている。
この防振装置10が例えば自動車に装着される場合、第2取付部材12が振動発生部としてのエンジンに連結され、第1取付部材11が振動受部としての車体に連結される。これにより、エンジンの振動が車体に伝達することが抑えられる。
第2取付部材12は、軸方向に延在する柱状部材であり、下端部が下方に向けて膨出する半球面状に形成されるとともに、この半球面状の下端部より上方に鍔部12aを有している。第2取付部材12には、その上端面から下方に向かって延びるねじ孔12bが穿設され、このねじ孔12bにエンジン側の取付け具となるボルト(図示せず)が螺合される。第2取付部材12は、弾性体13を介して、第1取付部材11の上端開口部に配置されている。
弾性体13は、第1取付部材11の上端開口部と第2取付部材12の下部の外周面とにそれぞれ加硫接着されて、これらの間に介在させられたゴム体であって、第1取付部材11の上端開口部を上側から閉塞している。弾性体13は、その上端部が第2取付部材12の鍔部12aに当接することで、第2取付部材12に充分に密着し、第2取付部材12の変位により良好に追従するようになっている。弾性体13の下端部には、第1取付部材11における内周面と下端開口縁の内周部とを液密に被覆するゴム膜17が一体に形成されている。なお、弾性体13としては、ゴム以外にも合成樹脂等からなる弾性体を用いることも可能である。
第1取付部材11は、下端部にフランジ18を有する円筒状に形成され、フランジ18を介して振動受部としての車体等に連結される。第1取付部材11の内部のうち、弾性体13より下方に位置する部分が、液室19となっている。本実施形態では、第1取付部材11の下端部に仕切部材16が設けられ、さらにこの仕切部材16の下方にダイヤフラム20が設けられている。仕切部材16の外周部22の上面は、第1取付部材11の下端開口縁に当接している。
ダイヤフラム20は、ゴムや軟質樹脂等の弾性材料からなり、有底円筒状に形成されている。ダイヤフラム20の上端部は、仕切部材16の外周部22の下面と、仕切部材16より下方に位置するリング状の保持具21と、によって軸方向に挟まれている。仕切部材16の外周部22の上面に、ゴム膜17の下端部が液密に当接している。
このような構成のもとに、第1取付部材11の下端開口縁に、仕切部材16の外周部22、および保持具21が下方に向けてこの順に配置されるとともに、ねじ23によって一体に固定されることにより、ダイヤフラム20は、仕切部材16を介して第1取付部材11の下端開口部に取り付けられている。なお図示の例では、ダイヤフラム20の底部が、外周側で深く中央部で浅い形状になっている。ただし、ダイヤフラム20の形状としては、このような形状以外にも、従来公知の種々の形状を採用することができる。
そして、このように第1取付部材11に仕切部材16を介してダイヤフラム20が取り付けられたことにより、前記したように第1取付部材11内に液室19が形成されている。液室19は、第1取付部材11内、すなわち平面視して第1取付部材11の内側に配設され、弾性体13とダイヤフラム20とにより液密に封止された密閉空間となっている。そして、この液室19に液体Lが封入(充填)されている。
液室19は、仕切部材16によって主液室14と副液室15とに区画されている。主液室14は、弾性体13の下面13aを壁面の一部として形成されたもので、この弾性体13と第1取付部材11の内周面を液密に覆うゴム膜17と仕切部材16とによって囲まれた空間であり、弾性体13の変形によって内容積が変化する。副液室15は、ダイヤフラム20と仕切部材16とによって囲まれた空間であり、ダイヤフラム20の変形によって内容積が変化する。このような構成からなる防振装置10は、主液室14が鉛直方向上側に位置し、副液室15が鉛直方向下側に位置するように取り付けられて用いられる、圧縮式の装置である。
仕切部材16における副液室15側を向く下面のうち、外周部22と径方向の内側に隣り合う部分には、上方に向けて窪む第1保持溝16aが形成されている。第1保持溝16a内にダイヤフラム20の上端部が密に当接することで、ダイヤフラム20と仕切部材16との間が閉塞されている。
また、仕切部材16における主液室14側を向く上面のうち、外周部22と径方向の内側に隣り合う部分には、下方に向けて窪む第2保持溝16bが形成されている。第2保持溝16b内にゴム膜17の下端部が密に当接することで、ゴム膜17と仕切部材16との間が閉塞されている。
仕切部材16には、主液室14と副液室15とを連通する制限通路24が形成されている。図1および図2に示すように、制限通路24は、主液室14に開口する第1連通部26、副液室15に開口する第2連通部27、および第1連通部26と第2連通部27とを連通する本体流路25を備えている。
