以下、図面を参照しながら、本実施形態に係る給与前払いシステム及びその制御方法を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行うこととする。
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る給与前払いネットワークシステム1の全体構成の一例を示すブロック図である。この図1に示すように、本実施形態に係る給与前払いネットワークシステム1は、金融機関のシステムである給与前払いシステム10と、この金融機関に口座を開設しているユーザの端末である1又は複数のユーザ端末20とを備えて構成されている。そして、これら給与前払いシステム10とユーザ端末20とは、通信ネットワーク30を介して、相互に接続される。
給与前払いシステム10は、例えば、金融機関に設けられている勘定系のコンピュータにより構成されており、必要に応じて、この勘定系のコンピュータで実行されるべき処理を補完する機能を有する補助システムやサブシステムを含んでいる。本実施形態においては、特に、給与前払いシステム10は、複数のユーザの口座を管理しており、この複数のユーザの口座には、ユーザが勤務している会社から、定期的に又は不定期に、給与振り込みがなされている。
ユーザ端末20は、例えば、ユーザが所持する、スマートフォン等の携帯型端末やパーソナルコンピュータ等の設置型端末により構成されている。各ユーザは、この給与前払いシステム10が設置された金融機関に口座を開設しており、この開設した口座の管理を、ユーザ端末20により行っている。
通信ネットワーク30は、例えば、インターネットなどの公衆通信回線により構成されており、或いは、VPN(Virtual Private Network)などの仮想専用線により構成されている。このため、この金融機関に口座を開設しているユーザは、必要に応じて、ユーザ端末20を通信ネットワーク30を介して給与前払いシステム10に接続して、例えば、口座の残高照会や、口座振り込み、資金の借り入れなどのインターネットバンキングを実現することができる。
図2は、図1に示す給与前払いシステム10の内部構成の一例を表したブロック図である。この図2に示すように、本実施形態に係る給与前払いシステム10は、CPU(Central Processing Unit)40と、揮発性記憶装置42と、不揮発性記憶装置44と、表示部46と、入力部48と、通信部50とを備えて構成されており、これらは内部バス52を介して相互に接続されている。
CPU40は、いわゆる演算処理装置であり、本実施形態においては、例えば、不揮発性記憶装置44に記憶されている処理プログラムを読み出して実行することにより、種々の機能を実現する。また、CPU40は、各種のプログラムを実行するにあたり必要なデータを揮発性記憶装置42や不揮発性記憶装置44から読み出したり、生成されたデータを揮発性記憶装置42や不揮発性記憶装置44に格納したりする。
揮発性記憶装置42は、例えば、RAM(Random Access Memory)により構成されており、各種の処理プログラムを実行するにあたり必要となるデータや変数を一時的に記憶する。不揮発性記憶装置44は、例えば、ROMやハードディスクドライブ等により構成されており、各種の処理プログラムやデータを不揮発的に記憶する。
このような構成の給与前払いネットワークシステム1において、本実施形態では、ユーザの口座に、所定の期間、給与振り込みがあることを条件に、ユーザが給与の前払いを金融機関から受けることが疑似的にできるシステム環境を提供する。例えば、本実施形態においては、6ヶ月以上、給与振り込みを受けている口座を有するユーザが、急な資金が必要になった場合には、3万円の給与前払いを金融機関から受けることができる。そして、次の給与振り込み予定日が到来した際に、ユーザの口座から、給与の前払いにより発生した債権を、金融期間が回収するようにしている。以下においては、この一連の処理を詳しく説明する。
図3は、本実施形態に係る給与前払いシステム10が実行する対象ユーザ抽出処理の処理内容を説明するフローチャートを示す図である。この対象ユーザ抽出処理は、CPU40が不揮発性記憶装置44に記憶されている対象ユーザ抽出処理プログラムを読み出して実行することにより実現される処理である。
この対象ユーザ抽出処理は、所定のタイミングで実行される処理であり、本実施形態では、例えば、毎月1日や月末毎といった特定の暦の日に実行される。但し、対象ユーザ抽出処理が実行される所定のタイミングは、これに限るものではなく、例えば、毎週月曜日といった特定の曜日や、10日毎といった所定の経過日数毎に実行されるようにしてもよい。
この図3に示すように、まず、給与前払いシステム10は、この給与前払いシステム10で管理されているユーザの口座情報を取得する(ステップS10)。本実施形態においては、このとき取得するのは、ある一人のユーザの口座情報であり、後述する処理をすべてのユーザに対して繰り返す。このステップS10で取得するユーザの口座情報には、少なくとも、ユーザの口座を特定する情報である、口座名義、口座番号、科目と、その口座に対する取引内容を特定する情報である、処理金額、摘要、処理日付、処理後の口座残高、が含まれている。
次に、給与前払いシステム10は、取得したユーザの口座情報から、給与振り込み情報を抽出する(ステップS12)。例えば、本実施形態においては、取引内容を特定する情報の1つである摘要の欄から、給与振り込み、給与、給料といった文字を含む取引を選択して抽出する。
次に、給与前払いシステム10は、ステップS12で抽出した給与振り込み情報に基づいて、そのユーザの口座に給与振り込みが所定の期間なされているか否かを判断する(ステップS14)。例えば、本実施形態においては、ステップS12で抽出した給与振り込み情報に、過去6ヶ月間以上、毎月給与振り込みがなされているかどうかを判定する。この条件の設定は、任意であり、例えば、所定の期間は、3ヶ月でも、12ヶ月でもよい。或いは、例えば6ヶ月という所定の期間の間に、例えば5回以上という所定の回数以上、給与振り込みがなされていることを条件としてもよい。
ステップS14において、ユーザの口座に対して給与振り込みが所定の期間なされていると判断した場合(ステップS14:Yes)には、給与前払いサービスを利用できるユーザとして、サービス許可リストに登録する(ステップS16)。本実施形態においては、このサービス許可リストに登録されることにより、給与前払いサービスを利用できるユーザとなる。
