JP6867574B2 - リチウムイオン電池およびリチウムイオンキャパシタ用負極活物質 - Google Patents
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Description
電気化学系蓄電デバイスには、高いエネルギー密度を実現できるリチウムイオン電池などの二次電池と、高い入出力密度を実現できる電気二重層キャパシタなどのキャパシタがある。また、二次電池とキャパシタの中間的な性能を有するリチウムイオンキャパシタがある。特に、リチウムイオン電池およびリチウムイオンキャパシタは、リチウムイオンを負極に吸蔵させ、負極の電極電位をリチウムの標準電極電位(−3.045V)近くまで低下させることで、正極と負極間の電位差(セル電圧)を拡大し、高いエネルギー密度を実現する。
現在の一般的なリチウムイオン電池は、負極活物質にグラファイトやハードカーボンなどの炭素系材料、正極活物質にコバルト酸リチウムやマンガン酸リチウムなどのリチウム遷移金属酸化物が用いられる。また、電解質にはヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)といったリチウム塩を、溶媒には炭酸エチレンや炭酸ジエチルなどの混合有機溶媒を用いた系が電解液として広く用いられている。
現状、その用途に対応する負極活物質としてハードカーボン系が広く用いられている。しかし、ハードカーボン系活物質はリチウムの放出に伴い、徐々にその電位を増加させていく。その結果、正極との電位差は縮小し、電池セルまたはキャパシタセルの起電力は徐々に低下していく。同じ充放電電流レベルであれば、電池セルおよびキャパシタセルから貯蔵放出できるエネルギーは、高い起電力の状態において大きい。従って、ハードカーボンにリチウムが十分に吸蔵されている状態での充放電が、エネルギーを最も効率的に貯蔵放出する。一方で、最大吸蔵容量付近でのリチウムイオンの吸蔵放出は、負極におけるリチウム金属のプレーティング(析出)、さらには活物質、バインダおよび集電体の構造・化学変化を誘導しやすい。すなわち、セパレータによって隔てられた正負極の短絡や電極の構造的劣化および充放電容量の低下など、電池およびキャパシタの性能低下を加速させるデメリットもある。
もみ殻は農業廃棄物として国内で毎年約200万トン弱排出される。畜産や園芸資材として利用用途はあるものの、排出量の約4分の1に明確な利用用途がない。ケイ酸植物である稲は、土壌から水溶性ケイ酸を取り込み、もみ殻に非晶質の形態で集積させる。もみ殻のケイ酸含有率はおよそ20質量%である。もみ殻中のケイ酸は、その化学的および構造的な安定性のため、もみ殻を有機肥料源、燃料源および炭素源として扱いにくいものとする。一方で、もみ殻は集約的に収集されることが多く、その収集コストは低い。それゆえ、もみ殻を原料とすることで、低廉な価格の負極活物質を実現できる。
(A)最大吸蔵容量までリチウムイオンを吸蔵させるプレドープ処理を行ったとしても、リチウム金属のプレーティング(析出)および特性変化を誘導しにくい。
(B)上記プレドープ処理を行った後、リチウムイオンの吸蔵放出容量が大きい。
(C)上記プレドープ処理を行った後、その最大吸蔵容量付近でのリチウムイオン吸蔵放出におけるレート特性に優れている。
(D)同様に、最大吸蔵容量付近でのリチウムイオン吸蔵放出におけるサイクル特性に優れている。
すなわち、上記本発明の目的は、下記により達成される
1.非晶質炭素と非晶質ケイ酸から構成される混合系であり、それぞれ非晶質炭素の含有率が60〜80質量%、非晶質ケイ酸の含有率が40〜20質量%、さらに、BET比表面積が70〜120m2/g、メソ・マクロ孔比表面積が50〜100m2/g、メソ・マクロ孔容積が0.10〜0.18cm3/gであることを特徴とする負極活物質。
2.もみ殻由来である前記1の負極活物質。