本体流路25は、仕切部材16内で周方向に沿って延びていて、本体流路25の流路方向と周方向とは同等の方向になっている。本体流路25は、中心軸線Oと同軸に配置された円弧状に形成され、中心軸線O1を中心とする中心角が180°を超える範囲にわたって延びている。本体流路25は、仕切部材16のうち、主液室14に面する第1障壁28、および副液室15に面する第2障壁29により画成されている。
第1障壁28および第2障壁29はいずれも、表裏面が軸方向を向く板状に形成されている。第1障壁28は、本体流路25と主液室14とにより軸方向に挟まれ、本体流路25と主液室14との間に位置している。第2障壁29は、本体流路25と副液室15とにより軸方向に挟まれ、本体流路25と副液室15との間に位置している。
第2連通部27は、第2障壁29を軸方向に貫通する1つの開口部32を備えている。開口部32は、第2障壁29のうち、本体流路25の周方向に沿う一方の端部を形成する部分に配置されている。
そして、本実施形態では、第1連通部26は、第1障壁28を軸方向に貫通し、周方向(本体流路25の流路方向)に沿って配置された複数の細孔31を備えている。複数の細孔31は、第1障壁28のうち、本体流路25の周方向に沿う他方の端部を形成する部分に配置されている。複数の細孔31の少なくとも一部は、中心軸線Oを中心とする同心円上に、周方向に間隔をあけて配置された孔列をなしている。
以下では、周方向に沿って、本体流路25の前記一方の端部側を一方側といい、前記他方の端部側を他方側という。また、前記平面視において、中心軸線O2に直交する方向を孔径方向、中心軸線O2回りに周回する方向を孔周方向という。中心軸線O2は、軸方向に沿って延びている。
複数の細孔31はいずれも、本体流路25の流路断面積より小さく、平面視において第1障壁28および本体流路25の各内側に配置されている。図示の例では、複数の細孔31の長さは、互いに同等になっている。複数の細孔31の内径は、互いに同等になっている。なお、複数の細孔31の長さおよび内径をそれぞれ互いに異ならせてもよい。
細孔31は、第1障壁28に径方向に間隔をあけて複数形成されている。すなわち、前記孔列が、第1障壁28に径方向に間隔をあけて複数配置されている。図示の例では、細孔31は、第1障壁28に径方向に間隔をあけて2つ形成されている。径方向で互いに隣り合う細孔31は、周方向の位置が互いにずらされて配置されている。なお、複数の細孔31は、第1障壁28に、周方向に沿う同等の位置に径方向に間隔をあけて配置してもよい。
細孔31の横断面積は、例えば25mm以下、好ましくは2mm以上8mm以下としてもよい。
なお、複数の細孔31それぞれの横断面積を複数の細孔31全てについて合計した、第1連通部26全体の流路断面積は、本体流路25における流路断面積の最小値の例えば1.8倍以上4.0倍以下としてもよい。
また本実施形態では、第1障壁28のうち、主液室14に面する表面28aにおける細孔31の開口周縁部に、細孔31を覆うひさし部40が形成されている。ひさし部40は、第1障壁28の表面28aから上方に向けて延びている。
なお、ひさし部40は、第2障壁29のうち、副液室15に面する第2表面29aに形成されてもよい。
また本実施形態では、複数のひさし部40のうちの2つ以上は、前記平面視において、ひさし部40の、第1障壁28に接続された基端部41における、細孔31の孔周方向の中央部から、ひさし部40の開放端部42における、孔周方向の中央部に向かう向き(以下、延在方向という)が互いに異なっている。図示の例では、全てのひさし部40における前記延在方向が互いに異なっている。
複数のひさし部40のうち、径方向の内側に位置するひさし部40の前記延在方向は、主液室14において、前記平面視で本体流路25よりも径方向の内側に位置する部分を向くとともに、周方向の一方側を向いている。また、複数のひさし部40のうち、径方向の外側に位置するひさし部40の前記延在方向は、主液室14において、前記平面視で本体流路25よりも径方向の外側に位置する部分を向くとともに、周方向の他方側を向いている。
全てのひさし部40における前記延在方向の、中心軸線O1と中心軸線O2とを結ぶ直線に対する傾斜角は互いに同等となっている。
また本実施形態では、図3に示すように、ひさし部40は、第1障壁28の表面28aにおいて、複数の細孔31のうち、少なくとも、流路方向に沿って第2連通部27から最も離間して位置する細孔31の開口周縁部に形成されている。図示の例では、ひさし部40は全ての細孔31の、第1障壁28における開口周縁部に形成されている。なお、ひさし部40は、流路方向に沿って第2連通部27から最も離間して位置する細孔31の、第1障壁28における開口周縁部にのみ形成されてもよい。
図4に示すように、ひさし部40は、第1障壁28の表面28aから上方に向かって延びる第1壁部43と、第1壁部43の上端から孔径方向の内側に向けて延びる第2壁部44と、を備えている。第1壁部43と第2壁部44との接続部分45は、孔径方向の外側に向けて突の曲面状に形成されている。第1壁部43および第2壁部44は、互いに一体に形成され、互いに同等の厚みを有している。
