JP6866650B2 - Ni含有鋼の連続鋳造方法 - Google Patents
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したがって、Ni添加鋼の生産性向上のためには、このような鋳片表面割れを防止することが課題となっている。
R=W/T ・・・ (1)
WR=WW/WN ・・・ (2)
R<WR ・・・ (3)
ただし、W:鋳片の幅(mm)、T:鋳片の厚み(mm)、WW:鋳片の長辺面の冷却水量の総和(l/min)、WN:鋳片の短辺面の冷却水量の総和(l/min)
特許文献1記載の鋼の連続鋳造における鋳片表面割れの抑制方法では、鋳型から引き抜いた後、直ちに2次冷却を行い、1分以内に鋳片表面温度をA3変態温度以下に冷却するものであるが、通常よりも多量の冷却水を用いなければならず、鋳片幅方向、鋳造方向の冷却が不均一になり、表面割れが助長されるおそれがある問題がある。
特許文献2記載の連続鋳造方法では、Sだけでなく、P濃度も0.0010%以下にしなければならず、精錬負荷が非常に高い問題がある。
そこで、本発明者らは表面割れを抑制するべく、γ粒界を脆化させる鋼組成について鋭意検討した。その結果、鋼中のS濃度を制御することで、γ粒界の脆化を防止して表面割れを抑制できることを見出した。また、鋼中のS濃度のほかにも、Caも表面割れに対して有効に作用させうることを見出した。
本発明は、得られた知見を基に更に検討を加えてなされたもので、その要旨は以下の通りである。
まず、表面割れを抑制すべくγ粒界の脆化に影響を及ぼす鋼組成について検討した結果を説明する。
以下に詳細に説明する。
なお、Sによるγ粒界の脆化メカニズムについては十分明らかになっていないが、本発明者らは、Ni>0.2%かつS>0.001%の場合に、γ粒界が著しく脆化することを見出した。これは、γ粒界に偏析したNiとSの相互作用により、脆化を大きくしていると考えられる。
まず、本発明の鋼の化学組成を限定した理由を説明する(以降、「%」との表記は「質量%」である)。
本実施形態のNi含有鋼の連続鋳造方法は、Ni含有鋼を、垂直曲げ型連続鋳造機または湾曲型連続鋳造機を用いて連続鋳造する方法であって、質量%で、溶鋼中のNi濃度を0.2〜3%、S濃度を0.001%以下にし、鋳片の表面温度が800℃以上で、鋳片の矯正を行なうことを特徴とする。
以下、本実施形態の鋼の化学組成を限定した理由を説明する(以降、「%」との表記は「質量%」である)。
鋼中のNiは、鋼材の強度、靭性を向上させるために添加される元素である。強度、靭性を向上させるために必要な添加量は0.2%以上である。なお、Ni濃度が0.2%未満であれば、S濃度の低減やCaの添加を行なわずとも通常の連続鋳造において表面割れが発生することはない。
一方、3%を超えて過剰に添加すると、オーステナイト粒界酸化が大きくなり過ぎ、粒界割れの起点が発生するため、後述するS濃度を低減し、オーステナイト粒界の脆化を防止しても、割れ深さを低減することが困難となるため、上限は3%とする。
ここで、NiはFeよりも貴な元素で、酸化されにくいという性質を有している。一方、γ粒界には、Siなどの酸化されやすい元素が偏析している。粒内は酸化されにくく、粒界が酸化されやすい状態にあるため、一般的には、粒界が優先的に酸化される。従って、Ni添加量が多い場合は、酸化されにくいNiが多いということになり、酸化されやすい元素が偏析する傾向にあるγ粒界の酸化が大きくなります。そして、このようにγ粒界だけが大きく酸化されるので、鋼板表面にあたかもノッチ(切り欠き)が入ったようになり、鋳片表面に引張り応力がかかった際に、ノッチが起点となり割れやすくなり。
以上のように、本発明においては、Ni濃度を0.2〜3%とすることが重要である。
Sはオーステナイト粒界を脆化させる元素であり、Ni含有鋼ではその影響が著しい。