3.リチウムイオンのプレドープ処理がなされた前記1又は2の負極活物質。
4.もみ殻を800℃以下で一次炭化し、その炭化物から非晶質ケイ酸の部分的除去を行い、その後、800〜1200℃において二次炭化を行うことを特徴とする前記2又は3の負極活物質の製造法。
5.リチウムイオン含有有機系電解液中において、前記1又は2の負極活物質とリチウム金属とを短絡することによる、リチウムイオンのプレドープ処理がなされた負極活物質の製造法。
6.負極が、前記1、2又は3の負極活物質を有してなり、リチウムイオンの吸蔵放出を行うことで繰り返し充放電を実現する電気化学系蓄電デバイス。
7.電気化学系蓄電デバイスが、リチウムイオン電池である前記6の電気化学系蓄電デバイス。
8.電気化学系蓄電デバイスが、リチウムイオンキャパシタである前記6の電気化学系蓄電デバイス。
本発明の負極活物質は、非晶質炭素と非晶質ケイ酸から構成される混合系である。非晶質炭素の含有率は60〜80質量%であり、非晶質ケイ素の含有率は40〜20質量%であり、好ましくは、それぞれ65〜75質量%と35〜25質量%であり、さらに好ましくは、それぞれ68〜72質量%と32〜28質量%である。非晶質炭素の含有率は80質量%を超え、非晶質ケイ酸の含有率が20質量%未満である場合、もしくは、非晶質炭素の含有率は60質量%未満であり、非晶質ケイ酸の含有率が40質量%を超える場合、活物質のリチウムイオン吸蔵放出容量、レート特性またはサイクル特性、もしくそれら複数の性能が低下する。また、負極活物質のBET比表面積は70〜120m2/gであり、好ましくは80〜110m2/g、さらに好ましくは90〜100m2/gである。負極活物質のBET比表面積が70m2/g未満もしくは120m2/gを超える場合、活物質のリチウムイオン吸蔵放出容量、レート特性またはサイクル特性、もしくそれら複数の性能が低下する。また、メソ・マクロ孔比表面積は50〜100m2/g、かつ、メソ・マクロ孔容積は0.10〜0.18cm3/gであり、好ましくは、それぞれ60〜90m2/g、かつ、0.13〜0.17cm3/g、さらに好ましくは、それぞれ70〜80m2/g、かつ、0.15〜0.16cm3/gである。メソ・マクロ孔比表面積が50m2/g未満、かつ、メソ・マクロ孔容積は0.10m2/g未満の場合、もしくは、メソ・マクロ孔比表面積が100m2/gを超え、かつ、メソ・マクロ孔容積は0.18m2/gを超える場合、活物質のリチウムイオン吸蔵放出容量、レート特性またはサイクル特性、もしくそれら複数の性能が低下する。
原料としては、もみ殻が好ましく用いられる。前述のように、もみ殻は天然に約20質量%の結晶性の低いケイ酸を含有し、残りはセルロース、ヘミセルロース、リグニンといった植物性有機物で構成され、本発明の非晶質炭素と非晶質ケイ素の混合物前駆体として好ましい。
はじめに、もみ殻を400〜800℃、好ましくは500〜700℃、さらに好ましくは550〜650℃で一次炭化をする。洗浄等の前処理は特に必要としない。一次炭化は目標温度に到達してから10分〜3時間、好ましくは30分から2時間、さらに好ましくは45分から1時間15分、目標温度を維持することで行う。炭化雰囲気はヘリウムガス中、窒素ガス中、またはアルゴンガス中など不活性ガス中であれば良いが、安価な窒素ガスの利用が望ましい。
一次炭化したもみ殻炭は冷却後、必要に応じて蒸留水で洗浄処理を施した後、ケイ酸溶脱の条件を調整することで、所望量の非晶質ケイ酸を一次炭化物中から除去する。なお、ケイ酸溶脱は水酸化ナトリウム水溶液のようなアルカリ性水溶液やふっ酸など酸性水溶液を用いて行う。
所望量のケイ酸が除去されたもみ殻一次炭化物は、続いて800〜1200℃、好ましくは900〜1100℃、さらに好ましくは950〜1050℃で二次炭化を行う。二次炭化は目標温度に到達してから10分〜3時間、好ましくは30分から2時間、さらに好ましくは45分から1時間15分、目標温度を維持することで行う。以上の工程を経ることで、本発明の負極活物質を得ることができる。
