以下の説明において、添付の図面を参照するが、それらの図面は本明細書の一部をなすものであり、また、本発明のいくつかの実施形態を示すものである。他の実施形態を使用してもよいこと、及び本発明の範囲から逸脱することなく構造的又は操作上の変更を行ってもよいことが理解される。
本明細書の発明は、方法、システム、デバイス、装置、プログラミング、及びコンピュータプログラム製品のフローチャートの図を参照して以下で説明される。フロー図のそれぞれのブロック及びフロー図中のブロックの組み合わせは、コンピュータプログラム命令を含むプログラミング命令によって実装され得ることは理解されたい(メニュー画面は図中で説明されている場合がある)。これらのコンピュータプログラム命令がコンピュータ又は他のプログラム可能データ処理装置(センサ電子装置内のコントローラ、マイクロコントローラ、又はプロセッサ)上にロードされ、マシンが形成され、これにより、コンピュータ又は他のプログラム可能データ処理装置上で実行する命令は、フロー図の1つのブロック又は複数のブロックで指定された機能を実行するための命令を生成する。これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ又は他のプログラム可能なデータ処理装置を特定的に機能させることができるコンピュータ可読メモリに記憶されてもよく、これにより、コンピュータ可読メモリ内に記憶される命令は、フロー図の1つのブロック又は複数のブロックで指定される機能を実行する命令を含み、製造品を生産することができる。これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ又は他のプログラム可能データ処理装置上にロードされ、これにより、コンピュータ又は他のプログラム可能装置上で一連の動作ステップが実行され、コンピュータ又は他のプログラム可能装置上で実行される命令がフロー図の1つのブロック又は複数のブロックで指定された機能、及び/又は本明細書において示されているメニューを実装するステップを実現するようなコンピュータ実装プロセスを形成することができる。プログラミング命令は、センサ装置、装置、及びシステムと併用される集積回路(IC)及び特定用途向け集積回路(ASIC)を含む電子回路を介して記憶及び/又は実装されてもよい。
図1は、本発明の実施形態に係る皮下センサ挿入セットの斜視図及びセンサ電子装置のブロック図である。図1に示すように、皮下センサセット10は、可撓性センサ12の能動部分の皮下配置などのために提供され(例えば、図2参照)、又はユーザの身体の選択された部位に配置される。センサセット10の皮下又は経皮部分は、中空でスロット付きの挿入針14及びカニューレ16を含む。針14は、皮下挿入部位でのカニューレ16の皮下配置を迅速かつ容易にするために使用される。カニューレ16の内部には、1つ以上のセンサ電極20を、カニューレ16に形成された窓22を通してユーザの体液に露出するためのセンサ12の検知部18がある。本発明の一実施形態において、1つ以上のセンサ電極20は、対電極と、基準電極と、1つ以上の作用電極とを含むことができる。挿入後、挿入針14は引き抜かれ、カニューレ16には検知部18及びセンサ電極20を残し、選択された挿入部位に配置される。
特定の実施形態では、皮下センサセット10は、ユーザの状態を表す特定の血液パラメータを監視するために使用されるタイプの可撓性薄膜電気化学センサ12の正確な配置を容易にする。センサ12は、体内の血糖値を監視し、例えば、米国特許第4,562,751号、同第4,678,408号、同第4,685,903号又は同第4,573,994号において説明されているような外部又は埋め込み型の自動化又は半自動化医薬輸液ポンプと共に使用することで、糖尿病患者へのインスリンの送達を制御することができる。
可撓性電気化学センサ12の特定の実施形態は、ポリイミドフィルム又はシートのような選択された絶縁性材料の層の間に埋め込まれ又は収容された細長い薄膜導体と、膜とを含むように薄膜マスク技術に従って作製される。検知部18の先端のセンサ電極20は、センサ12の検知部18(又は能動部)が挿入部位に皮下に配置されている場合、患者血液又は他の体液と直接接触する絶縁層の1つを介して露出している。検知部18は、絶縁層のうちの1つを介して露出する導電性接触パッドなどを終端する接続部24に接合される。代替的な実施形態では、化学ベース、光学ベースなどの他のタイプの埋め込み型センサを使用することができる。
従来技術のように、接続部24及び接触パッドは、センサ電極20から導出される信号に応答してユーザの状態を監視する好適なモニタ又はセンサ電子装置100への直接的な有線電気接続のために全体的に適合される。この一般的なタイプの可撓性薄膜センサの更なる説明は、参照により本明細書に援用されている米国特許第5,391,250号(発明の名称「METHOD OF FABRICATING THIN FILM SENSORS」)において見出すことができる。接続部24は、モニタ又はセンサ電子装置100に電子的に、又は図示されるようにコネクタブロック28(又は同様のもの)によって便利に接続されてもよく、参照により本明細書にも組み込まれる、「FLEX CIRCUIT CONNECTOR」と称される米国特許第5,482,473号にも示され及び説明される。そのため、本発明の実施形態によれば、皮下センサセット10は、有線又は無線の特性モニタシステムのいずれか一方と共に作動するよう構成又は形成されてもよい。
センサ電極20は、様々なセンシング用途に使用され、様々な方法で構成されてもよい。例えば、センサ電極20は、いくつかのタイプの生体分子が触媒剤として使用される生理学的パラメータ検出用途において用いられてもよい。例えば、センサ電極20は、センサ電極20との反応を触媒するグルコースオキシダーゼ(GOx)酵素を有するグルコース及び酸素センサに用いられてもよい。センサ電極20は、生体分子又は他の触媒剤と共に、血管又は非血管環境において人体内に配置されてもよい。例えば、センサ電極20及び生体分子は、静脈内に配置され、血流にさらされることができ、又は人体の皮下又は腹膜領域内に配置されてもよい。
モニタ100は、センサ電子装置100としても称されてもよい。モニタ100は、電源110、センサインターフェース122、処理エレクトロニクス124、及びデータフォーマットのエレクトロニクス128を含んでもよい。モニタ100は、接続部24のコネクタブロック28に電気的に結合されたコネクタを介して、ケーブル102によってセンサセット10に連結されてもよい。代替的な実施形態において、ケーブルを省略してもよい。本発明のこの実施形態では、モニタ100は、センサセット10の接続部104に直接接続するための適切なコネクタを含むことができる。センサセット10は、センサセットの上にモニタ100を配置しやすいように、例えばセンサセットの上など、異なる位置に配置される接続部104を有するように修正されてもよい。
本発明の実施形態において、センサインターフェース122、処理エレクトロニクス124、及びデータフォーマットエレクトロニクス128は、個別の半導体チップとして形成されるが、代替的な実施形態では、様々な半導体チップを単一の、又は複数のカスタマイズされた半導体チップ内に組み合わせてもよい。センサインターフェース122は、センサセット10に接続されているケーブル102と接続される。
電源110は、電池であってもよい。電池は、3つの直列酸化銀357電池セルを含むことができる。代替的な実施形態において、リチウムベースの化学反応、アルカリ電池、ニッケル金属水素化物、又は同様のものなど、異なる電池化学反応を利用してもよいし、異なる数の電池を用いてもよい。モニタ100は、ケーブル102及びケーブルコネクタ104を通して、電源110を介してセンサセットに電力を供給する。本発明の実施形態において、電力はセンサセット10へ供給される電圧である。本発明の実施形態において、電力はセンサセット10へ供給される電流である。本発明の実施形態において、電力は特定の電圧でセンサセット10へ供給される電圧である。
図2A及び図2Bは、埋め込み型センサと、本発明の実施形態に係る埋め込み型センサを駆動するためのエレクトロニクスとを示す。図2Aは、2つの面を有する基板220を示し、第1の面222は電極構成を含み、第2の面224は電子回路を含む。図2Aに示すように、基板の第1の面222は、基準電極248の両側に、対電極−作用電極240、242、244、246の2つの対を含む。基板の第2の面224は、電子回路を含む。図示のように、電子回路は、気密封止ケーシング226内に封入され、電子回路のための保護ハウジングを提供することができる。これにより、センサ基板220を、血管環境又は電子回路が流体にさらされ得る他の環境内に挿入することができる。電子回路を気密封止ケーシング226内に封入することにより、電子回路は、周囲の流体によるショートのリスクなしで動作することができる。図2Aにも、電子回路の入力及び出力ラインが接続され得るパッド228を示す。電子回路自体は、様々な方法で製造されてもよい。本発明の実施形態によれば、電子回路は、業界共通の技術を使用して集積回路として製造されてもよい。
図2Bは、本発明の実施形態に係るセンサの出力を感知する電子回路の一般的なブロック図を示す。少なくとも一対のセンサ電極310は、データ変換器312にインターフェースしてもよく、その出力は、カウンタ314にインターフェースしてもよい。カウンタ314は、制御ロジック316によって制御されてもよい。カウンタ314の出力は、ラインインターフェース318に接続してもよい。回線インターフェース318は、入力及び出力ライン320に接続してもよく、制御ロジック316にも接続してもよい。入力及び出力ライン320は、電力整流器322に接続されてもよい。
センサ電極310は、様々なセンシング用途に使用され、様々な方法で構成されてもよい。例えば、センサ電極310は、いくつかのタイプの生体分子が触媒剤として使用される生理学的パラメータ検出用途において用いられてもよい。例えば、センサ電極310は、センサ電極310との反応を触媒するグルコースオキシダーゼ(GOx)酵素を有するグルコース及び酸素センサに用いられてもよい。センサ電極310は、生体分子又は他の触媒剤と共に、血管又は非血管環境において人体内に配置されてもよい。例えば、センサ電極310及び生体分子は、静脈内に配置され、血流にさらされることができる。
図3は、本発明の実施形態に係るセンサ電子装置及び複数の電極を含むセンサのブロック図を示す。センサセット又はシステム350は、センサ355及びセンサ電子装置360を含む。センサ355は、対電極365と、基準電極370と、作用電極375とを備える。センサ電子装置360は、電源380と、レギュレータ385と、信号プロセッサ390と、計測プロセッサ395と、表示/送信モジュール397とを含む。電源380は、レギュレータ385に電力(電圧、電流、又は電流を含む電圧のいずれかの形式)を供給する。レギュレータ385は、調整電圧をセンサ355に送信する。本発明の一実施形態では、レギュレータ385は、センサ355の対電極365に電圧を送信する。
センサ355は、測定される生理学的特性の濃度を示すセンサ信号を生成する。例えば、センサ信号は、血糖値の読み取り値を示してもよい。皮下センサを利用する本発明の実施形態では、センサ信号は、対象体内の過酸化水素のレベルを表してもよい。血液又は頭蓋センサを利用する本発明の実施形態では、酸素の量がセンサにより測定され、センサ信号によって表される。埋め込み型又は長期のセンサを利用する本発明の実施形態において、センサ信号は対象体内の酸素レベルを表してもよい。センサ信号は、作用電極375で測定される。本発明の一実施形態では、センサ信号は、作用電極で測定された電流であってよい。本発明の一実施形態では、センサ信号は作用電極で測定された電圧であってよい。
信号プロセッサ390は、センサ信号がセンサ355(例えば作用電極)で測定された後、センサ信号(例えば、測定した電流又は電圧)を受信する。信号プロセッサ390は、センサ信号を処理し、処理されたセンサ信号を生成する。計測プロセッサ395は、処理されたセンサ信号を受信し、処理されたセンサ信号を基準値を用いて較正する。本発明の実施形態において、基準メモリに基準値が記憶され、計測プロセッサ395へ提供される。計測プロセッサ395は、センサ測定値を生成する。センサ測定値は、計測メモリ(図示せず)に記憶されてもよい。センサ測定値は、ディスプレイ/送信装置に送られ、センサエレクトロニクスを有するハウジングのディスプレイに表示されるか、又は外部装置に送信されてもよい。
センサ電子装置360は、生理学的特性読み取り値を表示するためのディスプレイを含むモニタであってよい。センサ電子装置360は、デスクトップコンピュータ、ページャ、通信機能を含むテレビ、ラップトップコンピュータ、サーバ、ネットワークコンピュータ、携帯情報端末(PDA)、コンピュータ機能を含む携帯電話、ディスプレイを含む輸血ポンプ、ディスプレイを含むグルコースセンサ、及び/又は輸血ポンプ/グルコースセンサの組み合わせに取り付けることもできる。センサ電子装置360は、blackberry、ネットワークデバイス、ホームネットワークデバイス、又はホームネットワークに接続される電化製品に格納されてもよい。
図4は、本発明の実施形態に係るセンサ及びセンサ電子装置を含む、本発明の代替的な実施形態を示す。センサセット又はセンサシステム400は、センサ電子装置360及びセンサ355を含む。センサは、対電極365と、基準電極370と、作用電極375とを備える。センサ電子装置360は、マイクロコントローラ410及びデジタルアナログ変換器(DAC)420を備える。センサ電子装置360はまた、電流−周波数変換器(I/F変換器)430を備えてもよい。
マイクロコントローラ410は、ソフトウェアプログラムコードを含むか、又はプログラマブルロジックを備え、ソフトウェアプログラムコードは、実行されると信号をDAC420に送信する動作をマイクロコントローラ410に行わせ、プログラム可能なロジックは信号をDAC420に送信する動作をマイクロコントローラ410に行わせ、ここで、信号は電圧レベル又はセンサ355に印加される値を表す。DAC420は、この信号を受けて、マイクロコントローラ410により指令されたレベルの電圧値を生成する。本発明の実施形態では、マイクロコントローラ410は、信号内の電圧レベルの表現を頻繁に変えたり、頻繁に変えない場合もある。例示的に、マイクロコントローラ410からの信号は、DAC420に第1の電圧値を1秒間、第2の電圧値を2秒間、印加するように指令することができる。
センサ355は、電圧レベル又は値を受信してもよい。本発明の一実施形態では、対電極365は、入力として、基準電圧及びDAC420からの電圧値を有する演算増幅器の出力を受信してもよい。電圧レベルの印加により、センサ355は、測定される生理学的特性の濃度を示すセンサ信号を生成する。本発明の一実施形態では、マイクロコントローラ410は、作用電極からのセンサ信号(例えば、電流値)を測定してもよい。例示的に、センサ信号測定回路431はセンサ信号を測定してもよい。本発明の実施形態では、センサ信号測定回路431は、抵抗器を含んでもよく、電流が抵抗器を通り、センサ信号の値を測定してもよい。本発明の一実施形態では、センサ信号は、電流レベル信号であってもよく、センサ信号測定回路431は電流−周波数(I/F)変換器430であってもよい。電流−周波数変換器430は、電流読み取り値に関してセンサ信号を測定し、周波数ベースのセンサ信号に変換し、周波数ベースのセンサ信号をマイクロコントローラ410に送信してもよい。本発明の実施形態では、マイクロコントローラ410は、非周波数ベースのセンサ信号よりも容易に周波数ベースのセンサ信号を受信することができる。マイクロコントローラ410は、周波数ベース又は非周波数ベースにかかわらず、センサ信号を受信し、血糖値などの対象の生理学的特性の値を決定する。マイクロコントローラ410は、実行又は動作すると、センサ信号を受信し、センサ信号を生理学的特性値に変換することができるプログラムコードを備えてもよい。本発明の一実施形態では、マイクロコントローラ410は、センサ信号を血糖値に変換してもよい。本発明の一実施形態では、マイクロコントローラ410は、対象の血糖値を決定するために内部メモリ内に記憶された測定値を利用してもよい。本発明の一実施形態では、マイクロコントローラ410は、マイクロコントローラ410の外部のメモリ内に記憶された測定値を利用して、対象の血糖値の決定を補助することができる。
マイクロコントローラ410は、マイクロコントローラ410によって生理学的特性値が決定された後、生理学的特性値の測定値を数期間にわたって記憶してもよい。例えば、血糖値は、センサから1秒おき又は5秒おきにマイクロコントローラ410に送られ、マイクロコントローラは、BG読み取りの5分又は10分間にわたって、センサ測定値を保存してもよい。マイクロコントローラ410は、生理学的特性値の測定値をセンサ電子装置360上のディスプレイに転送してもよい。例えば、センサ電子装置360は、対象に対する血糖読み取り値を提供するディスプレイを含むモニタであってもよい。本発明の一実施形態では、マイクロコントローラ410は、生理学的特性値の測定値をマイクロコントローラ410の出力インターフェースに転送してもよい。マイクロコントローラ410の出力インターフェースは、生理学的特性値の測定値、例えば、血糖値を外部装置、例えば、輸血ポンプ、複合輸液ポンプ/グルコースメータ、コンピュータ、携帯情報端末、ページャ、ネットワークアプライアンス、サーバ、携帯電話、又は何らかのコンピューティング装置に転送してもよい。
図5は、本発明の実施形態に係るセンサ電極、及びセンサ電極に印加する電圧の電子ブロック図を示す。図5に示されている本発明の実施形態では、オペアンプ530又は他のサーボ制御装置は、回路/電極インターフェース538を通じてセンサ電極510に接続してもよい。センサ電極を通じてフィードバックを利用するオペアンプ530は、対電極536における電圧を調整することによって基準電極532と作用電極534との間で規定電圧(DACが印加電圧として望み得る電圧)を維持しようとする。そして、対電極536から作用電極534に電流が流れ得る。このような電流を測定して、センサ電極510とセンサ電極510の近傍に配置され触媒剤として使用されたセンサの生体分子との電気化学反応を確認することができる。図5に開示される回路は、長期又は埋め込み型センサで利用することができ、又は短期又は皮下センサで利用されてもよい。
長期的センサの実施形態では、グルコースオキシダーゼ(GOx)酵素がセンサ内の触媒剤として使用される場合、電流は、対電極536から作用電極534へ、酵素及びセンサ電極510の近傍に酸素がある場合にのみ流れてもよい。例示的には、基準電極532に設定された電圧が約0.5ボルトに維持されると、対電極536から作用電極534に流れる電流の量は、酵素及び電極を取り囲む領域に存在する酸素量に対する一体の勾配とほぼ直線的な関係を有する。そのため、血液中の酸素量の定量精度の向上は、基準電極532を約0.5ボルトに維持し、電流電圧曲線のこの領域を利用して血液酸素のレベルを変化させることにより得られてもよい。本発明の他の実施形態は、グルコースオキシダーゼ酵素とは異なる生体分子を有する異なるセンサを利用し、このため、基準電極で設定される0.5ボルト以外の電圧を有してもよい。
上述したように、センサ510の初期埋め込み又は挿入する際センサ510は、センサに対する対象の調整及びセンサで利用される触媒によって引き起こされる電気化学的副産物により、不正確な読み取り値を提供する可能性がある。多くのセンサは、センサ510が対象の生理学的パラメータの正確な読み取りを提供するために、安定化期間が必要とされる。安定化期間の間、センサ510は、正確な血糖値測定を提供しない。センサのユーザや製造業者は、センサが対象の体内又は対象の皮下層に挿入された後、センサが迅速に利用できるよう、センサ用の安定化時間枠を改善することを望んでもよい。
以前のセンサ電極システムおいて、安定化期間又は時間枠は1時間〜3時間であった。センサ(又はセンサの電極)は、センサの安定化期間又は時間枠を低下させ、制度の適時性を高めるために、1つのパルスの印加及びそれに続く別の電圧の印加ではなく、複数のパルスにさらされてもよい。図6Aは、本発明の実施形態に係る安定化時間枠内でパルスを印加して安定化時間枠を短縮させる方法を示す。本発明のこの実施形態では、電圧印加装置は、第1の電圧を第1の時間又は期間に電極に印加する(600)。本発明の実施形態において、第1の電圧は、直流定電圧であってもよい。この結果、アノード電流が発生する。本発明の代替的な実施形態で、デジタルアナログ変換器又は他の電圧源は、第1の期間に電圧を電極に提供してもよい。アノード電流とは、電子が電圧が印加された電極に向けて駆動されることを意味する。本発明の実施形態において、印加装置は電圧の代わりに電流を印加してもよい。センサに電圧を印加する本発明の実施形態では、第1の電圧が電極に印加された後、第2の時間、時間枠、又は期間の間、電圧レギュレータは待機(即ち、電圧を印加しない)してもよい(605)。換言すると、電圧印加装置は、第2の期間が経過するまで待機する。電圧が印加されない場合、結果としてカソード電流が生じ、その結果電圧が印加されない電極によって電子の取得が生じる。第1の期間に第1の電圧の電極への印加、その後の第2の期間に電圧が印加されないことが、何回も繰り返される(610)。これは、アノード及びカソードサイクルとして称されてもよい。本発明の一実施形態では、安定化方法の総反復回数は、3回であり、例えば第1の期間に電圧を3回印加し、その後、それぞれ第2の期間には電圧を印加しない。本発明の実施形態では、第1の電圧は1.07ボルトであってもよい。本発明の実施形態では、第1の電圧は0.535ボルトであってもよい。本発明の実施形態において、第1の電圧はおよそ0.7ボルトであってもよい。
電圧が繰り返し印加され、電圧が印加されないことにより、センサ(及び電極)にアノード−カソードサイクルが生じる。アノード−カソードサイクルは、センサの挿入又はセンサの埋め込みに反応する患者の体内に生成される電気化学的副産物の低減をもたらす。本発明の一実施形態において、電気化学的副生成物は、バックグラウンド電流の発生原因となり、その結果、対象の生理学的パラメータの測定値が不正確になる。本発明の一実施形態では、電気化学的副産物を除去することができる。他の動作条件下で、電気化学的副産物を低減又は大幅に低減してもよい。良好な安定化方法によってアノード−カソードサイクルが平衡に到達し、電気化学的副産物を大幅に減少させ、バックグラウンド電流を最小化する。
本発明の実施形態において、センサの電極に印加される第1の電圧は、正の電圧であってよい。本発明の実施形態では、印加される第1の電圧は、負の電圧であってよい。本発明の一実施形態では、第1の電圧は、作用電極に印加されてもよい。本発明の一実施形態では、第1の電圧は、基準電極又は対電極に印加されてもよい。
本発明の実施形態では、電圧パルスの持続時間及び電圧を印加しない時間は、例えば、それぞれ3分間など、等しくてもよい。本発明の実施形態では、電圧印加又は電圧パルスの持続時間は異なる値であってもよく、例えば、第1の時間と第2の時間とが異なる場合がある。本発明の一実施形態では、第1の期間を5分間とし、待機期間を2分間としてもよい。本発明の一実施形態では、第1の期間を2分間とし、待機期間(又は第2の期間)を5分間としてもよい。換言すると、第1の電圧の印加の持続期間は2分間であってよく、5分間は電圧が印加されない場合もある。この時間枠は、例示的なものに過ぎず、限定するものではない。例えば、第1の時間枠は、2、3、5又は10分間であってもよく、第2の時間枠は、5分、10分、20分又は同様の時間であってもよい。時間枠(例えば、第1の時間及び第2の時間)は、異なる電極、センサの固有の特性、及び/又は患者の生理学的特性に依存してもよい。
本発明の実施形態では、グルコースセンサを安定化させるために、3つ以上、又は3つ未満のパルスを利用してもよい。換言すると、反復の数は、3つより多く又は3つより少なくてもよい。例えば、4つの電圧パルス(例えば、高い電圧に続いて電圧なし)が電極の1方に印加されるか、又は6つの電圧パルスが電極の一方に印加されてもよい。
例示的に、皮下埋め込み型センサに対し、1.07ボルトの3つの連続するパルス(その後にそれぞれの待機期間)で十分であってもよい。本発明の実施形態では、0.7ボルトの連続した3つの電圧パルスを利用することができる。3つの連続するパルスは、血液又は頭蓋内流体内に埋め込まれたセンサ、例えば長期的若しくは永久的センサに対して、負又は正のいずれかの、より高い、又はより低い電圧値を有してもよい。加えて、3つより多いパルス(例えば、5、8、12)を利用して、皮下、血液、又は頭蓋内流体センサのいずれかにおけるアノード電流とカソード電流との間のアノード−カソードサイクリングを生じさせてもよい。
図6Bは、本発明の実施形態に係るセンサを安定化させる方法を示す。図6Bに示される本発明の実施形態では、電圧印加装置が第1の電圧を第1の期間にセンサに印加し(630)、センサの電極でアノードサイクルを開始してもよい。電圧印加装置は、直流電源、デジタルアナログ変換器、又は電圧レギュレータであってもよい。第1の期間が経過した後、第2の電圧が第2の時間のセンサに印加され(635)、センサの電極でカソードサイクルを開始する。例示的に、電圧が印加されないのではなく、図6Aに示される方法のように、第2の時間枠の間に(第1の電圧とは)異なる電圧がセンサに印加される。本発明の一実施形態では、第1の期間の第1の電圧の印加及び第2の期間の第2の電圧の印加は、何回も繰り返される(640)。本発明の一実施形態では、第1の期間の第1の電圧の印加及び第2の期間の第2の電圧の印加は、それぞれ、複数回繰り返すのではなく、安定化時間枠、例えば、10分、15分、又は20分間印加されてもよい。この安定化時間枠は、例えば、センサ(及び電極)が安定化するまで、安定化シーケンスに対する時間枠の全体である。この安定化方法の利益は、センサのより速い動作、バックグラウンド電流の低減(言い換えると、いくらかのバックグラウンド電流の抑制)、及びより良好なグルコース応答である。
本発明の一実施形態では、第1の電圧は、5分間印加される0.535ボルトであってよく、第2の電圧は、2分間印加される1.070ボルトであってよく、0.535ボルトの第1の電圧は5分間印加され、1.070ボルトの第2の電圧は2分間印加され、0.535ボルトの第1の電圧は5分間印加され、1.070ボルトの第2の電圧は2分間印加されてもよい。換言すると、この実施形態では、電圧パルス発生スキームの3回の繰り返しがある。このパルス発生方法は、第2の時間枠、例えば、第2の電圧の印加の時間枠が、2分から5分、10分、15分、又は20分に延長され得るという点で変更されてもよい。加えて、本発明のこの実施形態では、3回の繰り返しが適用された後、0.535ボルトの公称電圧が印加されてもよい。
1.070及び0.535ボルトは例示的な値である。他の電圧値は、様々な因子に基づき選択されてもよい。これらの因子として、センサに利用される酵素の種類、センサに利用される膜、センサの動作期間、パルスの長さ、及び/又はパルスの大きさを挙げることができる。ある動作条件下において、第1の電圧は1.00〜1.09ボルトの範囲であってもよく、第2の電圧は0.510〜0.565ボルトの範囲であってもよい。他の動作実施形態では、第1の電圧と第2の電圧とを囲む範囲は、センサの電極の電圧感度に応じて、より高い範囲、例えば、0.3ボルト、0.6ボルト、0.9ボルトであってもよい。他の動作条件下では、電圧は、0.8ボルト〜1.34ボルトの範囲内であってもよく、他の電圧は、0.335〜0.735の範囲内であってもよい。他の動作条件下では、より高い電圧の範囲は、より低い電圧の範囲よりも小さくてもよい。例示的に、より高い電圧は、0.9〜1.09ボルトの範囲内であってもよく、より低い電圧は、0.235〜0.835ボルトの範囲内であってもよい。
本発明の一実施形態では、第1の電圧及び第2の電圧は、正の電圧であるか、あるいは、本発明の他の実施形態において、負の電圧であってもよい。本発明の一実施形態では、第1の電圧は、正であり、第2の電圧は、負であるか、あるいは、第1の電圧は、負であり、第2の電圧は、正であってもよい。第1の電圧は、繰り返しのそれぞれについて異なる電圧レベルであってもよい。本発明の一実施形態では、第1の電圧は、直流定電圧であってよい。本発明の他の実施形態では、第1の電圧は、ランプ電圧、正弦波形電圧、ステップ電圧、又は他の一般に利用される電圧波形であってもよい。本発明の一実施形態において、第2の電圧は、直流定電圧、ランプ電圧、正弦波形電圧、ステップ電圧、又は他の一般に利用される電圧波形であってもよい。本発明の一実施形態において、第1の電圧又は第2の電圧は、直流波形に乗った電圧交流信号であってもよい。本発明の一実施形態では、第1の電圧は、一方の種類の電圧、例えば、ランプ電圧であり、第2の電圧は、第2の種類の電圧、例えば、正弦波形電圧であってもよい。本発明の一実施形態では、第1の電圧(又は第2の電圧)は、繰り返しのそれぞれについて異なる波形形状を有してもよい。例えば、安定化方法に3つのサイクルがある場合、第1のサイクルにおいて第1の電圧はランプ電圧であり、第2のサイクルにおいて第1の電圧は定電圧であり、第3のサイクルにおいて第1の電圧は正弦波電圧であってもよい。
本発明の一実施形態では、第1の時間枠の持続時間及び第2の時間枠の持続時間は、同じ値を有することができるか、あるいは、第1の時間枠及び第2の時間枠の持続時間は、異なる値を有してもよい。例えば、第1の時間枠の持続時間は、2分であり、第2の時間枠の持続時間は、5分であり、繰り返し回数は3であるものとしてよい。上記の説明のように、安定化方法は、複数の繰り返しを含んでもよい。本発明の実施形態では、安定化方法を異なる回数で繰り返す間、第1の時間枠のそれぞれの時間枠の持続時間は変化し、第2の時間枠のそれぞれの時間枠の持続時間も変化してもよい。例示的に、アノード−カソードサイクリングの第1の繰り返しの間、第1の時間枠は、2分間であり、第2の時間枠は、5分間であってもよい。第2の繰り返しの間、第1の時間枠は、1分間であり、第2の時間枠は、3分間であってもよい。第3の繰り返しの間、第1の時間枠は、3分間であり、第2の時間枠は、10分間であってもよい。
本発明の一実施形態において、0.535ボルトの第1の電圧が、センサ内の電極に2分間印加されてアノードサイクルを開始し、1.07ボルトの第2の電圧が電極に5分間印加されてカソードサイクルを開始する。次いで、0.535ボルトの第1の電圧が、再び2分間印加されてアノードサイクルを開始し、1.07ボルトの第2の電圧が5分間センサに印加される。3回目の繰り返しでは、0.535ボルトを2分間にわたって印加して、アノードサイクルを開始させた後、1.07ボルトを5分間印加する。その後、センサが実際稼働している期間で、例えば、センサが対象の生理学的特性の読み取り値を提供する場合、センサに与えられる電圧は0.535である。
より短い持続時間の電圧パルスは、図6A及び図6Bの実施形態において利用されてもよい。より短い持続時間の電圧パルスは、第1の電圧、第2の電圧、又はその両方を印加するために利用されてもよい。本発明の一実施形態では、第1の電圧に対するより短い持続時間の電圧パルスの大きさは、−1.07ボルトであり、第2の電圧に対するより短い持続時間の電圧パルスの大きさは、高い大きさの約半分であり、例えば、−.535ボルトである。あるいは、第1の電圧に対するより短い持続時間のパルスの大きさは、0.535ボルトであってもよく、第2の電圧に対するより短い持続時間のパルスの大きさは、1.07ボルトである。
短い持続時間のパルスを利用する本発明の実施形態において、電圧が第1の期間全体にわたって連続的に印加されなくてもよい。代わりに、電圧印加装置は、第1の期間に複数の短い持続時間のパルスを送ってもよい。換言すると、複数のミニ幅又は短い持続時間の電圧パルスが、第1の期間にわたってセンサの電極に印加されてもよい。各ミニ幅又は短い持続時間のパルスは、数ミリ秒の幅を有してもよい。例示的には、このパルス幅は、30ミリ秒、50ミリ秒、70ミリ秒、又は200ミリ秒であってよい。これらの値は例示的であり、限定的ではないことを意図する。図6Aに示されている実施形態などの、本発明の一実施形態では、これらの短い持続時間のパルスは、第1の期間にセンサ(電極)に印加され、そして第2の期間に電圧は印加されない。
本発明の一実施形態では、各短い持続時間のパルスは、第1の期間内に同じ持続時間を有してもよい。例えば、それぞれの短い持続時間の電圧パルスは、50ミリ秒の時間幅を有し、パルス間のそれぞれのパルス遅延時間は、950ミリ秒であってもよい。この例では、第1の時間枠について2分間が測定時間とされる場合、120個の短い持続時間の電圧パルスがセンサに印加されてもよい。本発明の一実施形態では、短い持続時間の電圧パルスのそれぞれは、異なる持続時間を有してもよい。本発明の一実施形態では、短い持続時間の電圧パルスのそれぞれは、同じ振幅値を有してよい。本発明の一実施形態では、短い持続時間の電圧パルスのそれぞれは、異なる振幅値を有してよい。センサに電圧を連続的に印加する代わりに、短い持続時間の電圧パルスを利用することによって、同じアノード及びカソードサイクリングが生じ得、センサ(例えば、電極)は、時間の経過と共により少ない全エネルギー又は電荷にさらされる。センサ(したがって電極)に印加されるエネルギーが少ないため、短い持続時間の電圧パルスを使用する場合、電極に電圧を連続的に印加するのと比べて利用する電力は少ない。
図6Cは、本発明の実施形態に係るセンサを安定化させる際のフィードバックの利用を示す。センサシステムは、センサを安定化させるために追加パルスが必要であるかどうかを決定するフィードバック機構を含んでもよい。本発明の一実施形態では、電極(例えば、作用電極)によって生成されるセンサ信号を分析して、センサ信号が安定化されているかどうかを判定してもよい。第1の電圧が、第1の時間枠で電極に印加され(630)、アノードサイクルを開始する。第2の電圧が、第2の時間枠で電極に印加され(635)、カソードサイクルを開始する。本発明の一実施形態では、解析モジュールが、センサ信号(例えば、センサ信号によって発生する電流、センサ内の特定の地点における抵抗、センサ内の特定のノードにおけるインピーダンス)を分析し、測定閾値に達したかどうかを判定することができる(637)(例えば、測定閾値に対して比較することによって正確な読み取り値をセンサが出しているかどうかを判定する)。センサ読み取り値が正確であると判定された場合、電極(したがってセンサ)が安定している(642)ことを表しており、第1の電圧及び/又は第2の電圧の追加の印加が生じなくてもよい。本発明の一実施形態では、安定性を達成しなかった場合、追加のアノード/カソードサイクルが、第1の期間に第1の電圧を電極に印加し(630)、第2の期間に第2の電圧を電極に印加する(635)ことによって開始される。
本発明の実施形態では、解析モジュールは、第1の電圧及び第2の電圧をセンサの電極に3回印加するアノード/カソードサイクルの後に使用されてもよい。本発明の一実施形態では、図6Cに示されるように、解析モジュールは、第1の電圧及び第2の電圧を1回印加した後に使用されてもよい。
本発明の一実施形態では、解析モジュールは、電極にわたって、又は2つの電極の間に電流が導入された後に発生する電圧を測定するために使用されてもよい。解析モジュールは、電極において又は受信レベルで、電圧レベルを監視してもよい。本発明の一実施形態では、電圧レベルがある閾値以上であれば、これはセンサが安定化されていることを意味してもよい。本発明の一実施形態では、電圧レベルが閾値レベルより低い場合、これは、センサが安定化されており、読み取り値を直ちに提供できる状態を示してもよい。本発明の一実施形態において、電流は、電極に、又は2、3の電極にわたって導入されてもよい。解析モジュールは、電極から放出される電流レベルを監視してもよい。本発明のこの実施形態では、解析モジュールは、センサ信号電流から大きさの順序で電流が異なる場合に電流を監視することが可能であってよい。電流が、電流閾値より高いか、又は低い場合、これは、センサが安定化されていることを意味するものとしてよい。
本発明の一実施形態では、解析モジュールは、センサの2つの電極の間のインピーダンスを測定してもよい。解析モジュールは、インピーダンスを閾値又は目標インピーダンス値と比較し、測定されたインピーダンスが目標又は閾値インピーダンスより低い場合に、センサ(したがってセンサ信号)は、安定化されてもよい。本発明の一実施形態では、解析モジュールは、センサの2つの電極の間の抵抗を測定してもよい。本発明のこの実施形態では、解析モジュールは、抵抗を閾値又は目標抵抗値と比較し、測定された抵抗値が閾値又は目標抵抗値より小さい場合に、解析モジュールは、センサが安定化され、センサ信号が利用できると判定してもよい。
図7は、本発明の実施形態に係るセンサを安定化する効果を示す。ライン705は、前の単一パルス安定化法が利用されたグルコースセンサに対する血糖センサ読み取り値を表している。ライン710は、3つの電圧パルスが印加される場合のグルコースセンサに対する血糖読み取り値を表す(例えば、3つの電圧パルスは2分の持続時間を有し、それぞれの後に電圧が印加されない5分間の持続時間が続く)。X軸715は、時間の量を表す。ドット720、725、730、735は、測定されたグルコースの読み取り値を表しており、この測定はフィンガースティックを利用して行われ、次いでグルコースメータ内に入力される。グラフで示されているように、以前の単一パルス安定化法では、所望のグルコース読み取り値、例えば、100単位に安定化するために約1時間30分かかった。対照的に、3パルス安定化法では、グルコースセンサを安定化するのに約15分しかかからず、その結果、安定化時間枠が大幅に改善された。
図8Aは、本発明の実施形態に係る電圧発生装置を含むセンサ電子装置及びセンサのブロック図を示す。電圧発生又は印加装置810は、電圧パルスを生成するエレクトロニクス、ロジック又は回路を含む。センサ電子装置360は、基準値及び他の有用なデータを受信するための入力装置820も備えてもよい。本発明の一実施形態では、センサ電子装置は、センサ測定値を記憶するための測定用メモリ830を備えてもよい。本発明のこの実施形態では、電源380は、電力をセンサ電子装置に供給してもよい。電源380は、電力をレギュレータ385に供給し、レギュレータ385は、調整電圧を電圧発生又は印加装置810に供給してもよい。接続端子811は、本発明の例示されている実施形態では、接続端子が、センサ355をセンサ電子装置360に連結又は接続することを表している。
図8Aに示されている本発明の一実施形態において、電圧発生又は印加装置810は、電圧、例えば、第1の電圧又は第2の電圧を演算増幅器840の入力端子に供給する。電圧発生又は印加装置810は、電圧をセンサ355の作用電極375にも供給することができる。演算増幅器840の別の入力端子は、センサの基準電極370に結合される。電圧発生又は印加装置810から演算増幅器840に電圧が印加されると、対電極365で測定される電圧が、作用電極375で印加される電圧に近くなる、又は等しくなる。本発明の一実施形態では、電圧発生又は印加装置810は、対電極と作用電極との間に所望の電圧を印加するために利用することも可能である。これは、固定された電圧を対電極に直接印加することによって生じてもよい。
図6A及び図6Bに示される本発明の一実施形態では、電圧発生装置810は、第1の時間枠においてセンサに印加される第1の電圧を発生する。電圧発生装置810は、第1の電圧をオペアンプ840に送り、オペアンプ840は、センサ355の対電極365の電圧を第1の電圧に駆動する。本発明の一実施形態では、電圧発生装置810はまた、第1の電圧を直接的に、センサ355の対電極365に送ることも可能である。図6Aに示される本発明の実施形態では、電圧発生装置810は、次いで、第2の時間枠の間、第1の電圧をセンサ355に送らない。換言すると、電圧発生装置810は、オフにされるか、又はオフに切り換えられる。電圧発生装置810は、何回もの繰り返し、又は安定化時間枠の間、例えば、20分間、第1の電圧を印加することと、電圧を印加しないこととのサイクリング動作を継続するようにプログラムされてもよい。図8Bは、本発明のこの実施形態を実装する電圧発生装置を示す。電圧レギュレータ385は、調整電圧を電圧発生装置810に送る。制御回路860は、スイッチ850の開閉を制御する。スイッチ850を閉じると、電圧が印加される。スイッチ850が開かれると、電圧が印加されない。タイマ865は、スイッチ850をオン、オフするように制御回路860に指令する信号を、制御回路860に送る。制御回路860は、何回(必要な繰り返しと一致する回数)もスイッチ850を開閉するよう回路に指令することができるロジックを含む。本発明の一実施形態では、タイマ865は、安定化シーケンスが完了したこと、即ち、安定化時間枠が経過したことを識別するための安定化信号を送信してもよい。
本発明の一実施形態では、電圧発生装置は、第1の時間枠で第1の電圧を発生し、第2の時間枠で第2の電圧を発生する。図8Cは、本発明のこの実施形態を実装する2つの電圧値を発生する電圧発生装置を示す。本発明のこの実施形態では、2位置スイッチ870が利用される。例示的に、第1のスイッチ位置871がタイマ865によってオンにされるか、又は閉じられ制御回路860に指令を送る場合、電圧発生装置810は、第1の時間枠で第1の電圧を発生する。第1の電圧が第1の時間枠で印加された後、タイマは、第1の時間枠が経過したことを示す信号を制御回路860に送信し、制御回路860は、スイッチ870を第2の位置872に移動するよう指示する。スイッチ870が、第2の位置872にあるときに、調整電圧は、電圧ステップダウン又はバック変換器880に送られ、これにより調整電圧をより低い値に下げる。次いで、より低い値は、第2の時間枠においてオペアンプ840に送られる。タイマ865が、第2の時間枠が経過したことを示す信号を制御回路860に送信した後、制御回路860は、スイッチ870を第1の位置に戻す。これは、所望の繰り返しの回数が完了する、又は安定化時間枠が経過するまで継続する。本発明の一実施形態において、センサ安定化時間枠が経過した後、センサはセンサ信号350を信号プロセッサ390に送信する。
図8Dは、センサに対する電圧の、より複雑な印加を実行するために利用される電圧印加装置810を示す。電圧印加装置810は、制御装置860、スイッチ890、正弦波電圧発生装置891、ランプ電圧発生装置892、及び定電圧発生装置893を備えてもよい。本発明の他の実施形態では、電圧印加は、直流信号又は他の様々な電圧パルス波形の上に電圧交流波を発生してもよい。図8Dに示されている本発明の実施形態では、制御装置860は、スイッチを3つの電圧発生システム891(正弦波)、892(ランプ)、893(直流定電圧)のうちの1つに切り換えることができる。この結果、電圧発生システムのそれぞれにおいて、特定の電圧波形を発生することになる。特定の動作条件下で、例えば、正弦波パルスが3つのパルスに対して印加される場合、制御装置860は、電圧印加装置810が正弦波電圧を発生するように、スイッチ890に、電圧レギュレータ385からの電圧を正弦波電圧発生器891へと接続させてもよい。他の動作条件の下で、例えば、ランプ電圧が3つのパルスのうちの第1のパルスについて第1の電圧としてセンサに印加され、正弦波電圧が3つのパルスのうちの第2のパルスについて第1の電圧としてセンサに印加され、直流定電圧が3つのパルスのうちの第3のパルスについて第1の電圧としてセンサに印加される場合、制御装置860は、スイッチ890に、アノード/カソードサイクルの第1の時間枠内で、電圧発生又は印加装置810からの電圧をランプ電圧発生システム892に、次いで正弦波電圧発生システム891に、次いで直流定電圧発生システム893に切り換えて接続させてもよい。本発明のこの実施形態では、制御装置860は、第2の時間枠において、例えば、第2の電圧の印加時に、電圧発生サブシステムのうちのいくつかをレギュレータ385からの電圧に接続するように、スイッチに指令するか、又は制御してもよい。
図9Aは、本発明の実施形態に係る電圧パルスを発生するマイクロコントローラを含むセンサ電子装置を示す。高度センサ電子装置は、マイクロコントローラ410(図4を参照)、デジタルアナログ変換器(DAC)420、オペアンプ840、及びセンサ信号測定回路431を備えてもよい。本発明の一実施形態では、センサ信号測定回路は、電流対周波数(I/F)変換器430であってよい。図9Aに示されている本発明の実施形態において、マイクロコントローラ410内のソフトウェア又はプログラマブルロジックは、DAC420に信号を送信する命令を提供し、次いで、特定の電圧を演算増幅器840に出力するようDAC420に指令する。マイクロコントローラ410は、図9Aのライン911によって示されているように、特定の電圧を作用電極375に出力するようにも指令されてもよい。上で説明されているように、特定の電圧を演算増幅器840及び作用電極375に印加することによって、対電極で測定された電圧を特定の電圧の大きさに駆動してもよい。換言すると、マイクロコントローラ410は、センサ355(例えば、センサ355に連結された演算増幅器840)に印加されるべき電圧若しくは電圧波形を示す信号を出力する。本発明の代替的実施形態では、固定された電圧は、基準電極と作用電極375との間にDAC420から直接的に電圧を印加することによって設定されてもよい。同様の結果は、電圧を電極のそれぞれに印加することによっても得られ、差分は基準電極と作用電極との間に印加される固定された電圧に等しい。加えて、固定された電圧は、基準電極と対電極との間に電圧を印加することによって設定されてもよい。ある動作条件下では、マイクロコントローラ410は、特定の大きさの電圧がセンサに印加されるということを表すことを、DAC420が認識する、特定の大きさのパルスを発生してもよい。第1の時間枠の後、マイクロコントローラ410は(プログラム又はプログラマブルロジックを介して)電圧を出力しないように(センサ電子装置360が図6Aで説明されている方法に従って動作する場合)、又は第2の電圧を出力するように(センサ電子装置360が図6Bで説明されている方法に従って動作する場合)DAC420に指令する第2の信号を出力する。マイクロコントローラ410は、第2の時間枠が経過した後に、次いで、印加されるべき第1の電圧(第1の時間枠に対して)を示す信号を送信し、次いで電圧は印加されないこと、又は第2の電圧が印加されるべきであること(第2の時間枠に対して)を指令する信号を送信するサイクルを繰り返す。
他の動作条件下で、マイクロコントローラ410は、ランプ電圧を出力するようにDACに指令する、DAC420への信号を生成してもよい。他の動作条件下で、マイクロコントローラ410は、正弦波電圧をシミュレートする電圧を出力するようにDAC420に指令する、DAC420への信号を生成してもよい。これらの信号は、前の段落又は以前本出願で上述されているパルス発生方法のいずれかに組み込むことも可能である。本発明の一実施形態では、マイクロコントローラ410は、命令及び/又はパルスのシーケンスを生成することができ、これをDAC420が受信し、パルスの特定のシーケンスが印加される意味だと理解する。例えば、マイクロコントローラ410は、第1の時間枠の第1の繰り返しに対する定電圧、第2の時間枠の第1の繰り返しに対するランプ電圧、第1の時間枠の第2の繰り返しに対する正弦波電圧、及び第2の時間枠の第2の繰り返しについて2つの値を有する方形波を生成するようにDAC420に指令する命令シーケンスを(信号及び/又はパルスを介し)送信してもよい。
マイクロコントローラ410は、安定化時間枠又は数回の繰り返しについて、このサイクリングを続けるためのプログラマブルロジック又はプログラムを含んでもよい。例示的に、マイクロコントローラ410は、いつ第1の時間枠又は第2の時間枠が経過したかを識別するための計数ロジックを含んでもよい。加えて、マイクロコントローラ410は、安定化時間枠が経過したことを識別する計数ロジックを含んでもよい。先行する時間枠のいずれかが経過した後に、計数ロジックは、新しい信号を送信する、又はDAC420への信号の送信を停止するようマイクロコントローラに指令してもよい。
マイクロコントローラ410を使用することにより、様々な大きさの電圧をいくつかの持続時間にわたっていくつかのシーケンスで印加することができる。本発明の一実施形態では、マイクロコントローラ410は1分間の第1の期間に大きさが約1.0ボルトである電圧パルスを送信し、次いで、4分間の第2の期間に大きさが約0.5ボルトである電圧パルスを送信し、4回このサイクルを繰り返すようにデジタルアナログ変換器420に指令する制御ロジック又はプログラムを備えることができる。本発明の一実施形態では、マイクロコントローラ420は、それぞれの繰り返しでそれぞれの第1の電圧に対して同じ大きさの電圧パルスを印加することをDAC420に行わせる信号を送信するようにプログラムされてもよい。本発明の一実施形態では、マイクロコントローラ410は、それぞれの繰り返しでそれぞれの第1の電圧に対して異なる大きさの電圧パルスを印加することをDACに行わせる信号を送信するようにプログラムされてもよい。本発明のこの実施形態では、マイクロコントローラ410は、それぞれの繰り返しにおいてそれぞれの第2の電圧に対して異なる大きさの電圧パルスを印加することをDAC420に行わせる信号を送信するようにもプログラムされてもよい。例示的に、マイクロコントローラ410は、第1の繰り返しにおいて約1.0ボルトの第1の電圧パルスを印加すること、第1の繰り返しにおいて約0.5ボルトの第2の電圧パルスを印加すること、第2の繰り返しにおいて0.7ボルトの第1の電圧及び0.4ボルトの第2の電圧を印加すること、並びに第3の繰り返しにおいて1.2ボルトの第1の電圧及び0.8ボルトの第2の電圧を印加することをDAC420に行わせる信号を送信するようにプログラムされてもよい。
マイクロコントローラ410は、第1の時間枠において複数の短い持続時間の電圧パルスを送るようにDAC420に指令するようにもプログラムされてもよい。本発明のこの実施形態では、第1の時間枠全体にわたって(例えば、2分間)1つの電圧が印加されるのではなく、複数のより短い持続時間のパルスがセンサに印加されてもよい。この実施形態では、マイクロコントローラ410は、第2の時間枠において複数の短い持続時間の電圧パルスをセンサに送るようにDAC420に指令するようにもプログラムされてもよい。例示的に、マイクロコントローラ410は、短い持続時間が50ミリ秒又は100ミリ秒である複数の短い持続時間の電圧パルスを印加することをDACに行わせる信号を送信してもよい。これらの短い持続時間のパルスの間に、DACは、電圧を印加しなくてもよいし、又はDACは、最低電圧を印加してもよい。マイクロコントローラは、第1の時間枠、例えば、2分間に、短い持続時間の電圧パルスを印加することをDAC420に行わせてもよい。次いで、マイクロコントローラ410は、電圧を印加しないか、又は第2の時間枠で第2の電圧の大きさの、短い持続時間の電圧パルスを印加することのいずれかをDACに行わせる信号をセンサに送り、例えば、第2の電圧は0.75ボルトとし、第2の時間枠を5分間としてもよい。本発明の一実施形態では、マイクロコントローラ410は、第1の時間枠及び/又は第2の時間枠で短い持続時間のパルスのそれぞれに対して異なる大きさの電圧を印加することをDAC420に行わせる信号をDAC420に送ってもよい。本発明の一実施形態では、マイクロコントローラ410は、第1の時間枠又は第2の時間枠で電圧の大きさのパターンを短い持続時間の電圧パルスに適用することをDAC420に行わせる信号をDAC420に送ってもよい。例えば、マイクロコントローラは、第1の時間枠で30個の20ミリ秒パルスをセンサに印加するようDAC420に指令する信号又はパルスを送信してもよい。30個の20ミリ秒パルスのそれぞれは、同じ大きさを有していても、異なる大きさを有していてもよい。本発明のこの実施形態では、マイクロコントローラ410は、第2の時間枠で短い持続時間のパルスを印加するようDAC420に指令するか、又は第2の時間枠の間に別の電圧波形を印加するようDAC420に指令してもよい。
図6〜図8の開示では、電圧の印加を開示しているが、安定化プロセスを開始するために電流をセンサに印加してもよい。例示的には、図6Bに示されている本発明の実施形態では、第1の電流は、アノード又はカソード応答を開始するために第1の時間枠で印加され、第2の電流は、反対のアノード又はカソード応答を開始するために第2の時間枠で印加されてもよい。第1の電流及び第2の電流の印加は、複数の繰り返しの間続けることができる、又は安定化時間枠において続いてもよい。本発明の一実施形態では、第1の電流は、第1の時間枠で印加され、第1の電圧は、第2の時間枠で印加されてもよい。換言すると、アノード又はカソードサイクルのうちの一方が、センサに印加されている電流によってトリガされ、アノード又はカソードサイクルのうちの他方が、センサに印加されている電圧によってトリガされてもよい。上記のように、印加される電流は、定電流、ランプ電流、ステップパルス電流、又は正弦波電流であってもよい。特定の動作条件下で、電流は、第1の時間枠で短い持続時間のパルスのシーケンスとして印加されてもよい。
