JP6866777B2 - アサリ漁場 - Google Patents

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Description

本発明は、汽水湖に発達する干潟に構築するアサリ漁場に関する。
淡水と海水が混ざって中間的な塩分濃度となっている汽水域のなかでも、汽水湖には、干潮時に干上がるとともに満潮時には水面下に没する潮間帯に、砂質または砂泥質の浅場、いわゆる干潟が発達している場合がある。一方で、汽水湖においては、比重が大きい海水と比重の小さい淡水の間で混じり合いが起こりにくいことに起因して深度ごとに塩分濃度が異なり、その境界にいわゆる塩分躍層を形成しやすいことが知られている。
これら塩分躍層が形成される深度位置や塩分躍層より下に位置する塩分濃度の濃い深水層の分布状況等の動態を知ることは、汽水湖の環境保全や水産資源を確保するうえで重要であることから、例えば、特許文献1では、汽水域に塩分計測手段を設置して、汽水における塩分の動向を把握する方法が開示されている。
特開2000−065647号公報
しかし、汽水湖の生物生産性を高め、また、水質を保全するためには、塩分躍層や塩水の流動状態等を把握するのみでは足らず、汽水に対して鉛直方向の流動混合を行って、湖底からの硫化水素の発生や栄養塩等の溶出の抑制や、塩分躍層の下方に位置する底層で生じる貧酸素化の解消、塩分濃度の調整等を図る必要がある。
特に、塩分濃度20‰以上の環境下で生育することが好ましいとされているアサリを対象とした養貝場や潮干狩り場等の漁場を、汽水湖に発達した干潟を利用して構築しようとする場合、満潮時には汽水面が高いことから、干潟は、塩分躍層の下に位置する塩分濃度の濃い深水層に晒される。一方で、干潮時には汽水面が低くなることから、干潟は、塩分躍層より上に位置し、海水に淡水が多く混じった塩分濃度の薄い表層に晒されることとなり、アサリの低塩分による生育阻害が懸念される。このため、アサリの健全な成長を促すためには、干潮時であっても干潟が常時、塩分濃度の濃い深水層に晒される環境を創出しなければならない。
ところが、干潟を常に塩分濃度の高い深水層に晒す態様とするためには、汽水湖における人為的改変等の大規模な対策が必要となるため、施工費用が増大しやすい。また、干潟は、漁場や観光・リクリエーション施設等の場として既に活用されている場合が多く、周辺地域住民との調整等に多大な手間を要することとなる。
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、汽水湖に発達した干潟に対して、大規模な人為的改変を加えることなく、かつ経済的に構築でき、育成領域における汽水の塩分濃度を調整してアサリの生育に適した環境を創出することの可能な、アサリ漁場を提供することである。
かかる目的を達成するため、本発明のアサリ漁場は、汽水湖に発達した干潟に構築され、一面側を陸域に向けるとともに潮汐による汽水の水位変化により干出と水没を繰り返す壁体と、該壁体の前記一面側であって、該壁体が干出した際に汽水の流入が堰き止められ、該壁体の水没と共に水没する範囲に配置される育成領域と、該育成領域に干潟側開口が設置され、前記壁体の他面側に位置する前記汽水湖の湖底に湖底側開口が配置される通水管と、を備えることを特徴とする。
また、本発明のアサリ漁場は、前記壁体に、該壁体の側端部どうしを連結する連結壁体が設けられ、該連結壁体と前記壁体により、前記育成領域が囲繞されることを特徴とする。
上述する本発明のアサリ漁場によれば、潮汐による汽水の水位変化により干出と水没を繰り返す壁体が干出した際に、汽水の流入が堰き止められる範囲に育成領域を配置する。これにより、干潮から満潮に移行する時間帯には、育成領域に先行して、通水管を用いて壁体の他面側に位置する汽水湖の湖底近傍から塩分濃度の濃い深水層の汽水を供給し、その後時間をおいて、壁体の他面側に位置する汽水湖の塩分濃度の低い表層の汽水を、壁体から育成領域に越流させることができる。これにより、満潮時における育成領域に位置する汽水の塩分濃度を、アサリの生育に適した高濃度に調整することができる。
また、壁体の他面側に位置する汽水湖の表層の汽水を、壁体から育成領域に越流させることにより、育成領域に外洋からの養分やプランクトン等のアサリの育成に必要な栄養分を、効率よく取り込むことが可能となる。さらに、壁体の他面側に位置する汽水湖の表層は、酸素が豊富であることから、これら表層の汽水が育成領域に位置する汽水に流入して撹拌されることにより、育成領域にアサリが好む好気的状態を確保することも可能となる。
