本発明の実施形態の詳細な説明は、添付の図面を参照して行われることになり、同様の数字は、図中の対応する部位を示している。以下の説明では、本明細書の一部を形成し、本発明のいくつかの実施形態を例示する、添付の図面が参照される。他の実施形態が利用されてもよく、構造上および動作上の変更が、本発明の範囲から逸脱せずになされ得ることが理解される。
本明細書の発明は、方法、システム、デバイス、装置、ならびにプログラミングおよびコンピュータプログラム製品のフローチャートの例示を参照して以下に説明される。フローチャートの例示の各ブロック、およびフローチャートの例示のブロックの組み合わせが、コンピュータプログラム命令(同様に図に説明される任意のメニュー画面も)を含むプログラミング命令によって実装され得ることが理解されるであろう。これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置(コントローラ、マイクロコントローラ、またはセンサ電子デバイス内のプロセッサなど)に読み込まれ得、それにより、コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置上で実行する命令は、フローチャートブロックまたはブロックで指定される機能を実装するための命令を作成する。これらのコンピュータプログラム命令はまた、コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置が、特定の方式で機能するように方向付け得るコンピュータ可読メモリ内に記憶されてもよく、それにより、コンピュータ可読メモリに記憶された命令は、フローチャートブロックまたはブロックで指定される機能を実装する命令を含む製品を生産する。コンピュータプログラム命令はまた、コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置に読み込まれて、コンピュータまたは他のプログラム可能な装置上で一連の動作ステップを実施させ、それにより、コンピュータまたは他のプログラム可能な装置上で実行する命令は、本明細書に提示されるフローチャートブロックもしくはブロック、および/またはメニューで指定される機能を実装するためのステップを提供する。プログラミング命令はまた、センサデバイス、装置、およびシステムと共に使用される集積回路(IC)および特定用途向け集積回路(ASIC)を含む電子回路を介して記憶および/または実装され得る。
図1は、本発明の一実施形態による、皮下センサ挿入セットの斜視図およびセンサ電子デバイスのブロック図である。図1に例示されるように、皮下センサセット10は、ユーザの体内の選択された部位に、可撓性センサ12(例えば、図2参照)などのアクティブ部分の皮下配置のために提供される。センサセット10の皮下または経皮部分は、中空のスロット付き挿入針14、およびカニューレ16を含む。針14は、皮下挿入部位でのカニューレ16の迅速かつ容易な皮下配置を容易にするために使用される。カニューレ16の内側は、カニューレ16内に形成された窓22を通してユーザの体液に1つ以上のセンサ電極20を露出するようにセンサ12の感知部分18である。本発明の一実施形態では、1つ以上のセンサ電極20は、対向電極、基準電極、および1つ以上の作用電極を含み得る。挿入後、挿入針14が引き抜かれて、選択された挿入部位の適所に、感知部分18およびセンサ電極20を有するカニューレ16を残す。
特定の実施形態では、皮下センサセット10は、ユーザの条件を表す特定の血液パラメータを監視するために使用されるタイプの可撓性薄膜電気化学センサ12の正確な配置を容易にする。センサ12は、体内のグルコースレベルを監視し、糖尿病患者へのインスリンの送達を制御するために、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、または特許文献11に説明される、外部または移植可能なタイプの自動または半自動の薬剤注入ポンプと組み合わせて使用され得る。
可撓性電気化学センサ12の特定の実施形態は、ポリイミドフィルムまたはシートなどの選択された絶縁材料の層と膜との間に埋設または被包される細長い薄膜導体を含めるように薄膜マスク技術に従って構築される。感知部分18の先端のセンサ電極20は、センサ12の感知部分18(またはアクティブ部分)が挿入部位で皮下に配置されると、患者の血液または他の体液と直接接触するための絶縁層のうちの1つを通して露出される。感知部分18は、絶縁層のうちの1つを通して同様に露出される導電性接触パッドなどで終端する接続部分24に接合される。代替的な実施形態では、化学ベース、光学ベースなどのような他のタイプの移植可能なセンサが使用されてもよい。
当技術分野で知られているように、接続部分24および接触パッドは、概して、センサ電極20に由来する信号に応答して、ユーザの条件を監視するための好適なモニタまたはセンサ電子デバイス100への直接有線電気接続に適合されている。この一般的なタイプの可撓性薄膜センサのさらなる説明は、例えば、特許文献7に見出され得、この特許文献は、参照により本明細書に組み込まれる。接続部分24は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる特許文献8に示され説明されているように、モニタまたはセンサ電子デバイス100に、またはコネクタブロック28(など)によって電気的に適宜接続され得る。したがって、本発明の実施形態によると、皮下センサセット10は、有線または無線のいずれかの特性モニタシステムと連携するように構成または形成され得る。
センサ電極20は、様々な感知用途で使用され得、様々な手段で構成され得る。例えば、センサ電極20は、いくつかのタイプの生体分子が触媒剤として使用される生理学的パラメータ感知用途で使用され得る。例えば、センサ電極20は、センサ電極20との反応を触媒するグルコースオキシダーゼ(GOx)酵素を有するグルコースおよび酸素センサに使用され得る。反応は、存在するグルコース量に比例して、グルコン酸(C6H12O7)および過酸化水素(H2O2)を生成する。したがって、以下でさらに詳細に説明されるように、このタイプのセンサは、グルコース測定が、生成される過酸化水素量を測定することによって達成されるため、「過酸化物ベースセンサ」と呼ばれ得る。
センサ電極20は、生体分子またはいくつかの他の触媒剤と共に、血管または非血管環境内で人体に配置され得る。例えば、センサ電極20および生体分子は、静脈内に配置され、血流に曝されてもよく、または人体の皮下または腹膜領域に配置されてもよい。
モニタ100はまた、センサ電子デバイス100とも呼ばれ得る。モニタ100は、電源110、センサインターフェース122、処理電子機器124、およびデータフォーマット電子機器128を含み得る。モニタ100は、接続部分24のコネクタブロック28に電気的に連結されるコネクタを通してケーブル102によってセンサセット10に連結され得る。代替的な実施形態では、ケーブルは、省略されてもよい。本発明のこの実施形態では、モニタ100は、センサセット10の接続部分104への直接接続のための適切なコネクタを含み得る。センサセット10は、センサセット上でのモニタ100の配置を容易にするために、例えば、センサセットの上部の異なる場所に位置決めされたコネクタ部分104を有するように変更されてもよい。
本発明の実施形態では、センサインターフェース122、処理電子機器124、およびデータフォーマット電子機器128は、別個の半導体チップとして形成されるが、代替的な実施形態は、様々な半導体チップを単一または複数のカスタマイズされた半導体チップに組み合わせてもよい。センサインターフェース122は、センサセット10と接続されるケーブル102と接続する。
電源110は、電池とすることができる。電池は、3つの直列酸化銀357電池セルを含み得る。代替的な実施形態では、リチウムベース化学物質、アルカリ電池、ニッケル金属水素化物などの異なる電池化学物質が利用されてもよく、異なる数の電池を使用されてもよい。モニタ100は、ケーブル102およびケーブルコネクタ104を通して、電源110を介してセンサセットに電力を提供する。本発明の一実施形態では、電力は、センサセット10に提供される電圧である。本発明の一実施形態では、電力は、センサセット10に提供される電流である。本発明の一実施形態では、電力は、特定の電圧でセンサセット10に提供される電圧である。
図2Aおよび2Bは、本発明の実施形態による、移植可能なセンサ、および移植可能なセンサを駆動するための電子機器を例示する。図2Aは、電極構成を含有する第1の側面222および電子回路を含有する第2の側面224の2つの側面を有する基板220を示す。図2Aから分かるように、基板の第1の側面222は、基準電極248の反対側に2つの対向電極作用電極ペア240、242、244、246を備える。基板の第2の側面224は、電子回路を備える。示されるように、電子回路は、気密封止されたケーシング226内に封入され得、電子回路のための保護ハウジングを提供する。これは、センサ基板220が、電子回路を流体に曝し得る血管環境または他の環境中に挿入されることを可能にする。気密封止されたケーシング226内に電子回路を封止することによって、電子回路は、周囲の流体による短絡の危険性なしで動作し得る。図2Aには、電子回路の入力および出力ラインが接続され得るパッド228も示されている。電子回路自体は、様々な手段で製作され得る。本発明の実施形態によると、電子回路は、業界で一般的な技術を使用して集積回路として製作され得る。
図2Bは、本発明の実施形態による、センサの出力を感知するための電子回路の概略ブロック図を例示する。少なくとも一対のセンサ電極310は、データ変換器312にインターフェースし得、その出力は、カウンタ314にインターフェースし得る。カウンタ314は、制御論理316によって制御され得る。カウンタ314の出力は、ラインインターフェース318に接続し得る。ラインインターフェース318は、入力および出力ライン320に接続され得、制御論理316にも接続され得る。入力および出力ライン320はまた、電力整流器322に接続され得る。
センサ電極310は、様々な感知用途で使用され得、様々な手段で構成され得る。例えば、センサ電極310は、いくつかのタイプの生体分子が触媒剤として使用される生理学的パラメータ感知用途で使用され得る。例えば、センサ電極310は、センサ電極310との反応を触媒するグルコースオキシダーゼ(GOx)酵素を有するグルコースおよび酸素センサに使用され得る。センサ電極310は、生体分子またはいくつかの他の触媒剤と共に、血管または非血管環境内で人体に配置され得る。例えば、センサ電極310および生体分子は、静脈内に配置され、血流に曝されてもよい。
図3は、本発明の一実施形態による、センサ電子デバイスおよび複数の電極を含むセンサのブロック図を例示する。センサセットまたはシステム350は、センサ355およびセンサ電子デバイス360を含む。センサ355は、対向電極365、基準電極370、および作用電極375を含む。センサ電子デバイス360は、電源380、調整器385、信号プロセッサ390、測定プロセッサ395、および表示/送信モジュール397を含む。電源380は、調整器385に電力(電圧、電流、または電流を含む電圧のいずれかの形態)を提供する。調整器385は、調整された電圧をセンサ355に送信する。本発明の一実施形態では、調整器385は、センサ355の対向電極365に電圧を送信する。
センサ355は、測定されている生理学的特性の濃度を示すセンサ信号を生成する。例えば、センサ信号は、血中グルコース読取値を示し得る。皮下センサを利用する本発明の一実施形態では、センサ信号は、被験者の過酸化水素のレベルを表し得る。血液または頭蓋のセンサが利用される本発明の一実施形態では、酸素量がセンサによって測定されており、センサ信号によって表される。移植可能なまたは長期センサを利用する本発明の実施形態では、センサ信号は、被験者の酸素のレベルを表し得る。センサ信号は、作用電極375で測定され得る。本発明の一実施形態では、センサ信号は、作用電極で測定された電流であり得る。本発明の一実施形態では、センサ信号は、作用電極で測定された電圧であり得る。
信号プロセッサ390は、センサ信号がセンサ355(例えば、作用電極)で測定された後に、センサ信号(例えば、測定された電流または電圧)を受信する。信号プロセッサ390は、センサ信号を処理し、処理されたセンサ信号を発生させる。測定プロセッサ395は、処理されたセンサ信号を受信し、基準値を利用して処理されたセンサ信号を較正する。本発明の一実施形態では、基準値は、基準メモリ内に記憶され、測定プロセッサ395に提供される。測定プロセッサ395は、センサ測定値を発生させる。センサ測定値は、測定メモリ(図示せず)内に記憶され得る。センサ測定値は、センサ電子機器を有するハウジング内のディスプレイに表示されるか、または外部デバイスに送信されるように、表示/送信デバイスに送られ得る。
センサ電子デバイス360は、生理学的特性読取値を表示するためのディスプレイを含むモニタとすることができる。センサ電子デバイス360はまた、デスクトップコンピュータ、ページャ、通信性能を含むテレビ、ラップトップコンピュータ、サーバ、ネットワークコンピュータ、携帯情報端末(PDA)、コンピュータ機能を含む携帯電話、ディスプレイを含む注入ポンプ、ディスプレイを含むグルコースセンサ、および/または注入ポンプ/グルコースセンサの組み合わせにインストールされてもよい。センサ電子デバイス360は、携帯電話、スマートフォン、ネットワークデバイス、ホームネットワークデバイス、および/またはホームネットワークに接続された他の機器内に収容され得る。
図4は、センサおよびセンサ電子デバイスを含む代替的な実施形態を例示する。センサセットまたはセンサシステム400は、センサ電子デバイス360およびセンサ355を含む。センサは、対向電極365、基準電極370、および作用電極375を含む。センサ電子デバイス360は、マイクロコントローラ410およびデジタルアナログ変換器(DAC)420を含む。センサ電子デバイス360はまた、電流周波数変換器(I/F変換器)430を含み得る。
マイクロコントローラ410は、ソフトウェアプログラムコードを含み、これは、実行されると、またはそのプログラム可能な論理は、マイクロコントローラ410に信号をDAC420に送信させ、信号は、センサ355に印加されるべき電圧レベルまたは値を表す。DAC420は、信号を受信し、マイクロコントローラ410によって命令されたレベルで電圧値を発生させる。本発明の実施形態では、マイクロコントローラ410は、信号内の電圧レベルの表現を頻繁にまたはまれに変化させ得る。例として、マイクロコントローラ410からの信号は、1秒間の第1の電圧値および2秒間の第2の電圧値を印加するように、DAC420に命令し得る。
センサ355は、電圧レベルまたは値を受信し得る。本発明の一実施形態では、対向電極365は、DAC420からの基準電圧および電圧値を入力として有する演算増幅器の出力を受信し得る。電圧レベルの印加は、センサ355に、測定されている生理学的特性の濃度を示すセンサ信号を生成させる。本発明の一実施形態では、マイクロコントローラ410は、作用電極からのセンサ信号(例えば、電流値)を測定し得る。例として、センサ信号測定回路431は、センサ信号を測定し得る。本発明の一実施形態では、センサ信号測定回路431は、抵抗器を含み得、電流は、センサ信号の値を測定するために抵抗器を通過させられ得る。本発明の一実施形態では、センサ信号は、電流レベル信号であり得、センサ信号測定回路431は、電流周波数(I/F)変換器430であり得る。電流周波数変換器430は、電流読取値に関してセンサ信号を測定し、それを周波数ベースセンサ信号に変換し、周波数ベースセンサ信号をマイクロコントローラ410に送信し得る。本発明の実施形態では、マイクロコントローラ410は、非周波数ベースセンサ信号よりも容易に周波数ベースセンサ信号を受信することができ得る。マイクロコントローラ410は、周波数ベースであるか非周波数ベースであるかにかかわらず、センサ信号を受信し、血中グルコースレベルなどの被験者の生理学的特性の値を決定する。マイクロコントローラ410は、実行または運転されると、センサ信号を受信し、かつセンサ信号を生理学的特性値に変換することができる、プログラムコードを含み得る。一実施形態では、マイクロコントローラ410は、センサ信号を血中グルコースレベルに変換し得る。いくつかの実施形態では、マイクロコントローラ410は、被験者の血中グルコースレベルを決定するために、内部メモリ内に記憶された測定値を利用し得る。いくつかの実施形態では、マイクロコントローラ410は、マイクロコントローラ410に対して外部のメモリ内に記憶された測定値を利用して、被験者の血中グルコースレベルを決定することを支援してもよい。
マイクロコントローラ410によって生理学的特性値が決定された後、マイクロコントローラ410は、いくつかの期間の生理学的特性値の測定値を記憶し得る。例えば、血中グルコース値は、毎秒または5秒毎にセンサからマイクロコントローラ410に送られてもよく、マイクロコントローラは、5分または10分間のBG読取値についてセンサ測定値を保存してもよい。マイクロコントローラ410は、生理学的特性値の測定値をセンサ電子デバイス360上のディスプレイに転送し得る。例えば、センサ電子デバイス360は、被験者の血中グルコース読取値を提供するディスプレイを含むモニタであってもよい。一実施形態では、マイクロコントローラ410は、生理学的特性値の測定値をマイクロコントローラ410の出力インターフェースに転送し得る。マイクロコントローラ410の出力インターフェースは、生理学的特性値、例えば、血中グルコース値の測定値を、外部デバイス、例えば、注入ポンプ、注入ポンプ/グルコース計の組み合わせ、コンピュータ、携帯情報端末、ページャ、ネットワーク機器、サーバ、携帯電話、または任意のコンピューティングデバイスに転送し得る。
図5は、一実施形態による、センサ電極の電子ブロック図およびセンサ電極に印加されている電圧を例示する。図5に例示される実施形態では、演算増幅器530または他のサーボ制御デバイスは、回路/電極インターフェース538を通してセンサ電極510に接続し得る。演算増幅器530は、センサ電極を通したフィードバックを利用して、対向電極536での電圧を調整することによって、基準電極532と作用電極534との間に所定の電圧(DACが印加電圧に望み得る)の維持を試行する。電流は、次いで、対向電極536から作用電極534に流れ得る。このような電流は、センサ電極510と、センサ電極510の近傍に配置され、かつ触媒剤として使用されているセンサの生体分子との間の電気化学反応を確認するために測定され得る。図5に開示された回路は、長期もしくは移植可能なセンサに利用されてもよく、または短期もしくは皮下センサに利用されてもよい。
グルコースオキシダーゼ(GOx)酵素がセンサの触媒剤として使用される長期センサの実施形態では、電流は、酵素およびセンサ電極510の近傍に酸素が存在する場合のみ、対向電極536から作用電極534に流れ得る。例として、基準電極532で設定された電圧が約0.5ボルトに維持される場合、対向電極536から作用電極534に流れる電流量は、酵素および電極を取り囲むエリアに存在する酸素量に対する単一勾配と、かなりの線形関係を有する。したがって、血中の酸素量を決定する際の向上した精度は、基準電極532を約0.5ボルトに維持し、血中酸素レベルを変化させるためにこの領域の電流-電圧曲線を利用することによって達成され得る。異なる実施形態は、グルコースオキシダーゼ酵素以外の生体分子を有する異なるセンサを利用してもよく、したがって、基準電極に設定された0.5ボルト以外の電圧を有してもよい。
上述のように、センサ510の初期の移植または挿入中、センサ510は、センサに対する被験者の調整およびセンサで利用される触媒によって引き起こされた電気化学的副産物に起因して、不正確な読取値を提供する場合がある。センサ510が被験者の生理学的パラメータの正確な読取値を提供するために、安定化期間が多くのセンサに必要とされる。安定化期間中、センサ510は、正確な血中グルコース測定値を提供しない。センサのユーザおよび製造業者は、センサが被験者の体内または被験者の皮下層内への挿入後に迅速に利用され得るように、センサの安定化時間フレームを改善することを望み得る。
以前のセンサ電極システムでは、安定化期間または時間フレームは、1時間~3時間の範囲内であり得た。安定化期間または時間フレームを短縮し、センサ精度の適時性を高めるために、センサ(またはセンサの電極)は、1つのパルスの印加に続いて別の電圧を印加するのではなく、いくつかのパルスを受け得る。図6Aは、安定化時間フレームを短縮するために安定化時間フレーム中にパルスを印加する1つの方法を例示する。この実施形態では、電圧印加デバイスは、第1の時間または期間の間、電極に第1の電圧を印加する(600)。一実施形態では、第1の電圧は、DC定電圧であり得る。これは、アノード電流の発生を結果的にもたらす。代替的な実施形態では、デジタルアナログ変換器または別の電圧源が、第1の期間の間、電極に電圧を供給し得る。アノード電流は、電圧が印加されている電極に向かって電子が駆動されていることを意味する。特定の実施形態では、印加デバイスは、電圧の代わりに電流を印加してもよい。センサに電圧が印加される実施形態では、電極への第1の電圧の印加後、電圧調整器が、第2の時間、時間フレーム、または期間の間、待機し得る(すなわち、電圧を印加しない)(605)。言い換えると、電圧印加デバイスは、第2の期間が経過するまで待機する。電圧の無印加は、カソード電流を結果的にもたらし、これは、電圧が印加されない電極による電子の獲得を結果的にもたらす。第1の期間の間の電極への第1の電圧の印加、それに続く第2の時間の間の電圧の無印加は、反復回数に対して繰り返される(610)。これは、アノードおよびカソードサイクルと呼ばれ得る。一実施形態では、安定化方法の総反復回数は、3回、すなわち、第1の期間の電圧の3回の印加であり、各々、その後の第2の期間の間に電圧の印加はない。一実施形態では、第1の電圧は、1.07ボルトであり得る。追加の実施形態では、第1の電圧は、0.535ボルトであってもよく、または約0.7ボルトであってもよい。
電圧の繰り返し印加および電圧の無印加は、センサ(および、したがって電極)がアノード-カソードサイクルを受けることを結果的にもたらす。アノード-カソードサイクルは、センサの挿入またはセンサの移植に反応する患者の身体によって発生する電気化学的副産物の減少を結果的にもたらす。電気化学的副産物は、バックグラウンド電流の発生を引き起こし、これは、被験者の生理学的パラメータの不正確な測定値を結果的にもたらす。特定の動作条件下では、電気化学的副産物が排除され得る。他の動作条件下では、電気化学的副産物が減少するか、または有意に減少し得る。正常な安定化方法は、アノード-カソードサイクルが平衡に達し、電気化学的副産物が有意に減少し、バックグラウンド電流が最小化されることを結果的にもたらす。
一実施形態では、センサの電極に印加される第1の電圧は、正電圧であり得る。代替的な実施形態では、印加される第1の電圧は、負電圧であり得る。さらに、第1の電圧は、作用電極に印加され得る。いくつかの実施形態では、第1の電圧は、対向電極または基準電極に印加され得る。
いくつかの実施形態では、電圧パルスおよび電圧の無印加の持続時間は、例えば、各3分など、等しくてもよい。他の実施形態では、電圧印加または電圧パルスの持続時間は、異なる値であってもよく、例えば、第1の時間および第2の時間が異なってもよい。一実施形態では、第1の期間が5分であってもよく、待機期間が2分であってもよい。変形例では、第1の期間が2分であってもよく、待機期間(または第2の時間フレーム)が5分であってもよい。言い換えると、第1の電圧の印加の持続時間が2分であってもよく、電圧が5分間印加されなくてもよい。この時間フレームは、単に例示を意味し、限定するものではない。例えば、第1の時間フレームは、2、3、5、または10分であってもよく、第2の時間フレームは、5分、10分、20分などであってもよい。時間フレーム(例えば、第1の時間および第2の時間)は、異なる電極、センサ、および/または患者の生理学的特性の固有の特性に依存し得る。
上記に関連して、3つより多いまたは少ないパルスが、グルコースセンサを安定化するために利用されてもよい。言い換えると、反復回数は、3回超であってもよく、または3回未満であってもよい。例えば、4つの電圧パルス(例えば、高電圧の後に無電圧)が電極のうちの1つに印加されてもよく、または6つの電圧パルスが電極のうちの1つに印加されてもよい。
例として、1.07ボルトの3つの連続するパルス(それぞれの待機期間が後に続く)は、皮下に移植されたセンサにとって十分であり得る。一実施形態では、0.7ボルトの3つの連続する電圧パルスが利用されてもよい。3つの連続するパルスは、血液または頭蓋液に移植されたセンサ、例えば、長期または永続的センサに対して、負または正のいずれかのより高いまたはより低い電圧値を有し得る。加えて、3つより多いパルス(例えば、5、8、12個)が、皮下、血液、または頭蓋液センサのいずれかにおけるアノードおよびカソード電流間のアノード-カソードサイクルを形成するために利用され得る。
図6Bは、本明細書の発明の一実施形態による、センサを安定化する方法を例示する。図6Bに例示される実施形態では、電圧印加デバイスは、第1の時間の間に第1の電圧を印加して、センサの電極でのアノードサイクルを開始し得る(630)。電圧印加デバイスは、DC電源、デジタルアナログ変換器、または電圧調整器とすることができる。第1の期間が経過した後、第2の電圧は、センサの電極でのカソードサイクルを開始するために、第2の時間の間、センサに印加される(635)。例として、図6Aの方法に例示されているように、電圧が印加されていないのではなく、異なる電圧(第1の電圧とは異なる)が第2の時間フレーム中にセンサに印加される。本発明の一実施形態では、第1の時間の間の第1の電圧の印加および第2の時間の間の第2の電圧の印加は、反復回数に対して繰り返される(640)。特定の実施形態では、第1の時間の間の第1の電圧の印加および第2の時間の間の第2の電圧の印加は、反復回数に対してではなく、安定化時間フレーム、例えば、10分、15分、または20分間、各々印加されてもよい。この安定化時間フレームは、例えば、センサ(および電極)が安定化するまでの、安定化シーケンスの全時間フレームである。この安定化方法論の利点は、センサのより高速な実行、低バックグラウンド電流(言い換えると、いくらかのバックグラウンド電流の抑制)、より良好なグルコース応答である。
一実施形態では、第1の電圧は、5分間印加される0.535ボルトであり得、第2の電圧は、2分間印加される1.070ボルトであり得、0.535ボルトの第1の電圧は、5分間印加され得、1.070ボルトの第2の電圧は、2分間印加され得、0.535ボルトの第1の電圧は、5分間印加され得、1.070ボルトの第2の電圧は、2分間印加され得る。言い換えると、この実施形態では、電圧パルス方式の3回の反復がある。パルス発生方法論は、第2の時間フレーム、例えば、第2の電圧の印加の時間フレームが、2分から5分、10分、15分、または20分に延長され得るという点で変化し得る。加えて、3回の反復が適用された後、本発明のこの実施形態では、0.535ボルトの公称作用電圧が印加され得る。
1.070ボルトおよび0.535ボルトは、例示的な値である。他の電圧値が、様々な要因に基づいて選択され得る。これらの要因は、センサで利用される酵素のタイプ、センサで利用される膜、センサの動作期間、パルスの長さ、および/またはパルスの大きさを含み得る。特定の動作条件下では、第1の電圧は、1.00~1.09ボルトの範囲内であり得、第2の電圧は、0.510~0.565ボルトの範囲内であり得る。他の動作実施形態では、第1の電圧および第2の電圧をまとめた範囲は、センサ内の電極の電圧感度に依存して、より高い範囲、例えば、0.3ボルト、0.6ボルト、0.9ボルトを有し得る。他の動作条件下では、電圧は、0.8~1.34ボルトの範囲内であり得、他方の電圧は、0.335~0.735ボルトの範囲内であり得る。他の動作条件下では、より高電圧の範囲が、より低電圧の範囲よりも狭くてもよい。例として、より高電圧が、0.9~1.09ボルトの範囲内であってもよく、より低電圧が、0.235~0.835ボルトの範囲内であってもよい。
一実施形態では、第1の電圧および第2の電圧は、正電圧であってもよく、または代替的に他の実施形態では、負電圧であってもよい。別の実施形態では、第1の電圧が正であってもよく、かつ第2の電圧が負であってもよく、または代替的に第1の電圧が負であってもよく、かつ第2の電圧が正であってもよい。第1の電圧は、反復の各々について異なる電圧レベルであり得る。加えて、第1の電圧は、DC定電圧であり得る。さらに、第1の電圧は、ランプ電圧、正弦波形状の電圧、階段状の電圧、または他の一般的に利用される電圧波形であり得る。一実施形態では、第2の電圧は、DC定電圧、ランプ電圧、正弦波形状の電圧、階段状の電圧、または他の一般的に利用される電圧波形であり得る。代替的な実施形態では、第1の電圧または第2の電圧は、DC波形に乗っているAC信号であってもよい。一般に、第1の電圧は、1つのタイプの電圧、例えば、ランプ電圧であり得、第2の電圧は、第2のタイプの電圧、例えば、正弦波形状の電圧であり得、第1の電圧(または第2の電圧)は、反復の各々について異なる波形形状を有してもよい。例えば、安定化方法に3つのサイクルが存在する場合、第1のサイクルでは、第1の電圧がランプ電圧であり得、第2のサイクルでは、第1の電圧が定電圧であり得、第3のサイクルでは、第1の電圧が正弦波電圧であり得る。
一実施形態では、第1の時間フレームの持続時間および第2の時間フレームの持続時間は、同じ値を有してもよく、または代替的に、第1の時間フレームおよび第2の時間フレームの持続時間は、異なる値を有してもよい。例えば、第1の時間フレームの持続時間は、2分であり得、第2の時間フレームの持続時間は、5分であり得、反復回数は、3回であり得る。上述のように、安定化方法は、いくつかの反復を含み得る。様々な実施形態では、安定化方法の異なる反復中に、第1の時間フレームの各々の持続時間が変化してもよく、第2の時間フレームの各々の持続時間が変化してもよい。例として、アノード-カソードサイクルの第1の反復中、第1の時間フレームは、2分であり得、第2の時間フレームは、5分であり得る。第2の反復中、第1の時間フレームは、1分であり得、第2の時間フレームは、3分であり得る。第3の反復中、第1の時間フレームは、3分であり得、第2の時間フレームは、10分であり得る。
一実施形態では、0.535ボルトの第1の電圧がセンサ内の電極に2分間印加されて、アノードサイクルを開始させ、次いで、1.07ボルトの第2の電圧が電極に5分間印加されて、カソードサイクルを開始させる。0.535ボルトの第1の電圧が、次いで、再び2分間印加されて、アノードサイクルを開始させ、1.07ボルトの第2の電圧がセンサに5分間印加される。第3の反復では、0.535ボルトが2分間印加されて、アノードサイクルを開始させ、次いで、1.07ボルトが5分間印加される。センサに印加される電圧は、次いで、センサの実際の作用時間フレーム中、例えば、センサが被験者の生理学的特性の読取値を提供するとき、0.535である。
より短い持続時間の電圧パルスが、図6Aおよび6Bの実施形態で利用され得る。より短い持続時間の電圧パルスは、第1の電圧、第2の電圧、または両方を印加するために利用され得る。一実施形態では、第1の電圧のより短い持続時間の電圧パルスの大きさは、-1.07ボルトであり、第2の電圧のより短い持続時間の電圧パルスの大きさは、高い方の大きさの約半分、例えば、-0.535ボルトである。あるいは、第1の電圧のより短い持続時間の電圧パルスの大きさは、0.535ボルトであり得、第2の電圧のより短い持続時間の電圧パルスの大きさは、1.07ボルトである。
短い持続時間のパルスを利用する実施形態では、電圧は、第1の期間全体にわたって連続的に印加されなくてもよい。代わりに、電圧印加デバイスは、第1の期間中にいくつかの短い持続時間のパルスを送信し得る。言い換えると、いくつかの小幅または短い持続時間のパルスが、第1の期間にわたってセンサの電極に印加され得る。各小幅または短い持続時間のパルスは、数ミリ秒の幅を有し得る。例として、このパルス幅は、30ミリ秒、50ミリ秒、70ミリ秒または200ミリ秒であり得る。これらの値は、例示であり、限定を意味するものではない。図6Aに例示される実施形態などの一実施形態では、これらの短い持続時間のパルスが、第1の期間の間、センサ(電極)に印加され、次いで、第2の期間の間、電圧が印加されない。
各短い持続時間のパルスは、第1の期間内で同じ持続時間を有し得る。例えば、各短い持続時間の電圧パルスは、50ミリ秒の時間幅を有し得、パルス間の各パルス遅延は、950ミリ秒であり得る。この例では、2分が第1の時間フレームの間の測定される時間である場合、120個の短い持続時間の電圧パルスがセンサに印加され得る。あるいは、短い持続時間の電圧パルスの各々は、異なる持続時間を有し得る。様々な実施形態では、短い持続時間の電圧パルスは、同じ振幅値を有してもよく、または異なる振幅値を有してもよい。センサへの連続的な電圧の印加ではなく、短い持続時間の電圧パルスを利用することによって、同じアノードおよびカソードのサイクルが起こり得、センサ(例えば、電極)は、経時的により少ない総エネルギーまたは電荷を受ける。短い持続時間の電圧パルスの使用は、より少ないエネルギーがセンサ(および、したがって電極)に印加されるため、電極への連続的な電圧の印加と比較して、より少ない電力を利用する。
図6Cは、一実施形態による、センサを安定化する際のフィードバックの利用を例示する。センサシステムは、センサを安定化するために追加のパルスが必要とされるかどうかを決定するためのフィードバック機構を含み得る。一実施形態では、電極(例えば、作用電極)によって発生したセンサ信号は、センサ信号が安定化されているかどうかを決定するために分析され得る。第1の電圧が、第1の時間フレームの間、電極に印加されて、アノードサイクルを開始させる(630)。第2の電圧が、第2の時間フレームの間、電極に印加されて、カソードサイクルを開始させる(635)。本明細書の発明の実施形態では、分析モジュールが、センサ信号(例えば、センサ信号によって放出された電流、センサの特定の点の抵抗、センサの特定のノードのインピーダンス)を分析し、閾値測定値に達したかどうかを決定する(例えば、閾値測定と比較することによって、センサが正確な読取値を提供しているかどうかを決定する)(637)。センサ読取値が正確であると決定された場合、これは、電極(および、したがってセンサ)が安定化されていることを表し(642)、第1の電圧および/または第2の電圧の追加の印加が発生しなくてよい。安定化が達成されなかった場合、次いで、追加のアノード/カソードサイクルが、第1の期間の間の電極への第1の電圧の印加(630)、次いで、第2の期間の間の電極への第2の電圧の印加(635)によって開始され得る。
いくつかの実施形態では、分析モジュールは、センサの電極への第1の電圧および第2の電圧の3回の印加のアノード/カソードサイクルの後に用いられ得る。しかしながら、分析モジュールは、図6Cに例示されるように、第1の電圧および第2の電圧の1回の印加後に用いられてもよい。
分析モジュールは、電流が電極にわたってまたは2つの電極にわたって導入された後に放出された電圧を測定するために利用され得る。分析モジュールは、電極または受信レベルでの電圧レベルを監視し得る。一実施形態では、電圧レベルが特定の閾値を上回る場合、これは、センサが安定化されていることを意味し得る。一実施形態では、電圧レベルが閾値レベルを下回る場合、これは、センサが安定化されており、読取値を提供する準備ができていることを示し得る。一実施形態では、電流は、電極に、または数個の電極にわたって導入され得る。分析モジュールは、電極から放出された電流レベルを監視し得る。この実施形態では、分析モジュールは、電流がセンサ信号電流とは大きさが一桁異なる場合、電流を監視することができ得る。電流が電流閾値を上回るか、またはそれを下回る場合、これは、センサが安定化されていることを示し得る。
本明細書の発明の実施形態では、分析モジュールは、センサの2つの電極間のインピーダンスを測定し得る。分析モジュールは、インピーダンスを閾値またはターゲットインピーダンス値と比較し得、測定されたインピーダンスがターゲットまたは閾値インピーダンス未満である場合、センサ(および、したがってセンサ信号)は、安定化され得る。一実施形態では、分析モジュールは、センサの2つの電極間の抵抗を測定し得る。本発明のこの実施形態では、分析モジュールが抵抗を閾値またはターゲット抵抗値と比較し、測定された抵抗値が閾値またはターゲット抵抗値未満である場合、分析モジュールは、センサが安定化されており、センサ信号が利用され得ることを決定し得る。
図7は、本発明の一実施形態による、センサを安定化する効果を例示する。線705は、以前の単一パルス安定化方法が利用されたグルコースセンサの血中グルコースセンサ読取値を表す。線710は、3つの電圧パルス(例えば、各々、2分の持続時間、その後の電圧が印加されない5分の持続時間を有する3つの電圧パルス)が印加されるグルコースセンサに対する血中グルコース読取値を表す。x軸715は、時間を表す。点720、725、730、および735は、指採血を利用して採られ、次いで、グルコース計に入力された、測定されたグルコース読取値を表す。グラフによって例示されるように、以前の単一パルス安定化方法は、所望されるグルコース読取値、例えば、100単位に安定化するために、約1時間30分掛かった。対照的に、3つのパルスの安定化方法は、グルコースセンサを安定化するために約15分しか掛からず、大幅に改善された安定化時間フレームを結果的にもたらす。
図8Aは、センサ電子デバイスおよび電圧発生デバイスを含むセンサのブロック図を例示する。電圧発生または印加デバイス810が、電圧パルスを発生させる電子機器、論理、または回路を含む。センサ電子デバイス360はまた、基準値および他の有用なデータを受信するための入力デバイス820を含み得る。一実施形態では、センサ電子デバイスは、センサ測定値を記憶するための測定メモリ830を含み得る。この実施形態では、電源380が、センサ電子デバイスに電力を供給し得る。電源380は、調整された電圧を電圧発生または印加デバイス810に供給する調整器385に電力を供給し得る。接続端子811が、例示される実施形態では、接続端子がセンサ355をセンサ電子デバイス360に連結または接続することを表す。
図8Aに例示される実施形態では、電圧発生または印加デバイス810は、電圧、例えば、第1の電圧または第2の電圧を、演算増幅器840の入力端子に供給する。電圧発生または印加デバイス810はまた、センサ355の作用電極375に電圧を供給し得る。演算増幅器840の別の入力端子が、センサの基準電極370に連結される。電圧発生または印加デバイス810から演算増幅器840への電圧の印加は、対向電極365で測定された電圧を、作用電極375で印加される電圧に近づけるか、またはそれに等しくなるように駆動する。一実施形態では、電圧発生または印加デバイス810は、対向電極と作用電極との間に所望される電圧を印加するために利用され得る。これは、対向電極への固定電圧の直接的な印加によって起こり得る。
図6Aおよび6Bに例示されるす一実施形態では、電圧発生デバイス810は、第1の時間フレーム中にセンサに印加される第1の電圧を発生させる。電圧発生デバイス810は、この第1の電圧を演算増幅器840に送信し、演算増幅器840は、センサ355の対向電極365での電圧を第1の電圧に駆動する。いくつかの実施形態では、電圧発生デバイス810はまた、第1の電圧をセンサ355の対向電極365に直接送信し得る。図6Aに示される実施形態では、電圧発生デバイス810は、第2の時間フレームの間、第1の電圧をセンサ355に送信しない。言い換えると、電圧発生デバイス810は、オフにされるか、またはオフに切り替えられる。電圧発生デバイス810は、反復回数または安定化時間フレーム、例えば、20分間の間のいずれかに対して、第1の電圧を印加することと、電圧を印加しないこととの間のサイクルを継続するようにプログラムされ得る。図8Bは、本発明のこの実施形態を実装するための電圧発生デバイスを例示する。電圧調整器385は、調整された電圧を電圧発生デバイス810に転送する。制御回路860が、スイッチ850の開閉を制御する。スイッチ850が閉じている場合、電圧が印加される。スイッチ850が開いている場合、電圧は、印加されない。タイマー865が、制御回路860に信号を提供して、制御回路860にスイッチ850をオンおよびオフにするように命令する。制御回路860は、スイッチ850を複数回(必要な反復に一致させるために)開閉するように回路に命令し得る論理を含む。一実施形態では、タイマー865はまた、安定化信号を送信して、安定化シーケンスが完了したこと、すなわち、安定化時間フレームが経過したことを識別し得る。
一実施形態では、電圧発生デバイスは、第1の時間フレームの間に第1の電圧を発生させ、第2の時間フレームの間に第2の電圧を発生させる。図8Cは、本実施形態を実装するための2つの電圧値を発生させるための電圧発生デバイスを例示する。この実施形態では、2位置スイッチ870が利用される。例として、第1のスイッチ位置871が、制御回路860を命令するタイマー865によってオンにされるか、または閉じられる場合、電圧発生デバイス810は、第1の時間フレームの間に第1の電圧を発生させる。第1の電圧が第1の時間フレームの間に印加された後、タイマーは、第1の時間フレームが経過したことを示す信号を制御回路860に送り、制御回路860は、スイッチ870に第2の位置872に移動するように指示する。スイッチ870が第2の位置872にあるとき、調整された電圧は、調整された電圧をより小さい値に低減するために、電圧ステップダウンまたはバック変換器880に向けられる。より小さい値が、次いで、第2の時間フレームの間に演算増幅器840に送達される。タイマー865が、第2の時間フレームが経過したという信号を制御回路860に送った後、制御回路860は、スイッチ870を第1の位置に戻す。これは、所望される反復回数が完了するか、または安定化時間フレームが経過するまで継続する。本明細書の発明の一実施形態では、センサ安定化時間フレームが経過した後、センサは、センサ信号350を信号プロセッサ390に送信する。
図8Dは、センサへの電圧のより複雑な印加を実施するために利用される電圧印加デバイス810を例示する。電圧印加デバイス810は、制御デバイス860、スイッチ890、正弦波電圧発生デバイス891、ランプ電圧発生デバイス892、および定電圧発生デバイス893を含み得る。他の実施形態では、電圧印加は、DC信号または他の様々な電圧パルス波形の上にAC波を発生させ得る。図8Dに例示される実施形態では、制御デバイス860は、スイッチを3つの電圧発生システム891(正弦波)、892(ランプ)、893(一定DC)のうちの1つに移動させ得る。これは、電圧発生システムの各々が、識別された電圧波形を発生させることを結果的にもたらす。特定の動作条件下、例えば、正弦波パルスが3つのパルスに対して印加される場合、制御デバイス860は、電圧印加デバイス810が正弦波電圧を発生させるために、スイッチ890に、電圧調整器385からの電圧を正弦波電圧発生器891に接続させ得る。他の動作条件下、例えば、ランプ電圧が3つのパルスのうちの第1のパルスの第1の電圧としてセンサに印加され、正弦波電圧が3つのパルスのうちの第2のパルスの第1の電圧としてセンサに印加され、かつ一定DC電圧が3つのパルスのうちの第3のパルスの第1の電圧としてセンサに印加されるとき、制御デバイス860は、アノード/カソードサイクルの第1の時間フレーム中、電圧を、電圧発生または印加デバイス810から、ランプ電圧発生システム892に、次いで、正弦波電圧発生システム891に、次いで、一定DC電圧発生システム893に、接続することの間でスイッチ890を移動させる。この実施形態では、制御デバイス860はまた、第2の時間フレーム中、例えば、第2の電圧の印加中、電圧発生サブシステムのうちの特定のものを調整器385からの電圧に接続するようにスイッチを指示または制御し得る。
図9Aは、電圧パルスを発生させるためのマイクロコントローラを含むセンサ電子デバイスを例示する。高度なセンサ電子デバイスは、マイクロコントローラ410(図4参照)、デジタルアナログ変換器(DAC)420、演算増幅器840、およびセンサ信号測定回路431を含み得る。一実施形態では、センサ信号測定回路は、電流周波数(I/F)変換器430であり得る。図9Aに例示される実施形態では、マイクロコントローラ410内のソフトウェアまたはプログラム可能な論理は、DAC420に信号を送信する命令を提供し、これは、次いで、特定の電圧を演算増幅器840に出力するようにDAC420に命令する。マイクロコントローラ410はまた、図9Aの線911によって例示されるように、特定の電圧を作用電極375に出力するように命令され得る。上述のように、演算増幅器840および作用電極375への特定の電圧の印加は、対向電極で測定された電圧を特定の電圧の大きさに駆動し得る。言い換えると、マイクロコントローラ410は、センサ355(例えば、センサ355に連結された演算増幅器840)に印加される電圧または電圧波形を示す信号を出力する。代替的な実施形態では、固定電圧が、基準電極と作用電極375との間にDAC420から直接電圧を印加することによって設定され得る。同様の結果はまた、基準電極と作用電極との間に印加される固定電圧に等しい差で電極の各々に電圧を印加することによっても得られ得る。加えて、固定電圧は、基準電極と対向電極との間に電圧を印加することによって設定され得る。特定の動作条件下で、マイクロコントローラ410は、特定の大きさの電圧がセンサに印加されるべきであることを表す、DAC420が理解する特定の大きさのパルスを発生させ得る。第1の時間フレームの後、マイクロコントローラ410は(プログラムまたはプログラム可能な論理を介して)、第2の信号を出力し、これは、DAC420に、電圧を出力しないか(図6Aに説明される方法によって動作するセンサ電子デバイス360に対して)、または第2の電圧を出力するか(図6Bに説明される方法によって動作するセンサ電子デバイス360に対して)のいずれかを命令する。マイクロコントローラ410は、第2の時間フレームが経過した後、次いで、第1の電圧が印加されることを示す信号を送信し(第1の時間フレームに対して)、次いで、電圧が印加されないこと、または第2の電圧が印加されることを命令する信号を送信する(第2の時間フレームに対して)サイクルを繰り返す。
他の動作条件下では、マイクロコントローラ410は、DACにランプ電圧を出力するように命令する信号をDAC420に対して発生させ得る。他の動作条件下では、マイクロコントローラ410は、DAC420に正弦波電圧ランプ電圧をシミュレートする電圧を出力するように命令する信号をDAC420に対して発生させ得る。これらの信号は、前の段落または本出願で既に上述したパルス発生方法論のいずれにも組み込まれ得る。一実施形態では、マイクロコントローラ410は、一連の命令および/またはパルスを発生させ得、DAC420は、特定の一連のパルスが印加されるべきであることを意味するように受信および理解する。例えば、マイクロコントローラ410は、DAC420に、第1の時間フレームの第1の反復に対して定電圧、第2の時間フレームの第1の反復に対してランプ電圧、第1の時間フレームの第2の反復に対して正弦波電圧、かつ第2の時間フレームの第2の反復に対して2つの値を有する方形波を発生させるように命令する、一連の命令を送信し得る(信号および/またはパルスを介して)。
マイクロコントローラ410は、安定化時間フレームの間、または反復回数の間、このサイクルを継続するためのプログラム可能な論理またはプログラムを含み得る。例として、マイクロコントローラ410は、第1の時間フレームまたは第2の時間フレームが経過したときを識別するためのカウント論理を含み得る。加えて、マイクロコントローラ410は、安定化時間フレームが経過したことを識別するためのカウント論理を含み得る。先行する時間フレームのいずれかが経過した後、カウント論理は、新しい信号を送信するか、またはDAC420への信号の送信を停止するかのいずれかをマイクロコントローラに命令し得る。
マイクロコントローラ410の使用は、様々な電圧の大きさが、いくつかの持続時間に対するいくつかの順序で印加されることを可能にする。本発明の一実施形態では、マイクロコントローラ410は、1分の第1の期間の間に約1ボルトの大きさを有する電圧パルスを送信し、次いで、4分の第2の期間の間に約0.5ボルトの大きさを有する電圧パルスを送信し、4回の反復に対してこのサイクルを繰り返すようにデジタルアナログ変換器420に命令するための制御論理またはプログラムを含み得る。一実施形態では、マイクロコントローラ420は、信号を送信して、DAC420に、反復の各々で各第1の電圧に対して同じ大きさの電圧パルスを印加させるようにプログラムされ得る。マイクロコントローラ410は、信号を送信して、DACに、反復の各々で各第1の電圧に対して異なる大きさの電圧パルスを印加させるようにプログラムされてもよい。この実施形態では、マイクロコントローラ410はまた、信号を送信して、DAC420に、反復の各々で各第2の電圧に対して異なる大きさの電圧パルスを印加させるようにプログラムされ得る。例として、マイクロコントローラ410は、DAC420に、第1の反復で約1.0ボルトの第1の電圧パルスを印加させ、第1の反復で約0.5ボルトの第2の電圧パルスを印加させ、第2の反復で0.7ボルトの第1の電圧および0.4ボルトの第2の電圧を印加させ、第3の反復で1.2ボルトの第1の電圧および0.8ボルトの第2の電圧を印加させるように信号を送信するようにプログラムされ得る。
マイクロコントローラ410はまた、DAC420に、第1の時間フレームの間にいくつかの短い持続時間の電圧パルスを提供するように命令するようにプログラムされ得る。本発明のこの実施形態では、第1の時間フレーム全体(例えば、2分)の間に1つの電圧が印加されるのではなく、いくつかのより短い持続時間のパルスがセンサに印加され得る。この実施形態では、マイクロコントローラ410はまた、DAC420に、第2の時間フレームの間にいくつかの短い持続時間の電圧パルスをセンサに提供するように命令するようにプログラムされ得る。例として、マイクロコントローラ410は、信号を送信して、DACに、50ミリ秒または100ミリ秒である、いくつかの短い持続時間の電圧パルスを印加させ得る。これらの短い持続時間のパルスの間では、DACが電圧を印加しなくてもよく、またはDACが最小電圧を印加してもよい。マイクロコントローラは、DAC420に、第1の時間フレームの間、例えば2分間、短い持続時間の電圧パルスを印加させ得る。マイクロコントローラ410は、次いで、信号を送信して、DACに、いかなる電圧も印加させないか、または第2の時間フレームの間に第2の電圧の大きさで短い持続時間の電圧パルスをセンサに印加させるかのいずれかを行わせ得、例えば、第2の電圧は、0.75ボルトとすることができ、第2の時間フレームは、5分とすることができる。一実施形態では、マイクロコントローラ410は、DAC420に信号を送信して、DAC420に、第1の時間フレームおよび/または第2の時間フレームにおいて、短い持続時間のパルスの各々に対して異なる大きさの電圧を印加させ得る。一実施形態では、マイクロコントローラ410は、DAC420に信号を送信して、DAC420に、第1の時間フレームまたは第2の時間フレームの間、短い持続時間の電圧パルスに、あるパターンの電圧の大きさを印加させ得る。例えば、マイクロコントローラは、第1の時間フレーム中、30個の20ミリ秒のパルスをセンサに印加するようにDAC420に命令する信号またはパルスを送信し得る。30個の20ミリ秒のパルスの各々は、同じ大きさを有してもよく、または異なる大きさを有してもよい。この実施形態では、マイクロコントローラ410は、第2の時間フレーム中に短い持続時間のパルスを印加するようにDAC420に命令し得るか、または第2の時間フレーム中に別の電圧波形を印加するようにDAC420に命令し得る。
図6~8の開示は、電圧の印加を開示しているが、電流もまた、安定化プロセスを開始するためにセンサに印加されてもよい。例として、図6Bに例示される実施形態では、第1の電流が、第1の時間フレーム中に印加されて、アノードまたはカソード応答を開始させ得、第2の電流が、第2の時間フレーム中に印加されて、反対のアノードまたはカソード応答を開始させ得る。第1の電流および第2の電流の印加は、反復回数の間継続し得るか、または安定化時間フレームの間継続し得る。一実施形態では、第1の電流が、第1の時間フレームの間に印加され得、第1の電圧が、第2の時間フレームの間に印加され得る。言い換えると、アノードまたはカソードのサイクルの一方は、センサに印加される電流によってトリガされ得、アノードまたはカソードのサイクルの他方は、センサに印加される電圧によってトリガされ得る。上記のように、印加される電流は、定電流、ランプ電流、階段状パルス電流、または正弦波電流であり得る。特定の動作条件下では、電流は、第1の時間フレーム中に一連の短い持続時間のパルスとして印加され得る。