図9Bは、センサと、本発明の一実施形態による解析モジュールを安定化期間におけるフィードバックに利用するセンサエレクトロニクスとを示す。図9Bでは、解析モジュール950をセンサ電子装置360に導入する。解析モジュール950は、センサからのフィードバックを利用して、センサが安定化しているかどうかを判定する。本発明の一実施形態では、マイクロコントローラ410は、DAC420が電圧又は電流をセンサ355の一部に印加するようにDAC420を制御する命令又はコマンドを含んでもよい。図9Bは、電圧又は電流を、基準電極370と作用電極375との間に印加することが可能であることを示す。しかし、電圧又は電流は、電極間に、又は直接的に電極のうちの一方に印加することができ、本発明は、図9Bに示されている実施形態によって制限されるべきでない。電圧又は電流の印加は、点線955で示される。解析モジュール950は、センサ355内の電圧、電流、抵抗、又はインピーダンスを測定してもよい。図9Bは、測定は作用電極375で行われることを示すが、これは本発明を限定するものではなく、その理由は、本発明の他の実施形態ではセンサの電極間、又は直接的に、基準電極370若しくは対電極365のいずれかの電圧、電流、抵抗、又はインピーダンスを測定してもよいからである。解析モジュール950は、測定された電圧、電流、抵抗、又はインピーダンスを受信することができ、その測定値を記憶されている値(例えば、閾値)と比較してもよい。点線956は、解析モジュール950が、電圧、電流、抵抗、又はインピーダンスの測定値を読み取る又は測定を行うことを表す。特定の動作条件下で、測定された電圧、電流、抵抗、又はインピーダンスが、閾値より高い場合、センサは安定化しており、センサ信号は患者の生理学的状態の正確な読み取り値を提供している。他の動作条件下では、測定された電圧、電流、抵抗、又はインピーダンスが閾値を下回る場合、センサは安定化されている。他の動作条件下では、解析モジュール950は、測定された電圧、電流、抵抗、又はインピーダンスが特定の時間枠において、例えば、1分間又は2分間、安定していることを検証してもよい。これは、センサ355が安定化していること、及びセンサ信号が対象の生理学的パラメータ、例えば、血糖値の正確な測定値を送信していることを表してもよい。解析モジュール950が、センサが安定化し、センサ信号が正確な測定値を提供していると判定した後、解析モジュール950は、センサが安定化しており、マイクロコントローラ410がセンサ355のセンサ信号を使用すること、又は受信することを開始できることを示す信号(例えば、センサ安定化信号)をマイクロコントローラ410に送信してもよい。これは、点線957で表される。
図10は、本発明の実施形態に係る水和エレクトロニクスを含むセンサシステムのブロック図を示す。センサシステムは、コネクタ1010、センサ1012、及びモニタ又はセンサ電子装置1025を備える。センサ1012は、電極1020と接続部1024とを備える。本発明の実施形態では、センサ1012は、コネクタ1010及びケーブルを介してセンサ電子装置1025に接続されてもよい。本発明の他の実施形態では、センサ1012は、センサ電子装置1025に直接的に接続されてもよい。本発明の他の実施形態では、センサ1012は、センサ電子装置1025と同じ物理的装置に組み込まれてもよい。モニタ又はセンサ電子装置1025は、電源1030、レギュレータ1035、信号プロセッサ1040、計測プロセッサ1045、及びプロセッサ1050を含んでもよい。モニタ又はセンサ電子装置1025は、水和検出回路1060を含んでもよい。水和検出回路1060は、センサ1012とインターフェースし、センサ1020の電極1012が十分に水和しているかどうかを判定する。電極1020が十分に水和していない場合、電極1020は、正確なグルコース読み取りを提供しないので、電極1020がいつ十分に水和されるかを知ることは重要である。電極1020が十分に水和されると、正確なグルコース読み取り値が得られる。
図10に示す本発明の実施形態では、水和検出回路1060は、遅延又はタイマモジュール1065と、接続検出モジュール1070とを含んでもよい。短期的センサ又は皮下センサを利用する本発明の一実施形態では、センサ1012が皮下組織内に挿入された後、センサ電子装置又はモニタ1025は、センサ1012に接続される。接続検出モジュール1070は、センサ電子装置1025がセンサ1012に接続されたことを識別し、タイマモジュール1065に信号を送る。これは、検出器1083が接続を検出し、センサ1012がセンサ電子装置1025に接続されたことを示す信号を接続検出モジュール1070に送ることを表す矢印1084によって図10に例示されている。埋め込み型又は長期センサが利用される実施形態では、接続検出モジュール1070は、埋め込み型センサが体内に挿入されたことを識別する。タイマモジュール1065は、接続信号を受信し、設定された又は確立された水和時間の間待つ。例示的に、水和時間は、2分間、5分間、又は20分間であってもよい。これらの例は、例示的であり、限定的ではないことを意味する。時間枠は、設定された分数である必要はなく、任意の秒数も含むことができる。本発明の一実施形態では、タイマモジュール1065が、設定された水和時間の間待った後、タイマモジュール1065は、センサ1012が水和されたことを、水和信号を送信することによってプロセッサ1050に通知してもよいが、これはライン1086によって示される。
本発明のこの実施形態では、プロセッサ1050は、水和信号を受信し、水和信号が受信された後にのみ、センサ信号(例えば、センサ測定値)を利用することを開始する。本発明の別の実施形態では、水和検出回路1060は、センサ(センサ電極1020)と信号プロセッサ1040との間に結合されてもよい。本発明のこの実施形態では、水和検出回路1060は、設定された水和時間が経過したことをタイマモジュール1065が水和検出回路1060に通知するまで、センサ信号が信号プロセッサ1040に送られることを防止してもよい。これは、参照番号1080及び1081で標識される点線で示される。例示的に、タイマモジュール1065は、接続信号をスイッチ(又はトランジスタ)に送って、スイッチをオンにし、センサ信号を信号プロセッサ1040に進ませてもよい。本発明の代替的実施形態では、タイマモジュール1065は、接続信号を送信し、水和検出回路1060内のスイッチ1088をオンにして(又はスイッチ1088を閉じて)、水和時間が経過した後にレギュレータ1035からの電圧がセンサ1012に印加できるようにしてもよい。換言すると、本発明のこの実施形態では、レギュレータ1035からの電圧が、水和時間経過後までセンサ1012に印加されない。
図11は、水和時間の決定を補助する機械スイッチを含む本発明の実施形態を示す。本発明の実施形態では、単一のハウジングは、センサアセンブリ1120及びセンサ電子装置1125を備えてもよい。本発明の一実施形態では、センサアセンブリ1120は、あるハウジング内にあり、センサ電子装置1125は、別のハウジング内にあってもよいが、センサアセンブリ1120及びセンサ電子装置1125は共に接続されてよい。本発明のこの実施形態では、接続検出機構1160は、機械スイッチであってもよい。機械スイッチは、センサ1120がセンサ電子装置1125に物理的に接続されていることを検出してもよい。本発明の一実施形態では、タイマ回路1135も、機械スイッチ1160が、センサ1120がセンサ電子装置1125に接続されていることを検出したときに起動されてもよい。換言すると、機械スイッチが閉じ、信号がタイマ回路1135に転送されてもよい。タイマ回路1135は、水和時間が経過すると、スイッチ1140に信号を送信し、レギュレータ1035が電圧をセンサ1120に印加する。換言すると、水和時間が経過するまで電圧は印加されない。本発明の一実施形態では、電流は、水和時間が経過すると、センサに印加されるものとして、電流が電圧の代わりに使用されてもよい。本発明の代替実施形態において、機械スイッチ1160が、センサ1120がセンサ電子装置1125に物理的に接続されていることを識別したときに、電力は、最初にセンサ1120に印加されてもよい。センサ1120に送られる電力により、結果的にセンサ信号がセンサ1120内の作用電極から出力されることになる。センサ信号は、測定され、プロセッサ1175に送られてもよい。プロセッサ1175は、カウンタ入力を備えてもよい。特定の動作条件下において、センサ信号がプロセッサ1175内に入力されたときから設定された水和時間が経過した後に、プロセッサ1175は、対象の体内のグルコースの正確な測定値としてセンサ信号を処理することを開始してもよい。換言すると、プロセッサ1170は、ポテンシオスタット回路1170から一定時間センサ信号を受け取るが、プロセッサのカウンタ入力から水和時間が経過したことを識別する命令を受け取るまで信号を処理しない。本発明の一実施形態では、ポテンシオスタット回路1170は、電流−周波数変換器1180を備えてもよい。本発明のこの実施形態では、電流−周波数変換器1180は、センサ信号を電流値として受信し、その電流値を周波数値に変換してもよく、周波数値は、プロセッサ1175での取り扱いが容易である。
本発明の実施形態において、センサ1120がセンサ電子装置1125から切断された場合、機械スイッチ1160は、プロセッサ1175にも通知してもよい。これは、図11において点線1176で示される。これは、結果として、プロセッサ1170がセンサ電子装置1125の複数の部品、チップ、及び/又は回路への電源を切るか、又は電力を下げることになってもよい。センサ1120が接続されていない場合、センサ電子装置1125の部品又は回路が電源オンの状態にあると、電池又は電源の電力が流出することがある。したがって、機械スイッチ1160が、センサ1120がセンサ電子装置1125から切断されたことを検出した場合、機械スイッチは、このことをプロセッサ1175に指示し、プロセッサ1175は、センサ電子装置1125の電子回路、チップ、又は部品のうちの1つ以上への電源を切るか、又は電力を下げてもよい。
図12は、本発明の実施形態に係る電子的な水和検出方法を示す。本発明の一実施形態では、センサの接続を検出する電気的検出機構が利用されてもよい。本発明のこの実施形態では、水和検出エレクトロニクス1250は、交流電源1255及び検出回路1260を備えてもよい。水和検出エレクトロニクス1250は、センサ電子装置1225内に位置されてもよい。センサ1220は、対電極1221、基準電極1222、及び作用電極1223を備えてもよい。図12に示すように、交流電源1255は、電圧設定装置1275、基準電極1222、検出回路1260に連結されている。本発明のこの実施形態では、図12の点線1291に示すように、交流電源からの交流信号が基準電極接続部に印加される。本発明の実施形態において、交流信号は、インピーダンスを通じてセンサ1220に連結され、連結された信号は、センサ1220がセンサ電子装置1225に接続されている場合に大幅に減衰される。これにより、低レベル交流信号は、検出回路1260への入力で存在する。これは、大きく減衰された信号又は高レベルの減衰を有する信号とも称されてもよい。特定の動作条件下では、交流信号の電圧レベルは、Vapplied*(Ccoupling)/(Ccoupling+Csensor)とすることができる。検出回路1260が、検出回路1260の入力端子に高レベルの交流信号(低減衰信号)が存在していることを検出した場合、センサ1220は十分に水和又は活性化されていないため、マイクロコントローラ410に割り込みは送られない。例えば、検出回路1260の入力は、比較器であってもよい。センサ1220が十分に水和(湿潤)されている場合、対電極と基準電極との間に有効容量(例えば、図12の静電容量Cr−c)が形成され、基準電極と作用電極との間に有効容量(例えば、図12の静電容量Cw−r)が形成される。換言すると、有効容量は、2つのノード間に形成される静電容量に関係し、実際のコンデンサが2つの電極の間の回路内に置かれていることを表さない。本発明の一実施形態では、交流源1255からの交流信号は、静電容量Cr−c及びCw−rによって十分に減衰され、検出回路1260は、検出回路1260の入力端子のところで交流源1255からの低レベルの、又は大きく減衰された交流信号の存在を検出する。本発明のこの実施形態では、センサ1120とセンサ電子装置1125との間の既存の接続部の利用によりセンサへの接続部の数が低減されるため重要である。換言すると、図11に開示されている機械スイッチは、センサ1120とセンサ電子装置1125との間のスイッチ及び関連する接続部を必要とする。センサ1120は、連続的にサイズを小型化し、部品をなくすことでこのサイズ縮小を達成しやすくなるので、機械スイッチをなくすと有利である。本発明の代替的実施形態では、交流信号は、異なる電極(例えば、対電極又は作用電極)に印加されてもよく、本発明は、同様に動作してもよい。
上記のように、検出回路1260が、検出回路1260の入力端子に低レベル交流信号が存在していることを検出した後、検出回路1260は、後から、減衰が低い高レベル交流信号が入力端子のところに存在していることを検出してもよい。これは、センサ1220がセンサ電子装置1225から切断されていること、又はセンサが正常に動作していないことを表す。センサがセンサ電子装置1225から切断されている場合、交流源は、減衰がほとんどないか又は低いまま、検出回路1260の入力に連結されてもよい。上記のように、検出回路1260は、マイクロコントローラへの割り込みを生成してもよい。この割り込みは、マイクロコントローラが受け取り、マイクロコントローラは、センサ電子装置1225内の1つ又は複数の部品又は回路への電力を低減する、又は電力供給を止めてもよい。これは、第2の割り込みと称されてもよい。また、これは、センサ電子装置1225の電力消費を低減するのを、特にセンサ1220がセンサ電子装置1225に接続されていないときに助ける。
図12に示されている本発明の代替的実施形態において、交流信号は、参照番号1291によって例示されているように、基準電極1222に印加され、インピーダンス測定装置1277は、センサ1220内の一領域のインピーダンスを測定してもよい。例示的には、この領域は、図12の点線1292によって示されているように、基準電極と作用電極との間の一領域であってもよい。特定の動作条件下で、インピーダンス測定装置1277は、測定されたインピーダンスがインピーダンス閾値又は他の設定基準より低い値に減少した場合に信号を検出回路1260に送信してもよい。これは、センサが十分に水和されていることを表す。他の動作条件下で、インピーダンス測定装置1277は、インピーダンスがインピーダンス閾値より高くなると、信号を検出回路1260に送信してもよい。そして、検出回路1260は、割り込みをマイクロコントローラ410に送信する。本発明の別の実施形態では、インピーダンス測定装置1277は、割り込み又は信号を直接マイクロコントローラに送信してもよい。
本発明の代替の実施形態では、交流源1255は、直流源で置き換えられてもよい。直流源が利用される場合、抵抗測定素子が、インピーダンス測定素子1277の代わりに利用されてもよい。抵抗測定素子を利用する本発明の一実施形態では、抵抗が抵抗閾値又は設定基準を下回った後、抵抗測定素子は、センサが十分に水和されていること、及び電力がセンサに印加され得ることを示す信号を、検出回路1260(点線1293によって表されている)に又は直接的にマイクロコントローラに送信してもよい。
図12に示されている本発明の実施形態では、検出回路1260が、交流源からの低レベルの、又は大きく減衰された交流信号を検出した場合、割り込みが、マイクロコントローラ410に対して生成される。この割り込みは、センサが十分に水和されていることを示す。本発明のこの実施形態では、割り込みに応答して、マイクロコントローラ410は、電圧又は電流をセンサ1220に印加することをデジタル−アナログ変換器420に指令するか、又は行わせるためにデジタルアナログ変換器420に伝えられる信号を発生する。図6A、図6B、又は図6C又はパルスの印加を説明している関連する文において上述されているパルス又は短い持続時間のパルスの異なるシーケンスのいずれかがセンサ1220に印加されてもよい。例示的には、DAC420からの電圧は、オペアンプ1275に印加されてもよく、その出力がセンサ1220の対電極1221に印加される。この結果、センサ信号が、センサ、例えば、センサの作用電極1223によって生成される。センサが十分に水和したため、割り込みによって識別されるように、作用電極1223において生成されたセンサ信号は、グルコースを正確に測定する。センサ信号は、センサ信号測定装置431によって測定され、センサ信号測定装置431は、そのセンサ信号をマイクロコントローラ410に送信し、そこで対象の生理学的状態のパラメータが測定される。割込の発生は、センサが十分に水和されていること、及びセンサ1220が正確なグルコース測定値を現在供給していることを表す。本発明のこの実施形態では、水和期間は、センサのタイプ及び/又は製造者、及び対象の体内への挿入又は埋め込みへのセンサの反応に依存してもよい。例示的には、1つのセンサ1220は、5分間の水和時間を有し、1つのセンサ1220は、1分間、2分間、3分間、6分間、又は20分間の水和時間を有してもよい。また、センサに対する水和時間の許容可能な長さはいずれでもよいが、より短い時間が好ましい。
センサ1220が接続されているが、十分に水和又は湿潤されていない場合、有効容量Cr−c及びCw−rは、交流源1255からの交流信号を減衰しなくてもよい。センサ1120内の電極は、挿入前に乾燥しており、電極が乾燥しているため、2つの電極の間に良好な電気的経路(又は導電性経路)は存在しない。したがって、高レベルの交流信号又は減衰の少ない交流信号は、そのまま、検出回路1260によって検出され、割り込みは生成されなくてもよい。センサが挿入されると、電極は、導電性の体液中に浸漬される。この結果、直流抵抗の低い漏れ経路が生じる。また、境界層キャパシタが、金属/流体界面に形成される。換言すると、金属/流体界面の間にかなり大きな静電容量が形成され、この大きな静電容量は、センサの電極の間に直列に接続される2つのコンデンサのように見える。これは、有効容量と称されてもよい。実際的に、電極の上にある電解質の導電度が測定される。本発明のいくつかの実施形態では、グルコース制限膜(GLM)は、インピーダンスブロッキングの電気効率も示す。未水和のGLMであると、インピーダンスが高くなるが、高水分のGLMであると、インピーダンスは低くなる。正確なセンサ測定値を得るためには、インピーダンスが低いことが望ましい。
図13Aは、本発明の実施形態に係るセンサの水和方法である。本発明の実施形態では、センサは、センサ電子装置に物理的に接続されてもよい(1310)。接続の後、本発明の一実施形態では、タイマ又はカウンタが起動されて、水和時間をカウントしてもよい(1320)。水和時間が経過した後、センサへの電圧の印加を開始するためにセンサ電子装置内のサブシステムに信号が送信されてもよい(1330)。上述のように、本発明の一実施形態では、マイクロコントローラは、信号を受け取って、DACに電圧をセンサに印加するように指令することができるか、本発明の別の実施形態において、スイッチがレギュレータに電圧をセンサに印加させるための信号を受け取ることができる。水和時間は、5分間、2分間、10分間であってもよく、対象及びセンサのタイプによっても変化してもよい。
本発明の代替的実施形態では、センサがセンサ電子装置に接続された後に、交流信号(例えば、低電圧交流信号)がセンサ、例えば、センサの基準電極に印加されてもよい(1340)。交流信号が印加されてもよいのは、センサをセンサ電子装置に接続することで、交流信号をセンサに印加することができるからである。交流信号の印加後に、電圧が印加されるセンサ内の電極と他2つの電極の間に有効容量が形成される(1350)。検出回路は、検出回路の入力に交流信号のどのレベルが存在するかを決定する(1360)。有効容量が電極の間に良好な導電路を形成し、その結果、交流信号が減衰することで、低レベル交流信号(又は減衰の大きい交流信号)が検出回路の入力のところに存在する場合、検出回路によって割り込みが発生し(1370)、割り込みがマイクロコントローラに送られる。
マイクロコントローラは、検出回路が発生した割り込みを受け取り、電圧をセンサの電極、例えば、対電極に印加することをデジタルアナログ変換器に指令するか、又は行わせる信号をデジタルアナログ変換器に送信する(1380)。センサの電極に電圧を印加すると、その結果、センサはセンサ信号1390を生成するか、又は発生する。センサ信号測定装置431は、生成したセンサ信号を測定し、センサ信号をマイクロコントローラに送信する。マイクロコントローラは、作用電極に連結されている、センサ信号測定装置からセンサ信号を受信し(1395)、センサ信号を処理して対象又は患者の生理学的特性の測定値を抽出する。
図13Bは、本発明の一実施形態に係るセンサの水和を検証するための更なる方法を示す。図13Bに示されている本発明の実施形態では、センサは、センサ電子装置に物理的に接続される(1310)。本発明の一実施形態では、交流信号は、センサ内の電極、例えば、基準電極に印加される(1341)。あるいは、本発明の一実施形態では、直流信号がセンサ内の電極に印加される(1341)。交流信号が印加されると、インピーダンス測定素子は、センサ内の点におけるインピーダンスを測定する(1351)。あるいは、直流信号が印加されると、抵抗測定素子は、センサ内の点における抵抗値を測定する(1351)。抵抗又はインピーダンスが、それぞれ抵抗閾値又はインピーダンス閾値(他の設定基準)より低い場合、インピーダンス(又は抵抗)測定素子は、検出回路に送信を行い(又は信号を送信させることができ)(1361)、検出回路は、センサが水和されていることを識別する割り込みをマイクロコントローラに送る。参照番号1380、1390、及び1395は、同一の動作を表すので、図13A及び図13Bでは同一である。
マイクロコントローラは、割り込みを受け取り、電圧をセンサに印加するための信号をデジタルアナログ変換器に送信する(1380)。本発明の代替的実施形態では、デジタルアナログ変換器は、上記のように電流をセンサに印加できる。センサ、例えば、作用電極は、患者の生理学的パラメータを表す、センサ信号を生成する(1390)。マイクロコントローラは、センサ信号測定装置からセンサ信号を受信し(1395)、センサ信号をセンサ内の電極、例えば作用電極で測定する。マイクロコントローラは、センサ信号を処理して、対象又は患者の生理学的特性の測定値、例えば、患者の血糖値を抽出する。
図14A及び図14Bは、本発明の実施形態に係るセンサの水和を、センサを安定化することと組み合わせる方法を示す。図14Aに図示の本発明の実施形態において、センサはセンサ電子装置に接続される(1405)。交流信号は、センサの電極に印加される(1410)。検出回路は、検出回路の入力に交流信号のどのレベルが存在するかを決定する(1420)。検出回路は、低レベルの交流信号が入力のところに存在していると決定する場合(交流信号への減衰の高いレベルを表す)、割り込みが、マイクロコントローラに送られる(1430)。上で説明されているように、割り込みがマイクロコントローラに送られると、マクロコントローラは、安定化シーケンス、即ち、複数の電圧パルスをセンサの電極に印加することを始めるか、又は開始することを知る(1440)。例えば、マイクロコントローラは、デジタルアナログ変換器に、3つの電圧パルス(+0.535ボルトの大きさを有する)をセンサに印加することを行わせることができ、3つの電圧パルスのそれぞれの後に、電圧パルス(印加される1.07ボルトの大きさを有する)3つ分の期間が続く。これは、電圧の安定化シーケンスを送信することと称されてもよい。マイクロコントローラは、これを、リードオンリーメモリ(ROM)又はランダムアクセスメモリ内のソフトウェアプログラムを実行することによって行わせてもよい。安定化シーケンスが実行を終了した後、センサは、測定され、マイクロコントローラに送信される、センサ信号を生成してもよい(1450)。
本発明の一実施形態では、検出回路は、水和時間閾値が経過した後でも、高レベルの交流信号が検出回路の入力(例えば、比較器の入力)に存在し続けていると決定する(1432)ことができる。例えば、水和時間閾値は、10分間であってもよい。10分間経過した後、検出回路は、高レベルの交流信号が存在していることがまだ検出されていてもよい。この時点で、検出回路は、マイクロコントローラに水和補助信号を送信(1434)してもよい。マイクロコントローラが水和補助信号を受信した場合、マイクロコントローラは、電圧パルス又は一連の電圧パルスを印加し、センサの水和を補助することをDACに行わせる信号を送信(1436)してもよい。本発明の一実施形態において、マイクロコントローラは、安定化シーケンス又は他の電圧パルスの一部を印加して、センサの水和を補助することをDACに行わせる信号を送信してもよい。本発明のこの実施形態では、電圧パルスを印加すると、その結果、低レベルの交流信号(又は減衰の大きい信号)が検出回路において検出されてもよい(1438)。この時点で、検出回路はステップ1430で開示されるように、割り込みを送信してもよく、マイクロコントローラは安定化シーケンスを開始してもよい。
図14Bは、水和方法とフィードバックが安定化プロセスにおいて利用される、安定化方法との組み合わせの第2の実施形態を示す。センサは、センサ電子装置に接続される(1405)。センサには、交流信号(又は直流信号)が印加される(1411)。本発明の一実施形態では、交流信号(又は直流信号)は、例えば基準電極のようなセンサの電極に印加される。インピーダンス測定装置(又は抵抗測定装置)は、センサの所定領域内のインピーダンス(又は抵抗)を測定する(1416)。本発明の一実施形態では、基準電極と作用電極との間のインピーダンス(又は抵抗)を測定してもよい。測定されたインピーダンス(又は抵抗)は、インピーダンス又は抵抗値と比較され(1421)、これにより、そのインピーダンス(又は抵抗)がセンサ内で十分に低くなり、センサが水和されることを示すかどうかを調べる。インピーダンス(又は抵抗)が、インピーダンス(又は抵抗)値又は他の設定基準(閾値であってもよい)より低い場合、マイクロコントローラに割り込みが送られる(1431)。割り込みを受け取った後、マイクロコントローラは、安定化シーケンスの電圧(又は電流)をセンサに印加することをDACに指令する信号をDACに送信する(1440)。安定化シーケンスがセンサに印加された後、センサ信号が、センサ内に(例えば、作用電極に)生成され、センサ信号測定装置によって測定され、センサ信号測定装置によって送信され、マイクロコントローラによって受信される(1450)。センサは水和され、安定化シーケンスの電圧がセンサに印加されているので、センサ信号は、生理学的パラメータ(即ち、血糖)を正確に測定したものとなっている。
図14Cは、安定化方法と水和法とを組み合わせた本発明の第3の実施形態を示す。本発明のこの実施形態では、センサは、センサ電子装置に接続される(1500)。センサが、センサ電子装置に物理的に接続された後、交流信号(又は直流信号)は、センサの電極(例えば、基準電極)に印加される(1510)。同時に、又はほぼ同時に、マイクロコントローラは、安定化電圧シーケンスをセンサに印加する(1520)ことをDACに行わせる信号を送信する。本発明の代替的実施形態では、安定化電流シーケンスが、安定化電圧シーケンスの代わりに、センサに印加されてもよい。検出回路は、検出回路の入力端子に交流信号(又は直流信号)のどのレベルが存在するかを決定する(1530)。検出回路の入力端子に、減衰が大きい交流信号(又は直流信号)を表す、低レベル交流信号(又は直流信号)が存在している場合、割り込みが、マイクロコントローラに送られる(1540)。マイクロコントローラは、安定化シーケンスを既に開始しているので、マイクロコントローラは、割り込みを受け取り、センサが十分に水和されていることを示す第1のインジケータを設定する(1550)。安定化シーケンスが完了した後、マイクロコントローラは、安定化シーケンスの完了を示す第2のインジケータを設定する(1555)。安定化シーケンス電圧を印加するとその結果、センサ、例えば作用電極は、センサ信号測定回路によって測定され、マイクロコントローラに送信される、センサ信号を生成する(1560)。安定化シーケンスが完了していることを示す第2のインジケータが設定され、水和が完了していることを示す第1のインジケータが設定された場合、マイクロコントローラは、センサ信号を利用する(1570)ことができる。1つ又は両方のインジケータがセットされていない場合、マイクロコントローラは、センサ信号が対象の生理学的測定の正確な測定値を示さないので、センサ信号を利用しなくてもよい。
上述の水和及び安定化プロセスは、一般的に、より大きな連続的グルコース監視(CGM)方法の一部として使用されてもよい。連続的グルコース監視における現在の技術水準は概ね補助的なものであり、臨床判定を行うためには、CGM装置(例えば、埋め込み型センサ又は皮下センサを含む)によって提供される読み取り値を基準値なしでは使用できないことを意味する。基準値は、例えばBG計を用いてフィンガースティックから得られなくてはならない。センサ/センシング部品から利用可能な情報量が限られているため、基準値が必要とされる。具体的には、センシング部品により現在提供される処理用の情報は、未加工センサ値(即ち、センサ電流又はIsig)及び対電圧だけであり、ここで、対電圧とは、対電極と基準電極との間の電圧である(例えば、図5参照)。このため、分析の際に、未加工センサ信号の異常が明らかになった場合(例えば、信号が低下している場合)には、センサの故障と、ユーザ/患者の体内における生理的変化(体内でのグルコース濃度の変化)との間での区別を可能とする唯一の方法は、フィンガースティックを介した基準グルコース値の取得である。既知のように、基準フィンガースティックは、センサを較正するためにも使用される。
本明細書で説明されている本発明の実施形態は、連続的グルコース監視の向上と改善を行い、結果として、より自律性の高いシステム、更には関係する装置及び方法を実現し、基準フィンガースティックの必要性を最小限にし、又はなくし、それによって、臨床決定を、高い信頼度レベルで、センサ信号だけから得られる情報に基づいて行えるようにすることに関する。本発明の実施形態によるセンサ設計の観点からは、そのような自律性は、電極冗長性、センサ診断、及びIsig及び/又はセンサグルコース(SG)融合を通じて達成されてもよい。
更に以下で調べるように、冗長性は、複数の作用電極を(例えば、対電極及び基準電極に加えて)使用して患者の血糖(BG)レベルを示す複数の信号を発生することを通じて実現され得る。複数の信号を使用して、(作用)電極の相対的正常性、センサの全体的信頼性、及び仮にあったとして、較正基準値が必要になる頻度を評価してもよい。
センサ診断は、センサの正常性をリアルタイムで調べられるようにする追加の(診断)情報を使用することを含む。この点に関して、電気化学インピーダンス分光法(EIS)から、異なる周波数におけるセンサインピーダンス及びインピーダンス関連パラメータの形態でそのような追加情報を得られることが発見されている。更に、有利的に、いくつかの周波数範囲について、インピーダンス及び/又はインピーダンス関連データが、実質的にグルコース独立であることが更に発見されている。そのようなグルコース独立性により、ロバストで信頼性の高いセンサグルコース値を(融合方法を通じて)生成することだけでなく、個別の電極の、またグルコース依存のIsigから実質的に独立しているセンサ全体の状態、正常性、使用時間、及び効率を評価することにも、様々なEISベースのマーカ又はインジケータの使用が可能になる。
例えば、グルコース独立のインピーダンスデータの分析により、例えば、1kHzの実数インピーダンス、1kHzの虚数インピーダンス、及びナイキストスロープに対する値を使用し、センサがどれだけ速く水和し、データ収集に使用できるようになるかについて、センサの効率に関する情報が提供される(以下で更に詳しく説明する)。更に、グルコース独立のインピーダンスデータからは、センサ膜表面上に存在し得る、グルコースがセンサ内を通過するのを一時的に妨げ、信号がディップすることを引き起こし得る、潜在的閉塞に関する情報が提供される(例えば、1kHzの実数インピーダンスに対する値を使用して)。加えて、グルコース独立のインピーダンスデータからは、例えば、1kHz以上の周波数における位相角及び/又は虚数インピーダンスに対する値を使用し、長時間の着用時のセンサ感度損失−−潜在的に挿入部位の局部的酸素欠乏による−−に関する情報が提供される。
以下に更に詳しく記載されるように、電極冗長性及びEISに関して、並びに他の文脈において、融合アルゴリズムを使用することで、それぞれの冗長電極についてEISによって提供される診断情報を受け取り、それぞれの電極の信頼性を独立して評価してもよい。次いで、それぞれの独立した信号について信頼性の尺度である、重みを加えることができ、患者/対象に見えるセンサグルコース値を生成するために使用され得る単一の融合信号が計算されてもよい。
上記のことからわかるように、冗長性、EISを使用したセンサ診断、及びEISベースの融合アルゴリズムを組み合わせて使用することにより、CGMシステム全体の信頼性を現在利用可能なものに比べて高めることができる。冗長性は、少なくとも2点に関して有益である。第1に、冗長性は、複数の信号を送ることによって単一の障害発生のリスクを取り除く。第2に、単一の電極で十分であると思われる場合にも複数の(作用)電極を設けることによって、冗長電極の出力を主電極に対するチェックとして使用することができ、それによって、頻繁な較正の必要性を軽減し、場合によってはなくしてもよい。加えて、EIS診断では、基準グルコース値(フィンガースティック)を必要とすることなくそれぞれの電極の正常性を自律的に精査し、それによって必要な基準値の数を減らす。しかし、技術EIS及びEIS診断方法の使用は、冗長システム、即ち、1つ以上の作用電極を有するシステムに限定されない。むしろ、本発明の実施形態に関連して以下で説明されるように、EISは、単一及び/又は複数電極センサと接続して使用すると有利であり得る。
EIS又は交流インピーダンス方法では、周期的な小振幅交流信号の印加に対するシステム応答を調べる。これは、図15Aに例示的に示されており、Eは印加される電位、Iは電流、及びインピーダンス(Z)はΔE/ΔIとして定義されている。しかし、インピーダンスは、本質的に、ΔE/ΔIとして数学的に単純に定義されてもよいが、これまで、EIS技術の連続的グルコース監視の応用の商業化に成功していない。これは、一部は、グルコースセンサが非常に複雑なシステムであり、今のところ、グルコースセンサに対するEIS出力の複雑さを完全に説明することができる数学的モデルがまだ開発されていないからである。
電気化学インピーダンス分光法を記述するために使用される単純化された電気回路モデルの1つが、図15Bに示される。この図において、IHPはInner Helmholtz Plane(内部ヘルムホルツ面)の略であり、OHPはOuter Helmholtz Plane(外部ヘルムホルツ面)の略であり、CEは対電極であり、WEは作用電極であり、Cdは二重層容量であり、Rpは分極抵抗であり、Zwはワールブルクインピーダンスであり、Rsは液抵抗である。後者4つの要素−−二重層容量(Cd)、ワールブルクインピーダンス(Zw)、分極抵抗(Rp)、及び液抵抗(Rs)−−のそれぞれは、センサの性能に関して重要な役割を果たし、低又は高周波交流作動電位を印加することによって別々に測定されてもよい。例えば、ワールブルクインピーダンスは、−−主に低周波インピーダンスである−−電気化学系の拡散インピーダンスに密接に関係し、したがって、全ての拡散制限のある電気化学センサ内に存在する。そのため、これらの要素のうちの1つ以上をグルコースセンサの1つ以上の要素及び/又は層に相関させることによって、EIS技術をセンサ診断ツールとして使用してもよい。
既知のように、インピーダンスは、その大きさと位相に関して定義され得るものであり、大きさ(|Z|)は電圧差振幅と電流振幅との比であり、位相(θ)は電流が電圧より先に進んでいる位相ずれである。回路が直流(DC)のみで駆動される場合、インピーダンスは抵抗と同じである、即ち、抵抗は、位相角がゼロである、インピーダンスの特別なケースである。しかし、複素量としてのインピーダンスは、その実部と虚部とで表されてもよい。ここで、実数インピーダンス及び虚数インピーダンスは、以下の式を使用してインピーダンスの大きさ及び位相から求めることができる。
実数インピーダンス(ω)=大きさ(ω)×cos(位相(ω)/180×π)
虚数インピーダンス(ω)=大きさ(ω)×sin(位相(ω)/180×π)
式中、ωは、大きさ(オーム)と位相(度)が測定される入力周波数を表す。一方のインピーダンスと他方の電流及び電圧との関係−−前者が後者の測定値に基づきどのように計算され得るかを含めて−−については、本発明の実施形態において使用するために開発された特定用途向け集積回路(ASIC)を含むセンサエレクトロニクスと関連して更に詳しく以下で調べる。
図15Bに示されている回路モデルを続きとして使用すると、システム全体のインピーダンスは、以下のように簡略化され得る。
式中、Z
w(ω)はワールブルクインピーダンスであり、ωは角速度であり、jは虚数単位(電流と混同しないように、伝統的な「i」の代わりに使用する)、C
d、R
p、及びR
sはそれぞれ二重層容量、分極抵抗、及び液抵抗である(既に定義されているとおりである)。ワールブルクインピーダンスは、以下のように計算できる。
式中、Dは拡散率であり、Lはセンサ膜厚さであり、Cは過酸化物濃度であり、m:1/2は45°のナイキストスロープに対応する。
ナイキスト線図は、グラフ表現であり、インピーダンスの実部(Real Z)は、周波数スペクトルにわたって虚部(Img Z)に対してプロットされる。図16Aは、ナイキスト線図の一般化された例を示し、Xの値はインピーダンスの実部であり、Yの値はインピーダンスの虚部である。位相角は、−−大きさ|Z|を有するベクトルを定義する−−インピーダンス点(X,Y)とX軸との間の角度である。
図16Aのナイキスト線図は、0.1Hz〜1000Mhzまでの選択される周波数で作用電極と対電極との間に交流電圧を直流電圧(DCバイアス)と共に印加することによって生成される(即ち、周波数掃引)。右から始め、周波数は、0.1Hzから高くなってゆく。それぞれの周波数で、実数及び虚数インピーダンスが計算され、プロットされてもよい。図示されているように、電気化学系の典型的なナイキスト線図は、変曲点のところで直線と交わる半円のような形状をとるものとしてよく、この半円と直線は、プロットされたインピーダンスを示す。特定の実施形態において、変曲点でのインピーダンスは、ナイキスト線図で識別するのが最も容易であり、切片を定義することができるため、特に重要である。典型的には、変曲点は、X軸に近く、変曲点のXの値は、分極抵抗と液抵抗との和(Rp+Rs)に近似する。
図16Bを参照すると、ナイキスト線図は、典型的には、低周波領域1610及び高周波数領域1620に関して記述することができ、「より高い周波数」及び「より低い周波数」というラベルは、相対的に使用されており、限定することを意図していない。そのため、例えば、低周波領域1610は、例示的に、約0.1Hzから約100Hz(又はそれ以上の周波数)の周波数範囲について得られるデータ点を含み、高周波領域1620は、例示的に、約1kHz(又はそれ以下の周波数)から約8kHz(及びそれ以上の周波数)の周波数範囲について得られるデータ点を含んでもよい。低周波領域1610では、ナイキストスロープは、ナイキスト線図内の低周波データ点の直線適合1630の勾配を表す。このように、より高周波領域1620では、虚数インピーダンスの値が最小となり、無視できるようになる。したがって、切片1600は、本質的に、より高い周波数(例えば、この場合には約1kHz〜8kHzの範囲内)の実数インピーダンスの値である。図16Bでは、切片1600は、約25キロオームである。
図16C及び図16Dは、グルコースセンサが正弦波(即ち、交流)作動電位にどのように応答するかを示す。これらの図において、GLMは、センサのグルコース制限膜であり、APは接着促進剤であり、HSAはヒト血清アルブミンであり、GOXはグルコースオキシダーゼ酵素(層)であり、E
dcは直流電位であり、E
acは交流電位であり、
は交流印加時の過酸化物濃度である。図16Cに示されているように、交流電位周波数、分子拡散率、及び膜厚さの関数である、センサ拡散長が、膜(GOX)長さに比べて小さい場合、システムは、一定の位相角(即ち、無限大)の比較的直線的な応答を与える。対照的に、拡散長が膜(GOX)の長さに等しい場合、システム応答は有限となり、その結果、図16Dに示されているように、半円のナイキスト線図が得られる。後者は、通常、低周波EISについて当てはまり、非ファラデープロセスで無視できるほど小さい。
EIS分析を行う場合には、様々な周波数の交流電圧、及び直流バイアスが、例えば、作用電極と基準電極との間に印加されてもよい。この点で、EISは、印加を単純な直流電流又は単一周波数の交流電圧に制限している可能性のある以前の方法に対する改善法である。全体的には、EISは、μHzからMHzの範囲内の周波数で実行されてもよいが、本発明の実施形態では、より狭い周波数範囲(例えば、約0.1Hz〜約8kHzの範囲)で十分であってもよい。したがって、本発明の実施形態では、約0.1Hz〜約8kHzの周波数範囲内に収まり、プログラム可能な振幅が少なくとも最大100mVまで、好ましくは約50mVである交流電位を印加することができる。
上述の周波数範囲内では、比較的高い周波数−−即ち、一般的に約1kHz〜約8kHzの範囲内に収まる周波数−−が、センサの静電容量に関する性質を精査するために使用される。膜の厚さ及び透磁率(permeability)に応じ、相対的に高い周波数におけるインピーダンスの典型的な範囲は、例えば約500オーム〜25キロオームの間であってもよく、典型的な位相の範囲は、例えば0度と−40度との間であってよい。その一方で、比較的低い周波数−−即ち、一般的に約0.1Hzから約100Hzの範囲内に収まる周波数−−は、センサの抵抗に関する性質を精査するために使用される。ここで、電極設計及び電極配線(metallization)の程度に応じ、出力実数インピーダンスに対する典型的な機能範囲は、例えば、約50キロオーム〜300キロオームの範囲とすることができ、位相に対する典型的な範囲は、約−50度〜約−90度までの範囲とすることができる。上記の例示的な範囲は、例えば、図16E及び図16Fのボード線図に示される。
上述されるように、「より高い周波数」及び「より低い周波数」というフレーズは、絶対的な意味ではなく、互いに関して相対的に使用されることが意図されており、これらは、上述の典型的なインピーダンス及び位相範囲と共に、例示的であり、限定することを意図していない。しかしながら、基本原理は、依然として同じであり、センサの静電容量及び抵抗に関する挙動は、周波数スペクトルにわたるインピーダンスデータを分析することによって精査することができ、典型的には、より低い周波数は、抵抗のより大きい部品(例えば、電極など)に関する情報を与えるが、より高い周波数は、容量性部品(例えば、膜)に関する情報を提供する。しかし、それぞれの場合における実際の周波数範囲は、例えば、(単一又は複数の)電極のタイプ、(単一又は複数の)電極の表面積、膜厚さ、膜の透磁率、及び同様の特性を含む、全体的設計に依存する。高周波回路部品とセンサ膜との間、更には低周波回路部品と例えば電極を含むファラデープロセスとの間の一般的対応に関しては、図15Bも参照されたい。
EISは、センサが単一の作用電極を備えるセンサシステム、更にセンサが複数の(冗長)作用電極を備えるセンサシステムにおいて使用されてもよい。一実施形態において、EISは、センサの使用時間(又はエージング)に関して価値のある情報を提供する。具体的には、異なる周波数において、インピーダンスの大きさと位相角が変化する。図17に見られるように、センサインピーダンス、−−特に、RpとRsとの和は、−−センサ使用時間(sensor age)及びセンサの動作条件を反映する。そのため、新しいセンサは、通常、図17の異なる線図からわかるように、使用済みセンサに比べて高いインピーダンスを有する。このように、RpとRsとの和のX値を考慮することによって、閾値を使用してセンサの使用時間がいつセンサの規定された動作寿命を超えたかを判断することができる。なお、図17〜図21に示され、以下で説明されている実例に関して、変曲点における実数インピーダンスの値(即ち、Rp+Rs)が、センサの経時劣化、状態、安定化、及び水和を判定するために使用されるが、代替的実施形態では、実数インピーダンスに加えて、又はその代わりに、例えば、虚数インピーダンス、位相角、ナイキストスロープなどの他のEIS由来パラメータを使用することができる。
図17は、センサの寿命にわたるナイキスト線図の一例を示す。矢印で示されている点は、周波数スペクトルにわたる掃引のそれぞれに対する各変曲点である。例えば、初期化前(時間t=0において)、Rs+Rpは、8.5キロオームより高く、初期化後(時間t=0.5時間)、Rs+Rpの値は、8キロオーム以下に下がった。次の6日間にわたり、Rs+Rpは減少し続け、指定されたセンサ寿命の終わりでは、Rs+Rpは6.5キロオームより低い値に下がった。このような例に基づき、閾値は、Rs+Rp値がセンサの指定された動作寿命の終わりをいつ示すかを指定するように設定することができる。したがって、EIS技術は、センサが指定された動作時間を超えて再利用されることを許す抜け穴を閉じることができる。換言すると、センサが指定された寿命に達した後に患者がセンサの接続を切断し、その後再び再接続することによってセンサを再利用しようとした場合に、EISは、異常に低いインピーダンスを測定し、それによって、システムがセンサを拒絶し、患者に新しいセンサを使用するよう促すことが可能になる。
加えて、EISは、センサのインピーダンスがセンサが使い古されて正常に動作できないことを示す低インピーダンス閾値レベル以下に下がったときを検出することによってセンサ故障を検出することを可能にしてもよい。次いで、システムは、特定の動作寿命の前にセンサを終了させてもよい。より詳細に調べられるように、センサインピーダンスを使用して、他のセンサ故障(モード)を検出することもできる。例えば、様々な理由からセンサが低電流状態(即ち、センサ故障)に入ったときに、センサインピーダンスは特定の高インピーダンス閾値を超えて高くなってもよい。例えば、タンパク質若しくはポリペプチドファウリング、マクロファージ付着、又は他の要因によりインピーダンスがセンサ動作時に異常に高くなる場合、システムは、指定されたセンサ動作寿命の前にセンサを終了してもよい。
図18は、本発明の実施形態に係るセンサの安定化の際、及び使用時間を検出する際、EIS技術をどのように応用できるかを示す。図18のロジックは、上述した水和手順及びセンサ初期化手順が完了した後開始する(1800)。換言すると、センサが十分水和され、第1の初期化手順が適用されていると、センサが初期化される。初期化手順は、詳細な記述で予め記述された電圧パルスの形態をとることが好ましい。しかし、代替的な実施形態では、初期化手順について、異なる波形を用いることができる。例えば、パルスの代わりに正弦波を用いることができ、センサの湿潤又はコンディショニングを促進することができる。加えて、波形の一部がセンサの通常動作電圧、即ち、0.535ボルトより高いことが必要であってもよい。
ブロック1810ではEIS手順が適用され、インピーダンスは、第1の高閾値と第1の低閾値の両方と比較される。第1の高閾値及び第1の低閾値の一例は、それぞれ、7キロオーム及び8.5キロオームであるが、これらの値は、必要に応じてより高く又はより低く設定することができる。インピーダンス、例えば、Rp+Rsが第1の高閾値より高い場合、センサは、ブロック1820で追加の初期化手順(例えば、1つ以上の追加のパルスの印加)に入る。理想的には、センサを初期化するために適用される全初期化手順の数は、センサの電池寿命とセンサを安定化するために要する総時間数の両方に対する影響を制限するように最適化される。したがって、EISを適用することによって、最初に実行する初期化を少なくすることができ、また初期化回数を徐々に増やし、センサをすぐに使えるように初期化の正しい回数のみを与えることができる。同様に、代替的実施形態では、EISを水和手順に適用して、図13〜図14で説明されているように、水和プロセスを補助するのに必要な初期化の回数を最小にすることができる。
一方、インピーダンス、例えば、Rp+Rsが第1の低閾値以下である場合、センサは、ブロック1860で故障していると判定され、直ちに終了させられる。センサを交換及び水和プロセスを再開するためにメッセージがユーザに与えられる。インピーダンスが高閾値及び低閾値以内であれば、センサはブロック1830で正常に動作を開始する。そして、ロジックは、追加EISが実行されるブロック1840に進み、センサの使用時間をチェックする。ロジックが初めてブロック1840に達すると、マイクロコントローラはEISを行い、センサの使用時間を測定し、ユーザが同じセンサから接続及び切断できる抜け穴を閉じる。EIS手順の将来の繰り返しにおいてロジックがブロック1840に戻ると、マイクロプロセッサは、センサの指定された寿命の間に固定された間隔でEISを実行する。好ましい一実施形態は、固定された間隔は、2時間毎に設定されるが、より長い又はより短い期間が使用されてもよい。
ブロック1850では、インピーダンスが、高閾値及び低閾値の第2セットと比較される。そのような第2の高閾値及び低閾値の一例は、それぞれ、5.5キロオーム及び8.5キロオームであるものとしてよいが、これらの値は、必要に応じてより高く又はより低く設定することができる。インピーダンス値が第2の高閾値及び低閾値の範囲内にとどまっている限り、ロジックはブロック1830に進み、センサは指定されたセンサ寿命、例えば、5日に達するまで正常に動作する。無論、ブロック1840に関して説明されるように、EISは、指定されたセンサ寿命全体にわたりスケジュールされた定期的間隔で実行される。しかし、EISが実行された後、ブロック1850でインピーダンスが第2のより低い閾値以下に下がる、又は第2のより高い閾値以上に上昇したと判定された場合、センサはブロック1860で停止される。更なる代替的実施形態では、誤ったセンサ読み取り値に対して二次チェックを実行することができる。例えば、EISが、インピーダンスが第2の高閾値及び低閾値の範囲外となっていることを示した場合、ロジックは、第2のEISを実行して、閾値の第2のセットの条件が実際には満たされていないことを確認してから(又は第1のEISが正しく実行されたことを確認してから)ブロック1860でセンサの終わりを判定することができる。
図19は、上記の説明に基づいており、本発明の好ましい実施形態による診断EIS手順を実行するために可能なスケジュールの詳細を示す。それぞれの診断EIS手順は、オプションであり、必要に応じて、診断EIS手順をスケジュールしない、又は1つ以上の診断EIS手順の任意の組み合わせを有することが可能である。図19のスケジュールは、点1900でのセンサ挿入時に開始する。センサの挿入後、センサは、水和期間1910に入る。この水和期間は、十分に水和されていないセンサは、既に説明されているように、ユーザに不正な読み取り値を与える可能性があるため、重要である。点1920での任意的な第1の診断EIS手順は、この水和期間1910でスケジュールされ、センサが確実に水和されるようにする。第1の診断EIS手順1920は、センサインピーダンス値を測定し、センサが十分水和されたかどうかを判定する。第1の診断EIS手順1920において、インピーダンスが、設定された高閾値及び低閾値の範囲内にあり、十分な水和を示していると判定された場合、センサコントローラは、点1930においてセンサの電源オンを許す。逆に、第1の診断EIS手順1920において、インピーダンスが設定された高閾値及び低閾値の範囲外にあり、不十分な水和が示されていると判定された場合、センサ水和期間1910は延長されてもよい。延長された水和の後に、センサの電極間で特定の静電容量に達した後(センサが十分に水和されていることを意味する)、点1930で電源オンを行うことができる。
任意的な第2の診断EIS手順1940は、点1930でセンサが電源オンになってから点1950でセンサ初期化が開始する前までにスケジュールされる。ここでスケジュールされるように、第2の診断EIS手順1940は、センサが1950での初期化の開始前に再利用されているかどうかを検出することができる。センサが再利用されているかどうかを判断するための試験は、図18の説明で詳述された。しかし、初期化が完了した後に経時劣化テストが実行される図18に関する前の説明とは異なり、図19の経時劣化テストは初期化前に実行されるものとして示されている。図19で説明されているEIS手順の時刻表は、本出願の全体的な教示に影響を及ぼすことなく組み変えることができること、またステップのいくつかの順序を入れ替えることができることを理解することは重要である。既に説明されているように、第2の診断EIS手順1940は、センサのインピーダンス値を決定し、次いでインピーダンス値を設定されている高閾値及び低閾値と比較することによって再利用されるセンサを検出する。インピーダンスが設定されている閾値から外れている場合、センサが再利用されていることを示しており、したがってセンサは拒絶され、ユーザに新しいセンサと交換するよう促してもよい。これは、古いセンサの再利用から生じ得る合併症を防止する。逆に、インピーダンスが設定された閾値内にある場合には、センサ初期化1950を、新たなセンサが使用されていることを信頼して開始することができる。
任意的な第3の診断EIS手順1960は、点1950で初期化が開始した後にスケジュールされる。第3の診断EIS手順1960は、センサが完全に初期化されたかどうかを判断するためにセンサのインピーダンス値をテストする。第3の診断EIS手順1960は、センサが完全に初期化されるのに必要な最短時間で実行されるべきである。このときに実行されると、センサの寿命は、完全に初期化されたセンサが未使用である時間を制限することによって最大化され、初期化過剰は、初期化が行われ過ぎる前にセンサの完全な初期化を確認することによって回避される。過剰な初期化を防止することは、過剰な初期化の結果、電流を抑制し、読み取り値が不正確となり得るため、重要である。しかし、不完全な初期化も同様に問題であるため、第3の診断EIS手順1960がセンサの初期化が不完全であると示す場合、点1970において、センサを完全に初期化するための任意選択的な初期化を実行してもよい。不完全な初期化は、実際のグルコース濃度に関係しない過剰な電流をもたらすため、不利である。初期化不足及び初期化過剰は危険であるため、第3の診断EIS手順は、使用されるときにセンサが正常に機能していることを確認する上で重要な役割を果たす。
加えて、任意的な周期的診断EIS手順1980は、センサが完全に初期化された後の時間でスケジュールされてもよい。EIS手順1980は、任意の設定間隔でスケジューリングすることができる。以下で更に詳しく説明されるように、EIS手順1980は、異常な電流又は異常な対電極電圧などの他のセンサ信号によってもトリガされてもよい。更に、EIS手順1980を望みに応じて減らして又は増やしてスケジュールすることができる。好ましい実施形態では、水和プロセス、センサ寿命チェック、初期化プロセス、又は周期的診断テストで使用されるEIS手順は、同じ手順である。代替的な実施形態では、EIS手順は、特定のインピーダンス範囲に注目する必要があるかどうかに応じて様々なEIS手順に対して短縮又は延長することができる(即ち、チェックされる周波数範囲を減らしたり増やしたりする)。周期的診断EIS手順1980は、インピーダンス値を監視して、センサが最適なレベルで確実に動作し続けることを確保する。