一方、満潮から干潮に移行する時間帯には、満潮時に調整した育成領域に位置する汽水のうち、汽水面近傍の塩分濃度の低い表層の汽水を先行して壁体から越流させ、育成領域に位置する汽水の塩分濃度を高めた後に、通水管を介して育成領域における湖底近傍の深水層の汽水を排水する。これにより、満潮時に調整した育成領域に位置する汽水の塩分濃度を大きく低下させることなく、干潮に移行できるため、育成領域を常時、アサリの生育に適した環境に保持することが可能となり、低塩分化によるアサリの生育阻害を回避することができる。
本発明のアサリ漁場は、前記通水管が、汽水を常時充填されるとともに、前記湖底側開口を干潟側開口より深い深度に配置されたサイホン管であることを特徴とする。
本発明のアサリ漁場によれば、通水管に潮汐による汽水の水位変化を利用したサイホン現象を生じさせることができる。これにより、通水管を介して行う、上述の干潮から満潮に移行する時間帯における、壁体の他面側に位置する汽水湖の湖底近傍に分布する塩分濃度の濃い深水層の汽水の、育成領域への供給、および満潮から干潮に移行する時間帯における、育成領域における湖底近傍の深水層の汽水の排水を、動力を用いることなく実施でき、簡略かつ経済的に、アサリ漁場を構築することが可能となる。
本発明のアサリ漁場は、前記通水管の湖底側開口が、澪筋に配置されることを特徴とする。
本発明のアサリ漁場によれば、より塩分濃度の高い汽水を育成領域に供給できるため、育成領域に位置する汽水の塩分濃度を効率よく高めて、アサリの健全な生育の促進に適した環境を効率よく確保することが可能となる。
本発明によれば、汽水湖に発達した干潟に対して、大規模な人為的改変を加えることなく、かつ経済的に、汽水の塩分濃度を調整してアサリの生育に適した環境を創出でき、アサリを対象とした養貝場や潮干狩り場として利用することが可能となる。
本発明の実施の形態におけるアサリ漁場の平面図である。 本発明の実施の形態における干潮時におけるアサリ漁場の側面図である。 本発明の実施の形態における干潮から満潮に移行する状態のアサリ漁場の側面図である(その1)。 本発明の実施の形態における干潮から満潮に移行する状態のアサリ漁場の側面図である(その2)。 本発明の実施の形態における満潮時におけるアサリ漁場の側面図である。 本発明の実施の形態における満潮から干潮に移行する状態のアサリ漁場の側面図である。 本発明の実施の形態における壁体の他の実施例を示す図である。 本発明の実施の形態における通水管の他の実施例を示す図である。 本発明の実施の形態における澪筋の水深と塩分の関係を示す図である。
本発明は、汽水湖に発達する干潟に、養貝場や潮干狩り場として利用可能なアサリを対象とした育成領域を備えるアサリ漁場を構築するにあたり、育成領域に位置する汽水の塩分濃度を調整することにより、育成領域にアサリの生育に適した環境を確保するものである。以下に、図1〜図9を参照して、アサリ漁場に係る実施の形態を説明する。
図1の平面図で示すように、汽水湖1と陸域2との間に形成される、干潮時に干上がるとともに満潮時には汽水面下に没する潮間帯3であって、砂質または砂泥質の浅場が広がる干潟4には、アサリ漁場9が構築されている。アサリ漁場9は、壁体5と、アサリの育成領域6と、釜場7と、通水管8と、を備えている。
壁体5は、図1の平面図および図2の側面図で示すように、壁面の後面側52を陸域2に向けるとともに前面側51を汽水湖1に向けて延在する、難透水性のコンクリート造の構造物である。また、その壁高は、潮汐による汽水の水位変化により干出と水没を繰り返す高さに構築されている。そして、壁体5の平面視形状は、後面側52が凹部となるようなコの字型に構築されており、壁体5の後面側52であって、壁体5が干出した際に汽水の流入が堰き止められ、壁体5の水没とともに水没する範囲に、アサリの育成領域6が配置されている。
育成領域6には、図2で示すように、アサリ育成基盤61として砂質土が10cm程度の層厚をもって撒き出されているが、アサリの生育に適した材料であれば、砂質土に限定されるものではなく、例えば、人工造粒物等を巻き出してもよい。また、育成領域6の位置する干潟が、アサリの生育に適した地盤状態にある場合には、必ずしもアサリ育成基盤61を構築する必要はなく、自然の地盤をそのまま活かしてもよい。このような構造の育成領域6には、釜場7が設けられている。
