JP6869639B2 - 熱交換器及びヒートポンプシステム - Google Patents
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Description
ヒートポンプシステムに組み込まれた熱交換器では、被加熱流体を高温に加熱するために、熱媒体として熱伝導率が高い超臨界流体を用いる場合がある。
例えば、特許文献1には、超臨界状態の熱媒体を用いて大きい温度差で外部流体を加熱する熱交換器を備えるヒートポンプシステムが開示されている。
超臨界流体を熱媒体とする熱交換器であって、
被加熱流体が導入されるハウジングと、
前記ハウジングの内部に並列に設けられ、前記超臨界流体が流れる複数の流路と、
前記複数の流路の上流端に連通する入口流路と、
前記複数の流路の下流端に連通する出口流路と、
前記複数の流路の各々に前記超臨界流体の流れ方向に沿って設けられる1段又は複数段のオリフィスと、
を備える。
上記(1)の構成によれば、超臨界流体が流れる上記複数の流路の各々に上記オリフィスを備えることで、複数の流路では超臨界流体の圧力損失が大きくなるため、他の要因による各流路間の圧力損失の差を相殺できる。これによって、複数の流路間で起こる偏流を抑制できるため、各流路間で超臨界流体の流量差をなくし、熱交換器全体の熱交換性能の低下を抑制できる。
また、超臨界流体を熱媒体として用いることで、被加熱流体を加熱する過程で、凝縮過程が存在しないため、放熱に伴い連続的な温度変化をすることから、大温度差加熱(例えば、100℃→200℃)においては、エクセルギ損失が小さい高効率の加熱を行うことができる。
前記複数の流路は前記超臨界流体の流れ方向に沿って波形に形成される。
上記(2)の構成によれば、超臨界流体の流路を波形に形成することで、各流路を流れる超臨界流体の圧力損失をさらに増加できる。そのため、複数の流路間の圧力損失差をさらに相殺できるため、複数の流路間の偏流をさらに効果的に抑制できる。
前記複数の流路の各々は前記被加熱流体の流れ方向に沿って延在すると共に、前記複数の流路は前記被加熱流体の流れ方向と交差する方向に並列に配置され、
前記入口流路及び前記出口流路は前記複数の流路が延在する方向と交差する方向に延在し、
前記入口流路の少なくとも両端で前記入口流路に連通する熱媒体供給路と、
前記出口流路の少なくとも両端で前記出口流路に連通する熱媒体排出路と、
をさらに備える。
上記(3)の構成によれば、上記熱媒体供給路は入口流路の少なくとも両端に連通することで、入口流路の延在方向において、熱媒体供給路から各流路までの距離を平均化でき、各流路の入口までの熱媒体(超臨界流体)の圧力損失の差を低減できる。同様に、上記熱媒体排出路は出口流路の少なくとも両端に連通することで、出口流路の延在方向において、熱媒体供給路から各流路までの距離を平均化でき、各流路の出口から熱媒体排出路に至る熱媒体の圧力損失の差を低減できる。
これによって、入口流路から出口流路に至るまでの複数の流路間の圧力損失の差をさらに低減できるので、複数の流路を流れる熱媒体の偏流を効果的に抑制できる。
前記複数の流路は、
流路を形成するための孔及び前記オリフィスを形成するための溝が形成された第1の板状体と、
前記第1の板状体の一方の面に接合され、前記孔の一方の開口を塞ぐ第2の板状体と、
前記第1の板状体の他方の面に接合され、前記孔の他方の開口を塞ぐと共に、前記溝の開口を塞ぐ第3の板状体と、
で形成される。
上記(4)の構成によれば、上記複数の流路を上記第1〜第3の板状体を重ね合わせることで、簡易かつ低コストに形成できる。また、この扁平で簡素な板状体を被加熱流体の流路に間隔を置いて並べることで、多数の流路を被加熱流体に面して配置できる。このように、多数の流路を形成できることで、熱交換器の熱交換性能を向上できる。
前記孔は両面エッチングで形成される。
上記(5)の構成によれば、上記孔を両面エッチングで形成することで、微細流路を正確に形成できる。
前記溝は片面エッチングで形成される。
上記(6)の構成によれば、上記溝を片面エッチングで形成することで、簡単かつ正確にオリフィスを形成できる。また、この溝によって流路にオリフィスを形成し、このオリフィスで流路を支持することで、流路の強度を増すことができ、これによって、高圧の超臨界流体に対する耐久性を向上できる。
前記複数の流路は、断面の直径が1mm以下の微細流路である。