このステップS16の処理の後、又は、上述したステップS14で、ユーザの口座に対して給与振り込みが所定の期間はなされていないと判断した場合(ステップS14:No)には、給与前払いシステム10は、この給与前払いシステム10で口座を開設しているユーザのすべてのユーザについて、この対象ユーザ抽出処理を行ったかどうかを判断する(ステップS18)。
すべてのユーザについて対象ユーザ抽出処理を行っていない場合(ステップS18:No)には、上述したステップS10に戻り、次のユーザについて同様の処理を繰り返す。一方、すべてのユーザについて対象ユーザ抽出処理を行った場合(ステップS18:Yes)には、給与前払いシステム10は、この対象ユーザ抽出処理を終了する。このことから分かるように、ステップS14の処理において、口座に給与振り込みが所定の期間なされていないと判断されたユーザは、サービス許可リストに登録されないこととなる。
図4は、本実施形態に係る給与前払いシステム10が実行する給与前払い実行処理の処理内容を説明するフローチャートを示す図である。この給与前払い実行処理は、CPU40が不揮発性記憶装置44に記憶されている給与前払い実行処理プログラムを読み出して実行することにより実現される処理である。
この給与前払い実行処理は、ユーザがユーザ端末20を用いて、この給与前払いシステム10のインターネットバンキングにログインした際に実行される処理である。すなわち、個々のユーザがインターネットバンキングにログインすることにより、個々に実行される処理である。
この図4に示すように、まず、給与前払いシステム10は、ユーザ端末20の画面に、メインメニュー画面を表示する(ステップS20)。すなわち、給与前払いシステム10は、通信ネットワーク30を介して接続されているユーザ端末20に、ログイン後のポータル画面として、メインメニュー画面を表示させる。
図5は、本実施形態に係る給与前払いネットワークシステム1におけるユーザ端末20に表示されるメインメニュー画面W10の一例を示す図である。この図5に示すように、このメインメニュー画面W10は、例えば、そのユーザがこの金融機関に預けている資産の総額を表示するお預かり資産表示フィールドF10と、そのユーザがこの金融機関の普通預金に預けている金額を表示する普通預金表示フィールドF12と、そのユーザがこの金融機関の定期預金に預けている金額を表示する定期預金表示フィールドF14と、そのユーザがこの金融機関から借り入れている金額を表示するお借り入れ表示フィールドF16とを備えている。
また、本実施形態においては、このメインメニュー画面W10は、そのユーザが振り込みを行いたい場合にタッチする振り込みメニューボタンB10と、そのユーザが給与の前払いサービスを利用したい場合にタッチする給与前払いサービスボタンB12も表示される。本実施形態では、ユーザが、この給与前払いサービスボタンB12をタッチして選択したことを前提に説明を進める。
この給与前払いサービスボタンB12がタッチされて選択されると、給与前払いシステム10は、給与前払いサービスの利用規約をユーザに確認させるために、図4に示すように、ユーザ端末20に利用規約画面を表示する(ステップS22)。すなわち、給与前払いシステム10は、通信ネットワーク30を介して接続されているユーザ端末20に、給与前払いサービスに関する利用規約画面を表示させる。
図6は、本実施形態に係る給与前払いネットワークシステム1におけるユーザ端末20に表示される利用規約画面W20の一例を示す図である。この図6に示すように、この利用規約画面W20は、例えば、この給与前払いサービスを利用するにあたり、ユーザが理解して承諾する必要のある利用規約を表示する利用規約表示フィールドF20を備えている。
この利用規約表示フィールドF20は、1画面ですべての規約を表示しきれないことから、ユーザが任意に上下方向にスクロール可能に構成されている。このため、ユーザは、この利用規約表示フィールドF20に文字情報として表示されている利用規約を、スクロールしながら確認し理解する。
本実施形態においては、この給与前払いサービスは、いわゆる金銭消費貸借契約に基づく仕組みではなく、金融機関とユーザとの二者間で締結する、給与債権譲渡契約と取立委任契約と口座振替契約の3つの契約に基づく仕組みとなっている。このため、ユーザは、この3つの契約の内容を、利用規約表示フィールドF20の利用規約から理解をする。そして、この3つの契約に同意できる場合は同意ボタンB20をタッチして選択し、同意できない場合は非同意ボタンB22をタッチして選択する。もし、ユーザが非同意ボタンB22をタッチして選択した場合は、この図4に示す給与前払い実行処理は終了する。
一方、ユーザが同意ボタンB20をタッチして選択した場合には、給与前払いシステム10は、そのユーザのユーザ端末20に給与前払いサービス画面を表示する(ステップS24)。すなわち、給与前払いシステム10は、通信ネットワーク30を介して接続されているユーザ端末20に、給与前払いサービス画面を表示させる。
図7は、本実施形態に係る給与前払いネットワークシステム1におけるユーザ端末20に表示される給与前払いサービス画面W30の一例を示す図である。この図6に示すように、この給与前払いサービス画面W30は、例えば、この給与前払いサービスを利用しようとしている日付(本日の日付)を表示する利用日表示フィールドF30と、給与前払いサービスで給与の前払いを受ける金額を表示する給与前払い金額表示フィールドF32と、給与の前払いを受けるにあたり金融機関が徴収する手数料の金額が表示される手数料表示フィールドF34と、次の給与振り込み予定日が表示される予定日表示フィールドF36とを備えている。
特に本実施形態においては、給与前払い金額表示フィールドF32に表示される金額は、固定金額になっている。つまり、ユーザが給与の前払いを受ける金額は、固定である。この図7の例では、この固定金額は、30,000円である。これは、過去の所定の期間に給与振り込みが継続してなされていれば、この先も給与振り込みがなされるであろうという簡易な判断基準で、給与の前払いを金融機関を行うため、高額な金額の給与の前払いを認めるのは難しいからである。また、30,000円程度の給与の前払いを受ければ、ユーザはある程度の当座の資金を得ることができ、給与の前払いを受けたことによる相応の効果が期待できるからである。