本発明においては、活物質にあらかじめリチウムイオンをプレドープしておくことが望ましい。リチウムイオンのプレドープは、主として、リチウムイオンを含有する電解液中において、活物質とリチウム金属と直接接触させるか、活物質が塗工された集電極とリチウム金属を電気的に接続する方法がある。後者の方法は、活物質が塗工された集電極(正極)、リチウム金属(負極)、リチウムイオン含有有機系電解液、セパレータを含む半電池セルを組み立てた後、プレドープ処理を容易に実施できる上、プレドープ量の制御および評価が容易であるため、好ましい。その際、十分なリチウムイオンを活物質にプレドープするため、半電池セルの正極と負極を6〜48時間、好ましくは12〜36時間、さらに好ましくは18〜30時間短絡させる。
[活物質および電極の物性評価]
活物質のケイ酸含有率は、示差熱天秤(株式会社リガク、Thermo plus EVO TG8120)を用いて、約10mgの活物質を空気中で燃焼させることで求めた。100℃で3時間以上乾燥させた活物質を空気流動雰囲気中(500mL/分)で、室温から850℃まで速度10℃/分で昇温した。すべての活物質は600〜850℃の温度域では、ほぼ一定の質量を示していたこと、全炭素分の放出と活物質の灰化を確認した。140℃における活物質の質量を100%として、850℃における活物質の質量残存率から、ケイ酸含有率を算出した。
活物質の細孔特性は、ガス吸着量測定装置(Quantachrome Instruments社、Autosorb−3B)を用いて、窒素ガス吸着法により評価した。77Kにおける吸着平衡圧と飽和蒸気圧の比である相対圧と窒素ガス吸着量の関係を示す窒素吸脱着等温線を求め、BET(Brunauer・Emmett・Teller)比表面積を相対圧0.1から0.3の範囲から、全細孔容積を相対圧0.98において算出した。同時にt−plot法を用いて、マイクロ孔比表面積と容積およびメソ・マクロ孔比表面積を算出した。メソ・マクロ孔容積は全細孔容積からマイクロ孔容積を減じることで算出した。
X線回折装置(スペクトリス株式会社、X’pert Pro、CuKα)を使用して、活物質の結晶性を評価した。X線の出力は45kVおよび40mAとした。
導電助剤として用いるアセチレンブラック(電気化学工業株式会社)と活物質と空気中120℃で5時間以上乾燥させた。活物質:アセチレンブラック:ポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ、KFポリマーW#9100)=8:1:1(質量比)で混合し、N−メチルピロリドン(東京化成工業株式会社)を適量加えて、自転・公転ミキサー(株式会社シンキー、あわとり錬太郎AR−100)を用いて10分間撹拌し、スラリーを調製した。なお、ポリフッ化ビニリデンは結着剤(バインダ)として機能する。このスラリーを厚さ20μmの銅箔にアプケータを用いて塗工し、空気中100℃で5時間以上乾燥させた後、直径15mmで打ち抜いた。そして、それを電極とした。直径15mmで打ち抜かれた電極に対して、140℃の脱気雰囲気下において、5時間以上乾燥処理を行った。その後、室温まで冷却した後、空気中において、電極の厚さをマイクロメータで、質量を電子天秤により測定した。直径15mmの電極の厚さおよび質量から銅箔自体の厚さおよび質量をそれぞれ減算することで、塗工厚および活物質質量を算出した。
製造した電極の表面部は、走査型電子顕微鏡(株式会社キーエンス、VE−8800)を用いて観察した。同時に電子顕微鏡に設置されたエネルギー分散型X線分析装置(Oxford社、INCA Energy250)を用いて、電極表面の組成分析を行った。電子顕微鏡倍率を500倍、焦点距離を30mmと一定の条件で、組成分析を行った。