上記(7)の構成によれば、上記複数の流路を断面の直径が1mm以下の所謂「マイクロチャンネル」と称される微細流路であるため、超臨界流体の流路を狭いスペースに多数列形成できるため、熱交換器全体としての熱交換量を増加できると共に、熱交換器をコンパクト化でき、かつ熱媒体の保有量を低減できる。さらに、複数の流路を微細流路とすることで、高圧の超臨界流体に対する耐久性を向上できる。
また、オリフィスを微細流路に形成することで、圧力損失増加効果を向上できる。
熱媒体が循環する循環路と、
前記循環路に設けられたヒートポンプサイクル構成機器と、
を備え、
前記ヒートポンプサイクル構成機器は、
前記熱媒体を圧縮して高温高圧の超臨界流体とするための圧縮機と、
前記超臨界流体を熱媒体とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の熱交換器と、
前記熱交換器で熱交換後の前記熱媒体を減圧させるための膨張部と、
前記膨張部で減圧された前記熱媒体と熱源媒体とを熱交換して気化させるための蒸発器と、
を備える。
上記(8)の構成によれば、上記熱交換器において、超臨界流体が流れる複数の流路の各々に上記オリフィスを備えることで、各流路を流れる超臨界流体の圧力損失を増加させ、これによって、各流路間で起こる偏流を抑制でき、熱交換器全体の熱交換性能の低下を抑制できる。
また、超臨界流体を熱媒体として用いることで、被加熱流体を加熱する過程で、凝縮過程が存在しないため、放熱に伴い連続的な温度変化をすることから、大温度差加熱においては、エクセルギ損失が小さい高効率の加熱を行うことができる。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
図4及び図5に示すように、ハウジング12の内部に熱媒体として超臨界流体が流れる複数の流路14が互いに並列に設けられる。また、複数の流路14の上流端に連通する入口流路16と、複数の流路14の下流端に連通する出口流路18とを備える。さらに、複数の流路14の各々に超臨界流体の流れ方向に沿って設けられる1段又は複数段のオリフィス20を備える。
Q=CA・ΔP1/2 (i)
ここで、CAは流量常数であり、ΔPは圧力損失である。
上記構成によれば、複数の流路14の各々にオリフィス20を備えることで、複数の流路14を流れる超臨界流体の圧力損失が大きくなるため、他の要因による各流路間の圧力損失の差を相殺できる。これによって、複数の流路14間で起こる偏流を抑制できるため、各流路間で超臨界流体の流量差をなくし、熱交換器全体の熱交換性能の低下を抑制できる。
また、超臨界流体を熱媒体として用いることで、被加熱流体Fhを加熱する過程で、凝縮過程が存在しないため、放熱に伴い連続的な温度変化をすることから、大温度差加熱(例えば、100℃→200℃)においては、エクセルギ損失が小さい高効率の加熱を行うことができる。
このように、超臨界流体Fsの流路14を波形に形成することで、各流路を流れる超臨界流体Fsの圧力損失をさらに増加できる。これによって、複数の流路14間の圧力損失差をさらに相殺でき、複数の流路14間の偏流をさらに効果的に抑制できる。
図示した実施形態では、被加熱流体Fcの流れ方向と超臨界流体Fsの流れ方向とは互いに交流となるように設定される。これによって、熱交換する被加熱流体Fcと超臨界流体Fsとの熱交換時の温度差を大きくできるので、熱交換量を増加できる。
そして、図4に示すように、超臨界流体Fsの供給路22が入口流路16の少なくとも両端で入口流路16に連通し、超臨界流体Fsの排出路24が出口流路18の少なくとも両端で出口流路18に連通している。
このように、供給路22が入口流路16の少なくとも両端に連通することで、入口流路16の延在方向において、供給路22から各流路14までの距離を平均化でき、入口流路16から各流路14の入口に至るまでの超臨界流体の圧力損失の差を低減できる。同様に、排出路24は出口流路18の少なくとも両端に連通することで、出口流路18の延在方向において、各流路14の出口から排出路24の入口に至るまでの超臨界流体の圧力損失の差を低減できる。
これによって、複数の流路14の各々を流れる超臨界流体の圧力損失の差を低減できるので、複数の流路14間の超臨界流体の偏流を抑制できる。
また、図1、図2及び図4に示すように、供給路22が入口流路16の両端2か所で入口流路16に連通し、排出路24は出口流路18の両端2か所で出口流路18に連通している。