むろん、このユーザが給与の前払いを受ける金額を、ユーザが任意に指定できるようにしてもよい。この場合、例えば、ユーザが給与前払い金額表示フィールドF32をタッチして選択すると、この給与前払い金額表示フィールドF32が金額入力フィールドとなり、ユーザが任意の金額を入力できるようにしてもよい。また、ユーザが給与の前払いを受けることのできる最高金額を例えば50,000円と設定しておき、1円から50,000円の間で、任意の金額の給与の前払いを受けることができるようにしてもよい。
また、図7の例では、手数料表示フィールドF34に表示される金融機関の手数料も固定金額である。つまり、ユーザが給与の前払いを受けるにあたって金融機関に支払う手数料は、固定になっている。この図7の例では、300円という設定である。ただし、この金融機関に支払う手数料は、固定金額ではなく、変動する金額であってもよい。例えば、そのユーザの口座に給与振り込みがなされていた期間が1年以上である場合には、手数料を低く設定して、例えば、200円という設定にしてもよい。
さらには、ユーザが給与の前払いを受ける金額を任意に変更できる場合には、給与の前払い金額に対する所定の割合を手数料として設定して、この手数料表示フィールドF34に表示するようにしてもよい。例えば、所定の割合が1%であり、且つ、給与の前払いを受ける金額が50,000円である場合には、金融機関へユーザが支払う手数料は500円となる。このため、この手数料表示フィールドF34には、500円という金額が表示される。
また、本実施形態では、予定日表示フィールドF36に表示される次の給与振り込みの予定日は、ユーザが修正可能に構成されている。具体的には、給与前払いシステム10は、過去の給与振り込みという取引がなされた日を、ユーザの口座情報から取得することができる。例えば、毎月10日に供与振り込みがなされている場合には、次の給与振り込み予定日も、次の10日であることが予想される。このため、給与前払いシステム10は、ユーザの口座情報における過去の給与振り込みという取引がなされた日付に基づいて、次の給与振り込み予定日を推測して、この予定日表示フィールドF36に表示する。
但し、推測した次の給与振り込み予定日が土日祝日や年末年始などの金融機関休業日である可能性もある。このため、本実施形態に係る給与前払いシステム10では、推測した次の給与振り込み予定日が金融機関休業日にあたる場合は、推測した次の給与振り込み予定日以降の直近の金融機関開業日を、実際の給与振り込み予定日と推定する。このため、給与前払いシステム10は、この推定した実際の給与振り込み予定日を、予定日表示フィールドF36に表示する。
しかしながら、ユーザが勤務している会社によっては、給与振り込み予定日が金融機関休業日にあたる場合には、給与振り込み予定日を前倒しして、金融機関休業日の直前の金融機関開業日に設定している場合もある。このため、本実施形態に係る給与前払いシステム10においては、次の給与振り込み予定日をユーザが修正できるようにしている。例えば、ユーザがこの予定日表示フィールドF36をタッチして選択すると、この予定日表示フィールドF36が予定日入力フィールドとなる。本実施形態では、この予定日入力フィールドには、予定日表示フィールドF36に表示された給与振り込み予定日を含めて、前後それぞれ1日の金融機関開業日、つまり3つの給与振り込み予定日の候補が、選択肢として表示される。
具体的には、金融機関休業日を考慮した上で推測された実際の給与振り込み予定日(候補1)と、その1日前の金融機関開業日(候補2)と、その1日後の金融機関開業日(候補3)の3つが、選択肢として表示される。もし、予定日表示フィールドF36に表示された次の給与振り込み予定日が正しくなかった場合には、ユーザは、ユーザ端末20に提示された選択肢の中から、ユーザが勤務している会社の給与振り込みの規則に則って、正しい次の給与振り込み予定日を、予定日入力フィールドに入力する。
なお、この予定日表示フィールドF36に入力する給与振り込み予定日は、ユーザが任意に選択して入力できるようにしてもよい。例えば、来週、臨時収入があることがユーザは予め分かっており、その臨時収入がユーザの口座に振り込まれた場合には、この臨時収入から、給与の前払いを受けた金額を返済したいと考えるような場合もある。このため、給与前払いシステム10は、予定日表示フィールドF36をユーザがタッチして選択した場合には、明日以降、1ヶ月分のカレンダーを表示して、ユーザが任意の日付を給与振り込み予定日として選択して入力できるようにしてもよい。
この給与前払いサービス画面W30において、各種の入力や確認をして、給与の前払いを受けたいと判断したユーザは、給与前払い利用ボタンB30をタッチして選択する。この給与前払い利用ボタンB30がタッチされて選択された場合、給与前払いシステム10は、ユーザから給与の前払い要求を通信ネットワーク30を介して受け付けたこととなる。このため、図4に示すように、給与前払いシステム10は、給与前払い利用ボタンB30がタッチされて選択された場合には、ユーザが給与の前払いとして受け取るべき金額を、ユーザの口座に振り込む(ステップS26)。
本実施形態においては、ステップS26でユーザの口座に振り込まれる金額は、給与前払いサービス画面W30において、給与前払いを受ける金額として設定された金額から、金融機関の手数料を差し引いた金額である。つまり、図6の給与前払いサービス画面W30の例では、給与の前払いを受ける金額である30,000円から、手数料300円を差し引いた金額である29,700円が、給与の前払いを受けたユーザが受け取るべき金額として、ユーザの口座に振り込まれる。
但し、金融機関の手数料を給与の前払いを受ける金額から差し引いて、ユーザの口座に振り込むのではなく、給与の前払いを受ける金額をそのまま、給与の前払いを受けたユーザが受け取るべき金額として、ユーザの口座に振り込むようにしてもよい。この場合、金融機関の手数料は、給与振り込み予定日に、この金融機関が債権を回収する際に、給与の前払いを受けた金額に手数料を加算した金額を回収するようにしてもよい。
給与の前払いによる振り込みを行うのと同時、給与前払いシステム10は、その給与の前払いに関する情報である給与前払い情報を、不揮発性記憶装置44に記憶させる。例えば、そのユーザの氏名、科目、口座番号、給与前払い金額、給与前払い日、次の給与振り込み予定日を少なくとも含む情報を、給与前払い情報として、不揮発性記憶装置44に記憶させておく。
図4に示すように、ステップS26における振り込み処理がなされた場合には、この給与前払いシステム10は、そのユーザのユーザ端末20に完了画面を表示する(ステップS28)。すなわち、給与前払いシステム10は、通信ネットワーク30を介して接続されているユーザ端末20に、完了画面を表示させる。
