以下、長尺部材、パネル及びパネル施工方法の実施形態について図面を参照して説明する。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
まず、本開示に係る長尺部材及びパネルを適用可能な建物の一例について説明する。建物は、例えば鉄骨造の軸組みを有する2階建ての工業化住宅であり、鉄筋コンクリート造の基礎と、柱や梁などの軸組部材で構成された軸組架構を有し、基礎に固定された上部構造体と、で構成される。なお、軸組架構を構成する軸組部材は、予め規格化(標準化)されたものであり、予め工場にて製造されたのち建築現場に搬入されて組み立てられる。
基礎は、上部構造体の下側に位置し、上部構造体を支持している。具体的に、基礎は、断面T字状の布基礎であり、フーチング部と、基礎梁としての立ち上がり部と、を備えている。また、基礎の立ち上がり部の天端部には、露出型固定柱脚工法により軸組架構の柱の柱脚を固定するための柱脚固定部が設けられており、柱脚を固定する際に用いられるアンカーボルトが立ち上がり部の天端から鉛直方向上側に向かって突出している。
また、基礎は、上部構造体の軸組架構からの鉛直荷重を地盤に分散して伝達する機能に加えて、上部構造体の外周壁を構成する各種の部材、上部構造体の床部を構成する各種の部材、上部構造体の屋根を構成する各種の部材などを直接的又は間接的に支持する機能をも有している。
上部構造体の軸組架構は、複数の柱及び複数の梁などから構成されている。軸組架構の外周部には、外周壁を構成する外装材等が配置される。また、軸組架構の層間部には、床部を構成する床板部材等が配置される。更に、軸組架構の上部には、屋根を構成する屋根材等が配置される。
建物の外周壁は、外装材、断熱材及び内装材を少なくとも含む。外装材として軽量気泡コンクリート(以下、「ALC」と記載する。「ALC」とは「autoclaved lightweight concrete」の略である。)のパネルを用いることができるが、外装材として、例えば、耐火性を有する金属系や窯業系のサイディング、押出成形セメント板、木質パネル材などを用いることも可能である。外周壁の外層は、外装材を複数連接させることにより形成することができる。
また、断熱材は、板状であり、例えば、フェノールフォーム、ポリスチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡樹脂系の材料で形成することができ、上述の外装材により形成された外層の内面に沿って連接することにより、外周壁の断熱層を形成することができる。
更に、内装材は、例えば、石膏ボードを用いることができ、断熱層の内側に連接することにより、外周壁の内層を形成することができる。
建物の床部は、床板部材を含む。床板部材は、軸組架構の梁間に架設され、梁により直接的又は間接的に支持される。床板部材は、例えば、ALCパネルにより構成することができるが、折板、押出成形セメント板、木質パネル材などの別の部材を用いてもよい。上述した木質パネル材としては、例えば、張り合わせる板の繊維方向が平行する集成材や、張り合わせる板の繊維方向が直交するように交互に張り合わされる直交集成板(CLT(Cross Laminated Timberの略))などが挙げられる。床部は、床板部材に加えて、例えば、床板部材に対して直接的又は間接的に取り付けられる、下階屋内空間の天井面を構成する天井内装材や、床支持材上に積層された、上階屋内空間の床面を構成するフローリング等の床内装材などを含むものであってもよい。
以下、上述した建物に用いられる長尺部材1及びパネル30について説明する。
図1は、長尺部材1を示す図である。図1に示すように、長尺部材1は、長尺板状のベース部2と、第1側端部3と、第2側端部4と、を備える。この長尺部材1は、建物の床下地や天井下地にパネル30を取り付ける際に、パネル30の位置を固定するために建物の床下地や天井下地に予め取り付けられるランナなどの取付下地として利用することができる。