活物質のリチウムイオン吸蔵放出特性は、活物質を含む電極とリチウム金属から構成される半電池セル、または、正極に活性炭を含む電極、負極に活物質を含む電極、参照極にリチウム金属を用いた3極式のリチウムイオンキャパシタセルにより評価した。
半電池セルによる評価においては、活物質を含む電極が正極となり、リチウム金属が負極となる。リチウム金属には、本城金属株式会社製の直径が15mm、厚さが0.2mmのディスク状のものを用いた。2極式ステンレス製セル(宝泉株式会社、フラットセル)の底部にリチウム金属を設置し、次に、セパレータ、さらに再度140℃で5時間以上脱気処理を施した活物質を含む電極を配置した。なお、セパレータには直径23mmに切り抜いたポリプロピレン製多孔性セパレータ(Celgard社、#2500)を用いた。電解液として1:1の容積比で混合したエチレンカーボネートとジエチルカーボネートを溶媒に、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を1mol/Lで添加した溶液(キシダ化学株式会社)を1mL注いだ後、セルを封口した。なお、セル組み立ては、純アルゴンガスが封入されたグローブボックス(グローブボックスジャパン株式会社、GBJF080R)内で行った。なお、すべての構成部材は十分に乾燥させたものを使用した。なお、セル組み立て後の半電池のセル電圧は3Vをやや超える程度であった。その後、正極と負極を24時間短絡し、活物質に対する十分なリチウムイオンのプレドープ処理を行った。
(i)リチウムイオンキャパシタの正極の製造
約2500m2/gのBET比表面積を有する活性炭(クラレケミカルズ株式会社、RP25)の他、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業株式会社)、バインダとしてスチレン・ブタジエンゴム(JSR株式会社、TPD2001)、分散剤としてカルボキシメチルセルロースナトリム(セロゲン7A、第一工業製薬株式会社)を用いた。活性炭とアセチレンブラックを空気中120℃で5時間以上乾燥させた。活性炭:アセチレンブラック:スチレン・ブタジエンゴム:カルボキシメチルセルロースナトリウム=8:1:0.5:0.5(質量比)の割合で混合し、蒸留水を適量加えて、上述の自転・公転ミキサーを用いて10分間撹拌し、スラリーを調製した。アプリケータを用いて、このスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔上に塗工し、空気中100℃で5時間以上乾燥させた。その後、直径15mmで打ち抜き、140℃の脱気雰囲気下において、5時間以上乾燥処理を行った。その後、室温まで冷却した後、空気中において、電極の厚さをマイクロメータで、質量を電子天秤により測定した。直径15mmの電極の厚さおよび質量からアルミニウム箔自体の厚さおよび質量をそれぞれ減算することで、塗工厚および活性炭質量を算出した。
リチウムイオンキャパシタの正極では、電解液中イオンの吸脱着という非ファラデー反応により電荷の授受が行われる。従って、活性炭を含む正極自体の容量評価の必要がある。上述の半電池セルの組み立てと同じ方法で2極式セルを組み立て、活性炭を含む正極自体のイオン吸脱着特性を評価した。なお、正極にはプレドープ処理は行わない。
上述の半電池セルの組み立ての方法とほぼ同じであるが、セル底部にもみ殻由来活物質を含む負極、次に直径23mmのポリプロピレン製多孔性セパレータ、そして、直径が15mm、厚さが0.2mmのディスク状リチウム金属と、配置の順を変えた。使用したセルは同じく、2極式のステンレス製のものである。その後、正極と負極を24時間短絡し、活物質に対する十分なリチウムイオンのプレドープ処理を行った。