図9Bは、本明細書の本発明の実施形態による、安定化期間でのフィードバックのための分析モジュールを利用するセンサおよびセンサ電子機器を例示する。図9Bは、分析モジュール950をセンサ電子デバイス360に導入する。分析モジュール950は、センサからのフィードバックを利用して、センサが安定化されているか否かを決定する。一実施形態では、マイクロコントローラ410は、DAC420がセンサ355の一部に電圧または電流を印加するように、DAC420を制御するための命令またはコマンドを含み得る。図9Bは、電圧または電流が基準電極370と作用電極375との間に印加され得ることを示している。しかしながら、電圧または電流は、電極間に、または電極のうちの1つに直接的に印加されてもよく、本発明は、図9Bに例示される実施形態によって限定されるべきではない。電圧または電流の印加は、点線955によって例示されている。分析モジュール950は、センサ355の電圧、電流、抵抗、またはインピーダンスを測定し得る。図9Bは、測定が作用電極375で起こることを例示しているが、これは、他の実施形態が、センサの電極間で、または基準電極370もしくは対向電極365のいずれかで直接的に、電圧、電流、抵抗、またはインピーダンスを測定し得るため、本発明を限定するべきではない。分析モジュール950は、測定された電圧、電流、抵抗、またはインピーダンスを受信し得、測定値を記憶された値(例えば、閾値)と比較し得る。点線956は、電圧、電流、抵抗、またはインピーダンスの読み取りまたは測定を行う分析モジュール950を表す。特定の動作条件下では、測定された電圧、電流、抵抗、またはインピーダンスが閾値を上回る場合、センサは、安定化されており、センサ信号は、患者の生理学的条件の正確な読取値を提供している。他の動作条件下では、測定された電圧、電流、抵抗、またはインピーダンスが閾値を下回る場合、センサは、安定化されている。他の動作条件下では、分析モジュール950は、測定された電圧、電流、抵抗、またはインピーダンスが特定の時間フレーム、例えば、1分または2分の間安定していることを検証し得る。これは、センサ355が安定化されていることと、センサ信号が被験者の生理学的パラメータ、例えば、血中グルコースレベルの正確な測定値を送信していることと、を表し得る。センサが安定化されており、センサ信号が正確な測定を提供していると分析モジュール950が決定した後、分析モジュール950は、センサが安定化されており、マイクロコントローラ410がセンサ355からのセンサ信号を使用または受信することを開始することができることを示す信号(例えば、センサ安定化信号)をマイクロコントローラ410に送信し得る。これは、点線957によって表される。
図10は、水和電子機器を含むセンサシステムのブロック図を例示する。センサシステムは、コネクタ1010、センサ1012、およびモニタまたはセンサ電子デバイス1025を含む。センサ1012は、電極1020および接続部分1024を含む。一実施形態では、センサ1012は、コネクタ1010およびケーブルを介してセンサ電子デバイス1025に接続され得る。他の実施形態では、センサ1012は、センサ電子デバイス1025に直接接続され得る。いくつかの実施形態では、センサ1012は、センサ電子デバイス1025と同じ物理デバイスに組み込まれ得る。モニタまたはセンサ電子デバイス1025は、電源1030、調整器1035、信号プロセッサ1040、測定プロセッサ1045、およびプロセッサ1050を含み得る。モニタまたはセンサ電子デバイス1025はまた、水和検出回路1060を含み得る。水和検出回路1060は、センサ1012とインターフェースして、センサ1012の電極1020が十分に水和されているかどうかを決定する。電極1020が十分に水和されていない場合、電極1020は、正確なグルコース読取値を提供しないため、電極1020が十分に水和されているときを知ることが重要である。電極1020が十分に水和されると、正確なグルコース読取値が得られ得る。
図10に例示される実施形態では、水和検出回路1060は、遅延またはタイマーモジュール1065および接続検出モジュール1070を含み得る。短期センサまたは皮下センサを利用する実施形態では、センサ1012が皮下組織内に挿入された後、センサ電子デバイスまたはモニタ1025がセンサ1012に接続される。接続検出モジュール1070は、センサ電子デバイス1025がセンサ1012に接続されたことを識別し、信号をタイマーモジュール1065に送信する。これは、接続を検出し、センサ1012がセンサ電子デバイス1025に接続されたことを示す信号を接続検出モジュール1070に送信する、検出器1083を表す矢印1084によって図10に例示されている。移植可能または長期センサが利用される実施形態では、接続検出モジュール1070は、移植可能なセンサが体内に挿入されたことを識別する。タイマーモジュール1065は、接続信号を受信し、設定または確立された水和時間を待つ。例として、水和時間は、2分、5分、10分、または20分であり得る。これらの例は、例示であり、限定を意味するものではない。時間フレームは、設定された分数である必要はなく、任意の秒数を含み得る。一実施形態では、タイマーモジュール1065が設定された水和時間を待った後、タイマーモジュール1065は、線1086によって例示される水和信号を送信することによってセンサ1012が水和されたことをプロセッサ1050に通知し得る。
この実施形態では、プロセッサ1050は、水和信号を受信し、水和信号が受信された後のみ、センサ信号(例えば、センサ測定値)の利用を開始し得る。別の実施形態では、水和検出回路1060は、センサ(センサ電極1020)と信号プロセッサ1040との間に連結され得る。この実施形態では、水和検出回路1060は、タイマーモジュール1065が設定された水和時間が経過したことを水和検出回路1060に通知するまで、センサ信号が信号プロセッサ1040に送信されることを防止し得る。これは、参照番号1080および1081でラベル付けされた点線によって例示されている。例として、タイマーモジュール1065は、接続信号をスイッチ(またはトランジスタ)に送信して、スイッチをオンにし、センサ信号を信号プロセッサ1040に進めさせ得る。代替的な実施形態では、タイマーモジュール1065は、接続信号を送信して、水和検出回路1060内のスイッチ1088をオンにし(またはスイッチ1088を閉じる)、水和時間が経過した後に調整器1035からの電圧がセンサ1012に印加されることを可能にし得る。言い換えると、この実施形態では、調整器1035からの電圧は、水和時間が経過するまでセンサ1012に印加されない。
図11は、水和時間の決定を支援するための機械的スイッチを含む実施形態を例示する。一実施形態では、単一のハウジングが、センサアセンブリ1120およびセンサ電子デバイス1125を含み得る。別の実施形態では、センサアセンブリ1120が1つのハウジング内にあってもよく、センサ電子デバイス1125が別個のハウジング内にあってもよいが、センサアセンブリ1120およびセンサ電子デバイス1125は、一緒に接続され得る。この実施形態では、接続検出機構1160は、機械的スイッチとすることができる。機械的スイッチは、センサ1120がセンサ電子デバイス1125に物理的に接続されていることを検出し得る。タイマー回路1135はまた、センサ1120がセンサ電子デバイス1125に接続されていることを機械的スイッチ1160が検出したときにアクティブ化され得る。言い換えると、機械的スイッチが閉じ、信号がタイマー回路1135に転送され得る。水和時間が経過すると、タイマー回路1135は、スイッチ1140に信号を送信して、調整器1035がセンサ1120に電圧を印加することを可能にする。言い換えると、電圧は、水和時間が経過するまで、印加されない。一実施形態では、電流は、水和時間が経過すると、センサに印加されるように電圧を置換し得る。代替的な実施形態では、センサ1120がセンサ電子デバイス1125に物理的に接続されたことを機械的スイッチ1160が識別すると、電力がセンサ1120に最初に印加され得る。センサ1120に送信される電力は、センサ信号がセンサ1120の作用電極から出力されることを結果的にもたらす。センサ信号は、測定され、プロセッサ1175に送信され得る。プロセッサ1175は、カウンタ入力を含み得る。特定の動作条件下では、センサ信号がプロセッサ1175に入力されたときから、設定された水和時間が経過した後、プロセッサ1175は、被験者の体内のグルコースの正確な測定値としてセンサ信号の処理を開始し得る。言い換えると、プロセッサ1170は、一定時間の間、ポテンショスタット回路1170からセンサ信号を受信したとしても、水和時間が経過したことを識別するプロセッサのカウンタ入力からの指示を受信するまで、信号を処理しないことになる。一実施形態では、ポテンショスタット回路1170は、電流周波数変換器1180を含み得る。この実施形態では、電流周波数変換器1180は、センサ信号を電流値として受信し得、電流値を周波数値に変換し得、これは、プロセッサ1175が処理するためにより容易である。
機械的スイッチ1160はまた、センサ1120がセンサ電子デバイス1125から接続解除されたとき、プロセッサ1175に通知し得る。これは、図11の点線1176によって表される。これは、プロセッサ1170が、センサ電子デバイス1125のいくつかの構成要素、チップ、および/または回路に対して電源遮断または電力低下させることを結果的にもたらし得る。センサ1120が接続されていない場合、センサ電子デバイス1125の構成要素または回路が電源オン状態にある場合、電池または電源が消耗され得る。したがって、センサ1120がセンサ電子デバイス1125から接続解除されたことを機械的スイッチ1160が検出した場合、機械的スイッチは、これをプロセッサ1175に示し、プロセッサ1175は、センサ電子デバイス1125の電子回路、チップ、または構成要素のうちの1つ以上に対して電源遮断または電力低下させ得る。
図12は、本明細書の発明の一実施形態による、水和の検出方法を例示する。一実施形態では、センサの接続を検出するための電気検出機構が利用され得る。この実施形態では、水和検出電子機器1250は、AC電源1255および検出回路1260を含み得る。水和検出電子機器1250は、センサ電子デバイス1225内に位置し得る。センサ1220は、対向電極1221、基準電極1222、および作用電極1223を含み得る。図12に例示されるように、AC電源1255は、電圧設定デバイス1275、基準電極1222、および検出回路1260に連結される。この実施形態では、AC電源からのAC信号は、図12の点線1291によって例示されるように、基準電極接続に印加される。AC信号は、インピーダンスを介してセンサ1220に連結され得、連結された信号は、センサ1220がセンサ電子デバイス1225に接続されている場合、有意に減衰される。したがって、低レベルのAC信号が検出回路1260への入力に存在する。これは、高度に減衰された信号または高レベルの減衰を伴う信号とも呼ばれ得る。特定の動作条件下では、AC信号の電圧レベルは、Vappplied×(Ccoupling)/(Ccoupling+Csensor)であり得る。高レベルAC信号(低減衰信号)が検出回路1260の入力端子に存在することを検出回路1260が検出した場合、センサ1220が十分に水和またはアクティブ化されていないため、割り込みがマイクロコントローラ410に送信されない。例えば、検出回路1260の入力は、比較器であり得る。センサ1220が十分に水和(または湿潤)されている場合、有効静電容量(例えば、図12の容量Cr-c)が対向電極と基準電極との間に形成され、有効静電容量(例えば、図12の静電容量Cw-r)が基準電極と作用電極との間に形成される。言い換えると、有効静電容量は、2つのノード間に形成される静電容量に関係し、実際のコンデンサが2つの電極間の回路に配置されていることを表すものではない。一実施形態では、AC電源1255からのAC信号は、容量Cr-cおよびCw-rによって十分に減衰され、検出回路1260は、AC電源1255からの低レベルまたは高度に減衰されたAC信号の存在を、検出回路1260の入力端子で検出する。この実施形態は、センサ1120とセンサ電子デバイス1125との間の既存の接続の利用がセンサへの接続の数を減らすため、重要である。言い換えると、図11に開示されている機械的スイッチは、スイッチ、およびセンサ1120とセンサ電子デバイス1125との間の関連付けられた接続を必要とする。センサ1120は、サイズが継続的に縮小しているため、機械的スイッチを排除することは有利であり、構成要素の排除は、このサイズの低減を達成することを助ける。代替的な実施形態では、AC信号は、異なる電極(例えば、対向電極または作用電極)に印加されてもよく、本発明は、同様の様態で動作し得る。
上記のように、低レベルAC信号が検出回路1260の入力端子に存在することを検出回路1260が検出した後、検出回路1260は、低減衰を伴う高レベルAC信号が入力端子に存在することを後から検出し得る。これは、センサ1220がセンサ電子デバイス1225から接続解除されていること、またはセンサが適切に動作していないことを表す。センサがセンサ電子デバイス1225から接続解除されている場合、AC電源は、ほとんど減衰を伴わず、または低い減衰を伴って検出回路1260の入力に連結され得る。上記のように、検出回路1260は、マイクロコントローラへの割り込みを発生させ得る。この割り込みは、マイクロコントローラによって受信され得、マイクロコントローラは、センサ電子デバイス1225内の1つまたはいくつかの構成要素または回路への電力を低減または排除し得る。これは、第2の割り込みと呼ばれ得る。繰り返しになるが、これは、特に、センサ1220がセンサ電子デバイス1225に接続されていないとき、センサ電子デバイス1225の電力消費を低減することを助ける。
代替的な実施形態では、AC信号は、参照番号1291によって示されるように、基準電極1222に印加され得、インピーダンス測定デバイス1277は、センサ1220内のエリアのインピーダンスを測定し得る。例として、エリアは、図12の点線1292によって例示されるように、基準電極と作用電極との間のエリアであり得る。特定の動作条件下では、インピーダンス測定デバイス1277は、測定されたインピーダンスがインピーダンス閾値または他の設定基準を下回るまで低下した場合、信号を検出回路1260に送信し得る。これは、センサが十分に水和されていることを表す。他の動作条件下では、インピーダンス測定デバイス1277は、インピーダンスがインピーダンス閾値を上回ると、信号を検出回路1260に送信し得る。検出回路1260は、次いで、割り込みをマイクロコントローラ410に送信する。別の実施形態では、インピーダンス測定デバイス1277は、割り込みまたは信号をマイクロコントローラに直接送信し得る。
代替的な実施形態では、AC電源1255は、DC電源によって置換され得る。DC電源が利用される場合、抵抗測定要素が、インピーダンス測定要素1277の代わりに利用され得る。抵抗測定要素を利用する実施形態では、抵抗が抵抗閾値または設定基準を下回って降下すると、抵抗測定要素は、センサが十分に水和されていること、および電力がセンサに印加され得ることを示す信号を検出回路1260(点線1293で表される)に、または直接マイクロコントローラに送信し得る。
図12に例示される実施形態では、検出回路1260がAC電源からの低レベルまたは高度に減衰されたAC信号を検出した場合、割り込みがマイクロコントローラ410に発生する。この割り込みは、センサが十分に水和されていることを示す。この実施形態では、割り込みに応答して、マイクロコントローラ410は、デジタルアナログ変換器420に転送される信号を発生させて、デジタルアナログ変換器420に、センサ1220に電圧または電流を印加させる。図6A、6B、または6Cで上記に説明された異なるシーケンスのパルスまたは短い持続時間のパルスのうちのいずれか、またはパルスの印加を説明する関連テキストが、センサ1220に適用され得る。例として、DAC420からの電圧は、演算増幅器1275に印加され得、その出力は、センサ1220の対向電極1221に印加される。これは、センサ、例えば、センサの作用電極1223によって発生するセンサ信号を結果的にもたらす。割り込みによって識別されるように、センサが十分に水和されているため、作用電極1223で生成されたセンサ信号は、グルコースを正確に測定している。センサ信号は、センサ信号測定デバイス431によって測定され、センサ信号測定デバイス431は、センサ信号をマイクロコントローラ410に送信し、被験者の生理学的条件のパラメータが測定される。割り込みの発生は、センサが十分に水和されていること、およびセンサ1220が正確なグルコース測定値を現在供給していることを表す。この実施形態では、水和期間は、センサのタイプおよび/または製造者、ならびに被験者への挿入または移植に対するセンサの反応に依存し得る。例として、1つのセンサ1220は、5分の水和時間を有し得、1つのセンサ1220は、1分、2分、3分、6分、または20分の水和時間を有し得る。繰り返しになるが、任意の時間が、センサにとって許容可能な水和時間であり得るが、より短い時間が好ましい。
センサ1220が接続されているが、十分に水和または湿潤されていない場合、有効静電容量Cr-cおよびCw-rは、AC電源1255からのAC信号を減衰させない場合がある。センサ1120の電極は、挿入前は乾燥しており、電極が乾燥しているため、良好な電気経路(または導電経路)が2つの電極間に存在しない。したがって、高レベルAC信号または低減衰のAC信号は、依然として、検出回路1260によって検出され得、割り込みが発生しない場合がある。センサが挿入されると、電極は、導電性体液に浸されることになる。これは、より低いDC抵抗を伴う漏れ経路を結果的にもたらす。また、境界層コンデンサが金属/流体界面に形成される。言い換えると、金属/流体界面の間にかなり大きい静電容量が形成され、この大きい静電容量は、センサの電極間の直列の2つのコンデンサのように見える。これは、有効静電容量と呼ばれ得る。実際には、電極上の電解質の伝導率が測定されている。本発明のいくつかの実施形態では、グルコース制限膜(GLM)もまた、電気効率を阻害するインピーダンスを例示する。水和されていないGLMは、高インピーダンスを結果的にもたらすが、水分が多いGLMは、低インピーダンスを結果的にもたらす。低インピーダンスは、正確なセンサ測定に望ましい。
図13Aは、本明細書の本発明の一実施形態による、センサを水和する方法を例示する。一実施形態では、センサが、センサ電子デバイスに物理的に接続され得る(1310)。接続後、一実施形態では、タイマーまたはカウンタが、水和時間をカウントするために始動され得る(1320)。水和時間が経過した後、信号が、センサ電子デバイス内のサブシステムに送信されて、センサに対する電圧の印加を開始し得る(1330)。上述のように、一実施形態では、マイクロコントローラが、信号を受信し、DACに、センサに電圧を印加するように命令し得るか、または本発明の別の実施形態では、調整器がセンサに電圧を印加することを可能にする信号をスイッチが受信し得る。水和時間は、5分、2分、10分であり得、被験者およびセンサのタイプにも依存して変化し得る。
代替的な実施形態では、センサ電子デバイスへのセンサの接続後、AC信号(例えば、低電圧AC信号)が、センサ、例えば、センサの基準電極に印加され得る(1340)。センサ電子デバイスへのセンサの接続は、AC信号がセンサに印加されることを可能にするため、AC信号は、印加され得る。AC信号の印加後、電圧が印加されるセンサの電極と他の2つの電極との間に有効静電容量が形成される(1350)。検出回路が、検出回路の入力に存在するAC信号のレベルを決定する(1360)。低レベルAC信号(または高度に減衰されたAC信号)が、電極間の良好な電路を形成する静電容量および結果的に生じるAC信号の減衰に起因して、検出回路の入力に存在する場合、割り込みが、検出回路によって発生し、マイクロコントローラに送信される(1370)。
マイクロコントローラが、検出回路によって発生した割り込みを受信し、デジタルアナログ変換器に、センサの電極、例えば、対向電極に電圧を印加するように命令するか、または印加させる信号をデジタルアナログ変換器に送信する(1380)。センサの電極への電圧の印加は、センサがセンサ信号を生成または発生させることを結果的にもたらす(1390)。センサ信号測定デバイス431は、発生したセンサ信号を測定し、センサ信号をマイクロコントローラに送信する。マイクロコントローラが、作用電極に連結されるセンサ信号測定デバイスからセンサ信号を受信し、センサ信号を処理して、被験者または患者の生理学的特性の測定値を抽出する(1395)。
図13Bは、本明細書の本発明の一実施形態による、センサの水和を検証するための追加の方法を例示する。図13Bに例示される実施形態では、センサが、センサ電子デバイスに物理的に接続される(1310)。AC信号が、センサ内の電極、例えば、基準電極に印加される(1341)。あるいは、別の実施形態では、DC信号が、センサの電極に印加される(1341)。AC信号が印加される場合、インピーダンス測定要素が、センサ内のある点でのインピーダンスを測定する(1351)。あるいは、DC信号が印加される場合、抵抗測定要素が、センサ内のある点での抵抗を測定する(1351)。抵抗またはインピーダンスが、それぞれ、抵抗閾値またはインピーダンス閾値よりも低い場合(または他の設定基準)、インピーダンス(または抵抗)測定要素は、検出回路に送信し(または信号が送信されることを可能にする)、検出回路は、センサが水和されていることを識別する割り込みをマイクロコントローラに送信する(1361)。参照番号1380、1390、および1395は、それらが同じ措置を表すため、図13Aおよび13Bで同じである。
マイクロコントローラが、割り込みを受信し、デジタルアナログ変換器に信号を送信して、センサに電圧を印加する(1380)。代替的な実施形態では、デジタルアナログ変換器は、上述のように、センサに電流を印加してもよい。センサ、例えば、作用電極が、患者の生理学的パラメータを表すセンサ信号を生成する(1390)。マイクロコントローラが、センサ内の電極、例えば、作用電極でのセンサ信号を測定するセンサ信号測定デバイスからセンサ信号を受信する(1395)。マイクロコントローラは、センサ信号を処理して、被験者または患者の生理学的特性、例えば、患者の血中グルコースレベルの測定値を抽出する。
図14Aおよび14Bは、本明細書の本発明の一実施形態による、センサの水和をセンサの安定化と組み合わせる方法を例示する。図14Aに例示されている本発明の実施形態では、センサが、センサ電子デバイスに接続される(1405)。AC信号が、センサの電極に印加される(1410)。検出回路が、検出回路の入力に存在するAC信号のレベルを決定する(1420)。検出回路が、低レベルのAC信号が入力に存在する(AC信号に対する高レベルの減衰を表す)と決定した場合、割り込みがマイクロコントローラに送信される(1430)。割り込みがマイクロコントローラに送信されると、マイクロコントローラが、上記のように、安定化シーケンス、すなわち、センサの電極に対するいくつかの電圧パルスの印加を始めるか、または開始することを知る(1440)。例えば、マイクロコントローラは、デジタルアナログ変換器に、3つの電圧パルス(+0.535ボルトの大きさを有する)をセンサに印加させ、3つの電圧パルスの各々の後に3つの電圧パルス(印加される1.07ボルトの大きさを有する)の期間が続く。これは、電圧の安定化シーケンスの送信と呼ばれ得る。マイクロコントローラは、読み出し専用メモリ(ROM)またはランダムアクセスメモリでのソフトウェアプログラムの実行によって、これを引き起こし得る。安定化シーケンスの実行が終了した後、センサが、センサ信号を発生させ得、これが、測定され、マイクロコントローラに送信される(1450)。
水和時間閾値が経過した後でも、高レベルのAC信号が検出回路の入力(例えば、比較器の入力)に存在し続けていると検出回路が決定し得る(1432)。例えば、水和時間閾値は、10分とすることができる。10分が経過した後、検出回路は、依然として、高レベルAC信号が存在することを検出している場合がある。この時点で、検出回路が、水和支援信号をマイクロコントローラに送信し得る(1434)。マイクロコントローラが水和支援信号を受信した場合、マイクロコントローラが、信号を送信して、DACに電圧パルスまたは一連の電圧パルスを印加させて、水和においてセンサを支援し得る(1436)。一実施形態では、マイクロコントローラが、信号を送信して、DACに安定化シーケンスの一部分または他の電圧パルスを印加させて、水和においてセンサを支援し得る。この実施形態では、電圧パルスの印加は、低レベルAC信号(または高度に減衰された信号)が検出回路で検出されることを結果的にもたらす(1438)。この時点で、検出回路は、ステップ1430に開示されているように、割り込みを送信し得、マイクロコントローラは、安定化シーケンスを開始し得る。
図14Bは、フィードバックが安定化プロセスで利用される、水和方法と安定化方法との組み合わせの第2の実施形態を例示する。センサが、センサ電子デバイスに接続される(1405)。AC信号(またはDC信号)が、センサに印加される(1411)。一実施形態では、AC信号(またはDC信号)が、センサの電極、例えば、基準電極に印加される。インピーダンス測定デバイス(または抵抗測定デバイス)が、センサの指定されたエリア内、例えば、基準電極と作用電極との間のインピーダンス(または抵抗)を測定する(1416)。測定されたインピーダンス(または抵抗)は、インピーダンスまたは抵抗値と比較されて、インピーダンス(または抵抗)がセンサ内で十分に低いかどうかを確認し得、これは、センサが水和されていることを示す(1421)。インピーダンス(もしくは抵抗)がインピーダンス(もしくは抵抗)値または他の設定基準(閾値であり得る)を下回っている場合、割り込みがマイクロコントローラに送信される(1431)。割り込みを受信した後、マイクロコントローラが、DACにセンサへの電圧(または電流)の安定化シーケンスを適用するように命令する信号をDACに送信する(1440)。安定化シーケンスがセンサに適用された後、センサ信号が、センサ内で(例えば、作用電極で)生成され、センサ信号測定デバイスによって測定され、センサ信号測定デバイスによって送信され、マイクロコントローラによって受信される(1450)。センサが水和されており、電圧の安定化シーケンスがセンサに適用されているため、センサ信号は、生理学的パラメータ(つまり、血中グルコース)を正確に測定している。
図14Cは、安定化方法と水和方法とが組み合わせられた第3の実施形態を例示する。この実施形態では、センサが、センサ電子デバイスに接続される(1500)。センサがセンサ電子デバイスに物理的に接続された後、AC信号(またはDC信号)が、センサの電極(例えば、基準電極)に印加される(1510)。同時に、またはほぼ同時に、マイクロコントローラが、信号を送信して、DACに安定化電圧シーケンスをセンサに適用させる(1520)。代替的な実施形態では、安定化電流シーケンスが、安定化電圧シーケンスの代わりにセンサに適用され得る。検出回路が、検出回路の入力に存在するAC信号(またはDC信号)のレベルを決定する(1530)。検出回路の入力端子に存在する、高度に減衰されたAC信号(またはDC信号)を表す、低レベルAC信号(またはDC信号)が存在する場合、割り込みがマイクロコントローラに送信される(1540)。マイクロコントローラが既に安定化シーケンスを開始しているため、マイクロコントローラが、割り込みを受信し、センサが十分に水和されていることを示す第1のインジケータを設定する(1550)。安定化シーケンスが完了した後、マイクロコントローラが、安定化シーケンスの完了を示す第2のインジケータを設定する(1555)。安定化シーケンス電圧の印加は、センサ、例えば、作用電極が、センサ信号測定回路によって測定され、かつマイクロコントローラに送信される、センサ信号を生成することを結果的にもたらす(1560)。安定化シーケンスが完了したという第2のインジケータが設定され、かつ水和が完了したという第1のインジケータが設定された場合、マイクロコントローラが、センサ信号を利用することができる(1570)。インジケータの一方または両方が設定されていない場合、マイクロコントローラは、センサ信号が被験者の生理学的測定値の正確な測定値を表していない可能性があるため、センサ信号を利用しない場合がある。
上記の水和および安定化プロセスは、一般に、より大規模な連続的グルコース監視(CGM)方法論の一部として使用され得る。連続的グルコース監視の現在の最先端技術は、主に補助的であり、これは、CGMデバイス(例えば、移植可能センサまたは皮下センサを含む)によって提供される読取値が、臨床決定を行うために基準値なしで使用することができないことを意味する。そのため、基準値は、概して、例えば、BG計を使用して指採血から取得されなければならない。センサ/検知構成要素から利用可能である情報量が限られているため、基準値が必要とされる。具体的には、生のセンサ値(すなわち、センサ電流またはIsig)、および対向電極と基準電極との間の電圧である対向電圧(例えば、図5参照)のみが、処理のために感知構成要素によって提供され得る。したがって、分析中、生のセンサ信号が異常であることが明らかな場合(例えば、信号が減少している場合)、センサ故障とユーザ/患者の生理的変化(すなわち、体内のグルコースレベルの変化)との間を区別することができる唯一の手段は、指採血を介して基準グルコースレベルを取得することによるものであり得る。既知であるように、基準指採血はまた、センサの較正に使用される。
本明細書に説明される本発明の実施形態は、基準指採血の要件が最小限に抑えられるか、または排除され得る、より自律的なシステムならびに関連するデバイスおよび方法論を結果的にもたらす、連続的グルコース監視の進歩および改善を対象としており、それによって、臨床上の決定が、高レベルの信頼性を有する、センサ信号単独由来の情報に基づいてなされ得る。センサ設計の観点から、本発明の実施形態によると、そのような自律性は、電極冗長性、センサ冗長性(例えば、2つ以上のセンサ間の疑似直交冗長性を含む)、センサ診断、ならびにIsigおよび/またはセンサ(SG)融合を介して達成され得る。
本明細書の議論では、そして本発明の目的のために、「冗長性」は、単一のセンサ上/内に含有されるか、または2つ以上のセンサ上/内に含有されるかにかかわらず、2つ以上の電極の存在/使用を指す。つまり、冗長性は、例えば、患者の血中グルコース(BG)レベルを示す複数の信号を生成するために、複数の作用電極(単一のセンサ内、または同一であるか否かにかかわらず2つ以上のセンサ間)の使用を介して、達成され得る。そのため、複数の信号が、融合されたグルコース値を発生させ、(作用)電極の相対的な健全性、センサの全体的な信頼性、および必要な場合、較正基準値の必要性の頻度を評価するために、使用され得る。
例えば、複数の電気化学的センサから信号を取得することは、同じプローブ(または「ワイヤ」)上の複数の電極を介して、または空間分離および2つの別個のプローブを利用することによって実現される、単純冗長性の形態で改善された性能を提供し得ることが知られている。例えば、Medtronic,Inc.は、2つのプローブを含む病院用グルコースセンサを販売しており、各プローブ上に2つの作用電極を有し、4つの独立グルコース信号を結果的にもたらす。
単純冗長性とは対照的に、直交冗長性は、2つのデバイスの故障モードが完全に特有であり、かつ交わらない、同じ目標に到達するために2つの異なるテクノロジーを採用する2つのデバイスとして定義され得る。したがって、直交冗長性は、例えば、光学的感知および電気化学的感知の技術を組み合わせることによって形成され得る。明らかに、直交冗長性の利点は、2つのタイプのセンサ、例えば、光学的および電気化学的(または「echem」)センサが、異なるタイプの干渉、故障モード、および身体応答の影響を受けることである。一方、2つの完全に異なる技術の使用は、患者の体内のグルコースレベルの測定および分析に、追加の設計層および計算の複雑性を導入する。
疑似直交冗長性は、一方で、同じ技術を利用することによって達成され得るが、追加の設計および/または計算の複雑性を最小限に抑えながら、補完的なグルコース測定値を発生させるために、わずかながら有意な変形を伴う。これに関して、以下でより詳細に検討されるように、本明細書の本発明の一実施形態では、2つ以上の電気化学的センサが用いられ得、1つ(または2つ以上)のセンサは、従来の過酸化物ベースセンサ(上記に詳細に論じられたタイプの)とすることができ、1つ(または2つ以上)のセンサは、2つの作用電極(通常は同じセンサ上の)間の酸素の差を計算することによってグルコースを測定し得る。
センサ診断は、センサの健全性をリアルタイムで調べられるようにする追加の(診断)情報の使用を含む。これに関して、電気化学的インピーダンス分光法(EIS)は、センサインピーダンスおよび異なる周波数でのインピーダンス関連パラメータの形態でそのような追加情報を提供することが発見された。さらに、有利なことに、特定の範囲の周波数について、インピーダンスおよび/またはインピーダンス関連データは、実質的にグルコース非依存性であることがさらに発見された。このようなグルコース非依存性は、堅牢で高信頼性のセンサグルコース値(以下により詳細に説明される融合方法論手法によって)を生成するのみならず、グルコース依存性Isigとは実質的に無関係のセンサ全体の個々の電極の条件、健全性、使用期間、および効率を評価するために、様々なEISベースマーカまたはインジケータの使用を可能にする。
例えば、グルコース非依存性インピーダンスデータの分析は、例えば、1kHzの実インピーダンス、1kHzの虚インピーダンス、およびナイキスト勾配の値(以下により詳細に説明される)を使用して、どの程度速くセンサが水和し、データ取得の準備ができるかに関してセンサの効率に関する情報を提供する。さらに、グルコース非依存インピーダンスデータは、センサ膜表面に存在し得る潜在的な閉塞に関する情報を提供し、閉塞は、センサ中へのグルコースの通過を一時的に阻害し、したがって、信号をディップさせ得る(例えば、1kHzの実インピーダンスの値を使用して)。加えて、グルコース非依存性インピーダンスデータは、例えば、1kHz以上の周波数での位相角および/または虚インピーダンスの値を使用して、挿入部位での局所的な酸素欠損に潜在的に起因する、長時間の着用中のセンサ感度の損失に関する情報を提供する。
(電極)冗長性およびEISの文脈内で、融合アルゴリズムが、各冗長電極に対するEISによって提供される診断情報を取得し、各電極の信頼性を独立して評価するために使用され得る。信頼性の尺度である重みが、次いで、各独立信号に対して加算され得、単一の融合された信号が計算され得、患者/被験者によって確認されるセンサグルコース値を発生させるために使用され得る。
上記から分かるように、冗長性、EISを使用するセンサ診断、およびEISベース融合アルゴリズムを組み合わせた使用は、より信頼性の高いCGMシステム全体を可能にする。冗長性は、少なくとも2つの点で有利である。第1に、冗長性は、複数の信号を提供することによって、単一故障点の危険性を除去する。第2に、単一の電極で十分であり得る複数の(作用)電極を提供することは、冗長電極の出力が主電極に対するチェックとして使用されることを可能にし、それによって、頻繁な較正の必要性を低減、およびおそらく排除する。加えて、EIS診断は、基準グルコース値(指採血)を必要とせずに、各電極の健全性を自律的に精査し、それによって、必要な基準値の数を低減する。
EIS、またはACインピーダンス方法は、周期的な小振幅AC信号の印加に対するシステム応答を調査する。これは、図15Aに例示的に示されており、Eが印加電位であり、Iが電流であり、インピーダンス(Z)がΔE/ΔIとして定義される。しかしながら、インピーダンス自体は、数学的には単純にΔE/ΔIとして定義され得るが、これまで、連続的グルコース監視に対するEIS技術の適用の商業化に成功していない。これは、部分的には、グルコースセンサが非常に複雑なシステムであり、これまでのところ、グルコースセンサのEIS出力の複雑性を完全に説明し得る数学モデルが開発されていないという事実に起因している。
電気化学的インピーダンス分光法を説明するために使用されてきた1つの簡略化された電気回路モデルが、図15Bに示されている。この例示では、IHPが内部ヘルムホルツ面を示し、OHPが外部ヘルムホルツ面を示し、CEが対向電極であり、WEが作用電極であり、Cdが二重層静電容量、Rpが分極抵抗、Zwがワールブルグインピーダンス、Rsが溶液抵抗である。後者の4つの構成要素、二重層静電容量(Cd)、ワールブルグインピーダンス(Zw)、分極抵抗(Rp)、および溶液抵抗(Rs)の各々は、センサ性能に重要な役割を果たし得、低周波数または高周波数の交流作用電位を印加することによって別個に測定され得る。例えば、ワールブルグインピーダンスは、主に低周波数インピーダンスである電気化学的システムの拡散インピーダンスに密接に関連しており、したがって、全ての拡散制限電気化学的センサに存在する。したがって、これらの構成要素のうちの1つ以上をグルコースセンサの1つ以上の構成要素および/または層と相関させることによって、センサ診断ツールとしてEIS技術を使用することができる。
周知のように、インピーダンスは、その大きさおよび位相に関して定義され得、大きさ(|Z|)は、電流振幅に対する電圧差振幅の比率であり、位相(θ)は、電流が電圧よりも進む位相シフトである。回路が直流(DC)のみで駆動されるとき、インピーダンスは、抵抗と同じであり、すなわち、抵抗は、ゼロ位相角を有する特殊な場合のインピーダンスである。しかしながら、複素量として、インピーダンスはまた、その実部および虚部によっても表され得る。これに関して、実インピーダンスおよび虚インピーダンスは、次の方程式を使用してインピーダンスの大きさおよび位相から導出され得る。
実インピーダンス(ω)=大きさ(ω)×cos(位相(ω)/180xπ)
虚インピーダンス(ω)=大きさ(ω)×sin(位相(ω)/180xπ)
式中、ωは、大きさ(オーム)および位相(度)が測定される入力周波数を表す。一方のインピーダンスともう一方の電流および電圧との間の関係は、前者が後者の測定に基づいてどのように計算され得るかを含み、本明細書に説明される本発明の実施形態に使用するために開発された特定用途向け集積回路(ASIC)を含む、センサ電子機器に関連して、以下により完全に検討されることになる。
図15Bに示される回路モデルを続けると、総システムインピーダンスは、次のように簡略化され得る。
式中、Zw(ω)は、ワールブルグインピーダンスであり、ωは、角速度であり、jは、虚数単位(電流と混同しないように慣例的な「i」の代わりに使用した)、Cd、Rp、およびRsは、それぞれ、二重層静電容量、分極抵抗、および溶液抵抗である(上記に定義したとおり)。ワールブルグインピーダンスは、次のように計算され得る。
式中、Dは、拡散率であり、Lは、センサ膜厚であり、Cは、過酸化物濃度であり、m:1/2は、45°ナイキスト勾配に対応する。
ナイキストプロットは、図解表現であり、インピーダンスの実部(Real Z)が、周波数のスペクトルにわたって、その虚部(Img Z)に対してプロットされる。図16Aは、ナイキストプロットの一般化された例を示し、X値は、インピーダンスの実部であり、Y値は、インピーダンスの虚部である。位相角は、大きさ|Z|を有するベクトルを定義するインピーダンス点(X、Y)とX軸との間の角度である。
図16Aのナイキストプロットは、0.1Hz~1000MHz(すなわち、周波数掃引)の選択された周波数で作用電極と対向電極との間にAC電圧に加えてDC電圧(DCバイアス)を印加することによって発生する。右から始まって、周波数は、0.1Hzから増加する。各周波数を用いて、実インピーダンスおよび虚インピーダンスが計算およびプロットされ得る。示されているように、電気化学的システムの典型的なナイキストプロットは、変曲点で直線に接合された半円のように見え得、半円および線は、プロットされたインピーダンスを示す。特定の実施形態では、変曲点でのインピーダンスは、ナイキストプロットで識別することが最も容易であり、かつ切片を定義し得るため、特に関心がもたれる。典型的には、変曲点は、X軸に近く、変曲点のX値は、分極抵抗と溶液抵抗との合計(Rp+Rs)に近似する。
図16Bを参照すると、ナイキストプロットは、典型的には、より低い周波数領域1610およびより高い周波数領域1620に関して説明され得、「より高い周波数」および「より低い周波数」というラベルは、相対的な意味で使用され、限定を意図するものではない。したがって、例えば、より低い周波数領域1610は、約0.1Hz~約100Hz(またはそれよりも高い)の周波数範囲について得られたデータ点を例示的に含み得、より高い周波数領域1620は、約1kHz(またはそれよりも低い)~約8kHz(およびそれよりも高い)の周波数範囲について得られたデータ点を例示的に含み得る。より低い周波数領域1610では、ナイキスト勾配は、ナイキストプロットのより低周波数データ点の線形適合1630の勾配を表す。示されるように、より高い周波数領域1620では、虚インピーダンスの値が最小であり、無視できるようになる可能性がある。したがって、切片1600は、本質的に、より高い周波数(例えば、この場合、おおよそ1kHz~8kHzの範囲)での実インピーダンスの値である。図16Bでは、切片1600は、約25キロオームである。
図16Cおよび16Dは、グルコースセンサが正弦波(すなわち、交流)作用電位にどのように応答するかを実証する。これらの図では、GLMは、センサのグルコース制限膜であり、APは、接着促進剤であり、HSAは、ヒト血清アルブミンであり、GOXは、グルコースオキシダーゼ酵素(層)であり、Edcは、DC電位であり、Eacは、AC電位であり、C'過酸化物 は、AC印加中の過酸化物濃度である。図16Cに示されるように、AC電位周波数、分子拡散率、および膜厚の関数であるセンサ拡散長が、膜(GOX)の長さと比較して短い場合、システムは、一定の位相角を有する比較的線形の応答(すなわち無限)を与える。対照的に、拡散長が膜(GOX)の長さに等しい場合、システム応答が有限になり、図16Dに示されるように、半円ナイキストプロットを結果的にもたらす。後者は、通常、非ファラデープロセスが無視できる低周波数EISに対して成り立つ。
EIS分析を実施する際、様々な周波数のAC電圧およびDCバイアスが、例えば、作用電極と基準電極との間に印加され得る。これに関して、EISは、単一の周波数の単純なDC電流またはAC電圧に印加を制限していた以前の方法論に対する改善である。一般に、EISは、μHz~MHzの範囲の周波数で実施され得るが、本明細書に説明される本発明の実施形態では、より狭い範囲の周波数(例えば、約0.1Hz~約8kHz)で十分であり得る。したがって、いくつかの実施形態では、約0.1Hz~約8kHzの周波数範囲内に収まり、少なくとも100mVまでの、好ましくは、約50mVのプログラム可能な振幅を有するAC電位が印加され得る。
上記の周波数範囲内で、相対的により高い周波数、すなわち、一般に約1kHz~約8kHzに収まるものが、センサの容量性質を精査するために使用される。膜の厚さおよび透過性に依存して、相対的により高い周波数でのインピーダンスの典型的な範囲は、例えば、約500オームと25キロオームの間であり、位相の典型的な範囲は、例えば、0度~40度であり得る。一方で、相対的により低い周波数、すなわち、一般に約0.1Hz~約100Hzに収まる周波数は、センサの抵抗性質を精査するために使用される。ここで、電極設計および金属化の範囲に依存して、出力実インピーダンスの典型的な機能範囲は、例えば、約50キロオーム~300キロオームであり得、位相の典型的な範囲は、約-50度~約-90度であり得る。上記の例示的な範囲は、例えば、図16Eおよび16Fのボードプロットに示されている。
上記のように、「より高い周波数」および「より低い周波数」という語句は、絶対的な意味ではなく、互いに対して相対的に使用されることを意図しており、それらは、上述された典型的なインピーダンスおよび位相範囲と同様に、例示を意味し、限定を意味するものではない。それにもかかわらず、基本的な原理は、同じままであり、センサの容量性および抵抗性の挙動は、周波数スペクトルにわたるインピーダンスデータを分析することによって精査され得、典型的には、より低い周波数は、より抵抗性の構成要素(例えば、電極)に関する情報を提供し、一方でより高い周波数は、容量性の構成要素(例えば、膜)に関する情報を提供する。しかしながら、各場合の実際の周波数範囲は、例えば、電極のタイプ、電極の表面積、膜厚、膜の透過性などを含む、全体的な設計に依存する。高周波数回路構成要素とセンサ膜との間、および低周波数回路構成要素と、例えば、電極を含むファラデープロセスとの間の一般的な対応に関しては、図15Bも参照されたい。
EISは、センサが単一の作用電極を含むセンサシステム、およびセンサが複数の(冗長)作用電極を含むセンサシステムで使用され得る。一実施形態では、EISは、センサの使用期間(または経時変化)に関する価値のある情報を提供する。具体的には、異なる周波数では、インピーダンスの大きさおよび位相角が変化する。図17に見られるように、センサインピーダンス、特に、RpとRsとの合計は、センサ使用期間およびセンサの動作条件を反映する。したがって、新しいセンサは、通常、図17の異なるプロットから分かるように、使用されているセンサよりも高いインピーダンスを有する。このように、RpとRsとの合計のX値を考慮することによって、センサの使用期間がセンサの指定された動作寿命を超えたときを決定するために閾値が使用され得る。図17~21に示され、以下に説明される例示的な例に関して、変曲点での実インピーダンスの値(すなわち、Rp+Rs)が、センサの経時変化、ステータス、安定化、および水和を決定するために使用されるが、代替的な実施形態では、実インピーダンスに加えて、またはその代わりに、例えば、虚インピーダンス、位相角、ナイキスト勾配などの、他のEISベースパラメータを使用し得ることに留意されたい。
図17は、センサの寿命にわたるナイキストプロットの一例を例示する。矢印によって示される点は、周波数スペクトルにわたる各掃引の各々の変曲点である。例えば、初期化前(時間t=0)、Rs+Rpは、8.5キロオームよりも高く、初期化後(時間t=0.5時間)、Rs+Rpの値は、8キロオームを下回って低下した。次の6日間にわたって、Rs+Rpは、減少し続け、そのため、指定されたセンサ寿命の終了時に、Rs+Rpは、6.5キロオームを下回って低下した。このような例に基づいて、Rs+Rp値がセンサの指定された動作寿命の終了を示すことになるときを指定するために閾値が設定され得る。したがって、EIS技術は、指定された動作時間を超えてセンサが再使用されることを可能にする抜け穴を閉じることを可能にする。言い換えると、センサがその指定された動作時間に達した後にセンサを接続解除して再度接続することによって患者がセンサの再使用を試行した場合、EISは、異常に低いインピーダンスを測定し、それによって、システムがセンサを拒否して、患者に新しいセンサを要求することになる。
加えて、EISは、センサが着用され過ぎて正常に動作しないことを示す、センサのインピーダンスが低インピーダンス閾値レベルを下回って低下したときを検出することによって、センサ故障の検出を可能にし得る。システムは、次いで、指定された動作寿命の前にセンサを停止させ得る。以下により詳細に検討されるように、センサインピーダンスは、他のセンサ故障(モード)を検出するためにも使用され得る。例えば、センサが任意の様々な理由に起因して低電流状態(すなわち、センサ故障)になると、センサインピーダンスもまた、特定の高インピーダンス閾値を超えて増加し得る。タンパク質またはポリペプチド汚損、マクロファージの付着、または任意の他の要因に起因して、センサの動作中にインピーダンスが異常に高くなった場合、システムはまた、指定されたセンサの動作寿命の前にセンサを停止し得る。
図18は、特定の実施形態による、センサ安定化中、およびセンサの使用期間を検出する際に、EIS技術がどのように適用され得るかを例示する。図18の論理は、上記の水和手順およびセンサ初期化手順が完了した後の1800から始まる。言い換えると、センサは、十分に水和されているとみなされ、第1の初期化手順がセンサを初期化するために適用されている。初期化手順は、詳細な説明で上述されたように、電圧パルスの形態であることが好ましい場合がある。しかしながら、代替的な実施形態では、異なる波形が初期化手順に使用されてもよい。例えば、正弦波が、センサの湿潤または調整を加速するために、パルスの代わりに使用され得る。加えて、波形の一部分がセンサの正常な動作電圧、すなわち、0.535ボルトより大きいことが必要な場合がある。
ブロック1810では、EIS手順が適用され、インピーダンスが第1の高閾値および第1の低閾値の両方と比較される。第1の高閾値と第1の低閾値の一例は、それぞれ、7キロオームおよび8.5キロオームであるが、値は、必要に応じてより高くまたはより低く設定され得る。インピーダンス、例えば、Rp+Rsが第1の高閾値よりも高い場合、センサは、ブロック1820で、追加の初期化手順(例えば、1つ以上の追加のパルスの印加)を受ける。理想的には、センサを初期化するために適用される初期化手順の総数は、センサの電池寿命およびセンサの安定化に必要な全体的な時間の両方への影響を制限するように最適化されることになる。したがって、EISを適用することによって、より少ない初期化が最初に実施され得、初期化の数が段階的に追加されて、センサの使用を準備するためにちょうど適切な量の初期化を与え得る。同様に、代替的な実施形態では、EISは、図13~14に説明されているように水和プロセスを支援するために必要とされる初期化の数を最小限に抑えるために、水和手順に適用され得る。
一方、インピーダンス、例えば、Rp+Rsが第1の低閾値を下回る場合、センサは、故障していると決定され、ブロック1860で直ちに停止されることになる。センサを交換し、水和プロセスを再開するようにユーザにメッセージが与えられることになる。インピーダンスが高閾値および低閾値内にある場合、センサは、ブロック1830で正常に動作し始めることになる。論理は、次いで、ブロック1840に進み、追加のEISがセンサの使用期間をチェックするために実施される。最初に論理がブロック1840に到達すると、マイクロコントローラは、EISを実施して、センサの使用期間を測って、同じセンサをプラグインおよびプラグアウトってすることができるユーザの抜け穴を閉じることになる。論理がブロック1840に戻ると、EIS手順の将来の反復では、マイクロプロセッサは、センサの指定された寿命の間、固定間隔でEISを実施することになる。好ましい一実施形態では、固定間隔は、2時間毎に設定されるが、より長いまたはより短い期間が容易に使用され得る。
ブロック1850では、インピーダンスは、第2の高閾値および低閾値セットと比較される。そのような第2の高閾値および低閾値の一例は、それぞれ、5.5キロオームおよび8.5キロオームであり得るが、値は、必要に応じてより高くまたはより低く設定され得る。インピーダンス値が第2の高閾値および低閾値内に留まる限り、論理は、ブロック1830に進み、センサは、指定されたセンサ寿命、例えば、5日に達するまで正常に動作する。当然ながら、ブロック1840に関して説明されたように、EISは、指定されたセンサ寿命全体を通して定期的にスケジュールされた間隔で実施されることになる。しかしながら、EISが実施された後、ブロック1850でインピーダンスが第2のより低い閾値を下回って低下するか、または第2のより高い閾値を上回って上昇したと決定された場合、センサは、ブロック1860で停止される。さらに代替的な実施形態では、不良センサ読取値の二次チェックが実装され得る。例えば、インピーダンスが第2の高閾値および低閾値の範囲外であることをEISが示す場合、論理は、第2のEISを実施して、ブロック1860でセンサの終了を決定する前に第2の閾値セットが実際に満たされていないことを確認し得る(および第1のEISが正しく実施されたことを確認し得る)。
図19は、上記の説明を踏まえており、診断EIS手順を実施するための可能なスケジュールを詳述する。各診断EIS手順は、任意選択であり、いかなる診断手順もスケジュールしないことも可能であり、または必要に応じて、1つ以上の診断EIS手順の任意の組み合わせを有することも可能である。図19のスケジュールは、点1900でのセンサ挿入で始まる。センサの挿入に続いて、センサは、水和期間1910を受ける。この水和期間は、上記のように、十分に水和されていないセンサがユーザに不正確な読取値を与え得るため、重要である。点1920での第1の任意選択の診断EIS手順が、センサが十分に水和されることを確保するために、この水和期間1910中にスケジュールされる。第1の診断EIS手順1920は、センサのインピーダンス値を測定して、センサが十分に水和されているかどうかを決定する。インピーダンスが、設定された高閾値および低閾値内にあると第1の診断EIS手順1920が決定し、十分な水和を示す場合、センサコントローラは、点1930でセンサの電源投入を可能にすることになる。反対に、インピーダンスが、設定された高閾値および低閾値の外にあると第1の診断EIS手順1920が決定し、不十分な水和を示す場合、センサの水和期間1910が延長され得る。延長された水和の後、特定の静電容量がセンサの電極間で達せられると、センサが十分に水和されていることを意味し、点1930で電源投入が起こり得る。
第2の任意選択の診断EIS手順1940は、点1930でのセンサ電源投入後、センサ初期化が1950で始まる前にスケジュールされる。ここでスケジュールされた第2の診断EIS手順1940は、1950での初期化の開始前にセンサが再使用されているかどうかを検出し得る。センサが再使用されているかどうかを決定するテストは、図18の説明に詳述された。しかしながら、図18に関する上記の説明とは異なり、初期化が完了した後に経時変化テストが実施される場合、経時変化テストは、初期化前に実施されるように図19に示されている。図19に説明されるEIS手順のタイムラインは、本出願の全体的な教示に影響を与えずに再配置され得、いくつかのステップの順番は、交換されてもよい。上記に説明されたように、第2の診断EIS手順1940は、センサのインピーダンス値を決定し、次いで、それを設定された高閾値および低閾値と比較することによって、再使用されたセンサを検出する。インピーダンスが、設定された閾値の外にあり、センサが再使用されていることを示す場合、センサは、次いで、拒否され得、ユーザは、それを新しいセンサと交換するように要求される。これは、古いセンサの再使用によって発生し得る問題を防止する。反対に、インピーダンスが、設定された閾値内にある場合、センサ初期化1950は、新しいセンサが使用されているという確信を伴って開始し得る。