センサは、汚染化学種、センサ使用時間、又は汚染化学種とセンサ使用時間との組み合わせによりセンサ電流が低下した場合には最適なレベルで動作しなくてもよい。特定の長さを超えて経時劣化したセンサは、もはや有用ではないが、汚染化学種によって損なわれたセンサは、修復可能かもしれない。汚染化学種は、電極の表面積又は反応副産物の拡散経路を縮小する可能性があり、それによってセンサ電流が低下する。これらの汚染化学種が帯電し、特定の電圧の下で電極又は膜表面に徐々に集まる。以前であれば、汚染化学種はセンサの有用性を打ち壊すであろう。今では、周期的診断EIS手順1980が、汚染化学種の存在を示すインピーダンス値を検出した場合、是正措置をとることができる。是正措置がいつとられるかは、図20に関して説明されている。したがって、周期的診断EIS手順1980は、極端に有用なものとなっているが、それは、場合によってはセンサ電流を通常レベルまで回復させ、センサの寿命を延ばすことができるセンサ是正措置をトリガしてもよいためである。センサ是正措置の2つの可能な実施形態は、下記図21A及び図21Bの説明において説明される。
加えて、任意のスケジュールされた診断EIS手順1980は、特定のイベントが差し迫っていると判定されたときに一時的に中断されるか、又は再スケジュールされてもよい。そのようなイベントは、例えば、センサを較正するために患者がテストストリップメータを使用して自分のBG値を測定するとき、較正エラー、及び再度テストストリップメータを使用して患者のBG値を測定する必要があることを患者に警告するとき、又は高血糖若しくは低血糖警告が発行されたが認められないときを含む、患者側でセンサ読み取り値をチェックすることを必要とする任意の状況を含んでもよい。
図20は、本発明の実施形態に係る診断EIS手順とセンサ是正措置とを組み合わせる方法を示す。ブロック2000の診断手順は、図19で詳述されているように周期的診断EIS手順1980のいずれであってよい。この方法のロジックは、センサのインピーダンス値を検出するために診断EIS手順がブロック2000で実行されたときに開始する。指摘されているように、特定の実施形態において、EIS手順は、直流バイアスと周波数が変化する交流電圧との組み合わせを印加し、EIS手順を実行することによって検出されるインピーダンスは、ナイキスト線図上にマッピングされ、ナイキスト線図内の変曲点は、分極抵抗と液抵抗との和に近似する(即ち、実数インピーダンス値)。ブロック2000診断EIS手順がセンサのインピーダンス値を検出した後、ロジックはブロック2010へ移動する。
ブロック2010では、設定された高閾値及び低閾値と比較して正常か否かを判定する。ブロック2010で、インピーダンスが高閾値及び低閾値の設定された境界内にある場合、正常なセンサ動作が、ブロック2020で再開され、図20のロジックは、別の診断EIS手順がスケジュールされるときまで終了する。逆に、ブロック2010で、インピーダンスが異常である(即ち、高閾値及び低閾値の設定された境界外にある)場合、ブロック2030の是正措置がトリガされる。センサ寿命期間中に許容可能である高閾値及び低閾値の一例は、それぞれ、5.5キロオーム及び8.5キロオームオームであるが、これらの値は、必要に応じてより高く又はより低く設定することができる。
ブロック2030の是正措置は、異常なインピーダンス値を引き起こした可能性のある、任意の汚染化学種を除去するために実行される。好ましい実施形態では、是正措置は、作用電極と基準電極との間に逆電流又は逆電圧を印加することによって実行される。是正措置の詳細は、図21に関して更に詳しく説明される。ブロック2030で是正措置が実行された後、インピーダンス値はブロック2040で診断EIS手順によって再びテストされる。次いで、是正措置の成功は、ブロック2040の診断EIS手順からのインピーダンス値を設定された高閾値又は低閾値と比較したときブロック2050で判定される。ブロック2010と同様に、インピーダンスが設定された閾値内にある場合、正常であるとみなされ、インピーダンスが設定された閾値を外れている場合、異常であるとみなされる。
センサのインピーダンス値がブロック2050で正常な値に回復されたと判定された場合、正常なセンサ動作がブロック2020で行われる。インピーダンスがまだ正常でなく、いずれかのセンサ使用時間が異常なインピーダンスの原因であるか、又は是正措置が汚染化学種を除去するのに成功しなかったことを示している場合、センサは、ブロック2060で停止される。いくつかの代替的実施形態では、センサを直ちに停止する代わりに、センサが、ユーザに待機し、設定された期間が経過した後に更なる是正措置を実行することを最初に要求するセンサメッセージを生成してもよい。この代替的ステップは、インピーダンス値が最初の是正措置が実行された後に高閾値及び低閾値の境界の範囲内にあるという状況に近づいているかどうかを判定するために別のロジックと連結されてもよい。例えば、センサインピーダンス値に変化が見られない場合、センサは停止することを決定することができる。しかし、最初の是正措置の後にセンサインピーダンス値がプリセットされた境界に近づいていて、それでもまだ、境界から外れている場合に、追加の是正措置を実行することが可能である。更に別の代替的実施形態において、センサは、フィンガースティックメータ測定を行ってセンサが本当に故障しているかどうかを更に確認することによってセンサを較正するようにユーザに要求するメッセージを生成してもよい。上記の実施形態は全て、不正確な読み取り値を出力する故障センサをユーザが使用することを防ぐように作動する。
図21Aは、既に述べたセンサ是正措置の一実施形態を示す。本実施形態では、汚染化学種によって形成される閉塞は、作用電極と基準電極との間で、センサに印加される電圧を逆転させることによって除去される。逆にされた直流電圧は、帯電した汚染化学種を電極又は膜表面から持ち上げて、拡散経路から不要物を除去する。不要物が除去された経路により、センサの電流は正常レベルに復帰し、センサは正確な読み取り値を与えることができる。これにより、この是正措置は、他の何らかの形で有効なセンサの交換に付随する時間と費用の負担をユーザから取り除く。
図21Bは、既に記載されたセンサ是正措置の代替的実施形態を示す。この実施形態では、作用電極と基準電極との間に印加される逆転された直流電圧が交流電圧と組み合わされている。交流電圧を加えることによって、特定の強く吸着されている化学種、又は表層上の化学種は、交流電圧がその力を電極から更に遠くまで及ぼし、センサの全ての層を貫通することができるので除去されてもよい。交流電圧は任意の数の異なる波形をとってもよい。使用することが可能な波形のいくつかの例として、方形波、三角波、正弦波、又はパルスが挙げられる。前の実施形態と同様に、汚染化学種が除去さると、センサは、正常な動作に戻ることができ、センサの寿命と精度の両方が改善される。
上記の例は、主にセンサ診断における実数インピーダンスデータの使用を示しているが、本発明の実施形態は、センサ診断手順における他のEISベースの、また実質的に検体独立の、パラメータ(実数インピーダンスに加えて)の使用にも関する。例えば、既に述べているように、例えば、1kHzの実数インピーダンス及び1kHzの虚数インピーダンスに対する値などの、(実質的に)グルコース独立のインピーダンスデータ、更にはナイキストスロープの分析から、水和し、データ収集に使用できるようになるまでの速さについてセンサの効率に関する情報が提供される。更に、例えば1kHzの実数インピーダンスに対する値などの、(実質的に)グルコース独立のインピーダンスデータから、センサ膜表面上に存在し得る、グルコースがセンサ内を通過するのを一時的に妨げ、信号がディップすることを引き起こし得る、潜在的閉塞(単一又は複数)に関する情報が提供される。
加えて、例えば、1kHz以上の周波数におけるより高い周波数の位相角及び/又は虚数インピーダンスに対する値などの、(実質的に)グルコース独立のインピーダンスデータから、長時間の着用時のセンサ感度損失に関する情報が提供されるが、この感度損失は潜在的に挿入部位の局部的酸素欠乏によるものとしてよい。この点で、酸素欠乏によって引き起こされる感度損失に対する基本的なメカニズムについて以下のように説明することができる。即ち、局部の酸素が欠乏すると、センサ出力(即ち、Isig及びSG)は、グルコースではなく酸素に依存し、したがって、センサはグルコースに対する感度を失う。0.1Hzの実数インピーダンス、対電極電圧(Vcntr)、及びIsigにおけるEIS誘導スパイクを含む、他のマーカも、酸素欠乏によって引き起こされる感度損失の検出に使用されてもよい。更に、冗長センサシステムにおいて、2つ又はそれ以上の作用電極の間の1kHzの実数インピーダンス、1kHzの虚数インピーダンス、及び0.1Hzの実数インピーダンスの相対的差を、バイオファウリングによる感度損失の検出に使用してもよい。
本発明の実施形態によれば、EISベースのセンサ診断は、少なくとも3つの主要因、即ち、潜在的センサ故障モードである(1)信号始動、(2)信号ディップ、及び(3)感度損失のうちの1つ以上に関係するEISデータの考察及び分析を伴う。重要なことに、パラメータが実質的に検体独立である場合に、そのような診断分析及び手順で使用されるインピーダンス関連パラメータの大半が1つの周波数で、又は周波数範囲内で調べることができるという本明細書における発見により、患者の体内の検体のレベルとは無関係にセンサ診断手順を実行できる。そのため、EISベースのセンサ診断は、例えば、検体に依存するIsigの大きな変動によってトリガされてもよいが、そのようなセンサ診断手順において使用されるインピーダンス関連パラメータは、検体のレベルとはそれ自体実質的に無関係である。以下で更に詳しく調べるが、グルコースがEIS由来パラメータの大きさ(又は他の特性)に影響を及ぼすと見ることができる状況の大半において、そのような効果は、通常、例えば、IC内のソフトウェアを介して、測定値から取り除くことができるくらい十分に小さい−−例えば、EICベースの測定とそれに対するグルコースの効果との間の差が少なくとも一桁である−−効果であることも知られている。
定義により、「始動」は、挿入後の最初の数時間(例えば、t=0〜6時間)の間のセンサ信号の完全性を称する。例えば、電流装置において、挿入後の最初の2時間の間の信号は、信頼できないものとみなされ、したがって、センサグルコース値は、患者/ユーザから隠される。センサが水和に長時間を要する状況では、センサ信号は、挿入後数時間は低い。EISの使用により、センサが挿入された後すぐに(EIS手順を実行することによって)追加のインピーダンス情報が利用可能である。その際、全インピーダンスの式が、1kHzの実数インピーダンスを使用して低始動検出の背後にある原理を説明するために使用されてもよい。比較的高い周波数−−この場合、1kHz以上−−では、虚数インピーダンスは非常に小さく(インビボデータで確認されるように)、全インピーダンスは、以下のように低下する。
センサ湿潤が徐々に完了すると、二重層容量(Cd)が増加する。その結果、上記の式で示されているように、全インピーダンスはCdに反比例するため、全インピーダンスは減少する。これは、例えば、図16Bに示されている実数インピーダンスの軸上の切片1600の形態で示される。重要なのは、1kHzの虚数インピーダンスも、同じ目的に使用することができることであり、これは容量成分も含み、また容量成分に反比例する。
低始動検出に対する別のマーカは、ナイキストスロープであり、これは、比較的低い周波数のインピーダンスだけに依存し、次いで、これは全インピーダンスのワールブルクインピーダンス成分に対応する(例えば、図15Bを参照)。図22は、正常に機能しているセンサに対するナイキスト線図を示しており、矢印Aは、t=0から始まる、時間の進行、即ち、センサ着用時間を示す。そのため、比較的低い周波数でのEISは、センサ挿入のすぐ後(t=0)に実行され、第1の(ナイキスト)スロープを有する第1の直線適合2200でプロットされる実数及び虚数インピーダンスデータを生成する。t=0の後の時間間隔において、第1のナイキストスロープより大きい第2の(ナイキスト)スロープを有する第2の直線適合2210を生成する第2の(より低い)周波数掃引が実行され、同様のことが続けられる。センサの水和が進むにつれ、ナイキストスロープは増大し、切片は減少し、ライン2200、2210などで反映されるように、より急勾配になり、Y軸に近づく。低始動検出に関連して、臨床データは、典型的にはセンサの挿入及び初期化の後のナイキストスロープの劇的な増大があり、その後特定のレベルに安定化することを示す。これに対する1つの説明は、センサが徐々に湿潤するにつれ、化学種拡散率、更には濃度が、劇的な変化を受けるというものであり、これはワールブルクインピーダンスに反映される。
図23Aにおいて、第1の作用電極WE1に対するIsig2230は、予想より低く(約10nAで)始まり、第2の作用電極WE2に対するIsig2240に追いつくのにある程度の時間を要する。そのため、この特定の例では、WE1は、低始動を有するものとして指定される。EISデータは、この低始動を2とおりに反映する。第1に、図23Aに示されているように、WE1の1kHz(2235)の実数インピーダンスは、WE2の1kHzの実数インピーダンス2245よりかなり高い。第2に、WE2に対するナイキストスロープ(図23C)と比較したときに、WE1に対するナイキストスロープ(図23B)は、より低く始まり、より大きな切片2237を有し、安定化するのに更に時間がかかる。後で説明するように、これら2つのシグネチャ−−1kHzの実数インピーダンスとナイキストスロープ−−を融合アルゴリズムにおける診断入力として使用して、融合信号を計算するときに2つの電極のうちのどちらがより大きな重みを有することができるかを決定することができる。加えて、これらのマーカのうちの一方又は両方を診断手順で使用して、センサが全体として許容可能かどうか、又は停止して交換すべきかどうかを判定することができる。
定義により、信号(又はIsig)ディップは、大抵事実上一時的、例えば、数時間程度である、低センサ信号の場合を称する。そのような低信号は、例えば、センサ表面上の生物学的閉塞の何らかの形態によって、又は挿入部位に印加される(例えば、横になって寝ている間の)圧力によって引き起こされてもよい。この期間中、センサデータは、信頼できないものとみなされる、しかし、信号は最終的には回復する。EISデータにおいて、このタイプの信号ディップ−−患者の身体内の血糖の変化によって引き起こされるものとは反対に−−は、図24に示されているように1kHzの実数インピーダンスデータに反映される。
具体的には、図24において、第1の作用電極WE1に対するIsig2250及び第2の作用電極WE2に対するIsig2260の両方が、左端で約25nAから始まる(即ち、6pmで)。時間が経過するにつれ、両方のIsigが変動するが、これはセンサの付近のグルコース変動を反映する。最初の12時間かそこらの間(即ち、午前6時ぐらいまで)、各1kHzの実数インピーダンス2255、2265のように、両方のIsigはかなり安定している。しかし、約12時間から18時間までの間−−即ち、午前6時から正午までの間−−では、WE2に対するIsig2260は、ディップを開始し、次の数時間の間、午後9時くらいまで、下降の傾向を続ける。この期間中、WE1にするIsig2250は、いくらかのディッピングも示すが、Isig2250は、WE2に対するIsig2260に比べてかなり安定しており、またディップは相当小さい。WE1及びWE2に対するIsigの挙動も、各1kHzの実数インピーダンスデータに反映される。そのため、図24に示されているように、上記の期間中に、WE1に対する1kHzの実数インピーダンス(2255)はかなり安定を保たれるが、WE2に対する1kHzの実数インピーダンス(2265)では著しい増加がある。
定義により、感度損失は、センサ信号(Isig)が長い期間にわたって低くなり応答しなくなる、通常は復元可能でない場合を称する。感度損失は、様々な理由で発生してもよい。例えば、電極被毒は、作用電極の活性表面積を大幅に減らし、それによって、電流の振幅を大きく制限する。挿入部位には低酸素又は酸素欠損により感度損失が発生してもよい。加えて、感度損失は、センサ膜を通るグルコース及び酸素の両方の通過を制限するいくつかの形態の極端な表面閉塞(即ち、生物学的又は他の要因によって引き起こされるより永続的な形態の信号ディップ)によって生じる可能性があり、それによって、電極内に電流を発生する化学反応の数/頻度を減らし、最終的に、センサ信号(Isig)を低下させる。なお、上で述べた感度損失の様々な原因は、短期的(7〜10日間の着用)と長期的(6ヶ月間の着用)の両方のセンサに当てはまる。
EISデータにおいて、感度損失には、位相の絶対値(|位相|)と虚数インピーダンスの絶対値(|虚数インピーダンス|)の増大が比較的高い周波数範囲(例えば、それぞれ128Hz以上、及び1kHz以上)で先行することが多い。図25Aは、センサ電流2500がグルコースに応答する−−即ち、Isig2500がグルコースの変動に反応する−−が、例えば1kHzの実数インピーダンス2510、1kHzの虚数インピーダンス2530、及び約128Hz以上の周波数に対する位相(2520)などの、関連する全てのインピーダンス出力は、定常状態にあり、実質的にグルコース独立である、正常に機能しているグルコースセンサの一例を示す。
具体的には、図25Aの上のグラフは、最初の数時間後に、1kHzの実数インピーダンス2510が約5キロオームでかなりの定常状態を保つ(1kHzの虚数インピーダンス2530は約−400オームでかなりの定常状態を保つ)ことを示す。換言すると、1kHzでは、実数インピーダンスデータ2510及び虚数インピーダンスデータ2530は、実質的にグルコース独立であり、これらは、分析対象の特定のセンサの正常性、状態、及び最終的に、信頼性に対するシグネチャ、又は独立したインジケータとして使用されてもよい。しかし、既に述べたように、異なるインピーダンス関連パラメータは、異なる周波数範囲においてグルコース独立性を示すものとしてよく、範囲は、それぞれの場合において、全体的センサ設計、例えば、電極のタイプ、電極の表面積、膜の厚さ、膜の透磁率などに依存してもよい。
そのため、図25Bの例−−90%の短いチューブレス電極設計の場合−−では、上のグラフは、ここでもまた、センサ電流2501が、グルコースに応答すること、及び最初の数時間の後に、1kHzの実数インピーダンス2511は約7.5キロオームでかなりの定常状態を保つことを示す。図25Bの下のグラフは、0.1Hz(2518)と1kHz(2511)との間の周波数に対する実数インピーダンスデータを示す。これからわかるように、0.1Hz(2518)における実数インピーダンスデータは、かなりグルコース依存である。しかし、参照番号2516、2514、及び2512で示されているように、実数インピーダンスは、周波数が0.1Hzから1kHzまで高くなるにつれ、即ち、インピーダンスデータを測定する際の周波数が1kHzに近ければ近いほど、益々グルコース独立となる。
図25Aを再び参照すると、真ん中のグラフは、比較的高い周波数における位相2520が、実質的にグルコース独立であることを示す。しかし、分析対象のセンサに対するこのパラメータ(位相)に関連する「比較的高い周波数」は、128Hz以上の周波数を意味することに留意されたい。この点で、グラフは、128Hzから8kHzまでの範囲の全ての周波数に対する位相は、図示されている期間全体にわたって安定していることを示す。その一方で、図25Cの下のグラフを見ると、128Hz(以上)の位相2522は安定しているが、位相2524は次第に128Hzより低くなっていく周波数において変動する−−即ち、益々グルコース依存になり、程度も変化する−−ことがわかる。なお、図25Cの例に対する電極設計は、図25Bで使用されているものと同じであること、及び前者の上のグラフは、後者の上のグラフと同一であることに留意されたい。
図26は、挿入部位における酸素欠乏による感度損失の例を示す。この場合、挿入部位は、4日目の直後(図26の暗色垂直線によって示される)に酸素欠乏になり、センサ電流2600が低くなり、応答しなくなる。1kHzの実数インピーダンス2610は、安定したままであり、センサに物理的閉塞が生じていないことを示す。しかし、各下向きの矢印によって示されているように、比較的高い周波数の位相2622及び1kHzの虚数インピーダンス2632の変化は、感度損失と呼応しており、このタイプの損失が挿入部位における酸素欠乏によるものであることを示す。具体的には、図26は、より高い周波数(2620)における位相及び1kHzの虚数インピーダンス(2630)は、センサが感度を失う前に−−暗色垂直線で示されている−−より負になり、センサ感度損失が続くと下に向かう傾向を続ける。そのため、上で指摘されているように、この感度損失に、比較的高い周波数範囲(例えば、それぞれ128Hz以上、及び1kHz以上)における位相の絶対値(|位相|)と虚数インピーダンスの絶対値(|虚数インピーダンス|)の増大が先行するか、又は感度損失は、この増大によって予測される。
上で説明されているシグネチャは、インビトロテストによって検証することができ、その例は図27に示されている。図27は、センサのインビトロテストの結果を示しており、そこでは異なるグルコース濃度における酸素欠乏がシミュレートされている。上のグラフでは、Isigは、グルコース濃度が100mg/dl(2710)から200mg/dl(2720)、300mg/dl(2730)、400mg/dl(2740)と上昇し、次いで200md/dl(2750)まで下がって戻るときにグルコース濃度と共に変動している。下のグラフでは、比較的高い周波数における位相は、一般的に安定しており、それがグルコース独立であることを示す。しかし、例えば、0.1%O2などの非常に低い酸素濃度では、比較的高い周波数の位相は、丸で囲まれている領域と矢印2760、2770で示されているように、変動する。また、変動の大きさ及び/又は方向(即ち、正又は負)は、様々な要因に依存する。例えば、グルコース濃度対酸素濃度の比が高ければ高いほど、位相の変動の大きさは高くなる。加えて、特定のセンサ設計、更には(即ち、埋め込み後の時間で測定されるような)センサの使用時間は、そのような変動に影響を及ぼす。そのため、例えば、センサが古ければ古いほど、摂動の影響を受けやすい。
図28A〜図28Dは、冗長作用電極WE1及びWE2で酸素欠乏によって引き起こされる感度損失の別の例を示している。図28Aに示されているように、1kHzの実数インピーダンス2810は、センサ電流2800が変動し、最終的に応答しなくなるとしても定常状態にある。また、上述されるように、1kHzの虚数インピーダンス2820の変化は、センサの感度損失と呼応している。しかし、それに加えて、図28Bは、0.105Hzにおける実数インピーダンスデータ及び虚数インピーダンスデータ(それぞれ、2830及び2840)を示す。後者は、「0.1kHzデータ」とより一般的に称され得るもので、0.1kHzにおける虚数インピーダンスはかなりの定常状態にあるように見えるが、0.1kHzの実数インピーダンス2830は、センサが感度を失うにつれかなり増大することを示す。更に、図28Cに示されているように、酸素欠乏による感度損失があると、Vcntr 2850は1.2ボルトにレイルする。
要するに、図は、酸素欠乏によって引き起こされる感度損失が、より低い1kHzの虚数インピーダンス(即ち、後者はより負になる)、より高い0.105Hzの実数インピーダンス(即ち、後者はより正になる)、及びVcntrレイルと結び付けられるという発見を示している。更に、酸素欠乏プロセス及びVcntrレイルは、電気化学的回路内の静電容量成分の増大と結び付けられることが多い。なお、後で説明する診断手順のいくつかにおいて、0.105Hzの実数インピーダンスは、この比較的低い周波数の実数インピーダンスデータが検体依存であり得るように見えるため、使用され得ない。
最後に、図28A〜図28Dの例に関連して、1kHz以上の周波数のインピーダンスの測定は、典型的には、IsigにおいてEIS誘導スパイクを引き起こすことに留意されたい。これは、図28Dに示されており、WE2に対する未加工Isigは、時間に関してプロットされている。スパイクが始まったときのIsigの大幅な増大は、二重層容量の電荷による、非ファラデープロセスである。そのため、酸素欠乏によって引き起こされる感度損失も、上で説明されているように、より低い1kHzの虚数インピーダンス、より高い0.105Hzの実数インピーダンス、及びVcntrレイルに加えて、より高いEIS誘導スパイクと結び付けられてもよい。
図29は、感度損失の別の例を示す。このケースは、図24と関連して上で説明されているIsigディップの極端なバージョンとして考えることができる。ここで、センサ電流2910は、挿入時から低いものとして観察され、挿入手順に問題があり、その結果、電極閉塞が生じたことを示す。1kHzの実数インピーダンス2920は、大幅に高いが、比較的高い周波数の位相2930及び1kHzの虚数インピーダンス2940は、両方とも、図25Aに示されている正常に機能しているセンサに対する同じパラメータ値と比較したときにかなり大きく負である値にシフトされている。比較的高い周波数の位相2930及び1kHzの虚数インピーダンス2940におけるシフトは、感度損失が酸素欠乏によるものであり、次いで酸素欠乏はセンサ表面の閉塞によって引き起こされた可能性があることを示す。
図30A〜図30Dは、別の冗長センサシステムに対するデータを示しており、そこでは、2つ又はそれ以上の作用電極の間の1kHzの実数インピーダンスと1kHzの虚数インピーダンス、更には0.1Hzの実数インピーダンスの相対的差を、バイオファウリングによる感度損失の検出に使用することができる。この例では、WE1は、WE2に対するより高い1kHzの実数インピーダンス3010、より低い1kHzの虚数インピーダンス3020、及び0.105kHzにおけるかなり高い実数インピーダンス(3030)から明らかなように、WE2に比べて大きな感度損失を示している。しかし、それに加えて、この例では、Vcntr3050はレイルしない。更に、図30Dに示されているように、未加工Isigデータにおけるスパイクの高さは、時間が進行してもあまり変化しない。これは、バイオファウリングによる感度損失に関して、Vcntrレイルとスパイクの高さの増大とが相関していることを示している。加えて、未加工Isigデータにおけるスパイクの高さは時間と共にあまり変化しないという事実は、回路の容量成分が時間と共に大幅に変化することはなく、したがってバイオファウリングによる感度損失が回路の抵抗成分(即ち、拡散)に関係することを示している。
上で説明されているインピーダンス関連パラメータのうちの様々なものが、個別に、又は組み合わせて、(1)EISベースのセンサ診断手順、及び/又は(2)より信頼性の高いセンサグルコース値を生成するための融合アルゴリズムへの入力として使用されてもよい。前者に関して、図31は、EISベースのデータ−−即ち、インピーダンス関連パラメータ、又は特性−−が、センサが正常に動作しているかどうか、又は交換すべきかどうかをリアルタイムで判定するために診断手順でどのように使用できるかを示している。
図31のフロー図に示されている診断手順は、分析対象の特定のセンサに適切である限り、例えば、1時間毎、30分毎、10分毎、又は他の任意の時間間隔−−連続的間隔を含む−−などの周期的間隔でのEISデータの収集に基づく。それぞれのそのような間隔において、周波数スペクトル全体(即ち、「完全掃引」)についてEISが実行されるか、又は選択された周波数範囲、又は単一周波数であっても、実行されてもよい。そのため、例えば、1時間毎のデータ収集スキームでは、EISは、μHzからMHzの範囲内の周波数で実行されるか、又は上で説明されているように、例えば、約0.1Hzから約8kHzなどの、周波数のより狭い範囲で実行されてもよい。本発明の実施形態では、EISデータ収集は、完全掃引とより狭い範囲のスペクトルとで交互に、又は他のスキームに従って実施されてもよい。
EIS実施の時間周波数及びデータ収集は、様々な要因によって決定されてもよい。例えば、EISのそれぞれの実施では、特定の量の電力を消費し、この電力は、典型的にはセンサの電池、即ち、後で説明されるASICを含む、センサエレクトロニクスを動作させる電池によって供給される。したがって、電池容量は、残りのセンサ寿命と共に、EISが動作する回数、更にはそのような動作毎にサンプリングされた周波数の幅を決定するのに役立ってもよい。加えて、本発明の実施形態では、特定の周波数でのEISパラメータ(例えば、1kHzでの実数インピーダンス)は、第1のスケジュール(例えば、数秒に1回、又は数分に1回)に基づき監視されるが、他のパラメータ、及び/又は他の周波数における同じパラメータは、第2のスケジュール(例えば、頻度を減らして)に基づき監視され得ることが求められ得る状況を企図している。これらの状況において、診断手順を特定のセンサ及び要件に合わせて手直しし、これにより、電池電力を温存し、不要な、及び/又は冗長なEISデータ収集を回避することができる。
なお、本発明の実施形態において、図31に示されているような診断手順は、センサのリアルタイム監視を実行するために実施される一連の個別の「テスト」を伴う。複数のテスト、又はマーカ−−「マルチマーカ」とも称される−−は、EISが実行される毎に(即ち、EIS手順が実行される毎に)、例えば、センサが故障しているか、又は故障しつつあるかを含む、センサの状態若しくは品質を検出するために使用することができる、複数のインピーダンス由来パラメータ、又は特性に関するデータが収集され得るので実装される。センサ診断を実行する際に、場合によっては、故障を示すことができる診断テストがあり得るが、他の診断は、故障がないことを示してもよい。したがって、複数のインピーダンス関連パラメータが利用可能であること、及びマルチテスト手順の実施は、これらの複数のテストのうちのいくつかは他のテストのうちのいくつかに対する妥当性チェックとして働き得るので、有益である。そのため、マルチマーカ手順を使用するリアルタイム監視は、ある程度の組み込み冗長性を含んでもよい。
上記を念頭に置き、図31に示されている診断手順のロジックは、EISデータを入力として供給するために、センサが挿入され/埋め込まれ、EIS実行が行われた後に、3100から始まる。3100において、EISデータを入力として使用することにより、最初に、センサがまだ適所にあるかどうかが判定される。そのため、|Z|勾配が、テストされる周波数帯域(又は範囲)にわたって一定である及び/又は位相角が約−90°である場合、センサがもはや位置付けられていないと判定され、例えば、患者/ユーザへセンサのプルアウトが発生したことを示すアラートが送信される。センサのプルアウトを検出するための本明細書で説明されている特定のパラメータ(及び各値)は、センサが身体から外に出され、膜がもはや水和されなくなると、インピーダンススペクトル応答がちょうどコンデンサのように見えるという発見に基づく。
センサがまだ適所にあると判定された場合、ロジックはステップ3110に進み、センサが適切に初期化されているかどうかを判定する。図示されているように、「Init.Check」が、(i)1kHzで|(Zn−Z1)/Z1|>30%であるかどうか(式中、Z1は最初に測定された実数インピーダンスであり、Znは上で説明されているように次の間隔における測定されたインピーダンスである)、また(2)位相角が0.1Hzで10°より大きいかどうかを、判定することによって実行される。これらの質問のいずれか1つに対する答えが「はい」である場合、テストは満足のいくものである、即ち、テスト1は不合格でない。そうでない場合、テスト1は、不合格としてマークされる。
ステップ3120で、テスト2は、位相角−45°で、2つの連続するEIS実行の間の周波数の差(f2−f1)は、10Hzより大きい。ここでもまた、「いいえ」の答えは、不合格としてマークされ、そうでない場合、テスト2は、合格している。
ステップ3130におけるテスト3は、水和テストである。ここで、現在の(current)インピーダンスZnが1kHzにおける初期化後インピーダンスZpiより小さいかどうかの問い合わせがある。もしそうであれば、このテストは合格であり、そうでなければ、テスト3は、不合格としてマークされる。ステップ3140におけるテスト4も水和テストであるが、このときにはより低い周波数である。したがって、このテストでは、初期化後のセンサの動作時にZnが0.1Hzで300キロオームより小さいかどうかを尋ねる。また、「いいえ」の答えは、センサがテスト4に失敗したことを示す。
ステップ3150において、テスト5は、低周波ナイキストスロープが、0.1Hzから1Hzまで全体的に増大しているかどうかを問い合わせる。既に説明されているように、正常に動作しているセンサの場合、比較的低い周波数のナイキストスロープは時間の経過と共に増大してゆくべきである。そのため、このテストは、問い合わせに対する答えが「はい」であれば合格であり、そうでなければ、テストは不合格としてマークされる。
ステップ3160は、この実施形態に対する診断手順の最後のテストである。ここで、問い合わせは、実数インピーダンスが全体的に減少しているかどうかというものである。また、既に説明されたように、正常に動作しているセンサでは、時間が経過するにつれ、実数インピーダンスは減少してゆくべきであることが期待される。したがって、ここでの「はい」の答えは、センサが正常に動作していることを意味し、そうでなければ、センサはテスト6に不合格である。
6つのテスト全てが実行された後、センサが正常に動作しているかどうか、又は故障しているかどうかに関する決定が3170で下される。この実施形態では、センサは、6つのテストのうちの少なくとも3つに合格した場合に正常に動作している(3172)と判定される。言い換えると、故障している(3174)と判定されるためには、センサは、6つのテストのうちの少なくとも4つで不合格になっていなければならない。いくつかの代替的実施形態では、センサ故障に対して正常な動作を評価するために異なるルールが使用されてもよい。それに加えて、本発明の実施形態では、テストのそれぞれに重みを付けることができ、センサ動作全体を判定する際に(正常対故障)、割り当てられた重みは、例えば、そのテストの重要性、又はそのテストについて問い合わされる特定のパラメータの重要性を反映する。例えば、1つのテストに別のテストの2倍の重み、ただし、第3のテストの重みの半分の重みを付ける、などとすることができる。
他の代替的実施形態では、それぞれのテストについて異なる数のテスト及び/又はEIS由来パラメータの異なるセットが使用されてもよい。図32A及び図32Bは、7つのテストを含むリアルタイム監視の診断手順の一例を示す。図32Aを参照すると、ロジックは、センサが挿入され/埋め込まれ、EIS手順が実行された後に、3200から始まり、EISデータを入力として供給する。3200において、EISデータを入力として使用することにより、最初に、センサがまだ適所にあるかどうかが判定される。そのため、|Z|勾配が、テストされる周波数帯域(又は範囲)にわたって一定である及び/又は位相角が約−90°である場合、センサがもはや位置付けられていないと判定され、例えば、患者/ユーザへセンサのプルアウトが発生したことを示すアラートが送信される。その一方で、センサが、適所にあると判定された場合、ロジックは、診断チェックの開始(3202)に進む。
3205において、テスト1は、瞬時テスト1で後の測定Znを最初の測定から2時間経過してから行うよう指定することを除き、図31に関連して上で説明されている診断手順のテスト1と類似している。したがって、この例では、Zn=Z2hrである。より具体的には、テスト1で、(センサ埋め込みと)初期化から2時間後の実数インピーダンスを初期化前値と比較する。同様に、テスト1の第2の部分では、初期化から2時間後の位相と初期化前位相との間の差が、0.1Hzで10°より大きいかどうかを尋ねる。前のように、問い合わせのいずれか1つへの答えが肯定的であれば、センサは正常に水和されて初期化されていると判定され、テスト1は合格し、そうでなければ、センサはこのテストで不合格となっている。なお、瞬時テストで初期化から2時間後にインピーダンス及び位相の変化を問い合わせるとしても、2つの連続するEISの実行の間の時間間隔は、例えば、センサ設計、電極冗長性のレベル、診断手順が冗長テストを含む程度、電池電力などを含む、様々な要因に応じて短くなっても、長くなってもよい。
3210に進むと、ロジックは、次に、感度損失チェックを、2時間の間隔(n+2)の後に、1kHzにおけるインピーダンスの大きさのパーセンテージの変化、更にはIsigの変化が、30%より大きいかどうかを問い合わせることによって実行する。両方の問い合わせに対する答えが「はい」である場合、センサは感度を失っていると判定され、したがって、テスト2は、不合格と判定される。なお、テスト2は、本明細書において30%の好ましいパーセンテージ差に基づいて示されているが、他の実施形態では、1kHzにおけるインピーダンスの大きさのパーセンテージ差及びIsigのパーセンテージ差は、このテストを実施することを目的として10%〜50%の範囲内にあるものとしてよいことに留意されたい。
テスト3(3220の)は、図31に例示されているアルゴリズムのテスト5に類似している。ここで、前のように、質問は、低周波ナイキストスロープが、0.1Hzから1Hzまで全体的に増加しているかどうかである。そうであれば、このテストは合格であり、そうでなければ、テストは、不合格である。3220に示されているように、このテストは、センサが故障しているとみなされ得るか、又は少なくとも、更なる診断テストをトリガし得る限度となる、低周波ナイキストスロープのパーセント変化に対して、閾値の設定、又は許容可能な範囲の設定の影響も受けやすい。本発明の実施形態では、低周波ナイキストスロープのパーセント変化に対するそのような閾値/許容可能な範囲は、約2%〜約20%の範囲内に収まってもよい。いくつかの好ましい実施形態において、閾値は、約5%としてもよい。
ロジックは、次に、別の低周波テストである3230に進むが、このときは、位相及びインピーダンスの大きさを伴う。より具体的には、位相テストは、0.1Hzでの位相が時間が経過するにつれて連続的に増加されたか否かを問う。もしそうであれば、テストは不合格である。パラメータの傾向が監視されている他のテストと同様に、テスト4の低周波位相テストは、センサが故障しているとみなされ得るか、又は少なくとも、懸念を引き起こし得る限度となる、低周波位相のパーセント変化に対して、閾値の設定、又は許容可能な範囲の設定の影響も受けやすい。本発明の実施形態では、低周波位相のパーセント変化に対するそのような閾値/許容可能な範囲は、約5%〜約30%の範囲内に収まってもよい。いくつかの好ましい実施形態において、閾値は、約10%としてもよい。
指摘されているように、テスト4は、低周波インピーダンスの大きさのテストも含み、そこでは、問い合わせは、0.1Hzにおけるインピーダンスの大きさが時間の経過と共に連続的に増大しているかどうかである。もしそうであれば、テストは不合格である。なお、テスト4は、位相テスト又はインピーダンスの大きさのテストのいずれかに失敗した場合に「不合格」と考えられる。テスト4の低周波のインピーダンスの大きさのテストは、センサが故障しているとみなされ得るか、又は少なくとも、懸念を引き起こし得る限度となる、低周波のインピーダンスの大きさのパーセント変化に対して、閾値の設定、又は許容可能な範囲の設定の影響も受けやすい。本発明の実施形態では、低周波のインピーダンスの大きさのパーセント変化に対するそのような閾値/許容可能な範囲は、約5%〜約30%の範囲内に収まってもよい。いくつかの好ましい実施形態において、閾値は、約10%とすることができ、その場合、正常なセンサのインピーダンスの大きさに対する範囲は、一般的に、約100キロオーム〜約200キロオームの間である。
テスト5(3240における)は、テスト2の補助として考えられ得る別の感度損失チェックである。ここで、Isigのパーセント変化及び1kHzにおけるインピーダンスの大きさのパーセント変化の両方が30%を超える場合、センサは感度損失から回復していると判定される。換言すると、センサは、感度損失が何らかの理由からテスト2によって検出されなかったとしても、既に何らかの感度損失を被っていると判定される。テスト2と同様に、テスト5は、30%の好ましいパーセンテージ差に基づいて示されているが、他の実施形態では、Isigのパーセンテージ差及び1kHzにおけるインピーダンスの大きさのパーセンテージ差は、このテストを実施することを目的として10%〜50%の範囲内にあるものとしてよい。
3250に進むと、テスト6で、観察されたデータ及び特定のセンサ設計に基づき判定された特定の故障基準を用いてセンサ機能性テストを行う。具体的には、一実施形態では、センサは、以下の3つの基準のうちの少なくとも2つが満たされている場合に、故障していると判定され、したがって、グルコースに応答する可能性がないと判定されてもよい。(1)Isigは、10nA未満であり、(2)1kHzにおける虚数インピーダンスは、−1500オーム未満であり、(3)1kHzにおける位相は、−15°未満である。そのため、テスト6は、(1)〜(3)のうちのどれか2つが満たされていない場合に合格したと判定される。なお、他の実施形態では、このテストのIsig分岐は、Isigが約5nA未満から約20nAである場合に不合格であるものとしてよい。同様に、第2の分岐は、1kHzにおける虚数インピーダンスが約−1000オーム未満から約−2000オームである場合に不合格であるものとしてよい。最後に、位相分岐は、1kHzにおける位相が約−10°未満〜約−20°である場合に不合格であるものとしてよい。
最後に、ステップ3260で、別の感度チェックを行い、その際に、パラメータは低周波数で評価される。そのため、テスト7では、0.1Hzにおいて、一方の、虚数インピーダンスとIsig(n+2)との比と、他方の、比の前の値との間の差の大きさは比の前の値の大きさの30%より大きいかどうかを問い合わせる。もしそうであれば、テストは不合格であり、そうでなければ、テストは、合格である。ここで、テスト7は、30%の好ましいパーセンテージ差に基づいて示されているが、他の実施形態では、パーセンテージ差は、このテストを実施することを目的として10%〜50%の範囲内に収まるものとしてよい。
7つのテスト全てが実行された後、センサが正常に動作しているかどうか、又はセンサが故障している(若しくは故障しようとしている)ことを示す警告が送り出されるべきかどうかに関する決定が3270で下される。図示されているように、この実施形態では、センサは、7つのテストのうちの少なくとも4つに合格した場合に正常に動作している(3272)と判定される。言い換えると、故障している、又は少なくとも懸念を引き起こす(3274)と判定されるためには、センサは、7つのテストのうちの少なくとも4つで不合格でなければならない。センサが「不良」である(3274)と判定された場合、その影響に対する警告が、例えば、患者/ユーザに送信されてもよい。既に指摘されているように、代替的実施形態において、センサ故障/懸念に対して正常な動作を評価するために異なるルールが使用されてもよい。それに加えて、本発明の実施形態では、テストのそれぞれに重みを付けることができ、センサ動作全体を判定する際に(正常対故障)、割り当てられた重みは、例えば、そのテストの重要性、又はそのテストについて問い合わされる特定のパラメータの重要性を反映する。
既に指摘されているように、本発明の実施形態では、上述のインピーダンス関連パラメータのうちの様々なものが、個別に、又は組み合わせて、より信頼性の高いセンサグルコース値を生成するための1つ以上の融合アルゴリズムへの入力として使用されてもよい。具体的には、単一センサ(即ち、単一作用電極)システムとは異なり、複数の検知電極では、2つ又はそれ以上の作用電極から得られる複数の信号を融合して単一のセンサグルコース値を得ることができるので、より信頼性の高いグルコース読み出し値を出力することが知られている。そのような信号融合では、EISによって与えられる定量的入力を利用して、冗長作用電極から最も信頼性の高い出力センサグルコース値を計算する。なお、次の考察で冗長電極として第1の作用電極(WE1)及び第2の作用電極(WE2)に関して様々な融合アルゴリズムを説明することができるが、これは、例示するものであって、限定するものではなく、本明細書で説明されているアルゴリズム及びそれらの基本原理は、2つより多い作用電極を有する冗長センサシステムに適用可能であり、そのような冗長センサシステムにおいて使用されてもよい。
図33A及び図33Bは、2つの代替的方法に対する最上位のフロー図を示しており、それぞれ融合アルゴリズムを含む。具体的には、図33Aは、電流(Isig)ベースの融合アルゴリズムを伴うフロー図であり、図33Bは、センサグルコース(SG)融合を対象とするフロー図である。図を見るとわかるように、2つの方法の主な違いは、較正の時間である。そのため、図33Aは、Isig融合について、融合3540が完了してから較正3590が実行されることを示す。即ち、WE1からWEnへの冗長Isigは、単一のIsig3589に融合され、次いで、単一のセンサグルコース値3598を出力するように較正される。一方、SG融合について、較正3435が、WE1からWEnへのそれぞれの個別のIsigについて完了し、作用電極のそれぞれに対する較正されたSG値(例えば、3436、3438)を出力する。そのため、SG融合アルゴリズムは、複数のIsigのそれぞれの独立した較正を行い、これは本発明の実施形態において好ましいものとしてよい。較正された後、複数の較正済みSG値は、単一のSG値3498に融合される。
図33A及び33Bに示されているフロー図のそれぞれは、スパイクフィルタリングプロセス(3520、3420)を含むことに留意することが重要である。感度損失に関係する考察において上で説明されたように、1kHz以上の周波数のインピーダンスの測定では、典型的に、EIS誘導スパイクがIsig内に生じる。このため、EIS手順がSG融合及びIsig融合の両方について電極WE1からWEnのそれぞれに対して実行された後、最初にIsig3410、3412など及び3510、3512などをフィルタリングして、各フィルタリング済みIsig3422、3424など及び3522、3524などを得ることが好ましい。次いで、フィルタリング済みIsigは、Isig融合において使用されるか、又は最初に較正され、次いで、SG融合において使用されるが、これは以下で説明する。次の考察で明らかになるように、融合アルゴリズムは両方とも、様々な要因に基づく重みの計算及び割り当てを伴う。
図34は、SG融合に対する融合アルゴリズム3440の詳細を示す。本質的に、融合重みが決定される前にチェックする必要のある要因が4つある。第1に、完全性チェック3450は、正常なセンサ動作に対する指定された範囲内(例えば、所定の下方閾値及び上方閾値)に、パラメータ(i)Isig、(ii)1kHzの実数及び虚数インピーダンス、(iii)0.105Hzの実数及び虚数インピーダンス、及び(iv)ナイキストスロープのそれぞれが収まっているかどうかを判定することを伴う。図示されているように、完全性チェック3450は、境界チェック3452及びノイズチェック3456を含み、これらのチェックのそれぞれについて、上述のパラメータは入力パラメータとして使用される。なお、簡単さのため、1つ以上の周波数における実数及び/又は虚数インピーダンスは、図33A〜図35上に、単にインピーダンスの略記号「Imp」で表されている。加えて、実数及び虚数インピーダンスは両方とも、インピーダンスの大きさ及び位相(図33A及び図33B上に入力として示されてもいる)を使用して計算されてもよい。
境界チェック3452及びノイズチェック3458のそれぞれからの出力は、冗長作用電極のそれぞれに対する各信頼度指数(RI)である。そのため、境界チェックからの出力は、例えば、RI_bound_We1(3543)及びRI_bound_We2(3454)を含む。同様に、ノイズチェックについては、その出力は、例えば、RI_noise_We1(3457)及びRI_noise_We2(3458)を含む。それぞれの作用電極に対する境界及びノイズの信頼度指数は、正常なセンサ動作に対する上述の範囲への適合に基づき計算される。そのため、いずれかのパラメータが特定の電極に対する指定された範囲外にある場合、その特定の電極に対する信頼度指数は減少する。
なお、上述のパラメータに対する閾値、又は範囲は、特定のセンサ及び/又は電極設計を含む、様々な要因に依存してもよい。それでもなお、好ましい一実施形態において、上述のパラメータのうちのいくつかに対する典型的な範囲は、例えば以下のとおりであってよく、即ち、1kHzの実数インピーダンスに対する境界閾値=[0.3e+4 2e+4]、1kHzの虚数インピーダンスに対する境界閾値=[−2e+3,0]、0.105Hzの実数インピーダンスに対する境界閾値=[2e+4 7e+4]、0.105Hzの虚数インピーダンスに対する境界閾値=[−2e+5 −0.25e+5]、及びナイキストスロープに対する境界閾値=[2 5]である。ノイズは、例えば、二次中心差分法を使用して計算することができ、この方法では、ノイズがそれぞれの変数バッファに対する中央値のある割合(例えば、30%)を超えた場合に、ノイズ限界から外れているとされる。
第2に、センサディップは、センサ電流(Isig)と1kHzの実数インピーダンスとを使用して検出されてもよい。そのため、図34に示されているように、Isig及び「Imp」は、ディップ検出3460の入力として使用される。ここで、第1のステップは、Isig間に発散があるかどうか、及びそのような発散が1kHzの実数インピーダンスデータに反映されるかどうかを判定することである。これは、Isig類似度指数(RI_sim_isig12)3463と1kHzの実数インピーダンス類似度指数(RI_sim_imp12)3464との間のマッピング3465を使用することによって実行されてもよい。このマッピングは重要であり、ディップが実でない場合に偽陽性を回避するのに役立つ。Isig発散が実である場合、アルゴリズムは、より高いIsigを有するセンサを選択する。
本発明の実施形態によれば、2つの信号(例えば、2つのIsig、又は2つの1kHzの実数インピーダンスデータ点)の発散/収束は、以下のように計算することができる。
diff_va1=abs(va1−(va1+va2)/2);
diff_va2=abs(va2−(va1+va2)/2);
RI_sim=1−(diff_va1+diff_va2)/(mean(abs(va1+va2))/4)
式中、va1及びva2は2つの変数であり、RI_sim(類似度指数)は信号の収束又は発散を測定する指数である。この実施形態では、RI_simは、0と1との間を境界としなければならない。このため、上で計算されたRI_simが0未満である場合、0に設定され、1より大きい場合、1に設定される。
マッピング3465は、通常線形回帰(OLR)を使用することによって実行される。しかし、OLRではうまくいかない場合、ロバスト中央値勾配線形回帰(robust median slope linear regression)(RMSLR)が使用されてもよい。例えば、Isig類似度指数及び1kHzの実数インピーダンス指数では、(i)Isig類似度指数を1kHzの実数インピーダンス類似度指数にマッピングする手順、(ii)1kHzの実数インピーダンス類似度指数をIsig類似度指数にマッピングする手順の2つの手順が必要である。両方のマッピング手順で、res12とres21の2つの残余が生成される。ディップ信頼度指数3467、3468のそれぞれを以下のように計算することができる。
RI_dip=1−(res12+res21)/(RI_sim_isig+RI_sim_1K_real_impedance)
第3の要因は感度損失3470であり、これは、例えば、過去8時間以内の、1kHzの虚数インピーダンスの傾向を使用して検出されてもよい。1つのセンサの傾向が負に変わると、アルゴリズムは他のセンサを利用する。両方のセンサが感度を失った場合、単純平均をとる。傾向は、ノイズが多くなる傾向を有するが強いローパスフィルタを使用して1kHzの虚数インピーダンスを平滑化することによって、また、例えば、過去8時間内の時間に関して相関係数又は線形回帰を使用して相関係数が負であるか、又は勾配が負であるかを判定することによって計算されてもよい。感度損失信頼度指数3473、3474のそれぞれに、1又は0の二進値を割り当てる。
we1、we2、...、wenのそれぞれに対する全信頼度指数(RI)は、以下のように計算される。
RI_we1=RI_dip_we1×RI_sensitivity_loss_we1×RI_bound_we1×RI_noise_we1
RI_we2=RI_dip_we2×RI_sensitivity_loss_we2×RI_bound_we2×RI_noise_we2
RI_we3=RI_dip_we3×RI_sensitivity_loss_we3×RI_bound_we3×RI_noise_we3
RI_we4=RI_dip_we4×RI_sensitivity_loss_we4×RI_bound_we4×RI_noise_we4
.
.
.
RI_wen=RI_dip_wen×RI_sensitivity_loss_wen×RI_bound_wen×RI_noise_wen
個々の作用電極のそれぞれの信頼度指数を計算すると、各電極の重みは、以下のように計算され得る。
weight_we1=RI_we1/(RI_we1+RI_we2+RI_we3+RI_we4+...+RI_wen)
weight_we2=RI_we2/(RI_we1+RI_we2+RI_we3+RI_we4+...+RI_wen)
weight_we3=RI_we3/(RI_we1+RI_we2+RI_we3+RI_we4+...+RI_wen)
weight_we4=RI_we4/(RI_we1+RI_we2+RI_we3+RI_we4+...+RI_wen)
.
.