基端部41は、第1壁部43の下端部となっている。開放端部42は、第2壁部44のうち、中心軸線O2を孔径方向に挟む接続部分45の反対側に位置する部分となっている。
図4に示すように、第1壁部43は孔周方向に沿って形成され、第1壁部43における孔径方向の内側を向く内面は、細孔31の内周面と面一となっている。第1壁部43の孔周方向の両端部同士は、中心軸線O2を中心とする中心角が90°以下の範囲に位置している。これにより、後述する振動入力時において、細孔31から主液室14に流入し、ひさし部40の第2壁部44に衝突した液体Lが、前記平面視で、前記延在方向のみならず、この方向と直交する方向にも流出することができる。
第2壁部44の開放端部42は、図4に示されるような前記断面視で、第1障壁28の表面28aにおける細孔31の開口周縁部のうち、中心軸線O2を孔径方向に挟む基端部41との接続部分の反対側に位置する部分と、孔径方向の位置が同等となっている。
このような構成からなる防振装置10では、振動入力時に、両取付部材11、12が弾性体13を弾性変形させながら相対的に変位する。すると、主液室14の液圧が変動し、主液室14内の液体Lが制限通路24を通って副液室15に流入し、また、副液室15内の液体Lが制限通路24を通って主液室14に流入する。
そして本実施形態に係る防振装置10によれば、液体Lが、複数の細孔31を通して本体流路25から主液室14に流入する際に、これらの細孔31が形成された第1障壁28により圧力損失させられながら各細孔31を流通するため、主液室14に流入する液体Lの流速を抑えることができる。
しかも、液体Lが、単一の細孔31ではなく複数の細孔31を流通するので、液体Lを複数に分岐させて流通させることが可能になり、個々の細孔31を通過した液体Lの流速を低減させることができる。これにより、仮に防振装置10に大きな荷重(振動)が入力されたとしても、細孔31を通過して主液室14に流入した液体Lと、主液室14内の液体Lと、の間で生じる流速差を小さく抑えることが可能になり、流速差に起因する渦の発生、およびこの渦に起因する気泡の発生を抑えることができる。
また、仮に気泡が主液室14ではなく本体流路25で発生しても、液体Lを、複数の細孔31を通過させることで発生した気泡同士を、主液室14内で離間させることが可能になり、気泡が合流して成長するのを抑えて気泡を細かく分散させた状態に維持しやすくすることができる。
また、第1障壁28の表面28aにおける細孔31の開口周縁部に、細孔31を覆うひさし部40が複数形成されているので、細孔31から主液室14に流入した液体Lを、ひさし部40に衝突させることにより圧力損失を生じさせることが可能となり、このように流入した液体Lと、主液室14内の液体Lと、の間で生じる流速差を効果的に抑えることができる。
以上のように、気泡の発生そのものを抑えることができる上、たとえ気泡が発生したとしても、気泡を細かく分散させた状態に維持しやすくすることができるので、気泡が崩壊するキャビテーション崩壊が生じても、発生する異音を小さく抑えることができる。
また、複数のひさし部40のうちの少なくとも2つが、前記延在方向が互いに異なっているので、各細孔31から主液室14に液体Lが流入する際に、或いは、本体流路25を液体Lが流通する際に、仮に気泡が発生したとしても、発生した気泡それぞれが主液室14内または副液室15内で流れる方向を、互いに異ならせることが可能となり、気泡が主液室14内または副液室15内で合流して成長するのを抑えて気泡を細かく分散させた状態に更に維持しやすくすることができる。
これにより、気泡が崩壊するキャビテーション崩壊が生じても、発生する異音をより一層効果的に小さく抑えることができる。
また、前記平面視において、隣り合う細孔31を覆うひさし部40同士における前記延在方向が互いに異なっているので、隣り合う細孔31から主液室14に流入した液体Lそれぞれの流れる方向を、互いに異ならせることができる。このため、各細孔から主液室14または副液室15に液体が流入する際に、或いは、本体流路25を液体Lが流通する際に、仮に気泡が発生したとしても、気泡それぞれが主液室14内または副液室15内で流れる方向が互いに異なる方向となり、気泡が主液室14内または副液室15内で合流して成長するのを効果的に抑えることができ、気泡を細かく分散させた状態に、より一層維持しやすくすることができる。