第3の任意選択の診断EIS手順1960は、初期化が点1950で開始された後にスケジュールされる。第3の診断EIS手順1960は、センサのインピーダンス値をテストして、センサが完全に初期化されているかどうかを決定する。第3の診断EIS手順1960は、任意のセンサが完全に初期化されるために必要な最小限の時間で実施されるべきである。この時点で実施すると、センサ寿命が、完全に初期化されたセンサが未使用になる時間を制限することによって最大化され、過剰な初期化が、過度の初期化が起こる前にセンサの完全な初期化を確認することによって回避される。過剰な初期化を防止することは、過剰な初期化が、不正確な読取値を引き起こし得る抑制された電流を結果的にもたらすため、重要である。しかしながら、初期化不足もまた、問題であるため、センサが初期化不足であることを第3の診断EIS手順1960が示す場合、点1970での任意選択の初期化が、センサを完全に初期化するために実施され得る。初期化不足は、実際のグルコース濃度に関係しない過剰な電流が結果的に生じるため、不都合である。初期化過不足の危険性のため、第3の診断EIS手順は、使用時にセンサが適切に機能することを確保する上で重要な役割を果たす。
加えて、センサが完全に初期化された後の時間に、任意選択の周期的診断EIS手順1980がスケジュールされ得る。EIS手順1980は、任意の設定された間隔でスケジュールされ得る。以下により詳細に論じられるように、EIS手順1980はまた、異常な電流または異常な対向電極電圧などの他のセンサ信号によってもトリガされ得る。加えて、より少ないか、またはより多いEIS手順1980が、必要に応じてスケジュールされ得る。好ましい実施形態では、水和プロセス、センサ寿命チェック、初期化プロセス、または周期的診断テスト中に使用されるEIS手順は、同じ手順である。代替的な実施形態では、EIS手順は、特定のインピーダンス範囲に焦点を合わせる必要性に依存して、様々なEIS手順に対して、短縮または延長され得る(すなわち、より少ないか、またはより多い周波数の範囲がチェックされる)。周期的診断EIS手順1980は、インピーダンス値を監視して、センサが最適なレベルで動作し続けていることを確保する。
センサは、センサ電流が汚染種、センサ使用期間、または汚染種およびセンサ使用期間の組み合わせに起因して低下した場合、最適なレベルで動作していない可能性がある。特定の期間を超えて経時変化したセンサは、もはや使用できないが、汚染種によって妨害されているセンサは、修復され得る可能性がある。汚染種は、電極の表面積または分析物の拡散経路および反応副産物を減少させ、それによって、センサ電流を低下させ得る。これらの汚染種は、帯電し、特定の電圧下で電極または膜表面上に徐々に集まる。従来では、汚染種は、センサの有用性を損なわせることになる。ここでは、周期的診断EIS手順1980が汚染種の存在を示すインピーダンス値を検出した場合、是正措置が講じられ得る。是正措置が講じられる場合については、図20に関連して説明される。したがって、周期的診断EIS手順1980は、センサ電流を正常レベルに修復し、センサの寿命を延ばし得る可能性のあるセンサ是正措置をトリガし得るため、非常に有用になる。センサ是正措置の2つの可能な実施形態が、図21Aおよび21Bの説明で以下に説明される。
加えて、任意のスケジュールされた診断EIS手順1980は、特定のイベントが差し迫っていると決定されると、中断または再スケジュールされ得る。そのようなイベントは、例えば、患者が、センサを較正するためにテストストリップメータを使用して患者のBG値を測定するとき、患者が、較正エラー、およびテストストリップメータを使用して2回目の患者のBG値を測定する必要性を警告されたとき、または高血糖もしくは低血糖の警告が発せられたが認知されないときを含む、センサ読取値を確認することを患者に要求する任意の状況を含み得る。
図20は、診断EIS手順をセンサ是正処置と組み合わせる方法を例示する。ブロック2000の診断手順は、図19に詳述されるように、周期的診断EIS手順1980のうちのいずれかであり得る。この方法の論理は、センサのインピーダンス値を検出するために、診断EIS手順がブロック2000で実施されるときに始まる。上記のように、特定の実施形態では、EIS手順は、様々な周波数のDCバイアスおよびAC電圧の組み合わせを印加し、EIS手順を実施することによって検出されたインピーダンスは、ナイキストプロット上にマッピングされ、ナイキストプロットの変曲点は、分極抵抗および溶液抵抗の合計(すなわち、実インピーダンス値)に近い。ブロック2000の診断EIS手順がセンサのインピーダンス値を検出した後、論理は、ブロック2010に移動する。
ブロック2010では、インピーダンス値は、設定された高閾値および低閾値と比較されて、それが正常であるかどうかを決定する。インピーダンスがブロック2010で高閾値および低閾値の設定された境界内にある場合、正常なセンサ動作がブロック2020で再開され、図20の論理は、別の診断EIS手順がスケジュールされるときまで終了することになる。反対に、ブロック2010でインピーダンスが異常である(すなわち、高閾値および低閾値の設定された境界の外にある)と決定された場合、ブロック2030での是正措置がトリガされる。センサ寿命中に許容可能であり得る高閾値および低閾値の例は、それぞれ、5.5キロオームおよび8.5キロオームであるが、値は、必要に応じてより高くまたはより低く設定され得る。
ブロック2030の是正措置は、異常なインピーダンス値を引き起こした可能性のある汚染種のうちのいずれかを除去するために実施される。好ましい実施形態では、是正措置は、作用電極と基準電極との間に逆電流または逆電圧を印加することによって実施される。是正措置の詳細は、図21に関連してより詳細に説明される。ブロック2030で是正措置が実施された後、インピーダンス値は、ブロック2040で診断EIS手順によって再びテストされる。次いで、ブロック2040の診断EIS手順からのインピーダンス値が、設定された高閾値または低閾値と比較されるときに、是正措置の成功がブロック2050で決定される。ブロック2010と同様に、インピーダンスが、設定された閾値内にある場合、インピーダンスが正常であるとみなされ、インピーダンスが、設定された閾値外である場合、インピーダンスが異常であるとみなされる。
センサのインピーダンス値がブロック2050で正常に修復されたと決定された場合、ブロック2020での正常なセンサ動作が起こることになる。インピーダンスが依然として正常でない場合、センサ使用期間が異常なインピーダンスの原因であること、または是正措置が汚染種の除去に失敗したことのいずれかを示し、センサは、ブロック2060で停止される。代替的な実施形態では、センサを直ちに停止させる代わりに、センサは、まず、ユーザに待機を要求するセンサメッセージを発生させ、次いで、設定された時間が経過した後、さらなる是正措置を実施し得る。この代替的なステップは、初期是正措置が実施された後、インピーダンス値が高閾値および低閾値の境界内に近づいているかどうかを決定するために、別個の論理と連結され得る。例えば、センサのインピーダンス値に変化が見られない場合、センサは、次いで、停止を決め得る。しかしながら、センサインピーダンス値が事前設定された境界に近づいているが、まだ依然として初期是正措置後に境界の外にある場合、追加の是正措置が実施され得る。さらに別の代替的な実施形態では、センサは、指採血計測定を行うことによってセンサを較正して、センサが本当に故障しているか否かをさらに確認することをユーザに要求するメッセージを発生させ得る。上記の実施形態の全ては、不正確な読取値を生成する故障センサをユーザが使用することを防止するように作用する。
図21Aは、上述のセンサ是正措置の一実施形態を例示する。この実施形態では、汚染種によって作成された閉塞が、作用電極と基準電極との間でセンサに印加されている電圧を反転させることによって除去される。反転されたDC電圧は、帯電した汚染種を電極または膜表面から持ち上げ、拡散経路を清掃する。経路が清掃されると、センサの電流は、正常レベルに戻り、センサは、正確な読取値を与え得る。したがって、是正措置は、他の有効なセンサを交換することと関連付けられたユーザの時間および費用を節約する。
図21Bは、上述のセンサ是正措置の代替的な実施形態を例示する。この実施形態では、作用電極と基準電極との間に印加される、反転されたDC電圧が、AC電圧と結合される。AC電圧を加えることによって、AC電圧がその力を電極からさらに広がり、センサの全ての層に浸透し得るため、特定の緊密に吸着した種または表面層上の種が除去され得る。AC電圧は、任意の数の異なる波形で提供され得る。使用され得る波形のいくつかの例は、方形波、三角波、正弦波、またはパルスを含む。上記の実施形態と同様に、汚染種が清掃されると、センサは、正常動作に戻り得、センサの寿命および精度の両方が改善される。
上記の例は、主にセンサ診断での実インピーダンスデータの使用を例示するが、本明細書に説明される本発明の実施形態はまた、センサ診断手順での他のEISベースの実質的に分析物非依存性のパラメータ(実インピーダンスに加えて)の使用も対象とする。例えば、上述のように、例えば、1kHzの実インピーダンスおよび1kHzの虚インピーダンス、ならびにナイキスト勾配などの(実質的に)グルコース非依存性インピーダンスデータの分析は、どの程度速くセンサが水和し、データ取得の準備ができるかに関してセンサの効率に関する情報を提供する。さらに、例えば、1kHzの実インピーダンスなどの(実質的に)グルコース非依存インピーダンスデータは、センサ膜表面に存在し得る潜在的な閉塞に関する情報を提供し、閉塞は、センサ中へのグルコースの通過を一時的に阻害し、したがって、信号をディップさせ得る。
加えて、例えば、より高い周波数の位相角および/または1kHz以上の周波数での虚インピーダンスの値などの(実質的に)グルコース非依存性インピーダンスデータは、長時間の着用中のセンサ感度の損失に関する情報を提供し、感度損失は、挿入部位の局所的な酸素欠損に潜在的に起因し得る。これに関して、酸素欠損に起因する感度損失の基本的な機構は、局所的な酸素が欠損すると、センサ出力(すなわち、IsigおよびSG)が、グルコースではなく酸素に依存することになり、したがって、センサは、グルコースに対する感度を失うことになるというように説明され得る。以下により詳細に検討されるように、本明細書に説明される本発明の擬似直交冗長センサシステムの実施形態は、センサ出力が実質的に酸素非依存性であることを可能にする。
0.1Hzの実インピーダンス、対向電極電圧(Vcntr)、EIS誘発スパイクを含む他のマーカもまた、酸素欠損に起因する感度損失の検出に使用され得る。さらに、冗長電極を有するセンサシステムでは、2つ以上の作用電極間の1kHzの実インピーダンス、1kHzの虚インピーダンス、および0.1Hzの実インピーダンスの相対的な差が、生物付着に起因する感度損失の検出に使用され得る。
本明細書に説明される本発明の実施形態によると、EISベースセンサ診断は、少なくとも3つの主要因、すなわち、潜在的なセンサ故障モードである、(1)信号始動、(2)信号ディップ、および(3)感度損失のうちの1つ以上に関するEISデータの検討および分析を伴う。重要なことに、そのような診断分析および手順に使用される、実質的に分析物非依存性である、インピーダンス関連パラメータの大部分が、ある周波数または周波数の範囲内で調査され得るという発見は、患者の体内の分析物のレベルに無関係にセンサ診断手順の実装を可能にする。したがって、EISベースセンサ診断は、例えば、分析物依存性であるIsigの大きい変動によってトリガされ得るが、そのようなセンサ診断手順で使用されるインピーダンス関連パラメータは、それ自体が分析物のレベルに実質的に無関係である。以下でより詳細に検討されるように、グルコースがEISベースパラメータの大きさ(または他の特性)に対する影響を有すると見られ得る状況の大部分では、そのような影響は、通常、十分に小さい、例えば、EISベース測定とそれに対するグルコースの影響との間の少なくとも一桁の大きさの差であり、それにより、そのような影響は、例えば、ICのソフトウェアを介して測定から除外され得ることも見出されている。
定義により、「始動」とは、挿入後の最初の数時間(例えば、t=0~6時間)の間のセンサ信号の完全性を指す。例えば、多くの現在のデバイスでは、挿入後の最初の2時間の信号は、信頼できないとみなされ、そのため、センサのグルコース値は、患者/ユーザに盲検化される。センサが水和するために長時間掛かる状況では、センサ信号は、挿入後の数時間の間、低くなる。EISの使用によると、センサが挿入された直後に追加のインピーダンス情報が利用可能である(EIS手順を実行することによって)。これに関して、総インピーダンス方程式が、1kHzの実インピーダンスを使用した低始動検出の背後にある原理を説明するために使用され得る。比較的高い周波数、この場合、1kHz以上では、虚インピーダンスは、非常に小さく(生体内データで確認されているように)、そのため総インピーダンスは、次のように減少される。
センサ湿潤が徐々に完了すると、二重層静電容量(Cd)が増加する。結果として、総インピーダンスは、上記の方程式に示されるように、総インピーダンスがCdに反比例するため、減少することになる。これは、例えば、図16Bに示される実インピーダンス軸上の切片1600の形態で例示されている。重要なことに、1kHzの虚インピーダンスもまた、静電容量成分を含み、それに反比例するため、同じ目的に使用され得る。
低始動検出の別のマーカは、ナイキスト勾配であり、これは、比較的低い周波数のインピーダンスのみに依存し、その結果、総インピーダンスのワールブルグインピーダンス成分に対応する(例えば、図15B参照)。図22は、正常に機能しているセンサのナイキストプロットを示し、矢印Aは、t=0から始まる時間、すなわち、センサ着用時間の経過を示す。したがって、比較的低い周波数でのEISは、センサ挿入直後(時間t=0)に実施され、第1の(ナイキスト)勾配を有する第1の線形適合2200を用いてプロットされる実インピーダンスおよび虚インピーダンスデータを発生させる。t=0の後の時間間隔では、第2の(より低い)周波数掃引が実行され、これは、第1のナイキスト勾配よりも大きい第2の(ナイキスト)勾配を有する第2の線形適合2210を生成し、以下同様である。センサがより水和されると、急になり、かつY軸により近づいて移動する線2200、2210などによって反映されるように、ナイキスト勾配が増大し、切片が減少する。低始動検出に関連して、臨床データは、センサ挿入および初期化後にナイキスト勾配の劇的な増加が典型的に存在し、次いで、特定のレベルに安定化されることを示す。これについての1つの説明は、センサが徐々に湿潤すると、種の拡散率および濃度が劇的な変化を受け、これが、ワールブルグインピーダンスに反映されることである。
図23Aでは、第1の作用電極WE1のIsig2230は、予期されるよりも低くから(約10nAで)始動し、第2の作用電極WE2のIsig2240に追いつくのにある程度の時間が掛かる。したがって、この特定の例では、WE1は、低始動を有すると指定される。EISデータは、この低始動を2つの手段で反映する。第1に、図23Aに示されるように、WE1の1kHz(2235)での実インピーダンスは、WE2の1kHzの実インピーダンス2245よりもはるかに高い。第2に、WE2のナイキスト勾配(図23C)と比較すると、WE1のナイキスト勾配(図23B)は、より低くから始動し、より大きい切片2237を有し、安定化するためにより多くの時間が掛かる。後述されるように、これらの2つの特色である、1kHzの実インピーダンスおよびナイキスト勾配は、融合された信号が計算されるときに2つの電極のどちらがより高い重みを担持し得るかを決めるための融合アルゴリズムの診断入力として使用され得る。加えて、これらのマーカの一方または両方が、センサが全体として許容可能であるか否か、またはセンサが停止および交換されるべきか否かを決定するために診断手順に使用され得る。
定義により、信号(またはIsig)ディップは、低センサ信号の事例を指し、これは、本質的にほとんどが一時的であり、例えば、数時間程度である。そのような低信号は、例えば、センサ表面上の生物学的閉塞のいくつかの形態によって、または挿入部位に加えられた圧力(例えば、脇を下にして寝ている間の)によって、引き起こされ得る。この期間中、センサデータは、信頼できないとみなされるが、信号は、最終的に回復する。EISデータでは、このタイプの信号ディップは、患者の体内の血糖の変化によって引き起こされるものとは対照的に、図24に示されるように、1kHzの実インピーダンスデータに反映される。
具体的には、図24では、第1の作用電極WE1のIsig2250および第2の作用電極WE2のIsig2260の両方が、最左端(すなわち、18:00)の約25nAから始動する。時間が経過するにつれて、両方のIsigが変動し、これは、センサ近傍のグルコース変動を反映する。最初の約12時間程度(すなわち、おおよそ6:00まで)、両方のIsigは、かなり安定しており、そのそれぞれの1kHzの実インピーダンス2255、2265も同様である。しかしながら、約12~18時間の間、すなわち、6:00~12:00の間、WE2のIsig2260がディップし始め、次の数時間、おおよそ21:00まで下降傾向を続ける。この期間中、WE1のIsig2250もまた、ある程度のディップを呈するが、Isig2250は、WE2のIsig2260よりもはるかに安定しており、ディップは非常に小さい。WE1およびWE2のIsigsの挙動もまた、そのそれぞれの1kHzの実インピーダンスデータに反映される。したがって、図24に示さえるように、上記の期間中、WE1(2255)の1kHzの実インピーダンスは、かなり安定したままであるが、WE2(2265)の1kHzの実インピーダンスには、著しい増加が存在する。
定義により、感度損失とは、センサ信号(Isig)が長期間の間、低く、かつ非応答的になり、通常、回復不可能であることを指す。感度損失は、様々な理由で起こり得る。例えば、電極被毒は、作用電極の活性表面積を大幅に減少させ、それによって、電流振幅を重度に制限する。感度損失はまた、挿入部位での低酸素または酸素欠損に起因しても起こり得る。加えて、感度損失は、センサ膜を通るグルコースおよび酸素の両方の通過を制限し、それによって、電極に電流、および最終的にセンサ信号(Isig)を発生させる化学反応の数/頻度を低下させる、特定の形態の極端な表面閉塞(すなわち、生物学的または他の要因によって引き起こされる、より永続的な形態の信号ディップ)に起因して起こり得る。上述された感度損失の様々な原因は、短期(7~10日の着用)センサおよび長期(6か月の着用)センサの両方に当てはまることに留意されたい。
EISデータでは、感度損失は、多くの場合、比較的高い周波数範囲(例えば、128Hz以上、および1kHz以上など)での位相の絶対値(|位相|)および虚インピーダンスの絶対値(|虚インピーダンス|)の増加が先行する。図25Aは、正常に機能しているグルコースセンサの一例を示し、センサ電流2500がグルコースに応答する、すなわち、Isig2500がグルコース変動に追随するが、例えば、1kHzの実インピーダンス2510、1kHzの虚インピーダンス2530、および約128Hz以上の周波数の位相(2520)などの全ての関連インピーダンス出力が、実質的にグルコース非依存性であるため、安定したままである。
具体的には、図25Aの上のグラフは、最初の数時間後、1kHzの実インピーダンス2510が約5キロオームでかなり安定して保持されること(および1kHzの虚インピーダンス2530が約-400オームでかなり安定して保持されること)を示す。言い換えると、1kHzでは、実インピーダンスデータ2510および虚インピーダンスデータ2530は、実質的にグルコース非依存性であり、その結果、それらは、分析中の特定のセンサの健全性、条件、および最終的に信頼性の特色および独立インジケータとして使用され得る。しかしながら、上述のように、異なるインピーダンス関連パラメータは、異なる周波数範囲でグルコース非依存性を呈し得、範囲は、各場合、全体的なセンサ設計、例えば、電極タイプ、電極の表面積、膜の厚さ、膜の透過性に依存し得る。
したがって、図25Bの例では、90%の短いチューブレス電極設計に関して、上のグラフは、センサ電流2501がグルコースに応答し、最初の数時間後に1kHzの実インピーダンス2511が、約7.5キロオームでかなり安定して保持されることを再び示す。図25Bの下のグラフは、0.1Hz(2518)~1kHz(2511)の周波数の実インピーダンスデータを示す。見て分かるように、0.1Hz(2518)での実インピーダンスデータは、非常にグルコース依存性である。しかしながら、参照番号2516、2514、および2512によって示されるように、実インピーダンスは、周波数が0.1Hzから1kHzに増加するにつれて、すなわち、1kHzにより近い周波数で測定されたインピーダンスデータに関して、ますますグルコース非依存性になる。
図25Aに戻ると、中央のグラフは、比較的高い周波数での位相2520が実質的にグルコース非依存性であることを示す。しかしながら、分析中のセンサのこのパラメータ(位相)に関連する「比較的高い周波数」が、128Hz以上の周波数を意味することに留意されたい。これに関して、グラフは、128Hz~8kHzの全ての周波数の位相が、示されている期間全体を通して安定していることを示す。一方、図25Cの下のグラフに見られるように、128Hz(以上)での位相2522は、安定しているが、位相2524は、128Hzよりもますます小さい周波数で変動する、すなわち、ますますグルコース依存性になり、様々な程度に変動する。図25Cの例の電極設計は、図25Bに使用されたものと同じであり、前者の上のグラフは、後者の上のグラフと同一であることに留意されたい。
図26は、挿入部位での酸素欠損に起因する感度損失の一例を示す。この場合、挿入部位は、ちょうど4日後に酸素欠損になり(図26の暗い垂直線で示される)、センサ電流2600を低下させ、非応答的にする。1kHzの実インピーダンス2610は、安定したままであり、センサに物理的な閉塞がないことを示している。しかしながら、それぞれの下向き矢印で示されるように、比較的高い周波数の位相2622および1kHzの虚インピーダンス2632の変化は、感度損失と一致し、このタイプの損失が、挿入部位での酸素欠損に起因することを示している。具体的には、図26は、センサが感度を失う前により高い周波数(2620)および1kHzの虚インピーダンス(2630)の位相が、暗い垂直線で示されるように、より負になり、センサ感度損失が継続するにつれて、位相の下降傾向が継続することを示す。したがって、上記のように、この感度損失は、比較的高い周波数範囲(例えば、128Hz以上、および1kHz以上など)での位相の絶対値(|位相|)および虚インピーダンスの絶対値(|虚インピーダンス|)の増加が先行するか、またはそれによって予測される。
上記の特色は、生体外テストによって検証され得、その一例が図27に示される。図27は、センサの生体外テストの結果を示し、異なるグルコース濃度での酸素欠損がシミュレートされている。上のグラフでは、Isigがグルコース濃度と共に変動し、後者は、100mg/dl(2710)から、200mg/dl(2720)、300mg/dl(2730)、および400mg/dl(2740)まで増加し、次いで、200md/dl(2750)まで再び減少した。下のグラフでは、比較的高い周波数での位相は、概して安定しており、グルコース非依存性を示している。しかしながら、例えば、0.1%のO2などの非常に低い酸素濃度では、円で囲まれたエリアおよび矢印2760、2770によって示されるように、比較的高周波数の位相が変動する。変動の大きさおよび/または方向(すなわち、正もしくは負)は、様々な要因に依存することに留意されたい。例えば、酸素濃度に対するグルコース濃度の比率が高いほど、位相の変動の大きさが大きくなる。加えて、特定のセンサ設計、およびセンサの使用期間(すなわち、移植後の時間で測定される)が、そのような変動に影響を及ぼす。したがって、例えば、センサが古いほど、摂動の影響をより受け易くなる。
図28A~28Dは、冗長作用電極WE1およびWE2を用いた酸素欠損に起因する感度損失の別の例を示す。図28Aに示されるように、センサ電流2800が変動し、最終的に非応答的になる場合でも、1kHzの実インピーダンス2810は、安定している。また、上記と同様に、1kHzの虚インピーダンス2820の変化は、センサの感度損失と一致する。しかしながら、加えて、図28Bは、0.105Hzでの実インピーダンスデータおよび虚インピーダンスデータ(それぞれ2830および2840)を示す。より一般的に「0.1Hzデータ」と呼ばれ得る後者は、0.1Hzでの虚インピーダンスがかなり安定しているように見えるが、センサが感度を失うと0.1Hzの実インピーダンス2830が大幅に増加することを示している。さらに、図28Cに示されるように、酸素欠損に起因する感度損失により、Vcntr2850は、1.2ボルトにレールする。
つまり、図は、酸素欠損に起因する感度損失が、低くなる1kHzの虚インピーダンス(すなわち、後半がより負になる)、高くなる0.105Hzの実インピーダンス(すなわち、後半がより正になる)、およびVcntrレールと結び付けられるという発見を例示する。さらに、酸素欠損プロセスおよびVcntrレールは、多くの場合、電気化学的回路の静電容量成分の増加と結び付く。以下に説明される診断手順のいくつかでは、0.105Hzの実インピーダンスは、この比較的低い周波数の実インピーダンスデータが分析物依存性であり得ると考えられるため、使用されない場合があることに留意されたい。
最後に、図28A~28Dの例と関連して、1kHz以上の周波数インピーダンス測定は、典型的には、IsigのEIS誘発スパイクを引き起こすことに留意されたい。これは、WE2の生のIsigが時間に対してプロットされている図28Dに示される。スパイクが始まるときのIsigの大幅な増加は、二重層静電容量電荷に起因する、非ファラデープロセスである。したがって、酸素欠損に起因する感度損失はまた、上述されたように、低くなる1kHzの虚インピーダンス、高くなる0.105Hzの実インピーダンス、およびVcntrレールに加えて、より高くなるEIS誘発スパイクとも結び付けられ得る。
図29は、感度損失の別の例を例示する。この事例は、図24に関連して上記に説明されたIsigディップの極端な変形として考えられ得る。ここで、センサ電流2910は、挿入時から低いことが観察され、これは、挿入手順に問題があり、電極閉塞を結果的にもたらしたことを示している。1kHzの実インピーダンス2920は、有意に高くなり、一方で比較的高い周波数の位相2930および1kHzの虚インピーダンス2940の両方は、図25Aに示される正常に機能するセンサの同じパラメータ値と比較して、はるかに負の値にシフトされる。比較的高い周波数の位相2930および1kHzの虚インピーダンス2940のシフトは、感度損失が酸素欠損に起因し、そのため、センサ表面上の閉塞によって引き起こされた可能性があることを示す。
図30A~30Dは、2つ以上の作用電極間の1kHzの実インピーダンスおよび1kHzの虚インピーダンス、ならびに0.1Hzの実インピーダンスの相対的な差が、生物付着に起因する感度損失の検出に使用され得る、別の冗長センサのデータを示す。この例では、WE1は、WE2よりも大きい感度損失を呈し、これは、WE2の高くなる1kHzの実インピーダンス3010、低くなる1kHzの虚インピーダンス3020、はるかに高くなる0.105Hzでの実インピーダンス(3030)から明らかである。しかしながら、加えて、この例では、Vcntr3050は、レールしない。さらに、図30Dに示されるように、生のIsigデータのスパイクの高さは、時間が経過してもあまり変化しない。これは、生物付着に起因する感度低下に関して、Vcntrレールとスパイク高さの増加とが相関されることを示す。加えて、生のIsigデータのスパイクの高さが時間と共にあまり変化しないという事実は、回路の静電容量成分が時間と共に大きく変化しないことを示し、そのため、生物付着に起因する感度損失は、回路の抵抗成分(すなわち、拡散)に関連する。
上記の様々なインピーダンス関連パラメータは、(1)EISベースセンサ診断手順、および/または(2)より信頼できるセンサグルコース値を発生させるための融合アルゴリズムへの入力として、個々にまたは組み合わせて使用され得る。前者に関して、図31は、センサが正常な挙動を示しているか否か、または交換されるべきか否かをリアルタイムで決定するために、EISベースデータ、すなわち、インピーダンス関連パラメータまたは特性が、どのように診断手順に使用され得るかを例示する。
図31のフロー図に例示される診断手順は、例えば、1時間毎、30分毎、10分毎、または連続的を含む、分析中の特定のセンサに適切であり得る任意の他の間隔などの、周期的な方式でのEISデータの収集に基づく。このような間隔毎に、EISは、周波数スペクトル全体に対して実行されてもよく(すなわち、「完全掃引」)、または選択された周波数範囲に対して実行されてもよく、さらには、単一の周波数で実行されてもよい。したがって、例えば、1時間毎のデータ収集方式に関して、EISは、μHz~MHzの範囲の周波数で実施されてもよく、または、例えば、上述のように、約0.1Hz~約8kHzなどのより狭い範囲の周波数で実行されてもよい。様々な実施形態では、EISデータ取得は、完全掃引とより狭い範囲のスペクトルとの間で交互に、または他の方式に従って実装され得る。
EISの実装およびデータ収集の時間的頻度は、様々な要因によって決定され得る。例えば、EISの各実装は、特定の電力量を消費し、これは、典型的には、センサの電池、すなわち、以下に説明されるASICを含むセンサ電子機器を動作させる電池によって提供される。そのため、電池容量、および残りのセンサ寿命は、EISが実行された回数、およびそのような実行毎にサンプリングされた周波数の幅を決定することを助け得る。加えて、特定の状況は、特定の周波数でのEISパラメータ(例えば、1kHzでの実インピーダンス)が第1のスケジュール(例えば、数秒または数分毎に1回)に基づいて監視されることを要求し得るが、一方で他のパラメータ、および/または他の周波数での同じパラメータは、第2のスケジュール(例えば、低頻度)に基づいて監視され得る。これらの状況では、診断手順は、特定のセンサおよび要件に合わせて調整され得、そのため、電池の電力が節約され得、不要および/または冗長なEISデータ取得が回避され得る。
特定の実施形態では、図31に示されるものなどの診断手順は、センサのリアルタイム監視を実施するために実装される一連の別個の「テスト」を伴うことに留意されたい。複数のテスト、または「マルチマーカ」とも呼ばれる複数のマーカが、EISが実行される毎に(すなわち、EIS手順が実施される毎に)、例えば、センサが故障したか、または故障しているか否かを含む、センサ条件もしくは品質を検出するために使用され得る、複数のインピーダンスベースパラメータ、または特性に関するデータが集められ得るため、実装される。センサ診断を実施する際に、場合によっては、故障を示し得る診断テストが存在し得るが、他の診断は、故障を示さない場合がある。したがって、複数のインピーダンス関連パラメータの利用可能性、およびマルチテスト手順の実装は、複数のテストのうちのいくつかが、他のテストのいくつかに対する有効性チェックとして作用し得るため、有利である。したがって、マルチマーカ手順を使用するリアルタイム監視は、ある程度の生来の冗長性を含み得る。
上記を念頭に置いて、図31に示される診断手順の論理は、センサが挿入/移植され、EIS実行が行われた後、EISデータを入力として提供するように、3100で始まる。3100では、EISデータを入力として使用して、センサが依然として定位置にあるか否かが最初に決定される。したがって、|Z|勾配が、テストされた周波数帯域(または範囲)にわたって一定であることが見出される場合、および/または位相角が約90°である場合、センサがもはや定位置にないと決定され、例えば、患者/ユーザに警告が送信され、センサの取り外しが起こったことを示す。センサの取り外しを検出するために本明細書に説明される特定のパラメータ(およびそれぞれの値)は、センサが体外に出され、膜がもはや水和されていないと、インピーダンススペクトル応答がちょうどコンデンサのように現れるという発見に基づいている。
センサが依然として定位置にあると決定された場合、論理は、ステップ3110に進み、センサが適切に初期化されているか否かを決定する。示されているように、「Init.Check」が、(i)1kHzで|(Zn-Z1)/Z1|>30%であるか否か、(2)位相角の変化が、0.1Hzで10°超であるか否か、を決定することによって実施され、式中、Z1は、最初に測定された実インピーダンスであり、Znは、上述された次の間隔で測定されたインピーダンスである。いずれか一方の質問に対する回答が「はい」である場合、テストは、良好であり、すなわち、テスト1は、不合格ではない。そうでない場合、テスト1は、不合格としてマークされる。
ステップ3120では、テスト2は、-45°の位相角で、2つの連続的EIS実行間の周波数の差(f2-f1)が10Hz超であるか否かを質問する。繰り返しになるが、「いいえ」の回答は、不合格としてマークされ、そうでない場合、テスト2は、十分に満たされる。
ステップ3130のテスト3は、水和テストである。ここで、質問は、現在のインピーダンスZnが、1kHzでの初期化後インピーダンスZpi未満であるか否かである。そうである場合、このテストは、良好であり、そうでない場合、テスト3は、不合格としてマークされる。ステップ3140のテスト4もまた、水和テストであるが、このときにはより低い周波数である。したがって、このテストは、Znが、初期化後センサ動作中に、0.1Hzで300キロオーム未満であるか否かを質問する。繰り返しになるが、「いいえ」の回答は、センサがテスト4に不合格であったことを示す。
ステップ3150では、テスト5が、低周波数ナイキスト勾配が0.1Hzから1Hzまで全体的に増大しているか否かを質問する。上述のように、正常に動作しているセンサの場合、比較的低い周波数のナイキスト勾配は、経時的に増大するはずである。したがって、このテストは、質問に対する回答が「はい」である場合に良好であり、そうでない場合、テストは、不合格としてマークされる。
ステップ3160は、診断手順のこの実施形態の最後のテストである。ここで、質問は、実インピーダンスが全体的に減少しているか否かである。繰り返しになるが、上述されたように、正常に動作しているセンサでは、時間が経過するにつれて、実インピーダンスが減少するはずであると予期される。したがって、ここでの「はい」の回答は、センサが正常に動作していることを意味し、そうでない場合、センサは、テスト6に不合格となる。
全ての6つのテストが実装されると、3170でセンサが正常に動作しているか否か、またはセンサが故障しているか否かの決定がなされる。この実施形態では、6つのテストのうちの少なくとも3つに合格した場合、センサは、正常に機能していると決定される(3172)。別の言い方をすると、故障していると決定されるためには(3174)、センサは、6つのテストのうちの少なくとも4つで不合格にならなければならない。代替的な実施形態では、異なる規則が、正常動作対センサ故障を評価するために使用され得る。加えて、いくつかの実施形態では、テストの各々は、重み付けられ得、それにより、割り当てられた重みは、全体的なセンサ動作(正常対故障)を決定する際に、例えば、そのテスト、またはそのテストで質問される特定のパラメータの重要性を反映する。例えば、1つのテストは、別のテストの2倍であるが、第3のテストの半分などに重み付けられてもよい。
他の代替的な実施形態では、異なる数のテストおよび/または各テストの異なるEISベースパラメータセットが使用されてもよい。図32Aおよび32Bは、7つのテストを含むリアルタイム監視用の診断手順の一例を示す。図32Aを参照すると、論理は、センサが挿入/移植され、EIS手順が実施された後、EISデータを入力として提供するように、3200で始まる。3200では、EISデータを入力として使用して、センサが依然として定位置にあるか否かが最初に決定される。したがって、|Z|勾配が、テストされた周波数帯域(または範囲)にわたって一定であることが見出される場合、および/または位相角が約90°である場合、センサがもはや定位置にないと決定され、例えば、患者/ユーザに警告が送信され、センサの取り外しが起こったことを示す。一方で、センサが定位置にあると決定された場合、論理は、診断チェックの開始に移動する(3202)。
3205では、テスト1は、本テストが後半の測定Znが第1の測定の2時間後に行われることを指定することを除いて、図31に関連して上述された診断手順のテスト1と同様である。したがって、この例では、Zn=Z2hrである。より具体的には、テスト1は、(センサ移植および)初期化の2時間後の実インピーダンスを初期化前の値と比較する。同様に、テスト1の第2の部分は、初期化の2時間後の位相と初期化前の位相との間の差が0.1Hzで10°超であるか否かを質問する。上記のように、質問のうちのいずれか一方に対する回答が肯定的である場合、センサは、正常に水和され、初期化されていると決定され、テスト1は、良好であり、そうでない場合、センサは、このテストに不合格となる。本テストが初期化の2時間後にインピーダンスおよび位相の変化について質問する場合でも、2つの連続的EIS実行間の時間間隔は、例えば、センサ設計、電極冗長性のレベル、診断手順が冗長テスト、電池電力を含む程度などを含む、様々な要因に依存して、より短くてもよく、より長くてもよい。
3210に移動すると、論理は、次に、2時間の間隔(n+2)の後に、1 kHzでのインピーダンスの大きさの変化率、およびIsigでの変化率が、30%超であるか否かを質問することによって、感度損失チェックを実施する。両方の質問に対する回答が「はい」である場合、センサが、感度を失っていると決定され、したがって、テスト2は、不合格であると決定される。テスト2は、ここでは、30%の好ましい変化率の差に基づいて例示されるが、他の実施形態では、1kHzでのインピーダンスの大きさおよびIsigの変化率の差は、このテストを行う目的に応じて10%~50%の範囲内に収まり得ることに留意されたい。
テスト3(3220)は、図31に例示されるアルゴリズムのテスト5と同様である。ここで、上記と同様に、質問は、低周波数ナイキスト勾配が0.1Hzから1Hzまで全体的に増大しているか否かである。そうである場合、このテストは、合格であり、そうでない場合、テストは、不合格である。3220に示されるように、このテストはまた、低周波数ナイキスト勾配の変化率の閾値または許容範囲の設定に従い、これらを超えると、センサが故障したとみなされ得るか、または少なくとも、さらなる診断テストをトリガし得る。本発明の実施形態では、低周波数ナイキスト勾配の変化率に対するそのような閾値/許容範囲は、約2%~約20%の範囲内に収まり得る。いくつかの好ましい実施形態では、閾値は、約5%であり得る。
論理は、次に、3230に移動し、これは、別の低周波数テストであり、このときには、位相およびインピーダンスの大きさに関与する。より具体的には、位相テストは、0.1Hzでの位相が経時的に連続的に増大しているか否かを質問する。そうである場合、テストは、不合格である。パラメータの傾向が監視される他のテストと同様に、テスト4の低周波数位相テストもまた、低周波数位相の変化率の閾値または許容範囲の設定に従い、これらを超えると、センサは、故障しているとみなされ得るか、または少なくとも懸念を提起する。いくつかの好ましい実施形態では、低周波数位相の変化率に対するそのような閾値/許容範囲は、約5%~約30%の範囲内に収まり得る。いくつかの好ましい実施形態では、閾値は、約10%であり得る。
上記のように、テスト4はまた、低周波数インピーダンスの大きさのテストも含み、質問は、0.1Hzでのインピーダンスの大きさが経時的に連続的に増大しているか否かである。そうである場合、テストは、不合格である。テスト4は、位相テストまたはインピーダンスの大きさのテストのいずれかが不合格である場合、「失敗」とみなされることに留意されたい。テスト4の低周波数インピーダンスの大きさのテストもまた、低周波数インピーダンスの大きさの変化率の閾値または許容範囲の設定に従い、これらを超えると、センサは、故障しているとみなされ得るか、または少なくとも懸念を提起する。いくつかの好ましい実施形態では、低周波数インピーダンスの大きさの変化率に対するそのような閾値/許容範囲は、約5%~約30%の範囲内に収まり得る。いくつかの好ましい実施形態では、閾値は、約10%であり得、正常なセンサのインピーダンスの大きさの範囲は、概して、約100キロオーム~約200キロオームである。
テスト5(3240)は、テスト2の補足と考えられ得る別の感度損失チェックである。ここで、Isigの変化率および1kHzでのインピーダンスの大きさの変化率の両方が30%超である場合、センサは、感度損失から回復していると決定される。言い換えると、テスト2によって何らかの理由で感度損失が検出されなかった場合でも、センサは、以前に何らかの感度損失を受けたと決定される。テスト2と同様に、テスト5は、30%の好ましい変化率の差に基づいて例示されるが、他の実施形態では、Isigおよび1kHzでのインピーダンスの大きさの変化率の差は、このテストを行う目的に応じて10%~50%の範囲内に収まり得る。
3250に移動すると、テスト6は、観察されたデータおよび特定のセンサ設計に基づいて決定された特定の故障基準を用いて、センサ機能テストを提供する。具体的には、一実施形態では、(1)Isigが10nA未満であり、(2)1kHzでの虚インピーダンスが-1500オーム未満であり、(3)1kHzでの位相が-15°未満である、3つの基準のうちの少なくとも2つが満たされる場合、センサは、故障しており、したがって、グルコースに応答する可能性が低いと決定され得る。したがって、テスト6は、(1)~(3)のうちのいずれか2つが満たされない場合に合格であったと決定される。他の実施形態では、このテストのIsig分岐は、Isigが約5nA~約20nA未満である場合に不合格であり得ることに留意されたい。同様に、第2の分岐は、1kHzでの虚インピーダンスが約-1000オーム~約-2000オーム未満である場合に不合格であり得る。最後に、位相分岐は、1kHzでの位相が約-10°~約-20°未満である場合に不合格であり得る。
最後に、ステップ3260は、パラメータが低周波数で評価される別の感度チェックを提供する。したがって、テスト7は、0.1Hzでの、一方でIsig(n+2)に対する虚インピーダンスの比率と、他方でその比率の以前の値との間の差の大きさが、その比率の以前の値の大きさの30%よりも大きいか否かを質問する。そうである場合、テストは、不合格であり、そうでない場合、テストは、合格である。ここで、テスト7は、30%の好ましい変化率の差に基づいて例示されるが、他の実施形態では、変化率の差は、このテストを行う目的に応じて10%~50%の範囲内に収まり得る。
全ての7つのテストが実装されると、3270でセンサが正常に動作しているか否か、またはセンサが故障している(または故障している可能性がある)ことを示す警告が送信されるべきか否かの決定がなされる。示されるように、この実施形態では、センサは、7つのテストのうちの少なくとも4つに合格した場合、正常に機能していると決定される(3272)。別の言い方をすると、故障していると決定されるためには、または少なくとも懸念を提起するためには(3274)、センサは、7つのテストのうちの少なくとも4つで不合格にならなければならない。センサが「不良」であると決定された場合(3274)、その影響に対する警告が、例えば、患者/ユーザに送信され得る。上記のように、代替的な実施形態では、異なる規則が、正常動作対センサ故障/懸念を評価するために使用され得る。加えて、いくつかの実施形態では、テストの各々は、重み付けられ得、それにより、割り当てられた重みは、全体的なセンサ動作(正常対故障)を決定する際に、例えば、そのテスト、またはそのテストで質問される特定のパラメータの重要性を反映する。
上記のように、本明細書に説明される本発明の実施形態では、上記の様々なインピーダンス関連パラメータが、より信頼性できるセンサグルコース値を発生させるための1つ以上の融合アルゴリズムへの入力として、個々にまたは組み合わせて使用され得る。具体的には、単一センサ(すなわち、単一作用電極)システムとは異なり、複数の感知電極は、2つ以上の作用電極から得られる複数の信号が単一のセンサグルコース値を提供するために融合され得るため、より高信頼性のグルコース読み取り値を提供する。このような信号融合は、EISによって提供される定量的な入力を利用して、冗長作用電極から最も信頼できる出力センサグルコース値を計算する。以下の議論は、冗長電極としての第1の作用電極(WE1)および第2の作用電極(WE2)に関して様々な融合アルゴリズムを説明し得るが、これは、例示によるものであり、限定ではなく、本明細書に説明されるアルゴリズムおよびその基本原理は、2つ以上の作用電極を有する冗長センサシステムに適用可能であり、そのシステムで使用され得る。加えて、上述のように、冗長電極は、単一のセンサ、複数の(同一の)センサ、または複数の非同一のセンサ上/内に含められ得る。
図33Aおよび33Bは、2つの代替的な方法論の最上位フローチャートを示し、各々が融合アルゴリズムを含む。具体的には、図33Aは、電流(Isig)ベース融合アルゴリズムを伴うフローチャートであり、図33Bは、センサグルコース(SG)融合を対象とするフローチャートである。図から分かるように、2つの方法論の主な差異は、較正の時間である。したがって、図33Aは、Isig融合について、融合3540が完了した後に較正3590が実施されることを示す。つまり、WE1からWEnまでの冗長なIsigは、単一のIsig3589に融合され、次いで、それが較正されて、単一のセンサグルコース値3598を生成する。一方で、SG融合に関して、較正3435は、WE1からWEnまでの各個々のIsigに対して完了されて、作用電極の各々に対する較正されたSG値(例えば、3436、3438)を生成する。したがって、SG融合アルゴリズムは、複数のIsigの各々の独立較正を提供し、これは、本明細書に説明される本発明のいくつかの実施形態で好ましい場合がある。較正されると、複数の較正されたSG値が、単一のSG値3498に融合される。
図33Aおよび33Bに示されるフローチャートの各々がスパイクフィルタ処理プロセス(3520、3420)を含むことに留意することが重要である。感度損失に関する議論で上記に説明されたように、1kHz以上の周波数インピーダンス測定は、典型的には、IsigでのEIS誘発スパイクを引き起こす。したがって、EIS手順がSG融合およびIsig融合の両方について、電極WE1~WEnの各々に対して実施されると、Isig3410、3412など、および3510、3512などをまずフィルタ処理して、それぞれのフィルタ処理されたIsig3422、3424など、および3522、3524などを得ることが好ましい。フィルタ処理されたIsigは、以下に説明されるように、次いで、Isig融合に使用されるか、または、まず較正され、次いで、SG融合に使用される。以下の議論で明らかになるように、両方の融合アルゴリズムは、様々な要因に基づく重みの計算および割り当てを伴う。
図34は、SG融合のための融合アルゴリズム3440の詳細を示す。本質的に、融合重みが決定される前にチェックされる必要がある4つの要因が存在する。第1に、完全性チェック3450は、(i)Isig、(ii)1kHzの実インピーダンスおよび虚インピーダンス、(iii)0.105Hzの実インピーダンスおよび虚インピーダンス、(iv)ナイキスト勾配のパラメータの各々が、正常なセンサ動作に関して指定された範囲(例えば、所定の下限閾値および上限閾値)内にあるか否かを決定することを伴う。示されるように、完全性チェック3450は、境界チェック3452およびノイズチェック3456を含み、チェックの各々について、上述のパラメータが入力パラメータとして使用される。簡潔にするために、1つ以上の周波数での実インピーダンスおよび/または虚インピーダンスは、図33A~35では、インピーダンスの「Imp」として簡単に示されていることに留意されたい。加えて、実インピーダンスおよび虚インピーダンスの両方は、インピーダンスの大きさおよび位相(図33Aおよび33Bでは入力としても示される)を使用して計算され得る。
境界チェック3452およびノイズチェック3458の各々からの出力は、冗長作用電極の各々に対するそれぞれの信頼性指標(RI)である。したがって、境界チェックからの出力は、例えば、RI_bound_We1(3543)およびRI_bound_We2(3454)を含む。同様に、ノイズチェックに関して、出力は、例えば、RI_noise_We1(3457)およびRI_noise_We2(3458)を含む。各作用電極の境界およびノイズ信頼性指数は、正常なセンサ動作に対する上述の範囲の遵守に基づいて計算される。したがって、パラメータのいずれかが、特定の電極の指定された範囲外にある場合、その特定の電極の信頼性指標は減少する。
上述のパラメータの閾値または範囲は、特定のセンサおよび/または電極設計を含む様々な要因に依存し得ることに留意されたい。それにもかかわらず、1つの好ましい実施形態では、上述のパラメータのいくつかの典型的な範囲は、例えば、1kHzの実インピーダンスの境界閾値=[0.3e+4 2e+4]、1kHzの虚インピーダンスの境界閾値=[-2e+3,0]、0.105Hzの実インピーダンスの境界閾値=[2e+4 7e+4]、0.105Hzの虚インピーダンスの境界閾値=[-2e+5-0.25e+5]、およびナイキスト勾配の境界閾値=[2 5]であり得る。ノイズは、例えば、二次中心差分法を使用して計算され得、この方法では、ノイズが各変数バッファに対する中央値の特定のパーセンテージ(例えば、30%)を上回る場合に、ノイズ境界から外れているとみなされる。
第2に、センサディップが、センサ電流(Isig)および1kHzの実インピーダンスを使用して検出され得る。したがって、図34に示されるように、Isigおよび「Imp」は、ディップ検出3460の入力として使用される。ここで、第1のステップは、Isig間に任意の発散が存在するか否か、および任意のそのような発散が1kHzの実インピーダンスデータに反映されているか否かを決定することである。これは、Isig類似性指標(RI_sim_isig12)3463と1kHzの実インピーダンス類似性指標(RI_sim_imp12)3464との間のマッピング3465を使用することによって実現され得る。このマッピングは、ディップが現実ではない場合に偽陽性を回避することを助けるため、重要である。Isig発散が現実である場合、アルゴリズムは、より高いIsigを有するセンサを選択することになる。
一実施形態によると、2つの信号(例えば、2つのIsig、または2つの1kHzの実インピーダンスデータ点)の発散/収束は、以下のように計算され得る。
diff_va1=abs(va1-(va1+va2)/2)、
diff_va2=abs(va2-(va1+va2)/2)、
RI_sim=1-(diff_va1+diff_va2)
/(mean(abs(va1+va2))/4)
式中、va1およびva2は、2つの変数であり、RI_sim(類似性指標)は、信号の収束または発散を測定するための指標である。この実施形態では、RI_simは、0と1との間を境界としなければならない。したがって、上記で計算されるRI_simが0未満である場合、0に設定されることになり、1より大きい場合、1に設定されることになる。
マッピング3465は、通常線形回帰(OLR)を使用して実施される。しかしながら、OLRがうまく機能しないとき、ロバスト中央値勾配線形回帰(robust median slope linear regression、RMSLR)が使用され得る。Isig類似性指標および1kHzの実インピーダンス類似性指標に関して、(i)Isig類似性指標を1kHzの実インピーダンス類似性指標にマッピングすることと、(ii)1kHzの実インピーダンス類似性指標をIsig類似性指標にマッピングすることと、の2つのマッピング手順が必要とされる。両方のマッピング手順は、res12およびres21の2つの残余を発生させることになる。ディップ信頼性指標3467、3468の各々が、次いで、次のように計算され得る。
RI_dip=1-(res12+res21)/(RI_sim_isig
+RI_sim_1K_real_impedance)。
第3の要因は、感度損失3470であり、これは、例えば、過去8時間の1kHzの虚インピーダンスの傾向を使用して検出され得る。1つのセンサの傾向が負に変わる場合、アルゴリズムは、他のセンサに依存することになる。両方のセンサが感度を失った場合、単純平均が採用される。傾向は、ノイズを含む傾向のある1kHzの虚インピーダンスを平滑化する強力なローパスフィルタを使用することによって、および、例えば、過去8時間の時間に関する相関係数または線形回帰を使用して、相関係数が負であるか否か、または勾配が負である否かを決定することによって、計算され得る。感度損失信頼性指標3473、3474の各々は、次いで、1または0のバイナリ値が割り当てられる。
we1、we2、…wenの各々の総信頼性指標(RI)は、次のように計算される。
RI_we1=RI_dip_we1×RI_sensitivity_loss_we1×RI_bound_we1×RI_noise_we1
RI_we2=RI_dip_we2×RI_sensitivity_loss_we2×RI_bound_we2×RI_noise_we2
RI_we3=RI_dip_we3×RI_sensitivity_loss_we3×RI_bound_we3×RI_noise_we3
RI_we4=RI_dip_we4×RI_sensitivity_loss_we4×RI_bound_we4×RI_noise_we4
.
.
.
RI_wen=RI_dip_wen
×RI_sensitiveivity_loss_wen
×RI_bound_wen×RI_noise_wen
個々の作用電極のそれぞれの信頼性指標を計算すると、電極の各々の重みは、次のように計算され得る。
weight_we1=RI_we1/(RI_we1+RI_we2+RI_we3
+RI_we4+…+RI_wen)
weight_we2=RI_we2/(RI_we1+RI_we2+RI_we3
+RI_we4+…+RI_wen)
weight_we3=RI_we3/(RI_we1+RI_we2+RI_we3
+RI_we4+…+RI_wen)
weight_we4=RI_we4/(RI_we1+RI_we2+RI_we3
+RI_we4+…+RI_wen)
.
.