.
weight_wen=RI_wen/(RI_we1+RI_we2+RI_we3+RI_we4+...+RI_wen)
次いで、上記に基づき、融合されたSG3498が以下のように計算される。
SG=weight_we1×SG_we1+weight_we2×SG_we2+weight_we3×SG_we3+weight_we4×SG_we4+...+weight_wen×SG_wen
最後の係数は、センサ融合の瞬時重み変化によって引き起こされるような、最終的なセンサ読み出し値中のアーチファクトに関係する。これは、ローパスフィルタ3480を適用して、それぞれの電極に対するRIを平滑化するか、又はローパスフィルタを最終的SGに適用することによって回避されてもよい。前者が使用される場合、フィルタリングされた信頼度指数−−例えば、RI_We1*及びRI_We2*(3482、3484)−−は、それぞれの電極に対する重みの計算、したがって融合されたSG3498の計算において使用される。
図35は、Isig融合に対する融合アルゴリズム3540の詳細を示す。図からわかるように、このアルゴリズムは、2つを除き、SG融合に対する図34に示されているものと実質的に類似している。第1に、既に指摘されているように、Isig融合では、較正はプロセスの最終ステップをなし、単一の融合されたIsig3589が較正されて単一のセンサグルコース値3598を生成する。図33Bも参照されたい。第2に、SG融合では複数の電極に対するSG値を使用して、最終的SG値3498を計算しているが、融合されたIsig値3589は、複数の電極に対するフィルタリング済みIsig(3522、3524など)を使用して計算される。
糖尿病に罹っていない母集団を伴う1つの閉ループ研究において、上述の融合アルゴリズムが1日目に、低始動問題が最も重大であり、したがってセンサの精度及び信頼性に実質的な影響を及ぼし得るときに、並びに全体の期間(即ち、センサの7日間の寿命)にわたって平均絶対的相対的差異(MARD)のかなりの改善をもたらすことが判明した。この研究では、以下の3つの異なる方法を使用して高電流密度(公称)メッキによる88%の分散レイアウト設計に対するデータを評価した。(1)Medtronic MinimedのFerrari Algorithm 1.0(上で説明されているようなSG融合アルゴリズム)を使用する融合を介した1つのセンサグルコース値(SG)の計算、(2)1kHzのEISデータを使用してより良好なISIG値を識別することによる1つのSGの計算(上で説明されているIsig融合アルゴリズムを通じて)、及び(3)より高いISIG値を使用することによる(即ち、EISを使用しない)1つのSGの計算。この研究に対するデータの詳細を以下に示す。
上記データにより、第1のアプローチで、第1日目のMARD(%)は19.52%であり、全体MARDが12.28%となることがわかった。第2のアプローチでは、第1日目のMARDが15.96%であり、全体MARDが11.83%である。最後に、第3のアプローチについては、第1日目のMARDは17.44%であり、全体としては12.26%である。そのため、冗長電極を有する設計では、1kHzのEISを用いたより良いIsigに基づくSGの計算(即ち、第2の手法)が最も有利となることが現れる。具体的には、例えば、EISを使用して、より良好な低始動検出を行うために、第1日目の低MARDが起因してもよい。加えて、全体的なMARDのパーセンテージは、この研究のWE1及びWE2に対する13.5%の総平均MARDより1%以上低い。上述のアプローチでは、データ遷移は、例えば、図33A〜図35に関連して上で説明されているようなローパスフィルタ3480などを使用することによって遷移の重大さを最小にするフィルタリング方法によって処理できる。
ここで、例えば低始動、感度損失、及び信号ディップ事象を含むセンサ診断は、センサ設計、電極の数(即ち、冗長性)、電極分布/構成などを含む、様々な要因に依存することを繰り返しておく。したがって、EIS由来パラメータが実質的にグルコース独立であるものとしてよい実際の周波数、又は周波数範囲、したがって、上述の故障モードのうちの1つ以上に対する独立したマーカ、若しくは予測因子も、特定のセンサ設計に依存してもよい。例えば、上で説明されているように、感度損失は、比較的高い−−虚数インピーダンスが実質的にグルコース独立である−−周波数の虚数インピーダンスを使用して予測され得ることが発見されているが、グルコース依存性のレベル、したがって、感度損失に対するマーカとして虚数インピーダンスを使用するための特定の周波数範囲は、実際のセンサ設計に応じて(高い方に、又は低い方に)ずれる可能性がある。
より具体的には、センサ設計が冗長作用電極の使用に向かうほど、後者はセンサの全体的サイズを維持するために次第に小型化していかなければならない。そのため、電極のサイズは、特定の診断について問い合わせできる周波数に影響を及ぼす。この点で、本明細書で説明され、図33A〜図35に示されている融合アルゴリズムは、例示的であるとみなされ、制限するものとしてみなされるべきでなく、それぞれのアルゴリズムは、分析対象のセンサのタイプに基づき、最小量のグルコース依存性を示す周波数でEIS由来パラメータを使用するために必要に応じて修正され得ることに留意することが重要である。
加えて、実験データから、ヒトの組織構造も異なる周波数におけるグルコース依存性に影響を及ぼし得ることが示されている。例えば、子供では、0.105Hzの実数インピーダンスは、低始動検出に対する実質的にグルコース独立であるインジケータであることが判明している。これは、子供の組織構造の変化、例えば、ワールブルクインピーダンスの結果として生じると考えられ、これは抵抗成分に大きく関係している。干渉物質検出に関係する後の説明も参照されたい。
本発明の実施形態は、センサ較正の最適化の際のEISの使用にも関する。背景としては、現在の方法論では、その後のIsig値を較正するために使用され得る、Isigに対するBGの線図の勾配を、以下のように計算する。
ただし式中、αは、時定数の指数関数であり、βは、血糖分散(blood glucose variance)の関数であり、オフセットは、定数である。定常状態にあるセンサでは、この方法はかなり正確な結果をもたらす。例えば図36に図示されているように、BG及びIsigは、かなり直線的な関係に従い、オフセットを定数にとることができる。
しかし、上述の直線関係は、例えば、センサが遷移している期間などでは正しくない状況もある。図37に示されているように、Isig−BGの対1及び2は、IsigとBGとの関係に関して対3及び4と大幅に異なることは明らかである。これらのタイプの状態に対して、定数のオフセットを使用すると、不正確な結果を生じる傾向がある。
この問題に対処するために、本発明の一実施形態は、EISベースの動的なオフセットを使用することを対象とし、センサ状態ベクトルを以下のように定義するためにEIS測定値が使用される。
V={real_imp_1K,img_imp_1K,Nyquist_slope,Nyquist_R_square}
ただし式中、ベクトル内の要素の全ては、実質的にBG独立である。なお、Nyquist_R_squareは、ナイキストスロープを計算するために使用される線形回帰のR平方、即ち、比較的低い周波数の実数インピーダンスと虚数インピーダンスとの間の相関係数の平方であり、低いR平方は、センサ性能に異常があることを示す。それぞれのIsig−BG対について、状態ベクトルが割り当てられる。状態ベクトルの有意差が検出された−−例えば、図37に示されている例に対して|V2−V3|−−場合、1及び2と比較したときに3及び4について異なるオフセット値が割り当てられる。そのため、この動的オフセットアプローチを使用することによって、IsigとBGとの間の直線関係を維持することが可能である。
第2の実施形態では、EISベースのセグメント分割アプローチを較正に使用することができる。図37の例、及びベクトルVを使用することで、1及び2のときのセンサ状態は、3及び4のときのセンサ状態と著しく異なると判定されてもよい。したがって、較正バッファは、以下のように、2つのセグメントに分けることができる。
Isig_buffer1=[Isig1,Isig2]、BG_buffer1=[BG1,BG2]
Isig_buffer2=[Isig3,Isig3]、BG_buffer2=[BG3,BG3]
そのため、センサが1及び2のときに動作する場合、Isig_buffer1及びBG_buffer1は、較正に使用される。しかし、センサが3及び4のときに動作する場合、即ち、遷移期間に、Isig_buffer2及びBG_buffer2が、較正に使用される。
更に別の実施形態では、勾配を調節するためにEISが使用される、EISベースの動的勾配アプローチが、較正の目的に使用されてもよい。図38Aは、この方法をセンサ精度を改善するためにどのように使用できるかの例を示している。この図では、データ点1〜4は、離散的な血糖値である。図38Aからわかるように、データ点1と3との間にセンサディップ3810があり、ディップは上で説明されているセンサ状態ベクトルVを使用して検出されてもよい。図38Aの参照番号3820で示されているように、ディップでは、勾配は上向きに調節され過小読み取りを低減することができる。
更なる実施形態において、EIS診断を使用して、例えば、低始動事象、感度損失事象、及び他の類似の状況に極めて有用である、センサ較正のタイミングを決定することができる。既知のように、大半の電流方法では、プリセットされたスケジュール、例えば、日に4回などのスケジュールに基づく定期的較正を必要とする。しかし、EIS診断を使用する場合、較正はイベントドリブンとなり、これらは、必要な回数だけ、最も生産的なときに、実行すればよい。ここでもまた、状態ベクトルVを使用して、センサ状態がいつ変化したかを判定し、実際に変更されている場合に較正を要求することができる。
より具体的には、図示されている一例において、図38Bは、低始動検出を伴うEIS支援センサ較正のフロー図を示している。ナイキストスロープ、1kHzの実数インピーダンス、及び境界チェック3850を使用することで(例えば、図33A〜図35の融合アルゴリズムに関連するEIS由来パラメータに対する既に説明されている境界チェック及び関連する閾値を参照)、信頼度指数3853は始動のために設定することができ、したがって、1kHzの実数インピーダンス3851及びナイキストスロープ3852が、対応する上限より低いときに、RI_startup=1であり、センサは較正できる状態にある。換言すると、信頼度指数3853は、「高」(3854)であり、ロジックは、3860の較正に進むことができる。
その一方で、1kHzの実数インピーダンス及びナイキストスロープが対応する上限(又は閾値)より高い場合に、RI_startup=0であり(即ち、「低」であり)、センサは較正できる状態にない(3856)、即ち、低始動問題が存在している可能性がある。ここで、1kHzの実数インピーダンス及びナイキストスロープの傾向を使用して、両方のパラメータがいつ範囲内に入るかを予測することができる(3870)。これが非常に短い時間(例えば、1時間未満)しか要しないと推定される場合、アルゴリズムは、センサの準備が整うまで、即ち、上述のEIS由来パラメータが範囲内に収まる(3874)まで待機し、その時点でアルゴリズムは較正に進む。しかし、待機時間が比較的長い場合(3876)、センサはすぐに較正され、次いで、勾配又はオフセットが1kHzの実数インピーダンス及びナイキストスロープの傾向に応じて徐々に調節され得る(3880)。なお、調節を実行することによって、低始動によって引き起こされる重大な過大読み取り又は過小読み取りが回避されてもよい。既に指摘されているように、EIS由来パラメータ及び瞬時較正アルゴリズムで使用される関係情報は、実質的にグルコース独立である。
なお、図38Bに関連する上記の説明では、単一の作用電極、更にはその作用電極の始動に対する信頼度指数の計算を示しているが、これは例示するためのものであり、限定するものではない。したがって、2つ又はそれ以上の作用電極を備える冗長センサでは、複数の(冗長)作用電極のそれぞれについて、境界チェックが実行され、始動信頼度指数が計算されてもよい。次いで、各信頼度指数に基づき、グルコース測定値を得るために続けることができる少なくとも1つの作用電極が識別され得る。換言すると、単一の作用電極を有するセンサでは、後者が低始動を示す場合、センサの実際の使用(グルコースを測定するための)は、低始動期間が終了するまで遅延されなければならないことがある。この期間は、典型的には、1時間程度又はそれ以上であり得るため、明らかに不利である。対照的に、冗長センサでは、本明細書で説明されている方法を利用することにより、適応型、又は「スマート」、始動が可能であり、データ収集に進むことができる電極は、かなり短い時間で、例えば、数分程度で、識別され得る。次いで、これにより、MARDが小さくなるが、それは、低始動が一般的にMARDの約1/2%の増加をもたらすからである。
更に別の実施形態では、EISは、較正バッファの調節を補助することができる。既存の較正アルゴリズムでは、バッファサイズは、常に4、即ち、4つのIsig−BG対であり、重みは、既に指摘されているように、時定数の指数関数であるα、及び血糖分散の関数であるβに基づく。ここで、EISは、バッファのフラッシングのタイミング、バッファ重みの調節の仕方、及び適切なバッファサイズを決定するのに役立ってもよい。
本発明の実施形態は、干渉物質検出のためのEISの使用も対象とする。具体的には、センサが輸液カテーテル内に留置されるセンサと薬液注入カテーテルとの組み合わせを備える輸液セットを用意することが望ましい。そのようなシステムでは、センサに関する輸液カテーテルの物理的配置は、主に注入される薬剤及び/又はその不活性成分によって引き起こされる可能性のあるセンサ信号に対する潜在的影響(即ち、干渉)により、いくらか問題になることがある。
例えば、インスリンと併用される希釈剤は、防腐剤としてm−クレゾールを含む。インビトロ研究では、m−クレゾールは、インスリン(したがってm−クレゾール)がセンサに近接して注入されている場合にグルコースセンサにマイナスの影響を及ぼすことが判明している。したがって、センサ及び輸液カテーテルが単一の針内に組み込まれるシステムは、センサ信号に対するm−クレゾールの効果を検出し、調節することができなければならない。m−クレゾールはセンサ信号に影響を及ぼすので、センサ信号それ自体と独立してこの干渉物質を検出する手段を有していることが好ましい。
実験から、センサ信号に対するm−クレゾールの影響は一時的であり、したがって可逆であることが示された。それでもなお、インスリン注入位置がセンサに近すぎる場合、m−クレゾールは、電極に対して「毒作用」を及ぼす傾向があり、後者はもはや、インスリン(及びm−クレゾール)が患者の組織内に吸収されるまでグルコースを検出することができない。この点で、典型的には、インスリン注入の開始から、センサがグルコース検出能力を再び獲得するまでに約40分の期間があることが判明した。しかし、有利には、同じ期間において、グルコース濃度と極めて独立して1kHzのインピーダンスの大きさが大幅に増大することも発見されている。
具体的に、図39は、インビトロ実験に対するIsig及びインピーダンスデータを示しており、この場合、センサは、100mg/dlのグルコース溶液中に留置され、1kHzのインピーダンスが、丸で囲まれたデータ点3920によって示されているように、10分毎に測定された。次いで、m−クレゾールを加えて、溶液を0.35%のm−クレゾールにした(3930)。これからわかるように、m−クレゾールが加えられた後、Isig3940は、最初に、劇的に増大し、次いで、下降し始める。その後、溶液中のグルコースの濃度を、更に100mg/dlのグルコースを加えて倍にした。しかし、これは、電極がグルコースを検出できなくなったので、Isig3940に影響を及ぼさなかった。
その一方で、m−クレゾールは、インピーダンスの大きさと位相の両方に劇的な影響を及ぼした。図40Aは、位相に対するボード線図を示しており、図40Bは、m−クレゾールを加える前と加えた後の両方に対するインピーダンスの大きさのボード線図を示している。これからわかるように、m−クレゾールが加えられた後、インピーダンスの大きさ4010は、周波数スペクトルにわたる大きさにおいて、少なくとも一桁、初期化後値4020から増加した。それと同時に、位相4030は、初期化後値4040と比較して完全に変化した。図40Cのナイキスト線図上について。ここでは、初期化前曲線4050及び初期化後曲線4060は、正常に機能しているセンサについて予測されるとおりであるように見える。しかし、m−クレゾールを加えた後、曲線4070は、大きく異なる。
上記の実験では、m−クレゾールが加えられた後もIsigに依存し続けるという重要な実用上の落とし穴を識別している。図39を再び参照すると、センサ信号を監視している患者/ユーザは、自分のグルコース濃度にスパイクが生じてしまった、また自分でボーラスを投与すべきであるという誤った印象を植え付けられる可能性がある。次いで、ユーザは、ボーラスを投与し、そのときに、Isigが既に再び下降し始めている。換言すると、患者/ユーザには、全てが正常に見える可能性があるということである。しかし、現実的には、本当に生じているのは、患者がボーラスの投与前に患者のグルコース濃度に応じて低血糖事象を受ける危険性を患者にもたらし得る不要な用量のインスリンをただ単に投与したということである。このシナリオでは、可能な限りグルコース独立である干渉物質を検出する手段の望ましさを強める。
図41は、別の実験を示しており、そこでは、センサは100mg/dlのグルコース溶液で初期化され、その後、グルコースは1時間で400mg/dlまで上げられ、次いで、100mg/dlに戻された。次いで、m−クレゾールを加えて、濃度を0.35%に増加させ、センサを20分間にわたって、この溶液中に残した。最後に、センサを100mg/dlのグルコース溶液中に留置して、m−クレゾールにさらした後にIsigを回復させた。これからわかるように、初期化後に、1kHzのインピーダンスの大きさ4110は、約2キロオームであった。m−クレゾールを加えると、インピーダンスの大きさ4110と同様に、Isig4120はスパイクを生じた。更に、センサが100md/dlのグルコース溶液に戻されたときに、インピーダンスの大きさ4110も、ほぼ正常のレベルに戻った。
上記の実験からわかるように、EISは、干渉剤−−この場合は、m−クレゾール−−の存在を検出するために使用することができる。特に、干渉物質は、周波数スペクトル全体にわたってインピーダンスの大きさを増大させる形でセンサに影響を及ぼすので、インピーダンスの大きさは、干渉を検出するために使用されてもよい。干渉が検出された後、センサ動作電圧が干渉物質が測定されない点まで変化するか、又はデータ報告が一時的に停止され、センサは患者/ユーザに対して、薬剤の投与のせいで、センサがデータを報告できない(測定されたインピーダンスが注入前レベルに戻るまで)ことを指示することができる。なお、干渉物質の影響は、インスリンに含まれる防腐剤によるものなので、インピーダンスの大きさは、注入されるインスリンが即効性であろうと遅効性であろうと関係なく上で説明されているのと同じ挙動を示す。
重要なのは、上で述べたように、インピーダンスの大きさ、及び確実には1kHzにおける大きさは、実質的にグルコース独立であるという点である。図41を参照すると、グルコース濃度が100mg/dlから400mg/dlまで−−4倍増加−−増大するときに、1kHzのインピーダンスの大きさが約2000オームから約2200オームまで増加するか、又は約10%増大することがわかり得る。換言すると、インピーダンスの大きさの測定に対するグルコースの影響は、測定されたインピーダンスに比べてほぼ一桁小さいように見える。「信号対雑音」比のこのレベルは、典型的には、フィルタでノイズ(即ち、グルコース効果)を除去することができるくらいに十分小さく、その結果のインピーダンスの大きさは、実質的にグルコース独立である。加えて、インピーダンスの大きさは、上で説明されているインビトロ実験に対して使用された緩衝液と比較して、実際のヒトの組織中のグルコース独立性のなおいっそう高い程度を示していることが重視されるべきである。
本発明の実施形態は、アナログフロントエンド集積回路(AFE IC)も対象としており、これはカスタム特定用途向け集積回路(ASIC)であり、(i)複数のポテンシオスタットをサポートし、酸素又は過酸化物のいずれかに基づく多端子グルコースセンサとインターフェースし、(ii)マイクロコントローラとインターフェースして、小消費電力センサシステムを形成し、(iii)EIS由来パラメータの測定値に基づきEIS診断、融合アルゴリズム、及び他のEISベースのプロセスを実行するために必要なアナログ電子回路を提供する。より具体的には、ASICは、広い周波数範囲にわたってセンサの実数及び虚数インピーダンスパラメータを測定する診断能力、更には、マイクロプロセッサチップと双方向通信することを可能にするデジタルインターフェース回路を組み込む。更に、ASICは、非常に低いスタンバイ及び動作電力で動作を可能にする電力制御回路、並びに外部マイクロプロセッサの電力をオフにできるようにするリアルタイムクロック及び水晶発振器を備える。
図42A及び図42Bは、ASICのブロック図を示しており、以下の表1は、いくつかの信号が単一のパッド上に多重化されている、パッド信号の説明(図42A及び図42Bの左側に示されている)を示す。
図42A及び図42B及び表1を参照し、ASICについて説明する。
電力プレーン
ASICは、2.0ボルトから4.5ボルトまでの動作入力範囲を有する、電源パッドVBAT(4210)から電力の供給を受ける1つの電力プレーンを有する。この電力プレーンは、このプレーン内のいくつかの回路のために電圧を下げるレギュレータを有する。電源はVDDBU(4212)と称され、テスト及びバイパス用の出力パッドを有する。VBAT電源上の回路は、RC発振器、リアルタイムクロック(RC osc)4214、電池保護回路、レギュレータ制御装置、パワーオンリセット回路(POR)、及び様々な入力/出力を備える。VBAT電力プレーン上のパッドは、40℃及びVBAT=3.50Vで75nA未満の電流を引き込むように構成される。
ASICは、ロジックに電力を供給するためのVDD電源も有する。VDD電源電圧範囲は、少なくとも1.6ボルトから2.4ボルトまでプログラム可能である。VDD電力プレーン上の回路は、デジタルロジックの大部分、タイマ(32khz)、及びリアルタイムクロック(32khz)を備える。VDD電源プレーンは、必要に応じて他の電圧プレーンにインターフェースするレベルシフタを備える。レベルシフタは、別の電力プレーンに電力が供給されていない場合に電力供給される任意の電力プレーンが10nAを超える電流の増大を有しないように調節されるインターフェースを有する。
ASICは、オンボードレギュレータ(シャットダウン制御付き)及び外部VDDソース用のオプションを備える。レギュレータ入力は、別のパッド、REG_VDD_IN(4216)であり、VBAT上の他のI/Oと共通の静電放電(ESD)保護回路を有する。オンボードレギュレータは、出力パッド、REG_VDD_OUT(4217)を有する。ASICは、REG_VDD_OUTパッドとは分離している、VDDに対する入力パッドも有する。
ASICは、VDDA(4218)とも称される、アナログ電力プレーンを備え、VDDオンボードレギュレータ又は外部ソースのいずれかによって電力を供給され、通常はフィルタリングされたVDDによって電力を供給される。VDDA供給回路は、VDDの0.1ボルト以内で動作するように構成され、それによって、VDDAとVDD電力プレーンとの間のレベルシフトの必要性をなくす。VDDA電源は、センサアナログ回路、アナログ測定回路、及び他のノイズ感知回路に電力を供給する。
ASICは、指定されたデジタルインターフェース信号用のパッド電源、VPADを備える。パッド電源は、少なくとも1.8Vから3.3Vまでの動作電圧範囲を有する。これらのパッドは、別々の電源パッドを有し、外部ソースから電力を供給される。これらのパッドは、他のオンボード回路へのレベルシフタも組み込んでおり、これにより、VDDロジック供給電圧と独立して柔軟なパッド電力供給範囲を可能にする。ASICは、VPAD電源が有効化されていないときに、他の供給電流が10nAを超えて増大しないようにVPADリング信号を調節することができる。
バイアス生成器
ASICは、バイアス生成回路、BIAS_GEN(4220)を有し、これは、VBAT電源から電力を供給され、システム用の供給電圧と共に安定するバイアス電流を発生する。出力電流は、以下の仕様を有する。(i)電源感度:1.6V〜4.5Vの供給電圧から±2.5%未満、及び(ii)電流精度:トリミングの後±3%未満。
BIAS_GEN回路は、スイッチングされる電流とスイッチングされない電流とを発生し、動作にバイアス電流を必要とする回路に電力を供給する。BIAS_GEN回路の動作電流ドレインは、2.5V〜4.5VのVBATで25℃のときに0.3μA未満である(バイアス出力電流を除く)。最後に、バイアス電流の温度係数は、一般的、4,000ppm/℃から6,000ppm/℃までの範囲である。
電圧基準
本明細書で説明されているようなASICは、VBAT電源から電力を供給される、低電力電圧基準を有するように構成される。電圧基準は、VBAT又はVDDBUによって電力を供給されるロジックから信号を受け付けることができる有効化入力を有する。ASICは、VBATが通電されるときに有効化信号がこの信号インターフェースからの供給電力から10nAを超える電流の増大を引き起こさないように設計される。
基準電圧は、以下の仕様を有する。(i)出力電圧:トリミングの後1.220±3mV、(ii)電源感度:1.6Vから4.5Vの入力で±6mV未満、(iii)温度感度:0℃から60℃で±5mV未満、及び(iv)出力電圧デフォルト精度(トリムなし):1.220V±50mV。加えて、供給電流は、4.5V、40℃で800nA未満である。この実施形態では、基準出力は、VDD電圧レギュレータがロジックの絶縁破壊電圧を超えるレベルにオーバーシュートしないように基準を無効化するときにVSSAに強制される。
32kHzの発振器
ASICは、VDDA電源から導出される電力を供給され、ソフトウェアにより水晶発振器パッド(XTALI,XTALO)の容量をトリムすることができる、低消費電力32.768kHz水晶発振器4222を備える。具体的に、周波数トリム範囲は、少なくとも−50ppmから+100ppmまでであり、トリム範囲全体にわたってステップサイズは最大2ppmである。ここで、水晶は、それぞれの水晶端子上で負荷容量7pF、Ls=6.9512kH、Cs=3.3952fF、Rs=70k、シャント容量=1pF、及びPC基板寄生容量2pFと仮定することができる。
ASICは、パッドCLK_32kHZ上で利用可能なVPADレベルの出力を有し、出力は、ソフトウェアとロジック制御の下で無効化され得る。デフォルトでは、32kHzの発振器を出力に駆動する。入力ピン、OSC32K_BYPASS(4224)は、32kHz発振器を無効化することができ(電力ドレインなし)、XTALIパッドへのデジタル入力を可能にする。この機能に関連する回路は、OSC32K_BYPASSがlowである場合に発振器電流以外のOSC32K_BYPASS信号のいずれかの状態で10nAを超えるASIC電流を加えないように構成される。
32kHzの発振器は、バイパス状態を除き、VDDAプレーンが通電されたときに常に動作可能である必要がある。OSC32K_BYPASSが真である場合、32kHz発振器アナログ回路は低電力状態に入り、XTALIパッドは、レベルが0からVDDAまでであるデジタル入力を受け付けるように構成される。32kHz発振器出力は、40%から60%の間のデューティサイクルを有する。
タイマ
ASICは、2で除算される32kHzの発振器からのクロックと同期するタイマ4226を備える。これは、プリセット可能であり、2つのプログラム可能なタイムアウトを有する。これは、合計17分4秒までのカウントを与える24個のプログラム可能ビットを有する。タイマは、CLK_32KHzパッドへのクロック供給を無効化し、VPADプレーン上のマイクロプロセッサ(μP)インターフェース信号を所定の状態に設定するプログラム可能な遅延も有する(マイクロプロセッサウェイクアップ制御信号については以下の節を参照)。これは、マイクロプロセッサが外部クロックがない場合にサスペンドモードに入るのを可能にする。しかし、この機能は、プログラム可能ビットを使ってソフトウェアにより無効化されてもよい。
タイマは、CLK_32KHZクロック出力を有効化し、UP_WAKEUPをhighレベルに設定することによってマクロプロセッサをウェイクアップするプログラム可能な遅延も備える。電源低状態から電源OK状態へのPOR2(VDD POR)の遷移は、32kHz発振器、CLK_32KHZクロック出力を有効化し、UP_WAKEUPをhighレベルに設定する。電力シャットダウン及び電源投入は、プログラム可能な制御ビットで制御されるように構成される。
リアルタイムクロック(RTC)
ASICは、アンゲートされた自走32kHz発振器から動作する48ビット読み出し可能/書き込み可能2進カウンタも有する。リアルタイムクロック4228への書き込みは、クロックの書き込み前にキーによるアドレスへの書き込みを必要とする。クロックへの書き込みアクセスは、キーアドレスへの書き込み後1ミリ秒から20ミリ秒までの間に終了するように構成される。
リアルタイムクロック4228は、1/2カウント(MSB=1、他の全てのビット0)へのPOR1_IN(VBAT POR)又はPOR2_IN(VDD_POR)のいずれかによるパワーオンリセットでリセットされるように構成される。本発明の実施形態では、リアルタイムクロックは、プログラム可能な割り込み機能を有し、シングルイベントアップセット(SEU)に対してロバストとなるように設計されており、これはレイアウト技術又は必要ならば適切なノードに静電容量を追加することによって実現され得る。
RC発振器
ASICは、VBAT電源又はVBAT誘導電源から電力を供給されるRCクロックを更に備える。RC発振器は、アナログテストモード(デジタルテストに関する節を参照)でレジスタビットに書き込み、0からVBATレベルで信号をGPIO_VBATに印加することによって発振器がバイパスされ得ることを除き、常に動作している。RC発振器は、トリミング可能でなく、以下の仕様を備える。(i)750Hzから1500Hzまでの周波数、(ii)50%±10%の範囲のデューティサイクル、(iii)25℃で200nA未満の電流消費、(iv)1Vから4.5VのVBAT電源で±2%より小さく、1.8Vから4.5VのVBAT電源で1%よりも良い周波数変化、及び(v)VBAT=3.5Vで15℃から40℃の温度で+2、−2%より小さい周波数変化。RC周波数は、32kHzの水晶発振器で、又は外部周波数ソースで測定され得る(発振器較正回路の節を参照)。
リアルタイムRCクロック(RC発振器ベース)
ASICは、RC発振器に基づく48ビット読み出し可能/書き込み可能2進リップルカウンタを備える。RCリアルタイムクロックへの書き込みは、クロックの書き込み前にキーによるアドレスへの書き込みを必要とする。クロックへの書き込みアクセスは、キーアドレスへの書き込み後1ミリ秒から20ミリ秒までの間に終了し、保護ウィンドウに対する時間は、RCクロックで生成されるように構成される。
リアルタイムRCクロックにより、水晶発振器がシャットダウンした場合に相対的タイムスタンプを使用することができ、1/2カウント(MSB=1、他は全て0)へのPOR1_IN(BAT POR)上でリセットされるように構成される。リアルタイムRCクロックは、レイアウト技術によって、又は必要な場合に適切なノードに静電容量を追加することによってシングルイベントアップセット(SEU)に対してロバストとなるように設計されている。POR2_INの立ち下がりエッジで、又はASICがバッテリ・ロー状態に入る場合に、RTリアルタイムクロック値は、SPIポートを介して読み出せるレジスタ内に取り込むことができる。このレジスタ及び関連するロジックは、VBAT又はVDDBU電力プレーン上にある。
電池保護回路
ASICは、比較器を使用して電池電圧を監視し、VBAT電力プレーンから誘導される電力を供給される電池保護回路4230を備える。電池保護回路は、VBAT電源に印加される電力で常に動作しているように構成される。電池保護回路は、信号のクロック同期にRC発振器を使用することができ、また3Mオーム全抵抗外部分圧器を含む、30nA未満の平均電流ドレインを有することができる。
電池保護回路は、2.90Vの電池閾値に対して0.421の比を有する外部スイッチング分圧器を使用する。ASICは、0.421±0.5%の比を持つ内部分圧器も有する。この分圧器は、BATT_DIV_EN(4232)とVSSA(4234)との間に接続され、分圧器出力は、BATT_DIV_INT(4236)と称されるピンである。パッケージ化された部分におけるピンの数を節約するために、この実施形態におけるBATT_DIV_INTは、パッケージ内部でBATT_DIVに接続されている。また、この構成では、BATT_DIV_ENは、パッケージから出なくてよいので、パッケージピン2本を節約できる。
電池保護回路は、入力ピン、BATT_DIV(4238)上の電圧を、1秒毎に約2回サンプリングするように構成され、サンプル時間は、RC発振器から生成される。ASICは、RC発振器の分周器を調節して、サンプリング時間間隔を0.500秒±5ミリ秒に調節することができ、RC発振器はその動作許容範囲内で動作する。好ましい一実施形態において、ASICは、テスト時により頻繁なサンプリング間隔を使用できるようにテストモードを有する。
比較器入力は、0からVBATボルトまでの入力を受け付けるように構成される。比較器入力、BATT_DIVへの入力電流は、0からVBATボルトの入力に対して10nA未満である。比較器サンプリング回路はパッド、BATT_DIV_ENに、節電のためサンプリング時間においてのみオフチップ抵抗分割器を有効化するために外部回路によって使用され得る正パルスを出力する。電圧のhighロジックレベルはVBAT電圧であり、lowレベルはVSSレベルである。
BATT_DIV_ENパッドの出力抵抗は、VBAT=3.0Vで2キロオーム未満であるものとする。これにより、分圧器をこの出力から直接駆動することができる。電池残量の低下を示すプログラム可能な数の連続サンプルの後、比較器制御回路は、割り込み出力パッド、UP_INTへの割り込みをトリガする。サンプルのデフォルトの数は4であるが、連続サンプルの数は、4から120までの間でプログラム可能である。
上記のUP_INTの生成後の電池残量の低下を示すプログラム可能な数の連続サンプルの後に、比較器制御回路はASICを低電力モードに入れる信号を生成するように構成される。VDDレギュレータは無効化され、low信号はパッド、VPAD_ENに対してアサートされる。これは、バッテリ・ロー状態と称される。ここでもまた、連続サンプルの数は、4から120までの間でプログラム可能であり、サンプルのデフォルトの数は4である。
比較器は、BATT_DIV上の立ち下がり及び立ち上がり電圧に対する個別のプログラム可能な閾値を有する。これは、バッテリ・ロー状態に応じて回路に対して2つの値を多重化するためデジタルロジックで実装される。したがって、バッテリ・ロー状態がlowの場合、立ち下がり閾値が適用され、バッテリ・ロー状態がhighの場合、立ち上がり閾値が適用される。具体的に、比較器は、1.22から1.645±3%までの16個のプログラム可能な閾値を有し、プログラム可能な閾値のDNLは、0.2LSB未満に設定される。
比較器閾値は、20℃から40℃までの間で±1%未満の変化を示す。立ち下がり電圧に対するデフォルトの閾値は、1.44Vであり(公称分圧器を使用して3.41VのVBAT閾値)、立ち上がり電圧に対するデフォルトの閾値は、1.53Vである(公称分圧器を使用して3.63VのVBAT閾値)。ASICがバッテリ・ロー状態に入った後、比較器がバッテリOKの連続する4つの指示を検知した場合に、ASICはマクロプロセッサ始動シーケンスを開始する。
電池電力プレーンのパワーオンリセット
パワーオンリセット(POR)出力は、入力VBATのスルーが50μ秒の期間内に1.2ボルトより高い場合、又はVBAT電圧が1.6±0.3ボルト未満である場合に、パッドnPOR1_OUT(4240)で生成される。このPORは、5ミリ秒の最小パルス幅まで伸長される。POR回路の出力は、負論理となるように、またVBAT電力プレーン上のパッド、nPOR1_OUTに向かうように構成される。
ICは、電池電力プレーンPORに対する入力パッド、nPOR1_IN(4242)を有する。この入力パッドは、50ナノ秒より短いパルスがロジックにリセットを引き起こさないようにRCフィルタを有する。この実施形態では、nPOR1_OUTは、通常動作で、nPOR1_INに外部接続され、それによって、テストのためにアナログ回路をデジタル回路から分離する。nPOR1_INは、電力プレーンのどれかにおける全てのロジックのリセットを引き起こし、全てのレジスタをデフォルト値に初期化する。したがって、リセットステータスレジスタPORビットがセットされ、他の全てのリセットステータスレジスタはクリアされる。PORリセット回路は、電源投入後5秒を超える時間にわたってVBAT電源から0.1μAを超える電流を消費しないように構成される。
VDDパワーオンリセット(POR)
ASICは、電源投入後に、又はVDDがプログラム可能な閾値より低くなった場合に、VDD電圧プレーンリセット信号を発生する電圧比較器回路も有する。範囲は、いくつかの電圧閾値でプログラム可能である。デフォルト値は、1.8V〜15%(1.53V)である。POR2は、ヒステリシスを実装する、立ち上がり電圧に対してプログラム可能な閾値を有する。立ち上がり閾値も、1.60V±3%のデフォルト値で、プログラム可能である。
POR信号は、負論理であり、VDD電力プレーン上に出力パッド、nPOR2_OUT(4244)を有する。ASICは、VBAT電力プレーン上に負論理のPORオープンドレイン出力、nPOR2_OUT_OD(4246)も有する。これは、他のシステム部品にPORを印加するために使用することが可能である。
VDDから電力を受けるロジックは、入力パッド、nPOR2_IN(4248)から誘導されるPORを有する。nPOR2_INパッドは、VDD電力プレーン上にあり、50ナノ秒より短いパルスがロジックにリセットを引き起こさないようにRCフィルタを有する。nPOR2_OUTは、通常使用の下でnPOR2_IN入力パッドに外部的に接続されるように構成され、それによって、アナログ回路をデジタル回路から分離する。
生成されるリセットは、VDDがプログラム可能な閾値より高くなった後にアクティブ時間の少なくとも700ミリ秒に延ばされ、これにより、水晶発振器が確実に安定化される。PORリセット回路は、電源を投入してから5秒を超える時間にVDD電源から0.1μA以下の電流、及び電源を投入してから5秒を超える時間にVBAT電源から0.1μA以下の電流を消費する。POR閾値を記憶するレジスタは、VDD電力プレーンから電力を供給される。
センサインターフェースエレクトロニクス
本発明の一実施形態において、センサ回路は、過酸化物又は酸素センサの任意の組み合わせで最大5つまでのセンサWORK電極(4310)をサポートするが、追加の実施形態では、更に多数のそのような電極に対応することもできる。過酸化物センサWORK電極は電流を吐き出すが、酸素センサWORK電極は電流を吸い込む。この実施形態では、センサは、図43に示されているようなポテンシオスタット構成で構成され得る。
センサエレクトロニクスは、未使用のセンサエレクトロニクスへの電流をオフにすることによって電流ドレインを最小にするためそれぞれの電極インターフェース回路用にプログラム可能な電力制御装置を有する。センサエレクトロニクスは、RE(基準)電極4330からのフィードバックを使用するCOUNTER電極4320を駆動するためのエレクトロニクスも備える。この回路に流れる電流は、節電のため使用しないときにオフにプログラムされてもよい。インターフェースエレクトロニクスは、COUNTER及びRE電極が(冗長)WORK電極のどれかに接続されるようにマルチプレクサ4250を備える。
ASICは、以下のセンサインターフェースを備えるように構成される。(i)RE:WORK電圧を設定するためのエレクトロニクスに対する溶液の基準電位を確定する基準電極、(ii)WORK1〜WORK5:所望の還元/酸化(レドックス)反応が生じる作用センサ電極、及び(iii)COUNTER:このパッドからの出力はシステムVSSに関するRE電極上の知られている電圧を維持する。本発明のこの実施形態では、ASICは、WORK電圧を最大5つまでのWORK電極について個別に設定することができるように構成され、その分解能及び精度は5mV以上である。
WORK電圧は、酸素モードでVSSAに関して少なくとも0から1.22Vの間でプログラム可能である。過酸化物モードでは、WORK電圧は、VSSAに関して少なくとも0.6から2.054ボルトの間でプログラム可能である。VDDAが2.15V未満である場合、WORK電圧は、VDDA−0.1Vで使用可能である。ASICは、過酸化物センサモードでWORK電極電流を測定する電流測定回路を備える。これは、例えば、電流−電圧又は電流−周波数変換器で実装することができ、これは以下の仕様を有することができる。(i)電流範囲:0〜300nA、(ii)電圧出力範囲:過酸化物/酸素モードでWORK電極と同じ、(iii)出力オフセット電圧:最大±5mV、及び(iv)未較正分解能:±0.25nA。
較正係数を利得に適用し、10秒以下の収集時間を仮定した後の電流測定精度は、以下のとおりである。
5pA〜1nA:±3%±20pA
1nA〜10nA:±3%±20pA
10nA〜300nA:±3%±0.2nA
電流−周波数変換器(ItoFs)のみでは、周波数範囲は、0Hzから50kHzの間であってよい。電流変換器は、過酸化物モードにおけるWORK電極のVSSに関して指定された電圧範囲内で動作しなければならない。ここで、電流ドレインは、デジタルアナログ(DAC)電流を含む1変換器当たり10nA未満のWORK電極電流で2.5V電源から2μA未満である。
電流変換器は、ソフトウェア制御によって有効化又は無効化されてもよい。無効化された場合、WORK電極は、非常に高いインピーダンス値、即ち、100Mオームを超える値を示す。ここでもまた、ItoFsのみについて、I/F変換器の出力は、32ビットカウンタに向かい、マイクロプロセッサ及びテストロジックによって読み出され、そこに書き込まれ、それによってクリアされ得る。カウンタ読み出し中に、カウンタのクロック動作は、正確な読み出しを行えるようにサスペンドされる。
本発明の実施形態では、ASICは、酸素センサモードでWORK電極電流を測定する電流測定回路も備える。この回路は、電流−電圧又は電流−周波数変換器として実装され、プログラム可能ビットが、酸素モードで動作するように電流変換器を構成するために使用されてもよい。前のように、電流変換器は、酸素モードにおけるVSSに関してWORK電極の指定された電圧範囲内で動作しなければならない。ここでもまた、電流範囲は、3.7pA〜300nAであり、電圧出力範囲は、酸素モードにおけるWORK電極と同じであり、出力オフセット電圧は、最大±5mVであり、未較正分解能は、3.7pA±2pAである。
較正係数を利得に適用し、10秒以下の収集時間を仮定した後の電流測定精度は、以下のとおりである。
5pA〜1nA:±3%±20pA
1nA〜10nA:±3%±20pA
10nA〜300nA:±3%±0.2nA
電流−周波数変換器(ItoFs)のみでは、周波数範囲は、0Hzから50kHzの間であってよく、電流ドレインは、DAC電流を含む、1変換器当たり10nA未満のWORK電極電流で2.5V電源から2μA未満である。電流変換器は、ソフトウェア制御によって有効化又は無効化されてもよい。無効化された場合、WORK電極は、非常に高いインピーダンス値、即ち、100Mオームを超える値を示す。また、ItoFsのみについて、I/F変換器の出力は、32ビットカウンタに向かい、マイクロプロセッサ及びテストロジックによって読み出され、そこに書き込まれ、それによってクリアされ得る。カウンタ読み出し中に、カウンタのクロック動作は、正確な読み出しを行えるようにサスペンドされる。
本発明の実施形態では、基準電極(RE)4330は、40℃で.05nA未満の入力バイアス電流を有する。COUNTER電極は、RE電極上の所望の電圧を維持するようにその出力を調節する。これは、COUNTER電極4320への出力で実際のRE電極電圧とDACによって設定されるターゲットRE電圧との間の差を最小にすることを試みる増幅器4340で実現される。
RE設定電圧は、少なくとも0から1.80Vまでの間でプログラム可能であり、COUNTER増幅器の共通モード入力範囲は、少なくとも0.20から(VDD−0.20)Vを含む。レジスタビットは、必要ならば、共通モード入力範囲を選択するために、またCOUNTERの動作のモードをプログラムすることに備えるために使用され得る。WORK電圧は、5mV以上の分解能及び精度で設定される。なお、通常モードでは、COUNTER電圧はプログラムされたREターゲット値に対してRE電圧を維持するレベルを求める。しかし、強制カウンタモードでは、COUNTER電極電圧は、プログラムされたREターゲット電圧に強制される。
全ての電極駆動回路は、電極間負荷を駆動することができ、どのような使用状況であっても発振を起こさないように構成される。図44は、図43に示されているようなポテンシオスタット構成を備える本発明の実施形態による等価ac電極間回路を示している。図44に示されている等価回路は、電極、即ち、WORK1〜WORK5、COUNTER、及びREのいずれかの間のものであってよく、値の範囲は各回路要素に対して以下のとおりである。
Ru=[200〜5k]オーム
Cc=[10〜2000]pF
Rpo=[1〜20]キロオーム
Rf=[200〜2000]キロオーム
Cf=[2〜30]μF
初期化時に、WORK電極及びCOUNTER電極に対する駆動電流は、既に説明されている通常のポテンシオスタット動作の場合と比べて大きい電流を供給する必要がある。そのようなものとして、プログラム可能なレジスタビットは、付加的な駆動に必要な場合により高い電力状態になるように電極駆動回路をプログラムするために使用されてもよい。電極電流が典型的には300nA未満である通常ポテンシオスタットモードで低電力動作を達成することが重要である。
好ましい実施形態では、初期化時に、WORK1からWORK5の電極は、0からVDDボルトまで5mVに等しいか、又はそれ以下のステップでプログラム可能であり、それらの駆動又はシンク電流出力能力は、0.20Vから(VDD−0.20V)まで最小20μAである。また、初期化時に、ASICは、一般的に、測定値の±2%±40nAの精度で最大20μAまで1つのWORK電極の電流を測定することができるように構成される。更に、初期化時に、RE設定電圧は、既に説明されているようにプログラム可能であり、COUNTER DRIVE CIRCUIT出力は、COUNTER電極を0.20Vから(VDD−0.20V)として最小50μAを吐き出すか、又は吸い込むことができなければならず、初期化回路への供給電流(VDD及びVDDA)は、吐き出される出力電流を超えて50μA未満である必要がある。
電流較正器
本発明の実施形態では、ASICは、較正を目的として任意のWORK電極に誘導することができる電流基準を有する。この点に関して、較正器は、電流出力に電流を引き込むか又は電流を供給させるプログラム可能ビットを含む。プログラム可能電流は、少なくとも10nA、100nA及び300nAを含み、その精度は、許容範囲0の外部精密抵抗を想定して、±1%±1nAよりも良好である。較正器は、基準抵抗用にパッド、TP_RES(4260)に接続された1メガオーム精密抵抗器を使用する。加えて、電流基準は、初期化及び/又はセンサ状態を目的として、COUNTER電極又はRE電極に誘導することができる。一定の電流は、COUNTER電極又はRE電極に印加されてもよく、電極電圧は、ADCにより測定してもよい。
高速RC発振器
図42を再び参照すると、ASICは、アナログ/デジタル変換器(ADC)4264、ADCシーケンサ4266及び32kHzよりも高速クロックを必要とする他のデジタル機能を供給する、高速RC発振器4262を更に含む。高速RC発振器は、32kHzクロック(32.768kHz)に位相ロックされ、524.3kHz〜1048kHzでプログラム可能な出力周波数を与える。加えて、高速RC発振器は、50%±10%のデューティサイクル、0.5%rms未満の位相ジッタ、10μA未満の電流及びVDD動作範囲(1.6〜2.5Vの電圧範囲)にわたって安定な周波数を有する。高速RC発振器のデフォルトは、「オフ」(即ち、無効)であり、この場合、電流引き込みは、10nA未満である。しかし、ASICは、高速RC発振器を有効化するプログラム可能ビットを有する。
アナログ/デジタル変換器
ASICは、以下の特性を備えた12ビットADC(4264)を含む。(i)32kHzクロックから動作して1.5ミリ秒未満の変換をもたらすことができること、(ii)高速RC発振器からクロックを供給されたとき、より高速な変換を行うことができること、(iii)少なくとも10ビットの精度(12ビット±4カウント)を有すること、(iv)1.220Vの基準電圧入力を有し、20℃〜40℃において温度感度が0.2mV/℃未満であること、(v)フルスケール入力範囲は、0〜1.22V、0〜1.774V、0〜2.44V及び0〜VDDAであり、1.774〜2.44Vの範囲は、変換範囲をより低いVDDA電圧に対応するより低い値に縮小するプログラム可能ビットを有すること、(vi)その電源から50μA未満の電流消費を有すること、(vi)32kHzクロック又は高速RCクロックから動作可能な変換器を有すること、(vii)1LSB未満のDNLを有すること及び(viii)変換終了時に割り込みを発すること。
図42A及び図42Bに示すように、ASICは、ADC4264の入力にアナログマルチプレクサ4268を有し、両方ともソフトウェアによって制御可能である。好ましい実施形態では、少なくとも以下の信号がマルチプレクサに接続される。
(i)VDD−コア電圧及びレギュレータ出力
(ii)VBAT−電池電源
(iii)VDDA−アナログ電源
(iv)RE−センサの基準電極
(v)COUNTER−センサの対電極
(vi)WORK1〜WORK5−センサの作用電極
(vii)温度センサ
(viii)少なくとも2つの外部ピンアナログ信号入力
(ix)EIS積分器出力
(x)I/V電流変換器出力。
ASICは、ADCの負荷が、COUNTER、RE、WORK1〜WORK5、温度センサの入力及び負荷による悪影響を受けるであろう任意の他の入力について±0.01nAを超えることとならないように構成される。マルチプレクサは、ADCの入力電圧範囲よりも高い電圧を有する任意の入力用の分圧器と、分割された入力の入力抵抗を負荷感応入力に対して1nA未満に低下させることとなるバッファ増幅器と、を含む。次いで、バッファ増幅器は、少なくとも0.8VからVDDA電圧の共通モード入力範囲及び0.8V〜VDDA−0.1Vの入力範囲から3mV未満のオフセットを有する。
好ましい実施形態では、ASICは、ADC測定値がプログラムされたシーケンスにおいて取り込まれるモードを有する。したがって、ASICは、以下のプログラム可能なパラメータによるADC測定用の最大8つの入力ソースの測定を監視するプログラム可能なシーケンサ4266を含む。
(i)ADC MUX入力
(ii)ADC範囲
(iii)遅延が0.488ミリ秒ステップで0〜62ミリ秒でプログラム可能である、測定前の遅延時間
(iv)それぞれの入力に対する測定の数は、0〜255
(v)測定のサイクル数は、0〜255、測定の周期は、(例えば、プログラム内の外ループとして)複数回の最大8回の入力測定のシーケンスの繰り返しを指す。
(vi)測定サイクル間の遅延、その遅延は、0.488ミリ秒ステップで0〜62ミリ秒でプログラム可能である。
シーケンサ4266は、オートメジャー開始コマンドを受信すると起動するように構成され、測定値は、SPIインターフェースを介して検索するためにASICに格納されてもよい。シーケンサ時間軸(time base)が32kHzクロックと高速RC発振器4262との間でプログラム可能であることに留意されたい。
センサ診断
詳細に上述したように、本発明の実施形態は、例えば、センサ診断手順及びIsig/SG融合アルゴリズムにおけるインピーダンス及びインピーダンス関連パラメータの使用を対象とする。その目的で、好ましい実施形態において、本明細書に記載のASICは、ポテンシオスタット構成において、RE電極及びCOUNTER電極に対する任意のWORKセンサ電極のインピーダンスの大きさ及び位相角を測定する能力を有する。これは、例えば、WORK電極電圧に重畳された正弦波状の波形に応じて電流波形の振幅及び位相を測定することにより行われる。例えば、図42Bの診断回路4255を参照されたい。
ASICは、例えば、電極マルチプレクサ4250を介して任意の電極に対する任意の電極の抵抗成分及び容量成分を測定する能力を有する。このような測定がセンサ平衡に干渉し、安定した電極電流を記録するための整定時間又はセンサ初期化を必要としてもよいことに留意されたい。上記で議論したように、ASICは、広範囲の周波数にわたってインピーダンス測定に使用されてもよいが、本発明の実施形態の目的では、相対的により狭い周波数範囲を使用してもよい。具体的には、ASICの正弦波測定能力は、約0.10Hz〜約8192Hzのテスト周波数を含んでもよい。このような測定を行う場合、本発明の実施形態に従った最小周波数分解能は、以下の表2に示すように制限され得る。
正弦波振幅は、5mVステップで少なくとも10mVp−pから50mVp−p及び10mVステップで60mVp−p〜100mVp−pでプログラム可能である。好ましい実施形態では、振幅精度は、±5%又は±5mVのうちのいずれか大きいものよりも良好である。加えて、ASICは、以下の表3で指定された精度を有して電極インピーダンスを測定してもよい。
本発明の一実施形態では、ASICは、精度を向上させるためにインピーダンス計算において使用することができる入力波形位相を、時間軸に対して測定することができる。ASICはまた、オンチップ抵抗器を有し、上記の電極インピーダンス回路を較正してもよい。オンチップ抵抗器は、続いて、既知の1メガオームオンチップ精密抵抗器と比較することにより、較正されてもよい。