ベース部2の長手方向Aは、長尺部材1の長手方向と一致している。以下、説明の便宜上、長尺部材1の長手方向についても「長手方向A」と記載する。
第1側端部3は、ベース部2の幅方向Bの一方側に連続している。また、第1側端部3は、長尺部材1における、幅方向Bの一方側の側縁3aを含んでいる。更に、図1に示す第1側端部3は、ベース部2の厚み方向Cに延在している。換言すれば、図1に示す第1側端部3は、ベース部2から厚み方向Cに垂直に立ち上がる立ち上がり部である。
第2側端部4は、ベース部2の幅方向Bの他方側に連続している。また、第2側端部4は、長尺部材1における、幅方向Bの他方側の側縁4aを含んでいる。更に、図1に示す第2側端部4は、ベース部2の幅方向B(ベース部2の面内方向における一方向)に延在している。換言すれば、図1に示す第2側端部4は、ベース部2から幅方向Bに延設されている延設部である。
このように、第1側端部3及び第2側端部4は、ベース部2を厚み方向Cで見た場合のベース部2を幅方向Bにおいて挟む両側の位置で、ベース部2にそれぞれ連続している。以下、説明の便宜上、第1側端部3の側縁3aを「第1側縁3a」と記載し、第2側端部4の側縁4aを「第2側縁4a」と記載する。
ここで、第2側端部4の第2側縁4aには、スリットで構成された分離部5が形成されている。分離部5としてのスリットは、第2側縁4aからベース部2に向かって幅方向Bに延在している。第2側端部4の第2側縁4aに分離部5を設けることにより、第2側端部4のうち分離部5を挟んで隣接する部位を別々に変形させることができる。つまり、第2側端部4のうち分離部5を挟んで隣接する部位を、ベース部2に対して別々に折り曲げ変形させることができる。そのため、施工現場において第2側端部4をベース部2に対して折り曲げて断面コの字形のランナを形成する等、施工現場において所望の形状に変形させることができる。その一方で、輸送時には断面L字形の状態のままで輸送可能であり、断面コの字形の長尺部材と比較して、同一部材どうしを重ね易く、輸送効率を高めることができる。
図1に示す長尺部材1では、第1側端部3の第1側縁3aに分離部5が形成されておらず、第1側端部3は、ベース部2の厚み方向Cに延在している。その一方で、図1に示す長尺部材1では、第2側端部4の第2側縁4aに分離部5が形成されており、第2側端部4は、ベース部2の面内方向に延在している。但し、この構成に限られるものではなく、第1側端部及び第2側端部の少なくとも一方の側端部が、ベース部の面内方向に延在しており、この少なくとも一方の側端部の側縁に分離部が形成されていればよい。つまり、図1に示す長尺部材1の第1側端部3は、ベース部2に対して厚み方向Cに立ち上げられているが、第2側端部4に加えて又は代えて、図1に示す第2側端部4と同様、ベース部2の面内方向に延在し、かつ、第1側端部3の第1側縁3aに分離部5が形成された構成としてもよい。これにより、輸送時には平板形状や断面L字形状とすることで輸送効率の高い形状を維持しつつ、施工現場において、断面コの字形状などの所望の形状に変形可能な長尺部材とすることができる。
また、図1に示す長尺部材1の分離部5はスリットにより構成されているが、側端部のうち分離部5を挟んで隣接する部位を別々に変形させることが可能であればよく、V字状やU字状の切り込みや櫛歯形状の窪みなど、側縁に形成された凹部を分離部5としてもよい。
なお、図1に示す第2側縁4aには、分離部5としてのスリットが複数形成されているが、分離部5の個数は、施工現場で折り曲げ変形させる際の作業性を考慮し、長尺部材1の長手方向Aの長さに応じて適宜設計可能である。
また、図1に示す第2側端部4は、ベース部2の長手方向Aに沿って直線状に配置された複数の孔Xから形成されている孔線部6により、ベース部2との間を区画されている。孔Xはベース部2の厚み方向Cに貫通する貫通孔である。そして、第2側縁4aに形成されている分離部5は、孔線部6の位置まで達している。これにより、分離部5により区切られた第2側端部4の各部位が、孔線部6の位置で折り曲げ変形し易くなり、施工現場での折り曲げ作業の作業性を高めることができる。