供給路22は被加熱流体Fhの流れ方向上流端のハウジング12の上面で熱交換器幅方向(被加熱流体Fhの流路の幅方向)両端に設けられた供給部26に開口すると共に上下方向に延在し、上下方向に複数存在する入口流路16の各々に連通する。
排出路24は被加熱流体Fcの流れ方向下流端のハウジング12の上面で熱交換器幅方向両端に設けられた排出部28に開口すると共に上下方向に延在し、上下方向に複数存在する出口流路18の各々に連通する。
第1の板状体30は、図7及び図8に示すように、超臨界流体が流れる複数の流路14を形成するための孔(貫通孔)36及びオリフィス20を形成するための溝38が形成されている。
第2の板状体32は、第1の板状体30の一方の面に接合され、孔36の一方の開口を塞ぐ。第3の板状体34は第1の板状体30の他方の面に接合され、孔36の他方の開口を塞ぐと共に、溝38の開口を塞ぐ。
かかる構成によれば、複数の流路14を第1〜第3の板状体30,32及び34を重ね合わせた偏平な積層体40で低コストに構成できる。また、この簡素な積層体40を被加熱流体Fcの流路に間隔を置いて並べることで、多数の流路14を配置できるため、熱交換器10の熱交換性能を向上できる。
また、多数の積層体40が上下方向に間隔を置いて配置され、各積層体40の間に波形の放熱フィン42が介装されている。第1〜第3の板状体30,32及び34は、例えば、互いに拡散接合で接合され、放熱フィン42の両端は上下に位置する積層体40に、例えば、ロウ付けで接合される。
各積層体40の間には、熱交換器10の幅方向両端にスペーサ44が介装され、図2に示すように、ハウジング12の側面はスペーサ44で密閉されている。
これによって、超臨界流体Fsが流れる流路14を多数の微細流路として正確に形成できる。
これによって、流路14を多数の微細流路として形成したとき、オリフィス20の形成が容易になり、また、オリフィス20を正確に形成できる。また、溝38によって流路14にオリフィス20を形成し、このオリフィス20で流路14を支持することで、流路14の強度を増すことができ、これによって、高圧の超臨界流体Fsに対する耐久性を向上できる。
このように、流路14を断面の直径が1mm以下の所謂「マイクロチャンネル」と称される微細流路で形成するため、流路14を狭いスペースに多数列形成でき、これによって、熱交換器全体としての熱交換量を増加できる。さらに、複数の流路を微細流路とすることで、高圧の超臨界流体Fsに対する耐久性を向上できる。
また、オリフィス20を同様の微細流路で構成することで、圧力損失増加効果を向上できる。
この比較例では、入口流路16及び出口流路18において、熱交換器幅方向で圧力勾配が発生し、各流路14間で圧力損失差が生じる。また、流路14における超臨界流体の圧力損失が小さいため、各流路14間の圧力損失差が相殺されない。そのため、各流路14の超臨界流体Fsの流量に大きな差が生じ、偏流が発生する。この偏流によって熱交換器10の出口で被加熱流体Fhの温度ムラが発生し、熱交換性能が低下するおそれがある。
この実施形態では、流路14における圧力損失が大きくなっているため、入口流路16と出口流路18との間で各流路14間の圧力損失差は、図9(A)と比べて減殺されている。従って、各流路14間での偏流は抑制され、熱交換器10の出口で温度ムラは発生しにくくなっている。
この実施形態では、入口流路16及び出口流路18における各流路14間の圧力損失差が減少している。従って、各流路14間における入口流路16から出口流路18までの圧力損失の差は、図9(B)に示す実施形態よりもさらに相殺される。従って、各流路14間の偏流の発生は起こりにくくなっている。
循環路52に設けられたヒートポンプサイクル構成機器は、圧縮機54、上記構成の熱交換器10と、膨張部56と、蒸発器58とを含む。圧縮機54は熱交換媒体を圧縮して高温高圧の超臨界流体とする。超臨界流体となった熱媒体は熱交換器10で被加熱流体を加熱する。被加熱流体を加熱した後、熱媒体は膨張部56で減圧され、その後、蒸発器58で熱源流体Whと熱交換して蒸発する。
かかる構成によれば、熱交換器10は、超臨界流体となった熱媒体が流れる複数の流路14の各々にオリフィス20を備えることで、複数の流路14間の圧力損失の差を相殺できる。これによって、複数の流路14間で起こる偏流を抑制できるため、熱交換器10の出口温度ムラを抑制し、熱交換性能の低下を抑制できる。