波形のデータサンプリングはまた、インピーダンスを決定するために使用されてもよい。データは、計算及び処理用のシリアル・ペリフェラル・インターフェース(SPI)を備えた外部マイクロプロセッサに送信されてもよい。変換された電流データは、データを失うことなくSPIインターフェースを介して外部装置にデータの2000回のADC変換を転送することができるように、十分にバッファリングされる。これは、データ転送要求割り込みを提供するために最大8ミリ秒の待ち時間を想定している。
本発明の実施形態では、正弦波による電極インピーダンスの測定の代わりに、又はそれに加えて、ASICは、ステップ入力により電極電流を測定してもよい。ここで、ASICは、5mVよりも良好な分解能で10〜200mVのプログラム可能振幅ステップを電極に供給して、結果として得られる電流波形をサンプリング(測定)することができる。サンプリングの持続時間は、0.25秒ステップで少なくとも2秒にプログラム可能であってもよく、電流測定用のサンプリング間隔は、約0.5ミリ秒〜8ミリ秒の少なくとも5つのプログラム可能な二進数重み付けステップを含んでもよい。
電極電圧サンプルの分解能は、最大±0.25ボルトまでの範囲で1mVよりも小さい。この測定は、データ変換の必要な動的範囲を低減するために、好適な安定電圧に関するものとすることができる。同様に、電極電流サンプルの分解能は、最大20μAまでの範囲で0.04μAよりも小さい。測定極性がプログラム可能である場合、電流測定値は、単極とすることができる。
本発明の実施形態では、電流測定は、I/V変換器を使用してもよい。更に、ASICは、電流測定を較正するためにオンチップ抵抗器を有してもよい。オンチップ抵抗器は、続いて、既知の1メガオームオンチップ精密抵抗器と比較することにより、較正されてもよい。電流測定サンプル精度は、±3%又は±10nAのうちのいずれか大きい方よりも良好である。従来のように、変換された電流データは、データを失うことなくSPIインターフェースを介して外部装置にデータの2000回のADC変換を転送することができるように、十分にバッファリングされる。これは、データ転送要求割り込みを提供するために最大8ミリ秒の待ち時間を想定している。
較正電圧
ASICは、ADCを較正するための精密電圧基準を含む。出力電圧は、±1.5%未満の出力変動を伴って1.000V±3%であり、安定性は、20℃〜40℃の温度範囲にわたって±3mVよりも良好である。この精密較正電圧は、製造中に外部の精密電圧と比較することによって、オンチップADCを介して較正してもよい。製造時に、較正係数は、より高い精度を達成するために(このASIC上ではない)システム不揮発性メモリに記憶してもよい。
較正電圧回路のドレイン電流は、好ましくは25μA未満である。更に、較正電圧回路は、使用しないとき、電池電力を節約するために、10nA未満まで電力を低下することができる。
温度センサ
ASICは、−10℃〜60℃の範囲でセルシウス度当たり9〜11mVの感度を有する温度変換器を有する。温度センサの出力電圧は、ADCが0〜1.22VのADC入力範囲で温度関連電圧を測定することができるようになっている。温度センサの電流ドレインは、好ましくは25μA未満であり、温度センサは、使用しないとき、電池電力を節約するために、10nA未満に電力を低下させることができる。
VDD電圧レギュレータ
ASICは、以下の特性を備えたVDD電圧レギュレータを有する。
(i)最小入力電圧範囲:2.0V〜4.5V。
(ii)最小出力電圧:デフォルト値を2.0Vとして、1.6〜2.5V±5%。
(iii)ドロップアウト電圧:Iload=100μA、Vin=2.0Vで、Vin−Vout<0.15V。
(iv)出力電圧は、以下の表4に示す値の2%以内の精度でプログラム可能である。
(v)レギュレータは、2.8Vの入力電圧を使用して、2.5Vで1mAの出力を供給することができる。
(vi)外部レギュレータが使用される場合、レギュレータはまた、開回路にしてもよい入出力パッドを有する。レギュレータ回路の電流引き込みは、この非動作モードにおいて好ましくは100nA未満である。
(vii)10μA〜1mAの負荷からの出力電圧の変化は、好ましくは25mV未満である。
(viii)1mA負荷での出力電流を除外する電流ドレインは、ソースから100μA未満である。
(ix)0.1mA負荷での出力電流を除外する電流ドレインは、ソースから10μA未満である。
(x)10μA負荷での出力電流を除外する電流ドレインは、ソースから1μA未満である。
汎用比較器
ASICは、VDDAから電力供給される少なくとも2つの比較器4270、4271を含む。比較器は、1.22Vを基準として用いて、閾値を生成する。比較器の出力は、プロセッサによって読み出されてよく、構成レジスタによって決定された立ち上がり又は立下りエッジ上でマスク可能な割り込みを作成する。
比較器は、使用されていない場合、電力を低減する電力制御を有し、電力供給は、比較器毎に50nA未満である。比較器の応答時間は、好ましくは、20mVオーバードライブ信号に対して50u秒であり、オフセット電圧は±8mV未満である。
比較器は、プログラム可能なヒステリシスも有し、ヒステリシスのオプションは、立ち上がり入力上で、閾値=1.22V+Vhyst、立ち下がり入力上で閾値=1.22−Vhyst、又は無ヒステリシス(Vhyst=25±10mV)を含む。いずれかの比較器からの出力は、いずれの電力プレーンのいずれのGPIOで利用可能である。(GPIOの節を参照されたい)。
RE上のセンサ接続検知回路
アナログスイッチトキャパシタ回路は、センサが接続されているかどうかを判定するために、RE接続のインピーダンスを監視する。具体的には、約20pFのコンデンサは、VSSからVDDへの出力スイングを伴うインバータによって駆動される16Hzの周波数でスイッチングされる。比較器は、REパッド上で電圧スイングを感知し、スイングが閾値未満である場合、比較器出力は接続を示す。上記の比較は、パルスの両方の遷移に対して行われる。接続を示すには、両方の遷移に対するスイングが閾値より低くなることが必要であり、いずれかの位相に対して高いスイングが示される比較は、切断を示す。接続信号/切断信号は、状態の遷移が少なくとも1/2秒で新しい状態への安定した指示を必要とするようにデバウンスされる。
回路は、20pFのコンデンサと並列の、抵抗500キロオーム、1メガオーム、2メガオーム、4メガオーム、8メガオーム、及び16メガオームによって定義された6つの閾値を有する。この並列等価回路は、REパッドと、電力レイルの間のいずれかの電圧となっている可能性のある仮想グランドとの間にある。閾値精度は、±30%よりも良好である。
センサ接続検知回路の出力は、センサが接続されているか又は切断されている場合に割り込み又はプロセッサ始動をプログラム可能に生成することができる。この回路は、nPOR2_INが高レベルであり、VDD及びVDDAが存在している場合に必ずアクティブである。この回路に対する電流ドレインは、平均100nA未満である。
WAKEUPパッド
WAKEUP回路は、VDD電源によって電力供給され、0V〜VBATの範囲を有する入力を伴う。WAKEUPパッド4272は、80±40nAの弱いプルダウンを有する。この電流は、BIAS_GEN4220の出力から誘導することができる。回路よって消費される平均電流は、0V入力で50nA未満である。
WAKEUP入力は、1.22±0.1Vの立ち上がり入力電圧閾値であるVihを有し、立ち下がり入力閾値は、立ち上がり閾値の−25mV±12mVである。好ましい実施形態において、WAKEUP入力に関連する回路は、値が−.2〜VBAT電圧であるいずれかの入力に対し、100nA以下の電流を引き込む(この電流は、入力プルダウン電流を除く)。WAKEUPパッドは、少なくとも1/2秒間デバウンスされる。
WAKEUP回路の出力は、WAKEUPパッドが状態を変えた場合に割り込み又はプロセッサ始動をプログラム可能に生成することができる。(イベントハンドラの節を参照されたい)。なお、電池保護回路がローバッテリ状態を示す場合、WAKEUPパッド回路が低電流である1nA未満を想定するように構成されていることが重要である。
UART WAKEUP
ASICは、nRX_EXTパッド4274を監視するように構成されている。nRX_EXTレベルが1/2秒以上連続的に高い(UART BREAK)場合、UART WAKEUPイベントが生成される。原因となるUART WAKEUPイベントのサンプリングは、1/4秒と短い間に連続的な高レベルで生成される可能性がある。UART WAKEUPイベントは、割り込み、WAKEUP、及び/又はマイクロプロセッサリセット(nRESET_OD)をプログラム可能に生成できる。(イベントハンドラの節を参照されたい)。
好ましい実施形態において、UART WAKEUP入力に関連した回路は、100nA以下の電流を引き込み、UART WAKEUPパッド回路は、電池保護回路がバッテリ・ロー状態を示す場合、低電流である1nA未満を想定するように構成される。UART Wakeup入力は、1.22±0.1Vの立ち上がり入力電圧閾値であるVihを有する。立ち下がり入力閾値は、立ち上がり閾値の−25mV±12mVである。
マイクロプロセッサのウェイクアップ制御信号
ASICは、マイクロプロセッサの電力管理の制御を助けるための信号を生成できる。具体的には、ASICは以下の信号を生成し得る。
(i)nSHUTDN−nSHUTDNは、オフチップCDDレギュレータの電力有効化を制御してもよい。nSHUTDNパッドは、VBAT電力レイル上にある。電池保護回路がバッテリ・ロー状態を示す場合、nSHUTDNはlowとなり、そうでない場合nSHUTDNはhighとなる。
(ii)VPAD_EN−VPAD_ENは、VPAD電力を供給する外部レギュレータの電力有効化を制御してもよい。この外部信号に対応する内部信号により、VPADパッドからの入力がVPAD電力が無効化されたときにフローティング入力による余分な電力を引き起こさないことを確保する。VPAD_ENパッドは、VBAT電力レイル上の出力である。電池保護信号が電池残量の低下を示す場合、VPAD_EN信号はlowである。VPAD_EN信号は、タイマを始動するソフトウェアコマンドによってlowに設定されてもよく、タイマの終端カウントはVPAD_ENを強制的にlowにする。以下のイベントは、電池保護信号が良好な電池であることを示す場合にVPAD_EN信号をhighにしてもよい(詳細はイベントハンドラの節を参照)。lowからhighに遷移するnPOR2_IN、SW/タイマ(プログラム可能)、WAKEUP遷移、lowからhigh、及び/又はhighからlow(プログラム可能)、センサ接続遷移、lowからhigh、及び/又はhighからlow(プログラム可能)、UART Break、及びRTC時間イベント(プログラム可能)。
(iii)UP_WAKEUP−UP_WAKEUPは、マイクロプロセッサウェイクアップバッドへ接続されてもよい。これは、マイクロプロセッサをスリープモード又は同様のパワーダウンモードからウェイクアップさせることを意図している。UP_WAKEUPパッドは、VPAD電力レイル上にある出力である。UP_WAKEUP信号は、負論理、正論理、又はパルスとしてプログラム化され得る。UP_WAKEUP信号は、タイマを始動するソフトウェアコマンドによってlowに設定されてもよく、タイマの終端カウントはUP_WAKEUPを強制的にlowにする。以下のイベントは、電池保護信号が良好な電池であることを示す場合にUP_WAKEUP信号をhighにしてもよい(詳細はイベントハンドラの節を参照)。lowからhighに遷移するnPOR2_IN、SW/タイマ(プログラム可能)、WAKEUP遷移、lowからhigh、及び/又はhighからlow(プログラム可能)、センサ接続遷移、lowからhigh、及び/又はhighからlow(プログラム可能)、UART Break、及びRTC時間イベント(プログラム可能)。WAKEUP信号は、プログラム可能な量によって遅延されてもよい。WAKEUPがパルスになるようにプログラム化された場合、パルス幅がプログラム化されてもよい。
(iv)CLK_32KHZ−CLK_32KHZパッドは、低速度クロックを供給するためにマイクロプロセッサへ接続してもよい。クロックは、オン/オフにプログラム可能であり、プログラム可能にオンにしてウェイクアップイベントを起こす。CLK_32KHZパッドは、VPAD電力レイル上の出力である。電池保護信号が電池残量の低下を示す場合、CLK_32KHZ信号はlowとなる。CLK_32KHZ出力は、プログラム可能なビットによってオフにプログラム化されてもよい。デフォルトは、オンである。CLK_32KHZ信号は、タイマを始動するソフトウェアコマンドによって無効化されてもよく、タイマの終端カウントはCLK_32KHZを強制的にlowにする。以下のイベントは、電池保護信号が良好な電池であることを示す場合にCLK_32KHZ信号を有効化してもよい(詳細はイベントハンドラの節を参照)。lowからhighに遷移するnPOR2_IN、SW/タイマ(プログラム可能)、WAKEUP遷移、lowからhigh、及び/又はhighからlow(プログラム可能)、センサ接続遷移、lowからhigh、及び/又はhighからlow(プログラム可能)、UART Break、RTC時間イベント(プログラム可能)、及び電池保護回路による電池残量の低下の検出。
(v)nRESET_OD−nRESET_ODは、マイクロプロセッサに接続し、マイクロプロセッサをリセットさせてもよい。nRESET_ODは、イベントを起こすようプログラム可能である。nRESET_ODパッドは、VPAD電力レイル上の出力である。このパッドは、オープンドレイン(nfet出力)である。電池保護信号が電池残量の低下を示す場合、nRESET_OD信号がlowである。nRESET_ODアクティブ時間は、1〜200ミリ秒までプログラム可能である。デフォルトは、200ミリ秒である。以下のイベントは、nRESET_OD信号がlowにアサートされるようにしてもよい(更なる詳細にはイベントハンドラの節を参照):nPOR2_IN、SW/タイマ(プログラム可能)、WAKEUP遷移、lowからhigh、及び/又はhighからlow(プログラム可能)、センサ接続遷移、lowからhigh、及び/又はhighからlow(プログラム可能)、UART Break、及びRTC時間イベント(プログラム可能)。
(vi)UP_INT−UP_INTは、割り込みを伝えるためにマイクロプロセッサへ接続してもよい。UP_INTは、イベントを起こすようプログラム可能である。UP_INTパッドは、VPAD電力レイル上にある出力である。電池保護信号が電池残量の低下を示す場合、UP_INT信号はlowである。UP_INT信号は、タイマを始動するソフトウェアコマンドによってhighに設定されてもよく、タイマの終端カウントはUP_INTを強制的にhighにする。以下のイベントにより、電池保護信号が良好な電池であることを示す場合にUP_INT信号がhighになるようアサートされる(詳細はイベントハンドラの節を参照)。SW/タイマ(プログラム可能)、WAKEUP遷移、lowからhigh、及び/又はhighからlow(プログラム可能)、センサ接続遷移、lowからhigh及び/又はhighからlow(プログラム可能)、UART Break、RTC時間イベント(プログラム可能)、電池保護回路による電池残量の低下の検出、及びマスクされていないときのASIC割り込みのいずれか。
ASICは、マイクロプロセッサに対するブートモード制御としての役を果たすGPIO1及びGIPO0パッドを有する。POR2イベントは、ビットがGPIO1&GPIO0(それぞれMSB、LSB)にマッピングされる2ビットカウンタをリセットする。UART breakの立ち上がりエッジでカウンタが1だけ増分され、カウンタは4を法としてカウントし、状態11で増分された場合にゼロになる。ブートモードカウンタは、SPIを介して予め設定可能である。
イベントハンドラ/ウォッチドッグ
ASICは、システム状態及び入力信号の変化を含む、イベントに対する応答を定義するためにイベントハンドラを組み込んでいる。イベントは、割り込みの全てのソースを含む(例えば、UART_BRK、WAKE_UP、センサ接続...など)。刺激に対するイベントハンドラの応答は、SPIインターフェースを通じてソフトウェアによってプログラム可能である。しかし、いくつかの応答は、ハードワイヤ(プログラム不可)されていてもよい。
イベントハンドラの動作は、有効化/無効化VPAD_EN、有効化/無効化CLK_32KHZ、アサートnRESET_OD、アサートUP_WAKEUP、及びアサートUP_INTを含む。イベントウォッチドッグタイマ1からタイマ5は、250ミリ秒〜16,384秒まで250ミリ秒増分で個別にプログラム可能である。イベントウォッチドッグタイマ6から8のタイムアウトは、ハードコーディングされている。タイマ6及びタイマ7に対するタイムアウトは、1分であり、タイマ8に対するタイムアウトは5分である。
ASICは、イベントによってトリガされた場合、マイクロプロセッサの応答を監視するためのウォッチドッグ機能も有する。イベントウォッチドッグは、マイクロプロセッサがイベント誘導活動を認識することに失敗したときに起動される。イベントウォッチドッグは、起動された後、プログラム可能な動作のシーケンスであるイベントウォッチドッグタイマ1〜5を実行し、その後、ハードワイヤされた動作のシーケンスであるイベントウォッチドッグタイマ6〜8を実行して、マクロプロセッサの応答を再獲得する。この動作のシーケンスは、マイクロプロセッサへの割り込み、リセット、ウェイクアップ、アサート32KHzクロック、パワーダウン、及びパワーアップを含む。
これらのアクションのシーケンスにおいて、マイクロプロセッサが記録された活動の認識能力を再獲得した場合、イベントウォッチドッグはリセットされる。ASICがマイクロプロセッサから確認を取得するのに失敗した場合、イベントウォッチドッグは、UART_BRKがマイクロプロセッサを再起動させる状態でマイクロプロセッサをパワーダウンし、アラームを起動する。起動されると、アラーム状態が、プログラム可能な繰り返しパターンでパッドALARM上に約1kHzの周波数の方形波を発生する。プログラム可能なパターンは、プログラム可能なバーストオン及びオフ時間がある2つのプログラム可能なシーケンスを有する。アラームは、SPIポートを介してプログラムされ得る別のプログラム可能なパターンを有する。これは、プログラム可能なバーストオン及びオフ時間がある2つのプログラム可能なシーケンスを有する。
デジタル/アナログ(D/A)
好ましい実施形態において、ASICは、下記の特性を備えた2つの8ビットD/A変換器4276、4278を有する。
(i)D/Aは、50pF未満の負荷で1ミリ秒未満で整定する。
(ii)D/Aは、少なくとも8ビットの精度を有する。
(iii)出力範囲は、0〜1.22V又は0〜VDDAのいずれかにプログラム可能である。
(iv)D/A電圧基準の温度感度は、1mV/℃未満である。
(v)DNLは、1LSB未満である。
(vi)D/Aによって消費される電流は、VDDA供給から2μA未満である。
(vii)それぞれのD/Aは、パッドへの出力lを有する。
(viii)D/A出力は、高インピーダンスである。負荷電流は、1nA未満である必要がある。
(ix)D/Aパッドは、レジスタからデジタル信号を出力するようにプログラムすることができる。出力スイングは、VSSAからまでVDDAである。
充電器/データダウンローダインターフェース
このTX_EXT_OD4280は、入力が信号入力パッド上のTX_UPである、オープンドレイン出力である。これは、TX_EXT_ODパッドがUARTアイドル状態でオープン状態になることを許す。TX_EXT_ODパッドは、その電圧を監視する比較器を有する。電圧がデバウンス期間(1/4秒)に比較器閾値電圧より高い場合、出力nBAT_CHRG_EN(4281)はlowになる。この比較器及びこの機能を有する他の関連する回路は、VBAT及び/又はVDDBUプレーン上にある。
この機能に関連する回路は、nBAT_CHRG_ENのアサートを無効化することなく外部装置との通常の通信の結果から生じるTX_EXT_ODパッド上でlowを許さなければならない。POR1がアクティブである場合、nBAT_CHRG_ENはhighになる(アサートされない)。比較器の閾値電圧は0.50Vから1.2Vの間である。比較器はヒステリシスを有し、立ち下がり閾値は、立ち上がり閾値より約25mV低い。
nRX_EXTパッドは、このパッド上で信号を反転し、RX_UPに出力する。このように、nRX_EXT信号はlowでアイドル状態になる。nRX_EXTは、VBAT電圧に達するまで入力を受け付けなければならない。nRX_EXT閾値は、1.22V±3%である。この比較器の出力は、マイクロプロセッサが読み出すためにSPIバス上で利用可能である。
nRX_EXTパッドは、80±30nAとなる電流をプログラム可能に吐き出す手段も組み込み、最高電圧はVBATである。ASICレイアウトは、マスク層の変化を最小数に抑えて50nA未満のステップで30nAから200nAまでこの電流を調節するマスクプログラム可能なオプションを有する。プログラム可能ビットは、UARTブレーク検出をブロックし、RX_UPを強制的にhighにするために利用可能である。通常動作では、このビットは、nRX_EXTへの電流吐き出しを可能にする前にhighにセットされ、次いで、RX_UP上でグリッチが発生しないこと、又はUARTブレークイベントが発生することを確実にするように電流吐き出しが無効化された後にlowにセットされる。ウェットコネクタ検出器を実装することに留意し、nRX_EXTへの電流ソースがアクティブである間に、低レベルの入力電圧を示すRX比較器は、漏れ電流を示す。ASICは、nRX_EXTパッド上に約100キロオームのプルダウン抵抗器を備える。このプルダウンは、電流ソースがアクティブであるときに切断される。
センサ接続スイッチ
ASICは、VSS(4284)に対する低抵抗を検出することができる、パッド、SEN_CONN_SW(4282)を有するものとする。SEN_CONN_SWは、SEN_CONN_SW=0Vで5から25μAの電流を吐き出し、最大開回路電圧は.4Vである。ASICレイアウトは、マスク層の変化を最小数に抑えて5μA未満のステップで1μAから20μAまでこの電流を調節するマスクプログラム可能なオプションを有する。SEN_CONN_SWは、SEN_CONN_SWとVSSA(4234)との間に、閾値が2kから15キロオームの間である抵抗の存在を検出する関連する回路を有する。この回路の平均電流ドレインは、最大50nAである。サンプリングは、この低い電流を達成するために使用されなければならない。
発振器の較正回路
ASICは、その入力を内部又は外部のクロック源に誘導することができるカウンタを有する。一方のカウンタは、他方のカウンタに対してプログラム可能なゲート間隔を生成する。ゲート間隔は、32kHz発振器由来の1〜15秒を含む。いずれかのカウンタに誘導することができるクロックは、32kHz、RC発振器、高速RC発振器及び任意のGPIOパッドからの入力である。
発振器バイパス
ASICは、発振器出力のそれぞれについて外部クロックを代替することができる。ASICは、特定のTEST_MODEがアサートされたときにのみ書き込みすることができるレジスタを有する。このレジスタは、RC発振器に対する外部入力を可能にするビットを有し、他のアナログテスト制御信号と共有されてもよい。しかし、このレジスタは、TEST_MODEがアクティブでなければ、いかなる発振器バイパスビットもアクティブにすることはない。
ASICはまた、RC発振器をバイパスするための外部クロック用入力パッドを有する。パッド、GPIO_VBATは、VBATの電力プレーン上にある。ASICは、32kHz発振器用のバイパス有効化パッド、OSC32K_BYPASSを更に含む。highのとき、32KHZ発振器出力は、OSC32KHZ_INパッドを駆動することによって供給される。通常、OSC32KHZ_INパッドが水晶に接続されていることに留意されたい。
ASICは、HS_RC_OSCをバイパスする外部クロック用の入力を有する。バイパスは、プログラム可能なレジスタビットによって有効化される。このHS_RC_OSCは、VDDプレーン上のGPIO又はVPADプレーン上のGPIOのいずれかによってプログラム可能に供給されてもよい。
SPIスレーブポート
SPIスレーブポートは、チップ選択入力(SPI_nCS)4289と、クロック入力(SPI_CK)4286と、シリアルデータ入力(SPI_MOSI)4287と、シリアルデータ出力(SPI_MISO)4288と、からなるインターフェースを含む。チップ選択入力(SPI_nCS)は、アクティブ低入力であり、オフチップSPIマスタによってアサートされてSPIトランザクションを開始し、限定する。SPI_nCSがlowにアサートされると、SPIスレーブポートは、SPIスレーブとして自己構成し、クロック入力(SPI_CK)に基づいてデータトランザクションを行う。SPI_nCSが非アクティブであるとき、SPIスレーブポートは、自己リセットし、リセットモードにとどまる。このSPIインターフェースがブロック転送を支援するため、マスタは、転送の終了までSPI_nCSをlowに維持すべきである。
SPIクロック入力(SPI_CK)は、SPIマスタによって常にアサートされることとなる。SPIスレーブポートは、SPI_CKの立ち上がりエッジを用いて着信データをSPI_MOSI入力上でラッチし、SPI_CKの立ち下がりエッジを用いて発信データをSPI_MISO出力上に駆動する。シリアルデータ入力(SPI_MOSI)は、SPIマスタからSPIスレーブにデータを転送するために使用される。全てのデータビットは、SPI_CKの立ち下がりエッジの後にアサートされる。シリアルデータ出力(SPI_MISO)は、SPIスレーブからSPIマスタにデータを転送するために使用される。全てのデータビットは、SPI_CKの立ち下がりエッジの後にアサートされる。
SPI_nCS、SPI_CK及びSPI_MOSIは、SPIマスタの電源が切られない限り、SPIマスタによって常に駆動される。VPAD_ENがlowである場合、これらの入力は、これらの入力に関連付けられる電流ドレインが10nA未満であり、SPI回路がリセット又は非アクティブに保持されているように調整される。SPI_MISOは、SPI_nCSがアクティブであるときにSPIスレーブポートによってのみ駆動される、あるいはそうでない場合には、SPI_MISOは、トライステート状態である。
チップ選択(SPI_nCS)は、SPIデータトランザクションのデータ転送パケットを定義し、フレーム化する。データ転送パケットは、3つの部分からなる。4ビットコマンドセクションの後に12ビットアドレスセクションがあり、次いで、任意の個数の8ビットデータバイトが続く。コマンドビット3は、方向ビットとして使用される。「1」は、書き込み操作を示し、「0」は、読み出し操作を示す。コマンドビット2、1及び0の組み合わせは、以下の定義を有する。未使用の組み合わせは、未定義である。
(i)0000:データ読み出しとアドレスインクリメント
(ii)0001:データ読み出し、アドレスの変更なし
(iii)0010:データ読み出し、アドレスデクリメント
(iv)1000:データ書き込みとアドレスインクリメント
(v)1001:データ書き込み、アドレスの変更なし
(vi)1010:データ書き込み、アドレスデクリメント
(vii)x011:テストポートアドレッシング
12ビットアドレスセクションは、開始バイトアドレスを定義する。第1のデータバイトの後にSPI_nCSがアクティブのままである場合、マルチバイト転送を示すために、それぞれのバイトが転送された後、アドレスは、1だけ増分される。アドレス(アドレス<11:0>)のビット<11>は、最高アドレスビットを示す。アドレスは、限度に到達した後に最低値に戻る。
データは、バイト形式であり、ブロック転送は、全てのバイトが1つのパケットで転送されるように、SPI_nCSを拡張することによって実施することができる。
マイクロプロセッサ割り込み
ASICは、ホストマイクロプロセッサに割り込みを送信することを目的とする、VPAD論理レベルの出力、UP_INTを有する。マイクロプロセッサ割り込みモジュールは、割り込みステータスレジスタ、割り込みマスクレジスタ及び全ての割り込みステータスに論理OR演算を適用して1つのマイクロプロセッサ割り込みにする機能からなる。割り込みは、エッジ検知及びレベル検知の両方の形式をサポートするように実装される。割り込みの極性は、プログラム可能である。デフォルト割り込み極性は、TBDである。
好ましい実施形態では、AFE ASIC上の全ての割り込みソースは、割り込みステータスレジスタに記録されることとなる。対応する割り込みステータスビットに「1」を書き込むと、対応する保留中の割り込みがクリアされる。AFE ASIC上の全ての割り込みソースは、割り込みマスクレジスタを通じてマスク可能である。対応する割り込みマスクビットに「1」を書き込むと、対応する保留中の割り込みのマスキングが有効化される。対応する割り込みマスクビットに「0」を書き込むと、対応する割り込みのマスキングが無効化される。割り込みマスクレジスタのデフォルト状態は、TBDである。
汎用入力/出力(GPIO)/パラレルテストポート
本発明の実施形態では、ASICは、VPADレベル信号上で動作する8個のGPIOを有してもよい。ASICは、VBATレベル信号上で動作する1つのGPIO及びVDDレベル信号上で動作する1つのGPIOを有する。全てのGPIOは、少なくとも以下の特性を有する。
(i)レジスタビットは、それぞれのGPIOの選択及び方向を制御する。
(ii)ASICは、SPIインターフェース上で読み出すことができる入力としてGPIOを構成するための手段を有する。
(iii)ASICは、割り込みを発生するための入力としてGPIOを構成するための手段を有する。
(iv)ASICは、SPIインターフェース上で書き込むことができるレジスタビットによって制御される出力として、それぞれのGPIOを構成するための手段を有する。
(v)プログラム可能であるように、ASICは、GPIO_VBAT又はGPIO_VDDに印加される入力信号を(VPAD電力プレーン上の)GPIOに出力することができる。(レベルシフト機能)。
(vi)ASICは、発振器較正回路への入力として、それぞれのGPIOを構成するための手段を有する。
(vii)ASICは、それぞれの電力プレーン上の少なくとも1つのGPIOに対するそれぞれの汎用比較器出力を構成するための手段を有する。比較器出力の極性は、プログラム可能なビットによってプログラム可能である。
(viii)GPIOは、マイクロプロセッサ割り込み発生機能を有する。
(ix)GPIOは、ドレイン出力をオープンにするようにプログラム可能である。
(x)VPAD電力プレーン上のGPIOは、マイクロプロセッサの起動制御を実装するように構成可能である。
パラレルテストポートは、VPAD電圧プレーン上の8ビットGPIOを共有する。テストポートは、レジスタの内容及び様々な内部信号を観察するために使用されることとなる。このポートの出力は、通常モードにおいてポート構成レジスタによって制御される。GPIO_O1S_REGレジスタ及びGPIO_O2S_REGレジスタの両方に8’hFFを書き込みすると、テストポートデータは、GPIO出力に誘導されることとなるが、GPIO_ON_REGレジスタに8’h00を書き込むと、テストポートデータは、無効化されることとなり、GPIO出力上へのGPIOデータが有効化される。
レジスタ及び予めグループ化された内部信号は、SPIスレーブポートを通じてターゲットレジスタにアドレッシングすることによってこのテストポート上で観察することができる。SPIパケットは、12ビットのターゲットレジスタアドレスが続く4’b0011に設定されたコマンドビットを有する。パラレルテストポートは、次のテストポートアドレッシングコマンドを受信するまで、アドレッシングされたレジスタの内容を表示し続ける。
アナログテストポート
ICは、パッド、TP_ANAMUX(4290)を供給するマルチプレクサを有し、これは、テストのために内部アナログ回路ノードに視認性をもたらすこととなる。ICはまた、パッド、TP_RES(4260)を供給するマルチプレクサを有し、これは、テストのために内部アナログ回路ノードに視認性をもたらすこととなる。このパッドはまた、様々なシステム較正を行うために通常のアプリケーションにおいて精密1メガ抵抗器を提供することとなる。
チップID
ASICは、32ビットマスクプログラム可能IDを含む。SPIインターフェースを使用するマイクロプロセッサは、このIDを読み取り可能となる。このIDは、アナログ電子機器ブロックに配置されるべきであるため、IDの変更は、チップの経路切替を必要としない。設計は、IDを変更するために、1つの金属又は1つの接点マスクの変更のみが必要とされるようにすべきである。
スペアテスト出力
ASICは、SPIインターフェース上で送信されるコマンドの下で8ビットGPIOに多重化することができる16個のスペアデジタル出力信号を有する。これらの信号は、2つの8ビットバイトとして編成されることとなり、未使用時にはVSSに接続されることとなる。
デジタルテスト
ASICは、2つの入力ピン、TEST_CTL0(4291)及びTEST_CTL1(4292)を使用する、テストモードコントローラを有する。テストコントローラは、以下の機能性(TEST_CTL<1:0>)を有するテスト制御信号の組み合わせから信号を生成する。
(i)0は、通常動作モードである。
(ii)1は、アナログテストモードである。
(iii)2は、スキャンモードである。
(iv)3は、GPIO_VBATへの入力によって制御されるVDD_ENを用いるアナログテストモードである。
テストコントローラロジックは、VDD電力プレーンとVDDBU電力プレーンとの間で分割される。スキャンモード中、LT_VBATのテストは、デジタルロジックへのアナログ出力を調整するために、highにアサートされるべきである。ASICは、高速デジタルテストを合理的に可能な程度のデジタルロジックに実装されたスキャン連鎖を有する。
漏れテストピン
ASICは、LT_VBATと呼ばれるピンを有し、このピンは、highのときに、全てのアナログブロックを非アクティブモードに移すこととなるため、漏れ電流のみが電源から引き出されることとなる。LT_VBATは、アナログブロックからの全てのデジタル出力を、インターフェースロジックの電流ドレインに影響を与えないように、安定したhigh又はlowの状態にする。LT_VBATパッドは、10k〜40kオーム以下の抵抗値によるプルダウンを有するVBATプレーン上にある。
電源要件
本発明の実施形態では、ASICは、最低でも、マイクロプロセッサのクロックがオフであり、32kHzリアルタイムクロックが進行し、回路がセンサ接続、WAKE_UPピンのレベルの変化又はnRX_EXT入力上のBREAKを検出するためにアクティブである、低電力モードを含む。このモードは、最大4.0μAのVBAT(VDDBU)、VDD及びVDDAからの全電流ドレインを有する。電池保護回路が電池残量の低下を検出すると(電池保護回路の説明を参照されたい)、ASICは、VBAT及びVDDBU電力プレーンのみがアクティブであるモードに移行する。これは、ローバッテリ状態と呼ばれる。このモードにおけるVBAT電流は、3μA未満である。
その電圧が1.535Vに設定されたH2O2(過酸化物)モードにおいてアクティブな任意の1つのWORK電極、1.00Vに設定されたVSET_REでオンのCOUNTER増幅器、WORKとCOUNTERとの間に接続された20メガ負荷抵抗器、一緒に接続されたCOUNTER及びREを有するポテンシオスタット構成に対してプログラムされたASICにより、1分毎の1つのWORK電極電流測定を仮定すると、全ての電源の平均電流ドレインは、7μA未満である。較正後の測定電流は、26.75nA±3%とする。追加のWORK電極を有効化すると、結合電流ドレインが25nAのWORK電極電流を伴って2μA未満だけ増加する。
COUNTER電極に関してWORK電極のうちの1つのインピーダンスを測定可能にする診断機能を有するポテンシオスタット構成に対してプログラム可能なASICにより、ASICは、以下を満たすように構成されている。
(i)テスト周波数:0.1、0.2、0.3、0.5Hz、1.0、2.0、5.0、10、100、1000及び4000Hz。
(ii)上記周波数の測定は、50秒を超えないものとする。
(iii)ASICに供給される全電荷は、8ミリクーロン未満である。
環境
本発明の好ましい実施形態では、ASICは、
(i)0〜70℃の商用温度範囲で動作し、全ての仕様を満たす。
(ii)−20℃〜80℃で機能的に動作するが、その場合に精度が低下する恐れがある。
(iii)−30〜80℃の温度範囲で保管した後に動作することが期待される。
(iv)1%〜95%の相対湿度範囲で動作することが期待される。
(v)ESD保護は、特に指定しない限り、TBDパッケージ内に包装されたとき、全てのピンで±2kV人体モデルよりも大きい。
(vi)WORK1〜WORK5、COUNTER、RE、TX_EXT_OD及びnRX_EXTパッドが±4kV人体モデルよりも耐性であるように構成されている。
(vii)WORK1〜WORK5及びREパッドの漏れ電流が40℃で0.05nA未満となるように構成されている。
本発明の実施形態では、ASICは、0.25ミクロンCMOSプロセスで作製されてもよく、ASIC用のバックアップデータは、DVDディスク、916−TBD上にある。
本明細書で詳細に上述したように、ASICは、(i)複数のポテンシオスタットを支援し、酸素又は過酸化物のいずれかに基づく多端子グルコースセンサとインターフェースし、(ii)マイクロコントローラとインターフェースして、小消費電力センサシステムを形成し、(iii)EIS由来パラメータの測定に基づくEIS診断を実施するために、必要なアナログエレクトロニクスを提供する。EIS由来パラメータの測定及び計算について、本明細書における発明の実施形態に従ってここで説明する。
上述したように、0.1Hz〜8kHzの範囲内の周波数でのインピーダンスは、センサ電極の状態に関する情報を提供することができる。AFE IC回路は、測定強制信号を生成するための回路と、インピーダンスを計算するために使用される測定値を決定するための回路と、が組み込まれている。この回路に関する設計上の考慮事項は、電流ドレイン、精度、測定の速度、必要な処理量及び制御マイクロプロセッサによって必要とされるオンタイムの長さを含む。
本発明の好ましい実施形態では、AFE ICが電極のインピーダンスを測定するために使用する技術では、電極を駆動する直流電圧に正弦波電圧を重ね合わせ、結果生じる交流電流の位相及び振幅を測定する。正弦波を生成するために、AFE ICは、デジタル合成正弦波電流が組み込まれている。このデジタル技術が使用されるのは、周波数及び位相を水晶由来の時間軸によって精密に制御することができ、直流から8kHzまでの周波数を容易に発生させることができるためである。この正弦波電流は、交流成分を電極電圧に加えるために、電圧源と直列の抵抗器を介して印加される。この電圧は、交流強制電圧である。次いで、この電圧は、選択されたセンサ電極を駆動する増幅器によってバッファリングされる。
電極を駆動する電流は、強制正弦波から結果得られた交流電流成分を含み、電圧に変換される。次いで、この電圧は、合成正弦波に対して固定された位相を有する矩形波で乗算することによって処理される。次いで、この乗算された電圧は、積分される。プログラム可能な数の積分間隔、駆動正弦波の1/2周期の整数個分、の終了後、電圧は、ADCによって測定される。積分された電圧の値を伴う計算により、インピーダンスの実部及び虚部を求めることができる。
インピーダンス測定のための積分器を用いることの利点は、測定のノイズ帯域幅が、波形をサンプリングするのみに対して大幅に低減されることである。また、サンプリング時間要件は、大幅に低減され、ADCの要求速度を緩和する。
図45は、(図42Bにおいて参照番号4255によって指定された)AFE IC内のEIS回路の主ブロックを示す。IDAC4510は、システムクロックに同期して階段状正弦波を発生する。このシステムクロックの高い周波数は、デジタルコードを含むルックアップテーブルを通してIDACに入る。このコードは、正弦波に近似した出力電流を生成するIDACを駆動する。この正弦波電流は、抵抗器の両端間に強制され、直流オフセット、VSET8(4520)を有する交流成分、Vin_acを与える。IDAC回路が無効化されると、直流出力電圧は、VSET8に戻るため、電極平衡に対する攪乱は、最小化される。次いで、この電圧は、直列の抵抗器、Rsenseを通して電極を駆動する増幅器4530によってバッファリングされる。Rsenseの両端間の差動電圧は、電流に比例する。この電圧は、電圧に+1又は−1のいずれかを乗算する乗算器4540に渡される。これは、スイッチ及び差動増幅器(計器増幅器)によって行なわれる。システムクロックは、乗算機能を制御し、正弦波に対して0、90、180又は270度に設定することができる位相クロック4550を生成するために分割される。
図46A〜図46F及び図47A〜図47Fのプロットは、実抵抗を表す0度位相ずれを有する電流に対する、図45に示す回路の信号のシミュレーションを示す。これらの例示的なシミュレーションに対して、シミュレーション入力値は、0.150Vに等しい電流センス電圧を与えるように選択された。インピーダンス及び位相を導出するための十分な情報を得るために、2つの積分が必要であり、1つは、0度位相乗算(図46A〜図46F)によるものであり、もう1つは、90度位相乗算(図47A〜図47F)によるものである。
インピーダンスの計算
積分器出力を記述する方程式は、以下に提供される。簡単にするために、正弦波周期の1/2のみを考察する。図46A〜図46F及び図47A〜図47Fのプロットからわかるように、積分器出力は、近似的に、積分された1/2周期の数を乗算した1/2正弦波周期の積分値となる。積分時間に関連する乗算スイッチが積分器に対する信号の「ゲーティング」機能を実行し、これが積分の範囲の設定とみなすことができることに留意されたい。乗算信号は、生成された正弦波に対する固定位相を有する。固定位相は、ソフトウェアにより0、90、180又は270度に設定することができる。正弦波が乗算方形波に対して同位相(0度シフト)である場合、積分の範囲は、π(180°)〜0(0°)となる。正弦波を90度ずらした場合、積分の範囲は、3/4π(270°)〜1/4π(90°)とみなすことができる。
駆動正弦波に対して同位相(0°)の乗算方形波を有する式を以下に示す。これは、電流の実成分に比例した電圧を与えることとなる。なお、Φは、乗算方形波に対する正弦波の位相ずれであり、Voutは、積分器出力であり、Aamplは、電流正弦波振幅である。また、正弦波の周期は、1/fであり、RCは、積分器の時定数である。
Φ=0の場合、
である。これは、電流の実部に相当する。
電流の虚数成分に比例する出力を生成する、駆動正弦波に対する乗算矩形波直交位相(90°)については、下式のとおりである。
Φ=0の場合、
である。これは、電流の虚部に相当する。
図46A〜図46Fに示す第1の例示的なプロットでは、Aamplは、150V、周波数は、1kHz、Φ=0、積分器に対するRCは、RC=0.5ミリ秒を与える20メガオーム及び25pFである。これらの数値を方程式に代入すると、図46のプロットの積分器出力と十分に対比される、0.09549Vを与える。積分期間にわたって出力される積分器出力が、積分開始から測定までのデルタ電圧であることに留意されたい。
90°方形波乗算について、sin(0)=0であるため、その結果は、0となるべきである。シミュレーション結果は、この値に近い。
位相を計算するためには、
であるため、これは、
となり、式中、V
out90は、乗算に対する90°位相ずれを有する積分器出力であり、V
out0は、0°位相ずれに対する積分器出力である。V
out90及びV
out0の出力は、1/2サイクルの同じ数に対して積分される又はサイクル数により正規化される必要がある。実際のソフトウェア(例えば、ASIC)実装では、積分サイクル(360°)のみが可能とされているのは、整数個のサイクルが乗算器前の回路内のオフセットを相殺するからであることに留意することが重要である。
電流の大きさは、
から求めることができる。この電流は、上記で計算されたような位相角を有する。
上記の分析は、乗算信号に対して電流振幅及びその位相を決定することができることを示す。強制電圧は、乗算信号に関して固定された位相(0、90、180又は270度)で発生され、強制電圧が精密に制御されるようにデジタル方式で行われる。しかし、強制正弦波が電極に印加される前に、少なくとも1つの増幅器が経路内にあり、このことが不要な位相ずれ及び振幅誤差を持ち込むこととなる。これは、電極近傍で電気的に得られる強制正弦波信号を積分することによって補償することができる。したがって、強制電圧の振幅及び位相ずれを決定することができる。電流及び電圧の波形の両方に対する経路が同一の回路で処理されることとなるため、いかなるアナログ回路の利得及び位相誤差も相殺されることとなる。
注目する変数は、インピーダンスであるため、A
amplを実際に計算する必要がなくてもよい。電流波形及び電圧波形が同一経路を通して積分されるため、電流と電圧との比には単純な関係が存在する。乗算機能の位相を記述するために、下付き文字を追加して積分された電流センス電圧V
I_out及び積分された電極電圧をV
V_outを呼び出すと、下式のとおりである。
インピーダンスは、電圧を電流で徐算したものとなる。したがって、
電圧及び電流の大きさはまた、0度位相及び90度位相の積分電圧の二乗の平方根から求めることができる。そのため、下式もまた用いてもよい。
波形の積分は、比較的高い周波数、例えば、約256Hzを超える周波数に対して、1つのハードウェア積分器で行ってもよい。高い周波数では、4つの測定サイクルを必要とし、(i)同位相センサ電流用の測定サイクル、(ii)90度位相ずれのセンサ電流用の測定サイクル、(iii)同位相強制電圧用の測定サイクル及び(iv)90度位相ずれの強制電圧用の測定サイクルである。
2つの積分器は、比較的低い周波数、例えば、約256Hz未満の周波数に対して使用してもよく、積分値は、積分器結果をシステムマイクロプロセッサにおいて数値的に組み合わせたものからなる。サイクル毎に何回の積分があるのかを知ることで、マイクロプロセッサは、0度及び90度の成分を適切に計算することができる。
積分を強制交流波形と同期させ、低周波数で少なくとも4つの部分に積分を分割することにより、マイクロプロセッサ内の積分部分の組み合わせが乗算機能を達成することができるため、ハードウェア乗算器が不要となる。したがって、実電流情報及び虚電流情報を得るためには、1つの積分経路のみが必要である。より低い周波数については、増幅位相誤差は、より小さくなり、したがって、ある周波数未満、例えば、1Hz〜50Hz、好ましくは約1Hz未満で、強制電圧位相を決定する必要がなくなる。また、振幅は、より低い周波数で一定であると仮定してもよいため、インピーダンスを決定するためには、安定化後に1つの測定サイクルのみが必要であってもよい。
上記のように、1つのハードウェア積分器が比較的高い周波数に対して使用されるが、比較的低い周波数に対しては、2つの積分器を使用してもよい。この点に関して、図45の回路図は、AFE ICにおけるEIS回路を、比較的高いEIS周波数用に使用されるものとして示す。これらの周波数では、積分器は、サイクルにわたって積分している間に飽和しない。実際には、複数のサイクルが最も高い周波数に対して積分されるのは、これが、より大きな信号対雑音比を結果としてもたらすより大きな出力信号を提供することとなるためである。
例えば、約500Hz未満の周波数などの、比較的低い周波数については、積分器出力は、共通パラメータで飽和することができる。したがって、これらの周波数については、交互に切り替えられる2つの積分器が用いられる。即ち、第1の積分器が積分している間、第2の積分器は、ADCによって読み出され、次いで、第1の積分器の積分時間が終わった時点で積分するように準備させるためにリセット(ゼロ合わせ)される。このようにして、信号は、積分間に間隙を有することなく積分することができる。これは、図45に示すEIS回路に、第2の積分器及び関連するタイミング制御部を追加することとなろう。
安定化サイクルの考慮事項
上記の分析は、電流波形がサイクル毎に変化しない定常状態条件に対するものである。この状態は、抵抗器−コンデンサ(RC)回路網に正弦波が印加された直後には、コンデンサの初期状態により、満たされない。電流位相は、0度で開始し、定常状態値まで進む。しかし、電流ドレインを減少させるために最小の時間を消費すること、また、DCセンサ測定(Isig)を行うための適切な時間を割り当てることが、測定のためには望ましい。したがって、十分に正確な測定値を得るために必要なサイクル数を決定する必要がない。
抵抗とコンデンサとを直列接続した簡易RC回路の方程式は、下式のとおりである。
上式をI(t)について解くと、下式が得られる。
式中、V
c0は、コンデンサ電圧の初期値であり、V
mは、駆動正弦波の大きさであり、ωは、ラジアン周波数(2πf)である。
第1の項は、非定常状態条件を定義する項を含む。システムの整定を高速化するための一方法は、第1の項を0に等しいとおくことであり、これは、例えば、
を設定することによって行ってもよい。
これは、実際には必要ではない場合があるが、直流定常状態点からVcinitに直ちにジャンプするように、強制正弦波の初期位相を設定することが可能である。この技術は、可能な時間短縮を見出すために、特定の周波数及び予想位相角について評価されてもよい。
非定常状態項に、時間の指数関数を乗算する。これは、定常状態にどれだけ迅速に到達するかを決定することとなる。RC値は、インピーダンス計算情報から一次近似として決定することができる。下式
が与えられると、
が得られる。
5度の位相角で100Hzのセンサについて、これは、時定数が18.2ミリ秒であることを意味するであろう。1%未満に整定するために、これは、約85ミリ秒の整定時間又は8.5サイクルを意味するであろう。一方、65度の位相角で0.10Hzのセンサについて、これは、時定数が約0.75秒であることを意味するであろう。1%未満に整定するためには、これは、約3.4秒の整定時間を意味するであろう。
したがって、本明細書で上記に詳述したように本発明の実施形態では、ASICは、(少なくとも)7つの電極パッドを含み、そのうち5つがWORK電極(即ち、検知電極又は作用電極又はWE)として割り当てられ、そのうち1つがCOUNTER(即ち、対電極又はCE)であり、1つがREFERENCE(即ち、基準電極又はRE)である。対電極用増幅器(counter amplifier)4321(図42Bを参照されたい)は、COUNTER、REFERENCE及び/又はWORKの任意に割り当てたパッド及びそれらの任意の組み合わせにプログラム可能に接続されてもよい。既に述べたように、本発明の実施形態は、例えば、6つ以上のWEを含んでもよい。この点で、本発明の実施形態はまた、6つ以上の作用電極とインターフェースするASICを対象としてもよい。
本明細書に記載したようなASICにより、上記5つの作用電極、対電極及び基準電極のそれぞれは、個別に独立してアドレッシング可能であることが重要である。そのため、5個の作用電極のうちの任意の1つは、オンにしてIsig(電極電流)を測定してもよく、任意の1つは、オフにしてもよい。更に、5つの作用電極のうちの任意の1つは、EIS関連パラメータ、例えば、インピーダンス及び位相の測定のためにEIS回路に動作可能に接続/結合されてもよい。即ち、EISは、作用電極の任意の1つ以上で選択的に実行されてもよい。加えて、5つの作用電極のそれぞれの対応する電圧レベルは、基準電極に対して振幅及び符号において独立にプログラムされてもよい。これには、電極(複数可)が干渉に敏感にならないように、例えば、1つ以上の電極上の電圧を変化させるなどの多くの応用がある。
2つ以上の作用電極が冗長電極として採用されている実施形態では、本明細書で説明されるEIS技術は、例えば、複数の冗長電極のいずれが最適に機能しているか(例えば、より高速な始動、ディップが最小又はないこと、感度損失が最小又はないこと)を判定するために使用されるため、最適な作用電極(複数可)のみをグルコース測定値を得るためにアドレッシングすることができる。次いで、後者は、連続較正の必要性を、排除しない場合でも、大幅に低減してもよい。同時に、他の(冗長)作用電極(複数可)は、(i)EISが「オフ」の電極に対しては実行しなくてもよいため、オフにして、電力管理を容易にしてもよく、(ii)パワーダウンしてもよく、かつ/又は(iii)EISを介して周期的に監視して、回復したために作動状態に復帰させてよいかどうかを判定してもよい。一方、非最適化電極(複数可)は、較正の要求をトリガしてもよい。ASICはまた、例えば、故障している又は非作動状態の作用電極を含む、電極の任意を対電極にすることができる。したがって、本発明の実施形態では、ASICは、2つ以上の対電極を有してもよい。
上記では、冗長電極が同じサイズであり、同じ化学的作用、同じ設計などを有するという、単純な冗長性を全般的には扱っているが、上述した診断アルゴリズム、融合方法及び関連するASICはまた、インプラント時間の関数としてセンサインプラントの完全性を評価する方法として、空間的に分布させた、同様の大きさ又は異なる大きさの作用電極と共に使用されてもよい。したがって、本発明の実施形態では、異なる形状、サイズ及び/又は構成を有してもよい同じ屈曲部上の電極を含む、又は特定の環境を対象として使用される同じ若しくは異なる化学的作用を含むセンサを使用することができる。
例えば、一実施形態では、1つ又は2つの作用電極は、例えば、かなり良好な水和を有するように設計されてもよいが、2日又は3日を経過して持続しなくてもよい。一方、他の作用電極(複数可)は、持続性のある耐久性を有してもよいが、初期水和が遅くてもよい。このような場合、アルゴリズムは、第1の群の作用電極(複数可)を用いて早期経過時にグルコースデータを生成し、その後、中間経過時に第2の群の電極(複数可)に(例えば、ASICを介して)切り替えが行われ得るように設計されてもよい。このような場合、融合アルゴリズムは、例えば、全てのWEについて、必ずしも「ヒューズ」データではなくてもよく、ユーザ/患者は、中間経過時にセンシングコンポーネントが切り替えられたことに気づかない。