図8は、本実施形態に係る給与前払いネットワークシステム1におけるユーザ端末20に表示される完了画面W40の一例を示す図である。この図8に示すように、完了画面W40は、上述した給与前払いサービス画面W30に、完了メッセージ表示フィールドF40を重ねて表示することにより構成されている。この完了メッセージ表示フィールドF40により、給与の前払いが完了したことを確認したユーザは、確認ボタンB40をタッチして選択する。これにより、図4に示した給与前払い実行処理が終了する。
図9は、本実施形態に係る給与前払いシステム10が実行する債権回収処理の処理内容を説明するフローチャートを示す図である。この債権回収処理は、CPU40が不揮発性記憶装置44に記憶されている債権回収処理プログラムを読み出して実行することにより実現される処理である。
この債権回収処理は、所定の周期で実行される処理であり、本実施形態では、例えば、毎営業日に、金融機関における給与前払いシステム10に対する夜間処理が終了した後に実行される。これは、夜間処理により、この給与前払いシステム10のユーザの口座に対して、給与振り込みを含む入金処理が行われるため、この夜間処理の終了直後が、ユーザの口座から債権を回収するタイミングとして最も適しているからである。但し、債権回収処理が実行される所定の周期は、これに限るものではなく、例えば、営業終了日の夜の12時に実行されたり、毎営業日の昼間の3時に実行されたりするようにしてもよい。
また、この債権回収処理は、必ずしも、給与前払いシステム10に必須の処理ではない。例えば、この債権回収処理は、給与前払いシステム10とは別のシステムにより実行されるようにしてもよい。
この図9に示すように、まず、給与前払いシステム10は、本日が、給与の前払いを受けたユーザの給与振り込み予定日であるかどうかを判断する(ステップS30)。すなわち、この債権回収処理を実行している日が、給与の前払いを受けたある一人のユーザにとって、給与前払いサービス画面W30で指定した給与振り込み予定日であるかどうかを判断する。
上述したように、給与の前払いを受けたユーザに関する給与前払い情報は、不揮発性記憶装置44に記憶されている。このため、給与前払いシステム10は、不揮発性記憶装置44に記憶されている給与前払い情報を読み込んで、あるユーザが指定した次の給与振り込み予定日を取得し、この取得した給与振り込み予定日と、この債権回収処理を実行している日とが、一致するかどうかを判断する。このため、本実施形態における債権回収処理では、給与の前払いを利用したすべてのユーザに対して、後述する処理を繰り返して実行する。
この債権回収処理を実行している日が、ユーザが指定した給与振り込み予定日である場合(ステップS30:Yes)には、給与前払いシステム10は、そのユーザの口座の残高が、給与の前払いにより発生した債権の金額以上であるかどうかを判断する(ステップS32)。上述した例では、給与の前払いにより発生した債権の金額は30,000円であるので、給与前払いシステム10は、そのユーザの口座の残高が、30,000円以上であるかどうかを判断する。
そのユーザの口座の残高が、給与の前払いにより発生した債権の金額以上である場合(ステップS32:Yes)には、給与前払いシステム10は、そのユーザの口座から債権の金額を回収する(ステップS34)。上記の例においては、給与前払いシステム10は、ユーザの口座から、30,000円を回収する。
なお、例えば、金融機関の手数料を債権の回収時に徴収する仕組みである場合には、このステップS34における債権回収の実行の際には、ユーザが給与の前払いを受けた金額に金融機関の手数料を加算した金額を、ユーザの口座から回収する。上記の例においては、ユーザは30,000円の給与の前払いを受けているので、これに300円を加算した、30,300円をユーザの口座から回収する。
このユーザの口座から債権を回収するのと同時に、給与前払いシステム10は、不揮発性記憶装置44に記憶されている給与前払い情報から、そのユーザの情報を削除する。すなわち、このユーザが給与の前払いを受けることにより発生した債権は、給与前払い情報からユーザに関する情報を削除することにより、給与前払いシステム10から消滅する。
このステップS34を実行した後、又は、ユーザの指定した給与振り込み予定日ではなかった場合(ステップS30:No)、若しくは、ユーザの口座の残高が債権の金額以上でなかった場合(ステップS32:No)には、給与前払いシステム10は、給与前払い情報に含まれているすべてのユーザについて、この債権回収処理を行ったかどうかを判断する(ステップS36)。
給与前払い情報に含まれているすべてのユーザについて、この債権回収処理を行っていない場合(ステップS36:No)には、上述したステップS30に戻り、給与前払い情報に含まれている次のユーザに対して上述した処理を繰り返す。一方、給与前払い情報に含まれているすべてのユーザについて、この債権回収処理を行った場合(ステップS36:Yes)には、給与前払いシステム10は、この債権回収処理を終了する。
図10は、本実施形態に係る給与前払いシステム10が実行する債権回収繰り返し処理の処理内容を説明するフローチャートを示す図である。この債権回収繰り返し処理は、CPU40が不揮発性記憶装置44に記憶されている債権回収繰り返し処理プログラムを読み出して実行することにより実現される処理である。
この債権回収繰り返し処理は、所定の周期で実行される処理であり、本実施形態では、例えば、毎営業日に、金融機関における給与前払いシステム10に対する夜間処理が終了した後に実行される。これは、夜間処理により、この給与前払いシステム10のユーザの口座に対して、給与振り込みを含む入金処理が行われるため、この夜間処理の終了直後が、ユーザの口座から債権を回収するタイミングとして最も適しているからである。但し、債権回収繰り返し処理が実行される所定の周期は、これに限るものではなく、例えば、3営業日に1回の周期や、1週間に1回の周期で実行されるようにしてもよい。
また、この債権回収繰り返し処理は、必ずしも、給与前払いシステム10に必須の処理ではない。例えば、この債権回収繰り返し処理は、給与前払いシステム10とは別のシステムにより実行されるようにしてもよい。
この図10に示すように、まず、給与前払いシステム10は、本日を基準として、給与の前払いを受けたユーザの給与振り込み予定日が過ぎているかどうかを判断する(ステップS40)。すなわち、この債権回収繰り返し処理を実行している日が、給与の前払いを受けたある一人のユーザが指定した給与振り込み予定日を、既に経過しているか否かを判断する。