短絡した正極と負極間を開放状態にした後、半電池セルを開口した。電解液中に浸漬されているリチウム金属のみを取り出し、セパレータおよびリチウムイオンがプレドープされた負極は、電解液中に絶えず浸漬させた。活性炭を含む正極を再度140℃で5時間以上脱気し、リチウム金属が配置された場所に配置した。また、上述のディスク状リチウム金属を半分に切断し、折り畳んだものを参照極として配置した。3極式ステンレス製セル(宝泉株式会社、3極式セル)のセルふた部を使用して、セルを封口した。なお、すべての構成部材は十分に乾燥させ、セル組み立ては純アルゴンガスが封入されたグローブボックス内で行った。
(ア)活物質を含む電極の半電池セルでの充放電試験
半電池セルの24時間のプレドープ処理の後、一定の電流密度0.1mA/cm2(実電流:0.1767mA、電極断面積:1.767cm2)において、リチウム金属に対する電極の電位を0.002から3Vvs.Li/Li+まで変化させ、すなわちセル電圧を0.002から3Vに変化させ、プレドープ後のリチウムイオンの放出容量を求めた。さらに、同じ電流密度において、電極の電位を3から0.002Vvs.Li/Li+に変化させ、リチウムイオンの吸蔵容量を、続いて、0.002から3Vvs.Li/Li+に変化させ、リチウムイオンの放出容量を求めた。
その後、電極の電位範囲を0、002から1Vvs.Li/Li+の範囲に定めて、一定の電流密度0.1mA/cm2で5サイクル、リチウムイオンの吸蔵放出を行った。続いて0.2mA/cm2で5サイクル、さらに0.5mA/cm2で10サイクル、1mA/cm2で10サイクル、2mA/cm2で25サイクル、5mA/cm2で50サイクル、10mA/cm2で100サイクル、20mA/cm2で100サイクル行い、電極のリチウムイオン吸蔵放出容量の電流密度依存性を評価した。
(イ)リチウムイオンキャパシタ正極の半電池セルでの充放電試験
リチウムイオンキャパシタ正極とリチウム金属の半電池セルにおいて、正極の電位(リチウム金属に対する正極の電位)を2から4Vvs.Li/Li+の範囲に定めて、すなわちセル電圧を2から4Vの範囲に定めて、一定の電流密度0.1mA/cm2で5サイクル、続いて0.2mA/cm2で5サイクル、さらに0.5mA/cm2で10サイクル、1mA/cm2で10サイクル、2mA/cm2で25サイクル、5mA/cm2で50サイクル、10mA/cm2で100サイクル、20mA/cm2で100サイクルの充放電を行った。外部からの電界印加がない状態では、正極電位は約3Vvs.Li/Li+であるので、概ね、3から4Vvs.Li/Li+においてPF6 −の吸着が、4から3Vvs.Li/Li+においてPF6 −の脱着が、3から2Vvs.Li/Li+においてLi+の吸着が、2から3Vvs.Li/Li+においてLi+の脱着が生じる。
リチウムイオンキャパシタセルを組み立て後、1時間程度放置し、セル電圧(正負極間の電位差)、正極電位および負極電位を計測した。そして、セル電圧を2から4Vの範囲で、掃引速度100、10、1mV/sでそれぞれ3サイクルずつ充放電を行った。そして、同じセル電圧範囲において、一定の電流密度0.1mA/cm2で5サイクル、続いて0.2mA/cm2で5サイクル、さらに0.5mA/cm2で10サイクル、1mA/cm2で10サイクル、2mA/cm2で25サイクル、5mA/cm2で50サイクル、10mA/cm2で100サイクル、20mA/cm2で100サイクルの充放電を行った。正極自体はすべて共通のものを使用しているため、リチウムイオンキャパシタの負極のレート特性が評価できる。その後、同じセル電圧範囲において、電流密度を一定の1mA/cm2として、20000サイクルの充放電試験を行った。このサイクル試験は、特定の期間においては、セル電圧、正極−参照極間電圧、負極−参照極間電圧の波形計測を行いつつ、実施した。その波形計測期間の前後は、一度充放電を停止させた。
[活物質の製造]