釜場7は、育成領域6に位置する汽水を効率よく排水できるよう、壁体5の後面側52近傍であって、育成領域6の中でも低い位置に構築されている。また、釜場7の内方は、空洞となっているが、透水性を阻害しない構造となっていれば、砕石等のフィルター材を充填してもよい。そして、少なくとも釜場7の底部が、干潮時における汽水面より低い位置となるよう構築され、この底部に、通水管8の育成領域6側の端部開口である干潟側開口81が配置されている。
通水管8は、干潮時においても育成領域6がアサリの生育に適した塩分濃度を有する汽水に晒されるよう、育成領域6に位置する汽水の塩分濃度を調整するために用いられるものであり、鋼管や塩ビ管等、密閉性が高く防錆処理が施された管材により構成されている。これら通水管8は、単数もしくは複数が、壁体5を跨ぐようにして汽水湖1の湖底に埋設され、通水管8の内方は常時、汽水が充填されている。
そして、通水管8の汽水湖1側の端部開口である湖底側開口82が、壁体5の前面側51に位置する汽水湖1の湖底であって、干潟側開口81よりも深い深度に位置し、かつ塩分躍層の下側に位置する塩分濃度の高い深水層12に常時晒される領域に配置されている。
ここで、図2で示すように、汽水湖1は塩分躍層11が形成されると、塩分躍層11の下側に海水を多く含む塩分濃度の濃い深水層12が形成され、塩分躍層11の上側には、海水に淡水が多く混じった塩分濃度の薄い表層13が形成される。したがって、通水管8の湖底側開口82を、塩分濃度の濃い深水層12に常時晒されている湖底に配置することにより、育成領域6に位置する汽水がアサリの生育に適した塩分濃度となるよう、通水管8を介して塩分濃度の濃い深水層12を育成領域6に供給し、塩分の濃度調整を行うことができるものである。
上述する構成のアサリ漁場9において、通水管8をサイホン管として機能させ、壁体5と通水管8を用いて潮汐による汽水の水位変化を利用してサイホン現象を生じさせることにより、育成領域6がアサリの健全な生育の促進に適した環境となるよう、育成領域6に位置する汽水の塩分濃度の調整する方法を以下に示す。
まず、図2で示すように汽水湖1の干潮時において、育成領域6は、干出した壁体5により、壁体5の前面側51に位置する汽水湖1の汽水が入り込まないよう堰き止められている。この状態から時間が経過すると、図3で示すように、壁体5の前面側51に位置する汽水湖1は汽水面が、育成領域6に位置する汽水の汽水面と比較して、徐々に高くなっていく。
このような汽水面の高低差により通水管8にサイホン現象が生じて、壁体5の前面側51に位置する汽水湖1の塩分濃度の濃い深水層12の汽水が、通水管8の湖底側開口82から通水管8を経由して、干潟側開口81を介して育成領域6に供給される。これにより、壁体5にて堰き止められている育成領域6に位置する汽水は、徐々に塩分濃度が高められていく。
時間が経過して満潮に近づくと、壁体5の前面側51に位置する汽水湖1の汽水面がさらに上昇し、図4で示すように、海水に淡水が多く混じった塩分濃度の薄い表層13の汽水が、壁体5を越流して育成領域6に流入する。このとき、サイホン現象は持続したままであるので、育成領域6には、塩分濃度の濃い深水層12の汽水と、塩分濃度の薄い表層13の汽水の両者が、供給される状態となる。
さらに時間が経過して、図5で示すように汽水湖1が満潮になると、壁体5の前面側51に位置する汽水湖1の汽水面と育成領域6の汽水面とは、ともにその高さが等しくなる。これにより、サイホン現象も解消されることから、育成領域6に対する、塩分濃度の濃い深水層12の汽水の供給と塩分濃度の薄い表層13の汽水の越流が、いずれも自動的に停止する。
このように、干潮から満潮に移行する時間帯では、育成領域6に対して、塩分濃度の濃い深水層12の汽水を供給し始めてから時間をおいて、塩分濃度の低い表層13の汽水を越流し、また、これらをほぼ同時に停止させることができる。つまり、より長い時間、塩分濃度の濃い深水層12の汽水を育成領域6に供給できる。
そして、塩分濃度の低い表層13の汽水の越流開始時間は、壁体5の壁高を適宜調整することにより設定でき、塩分濃度の濃い深水層12の汽水の時間当たりの供給量は、通水管8の数量や口径を適宜調整することにより決定できる。