上述のように、給与の前払いを受けたユーザに関する給与前払い情報は、不揮発性記憶装置44に記憶されている。また、上述した債権回収処理により給与振り込み予定日にユーザの口座から、給与の前払いにより発生した債権が回収できている場合には、そのユーザは、既に、この給与前払い情報から削除されている。このため、不揮発性記憶装置44に記憶されている給与前払い情報に残っているユーザは、給与の前払いにより発生した債権を回収していないユーザとなる。このため、本実施形態では、この給与前払い情報に残っているユーザの中から、既に、ユーザが指定した給与振り込み予定日が過ぎているユーザを抽出するのである。本実施形態における債権回収繰り返し処理では、給与前払い情報に残っているすべてのユーザに対して、後述する処理を繰り返して実行する。
このステップS40において、そのユーザに関して、給与振り込み予定日が過ぎている場合(ステップS40:Yes)には、給与前払いシステム10は、そのユーザの口座の残高が、給与の前払いにより発生した債権の金額以上であるかどうかを判断する(ステップS42)。上述した例では、給与の前払いにより発生した債権の金額は30,000円であるので、給与前払いシステム10は、そのユーザの口座の残高が、30,000円以上であるかどうかを判断する。
そのユーザの口座の残高が、給与の前払いにより発生した債権の金額以上である場合(ステップS42:Yes)には、給与前払いシステム10は、そのユーザの口座から債権の金額を回収する(ステップS44)。上記の例においては、給与前払いシステム10は、ユーザの口座から、30,000円を回収する。
なお、上述したように、例えば、金融機関の手数料を債権の回収時に徴収する仕組みである場合には、このステップS44における債権回収の実行の際には、ユーザが給与の前払いを受けた金額に金融機関の手数料を加算した金額を、ユーザの口座から回収する。上記の例においては、ユーザは30,000円の給与の前払いを受けているので、これに300円を加算した、30,300円をユーザの口座から回収する。
このユーザの口座から債権を回収するのと同時に、給与前払いシステム10は、不揮発性記憶装置44に記憶されている給与前払い情報から、そのユーザの情報を削除する。すなわち、このユーザが給与の前払いを受けることにより発生した債権は、給与前払い情報からユーザに関する情報を削除することにより、給与前払いシステム10から消滅する。
また、手数料に関しては、ユーザの口座からの債権回収が、ユーザの指定した給与振り込み予定日に実行できなかったことを理由として、増額するようにしてもよい。上記の例においては、300円の手数料を倍額にして、600円とするようにしてもよい。この場合、増額された金額である300円は、債権の回収時に、ユーザの口座から回収される。
一方、そのユーザの口座の残高が、給与の前払いにより発生した債権の金額以上でなかった場合(ステップS42:No)には、給与前払いシステム10は、そのユーザが指定した給与振り込み予定日から所定の期間が経過しているか否か、及び/又は、債権の回収を所定の回数試みたか否かを判断する(ステップS46)。所定の期間とは、例えば、給与振り込み予定日から3ヶ月や6ヶ月といった期間である。また、所定の回数とは、例えば、この債権回収繰り返し処理により、ステップS42における口座の残高が不足していると判断された回数を基準とし、その回数が100回であるといった回数である。なお、所定の期間を経過しており、且つ、口座の残高の不足という判断が所定の回数であるという、双方を条件とすることもできる。
ユーザが指定した給与振り込み予定日から所定の期間が経過している場合、及び/又は、債権の回収を所定の回数試みている場合(ステップS46:Yes)には、給与前払いシステム10は、そのユーザに対する給与前払いサービスの利用を停止する(ステップS48)。本実施形態においては、例えば、給与前払いサービスの利用を停止すべきユーザのリストが、給与前払いサービス停止情報として、不揮発性記憶装置44に記憶されている。このため、ステップS48では、該当するユーザを、この給与前払いサービス停止情報に登録して追加する。
この不揮発性記憶装置44に記憶されている給与前払いサービス停止情報に登録されているユーザについては、上述した給与前払い実行処理でユーザ端末20に表示されたメインメニュー画面W10において、給与前払いサービスボタンB12が表示されないようにする。若しくは、このメインメニュー画面W10の次に表示される給与前払いサービス画面W30において、そのユーザが給与前払いサービス停止情報に登録されていることから、給与前払いサービスが利用できない旨を表示する。
ステップS44を実行した後、又は、ステップS48を実行した後は、給与前払いシステム10は、給与前払い情報に含まれているすべてのユーザについて、この債権回収繰り返し処理を行ったかどうかを判断する(ステップS50)。同様に、ステップS40にてユーザの指定した給与振り込み予定日を過ぎていない場合(ステップS40:No)や、ステップS46にて所定の期間及び/又は所定の回数に定めた条件を満たさない場合(ステップS46:No)にも、給与前払い情報に含まれているすべてのユーザについて、この債権回収繰り返し処理を行ったかどうかを判断する(ステップS50)。
給与前払い情報に含まれているすべてのユーザについて、この債権回収繰り返し処理を行っていない場合(ステップS50:No)には、上述したステップS40に戻り、給与前払い情報に含まれている次のユーザに対して上述した処理を繰り返す。一方、給与前払い情報に含まれているすべてのユーザについて、この債権回収繰り返し処理を行った場合(ステップS50:Yes)には、給与前払いシステム10は、この債権回収繰り返し処理を終了する。
以上のように、本実施形態に係る給与前払いネットワークシステム1及び給与前払いシステム10によれば、ユーザの口座に対して給与振り込みが所定の期間なされているか否かを判断して、そのユーザの口座に対して給与振り込みが所定の期間なされていると判断した場合には、そのユーザの口座に給与の前払いとしてユーザが受け取るべき所定の金額を振り込むようにした。このため、ユーザは簡単且つ迅速に、給与の前払いより、資金を調達することができる。また、この資金調達は、給与前払いシステム10にて行われるため、従来のような、融資審査を行う必要が無く、24時間365日、ユーザからの給与の前払いの要求を受け付けることができる。このため、ユーザの利便性が極めて高いものとなる。また、金融機関にとっても、融資審査の手間が省けるため、金融業務の効率化と労力の軽減を図ることができる。