また、細孔31は、第1障壁28に、流路方向に間隔をあけて複数形成され、ひさし部40は、複数の細孔31のうち、少なくとも流路方向に沿って第2連通部27から最も離間して位置する細孔31の開口周縁部に形成されているので、本体流路25を流れる液体Lの慣性によって流量が多くなる細孔31がひさし部40により覆われることとなる。このため、このように流量の多い細孔31から流出された液体Lをひさし部40に衝突させることで圧力損失を生じさせることが可能となり、主液室14に流入した液体Lと、主液室14内の液体Lと、の間で生じる流速差をより一層効果的に抑えることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る防振装置について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。また、同様の作用についてもその説明を省略する。
図5に示すように、本実施形態に係る防振装置では、ひさし部40Bが、前記平面視でひさし部40Bの前記延在方向に直交する方向の両側から、ひさし部40Bを覆う側壁部46を一対備えている。図示の例では、側壁部46は、第1壁部43および第2壁部44それぞれにおける孔周方向の両端部同士を接続するとともに、表面28aにおける細孔31の開口周縁部に接続されている。一対の側壁部46は、第1壁部43および第2壁部44と一体に形成されている。ひさし部40Bは、第1障壁28の表面28aにおける細孔31の開口周縁部のうち、中心軸線O2を中心とする中心角が270°の範囲にわたって配置されている。
このように、ひさし部40Bが側壁部46を備えているので、細孔31から主液室14に流入した液体Lが、第2壁部44に衝突した後の流路面積を小さくすることが可能になり、ひさし部40Bによる圧力損失効果をより一層高めることができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る防振装置について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。また、同様の作用についてもその説明を省略する。
図6に示すように、本実施形態に係る防振装置では、複数の細孔31を覆うひさし部40Cにおける開放端部42同士のうち、少なくとも2つが互いに対向している。図示の例では、互いに径方向に隣り合う細孔31を覆うひさし部40Cにおける開放端部42同士が、孔径方向に間隔をあけて互いに対向している。すなわち、径方向で互いに隣り合う細孔31を覆うひさし部40Cそれぞれにおける前記延在方向が、互いに反対となっている。
これにより、細孔31から主液室14に流入した液体L同士が、それぞれのひさし部40Cにより、互いに対向する向きに案内されることとなる。このため、これらの細孔31から主液室14に流入した液体L同士を互いに衝突させることで、より顕著に圧力損失を生じさせることが可能となり、主液室14に流入した液体Lと、主液室14内の液体Lと、の間で生じる流速差をより一層効果的に抑えることができる。
なお、このような態様に限られず、互いに周方向に隣り合う細孔31を覆うひさし部40C同士が、孔径方向に互いに対向していてもよい。
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
また、上記第1実施形態から第3実施形態においては、複数の細孔31に、ひさし部40、40B、40Cを各別に設けた構成を示したが、このような態様に限られない。複数の細孔31のうちの1つにのみ、ひさし部を設けてもよい。
また、上記第1実施形態から第3実施形態においては、複数のひさし部40、40B、40Cのうちの2つ以上の延在方向が互いに異なっている構成を示したが、このような態様に限られない。ひさし部40、40B、40Cの延在方向は全て同じであってもよい。
また、上記第1実施形態においては、互いに隣り合う細孔31を覆うひさし部40同士における前記延在方向が、互いに異なっている構成を示したが、このような態様に限られない。互いに隣り合う細孔31を覆う複数のひさし部40同士は、前記延在方向が互いに同一であってもよい。
また、上記第1実施形態においては、細孔31は、第1障壁28に、本体流路25の流路方向に間隔をあけて複数形成された構成を示したが、このような態様に限られない。細孔31は第1障壁28または第2障壁29に1つ形成されてもよい。
また、上記第1実施形態においては、ひさし部40は、複数の細孔31のうち、少なくとも流路方向に沿って第2連通部27から最も離間して位置する細孔31の開口周縁部に形成されている構成を示したが、このような態様に限られない。ひさし部40は、流路方向に沿って第1連通部26から最も離間して位置する細孔31の開口周縁部にのみ形成されてもよい。
また、上記第1実施形態では、細孔31を、第1障壁28に形成したが、第2障壁29に形成してもよいし、第1障壁28および第2障壁29の双方に形成してもよい。
また、前記実施形態では細孔31を、円柱状(真っ直ぐな円孔形状)に形成したが、漸次縮径する円錐台状に形成してもよい。
また、上記第1実施形態では、複数の細孔31を、横断面視円形状に形成したが、本発明はこれに限られない。例えば、複数の細孔31を、横断面視角形状に形成する等適宜変更してもよい。