したがって、干潮時に壁体5により堰き止められた育成領域6に位置する汽水の塩分濃度、通水管8の湖底側開口82が配置されている湖底付近における深水層12の塩分濃度、および育成領域6に向けて壁体5を越流する汽水湖1の表層13の塩分濃度を把握したうえで、壁体5の壁高および通水管8の数量や口径を適宜調整することにより、満潮時において育成領域6に位置する汽水の塩分濃度を、アサリの生育に適した高濃度に収めることが可能となる。
こうして、満潮時における育成領域6に位置する汽水の塩分濃度を調整しておくと、干潮時に育成領域6のアサリ育成基盤61に汽水面が近づいても、アサリ育成基盤61を、アサリの生育に適した高濃度の汽水に晒すことができる。これは、汽水湖1が満潮から干潮に移行する際の、汽水の以下の挙動による。
つまり、図5で示すような汽水湖1の満潮時から時間が経過すると、図6で示すように、汽水湖1全体の水位が低下するのに伴って、育成領域6に位置する表層13の汽水が、壁体5を徐々に越流し汽水湖1側へ流出する。そして、汽水面が壁体5の頂部より低くなると、壁体5の前面側51に位置する汽水湖1の汽水面が、壁体5により堰き止められた育成領域6に位置する汽水の汽水面と比較して、徐々に低くなっていく。
このような汽水面の高低差により通水管8にサイホン現象が生じて、育成領域6に位置するアサリ育成基盤61近傍の深水層12の汽水が、通水管8の干潟側開口81から通水管8を経由して、湖底側開口82を介して汽水湖1に排水される。このとき、先にも述べたように、育成領域6における塩分濃度の低い表層13の汽水は、すでに壁体5を汽水湖1側へ越流しており、育成領域6に位置する汽水は塩分濃度の高い状態となっている。このため、通水管8を介して育成領域6におけるアサリ育成基盤61近傍の深水層12の汽水が排水されても、育成領域6に位置する汽水の塩分濃度は大きく低下することはない。
したがって、さらに時間が経過して、図2で示すように汽水湖1が干潮になるとともに、壁体5の前面側51に位置する汽水湖1の汽水面と育成領域6の汽水面の高さが等しくなることにより、サイホン現象が解消された状態において、育成領域6に位置する汽水は、アサリの生育に適した高濃度の状態を維持している。これにより、その汽水面がアサリ育成基盤61に近接しても、育成領域6には、アサリの生育に適した環境が保持されることとなる。
なお、本実施の形態では、通水管8に常時、汽水が充填されるようにして、通水管8をサイホン管として機能させたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、通水管8を介して行う、育成領域6に位置する汽水の排水、および、育成領域6に対する壁体5の前面側51に位置する汽水湖1における深水層12の汽水の供給を、水中ポンプ等の動力を用いて実施してもよい。
上記のとおり、アサリ漁場1は、干潟4に潮汐による汽水の水位変化により干出と水没を繰り返す壁体5を設けるとともに、壁体5が干出した際に汽水の流入が堰き止められ、かつ壁体5の水没とともに水没する範囲にアサリを対象とした育成領域6を配置する。また、壁体5を挟んで、育成領域6に干潟側開口81を、また汽水湖1の塩分濃度の高い深水層12に常時晒されている湖底に湖底側開口82を、それぞれ配置した通水管8を敷設する。
これにより、干潮から満潮に移行する時間帯には、育成領域6に対して、通水管8を用いて塩分濃度の濃い深水層12の汽水を先行して供給し、その後時間をおいて、壁体5から塩分濃度の低い表層13の汽水を越流させることができ、満潮時における育成領域6に位置する汽水の塩分濃度を、アサリの生育に適した高濃度に調整することができる。
また、壁体5の前面側51に位置する汽水湖1の表層13の汽水を、壁体5から育成領域6に越流させることにより、育成領域6に外洋からの養分やプランクトン等のアサリの育成に必要な栄養分を、効率よく取り込むことが可能となる。さらに、壁体5の前面側51に位置する汽水湖1の表層13は、酸素が豊富であることから、これら表層13の汽水が育成領域6の汽水に流入して撹拌されることにより、育成領域6にアサリが好む好気的状態を確保することが可能となる。
一方、満潮から干潮に移行する時間帯には、育成領域6における塩分濃度の低い表層13の汽水を、壁体5から壁体5の前面側51に向けて越流させ、育成領域6に位置する汽水の塩分濃度を高めた後に、通水管8を介して育成領域6におけるアサリ育成基盤61近傍の汽水を排水する。これにより、満潮時に調整した育成領域6に位置する汽水の塩分濃度を大きく低下させることなく、干潮に移行できるため、育成領域6を常時、アサリの生育に適した環境に保持することが可能となり、低塩分化によるアサリの生育阻害を回避することができる。