更に他の実施形態では、全体のセンサ設計は、異なるサイズのWEを含んでもよい。このような小さいWEは、より低いIsig(より小さな幾何学的領域)を全般的には出力し、低血糖検出/精度に対して特に使用してもよいが、より大きなIsigを出力するより大きなWEは、正常血糖及び高血糖精度に対して特に使用してもよい。寸法差を与えられた場合、異なるEIS閾値及び/又は周波数は、これらの電極間での診断に使用される必要がある。ASICは、本明細書で上述したように、プログラム可能な、電極特有のEIS基準を有効化することによって、そのような要件に対応する。前の例のように、信号は、必ずしも融合されずに、SG出力を生成してもよい(即ち、異なるWEは、異なる時点にタップされてもよい)。
前に言及したように、ASICは、刺激の開始及び停止を命令し、約100Hzより上の周波数に対するEIS由来パラメータの測定値を調整する、プログラム可能シーケンサ4266を含む。シーケンスの終了時に、データは、バッファメモリ内にあり、マイクロプロセッサが必要なパラメータ(の値)を迅速に取得するため利用可能である。これは、時間を節約し、マイクロプロセッサの介入がより少なくて済むため、システム電源要件もまた低減する。
約100Hzよりも低い周波数に対して、プログラム可能シーケンサ4266は、EIS用の刺激の開始及び停止を調整し、データをバッファリングする。測定サイクルの終了時、又はバッファが満杯に近くなった場合のいずれかでは、ASICは、マイクロプロセッサに割り込みをかけて、利用可能なデータを収集する必要があることを示してもよい。バッファの深度は、EIS由来パラメータが収集されている間に、マイクロプロセッサが他のタスクを実行することができる時間、又はスリープする時間を決定することとなる。例えば、好ましい一実施形態では、バッファは、64回の測定深度である。この場合もまた、これは、マイクロプロセッサがデータ断片を収集する必要がなくなるため、エネルギーを節約する。シーケンサ4266もまた、より高速で整定する可能性を有する、0とは異なる位相で刺激を開始する能力を有することにも留意されたい。
ASICは、上述のように、マイクロプロセッサへの電力を制御することができる。したがって、例えば、電源を完全にオフにすることができ、また、例えば、機械スイッチ又は容量性若しくは抵抗性センシングを用いたセンサの接続/切断の検出に基づいて、マイクロプロセッサの電源投入をすることができる。更に、ASICは、マイクロプロセッサのウェイクアップを制御することができる。例えば、マイクロプロセッサは、それ自体を低電力モードにすることができる。次いで、ASICは、例えば、センサ切断/接続検出がASICによって行われる場合、マイクロプロセッサに信号を送ることができ、その信号は、プロセッサをウェイクアップする。これは、例えば、機械スイッチ又は容量ベースの検知スキームなどの技術を用いてASICによって生成された信号に応答することを含む。これによりマイクロプロセッサを長期間にわたりスリープにすることができ、それにより、電力ドレインを大幅に低減することができる。
本明細書で上述したようなASICにより、酸素検知及び過酸化物検知の両方を同時に実施することができることを繰り返し述べることが重要であるのは、5つ(以上)の作用電極が全て独立しており、独立してアドレッシング可能であり、そのため、所望の任意の方法で構成することができるからである。加えて、ASICは、複数のマーカに対する複数の閾値が可能であるため、EISは、固有の閾値(複数可)をそれぞれ有する様々な要因、例えば、Vcntrのレベル、容量変化、信号ノイズ、Isigの大きな変化、ドリフト検出などによってトリガすることができる。加えて、そのようなそれぞれの要因について、ASICは、複数のレベルの閾値を有効化する。
本発明の更に別の実施形態では、EISは、代替的なめっき測定ツールとして使用されてもよく、センサ基板の作用電極及び対電極の両方のインピーダンスは、基準電極に対して、電気めっき後に試験されてもよい。より具体的には、電極表面の平均粗さを与えるセンサ基板の測定を行う既存のシステムは、それぞれの電極から小さな領域をサンプリングして、その小さな領域の平均粗さ(Ra)を決定する。例えば、現在は、Zygo社製非接触干渉計を用いて、電極表面積を定量かつ評価する。Zygo社製干渉計は、対電極及び作用電極の小さな領域を測定し、平均粗さ値を提供する。この測定は、それぞれのセンサ電極の粗さを、その電極の実際の電気化学的表面積と相関させる。現在使用されているシステムの制限により、製造処理能力の観点から、極めて時間がかかる試みとなるであろうことから、電極表面全体を測定することは可能ではない。
電極全体を有意義かつ定量的な方法で測定するために、表面積を測定するためのEISベースの方法が、現在の、例えば、Zygo社製ベースの試験よりも速く、センサ性能の観点からより有意義である、本発明により開発された。具体的には、電極表面特性評価におけるEISの使用は、いくつかの点において有利である。第1に、複数のプレートを同時に試験できるようにすることによって、EISは、電極を試験するより速い方法を提供し、それにより、より高い効率及び処理能力を提供すると同時に、コスト効果的であり、品質を維持する。
第2に、EISは、試験下の電極における直接電気化学測定であり、即ち、電極に対するEIS由来パラメータ(複数可)の測定を可能にし、測定値を電極の真の電気化学表面積に相関させる。したがって、電極の小さな区画上で平均高さの差をとる代わりに、EIS技術は、電極表面積全体にわたって(表面積に直接関係する)二重層容量を測定し、そのため、実際の表面積を含む電極の特性をより適切に表す。第3に、EIS試験は、非破壊であり、そのため、その後のセンサ性能に影響を及ぼさない。第4に、EISは、測定されることとなる表面領域が脆弱であるか、又は容易に操作することが困難であるか、のいずれかである場合に、特に有用である。
本発明のこの実施例の目的のために、注目するEIS由来パラメータは、オーム単位のインピーダンスの大きさ(|Z|)及び電解液に浸漬した電極の度単位の位相角(Φ)の測定値に基づいて、上記で議論されたように得られてもよい、虚数インピーダンス(Zim)である。高速プロセスであることに加え、対電極(CE)及びWEの両方の電気化学的インピーダンスを用いた試験は、それぞれの電極の表面積を測定する正確な方法であることが見出された。これがまた重要でもあるのは、グルコースセンサ性能における電極サイズの役割は、少なくとも部分的には、グルコースのGOXとの酵素反応により生成した過酸化水素の酸化により決定されるが、増加したWE表面積が低始動事象の回数を減少させ、センサ応答性を改善させることを実験が示したからであり、これらは両方ともかなり詳細に上記で議論された潜在的故障モードにある。
注目するEIS由来パラメータとして虚数インピーダンスを再び参照すると、電極表面領域、したがって、その虚数インピーダンス値を駆動する重要パラメータは、(i)電気めっき条件(秒単位の時間及びマイクロアンペア単位の電流)、(ii)表面積と最も良好に相関するEIS周波数、(iii)EISシステムで使用される電解質に関連付けられた単一電極上で実施される測定の数及び(iv)直流電圧バイアスであることが見出された。
上記パラメータに関連して、実験は、電解質として白金めっき液を用いると、スペクトル全体にわたって虚数インピーダンスと表面積との間で相関が低いことを示した。しかし、電解質として硫酸(H2SO4)を用いると、非常に良好な相関データを示し、リン酸緩衝塩溶液をゼロmg/mLのグルコース(PBS−0)と共に用いると、虚数インピーダンスと表面積比(SAR)との間で、特に100Hz〜5Hzの比較的低い周波数で、更により良好な相関データを示す。更に、三次回帰モデルを用いた適合回帰分析は、本発明の実施形態では、最良の相関が10Hzの周波数で生じる場合があることを示す。加えて、バイアス電圧を535mVからゼロまで低減すると、虚数インピーダンス測定における毎日の変動性が劇的に低減されることが見出された。
上記のパラメータを使用すると、虚数インピーダンスの値の受容性の限界は、所与のセンサ設計用に定義することができる。したがって、例えば、Medtronic Minimedによって製造されたComfort Sensorについて、WEとRE(白金メッシュ)との間で測定される虚数インピーダンスは、−100オーム以上でなければならない。即ち、−100オーム未満の(WEの)虚数インピーダンス値を有するセンサは、不合格とされることとなる。WEについて、−100オーム以上のインピーダンス値は、0.55μmよりも大きい等価Ra測定により特定された以上の表面積に対応する。
同様に、CEとRE(白金メッシュ)との間で測定される虚数インピーダンスは、−60オーム以上でなければならないため、−60オーム未満の(CEの)虚数インピーダンス値を有するセンサは、不合格とされることとなる。CEについて、−60オーム以上のインピーダンス値は、0.50μmよりも大きい等価Ra測定により特定された以上の表面積に対応する。
本発明の実施形態によれば、図48に示すような等価回路モデルを用いて、測定されたEISを作用電極WEと基準電極REとの間でモデル化してもよい。図48に示す回路は、合計で6つの要素を有し、これらの要素は、3つの一般的なカテゴリ、(i)反応関連要素、(ii)膜関連要素及び(iii)溶液関連要素に分けられてもよい。後者のカテゴリでは、Rsolは、溶液抵抗であり、センサシステム外部の環境の特性(例えば、インビボでの間質液)に対応する。
反応関連要素は、分極抵抗(即ち、電極と電解質との間の電圧バイアス及び電荷移動に対する抵抗)であるR
p、電極−電解質界面における二重層容量であるCdlと、を含む。このモデルでは、二重層容量は、界面の不均一性により一定位相要素(constant phase element、CPE)として示され、純容量としてもまたモデル化することができることに留意されたい。CPEとして、二重層容量は、2つのパラメータ、アドミッタンスを示すCdlと、CPEの一定位相(即ち、コンデンサにどれだけの漏洩があるのか)を示すαと、を有する。CPEの周波数依存インピーダンスは、下式のように計算してもよい。
したがって、モデルは、合計で3つのパラメータ、R
p、Cdl及びαで表される、2つの反応関連要素R
p及びCdlを含む。
膜関連要素は、膜抵抗(又は化学層による抵抗)であるRmemと、膜容量(化学層による容量)であるCmemと、を含む。Cmemは、純容量として図48に示すが、特殊な場合にはCPEとしてモデル化することもできる。示したように、Wは、有界ワールブルク素子であり、2つのパラメータ、化学層内のグルコース/H
2O
2拡散によるワールブルク素子のアドミッタンスを表すY
0と、ワールブルク素子の拡散時定数を表すλと、を有する。ワールブルクはまた、他の方法(例えば、非有界)でモデル化されてもよいことに留意されたい。有界ワールブルク素子の周波数依存性インピーダンスは、下式のように計算してもよい。
したがって、モデルは、合計で4つパラメータ、Rmem、Cmem、Y
0及びλにより表される3つの膜関連要素、Rmem、Cmem及びWを含む。
図48の上部分は、本発明の実施形態に従ったセンサの全体構造を示し、白金ブラックは電極を指す。ここで、単一の電極が図示されているが、これは限定ではなく、例示としてのみ示されている点に留意することが重要であり、なぜなら、モデルが、図48に示す例示的な3層の単一電極構造よりも、より多くの層数及びより多くの電極を有するセンサに適用されてもよいからである。本明細書で上述したように、GLMは、センサのグルコース制限膜であり、HSAは、ヒト血清アルブミンであり、GOXは、(触媒として使用される)グルコースオキシダーゼ酵素であり、溶液は、例えば、ユーザの体液(複数可)などの電極が配置される環境を指す。
以下の説明では、図48の等価回路モデルを使用して、センサ挙動の物理的特性のうちのいくつかを説明する。それでもなお、グルコース拡散がどのようにモデル化されているかに応じて、他の回路構成もまた可能であってもよいことを指摘しておく。この点に関して、図49A〜図49Cは、いくつかの追加の回路モデルの説明図を示し、これらのうちのいくつかは、より多くの素子及び/又はパラメータを含む。しかし、本発明の目的に対して、質量輸送制限、即ち、ワールブルク成分は、膜を通したグルコース拡散に起因する図48の回路モデルが、実験データに対する最良の適合をもたらすことが見出された。図50Aは、等価回路シミュレーション5020が実験データ5010に非常によく適合することを示すナイキスト線図である。図50Bは、図50Aの高周波数部分の拡大図であり、シミュレーションが実際のセンサのデータをその領域でもまた極めて正確に追跡することを示す。
上述した回路要素及びパラメータのそれぞれは、EIS出力に様々な形態で影響を与える。図51は、Cdlが矢印Aの方向に増加するナイキスト線図を示す。図からわかるように、Cdlの値が増加するにつれて、(より低い周波数の)ナイキスト線図の長さが減少し、その勾配が増加する。したがって、ナイキスト線図の長さは、プロット5031からプロット5039まで減少し、プロット5033、5035及び5037のそれぞれは、Cdlがプロット5031からプロット5039にまで増加するにつれて、徐々に減少する対応する長さを有する。逆に、ナイキスト線図の勾配は、プロット5031からプロット5039まで増加し、プロット5033、5035及び5037のそれぞれは、Cdlがプロット5031からプロット5039まで増加するにつれて、徐々に増加する対応する勾配を有する。しかし、ナイキスト線図の高周波領域は、全般的には、影響を受けない。
図52は、αが矢印Aの方向に増加するナイキスト線図を示す。ここで、αが増加するにつれて、ナイキスト線図の勾配は、より低い周波数領域において増加する。図53では、Rpが矢印Aの方向に増加するにつれて、より低い周波数のナイキスト線図の長さ及び勾配が増加する。Rpがより大きいほど、化学反応に対する抵抗の量が大きくなり、したがって、電子とイオンとの交換の速度はより遅くなる。したがって、現象論的に、図53は、電子−イオン交換速度が減少するにつれて、即ち、続いてより低い(Isig)出力を意味する、電流化学反応に対する抵抗が増加するにつれて、より低い周波数のナイキスト線図の長さ及び傾斜が増加することを示す。この場合もまた、ナイキスト線図のより高い周波数領域への影響は、最小であるか、又は影響がない。
ワールブルクアドミッタンスにおける変化の効果を図54に示す。ワールブルクアドミッタンスが矢印Aの方向に増加するにつれて、より低い周波数のナイキスト線図の長さ及び勾配の両方が増加する。現象学的に、これは、より低い周波数のナイキスト線図の長さ及び傾斜が、反応物質の流入が増加するにつれて増加する傾向にあることを意味する。図55では、λが矢印Aの方向に増加するにつれて、ナイキスト線図の勾配が減少する。
上述した要素及びパラメータとは対照的に、膜関連要素及びパラメータは、ナイキスト線図のより高い周波数領域に全般的には影響を及ぼす。図56は、ナイキスト線図に対する膜容量の効果を示す。図56からわかるように、Cmemにおける変化は、高周波領域の半円部がどの程度見えるかということに影響を及ぼす。したがって、膜容量が矢印Aの方向に増加するにつれて、見ることができる半円部が徐々に小さくなる。同様に、図57に示すように、膜抵抗が矢印Aの方向に増大するにつれて、高周波領域の半円部の多くが見えるようになる。加えて、Rmemが増加するにつれて、ナイキスト線図全体が左から右にシフトする。後者の平行シフト現象はまた、図58に示すように、Rsolについても当てはまる。
図48の等価回路モデルに関連する上記の議論は、以下のように要約してもよい。第1に、Cdl、α、Rp、ワールブルク及びλは、低周波数応答を全般的には制御する。より具体的には、より低い周波数のナイキストスロープ/Zimagは、Cdl、α、Rp及びλに主に依存し、より低い周波数長/Zmagnitudeは、Cdl、Rp及びワールブルクアドミッタンスに主に依存する。第2に、Rmem及びCmemは、より高い周波数応答を制御する。特に、Rmemは、高周波半円部直径を決定し、Cmemは、ナイキスト線図に対する全体的な効果が最小となる変曲点周波数を決定する。最後に、Rmem及びRsolにおける変化は、ナイキスト線図における平行シフトを引き起こす。
図59A〜図59C、図60A〜図60C及び図61A〜図61Cは、センサ始動時及び較正時に、上記回路素子における変化についてインビトロ実験した結果を示す。図59A、図60A及び61Aは、同一である。図59Aに示すように、実験は、2つの冗長作用電極5050、5060を用いて、(7日〜)9日の期間で全般的には実施された。100mg/dLのベースライングルコース量を使用したが、100mg/dLは、実験全体を通した様々な時点でゼロ〜400mg/dLで変化された(5070)。加えて、32℃〜42℃の(溶液)温度変化の影響(5080)及び0.1mg/dLアセトアミノフェン応答(5085)が検討された。最後に、実験は、酸素ストレステストを含み、溶液中に溶存する酸素の供給量は、0.1%〜5%で変化(即ち、制限)させた(5075)。これらの実験の目的に関して、完全EIS掃引(即ち、0.1Hz〜8kHz)を実施し、出力データを30分毎に約1回記録(かつプロット)した。しかし、より短い又はより長い間隔もまた使用してもよい。
図59Cでは、ナイキスト線図の変曲点における実数インピーダンスの大きさにより、この場合もまた推定されてもよいRsolとRmemとの和は、時間の関数として全般的には下向きの傾向を示す。これは、膜が水和する時間がかかるという事実に主に起因し、したがって、時間が経過するにつれて、膜は、電荷に対する抵抗がより小さくなることとなる。Isigに関するプロット(図59A)とRsol+Rmemに関するプロット(図59C)との間に、わずかな相関もまた見ることができる。
図60Bは、Cdlに対するEIS出力を示す。ここで、最初に、センサ起動/センサチャージアッププロセスによって、数時間の期間にわたって、比較的急速な低下(5087)がある。しかし、その後は、Cdlは、ほとんど一定であり、Isig(図60A)との強い相関を示す。後者の相関が与えられると、Cdlデータは、EISパラメータとして、グルコース独立性が望まれる用途ではあまり有用ではない恐れがある。図60Cに示すように、Rpの傾向は、Cdlに関するプロットの鏡像として全般的には記述されていてもよい。膜がより水和されるにつれて、流入が増加し、図61Bのワールブルクアドミッタンスのプロットに反映されている。図61Cに示すように、λは、全体を通して全般的には一定のままである。
図62〜図65は、上記実験の様々な部分に対する実際のEIS応答を示す。具体的には、最初の3日間に行われた変化、即ち、図59A、図60A及び図61Aに示すような、グルコース変化、酸素ストレス及び温度変化は、図62において枠で囲んであり(5091)、Vcntr応答5093は、この図の下の部分及び図59Bに示してある。図63は、グルコースの増加を介したIsig較正がナイキスト線図の勾配及び長さを減少させたことを示す。図64では、酸素(又はVcntr)応答は、2日目に示されており、Vcntrは、酸素含有量が減少するにつれてますます負になる。ここで、ナイキスト線図は、長さが短くなり、その勾配は、減少し(5094)、虚数インピーダンスの大幅な減少を示す。プロット長は、主にCdl及びRpに依存し、Vcntrに強く相関するため、続いて、グルコース及び酸素の変化に応答する。図65では、Isigの変化は、2日目〜3日目には無視できる。それでもなお、ナイキスト線図は、32℃(5095)及び42℃(5097)で取得されたデータに関して(37℃のプロットから)水平方向にシフトする。しかし、ナイキスト線図の長さ、勾配又はIsigに対する顕著な影響はない。
上記のEIS出力及びシグネチャ情報を一緒にすることで、センサ始動中に、Rmem+Rsolの大きさが、ナイキスト線図における右から左へのシフトに対応して、経時的に減少することが発見された。この期間中、Cdlが減少し、Rpが増加し、それに対応してナイキストスロープが増加する。最後に、ワールブルクのアドミッタンスもまた増加する。既に指摘したように、前述の内容は、水和プロセスと一貫性があり、EISプロット及びパラメータ値は、安定化するまでに1〜2日(例えば、24〜36時間)程度を要する。
本発明の実施形態は、リアルタイム自己較正、より具体的には、EISデータに基づくグルコースセンサのインビボ自己較正に関する。自己較正アルゴリズムを含む任意の較正アルゴリズムは、感度損失に対処する必要がある。上述したように、2種類の感度損失が生じる恐れがあり、(1)感度の一時的損失であり、センサ動作の最初の数日中に一般的には生じる、Isigディップ及び(2)センサ寿命の末期に生じ、場合によりVcntrレイルの存在と相関する、永久的感度損失である。
感度損失が、ナイキスト線図において右への平行シフトとして観察することができるRsol若しくはRmem(あるいはその両方)の増加として、又は、Rmemが変化する場合、(高周波数虚数インピーダンスの増加をもたらす)より高い周波数での半円部へのより可視的な開始として、出現することができることが発見された。Rsol及びRmemに加えて、又はその代わりに、Cmemの増加のみが存在する場合がある。これは、高周波数半円部における変化として観察することができる。感度損失は、(ナイキスト線図のより低い周波数セグメント内の長いテールとして)Cdlにおける変化を伴うこととなる。前述のシグネチャは、EIS出力の異なる変化が、感度の変化を補償するためにどのように使用することができるのかを決定するための手段を提供する。
正常に動作しているグルコースセンサについて、血糖値(BG)とセンサの電流出力(Isig)との間には線形関係がある。したがって、
BG=CF×(Isig+c)であり、
式中、「CF」は、較正係数(Cal Factor)であり、「c」は、オフセットである。これは、図66に示されており、較正曲線は、直線6005によって示されるとおりであり、「c」は、ベースラインオフセット6007(nA単位)である。しかし、Rmemの増加及び/又はCmemの減少があるときには、cは、影響を受けることとなる。したがって、直線6009は、膜特性の変化を示す、Rmemが増加し、Cmemが減少し、それにより、オフセット「c」が6011に移動する、即ち、較正曲線の下方へのシフトを引き起こす状況を示す。同様に、Cdlにおける(非グルコース関連の)変化及びRpの増加があり、(より低い周波数の)ナイキスト線図の長さが結果として増加すると、勾配は、影響を受けることとなり、この場合、勾配=1/CFである。したがって、図66では、直線6013は、直線6005とは異なる(より小さい)勾配を有する。組み合わせた変化もまた発生することができ、これは直線6015で示され、感度損失を示す。
簡便のために、128Hz〜0.105Hz(実数)インピーダンスの長さとして例示的に推定されてもよい、ナイキスト線図(Lnyquist)のより低い周波数セグメントの長さは、グルコース変化と高度に相関する。モデル適合を通して、グルコース変化中に変化するパラメータのみが二重層容量Cdlである、具体的には二層アドミッタンスであることが発見された。したがって、図48の等価回路モデルにおけるIsig依存のみのパラメータ、また拡張すれば、グルコース依存のパラメータは、Cdlであり、他の全てのパラメータは、実質的にIsig独立である。
上記の観点から、本発明の一実施形態では、Rmem及びCmemの変化は、較正係数(BG/Isig)の再調整に到達するまで追跡してもよく、それにより、連続したフィンガースティック検査を必要とせずにセンサの自己較正をリアルタイムに行うことができる。これが可能であるのは、部分的に、Rmem及びCmemにおける変化が、較正曲線の、勾配における変化ではなく、オフセット(c)における変化を結果として生じるためである。即ち、モデルの膜関連パラメータにおけるそのような変化は、センサが依然として適切に機能していることを全般的には示す。
グラフ表示すると、図67Aは、記録されている実際の血糖(BG)データ6055を示し、作用電極からのIsig出力6060を重ね合わせてある。約1〜4日目を含む第1の期間(又は時間窓)(6051)からのデータと、約6〜9日目を含む第2の期間(6053)からのデータとを比較すると、図67Aは、センサが第2の期間中に全般的には下方にドリフトしていることを示し、これはおそらくセンサにおける中程度の感度損失があることを示す。Vcntrにおける増加もまた、図67Bに示すように、第2の期間中に存在する。
図68及び図69を参照すると、感度損失が、6〜9日目の第2の期間中に、膜抵抗6061の比較的顕著な増加によって、また同時にワールブルクアドミッタンス6063の対応する低下によって明確に示されていることがわかり得る。したがって、図70は、第2の期間6053用の較正曲線6073が、第1の期間6051用の較正曲線6071から、平行に、下方にシフトされることを示す。また、図57と関連して本明細書で上述したように、膜抵抗(Rmem)が増加するにつれて、ナイキスト線図全体は、左から右にシフトし、高周波領域半円部の多くが見えるようになる。図67A〜図70のデータについて、この現象は、図71に示されており、ナイキスト線図の拡大された、より高い周波数領域は、第2の期間6053からのデータが第1の期間6051からのデータと比較して、プロットを左から右に移動させることと、ナイキスト線図におけるシフトが左から右に進むにつれて、半円部が更に見えるようになること(6080)と、を示す。加えて、プロットの拡大したより低い周波数領域はLnyquistにおいて顕著な変化が無いことを示す。
一方、Cdl及びRpにおける変化は通常、電極(複数可)が既に損なわれている恐れがあることを示すため、回復がもはや可能ではない恐れがある。更に、Cdl及びRpにおける変化はまた、例えば、診断ツールとして追跡されて、これらのパラメータにおける変化の方向/傾向に基づいて、ドリフト又は感度損失が、適正なセンサ動作がもはや回復可能ではない又は達成可能でない時点に到達したかどうかを決定してもよい。この点で、本発明の実施形態では、対応する閾値下限及び/又は閾値上限若しくは閾値の範囲は、Cdl及びRpのそれぞれについて又は勾配における変化について計算されてもよいため、対応する閾値(範囲)から外れるこれらのパラメータに対するEIS出力値は、例えば、回復不可能な感度損失によりセンサの停止及び/又は交換をトリガしてもよい。特定の実施形態では、センサ設計及び/又は患者固有の範囲又は閾値が計算されてもよく、範囲/閾値は、例えば、Cdl、Rp及び/又は勾配における変化に相対的であってもよい。
グラフ表示すると、図72Aは、記録されている実際の血糖(BG)6155データを示し、2つの作用電極WE1 6160及びWE2 6162からのIsig出力を重ね合わせてある。グラフは、1日目用の第1の時間窓(6170)、3〜5日目用の第2の時間窓(6172)、3日目用の第3の時間窓(6174)、及び5と1/2〜9と1/2日目の第4の時間窓(6176)からのデータを示す。3日目に開始すると、図72Bは、Vcntrのレイルが1.2ボルトであることを示す。しかし、感度の低下は、約5日目程度から発生する(6180)。Vcntrがレイルになると、Cdlは、大幅に増加し、それに対応するRpが減少し、電気化学反応全体に対するより高い抵抗を示す。予想どおり、較正曲線の勾配もまた変化(減少)し、Lnyquistがより短くなる(図73〜図75を参照されたい)。本発明の実施形態において、Vcntrのレイルの発生を使用して、センサの停止を回復不能なものとしてトリガできることに留意されたい。
膜抵抗の増加、Cdlの低下、及びVcntrのレイルを組み合わせた効果を図76A〜76B、及び77〜80に示す。図76Aにおいて、実際の血糖(BG)データ6210を、2つの作用電極、WE1 6203及びWE2 6205からのIsig出力により重ね合わせる。わかるように、WE1は通常、実際のBGデータ6210を追跡する、即ち、WE1は正常に機能している。一方、WE2からのIsigはより低い点から開始するようであり、開始から10日目まで全体的に下降を続ける傾向にあるため、感度の漸減を表す。このことは、図77に示すように、両方の作用電極についてのCdlが概ね下降傾向を示しても、WE1(6213)についてのCdlよりもWE2(6215)についてのCdlのほうが低いことと一致している。
図79は、較正曲線に対する組み合わせ効果を示し、ここでは、感度損失(6235)の期間についての直線適合のオフセット及び傾斜の両方が、正常機能の時間窓についての較正曲線6231に対して変化している。更に、図80のナイキスト線図は、低周波数領域において、センサが正常に機能している場合(6241)と比較して感度損失(6245)がある場合に、ナイキスト線図の長さはより長いことを示す。更に、変曲点付近にて、感度の喪失が存在する場合に半円(6255)はより可視的になる。重要なことに、感度損失が存在する場合、図80のナイキスト線図は時間の関数として左から右に水平に移動する。本発明の実施形態において、後での移動を、センサの補償又は自己較正のために測定値として使用することができる。
したがって、EISの特徴として、膜抵抗(Rmem)の増加及び/又は局所Rsolの増加により、一時的なディップが引き起こされる場合があることが発見されている。Rmemの増加は、高周波数の虚数インピーダンスの増加により反映される。この増加は、高周波数における勾配(Snyquist)を特徴とし得る。簡略化のために、これは8kHzと128Hzとの間の勾配として図面から推定可能である。更に、長さと勾配が低下するように、VcntrのレーリングはCdlを増加させ、Rpを減少させる。これは、感度損失に関係するCdlの漸減及びRpの漸増に続く場合がある。一般に、Rpの増加(長さの増加)とRmemの増加と組み合わさったCdlの低下は、感度損失を引き起こすのに十分であり得る。
本発明の実施形態に従い、感度変化及び/又は喪失の検出に基づいたセンサの自己較正のためのアルゴリズムを、図81に示す。ブロック6305及び6315では、ベースラインナイキスト線図長(Lnyquist)及びベースライン高周波勾配はそれぞれ、センサ寿命の開始時にEIS状態を反映するように設定されている。記載したように、ナイキスト線図の長さはCdlに相関し、より高周波数のナイキストスロープは膜抵抗に相関する。次にプロセスは、ナイキスト線図の長さ(6335)と、より高周波数の勾配(6345)と、Vcntr値(6325)とを監視することにより継続する。VcntrのレーリングがCdlを著しく変化させるため、Vcntrがレイルになると、ベースラインのLnyquistが調節される、又はリセットされる(6355)。したがって、監視されたEISパラメータにおける実時間変化に対応するフィードバックループ6358が存在する。
ブロック6375に示すように、ナイキスト線図の長さが監視されると、その長さにおける著しい増加は低下した感度を示す。特定の実施形態において、センサ設計及び/又はセンサ患者特異的範囲若しくは閾値を計算することが可能であり、範囲/閾値は、例えば、ナイキスト線図の長さの変化に対するものであることができる。同様に、より負の高周波数の勾配Snyquistは、高周波数の半円の外観の増加に対応し、可能なディップ6365を示す。例えば、連続的に又は定期的にのいずれかで、そして、感度低下の期間及び傾向に基づいて、Lnyquist及びSnyquistの任意のこのような変化を監視し、特定のセンサグルコース(SG)値を除外する(6385)ように、全体の(即ち厳密な)感度損失が生じたかどうかに関する測定を行う。ブロック6395において、監視したパラメータに基づいて較正係数を調節し、「無較正」CGMセンサを提供することができる。本発明の文脈において、用語「無較正」とは、特定のセンサが全く較正を必要としないことを意味するものではないことに留意されたい。むしろ、センサが、リアルタイムでのEIS出力データに基づき、そして、追加のフィンガースティック又は計量データを必要とせずに自己較正することができることを意味する。較正は所定の時間スケジュールに基づいてではなく、必要に応じてリアルタイムで行われるため、この意味において、自己較正とは、「知能」較正もまた意味することができる。
本発明の実施形態では、較正係数(CF)及び/又はオフセットを調整するためのアルゴリズムは、膜抵抗に基づいてもよく、これは、RmemとRsolとの和によって推定されてもよい。膜抵抗はセンサの物理的性質を表すため、通常は単一周波数で実行されるEISデータからは推定することができない。言い換えれば、周波数はセンサの状態に応じて移動するため、単一周波数は一貫して膜抵抗を表さないことが観察されている。したがって、図82は、感度損失がある程度存在する場合、ナイキスト線図の水平移動、それ故、Rmem+Rsolの値を推定する変曲点の移動が存在することを示す。この場合において、インピーダンスの実数成分の移動は、実際に極めて大きい。しかし、高周波数(例えば8kHz)の実数インピーダンスのみが監視される場合、図82の円で囲った領域に示すように、移動はほとんど、又は全く存在しない。
それ故、物理的に意味のある方法で膜抵抗を追跡する必要がある。理想的には、これはモデルフィッティングにより行うことができ、ここでは、Rmem及びRsolはモデルフィッティングにより導出され、RmはRm=Rmem+Rsolとして計算される。しかし実際には、このアプローチは、予測不可能なほどの長時間を必要とするために計算的に不経済であるだけでなく、いくつかの状況では全く収束しないため、影響を受けやすくもある。それ故、発見的メトリックを開発して、Rm=Rmem+Rsolの値を近似する、又は推定することができる。そのような一メトリックにおいて、Rmem+Rsolは、とても安定した虚数インピーダンス値における実数インピーダンス切片の値により近似される。したがって、図83に示すように、例えば、(Y軸上の)虚数インピーダンスに対する一般的な安定領域を、約2000Ωで識別することができる。これを基準値として取得し、X軸に平行に移動させることにより、Rmに比例する値を、基準線がナイキスト線図と交差する箇所の実数インピーダンス値として近似することができる。周波数間の補間を実施して、ΔRm∝Δ(Rmem+Rsol)を推定することができる。
上で論じたRmの値を推定すると、Rmと較正係数(CF)及び/又はIsigとの関係を調査することができる。具体的には、図84は、推定したRmとCFとの関係を示し、前者は後者に正比例している。図84の目的のためのデータポイントは、定常状態センサ動作のために導出された。図85は、正規化Isigの1/Rmに対するプロットであり、Isigは、(Isigの)BG範囲で正規化されている。図からわかるように、Isigは、Rmにおける変化に基づいて調整することができる。具体的には、Isigと1/Rmには線形関係が存在するため、1/Rmの増加(即ち膜抵抗の低下)は、Isigの比例増加をもたらす。
したがって、一実施形態において、較正係数を調節するためのアルゴリズムは、参照較正係数に基づいた膜抵抗変化の監視、及び続いての、RmとCFとの相関関係に基づいた、較正係数の比例修正を必要とする。言い換えれば、
別の実施形態において、較正係数調節アルゴリズムは、1/Rmの比例変化に基づき、CF計算とは独立して、Isigの修正を伴ってよい。したがって、そのようなアルゴリズムの目的のために、調節したIsigを以下のように導出する。
実験では、最も動的なCF変化は、センサ寿命の最初の8時間で生じていることが示されている。具体的には、インビトロ実験の一セットにおいて、Isigを時間の関数としてプロットしたが、センサの寿命に対して様々なグルコースレベルを一定に保っていた。最初の2時間は3分毎にEISを実施したが、全てのモデルパラメータを、経時的に推定し追跡した。以前に記したように、限定的なスペクトルEISを考慮すると、Rmem及びRsolをロバストに(独立して)推定することはできない。しかし、Rm=Rmem+Rsolを推定することができる。
図86は、400mg/dL(6410)、200mg/dL(6420)、100mg/dL(6430)、60mg/dL(6440)、及び0mg/dL(6450)を含む様々なグルコースレベルに関する、経時的なIsigに対するプロットを示す。始動時にて、通常は全てのパラメータにおいて劇的な変化が現れる。図87に一例を示す。ここでは、Cdlを時間の関数としてプロットし、プロット6415は400mg/dLグルコースに対応し、プロット6425は200mg/dLグルコースに対応し、プロット6435は100mg/dLグルコースに対応し、プロット6445は60mg/dLグルコースに対応し、プロット6455は0mg/dLグルコースに対応する。図87の例示的実施例の場合のように、大部分のパラメータは最初の0.5時間での変化と十分相関しているが、通常は0.5時間を超える時間フレームでの変化を考慮し得ない。
しかし、Rm=Rmem+Rsolは、同様の始動時間フレームにわたるIsigの変化を考慮することができる唯一のパラメータであることが発見されている。具体的には、図88は、特に低グルコース濃度、例えば100mg/dL以下において、約T=1時間にて生じるピーク、即ち第2の変曲点が存在するという表示を除いて、図86と同じグラフを示す。しかし、調査したEISパラメータ全ての中で、膜抵抗のみが、Isigのこの変化に対する関係を示した唯一のパラメータであった。他のパラメータは一般的に、安定状態にかなり円滑に進む傾向にある。したがって、図89に示すように、Rmは、同時にIsigのピークに対応する、約T=1時間における第2の変曲点もまた示す。
図90は、センサ動作の最初の8時間の間の、インビボデータについての較正係数とRmの関係を示す。ここで、EISを始動時から約30分にておよそ一度実施し、間の期間に関して補間した。わかるように、Rm=Rmem+Rsolは、センサ動作の最初の8時間の間の較正係数(CF)に相関する。図90の図の目的のために、ベースラインオフセットを3nAと推定した。
図83〜85に関して上で記載したように、本発明の一実施形態において、開始時に較正係数を調節するためのアルゴリズムは、較正係数に対する基準値(CFreference)を選択することと、CF=CFreferenceに対する膜抵抗(Rreference)の値を推定することと、膜抵抗の変化(Rm=Rmem+Rsol)を監視することと、その変化の大きさに基づいて、図90に示す関係に従い較正係数を調節することと、を含むことができる。したがって
CF(t)=CFreference−m(Rreference−Rm(t))
式中、mは図90の相関関係の傾きである。上のアルゴリズムの目的のために、CFreferenceの値はセンサ特異的であり、センサ間の差を考慮することに留意されたい。
別の実施形態において、較正係数調節アルゴリズムを、調節が生じるRmの制限範囲を使用することにより修正することができる。これは、ノイズにより発生し得る、Rmが約7000Ωよりも小さくなる場合の小さな差に役立つことができる。制限されたRm範囲はまた、センサの非常に遅い水和/安定化により生じ得る、Rmが非常に大きい場合にも役立つことができる。更に別の実施形態において、例えば、CFに対してより低い制限(4.5)を設定することなどにより、許容されるCFの範囲は制限される場合がある。
図91Aは、センサの寿命の最初の約8時間における、有効な全てのBGでのMARDに対するインビボ結果を示すチャートである。始動後1時間、1.5時間、又は2時間のいずれかにて、第1のBGにより単一(第1)の較正を実施する。わかるように、いかなる較正係数調節も行わないと、1時間における較正に対するMARDは、2時間にて実施した較正に対するMARDよりもはるかに高い(22.23と19.34)。しかし、調節を行うと、又は修正調節を行うと、上述のとおり、それぞれのMARDの数値の差は小さくなる。それ故、例えば、調節を行うと、2時間にて実施する較正の15.42と比較して、1時間における較正に対するMARDは16.98である。更に、1時間における較正に対する調節によるMARDは、2時間にて実施する較正に対する調節のないMARDよりもはるかに小さい(16.98と19.34)。そのため、本発明の実施形態に従うと、較正係数調節(及び修正調節)を使用して、例えば、本実施例では、1時間早くセンサを開始することにより、MARDを維持する、又は改善しながら、センサの利用可能な寿命を延ばすことができる。図91Bのチャートは、最初の約8時間における、全ての有効なBGにわたる中央ARD数を示す。
図92A〜図92C、図93A〜図93C、及び図94A〜図94Cは、上述の較正係数調節アルゴリズムがいくつかの現在の、EISに基づかない方法よりも良く作用する際の実施例を示す。「初日補償」(又はFDC)と一般に呼ばれるこのような一方法において、第1の較正係数を測定する。測定した較正係数が所定範囲の外に出る場合、一定の線形減衰関数を適用し、減衰速度により測定した設計時間にて、較正係数を通常の範囲に戻す。図92A〜図94Cからわかるように、本発明の較正係数調節アルゴリズム(図では「補償」と呼ばれる)6701、6711、6721は、FDC法6703、6713、6723により入手した結果よりも実際の血糖(BG)測定値6707、6717、6727に近い結果をもたらす。
EISが関係するパラメータの値を推定する複雑さを考慮すると、FDCを含む現在の方法の中には、本明細書に記載するEIS較正係数調節アルゴリズムほど計算的には複雑でないものもあり得る。しかし、2つのアプローチもまた、相補的な様式で実装することが可能である。具体的には、即時的な較正係数調節アルゴリズムによりFDCが増加され得る状況が存在し得る。例えば、後者を使用して、FDCの変化速度を規定することができる、又は、(CFのみを使用する以外で)どのFDCを適用するべきかの範囲を識別することができる、又は、特別な場合においてFDCの方向を反転することができる。
更に別の実施形態において、較正係数ではなくオフセットを調節することができる。更に、又は代わりに、R
m及びCFの適用可能な範囲に制限を課すことができる。特定の実施形態において、相対値ではなく絶対値を使用してよい。更に、較正係数と膜との関係を、相可的にではなく相乗的に表すことができる。したがって、
EISに基づく動的なオフセットを使用する実施形態において、測定される総電流を、ファラデー電流と非ファラデー電流との合計として定義することができ、前者はグルコース依存性である一方、後者はグルコース独立性である。したがって、数学的に、
itotal=iFaradaic+inon−Faradaic
理想的には、非ファラデー電流は、固定された作用電位でゼロとすべきであるため、
式中、Aは表面積であり、
は過酸化物のグラジエントである。
しかし、二重層容量が変化しているとき、非ファラデー電流を無視することはできない。具体的には、非ファラデー電流を、
として計算することができ、式中、qは電荷であり、Vは電圧であり、Cは(二重層)容量である。上からわかるように、電圧(V)と容量(C)の両方が一定である場合、式の右手側の時間微分値は共にゼロに等しく、i
non−Faradaic=0となる。このような理想的な状況において、焦点を次に、拡散と反応に当てることができる。
V及びCが両方とも(例えば、センサ初期化時に)時間の関数であるとき、
一方、Vが一定であり、Cが時間の関数であるとき、
である。
このような条件は、例えば、センサ動作の1日目に存在する。図95は、1日目、この場合、センサ挿入後の最初の6時間の間の、二重層容量における一般的な(初期)減衰の例を示す。グラフに示すように、プロット6805は、半時間間隔で得たEISデータに基づいたそのままのCdlデータを示し、プロット6810は、5分間隔でのそのままのCdlデータにおけるスプラインフィットを示し、プロット6815は5分間隔での平滑曲線を示し、プロット6820は5分間隔での平滑Cdlデータにおける多項フィットを示す。
Cdl減衰が指数関数的ではないことに留意されたい。このように、減衰は、指数関数によりシミュレーションすることができない。むしろ、6次多項式適合(6820)が合理的なシミュレーションを提供することが見出された。したがって、上述のシナリオの目的のために、Vが一定でCが時間の関数である場合、多項係数が既知の場合にi
non−Faradaicを計算することができる。具体的には、
C=P(1)t
6+P(2)t
5+P(3)t
4+P(4)t
3+P(5)t
2+P(6)t
1+P(7)
式中、Pは多項係数の配列であり、tは時間である。次に、非ファラデー電流を、以下のように計算することができる。
最終的に、i
total=i
Faradaic+i
non−Faradaicであるため、電流の非ファラデー成分を、以下のように、再構成することにより取り除くことができる。
i
Faradaic=i
total−i
non−Faradaic
図96は、時間の関数として、総電流に基づいたIsig(6840)、及び、容量減衰に基づいた非ファラデー電流を取り除いた後のIsig(6850)を示す。電流の非ファラデー成分は、10〜15nAの大きさであってもよい。図からわかるように、非ファラデー電流を取り除くことが、センサ寿命の開始時における、大部分の低始動Isigデータを取り除くのに役立つ。
上のアプローチを使用してMARDを低下させる、及び、センサ寿命のまさに開始時に較正係数を調節することができることが発見されている。後者に関して、図97Aは、第1の作用電極(WE1)6860、及び、第2の作用電極(WE2)6870に対する、非ファラデー電流を取り除く前の較正係数を示す。一方、図97Bは、非ファラデー電流を取り除いた後の、WE1(6862)及びWE2(6872)に対する較正係数を示す。図97AのWE1(6860)に対する較正係数を、図97BのWE1(6862)に対する較正係数と比較すると、非ファラデー成分を取り除くことにとり、較正係数(6862)は予測範囲にたいへん近いことがわかる。
更に、MARDの低下は、図98A及び98BGに示す実施例で確認することができ、ここではセンサグルコース値が経時的にプロットされている。図98Aに示すように、非ファラデー電流を取り除く前に、低始動時での較正は、WE1(6880)における、センサの著しい過大読み取りを引き起こし、MARDが11.23%となる。非ファラデー電流を取り除いた後、WE1については10.53%のMARDを達成する。図97A〜図98Bの例示的目的のために、関係
(式中、Pは二重層容量曲線に適合するために使用した多項係数(配列)である)を使用して、処理前に非ファラデー電流を計算して取り除いたことに留意されたい。
リアルタイムで、ファラデー電流及び非ファラデー電流の分離を使用して、時間を自動的に測定し、第1の較正を実施することができる。図99は、経時的な二重層容量減衰を示す。具体的には、一定の時間間隔ΔTにわたり、二重層容量は第1の値
(7005)から第2の値C
T(7010)に変化する。次に、第1オーダーの時間差法を例えば使用して、非ファラデー電流を以下のように計算することができる。
他の方法、例えば、第2オーダーの正確な有限値法(FVM)、Savitzky−Golayなどもまた使用して、導関数
を計算することができる。
次に、総電流、即ち、非ファラデー電流を含むIsigの百分率を、割合inon−Faradaic/Isigとして簡単に計算することができる。この割合が下側閾値に達すると、次いで、センサを較正準備できているか否かに関して、リアルタイムで決定を行うことができる。したがって、本発明の実施形態において、閾値は、5%〜10%であってもよい。
別の実施形態において、上述のアルゴリズム、即ち、EISベースの動的オフセットアルゴリズムを使用して、リアルタイムでオフセット値を計算してよい。以下の式
及びセンサ電流Isigはファラデー成分及び非ファラデー成分を含む総電流であることを思い出されたい。
i
total=i
Faradaic+i
non−Faradaic
ファラデー成分は、以下のように計算される。
i
Faradaic=i
total−i
non−Faradaic
したがって、本発明の実施形態において、非ファラデー電流inon−Faradaicを、Isigへの追加オフセットとして処理することができる。実際、二重層容量が低下する際、例えば、センサ寿命の第一日目の間、inon−Faradaicは負であり、時間の関数として減少する。それ故、本発明の実施形態に従うと、より大きなオフセット、即ち、現在の方法で計算する通常のオフセット+inon−Faradaicをセンサ寿命のまさに開始時にIsigに加え、5次多項曲線の減衰を可能にする。即ち、追加のオフセットinon−Faradaicは5次多項に続き、その係数は求められなければならない。二重層容量の変化がどれだけ劇的であるかに応じて、本発明の本実施形態に従ったアルゴリズムをセンサ寿命の最初の数時間、例えば最初の6〜12時間に適用してよい。
多項フィットは様々な方法で計算することができる。例えば、本発明の実施形態において、係数Pは既存のデータに基づいて予め求めることができる。次に、上で論じた動的オフセットを適用するが、それは第1の較正係数が通常範囲、例えば約7より上の場合のみである。通常、リアルタイムの二重層容量測定は所望されるほど信頼できない場合にこの方法は最も機能することを、実験は示している。
代替実施形態では、インラインのフィッティングアルゴリズムを使用する。具体的には、インラインの二重層容量バッファを時間Tにて作成する。次に、時間Tにおける多項フィットを使用して、バッファに基づいてPを計算する。最後に、時間TにおけるPを使用して、時間T+ΔTにおける非ファラデー電流(動的オフセット)を、計算する。このアルゴリズムでは、二重層容量測定を電流レベル(30分毎)よりも頻繁にする必要があり、測定は信頼できるものである(即ち、アーチファクトなしである)ことに留意されたい。例えば、EIS測定はセンサ寿命の最初の2〜3時間の間、5分に1回、又は10分に1回行うことができる。
リアルタイムの自己較正センサの開発において、最終的な目標は、BG計への依存を最小化する、又は全て取り除くことである。しかしこれには、とりわけ、EISが関係するパラメータとIsig、較正係数(CF)、及びオフセットとの関係を理解することを必要とする。例えば、インビボ実験は、Isigと、Cdl及びワールブルクアドミッタンスとには、後者のそれぞれが(少なくともある程度は)Isig依存性であり得るように、相関関係があることを示している。更に、センサの工場較正の観点から、Isig及びRm(=Rmem+Rsol)は較正係数に関して最も重要なパラメータ(即ち、寄与する因子)である一方、ワールブルクアドミッタンス、Cdl、及びVcntrはオフセットに関して最も重要なパラメータであることが見出されている。
インビトロ研究では、EISから抽出されたメトリック(例えば、Rmem)は、較正係数と強い相関関係を示す傾向がある。しかし、インビボでは、同じ相関関係は、弱くなる場合がある。これは、部分的には、患者特異的、又は(センサ)挿入部位特異的な性質が、自己較正又は工場較正のためにEISの使用を可能にするセンサの面を隠すという事実による。これに関して、本発明の実施形態において、重複センサを使用して、患者特異的な応答を推定するのに利用可能な参照点を提供することができる。これはよりロバストな工場較正を可能にし、また、センサの内側又は外側のいずれかとして、センサ故障モード源の識別に役立つ。
一般に、EISは、センサ電極間で形成する電界の関数である。電界はセンサ膜を超えて延ばすことが可能であり、センサ挿入部位にて(患者の)体の特徴を調査することができる。それ故、センサが挿入される/配置される環境が全試験を通して一定である場合、即ち、組織の組成がインビボで常に同じである(又は、バッファがインビトロで常に同じである)場合、EISはセンサのみの特徴に相関することができる。言い換えれば、センサの変化が直接EISの変化に繋がると推定することができ、これは例えば較正係数と相関することができる。
しかし、患者特異的な組織の性質は挿入部位の組成に依存するため、インビボ環境は非常に変化しやすいことがよく知られている。例えば、センサ周辺の組織の導電性は、センサ周辺の脂肪量に依存する。脂肪の導電性は純粋な組織液(ISF)の導電性よりはるかに低く、局部脂肪のISFに対する比は著しく変わる可能性があることが知られている。挿入部位の組成は、挿入部位、挿入深さ、患者特異的な体の組成などに依存する。したがって、センサが同じであっても、EIS研究で観察されるRmemは、参照環境はあったとしてもほとんど同じではないため、より著しく変化する。即ち、挿入部位の導電性は、センサ/システムのRmemに影響を及ぼす。そのため、Rmemを信頼できる較正道具として一定に、そして一貫して使用することは可能でない場合がある。
前述したように、EISはまた、診断ツールとしても使用することができる。したがって、本発明の実施形態において、EISを全体の故障分析のために使用してよい。例えば、EISを使用して、センサデータを遮断するか否か、そしていつ遮断するかを決定し、最適な較正時間を決定し、センサを停止させるか否か、そしていつ停止させるかを決定するのに有用である深刻な感度損失を検出することができる。この点において、連続的グルコース監視及び分析において、2種類の主な深刻な感度損失:(1)典型的にはセンサ寿命の初期に生じ、一般的に外部センサ遮断の結果であると考えられている一時的感度損失(即ちIsigディップ)、及び(2)典型的にセンサ寿命の終わりにて生じ、回復しないためセンサの停止を必要とする永久感度損失:が典型的に考えられることを繰り返して言うことができる。
インビボデータ及びインビトロデータの両方は、感度損失及びIsigディップの間、変化するEISパラメータがRmem、Rsol及びCmemのいずれか1つ以上であってもよいことを示す。後者の変化はナイキスト線図の高周波数領域への平行移動、及び/又は高周波数半円の外観の増加として明らかになる。一般に、感度損失が深刻になればなるほど、これらの徴候はより明白となる。図100は、2.6日(7050)、3.5日(7055)、6日(7060)、及び6.5日(7065)におけるデータについての、ナイキスト線図の高周波数領域を示す。わかるように、膜抵抗の増加を示す、感度損失(7070)の間の左から右への水平移動、即ちRmem+Rsol移動が存在し得る。更に、6日間のプロット、及び特に6.5日間のプロット(7065)は、感度損失(7075)の間の高周波数半円の出現をはっきりと示し、これは膜容量の変化を示している。感度損失の状況、及び深刻さに応じて、上述の発現のいずれか又は両方はナイキスト線図に現れ得る。
Isigディップの検出に特に関して、永久感度損失とは対照的に、いくつかの現在の方法では、例えば、Isigが落ち得る際の速度、又は経時的なIsigの増大変化の程度/欠落を監視することによりIsigを使用してIsigディップを検出するのみであり、これにより、恐らくセンサがグルコースに応答性でないことを示している。しかし、実際のディップが存在する場合でさえも、通常のBG範囲内にIsigがとどまるときの実例が存在するため、このことは非常に信頼できるものでない場合がある。このような状況において、感度損失(即ちIsigディップ)は低血糖と区別可能ではない。したがって、本発明の実施形態において、EISを使用して、Isigから導出される情報を補完することができ、これにより、検出法の特異度及び感度を増加させる。