0.001%を超えて含有すると連鋳鋳片に手入れが必要な割れが生じるため、0.001%以下とする。下限は0%を含む。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態のNi含有鋼の連続鋳造方法は、Ni含有鋼を、垂直曲げ型連続鋳造機または湾曲型連続鋳造機を用いて連続鋳造する方法であって、質量%で、溶鋼中のNi濃度を0.2〜3%、S濃度を0.001超0.002%以下、Ca濃度を0.001%以上0.004%以下にし、鋳片の表面温度が800℃以上で、鋳片の矯正を行なうことを特徴とする。
以下、本実施形態の鋼の化学組成を限定した理由を説明する。
Niは、上述した第1実施形態と同様に、鋼材の強度、靭性を向上させるために添加される元素であり、必要な添加量は0.2%以上である。なお、Ni濃度が0.2%未満であれば、S濃度の低減やCaの添加を行なわずとも通常の連続鋳造において表面割れが発生することはない。
一方、3%を超えて過剰に添加すると、オーステナイト粒界酸化が大きくなり過ぎ、粒界割れの起点が発生するため、S濃度を低減し、オーステナイト粒界の脆化を防止しても、割れ深さを低減することが困難となるため、上限は3%とする。
[Ca:0.001%以上0.004%以下]
Caは鋼中でSと結合しやすく、容易にCaSを形成する。このため、γ粒界に存在するSを低減することができる。S濃度が0.001%超0.002%以下である場合、Ca濃度が0.001%以上であれば、粒界を脆化させることがないため、連鋳鋳片に手入れが必要な割れが生じることもない。一方、Caは沸点が低く、蒸発しやすい元素であるため、鋼中に多量に含有させることはコスト高となる。さらに、CaSとしてSを無害化する効果も飽和するため、上限を0.004%とする。
上述したように、垂直曲げ型連鋳機または湾曲型連鋳機を用いて鋼を鋳造する場合、鋳片を矯正する際に鋳片上面に表面割れが生じるという問題がある。このため、表面割れを防止するためには、鋼が脆化する温度範囲を回避するよう二次冷却や鋳造速度を調整している。
図1に示すように本発明の方法では、引張温度が800℃以上のときに、40%以上の絞り値を確保することができる。これより、鋳片の矯正を行う際の鋳片表面温度を800℃以上とする。なお、表面温度の上限については特には制限しないが、温度が高すぎと内部割れや鋳片酸化量の増大が生じるため、900℃以下が望ましい。
鋳造後の鋼において、鋳造方向に垂直な断面を観察し、断面内の最も深い割れの深さを測定し、指数付けをおこなった。割れ深さが0.2mm未満で手入れの必要のないものを鋳片表面割れ指数1、深さ0.2mm以上1mm未満で手入れの必要のあるものを2、深さ1mm以上で屑化しなければならないものを3とした。
一方、No.5〜No.10は比較例である。No.5はS濃度が高いために、手入れが必要な割れが発生した。No.6はNi濃度が高すぎるため、1mm以上の深い割れが発生し、屑化せざるを得なかった。No.7はCa濃度が低すぎるため、手入れが必要な割れが発生した。No.8は、矯正帯での鋳片表面温度が低すぎたため、1mm以上の深い割れが発生し、屑化せざるを得なかった。No.9は、Caが0.004%であるが、S濃度が上限を超えているため、割れが発生してしまった。No.10は、割れは発生しなかったものの、Ni濃度が低すぎたため、鋼の強度・靭性が不足してしまった。
Claims (1)
- Ni含有鋼を、垂直曲げ型連続鋳造機または湾曲型連続鋳造機を用いて連続鋳造する方法であって、質量%で、溶鋼中のNi濃度を0.2〜3%、S濃度を0.001%以下にし、鋳片の表面温度が800℃以上で、鋳片の矯正を行なうことを特徴とするNi含有鋼の連続鋳造方法。
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JP2017011064A JP6866650B2 (ja) | 2017-01-25 | 2017-01-25 | Ni含有鋼の連続鋳造方法 |
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