.
weight_wen=RI_wen/(RI_we1+RI_we2+RI_we3
+RI_we4+…+RI_wen)
上記に基づいて、融合SG3498が、次いで、次のように計算される。
SG=weight_we1×SG_we1+weight_we2×SG_we2
+weight_we3×SG_we3+weight_we4×SG_we4
+…+weight_wen×SG_wen
最後の要因は、センサ融合の瞬間的な重み変化によって引き起こされ得るなどの、最終的なセンサ読み取り値のアーチファクトに関する。これは、ローパスフィルタ3480を適用して各電極のRIを平滑化することによって、またはローパスフィルタを最終的なSGに適用することによって回避され得る。前者が使用される場合、フィルタ処理された信頼性指標、例えば、RI_We1*およびRI_We2*(3482、3484)は、各電極の重みの計算、したがって、融合SG3498の計算に使用される。
図35は、Isig融合のための融合アルゴリズム3540の詳細を示す。分かるように、このアルゴリズムは、2つの例外を除いて、SG融合について図34に示されるものと実質的に同様である。まず、上記のように、Isig融合の場合、較正がプロセスの最終ステップを構成し、単一の融合Isig3589が較正されて、単一のセンサグルコース値3598を発生させる。図33Bも参照されたい。第2に、SG融合は、複数の電極のSG値を使用して、最終的なSG値3498を計算するが、融合Isig値3589は、複数の電極のフィルタ処理されたIsig(3522、3524など)を使用して計算される。
非糖尿病集団を含む1つの閉ループ研究では、上記の融合アルゴリズムは、低始動問題が最重要であり、したがって、センサの精度および信頼性に実質的な影響を有し得る、1日目、ならびに全体(すなわち、センサの7日間の寿命にわたって)の両方で、平均絶対相対差異(MARD)の大幅な改善を提供したことが見出された。この研究では、(1)Medtronic MinimedのFerrari Algorithm1.0(上述されたSG融合アルゴリズム)を使用する融合を介した1つのセンサグルコース値(SG)の計算、(2)1kHzのEISデータを使用する、より良好なISIG値を識別することによる1つのSGの計算(上述されたIsig融合アルゴリズムによる)、および(3)より高いISIG値を使用することによる(すなわち、EISを使用せずに)1つのSGの計算、の3つの異なる方法論を使用して、高電流密度(公称)めっきを伴う88%分散レイアウト設計に対するデータを評価した。研究に関するデータの詳細が以下に提示される。
上記のデータによると、第1の手法では、1日目のMARD(%)が19.52%で、全体のMARDが12.28%であったことが見出された。第2の手法について、1日目のMARDが15.96%であり、全体のMARDが11.83%であった。最後に、第3の手法について、MARDが1日目に17.44%、全体で12.26%であった。したがって、冗長電極を有するこの設計に関して、1kHzのEISを使用する、より良好なISIGに基づくSGの計算(すなわち、第2の方法論)が、最大の利点を提供することが分かる。具体的には、より低い1日目のMARDは、例えば、EISを使用する、より良好な低始動検出に起因し得る。加えて、全体のMARDパーセンテージは、この研究では、WE1およびWE2の全体の平均MARDの13.5%よりも1%を超えて低い。上述された手法では、データ遷移は、例えば、図33A~35に関連して上術されたようにローパスフィルタ3480を使用することによるなどの、遷移の重大さを最小限に抑えるようにフィルタ処理方法によって処理され得ることに留意されたい。
例えば、低始動、感度損失、および信号ディップイベントの評価を含むセンサ診断が、センサ設計、電極の数(すなわち、冗長性)、電極の分布/構成などを含む様々な要因に依存することを繰り返し記載する。したがって、EISベースパラメータが実質的にグルコース非依存性であり得る、実際の周波数、または周波数の範囲、および、したがって、上述された故障モードのうちの1つ以上に対する独立マーカ、または予測子もまた、特定のセンサ設計に依存し得る。例えば、上記に説明されたように、感度損失は、実質的にグルコース非依存性である、比較的高い周波数での虚インピーダンスを使用して予測され得、グルコース依存性のレベル、および、したがって、虚インピーダンスを感度損失のマーカとして使用するための特定の周波数範囲は、実際のセンサ設計に依存してシフトし得る(より高く、またはより低く)。
より具体的には、センサ設計が冗長作用電極の使用にますます移行するにつれて、後者は、センサの全体的なサイズを維持するために、ますます小さいサイズにならなければならない。電極のサイズは、そのため、特定の診断のために照会され得る周波数に影響を与える。これに関して、本明細書に説明され、図33A~35に示される融合アルゴリズムは、限定ではなく、例示としてみなされ、各アルゴリズムは、分析中のセンサのタイプに基づいて、最小量のグルコース依存性を呈する周波数でEISベースパラメータを使用するために必要に応じて変更され得ることに留意することが重要である。
加えて、実験データは、ヒトの組織構造もまた、異なる周波数でグルコース依存性に影響を与え得ることを示す。例えば、子供では、0.105Hzの実インピーダンスは、低始動検出に関して実質的にグルコース非依存性インジケータであることが見出された。これは、主に抵抗性構成要素に関する、例えば、ワールブルグインピーダンスを変化させる子供の組織構造の結果として起こると考えられる。干渉物質検出に関係する後続の議論も参照されたい。
本明細書に説明される本発明の実施形態はまた、センサ較正を最適化する際のEISの使用も対象とする。背景として、現在の方法論では、後続のIsig値を較正するために使用され得るBG対Isigプロットの勾配が、次のように計算される。
式中、αは、時定数の指数関数、βは、血中グルコース変動の関数、オフセットは、定数である。定常状態のセンサに関して、この方法は、かなり正確な結果を提供する。例えば、図36に示されるように、BGおよびIsigは、かなりの線形関係に従い、オフセットは、定数として得られ得る。
しかしながら、例えば、センサが遷移している期間中などの、上述の線形関係が成り立たない状況が存在する。図37に示されるように、Isig-BGペア1および2は、IsigおよびBG関係に関してペア3および4とは有意に異なることが明らかである。これらのタイプの条件に関して、一定のオフセットの使用は、不正確な結果を生成する傾向がある。
この問題に対処するために、一実施形態は、EISベース動的オフセットの使用を対象とし、EIS測定が、次のようにセンサステータスベクトルを定義するために使用される。
V={real_imp_1K,img_imp_1K,Nyquist_slope,Nyquist_R_square}
式中、ベクトルの要素の全ては、実質的にBG非依存性である。Nyquist_R_squareは、ナイキスト勾配の計算に使用される線形回帰のR二乗、すなわち、比較的低い周波数での実インピーダンスと虚インピーダンスと間の相関係数の二乗であり、小さいR二乗は、センサ性能の異常を示すことに留意されたい。各Isig-BGペアに関して、ステータスベクトルが割り当てられる。ステータスベクトルの有意差、例えば、図37に示される例の|V2-V3|が検出された場合、1および2と比較すると、異なるオフセット値が3および4に割り当てられる。したがって、この動的オフセット手法を使用することによって、IsigとBGとの間の線形関係を維持することが可能である。
第2の実施形態では、EISベースセグメンテーション手法が較正に使用され得る。図37の例およびベクトルVを使用すると、1および2の間のセンサ状態が、3および4の間のセンサ状態とは大幅に異なっていると決定され得る。したがって、較正バッファは、次のように2つのセグメントに分割され得る。
Isig_buffer1=[Isig1、Isig2]、BG_buffer1=[BG1、BG2]
Isig_buffer2=[Isig3、Isig4]、BG_buffer2=[BG3、BG4]
したがって、センサが1および2の間で動作するとき、Isig_buffer1およびBG_buffer1が較正に使用されることになる。しかしながら、センサが3および4の間、すなわち、遷移期間中に動作するとき、Isig_buffer2およびBG_buffer2が較正に使用されることになる。
さらに別の実施形態では、EISが勾配を調整するために使用されるEISベース動的勾配手法が、較正目的に使用され得る。図38Aは、この方法がセンサ精度を改善するためにどのように使用され得るかの一例を示す。この図では、データ点1~4は、別個の血中グルコース値である。図38Aから分かるように、データ点1と3との間にセンサディップ3810が存在し、そのディップは、上記のセンサ状態ベクトルVを使用して検出され得る。図38Aの参照番号3820によって示されるように、ディップの間、傾きは、上方に調整されて、過小読み取りを低減し得る。
さらなる実施形態では、EIS診断が、センサ較正のタイミングを決定するために使用され得、これは、例えば、低始動イベント、感度損失イベント、および他の同様の状況に非常に有用である。周知のように、現在のほとんどの方法論は、事前設定されたスケジュールに基づいて、例えば、1日4回、定期的な較正を必要とする。しかしながら、EIS診断を使用すると、較正は、それらが必要な頻度で、最も生産性の高いときに実施され得るように、イベントドリブンになる。ここでも、ステータスベクトルVが、センサステータスが変化したときを決定し、実際に変化した場合に較正を要求するために使用され得る。
より具体的には、例示的な一例では、図38Bは、低始動検出を伴うEIS支援センサ較正のフローチャートを示す。ナイキスト勾配、1 kHzの実インピーダンス、および境界チェック3850(例えば、上記の境界チェックおよび図33A~35の融合アルゴリズムと関連するEISベースパラメータの関連閾値を参照されたい)を使用すると、信頼性指標1853は、1kHzの実インピーダンス3851およびナイキスト勾配3852が、それらの対応する上限よりも低いときに、RI_startup=1であり、センサが、較正の準備ができているように、始動のために展開され得る。言い換えると、信頼性指標3853は、「高」(3854)であり、論理は、3860での較正に進み得る。
一方で、1kHzの実インピーダンスおよびナイキスト勾配が、その対応する上限(または閾値)よりも高いとき、RI_startup=0(すなわち、「低」)であり、センサが、較正の準備ができておらず(3856)、すなわち、低始動問題が存在し得る。ここでは、1kHzの実インピーダンスおよびナイキスト勾配の傾向が、両方のパラメータが範囲内にあるときを予測するために使用され得る(3870)。これが、非常に短い時間のみが掛かる(例えば、1時間未満)と推定される場合、アルゴリズムは、センサの準備が整うまで、すなわち、上記のEISベースパラメータが境界内に収まるまで待機し(3874)、その時点でアルゴリズムは、較正に進む。しかしながら、待機時間が比較的長い場合(3876)、センサは、ここで、較正されてもよく、次いで、勾配またはオフセットが、1kHzの実インピーダンスおよびナイキスト勾配傾向に応じて徐々に調整されてもよい(3880)。調整を実施することによって、低始動による深刻な過大または過小読み取りが回避され得ることに留意されたい。上記のように、即時較正アルゴリズムに使用されるEISベースパラメータおよび関連情報は、実質的にグルコース非依存性である。
図38Bと関連する上記の説明は、単一の作用電極、ならびにその作用電極の始動のための信頼性指標の計算を示しているが、これは、例示のためであり、限定ではないことに留意されたい。したがって、2つ以上の作用電極を含む冗長センサでは、複数の(冗長)作用電極の各々について、境界チェックが実施され得、始動信頼性指数が計算される。次いで、それぞれの信頼性指標に基づいて、グルコース測定値の取得に進み得る少なくとも1つの作用電極が識別され得る。言い換えると、単一の作用電極を有するセンサでは、後者が低始動を呈する場合、センサの実際の使用(グルコースを測定するための)は、低始動期間が終わるまで遅延されなければならない場合がある。この期間は、典型的には、1時間以上の単位になる場合があり、これは、明らかに不都合である。対照的に、冗長センサでは、本明細書に説明される方法論を利用することは、適応的または「スマート」な始動を可能にし、データ収集に進み得る電極は、かなり短い単位、例えば、数分で識別され得る。これは、結果的に、低始動が、概して、MARDの1/2%の増加を提供するため、MARDを低減する。
さらに別の実施形態では、EISは、較正バッファの調整を支援し得る。既存の較正アルゴリズムに関して、バッファサイズは、常に4、すなわち、4つのIsig-BGペアであり、重みは、上記のように時定数の指数関数であるα、および血中グルコース変動の関数であるβに基づく。ここで、EISは、バッファをいつフラッシュするか、バッファ重みをどのように調整するか、および適切なバッファサイズを決定することを助け得る。
いくつかの実施形態では、EISはまた、干渉物質検出にも使用され得る。具体的には、注入カテーテル内に配置されるセンサと薬剤注入カテーテルとの組み合わせを含む薬剤注入セットを提供することが望ましい場合がある。そのようなシステムでは、センサに対する注入カテーテルの物理的な場所は、注入されている薬剤および/またはその不活性成分によって引き起こされ得るセンサ信号に対する潜在的な影響に主に起因して、懸念があり得る。
例えば、インスリンと共に使用される希釈剤は、防腐剤としてm-クレゾールを含有する。生体外研究では、インスリン(したがって、m-クレゾール)がセンサに近接して注入されている場合、m-クレゾールは、グルコースセンサに悪影響を及ぼすことが見出されている。したがって、センサおよび注入カテーテルが単一の針に組み合わされるシステムは、センサ信号に対するm-クレゾールの影響を検出し、それに対して調整することができなければならない。m-クレゾールがセンサ信号に影響を及ぼすため、センサ信号自体とは無関係にこの干渉物質を検出する手段を有することが望ましいことになる。
実験は、センサ信号に対するm-クレゾールの影響が一時的であり、したがって、可逆的であることを示している。それにもかかわらず、インスリン注入がセンサに過度に近づいて起こると、m-クレゾールは、電極を「汚染」する傾向があり、それにより、電極は、インスリン(およびm-クレゾール)が患者の組織内に吸収されるまで、グルコースをもはや検出することができない。これに関して、インスリン注入の開始と、センサがグルコースを再び検出する能力を回復したときとの間には、典型的には、約40分の期間があることが見出されている。しかしながら、有利なことに、同じ期間中に、グルコース濃度とは全く無関係に、1kHzのインピーダンスの大きさの大幅な増大が存在することも見出されている。
具体的には、図39は、センサが100mg/dLのグルコース溶液中に配置され、1kHzのインピーダンスが、丸で囲まれたデータ点3920によって示されるように、10分毎に測定された、生体外実験のIsigおよびインピーダンスのデータを示す。次いで、m-クレゾールを追加し、溶液を0.35%のm-クレゾールにした(3930)。分かるように、m-クレゾールが追加されると、Isig3940は、最初に劇的に増大し、その後、下降し始める。次いで、溶液中のグルコース濃度を、追加の100mg/dLのグルコースを追加することによって2倍にした。しかしながら、これは、電極がグルコースを検出することができなかったため、Isig3940に対して影響がなかった。
一方で、m-クレゾールは、インピーダンスの大きさおよび位相の両方に劇的な影響を及ぼした。m-クレゾールの追加前後の両方について、図40Aが位相のボードプロットを示し、図40Bがインピーダンスの大きさのボードプロットを示す。分かるように、m-クレゾールが追加された後、インピーダンスの大きさ4010は、その初期化後の値4020から、周波数スペクトル全体で少なくとも一桁増大した。同時に、位相4030は、初期化後の値4040と比較して完全に変化した。図40Cのナイキストプロットについて。ここで、初期化前の曲線4050および初期化後の曲線4060は、正常に機能しているセンサに対して予期されるように見える。しかしながら、m-クレゾールの追加後、曲線4070は、大幅に異なることになる。
上記の実験は、m-クレゾールが追加された後にIsigに依存し続けることの重要な実用上の落とし穴を識別する。図39を再び参照すると、センサ信号を監視している患者/ユーザは、そのグルコースレベルがちょうど急上昇し、ボーラスを投与すべきであるという誤った印象の下に置かれる場合がある。ユーザは、次いで、ボーラスを投与するが、そのときIsigは、既に再びドリフトダウンし始めている。言い換えると、患者/ユーザにとって、全てが正常に見え得る。しかしながら、実際には、患者が不必要な用量のインスリンを投与しただけであり、ボーラス投与前の患者のグルコースレベルに依存して、低血糖イベントを経験する危険性に患者をさらし得ることが実際には起こった。この状況は、可能な限りグルコース非依存性である、干渉物質を検出する手段の望ましさを強める。
図41は、センサが100mg/dLのグルコース溶液で初期化され、その後、グルコースが1時間で400mg/dLに上昇し、次いで、100mg/dLに戻った、別の実験を示す。m-クレゾールが、次いで、濃度を0.35%に上昇させるために追加され、センサは、この溶液中に20分間、留まる。最後に、センサを100mg/dLのグルコース溶液中に配置して、Isigがm-クレゾールへの曝露後に回復することを可能にした。分かるように、初期化後、1kHzのインピーダンスの大きさ4110は、約2キロオームであった。m-クレゾールを追加すると、Isig4120は、インピーダンスの大きさ4110と同様に、急上昇した。さらに、センサが100md/dLのグルコース溶液に戻されると、インピーダンスの大きさ4110も、ほぼ正常なレベルに戻った。
上記の実験から分かるように、EISは、干渉剤、この場合、m-クレゾールの存在を検出するために使用され得る。具体的には、干渉物質が、周波数スペクトル全体にわたってインピーダンスの大きさを増大させるような手段でセンサに影響を及ぼすため、インピーダンスの大きさが、干渉を検出するために使用され得る。干渉が検出されると、干渉物質が測定されない点にセンサの動作電圧が変更され得るか、またはデータ報告が一時的に停止され、薬剤の投与に起因してセンサがデータを報告することができない(測定されたインピーダンスが注入前のレベルに戻るまで)ことをセンサが患者/ユーザに示す。干渉物質の影響がインスリン中に含有される防腐剤に起因するため、インピーダンスの大きさは、注入されるインスリンが速効性または遅効性であるか否かにかかわらず、上記と同じ挙動を呈することになる。
重要なことに、上述のように、インピーダンスの大きさ、および当然、1kHzでの大きさは、実質的にグルコース非依存性である。図41を参照すると、グルコースの濃度が100mg/dLから400mg/dLまで4倍に上昇すると、1kHzのインピーダンスの大きさは、約2000オームから約2200オームまで、または約10%増大することが分かる。言い換えると、インピーダンスの大きさの測定値に対するグルコースの影響は、測定されたインピーダンスと比較してほぼ一桁小さいように見える。このレベルの「信号対ノイズ」比は、典型的には、ノイズ(すなわち、グルコース効果)が除外されるのに十分に小さく、それにより、結果として生じるインピーダンスの大きさは、実質的にグルコース非依存性である。加えて、インピーダンスの大きさは、上記の生体外実験に使用されたバッファ溶液と比較して、実際のヒトの組織でさらに高い程度のグルコース非依存性を呈することが強調されるべきである。
本明細書に説明される本発明の実施形態はまた、とりわけ、(i)複数のポテンショスタット、および酸素または過酸化物のいずれかに基づく多端子グルコースセンサとのインターフェースをサポートすることと、(ii)マイクロコントローラとインターフェースして、マイクロパワーセンサシステムを形成することと、(iii)EISベースパラメータの測定に基づいて、EIS診断、融合アルゴリズム、および他のEISベースプロセスを実装することと、を提供するように必要なアナログ電子機器を提供するカスタム特定用途向け集積回路(ASIC)である、アナログフロントエンド集積回路(AFE IC)も対象とする。より具体的には、ASICは、広範囲の周波数にわたってセンサの実インピーダンスおよび虚インピーダンスのパラメータを測定する診断性能、ならびにマイクロプロセッサチップとの双方向通信を可能にするデジタルインターフェース回路を組み込む。さらに、ASICは、非常に低いスタンバイおよび動作電力での動作を可能にする電力制御回路、ならびに外部マイクロプロセッサの電源がオフにされることができるように、リアルタイムクロックおよび水晶発振器を含む。
図42Aおよび42Bは、ASICのブロック図を示し、以下の表1は、パッド信号の説明(図42Aおよび42Bの左側に示される)を提供し、いくつかの信号は、単一のパッド上に多重化されている。
ここで、ASICは、図42Aおよび42Bならびに表1を参照して説明される。
電源プレーン
ASICは、2.0ボルト~4.5ボルトの動作入力範囲を有する電源パッドVBAT(4210)によって給電される1つの電源プレーンを有する。この電源プレーンは、このプレーンのいくつかの回路の電圧を下げる調整器を有する。電源は、VDDBU(4212)と呼ばれ、テストおよびバイパス用の出力パッドを有する。VBAT電源上の回路は、RC発振器、リアルタイムクロック(RC osc)4214、電池保護回路、調整器制御、パワーオンリセット回路(POR)、および様々な入力/出力を含む。VBAT電源プレーンのパッドは、40℃およびVBAT=3.50Vで75nA未満を消費するように構成される。
ASICもまた、論理を供給するためにVDD電源を有する。VDD電源電圧範囲は、少なくとも1.6ボルト~2.4ボルトにプログラム可能である。VDD電源プレーン上の回路は、デジタル論理、タイマー(32kHz)、およびリアルタイムクロック(32kHz)の大部分を含む。VDD電源プレーンは、必要に応じて他の電圧プレーンにインターフェースするレベルシフタを含む。レベルシフタ、そのため、別の電源プレーンが給電されていない場合に任意の給電されている電源プレーンが10nAを超えて増大する電流を有しないように調整されるインターフェースを有する。
ASICは、オンボード調整器(遮断制御付き)および外部VDDソースの選択肢を含む。調整器入力は、別個のパッド、REG_VDD_IN(4216)であり、これは、VBAT上の他のI/Oと共通の静電放電(ESD)保護を有する。オンボード調整器は、出力パッド、REG_VDD_OUT(4217)を有する。ASICはまた、REG_VDD_OUTパッドとは別個であるVDD用の入力パッドも有する。
ASICは、VDDA(4218)と呼ばれるアナログ電源プレーンを含み、これは、VDDオンボード調整器または外部ソースのいずれかによって給電され、フィルタ処理されたVDDによって正常に給電される。VDDA給電回路は、0.1ボルト以内のVDDで動作するように構成され、それによって、VDDAとVDD電源プレーンとの間でレベルシフトする必要性を取り除く。VDDA電源は、センサアナログ回路、アナログ測定回路、および任意の他のノイズに敏感な回路に給電する。
ASICは、指定されたデジタルインターフェース信号用のパッド電源、VPADを含む。パッド電源は、少なくとも1.8V~3.3Vの動作電圧範囲を有する。これらのパッドは、別個の電源パッドを有し、外部電源から給電される。パッドはまた、他のオンボード回路にレベルシフタを組み込んで、VDD論理電源電圧に無関係に柔軟なパッド電源範囲を可能にする。ASICは、VPAD電源が無効である場合、他の電源電流が10nAを超えて増大しないように、VPADパッドリング信号を調整し得る。
バイアス発生器
ASICは、バイアス発生器回路、BIAS_GEN(4220)を有し、これは、VBAT電源から給電され、システムの電源電圧で安定するバイアス電流を発生させる。出力電流は、(i)給電感度:1.6v~4.5Vの電源電圧から<±2.5%、および(ii)電流精度:トリミング後に<±3%の仕様を有する。
BIAS_GEN回路は、動作用のバイアス電流を必要とする回路に給電するために、スイッチ付きおよびスイッチなしの出力電流を発生させる。BIAS_GEN回路の動作電流ドレインは、2.5V~4.5VのVBATを用いて25℃で0.3uA未満である(いかなるバイアス出力電流も除く)。最後に、バイアス電流の温度係数は、概して、4,000ppm/℃~6,000ppm/℃である。
電圧基準
本明細書に説明されるように、ASICは、VBAT電源から給電される低電力電圧基準を有するように構成される。電圧基準は、VBATまたはVDDBUで給電される論理からの信号を受け入れ得るイネーブル入力を有する。ASICは、VBATが給電されているときに、イネーブル信号が、この信号インターフェースからの任意の電源から、10nAを超過する電流のいかなる増大も引き起こさないように、設計される。
基準電圧は、(i)出力電圧:トリミング後に1.220±3mV、(ii)電源感度:1.6V~4.5V入力で<±6mV、(iii)温度感度:0℃~60℃で<±5mV、および(iv)出力電圧のデフォルト精度(トリムなし):1.220V±50mVの仕様を有する。加えて、供給電流は、4.5V、40℃で800nA未満になるべきである。この実施形態では、基準出力は、論理のブレークダウン電圧を超えるレベルにVDD電圧調整器がオーバーシュートしないように、基準が無効化されるときに強制的にVSSAになる。
32kHz発振器
ASICは、低電力32.768kHz水晶発振器4222を含み、これは、VDDA電源由来の電力で給電され、ソフトウェアを用いて水晶発振器パッド(XTALI、XTALO)の静電容量をトリムし得る。特に、周波数トリム範囲は、トリム範囲全体を通して最大2ppmのステップサイズで、少なくとも-50ppm~+100ppmである。ここで、水晶は、7pFの負荷容量、Ls=6.9512kH、Cs=3.3952fF、Rs=70k、シャント容量=1pF、および各水晶端子上の2pFのPC基板寄生容量と仮定され得る。
ASICは、パッド、CLK_32kHZ上で利用可能なVPADレベル出力を有し、出力は、ソフトウェアおよび論理制御下で無効化され得る。デフォルトは、32kHzの発振器を駆動している。入力ピン、OSC32K_BYPASS(4224)は、32kHz発振器を無効化し(電力ドレインなし)、XTALIパッドへのデジタル入力を可能にし得る。この機能と関連付けられた回路は、OSC32K_BYPASSが低いときに発振器電流以外のOSC32K_BYPASS信号のいずれかの状態で10nAを超過する、いかなるASIC電流も追加しないように構成される。
32kHZ発振器は、バイパス条件を除いて、VDDAプレーンが給電されるときに常に動作可能である必要がある。OSC32K_BYPASSがtrueである場合、32KHZ発振器アナログ回路は、低電力状態になり、XTALIパッドは、レベルが0~VDDAであるデジタル入力を受け入れるように構成される。32kHz発振器出力が40%~60%のデューティサイクルを有することに留意されたい。
タイマー
ASICは、32kHz発振器を2で除算してクロック制御されるタイマー4226を含む。これは、事前設定可能であり、2つのプログラム可能なタイムアウトを有する。17分4秒の総時間カウントを与える24個のプログラム可能なビットを有する。タイマーは、CLK_32KHzパッドへのクロックを無効化し、VPADプレーン上のマイクロプロセッサ(uP)インターフェース信号を所定の状態に設定するためのプログラム可能な遅延も有する(以下のマイクロプロセッサウェイクアップ制御信号の節を参照されたい)。これは、マイクロプロセッサが外部クロックなしで停止モードに入ることを可能にする。しかしながら、この機能は、プログラム可能なビットを有するソフトウェアによって無効化され得る。
タイマーはまた、CLK_32KHZクロック出力を有効化し、UP_WAKEUPを高に設定することによって、マイクロプロセッサをウェイクアップするためのプログラム可能な遅延も含む。電源低状態から電源OK状態へのPOR2(VDD POR)の遷移は、32kHzオシレータ、CLK_32KHZクロック出力を有効化し、UP_WAKEUPを高に設定することになる。電源遮断および電源投入は、プログラム可能な制御ビットで制御されるように構成される。
リアルタイムクロック(RTC)
ASICはまた、非ゲートの自走32kHz発振器から動作する48ビットの読み取り可能/書き込み可能なバイナリカウンタも有する。リアルタイムクロック4228への書き込みは、クロックが書き込まれる前に、キーを用いたアドレスへの書き込みを必要とする。クロックへの書き込みアクセスは、キーアドレスへの書き込み後、1ミリ秒~20ミリ秒で終了するように構成される。
リアルタイムクロック4228は、ハーフカウント(MSB=1、全ての他のビットが0)に対するPOR1_IN(VBAT POR)またはPOR2_IN(VDD_POR)のいずれかによるパワーオンリセットによってリセットされるように構成される。本発明の実施形態では、リアルタイムクロックは、プログラム可能な割り込み機能を有し、必要に応じてレイアウト技術によって、または適切なノードに静電容量を追加することによってのいずれかで実現され得る、シングルイベントアップセット(SEU)に対して堅牢であるように設計される。
RC発振器
ASICは、VBAT電源またはVBAT派生電源から給電されるRCクロックをさらに含む。RC発振器は、アナログテストモードでレジスタビットに書き込み(デジタルテストの節を参照されたい)、0~VBATレベルで信号をGPIO_VBATに印加することによって発振器がバイパスされ得ることを除いて、常に動作している。RC発振器は、トリム可能ではなく、(i)750Hz~1500Hzの周波数、(ii)50%±10%のデューティサイクル、(iii)25℃で200nA未満の電流消費、(iv)1V~4.5VのVBAT電源で±2%未満、かつ1.8V~4.5VのVBAT電源で1%よりも良好な周波数変化、および(v)VBAT=3.5Vで15℃~40℃の温度から+2、-2%未満の周波数変化の仕様を含む。RC周波数は、32kHz水晶発振器または外部周波数源を用いて測定され得る(発振器較正回路を参照されたい)。
リアルタイムRCクロック(RC発振器に基づく)
ASICは、RC発振器に基づく48ビットの読み取り可能/書き込み可能なバイナリリップルカウンタを含む。RCリアルタイムクロックへの書き込みは、クロックが書き込まれる前に、キーを用いたアドレスへの書き込みを必要とする。クロックへの書き込みアクセスは、キーアドレスへの書き込み後、1ミリ秒~20ミリ秒で終了し、保護ウィンドウの時間が、RCクロックを用いて発生するように構成される。
リアルタイムRCクロックは、水晶発振器が遮断された場合に相対タイムスタンプを可能にし、POR1_IN(BAT POR)上でハーフカウント(MSB=1、他の全てが0)にリセットされるように構成される。リアルタイムRCクロックは、レイアウト技術によって、または必要とされる適切なノードに静電容量を追加することによって、シングルイベントアップセット(SEU)に対して堅牢になるように設計される。POR2_INの立ち下がりエッジ上で、またはASICが電池残量低下状態になった場合、RTリアルタイムクロック値は、SPIポートを介して読み取られ得るレジスタ内に保存され得る。このレジスタおよび関連論理は、VBATまたはVDDBU電源プレーン上にある。
電池保護回路
ASICは、比較器を使用して電池電圧を監視し、VBAT電源プレーン由来の電力で給電される、電池保護回路4230を含む。電池保護回路は、VBAT電源に印加される電力を用いて常に動作するように構成される。電池保護回路は、クロック信号用にRC発振器を使用し得、3メガオームの総抵抗外部分圧器を含む、30nA未満である平均電流ドレインを有し得る。
電池保護回路は、2.90Vの電池閾値に対して0.421の比率を有する外部スイッチ付き分圧器を使用する。ASICはまた、0.421±0.5%の比率の内部分圧器も有する。この分圧器は、BATT_DIV_EN(4232)とVSSA(4234)との間に接続され、分圧器の出力は、BATT_DIV_INT(4236)と呼ばれるピンである。パッケージされた部品のピンを節約するために、この実施形態のBATT_DIV_INTは、パッケージの内部でBATT_DIVに接続される。また、この構成では、BATT_DIV_ENは、パッケージから出る必要がなく、2つのパッケージピンを節約する。
電池保護回路は、約2回/秒で、入力ピン、BATT_DIV(4238)の電圧をサンプリングするように構成され、サンプル時間は、RC発振器から発生する。ASICは、RC発振器の分圧器を調整して、RC発振器がその動作許容範囲内で動作している状態でサンプリング時間間隔を0.500秒±5ミリ秒に調整することができる。好ましい実施形態では、ASICは、テスト中により頻繁なサンプリング間隔を可能にするテストモードを有する。
比較器入力は、0~VBATボルトの入力を受け入れるように構成される。比較器入力への入力電流、BATT_DIVは、0~VBATボルトの入力で10nA未満である。比較器サンプリング回路は、パッド、BATT_DIV_ENに正のパルスを出力し、正のパルスは、サンプリング時間中のみ、オフチップ抵抗分割器を有効化して電力を節約するように外部回路によって使用され得る。電圧高論理レベルは、VBAT電圧であり、低レベルは、VSSレベルである。
BATT_DIV_ENパッドの出力抵抗は、VBAT=3.0Vで2キロオーム未満でなければならない。これは、分圧器がこの出力から直接駆動されることを可能にする。低電池残量条件を示すプログラム可能な数の連続的サンプルの後、比較器制御回路は、割り込み出力パッドへの割り込み、UP_INTをトリガする。デフォルトのサンプル数は、4であるが、連続的サンプル数は、4~120でプログラム可能である。
上記のUP_INTの発生後に電池残量低下を示すプログラム可能な数の連続的サンプル数の後、比較器制御回路は、ASICを低電力モードにする信号を発生させるように構成される。VDD調整器が無効化されることになり、低信号が、パッド、VPAD_ENにアサートされることになる。これは、電池残量低下状態と呼ばれることになる。繰り返しになるが、連続的サンプルの数は、4~120サンプルでプログラム可能であり、デフォルトは、4サンプルである。
比較器は、BATT_DIVの電圧の立ち下がりおよび立ち上がりに対する個々のプログラム可能な閾値を有する。これは、電池残量低下状態の状態に依存して2つの値を回路に多重化するようにデジタル論理に実装される。したがって、電池残量低下状態が低である場合、立ち下がり閾値が適用され、電池残量低下状態が高である場合、立ち上がり閾値が適用される。具体的には、比較器は、1.22~1.645±3%の16個のプログラム可能な閾値を有し、プログラム可能な閾値のDNLは、0.2LSB未満に設定される。
比較器の閾値変動は、20℃~40℃で+/-1%未満である。立ち下がり電圧のデフォルト閾値は、1.44V(公称分圧器の3.41VのVBAT閾値)であり、立ち上がり電圧のデフォルト閾値は、1.53V(公称分圧器の3.63VのVBAT閾値)である。ASICが電池残量低下状態になった後、比較器が電池OKの4つの連続的指標を感知した場合、ASICは、マイクロプロセッサの始動シーケンスを開始することになる。
電池電源プレーンパワーオンリセット
パワーオンリセット(POR)出力は、入力VBATが50マイクロ秒の期間に1.2ボルトを超えてスルーした場合、またはVBAT電圧が1.6±0.3ボルトを下回った場合、パッドnPOR1_OUT(4240)上に発生する。このPORは、5ミリ秒の最小パルス幅に伸長される。POR回路の出力は、アクティブ低であるように構成され、VBAT電源プレーン上のパッドnPOR1_OUTに進む。
ICは、電池電源プレーンPOR、nPOR1_IN(4242)用の入力パッドを有する。この入力パッドは、RCフィルタ処理を有し、それにより、50nsecよりも短いパルスは、論理をリセットさせないことになる。この実施形態では、nPOR1_OUTは、正常動作ではnPOR1_INに外部接続され、それによって、テストのためにアナログ回路をデジタル回路から分離する。nPOR1_INは、電源プレーンのいずれかの全ての論理をリセットさせ、全てのレジスタをデフォルト値に初期化する。したがって、リセットステータスレジスタのPORビットが設定され、全ての他のリセットステータスレジスタビットが消去される。PORリセット回路は、電源投入後、5秒を超える時間、VBAT電源から0.1uAを超えて消費しないように構成される。
VDDパワーオンリセット(POR)
ASICはまた、電源投入時、またはVDDがプログラム可能な閾値を下回って低下した場合、VDD電圧プレーンリセット信号を発生させる電圧比較器回路も有する。範囲は、数個の電圧閾値でプログラム可能である。デフォルト値は、1.8V-15%(1.53V)である。POR2は、立ち上がり電圧に対してプログラム可能な閾値を有し、これは、ヒステリシスを実装する。立ち上がり閾値もまた、プログラム可能であり、1.60V±3%のデフォルト値を有する。
POR信号は、アクティブ低であり、VDD電源プレーン上に出力パッド、nPOR2_OUT(4244)を有する。ASICはまた、VBAT電源プレーン上にアクティブ低のPORオープンドレイン出力、nPOR2_OUT_OD(4246)も有する。これは、PORを他のシステム構成要素に適用するために使用され得る。
VDD給電される論理は、入力パッド、nPOR2_IN(4248)由来のPORを有する。nPOR2_INパッドは、VDD電源プレーン上にあり、RCフィルタ処理を有し、それにより、50nsecよりも短いパルスは、論理をリセットさせないことになる。nPOR2_OUTは、正常な使用下でnPOR2_IN入力パッドに外部接続されるように構成され、それによって、アナログ回路をデジタル回路から分離する。
発生するリセットは、水晶発振器が安定していることを保証するために、VDDがプログラム可能な閾値を上回った後、少なくとも700ミリ秒のアクティブ時間まで伸長される。PORリセット回路は、電源投入後、5秒を超える時間、VDD電源から0.1uA以下、かつ電源投入後、5秒を超える時間、VBAT電源から0.1uA以下を消費する。POR閾値を記憶するレジスタは、VDD電源プレーンから給電される。
センサインターフェース電子機器
本明細書に説明される本発明の実施形態では、センサ回路は、過酸化物または酸素センサの任意の組み合わせで最大5つのセンサWORK電極(4310)をサポートするが、追加の実施形態では、より多くのそのような電極もまた適応され得る。過酸化物センサWORK電極が電流を供給している間、酸素センサWORK電極は、電流を引き込む。本実施形態に関して、センサは、図43に示されるように、ポテンショスタット構成で構成され得る。
センサ電子機器は、各電極インターフェース回路にプログラム可能な電力制御装置を有し、未使用のセンサ電子機器への電流をオフにすることによって電流ドレインを最小限に抑える。センサ電子機器はまた、RE(基準)電極4330からのフィードバックを使用するCOUNTER電極4320を駆動する電子機器も含む。この回路への電流は、電力を節約するために、使用されないときにはオフにプログラムされ得る。インターフェース電子機器は、マルチプレクサ4250を含み、そのため、COUNTER電極およびRE電極は、(冗長)WORK電極のいずれかに接続され得る。
ASICは、(i)RE:WORK電圧を設定するための電子機器用の溶液の基準電位を確立する基準電極、(ii)WORK1~WORK5:所望される還元/酸化(酸化還元)反応を行う作用センサ電極、(iii)COUNTER:このパッドからの出力がシステムVSSに対するRE電極上の既知の電圧を維持する、のセンサインターフェースを提供するように構成される。この実施形態では、ASICは、5mV以上の分解能および精度で最大5つのWORK電極用のWORK電圧を個々に設定することができるように構成される。
WORK電圧は、酸素モードで、VSSAに対して少なくとも0~1.22Vの範囲でプログラム可能である。過酸化物モードでは、WORK電圧は、VSSAに対して少なくとも0.6ボルト~2.054ボルトでプログラム可能である。VDDAが2.15V未満である場合、WORK電圧は、VDDA-0.1Vで動作可能である。ASICは、過酸化物センサモードでWORK電極電流を測定するために電流測定回路を含む。これは、例えば、(i)電流範囲:0~300nA、(ii)電圧出力範囲:過酸化物/酸素モードのWORK電極と同じ、(iii)出力オフセット電圧:最大±5mV、(iv)未較正の分解能:±0.25nAの仕様を有し得る、電流電圧または電流周波数変換器によって実装され得る。
ゲインに較正係数を適用し、10秒以下の取得時間を仮定した後の電流測定精度は、次のとおりである。
5pA~1nA:±3% ±20pA
1nA~10nA:±3% ±20pA
10nA~300nA:±3% ±0.2nA
電流周波数変換器(ItoF)のみに関して、周波数範囲は、0Hz~50kHzであり得る。電流変換器は、過酸化物モードのWORK電極のVSSに対して、指定された電圧範囲で動作しなければならない。ここでは、電流ドレインは、2.5V電源から2uA未満であり、デジタルアナログ(DAC)電流を含むWORK電極電流が変換器毎に10nA未満である。
電流変換器は、ソフトウェア制御によって有効化または無効化され得る。無効化されると、WORK電極は、非常に高いインピーダンス値、すなわち、100メガオーム超を呈することになる。繰り返しになるが、ItoFのみに関して、電流周波数変換器の出力は、32ビットカウンタに進むことになり、マイクロプロセッサおよびテスト論理によって読み取り、書き込み、および消去され得る。カウンタの読み取り中、カウンタのクロックは、正確な読み取りを確保するために停止される。
本明細書に説明される本発明の実施形態では、ASICはまた、酸素センサモードでWORK電極電流を測定するための電流測定回路も含む。回路は、電流電圧または電流周波数変換器として実装され得、プログラム可能なビットが、酸素モードで動作するように電流変換器を構成するために使用され得る。上記のように、電流変換器は、酸素モードのVSSに対して、WORK電極の指定された電圧範囲で動作しなければならない。ここでも、繰り返しになるが、電流範囲は、3.7pA~300nAであり、電圧出力範囲は、酸素モードのWORK電極と同じであり、出力オフセット電圧は、最大±5mVであり、未較正の分解能は、3.7pA±2pAである。
ゲインに較正係数を適用し、10秒以下の取得時間を仮定した後の電流測定精度は、次のとおりである。
5pA~1nA:±3% ±20pA
1nA~10nA:±3% ±20pA
10nA~300nA:±3% ±0.2nA
電流周波数変換器(ItoF)のみに関して、周波数範囲は、0Hz~50kHzであり得、電流ドレインは、2.5V電源から2uA未満であり、DAC電流を含むWORK電極電流が変換器毎に10nA未満である。電流変換器は、ソフトウェア制御によって有効化または無効化され得る。無効化されると、作用電極は、非常に高いインピーダンス値、すなわち、100メガオーム超を呈することになる。また、ItoFのみに関して、電流周波数変換器の出力は、32ビットカウンタに進むことになり、マイクロプロセッサおよびテスト論理によって読み取り、書き込み、および消去され得る。カウンタの読み取り中、カウンタのクロックは、正確な読み取りを確保するために停止される。
本明細書に説明される本発明の実施形態では、基準電極(RE)4330は、40℃で0.05nA未満の入力バイアス電流を有する。COUNTER電極は、RE電極に所望される電圧を維持するようにその出力を調整する。これは、COUNTER電極4320への出力が、実際のRE電極電圧と、DACによって設定されるターゲットRE電圧との間の差を最小限に抑えようと試行する、増幅器4340を用いて実現される。
RE設定電圧は、少なくとも0~1.80Vでプログラム可能であり、COUNTER増幅器の同相入力範囲は、少なくとも0.20~(VDD -0.20)Vを含む。レジスタビットは、必要に応じて、同相入力範囲を選択し、COUNTERの動作モードのプログラミングを提供するために使用され得る。WORK電圧は、5mV以上の分解能および精度で設定される。正常モードでは、COUNTER電圧は、プログラムされたREターゲット値にRE電圧を維持するレベルを求めることに留意されたい。しかしながら、強制対向モードでは、COUNTER電極電圧は、プログラムされたREターゲット電圧に強制される。
全ての電極駆動回路は、電極間負荷を駆動することができ、任意の使用状況で発振を起こさないように構成される。図44は、図43に示されるポテンショスタット構成を有する実施形態による等価AC電極間回路を示す。図44に示される等価回路は、電極のいずれか、すなわち、WORK1~WORK5、COUNTERおよびREの間にあり得、それぞれの回路構成要素について次のような値の範囲を有する。
Ru=[200-5k]オーム
Cc=[10-2000]pF
Rpo=[1-20]キロオーム
Rf=[200-2000]キロオーム
Cf=[2-30]uF
初期化中、WORK電極およびCOUNTER電極の駆動電流は、上記の正常なポテンショスタット動作の場合よりも高い電流を供給する必要がある。したがって、余分な駆動を必要とする場合、プログラム可能なレジスタビットが、電極駆動回路をより高い電力状態にプログラムするために使用され得る。電極電流が典型的に300nA未満である正常なポテンショスタットモードで低電力動作を達成することが重要である。
好ましい実施形態では、初期化中、WORK1~WORK5の電極は、0~VDDボルトまで5mV以下のステップでプログラム可能であり、それらの駆動またはシンク電流出力性能は、最小20uA、0.20V~(VDD -0.20V)である。また、初期化中、ASICは、概して、1つのWORK電極の電流を、測定値の±2%±40nAの精度で最大20uAまで測定することができるように構成される。さらに、初期化中、RE設定電圧は、上記のようにプログラム可能であり、COUNTER DRIVE CIRCUIT出力は、COUNTER電極が0.20V~(VDD -0.20V)の状態で最小50uAを供給するか、または引き込むことができなければならず、初期化回路への供給電流(VDDおよびVDDA)は、供給される任意の出力電流を超過して50uA未満であることを必要とされる。
電流較正器
本発明の実施形態では、ASICは、較正の目的で任意のWORK電極に導かれ得る電流基準を有する。これに関して、較正器は、電流出力に電流を引き込ませるか、または電流を供給させる、プログラム可能なビットを含む。プログラム可能な電流は、±1%±1nAよりも良好な精度で、少なくとも10nA、100nA、および300nAを含み、許容範囲0の外部精密抵抗器を仮定する。較正器は、パッド、TP_RES(4260)に接続された1メガオーム精密抵抗器を基準抵抗として使用する。加えて、電流基準は、初期化の目的および/またはセンサステータスのために、COUNTERまたはRE電極に導かれ得る。定電流が、COUNTERまたはRE電極に印加され得、電極電圧が、ADCを用いて測定され得る。
高速RC発振器
図42を再び参照すると、ASICは、アナログデジタル変換器(ADC)4264、ADCシーケンサ4266、および32kHzよりも高速のクロックを必要とする他のデジタル機能を供給する高速RC発振器4262をさらに含む。高速RC発振器は、32kHzクロック(32.768kHz)に位相ロックされて、524.3kHz~1048kHzの範囲でプログラム可能な出力周波数を与える。加えて、高速RC発振器は、50%±10%のデューティサイクル、0.5%rms未満の位相ジッタ、10uA未満の電流、およびVDD動作範囲(1.6~2.5Vの電圧範囲)を通して安定である周波数を有する。高速RC発振器のデフォルトは、「オフ」(すなわち、無効化)であり、この場合、電流引き込みは、10nA未満である。しかしながら、ASICは、高速RC発振器を有効化するためにプログラム可能なビットを有する。
アナログデジタル変換器
ASICは、(i)32kHzクロックから実行して1.5ミリ秒未満で変換を実行する性能、(ii)高速RC発振器からクロック制御されたときに、より高速な変換を実施する性能、(iii)少なくとも10ビットの精度(12ビット±4カウント)を有する、(iv)20℃から40℃で0.2mV/℃未満の温度感度を伴う、1.220Vの基準電圧入力を有する、(v)0~1.22V、0~1.774V、0~2.44V、および0~VDDAのフルスケール入力範囲であって、1.774および2.44V範囲が、より低いVDDA電圧に適応するために変換範囲をより低い値に低下させるようにプログラム可能なビットを有する、フルスケール入力範囲、(vi)電源からの50uA未満の電流消費を有する、(vi)32kHzクロックまたは高速RCクロックから動作可能な変換器を有する、(vii)1LSB未満のDNLを有する、かつ(viii)変換の最後に割り込みを発行する、という特性を有する12ビットADC(4264)を含む。
図42Aおよび42Bに示されるように、ASICは、ADC4264の入力にアナログマルチプレクサ4268を有し、その両方がソフトウェアによって制御可能である。好ましい実施形態では、少なくとも以下の信号がマルチプレクサに接続される。
(i)VDD-コア電圧および調整器出力
(ii)VBAT-電池電源
(iii)VDDA-アナログ電源
(iv)RE-センサの基準電極
(v)COUNTER-センサの対向電極
(vi)WORK1~WORK5-センサの作用電極
(vii)温度センサ
(viii)少なくとも2つの外部ピンアナログ信号入力
(ix)EIS積分器出力
(x)ItoV電流変換器出力
ASICは、ADCの負荷が入力COUNTER、RE、WORK1~WORK5、温度センサ、および負荷によって悪影響を受けることになる他の入力に対して±0.01nAを超えないように構成される。マルチプレクサは、ADCの入力電圧範囲よりも高い電圧を有する任意の入力用の分割器と、分割された入力の入力抵抗を負荷感知入力用に1nA未満に減少させることになるバッファ増幅器と、を含む。バッファ増幅器は、そのため、少なくとも0.8V~VDDA電圧までの同相入力範囲と、0.8V~VDDA -0.1Vまでの入力範囲からの3mV未満のオフセットと、を有する。
好ましい実施形態では、ASICは、ADC測定が、プログラムされたシーケンスで行われるモードを有する。したがって、ASICは、次のプログラム可能なパラメータを伴う、ADC測定用の最大8つの入力源の測定を監視するプログラム可能なシーケンサ4266を含む。
(i)ADC MUX入力
(ii)ADC範囲
(iii)測定前の遅延時間、遅延は、0.488ミリ秒ステップで0~62ミリ秒でプログラム可能である
(iv)0~255の各入力の測定数
(v)測定サイクル数:0~255、測定サイクルとは、最大8つの入力測定のシーケンスを複数回繰り返すことを指す(例えば、プログラムの外部ループとして)
(vi)測定サイクル間の遅延、遅延は、0.488ミリ秒ステップで0~62ミリ秒でプログラム可能である
シーケンサ4266は、自動測定開始コマンドを受信すると開始するように構成され、測定値は、SPIインターフェースを介した検索のためにASICに記憶され得る。シーケンサ時間基準が、32kHzクロックと高速RC発振器4262との間でプログラム可能であることに留意されたい。
センサ診断
上記に詳細に説明されたように、本明細書に説明される本発明の実施形態は、例えば、センサ診断手順およびIsig/SG融合アルゴリズムにおけるインピーダンスおよびインピーダンス関連パラメータの使用を対象とする。このため、好ましい実施形態では、本明細書に説明されるASICは、ポテンショスタット構成にあるとき、REおよびCOUNTER電極に対する任意のWORKセンサ電極のインピーダンスの大きさおよび位相角を測定する性能を有する。これは、例えば、WORK電極電圧に重ね合わせられた正弦波様波形に応答して電流波形の振幅および位相を測定することによって行われる。例えば、図42Bの診断回路4255を参照されたい。
ASICは、例えば、電極マルチプレクサ4250を介して、任意の電極から任意の電極への抵抗性および容量性成分を測定する性能を有する。このような測定は、センサ平衡と干渉し、安定した電極電流を記録するために整定時間またはセンサ初期化を必要とし得ることに留意されたい。上述のように、ASICは、周波数の広いスペクトルにわたるインピーダンス測定に使用され得るが、本発明の実施形態の目的のために、比較的狭い周波数範囲が使用され得る。具体的には、ASICの正弦波測定性能は、約0.10Hz~約8192Hzのテスト周波数を含み得る。そのような測定を行う際、本発明の実施形態による最小周波数分解能は、以下の表2に示されるように制限され得る。
正弦波の振幅は、5mVステップで少なくとも10mVp-p~50mVp-p、および10mVステップで60mVp-p~100mVp-pでプログラム可能である。好ましい実施形態では、振幅精度は、±5%または±5mVのどちらか大きい方よりも良好である。加えて、ASICは、以下の表3に指定された精度で電極インピーダンスを測定し得る。
本発明の一実施形態では、ASICは、時間基準に対して入力波形位相を測定し得、これは、精度を向上するためにインピーダンス計算で使用され得る。ASICはまた、上記の電極インピーダンス回路を較正するためのオンチップ抵抗器も有し得る。オンチップ抵抗器は、そのため、それらを既知の1メガオームオフチップ精密抵抗器と比較することによって較正され得る。
波形のデータサンプリングもまた、インピーダンスを決定するために使用され得る。データは、計算および処理のためにシリアルペリフェラルインターフェース(SPI)を用いて外部マイクロプロセッサに送信され得る。変換された電流データは、データを失うことなくSPIインターフェースを通して外部デバイスに2000個のADC変換のデータを転送することができるように十分にバッファされる。これは、データ転送要求割り込みを処理するための最大8ミリ秒の待ち時間を仮定する。
本発明の実施形態では、正弦波を用いて電極インピーダンスを測定するのではなく、またはそれに加えて、ASICは、ステップ入力を用いて電極電流を測定し得る。ここで、ASICは、10~200mVのプログラム可能な振幅ステップを、5mVよりも良好な分解能で電極に供給し、結果的に生じる電流波形をサンプリング(測定)し得る。サンプリングの持続時間は、0.25秒のステップで少なくとも2秒にプログラム可能であり得、電流を測定するためのサンプリング間隔は、約0.5ミリ秒~8ミリ秒の少なくとも5つのプログラム可能なバイナリ重み付けステップを含み得る。