また、ユーザが同意していることを前提に、ユーザが指定した次の給与振り込み予定日に、給与の前払いにより発生した債権を、ユーザの口座から給与前払いシステム10が自動的に回収することとしたので、債権回収に必要な金融機関の労力を軽減することができる。
さらに、給与の前払いにより発生した債権の回収が給与振り込み予定日にできなかった場合には、引き続き、給与前払いシステム10が、所定の周期で給与の前払いにより発生した債権をユーザの口座から回収を試みることとしたので、繰り返して債権回収を行う金融機関の労力を削減することができる。
そして、給与前払いシステム10が、所定の期間及び/又は所定の回数、ユーザの口座から給与の前払いにより発生した債権の回収を試みたが、その回収ができなかった場合には、そのユーザの給与前払いサービスの利用を停止することとしたので、債務の弁済能力の無いユーザを迅速且つ的確に排除していくことができる。
〔第2実施形態〕
上述した第1実施形態の債権回収処理では、ユーザが指定した給与振り込み予定日に、ユーザの口座から、給与の前払いにより発生した債権を回収する処理を行ったが、本発明の第2実施形態の債権回収処理では、ユーザの口座に給与振り込みがなされた場合に、給与の前払いにより発生した債権を回収する処理を行うようにしたものである。以下、上述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
図11は、本実施形態に係る給与前払いシステム10が実行する債権回収処理の処理内容を説明するフローチャートを示す図である。この債権回収処理は、CPU40が不揮発性記憶装置44に記憶されている債権回収処理プログラムを読み出して実行することにより実現される処理である。また、図11に示す債権回収処理は、上述した第1実施形態を説明する図9の債権回収処理に対応する処理である。
この債権回収処理は、所定の周期で実行される処理であり、本実施形態では、例えば、毎営業日に、金融機関における給与前払いシステム10に対する夜間処理が終了した後に実行される。これは、夜間処理により、この給与前払いシステム10のユーザの口座に対して、給与振り込みを含む入金処理が行われるため、この夜間処理の終了直後が、ユーザの口座から債権を回収するタイミングとして最も適しているからである。但し、債権回収処理が実行される所定の周期は、これに限るものではなく、例えば、この債権回収処理が常時実行されており、ユーザの口座に対する取引が発生する都度、この債権回収が行われるようにしてもよい。
図11に示すように、まず、給与前払いシステム10は、その日の取引処理で、ユーザに給与振り込みがなされたか否かを判断する(ステップS60)。すなわち、前回の債権回収処理と今回の債権回収処理との間に、給与の前払いを受けたある一人のユーザの口座に、給与振り込みがなされたか否かを判断する。
上述した第1実施形態と同様に、給与の前払いを受けたユーザに関する給与前払い情報は、不揮発性記憶装置44に記憶されている。このため、給与前払いシステム10は、不揮発性記憶装置44に記憶されている給与前払い情報を読み込んで、ある人のユーザの口座に、給与振り込みがなされたか否かを判断する。このため、本実施形態における債権回収処理では、給与の前払いを利用したすべてのユーザに対して、後述する処理を繰り返して実行する。
また、そのユーザの口座に対してなされた取引処理が、給与振り込みであるか否かは、例えば、取引内容を特定する情報の1つである摘要の欄に、給与振り込み、給与、給料といった文字を含む取引がなされている場合には、給与振り込みがあったと判断する。この点は、図3に示す対象ユーザ抽出処理における判断手法と同様である。
或いは、給与前払いシステム10が、給与振り込み等がなされる口座を管理するサブシステムと、給与の前払いを実現するサブシステムとにより、構成されている場合には、給与振り込み等がなされる口座を管理するサブシステムが給与振り込みを検出した場合には、給与の前払いを実現するサブシステムに通知するようにしてもよい。この場合、通知を受けた給与の前払いを実現するサブシステムは、その時点で、債権回収処理を実行するようにしてもよいし、若しくは、給与振り込みを検出した口座をリスト化して別途管理し、所定の周期で実行される債権回収処理において、このリストを参照するようにしてもよい。
このステップS60において、そのユーザに給与振り込みがなされていると判断した場合(ステップS60:Yes)には、給与前払いシステム10は、そのユーザの口座の残高が、給与の前払いにより発生した債権の金額以上であるかどうかを判断する(ステップS62)。上述した例では、給与の前払いにより発生した債権の金額は30,000円であるので、給与前払いシステム10は、そのユーザの口座の残高が、30,000円以上であるかどうかを判断する。
そのユーザの口座の残高が、給与の前払いにより発生した債権の金額以上である場合(ステップS62:Yes)には、給与前払いシステム10は、そのユーザの口座から債権の金額を回収する(ステップS64)。上記の例においては、給与前払いシステム10は、ユーザの口座から、30,000円を回収する。
なお、例えば、金融機関の手数料を債権の回収時に徴収する仕組みである場合には、このステップS64における債権回収の実行の際には、ユーザが給与の前払いを受けた金額に金融機関の手数料を加算した金額を、ユーザの口座から回収する。上記の例においては、ユーザは30,000円の給与の前払いを受けているので、これに300円を加算した、30,300円をユーザの口座から回収する。
このユーザの口座から債権を回収するのと同時に、給与前払いシステム10は、不揮発性記憶装置44に記憶されている給与前払い情報から、そのユーザの情報を削除する。すなわち、このユーザが給与の前払いを受けることにより発生した債権は、給与前払い情報からユーザに関する情報を削除することにより、給与前払いシステム10から消滅する。
このステップS64を実行した後、又は、ユーザの口座に給与振り込みがなかった場合(ステップS60:No)、若しくは、ユーザの口座の残高が債権の金額以上でなかった場合(ステップS62:No)には、給与前払いシステム10は、給与前払い情報に含まれているすべてのユーザについて、この債権回収処理を行ったかどうかを判断する(ステップS66)。