永久感度損失は、一般的にVcntrのレイルと関連し得る。ここで、いくつかの現在のセンサ停止法は、例えば、Vcntrが1日間でレイルとなるとき、センサが停止することができるように、Vcntrのレイルデータのみに依存している。しかし、本発明の実施形態に従うと、感度損失によりセンサをいつ停止させるかを決定する一方法は、EISデータを使用して、Vcntrがレイルになった後に感度損失が起こるか否か、そしていつ起こるかを確認することを必要とする。具体的には、ナイキスト線図の高周波数領域における平行移動を使用して、Vcntrのレイルが観察されると永久感度損失が実際に生じるか否かを決定することができる。この点において、Vcntrが例えば5日目にセンサ寿命にレイルする状況が存在するが、ナイキスト線図ではEISデータはほとんど変化しないことを示す。この場合において、通常、センサは5〜6日目にて停止される。しかし、EISデータは実際には、永久感度損失が存在しなかったことを示しているため、センサは停止せず、これによりセンサの有用な寿命の残りを保存する(即ち使用する)。
以前に述べたとおり、感度損失の検出は、1つ以上のEISパラメータの変化に基づくことができる。したがって、膜抵抗(Rm=Rmem+Rsol)の変化は、例えば、それら自体が中周波数(約1kHz)の実数インピーダンスにあることを明らかにすることができる。膜容量(Cmem)に関して、半円が増加するため、変化は高周波数(約8kHz)虚数インピーダンスにて明らかとなることができる。二重層容量(Cdl)は平均Isigに比例する。これは、より低い周波数のナイキストスロープの長さLnyquistとして近似されてもよい。Vcntrは酸素量に相関しているため、通常のセンサの挙動は典型的には、Isigの低下と共にVcntrの低下を伴う。それ故、Isigの低下と共に、Vcntrの増加(即ち、更に負となる)もまた、感度損失を示すことができる。更に、平均Isigレベル、変化速度、又は、低い若しくは生理的に確からしくない信号の変動性を監視することができる。
それでも、EISパラメータは最初に決定しなければならない。較正係数調節と共に、及び関連した開示で以前に記載したとおり、EISパラメータを推定する最もロバストな方法は、モデルフィッティングを実施することであり、ここでは、測定したEISとモデル出力との誤差が最小化されるまで、モデル式のパラメータは変化する。この推定を実施するための多くの方法が存在する。しかし、リアルタイムでの適用に関して、計算負荷、推定時間の変動性、及び収束が不十分な場合が原因で、モデルフィッティングは最適ではない場合がある。通常、実現可能性はハードウェアに依存する。
上述した完全なモデルフィッティングが不可能な場合、本発明の一実施形態において、リアルタイム適用のための一方法は、発見的方法論を使用するものである。目的は、測定したEISに適用される簡単な発見的方法を用いて、真のパラメータ値(又は、各パラメータにより示される傾向に比例する、対応するメトリック)を近似することである。この点において、以下は各パラメータの変化を推定するための実装である。
二重層容量(Cdl)
一般的に言って、Cdlの概算を、低周波数ナイキストスロープ(例えば、約128kHzより小さい周波数)の長さを測定する任意の統計値から得ることができる。これは例えば、Lnyquist(ナイキスト線図の128kHz及び0.1HzとのEISの直角距離)を測定することにより行うことができる。他の周波数範囲もまた使用することができる。別の実施形態において、低周波数インピーダンス(例えば0.1Hz)の振幅を使用することにより、Cdlを推定することができる。
膜抵抗(Rmem)及び溶液抵抗(Rsol)
本明細書で既に論じたように、ナイキスト線図にて、Rmem+Rsolは、低周波数半円と高周波数半円との間の変曲点に対応する。したがって、一実施形態において、Rmem+Rsolは、ナイキストスロープの向きの変化を検出することによって(例えば、導関数及び/又は差を使用することによって)変曲点を局在化することにより、推定することができる。あるいは、Rmem+Rsolの相対的変化を、ナイキストスロープの移動を測定することにより推定することができる。これを行うために、虚軸にて参照点を選択することが可能であり(図83を参照)、補間を使用して、実軸の対応する点を決定することができる。この補間値を使用して、経時的にRmem+Rsolの変化を追跡することができる。選択した参照は、所与のセンサ構成に関して、(例えばVcntrのレイルのために)ナイキストスロープの低周波数部分の大きな変化に過度に影響を受けない値の範囲の中になければならない。典型的な値は、1kΩ〜3kΩの間であり得る。別の実施形態において、単一の高周波数EIS(例えば1kHz、8kHz)の実数成分を使用することが可能である。ある種のセンサ構成において、これはRmem(時間の大部分)をシミュレートすることができるが、単一周波数は全ての状況においてRmemを厳密に示すことはできないことに留意されたい。
膜容量(Cmem)
Cmemの増加は、より明白な高周波数半円(又はそのより明確な出現)として明らかとなる。Cmemの変化はそれ故、この半円の存在を推定することにより検出することができる。したがって、一実施形態において、Cmemは、インピーダンスの高周波数虚数成分を追跡することにより推定することができる。この点において、更に負の値は、半円の存在の増加に対応する。
あるいは、Cmemは、周波数範囲(例えば1kHz〜8kHz)内の半円の、最も高い点を追跡することにより推定することができる。この周波数範囲はまた、変曲点が生じる周波数を識別し、識別した周波数より高い全ての周波数に関して、最も大きな虚数インピーダンスを得ることにより決定することもできる。この点において、更に負の値は、半円の存在の増加に対応する。
第3の実施形態において、Cmemは、ナイキスト線図の2つの高周波数点(例えば8kHzと1kHz)の間の直角距離を測定することにより推定することができる。これは、即時適用により以前に定義された高周波数傾斜(Snyquist)である。ここで、より大きな絶対値は半円の増加に対応し、(y軸に負の虚数インピーダンス、及びx軸に正の実数インピーダンスを伴う)負の勾配は、半円が存在しないことに対応する。上述の方法論において、半円の中で検出した変化の中にはRmemの変化に寄与したものもあり得る例が存在することに留意されたい。しかし、いずれかの変化が感度損失を示すため、重複は許容されると考えられる。
EISに関係しないメトリック
文脈に関して、EISメトリックの利用可能性の前に、いくつかの非EIS基準に従い、感度損失を全体的に検出したことに留意されたい。これら自体により、これらのメトリックは、検出の完全な感度と特異度を達成するのに典型的には十分信頼できない。しかし、これらをEISが関係するメトリックと組み合わせて、感度損失の存在を支える証拠をもたらすことができる。これらのいくつかのメトリックとしては、(1)Isigが(nAにおける)特定の閾値を下回る時間、即ち「低Isig」の期間の量;(2)Isigの変化が生理学的に可能であるか、又は感度損失により誘発されるかを示すものとして使用される、「低Isig」の状態に導くIsigの、一次導関数又は二次導関数;及び(3)センサがグルコースに応答性であるか、平坦線であるかを示すことができる、「低Isig」期間にわたるIsigの変動性/変化、が挙げられる。
感度損失検出アルゴリズム
本発明の実施形態は、感度損失を検出するためのアルゴリズムに関する。アルゴリズムは通常、EIS測定値(例えば本明細書に記載したもの)から、及びEISに関係しないメトリックから推定した、パラメータのベクトルへのアクセスを有する。したがって、例えば、ベクトルは、Rmem及び/又は(ナイキスト線図の)水平軸における移動、Cmemの変化、及びCdlの変化を含有することができる。同様に、ベクトルは、Isigが「低」状態にある時間、Isigの変動性、Isigの変化速度のデータを含有することができる。このパラメータのベクトルは、経時的に追跡でき、ここで、このアルゴリズムの目的は、感度損失のロバストな証拠を集めることである。この文脈において、「ロバストな証拠」は、例えば、投票システム、複合重み付けメトリック、クラスタリング及び/又は機械学習によって定義することができる。
具体的には、投票システムは、1つ以上のEISパラメータの監視を必要としてもよい。例えば、一実施形態では、これは、パラメータベクトル内の要素の所定の数、又は計算された数を超えていつ絶対閾値と交差するかの判定に関与する。代替実施形態では、閾値は、相対(%)閾値であってもよい。同様に、ベクトル要素は、ベクトル内の特定のパラメータの組み合わせがいつ絶対閾値又は相対閾値と交差するのかを判定するために、監視されてもよい。別の実施形態では、ベクトル内の要素のサブセットのいずれかが絶対閾値又は相対閾値と交差するとき、パラメータの残りに対するチェックがトリガされて、感度損失の十分な証拠を得ることができるかどうかを判定してもよい。これは、パラメータのサブセットのうちの少なくとも1つが確実に検出されることとなる感度損失のために必要な(しかしおそらく不十分な)条件であるときに有用である。
複合重み付けメトリックは、例えば、所定の閾値とどの程度交差するかに応じて、ベクトル内の要素を重み付けする。次いで、感度損失は、集約重み付けメトリックがいつ絶対閾値又は相対閾値と交差するかを検出することができる(即ち、発生しているとして判定することができる)。
機械学習は、より高度な「ブラックボックス」分類器として使用することができる。例えば、実際的なインビボ実験から抽出されたパラメータベクトルを使用して、感度損失を検出するために人工ニューラルネットワーク(ANN)、サポートベクトルマシン(SVM)又は遺伝的アルゴリズムに学習させることができる。次いで、学習したネットワークは、非常に時間効率的な方法でリアルタイムで適用することができる。
図101A及び図101Bは、コンビネータ論理を用いる感度損失検出のためのフロー図の2つの例示的な例を示す。示したように、両方の方法では、1つ以上のメトリック1〜Nを監視してもよい。図101Aの方法では、メトリックのそれぞれを追跡して、メトリックが閾値と交差しているかどうか、またいつ交差するかを判定し、本明細書で上述した。次いで、閾値判定ステップの出力は、コンビネータ論理を介して集約され、感度損失に関する決定は、コンビネータ論理の出力に基づいて行われる。図101Bでは、監視されるメトリック1〜Nの値を、コンビネータ論理を通して最初に処理し、その後、後者の集約出力は、閾値(複数可)と比較されて、感度損失が発生したかどうかを判定する。
本発明の追加の実施形態はまた、EISインテリジェント診断アルゴリズムの使用に関する。したがって、一実施形態では、EISデータを使用して、センサが新品であるかどうか又は(患者によるセンサの再使用に関連して予め提示された方法に加えて)再使用されているかどうかを判定してもよい。後者に関しては、センサが新品であるかどうか又は再使用されているかどうかを知ることは、この情報がどのような初期化シーケンスが、もしある場合には、使用されるべきかを決定するのに役立つため、重要である。加えて、この情報は、センサのラベルをはがした状態の使用を防止すると共に、複数回の再初期化(即ち、センサが切断された後に再接続される毎に、新しいセンサであると「考え」、したがって、再接続時の再初期化を試みること)によるセンサ損傷を防止することができる。その情報はまた、収集したセンサデータの後処理でも役立つ。
センサの再使用及び/又は再接続に関連して、初期化前の新しいセンサに対するより低い周波数のナイキストスロープが、切断され、次いで、再び再接続されたセンサに対する低い周波数のナイキストスロープとは異なる(即ち、より低い)ことが発見された。具体的には、インビトロ実験は、ナイキストスロープが、新たに挿入されたセンサとは反対に再使用センサについてはより高いことを示した。したがって、ナイキストスロープは、新しいセンサと使用済み(又は再使用)センサとを区別するためのマーカとして使用することができる。一実施形態では、閾値は、ナイキストスロープに基づいて、特定のセンサが再使用されているかどうかを決定するために使用されてもよい。本発明の実施形態では、閾値は、ナイキストスロープ=3であってもよい。図102は、基準勾配=3(8030)を有する低周波数ナイキスト線図と共に、新しいセンサ(初期化前)8010、新しいセンサ(初期化後)8015、再接続センサ(初期化前)8020及び再接続センサ(初期化後)8020に対するプロットを示す。記載したように、新しいセンサ(初期化前)8010に対する勾配は、基準又は閾値(8030)よりも低く、再接続されたセンサ(初期化前)8020に対する勾配は、閾値(8030)よりも高い。
同等に、より低い周波数の位相測定値を用いて、以前に初期化されたセンサを検出してもよい。ここで、0.105Hzでの初期化前位相角は、例えば、新しいセンサと使用済み(又は再使用)センサとを区別するために使用されてもよい。具体的には、閾値は、約−70°の位相角に設定してもよい。したがって、0.105Hzでの初期化前位相角が閾値未満である場合には、センサは、古い(即ち、以前に初期化された)センサであると考えられる。そのため、更なる初期化パルスは、センサに印加されないこととなる。
別の実施形態では、EISデータを使用して、使用するセンサの種類を判定してもよい。ここで、センサ設計が大幅に異なる場合には、対応するEIS出力もまた、平均して大幅に異なるべきであることが発見された。異なるセンサ構成は、異なるモデルパラメータを有する。したがって、センサ寿命の間の任意の時点でこれらのパラメータを識別することを、現在挿入されているセンサの種類を決定するために使用することが可能である。パラメータは、例えば、総障害解析/感度損失解析に関連して本明細書で上述した方法に基づいて推定することができる。識別は、例えば、特定の(単一又は複数の)パラメータに閾値を設定する個別の値に対する共通の方法、機械学習(ANN、SVM)、又は両方の方法の組み合わせに基づくことができる。
この情報は、例えば、アルゴリズムパラメータ及び初期化シーケンスを変更するために使用してもよい。したがって、センサ寿命の開始時に、単一の処理ユニット(GST、GSR)を使用して、較正アルゴリズム用の最適なパラメータを設定することができる。オフライン(非リアルタイム)では、センサの種類の識別は、現場のセンサの性能の分析/評価を支援するために使用することができる。
より低い周波数のナイキストスロープの長さを異なるセンサの種類を区別するために使用してもよいこともまた発見された。図103A〜図103Cは、Enlite(8050)、Enlite2(即ち、「Enlite Enhanced」)(8060)及びEnlite3(8070)(いずれもMedtronic Minimed(Northridge,CA)製)として識別される異なる3つのセンサ(即ち、異なるセンサ構成)に対するナイキスト線図を示す。これからわかるように、初期化前、初期化後及び第2の初期化後(それぞれ図103A〜図103C)を含む様々な段階に対して、Enliteセンサは、最短のより低い周波数のナイキストスロープ長さ(8050)を有し、Enlite2(8060)、そして最も長い長さを有するEnlite3(8070)が続く。後者はまた、図104にも示されており、ナイキスト(勾配)の長さが、0.105Hz及び1HzにおけるEIS間のデカルト距離として算出されて、時間に対してプロットされている。
本発明の実施形態はまた、行うべき初期化の種類を判定するガイドとして診断EIS測定値を使用することにも関する。前述したように、初期化シーケンスは、検出されたセンサの種類(EISベース又は他)及び/又は新しいセンサ若しくは古いセンサが挿入されているかどうかの検出(EISベース)に基づいて変化させることができる。しかし、加えて、EISベースの診断はまた、(例えば、ワールブルクインピーダンスを追跡することにより)初期化前の最小水和状態の判定で、又はセンサ初期化時間を適切に最小化するために(例えば、反応依存性パラメータ、例えば、Rp、Cdl、αなどを追跡することにより)いつ初期化を終了するかの判定で使用してもよい。
より具体的には、初期化応答時間を最小化するためには、初期化中に発生するプロセスを制御するために追加の診断が必要とされる。この点に関して、EISは、必要な追加の診断を提供してもよい。したがって、例えば、EISをそれぞれの初期化パルス間で測定し、更にパルスが必要であるかどうかを判定してもよい。代替的に又は追加的に、EISを高パルス中に測定し、最適な初期化状態のEISと比較して、センサが十分に初期化されたときを判定してもよい。最後に、上述したように、EISは、特定のモデルパラメータ、Rp、Cdl、αなどの最も可能性が高い1つ以上の反応依存性パラメータを推定する際に使用してもよい。
上述したように、センサ較正は一般的に、リアルタイムセンサ較正は特に、ロバストな連続的グルコース監視(CGM)システムに対して重要である。この点に関して、較正アルゴリズムは、BGがフィンガースティックを行うことによって受信されると、エラーメッセージを生成するか、又は同様に、センサグルコースを計算するために使用される較正係数を更新するかのいずれかのために新たなBG値を使用するように、全般的には設計される。しかし、いくつかの以前のアルゴリズムでは、10〜20分の遅延は、フィンガースティックが入力された時点と、受け付けられているフィンガースティック又は較正に必要な新規のフィンガースティックのいずれかをユーザに通知する時点と、の間に存在してもよい。これは、ユーザが数分間、再びBG計を必要とするかどうか知らないままに放置されるため、手間がかかる。
加えて、いくつかの状況では、較正バッファに古いBG値が存在すると、最新のBG値が100%未満の重みを有するため、知覚されるシステム遅延、又は(古いBG値がシステムの現在の状態をもはや代表しないため)計算されたSGにおける不正確性のいずれかが生じる。更に、場合により誤ったBG値が入力されるが、システムによって捕捉されず、次回の較正までに大きな不正確性をもたらす恐れがある。
上記の観点では、本発明の実施形態は、特に閉ループシステムと共に使用するためのセンサ性能に関して、先行の方法では潜在的な欠点に対処することを試みる。例えば、システムをより予測可能にするために、較正誤差は、例えば、10〜15分後ではなく、フィンガースティック(BG値)が受信されたときにのみ、送信機で通知されてもよい(即ち、入力される)。加えて、一定の較正誤差(CE)閾値を使用するいくつかの既存のシステムとは対照的に、本発明の実施形態は、(例えば、センサの信頼性が低下する又は高い変化率のいずれかにより)より大きな誤差が予想されるとき、可変較正誤差閾値を利用して、それにより、不要な較正誤差アラーム及びフィンガースティック要求を防止してもよい。したがって、一態様では、センサがFDCモード、Isigディップ較正モードにある又は高い変化率(例えば、2パケットの変化率×CF>1.5mg/dL/min)を受けているとき、50%又は50mg/dLに相当する制限を使用してもよい。
一方、少ない誤差が予想されるとき、システムは、例えば、40%又は40mg/dLのようなより厳しい較正誤差限界を使用してもよい。これにより、誤ったBG値が較正に使用される恐れの可能性を低減し、同時にまた、較正試行のステータスを直ちに発行すること(即ち、較正又は較正誤差について受容すること)を可能にする。更に、新しいIsig値が較正誤差を引き起こすであろう状況に対処するために、較正時(例えば、フィンガースティック後5〜10分)のチェックは、較正に使用するために最適なフィルタリング済みIsig(fIsig)値を選択してもよい。
BG値及びBGバッファを含む上記問題に関連して、本発明の実施形態は、以前のアルゴリズムで割り当てられたものよりも、新しいBG値に高い重み付けを割り当て、早期較正更新がより頻繁に生じることを保証することによって、遅延の低減及び遅延の知覚を図る。加えて、(例えば、上述し、かつ以下で更に説明することとなるスマート較正ロジックにより、また、最新の較正BG/Isig比により確認されたように)確認された感度変化がある状況では、較正バッファは、部分的にクリアされてもよい。最後に、先行のアルゴリズムは、一定であった予想較正係数(CF)重みを採用してあってもよいが、本発明の実施形態は、センサ使用時間に基づく可変CF値を提供する。
つまり、本発明の実施形態は、較正試行中の誤差の予測に基づく可変較正誤差閾値と共に、追加のセンサデータを待つことなく較正誤差メッセージ(複数可)の発行、較正時のより短い遅延(例えば、5〜10分)、センサ使用時間に基づく更新された予想較正係数値及び必要に応じて較正バッファの部分クリアを提供する。具体的には、初日補償(FDC)に関連して、本発明の実施形態は、より迅速にセンサ性能を補正するために、より高い較正係数閾値がトリガされるとき、追加の較正を要求することを提供する。このようなより高いCF閾値は、例えば、7〜16mg/dL/nAに設定してもよく、後者は、本発明の実施形態における較正誤差の表示のための閾値として役立つ。
したがって、一態様では、第1の較正の後に高いCF閾値がトリガされる場合には、システムは、次回の較正を3時間以内に行うことを要求する。しかし、第2の又はその後の較正後に高いCF閾値がトリガされた場合には、システムは、次回の較正を6時間以内に行うことを要求する。上記手順は、センサ接続から12時間の期間に実施されてもよい。
別の態様では、較正係数を計算するための較正中に使用される予想較正係数は、過小読み取りの可能性を低減するように経時的に増加させる。バックグラウンドとして、既存の方法は、センサ寿命を通して固定された予想較正係数を、センサ感度において起こり得る遷移を考慮せずに使用してもよい。このような方法では、予想較正係数は、最終較正係数の算出において重み付けしてもよく、ノイズを低減するために使用してもよい。
しかし、本発明の実施形態では、予想CFは、センサの使用時間の観点から表現される時間の関数として計算される。具体的には、
であり、式中、センサ使用時間は、日数単位で表現される。更なる実施形態では、予想較正係数は、既存のCF及びインピーダンスの関数として計算してもよいため、感度における任意の変化も、予想CFに反映されてもよい。加えて、本発明の態様では、予想CFは、較正間で較正係数を徐々に調整するように、Isigパケット毎に計算してもよい(BG入力時のみにそのように行うのではない)。
較正バッファ及び較正誤差計算に関連して、本発明の実施形態は、較正バッファ重みの変更及び/又は較正バッファのクリアのために提供される。具体的には、インピーダンス測定が、較正係数が変化したであろうことを(例えば、EISを介して)示し、較正試行が、変化が発生していたであろうことを示すとき、較正比率(CR)における変化は、現在のBGのCRを較正バッファ内の直近のCRと比較することによりチェックされる。ここで、このような変化は、関連するEIS手順に関連して詳細に上述したように、例えば、1kHzインピーダンスの値によって検証してもよい。加えて、信頼度指数、較正係数が変化すると予想される方向及び/又は較正の変化の速度に基づいて較正バッファ計算において、重みを加えてもよい。後者の状況では、例えば、較正が高い変化率にある場合、より低い重みを割り当ててもよい、又はCFを一時的にのみ更新してもよい。
本発明の実施形態では、較正バッファに対するフィルタリング済みIsig(fIsig)値の選択は、BG入力後、第2のIsigパケット上で開始してもよい。具体的には、較正誤差を生じなかったであろう最も直近の過去の3つのfIsig値を選択してもよい。次いで、較正のために受容されると、較正処理は、較正誤差が発行されずに進行することとなる。このような較正誤差は、例えば、無効なIsig値、較正比率範囲のチェック、百分率誤差チェックなどによって生じてもよい。
他の実施形態では、fIsigの値は、1分分解能を導出するために補間されてもよい。あるいは、fIsig値は、値における変化率に基づいて(また遅延を考慮して)最近の値から選択されてもよい。更に他の代替的な実施形態では、fIsig値は、予測CR値に最も近いCRの値に基づいて選択してもよい。予測CR値は、較正係数の現在値に最も近いが、後者、又はEISデータが、CFが変更されるべきであることを示すまでである。
上述したように、図24及び図34に関連して、例えば、1kHz実数インピーダンスの値は、センサ膜表面上に存在してもよい、グルコースがセンサ内を通過するのを一時的に妨げ、信号がディップすることを引き起こす場合がある、潜在的閉塞(複数可)に関する情報を提供する。更に広く見ると、1kHz実数インピーダンス測定は、一般的に急激なセンサイベントを検出するために使用してもよく、センサが完全に挿入されていないことを示してもよい。この点に関して、図105は、本発明の実施形態に従った、センサデータのブランク表示、又はセンサの停止の方法に関するフロー図を示す。
方法は、ブロック9005で開始し、1kHz実数インピーダンス値が、例えば、移動平均フィルタを使用してフィルタリングされ、それに基づいて、EIS導出値が安定しているかどうかを判定する(9010)。EIS導出値が安定しないと判定された場合には、方法は、ブロック9015に進み、1kHzインピーダンスの大きさに基づいて更なる判定を行う。具体的には、1kHz実数インピーダンスのフィルタリング値及び未フィルタリング値の両方が7,000Ω未満である場合には、EISは、安定であるとして設定される(9020)。一方、1kHz実数インピーダンスのフィルタリング値と未フィルタリング値の両方が7,000Ωではない場合には、EISは、不安定であるとして設定される(9025)。上記の7,000Ωの閾値が、安定化されていないセンサに対してデータのブランク表示、又はセンサ停止を防止することに留意されたい。
EISが安定しているとき、アルゴリズムは、ブロック9030に進む。ここで、1kHz実数インピーダンスが12,000Ω未満(9030)、かつ10,000Ω未満(9040)でもある場合には、アルゴリズムは、センサが正常動作範囲内にあると判定し、そのため、センサデータの表示を継続させる(9045)。一方、1kHzの実数インピーダンス値は10,000Ωよりも大きい(即ち、1kHzの実数インピーダンスが10kΩと12kΩとの間の場合)は、ロジックは、1kHzの実数インピーダンス値が過去3時間にわたって高かった(即ち、10kΩ超であった)かどうかを判定する(9050)。1kHz実数インピーダンス値が過去3時間に高かったと判定された場合には、センサが引き抜かれたと推定されるため、センサは、9060で停止し、センサデータは無効であるとレンダリングする。そうでない場合には、単なるセンサ信号のドリフトかもしれず、上記で議論されたように、回復可能な現象であり得ることから、センサは、停止されない。しかしながら、センサデータは、ブランク表示され(9055)、その一方で、センサは、回復する機会を与えられる。
なお、更なる実施形態では、データをブランク表示すべきか又はセンサを停止すべきかを決定する際、ロジックはまた、上述した閾値に加えて、例えば、インピーダンス導関数を履歴導関数と比較することによって、インピーダンスの急激な増加を考慮してもよいことに留意されたい。更に、アルゴリズムは、高ノイズ−低センサ信号組み合わせの持続時間に応じて、ノイズに基づくブランク表示又は停止を組み込んでもよい。この点で、先行の方法は、高ノイズ及び低センサ信号の3つの連続する2時間ウィンドウの後にセンサの停止を含んでいた。しかし、信頼できないデータがユーザに表示されないようにするために、本発明の実施形態は、ノイズに基づくブランク表示を使用し、このアルゴリズムは、高ノイズ及び低信号を伴う2つの連続する2時間ウィンドウ後(即ち、第3の連続ウィンドウの開始時)にSG値の計算を停止する。更なる態様では、アルゴリズムは、センサ信号が回復したと考えられる場合に、2時間ではなく、1時間のブランク表示の後に、更なる計算及び計算されたSG値の表示を可能にしてもよい。これは、長い時間にわたって信頼できるデータがブランク表示されてしまう方法に対する改良である。
一方、突然のセンサ故障を検出するために1kHz実数インピーダンスを使用してもよく、より高い周波数(例えば、8kHz)での虚数インピーダンスの測定は、センサ感度が一般的な感度から顕著にドリフトしているより漸進的な変化を検出するために用いられてもよい。この点に関して、8kHz虚数インピーダンスにおける大きなずれが、センサがグルコース感度における大きな変化を経験した又は安定しなくなったことを一般的に意味することが発見された。
図106は、本発明の実施形態に従ったセンサ停止の方法のフロー図を示す。図106に示すように、アルゴリズムは、よりロバストなロジックを提供するために、(センサ起動から)1.5日の基準を使用し、ロジックが長期の感度変化に焦点を当てることを保証する。したがって、センサが少なくとも1.5日動作していない場合(9002)、動作は行われず、アルゴリズムは、「待機する」(9012)、即ち、ステップ9002に周期的にループバックする。ブロック9002の条件が成立すると、基準虚数インピーダンス値が設定されているかどうかを判定する(9022)。基準値が予め設定されていない場合、アルゴリズムは基準値として、センサ初期化からの最小8kHz虚数インピーダンス値を割り当ることによって基準値を設定し(9032)、−1,000Ω〜800Ωの範囲内でクリッピングする(clip)。基準値が設定された状態で、変化値は、基準値と8kHzの虚数インピーダンスの現在値との間の差の絶対値として計算される(9052)。ブロック9062では、アルゴリズムは、連続する2つの測定について、その変化値が1,200Ωよりも大きいかどうかと共に、較正比率が14よりも大きいかどうかを判定する。後者要件のうちの少なくとも1つが負で応答された場合には、センサは、動作を継続し、SG値を表示することが可能である(9072)。しかし、変化値が連続する2つの測定値に対して1,200Ωよりも大きい値であり、かつ較正比率が14よりも大きい場合には、センサは、ブロック9082で停止する。
本発明の実施形態はまた、センサグルコース値の信頼性の評価と共に、SGがユーザに表示されているときにシステムがどの程度の信頼性なのかをユーザ及び自動インスリン送達システム(閉ループシステムにおけるものも含む)に提供するために、センサデータ誤差方向の推定にも関する。センサデータの信頼性に応じて、次いで、このような自動化システムは、対応する重みをSGに割り当てることができ、ユーザにどの程度積極的に治療を提供すべきかを決定することができる。加えて、誤差方向はまた、SGが「擬似低」値又は「擬似高」値であることに関連してユーザ及び/又はインスリン送達システムに通知するために使用することができる。上記のことは、例えば、1日目の間にセンサデータにおけるディップを検出すること(EISディップ検出)、センサ遅延を検出すること及びより低い周波数(例えば、10Hz)のインピーダンス変化によって達成されてもよい。
具体的には、本発明の実施形態によれば、上記約9mg/dL/nAの較正係数(CF)が低いセンサ信頼性を示す恐れがあり、そのため、より高い誤差の予測値を示すことが発見された。したがって、この範囲の外側のCF値は、グルコース感度異常、信号におけるディップ中に生じた較正、BG情報の入力遅延又は較正時の高い変化率、較正時のBG誤差及びグルコース感度の過渡的変化を有するセンサ、のうちの1つ以上を全般的には示してもよい。
図107は、本発明の実施形態に従った信号ディップ検出方法のためのフロー図を示し、未フィルタリングの1kHzの実数インピーダンスにおける増加は、ディップの開始を識別するために低いIsig値と組み合わせて使用してもよい。図に示すように、ブロック9102で、ロジックは、センサデータが信号ディップに起因して現在ブランク表示されているかどうかを判定する。データがブランク表示されていない場合には、ロジックは、センサが起動してから4時間未満が経過したかどうかを判定する(9104)。センサが起動してから4時間を超えて経過した場合には、ロジックは、センサが起動してから12時間を超えて経過したかどうかを判定し(9106)、その場合、ディップ検出もデータのブランク表示もないこととなる(9108)。したがって、この点に関して、方法は、センサデータの最初の12時間中に過渡ディップを識別することに関する。
ブロック9106を再び参照すると、センサが起動してから12時間未満が経過した場合には、問い合せは、直近のEIS、Isig及びSG値に関して行われる。具体的には、ブロック9110では、(1kHzにおける)最も直近の2つの実数インピーダンス値が増加し、Isig<18nAかつSG<80mg/dLである場合には、アルゴリズムは、ディップの開始が検出されたと判定し、SG値の表示を停止するようにシステムに通知する(9112)。一方、全ての上記条件が満たされていない場合には、ディップ検出もなく、データのブランク表示も行われないこととなる(9108)。
ブロック9104で、センサが起動してから4時間未満が経過したと判定された場合には、センサディップ事象は、依然として引き起こされてもよい。具体的には、最も直近の2つのEIS(即ち、1kHzのインピーダンス)値が増加し、かつIsig<25nAである場合には、アルゴリズムは、ディップの開始が検出されたと判定し、SG値の表示を停止するようにシステムに通知する(9114、9116)。しかし、最も直近の2つの1kHzのインピーダンス値が増加せず、かつIsigが25nA未満ではない場合には、上記のようにディップ検出もなく、データのブランク表示も行われないこととなる(9108)。
ブロック9102を再び参照すると、データがディップに起因しての現在ブランク表示されていると判定された場合には、データがそれにもかかわらず表示されることとなるという可能性が依然としてある。即ち、Isigがディップ事象の開始時のIsigの約1.2倍よりも大きい場合には(9118)、Isigが回復した、即ち、ディップ事象が終了したと判定され、データ表示が再開することとなる(9122)。一方、Isigがディップ事象の開始時のIsigの約1.2倍よりも大きくない場合には(9118)、Isigがまだ回復していない、即ち、ディップ事象が終わっていないと判定され、システムは、センサデータのブランク表示を継続することとなる(9120)。
本発明の実施形態によれば、SGにおける誤差の方向(過小読み取り又は過大読み取り)は、一般的に、過小読み取り及び/又は過大読み取りに関する1つ以上の因子を考慮して判定してもよい。したがって、センサにおける過小読み取りは、(1)Vcntrが極端であるとき(例えば、Vcntr<−1.0V)、(2)CFが高いとき(例えば、CF>9)、(3)(例えば、10Hzにおける)より低い周波数のインピーダンスが高いとき(例えば、実数10Hzインピーダンス>10.2kΩ、(4)FDCが低CFモードにあるとき、(5)センサ遅延が過小読み取りを示唆するとき、(6)(例えば、10Hzにおける)より低い周波数のインピーダンスが増加するとき(例えば、10Hzインピーダンスが700Ωを超えて増加する)、及び/又は(7)EISがディップを検出したときに、生じる恐れがあることが発見された。一方、過大読み取りは、(1)(例えば、10Hzにおける)より低い周波数のインピーダンスが減少するとき(例えば、より低い周波数のインピーダンス<−200Ω)、(2)センサ遅延が過大読み取りを示唆するとき及び/又は(3)CFが極端モードにあるFDCのときに、生じる恐れがある。
このような過小読み取り又は過大読み取りは、特に閉ループシステムでは、患者の安全性に対して多大な影響を有する可能性がある。例えば、低血糖範囲(即ち、<70mg/dL)付近の過大読み取りは、患者に投与されることとなるインスリンの過剰投与を引き起こす恐れがある。この点で、試験判定基準として使用されてもよい、誤差方向の複数の指標が特定されており、(1)低感度指標、(2)センサ遅延、(3)FDCモード及び(4)較正後の感度の損失/上昇を含む。
そのような2つの低感度指標は、高い(より低い周波数の)実数インピーダンス(例えば、>10kΩ)及び高いVcntr(例えば、Vcntr<−1.0V)であり、両方とも、一般的に、感度の損失を示す。図108Aは、時間の関数としてVcntr9130が徐々に増加する(即ち、より負になる)例を示す。約115時間では、直線9135によって示すように、Vcntrは、直線9137によって示されるように、−1.0Vと交差し、約−1.2Vまで増加し続ける(即ち、Vcntr<−1.0V)。示すように、約115時間の前では、Isigトレンド9132は、Vcntrトレンドに全般的に追従している。しかし、Vcntrが閾値を通過すると(即ち、直線9135の右)、Isigは、Vcntrから外れて、落ち込み続ける。同時に、図108Bに示すように、グルコース9134もまた全般的に下向きの傾向を有しており、較正誤差9136は、約130時間及び約165時間に示されている。
上記で議論したように、(EIS)センサディップもまた一時的な感度損失を示す。同様に、高い較正係数は、感度低下を補償しようとするセンサの試みを示す。図109A及び図109Bに示した一例では、較正係数9140は、時間の関数として定常的に増加する。約120時間(9145)では、較正係数9140は、9である閾値(9147)と交差する。図109Bに示すように、較正係数が閾値と交差すると、グルコース値9142は、BG値からより頻繁に離脱し、いくつかの誤差9144は、約135時間〜170時間に発生する。
上述したように、センサ遅延は、誤差方向の別の指標である。したがって、本発明の実施形態では、センサ遅延によって生じる誤差は、グルコース値があるべき値に近づけることによって補償される。具体的には、本発明の実施形態では、センサ遅延由来の誤差は、下式のように定義することによって近づけてもよい。
式中、sg(t)は、センサグルコース関数であり、「h」は、センサ遅延である。次いで、誤差は、下式のように計算してもよい。
初日較正(FDC)は、較正係数(CF)が予想範囲内にないときに生じる。CFは、例えば、図110A及び図110Bに示すように、較正により示された値に設定され、次いで、予想範囲に対して上昇又は下降する。この時間中、通常は高いが、全般的には予測可能である、誤差が存在する場合があり、過大読み取り又は過小読み取りをもたらす可能性がある。図110A及び図110Bからわかるように、CFは、上昇又は下降に伴って全般的に一定の勾配で変化した後、この場合は4.5又は5.5で整定する。
最後に、較正後の感度変化、即ち、較正以降の感度の損失/上昇も、誤差/誤差方向の指標である。通常の状況の下で、本明細書の上記で議論されているように初日較正を除いて、較正係数は、新たな較正を行うまで全般的に一定のままである。したがって、較正後の感度のシフトは、より低い周波数(例えば、10Hz)の実数インピーダンスの値によって反映されてもよい、過大読み取り及び過小読み取りをもたらす可能性がある。
具体的には、より低い周波数の実数インピーダンスにおける低下が過大読み取りをもたらし、誤差の方向が実数インピーダンス曲線によって示されることが発見された。逆に、より低い周波数の実数インピーダンスの増加は、過小読み取りをもたらし、誤差の方向もまた実数インピーダンス曲線によって示される。しかし、電流方向性試験は、グルコースプロファイルのピーク及び谷における点をすぐに読み取ることができない場合もある。したがって、一実施形態では、例えば、ローパスフィルタリングによるデコンボリューションなどのフィルタリングにより、このようなピーク及び谷の鮮鋭度を低減してもよい。
図81に関連して上述されたように、例えば、感度変化及び/又は損失を用いて、適切なセンサ較正を通知してもよい。この点で、本発明の更なる態様では、センサ感度における変化は、例えば、センサ感度が変化したときに、アドレス連続生成及び/又は不正確なグルコースデータの表示に役立つ「スマート較正」の実施を可能にするように、以前の較正係数又はインピーダンスに基づいて予測されてもよい。
いくつかの既存の連続的グルコース監視システム(CGMS)では、較正フィンガースティックが12時間毎に必要であることが既知である。較正は、測定したセンサ電流を表示されたグルコース濃度値に変換するために使用される機能をCGMSが更新できようにする。このようなシステムでは、12時間の較正間隔は、(余分なフィンガースティックを行う)ユーザの負担を軽減することと、不正確性が過大な問題をもたらす可能性がある前にセンサ感度における変化を調整するために十分な間隔を使用することと、を両立させるものとして選択される。しかし、この間隔は、一般的に適切であってもよいが、センサ感度が変化した場合、(閉ループインスリン送達の支援において)高レベルの精度が予想される場合には、12時間を待つことが長すぎる可能性がある。
したがって、本発明の実施形態は、感度が変化した場合に予測するために、前回の較正係数を用いて(以下のFDCの議論を参照されたい)又はインピーダンス(以下のEISベースの「スマート較正」に関する議論を参照のこと)によって、上記の問題に対処する。本発明の態様はまた、ユーザの予測可能性を維持するために時間制限を使用すると共に、センサ間の変化に対して検出がロバストであることを保証する(関連する方法における)ステップを含む。
図111は、初日較正(FDC)に関して本発明の実施形態に従ったフロー図を示す。ブロック9150で開始して、較正が成功した後にFDCがオンでない場合、スマート較正要求は単に行われない(9151)。しかし、FDCがオンの場合、これが初回較正であるかどうかについてブロック9153において判定が行われ、初回較正ではない場合には、スマート較正要求が行われ、タイマは、6時間に設定される、即ち、追加較正を6時間以内に行うことが要求される(9155)。一方、これが初回較正である場合には、ブロック9157は、較正比率が4未満又は7よりも大きいかどうかを判定する。ブロック9157における条件が満たされない場合には、ロジックは、ブロック9155に進み、上述のように、スマート較正要求が行われ、タイマは、6時間に設定される。しかし、ブロック9157における判定基準が満たされない場合には、スマート較正要求が行われ、タイマは、3時間に設定される、即ち、追加較正を3時間以内に行うことが要求される(9159)。したがって、調整された較正を必要とするセンサの精度を向上させるために、追加(スマート)較正が要求され、調整が不正確である時間の量を限定する。
FDCモードとは対照的に、EISベースのスマート較正モードは、インピーダンスが変化する場合に追加較正を提供する。したがって、図112に示す本発明の実施形態では、インピーダンス値に関する許容範囲(本明細書で以下に定義されるように)は、較正後の時間に設定され、較正に続いて、インピーダンスが範囲外である場合、追加較正の要求が行われる。したがって、較正から1時間以内ではない場合、フィルタリングされた1kHzの虚数インピーダンス値が範囲外であるかどうかについて判定が行われる(9160、9162)。インピーダンス値が範囲外でない場合には、変更を行わない(9164)。しかし、フィルタリングされた1kHzの虚数インピーダンス値が範囲外である場合には、前回の較正から6時間で行うために較正が要求されるように較正タイマを更新する(9168)。周波数スペクトルのより高い端に向かって、より高い周波数の虚数インピーダンスは、グルコース感度における変化をより良好に識別する傾向があるが、測定は、全般的にはよりノイズを含み、そのため、フィルタリングを必要とする場合があることに留意されたい。
ブロック9160を再び参照すると、較正から1時間未満が経過したと判定した場合には、インピーダンス値の範囲を更新してもよい(9166)。具体的には、一実施形態では、インピーダンス範囲計算は、較正後1時間の最後のEIS測定について実行される。好ましい実施形態では、この範囲は、下式のように定義される。
範囲=3×中央値(|xi−xj|)
式中、jは、現在の測定値、iは、直近の2時間の値である。加えて、範囲を50Ω〜100Ωの値に制限してもよい。上記で定義したような範囲は、中央値の3倍が可能であることに留意されたい。後者は、いくつかの先行アルゴリズムで使用された2標準偏差アプローチよりもロバストであることが発見され、ノイズ及び異常値が不一致をもたらすことを許容した。
本明細書で詳述しているように、ほとんどの連続的グルコースセンサ監視(CGM)システムは、較正のためにフィンガースティック血糖測定を必要とする。リアルタイムシステムでは、データ出力の時点で、感度又はセンサ異常などのセンサ挙動の変化を判定することは困難なことがある。したがって、センサ精度を保証するために、フィンガースティック測定を使用する較正が必要とされる。しかしながら、フィンガースティックを使用する較正は、痛みを伴うだけでなく、ユーザにとって面倒である。したがって、実施形態は、本明細書で詳細に前述したASICの使用を含む、連続的センサ記録装置のための遡及的無較正アルゴリズムを目的としている。この点に関して、EIS関連アルゴリズム及び較正に関して前述したように、本明細書の文脈において、「無較正」という用語は、特定のセンサが全く較正を必要としないことを意味するものではない。むしろ、センサが、追加のフィンガースティック又は計器データを必要とせずに、センサ記録装置に保存されるデータに基づいて自己較正することができることを意味する。したがって、遡及的システムについて、基準を提供するためのフィンガースティック測定の必要性をなくすことができる。
遡及的センサシステムは、処理及びグルコース値への変換前にアルゴリズムが使用するために利用可能な未加工信号の全トレースを有する能力を有する。具体的には、センサ記録装置は、例えば、Isig及びVcntr、並びに診断のためのEISデータなどの、未加工信号を記録することができる。図113に示すように、遡及的アルゴリズムは、いくつかの処理成分を含んでよく、これには、(1)未加工Isig信号の処理(9205、9210)、(2)未加工Isig信号の離散ウェーブレット分解(9215)、(3)未加工EIS信号の処理(9230、9235)、(4)機械学習方法からの異なるモデルに基づくセンサグルコース(SG)の生成(9240、9245)、(5)異なるモデルからのSG値の融合(9250)、(6)選択的フィルタリング(9263)、及び(7)SGのブランク表示(9255、9260)が挙げられる。
未加工Isig信号の処理は、アーチファクト及びノイズの多い信号などのいくつかの異常を取り扱うために、統合かつ単純化された機能を用いることができる。加えて、信号の平滑化(9220)は、重み付き線形最小二乗法を用いた局所回帰の多項式モデルを使用することによって達成され得る。外れ値の影響は、より少ない重みを割り当てることによって低減される。遡及的処理により、局所回帰を前後データで行うことができ、平滑化は、ほとんどのリアルタイムフィルタリングで見られるような位相遅延がない。平滑化に続いて、ノイズの計算が行われる。ノイズの計算(9225)は、未加工信号と平滑化信号との差を評価すること、及び雑音対信号比が高い規定窓内のデータの割合を計算することに基づく。EISデータはまた、同様の遡及的平滑化機能を使用して平滑化されてもよい(9235)。EISデータの平滑化後、EISデータは、Isigデータのタイムスタンプに一致するEISデータを生成するように補間され得る。
一実施形態では、未加工Isig信号に離散ウェーブレット変換を適用してよい(9215)。変換操作は、Isig信号をいくつかの所定のレベルに分解する。各レベルにおいて、アルゴリズムは、近似信号及び詳細信号の係数を生成し、近似は信号の高スケール、低周波数成分であり、詳細は信号の低スケール、高周波数成分である。近似信号では、より低レベルの近似は短期変動を捕捉し、より高レベルの近似は長期傾向を捕捉する。離散ウェーブレット変換はまた、信号の感度損失を有する領域を識別するのに有用なツールとして使用され得る。
機械学習技術は、例えば、測定された信号(例えば、Isig、Vcntr、EISなど)の関数として信号をSG値に変換するためのモデルの生成に使用され得る(9240)。実施形態では、遺伝的プログラミング(GP)、人工ニューラルネットワーク(NN)、及び回帰決定木(DT)を含む、3つの特定技術を使用してよい。訓練データセットを生成するために、血糖(BG)測定値、並びに関連Isig、Vcntr、ウェーブレット、及びEISデータ点を抽出する。生成されるモデルを改善するために、データの前処理も行うことができる。前処理ステップとしては、時間が近いデータ点の数を低減すること、ある血糖範囲内の点の分布を調整してその(BG)範囲での偏重を低減すること、及び外れ値を除去して高変動のBG点を低減/排除することが挙げられる。
遺伝的プログラミング(GP)は、生物進化を模倣する規則に基づく。基底関数、入力、及び定数を組み合わせることにより、初期モデル母集団を生成する。モデルは樹状に構造化され、基底関数は入力のノードを関連付ける。アルゴリズムの各世代(繰り返し)において、比較的成功した個体を次世代の「親」として選択し、複製プールを形成する。交差、突然変異、及び置換の3つの可能な演算子のうちの1つを使用して、解の新世代が進化する。停止基準が達成されるまで、手順が繰り返される。一実施形態では、訓練結果の例として、以下が挙げられ得る。
GP1:
sg=(u2.*−0.083513−0.48779.*((u1+0.11432.*u6).*u33))−0.30892
GP2:
sg=(u4.^2−0.55328*u4−0.46565*u45−1.5951*u2)*0.13306+0.88185*u1−0.40782
GP3:
sg=((u4.^2).^2−7.8567*(u2+0.33071*u43))*0.02749+0.88109*u1−0.38492
式中
・u1:Isig
・u2:Vcntr
・u4:4KHz Real
・u6:1KHz Real
・u9:128Hz Real
・u33:40Hz Imag
・u43:0.4Hz Imag
・u45:0.16Hz Imag
ニューラルネットワークは、並列に作動する単純な要素から構成される。これらの要素は、生物学的神経系によって着想されている。本来は、要素間の接続が主にネットワーク機能を決定する。ニューラルネットワークモデルは、要素間の接続(重み)の値を調整することにより、特定の機能を実行するように訓練される。バックプロパゲーション(BP)ニューラルネットワークアルゴリズム、エラーバックプロパゲーションアルゴリズムに従って訓練された多層フィードフォワードネットワークを使用してもよく、例えば、Isig、Vcntr、EIS、ウェーブレット、持続時間(即ち、センサ挿入からの時間)などを含む入力を用いて、BG出力を生成する。
決定木では、モデルはいくつかのノードから構成され、そこで母集団の分割が生じ、出力はいくつかの回帰モデルから構成される。数値予測のために、回帰木を使用してもよく、次いで回帰木は、測定された入力(例えば、Isig、Vcntr、EIS、ウェーブレットなどを含む)を使用して、訓練における出力としてBGを生成する。最初に、開始木が上から下に構築される。各ノードにおいて、変数における決定が行われ、部分集合に分割される。分割は、各ノードの純度を最大化することに基づく。底部における結果は葉であり、それぞれの葉は、SGを入力変数に関連付ける線形モデルである。分割数を低減するために、枝刈りを行うことができる。
図114は、決定木の例を示す。ブロック9302において、測定されたIsigをもって開始して、測定されたIsig値が≦34.58nA(9304)、又は>34.58nA(9306)であるかどうかに関する判定(即ち、決定)が行われる。後者が真である場合、Isig値が≦48.82nA(9304)、又は>48.82nAであるかどうかに関する更なる決定が行われる。前者が真である場合、ブロック9320に示すように、SGは線形モデル(LM5)に従って計算され得る。一方、Isigが>48.82nAである場合、ブロック9322に示すように、SGは異なる線形モデル(LM6)に従って計算され得る。
Isigが≦34.58nAであるとき、ブロック9304に戻って、Isigが≦19.975nA(9308)であるかどうかに関する更なる決定が行われる。次に、Vcntr≦−0.815Vである場合、第1の線形モデル(LM1)が用いられる(9312)。そうでない場合には(即ち、Vcntr>−0.815V)、第2の線形モデル(LM2)が用いられる(9314)。一方、Isig>19.975nAの場合、ブロック9310において更なる決定が行われる。ここで、ウェーブレット10(w10)≦27.116の場合、第3の線形モデル(LM3)が用いられる(9316)。ただし、ウェーブレット10>27.116の場合、第4の線形モデル(LM4)がSGの計算に用いられる(9318)。
SGの融合を実行して、単一の出力SGを生成してもよい。本明細書で上述したように、融合は、様々な入力に基づいてSGのそれぞれに重みを割り当て、次いで出力を組み合わせることにより行うことができる。本発明の好ましい実施形態では、このような入力としては、EIS、Isig、持続時間、及びウェーブレットが挙げられ得る。信号融合の他の方法も利用することができる。
本発明の実施形態では、最終SGにおいてデータのブランク表示を実行し、信頼できない信号の表示を阻止することができる。ノイズに基づくブランク表示は、ノイズレベルに閾値を設定し、閾値を上回るデータをブランク表示することにより行われる。EIS、Isig、Vcntr、ウェーブレット、並びに他の要因に基づくブランク表示も実行することができる。決定木はまた、様々な入力を組み合わせるブランク表示モデルを生成するために使用され得る。例えば、決定木は、訓練セット内の「良好」又は「不良」点を識別するために使用されてよい。本発明の一実施形態では、閾値を(感度損失の良好な指標として)較正比率に設定してもよく、閾値を上回る較正比率を有する点を「不良」点として識別する。
図115は、入力としてIsig、Vcntr、及び2つのウェーブレット(w7及びw10)を有する訓練結果の例を示す。w7が第1の閾値以下であり、かつVcntrが第2の閾値より大きい場合、信号が表示され得る(9350、9352、9356)。ただし、Vcntrが第2の閾値以下である場合、信号はブランク表示されるであろう(9354)。決定木の右側に示すように、w7が第1の閾値より大きく、かつw10が第3の閾値より大きい場合、信号が表示され得る(9358、9362)。同様に、w10が第3の閾値以下であるが、Isigが第4の閾値より大きい場合、信号は依然として表示され得る(9360、9366)。更に、w10が第3の閾値以下であり、かつIsigが第4の閾値以下であるが、Vcntrが第5の閾値より大きい場合、信号は依然として表示され得る(9360、9364、9370)。ただし、Vcntrが第5の閾値以下である場合、信号はブランク表示されるであろう(9368)。
本明細書の実施形態では、外れ値検出アルゴリズムを診断ツールとして使用してよく、これにはデータの融合、選択的フィルタリング、及びブランク表示が挙げられる。具体的には、融合アルゴリズムは、近似誤差の差に基づいて、例えば、決定木(DT)アルゴリズム及び遺伝的プログラミング(GP)からのセンサグルコース値を融合し得る。選択的フィルタリングは、融合されたSG値及びスパイク除去のフィルタリングを伴う。ブランク表示アルゴリズムは、近似誤差予測に基づき得る。