電極電圧サンプルの分解能は、最大±0.25ボルトの範囲で1mVよりも小さい。この測定は、データ変換の必要とされるダイナミックレンジを低減するために、好適な安定した電圧を基準にし得る。同様に、電極電流サンプルの分解能は、最大20uAの範囲で0.04uAよりも小さい。電流測定は、測定極性がプログラム可能である場合、単極とすることができる。
本発明の実施形態では、電流測定は、電流電圧変換器を使用し得る。さらに、ASICは、電流測定値を較正するためのオンチップ抵抗器を有し得る。オンチップ抵抗器は、そのため、それらを既知の1メガオームオフチップ精密抵抗器と比較することによって較正され得る。電流測定サンプル精度は、±3%または±10nAのどちらか大きい方よりも良好である。上記と同様に、変換された電流データは、データを失うことなくSPIインターフェースを通して外部デバイスに2000個のADC変換のデータを転送することができるように十分にバッファされる。これは、データ転送要求割り込みを処理するための最大8ミリ秒の待ち時間を仮定する。
較正電圧
ASICは、ADCを較正するための精密電圧基準を含む。出力電圧は、生産時に±1.5%未満の変動を伴う1.000V±3%であり、安定性は、20℃~40℃の温度範囲にわたって±3mVよりも良好である。この精密較正電圧は、それを、オンチップADCを介して、製造中に外部精密電圧と比較することによって較正され得る。製造時、較正係数は、より高い精度を達成するためにシステムの不揮発性メモリ(このASIC上ではない)に記憶され得る。
較正電圧回路の電流ドレインは、好ましくは、25uA未満である。さらに、較正電圧回路は、使用していないときの電池電源を節約するために、10nA未満に電力ダウンすることができる。
温度センサ
ASICは、-10℃~60℃の範囲で9~11mV/℃の感度を有する温度トランスデューサを有する。温度センサの出力電圧は、ADCが0~1.22VのADC入力範囲で温度関連電圧を測定し得るようなものである。温度センサの電流ドレインは、好ましくは、25uA未満であり、温度センサは、使用していないときの電池電源を節約するために、10nA未満に電力ダウンし得る。
VDD電圧調整器
ASICは、次の特性を有するVDD電圧調整器を有する。
(i)最小入力電圧範囲:2.0V~4.5V。
(ii)最小出力電圧:1.6~2.5V±5%、デフォルトが2.0V。
(iii)ドロップアウト電圧:Iload=100uA、Vin=2.0VでVin-Vout<0.15V。
(iv)出力電圧は、プログラム可能であり、以下の表4に示されている値の2%以内の精度を有する。
(v)調整器は、2.8Vの入力電圧を用いて2.5Vで1mAの出力を供給し得る。
(vi)調整器はまた、外部調整器が使用される場合、開回路となり得る入力および出力パッドも有する。調整器回路の電流引き込みは、好ましくは、この非動作モードでは100nA未満である。
(vii)10uA~1mAの負荷からの出力電圧の変化は、好ましくは、25mV未満である。
(viii)1mA負荷での出力電流を除く電流ドレインは、電源から100uA未満である。
(ix)0.1mA負荷での出力電流を除く電流ドレインは、電源から10uA未満である。
(x)10uA負荷での出力電流を除く電流ドレインは、ソースから1uA未満である。
汎用比較器
ASICは、VDDAから給電される少なくとも2つの比較器4270、4271を含む。比較器は、閾値を発生させるために1.22Vを基準として使用する。比較器の出力は、プロセッサによって読み取られ得、構成レジスタによって決定される立ち上がりまたは立ち下がりエッジでマスク可能割り込みを作成することになる。
比較器は、使用されていないときに電力を低減するための電力制御を有し、電流供給は、比較器毎に50nA未満である。比較器の応答時間は、好ましくは、20mVのオーバードライブ信号に対して50usec未満であり、オフセット電圧は、±8mV未満である。
比較器は、プログラム可能なヒステリシスも有し、ヒステリシス選択肢は、立ち上がり入力での閾値=1.22V+Vhyst、立ち下がり入力での閾値=1.22-Vhyst、またはヒステリシスなし(Vhyst=25±10mV)を含む。いずれかの比較器からの出力は、任意の電源プレーンの任意のGPIOで利用可能である。(GPIOの節を参照されたい)。
REのセンサ接続感知回路
アナログスイッチトキャパシタ回路は、RE接続のインピーダンスを監視して、センサが接続されているかどうかを決定する。具体的には、約20pFのコンデンサが、VSSからVDDの出力スイングを伴うインバータによって駆動される16Hzの周波数でスイッチングされる。比較器は、REパッドの電圧振幅を感知することになり、振幅が閾値未満である場合、比較器出力は、接続を示すことになる。上述の比較は、パルスの両方の遷移で行われる。接続を示すには、両方の遷移で閾値を下回る振幅が必要であり、いずれかの位相で高い振幅を示す比較は、接続解除を示すことになる。接続信号/接続解除信号は、その状態の遷移が、少なくとも1/2秒間、新しい状態への安定した指標を必要とするようにデバウンスされる。
この回路は、20pFのコンデンサと並列に500キロオーム、1メガオーム、2メガオーム、4メガオーム、8メガオーム、16メガオームの抵抗によって画定された6つの閾値を有する。この並列等価回路は、REパッドと仮想接地との間にあり、電源レール間の任意の電圧とすることができる。閾値精度は、±30%よりも良好である。
センサ接続感知回路の出力は、センサが接続または接続解除されている場合、割り込みまたはプロセッサ始動をプログラムで発生させることができる。この回路は、nPOR2_INが高であり、かつVDDおよびVDDAが存在する場合に常にアクティブである。この回路の電流ドレインは、平均100nA未満である。
WAKEUPパッド
WAKEUP回路は、VDD電源によって給電され、0V~VBATの範囲を有する入力を伴う。WAKEUPパッド4272は、80±40nAの弱いプルダウンを有する。この電流は、BIAS_GEN4220の出力由来であり得る。回路によって消費される平均電流は、0V入力で50nA未満である。
WAKEUP入力は、1.22±0.1Vの立ち上がり入力電圧閾値、Vihを有し、立ち下がり入力閾値は、立ち上がり閾値の-25mV±12mVである。好ましい実施形態では、WAKEUP入力と関連付けられた回路は、値が-0.2~VBATの電圧である任意の入力に対して100nA以下を引き込む(この電流は、入力プルダウン電流を除外する)。WAKEUPパッドは、少なくとも1/2秒間デバウンスされる。
WAKEUPパッドの出力は、WAKEUPパッドが状態を変化させた場合、割り込みまたはプロセッサ始動をプログラムで発生させることができる。(イベントハンドラの節を参照されたい)。電池保護回路が電池残量低下状態を示す場合、WAKEUPパッド回路は、定電流、<1nAを仮定するように構成されることに留意することが重要である。
UART WAKEUP
ASICは、nRX_EXTパッド4274を監視するように構成される。nRX_EXTレベルが1/2秒よりも長く連続的に高(UART BREAK)である場合、UART WAKEUPイベントが発生することになる。サンプリングに起因してUART WAKEUPイベントが、1/4秒と短い連続的な高レベルで発生し得る。UART WAKEUPイベントは、割り込み、WAKEUP、および/またはマイクロプロセッサリセット(nRESET_OD)をプログラムで発生させ得る。(イベントハンドラの節を参照されたい)。
好ましい実施形態では、UART WAKEUP入力と関連付けられた回路は、100nA以下を引き込み、UART WAKEUPパッド回路は、電池保護回路が電池残量低下状態を示す場合、低電流、<1nAを仮定するように構成される。UART Wakeup入力は、1.22±0.1Vの立ち上がり入力電圧閾値、Vihを有する。立ち下がり入力閾値は、立ち上がり閾値の-25mV±12mVである。
マイクロプロセッサウェイクアップ制御信号
ASICは、マイクロプロセッサの電源管理の制御を助ける信号を発生させることができる。具体的には、ASICは、次の信号を発生させ得る。
(i)nSHUTDN-nSHUTDNは、オフチップVDD調整器の電力イネーブルを制御し得る。nSHUTDNパッドは、VBAT電源レール上にある。nSHUTDNは、電池保護回路が電池残量低下状態を示す場合、低になるはずであり、そうでない場合、nSHUTDNは、高になるはずである。
(ii)VPAD_EN-VPAD_ENは、VPAD電力を供給する外部調整器の電力イネーブルを制御し得る。この外部信号に対応する内部信号は、VPAD電源が無効化されているときに、VPADからの入力が、フローティング入力に起因して余分な電流を生じさせないことを確保する。VPAD_ENパッドは、VBAT電源レール上の出力である。VPAD_EN信号は、電池保護信号が低電池残量を示す場合、低である。VPAD_EN信号は、タイマーを始動するソフトウェアコマンドによって低に設定され得、タイマーの最終カウントは、VPAD_ENを強制的に低にする。電池保護信号が良好な電池残量を示している場合、低から高に遷移するnPOR2_IN、SW/タイマー(プログラム可能)、WAKEUP遷移、低から高、および/または高から低(プログラム可能)、センサ接続遷移、低から高、および/または高から低(プログラム可能)、UARTブレーク、ならびにRTCタイムイベント(プログラム可能)、のイベントが、VPAD_EN信号を高に移行させ得る(より詳細については、イベントハンドラを参照されたい)。
(iii)UP_WAKEUP-UP_WAKEUPは、マイクロプロセッサウェイクアップパッドに接続し得る。それは、マイクロプロセッサをスリープモードまたは同様の電源遮断モードからウェイクアップさせることを意図する。UP_WAKEUPパッドは、VPAD電源レール上の出力である。UP_WAKEUP信号は、アクティブ低、アクティブ高、またはパルスであるようにプログラムされ得る。UP_WAKEUP信号は、タイマーを始動するソフトウェアコマンドによって低に設定され得、タイマーの最終カウントは、UP_WAKEUPを強制的に低にする。電池保護信号が良好な電池残量を示している場合、低から高に遷移するnPOR2_IN、SW/タイマー(プログラム可能)、WAKEUP遷移、低から高、および/または高から低(プログラム可能)、センサ接続遷移、低から高、および/または高から低(プログラム可能)、UARTブレーク、ならびにRTCタイムイベント(プログラム可能)、のイベントが、UP_WAKEUP信号を高に移行させ得る(より詳細については、イベントハンドラを参照されたい)。WAKEUP信号は、プログラム可能な量だけ遅延され得る。WAKEUPがパルスであるようにプログラムされている場合、パルス幅がプログラムされ得る。
(iv)CLK_32KHZ-CLK_32KHZパッドは、マイクロプロセッサに接続して、低速クロックを供給し得る。クロックは、オンオフプログラム可能であり、イベントをウェイクアップするようにプログラムでオンになる。CLK_32KHZパッドは、VPAD電源レール上の出力である。CLK_32KHZ信号は、電池保護信号が低電池残量を示す場合、低である。CLK_32KHZ出力は、プログラム可能なビットによってオフにプログラムされ得る。デフォルトは、オンである。CLK_32KHZ信号は、タイマーを始動するソフトウェアコマンドによって無効化され得、タイマーの最終カウントは、CLK_32KHZを強制的に低にする。電池保護信号が良好な電池残量を示している場合、低から高に遷移するnPOR2_IN、SW/タイマー(プログラム可能)、WAKEUP遷移、低から高、および/または高から低(プログラム可能)、センサ接続遷移、低から高、および/または高から低(プログラム可能)、UARTブレーク、RTCタイムイベント(プログラム可能)、ならびに電池保護回路による低電池残量の検出、のイベントが、CLK_32KHZ信号を有効化させ得る(より詳細については、イベントハンドラを参照されたい)。
(v)nRESET_OD-nRESET_ODは、マイクロプロセッサに接続して、マイクロプロセッサをリセットさせ得る。nRESET_ODは、イベントをウェイクアップするようにプログラム可能である。nRESET_ODパッドは、VPAD電源レール上の出力である。このパッドは、オープンドレインである(nfet出力)。nRESET_OD信号は、電池保護信号が低電池残量を示す場合、低である。nRESET_ODアクティブ時間は、1~200ミリ秒でプログラム可能である。デフォルトは、200msである。nPOR2_IN、SW/タイマー(プログラム可能)、WAKEUP遷移、低から高、および/または高から低(プログラム可能)、センサ接続遷移、低から高、および/または高から低(プログラム可能)、UARTブレーク、ならびにRTCタイムイベント(プログラム可能)、のイベントが、nRESET_OD信号を低にアサートさせ得る(より詳細については、イベントハンドラを参照されたい)。
(vi)UP_INT-UP_INTは、マイクロプロセッサに接続して、割り込みを通信し得る。UP_INTは、イベントをウェイクアップするようにプログラム可能である。UP_INTパッドは、VPAD電源レール上の出力である。UP_INT信号は、電池保護信号が低電池残量を示している場合、低である。UP_INT信号は、タイマーを始動するソフトウェアコマンドによって高に設定され得、タイマーの最終カウントは、UP_INTを強制的に高にする。電池保護信号が良好な電池残量を示している場合、SW/タイマー(プログラム可能)、WAKEUP遷移、低から高、および/または高から低(プログラム可能)、センサ接続遷移、低から高、および/または高から低(プログラム可能)、UARTブレーク、RTCタイムイベント(プログラム可能)、電池保護回路による低電池残量の検出、ならびにマスク解除されたときのASIC割り込みのいずれか、のイベントが、UP_INT信号を高にアサートさせ得る(より詳細については、イベントハンドラを参照されたい)。
ASICは、マイクロプロセッサ用のブートモード制御として作用することができるGPIO1およびGPIO0パッドを有する。POR2イベントは、ビットがGPIO1およびGPIO0にマップする(それぞれ、MSB、LSB)、2ビットカウンタをリセットすることになる。UARTブレークの立ち上がりエッジは、カウンタを1だけ増分し、カウンタは、4の剰余でカウントし、状態11で増分される場合、ゼロになる。ブートモードカウンタは、SPIを介して事前設定可能である。
イベントハンドラ/ウォッチドッグ
ASICは、イベントハンドラを組み込んで、システム状態や入力信号の変化を含む、イベントに対する応答を画定する。イベントは、全ての割り込みソースを含む(例えば、UART_BRK、WAKE_UP、センサ接続など)。刺激に対するイベントハンドラ応答は、SPIインターフェースを介してソフトウェアによってプログラム可能である。しかしながら、いくつかの応答は、ハードウェアで実現され得る(プログラム不可)。
イベントハンドラ措置は、VPAD_ENの有効化/無効化、CLK_32KHZの有効化/無効化、nRESET_ODのアサート、UP_WAKEUPのアサート、およびUP_INTのアサートを含む。イベントウォッチドッグタイマー1~タイマー5は、250ミリ秒~16,384秒まで、250ミリ秒単位で個々にプログラム可能である。イベントウォッチドッグタイマー6~8のタイムアウトは、ハードコードされる。タイマー6とタイマー7のタイムアウトは、1分であり、タイマー8のタイムアウトは、5分である。
ASICはまた、イベントによってトリガされたときにマイクロプロセッサの応答を監視するウォッチドッグ機能も有する。イベントウォッチドッグは、マイクロプロセッサがイベント誘発活動の確認に失敗したときにアクティブ化される。イベントウォッチドッグは、アクティブ化されると、プログラム可能な一連の措置、イベントウォッチドッグタイマー1~5、続いてハードウェアで実現される一連の措置、イベントウォッチドッグタイマー6~8を実施して、マイクロプロセッサの応答を再取得する。一連の措置は、割り込み、リセット、ウェイクアップ、32KHzクロックのアサート、マイクロプロセッサに対する電源遮断および電源投入を含む。
一連の措置の間、マイクロプロセッサが記録された活動を確認するその能力を回復した場合、イベントウォッチドッグがリセットされる。ASICが、マイクロプロセッサからの確認の取得に失敗した場合、イベントウォッチドッグは、UART_BRKがマイクロプロセッサを再起動することを可能にし、アラームをアクティブ化することになる条件でマイクロプロセッサを電源遮断する。アクティブ化されると、アラーム条件は、プログラム可能な繰り返しパターンでパッドALARMに約1kHzの周波数の方形波を発生させる。プログラム可能なパターンは、プログラム可能なバーストオンおよびオフ時間を有する2つのプログラム可能なシーケンスを有する。アラームは、SPIポートを介してプログラムされ得る別のプログラム可能なパターンを有する。それは、プログラム可能なバーストオンおよびオフ時間を有する2つのプログラム可能なシーケンスを有することになる。
デジタルアナログ(D/A)
好ましい実施形態では、ASICは、次の特性を有する2つの8ビットD/A変換器4276、4278を有する。
(i)D/Aは、50pF未満の負荷で1ミリ秒未満内に安定する。
(ii)D/Aは、少なくとも8ビットの精度を有する。
(iii)出力範囲は、0~1.22Vまたは0~VDDAのいずれかにプログラム可能である。
(iv)D/A電圧基準の温度感度は、1mV/℃未満である
(v)DNLは、1LSB未満である。
(vi)D/Aによって消費される電流は、VDDA電源から2uA未満である。
(vii)各D/Aは、パッドへの出力Iを有する。
(viii)D/A出力は、高インピーダンスである。負荷電流は、1nA未満でなければならない。
(ix)D/Aパッドは、レジスタからデジタル信号を出力するようにプログラムされ得る。出力振幅は、VSSA~VDDAである。
充電器/データダウンローダインターフェース
TX_EXT_OD4280は、オープンドレイン出力であり、その入力は、TX_UP入力パッド上の信号である。これは、TX_EXT_ODパッドがUARTアイドル条件で開になることを可能にすることになる。TX_EXT_ODパッドは、その電圧を監視する比較器を有する。電圧がデバウンス期間(1/4秒)の間、比較器閾値電圧を上回った場合、出力nBAT_CHRG_EN(4281)が、低になる。この比較器およびこの機能を有する他の関連回路は、VBATおよび/またはVDDBUプレーン上にある。
この機能と関連付けられた回路は、nBAT_CHRG_ENのアサーションを無効化せずに、外部デバイスとの正常な通信から結果的に生じるTX_EXT_ODパッド上の低を可能にしなければならない。POR1がアクティブである場合、nBAT_CHRG_ENは、高になる(アサートされない)。比較器の閾値電圧は、0.50V~1.2Vである。比較器は、ヒステリシスを有することになり、立ち下がり閾値は、立ち上がり閾値よりも約25mV低くなる。
nRX_EXTパッドは、このパッド上の信号を反転し、RX_UPにそれを出力する。このようにして、nRX_EXT信号は、低でアイドルになる。nRX_EXTは、最大でVBAT電圧までの入力を受け入れなければならない。nRX_EXT閾値は、1.22V±3%である。この比較器の出力は、マイクロプロセッサが読み取るためにSPIバスを介して利用可能になる。
nRX_EXTパッドはまた、VBATである最大電圧を伴う、80±30nAになる電流をプログラム可能に供給する手段も組み込む。ASICレイアウトは、この電流を、最小数のマスク層の変化を伴って50nA未満のステップで30nA~200nAに調整するために、マスクのプログラム可能な選択肢を有する。プログラム可能なビットが、UARTブレーク検出をブロックし、RX_UPを強制的に高にするために利用可能になる。正常動作では、このビットは、nRX_EXTへの電流ソースを有効化する前に高に設定され、次いで、電流ソースが無効化された後に低に設定されて、グリッチがRX_UP上で発生せず、かつUARTブレークイベントが発生することを確保する。湿潤コネクタ検出器を実装するために、nRX_EXTへの電流源がアクティブである間、低入力電圧を示すRX比較器出力が漏れ電流を示すことに留意されたい。ASICは、nRX_EXTパッド上に約100キロオームのプルダウン抵抗器を含む。このプルダウンは、電流源がアクティブであるときに接続解除されることになる。
センサ接続スイッチ
ASICは、パッド、SEN_CONN_SW(4282)を有することになり、これは、VSS(4284)に対する低抵抗を検出することができる。SEN_CONN_SWは、SEN_CONN_SW=0Vで5~25uAの電流を供給し、0.4Vの最大開回路電圧を有する。ASICレイアウトは、この電流を、最小数のマスク層の変化を伴って5uA未満のステップで1uA~20uAに調整するために、マスクのプログラム可能な選択肢を有する。SEN_CONN_SWは、閾値が2キロオーム~15キロオームである、SEN_CONN_SWとVSSA(4234)との間の抵抗の存在を検出する関連回路を有する。この回路の平均電流ドレインは最大50nAである。サンプリングは、この低電流を達成するために使用されなければならない。
発振器較正回路
ASICは、カウンタを有し、その入力が、内部または外部のクロック源に導かれ得る。1つのカウンタは、他のカウンタのプログラム可能なゲーティング間隔を発生させる。ゲーティング間隔は、32kHz発振器からの1~15秒を含む。いずれかのカウンタに導かれ得るクロックは、32kHz、RC発振器、高速RC発振器、および任意のGPIOパッドからの入力である。
発振器バイパス
ASICは、発振器の出力の各々に対して外部クロックを置換し得る。ASICは、特定のTEST_MODEがアサートされたときのみ、書き込まれ得るレジスタを有する。このレジスタは、RC発振器の外部入力を有効化するビットを有し、他のアナログテスト制御信号と共有され得る。しかしながら、このレジスタは、TEST_MODEがアクティブではない場合、いかなる発振器バイパスビットもアクティブになることを可能にしない。
ASICはまた、RC発振器をバイパスする外部クロック用の入力パッドも有する。パッド、GPIO_VBATが、VBAT電源プレーン上にある。ASICは、32KHZ発振器用のバイパスイネーブルパッド、OSC32K_BYPASSをさらに含む。高のとき、32KHZ発振器出力が、OSC32KHZ_INパッドを駆動することによって供給される。通常、OSC32KHZ_INパッドが水晶に接続されることに留意されたい。
ASICは、HS_RC_OSCをバイパスする外部クロック用の入力を有する。バイパスは、プログラム可能なレジスタビットによって有効化される。HS_RC_OSCは、VDDプレーン上のGPIOまたはVPADプレーン上のGPIOのいずれかによってプログラムで供給され得る。
SPIスレーブポート
SPIスレーブポートは、チップ選択入力(SPI_nCS)4289、クロック入力(SPI_CK)4286、シリアルデータ入力(SPI_MOSI)4287、およびシリアルデータ出力(SPI_MISO)4288から構成されるインターフェースを含む。チップ選択入力(SPI_nCS)は、アクティブLOW入力であり、オフチップSPIマスタによってアサートされて、SPIトランザクションを開始および認定する。SPI_nCSが低にアサートされると、SPIスレーブポートは、それ自体をSPIスレーブとして構成し、クロック入力(SPI_CK)に基づいてデータトランザクションを実施する。SPI_nCSが非アクティブであるとき、SPIスレーブポートは、それ自体をリセットし、リセットモードに留まる。このSPIインターフェースがブロック転送をサポートするため、マスタは、転送の終了までSPI_nCSを低に保つべきである。
SPIクロック入力(SPI_CK)は、常に、SPIマスタによってアサートされることになる。SPIスレーブポートは、SPI_CKの立ち上がりエッジを使用してSPI_MOSI入力上の着信データをラッチし、SPI_CKの立ち下がりエッジを使用してSPI_MISO出力上の発信データを駆動する。シリアルデータ入力(SPI_MOSI)は、SPIマスタからSPIスレーブにデータを転送するために使用される。全てのデータビットは、SPI_CKの立ち下がりエッジの後にアサートされる。シリアルデータ出力(SPI_MISO)は、SPIスレーブからSPIマスタにデータを転送するために使用される。全てのデータビットは、SPI_CKの立ち下がりエッジの後にアサートされる。
SPI_nCS、SPI_CKおよびSPI_MOSIは、SPIマスタが電源遮断されない限り、SPIマスタによって常に駆動される。VPAD_ENが低である場合、これらの入力は、これらの入力と関連付けられた電流ドレインが10nA未満であるように調整され、SPI回路は、リセットまたは非アクティブに保持される。SPI_MISOは、SPI_nCSがアクティブであるときにSPIスレーブポートによって駆動されるのみであり、そうでない場合、SPI_MISOは、トライステートである。
チップ選択(SPI_nCS)は、SPIデータトランザクションのデータ転送パケットを画定およびフレーム化する。データ転送パケットは、3つの部分から構成される。4ビットのコマンド区分の後に12ビットのアドレス区分が続き、その後に任意の数の8ビットのデータバイトが続く。コマンドビット3は、方向ビットとして使用される。「1」は、書き込み操作を示し、「0」は、読み取り操作を示す。コマンドビット2、1および0の組み合わせは、次の定義を有する。未使用の組み合わせは未定義である。
(i)0000:データ読み取りおよびアドレス増分。
(ii)0001:データ読み取り、アドレス変更なし
(iii)0010:データ読み取り、アドレス減分
(iv)1000:データ書き込みおよびアドレス増分
(v)1001:データ書き込み、アドレス変更なし
(vi)1010:データ書き込み、アドレス減分
(vii)x011:テストポートアドレス指定
12ビットのアドレス区分は、開始バイトアドレスを画定する。SPI_nCSが第1のデータバイトの後にアクティブのままである場合、マルチバイト転送を示すために、アドレスは、各バイトが転送された後に1だけ増分される。アドレス(アドレス<11:0>の)のビット<11>は、最上位アドレスビットを示す。アドレスは、境界に達した後、ラップアラウンドする。
データは、バイト形式であり、ブロック転送は、全てのバイトが1つのパケット内で転送されることを可能にするように、SPI_nCSを拡張することによって実施され得る。
マイクロプロセッサ割り込み
ASICは、ホストマイクロプロセッサに割り込みを送信する目的のために、VPAD論理レベルでの出力、UP_INTを有する。マイクロプロセッサ割り込みモジュールは、割り込みステータスレジスタ、割り込みマスクレジスタ、および全ての割り込みステータスを1つのマイクロプロセッサ割り込みに論理OR化する機能から構成される。割り込みは、エッジ感知およびレベル感知の両方の様式をサポートするように実装される。割り込みの極性は、プログラム可能である。デフォルト割り込み極性は、TBDである。
好ましい実施形態では、AFE ASIC上の全ての割り込みソースは、割り込みステータスレジスタに記録されることになる。対応する割り込みステータスビットに「1」を書き込むことは、対応する保留中の割り込みを消去する。AFE ASIC上の全ての割り込みソースは、割り込みマスクレジスタを介してマスク可能である。対応する割り込みマスクビットに「1」を書き込むことは、対応する保留中の割り込みのマスキングを有効化する。対応する割り込みマスクビットに「0」を書き込むことは、対応する割り込みのマスキングを無効化する。割り込みマスクレジスタのデフォルト状態は、TBDである。
汎用入力/出力(GPIO)/パラレルテストポート
実施形態では、ASICは、VPADレベル信号上で動作する8つのGPIOを有し得る。ASICは、VBATレベル信号上で動作する1つのGPIO、およびVDDレベル信号上で動作する1つのGPIOを有する。GPIOの全ては、少なくとも次の特性を有する。
(i)レジスタビットは、各GPIOの選択および方向を制御する。
(ii)ASICは、SPIインターフェースを介して読み取られ得る入力としてGPIOを構成する手段を有する。
(iii)ASICは、割り込みを発生させるための入力としてGPIOを構成する手段を有する。
(iv)ASICは、SPIインターフェースを介して書き込まれ得るレジスタビットによって制御される出力として各GPIOを構成する手段を有する。
(v)プログラム可能に、ASICは、GPIO_VBATまたはGPIO_VDDに印加された入力信号をGPIO(VPAD電源プレーン上の)に出力することができる。(レベルシフト機能)。
(vi)ASICは、発振器較正回路に対する入力として各GPIOを構成する手段を有する。
(vii)ASICは、各電源プレーン上の少なくとも1つのGPIOに対する各汎用比較器出力を構成する手段を有する。比較器出力の極性は、プログラム可能なビットによってプログラム可能である。
(viii)GPIOは、マイクロプロセッサ割り込み発生性能を有する。
(ix)GPIOは、オープンドレイン出力にプログラム可能である。
(x)VPAD電源プレーン上のGPIOは、マイクロプロセッサのブート制御を実装するように構成可能である。
パラレルテストポートは、VPAD電圧プレーン上で8ビットGPIOを共有する。テストポートは、レジスタ内容および様々な内部信号を観察するために使用されることになる。このポートの出力は、正常モードでポート構成レジスタによって制御される。GPIO_O1S_REGおよびGPIO_O2S_REGの両方のレジスタに8’hFFを書き込むことは、GPIO出力上のテストポートデータを導くことになり、一方でGPIO_ON_REGレジスタに8’h00を書き込むことは、テストポートデータを無効化し、GPIO出力上へのGPIOデータを有効化することになる。
レジスタおよび事前にグループ化された内部信号は、SPIスレーブポートを介してターゲットレジスタをアドレス指定することによって、このテストポートを介して観察され得る。SPIパケットは、4’b0011に設定され、その後に12ビットのターゲットレジスタアドレスが続く、コマンドを有する。パラレルテストポートは、次のテストポートアドレス指定コマンドが受信されるまで、アドレス指定されたレジスタの内容を表示し続ける。
アナログテストポート
ICは、パッド、TP_ANAMUX(4290)に信号供給するマルチプレクサを有し、これは、テスト用の内部アナログ回路ノードを可視化することになる。ICはまた、パッド、TP_RES(4260)に信号供給するマルチプレクサを有し、これは、テスト用の内部アナログ回路ノードを可視化することになる。このパッドはまた、様々なシステム較正を実施するために、通常の用途で精密1メガ抵抗に適応することになる。
チップID
ASICは、32ビットマスクのプログラム可能なIDを含む。SPIインターフェースを使用するマイクロプロセッサは、このIDを読み取ることができる。このIDは、アナログ電子ブロック内に配置されるため、IDの変更は、チップの経路変更を必要としない。設計は、1つの金属または1つのコンタクトマスクのみの変更がIDの変更に必要とされるようにするべきである。
スペアテスト出力
ASICは、SPIインターフェースを介して送信されるコマンド下で8ビットGPIOに多重化され得る16個のスペアデジタル出力信号を有する。これらの信号は、2つの8ビットバイトとして編成されることになり、使用されない場合、VSSに接続されることになる。
デジタルテスト
ASICは、2つの入力ピン、TEST_CTL0(4291)およびTEST_CTL1(4292)を使用するテストモードコントローラを有する。テストコントローラは、次の機能を有するテスト制御信号の組み合わせから信号を発生させる(TEST_CTL<1:0>)。
(i)0は、正常動作モードである。
(ii)1は、アナログテストモードである。
(iii)2は、スキャンモードである。
(iv)3は、VDD_ENがGPIO_VBATへの入力によって制御されるアナログテストモードである。
テストコントローラ論理は、VDDとVDDBUの電源プレーンとの間で分割される。スキャンモード中、LT_VBATのテストは、デジタル出力へのアナログ出力を調整するために、高にアサートされるべきである。ASICは、高速デジタルテストのために可能な限り多くのデジタル論理に実装されたスキャンチェーンを有する。
漏れテストピン
ASICは、高であるときに全てのアナログブロックを非アクティブモードにするLT_VBATと呼ばれるピンを有し、それにより、漏れ電流のみが電源から引き込まれることになる。LT_VBATは、アナログブロックからの全てのデジタル出力を、インターフェース論理の電流ドレインに影響を与えないように、安定して高または低状態にする。LT_VBATパッドは、10キロオーム~40キロオームの抵抗を伴うプルダウンを有するVBATプレーン上にある。
電源要件
本明細書の発明の実施形態では、ASICは、少なくとも、マイクロプロセッサのクロックがオフであり、32kHzのリアルタイムクロックが実行され、かつセンサ接続、WAKE_UPピンのレベルの変化、またはnRX_EXT入力上のBREAKを検出するために回路がアクティブである、低電力モードを含む。このモードは、最大4.0uAのVBAT(VDDBU)、VDD、およびVDDAからの全電流ドレインを有する。電池保護回路が電池残量低下を検出すると(電池保護回路の説明を参照されたい)、ASICは、VBATおよびVDDBU電源プレーンのみがアクティブであるモードになる。これは、低電池残量状態と呼ばれる。このモードのVBAT電流は0.3uA未満である。
H2O2(過酸化物)モードでアクティブな任意の1つのWORK電極の電圧が1.535Vに設定され、VSET_REが1.00Vに設定された状態でCOUNTER増幅器がオンであり、20メガオームの負荷抵抗がWORKとCOUNTERとの間に接続され、COUNTERおよびREが一緒に接続され、かつ1分毎に1つのWORK電極の電流測定を仮定する、ポテンショスタット構成にプログラムされたASICによると、全ての電源の平均電流ドレインは、7uA未満である。較正後の測定電流は、26.75nA±3%であるべきである。追加のWORK電極の有効化は、25nAのWORK電極電流によって2uA未満だけ合計電流ドレインを増加させる。
COUNTER電極に対するWORK電極の1つのインピーダンスを測定するように診断機能が有効化された状態でポテンショスタット構成にプログラムされたASICによると、ASICは、次を満たすように構成される。
(i)テスト周波数:0.1、0.2、0.3、0.5Hz、1.0、2.0、5.0、10、100、1000および4000Hz。
(ii)上記の周波数の測定は、50秒を超過しない。
(iii)ASICに供給される総電荷は、8ミリクーロン未満である。
環境
本発明の好ましい実施形態では、ASICは、次のとおりである。
(i)0~70℃の商用温度範囲で動作し、全ての仕様を満たす。
(ii)-20℃~80℃の間で機能的に動作するが、精度が低下する場合がある。
(iii)-30~80℃の温度範囲で格納された後に動作すると予期される。
(iv)1%~95%の相対湿度範囲で動作すると予期される。
(v)ESD保護が、別途指定されない限り、TBDパッケージにパッケージ化されたときに全てのピン上で人体モデルよりも±2KV超である。
(vi)WORK1~WORK5、COUNTER、RE、TX_EXT_OD、およびnRX_EXTパッドが人体モデルよりも±4KV超耐えるように構成される。
(vii)WORK1~WORK5およびREパッドの漏れ電流が40℃で0.05nA未満であるように構成される。
本発明の実施形態では、ASICは、0.25ミクロンのCMOSプロセスで製作され得、ASICのバックアップデータは、DVDディスク、916-TBD上にある。
上記に詳細に説明されたように、ASICは、とりわけ、(i)複数のポテンショスタット、および酸素または過酸化物のいずれかに基づく多端子グルコースセンサとのインターフェースをサポートすることと、(ii)マイクロコントローラとインターフェースして、マイクロパワーセンサシステムを形成することと、(iii)EISベースパラメータの測定に基づいて、EIS診断を実装することと、を提供するように必要なアナログ電子機器を提供する。EISベースパラメータの測定および計算は、ここで、本明細書の発明の実施形態に従って説明される。
上述のように、0.1Hz~8kHzの範囲内の周波数でのインピーダンスは、センサ電極の状態に関する情報を提供し得る。AFE IC回路は、測定強制信号を発生させるための回路と、インピーダンスを計算するために使用される測定を行うための回路を組み込む。この回路の設計検討事項は、電流ドレイン、精度、測定速度、必要な処理量、および制御マイクロプロセッサによって必要とされるオン時間量を含む。
本発明の好ましい実施形態では、AFE ICが電極のインピーダンスを測定するために使用する技術は、電極を駆動するDC電圧上に正弦波電圧を重ね合わせ、結果として生じるAC電流の位相および振幅を測定するものである。正弦波を発生させるために、AFE ICは、デジタル合成された正弦波電流を組み込む。このデジタル技術は、周波数および位相が水晶由来タイムベースによって精密に制御され得、DCから最大8kHzまでの周波数を容易に発生させ得るため、使用される。正弦波電流は、AC成分を電極電圧に追加するために、電圧源と直列の抵抗器に印加される。この電圧は、AC強制電圧である。電圧は、次いで、選択されたセンサ電極を駆動する増幅器によってバッファされる。
電極を駆動する電流は、強制正弦波から結果として生じるAC電流成分を含有し、電圧に変換される。この電圧は、次いで、合成された正弦波に対して固定された位相を有する方形波を乗算することによって処理される。この乗算された電圧は、次いで、積分される。プログラム可能な数の積分間隔、例えば、駆動正弦波の1/2周期の整数倍の間隔の終了後、電圧は、ADCによって測定される。積分された電圧の値を伴う計算によって、インピーダンスの実部および虚部が得られ得る。
インピーダンス測定に積分器を使用する利点は、測定のノイズ帯域幅が、単に波形をサンプリングする場合に比べて有意に低減されることである。また、サンプリング時間の要件が有意に軽減され、これは、ADCの速度要件を緩和する。
図45は、AFE IC(図42Bで参照番号4255によって示される)内のEIS回路の主要ブロックを示す。IDAC4510は、システムクロックと同期して階段状正弦波を発生させる。このシステムクロックの高周波数は、デジタルコードを含有するルックアップテーブルを介してIDACを階段状にする。このコードは、IDACを駆動し、IDACは、略正弦波の出力電流を発生させる。この正弦波電流は、抵抗器に強制的に流されて、DCオフセット、VSET8(4520)を伴うAC成分、Vin_acを与える。IDAC回路が無効化されると、DC出力電圧がVSET8に戻るため、電極平衡への妨害が最小限に抑えられる。子の電圧は、次いで、直列の抵抗器、Rsenseを介して電極を駆動する増幅器4530によってバッファされる。Rsenseにわたる差動電圧は、電流に比例する。この電圧は、電圧に+1または-1を乗算する乗算器4540に送られる。これは、スイッチおよび差動増幅器(計測増幅器)で行われる。システムクロックは、乗算機能を制御し、正弦波に対して0、90、180、または270度に設定され得る位相クロック4550を発生させるために分割される。
図46A~46Fおよび47A~47Fのプロットは、実抵抗を表す0度の位相シフトを有する電流に対する、図45に示される回路の信号のシミュレーションを示す。これらの例示的なシミュレーションに関して、シミュレーション入力値は、0.150Vに等しい電流感知電圧を与えるように選択された。インピーダンスおよび位相を導出するのに十分な情報を取得するために、2つの積分が必要であり、1つは、0度の位相乗算(図46A~46F)であり、もう1つは、90度の位相乗算(図47A~47F)である。
インピーダンスの計算
積分器の出力を説明する方程式が以下に提供される。簡略化のために、正弦波周期の1/2のみが考慮される。図46A~46Fおよび47A~47Fのプロットから分かるように、総積分器出力は、おおよそ、1/2正弦波サイクルの積分値に、積分された1/2サイクル数を乗算した値になる。積分時間に関連する乗算スイッチは、積分器への信号の「ゲーティング」機能を実施し、これが、積分区間を設定するものとみなされ得ることに留意されたい。乗算信号は、発生した正弦波に対して固定された位相を有する。これは、ソフトウェアを用いて0、90、180、または270度に設定され得る。正弦波が乗算方形波に対して同相(0度シフト)である場合、積分区間は、π(180°)および0(0°)になる。正弦波が90度シフトされている場合、積分区間は、3/4π(270°)および1/4π(90°)とみなされ得る。
駆動正弦波に対して同相(0°)の乗算方形波を用いた式が以下に示される。これは、電流の実数成分に比例する電圧を生成することになる。Φは、乗算方形波に対する正弦波の位相シフトであり、Voutは、積分器出力であり、Aamplは、電流正弦波振幅であることに留意されたい。また、正弦波の周期は、1/fであり、RCは、積分器の時定数である。
Φ=0の場合、
これは、電流の実部に対応する。
電流の虚数成分に比例する出力を生成するための駆動正弦波に対する乗算方形波直交位相(90°)に関して、
Φ=0である場合、
これは、電流の虚部に対応する。
図46A~46Fに示される第1のプロットでは、Aamplは、0.150vであり、周波数は、1kHzであり、Φ=0であり、積分器のRCは、20メガオームかつ25pFでRC=0.5msecを与える。これらの数値を方程式に代入すると、0.09549vが得られ、これは、好適なことに、図46のプロットの積分器出力と同等である。積分期間中の積分器出力は、積分の開始から測定までのデルタ電圧であることに留意されたい。
90°方形波乗算に関して、sin(0)=0であるため、結果は、0になるはずである。シミュレーション結果は、この値に近い。
位相を計算するために、
であり、それは、次に従う。
式中、Vout90は、乗算のための90°の位相シフトを伴う積分器出力であり、Vout0 0°の位相シフトに対する積分器出力である。Vout90およびVout0の出力は、同数の1/2サイクルで積分されるか、サイクル数で正規化される必要がある。実際のソフトウェア(例えば、ASIC)の実装では、整数のサイクルが乗算器の前の回路の任意のオフセットを補償するため、整数サイクル(360°)のみが可能とされることに留意することが重要である。
電流の大きさは、次式から見出され得る。
および
または
または、
この電流は、上記で計算された位相角を有する。
上記の分析は、乗算信号に関して電流振幅およびその位相を決定し得ることを示す。強制電圧は、乗算信号に対して固定された位相(0、90、180、または270度)で発生し、これは、デジタルで行われるため、精密に制御される。しかし、強制正弦波が電極に印加される前の経路に少なくとも1つの増幅器が存在し、これは、不要な位相シフトおよび振幅エラーを招くことになる。これは、電極の近くで電気的に得られた強制正弦波信号を積分することによって補償され得る。したがって、強制電圧の振幅および任意の位相シフトが決定され得る。電流および電圧の両方の波形の経路が同じ回路によって処理されることになるため、任意のアナログ回路ゲインおよび位相エラーが相殺することになる。
対象の変数がインピーダンスであるため、Aamplを実際に計算する必要はない場合がある。電流波形および電圧波形が同じ経路で積分されるため、電流および電圧の比率の間には単純な関係が存在する。乗算関数の位相を説明するための追加の添え字を含む、積分された電流感知電圧VI_outおよびVV_outとして積分された電極電圧を呼び出すと、
インピーダンスは、電流によって除算された電圧になる。したがって、
電圧および電流の大きさはまた、0度および90度の位相積分電圧の二乗の平方根からも得られ得る。そのため、次も使用され得る。
波形の積分は、比較的高い周波数、例えば、約256Hzを上回る周波数に関して1つのハードウェア積分器を用いて行われ得る。高周波数は、4つの測定サイクル、(i)同相センサ電流用のもの、(ii)90度位相が異なるセンサ電流用のもの、(iii)同相強制電圧用のもの、(iv)90度位相が異なる強制電圧用のもの、を必要とする。
2つの積分器が、比較的低い周波数、例えば、約256Hzよりも低い周波数に使用され得、積分値は、積分器の結果をシステムマイクロプロセッサで数値的に組み合わせることで構成される。サイクル毎に存在する積分の数を知ることは、マイクロプロセッサが0および90度の成分を適切に計算することを可能にする。
積分を強制AC波形と同期させ、より低い周波数で積分を少なくとも4つの部分に分けることは、マイクロプロセッサの積分された部分の組み合わせが乗算機能を実現し得るため、ハードウェア乗算器の必要性を排除することになる。したがって、1つの積分経路のみが、実数および虚数の電流情報を得るために必要である。より低い周波数に関して、増幅器の位相エラーがより小さくなるため、例えば、1Hz~50Hzを下回る周波数、好ましくは、約1Hzを下回る周波数に関して、強制電圧位相が決定される必要はない。また、振幅は、より低い周波数に関して一定であると仮定され得、それにより、安定化後の1つの測定サイクルのみが、インピーダンスを決定するために必要であり得る。
上記のように、1つのハードウェア積分器が比較的高い周波数に使用されるが、比較的低い周波数に関して、2つの積分器が使用され得る。これに関して、図45の概略図は、比較的高いEIS周波数に使用されるAFE ICのEIS回路を示す。これらの周波数では、積分器は、サイクルにわたって積分している間に飽和しない。実際、複数のサイクルが、最も高い周波数で積分され、これは、より大きい出力信号を提供することになり、より大きい信号対ノイズ比を結果的にもたらす。
例えば、約500Hzを下回る周波数などの比較的低い周波数に関して、積分器出力は、共通パラメータで飽和し得る。したがって、これらの周波数に関して、2つの積分器が交互に切り替えられて使用される。つまり、第1の積分器が積分している間、第2の積分器は、ADCによって読み取られ、次いで、リセット(ゼロに)されて、第1の積分器の積分時間が終了したときに積分を行う準備をする。このようにして、信号は、積分にギャップを有することなく積分され得る。これは、図45に示されるEIS回路に第2の積分器および関連するタイミング制御装置を追加することになる。
安定化サイクルに関する検討事項
上記の分析は、電流波形がサイクル毎に変化しない定常状態条件に対するものである。この条件は、コンデンサの初期状態を理由に、抵抗器-コンデンサ(RC)ネットワークに対する正弦波の印加の際に直ちに満たされない。電流位相は、0度から始まり、定常状態値まで進む。しかしながら、電流ドレインを低減し、DCセンサ測定(Isig)を行うための適切な時間も可能にするために、測定が最小限の時間量を消費することが望ましいことになる。したがって、十分に正確な測定値を得るために必要なサイクル数を決定する必要性がある。
抵抗器およびコンデンサを直列に有する単純なRC回路の方程式は、次のとおりである。
上記をI(t)について解くと、次のようになる。
式中、Vc0は、コンデンサ電圧の初期値であり、Vmは、駆動正弦波の大きさであり、ωは、ラジアン周波数(2πf)である。
第1の項は、非定常状態条件を画定する項を含有する。システムの整定を高速化する1つの手段は、例えば、設定によって行われ得る、0に等しい第1の項を有することである。
または、
これは、実際には必要ない場合があるが、強制正弦波の初期位相をDC定常状態点からVcinitに直ちにジャンプするように設定することが可能である。この技術は、時間短縮の可能性を見出すために、特定の周波数および予想される位相角について評価され得る。
非定常状態の項は、時間の指数関数が乗算される。これは、どの程度迅速に定常状態条件に達するかを決定することになる。RC値は、インピーダンス計算情報から一次近似として決定され得る。次式が与えられる。
および
ここで、
に従う。
5度の位相角を有する100Hzでのセンサに関して、これは、18.2ミリ秒の時定数を意味することになる。1%未満に対する整定に関して、これは、約85ミリ秒の整定時間または8.5サイクルを意味することになる。一方で、65度の位相角を有する0.10Hzでのセンサに関して、これは、0.75秒の時定数を意味することになる。1%未満に対する整定に関して、これは、約3.4秒の整定時間を意味することになる。
したがって、上記で詳述された本発明の実施形態では、ASICは、(少なくとも)7つの電極パッドを含み、そのうちの5つは、WORK電極(すなわち、感知電極、または作用電極、またはWE)として割り当てられ、1つは、COUNTER(すなわち、対向電極、またはCE)とラベル付けされ、1つは、REFERENCE(すなわち、基準電極、またはRE)とラベル付けされる。カウンタ増幅器4321(図42B参照)は、COUNTER、REFERENCE、および/またはWORKを割り当てられたパッドのうちのいずれかに、ならびにそれらの任意の組み合わせでプログラム可能に接続され得る。上述されたように、本明細書の発明の実施形態は、例えば、5つを超えるWEを含み得る。これに関して、本明細書の発明の実施形態はまた、5つを超える作用電極とインターフェースするASICを対象とし得る。
本明細書に説明されるASICによると、上述の5つの作用電極、対向電極、および基準電極の各々が、個々にかつ独立してアドレス指定可能であることに留意することが重要である。したがって、5つの作用電極のうちのいずれか1つがオンにされてIsig(電極電流)を測定し得、いずれか1つがオフにされ得る。さらに、5つの作用電極のうちのいずれか1つは、EIS関連パラメータ、例えば、インピーダンスおよび位相の測定のために、EIS回路に動作可能に接続/連結され得る。言い換えると、EISは、作用電極のうちの任意の1つ以上で選択的に実行され得る。加えて、5つの作用電極の各々のそれぞれの電圧レベルは、基準電極に対して振幅および符号が独立してプログラムされ得る。これは、例えば、電極を干渉に対してより鈍感にするために、1つ以上の電極の電圧を変化させるなどの多くの用途を有する。
2つ以上の作用電極が冗長電極として用いられる実施形態では、本明細書に説明されるEIS技術は、例えば、複数の冗長電極のどれが最適に機能しているかを決定するために使用され得(例えば、より速い始動、最小ディップまたはディップなし、最小感度損失または感度損失なしなどに関して)、それにより、最適な作用電極のみが、グルコース測定値を得るためにアドレス指定され得る。後者は、その結果、継続的な較正の必要性を、排除しないまでも、大幅に減少させ得る。同時に、他の(冗長)作用電極は、(i)オフにされ、これは、EISが「オフ」電極に対して実行されなくてもよいため、電源管理を容易にする、(ii)電源遮断される、および/または(iii)それらがライン上に戻され得るように、それらが回復したか否かを決定するためにEISを介して周期的に監視され得る。一方で、最適ではない電極は、較正の要求をトリガし得る。ASICはまた、例えば、故障またはオフライン作用電極を含む、電極のうちのいずれかを対向電極にすることもできる。したがって、本明細書の発明の実施形態では、ASICは、2つ以上の対向電極を有し得る。
上記は、概して、冗長電極が同じサイズであり、同じ化学的性質、同じ設計などを有する、単純な冗長性に対処するが、上記の診断アルゴリズム、融合方法論、および関連ASICはまた、センサ移植完全性を移植時間の関数として評価する手段として、空間的に分散された、同様のサイズまたは異なるサイズの作用電極と併せて使用され得る。したがって、本明細書の発明の実施形態では、異なる形状、サイズ、および/または構成を有するか、または、例えば、特定の環境をターゲットとするように使用される同じまたは異なる化学的性質を含有し得る同じワイヤ上の電極を含有するセンサが使用され得る。
さらに他の実施形態では、全体的なセンサ設計は、異なるサイズのWEを含み得る。そのようなより小さいWEは、概して、より低いIsig(より小さい幾何学的エリア)を出力し、具体的には、低血糖の検出/精度に対して使用され得るが、より大きいIsigを出力するより大きいWEは、具体的には、正常血糖および高血糖の精度に対して使用され得る。サイズの差を考慮すると、これらの電極間では、診断のために異なるEIS閾値および/または周波数が使用されなければならない。上記に説明されたように、ASICは、プログラム可能な電極固有のEIS基準を有効化することによって、そのような要件に適応する。
上記のように、ASICは、刺激の開始および停止を命令し、約100Hzを上回る周波数のEISベースパラメータの測定を調整する、プログラム可能なシーケンサ4266を含む。シーケンスの終了時、データは、バッファメモリ内にあり、マイクロプロセッサが必要なパラメータ(の値)を迅速に得るために利用可能である。これは、時間を節約し、マイクロプロセッサの介入をあまり必要としないことにより、システムの電源要件も軽減する。
約100Hzよりも低い周波数に関して、プログラム可能なシーケンサ4266は、EISの刺激の開始および停止を調整し、データをバッファする。測定サイクルの終了時、またはバッファが満杯に近づいた場合、ASICは、マイクロプロセッサに割り込んで、利用可能なデータを収集する必要があることを示し得る。バッファの深さは、EISベースパラメータが収集されているときに、マイクロプロセッサが他のタスクを行うか、またはスリープし得る時間を決定することになる。例えば、好ましい一実施形態では、バッファは、64測定深さである。繰り返しになるが、これは、マイクロプロセッサがデータを断片的に収集することを必要としないため、エネルギーを節約する。シーケンサ4266はまた、0とは異なる位相で刺激を開始する能力も有し、これは、より速く整定する潜在性を有することにも留意されたい。
上記のように、ASICは、マイクロプロセッサに対する電力を制御し得る。したがって、例えば、それは、例えば、機械的スイッチ、または容量性もしくは抵抗性の感知を使用するセンサの接続/接続解除の検出に基づいて、マイクロプロセッサを完全に電源遮断、および電源投入し得る。さらに、ASICは、マイクロプロセッサのウェイクアップを制御し得る。例えば、マイクロプロセッサは、それ自体を低電力モードにすることができる。ASICは、次いで、例えば、センサの接続/接続解除の検出がASICによって行われた場合、信号をマイクロプロセッサに送信し得、その信号は、プロセッサをウェイクアップする。これは、例えば、機械的スイッチまたは静電容量ベース感知方式などの技術を使用して、ASICによって発生した信号に応答することを含む。これは、マイクロプロセッサが長期間スリープすることを可能にし、それによって、電力ドレインを有意に低減する。
上記のASICによると、5つ(以上)の作用電極が全て独立しており、独立してアドレス指定可能であり、したがって、所望される任意の手段で構成され得るため、酸素感知および過酸化物感知の両方は、同時に実施され得る。加えて、ASICは、EISが、例えば、Vcntrのレベル、静電容量の変化、信号ノイズ、Isigの大きな変化、ドリフト検出などの各々それ自体の閾値を有する様々な要因によってトリガされ得るように、複数のマーカに対する複数の閾値を可能にする。加えて、ASICは、そのような要因毎に、複数の閾値レベルを可能にする。