給与前払い情報に含まれているすべてのユーザについて、この債権回収処理を行っていない場合(ステップS66:No)には、上述したステップS60に戻り、給与前払い情報に含まれている次のユーザに対して上述した処理を繰り返す。一方、給与前払い情報に含まれているすべてのユーザについて、この債権回収処理を行った場合(ステップS66:Yes)には、給与前払いシステム10は、この債権回収処理を終了する。
本実施形態における債権回収処理においては、ユーザが給与の前払いを受ける際に、必ずしも次の給与振り込み予定日を指定する必要は無い。なぜなら、この債権回収処理が、所定の周期で実行されており、給与の前払いを受けたユーザの口座に給与振り込みがあった場合には、給与前払いシステム10で自動的に検出され、給与の前払いにより発生した債権が、ユーザの口座から回収されるからである。このため、図6に示す給与前払いサービス画面W30の予定日表示フィールドF36は、その表示を省略することができる。
本実施形態に係る給与前払いシステム10においては、対象ユーザ抽出処理、及び、給与前払い実行処理は、上述した第1実施形態と同様である。債権回収繰り返し処理は、ユーザに次の給与振り込み予定日を入力させるのであれば、上述した第1実施形態と同様であってもよいが、ユーザに次の給与振り込み予定日を入力させないのであれば、債権回収繰り返し処理は、以下のように変形することもできる。
図12は、その変形例に係る債権回収繰り返し処理の処理内容を説明するフローチャートを示す図である。この債権回収繰り返し処理は、CPU40が不揮発性記憶装置44に記憶されている債権回収繰り返し処理プログラムを読み出して実行することにより実現される処理である。
この債権回収繰り返し処理は、所定の周期で実行される処理であり、本実施形態では、例えば、毎営業日に、金融機関における給与前払いシステム10に対する夜間処理が終了した後に実行される。これは、夜間処理により、この給与前払いシステム10のユーザの口座に対して、給与振り込みを含む入金処理が行われるため、この夜間処理の終了直後が、ユーザの口座から債権を回収するタイミングとして最も適しているからである。但し、債権回収繰り返し処理が実行される所定の周期は、これに限るものではなく、例えば、3営業日に1回の周期や、1週間に1回の周期で実行されるようにしてもよい。
また、この債権回収繰り返し処理は、必ずしも、給与前払いシステム10に必須の処理ではない。例えば、この債権回収繰り返し処理は、給与前払いシステム10とは別のシステムにより実行されるようにしてもよい。
この図12に示すように、まず、給与前払いシステム10は、本日を基準として、ユーザが給与の前払いを受けた日から所定の期間が経過しているかどうかを判断する(ステップS70)。すなわち、この債権回収繰り返し処理を実行している日が、給与の前払いを受けたある一人のユーザが給与の前払いを受けた日から、所定の期間が過ぎているか否かを判断する。ここで、所定の期間とは、任意ではあるが、例えば、3ヶ月、6ヶ月といった期間である。
上述のように、給与の前払いを受けたユーザに関する給与前払い情報は、不揮発性記憶装置44に記憶されている。また、上述した債権回収処理により給与振り込み予定日にユーザの口座から、給与の前払いにより発生した債権が回収できている場合には、そのユーザは、既に、この給与前払い情報から削除されている。このため、不揮発性記憶装置44に記憶されている給与前払い情報に残っているユーザは、給与の前払いにより発生した債権を回収していないユーザとなる。このため、本実施形態では、この給与前払い情報に残っているユーザの中から、予め定められた所定の期間を経過しても、給与の前払いにより発生した債権を回収していないユーザを抽出するのである。本実施形態における債権回収繰り返し処理では、給与前払い情報に残っているすべてのユーザに対して、後述する処理を繰り返して実行する。
ステップS70において、そのユーザに関して、給与の前払いを受けた日から所定の期間が経過していると判断した場合(ステップS70:Yes)には、給与前払いシステム10は、そのユーザの口座の残高が、給与の前払いにより発生した債権の金額以上であるかどうかを判断する(ステップS72)。上述した例では、給与の前払いにより発生した債権の金額は30,000円であるので、給与前払いシステム10は、そのユーザの口座の残高が、30,000円以上であるかどうかを判断する。
そのユーザの口座の残高が、給与の前払いにより発生した債権の金額以上である場合(ステップS72:Yes)には、給与前払いシステム10は、そのユーザの口座から債権の金額を回収する(ステップS74)。上記の例においては、給与前払いシステム10は、ユーザの口座から、30,000円を回収する。
このステップS72及びステップS74の処理から分かるように、本実施形態に係る給与前払いシステム10では、既に所定の期間を経過している場合には、そのユーザの口座に給与振り込みがなされていなくとも、その口座に債権の回収に必要な金額が残高として存在する場合には、給与の前払いにより発生した債権を回収する。
なお、上述したように、例えば、金融機関の手数料を債権の回収時に徴収する仕組みである場合には、このステップS74における債権回収の実行の際には、ユーザが給与の前払いを受けた金額に金融機関の手数料を加算した金額を、ユーザの口座から回収する。上記の例においては、ユーザは30,000円の給与の前払いを受けているので、これに300円を加算した、30,300円をユーザの口座から回収する。
このユーザの口座から債権を回収するのと同時に、給与前払いシステム10は、不揮発性記憶装置44に記憶されている給与前払い情報から、そのユーザの情報を削除する。すなわち、このユーザが給与の前払いを受けることにより発生した債権は、給与前払い情報からユーザに関する情報を削除することにより、給与前払いシステム10から消滅する。
また、手数料に関しては、ユーザの口座からの債権回収が、ステップS70で定める所定の期間までにできなかったことを理由として、増額するようにしてもよい。上記の例においては、300円の手数料を倍額にして、600円とするようにしてもよい。この場合、増額された金額である300円は、債権の回収時に、ユーザの口座から回収される。
一方、そのユーザの口座の残高が、給与の前払いにより発生した債権の金額以上でなかった場合(ステップS72:No)には、給与前払いシステム10は、そのユーザが給与の前払いを受けた日から所定の期間が経過しているか否か、及び/又は、債権の回収を所定の回数試みたか否かを判断する(ステップS76)。所定の期間とは、例えば、ステップS70で定めた所定の期間に、2ヶ月を加えた期間である。すなわち、ステップS70の所定の期間が3ヶ月である場合には、ステップS76における所定の期間は5ヶ月である。また、所定の回数とは、例えば、この債権回収繰り返し処理により、ステップS72における口座の残高が不足していると判断された回数を基準とし、その回数が100回であるといった回数である。なお、所定の期間を経過しており、且つ、口座の残高の不足という判断が所定の回数であるという、双方を条件とすることもできる。