より具体的には、上述の融合アルゴリズムは、DT及びGPのそれぞれがより良い性能のそれぞれの領域を有するため、各BG点において決定木の絶対相対差(ARD)と遺伝的プログラミングのARDとの差を検討することを含み得る。次いで、パラメータ、入力、及びパラメータの関数(例えば、SG、CR、虚数インピーダンス、実数インピーダンス、ノイズ、変化率、センサ利得、累積Vcntrレイル時間などを含む)の線形回帰の組み合わせによって、差を一致させる。したがって、例えば、
であり、式中、パラメータリスト及び重みは、DT及びGPの繰り返し毎に更新される。パラメータ及び係数の最終セットが得られるまで、最低感度の除外に基づいて、パラメータは1つずつ自動的に取り除かれる。次いで、SG値の重み付き平均を生成するために、予想差がDT及びGPの重み([0,1])に変換される。
選択的センサグルコース(SG)フィルタリングは、SGのノイズの多いセグメントをブランク表示するのではなく平滑化することができ、その結果、SG表示は途絶せずに継続することができる。したがって、選択された区分は、高ノイズで作動するフィルタを使用して平滑化され得る。この点に関して、一実施形態では、SGにおけるスパイクは、第2の導関数によって検出されて除去されることができ、SGは、例えば、12点ローパス無限インパルス応答(IIR)フィルタによって、信号対雑音比(SNR)が低い点で選択的に平滑化される。
上述したように、ブランク表示アルゴリズムは、近似誤差予測、即ち、各点における誤差のモデル予測に基づくことができる。この点に関して、係数重みは、訓練データ内の各BG点においてモデルをARDに適合させることによって生成され得る。したがって、
であり、式中、SGは、予想ARDが閾値を上回るときにブランク表示される。図116は、近似誤差予測に基づいてブランク表示アルゴリズムで使用され得るパラメータの例を示す。図117に示すように、診断ステップは、MARDを徐々に減少させてコンセンサスを高めながら、同時にブランク表示後にセンサ表示度が約98%の高いままであることを確保している。
いくつかの実施形態では、前述のアルゴリズムはまた、リアルタイムシステムに適用されてもよく、リアルタイム情報(例えば、Isig、Vcntr、ゼロ次ホールドを有するリアルタイムEISなど)を入力として使用してもよい。遡及的アルゴリズムとは対照的に、補間されたEIS又はウェーブレットを使用しないリアルタイムアルゴリズムが生成され得る。
本明細書で上述したように、グルコース値推定の計算負担を軽減するために、グルコース検知システムは、血糖(BG)とセンサ電流(Isig)値との間に直線関係が生じることを目標とし、それによって、その比率が、所望の全てのグルコース濃度に対して、以下のように表される一定の較正係数(CF)をもたらす。
CF=BG/(Isig+オフセット)
ここで、「オフセット」は、想定される一定のセンサバイアスである。グルコース検知が間質液からの測定値に基づく場合、血液から間質液へのグルコースの移動における遅れの累積的影響と、疑似センサ測定ノイズとが、時変較正係数及び「オフセット」、並びに以下のように線形近似され得るより複雑なセンサ感度関係をもたらす。
SG=CF(Isig+オフセット)+εs
式中、SGは、センサグルコース値であり、εsは、ランダムな時変センサ誤差を表す。基準BG濃度は、通常、フィンガースティック手順を用いて測定される。一般に、この測定値は、予測誤差値(εP)による、BGとIsigとの線形関係によって示唆されるSG値とは異なる。即ち、
BG=SG+εP
SGと物理センサ電流出力であるIsigとの間には、一次遅れも存在する。したがって、
式中、τは、SGとIsigとの動的関係を特徴付ける動的時間変数である。τは、センサの種類、患者の生理機能、センサ挿入位置、着用時間、及び他の変数によって変化し得るため、正確にはわからないことに留意されたい。
本明細書における発明の実施形態は、Isig、電気化学インピーダンス分光法(EIS)、対電極電圧(Vcntr)、及び着用時間の値、並びにモデルτ及び予測誤差値εPに対するそれらの傾向値を組み合わせる論理を含む、モデリングアルゴリズムを使用することができる。モデリング処理によって生成された予測誤差εPの推定値は、モデル推定誤差、又はεMと呼ばれる。予測誤差εpとモデル推定誤差εMとの差は、残留誤差、即ちεRである。残留誤差は、モデリング処理によって捕捉されず、εMに組み込まれない、予測誤差εPの部分である。言い換えれば、
εP=εM+εR。
モデリング処理がεPの推定においてより良好であると、残留誤差εRの値が低くなり、得られる予測モデルがより正確になるであろう。したがって、典型的には、
εR≪εP。
SGのモデリングにおける成功は、εRの低減において達成された成功によって測定することができる。複数のモデリングオプションの中から選択するとき、製造及び使用のばらつきによるセンサ感度及び系統的検知バイアスの動的変化をより良く補正しやすいことから、比較的低いεRを生成するモデルが優先される。
本明細書の実施形態では、様々な機構によって誤差低減を達成し得る。以下により詳細に記載するように、一実施形態では、例えば、複数の独立したセンサグルコース計算ユニット(例えば、4つ)を使用することができ、各ユニットは、バイオファウリング、異物応答、非線形センサ応答曲線(特に低血糖時)、並びに化学層安定化及び整定時間の変化などの要因によって引き起こされるグルコース検知応答における非線形性を様々に考慮した間質グルコース検知の別個の動的モデルを実装してよい。実施形態では、外部較正モジュールを使用して、グルコースセンサの較正に使用するために外部生理学的測定(PM)及び/又は環境測定(EM)が利用可能かどうかを判定し、利用可能な場合に、PM及び/又はEMを、SG値の計算に組み込まれ得る修正係数に変換することができる。したがって、本明細書における発明の実施形態は、SG計算の調整を可能にし、ユーザの環境及び生理機能の変化をリアルタイムで考慮することができる。
図118は、前述の外部較正モジュールからの修正係数が、SG計算とその後の融合の前に、独立したセンサグルコース計算ユニットに個別に適用され得る実施形態を示しており、それぞれのセンサグルコース計算ユニットは、SG計算のためにそれぞれのモデルを含み得る。一方、図119は、個々のSG値が最初に最終(融合)SG値に融合され、その後、外部較正モジュールからの修正係数が融合SGに適用される別の実施形態を示す。SG値は、本明細書で前述した融合アルゴリズムのうちの任意の1つ以上を使用して融合され得ることに留意されたい。
より具体的には、図118でブロック9401に示すように、センサエレクトロニクスから受信された未加工データは、例えば、電気化学インピーダンス分光法(EIS)測定値、Isig値、及び対電極電圧(Vcntr)値、並びにそれらの傾向情報を含む、情報を抽出するように最初に前処理される。次いで、ブロック9401の出力に基づいてSG値を計算するために、1つ以上の(無較正、SG予測)モデル9405〜9408が使用される。本明細書の図にはこのようなモデルを4つ示しているが、より少ない又はより多くのモデルを使用できることに留意されたい。
図118に示すように、4つのモデルのそれぞれは、外部生理学的及び/又は環境要因から得られる較正係数9403を入力として使用し、複数のモデル9405〜9408のそれぞれを介してそれぞれのSG値を計算することができる。ブロック9411において、複数の個々のSG値が融合されて、最終的な、較正された、単一の(融合)SG値を生成する。ブロック9413では、融合SGにおいて診断が実行され、誤差を検出及び(可能であれば)補正し、その後、ブロック9415において、(補正された)最終SGが(例えば、グルコースセンサのユーザに)表示され、及び/又は(例えば、受信装置へ)送信されて、治療に使用され得る。ただし、補正が不可能な場合、融合SG値は、ユーザに表示されず、かつ/又は治療に使用されないように、ブランク表示されてよい。図119は、図118と同様であるが、ただし、ブロック9416における融合処理時に、外部生理学的及び/又は環境要因から得られた較正係数(ブロック9417)が適用されることを除く。更に、実施形態では、較正されたSG値を計算する前に、融合SG値にフィルタを適用してよい。
図120は、本明細書における発明の実施形態で使用される4つのモデルのそれぞれの背後の概念、実装、及び主要な前提を説明する。いくつかの実施形態では、様々な血糖及び着用時間範囲にわたるBGとIsigとの関係を表すグルコース感度マップは、非線形であると予想される。したがって、感度をモデリングすることは、センサ感度マップを推定することεS、検知モデルを実装することεI、及びモデルパラメータを調整するために使用される訓練サンプルの代表性の欠如を克服することεT、から生じ得る残留誤差成分を低減するアルゴリズムを開発することを含む。次いで、モデリング処理からの残留誤差εRを、これらの誤差の関数として説明することができる。
εR=f(εS,εI,εT)
本明細書における発明の実施形態では、動的検知モデルは、互いに異なるように、またほぼ同じ残留誤差εRの値をそれぞれ生じるように選択され、長所と短所の固有のパターンを示す。したがって、モデルの長所は、互いに増補し、集団の潜在的な短所を軽減する。
ランダムに選択されたセンサについて、図121は、4つのモデルのそれぞれが最良に機能する領域を示した注釈付きのセンサプロットを示す。図118及び図119に関連して上述したように、検知ユニット(例えば、センサ)のそれぞれの出力を混合して、ブロック9411及び9416における最終的な融合センサグルコース値と、ブロック9413における計算値の信頼度の測定とを提供してよい。
本明細書の実施形態では、融合センサグルコース値における信頼度、即ちC
SGは、ブロック9411、9416、及び/又は9413内の様々な機構により計算され得る。以下により詳細に記載するように、一実施形態では、信頼度の測定は、それぞれの検知ユニットによって生成されたSG値の絶対範囲、即ちR
SGと、実験的に決定された閾値T
Rとの関係から得られ、例えば、以下のようになる。
好ましい一実施形態では、閾値は10mg/dLとして設定され得る。異なる実施形態では、実験的に決定された閾値は、全てのグルコース範囲に対して固定値でなくてもよいが、それぞれの検知ユニットによって生成された値の絶対平均の大きさの一部(例えば、10%)であってもよい。
本明細書でより詳細に記載される別の実施形態では、信頼度の測定は、2つのステップで得られてもよい。第1のステップでは、それぞれの検知ユニットによって生成された値の分散の測定値、例えば、それらの標準偏差、絶対範囲、四分位範囲などは、一般化された正規化分散比、即ちD
SGを得るように、個々の値の平均で除算される。第2のステップでは、信頼度値、即ちC
SGは、D
SGと閾値T
Dとの関係から生成され、例えば、以下のようになる。
好ましい実施形態では、D
SGは、変動係数(検知ユニットによって生成された値の標準偏差をそれらの平均値で除算したもの)であり、閾値は、70mg/dL未満の平均値については15%、70mg/dLを超える平均値については20%に設定された。
図122は、例えば、図118及び図119に関連してそれぞれ前述したブロック9403及び9417に対するものなどの、任意の外部較正アルゴリズムを操作できるようにするための論理フローの実施形態を示す。アルゴリズムは、生理学的測定値(9430)及び/又は環境測定値(9450)を受信し(それらが利用可能な場合)、それらを使用して、そのグルコース推定論理における様々な点でグルコースセンサを較正するために使用できる修正係数MFを生成する。具体的には、9432において、受信された未加工の生理学的測定値(RPM)が有効ではないと(例えば、マイクロコントローラにより)判定された場合、生理学的要因は、外部較正推定を生成する際に無視される(9434)。一方、RPMが有効であると判定された場合、生理学的較正係数(PCF)(又は、複数のPCFが存在する場合はそれらの集約)が計算される(9436)。したがって、アルゴリズムは、受信した1つ以上の有効な生理学的データから生理学的較正係数を計算し、それが有効でない場合にはデータを無視する。同様に、9456において、アルゴリズムは、受信した1つ以上の有効な未加工の環境測定値(REM)から環境較正係数(ECF)を計算する。ただし、9452において、ECFが有効でないと判定された場合、後者は外部較正推定を生成する際に無視される(9454)。
好ましい一実施形態では、RPM及びREM値は、(1)それらが「規則的」である、即ち、実験的に決定された正常範囲内に収まること、及び(2)それらが「使用可能」である、即ち、その値の変動がセンサグルコース値推定に影響すると予想され得るのに十分な情報を提供するとしてシステム及び/又はユーザによって示されること、という2つの条件を満たす場合、有効であると判定される。RPM及びREM値が「使用可能」であることを支持する情報は、ユーザインターフェース、例えば、ポンプのタッチスクリーン、グラフィカルユーザインターフェース、グルコース監視モバイルアプリケーションなどを介してシステムに入力される。
例えば、ウェアラブルデバイスから得られた心拍数測定値を使用すると、毎分75〜155拍動の範囲外の心拍数測定値に関連するRPM値が無効であり、また33〜38℃の範囲外の体温測定値に関連するRPM値も同様に無効であることが、実験により示されている。他の実験では、ウェアラブルデバイスから得られた10〜50℃の範囲外の周囲温度に関連するREM値は無効であることが示されている。この場合、規定範囲外の温度は、センサシステムのエレクトロニクスの適切な動作を妨げるように見受けられた。
実施形態では、RPM及びREM値の集約は、2つのステップを含み得る。第1のステップにおいて、値は(例えば、マイクロコントローラにより)正規化関数を使用して正規化され、例えば、その最小期待量(例えば、毎分75拍動の心拍数、33℃の体温、及び10℃の周囲温度)からそれぞれの値を減算し、その結果を、その期待範囲の大きさ(例えば、毎分155〜75拍動の心拍数、38〜33℃の体温、及び50〜10℃の周囲温度)で除算する。第2のステップにおいて、正規化された値は、考慮されている環境又は生理学的要因に特有のスケーリング関数(例えば、図125及び図126など)を使用してスケーリングされ、スケーリングされた値は組み合わされて集約値を生成する。一実施形態では、組み合わせは、異なるスケーリング値を掛け合わせることによって得ることができる。他の実施形態では、集約は、平均値を決定するか、又は利用可能な値の最大値を選択することによって達成され得る。
図122の9438及び9458にそれぞれ戻ると、PCF及びECFのそれぞれが有効であるかどうかが判定される。好ましい実施形態では、PCF及びECF値は、実験的に決定された上限閾値
及び下限閾値
の較正係数値(例えば、それぞれ0.6及び1.5)の範囲内にある場合、有効であると判定され得る。それぞれの場合において、PCF及び/又はECFのいずれかが有効でないと判定された場合、外部較正推定において無視される(9434、9454)。有効な生理学的及び環境較正係数では、それらのそれぞれの値は融合されて、修正係数MFを生成する(9442)。次に、算出されたMFが有効であるかどうかが判定される(9444)。MFが無効であると判定された場合、9446において無視される。ただし、MFが有効であると判定されると、例えば、図118及び図119に関連して説明したように、全体的なアルゴリズムに適用される(9448)。実施形態では、MF値は、実験的に決定された上限閾値、即ち
及び下限閾値、即ち
の値(例えば、それぞれ0.8及び1.2)の間にある場合に、有効であると判定される。この場合、SGに対する最大許容調整は、環境及び生理学的要因の約20%に見積もられる。
一実施形態では、修正係数MFを計算するためのPCF値とECF値との融合処理(9442)は、それぞれの係数の単純な乗算を含んでよい。したがって、この実施形態では、MFは以下のように定義され得る。
MF=PCF×ECF。
別の実施形態では、組み合わせは、それぞれの係数間の最大値を選択することを含んでよい。ここでは、
MF=ma(PCF,ECF)。
更に別の実施形態では、組み合わせは、2つの係数の平均を選択することを含んでよく、MFは以下のように定義される。
MF=(PCF+ECF)×0.5。
図123及び図124は、PFC及びEFCのそれぞれを生成するための詳細をそれぞれ示す。具体的には、図123Aでは、実例として、活動レベル又は運動状態情報(9460)、心拍数状態情報(9470)、血圧状態情報(9480)、及び体温状態情報(9490)のうちの1つ以上を含む、外部生理学的測定値が受信される。受信されると、生理学的測定値のそれぞれは、有効性に関して個別に評価され、有効である場合、最終的に、例えば、活動レベル係数、心拍数係数、血圧係数、及び体温係数などの独自の固有係数に変換される。次に、全ての有効な測定値から得られた係数を組み合わせて、生理学的較正係数(PCF)を生成する。図123Bを参照されたい。一実施形態では、この組み合わせは、全ての有効な生理学的係数の値を乗算することによって達成される。他の実施形態では、組み合わせは、全ての有効な生理学的係数の値の平均又は最大値を選択することによって達成され得る。
より具体的には、得られた(未加工の)生理学的測定値のそれぞれの値は、最初に正常範囲、あるいは閾値と比較される(9462、9472、9482、9492)。例えば、実施形態では、実験的に決定された体温の正常範囲は、ウェアラブルデバイスによって測定されたとき、33〜38℃であってよい。同様に、心拍数の正常範囲は、ウェアラブルデバイスによって測定されたとき、毎分75〜155拍動であってよい。得られた値がこの比較に基づいて有効であると判定された場合、それぞれの値を使用して、それぞれの生理学的測定値に対する係数が生成される(9463、9473、9483、9493)。得られた値が後者の試験に不合格であった場合、それでもなお値が使用可能であるかどうかが判定され(9465、9475、9485、9495)、その場合、値は依然としてそれぞれの係数の生成に使用される。値は、例えば、ユーザインターフェースの選択によって、その値の変動がセンサグルコース値推定に影響すると予想され得るのに十分な情報を提供することがシステム及び/又はユーザによって示される場合、使用可能であると見なされ得る。ただし、得られた値が使用可能でないと判定された場合、その特定の生理学的パラメータに対する係数は生成されない(9467、9477、9487、9497)。最後に、上述したように、9499において全ての有効な測定値が組み合わされて、生理学的較正係数(PCF)が生成される。
同様に、図124Aに示すように、実例として、周囲温度状態(9510)、周囲圧力状態(9520)、相対高度状態(9530)、及び周囲湿度状態(9530)のうちの1つ以上を含む、環境測定値が受信される。受信されると、環境測定値のそれぞれは、有効性に関して個別に評価され、有効である場合、最終的に、例えば、温度係数、心臓圧力係数、血液高度係数、及び身体湿度係数などの独自の固有係数に変換される。次に、全ての有効な測定値から得られた係数を組み合わせて、環境較正係数(ECF)が生成される。図124Bを参照されたい。一実施形態では、この組み合わせは、全ての有効な環境係数の値を乗算することによって達成される。他の実施形態では、組み合わせは、全ての有効な環境係数の値の平均又は最大値を選択することによって達成される。
より具体的には、得られた(未加工の)環境測定値のそれぞれの値は、最初に正常範囲、あるいは閾値と比較される。(9512、9522、9532、9542)。例えば、実施形態では、実験的に決定された周囲温度の正常範囲は、ウェアラブルデバイスによって測定されたとき、10〜50℃であってよい。得られた値がこの比較に基づいて有効であると判定された場合、それぞれの値を使用して、それぞれの環境測定値に対する係数が生成される(9513、9523、9533、9543)。得られた値が後者の試験に不合格であった場合、それでもなお値が使用可能であるかどうかが判定され(9515、9525、9535、9545)、その場合、値は依然としてそれぞれの係数の生成に使用される。値は、例えば、ユーザの操作によって(例えば、グルコースポンプシステム又はソフトウェアアプリケーション上のグラフィカルユーザインターフェースを介して)、その値の変動がセンサグルコース値推定に影響すると予想され得るのに十分な情報を提供することがシステム及び/又はユーザによって示される場合、使用可能であると見なされ得る。ただし、得られた値が使用可能でないと判定された場合、その特定の環境パラメータに対する係数は生成されない(9517、9527、9537、9547)。最後に、上述したように、9549において全ての有効な測定値が組み合わされて、環境較正係数(ECF)が生成される。
本発明の実施形態では、変換スケールは、上昇又は抑制のいずれかを含み得る。この点に関して、図125は、生理学的及び環境係数の理想的な上昇変換スケールを示す。この文脈において、上昇変換スケールは、特定の生理学的又は環境係数の典型的な範囲を下回る値を増大させ、一方で範囲を上回る値を抑制する。これは、グルコースセンサによって記録される観察された測定値を人工的に増加させ得る生理学的及び環境測定に有用である。本明細書における発明の実施形態では、体温、周囲温度、及び周囲圧力は、このような変換から利益を得られる係数のうちのいくつかである。
図126は、生理学的及び環境係数の理想的な抑制変換スケールを示す。上昇変換スケールとは異なり、抑制変換スケールは、特定の生理学的又は環境係数の典型的な範囲を下回る値を抑制し、一方で範囲を上回る値を上昇させる。これは、グルコースセンサによって記録される観察された測定値を人工的に減少させ得る生理学的及び環境測定(例えば、相対高度など)に有用であり得る。
実施形態では、外部較正は、本明細書に記載のシステムと類似又は非類似であり得る連続的グルコース監視システムから得られる血糖濃度の測定である。本明細書に記載のシステムとは異なるシステムの例は、Abbott FreeStyle Libre Professional CGMからSG測定値をインポートすることである。ここで、SG読み取り値は、外部較正されたBG値として使用され、SG生成ユニットのそれぞれを較正するために使用されるか、又は、例えば、各SG生成ユニットの分散推定値を調整することによって、集約されたSG計算値に統合される。SG生成ユニットの出力の分散推定値は、SG計算ユニットが、同様の条件下でSG値を予測したSG計算ユニットの過去の性能を分析することから得られる(例えば、指定したセンサ着用日の指定したグルコース範囲内の)SG値を予測することが期待される、期待精度変動の推定値である。
実施形態では、SG計算ユニットの分散推定値を計算する第1のステップは、例えば、過去の臨床試験データ入力を使用して、広い血糖範囲にわたって複数のセンサ着用日にわたるSG予測の分布を得ることである。例えば、センサ着用範囲及び血糖範囲を含む、各ビン内で、SG計算ユニットによって生成されたSGと基準方法により供給されたBGとの間の二乗差の平均が決定される。図127Aは、537人の異なる対象によって着用された1821のセンサ群に対する、センサ着用の最初の24時間(即ち、1日目)の8つの別個のSG計算ユニットについての様々なグルコース範囲の分散推定値のプロットを示す。図127Bは、センサ着用3日目の同様のプロットを示す。図127Cは、センサ着用5日目の分散推定値を示し、図127Dは、センサ着用7日目の推定値を示す。
一方、本明細書に記載の装置と同様の装置からの外部較正測定を使用する例は、例えば、異なる時点で体内に挿入された2つのセンサの重複を伴うことがあり、この場合、第2のセンサが暖機されて通常動作の準備ができる頃に第1のセンサがその寿命末期に達するように、第2のセンサが第1のセンサの寿命末期に向けて挿入される。この実施形態では、第1のセンサは、第2のセンサが暖機されるまで、グルコースポンプシステム又は手持ち式グルコース監視装置などの第3の装置へのSG値の一次供給源であり、第2のセンサが暖機されると、第2のセンサが第3の装置へのSG値の一次供給源になる。この構成は、センサの暖機中のダウンタイムによる第3の装置へのSG値の損失を防止するために使用することができる。SG値は、Abbott FreeStyle Libre Professional CGMを使用する実施形態と同様に処理される。
本明細書における発明の実施形態は、ハイブリッド閉ループ(HCL)システムと共に実施され得るが、他の実施形態は、独立型CGMシステムでの使用が可能である。前者では、システムは、独自の無線周波数プロトコルを介してHCLアルゴリズムをサポートするインスリンポンプと通信する送信機を有してよい。後者の実施形態では、通信プロトコルは、モバイル機器ディスプレイアプリケーションを介してサポートされるBluetooth Low Energy Technologyであってよい。HCLシステムをサポートする場合、送信機は、センサ値がインスリン投与を確実にサポートすることを保証するロジックを含んでもよい。
本明細書における発明の実施形態はまた、センサグルコースモデリングにおけるセンサパラメータの製造バッチ変動を補正するための方法及びシステムを目的とする。具体的には、連続的グルコース監視(CGM)装置で使用されるセンサの製造は、製造されたセンサが一貫した品質であり、同様の性能を示すことを保証するために、一定の許容範囲を順守する。実際の用途では、センサバッチ間の性能の差が依然として存在する。これは、センサのバッチの性能を長期間にわたって比較すると明らかになることが多い。この製造パラメータ/プロセスの変動による性能の変動性は、多くの場合に、現場でアルゴリズムが適用され得る将来の(即ち、その後に製造/試験される)センサとは異なる性能プロファイルを有し得るセンサバッチにおいて、センサグルコース推定のためのアルゴリズムを設計及び試験することを意味する。これは、次いで、系統的バイアス、並びにセンサグルコース推定における追跡困難な誤差をもたらす可能性がある。
図128A〜図128Cは、典型的なセンサトレースセットのデータを示す。ここでは、センサ性能は標準的であり、7日間の着用中に一貫したセンサ感度プロファイルを有する。2つの大きく異なるセンサアルゴリズム、即ち、一日2回の血糖(BG)較正を必要とするアルゴリズムである「C−alg」と、BG較正の有無にかかわらず動作する、より高度な任意のBG較正アルゴリズムである「Zeus」を使用して、得られたセンサデータを分析し、ほぼ同一の結果を生成した。
具体的には、図128Aは、7日間の着用期間にわたるセンサ電流(Isig)及び対電圧(Vcntr)トレースを示す。図128Bは、本明細書で上述した2つのアルゴリズムのセンサグルコース(SG)値を生成するために使用される較正係数を示し、プロット9601は、Zeusアルゴリズムの較正比率(事後に入力されたIsigとSGとの比率)を示し、プロット9603は、C−algアルゴリズムの較正係数(推定前に決定されたIsigとSGとの比率)を示す。図128Cでは、Zeusアルゴリズムの計算されたSG値をプロット9605で示し、C−algアルゴリズムの計算されたSG値をプロット9607で示す。
図129A〜図129Cは、経時的な平均Isigレベルの低下によって示されるように、7日間のセンサ着用中に感度の低下を示すセンサのセンサトレースセットを示す。この場合、「Zeus」アルゴリズムは、「C−alg」より感度変化をより良く補正する。図130A〜図130Cは、対照的に、経時的な平均Isigレベルの上昇によって示されるように、7日間のセンサ着用中に感度の上昇を示すセンサのセンサトレースセットを示す。このタイプの感度変化は、両方のアルゴリズムの生成に使用されるセンサの訓練事例には変則的であるが、アルゴリズムを用いて現場で使用される予定のその後のセンサバッチには必ずしも変則的ではない。アルゴリズムは、このタイプのデータを前もって経験していなかった。結果として、「Zeus」アルゴリズムは、BG値を使用した外部較正が可能な場合に変化を正確に補償できただけであった。したがって、プロット9609は、較正なしのZeusアルゴリズムのSG値を生成するために使用された較正係数を示し、一方、プロット9611は、1日1回の較正を有するZeusアルゴリズムのSG値を生成するために使用された較正係数を示す。
上述したように、無較正センサは、より良好なセンサ着用体験をユーザに提供し、CGM装置の使用に付随する不快感を低減し、BGの使用によって取り込まれ得る誤差を低減して、CGMの性能を増強する。この点に関して、本明細書における発明の実施形態は、工場較正技術を用いたセンサグルコースモデリングにおけるセンサパラメータの製造バッチ変動を補正するための、システム及びアルゴリズムを含む、方法を提供する。図131に示すように、実施形態において、これは、グルコース推定アルゴリズムを構築するために使用されるセンサの性能特性を特徴付けること(9620)、標準メトリックになる、例えば、バッチサンプリングメトリックを使用すること(9622)、次いで、その後に製造される各センサバッチに対して、(1)それらの相当する性能特性を判定すること(9624)、(2)標準メトリックから偏差を決定すること(9626)、及び(3)偏差の影響を軽減するために適用される補正パラメータを決定し、各センサに対する工場較正としてバッチ内のセンサに補正パラメータを割り当てること(9628)によって達成される。
実施形態では、工場較正は、3つの主要入力信号である、1kHzの実数インピーダンス、1kHzの虚数インピーダンス、及び対電圧(即ちVcntr)のそれぞれに対する補正係数を決定することに焦点を当てる。実施形態では、3つの特徴の母集団分布は、537人の対象によって着用された1821のセンサの出力を特徴付けることによって決定される。各分布の平均、標準偏差、及び四分位分散を得て、基準(又は標準)メトリックとして提供される(9622)。工場で較正される各センサバッチについて、同様の分布メトリックが得られる。工場較正手順は、実施形態において、3つの入力信号のそれぞれについて、(a)バッチ分布の平均と基準分布の平均との差を計算すること、(b)バッチ分布の標準偏差と基準分布の標準偏差との比率を決定すること、(c)バッチ分布と基準分布との四分位範囲の差を決定すること、及び(d)バッチ分布と基準分布との四分位範囲の比率を決定すること、を伴う。これらの差及び比率の値は、センサバッチ内のセンサからの入力に適用するとき、それらを基準分布内の相当する値に変換することができる、補正パラメータである。
実施形態では、主要入力信号のそれぞれから得られる4つの補正係数は、4×4×4×4マトリックスにおけるビンの4次元指数としてまとめて処理されてよく、各次元は各補正係数に対応し、ビン境界は、実験的に決定された各補正係数の最大値及び最小値を均等に分割することによって得られる。例えば、補正係数の4つ組の15:0.89:12:0.93は、2:1:2:3になることができる。これは、センサバッチに割り当てられ得る補正係数の最大16個の異なる構成が存在し、各センサバッチからの信号をそれらの相当する基準信号値に変換するために16個の補正方程式のみを決定する必要があることを意味する。この説明で使用した指標構造は4×4×4×4マトリックスであったが、より多い又はより少ない次元及び次元当たりのビンを有する他の指標構造も可能であることを理解されたい。
図132は、本発明の一実施形態に係る、アルゴリズムの様々なモジュール(ブロックとして示される)が、任意の工場較正機構を使用してセンサ感度の経時変化を補正するように設計されている実施形態を示す。ステップ1Bは、他のモジュールに関してアルゴリズムに機構を実装するロジックの配置を示す(9630)。この実施形態では、前処理ステップであるステップ1A(9632)において、ステップ1Bからの工場較正係数が、入力センサ電流(Isig)、電気化学インピーダンス分光法(EIS)値、及び/又は対電圧値(Vcntr)に適用され、これらは、ステップ2A、2B、2C、及び2D(9634、9635、9636、9637)として示す4つのSG計算ユニットへの入力になる。
ブロック9639において、複数の個々の(工場で較正された)SG値が融合されて、最終的な単一の(融合)SG値を生成する。ブロック9641では、融合SGにおいて診断が実行され、誤差を検出及び(可能であれば)補正し、その後、ブロック9643において、(補正された)最終SGが(例えば、グルコースセンサのユーザに)表示され、及び/又は(例えば、受信装置へ)送信されて、治療に使用され得る。ただし、補正が不可能な場合、融合SG値は、ユーザに表示されず、かつ/又は治療に使用されないように、ブランク表示されてよい。図132には4つのSG計算ユニットが示されているが、より少ない又はより多くのユニット/モデルを使用できることに留意されたい。更に、ブロック9639では、SG値は、本明細書で前述した融合アルゴリズムのうちの任意の1つ以上を使用して融合され得る。
図133は、任意の工場較正ブロック9630内の論理フローを示す。工場較正値が得られると、第1のステップは、較正係数が有効であるかどうかを判定すること(9650)を伴う。実施形態では、この判定は、工場較正値が許容可能な値範囲内に収まることを確認することによって行われる。実施形態では、追加の特性を有するように(例えば、複数の素数であるように)工場較正コードが設計され、それによって、有効性の確認は、符号化された数が所定の素数で割り切れるかどうかを確認することを伴い、その場合、その除算の結果が、期待される値範囲内の数を生じるかどうかを確認する。有効であれば、係数は、グルコース推定アルゴリズムによって使用される特徴に特有の重みメトリックに変換される(9652)。実施形態では、重みメトリックへの変換は、例えば、図125及び図126に示すものなどの較正スケールを使用することによって達成される。したがって、例えば、Isig、EIS値、及びVcntrのそれぞれは、それらに関連付けられたそれぞれの重みメトリックを有するであろう(図132のブロック9632を参照)。次に、それぞれの入力センサ特徴について、特徴がそれぞれの重みメトリック(即ち、ブロック9652からの重みメトリック)によって重み付けされ(9654)、得られた値は、所定の許容可能な補正範囲に固定される(9656)。実施形態では、許容可能な補正範囲は、入力特徴に工場較正重みメトリックを適用することで特徴値が入力特徴の自然範囲を超えないように定義され、その結果は、アルゴリズムによって実施される1つ以上のグルコース推定モジュールに送られる(9658)。例えば、入力特徴の中央値は、実施形態では、0.52であり、0.4〜0.6の範囲を有することが実験的に観察されたが、SG生成ユニットは、0.25〜0.95の範囲内で機能することができた。実施形態では、許容可能な補正範囲は、装置範囲外の特徴値を生じる較正の可能性を低減するために、乗算係数を1.0〜1.58にしてもよい。
本発明の一実施形態では、センサの起動シーケンスは、グルコース推定アルゴリズムを工場パラメータと組み合わせることを伴う。別の実施形態では、工場パラメータは、センサの送信機に自動符号化され、使用前にセンサの起動で自動的に起動される。
一実施形態では、工場較正メトリックの生成は、SG計算に対する全ての入力センサ特徴の適合性を分析することを伴う。複数のセンサから収集されたセンサデータから、(a)単一の測定期間(例えば、この場合5分)、(b)1日、及び(c)最大5日間、によって区分された点の対を選択し、それらの差を評価してもよい。
図134は、上述の期間のそれぞれについて得られたセンサ値の差のヒストグラムを示し、9661は、最大5日間の期間にわたって収集されたデータのプロットであり、9663は、1日にわたって収集されたデータのプロットであり、9665は、連続した期間にわたる複数の単一測定で(例えば、5分毎に)収集されたデータのプロットである。このセンサ特徴の結果は、ヒストグラム(即ち、プロット)が全て同じ中央値を共有することを示す。これは、値が一貫した確率分布から生じ得ること、及びその特徴が一貫した性能を示し、工場較正メトリックとして使用するための良好な候補であり得ることを示す。図135は、分布が均一ではないセンサ特徴の対応するヒストグラムを示し、9671は、最大5日間の期間にわたって収集されたデータのプロットであり、9673は、1日にわたって収集されたデータのプロットであり、9675は、連続した期間にわたる複数の単一測定で収集されたデータのプロットである。これからわかるように、この場合に値が同じ確率分布から生じている可能性は低く、そのため、ここでの特徴は、工場較正メトリックとして使用するための良好な候補ではない。
本発明の好ましい実施形態では、特徴の選択は、許容可能なヒストグラムを有する特徴に限定される。各特徴は、図136に示すように、更に摂動解析にかけられてもよい。ここで、入力センサ信号9680は、ノイズ値9682と組み合わされてよく、このノイズ値は、(例えば、臨床試験から得られた)収集信号から遡及的に観察された潜在的ノイズ値の分布から導出される。合成信号9684は、元の信号と並行して、SG計算を実施するブロック、即ちセンサアルゴリズムに独立して送られる。2つの別個のブロックからの出力は減算され、その差9686は入力摂動に対する観察された信号応答である。
図137は、摂動に対する理想的な応答を示し、その一方で、図138は、センサ特徴の例示的なセットについて得られた実際の摂動応答のプロットを示す。特徴は、固定された性能閾値を下回るグラフのスパンに従ってランク付けされる。好ましい実施形態では、閾値は、例えば0.2に設定され得る。閾値は、検知システムに必然的に存在することが予想されるノイズの最大予想範囲を表すレベルに設定される。
具体的には、図137は、例えば、信号(Isig)9711、Vcntr9713、及び1kHzの実数インピーダンス9715を含む、工場較正入力として使用される典型的なセンサ特徴について、摂動に対する正規化された応答を示す。製造のばらつきにロバストであり、したがって、より厳しい制御を必要とする度合が比較的低い特徴は、閾値9710を下回る大きなスパンを有する傾向があることが発見されている。この点に関して、それらの特徴は、工場較正メトリックとしての使用に最も適している。したがって、図137では、1kHzの実数インピーダンス9715は、例えば、より厳しい制御の必要性が低いことを示すのに対し、Isig9711は、より厳しい制御の必要性が高いことを示す。図138は、Isig9717、128Hzの実数インピーダンス9719、1kHzの虚数インピーダンス9721、Vcntr9723、及びIsig移動平均9725の特徴を含む、工場較正に使用される最良の特徴を決定するための摂動解析の実際の結果のセットを示す。この例では、1kHzの虚数インピーダンスが、(入力摂動による)信号変化範囲にわたって最小の変化量を示すため、工場較正に使用する最良の特徴である。
好ましい実施形態では、最良にランク付けされた特徴の平均及び標準偏差が、工場較正の標準メトリックとして設定され得る。バッチサンプリングメトリックの決定は、標準メトリックの決定と同様のプロセスを伴う。工場較正データの生成は、各バッチから生成されたデータのヒストグラムを修正して、標準メトリックを生成するために使用されたデータのヒストグラムと同様にすることができる数学的変換を決定することを伴う。標準メトリックの適用は、センサの動作時に生成されたデータにこの変換を適用することを伴う。
本発明の実施形態では、アルゴリズムは、既存のCGMプラットフォーム上に実装され得る。一実施形態は、ハイブリッド閉ループ(HCL)システムでの使用を可能にする。別の実施形態は、独立型CGMシステムでの使用を可能にする。前者の実施形態では、システムは、独自の無線周波数プロトコルを介してHCLアルゴリズムをサポートするインスリンポンプと通信する送信機を有してよい。後者の実施形態では、通信プロトコルは、例えば、モバイル機器ディスプレイアプリケーションを介してサポートされるBluetooth Low Energy Technologyであってよい。HCLシステムをサポートする場合、送信機は、センサ値がインスリン投与を確実にサポートすることを保証するロジックを含んでもよい。
前述したように、正常動作するグルコースセンサでは、測定電流Isigは、測定されたグルコース濃度(SG)に比例するように設計されており、したがって、
測定グルコース=較正係数×(測定電流+オフセット)
かつ
較正係数=ベース較正係数×ベースライン調整
以下で更に検討するように、センサ原理に基づく理論ベースのグルコースセンサモデルは、ベース較正係数、ベースライン調整、及びオフセット成分の構成要素を解釈することに焦点を当てたセンサを用いるインビトロ及びインビボ実験の学習から1つずつ構築することができる。前述の機械学習方法に基づくいくつかのモデルとは対照的に、センサ化学及び対象の生理機能における様々なプロセスの効果の区分的評価から得られる解析的最適化モデルは、機械学習及び他のアプローチを介して開発された規制機関及び補完モデルについて説明するのが容易である。
基礎的前提としては、全て揃った実数及び虚数インピーダンス値並びに対電圧値などの入力特徴の役割が、生理機能、バイオファウリング、感度損失、センサ変動、及び他の異常なプロセスによる、予想される線形グルコース/電流関係からの誤差を補正することである。したがって、センサ電流、電気化学インピーダンス分光測定値、対電圧、及びセンサ使用時間(センサ挿入又は別のセンサ着用時点からの時間として測定される)を含む入力センサ信号を解析的に最適化することにより、グルコースセンサの出力センサグルコース値を推定するための方法は、感度変化、動作時間、グルコース電流ディップ、及び他の可変のセンサ着用の影響を正確に補正するために説明することができ、それにより、血糖較正を必要とせずに精度及び信頼性を向上させる目標を達成するのに役立つ。
実施形態では、ベース較正係数は、中周波数の実数インピーダンス入力特徴によってモデル化されるセンサ感度の一次推定値である。この周波数範囲は、特定のセンサ設計に応じて、センサコーティング及び組織特性の差により偏って影響され得ることが文献によって示されている。一般に、
ベース較正係数=c1×ln(real128)+c2であり、
式中、real128は、128Hzの周波数入力の実数成分であり、c1及びc2は、センサロットによって異なる実験的に決定された較正率である。例えば、好ましい一実施形態では、c1は、3.7mg/dL/nA/オームであってよく、c2は、−26.4mg/dL/nAであってよい。
図139は、解析的最適化モデルの実施形態の較正係数成分の構成要素の概略図を示す。好ましい実施形態では、この構成要素は、異物応答、酸素、低血糖、及び1日目の安定化に対して補正するモジュールで構成される。
異物応答の補正は、埋め込み前後の性能を比較した外植後センサの分析を介して発見されたように、高周波数インピーダンスの調整によって行われた。この理論もまた、様々なセンサ化学の文献研究に基づくものであった。具体的には、
であり、
式中、imag1000は、虚数1000Hz周波数入力であり、c
1、c
2、及びc
3は、実験的に決定された較正率である。好ましい一実施形態では、例えば、c
1は−1.4であってよく、c
2は0.008であってよく、c
3は1.3であってよい。実施形態では、異物応答による最大指示調製は、30%であってよい。
酸素応答の調整は、主に対電圧値に対する変化によるものであった。この理論的根拠は、過酸化水素濃度勾配が酸素勾配によって影響を受け、対電圧が酸素濃度の代用になることである。具体的には、
酸素応答=c1×Vcntr2+c2×Vcntr+c3であり、
式中、Vcntrは、対電圧入力であり、c1、c2、及びC3は、実験的に決定された較正率である。好ましい一実施形態では、c1は2.0/Vであってよく、c2は2.0であってよく、c3は2.0Vであってよい。実施形態では、異物応答による最大調整は、12%であってよい。
センサ電流ディップ及び低血糖の補正は、長期センサ電流傾向に対する調整によって行われた。この理論的根拠は、センサ電流の予期せぬディップ(センサ電流傾向から明らかでないディップ)が低血糖に起因し得ることである。具体的には、
であり、
式中、IsigTrendは、長期センサ電流傾向入力であり、c
1、c
2、及びc
3は、センサロットによってわずかに異なる実験的に決定された較正率である。好ましい一実施形態では、c
1は4.68であってよく、c
2は−0.
21であってよく、c
3は0.97であってよい。実施形態では、長期センサ電流傾向は、例えば、6、12、18、24、及び48時間の平均センサ電流値として様々に実施される。実施形態では、入力特徴は、例えば、24及び48時間枠にわたるセンサ電流値のButterworthフィルタリングの出力によって表される。実施形態では、電流ディップ応答による最大調整は、5%であってよい。
センサ挿入時に、センサは着用のために安定化される。前述したように、センサが安定化する速度は、他の要因の中でも、センサ化学、挿入位置、生理機能、及び挿入方法によって影響を受ける。解析的最適化SG計算モデルの実施形態では、センサの安定化は、主に対電圧入力によって推定及び補正される。この理論的根拠は、白金酸化と静電容量との関係が、1日目の性能及び対電圧値の両方において重要な役割を果たすことである。具体的には、
安定化応答=c1×Vcntr+c2であり、
式中、Vcntrは、対電圧入力であり、c1及びc2は、実験的に決定された較正率である。好ましい一実施形態では、例えば、c1は0.48/Vであってよく、c2は1.24であってよい。異物応答による最大調整は、好ましい実施形態では5%に設定された。
図140は、解析的最適化モデルの実施形態のオフセット調整の構成要素の概略図を示す。好ましい実施形態では、この構成要素は、安定化時間及び非線形センサ応答のための2つの調整を含む。
安定化時間調整は、インビボデータの研究に基づき、インビトロ研究によって確認された、埋め込み期間によって行われた。具体的には、
であり、
式中、ageは、センサ使用時間であり、好ましい実施形態では、センサの暖機完了から測定される。別の実施形態では、センサ使用時間は、センサの挿入から測定されてもよい。c
1、c
2、及びc
3は、実験的に決定された較正率である。好ましい一実施形態では、c
1は−5.4であってよく、c
2は−0.50でtあってよく、c
3は−1.5nAであってよい。一実施形態では、この項の値を制限することは見出されなかったが、50%の制限を課した。
非線形センサ応答は、インビボデータ研究によって裏付けられ、インビトロ観測結果から確認された、センサ電流値及びセンサ使用時間によって行われた。具体的には、
非線形応答調整=c1+(age×c2+c3)×Isigであり、
式中、Isigは、センサ電流であり、ageは、センサ使用時間であり、c1、c2、及びc3は、実験的に決定された較正率である。好ましい一実施形態では、c1は13.8nAであってよく、c2は−0.1/日であってよく、c3は−0.7であってよい。安定化時間調整と同様に、実施形態は、センサ挿入からの時間、センサ暖機からの時間、及びセンサ較正完了からの時間を含む、様々なセンサ使用時間の測定値を利用した。一実施形態では、センサ電流はフィルタリングされたセンサ電流値であってよく、調整は−1nA〜10nAの値に制限される。
上記の説明は本発明の特定の実施形態に関していたが、これらの趣旨から逸脱することなく多くの変更形態が作製されることは理解されるであろう。本発明の主要な教示が実施されている限り、アルゴリズムのステップの追加、及び順序の変更を行ってもよい。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の範囲及び趣旨にある限り、こうした変化形態を網羅することを目的としている。したがって、本開示の実施形態は、全ての点において、限定的でなく、例示的であるとして、考えられるべきであり、本発明の範囲は、先行の記述よりもむしろ添付の請求項によって示される。特許請求の範囲の意味及び範囲、同等性の範囲内にある全ての変化は、本明細書において包含されることを意図している。
本明細書に開示される様々な態様は、説明及び添付図面に具体的に提示される組み合わせとは異なる組み合わせで組み合わせ得ることを理解されたい。また、実施例に応じて、本明細書に記載された任意のプロセス又は方法の特定の行為又は事象は、異なる順序で実行されてもよく、追加、結合、又は完全に省略されてもよいことも理解されたい(例えば、全ての記載された行為又は事象が、技術を実行するために必要でなくてもよい)。加えて、本開示の特定の態様は、明確にするために単一のモジュール又はユニットによって実行されるように説明されているが、本開示の技術は、例えば医療装置に関連するユニット又はモジュールの組み合わせによって実行され得ることを理解されたい。
1つ以上の実施例では、記載された技術は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の組み合わせで実施されてよい。ソフトウェアで実施される場合、機能は、コンピュータ可読媒体上の1つ以上の命令又はコードとして記憶され、ハードウェアベースの処理ユニットによって実行されてよい。コンピュータ可読媒体は、データ記憶媒体(例えば、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ、又は命令若しくはデータ構造の形式で所望のプログラムコードを記憶するために使用することができ、コンピュータによってアクセスすることができる任意の他の媒体)などの有形媒体に対応する、非一時的コンピュータ可読媒体を含んでよい。
命令は、1つ以上のデジタル信号プロセッサ(DSP)、汎用マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルロジックアレイ(FPGA)、又は他の同等の集積回路若しくは別個の論理回路など、1つ以上のプロセッサによって実行されてよい。したがって、用語「プロセッサ」は、本明細書で使用するとき、前述の構造のいずれか、又は記載された技術の実施に好適な任意の他の物理的構造を指し得る。また、技術は、1つ以上の回路又は論理素子で完全に実施され得る。
以下に、他の実施形態を示す。
[1]ユーザの体内のグルコース濃度を測定するために使用されるグルコースセンサのためのグルコースセンサ推定を最適化する方法であって、前記センサは、物理センサエレクトロニクスと、マイクロコントローラと、作用電極と、を含み、前記方法は、
前記物理センサエレクトロニクスが、前記作用電極についての電極電流(Isig)信号を周期的に測定することと、
前記マイクロコントローラが、電気化学インピーダンス分光法(EIS)手順を実行し、前記作用電極についてのEIS関連データを生成することと、
前記マイクロコントローラが、前記EIS関連データに基づいて前記センサの調整された較正係数を計算することと、
前記マイクロコントローラが、安定化時間調整及び非線形センサ応答調整のうちの少なくとも1つに基づいて、前記センサの調整されたオフセット値を計算することと、
前記マイクロコントローラが、前記調整された較正係数及び前記調整されたオフセット値に基づいて、最適化された測定グルコース値(SG)を計算することと、を含み、
SG=(調整された較正係数)×(Isig+調整されたオフセット値)である、方法。
[2] 前記マイクロコントローラが、前記最適化された測定グルコース値を前記ユーザに表示する[1]に記載の方法。
[3] 前記マイクロコントローラが、128Hzの実数インピーダンス値に基づいて前記調整された較正係数を計算する、[1]に記載の方法。
[4] 前記マイクロコントローラが、前記センサに対する異物応答、酸素応答、ディップ調整応答、及び安定化応答のうちの少なくとも1つに基づいて前記調整された較正係数を計算する、[1]に記載の方法。
[5] 前記マイクロコントローラが、前記異物応答を
として計算し、式中、imag1000は、虚数1000Hz周波数入力であり、c 1 、c 2 、及びc 3 は、実験的に決定された較正率である、[4]に記載の方法。
[6] 式中、c 1 が−1.4であり、c 2 が0.008であり、c 3 が1.3である、[5]に記載の方法。
[7] 前記マイクロコントローラが、前記酸素応答を
酸素応答=c 1 ×Vcntr 2 +c 2 ×Vcntr+c 3 として計算し、式中、Vcntrは、対電圧入力であり、c 1 、c 2 、及びc 3 は、実験的に決定された較正率である[4]に記載の方法。
[8] 式中、c 1 が2.0/Vであり、c 2 が2.0であり、c 3 が2.0Vである、[7]に記載の方法。
[9] 前記マイクロコントローラが、前記ディップ調整応答を
として計算し、式中、IsigTrendは、長期センサ電流傾向入力であり、c 1 、c 2 、及びc 3 は、実験的に決定された較正率である、[4]に記載の方法。
[10] 式中、c 1 が4.68であり、c 2 が−0.21であり、c 3 が0.97である、[9]に記載の方法。
[11] 前記マイクロコントローラが、前記長期センサ電流傾向を、6、12、18、24、及び48時間の平均センサ電流値で実施する、[9]に記載の方法。
[12] 前記マイクロコントローラが、前記安定化応答を、安定化応答=c 1 ×Vcntr+c 2 として計算し、式中、Vcntrは、対電圧入力であり、c 1 及びc 2 は、実験的に決定された較正率である、[4]に記載の方法。
[13] 式中、c 1 が0.48/Vであり、c 2 が1.24である、[12]に記載の方法。
[14] 前記マイクロコントローラが、前記調整された較正係数を、前記センサに対する異物応答、酸素応答、ディップ調整応答、及び安定化応答に基づいて計算する、[1]に記載の方法。
[15] 前記マイクロコントローラが、前記調整されたオフセット値の計算のための前記安定化時間調整を、
として計算し、式中、ageはセンサ使用時間であり、c 1 、c 2 、及びc 3 は、実験的に決定された較正率である、[1]に記載の方法。
[16] 式中、c 1 が−5.4であり、c 2 が−0.50であり、c 3 が−1.5nAである、[15]に記載の方法。
[17] 前記マイクロコントローラが、前記センサ使用時間を、センサ暖機完了、センサ挿入のうちの1つから測定する、[15]に記載の方法。
[18] 前記マイクロコントローラが、前記調整されたオフセット値の計算のための前記非線形センサ応答調整を、非線形センサ応答調整=c 1 +(age×c 2 +c 3 )×Isigとして計算し、式中、ageは、センサ使用時間であり、c 1 、c 2 、及びc 3 は、実験的に決定された較正率である、[1]に記載の方法。
[19] 式中、c 1 が13.8nAであり、c 2 が−0.1/日であり、c 3 が−0.7である、[18]に記載の方法。
[20] 前記マイクロコントローラが、前記センサ使用時間を、センサ暖機完了、センサ挿入のうちの1つから測定する、[18]に記載の方法。