これに対して、図1に示すベース部2と第1側端部3との間には孔線部6はなく、第1側端部3は、施工現場に運ばれる前の製造工場等において予め折り曲げ加工等されることで形成される屈曲線部7により、ベース部2との間を区画されている。孔線部6によりベース部2との間を区画されていない第1側端部3は、孔線部6によりベース部との間を区画されている第2側端部4と比較して、ベース部2に対して折り曲げ変形し難い。第1側端部3及び第2側端部4それぞれと、ベース部2と、の間に孔線部6を設け、ベース部2に対する折り曲げ強度を同等にすることも可能であるが、上述のように第1側端部3と第2側端部4との間でベース部2に対する折り曲げ強度を異ならせることで、後述するパネル施工方法の配置工程S2などの所定の用途において、パネルの固定強度と施工性とを両立できる長尺部材とすることができる。この詳細は後述する(図5、図6参照)。
図2はパネル30を厚み方向Dで見た図である。図3(a)は図2のI−I線に沿う断面図であり、図3(b)は図2のII−II線に沿う断面図である。図2、図3に示すように、パネル30は、第1ボード部材31と、第1面材32と、下地材33と、第2ボード部材34と、第2面材35と、を備える。このパネル30は、矩形板状の形状を有しており、建物の軸組架構の開口に設けられる外周壁、境壁、界壁等の各種の壁を構成する壁パネルとして利用することができる。
第1面材32は、第1ボード部材31の厚み方向の一方側で第1ボード部材31に固定されている。第1面材32は第1ボード部材31よりも薄い。また、第1面材32は可撓性を有するが、第1ボード部材31は可撓性を有さない。図2、図3に示す第1ボード部材31及び第1面材32はいずれも矩形板状の形状を有しており、面内方向の外周縁の位置が略一致するように厚み方向に重なっている。また、図2、図3に示す第1ボード部材31及び第1面材32は、石膏ボードにより構成されている。具体的に、第1ボード部材31は石膏ボードの石膏板であり、石膏ボードの石膏板の両表面に積層されている可撓性を有するシート材のうち、下地材33側とは反対側に積層されているシート材により、第1面材32が構成されている。図3では下地材33側に積層されているシート材を符号「P」で表記している。なお、第1ボード部材31の厚み方向は、第1面材32、第2ボード部材34及び第2面材35の厚み方向と同じ方向であり、パネル30の厚み方向Dと同じである。したがって、以下、説明の便宜上、第1ボード部材31、第1面材32、第2ボード部材34及び第2面材35の厚み方向を「厚み方向D」と記載する。
下地材33は、第1ボード部材31の厚み方向Dにおいて第1ボード部材31を挟んで第1面材32と反対側である他方側に位置している。また、下地材33には、第1ボード部材31が、ビス等の締結部材9及び接着剤を用いて、固定されている。
第2ボード部材34は、下地材33を挟んで第1ボード部材31と反対側の位置に配置されており、ビス等の締結部材9及び接着剤を用いて、下地材33に固定されている。第2面材35は、第2ボード部材34に対して下地材33とは反対側の位置に配置され、第2ボード部材34に固定されている。第2面材35は第2ボード部材34よりも薄い。また、第2面材35は可撓性を有するが、第2ボード部材34は可撓性を有さない。図3に示す第2ボード部材34及び第2面材35はいずれも矩形板状の形状を有しており、面内方向の外周縁の位置が略一致するように厚み方向に重なっている。図3に示す第2ボード部材34及び第2面材35は、第1ボード部材31及び第1面材32と同様、石膏ボードにより構成されている。具体的に、第2ボード部材34は石膏ボードの石膏板であり、石膏ボードの石膏板の両表面に積層されている可撓性を有するシート材のうち、下地材33側とは反対側に積層されているシート材により、第2面材35が構成されている。図3では下地材33側に積層されているシート材を符号「P」で表記している。