また、上記第1実施形態では、第1連通部26が複数の細孔31を備えているが、例えば細孔31より大径の開口、および細孔31の双方を有する構成等を採用してもよい。また、第2連通部27が、周方向(本体流路25の流路方向)に沿って配置された複数の開口部32を備えていてもよい。
また、上記第1実施形態では、仕切部材16を第1取付部材11の下端部に配置し、仕切部材16の外周部22を第1取付部材11の下端開口縁に当接させているが、例えば仕切部材16を第1取付部材11の下端開口縁より充分上方に配置し、この仕切部材16の下側、すなわち第1取付部材11の下端部にダイヤフラム20を配設することで、第1取付部材11の下端部からダイヤフラム20の底面にかけて副液室15を形成するようにしてもよい。
また、上記第1実施形態では、支持荷重が作用することで主液室14に正圧が作用する圧縮式の防振装置10について説明したが、主液室14が鉛直方向下側に位置し、かつ副液室15が鉛直方向上側に位置するように取り付けられ、支持荷重が作用することで主液室14に負圧が作用する吊り下げ式の防振装置にも適用可能である。
また、上記第1実施形態では、仕切部材16が、第1取付部材11内の液室19を、弾性体13を壁面の一部に有する主液室14、および副液室15に仕切るものとしたが、これに限られるものではない。例えば、ダイヤフラム20を設けるのに代えて弾性体13を設け、副液室15を設けるのに代えて、弾性体13を壁面の一部に有する受圧液室を設けてもよい。例えば、仕切部材16が、液体Lが封入される第1取付部材11内の液室19を、主液室14および副液室15に仕切り、主液室14および副液室15のうちの少なくとも1つが、弾性体13を壁面の一部に有する他の構成に適宜変更することが可能である。
また、本発明に係る防振装置10は、車両のエンジンマウントに限定されるものではなく、エンジンマウント以外に適用することも可能である。例えば、建設機械に搭載された発電機のマウントにも適用することも可能であり、或いは、工場等に設置される機械のマウントに適用することも可能である。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
10 防振装置
11 第1取付部材
12 第2取付部材
13 弾性体
14 主液室(第1液室)
15 副液室(第2液室)
16 仕切部材
19 液室
24 制限通路
25 本体流路
26 第1連通部
27 第2連通部
28 第1障壁
28a 表面
29 第2障壁
31 細孔
40、40B、40C ひさし部
41 基端部
42 開放端部

Claims (3)

  1. 振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される筒状の第1取付部材、および他方に連結される第2取付部材と、
    これら両取付部材を弾性的に連結する弾性体と、
    液体が封入された前記第1取付部材内の液室を第1液室と第2液室とに区画する仕切部材と、を備えるとともに、
    前記仕切部材に、前記第1液室と前記第2液室とを連通する制限通路が形成された液体封入型の防振装置であって、
    前記制限通路は、前記第1液室に開口する第1連通部、前記第2液室に開口する第2連通部、および前記第1連通部と前記第2連通部とを連通する本体流路を備え、
    前記第1連通部および前記第2連通部のうちの少なくとも一方は、前記第1液室または前記第2液室に面する表面を有した障壁を貫通する複数の細孔を備え、
    前記障壁の表面における前記細孔の開口周縁部には、前記細孔を覆うひさし部が形成され
    複数の前記ひさし部のうちの2つ以上は、前記障壁の平面視において、前記ひさし部の、前記障壁に接続された基端部における、前記細孔の中心軸線回りに沿う孔周方向の中央部から、前記ひさし部の開放端部における、前記孔周方向の中央部に向かう向きが互いに異なっていることを特徴とする防振装置。
  2. 互いに隣り合う前記細孔を覆う前記ひさし部同士は、前記平面視において、前記ひさし部の前記基端部における前記孔周方向の中央部から、前記ひさし部の前記開放端部における前記孔周方向の中央部に向かう向きが互いに異なっていることを特徴とする請求項1に記載の防振装置。
  3. 前記細孔は、前記障壁に、前記本体流路の流路方向に間隔をあけて複数形成され、
    前記ひさし部は、前記障壁の表面において、複数の前記細孔のうち、少なくとも、前記流路方向に沿って前記第1連通部および前記第2連通部のうちのいずれか他方から最も離間して位置する前記細孔の開口周縁部に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の防振装置。
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