また、超臨界流体を熱媒体として用いることで、被加熱流体Fhを加熱する過程で、凝縮過程が存在しないため、放熱に伴い連続的な温度変化をすることから、大温度差加熱においては、エクセルギ損失が小さい高効率の加熱を行うことができる。
図11は、この実施形態に係るヒートポンプシステムのモリエル線図を示す。図中のa点〜f点は図10中に付されたa〜fに対応し、それらの箇所の状態量を示す。図中のΔhは熱媒体熱交換器60で熱媒体同士が熱交換するエンタルピ量を示している。
熱媒体として、例えば、NH3,CO2、代替フロン、HC系(例えばノルマルブタン)等、通常ヒートポンプ、冷凍機等に用いられる熱媒体を使用できる。
この実施形態によれば、80℃前後の比較的低温の熱源水を用いて、100℃の空気を180℃まで加熱する大温度差加熱が可能になる。
12 ハウジング
14 流路
16 入口流路
18 出口流路
20 オリフィス
22 供給路
24 排出路
26 供給部
28 排出部
30 第1の板状体
32 第2の板状体
34 第3の板状体
36 孔
38 溝
40 積層体
42 放熱フィン
44 スペーサ
50 ヒートポンプシステム
52 循環路
54 圧縮機
56 膨張部
58 蒸発器
60 熱媒体熱交換器
62 モータ
Fh 被加熱流体
Fs 超臨界流体
Wh 熱源流体
ΔP1、ΔP2、ΔP3 圧力損失
Claims (7)
- 超臨界流体を熱媒体とする熱交換器であって、
被加熱流体が導入されるハウジングと、
前記ハウジングの内部に並列に設けられ、前記超臨界流体が流れる複数の流路と、
前記複数の流路の上流端に連通する入口流路と、
前記複数の流路の下流端に連通する出口流路と、
前記複数の流路の各々に前記超臨界流体の流れ方向に沿って設けられる1段又は複数段のオリフィスと、
を備え、
前記複数の流路は、
前記流路の前記オリフィス以外の部位を形成するための孔及び前記オリフィスを形成するための溝が形成された第1の板状体と、
前記第1の板状体の一方の面に接合され、前記孔の一方の開口を塞ぐ第2の板状体と、
前記第1の板状体の他方の面に接合され、前記孔の他方の開口を塞ぐと共に、前記溝の開口を塞ぐ第3の板状体と、
で形成され、
前記複数の流路が並列配置された平面に直交する方向における各々の前記流路の寸法が、前記オリフィスにおいて、前記オリフィス以外の部位よりも小さくなるように、前記第1の板状体における前記溝の深さは前記孔の貫通長さよりも浅い
ことを特徴とする熱交換器。 - 前記複数の流路は前記超臨界流体の流れ方向に沿って波形に形成されることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
- 前記複数の流路は、
前記流路の前記オリフィス以外の部位を形成するための孔及び前記オリフィスを形成するための溝が形成された第1の板状体と、
前記第1の板状体の一方の面に接合され、前記孔の一方の開口を塞ぐ第2の板状体と、
前記第1の板状体の他方の面に接合され、前記孔の他方の開口を塞ぐと共に、前記溝の開口を塞ぐ第3の板状体と、
で形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱交換器。 - 前記孔は両面エッチングで形成されることを特徴とする請求項3に記載の熱交換器。
- 前記溝は片面エッチングで形成されることを特徴とする請求項3又は4に記載の熱交換器。
- 前記複数の流路は、断面の直径が1mm以下の微細流路であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の熱交換器。
- 熱媒体が循環する循環路と、
前記循環路に設けられたヒートポンプサイクル構成機器と、
を備え、
前記ヒートポンプサイクル構成機器は、
前記熱媒体を圧縮して高温高圧の超臨界流体とするための圧縮機と、
前記超臨界流体を熱媒体とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の熱交換器と、
前記熱交換器で熱交換後の前記熱媒体を減圧させるための膨張部と、
前記膨張部で減圧された前記熱媒体と熱源媒体とを熱交換して気化させるための蒸発器と、
を備えることを特徴とするヒートポンプシステム。
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