なお、図2、図3に示す下地材33は、建物に予め固定されている取付下地に対して取り付けられる軽量鉄骨製のスタッドで構成することができる。また、下地材33としてのスタッドは、その長手方向の中央の本体部よりも狭幅となる端部を有している。下地材33を取り付ける取付下地として、上述の長尺部材1を用いることができ、長尺部材1のベース部2(図1参照)の幅と、パネル30の下地材33としてのスタッドの端部の幅と、が略同一幅に構成されている(図4参照)。
以上のように、図2、図3に示すパネル30は、下地材33と、この下地材33の一方側に配置された第1ボード部材31及び第1面材32と、下地材33の他方側に配置された第2ボード部材34及び第2面材35と、を備えている。更に、図2、図3に示すパネル30において、第2ボード部材34及び第2面材35は、下地材33を挟んで、第1ボード部材31及び第1面材32と対称構造を有している。
ここで、石膏ボードで構成されている第1ボード部材31及び第1面材32に着目すると、第1ボード部材31のうち、第1面材32が固定されている一方側の面とは反対側である厚み方向Dの他方側の面には、直線状に延在するスリット36が形成されている。このスリット36は、第1面材32まで到達しておらず、例えば、第1ボード部材31内で終端している。第1ボード部材31は、所定の外力を加えることにより、スリット36の位置で破断する。第1面材32は、第1ボード部材31のスリット36を跨る両側に固定されている。そのため、第1ボード部材31がスリット36の位置で破断しても、スリット36の位置で分割されて別々になった第1ボード部材31の複数部分は、第1面材32を介して一体化した状態が維持される。また、第1ボード部材31のうちスリット36を挟んで隣接する一方側は下地材33にビス等の締結部材9及び接着剤で固定されているが、他方側は、下地材33に対して固定されていない。そのため、第1面材32は、第1ボード部材31がスリット36の位置で破断した状態で、このスリット36の位置で屈曲可能となる(図3の破線参照)。なお、第1面材32が屈曲可能となる方向は、パネル30の厚み方向Dの外側であり、下地材33側とは反対側である。
このような第1ボード部材31及び第1面材32を備えるパネル30とすれば、施工時などに第1ボード部材31及び第1面材32をスリット36の位置で屈曲させることができる。施工時に屈曲させるため、配送時に積載効率がよい。また、スリット36と同位置で完全に分断されている別部材を利用する場合と比較して、パネル構成を簡素化できると共に、別部材の位置合わせ等、施工時の手間を低減することができる。特に、図2、図3に示す例のように、第1ボード部材31及び第1面材32を石膏ボードで構成する場合には、内装仕上げの下地としての石膏ボードの加工手間及び施工手間を低減することができる。なお、スリット36と同位置で完全に分断されている別部材を面材でつなぎ合わせて別部材の部分を屈曲させる構成としてもよい。つまり、本実施形態のスリット36は、第1ボード部材31内で終端しており、第1ボード部材31は単一部材で構成されているが、第1ボード部材を、第1面材でつなぎ合わされた状態の、スリットで分断されている複数の部材、で構成してもよい。スリットで分断される複数の部材は、同一の材料から形成されていてもよく、互いに異なる材料から形成されていてもよい。