秋田県仙北市内で収穫されたあきたこまち米のもみ殻を原料とした。取得したもみ殻に対して洗浄などの特別な処理を行わずに、1L/分の窒素ガス流動雰囲気中において、600℃で1時間熱処理を行い、一次炭化を行った。なお、室温から600℃までの昇温は1時間かけて行い、1時間の熱処理後は室温まで自然冷却した。一次炭化により得たもみ殻炭に対して、蒸留水での洗浄または水酸化ナトリウム水溶液によるケイ酸溶脱処理を行った。
蒸留水での洗浄では、プラスチック製漏斗に工業用紙ウェス(日本製紙クレシア株式会社、キムタオル)を取り付け、600℃の一次炭化で得たもみ殻炭に対して、蒸留水をかけ流した。そして、洗浄中、適宜かけ流された蒸留水を50mL程度収集し、そのpHが約9になるまで洗浄処理を行った。洗浄処理の後、空気中120℃において十分に乾燥させたもみ殻炭をRHW600とした。
その後、RHW600、RHW600A、RHW600B、RHW600C、RHW600Dを1L/分の窒素ガス流動雰囲気中において、1000℃で1時間熱処理を行い、二次炭化を行った。なお、室温から1000℃までの昇温は1時間かけて行い、1時間の熱処理後は室温まで自然冷却した。二次炭化を経たもみ殻炭をそれぞれRHW1000、RHW1000A、RHW1000B、RHW1000C、RHW1000Dとした。さらに、RHW600を1L/分の窒素ガス流動雰囲気中において、1400℃で1時間の熱処理を行ったもみ殻炭も製造した。それをRHW1400とする。その際、室温から1000℃までの昇温は1時間かけて行い、さらに1400℃まで1時間かけて昇温した。また、1時間の熱処理後は室温まで自然冷却した。
〔活物質と電極化およびそれらの分析〕
実施例1で製造した粉末状活物質及び市販ハードカーボン(AT−エレクトロード株式会社、LN−0100)のケイ酸含有率を前記方法により測定した。結果を表1に示す。RHW600、RHW1000、RHW1400を比較すると、熱処理温度が増加するに従い、もみ殻由来活物質のケイ酸含有率が上昇したことが分かる。RHW600とRHW600A、さらに、RHW1000、RHW1000A、RHW1000B、RHW1000C、RHW1000Dを比較すると、水酸化ナトリウム水溶液浸漬の時間および温度を増加することで、活物質中のケイ酸含有率が減少したことが分かる。
[活物質を含む電極の半電池セルでの充放電試験]
活物質が塗工された電極を直径15mmで打ち抜き、それとリチウム金属から構成される半電池セルを組み立てた。電極における活物質質量および塗工厚を表4に示す。活物質の質量はRHW1400を除いて3.96mg±5%であった。RHW1400の質量のみが2.84mgと小さかったため、そのリチウムイオンの吸蔵放出特性は別途考慮する。すべての活物質の塗工厚は30〜50μmであった。
[活物質を含む電極のリチウムイオンキャパシタセルでの充放電試験]
半電池セルでの充放電試験と同様に、活物質が塗工された電極を直径15mmで打ち抜き、それを3極式リチウムイオンキャパシタセルの負極に用いた。また、そのセルの正極には、BET比表面積が約2500m2/gの活性炭をアルムニウム箔に塗工し、それを直径15mmで打ち抜いたものを用いた。負極活物質にRHW1000、RHW1000A、RHW1000B、RHW1000Cおよび市販ハードカーボンを用いた4種類のリチウムイオンキャパシタセルを組み立てた。なお、参照極はリチウム金属であり、負極活物質は24時間のリチウムイオンのプレドープ処理がなされた。一方で、それら活物質と比較して十分なリチウムイオンの吸蔵放出容量を有するリチウム金属を負極に用いたセルも組み立てた。この場合、3極式セルではなく、2極式の半電池セルとした。組み立てたリチウムイオンキャパシタセルとそれに使用された活物質の詳細を表8に示す。負極活物質の質量は4.00mg±4%であり、正極活性炭の質量も2.34mg±3%とほぼ一定にした。塗工厚は負極および正極とも40μm前後であった。負極として用いたリチウム金属の理論容量3861mAh/gであり、使用されたもみ殻由来負極活物質より十分に大きな容量を有した。