また、通水管8に汽水を充填しておくことにより、潮汐による汽水の水位変化を利用したサイホン現象を生じさせることができる。これにより、通水管8を介して行う、上述の干潮から満潮に移行する時間帯における、壁体5の前面側51に位置する汽水湖1における深水層12の汽水の育成領域6への供給、および満潮から干潮に移行する時間帯における、育成領域6に位置する汽水の排水を、動力を用いることなく実施でき、簡略かつ経済的に、アサリ漁場1における育成領域6に対して、アサリの生育に適した環境を確保することが可能となる。
本発明のアサリ漁場9は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、本実施の形態において、壁体5の平面視形状はコの字型に形成されているが、必ずしもこれに限定されるものではない。壁体5が干出した際に汽水の流入が堰き止められ、壁体5が水没した際には同じく水没する範囲を形成できれば、直線状や海域側に凸となる円弧状等、いずれの平面視形状に構築されるものであってもよい。
また、例えば、平面視形状がコの字型に形成されている壁体5に、壁体5の側端部どうしを連結する連結壁体を設けて、連結壁体と壁体5によりロの字型を形成し、育成領域6を囲繞するように構成してもよい。なお、連結壁体は、必ずしも壁体5のように、潮汐による汽水の水位変化により水没するものでなくてもよい。
さらに、壁体5をコンクリート造の構造物としたが、必ずしもこれに限定されるものではない。図7(a)で示すような、粘性土や土質改良土を用いて築造した盛土53に樹脂製や鋼板製等の止水シート54を埋設した構造物や、図7(b)で示すような、複数の土のう55を積層した構造物等、潮汐による汽水の水位変化により崩壊することがなく、かつ難透水性であれば、いずれの材料により構築された構造物であってもよい。
さらに、壁体5は、新設の構造物に限定されるものではなく、例えば、干潟4にあらかじめ構築されている既設の構造物を利用してもよい。
また、本実施の形態では、通水管8を汽水湖1の湖底に埋設する構造としたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、図8で示すように、壁体5に這わせるようにして設置してもよい。
加えて、発明者らは、図9で示すように、塩分躍層11が形成される汽水湖1において、湖底の水深がおおよそ1mを超えると、その湖底における澪筋の塩分濃度が湖底の塩分濃度よりさらに増すとの知見を得ている。したがって、より塩分濃度の濃い深水層12を得ようとする場合には、通水管8の湖底側開口82を配置する位置を、塩分躍層11の下側に位置する塩分濃度の高い深水層12に常時晒されている湖底の中でも、特に、澪筋に設定するとより好ましい。
1 汽水湖
2 陸域
3 潮間帯
4 干潟
5 壁体
51 前面側(他面側)
52 後面側(一面側)
53 盛土
54 止水シート
55 土のう
6 育成領域
61 アサリ育成基盤
7 釜場
8 通水管
81 干潟側開口
82 湖底側開口
9 アサリ漁場

Claims (4)

  1. 汽水湖に発達した干潟に構築され、一面側を陸域に向けるとともに潮汐による汽水の水位変化により干出と水没を繰り返す壁体と、
    該壁体の前記一面側であって、該壁体が干出した際に汽水の流入が堰き止められ、該壁体の水没と共に水没する範囲に配置される育成領域と、
    該育成領域に干潟側開口が設置され、前記壁体の他面側に位置する前記汽水湖の湖底に湖底側開口が配置される通水管と、
    を備えることを特徴とするアサリ漁場。
  2. 請求項1に記載のアサリ漁場において、
    前記壁体に、該壁体の側端部どうしを連結する連結壁体が設けられ、
    該連結壁体と前記壁体により、前記育成領域が囲繞されることを特徴とするアサリ漁場。
  3. 請求項1または2に記載のアサリ漁場において、
    前記通水管が、汽水を常時充填されるとともに、前記湖底側開口を干潟側開口より深い深度に配置されたサイホン管であることを特徴とするアサリ漁場。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載のアサリ漁場において、
    前記通水管の湖底側開口が、澪筋に配置されることを特徴とするアサリ漁場。
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