より具体的に、図3に示す第1ボード部材31は、本体部31aと、この本体部31aとスリット36を挟んで隣接する外縁部31bと、を備えている。上述したスリット36は、第1ボード部材31を厚み方向Dで見た場合に、第1ボード部材31の外縁の近傍に形成されている。上述したように、図2、図3に示すパネル30は、建物の軸組架構の開口に取り付けられる壁パネルとして利用される。矩形板状の第1ボード部材31に形成されるスリット36は、壁パネルとしてパネル30が立設された場合に鉛直方向上側に位置する外縁(以下、説明の便宜上、「上側外縁」と記載する。)の近傍と、鉛直方向下側に位置する外縁(以下、説明の便宜上、「下側外縁」と記載する。)の近傍と、にそれぞれ形成されている。また、上側外縁の近傍に形成されたスリット36は、上側外縁と略平行して直線状に延在し、下側外縁の近傍に形成されたスリット36は、下側外縁と略平行して直線状に延在している。そして、上側外縁の近傍に形成されたスリット36及び下側外縁の近傍に形成されたスリット36はいずれも、パネル30が壁パネルとして立設された際には水平方向に延在する。
第1面材32は、本体部31aと外縁部31bとに跨って延在しており、本体部31a及び外縁部31bそれぞれと固定されている。そして、下地材33は、スリット36の位置で第1面材32を屈曲させることにより外部に露出する、外部要素と取付可能な取付部33aを備えている。なお、図3に示す取付部33aは、下地材33としての軽量鉄骨製のスタッドの端部であり、この取付部33aとしてのスタッドの端部は、建物に予め固定される取付下地としての上述の長尺部材1に対して取り付けられる。換言すれば、取付部33aが取り付けられる上述の「外部要素」とは長尺部材1である。パネル30の下地材33の取付部33aを、長尺部材1に取り付ける際には、下地材33に固定されている本体部31aに対して下地材33に固定されていない外縁部31bが回動するように、第1面材32を屈曲させ、取付部33aを露出させる(図3の破線参照)。これにより、取付部33aを長尺部材1に取り付ける作業が実行し易くなる。この取付詳細は後述する(図5、図6参照)。
なお、上述したように、図2、図3に示すパネル30において、第2ボード部材34及び第2面材35は、下地材33を挟んで、第1ボード部材31及び第1面材32と対称構造を有しており、上述の第1ボード部材31及び第1面材32と同様の構成及び同様の効果を有する。すなわち、第2ボード部材34についても、本体部34aと、この本体部34aとスリット36を挟んで隣接する外縁部34bと、を備えている。なお、パネルの使用位置に応じて、スリットの位置を対称としない構成としてもよく、またボード部材及び面材を片面にのみ有する構成としてもよい。
次に、上述した長尺部材1及びパネル30を用いて形成される壁構造50について、図4を参照して説明する。図4に示す壁構造50は、建物の軸組架構の柱及び梁に直接的又は間接的に取り付けられる床下地又は天井下地により構成される、建物下地8としての下地枠部と、この下地枠部に取り付けられる取付下地としての長尺部材1と、この長尺部材1に取り付けられるパネル30と、を備えている。
建物下地8としての下地枠部は、例えば、床材がビス等の締結部材により取り付けられる床下地や、天井材がビス等の締結部材により取り付けられる軽量鉄骨(以下、「軽鉄」と記載する)の天井下地などにより構成される。また、建物下地8としての下地枠部は、外周壁、境壁、界壁等の各種の壁を設ける開口の枠となる部分である。具体的に、図4に示す下地枠部は、水平方向の両側に位置する下地枠部のうち縦方向部分と、鉛直方向上方に位置する軽鉄の天井下地102aと、鉛直方向下方に位置する床下地102bと、により構成されている。後述するように、長尺部材1は、ビス等の締結部材9を用いて、天井下地102a及び床下地102bに取り付けられる。また、図4に示す例では、床下地102bは、ALCパネル等の床板部材に取り付けられている。