適切な物性を有する非晶質炭素と非晶質ケイ酸の混合系活物質(RHW1000AとRHW1000B)を使用することで、既存技術であるハードカーボン系活物質と比較して、最大吸蔵容量までリチウムイオンを吸蔵させるプレドープ処理に対する耐性が強く、リチウムイオンを十分に吸蔵した状態における吸蔵放出のレート特性およびサイクル特性に優れたリチウムイオン電池およびリチウムイオンキャパシタ用負極を実現できる。ケイ酸の溶脱により、上記活物質中の非晶質ケイ酸の含有率を減少させると、リチウムイオンにより還元されて得られるシリコンの大きな吸蔵放出容量が減少することで、活物質自体の容量は減少する。しかし同時に、ケイ酸が溶脱された空間に主としてメソ・マクロ孔が形成される。シリコンはリチウムイオンの吸蔵脱離に伴い大きな膨張収縮を許すため、メソ・マクロ孔の存在は、シリコンの膨張収縮による活物質粒子間および活物質と集電体との隔離を抑制することができる。一方で、ケイ酸溶脱が過多な場合、シリコンに起因する容量の減少により、活物質全体の容量が減少する。さらに、同時にシリコンの膨張収縮の緩衝に要する以上に炭素領域に発達したメソ・マクロ孔は、リチウムイオンをトラップすることで、その不動化を促進する。従って、リチウムイオンの吸蔵脱離が繰り返されると、活物質内において電極電位の低下に寄与しないリチウムが増加し、リチウムイオン吸蔵時の負極電位を押し上げる。これは、正極電位を押し上げることで、電解液の分解および正極の構造分解を誘導する可能性を高めるため、好ましくない。メソ・マクロ孔が過多に発達しても、活物質中のケイ酸含有率が高い場合(RHW600とRHW600A)、還元されたシリコンに起因して、リチウムの不動化は軽減され、負極電位の上昇は抑制される。しかしながら、過多なメソ・マクロ孔の存在によるリチウムイオンの輸送性低下に起因して、電流密度増加に伴う吸蔵放出容量の低下が大きく、優れたレート特性は得られない。また、活物質製造時の炭化温度は、ケイ酸および炭素領域の構造変化に影響を与える。ケイ酸溶脱により活物質中のメソ・マクロ孔は発達しやすいので、1000℃の炭化温度は、ケイ酸および炭素領域の細孔をふさぐ効果があり、細孔の発達を抑制できる。1400℃の炭化温度は、非晶質であったケイ酸を結晶化および窒化させ、ケイ酸の還元によるリチウムイオン吸収効果を弱める、すなわち、活物質のリチウム金属のプレーティングの抑制効果を縮小する。
Claims (8)
- 非晶質炭素と非晶質ケイ酸から構成される混合系であり、それぞれ非晶質炭素の含有率が60〜80質量%、非晶質ケイ酸の含有率が40〜20質量%、さらに、BET比表面積が70〜120m2/g、メソ・マクロ孔比表面積が50〜100m2/g、メソ・マクロ孔容積が0.10〜0.18cm3/gであることを特徴とする、リチウムイオン電池用の及び/又はリチウムイオンキャパシタ用の、負極活物質。
- 糖類を原料として含まない請求項1の負極活物質。
- もみ殻由来である請求項1又は2の負極活物質。
- リチウムイオンのプレドープ処理がなされた請求項1〜3のいずれか1の負極活物質。
- もみ殻を800℃以下で一次炭化し、その炭化物から非晶質ケイ酸の部分的除去を行い、その後、800〜1200℃において二次炭化を行うことを特徴とする請求項3又は4の負極活物質の製造法。
- リチウムイオン含有有機系電解液中において、請求項1〜3のいずれか1の負極活物質とリチウム金属とを短絡することによる、リチウムイオンのプレドープ処理がなされた負極活物質の製造法。
- 負極が、請求項1〜4のいずれか1の負極活物質を有してなり、リチウムイオンの吸蔵放出を行うことで繰り返し充放電を実現するリチウムイオン電池。
- 負極が、請求項1〜4のいずれか1の負極活物質を有してなり、リチウムイオンの吸蔵放出を行うことで繰り返し充放電を実現するリチウムイオンキャパシタ。
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