本明細書の発明の実施形態によると、図48に示されるような等価回路モデルが、作用電極および基準電極、それぞれWEおよびREの間の測定されたEISをモデル化するために使用され得る。図48に示される回路は、全部で6つの要素を有し、これらは、(i)反応関連要素、(ii)膜関連要素、(iii)溶液関連要素の3つの一般的な分類に分割され得る。後者の分類では、Rsolは、溶液抵抗であり、センサシステムの外部環境(例えば、生体内の間質液)の特性に対応する。
反応関連要素は、分極抵抗(すなわち、電圧バイアスに対する抵抗および電極と電解質との間の電荷移動)であるRp、ならびに電極-電解質界面での二重層静電容量であるCdlを含む。このモデルでは、二重層静電容量は、インターフェースの不均一性に起因して定位相要素(CPE)として示されるが、純粋な静電容量としてモデル化されてもよいことに留意されたい。CPEとして、二重層静電容量は、アドミタンスを表すCdl、およびCPEの定位相(すなわち、コンデンサのリークの程度)を表すαの2つのパラメータを有する。CPEの周波数依存性インピーダンスは、次のように計算され得る。
したがって、モデルは、2つの反応関連要素である、RpおよびCdlを含み、これらは、合計3つのパラメータ、Rp、Cdl、およびαで表される。
膜関連要素は、膜抵抗(または化学層に起因する抵抗)であるRmem、および膜静電容量(または化学層に起因する静電容量)であるCmemを含む。Cmemは、図48に純粋な静電容量として示されるが、特殊な場合には、CPEとしてもモデル化され得る。示されるように、Wは、有限ワールブルグ要素であり、化学層内のグルコース/H2O2拡散に起因するワールブルグ要素のアドミタンスを表すY0、およびワールブルグ要素の拡散時定数を表すλの2つのパラメータを有する。ワールブルグはまた、他の手段(例えば、無限)でモデル化され得ることにも留意されたい。有限ワールブルグ要素の周波数依存性インピーダンスは、次のように計算され得る。
したがって、モデルは、3つの反応関連要素である、Rmem、Cmem、およびWを含み、これらは、合計4つのパラメータ、Rmem、Cmem、Y0、およびλで表される。
図48の上部分は、本発明の実施形態によるセンサの全体的な構造を示し、プラチナブラックは、電極を指す。ここでは、単一の電極が図示されているが、これは、単なる例示であり、限定ではなく、モデルは、図48に示される例示的な3層の単一電極構造よりも多数の層および多数の電極を有するセンサに適用され得ることに留意することが重要である。本明細書に上記に説明されたように、GLMは、センサのグルコース制限膜であり、HSAは、ヒト血清アルブミンであり、GOXは、グルコースオキシダーゼ酵素(触媒として使用される)であり、溶液は、例えば、ユーザの体液などの電極が配設されている環境を指す。
次の説明では、図48の等価回路モデルが、センサ挙動のいくつかの物理的特性を説明するために使用されることになる。それにもかかわらず、グルコース拡散がどのようにモデル化されるかに依存して、他の回路構成も可能であり得ることが言及されるべきである。これに関して、図49A~49Cは、いくつかの追加の回路モデルの例示を示し、そのいくつかは、より多数の要素および/またはパラメータを含む。しかしながら、本議論の目的のために、物質移動限界、すなわち、ワールブルグ成分が、膜を通したグルコース拡散に起因する、図48の回路モデルが、最良適合相対実験データを提供することが発見された。図50Aは、等価回路シミュレーション5020が実験データ5010に非常に厳密に適合することを示すナイキストプロットである。図50Bは、図50Aの高周波数部分の拡大図であり、シミュレーションがその領域でも同様に実際のセンサデータを非常に正確に追跡することを示す。
上記の各回路要素およびパラメータの各々は、EIS出力に様々な手段で影響を与える。図51は、ナイキストプロットを示し、Cdlは、矢印Aの方向に増加する。分かるように、Cdlの値が増加すると、(より低い周波数)ナイキストプロットの長さが減少し、その勾配が増大する。したがって、ナイキストプロットの長さは、プロット5031からプロット5039に減少し、プロット5033、5035、および5037の各々は、Cdlがプロット5031からプロット5039に増加するにつれて徐々に減少するそれぞれの長さを有する。反対に、ナイキストプロットの勾配は、プロット5031からプロット5039に増大し、プロット5033、5035、および5037の各々は、Cdlがプロット5031からプロット5039に増加するにつれて徐々に増大するそれぞれの勾配を有する。しかしながら、ナイキストプロットのより高周波数の領域は、ほとんど影響を受けない。
図52は、ナイキストプロットを示し、αは、矢印Aの方向に増大する。ここで、αが増大するにつれて、ナイキストプロットの勾配は、より低周波数の領域で増大する。図53では、Rpが矢印Aの方向に増加するにつれて、低周波数ナイキストプロットの長さおよび勾配が増大する。Rpが高いほど、化学反応に対する抵抗が高くなり、したがって、電子およびイオン交換速度が遅くなる。したがって、現象論的に、図53は、電子-イオン交換速度が低下するにつれて、すなわち、化学反応に対する抵抗が増大するにつれて、低周波数ナイキストプロットの長さおよび勾配が増大することを示し、これは、よって、より低い電流(Isig)出力を意味する。繰り返しになるが、ナイキストプロットのより高周波数の領域への影響は、最小限に抑えられるか、全くない。
ワールブルグアドミタンスの変化の影響が図54に示される。ワールブルグアドミタンスが矢印Aの方向に増加すると、低周波数ナイキストプロットの長さおよび勾配の両方が増大する。現象論的には、これは、低周波数ナイキストプロットの長さおよび勾配が、反応物の流入が増加するにつれて増大する傾向があることを意味する。図55では、λが矢印Aの方向に増加するにつれて、ナイキストプロットの勾配が縮小する。
上記の要素およびパラメータとは対照的に、膜関連要素およびパラメータは、概して、ナイキストプロットのより高周波数の領域に影響を与える。図56は、ナイキストプロットに対する膜静電容量の影響を示す。図56から分かるように、Cmemの変化は、より高周波数の領域の半円がどの程度視認可能であるかに影響を与える。したがって、膜静電容量が矢印Aの方向に増大するにつれて、半円が徐々に見えなくなる。同様に、図57に示されるように、矢印Aの方向に膜抵抗が増大すると、半円の高周波数領域のより多くが視認可能になる。加えて、Rmemが増加すると、ナイキストプロット全体が左から右にシフトする。図58に示されるように、後者の平行シフト現象は、Rsolにも当てはまる。
図48の等価回路モデルに関する上記の議論は、以下のように要約され得る。第1に、Cdl、α、Rp、ワールブルグ、およびλは、概して、低周波数応答を制御する。より具体的には、より低周波数のナイキスト勾配/Zimagは、Cdl、α、Rp、およびλに主に依存し、より低周波数の長さ/Zmagnitudeは、Cdl、Rp、およびワールブルグアドミタンスに主に依存する。第2に、RmemおよびCmemが、高周波数応答を制御する。特に、Rmemは、高周波数半円の直径を決定し、Cmemは、ナイキストプロットに対する最小限の全体的な影響を有する転換点の周波数を決定する。最後に、RmemおよびRsolの変化は、ナイキストプロットに平行シフトを引き起こす。
図59A~59C、60A~60C、および61A~61Cは、センサの始動および較正中の上記の回路要素の変化に関する生体外実験の結果を示す。図59A、60A、および61Aは、同一である。図59Aに示されるように、実験は、概して、2つの冗長作用電極5050、5060を用いて、(7~)9日間の期間にわたって行われた。100mg/dLのベースライングルコース量が使用されたが、冗長作用電極5060は、実験全体を通して様々な時点で0~400mg/dLで変化した(5070)。加えて、32℃~42℃の間の(溶液)温度変化(5080)および0.1mg/dLのアセトアミノフェン応答(5085)の影響が調査された。最後に、実験は、酸素ストレステストを含み、溶液に溶解した酸素の供給量は、0.1%~5%で変動した(すなわち、制限された)(5075)。これらの実験の目的のために、完全EIS掃引(すなわち、0.1Hz~8kHz)が実行され、出力データが約30分に1回記録(およびプロット)された。しかしながら、より短いまたはより長い間隔が使用されてもよい。
図59Cでは、RsolおよびRmemの合計は、繰り返しになるが、ナイキストプロットの変曲点での実インピーダンスの大きさによって推定され得、時間の関数としてほぼ下降傾向を表示する。これは、膜が水和するのに時間が掛かり、それにより、時間が経過すると、電荷に対する抵抗が低下することになるという事実に主に起因する。Isigのプロット(図59A)とRsol+Rmemのプロット(図59C)との間にもわずかな相関が見られ得る。
図60Bは、CdlのEIS出力を示す。ここでは、センサのアクティブ化/センサのチャージアッププロセスに起因して、最初に数時間にわたって比較的急激な低下(5087)がある。しかしながら、その後、Cdlは、かなり一定のままであり、Isigとの強い相関を呈する(図60A)。後半の相関を考慮すると、EISパラメータとしてのCdlデータは、グルコース非依存性が所望される用途ではあまり有用ではない可能性がある。図60Cに示されるように、Rpの傾向は、概して、Cdlのプロットの鏡像として説明され得る。膜がより水和されるにつれて、流入が増加し、これは、図61Bのワールブルグアドミタンスのプロットに反映される。図61Cに示されるように、λは、全体を通してほぼ一定のままである。
図62~65は、上記の実験の様々な部分の実際のEIS応答を示す。具体的には、最初の3日間に起こった変化、すなわり、図59A、60A、および61Aに示される、グルコース変化、酸素ストレス、および温度変化は、図62にボックス(5091)化され、Vcntr応答5093は、この図の下部分および図59Bに示されている。図63は、グルコースの増加によるIsig較正がナイキストプロットの勾配および長さを縮小させたことを示す。図64では、酸素(またはVcntr)応答が2日目に示されており、酸素含有量が減少するにつれて、Vcntrは、より負になる。ここでは、ナイキストプロットの長さがより短くなり、その勾配が小さくなり(5094)、虚インピーダンスの大幅な減少を示している。プロット長さは、CdlおよびRpに主に依存し、Vcntrに強く相関し、その結果、グルコースおよび酸素の変化に応答する。図65では、Isigは、2日目から3日目までごくわずかに変化する。それにもかかわらず、ナイキストプロットは、32℃(5095)および42℃(5097)で取得されたデータに関して、水平にシフトする(37℃でのプロットから)。しかしながら、ナイキストプロットの長さ、勾配、またはIsigに有意な影響はない。
上記のEIS出力および特色情報をまとめると、センサ始動中、ナイキストプロットの右から左へのシフトに対応して、Rmem+Rsolの大きさが経時的に縮小する。この期間中、Cdlが減少し、Rpが増加し、それに対応してナイキスト勾配が増大する。最後に、ワールブルグアドミタンスも増大する。上記のように、上記の内容は、水和プロセスと一致しており、EISプロットおよびパラメータ値は、安定するまでに約1~2日(例えば、24~36時間)掛かる。
本明細書の発明の実施形態はまた、リアルタイム自己較正、より具体的には、EISデータに基づくグルコースセンサの生体内自己較正も対象とする。自己較正アルゴリズムを含む任意の較正アルゴリズムは、感度損失に対処しなければならない。上述のように、(1)一時的な感度損失であり、典型的には、センサ動作の最初の数日間に起こる、Isigディップと、(2)概して、センサ寿命の終了時に起こり、Vcntrレールの存在と相関する場合がある、永続的な感度損失と、の2つのタイプの感度損失が起こり得る。
感度損失は、それ自体を、ナイキストプロットで右への平行シフトとして観察され得る、RsolまたはRmem(または両方)の増加として、またはRmemが変化する場合、より高い周波数での半円に対するより視認可能な開始(高周波数の虚インピーダンスの増大を結果的にもたらす)として、顕在化させ得る。RsolおよびRmemに加えて、またはその代わりに、Cmemのみが増加してもよい。これは、高周波数半円の変化として観察され得る。感度損失は、Cdlの変化によって実現されることになる(ナイキストプロットのより低周波数のセグメントのより長いテールによって)。上記の特色は、EIS出力の異なる変化が感度の変化を補正するためにどのように使用され得るかを決定する手段を提供する。
正常に動作しているグルコースセンサについて、血中グルコース(BG)とセンサの電流出力(Isig)との間に線形関係がある。したがって、
BG=CF×(Isig+c)
式中、「CF」は、Cal係数、「c」は、オフセットである。これは、図66に示されており、較正曲線は、線6005によって示されているとおりであり、「c」は、ベースラインオフセット6007(nA単位)である。しかしながら、Rmemが増加する、および/またはCmemが減少すると、cが影響を受けることになる。したがって、線6009は、Rmemが増加し、Cmemが減少する状況を図示し、これは、膜特性の変化を意味し、それによって、オフセット「c」を6011に移動させ、すなわち、較正曲線の下方シフトを引き起こす。同様に、Cdlに(非グルコース関連の)変化があり、Rpが増加し、結果として(低周波数)ナイキストプロットの長さが増大すると、勾配が影響を受けることになり、勾配=1/CFである。したがって、図66では、線6013は、線6005とは異なる(より小さい)勾配を有する。組み合わせられた変化もまた、起こり得、これは、感度損失を示す線6015によって例示される。
簡略化のために、128Hzと0.105Hz(実際の)とのインピーダンスの間の長さとして例示的に推定され得る、ナイキストプロット(Lnyquist)のより低周波数のセグメントの長さは、グルコース変化と非常に相関している。モデル適合によって、グルコースの変化中に変化する唯一のパラメータは、二重層静電容量Cdl、特に、二重層アドミタンスであることが発見された。したがって、図48の等価回路モデルにおける唯一のIsig依存性、および、ひいてはグルコース依存性のパラメータは、Cdlであり、全ての他のパラメータは、実質的にIsig非依存性である。
上記の観点では、一実施形態では、RmemおよびCmemの変化が、Cal係数(BG/Isig)の再調整に到達し、それによって、連続的指採血テストを必要とせずにセンサのリアルタイム自己較正を可能にするために追跡され得る。これは、部分的に、RmemおよびCmemの変化が較正曲線のオフセット(c)の変化を結果的にもたらすが、勾配が変化しないため、可能である。言い換えると、モデルの膜関連パラメータのそのような変化は、概して、センサが依然として適切に機能することができることを示す。
グラフとして、図67Aは、作用電極からのIsig出力6060が重ね合わせられた、記録されている実際の血中グルコース(BG)データ6055を示す。おおよそ1~4日目を含む第1の期間(または時間窓)(6051)からのデータを、おおよそ6~9日目を含む第2の期間(6053)からのデータと比較すると、図67Aは、センサが、概して、第2の期間中に下方にドリフトしていることを示し、センサのおおよそ中程度の感度損失を示している。図67Bに示されるように、第2の期間中のVcntrの増加もある。
図68および69を参照すると、6~9日目の第2の期間中の膜抵抗6061の非常に有意な増加、および対応するワールブルグアドミタンス6063の低下によって、感度損失が明確に示されていることが分かる。したがって、図70は、第2の期間6053の較正曲線6073が、第1の期間6051の較正曲線6071と平行であるが、それよりもシフトダウンされていることを示す。また、図57に関連して上述されたように、膜抵抗(Rmem)が増加すると、全体的なナイキストプロットは、左から右にシフトし、高周波数領域の半円のより多くが視認可能になる。図67A~70のデータについて、この現象は、図71に示され、ナイキストプロットの拡大されたより高周波数の領域は、第2の期間6053からのデータが、第1の期間6051からのデータと比較して左から右にプロットを移動させ、ナイキストプロットのシフトが左から右に進むにつれて、半円がより視認可能になる(6080)ことを示す。加えて、プロットの拡大された低周波数領域は、Lnyquistに有意な変化がないことを示す。
一方で、CdlおよびRpの変化は、概して、電極が既に損傷し得、それによって、回復がもはや不可能であり得ることを示す。依然として、CdlおよびRpの変化はまた、例えば、診断ツールとして、これらのパラメータの変化の方向/傾向に基づいて、適切なセンサ動作がもはや回復不可能または達成不可能である点にドリフトまたは感度損失が実際に到達したか否かを決定するために、追跡され得る。これに関して、本発明の実施形態では、それぞれの下限および/もしくは上限閾値、または閾値の範囲は、CdlおよびRpの各々について、または勾配の変化について計算され得、それにより、それぞれの閾値(範囲)の外側にあるこれらのパラメータのEIS出力値は、回復不可能な感度損失に起因して、センサの停止または交換をトリガし得る。特定の実施形態では、センサ設計および/または患者固有の範囲もしくは閾値が計算され得、範囲/閾値は、例えば、Cdl、Rp、および/または勾配の変化に関するものであり得る。
グラフとして、図72Aは、2つの作用電極、WE1 6160およびWE2 6162からのIsig出力が重ね合わせられた、記録されている実際の血中グルコース(BG)データ6155を示す。グラフは、1日目の第1の時間窓(6170)、3~5日目の第2の時間窓(6172)、3日目の第3の時間窓(6174)、および5と1/2~9と1/2日目の第4の時間窓(6176)からのデータを示す。3日目から開始すると、図72Bは、Vcntrが1.2ボルトでレールすることを示す。しかしながら、感度の低下は、おおよそ5日目ほど(6180)から起こる。Vcntrがレールすると、Cdlは、有意に増加し、それに対応してRpが減少し、これは、全体的な電気化学反応に対するより高い抵抗を意味する。予期されるように、較正曲線の勾配もまた、変化(減少)し、Lnyquistは、より短くなる(図73~75参照)。本明細書の発明の実施形態では、Vcntrレールの発生が、回復不可能としてセンサの停止をトリガするために使用され得ることに留意されたい。
膜抵抗の増加、Cdlの減少、およびVcntrレールの複合効果が、図76A~76Bおよび77~80に示される。図76Aでは、実際のグルコース(BG)データ6210は、2つの作用電極、WE1 6203およびWE2 6205からのIsig出力が重ね合わせられている。分かるように、WE1は、概して、実際のBGデータ6210に追従し、すなわち、WE1は、正常に機能している。一方で、WE2からのIsigは、より低い点で始まり、開始から10日目までずっと下降傾向を続けており、したがって、漸進的な感度損失を意味するように見える。これは、両方の作用電極が、概して、下降傾向を呈する場合でも、図77に示されるように、WE2のCdl(6215)がWE1のCdl(6213)よりも低いことと矛盾しない。
図79は、較正曲線に対する複合効果を示し、感度損失の期間(6235)の線形適合のオフセットおよび勾配の両方が、正常に機能する時間窓の較正曲線6231に対して変化する。加えて、図80のナイキストプロットは、より低周波数の領域では、感度損失がある場合(6245)、センサが正常に機能している場合(6241)と比較して、ナイキストプロットの長さがより長いことを示す。さらに、変曲点の近くでは、感度損失がある場所ほど、半円(6255)がより視認可能になる。重要なことに、感度損失がある場合、図80のナイキストプロットは、時間の関数として左から右に水平にシフトする。本発明の実施形態では、後者のシフトは、センサにおける補償または自己補正のための尺度として使用され得る。
したがって、本明細書に論じられるように、EIS特色として、一時的なディップは、膜抵抗(Rmem)の増加および/または局所的なRsolの増加によって引き起こされ得る。その結果、Rmemの増加は、より高周波数の虚インピーダンスの増加によって反映される。この増加は、高周波数での勾配(Snyquist)によって特徴付けられ得、これは、簡略化のために、例として8kHz~128Hzの勾配として推定され得る。加えて、Vcntrレールは、Cdlを増加させ、Rpを減少させ、それにより、長さおよび傾きが縮小し、その後に感度損失と関連付けられたCdlの漸減およびRpの漸増が続き得る。一般に、Rpの増加(長さの増大)およびRmemの増加と組み合わせられたCdlの減少は、感度損失を引き起こすのに十分であり得る。
本明細書の発明の実施形態によると、感度の変化および/または損失の検出に基づくセンサ自己較正のためのアルゴリズムが図81に示される。ブロック6305および6315では、ベースラインナイキストプロット長さ(Lnyquist)およびベースラインのより高周波数の勾配が、センサ寿命の開始時のEIS状態を反映するために、それぞれ設定される。上記のように、ナイキストプロット長さは、Cdlに相関し、より高周波数のナイキスト勾配は、膜抵抗に相関する。プロセスは、次いで、ナイキストプロット長さ(6335)およびより高い周波数の勾配(6345)、ならびにVcntr値(6325)を監視することによって継続する。Vcntrがレールしたとき、VcntrのレールがCdlを有意に変化させると、ベースラインLnyquistが調整またはリセットされる(6355)。したがって、監視されるEISパラメータのリアルタイム変化に適応するためのフィードバックループ6358が存在する。
ブロック6375に示されるように、ナイキストプロット長さが監視されると、その長さの有意な増加は、低下した感度を示すことになる。特定の実施形態では、センサ設計および/または患者固有の範囲もしくは閾値が計算され得、範囲/閾値は、例えば、ナイキストプロットの長さの変化に関するものであり得る。同様に、より負のより高周波数の勾配Snyquistは、増加した高周波数半円の出現に対応し、可能なディップを示すことになる(6365)。LnyquistおよびSnyquistの任意のそのような変化は、例えば、継続的または周期的に監視され、感度の低下の持続時間および傾向に基づいて、特定のセンサグルコース(SG)値が破棄されるべきであるような、総合的な(すなわち、重度の)感度損失が起こったか否かの決定がなされる(6385)。ブロック6395では、Cal係数が、「較正不要」CGMセンサを提供するように、監視されるパラメータに基づいて調整され得る。本明細書の発明の文脈内で、「較正不要」という用語は、特定のセンサが較正を全く必要としないことを意味するものではないことに留意されたい。むしろ、センサは、リアルタイムで、追加の指採血またはメータデータを必要とせずに、自己較正(EIS出力データに基づいて)し得ることを意味する。この意味では、自己較正はまた、較正が所定の時間スケジュールに基づいて実施されず、必要に応じてリアルタイムで実施されるため、「インテリジェント」較正とも呼ばれ得る。
本明細書の発明の実施形態では、Cal係数(CF)および/またはオフセットの調整のためのアルゴリズムは、膜抵抗に基づき得、そのため、RmemおよびRsolの合計によって推定され得る。膜抵抗は、センサの物理的特性を表すため、通常、単一の周波数で実行されたEISデータから推定することができない。言い換えると、周波数がセンサの状態に依存してシフトするため、一貫して膜抵抗を表す単一の周波数がないことが観察されている。したがって、図82は、例えば、ある程度の感度損失が存在すると、ナイキストプロットに水平シフトが存在し、したがって、Rmem+Rsolの値を推定する変曲点にシフトが存在することを示す。この場合、インピーダンスの実数成分のシフトは、実際には非常に大きい。しかしながら、高周波数(例えば、8kHz)実インピーダンスのみが監視される場合、図82の丸で囲まれた領域によって示されるように、シフトは、ほとんどまたは全く存在しない。
したがって、物理的に意味のある手段で膜抵抗を追跡する必要性がある。理想的には、これは、モデル適合を通じて行われ得、RmemおよびRsolは、モデル適合から導出され、Rmは、Rm=Rmem+Rsolとして計算される。しかしながら、実際には、この手法は、予測不可能に長い時間が掛かる可能性があるため、計算コストが掛かるのみならず、状況によっては全く収束しない可能性がある。したがって、ヒューリスティックメトリックが、Rm=Rmem+Rsolの値を近似または推定するために開発され得る。そのようなメトリックの1つでは、Rmem+Rsolは、かなり安定した虚インピーダンス値での実インピーダンス切片の値によって近似される。したがって、図83に示されるように、例えば、虚インピーダンス(Y軸上)の一般安定性の領域は、約2000Ωで識別され得る。これを基準値として、X軸に平行に横切って移動すると、Rmに比例する値は、次いで、基準線がナイキストプロットと交差する場所の実インピーダンス値として近似され得る。周波数間の補間がΔRm∝Δ(Rmem+Rsol)を推定するために実施され得る。
上述のようにRmの値が推定されると、RmとCal係数(CF)および/またはIsigとの間の関係が、次いで、調査され得る。具体的には、図84は、推定されたRmとCFとの間の関係を示し、前者は、後者に正比例している。図84の目的のためのデータ点を、定常状態センサ動作のために導出した。図85は、IsigがBG範囲(Isigの)によって正規化されている、正規化されたIsig対1/Rmのプロットを示す。図から分かるように、Isigは、Rmの変化に基づいて調整され得る。具体的には、Isigと1/Rmとの間に線形関係があるため、1/Rmの増加(すなわち、膜抵抗の減少)は、Isigの比例的増加につながることになる。
したがって、一実施形態では、Cal係数の調整のためのアルゴリズムは、基準Cal係数に基づいて膜抵抗の変化を監視し、次いで、RmとCFとの間の相関に基づいてCal係数を比例的に修正することを伴うことになる。言い換えると:
別の実施形態では、Cal係数調整アルゴリズムは、1/Rmの比例的変化に基づいて、かつCF計算とは無関係に、Isigの修正を伴い得る。したがって、そのようなアルゴリズムの目的のために、調整されたIsigは、次のように導出される。
実験は、最も劇的なCFの変化が、センサ寿命の最初の8時間で起こることを示している。具体的には、一連の生体外実験では、センサの寿命にわたって様々なグルコースレベルを一定に保ちながら、Isigを時間の関数としてプロットした。EISを、最初の2時間について3分毎に実行し、全てのモデルパラメータを、経時的に推定および追跡した。上記のように、制限されたスペクトルのEISを考慮すると、RmemおよびRsolは、(独立して)ロバストに推定することができない。しかしながら、Rm=Rmem+Rsolは、推定され得る。
図86は、400mg/dL(6410)、200mg/dL(6420)、100mg/dL(6430)、60mg/dL(6440)、および0mg/dL(6450)を含む、様々なグルコースレベルについての経時的なIsigのプロットを示す。始動時に、概して劇的な変化が全てのパラメータに出現する。一例が図87に示され、Cdlは、時間の関数としてプロットされ、プロット6415は、400mg/dLのグルコースに対応し、プロット6425は、200mg/dLのグルコースに対応し、プロット6435は、100mg/dLのグルコースに対応し、プロット6445は、60mg/dLのグルコースに対応し、プロット6455は、0mg/dLのグルコースに対応する。図87の例示的な例の場合と同様に、ほとんどのパラメータは、最初の0.5時間の変化と良好に相関するが、概して、>0.5時間の時間フレームの変化を説明することができない。
しかしながら、Rm=Rmem+Rsolは、同様の始動時間フレームにわたるIsigの変化を説明することができる唯一のパラメータであることが発見された。具体的には、図88は、特に低グルコースレベル、例えば、100mg/dL以下で、約T=1時間で起こる、ピーク、または第2の変曲点を示すことを除いて、図86のグラフと同じグラフを示す。しかしながら、調査された全てのEISパラメータのうち、膜抵抗は、Isigのこの変化に対する関係を呈した唯一のものであり、他のパラメータは、概して、かなり平滑に定常状態まで進む傾向がある。したがって、図89に示されるように、Rmはまた、同じ時間のIsigのピークに対応する約T=1時間で、第2の変曲点を呈する。
図90は、センサ動作の最初の8時間の間の生体内データのCal係数とRmとの間の関係を示す。ここでは、EISを、始動時におおよそ30分毎に1回実行し、その間の期間について補間した。分かるように、Rm=Rmem+Rsolは、センサ動作の最初の8時間の間にCal係数(CF)と相関する。図90の図の目的のために、ベースラインオフセットを3nAであると仮定した。
図83~85に関連して上述したように、一実施形態では、始動時のCal係数の調整のためのアルゴリズムは、較正係数の基準値(CFreference)を選択することと、CF=CFreferenceの膜抵抗の値(Rreference)を推定することと、膜抵抗(Rm=Rmem+Rsol)の変化を監視することと、その変化の大きさに基づいて、図90に示される関係に従って較正係数を調整することと、を含み得る。したがって
CF(t)=CFreference-m(Rreference-Rm(t))
式中、mは、図90の相関の勾配である。上記のアルゴリズムの目的のために、CFreferenceの値は、センサ間の差を説明するために、センサ固有であることに留意されたい。
別の実施形態では、Cal係数調整アルゴリズムは、調整が起こる、制限されたRmの範囲を使用することによって修正され得る。これは、Rmが~7000Ωよりも小さくなると、ノイズに起因して発生し得るため、小さい差に役立ち得る。制限されたRm範囲は、非常に遅いセンサの水和/安定化に起因して発生し得るため、Rmが非常に大きいときにも役立ち得る。さらに別の実施形態では、許容可能なCFの範囲は、例えば、CFの下限を4.5に設定することなどによって制限され得る。
図91Aは、センサ寿命のおおよそ最初の8時間での全ての有効BGにわたるMARDの生体内の結果を示すチャートである。単一(第1)の較正が、始動後、1時間、1.5時間、または2時間のいずれかで、第1のBGを用いて実施される。分かるように、いかなるCal係数調整も伴わず、1時間での較正のMARDは、2時間で実施される較正のものよりもはるかに高くなる(22.23対19.34)。しかしながら、上記のように、調整または修正された調整によると、それぞれのMARDの数の間の差は、より小さくなる。したがって、例えば、調整によると、1時間での較正のMARDは、16.98であるが、それに対して2時間で実施された較正について、15.42である。加えて、1時間での較正のための調整を有するMARDは、2時間で実施される較正のための調整なしのMARDよりもはるかに小さい(16.98対19.34)。したがって、本発明の実施形態によると、Cal係数調整(および修正された調整)は、例えば、この例では、センサを1時間早く始動することによって、センサの使用可能な寿命を延ばしながら、MARDを維持または改善するために使用され得る。図91Bのチャートは、おおよそ最初の約8時間の全ての有効BGのARD数の中央値を提供する。
図92A~92C、93A~93C、および94A~94Cは、上記のCal係数調整アルゴリズムが、いくつかの現在の非EISベースの方法よりも良好に機能するときの例を示す。概して「初日補償」(またはFDC)と呼ばれるそのような方法の1つでは、第1のCal係数が測定される。測定されたCal係数が所定の範囲外にある場合、一定の線形減衰関数が適用されて、減衰速度によって決定される予定時間でCal係数を正常範囲内に戻す。図92A~94Cから分かるように、本明細書の発明のCal係数調整アルゴリズム(図では「補償」と呼ばれる)6701、6711、6721は、FDC方法6703、6713、6723によって得られる結果よりも、実際の血中グルコース(BG)測定値6707、6717、6727に近い結果を生成する。
EIS関連パラメータの値を推定することの複雑さを考慮すると、FDCを含む現在の方法のいくつかは、本明細書に説明されるEIS Cal係数調整アルゴリズムよりも計算が複雑ではない場合がある。しかしながら、2つの手法はまた、補完的な様態でも実装され得る。具体的には、FDCが瞬時Cal係数調整アルゴリズムによって増強され得る状況があり得る。例えば、後者は、FDCの変化率を定義するため、またはFDCが適用されるべき範囲を識別するため(すなわち、CFを単独で使用するのではなく)、または特別な場合にFDCの方向を反転するために使用され得る。
さらに他の実施形態では、Cal係数ではなくオフセットが調整され得る。加えて、または代わりに、制限は、RmおよびCFの適用可能な範囲に課され得る。特定の実施形態では、相対値ではなく絶対値が使用され得る。さらに、Cal係数と膜との間の関係は、加法的ではなく、乗法的に表現され得る。したがって、
EISベース動的オフセットを使用する実施形態では、測定される全電流は、ファラデー電流および非ファラデー電流の和として定義され得、ファラデー電流は、グルコース依存性であるが、非ファラデー電流は、グルコース非依存性である。したがって、数学的には、
itotal=iFaradaic+inon-Faradaic
理想的には、非ファラデー電流は、ゼロであるべきであり、次のように固定された作用電位を有する。
式中、Aは、表面積であり、dは、
過酸化物の勾配である。
しかしながら、二重層静電容量が変化している場合、非ファラデー電流は、無視することができない。具体的には、非ファラデー電流は、次のように計算され得る。
式中、qは、電荷、Vは、電圧、Cは、(二重層)静電容量である。上記から分かるように、電圧(V)および静電容量(C)の両方が一定であるとき、方程式の右辺の両方の時間微分値は、ゼロに等しく、それにより、inon-Faradaic=0である。このような理想的な状況では、焦点は、次いで、拡散および反応に移り得る。
VおよびCの両方が時間の関数であるとき(例えば、センサ初期化時)、
一方で、Vが一定であり、Cが時間の関数であるとき、
このような状態は、例えば、センサ動作の1日目に存在する。図95は、1日目の間の二重層静電容量の典型的な(初期)減衰の例を示し、この場合、センサ挿入後の最初の6時間である。グラフに示されているように、プロット6805は、30分間隔で得られるEISデータに基づく生のCdlデータを示し、プロット6810は、5分の時間間隔の生のCdlデータに対するスプライン適合を示し、プロット6815は、5分の時間間隔の平滑化曲線を示し、プロット6820は、5分の時間間隔の平滑化されたCdlデータの多項式適合を示す。
Cdlの減衰が指数関数的ではないことに留意されたい。いたがって、減衰は、指数関数を用いてシミュレートすることができない。むしろ、6次多項式適合(6820)が合理的なシミュレーションを提供することが見出されている。したがって、Vが一定であり、Cが時間の関数である上述の状況の目的のために、多項式係数が既知である場合、inon-Faradaicが計算され得る。具体的には、
式中、Pは、多項式係数配列であり、tは、時間である。非ファラデー電流は、次いで、次のように計算され得る。
最後に、itotal=iFaradaic+inon-Faradaicであるため、電流の非ファラデー成分は、次のように再整列することによって除去され得る。
iFaradaic=itotal-inon-Faradaic
図96は、時間の関数としての全電流に基づくIsig(6840)、および静電容量の減衰に基づく非ファラデー電流の除去後のIsig(6850)を示す。電流の非ファラデー成分は、10~15nA程度の高さであり得る。図から分かるように、非ファラデー電流の除去は、センサ寿命の開始時に低始動Isigデータの大部分の除去を助ける。
上記の手法が、MARDを低下させると共に、センサ寿命の開始時にCal係数を正しく調整するために使用され得ることが見出されている。後者に関して、図97Aは、第1の作用電極(WE1)6860および第2の作用電極(WE2)6870の非ファラデー電流の除去前のCal係数を示す。一方で、図97Bは、非ファラデー電流の除去後のWE1(6862)およびWE2(6872)のCal係数を示す。図97AのWE1のCal係数(6860)を図97BのWE1のCal係数(6862)と比較すると、非ファラデー成分の除去により、Cal係数(6862)は、予期される範囲にはるかに近いことが分かる。
加えて、MARDの低下は、センサグルコース値が経時的にプロットされている図98Aおよび98Bに示される例で見ることができる。図98Aに示されるように、非ファラデー電流の除去前、低始動時の較正は、11.23%のMARDを含む、WE1での有意なセンサ過大読み取り(6880)を引き起こす。非ファラデー電流の除去後、10.53%のMARDがWE1について達成される。図97A~98Bの例示の目的のために、非ファラデー電流は、次の関係を使用して前処理で計算および除去されたことに留意されたい。
式中、Pは、二重層容量曲線に適合するように使用される多項式係数(配列)である。
リアルタイムでは、ファラデー電流および非ファラデー電流の分離が、第1の較正を実行する時間を自動的に決定するために使用され得る。図99は、経時的な二重層静電容量の減衰を示す。具体的には、一定の時間間隔ΔTにわたって、二重層静電容量は、第1の値
から第2の値C
T(7010)への変化を受ける。例えば、1次時間差方法が、次いで、非ファラデー電流を次のように計算するために使用され得る。
他の方法、例えば、2次精密有限値方法(FVM)、Savitzky-Golayなども、導関数dc/dtを計算するために使用され得る。
次に、非ファラデー電流から構成される全電流、すなわちIsigのパーセンテージが、比率inon-Faradaic/Isigとして簡単に計算され得る。この比率が下限閾値に達すると、次いで、センサが較正の準備ができているか否かのリアルタイムでの決定がなされ得る。したがって、一実施形態では、閾値は、5%~10%であり得る。
別の実施形態では、上記のアルゴリズム、すなわち、EISベース動的オフセットアルゴリズムが、リアルタイムでオフセット値を計算するために使用され得る。それを思い出すと、
また、そのセンサ電流Isigは、ファラデー成分および非ファラデー成分を含む全電流である。
itotal=iFaradaic+inon-Faradaic
ファラデー成分は、次のように計算される。
iFaradaic=itotal-inon-Faradaic
したがって、一実施形態では、非ファラデー電流、inon-Faradaicは、Isigへの追加のオフセットとして扱われ得る。実際には、例えば、センサ寿命の最初の日の間、二重層静電容量が減少すると、inon-Faradaicは、負になり、時間の関数として減少する。したがって、本発明のこの実施形態によると、より大きいオフセット、すなわち、現在の方法を用いて計算された通常のオフセットにinon-Faradaicを加えたものが、センサ寿命のまさに開始時にIsigに追加され、5次多項式曲線に追従して減衰することを可能にされることになる。つまり、追加のオフセットinon-Faradaicは、5次多項式に追従し、その係数が決定されなければならない。二重層静電容量の変化がどの程度劇的であるかに依存して、この実施形態によるアルゴリズムは、センサ寿命の最初の数時間、例えば、最初の6~12時間に適用され得る。
多項式適合は、様々な手段で計算され得る。例えば、本発明の一実施形態では、係数Pは、既存のデータに基づいて事前決定され得る。次いで、第1のCal係数が正常範囲、例えば、~7を上回ったときのみ、上述された動的オフセットが適用される。実験は、概して、リアルタイムの二重層静電容量測定が所望されるよりも信頼性が低いときに、この方法が最良に機能することを示している。
代替的な実施形態では、インライン適合アルゴリズムが使用される。具体的には、インライン二重層静電容量バッファが時間Tで作成される。Pが、次いで、時間Tでの多項式適合を使用して、バッファに基づいて計算される。最後に、時間T+ΔTでの非ファラデー電流(動的オフセット)が、時間TでPを使用して計算される。このアルゴリズムは、二重層キャパシタンス測定を、それらの現在のレベル(30分毎)よりも頻繁に行うことを必要とし、測定の信頼性が高い(すなわち、アーチファクトがない)ことに留意されたい。例えば、EIS測定は、センサ寿命の最初の2~3時間で、5分毎に1回、または10分毎に1回行われ得る。
リアルタイムの自己較正センサの開発では、最終的な目標は、BG計への依存を最小限に抑えるか、または完全に排除することである。しかしながら、これは、とりわけ、EIS関連パラメータと、Isig、Cal係数(CF)、およびオフセットとの間の関係の理解を必要とする。例えば、生体内実験は、Isigと、Cdlおよびワールブルグアドミタンスの各々との間に相関があることを示しており、それにより、Cdlおよびワールブルグアドミタンスの各々は、Isig依存性(少なくともある程度)であり得る。加えて、センサの工場較正に関して、IsigおよびRm(=Rmem+Rsol)がCal係数に対する最も重要なパラメータ(すなわち、要因)であるが、ワールブルグアドミタンス、Cdl、およびVcntrは、オフセットに対する最も重要なパラメータである。
生体外研究では、EISから抽出されたメトリック(例えば、Rmem)は、Cal係数と強い相関を呈する傾向がある。しかしながら、生体内では、その相関が弱い場合がある。これは、部分的に、患者固有、または(センサ)挿入部位固有の特性が、自己較正または工場較正のためのEISの使用を可能にすることになる、センサの側面をマスクするという事実に起因する。これに関して、特定の実施形態では、冗長センサが、患者固有の応答を推定するために利用され得る基準点を提供するために使用され得る。これは、その結果、より堅牢な工場較正を可能にすると共に、センサ故障モードの原因をセンサの内部または外部のいずれかとして識別することを助ける。
一般に、EISは、センサ電極間に形成する電界の関数である。電界は、センサ膜を越えて広がり得、センサ挿入部位の(患者の)身体の特性を調べ得る。したがって、センサが挿入/配設される環境が全てのテストにわたって均一である場合、すなわち、組織の組成が生体内で常に同じである場合(またはバッファが生体外で常に同じである場合)、EISは、センサのみの特性と相関され得る。言い換えると、センサの変化がEISの変化に直接つながり、例えば、Cal係数と相関され得ると仮定され得る。
しかしながら、患者固有の組織特性は挿入部位の組成に依存するため、生体内環境は、非常に変動し易いことが公知である。例えば、センサ周辺の組織の伝導率は、センサ周辺の脂肪量に依存する。脂肪の伝導率は、純粋な間質液(ISF)の伝導率よりもはるかに低く、ISFに対する局所的な脂肪の比率は、有意に変化し得ることが既知である。挿入部位の組成は、挿入の部位、挿入の深さ、患者固有の体組成などに依存する。したがって、センサが同じであっても、EIS研究から観察されるRmemは、基準環境が同じであることがほとんどないため、かなりより有意に変化する。つまり、挿入部位の伝導率がセンサ/システムのRmemに影響を与える。したがって、Rmemを信頼性の高い較正ツールとして均一かつ一貫して使用することができない場合がある。
上記のように、EISは、診断ツールとしても使用され得る。したがって、本明細書の発明の実施形態では、EISは、総体的な故障分析に使用され得る。例えば、EISは、重度の感度損失を検出するために使用され得、その結果、センサデータをブロックするか否か、およびいつブロックするかを決定することと、最適較正時間を決めることと、センサを停止するか否か、およびいつ停止させるかを決定するために有用である。これに関して、繰り返し記載するが、連続的グルコース監視および分析では、(1)典型的には、センサ寿命の早期に起こり、概して、外部センサの妨害の結果であると考えられる、一時的な感度損失(すなわち、Isigディップ)と、(2)典型的には、センサ寿命の終了時に起こり、決して回復せず、したがって、センサの停止を必要とする、永続的な感度損失と、の2つの主要なタイプの重度の感度損失が典型的に考慮される。
生体内および生体外の両方のデータは、感度損失およびIsigディップの間、変化するEISパラメータが、Rmem、Rsol、およびCmemのうちのいずれか1つ以上であり得ることを示す。永続的な感度損失の変化は、その結果、それ自体を、ナイキストプロットの高周波数領域での平行シフト、および/または高周波数半円の増大した外観として顕在化させる。一般に、感度損失がより重度であるほど、これらの兆候がより顕著になる。図100は、2.6日目(7050)、3.5日目(7055)、6日目(7060)、および6.5日目(7065)のデータのナイキストプロットのより高周波数の領域を示す。分かるように、感度損失(7070)中、左から右への水平シフト、すなわち、Rmem+Rsolシフトが存在し得、膜抵抗の増加を示している。加えて、6日目のプロット、特に6.5日目(7065)のプロットは、感度損失(7075)中に高周波数半円の出現を明確に示しており、これは、膜静電容量の変化を示す。状況および感度損失の重大さに依存して、上述の兆候の一方または両方が、ナイキストプロット上に出現し得る。
永続的な感度損失とは対照的に、特にIsigディップの検出に関して、いくつかの現在の方法論は、Isigのみを使用して、例えば、Isigが低下している可能性がある場合の速度、または経時的にIsigの漸進的変化の程度/欠如を監視することによってIsigディップを検出し、それによって、センサがおそらくグルコースに応答しないことを示す。しかしながら、これは、実際のディップがあったとしても、Isigが正常なBG範囲に留まる事例があるため、あまり信頼できるものではない場合がある。このような状況では、感度損失(すなわち、Isigディップ)は、低血糖と区別可能ではない。したがって、一実施形態では、EISが、Isig由来の情報を補完するために使用され得、それによって、検出方法の特異性および感度を向上する。
永続的な感度損失は、概して、Vcntrレールと関連付けられ得る。ここで、いくつかの現在のセンサ停止方法論は、例えば、Vcntrが1日間レールするとセンサが停止され得るように、Vcntrレールデータのみを頼る。しかしながら、本明細書の発明の実施形態によると、感度損失に起因してセンサをいつ停止させるかを決定する1つの方法は、EISデータを使用して、Vcntrレールの後に感度損失が発生するか否か、およびいつ発生するかを確認することを伴う。具体的には、Vcntrレールが観察されると、永続的な感度損失が実際に起こったか否かを決定するために、ナイキストプロットのより高周波数の領域での平行シフトが使用され得る。これに関して、Vcntrが、例えば、5日目にセンサ寿命にレールし得るが、EISデータがナイキストプロットでのシフトをほとんどまたは全く示さない状況が存在する。この場合、通常、センサは、5~6日目で停止されることになっている。しかしながら、EISデータが実際には永続的な感度の損失がないことを示すことにより、センサが停止されず、それによって、センサの有効寿命の残りを節約する(すなわち、使用する)。
上述のように、感度損失の検出は、1つ以上のEISパラメータの変化に基づき得る。したがって、膜抵抗の変化(Rm=Rmem+Rsol)は、例えば、それ自体を、中間周波数(~1kHz)の実インピーダンス領域に顕在化させ得る。膜静電容量(Cmem)について、変化は、増大した半円のため、より高周波数(~8kHz)の虚インピーダンスに顕在化され得る。二重層静電容量(Cdl)は、平均Isigに比例する。したがって、Cdlは、より低周波のナイキスト勾配Lnyquistの長さとして近似され得る。Vcntrが酸素レベルに相関されるため、正常センサ挙動は、典型的には、Isigの減少によるVcntrの減少を伴う。したがって、Vcntrの増加(すなわち、より負)は、Isigの減少との組み合わせにおいても、感度損失を示し得る。加えて、低いか、または生理学的に起こりそうにない、平均Isigレベル、変化率、または信号の変動が監視され得る。
それにもかかわらず、EISパラメータは、最初に決定されなければならない。Cal係数調整および関連する開示に関連して上述されたように、EISパラメータを推定する最も堅牢な手段は、モデル適合を実施することであり、モデル方程式のパラメータは、測定されたEISとモデル出力との間のエラーが最小になるまで変化させられる。この推定を実施する多くの方法が存在する。しかしながら、リアルタイム用途について、モデル適合は、計算負荷、推定時間の変動、収束が不十分である状況のため、最適ではない場合がある。通常、実現可能性は、ハードウェアに依存することになる。
上記の完全なモデル適合が不可能であるとき、一実施形態では、リアルタイム用途の1つの方法は、ヒューリスティック方法論の使用による。目的は、測定されたEISに適用される単純なヒューリスティック方法を用いて真のパラメータ値(または各パラメータによって示される傾向に比例する対応するメトリック)を近似することである。これに関して、以下は、各パラメータの変化を推定するための実装である。
二重層静電容量(Cdl)
一般的に言うと、Cdlの概算推定は、より低周波数のナイキスト勾配(例えば、~128Hz未満の周波数)の長さを測定する任意の統計から得られ得る。これは、例えば、Lnyquist(ナイキストプロットの128HzでのEISと0.1HzでのEISとの間のデカルト距離)を測定することによって行われ得る。他の周波数範囲もまた、使用され得る。別の実施形態では、Cdlは、より低周波数のインピーダンス(例えば、0.1Hzでの)の振幅を使用することによって推定され得る。
膜抵抗(Rmem)および溶液抵抗(Rsol)
上述されたように、ナイキストプロットでは、Rmem+Rsolは、より低周波の半円とより高周波数の半円との間の変曲点に対応する。したがって、一実施形態では、Rmem+Rsolは、ナイキスト勾配の方向性の変化を検出することによって(例えば、導関数および/または差を使用することによって)変曲点を局所化することで推定され得る。あるいは、Rmem+Rsolの相対的な変化が、ナイキスト勾配のシフトを測定することによって推定され得る。これを行うために、虚軸の基準点が選択され得(図83参照)、補間が、実軸上の対応する点を決定するために使用され得る。この補間された値は、Rmem+Rsolの変化を経時的に追跡するために使用され得る。選択された基準は、所与のセンサ構成に対して、ナイキスト勾配のより低周波数の部分の大きい変化(例えば、VCntrレールによる)による過度の影響を受けない値の範囲内にあるべきである。典型的な値は、1kΩ~3kΩである。別の実施形態では、単一の高周波数EIS(例えば、1kHz、8kHz)の実数成分を使用することが可能であり得る。特定のセンサ構成では、これは、ほとんどの場合Rmemをシミュレートし得るが、単一の周波数が、全ての状況でRmemを正確に表すことができない場合があることに留意されたい。
膜静電容量(Cmem)
Cmemの増加は、より顕著な(またはより明白な)より高周波数の半円として顕在化する。したがって、Cmemの変化は、この半円の存在を推定することによって検出され得る。したがって、一実施形態では、Cmemは、インピーダンスのより高周波数の虚数成分を追跡することによって推定され得る。これに関して、より負の値は、増加した半円の存在に対応する。
あるいは、Cmemは、周波数範囲(例えば、1kHz~8kHz)内の半円の最高点を追跡することによって推定され得る。この周波数範囲はまた、変曲点が生じる周波数を識別することと、識別された周波数よりも高い全ての周波数についての最大虚インピーダンスを得ることと、によって決定され得る。これに関して、より負の値は、増加した半円の存在に対応する。
第3の実施形態では、Cmemは、例えば、8kHzおよび1kHzなどのナイキストプロットの2つのより高い周波数の点の間のデカルト距離を測定することによって推定され得る。これは、本出願で上記に定義された高周波数勾配(Snyquist)である。ここで、より大きい絶対値は、より大きい半円に対応し、負の勾配(y軸に負の虚インピーダンス、xに正の実インピーダンスを伴う)は、半円が存在しないことに対応する。上記の方法論では、半円で検出された変化のいくつかがR memの変化にも起因し得るという場合に留意されたい。しかしながら、どちらの変化も感度損失を示すため、重なり合いは、許容可能であると考えられる。
非EIS関連メトリック
文脈上、EISメトリックの利用可能性の前に、感度損失が、全般的に、数個の非EIS基準に従って検出されたことに留意されたい。これらのメトリックは、それ自体では、典型的には、検出に完全な感度および特異性を達成するのに十分な信頼性がない。しかしながら、それらのメトリックは、感度損失の存在を裏付ける証拠を提供するために、EIS関連メトリックと組み合わせられ得る。これらのメトリックのいくつかとしては、(1)Isigが特定の閾値(nA単位)を下回る時間量、すなわち「低Isig」期間、(2)Isigの変化が生理学的に可能であるか、または感度損失によって誘発されるか否かの指標として使用される「低Isig」の状態につながるIsigの1次または2次導関数、(3)センサがグルコースに応答するか、または平坦ライニングであるか否かを示し得る、「低Isig」期間にわたるIsigの変動性/分散が挙げられる。
感度損失検出アルゴリズム
本明細書の発明の実施形態はまた、感度損失の検出のためのアルゴリズムも対象とする。アルゴリズムは、概して、EIS測定から(例えば、上記のように)、および非EIS関連メトリックから推定されたパラメータのベクトルへのアクセスを有する。したがって、例えば、ベクトルは、Rmemおよび/または水平軸のシフト(ナイキストプロットの)、Cmemの変化、およびCdlの変化を含有し得る。同様に、ベクトルは、Isigが「低」状態にある期間、Isigの変動性、Isigの変化率に関するデータを含有し得る。パラメータのこのベクトルは、経時的に追跡され得、アルゴリズムの目的は、感度損失の堅牢な証拠を収集することである。この文脈では、「堅牢な証拠」は、例えば、投票システム、複合重み付けメトリック、クラスタリング、および/または機械学習によって定義され得る。
具体的には、投票システムは、EISパラメータのうちの1つ以上の監視を伴い得る。例えば、一実施形態では、これは、パラメータベクトル内の要素の所定の数または計算された数を超える数が、いつ絶対閾値を超えるかを決定することを伴う。代替的な実施形態では、閾値は、相対(%)閾値であってもよい。同様に、ベクトル要素は、ベクトル内のパラメータの特定の組み合わせが、いつ絶対または相対閾値を超えるかを決定するために監視され得る。別の実施形態では、ベクトルの要素のサブセットのいずれかが絶対または相対閾値を超えたときに、残りのパラメータに対するチェックがトリガされて、感度損失の十分な証拠が得られ得るかどうかを決定し得る。これは、パラメータのサブセットのうちの少なくとも1つが、感度損失が確実に検出されるための必要(ただしおそらく不十分な)条件であるときに有用である。