ステップS76にて、ユーザが給与の前払いを受けた日から所定の期間が経過していると判断した場合、及び/又は、債権の回収を所定の回数試みている場合(ステップS76:Yes)には、給与前払いシステム10は、そのユーザに対する給与前払いサービスの利用を停止する(ステップS78)。本実施形態においては、例えば、給与前払いサービスの利用を停止すべきユーザのリストが、給与前払いサービス停止情報として、不揮発性記憶装置44に記憶されている。このため、ステップS78では、該当するユーザを、この給与前払いサービス停止情報に登録して追加する。
この不揮発性記憶装置44に記憶されている給与前払いサービス停止情報に登録されているユーザについては、上述した給与前払い実行処理でユーザ端末20に表示されたメインメニュー画面W10において、給与前払いサービスボタンB12が表示されないようにする。若しくは、このメインメニュー画面W10の次に表示される利用規約画面W20において、そのユーザが給与前払いサービス停止情報に登録されていることから、給与前払いサービスが利用できない旨を表示する。
ステップS74を実行した後、又は、ステップS78を実行した後は、給与前払いシステム10は、給与前払い情報に含まれているすべてのユーザについて、この債権回収繰り返し処理を行ったかどうかを判断する(ステップS80)。同様に、ステップS70で給与の前払いを受けた日からから所定の期間を経過していないと判断した場合(ステップS70:No)や、ステップS76にて所定の期間及び又は所定の回数が定められた条件を満たしていないと判断した場合(ステップS76:No)にも、給与前払い情報に含まれているすべてのユーザについて、この債権回収繰り返し処理を行ったかどうかを判断する(ステップS80)。
給与前払い情報に含まれているすべてのユーザについて、この債権回収繰り返し処理を行っていない場合(ステップS80:No)には、上述したステップS70に戻り、給与前払い情報に含まれている次のユーザに対して上述した処理を繰り返す。一方、給与前払い情報に含まれているすべてのユーザについて、この債権回収繰り返し処理を行った場合(ステップS80:Yes)には、給与前払いシステム10は、この債権回収繰り返し処理を終了する。
以上のように、本実施形態に係る給与前払いネットワークシステム1及び給与前払いシステム10によれば、図11に示す債権回収処理において、給与の前払いを受けたユーザの口座に給与振り込みがなされた場合に、その口座から、給与の前払いにより発生した債権を回収することとしたので、債権の回収の確実性をより向上させることができる。また、給与の前払いにより発生した債権の回収をより早めることができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々に変形可能である。例えば、上述した各実施形態においては、給与前払い実行処理により、ユーザから給与の前払いの要求を受け付ける前に、そのユーザに関する給与前払いサービスの利用適格性、つまり、対象ユーザ抽出処理により、ユーザの口座に対して給与振り込みが所定の期間なされているか否かを判断したが、この給与前払いサービスの利用適格性の判断は、ユーザから、給与の前払いの要求を受け付けた後に行うようにしてもよい。この場合、ユーザから給与の前払いの要求を受け付けた給与前払いシステム10は、そのユーザについて、改めて、口座に対して給与振り込みが所定の期間なされているか否かを判断して、給与前払いサービスの利用適格性を判断するようにすればよい。
また、ユーザに関する給与前払いサービスの利用適格性を判断するにあたっては、ユーザの勤務先から金融機関が給与支払実績データの提供を受け、この提供された給与支払実績データに含まれる過去の給与振り込み実績に基づいて、ユーザの給与前払いサービスの利用適格性を判断するようにしてもよい。この場合、例えば、上述した対象ユーザ抽出処理は、提供された給与支払実績データに基づいて、ユーザが給与振り込みを所定の期間受けていると判断できる場合には、そのユーザの口座に対して給与振り込みが所定の期間なされていたとみなすようにしてもよい。このようにすることにより、他の金融機関に開設された口座への給与の振り込み実績を利用して、ユーザの給与前払いサービスの利用適格性を判断することができる。
また、上述した実施形態においては、給与前払いサービスを利用する手数料をユーザから徴収するようにしたが、金融機関の利用者の利便性向上を目的とするのであれば、この手数料は無料であってもよい。また、この手数料をユーザが負担するのではなく、ユーザが勤務している企業、つまり、給与振り込みをする企業が負担するようにしてもよい。この場合、企業としては、この給与前払いサービスを従業員の福利厚生の一環としてとらえ、例えば、毎月5万円というような利用料を金融機関に固定的に支払うようにすればよい。この場合、給与前払いシステム10は、この給与前払いサービスを利用するユーザから、手数料を徴収する必要はなくなる。
また、上述した実施形態においては、金融機関の手数料には消費税等の諸税が含まれた金額であること、つまり内税であることを前提としている。このため、上述したように、給与の前払いを受ける金額が30,000円であり、手数料が300円である場合には、給与の前払いを受けたユーザが受け取るべき金額として、ユーザの口座に振り込まれる金額は、29,700円となった。一方で、金融機関の手数料には消費税等の諸税が含まれていない金額である場合、つまり外税である場合には、金融機関は手数料とは別に諸税をユーザから徴収する必要がある。
例えば、手数料が300円、消費税等の諸税が30円であったとすると、給与の前払い金額から手数料と諸税を差し引いた金額である29,670円が、給与の前払いを受けたユーザが受け取るべき金額として、ユーザの口座に振り込まれることとなる。或いは、ユーザの口座に給与の前払いを受ける金額30,000円を、給与の前払いを受けたユーザが受け取るべき金額として、そのままユーザの口座に振り込む場合には、その債権の回収時に、給与の前払いを受けた金額に手数料と諸税を加算した金額である30,330円を回収することとなる。