複合重み付けメトリックは、例えば、要素が所定の閾値をどれだけ超えるかに従う、ベクトル内の要素の重み付けを伴う。感度損失は、次いで、総計の重み付けメトリックが絶対または相対閾値を超えたときに、検出(すなわち、起こっていると決定)され得る。
機械学習は、より洗練された「ブラックボックス」分類器として使用され得る。例えば、現実的な生体内実験から抽出されたパラメータベクトルが、感度損失を検出するように人工ニューラルネットワーク(ANN)、サポートベクトルマシン(SVM)、または遺伝的アルゴリズムを訓練するために使用され得る。訓練されたネットワークは、次いで、非常に時間効率の高い方式でリアルタイムに適用され得る。
図101Aおよび101Bは、組み合わせ論理を使用する感度損失検出のフロー図の2つの例示的な例を示す。示されるように、両方の方法論では、1つ以上のメトリック1~Nが監視され得る。図101Aの方法論では、メトリックの各々は、それが閾値を超えるかどうか、およびいつ超えるかを決定するために追跡され、これは、上記で説明された。閾値決定ステップの出力は、次いで、組み合わせ論理を介して総計され、感度損失に関する決定が、組み合わせ論理の出力に基づいて行われる。図101Bでは、監視されるメトリクス1~Nの値が、組み合わせ論理を通して最初に処理され、次いで、組み合わせ論理の総計出力が閾値と比較されて、感度損失が起こったか否かを決定する。
追加の実施形態はまた、インテリジェント診断アルゴリズムでEISを使用することも対象とする。したがって、一実施形態では、EISデータは、センサが新しいか否か、またはそれが再使用されているか否か(患者によるセンサの再使用に関連して上記に提示された方法論に加えて)を決定するために使用され得る。後者に関して、センサが新しいか否か、再使用されているか否かを知ることは、この情報が、使用されるべき初期化シーケンスのタイプがもしある場合のその決定を助けるため、重要である。加えて、この情報は、センサの適応外使用の防止、および複数の再初期化に起因するセンサ損傷の防止を可能にする(すなわち、センサが接続解除され、次いで、再接続されるたびに、センサが新しいセンサであると考え、したがって、再接続時に再初期化しようとする)。この情報はまた、収集されたセンサデータの後処理を助ける。
センサの再使用および/または再接続に関連して、初期化前の新しいセンサのより低周波数のナイキスト勾配は、接続解除され、次いで、再び再接続されたセンサのより低周波数のナイキスト勾配とは異なる(すなわち、それよりも低い)ことが見出されている。具体的には、生体外実験は、ナイキスト勾配が、新しく挿入されたセンサのものと比較して、再使用されたセンサに関してより高いことを示している。したがって、ナイキスト勾配は、新しいセンサと使用済み(または再使用された)センサとを区別するマーカとして使用され得る。一実施形態では、閾値は、ナイキスト勾配に基づいて、特定のセンサが再使用されているか否かを決定するために使用され得る。一実施形態では、閾値は、ナイキスト勾配=3とすることができる。図102は、基準勾配=3(8030)の低周波ナイキストプロットと、新しいセンサ(初期化前)8010、新しいセンサ(初期化後)8015、再接続されたセンサ(初期化前)8020、および再接続されたセンサ(初期化後)8020のプロットと、を示す。上記のように、新しいセンサ(初期化前)8010の勾配は、基準または閾値(8030)よりも低く、再接続されたセンサ(初期化前)8020の勾配は、閾値(8030)よりも高い。
別の実施形態では、EISデータは、使用されているセンサのタイプを決定するために使用され得る。ここで、センサの設計が有意に異なる場合、それぞれのEIS出力もまた、平均して有意に異なるはずであることが発見された。異なるセンサ構成は、異なるモデルパラメータを有する。したがって、センサ寿命中の任意の時点でのこれらのパラメータの識別を使用して、現在挿入されているセンサのタイプを決定することができる。パラメータは、例えば、総体的な故障/感度損失分析に関連して上記に説明された方法に基づいて推定され得る。識別は、値を分離する一般的な方法、例えば、特定の(単一または複数の)パラメータに閾値を設定すること、機械学習(ANN、SVM)、または両方の方法の組み合わせに基づき得る。
この情報は、例えば、アルゴリズムパラメータおよび初期化シーケンスを変化させるために使用され得る。したがって、センサ寿命の開始時に、これは、較正アルゴリズム用の最適パラメータを設定するための単一の処理ユニット(GST、GSR)を有するように使用され得る。オフライン(非リアルタイム)のセンサタイプの識別は、現場でのセンサ性能の分析/評価を支援するために使用され得る。
また、より低周波数のナイキスト勾配の長さが、異なるセンサタイプ間の区別のために使用され得ることも発見された。図103A~103Cは、Enlite(8050)、Enlite2(すなわち、「Enlite強化」)(8060)、およびEnlite3(8070)として識別される3つの異なるセンサ(すなわち、異なるセンサ構成)のナイキストプロットを示し、これらの全ては、Medtronic Minimed(Northridge、CA)によって製造されている。分かるように、初期化前、初期化後、および第2の初期化後を含む様々なステージ(それぞれ、図103A~103C)について、Enliteセンサは、最短のより低周波数のナイキスト勾配長さ(8050)に続き、Enlite2(8060)、最長の長さを有するEnlite3(8070)を有する。第2の初期化後はまた、0.105HzでのEISと1HzでのEISとの間のデカルト距離として計算されたナイキスト(勾配)長さが時間に対してプロットされている図104にも示される。
本明細書の発明の実施形態はまた、実施されるべき初期化のタイプを決定する際のガイドとして診断EIS測定を使用することも対象とする。上記のように、初期化シーケンスは、検出されたセンサタイプ(EISベースまたはその他)、および/または新しいセンサまたは古いセンサが挿入されたか否かの検出(EISベース)に基づいて変更され得る。しかしながら、加えて、EISベース診断はまた、初期化前の最小水和状態の決定(例えば、ワールブルグインピーダンスの追跡による)、または初期化をいつ停止するかの決定(例えば、Rp、Cdl、Alphaなどの反応依存性パラメータの追跡による)にも使用され得る。
より具体的には、初期化の応答時間を最小限に抑えるために、追加の診断が、初期化中に起こるプロセスを制御するために必要とされる。これに関して、EISは、必要とされる追加の診断を提供し得る。したがって、例えば、EISは、さらなるパルスが必要かどうかを決定するために、各初期化パルス間で測定され得る。代替的、または追加的に、EISは、高パルス中に測定され、センサがいつ十分に初期化されるかを決定するために最適初期化状態のEISと比較され得る。最後に、上記のように、EISは、特定のモデルパラメータ、Rp、Cdl、Alphaなどの最も可能性の高い1つ以上の反応依存性パラメータの推定に使用され得る。
上記のように、一般的なセンサ較正、特にリアルタイムセンサ較正は、堅牢な連続的グルコース監視(CGM)システムの中心である。これに関して、較正アルゴリズムは、概して、BGが指採血を用いて受容されると、新しいBG値が、エラーメッセージを発生させるか、または次にセンサグルコースを計算するために使用される較正係数を更新するかのいずれかのために使用されるように、設計される。しかしながら、いくつかの従来のアルゴリズムでは、指先が押されてから10~20分遅れる場合があり、指採血が入力された時間と、指採血が容認されたか、または新しい指採血が較正に必要とされているかのいずれかをユーザが通知された時間との間に存在し得る。これは、ユーザが数分内に再びユーザのBG計測を必要とするか否かを知らないままになるため、厄介である。
加えて、いくつかの状況では、較正バッファ内のより古いBG値の存在は、最新のBG値が100%未満の重みを担持することに起因する、知覚されるシステム遅延、または計算されたSGの不正確さ(より古いBG値がシステムの現在の状態をもはや表さないことに起因する)のいずれかを引き起こす。さらに、誤ったBG値が入力されることもあるが、システムによって捕捉されず、次の較正まで大幅な不正確さにつながる場合がある。
上記の観点では、本明細書の発明の実施形態は、特に閉ループシステムで使用するためのセンサ性能に関して、従来の方法論の潜在的な欠点に対処しようとする。例えば、システムをより予測可能にするために、例えば、10~15分後ではなく、指採血が送信機によって受信(すなわち、入力)されたときのみ、較正エラーが通知され得る。加えて、一定の較正エラー(CE)閾値が使用される、いくつかの既存システムとは対照的に、本明細書の特定の実施形態は、より高いエラーが予期される(例えば、センサのより低い信頼性、または高い変化率に起因して)ときに、可変較正エラー閾値を利用し得、それによって、不必要な較正エラーアラームおよび指採血要求を防止する。したがって、一態様では、センサがFDCモード、Isigディップ較正モードであるか、または高い変化率下にあるとき(例えば、2パケットの変化率×CF>1.5mg/dL/minであるとき)、50%または50mg/dLに対応する限界が使用され得る。
一方で、低エラーが予期されるとき、システムは、例えば、40%または40mg/dLなどの、より厳しい較正エラー限界を使用し得る。これは、誤ったBG値が較正に使用され得る可能性を低下させ、同時に較正のステータスが直ちに発行されること(すなわち、較正が容認されたか、または較正エラー)も可能にする。さらに、より新しいIsig値が較正エラーを引き起こす状況を処理するために、較正時間(例えば、指採血後、5~10分)のチェックが、較正に使用するための最も適切なフィルタ処置されたIsig(fIsig)値を選択し得る。
BG値およびBGバッファに関する上述の問題に関連して、本明細書の発明の実施形態は、従来のアルゴリズムで割り当てられたよりも新しいBG値により高い重みを割り当てることによって、およびより早期の較正の更新がより頻繁に起こることを確保することによって、遅延、および遅延の知覚を低減することを目的とする。加えて、確認された感度変化(例えば、上述され、以下に説明されるスマート較正論理によって、および最新の較正BG/Isig比によって確認される)が存在する状況では、較正バッファが部分的に消去され得る。最後に、従来のアルゴリズムは、一定である予期される較正係数(CF)重みを用いる場合があったが、本発明の実施形態は、センサ使用期間に基づいて可変CF値を提供する。
要するに、可変較正エラー閾値が、較正試行中のエラーの予期に基づいて提供され得ると共に、追加のセンサデータに対する待機なしの較正エラーメッセージの発行、較正の低遅延(例えば、5~10分)、センサ使用期間に基づいて更新された予期される較正係数値、および必要に応じて較正バッファの部分的消去が提供され得る。具体的には、初日補償(FDC)に関連して、本明細書の発明の実施形態は、センサ性能をより迅速に補正するために、より高いCal係数閾値がトリガされたときに追加の較正を要求することを提供する。そのようなより高いCF閾値は、例えば、7~16mg/dL/nAに設定され得、後者は、いくつかの実施形態では、較正エラーの指標のための閾値として機能する。
したがって、一態様では、高いCF閾値が第1の較正後にトリガされる場合、システムは、次の較正が3時間のうちに実施されることを必要とする。しかしながら、一態様では、高いCF閾値が第2または後続の較正後にトリガされる場合、システムは、次の較正が6時間のうちに実施されることを必要とする。上記の手順は、センサ接続から12時間実装され得る。
別の態様では、較正中にCal係数を計算するために使用される、予期されるCal係数は、過小読み取りの可能性を低減するために、経時的に増加させられる。背景として、既存の方法論は、センサ感度のシフトの可能性を考慮せず、センサ寿命全体を通して固定された予期されるCal係数を使用し得る。そのような方法論では、予期されるCal係数は、最終的なCal係数を計算する際に重み付けられ、ノイズを低減するために使用され得る。
しかしながら、本明細書の発明の実施形態では、予期されるCFは、センサの使用期間の観点から表現される、時間の関数として計算される。具体的には、
式中、センサ使用期間は、日単位で表現される。さらなる実施形態では、予期されるCal係数は、既存のCFおよびインピーダンスの関数として計算され得、それにより、感度のあらゆる変化が、予期されるCFに反映され得る。加えて、本発明の態様では、予期されるCFは、較正間のCal係数を徐々に調整するように、BGエントリのみで行われるのではなく、Isigパケット毎に計算され得る。
較正バッファおよび較正エラー計算に関連して、特定の実施形態は、較正バッファ重みの修正および/または較正バッファの消去を提供する。具体的には、Cal係数が変化した可能性があることをインピーダンス測定(例えば、EISによる)が示し、かつ変化が起こったことを較正試行が示すとき、Cal比(CR)の変化が、現在のBGのCRを、較正バッファ内の最新のCRと比較することによってチェックされる。ここで、そのような変化は、関連するEIS手順に関連して上記に詳述されたように、例えば、1kHzのインピーダンスの値によって検証され得る。加えて、重みが、信頼性指標、Cal係数の変化が予期される方向、および/または較正の変化率に基づいて、較正バッファ計算に追加され得る。後者の状況では、例えば、較正が高い変化率にある場合、より低い重みが割り当てられるか、またはCFのみが一時的に更新され得る。
本明細書の発明の実施形態では、較正バッファのフィルタ処理されたIsig(fIsig)値の選択は、BGエントリ後の第2のIsigパケットで開始され得る。具体的には、較正エラーを引き起こさない過去3つのfIsig値のうちの最新の値が選択され得る。次いで、較正が容認されると、較正プロセスは、較正エラーが発行されずに進むことになる。そのような較正エラーは、無効Isig値、較正比範囲チェック、パーセントエラーチェックなどによって引き起こされ得る。
他の実施形態では、fIsigの値は、1分の解像度を導出するために補間され得る。あるいは、fIsig値は、値の変化率に基づいて(かつ遅延を考慮して)最新値から選択され得る。さらに別の代替実施形態では、fIsig値は、予測されるCR値に最も近いCRの値に基づいて選択され得る。予測されるCR値は、その結果、CFが変化しているはずであると、fIsig値、またはEISデータが示さない限り、Cal係数の現在値に最も近くなる。
上記のように、図24および34に関連して、例えば、1kHzの実インピーダンスは、センサ膜表面に存在し得る潜在的な閉塞に関する情報を提供し、閉塞は、センサ中へのグルコースの通過を一時的に阻害し、したがって、信号をディップさせ得る。より広範には、1kHzの実インピーダンス測定は、典型的には突然であるセンサイベントを検出するために使用され得、センサがもはや完全に挿入されていないことを示し得る。これに関して、図105は、一実施形態による、センサデータを空白化するか、またはセンサを停止させる方法のフローチャートを示す。
方法論は、ブロック9005で始まり、1kHzの実インピーダンス値が、例えば、移動平均フィルタを使用してフィルタ処理され、それに基づいて、EIS導出値が安定しているか否かに関する決定が行われる(9010)。EIS導出値が安定していないと決定された場合、方法論は、ブロック9015に進み、1kHzのインピーダンスの大きさに基づいて、さらなる決定が行われる。具体的には、1kHzの実インピーダンスのフィルタ処理された値とフィルタ処理されていない値の両方が7,000Ω未満である場合、EISは、安定として設定される(9020)。一方で、1kHzの実インピーダンスのフィルタ処理された値とフィルタ処理されていない値の両方が7,000Ω以上である場合、EISは、不安定として設定される(9025)。上記の7,000Ωの閾値は、安定化されていないセンサのデータ空白化またはセンサ停止を防止することに留意されたい。
EISが安定しているとき、アルゴリズムは、ブロック9030に進む。ここで、1kHzの実インピーダンスが12,000Ω未満である場合(9030)、また10,000Ω未満である場合(9040)、アルゴリズムは、センサが正常動作範囲内にあると決定し、したがって、センサデータが表示され続けることを可能にする(9045)。一方で、1kHzの実インピーダンス値が10,000Ω超である場合(すなわち、1kHzの実インピーダンスが10kΩ~12kΩであるとき)、論理は、1kHzの実インピーダンス値が過去3時間高い(すなわち、10kΩ超)であったか否かを決定する(9050)。1kHzの実インピーダンス値が過去3時間高いと決定された場合、センサが抜き取られたと仮定されるため、センサが9060で停止され、センサデータ無効を描画する。そうでない場合、センサ信号が単にドリフトしている可能性があり、これは、上述のように、回復可能な現象であり得るため、センサは、停止されない。それにもかかわらず、センサデータは、センサが回復の機会を与えられている間、空白化される(9055)。
さらなる実施形態では、データが空白化されるべきか、またはセンサが停止されるべきか否かを決定する際、論理はまた、上記の閾値に加えて、例えば、インピーダンス導関数を時系列導関数と比較することによって、インピーダンスの突然の増加も考慮し得る。さらに、アルゴリズムは、高ノイズ低センサ信号の組み合わせの持続時間に依存して、ノイズベースの空白化または停止を組み込み得る。これに関して、従来の方法論は、高ノイズおよび低センサ信号の3つの連続する2時間の窓の後のセンサの停止を含んでいた。しかしながら、信頼性の低いデータがユーザに表示されることを防止するために、本明細書の実施形態は、ノイズベースの空白化を採用し、アルゴリズムは、高ノイズおよび低信号を伴う2つの連続する2時間の窓の後(すなわち、第3の連続する窓の開始時)にSG値の計算を停止する。さらなる態様では、アルゴリズムは、2時間ではなく、1時間の空白化の後に計算されたSG値のさらなる計算および表示を可能にし得、センサ信号は、回復したように見える。これは、別様に信頼性の高いデータをより長期間空白化する方法論に対する改善である。
1kHzの実インピーダンスが突然のセンサ故障を検出するために使用され得るのに対し、より高い周波数(例えば、8kHz)での虚インピーダンスの測定は、センサ感度がその典型的な感度から有意にドリフトしている、より緩やかな変化を検出するために使用され得る。これに関して、8kHzの虚インピーダンスの大きいシフトは、典型的には、センサがグルコース感度の大きい変化を経験したか、またはもはや安定していないことを意味することが発見された。
図106は、本明細書の発明の実施形態による、センサ停止方法のフロー図を示す。図106に示されるように、アルゴリズムは、1.5日目(センサの開始から)に基準を用い、そうすることで、より堅牢な論理を提供し、論理が長期的な感度変化に焦点を合わせることを確保する。したがって、センサが少なくとも1.5日間動作していない場合(9002)、措置が講じられず、アルゴリズムは、「待機」(9012)、すなわち、ステップ9002に周期的にループして戻る。ブロック9002で条件が満たされると、基準虚インピーダンス値が設定されているか否かに関する決定が行われる(9022)。基準値が事前設定されていない場合、アルゴリズムは、センサの初期化以降の最小の8kHzの虚インピーダンス値を基準値として割り当てることによって基準値を設定し(9032)、基準値は、-1,000Ω~800Ωの範囲内でクリップされる。基準値が設定されると、変化値が、基準値と8kHzの虚インピーダンスの現在値との間の差の絶対値として計算される(9052)。ブロック9062では、アルゴリズムは、2つの連続する測定に対する変化値が1,200Ω超であるか否か、および較正比が14よりも大きいか否かを決定する。ブロック9062の質問のうちの少なくとも1つが否定で回答された場合、センサは、動作を継続し、SG値を表示することを可能にされる(9072)。しかしながら、2つの連続する測定に対する変化値が1,200Ω超であり、かつ較正比が14よりも大きい場合、センサは、ブロック9082で停止される。
本明細書の発明の実施形態はまた、閉ループシステムのものを含む、ユーザおよび自動インスリン送達システムに、SGがユーザに表示されるときにシステムがどの程度信頼できるかのインジケータを提供するために、センサグルコース値の信頼性の評価、ならびにセンサデータエラー方向の推定も対象とする。センサデータの信頼性に依存して、そのような自動化システムは、次いで、対応する重みをSGに割り当て、どの程度積極的な処置がユーザに提供されるべきかの決定を行うことができる。加えて、エラーの方向はまた、SGが「偽の低」または「偽の高」の値であることと関連して、ユーザおよび/またはインスリン送達システムに通知するためにも使用され得る。上記は、例えば、初日の間のセンサデータのディップの検出(EISディップ検出)、センサラグの検出、およびより低周波数(例えば、10Hz)のインピーダンス変化によって達成され得る。
具体的には、一実施形態によると、約9mg/dL/nAを上回るCal係数(CF)は、低いセンサ信頼性、したがって、より高いエラーの予測子であり得る。したがって、この範囲外のCF値は、概して、異常グルコース感度、信号のディップ中に起こった較正、BG情報の入力の遅延、または較正時の高い変化率、較正時のBGエラー、グルコース感度の過渡変化を伴うセンサ、のうちの1つ以上を示し得る。
図107は、本発明の実施形態による信号ディップ検出方法論のフロー図を示し、フィルタ処理されていない1kHzの実インピーダンスの増加は、ディップの開始を識別するために、低Isig値と組み合わせて使用され得る。図に示されるように、ブロック9102では、論理は、センサのデータが信号ディップに起因して現在空白化されているか否かを決定する。データが空白化されていない場合、論理は、センサの開始から4時間未満であるか否かを決定する(9104)。センサの開始から4時間超経過した場合、論理は、センサの開始から12時間超経過したか否かを決定し(9106)、この場合、ディップ検出またはデータの空白化(9108)が存在しないことになる。したがって、これに関して、方法論は、センサデータの最初の12時間の過渡ディップを識別することを対象とする。
ブロック9106に戻ると、センサの開始から12時間未満である場合、最新のEIS、Isig、およびSG値に関して質問が行われる。具体的には、ブロック9110では、2つの最新の実インピーダンス値(1kHzでの)が増加しており、Isig<18nA、かつSG<80mg/dLである場合、アルゴリズムは、ディップの開始が検出されたと決定し、SG値の表示を停止するようにシステムに通知する(9112)。一方で、上記の条件の全てが満たされていない場合、ディップ検出またはデータ空白化は、存在しないことになる(9108)。
ブロック9104で、センサの開始から4時間未満であると決定されたとき、センサディップイベントが依然として発生し得る。具体的には、2つの最新のEIS(すなわち、1kHzのインピーダンス)が増加しており、かつIsig<25nAである場合、アルゴリズムは、ディップの開始が検出されたと決定し、SG値の表示を停止するようにシステムに通知する(9114、9116)。しかしながら、2つの最新の1kHzのインピーダンス値が増加していないか、またはIsigが25nA以上である場合、上記と同様に、ディップ検出またはデータ空白化は、存在しないことになる(9108)。
ブロック9102に戻ると、データがディップに起因して現在空白化されていると決定された場合、それにもかかわらずデータが示される可能性が依然としてある。つまり、Isigがディップイベントの開始時のIsigの約1.2倍超である場合(9118)、Isigが回復した、すなわち、ディップイベントが終了したと決定され、データ表示が再開することになる(9122)。一方で、Isigがディップイベントの開始時のIsigの約1.2倍以下である場合(9118)、Isigがまだ回復していない、すなわち、ディップイベントが終了していないと決定され、システムは、センサデータの空白化を続けることになる(9120)。
本明細書の発明の実施形態によると、SGのエラーの方向(過小読み取りまたは過大読み取り)は、概して、過小および/または過大読み取りに関する1つ以上の因子を考慮することによって決定され得る。したがって、過小読み取りは、(1)Vcntrが極端であるとき(例えば、Vcntr<-1.0V)、(2)CFが高いとき(例えば、CF>9)、(3)より低周波数のインピーダンス(例えば、10Hzでの)が高いとき(例えば、10Hzの実インピーダンス>10.2kΩ)、(4)FDCが低CFモードであるとき、(5)センサラグが過小読み取りを示唆するとき、(6)より低周波数のインピーダンス(例えば、10Hzでの)が増加するとき(例えば、10Hzのインピーダンスが700Ωを超えて増加するとき)、および/または(7)EISがディップを検出したときに、起こり得ることが発見された。一方で、過大読み取りは、(1)より低周波数のインピーダンス(例えば10Hz)が減少するとき(例えば、より低周波数のインピーダンス<-200Ω)、(2)センサラグが過大読み取りを示唆するとき、および/または(3)CFが極端なモードにあるときのFDCのときに、起こり得る。
特に閉ループシステムでのそのような過小読み取りまたは過大読み取りは、患者の安全に対する重大な影響を有し得る。例えば、低血糖範囲(すなわち、<70mg/dL)の近くでの過大読み取りは、過剰量のインスリンを患者に投与させ得る。これに関して、テスト基準として使用され得る、エラー方向のいくつかのインジケータが識別されており、インジケータは、(1)低感度インジケータ、(2)センサラグ、(3)FDCモード、(4)較正以降の感度の損失/ゲインを含む。
2つのそのような低感度インジケータは、高い(より低周波数の)実インピーダンス(例えば、>10kΩ)および高Vcntr(例えば、Vcntr<-1.0V)であり、両方が、一般に、感度損失を示す。図108Aは、Vcntr9130が時間の関数として徐々に増加する(すなわち、より負になる)一例を示す。線9135によって示される約115時間では、Vcntrは、線9137で示されるように、-1.0Vを超え、約-1.2Vまで増加し続ける(すなわち、Vcntr<-1.0V)。示されるように、約115時間の前に、Isig傾向9132は、概して、Vcntr傾向に追従する。しかしながら、Vcntrが閾値を超えると(すなわち、線9135の右側)、Isigは、Vcntrから逸脱して、低下し続ける。同時に、図108Bに示されるように、グルコース9134もまた、概して、下降傾向を有し、較正エラー9136が約130時間および約165時間に示されている。
上述のように、(EIS)センサディップもまた一時的な感度損失を示している。同様に、高いCal係数は、低下した感度を補償しようとするセンサの試行を示す。図109Aおよび109Bに示される一例では、Cal係数9140は、時間の関数として着実に増加する。約120時間(9145)では、Cal係数9140は、閾値9(9147)を超える。図109Bに示されるように、Cal係数が閾値を超えると、グルコース値9142は、BG値からのより頻繁な逸脱を示し、いくつかのエラー9144が約135時間~170時間に起こる。
上述のように、センサラグは、エラー方向を示す別のインジケータである。したがって、本明細書の発明の一実施形態では、センサラグによって引き起こされるエラーは、グルコース値がとる値に近似することによって補償される。具体的には、一実施形態では、センサラグからのエラーは、以下を定義することによって近似され得る。
式中、sg(t)は、センサグルコース関数であり、「h」は、センサラグである。エラーは、次いで、次のように計算され得る。
または
初日較正(FDC)は、Cal係数(CF)が予期される範囲内にないときに起こる。CFは、較正によって示される値に設定され、次いで、例えば、図110Aおよび110Bに示されるように、予期される範囲まで上下する。この間、通常高いが、概して予測可能なエラーが存在し、潜在的な過大読み取りまたは過小読み取りを結果としてもたらし得る。図110Aおよび110Bから分かるように、CFは、上昇または下降するときに略一定の勾配で変化し、次いで、この場合、4.5または5.5に落ち着く。
最後に、較正後の感度変化、すなわち、較正以降の感度の損失/ゲインもまた、エラー/エラー方向のインジケータである。正常な状況下で、上述されたように初日の較正を除いて、Cal係数は、概して、新しい較正が実施されるまで一定のままである。したがって、較正後の感度の変化は、読み取り値の過少と読み取り不足を引き起こす可能性があり、その結果、低周波数(例えば、10Hz)の実インピーダンスの値によって反映される可能性がある。
具体的には、より低い周波数の実インピーダンスの低下が過大読み取りを引き起こし、エラーの方向が実インピーダンス曲線によって示されることが発見された。反対に、より低周波数の実インピーダンスの増加は、過小読み取りを引き起こし、エラーの方向はまた、実インピーダンス曲線によって示される。しかしながら、現在の方向性テストは、グルコースプロファイルのピークおよび谷の点を容易に解読することができない場合がある。したがって、一実施形態では、そのようなピークおよび谷の鋭さの程度は、例えば、ローパスフィルタ処理を用いた逆畳み込みなどのフィルタ処理によって低減され得る。
図81に関連して上記に説明されたように、例えば、感度の変化および/または損失は、適切なセンサ較正を通知するために使用され得る。これに関して、本明細書の本発明のさらなる態様では、センサ感度の変化は、前の較正係数またはインピーダンスに基づいて予測され得、それにより「スマート較正」の実装を可能にし、これは、例えば、センサ感度が変化したときに不正確なグルコースデータの継続的な発生および/または表示の対処を助ける。
いくつかの既存の連続的グルコース監視システム(CGMS)では、較正指採血が12時間毎に必要とされることが知られている。較正は、CGMSが、測定されたセンサ電流を表示されるグルコース濃度値に変換するために使用される関数を更新することを可能にする。そのようなシステムでは、12時間の較正間隔は、ユーザ負担の軽減(指採血が多過ぎることの)と、不正確さが大き過ぎる問題を引き起こし得る前に、センサ感度の変化を調整するのに十分な間隔を使用することとの間のバランスとして選択される。しかしながら、この間隔は、一般的に適切であり得るが、センサ感度が変更された場合、高レベルの精度(閉ループインスリン送達を支援する)が期待される場合、12時間は、長過ぎて待つことができない可能性がある。
したがって、本明細書の発明の実施形態は、感度が変化したか否かを予測するために、以前の較正係数(以下のFDCの議論を参照されたい)またはインピーダンス(以下のEISベース「スマート較正」の議論を参照されたい)を使用して上記の問題に対処する。様々な実施形態はまた、ユーザに対する予測可能性を維持するために時間制限を使用すると共に、検出がセンサ間の変動に対して堅牢であることを確保するためのステップ(関連する方法論の)を含む。
図111は、初日較正(FDC)の実施形態によるフロー図を示す。ブロック9150で開始し、正常な較正後にFDCがオンでない場合、スマート較正要求は、単純に存在しない(9151)。しかしながら、FDCがオンである場合、これが第1の較正であるか否かの決定がブロック9153で行われ、そうでない場合、タイマーが6時間に設定された状態でスマート較正要求が行われ、すなわち、追加の較正が6時間内に行われることが要求される(9155)。一方で、これが第1の較正である場合、ブロック9157は、較正比が4未満であるか、または7超であるか否かを決定する。ブロック9157の条件が満たされない場合、論理は、ブロック9155に進み、上記のように、タイマーが6時間に設定された状態でスマート較正要求が行われる。しかしながら、ブロック9157の基準が満たされない場合、タイマーが3時間に設定された状態でスマート較正要求が行われ、すなわち、追加の較正が3時間内に行われることが要求される(9159)。したがって、調整された較正を必要とするセンサの精度を改善するために、追加の(スマート)較正が要求され、その結果、調整が不正確である時間量を制限する。
FDCモードとは対照的に、EISベーススマート較正モードは、インピーダンスが変化した場合に追加の較正を提供する。したがって、図112に示される一実施形態では、インピーダンス値(および以下に定義される)に関する許容範囲が、較正後の1時間に設定され、較正に続いて、インピーダンスが範囲外である場合、追加の較正の要求が行われる。したがって、較正から1時間以内でない場合、フィルタ処理された1 kHzの虚インピーダンス値が範囲外にあるか否かの決定が行われる(9160、9162)。インピーダンス値が範囲外でない場合、変化が起こらない(9164)。しかしながら、フィルタ処理された1kHzの虚インピーダンス値が範囲外にある場合、較正タイマーが更新され、その結果、前の較正から6時間で較正が実施されるように要求される(9168)。より高い周波数の虚インピーダンスは、グルコース感度の変化をより良好に識別する傾向があるが、周波数スペクトルの上限に向かって、測定は、概して、よりノイズが多くなり、したがって、フィルタ処理を必要とし得ることに留意されたい。
ブロック9160に戻ると、較正から1時間未満であると決定された場合、インピーダンス値の範囲が更新され得る(9166)。具体的には、一実施形態では、インピーダンス範囲計算は、較正の1時間後に最後のEIS測定で実施される。好ましい実施形態では、範囲は、次のように定義される。
範囲=3×中央値(|xi-xj|)
式中、jは、現在の測定値、iは、最新の2時間の値である。加えて、範囲は、50Ω~100Ωの値に制限され得る。上記で定義された範囲は、中央値の3倍を許容することに留意されたい。後者は、ノイズおよび外れ値が矛盾を引き起こすことを許容した、いくつかの従来のアルゴリズムで使用される2標準偏差手法よりも堅牢であることが発見されている。
連続的グルコース監視(CGM)のための本発明の実施形態はまた、対象のセンサの実際の設計とは無関係に、センサ較正のためにカルマンフィルタを使用することも対象とする。上記のように、センサ較正は、概して、基準血中グルコース(BG)、関連Isig、およびオフセット値に基づくCal係数(CF)の決定を伴う。BGおよびIsigは、一方、ノイズを含む可能性があるが、オフセットは、センサ(設計)固有であり得、それにより、Cal係数もまた、センサ固有である。しかしながら、アンセンテッドカルマンフィルタを利用することによって、センサが線形である限り、センサ固有ではない、基礎をなす較正方法論が開発され得ることが発見された。したがって、単一の較正方法論(および関連システム)は、特定のセンサ毎に較正係数および/またはオフセット値を再計算する必要なく、かつノイズを補償するために(別個に)フィルタ処理機構を設計する必要なく、様々なセンサを較正するために使用され得る。このようにして、Cal係数およびオフセットの両方は、較正アルゴリズムが別様に動作するコードベースを変化させる必要なく、経時的に変化することを可能にされ得る。
これに関して、新しいグルコースセンサが開発されるたびに、較正に使用される方法/アルゴリズムを再評価および再生成する必要性があることが知られている。そのような再評価の一部として、前提および定数が、新しいセンサ設計毎に再定義されなければならない。加えて、較正方法論の数学は、概して、ヒューリスティックに(および手動で)再検討される。しかしながら、以下に詳細に説明されるように、アンセンテッドカルマンフィルタの使用は、センサが線形であることが唯一の前提である、較正方法論を提供する(非線形を含む他の関係もまた、本発明の変形例によって適応され得るが)。これは、その結果、発明された方法論が新しい線形センサに適用され得、それによって、新しいセンサの開発時間を有意に短縮するため、有意な利点を提供する。
IsigとBGとの間の関係が、概して、線形であると仮定される既存の方法論では、較正係数(単一の作用電極WE用)は、次のように計算され得る。
CF=BG/(Isig+オフセット)
典型的には、基準BGおよびIsigにノイズがあると考慮すると、いくつかのフィルタ処理が適用されて、数個のBGが経時的に平均化され得る、および/またはBGレベルの複雑な関数を使用して、それによって、より堅牢な較正を提供する。センサグルコース値(SG)は、次いで、次のように計算される。
SG=CF×(Isig+オフセット)
より具体的には、上記のように、周期的センサ測定(SG)は、以下の関係によって表され得る。
SG=CF(Isig+オフセット)+εs
式中、「Isig」は、センサの物理的出力(nA単位の電流)を示し、「CF」は、グルコースレベルを測定された出力に関連付ける較正係数を表す。較正係数は、精密には未知であり、経時的に変化し、したがって、リアルタイムで推定および補償される。センサバイアスは、時変変数である「オフセット」によって表され、ランダムセンサエラーは、
εsによって表される。ランダムセンサエラーは、完全にランダムであるため、推定することができない。
血中グルコース(BG)レベルは、指採血を使用して、例えば、メータを介して測定される。一般的なBG測定は、ランダムエラー(εB)によってSGとは異なり、すなわち、次のとおりである。
センサグルコース測定値(SG)と物理的出力(Isig)との間にも1次遅れが存在する。したがって、
式中、τは、SGとIsigとの間の動的な関係を定義する時定数である。上記の関係では、τは、精密には未知であり、患者、センサ場所、時間、および/または他の変数によって変化し得る。時定数が一定(例えば、1/6h=10分)であると仮定すると、動的変数が確立され得、これは、不確実なパラメータとして扱われ得、次いで、カルマンフィルタを使用して推定および補償される。
一般的に言うと、カルマンフィルタは、ノイズを含有する一連の測定値を使用し、未知の変数の統計的に最適な推定値を生成する最適な推定器である。これは、再帰的であり、そのため、新しい測定値は、推定を更新するために到着すると、処理され得る。カルマンフィルタは、一般に、評価されているシステムの状態を説明する基礎をなす方程式の線形化または離散化を必要とするが、アンセンテッドカルマンフィルタは、測定方程式の任意のそのような非線形性を直接扱う。
非線形動的プロセスモデル
上述された推定に使用され得る3つの変数は、センサグルコース(SG)、較正係数(CF)、およびオフセットである。測定値は、血中グルコース(BG)であり、これは、上記のように、センサ電流(Isig)に関連する。上述の変数に基づいて、次の状態が定義され得る。
x1=SG
x2=CF
x3=オフセット
U=Isig
次いで、BG、SG、CF、および1次遅れに関連する前の方程式を使用して、以下が導出される。
式中、α=0.995、τ=1/6h=10分、u(t)=Isigである。本明細書および説明で上記に記載されたように、センサ応答は、典型的には、センサ寿命の開始(例えば、初日)で、センサの残りの寿命とは異なる。したがって、本分析では、開始時のセンサ応答がその残りの寿命とは異なることも前提とする。したがって、上記の関係では、Tdは、初日に関して定義される。
上記の状態変数定義を使用すると、指採血を使用するBGの推定であるSG測定値は、次のようになる。
式中、z=BG、u(t)は、BG測定後の第1のIsig測定値である。センサグルコースは、血中グルコースの推定値、すなわち、
である。BG測定がサンプリングされた形態で提供されるため、上記の方程式で離散時間測定を実装するための離散化は、必要とされない。
アンセンテッドカルマンフィルタを連続的グルコース監視に適用するために、上記の
およびz(t)の方程式は、非線形形態で提示されなければならず、すなわち、次のとおりである。
式中、uは、入力、wは、状態ノイズ、zは、測定ベクトル、vは、測定ノイズである。vおよびwの両方が無相関ゼロ平均ガウス白色ノイズ系列であると仮定されているが、それらは、データから取得され得る統計に依存して修正され得ることに留意されたい。カルマンフィルタおよび拡張カルマンフィルタとは異なり、アンセンテッドカルマンフィルタは、方程式の線形化または離散化を必要としない。むしろ、それは、真の非線形モデルを使用し、状態確率変数の分布を近似する。したがって、目標は、依然としてCal係数を算出することであるが、z(t)の算出の複雑さは、本明細書に説明される基礎をなすモデルおよび方法論に含有される。言い換えると、グルコースセンサ較正および動作の文脈中、較正は、アンセンテッドカルマンフィルタ処理フレームワークを通して実施される。これに関して、上記のように、(アンセンテッド)カルマンフィルタは、BG(すなわち、測定ノイズv)およびIsig(すなわち、状態ノイズw)の両方のノイズ分布の存在を仮定することによって、かつそのようなノイズをアルゴリズムで暗黙的に補償することによって、較正のノイズに対する堅牢性を含む。したがって、アンセンテッドカルマンフィルタは、経時的な変化を考慮する、Cal係数およびオフセットの両方を推定するリアルタイム較正を可能にする。
初期条件および共分散行列
上記のフレームワークについて、状態ベクトルの初期化および共分散は、次のように与えられる。
以下に示されるプロセスノイズ共分散行列、Qの対角要素は、測定間に累積する各状態の認識の不確実性を表す分散である。
これらの値は、測定時間、tにわたってスケーリングされたときの、これらのプロセスの予測不可能な変動の観察に基づくべきである。測定エラーの分散、Rは、二乗されたBG測定値の3%に等しい。したがって、
上記の構造および方法論によると、BG測定は、アンセンテッドカルマンフィルタを通して実行され、較正係数が推定される。較正係数は、次いで、上述のように、IsigをSGに変換するために使用される。
図113は、単一の作用電極の既存の較正プロセスのブロック図を示す。作用電極からのIsig(WE Isig)を使用して、例えば、単一のWEに対する数個のIsig値のフィルタ処理、平均化、および/または重み付けを含み得る、前処理ステップ9210が最初に実施されて、単一の最適化されたIsig値を発生させる。最適化されたIsig値は、次いで、較正係数CFを計算するために、オフセット、および、例えば、指採血計測定値などの較正BG9230を使用して較正され(9220)、較正係数CFは、次いで、センサグルコース値SGを計算するために使用される。次いで、後処理9240がSGに対して実施されて、より堅牢かつ信頼性の高いセンサグルコース値SGを発生させる。
図114は、カルマンフィルタを使用して単一の作用電極センサを較正するためのブロック図を示す。上記のように、作用電極からのIsig(WE Isig)は、前処理ステップ9212への入力であり、複数のIsig値が、例えば、フィルタ処理、平均化、および/または重み付けされて、単一の最適化されたIsig値を発生させる。次いで、較正BG9232が、ステップ9222でCFおよびSGを計算するために使用される。しかしながら、ここで、ステップ9222は、アンセンテッドカルマンフィルタを使用して実行され、その結果、実際の較正係数および結果的としてのセンサグルコース値の計算は、上記の方法論および関係を使用して、カルマンフィルタを通して実行される。ステップ9242では、計算されたSGが、後処理を施されて、より堅牢かつ信頼性の高いセンサグルコース値SGを発生させる。図115に示される代替的な実施形態では、カルマンフィルタが、較正およびSG計算に加えて前処理機能を実施するために使用され得る(9217)。
多電極システムおよび融合
さらなる実施形態では、カルマンフィルタが、多電極システムを較正するために使用され得る。具体的には、図116に示されるように、N個の作用電極を有するシステムは、上記のように、前処理9214、9216、9218を実施された各電極からのそれぞれのIsigを有し得る。ブロック9224、9226、9228に示されるように、各作用電極からの処理されたIsigは、次いで、較正され得、それぞれのSGが、アンセンテッドカルマンフィルタおよび較正BG9234を使用して、計算される。次いで、N個の作用電極の各々からのそれぞれのSGは、ブロック9244で融合および後処理され得、最終的な融合されたSGを結果的にもたらす。
上記の説明では、カルマンフィルタは、較正ステップのみ適用されるが、代替的な実施形態では、カルマンフィルタは、前処理ステップ9214、9216、9218、較正およびSG計算ステップ9224、9226、9228、ならびに/またはSG融合および/もしくは後処理ステップ9244のうちの1つ以上で使用されてもよい。加えて、図117に示されるように、単一のカルマンフィルタは、例えば、全ての電極を同じカルマンフィルタ状態空間方程式に含めることによって、全ての作用電極を一緒に較正するために使用され得る。さらに、融合ステップは、一般化されたMillman式、ならびに/または複数のIsigもしくは複数のSG値の融合(例えば、個々のIsigおよび/もしくはSG値の重み付けを含む)と関連して本明細書に上述された融合アルゴリズムのうちの1つを使用することによって実行され得る。したがって、アンセンテッドカルマンフィルタは、多電極システムでSG(またはIsig)融合を最適化するために、例えば、EISデータと併せて使用され得る。
融合方法論の一部として、上記の後処理ステップが、予測構成要素を含み得、それによって、血中グルコースと間質グルコースとの間の生理学的遅延が考慮され得ることに留意することもまた、重要である。ここで、センサグルコースSGの過去の値が、SGの(将来の)値を予測するために使用され、各時間ステップで適用されるべき予測量は、システムのノイズのレベルに依存する。図118は、一方では現在の融合アルゴリズム(「4Dアルゴリズム」)、他方ではアンセンテッドカルマンフィルタを、様々なセンサデータセットに適用した結果を比較する表である。図118に示されるように、各事例において、カルマンフィルタの適用は、平均絶対相対差異(MARD)の顕著な改善を提供し、同時に、データセットが収集されたセンサ間に有意な設計の差異があるにもかかわらず、単一のカルマンフィルタモデルがデータセットの全てにわたって適用されることを可能にしている。したがって、例えば、オーストラリアのデータセットへの4Dアルゴリズムの適用は、9.72の融合MARDを結果的にもたらしたが、同じデータセットに対するアンセンテッドカルマンフィルタの使用は、9.66のMARDを提供した。
図33~35および116に関連して上述されたように、融合アルゴリズムは、より信頼性の高いセンサグルコース値を発生させるために使用され得る。具体的には、融合アルゴリズムは、独立センサグルコース値を融合して、単一の最適なグルコース値をユーザに提供する。最適な性能は、一方、精度、データ利用可能性の持続時間および速度、ならびにユーザに負担を掛け得る故障状態の最小化によって定義され得る。上記と同様、以下の議論は、冗長電極としての第1の作用電極(WE1)および第2の作用電極(WE2)に関して融合アルゴリズムの態様を説明し得るが、これは、例示によるものであり、限定ではなく、本明細書に説明されるアルゴリズムおよびその基本原理は、2つ以上の作用電極を有する冗長センサシステムに適用可能であり、そのシステムで使用され得る。加えて、そのような冗長性は、単純、疑似直交、または直交であり得る。
本明細書の発明の実施形態では、SG融合アルゴリズムは、例えば、電気化学的インピーダンス分光法(EIS)、ノイズ、および較正などのいくつかの入力によって駆動される。これらの入力は、アルゴリズムが独立電極センサグルコース値をどのように組み合わせて最終的な融合されたセンサグルコース値、ならびに較正、データ表示、およびユーザプロンプトを統制する論理を提供するかを指示する。具体的には、融合アルゴリズムは、個々のセンサのグルコース値(すなわち、作用電極の各々からのグルコース値)毎に重みを計算する。重みの合計は、総計1でなければならない。言い換えると、融合グルコース値は、次の関係によって定義されるように、個々のセンサのグルコース値の加重平均である。
式中、所与の時間で、FGは、融合グルコース、SGkは、k番目の作用電極のセンサグルコース値、FWkは、N個の作用電極を有するシステムのk番目のSG値に割り当てられる最終的な融合重みである。
以下にさらに調査されることになる重みは、ノイズ、EISベースセンサ膜抵抗(Rmem)、および較正係数(Cal係数、またはCF)を含む、一連の融合入力の変換を介して導出される。上述されているように、ノイズおよびRmemは、内因性入力であり、ユーザからのいかなる明示的な入力もなしでセンサによって駆動される。これに関して、融合アルゴリズムは、概して、より低ノイズ、より低い膜抵抗を有する電極が有利である。一方で、Cal係数は、較正血中グルコース値と生のセンサ電流値(Isig)との間の比率であり、したがって、ユーザ入力から導出される。ここで、融合アルゴリズムは、最適として定義された範囲内に収まる較正係数を有する電極が有利である。ノイズ、Rmem、およびCal係数に関してこのように定義された「有利な電極」によると、融合アルゴリズムは、次いで、最終的な融合されたグルコース計算で、より有利な電極をより重く重み付けする。図119に示されるように、各タイプの入力は、ランク付け様態で重みを分散する一組の値を計算し、各タイプの重みは、最終的な生の融合重みを計算するために組み合わせられる。
融合入力は、一連の関数を介して変換されて、一組の重みを生成する。ratioScore関数は、所与の入力(例えば、ノイズ)に対する電極の集合にわたる生の融合重みを計算し、一実施形態では、次のように表現され得る。
この関数または方程式は、より低い値がより良好な性能(例えば、ノイズおよび膜抵抗)を示す入力に適切であり、したがって、より大きい融合重みを受容することになる。したがって、例えば、所与の時間での全ての電極からのノイズは、ratioScore関数に渡され、この関数が、各電極に、全ての電極にわたるノイズの合計に対するそのノイズ量に反比例するスコア(重みまたは比率とも呼ばれる)を割り当てる。上記の方程式では、したがって、作用電極kについての所与の時間での生のノイズ融合重み(比率)(rk)は、N>1個の作用電極を有するシステムについての作用電極k(εk)上のノイズの関数として表現される。
特に、上記のratioScore関数の第1の引数は、全ての作用電極にわたるrkの合計が総計1になるように、括弧内の値を正規化する。括弧内の第2の引数は、全ての作用電極にわたるノイズ値の合計に対する個々のk番目の作用電極のノイズの比率である(シグマ演算子)。比率は、次いで、低ノイズの電極が高い値を受容するように、1から減算される。
上記のように、上記の方程式は、より低い値がより良好な性能を示す入力に適用する。より大きい値がより良好な性能を示す入力について、より単純な方程式が、生の融合重みを計算する。具体的には、次のratioScore関数が、全ての作用電極にわたる合計によって所与のメトリックδを単純に正規化するために使用される。
上記の方程式では、作用電極Kに対する入力は、N>1個の作用電極を有するシステムについてδkによって与えられる。
上記の2つの方程式のうちの1つを使用して計算された、生の融合重みスコア(または比率)は、次いで、ratioGain関数に渡され、この関数は、事前定義されたパラメータに基づいて相対スコアを重点化または非重点化する。生のratioScore値は、ランク付けに関して適切な重み付けを提供するが、必ずしも最適な方式で重みを分散するとは限らない。したがって、「ゲイン係数」パラメータに基づいて重量比の分布を重点化または非重点化する方程式が定義される。したがって、本発明の一実施形態では、得られた比率の重み、gは、次のように定義される。
式中、rは、生の融合重量比、mは、N>1個の作用電極を有するシステムの「ゲイン係数」パラメータaである。出力gは、次いで、範囲[0,1]に飽和され得、それにより、出力が1よりも大きい場合、出力が1に設定され、出力がゼロ未満である場合、出力が0に設定される。これに関して、本発明の実施形態と併せて使用され得る飽和関数は、次のように定義され得る。
本発明の実施形態では、シグモイドまたは別様の滑らかな関数もまた、上記と同様の結果を達成し得ることに留意されたい。
最後に、値がmakeSumOne関数によって処理されて、合計が総計1になることを確保し、必要に応じて正規化する。したがって、個々の値を全ての値の合計で除算すると、相対比率が得られ、makeSumOne関数が、次のように定義される。
図式的には、上述のアルゴリズムは、次のように、ノイズ、およびRmem重みに対してそれぞれ示され得る。
上図から分かるように、全ての個々のノイズ重みからの一組のノイズ重みの計算は、全ての個々のRmem入力からの一組のRmem重みを算出するためのアルゴリズムと同じ一般的なアルゴリズムに従う。
本発明の実施形態では、Cal係数重み付けは、同様の様態で計算されるが、以下に示されるように、calFactorTransform関数を伴う追加のステップを含む。
所与の時間における全ての電極からの較正係数値は、calFactorTransform関数に最初に渡される。具体的には、較正係数は、正規化された対数正規曲線の次の関数を介してスコアに変換される。
式中、xは、生の(入力)較正係数、f(x)は、変換された(出力)Cal係数、パラメータσおよびμは、それぞれ、対数正規曲線の幅およびピークを説明する。
次に、結果は、範囲[0.001、クリップ]に飽和され、パラメータクリップよりも大きい全ての変換されたスコアが、等しいスコアを割り当てられることになる。
ここで、スコアが高いほど重みが大きくなるため、上記の2つのratioScore関数の第2の関数(すなわち、
)が使用される。示されるように、残りのアルゴリズムは、上記のノイズおよびRmemの手順に従う。
図119に戻ると、図119のフロー図は、各一組の重みが、最終的な生の融合重みを計算するためにどのように組み合わされるかを示す。具体的には、生の融合重みは、ノイズ(9302)およびCal係数(9304)の重みをnoiseBalanceパラメータ(9308)によって重み付けて平均化することによって計算される。次いで、ノイズおよびCal係数重みの組み合わせが、RmemBalance変数(9310)によってRmem重み(9306)によって重み付けされ、平均化される。上記の目的のために、パラメータnoiseBalance(9308)は、ノイズ(9302)と較正係数(9304)の重みとの間のバランスを指定するように事前定義される。本発明の好ましい実施形態では、noiseBalanceは、0.524の値を有する定数であり得る。
加えて、変数RmemBalance(9310)は、次のように決定される(図120に関連して以下の説明も参照されたい)。センサ始動した時間から、事前定義された持続時間後、RmemBalanceは、ゼロに設定される。言い換えると、センサ始動から事前定義された時間の後、rawFusionWeight(9318)は、Rmemからのゼロの寄与を受容する。一方で、事前定義された時間の前、すなわち、センサ始動から事前定義された持続時間まで、RmemBalance(9310)は、以下に示され説明されるように計算される。
最初に、全ての電極にわたる最小値および最大値のRmem_Weightsが選択される。次いで、最小値が、最大値から減算され、1に加算され、その総計が2で除算され、この演算は、重みの分散を近似する。この値は、次いで、TukeyWindow関数(以下に説明される)に渡され、その出力は、最終的に1から減算される。これらのステップの目的は、Rmem値の間のより大きい変動が存在するときにRmem重みが融合重みにより重点を置くようにRmemBalance(9310)を計算することである。
TukeyPlusは、フラットトップテーパーコサイン(Tukey)窓を定義し、パラメータrは、間隔[0,1]にわたるテーパーの比率を定義する。公称tukeyWindow関数が以下に説明される。修正が、2π引数の前に追加の「周波数」パラメータを導入するか、または区分関数全体を指数化するかのいずれかによって、テーパー比率を増加させるように実装され得る。
上記を念頭に置いて、ここで、本明細書の発明の実施形態によるSG融合アルゴリズムの詳細な説明が提供される。図120は、個々のセンサ(すなわち、個々の作用電極)について計算された、それぞれのセンサグルコース値(SG)を入力(9350)として用いる、融合アルゴリズムの一般的概要を示す。繰り返しになるが、限定ではなく例示として、図120は、2つの作用電極を参照して融合プロセスを説明し、2つの作用電極の各々が、それぞれのSG(すなわち、SG1およびSG2)を発生させる。しかしながら、アルゴリズムは、より多数の作用電極に適用され得る。
ブロック9352では、SGのいずれかが無効であるか否かに関する決定が行われる。両方のSGが無効であると決定された場合(9354)、全体の融合は、「無効」に設定される(9356)。しかしながら、SGの1つのみが無効である場合(9358)、他方の(有効)SGが融合SGとして設定される(9360、9362)。一方で、全てのSGが有効である場合、プロセス9370の次のステップは、「FUSION_START_TIME_SWITCH」に達したか否かを決定する。図119に関連して上記に説明されたように、本発明の実施形態では、これは、センサ始動からの事前定義された持続時間であり、その後、RmemBalanceがゼロに設定される。好ましい実施形態では、融合アルゴリズムがRmem論理からCal係数およびノイズ論理に切り替わるまでの事前定義された持続時間(センサ接続後)は、約25時間である。
したがって、現在時間が「FUSION_START_TIME_SWITCH」の後である場合、Rmemベース融合が無効化され、そのため、Rmemは、最終的な融合重みに寄与しない(9380)。一方で、現在時間が「FUSION_START_TIME_SWITCH」の前である場合、Rmemベース融合が有効化され(9372)、そのため、Rmem融合重みは、上記のように計算され、最終的な融合重みに対するRmem融合重みの相対寄与は、Rmemの差の大きさに基づいて計算される(9374)。
Rmemベース融合が無効化されるか(9380)、または有効化されるか(9372、9374)にかかわらず、アルゴリズムは、次に、ブロック9376でCal係数およびノイズ融合重みの計算を提供する。次いで、組み合わせられたCal係数およびノイズ(CCFN)とRmem融合重みとが組み合わせられ、最終的な融合重みが計算されて、値が平滑化される(9377)。最後に、ブロック9378に示されるように、SG_Fusionは、ri_1*SG1+ri_2*SG2(2つの作用電極システムの場合)として計算され、ri_1およびri_2は、融合の重み付けを算出するために使用される変数である。
本明細書に説明される融合アルゴリズムに関連して、各構成作用電極の挙動は、次いで、融合前に複製され得、好ましい実施形態に関連して次のように説明され得る。
第1のステージのフィルタ処理:5分の値への1分の値の変換
個々の作用電極(WE)毎に、アルゴリズムは、最新の8分のセンサ電流データを使用して、5分のIsigを作成する。これは、第1のステージのフィルタ処理と呼ばれる。アルゴリズムは、システムからの情報を使用して、センサデータが診断モジュールによって影響を受けていた期間を識別する。アルゴリズムは、次いで、総体的なノイズおよび/または診断干渉が検出されたパケットを置換することによって、生のセンサ信号(1分のセンサ電流)を修正する。
アルゴリズムは、フィルタに[0.0660;0.2095;0.0847;0.1398;0.1398;0.0847;0.2095;0.0660]の係数を使用して、1分のデータに単純な7次FIRフィルタを適用することによって、(1)破棄および(2)5分のIsigを算出する。破棄フラグは、最新の8つの測定値(8分)にわたる1分のセンサ電流測定値の変動に基づいて、真または偽になる。破棄フラグは、センサ接続後の測定値が4つよりも少ないとき、偽になる。一方で、破棄フラグは、バッファ内の4つ以上の測定値が、(a)1分のセンサ電流が1nA未満である、(b)1分のセンサ電流が200nA超である、(c)1分のセンサ電流が小数点以下2桁の精度でAverageCount÷2未満である、(d)1分のセンサ電流がAverageCount×2超である、の条件に収まる場合、真になる。ここで、「AverageCount」は、FIR履歴が8つの測定値を有する場合、中央の4つの値の平均であり、そうでない場合、FIR履歴の既存の測定値の平均として得られる。好ましい実施形態では、破棄フラグが真であるイベントは、バッファが5つ以上の測定値を有する場合のみ、トリガすることに留意されたい。
無効パケットの識別
5分毎のパケットについて、信号がチェックされて、パケットが有効であるかどうかを検証する。(a)5分のIsig値がMAX_ISIGを上回るか、またはMIN_ISIGを下回る、(b)Vcntrが0ボルトを上回るか、または-1.3ボルト未満である、(c)パケットがアーチファクトとしてフラグ付けされる、(d)1分のデータを5分のIsigに変換するときにパケットが破棄としてフラグ付けされた、(e)1kHzの実インピーダンスが範囲外である、(f)高ノイズ(以下に議論されるノイズチェックの節を参照されたい)、のうちのいずれかが満たされる場合、パケットは、無効であるとみなされることになる。本発明の好ましい実施形態では、無効Isigを識別するために使用される閾値であるMAX_ISIGおよびMIN_ISIGは、それぞれ、200nAおよび6nAである。
アーチファクト検出
5分毎のパケットに対して、アーチファクト検出は、Isigの大小の低下を識別して、データがSG計算で使用されることを防止するために実施され得る。Isigの大きい低下について、イベントは、「大きいアーチファクト」として分類され得、全ての後続パケットは、破棄としてフラグ付けされ、停止条件が満たされるまでアーチファクトイベントの一部とみなされることになる。「小さいアーチファクト」として分類され得る小さい低下は、その単一のパケットのみが破棄としてフラグ付けされることを可能にし、次のパケットは、それが大きいアーチファクトであると検出された場合のみ、このアーチファクト検出アルゴリズムによって破棄としてフラグ付けされ得る。パケットが「init」(すなわち、センサウォームアップ期間中のデータを参照するデータを伴う初期化)としてフラグ付けされている場合、アーチファクト検出変数は、デフォルト値に設定され、アーチファクトは、検出されない。
初期化パケットではない5分毎のパケットについて、2つの変数nA_diffiおよびpct_diffiが次のように定義される。
nA_diffi=isigi-isigi-1
pct_diffi=100×(nA_diffi/isigi-1)
式中、isigiは、i番目のIsigのnA単位の値を表し、isigi-1は、その前のIsigである。前のパケットが小さいアーチファクトではなく、かつ大きいアーチファクト状態でもなかった場合、現在のパケットは、pct_diffi<-25かつnA_diffi<-4である場合、破棄としてフラグ付けされ得る。
大きいアーチファクトの開始の識別
前のパケットが大きいアーチファクトではなかった場合、現在のパケットは、以下の3つの条件のいずれかが真である場合、破棄としてフラグ付けされ、大きいアーチファクトの開始とみなされることになる。
pct_diffi<-40かつnA_diffi<-5
pct_diffi+pct_diffi-1<-50かつnA_diffi+nA_diffi-1<-13
pct_diffi+pct_diffi-1+pct_diffi-2<-60かつnA_diffi+nA_diffi-1+nA_diffi-2<-18
大きいアーチファクトの検出後
アーチファクトを検出するパケットを含む、大きいアーチファクト状態のパケット毎に、パケットは、破棄としてフラグ付けされる。アーチファクトとして検出されると、アーチファクトの状態が各パケットで決定される。これに関して、有効状態は、(1)立ち下がり、(2)最下点安定性、および(3)立ち上がりである。大きいアーチファクト状態から抜け出すことは、(1)Isigが立ち上がり状態の後に高く安定している、(2)前の状態が立ち上がりであり、Isigが安定しており、かつシステムが数個のパケットで立ち上がり状態であった、(3)システムが長期間アーチファクト状態にあり、アーチファクトの検出時に最大長さが定義されている、(4)接続解除が存在する、のうちのいずれかの条件が満たされる場合に起こり得る。
小さいドロップアウト検出
ドロップアウト構造は、パケット毎に更新され、現在のパケットがドロップアウトにあるかどうかを示し、フィルタがドロップアウトを考慮するための関連変数を有する。全体的な論理は、次のとおりである。ドロップアウト状態は、(1)急激な低下:Isigが急激に減少するが、前のパケットがより安定した信号を示す、(2)方向の変化:前のパケットが低ノイズおよび増加するIsigを有する状態で、Isigが中程度に高速に減少する、(3)中程度の低下:前のパケットが非常に低いノイズを示す状態で、Isigが中程度のレベルで減少する、の3つの一般的条件のいずれかとして検出される。これらのイベントのいずれかが検出されると、測定されたIsigの減少がフィルタ処理の前に生のIsigに戻って追加され、ドロップアウト状態を抜け出するためのIsig閾値が定義される。論理は、この状態が長時間持続するか、またはIsigが十分に増加する場合、ドロップアウト状態から抜け出す。
ノイズ推定
次に、現在のパケットのnoise_levelおよびfreq_equivが決定され、これらは、次いで、フィルタ処理の節で使用される。noise_levelは、ドロップアウトの識別およびセンサ終了条件の識別に追加的に使用される(NoiseCheckの節を参照されたい)。このプロセスは、noise_levelに2つの最新値を必要とする。具体的には、noise_levelは、Isig(isig_acc)値の7つの最新の二次導関数の絶対値に基づいて計算され、9×calFactorによってスケーリングされ、0~10にクリップされる。好ましい実施形態では、デフォルトのnoise_levelは、現在または前の二次導関数計算が実施されなかった場合、7.5に設定され得る。変数freq_equivは、5つの最新のフィルタ処理されていないIsig変化率値を使用して、次のように計算される。
Freq_equiv=abs(mean(roc))*calFactor
式中、「roc」は、nA/minの変化率である。上記の計算後、freq_equiv値は、次いで、0.2~4mg/dL/minにクリップされる。3つ以上のisig_acc値が無効であるか、または計算されたnoise_levelが7を超える場合、freq_equivは、0.9のデフォルト値に設定される。
変化率(ROC)推定
Isigの1次および2次導関数が、ノイズを推定し、信号のドロップアウトを識別し、遅延を補償し、瞬時較正エラーチェックを実施するときの偽エラーを低減するために使用される。フィルタ処理された変化率およびフィルタ処理されていない変化率の両方が計算される。フィルタ処理された変化率に関連して、Savitzky-Golayで平滑化された変化率は、5つの最新のIsig値を使用し、任意の無効Isigを最新の有効Isigと置換して計算される。したがって:
Weights=[0.2;0.1;0;-0.1;-0.2];%coeff/Norm:[2;1;0;-1;-2]/10と同じ
roc_savitisig=sum(rawisig.*weights)/time_since_last_packet;%単位nA/min
フィルタ処理されていないIsigの変化率(変数roc_rawisig)は、現在のIsigから前のIsigを減算し、時間差(5分)で除算することによって計算される。フィルタ処理されていないIsigの2次導関数(acc_rawisig)は、次のように、現在のパケットから、前のパケットを用いて計算された(1次導関数)roc_rawisig値を減算し、時間差で除算することによって計算される。
acc_rawisig=(roc_rawisig(1)-roc_rawisig(2))/5
Isigフィルタ処理
ここで、較正およびSGの計算に使用されるフィルタ処理されたIsig値であるfIsigを決定するために使用される計算が説明される。フィルタパラメータ「q」は、noise_levelおよびfreq_equivに基づいて適合するため、低ノイズまたは高変化率では、fIsigは、フィルタ処理されていない値に近くなる。Isigデータが無効であるとき、フィルタ出力は、前の出力から変化しないままである。フィルタは、センサ接続後、SGがユーザに表示され始め得る時間として定義される、SENSOR_WARMUP_TIMEでリセットされることになる。好ましい実施形態では、SENSOR_WARMUP_TIMEは、約1時間である。
結果的に生じるfIsigが予期されない値、特に202.5nAを上回るか、または3.5nAを下回る場合、変化センサアラートが発行される。結果的に生じるfIsigが3.5nA以上かつMIN_ISIG未満である場合、fIsigは、MIN_ISIGでクリップされることになる。上記のように、本発明の好ましい実施形態では、MIN_ISIGは、6nAに設定され得る。しかしながら、結果的に生じるfIsigが202.5nA以下かつMAX_ISIG超である場合、fIsigは、MAX_ISIGでクリップされることになる。上記のように、本発明の好ましい実施形態では、MAX_ISIGは、200nAに設定され得る。
Isig遅延補償
カルマンフィルタを用いて、予測されたIsigが測定入力として使用される。予測は、次いで、Isigの変化率に基づいて計算され、過剰な予測が追加されることを防止するようにクリップされる。追加される予測量は、無効データの存在およびノイズ(noise_levelからの)計算によって調整される。
Kalman_state計算
kalman_state.q値(次の方程式で使用される)は、ノイズ推定の節に説明されるnoise_levelおよびfreq_equiv値を使用して計算される。システムがドロップアウトにある場合、rocは、Isigに追加されない。代わりに、ドロップアウト量が追加され、計算されたkalman_state.qが修正されて、より多くのフィルタ処理を提供する。以下の計算は、kalman_state.xおよびkalman_state.pに格納する値を決定するために使用される。cur_isigの値は、5分のIsigに追加された遅延補正を含む。
Kalman_state.p=kalman_state.p+kalman_state.q
kalman_state.k=kalman_state.p/(kalman_state.p+kalman_state.r)
kalman_state.x=kalman_state.x+kalman_state.k*(cur_isig-kalman_state.x)
kalman_state.p=(1-kalman_state.k)*kalman_state.p
EISイベント
EISイベントがトリガされるたび、測定が、[0.105、0.172、0.25、0.4、0.667、1、1.6、2.5、4、6.3、10、16、25、40、64、128、256、512、1024、2048、4096、8192]の周波数(Hz単位)で行われ、シーケンスがWE毎に繰り返される。EIS測定の1つが飽和または破棄としてフラグ付けされた場合、WE毎の測定セット全体が使用されないことになる。
血中グルコース(BG)エントリ
上記のように、較正エラーチェックに使用される較正比(CR)は、次のように計算され得る。
CR=BG/(fisig+オフセット)
40mg/dL以上かつ400mg/dL以下のBGエントリのみが較正に使用され、この範囲外の値は、拒否されることになる。新しいセンサコマンドまたは古いセンサコマンドが受信されていない場合、または最新のパケットが「init」としてフラグ付けされた場合、BGは、拒否されることになる。BGエントリの前にパケットが存在しない場合(新しいセンサコマンドの後など)、BGエントリは、拒否されることになる。BGエントリは、タイムスタンプが古過ぎるか、または将来を示す場合、拒否されることになる。
瞬時較正エラーチェック
BGが基本チェックによって拒否されない場合、両方のWE値からの最新のfIsigを使用して、較正エラーをチェックされることになる。好ましい実施形態では、これは、較正エラーが発行されることになる唯一の箇所である。両方のWEに較正エラーが存在する場合、新しい正常なBGエントリが、SG値を示し続けるために必要とされることになり、較正エラーを引き起こしたBGは、較正に使用されないことになる。(a)前のパケットが無効Isigを有する、(b)CRが較正エラー閾値外である、(c)CRが、例えば、閾値を超えて、前のCRおよび現在の較正係数の両方と異なる、(d)システムがより高いエラーを予期する場合、具体的には、FDC調整、Isigディップ調整モードで、より大きい閾値が使用されるか、または推定される変化速度が1.5mg/dL/minを超過する、の条件が、単一のWE較正エラーと考えられる。好ましい実施形態では、較正エラー閾値は、典型的なCEチェックに使用されるより小さい閾値(THRESH_MGDL)について40mg/dL、およびCEチェック中により大きいエラーが予期されるときに使用される、より大きい閾値(THRESH_MGDL_LARGE)について50mg/dLのように設定され得る。
BGエントリが較正エラーを引き起こさないとき、単一のWE較正エラーカウンタが0に設定されることになり、BGがcalFactorを更新するために使用されることになる。アルゴリズムが、単一のWE較正エラーを引き起こしているとしてBGを識別するが、BGが最終較正を保留している場合、BGは、拒否され、較正は、そのWEで前に容認されたBGを使用して継続する。新しいBGが較正エラーチェックに合格した場合、新しいBGが、最終較正を保留中の任意の現在のBG値を置換する。アルゴリズムが、無効Isigに起因しない較正エラーを引き起こしているとしてBGを識別し、かつ上記が適用されない場合、(1)較正エラーカウンタが1であり、かつ送受信機が前の較正エラーを識別してから5分未満である場合、BGが構成エラーカウンタを増分せず、それによって、変化センサアラームが前に較正エラーを引き起こした同じBGおよびfisigから起こることを防止し、(2)そうでない場合、較正エラーカウンタは、増加する。カウンタが0であった場合、新しいBGエラーが、SGを示し続けるために必要とされる。較正エラーカウンタが単一のWEで2に達すると、SGがもはや計算することができないため、WEは、停止される。
本明細書の発明の実施形態は、動的最大CR限界を含む。具体的には、MAX_CRは、センサ始動時に16に設定され、時間の関数として4日間にわたって12まで線形に低下され得る。MAX_CRは、Vcntr値が長時間高い場合、10までさらに徐々に低下され得る。上記のように、高いVcntr値は、典型的には、Isigの高いノイズレベル、および感度損失と関連付けられる。
作用電極較正
本明細書に説明されているように、個々の作用電極は、固定間隔に従って、またはスマート較正によってリアルタイムに決定されるように、較正を要求/必要とすることになる。これに関して、本発明の実施形態では、第1の正常な較正は、6時間で満了し、その後の較正は、12時間で満了し得る。EISまたは初日較正論理に基づくスマート較正は、初日較正およびEIS選択に論じられたように、より短い満了時間を結果的にもたらし得る。
好ましい実施形態では、アルゴリズムは、標準較正満了後(EXTRA_TIME)、ならびにEISスマート較正満了後(EXTRA_TIME_SMART)の追加の時間量の間、SGを計算し続けることになる。したがって、作用電極状態は、calFactorが満了したが、EXTRA_TIMEまたはEXTRA_TIME_SMARTの範囲内である場合、1に設定され、calFactorが満了し、かつEXTRA_TIMEまたはEXTRA_TIME_SMARTの後である場合、2に設定される。これらのSGは、SGの表示に影響を与えない別個のSGバッファに格納される。本発明の実施形態では、EXTRA_TIMEは、12時間に設定され、EXTRA_TIME_SMARTは、6時間に設定される。
個々のWE SG計算
SGを計算するために使用されるCal係数は、最新の較正計算に基づくか、または調整モードにある場合、値は、初日較正論理またはIsigディップ較正論理を通して更新される。SGを計算するために使用されるCal係数は、MAX_CR未満かつMIN_CR超でなければならない。Cal係数がこの範囲外にある場合、システムは、Cal係数を無効化し、作用電極状態を2に設定することになる。同様に、SGを計算するために使用されるフィルタ処理されたIsigは、MAX_ISIG未満、かつMIN_ISIG超でなければならない。フィルタ処理されたIsigがこの範囲外にある場合、システムは、Isigを無効化し、作用電極状態を2に設定することになる。作用電極状態は、Cal係数が満了するか、もしくは無効化されるか、または現在のパケットが無効化された場合、2に設定される。
BGとIsigとのペアリング
較正エラーを引き起こさなかったBGエントリの後、次のステップが、Cal係数を更新するために実施される。現在のパケットが無効であるか、または新しいBGが較正エラーを引き起こすことになる場合、Cal係数は、このときに更新されない。現在のパケットが有効であり、BGが較正エラーを引き起こさない場合、較正バッファの一時的更新が、BGおよび現在のペアのセンサ情報を較正バッファに追加することと、最も古いペアの情報を一時的に除去することと、によって実施される。Cal構成は、次いで、以下のCal係数計算の節に説明されるように、計算される。前の較正が存在する場合、計算されたCal係数値は、前のCal係数に対して重み付けされなければならない。好ましい実施形態では、重みは、新しい値に対して70%の重み、かつ古い値に対して30%の重みのように、割り当てられる。正常なBGエントリの後の5~10分で起こるパケットについて、較正係数は、前の較正係数に最も近く、かつ較正エラー基準の違反を引き起こさない、最新のfIsig値を選択することによって更新される。
較正バッファ更新
本発明の実施形態では、較正バッファは、BG値、ならびにペアの情報である、バッファ内の各BG値と関連付けられたペアのIsig値、より高周波数の虚インピーダンスの予期される値、および予期される範囲のインピーダンス値を含有する。概して、較正バッファに4つの位置があり、位置4が最も古いエントリである。システムがIsigディップモードにあり、CRが較正バッファ内の最新のCR未満である場合、較正バッファは、較正バッファ内の最新のエントリ(位置1)を、最も古いエントリを除去する代わりに、保留中エントリと置換することによって更新される。しかしながら、保留中エントリが適用されない場合、較正バッファは、前のエントリをシフトすること(位置4の最も古いエントリを除去すること)と、新しい保留中BGを位置1に置くことと、によって更新される。
Cal係数計算
較正エラーが存在しない場合、Cal係数は、次の関係に従って更新され得、式中、Isigは、ペアのIsig値であり、nは、較正バッファ内の有効なエントリの数である。
加えて、好ましい実施形態では、アルファは、最新のBGエントリ(すなわち、位置1)が0.80の重みを有し、位置2が0.13の重みを有し、位置3が0.05の重みを有し、かつ位置4が0.02の重みを有するように、較正バッファ内の各BGエントリに対して固定される。好ましい実施形態では、各BGエントリのベータ重みは、次の方程式を使用して計算され、iは、較正バッファ内の位置を示す。
beta(i)=2.655×(BG(i)-0.8041)-0.01812
計算されたCal係数は、システムがFDCモードでなく、かつEISが感度変化を検出していない場合、expected_cf_valueで重み付けされる。expected_cf_valueは、20%の重みを担持し、計算されたCal係数は、80%の重みを有する。予期されるCal係数は、次のように計算される。
expected_cf_value=0.109*t+4.731
式中、t=センサ始動からの日数である。システムがIsigディップ較正モードにあり、かつ計算されたCal係数がCRの75%未満である場合、Cal係数は、CRの75%に設定される。これは、BGおよびSG値がIsigディップ中の較正後に相当近くなることを確保する。
個々のWE SG計算
センサグルコース値は、次の関係に従って計算される。
SG=(fisig+オフセット)×calFactor+predictedSGchange
式中、predictedSGchange値は、フィルタ処理されたIsigに基づいて計算され、かつ信号ノイズおよびグルコース濃度に基づいて緩和される、5分の予測値である。predictedSGchangeが、6mg/dL超または-6mg/dL未満である場合、それぞれ、6mg/dLまたは-6mg/dLでクリップされることになる。加えて、計算されたSGは、小数点以下2桁に丸められる。
初日較正モード
前に説明されたように、FDCと呼ばれる初日較正調整は、異常な較正係数が存在することを初期較正係数が示す状況に対処する。FDCの間、アルゴリズムは、Cal係数をターゲット範囲に向けて調整することになる。FDCモードへのエントリについて、較正比が4.5~5.5mg/dL/nAの正常範囲外であるが、較正エラー閾値の範囲内であると第1の正常なBGエントリが示す場合、そのWEのFDCモードがオンになる。このモードでは、Cal係数は、最新のBGおよびfIsigを使用して計算され、次いで、以下に記載されるように調整されることになる。
初日較正モードがアクティブであるとき、そのWEのCal係数は、5分毎のパケットに対して次のように調整されることになる。
cfAdjust=(p1×origCF+p2)×5/60
calFactor=calFactor+cfAdjust
式中、P1=-0.1721時間-1、p2=0.8432mg/dL/nA/時間である。初日較正調整は、(1)cfAdjustが負であり、かつSGが既に低い(75mg/dL未満)か、または(2)調整されたCal係数がターゲット範囲(4.5~5.5mg/dL/nA)に達した場合、現在のパケットに対して行われないことになる。
WE毎のFDCモードは、センサの始動から12時間経過したとき、または新しい較正エントリが安定範囲(4.5~5.5mg/dL/nA)内のCRを有するとき、停止し、センサの追加調整は許容されないことになる。システムがFDCモードにある間、較正満了時間は、6時間である。しかしながら、スマート較正に関連して、最初に容認された較正が、両方のWEに対して広範囲(4mg/dL/nA未満または7mg/dL/nA超)外のCRを有する場合、第1の較正は、3時間で満了することになる。
Isigディップ較正モード
本発明の実施形態は、グルコース濃度に対して低いIsigで起こると疑われる特定の較正に応答して、Isigディップ較正論理を使用する。論理は、前の値により近いCal係数を返す。Isigディップ較正モードは、WEがFDCモードにない場合にオンにされ、較正時、較正は、Isigが低く、前の較正が成功したことを示す。これは、次の閾値を比較することによって検証される。
CR>1.4×前のcalFactor(origCFと呼ばれる)
前のcalFactor<6mg/dL/nA
最近の有効Isigの平均値<20nA
IsigディップのCal係数を計算するために使用されるfIsig値は、以下に説明される調整論理で続けて使用され、triggerIsigと呼ばれることになる。加えて、前のCal係数は、Isigディップ較正モードが終了するべきかどうかを決定するために使用される。この前のCal係数は、origCFと呼ばれる。
Isigディップ較正モードがオンである場合、Isigは、回復を監視される。本発明の一実施形態では、回復は、現在のfIsig値が1.4×triggerIsigを超えるときに検出される。回復が検出されると、Cal係数は、fIsigがtriggerIsigを上回る限り、調整されることになる。Cal係数は、12時間でCal係数をorigCF値に戻す比率で調整される。
Isigディップ終了
アルゴリズムは、次のいずれかが真である場合、調整を停止し、Isigディップ較正モードを終了し、Cal係数は、最新の(おそらく調整された)Cal係数である。
calFactor<origCF×1.2
calFactor<5.5
Isigディップの検出から1日超が経過している。
較正時の新しいBGが、CR<1.25×origCFを示す。
EISスマート較正
EIS測定毎に、5点の移動平均フィルタが、1kHzの虚インピーダンスをフィルタ処理するために使用される。前の較正から1時間未満であった場合、前の較正の予期される1kHzの虚インピーダンス値は、現在のフィルタ処理された値に設定され、1kHzの虚インピーダンス値の許容範囲は、最近のEIS測定に基づいて設定される。前の較正から1時間超経過しており、かつ現在のフィルタ処理されたインピーダンス値が両方のWEの許容範囲外である場合、較正満了時間は、前の較正から最大6時間に短縮される。感度変化が検出されたときに較正が行われた場合、次いで、CRが、較正バッファ内の最新のCRに対して>15%の差を有する場合、新しいBGおよび前のBGの実が較正バッファに保持され、expected_cf_valueは、CFを計算するために使用されない。
作用電極状態
個々の作用電極の各々は、その電極からの情報が後続の処理にどのように使用されるかを決定する状態が割り当てられる。状態は、様々なエラーチェック、診断、および較正ステータスによって決定される。次の表は、状態を要約する。
ノイズ
2つの連続する窓が高ノイズを起こす(上記の計算毎に)場合、Isigデータは、2時間の窓の終了まで無効(状態=2)とみなされることになる(その時点で作用電極が停止され得るか、またはこの論理がもはやデータを無効としてフラグ付けすることになる)。3つの連続する2時間の窓が高ノイズを起こす(上記の計算毎に)場合、作用電極状態は、不可逆的に2に設定され、停止されたとみなされる。
8kHzの虚インピーダンスに基づくEIS-作用電極の停止
EIS測定毎に、5点の移動平均フィルタが、8kHzの虚インピーダンスをフィルタ処理するために使用される。フィルタ処置された値は、センサ接続から36時間監視される。36時間後、最小8kHzのフィルタ処理された虚インピーダンスは、ウォームアップ期間中に取得された値を除いて、基準として設定される。本発明の好ましい実施形態では、後者の基準値は、-1,000Ω~800Ωの範囲にクリップされる。基準が設定されると、フィルタ処理された8kHzの虚インピーダンス値と基準値との間の絶対差がEIS測定毎に計算される。作用電極状態は、不可逆的に2に設定され、2つの連続するパケットの差が1,200Ωよりも大きい場合は停止される。
1kHzの実インピーダンスに基づくEIS-WE停止およびエラー
EIS測定毎に、5点の移動平均フィルタが、1kHzの実インピーダンスをフィルタ処理するために使用される。フィルタ処理された実インピーダンス値は、フィルタ処理された値およびフィルタ処理されていない値が、7,000Ωを下回るまで監視される。フィルタ処理されていない1kHzの実インピーダンス値が10,000Ωを上回る場合、エラーがトリガされ、状態が2に設定される。条件が3時間続く場合、作用電極は、停止される。フィルタ処理された1kHzの実インピーダンスが12,000Ωを上回る場合、状態は、2に設定され、作用電極は、停止される。
融合
図120に関連して上記に説明されたように、本明細書の発明の好ましい実施形態では、融合アルゴリズムは、両方のWE SGが無効または状態2である場合、融合SGが無効として設定されるように進む。1つのみのWE SGが無効または状態2である場合、融合SGは、他の有効WE SGに等しくなる。融合アルゴリズムは、重み計算の2つのモードと、2つのモード間の遷移手段を説明する論理を含む。
RMEM融合モード
Rmem融合は、各作用電極のRmemの差を利用して、融合の重み付けを決定する。一般に、より低いRmemを有する作用電極が、より大きい融合重みを受容することになる。これに関して、各作用電極のEIS測定からのRmemは、最新の正常な較正の前に計算され、値が格納される。
組み合わせられたCal係数およびノイズ(CCFN)融合モデル
組み合わせられたCal係数およびノイズ融合モードは、これらの2つのメトリックを使用して、融合重みを決定する。Cal係数融合は、各作用電極のCal係数を利用して、融合の重み付けを決定する。各作用電極のCal係数は、ルックアップテーブルまたは関数を介して変換され、それによって、事前定義された範囲内にあるCFがより大きい重みを受容する。したがって、Cal係数重み(cfWeight1)メトリックを計算するために、Cal係数は、上記のように、極値が0の重みを受容し、最適値が1の重みを受容し、中間値が0と1との間の重みを受容するように、変換される。変換関数は、上記のように、Cal係数変換対数正規曲線ピークを説明するパラメータ(融合)μと、Cal係数変換対数正規曲線幅を説明する(融合)σによって定義される、正規化された対数正規曲線である。好ましい実施形態では、μは、1.643の値を有し得、σは、0.13の値を有し得る。
対数正規変換の出力は、[0.001、FUSION_CLIP]に飽和され、飽和下限は、下流のゼロエラーによる除算を防止するためのものであり、飽和上限は、パラメータFUSION_CLIPを上回る全てのスコアを等しくする。好ましい実施形態では、FUSION_CLIPは、0.6に設定され得る。最後に、各作用電極の変換され飽和したCal係数は、作用電極にわたる合計によって正規化され、比率がratioGain関数に渡される。
ノイズベース融合
ノイズ融合は、各作用電極のノイズの差を利用して、融合の重み付けを決定する。一般に、より低いノイズを有する作用電極が、より大きい重みを受容することになる。各作用電極からのフィルタ処理されたノイズは、各作用電極からの生のIsig(acc_rawisig)の2次導関数を含有する変数の絶対値に対する長さFUSION_NOISEWINDOWの移動平均フィルタを介して計算される。好ましい実施形態では、FUSION_NOISEWINDOWは、36時間に設定される。パケットのFUSION_NOISEWINDOW数の利用可能性の前に(例えば、ウォームアップ中に)、移動平均フィルタ長さが、利用可能なパケット数に等しいことに留意されたい。
次に、ゼロによる除算を回避するために、各WEのフィルタ処理されたノイズ値は、filteredNoise<0.001の場合、filteredNoise=0.001になるように、飽和される。次いで、ノイズ重みメトリックが、総ノイズによって正規化された、他のWEの飽和したfilteredNoise値を使用することによって、各WEに割り当てられる。上記に詳細に説明されたように、このようにして、より低いノイズを有するWEは、より大きい重みを受容する。最後に、Cal係数およびノイズメロンソーダは、図119に関連して上記に記載されたように組み合わせられる。
融合モード遷移
融合の異なるモードが、センサのステータスに依存してセンサに適切であり得る。Rmem融合モードは、概して、センサ摩耗のより早期に最も適切である。Cal係数およびノイズ融合は、より後半の摩耗に最も適切である。これらの融合モード間を遷移するために、本発明の好ましい実施形態では、FUSION_START_TIME_SWITCHの後、融合重み付けが、CCFNによって完全に決定される。このタイムスケジュールされたスイッチング論理は、Rmem類似性遷移に取って代わる。
Rmem類似性遷移
融合モードを遷移するための論理は、WEのRmem値間の類似性に依存する。Rmemの大きい差は、最終的な融合値がRmemベース融合によって支配されることを意味する。Rmem値の差がゼロに近づくと、Rmem融合重みは、0.5に近づく。この点では、組み合わせられたCal係数およびノイズ融合(CCFN)が最終的な融合重みにより大きい影響を有することが適切である。融合重み値は、例えば、図119に示されるように計算される。
融合重み平滑化
対称加重移動平均が、算出後に融合重み値に適用される。これは、作用電極のうちの1つが信頼できなくなることに起因する急激な遷移が起こる場合に、急激な遷移を回避する。急激な遷移は、較正時に許容される。この目的のために、フィルタの係数は、[1 2 3 4 4 3 2 1]/20である。
融合SG計算および表示
融合が有効化されたとき、融合されたSG値は、複数の作用電極SGの最終的な加重和である。したがって、2つの作用電極を有するシステムについて、
filteredRi_2(t)=1-filteredRi_1(t)
fused_sg(t)=(filteredRi_1(t)×cur_sg(1)+filteredRi_2(t)×cur_sg(2))
式中、filteredRi_1(t)は、WE1のフィルタ処理された融合重みであり、融合されたSG値は、小数点以下0桁に丸められる。好ましい実施形態では、表示される融合SGは、[40,400]の範囲内でなければならないことに留意されたい。計算された融合SGが40mg/dlを下回る場合、表示は、「<40mg/dl」を示すことになり、計算された融合SGが400mg/dlを上回る場合、表示は、「>400mg/dl」を示すことになる。
融合変化率(ROC)計算
SG変化率は、5分毎のパケットに対して計算され得る。ここで、roc1およびroc2は、3つの最新の融合SG値を使用して次のように最初に計算され、式中、fused_sg(1)は、最新の融合SG値である。
roc1=(fused_sg(1)-fusion_sg(2))/5
roc2=(fused_sg(2)-fusion_sg(3))/5
roc1の方向(符号)がroc2と異なる場合、または最新の3つのSGのうちのいずれかがSG表示に対して空白化される場合、SG変化率は、ゼロmg/dL/minに設定される。そうでない場合、fused_sg変化率は、0により近いroc1またはroc2の値である。
較正BG要求および調整
個々のWEは、較正BG要求をトリガし得る。しかしながら、本明細書の発明の実施形態では、ユーザは、全ての機能しているWEが未解決の較正要求を有するときのみ、較正BG要求を求められる。上記の例外は、上述のように、SENSOR_WARMUP_TIME以降に起こる第1の較正要求である。ここでは、ユーザは、任意の機能しているWEが未処理の較正要求を有する場合、第1の較正BG要求を求められることになる。
較正は、「推奨」または「必須」のいずれかとしてユーザに表示され得る。「較正推奨」論理は、較正スケジュールに従ってトリガされる(すなわち、好ましい実施形態では、1日あたり2回の較正に加えてスマート較正)。上記のように、EXTRA_TIMEは、較正が必須になり、かつSG算出が停止する前に経過することを可能にされる。この時間は、較正がスマート較正によって引き起こされるときにEXTRA_TIME_SMARTに設定される。スマート較正が最新の正常な較正に対していつトリガされたかに基づいて、データは、6~12時間表示され続ける場合がある。SGの状態が記録されるため、ディスプレイデバイスは、「較正推奨」状態の間にSGを表示するかどうか、またはどのように表示するかを決定し得る。以下の表は、論理の図解表現である。
上記の表の状態は、簡潔化のために要約されていることに留意されたい。したがって、完全な論理テーブルは、WE1とWE2とをスイッチングすることによって生成され得る。加えて、ユーザは、「融合較正」状態のみを認識する。
上記のように、本発明の実施形態は、擬似直交冗長グルコースセンサ、システム、および関連する方法論を対象とし、本明細書および関連図に議論されている方法論およびアルゴリズム(例えば、EIS、較正、融合、診断など)の文脈中のそのような擬似直交冗長センサおよび/またはシステムを含む。疑似直交冗長性は、2つ以上の(作用)電極で同様の技術を利用することによって達成されるが、追加の設計および/または計算の複雑性を最小限に抑えながら、補完的なグルコース測定値を発生させるために、わずかながら有意な変形を伴う。したがって、例として、本発明の一実施形態では、2つ以上の電気化学的(echem)センサが用いられ得、1つ(以上)のセンサは、従来の過酸化物ベースセンサであり得、1つ(以上)のセンサは、2つの作用電極(同じワイヤ上にあってもよく、またはそうでなくてもよい)間の酸素の差を算出してグルコースを測定するために使用される「酸素センサ」であり得る。このようにして、上記のASICは、2つの異なるが補完的なグルコース測定値を得るために、グルコースおよび酸素の両方を同時に測定するために使用され得る。本発明の実施形態では、融合アルゴリズム(例えば、本明細書に説明されているものなど)は、単一の融合センサグルコース値を計算するために使用され得る。
現在の過酸化物ベースechemグルコースセンサは、次の関係に従って過酸化水素(または、単に「過酸化物」、H2O2)を測定する。
上記の反応では、グルコースオキシダーゼ(GOx)酵素が、ある部位に存在するグルコースおよび酸素の量に比例してH2O2およびグルコン酸(C6H12O7)を生成する反応を触媒する。構造的に、図121Aに示されるように、過酸化物ベースグルコースセンサスタックは、グルコースオキシダーゼ(GOx)または類似の触媒剤の層、およびグルコース制限膜(GLM)で覆われた(作用)電極を備える。センサシステムは、次いで、電極表面に印加された電位を通して過酸化物を電流に変換する。過酸化物ベースグルコースセンサとして使用されるとき、図121Aのセンサスタックは、通常、約+400mV超(例えば、一実施形態では、+400mV~+535mVの範囲内)であり得る正の電位で動作する。しかしながら、電位は、負に反転され得(例えば、ASICを介して)、この場合、同じセンサスタックは、次いで、約-400mV未満(例えば、一実施形態では、-400mV~-535mVの範囲内)であり得る負の電位で「酸素センサ」として動作することになり、センサ内の酸素は、酸素存在量に比例して減少する。対照的に、図121Bに示される酸素センサスタックは、GOx層を含まない。したがって、負の電位(例えば、約-400mV未満)が印加されるとき、測定値は、センサスタック内に流入する酸素に比例することになり、正の電位(例えば、約+400mV超)が印加されるとき、グルコースまたは酸素に関する測定出力が存在しない(または最小限である)はずである。
従来の(すなわち、過酸化物ベース)グルコースセンサおよび酸素センサの化学スタックは、酸素ベースグルコースセンサシステムを得るために組み合わせられ得る。具体的には、本明細書の発明の好ましい実施形態では、図121Aおよび121Bに示されるセンサスタックの各々は、「酸素センサ」として(すなわち、負の電位で)機能的に動作する。しかしながら、図121Aのグルコースセンサスタック内の酸素が、流入する酸素から、存在するグルコース量を差し引いたものに比例して減少するのに対して(GOx層が存在するため)、図121Bの酸素センサスタックでは、酸素が直接検出される。グルコースは、次いで、2つのセンサのそれぞれの出力間の差として推定される。両方の化学スタックが「酸素センサ」として使用される、このモダリティの目的のために、両方のセンサが負の電位(例えば、約-400mV未満)で動作されることに留意されたい。
既知であるように、酸素の測定は、一般に、echemセンサが酸素依存性であり、酸素の欠如が重度の感度損失につながり得るため、重要である。より具体的には、酸素欠損に起因する感度損失の基本的な機構は、局所的な酸素が欠損すると、センサ出力(すなわち、IsigおよびSG)が、グルコースではなく酸素に依存することになり、したがって、センサは、グルコースに対する感度を失うことになるというように説明され得る。
したがって、本明細書に説明される本発明の擬似直交冗長センサシステムの有意な利点の1つは、実質的に酸素非依存性、すなわち、低酸素故障に耐性を有するセンサ出力を提供することである。つまり、上記のように、センサは、「酸素センサ」であり得るが、出力は、酸素に対する依存が減算によって(すなわち、2つのセンサのそれぞれの出力間の差としてのグルコースの計算によって、または2つの作用電極間の酸素の差を算出することによって)除去されるため、実質的に酸素非依存性である。そのようなセンサは、センサがゼロ酸素では動作しないため、完全に酸素非依存性ではないことに留意されたい。しかしながら、センサは、低酸素条件では、より耐酸素性になる。
本発明の実施形態では、本明細書に説明される擬似直交冗長センサシステムは、バックグラウンド酸素(第1のワイヤ上の酸素センサスタックを介して)、および消費された酸素の両方を、同じ、すなわち、第2のワイヤ上の過酸化物ベースセンサスタックを介して、測定することになる。図122は、そのような第1および第2のワイヤの例示的な例の詳細を示し、各ワイヤは、その上に1つ以上の電極および/またはセンサスタックを含み(すなわち、担持し)、患者の体内への移植または皮下配置のために構成される。2つのワイヤが図122に示されるが、本明細書の発明の実施形態は、一度に複数の電極に給電する能力を有する単一のワイヤ上に含められている全ての電極によって動作し得ることに留意されたい。
図122に戻ると、ワイヤ2(9400)として識別される1つのワイヤは、第1の作用電極(WE1)9410、および基準電極(RE)9420を含み得る。また3つの対向電極(CE)9430が示されているが、本明細書の発明の実施形態は、任意の対向電極なしで動作し得る。作用電極WE1は、一方、ワイヤが患者の体内に移植または皮下的に配置されたとき、ワイヤが上記の関係に従って過酸化物の検出を提供するように、GOx層9412(および図示されないGLM)を含む。したがって、WE1は、従来の過酸化物ベースセンサ(スタック)の電極として機能する。
図122では、ワイヤ1(9450)として識別される第2のワイヤは、追加の作用電極を含み得る。具体的には、図122は、3つのそのような作用電極、すなわち、(WE2)9460、(WE3)9470、および(WE4)9480を示すが、3つよりも多い作用電極が含まれてもよい。示されている作用電極のうち、WE2は、GOx層9462をさらに含み、それにより、グルコース変調酸素検出を提供し、WE4は、バックグラウンド酸素を検出する。この例では、WE3は、バックグラウンドセンサ、つまり、正の電位で動作されるGOxを含まない電極であり、過酸化物へのグルコースの変換がないため、センサでグルコース以外のものを検出する。これは、診断目的で使用され得る。実際には、この追加の電極は、任意の分析物を感知するように設計され得、疑似直交冗長センサを補完し得る(例えば、正の電位で動作される追加のグルコースセンサであってもよく、バックグラウンド干渉物質を検出するために使用されてもよく、または乳酸などの他の分析物を感知するように設計されてもよい)。任意の数または組み合わせのセンサが、この感知フレームワークに追加され得る。したがって、全体として、2つのワイヤは、2つの異なるグルコース測定値を提供する(すなわち、WE1を介したもの、ならびにWE2およびWE4の組み合わせを介した別のもの)。加えて、WE4の出力は、診断目的で使用され得る酸素測定としても独立して使用され得る。したがって、3つの作用電極によると、システムは、グルコースを検出する2つの疑似直交方法に加えて、酸素診断をもたらす。
以下の例は、グルコース感知の両方の方法を組み込む、本発明の擬似直交冗長グルコースセンサシステムのさらなる詳細を提供する。以下に議論される例は、例示的なものであり、他の/追加の構成もまた、本明細書に説明される本発明の疑似直交冗長グルコースセンサおよびシステムの利点を得るために使用され得ることに留意されたい。さらに、本明細書の発明の実施形態は、1つ以上の電極の診断(例えば、上記のEISによる)、および単一の融合センサグルコース値を発生させるために上記に説明された融合アルゴリズムのうちの1つ以上を用いてもよい。
第1の例では、本発明の実施形態は、合計4つの作用電極を含み得る。ここで、1つまたは2つの作用電極は、常に、従来の(過酸化物ベース)グルコースセンサとして動作し得、作用電極は、GOx層を伴い、正の電位で動作される。2つのそのような作用電極が使用されるとき、それらはまた、2つの冗長電極間のように、単純な冗長性および診断クロスチェックを提供し得る。次いで、2つの追加の(すなわち、第3および第4の)作用電極が、常に、酸素ベース差動グルコースセンサとして一緒に動作する。したがって、第3の作用電極は、GOx層を伴い得(例えば、図121Aに示されるように)、第4の作用電極は、GOx層なしで動作し得る(例えば、図121Bに示されるように)。酸素ベース差動グルコースセンサは、センサ摩耗全体の診断に使用されて、例えば、過酸化物ベースセンサが適切に機能しているか否か、および感知のどのモダリティを使用するか、の決定を助け得る。本発明の実施形態では、過酸化物ベースセンサは、過酸化物ベースセンサの出力(Isigまたは算出されたセンサグルコースのいずれか)と酸素ベース差動グルコースセンサの出力との間の差が、閾値を超過している場合、適切に機能していないと決定され得る。本発明の実施形態では、そのような閾値の例は、例えば、正規化されたIsig差が30~50%超であるかどうか、または算出されたSG差が定義された期間にわたって20~30%を超えて変化するかどうかであり得る。
第2の例では、本発明の実施形態は、合計3つの作用電極を含み得る。ここで、上記の実施形態のように、1つまたは2つの作用電極は、従来の(過酸化物ベース)グルコースセンサとして動作し得、作用電極の各々は、GOx層を伴い、正の電位で動作される。次いで、第3の作用電極が、(永続的な)「酸素センサ」として動作され得、電極は、GOx層と共に動作せず、診断目的のために負の電位(例えば、-400mV以下)で動作される。このようにして、酸素測定値が、計算された閾値を下回って低下、例えば、50%低下すると、従来のグルコースセンサのうちの1つの電位が、反転されて(例えば、-400mV以下)、第3の電極を第2の「酸素センサ」に変換し、それによって、2つの「酸素センサ」間での酸素ベース差動グルコース感知を可能にし得る。上述のように、代替的な実施形態は、異なる数のワイヤ、異なる数の総作用電極、各ワイヤ上の異なる数の作用電極、ならびに/または異なる数の作用、基準、および対向電極もしくはその組み合わせが用いられ得る、設計/構成を含み得る。
上記の説明は、本発明の特定の実施形態を参照するが、その概念から逸脱せずに、多くの修正が行われ得ることが理解されるであろう。本発明の主要な教示を依然として実施しながら、アルゴリズムの順序に対する追加のステップおよび変更が行われ得る。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の範囲および概念に収まることになる、そのような修正を包含することを意図されている。したがって、本開示の実施形態は、あらゆる点で例示的であり限定的ではないとみなされるべきであり、本発明の範囲は、上記の説明ではなく添付の特許請求の範囲によって示されている。特許請求の範囲の等価性の意味および範囲内に入る全ての変更は、特許請求の範囲内に包含されることが意図されている。
[付記]
[1]
連続的グルコース監視システムであって、
ユーザの体内のグルコースレベルを決定するための擬似直交冗長グルコースセンサデバイスであって、
第1の電気化学的過酸化物ベースグルコースセンサと、
電気化学的酸素ベースセンサと、を含む、センサデバイスと、
センサ電子機器と、を備え、前記センサ電子機器が、少なくとも1つの物理的マイクロプロセッサを含み、前記少なくとも1つの物理的マイクロプロセッサが、
(a)前記第1の電気化学的過酸化物ベースグルコースセンサから第1の過酸化物ベース出力信号を受信することであって、前記第1の過酸化物ベース出力信号が、前記ユーザの体内の前記グルコースレベルを示す、受信することと、
(b)前記電気化学的酸素ベースセンサからの出力信号を受信することであって、前記出力信号が、前記ユーザの体内の測定された酸素レベルを示す、受信することと、
(c)前記ユーザの体内の前記測定された酸素レベルが、計算された閾値酸素レベル以上であるか否かを決定することと、
(d)前記測定された酸素レベルが前記閾値酸素レベル以上である場合、前記第1の過酸化物ベース出力信号に基づいて、前記ユーザの体内の前記グルコースレベルを計算することと、を行うように構成されている、システム。
[2]
前記測定された酸素レベルが前記閾値酸素レベルを下回ると前記マイクロプロセッサが決定した場合、前記マイクロプロセッサが、前記第1の電気化学的過酸化物ベースグルコースセンサを第2の酸素ベースセンサに変換するように、前記第1の電気化学的過酸化物ベースグルコースセンサの電位を逆転させ、前記第1および第2の電気化学的酸素ベースセンサのそれぞれの出力信号に基づいて、前記ユーザの体内の前記グルコースレベルを計算する、[1]に記載のシステム。
[3]
前記マイクロプロセッサが、前記第1の電気化学的酸素ベースセンサの前記出力信号と前記第2の電気化学的酸素ベースセンサの前記出力信号との間の差を算出することによって、前記ユーザの体内の前記グルコースレベルを計算する、[2]に記載のシステム。
[4]
第2の冗長な電気化学的過酸化物ベースグルコースセンサをさらに含む、[1]に記載のシステム。
[5]
前記マイクロプロセッサが、前記第2の電気化学的過酸化物ベースセンサから第2の過酸化物ベース出力信号を受信し、前記第2の過酸化物ベース出力信号が、前記ユーザの体内の前記グルコースレベルを示し、前記測定された酸素レベルが前記閾値酸素レベル以上である場合、前記マイクロプロセッサが、前記第1および第2の過酸化物ベース出力信号を融合して、前記ユーザの体内の血中グルコースレベルの単一の融合されたセンサグルコース値を計算する、[4]に記載のシステム。
[6]
前記第1の電気化学的過酸化物ベースグルコースセンサが、第1のワイヤ上に担持され、前記電気化学的酸素ベースセンサが、第2のワイヤ上に担持されている、[1]に記載のシステム。
[7]
前記グルコース監視システムが、閉ループシステムである、[1]に記載のシステム。