長尺部材1は、この下地枠部に対して、ビス等の締結部材9を用いて、固定されている。具体的に、図1に示す断面L字形状の長尺部材1は、軽鉄の角形鋼管等で構成されている天井下地102aに対して、天井材103を挟んで、ビス等の締結部材9を用いて固定され、その後の施工途中で、断面コの字形状に折り曲げられる。また、図1に示す断面L字形状の長尺部材1は、天井下地102aのみならず、床下地102bに対して、ビス等の締結部材9を用いて固定され、その後の施工途中で、断面コの字形状に折り曲げられる。天井下地102aに固定される長尺部材1と、床下地102bに固定される長尺部材1と、は鉛直方向で対称となるように固定される。図4に示す壁構造50が完成している状態では、長尺部材1の第2側端部4(図1参照)は、ベース部2(図1参照)に対して略直角する方向に折り曲げられている。すなわち、天井下地102aに固定されている長尺部材1及び床下地102bに固定されている長尺部材1はいずれも、図4に示す状態において断面コの字形状であり、パネル30の上下端部を受ける互いの受け溝20が鉛直方向で対向するように配置されている。
具体的に、パネル30の下地材33としてのスタッドにおける上端部は、天井下地102aに固定されている長尺部材1の第1側端部3及び第2側端部4に挟まれた状態とされる。また、パネル30の下地材33としてのスタッドにおける下端部は、床下地102bに固定されている長尺部材1の第1側端部3及び第2側端部4に挟まれた状態とされる。このように、壁構造50における長尺部材1は、パネル30の上下端部を受ける受け部材を構成している。そして、下地材33としてのスタッドの上下端部は、長尺部材1の第1側端部3と、施工途中で折り曲げられた第2側端部4と、に挟まれた状態で、ビス等の締結部材9を用いて、第1側端部3及び第2側端部4と固定されている。なお、第2側端部4は、パネル30を取り付ける施工途中に折り曲げられるが、このパネル施工方法の詳細は後述する(図5、図6参照)。
図4に示す壁構造50のように、パネル30を厚み方向Dの両側から固定する構成とすれば、パネル30を厚み方向Dの一方側のみから固定する構成と比較して、固定強度を高めることができる。そのため、施工現場での施工途中で断面コの字形状に折り曲げ変形可能な上述の長尺部材1ではなく、予め断面コの字形状に成形されている部材を利用することも考えられるが、パネル30の上下端部を溝内に嵌合させる作業のために、溝幅を大きく確保する、又は、溝の高さを低く設定する必要がある。溝幅が大きくなると、パネル30の厚み方向Dにおける位置決め精度が低下する。また、溝の高さが低くなると、パネル30と溝壁との固定可能領域が制限され、固定強度が低減する可能性がある。なお、「固定可能領域」とは、パネル30と溝壁とが厚み方向Dにおいて重なる領域を意味する。
この点、施工現場での施工途中で断面コの字形状に折り曲げ可能な長尺部材1を用いれば、パネル30を傾けることなく、垂直に立てた状態で水平方向にスライド移動させることで、パネル30の下地材33としてのスタッドを、第2側端部4の位置からベース部2上に配置することができる。そして、パネル30の下地材33としてのスタッドの長手方向の端面をベース部2上に配置した状態で、第2側端部4をベース部2に対して折り曲げることで、パネル30の下地材33としてのスタッドにおける取付部33aとしての端部を、パネル30の厚み方向Dで、第1側端部3及び第2側端部4により挟むことができる。そのため、第1側端部3と、ベース部2に対して折り曲げられた第2側端部4と、で形成される溝壁間の溝幅を、パネル30の上下端部を溝内に嵌合させる作業のために大きく確保する必要がない。これにより、パネル30の厚み方向Dにおける位置決め精度を高めることができる。
また、上述の長尺部材1を用いれば、受け溝20の高さについても制限されないため、パネル30と溝壁との固定可能領域を大きく確保し易く、パネル30の固定強度を高めた構成が実現し易くなる。
更に、図4に示す壁構造50のパネル30は、折り曲げ可能に構成された第1ボード部材31及び第1面材32を備えるため、第1面材32をスリット36の位置で折り返すことができる。そのため、上述した下地材33の取付部33aとしてのスタッドの上下端部を、取付下地として建物に取り付けられた長尺部材1に対して固定する作業の際に、スタッドの上下端部を外部に露出させることができる。したがって、取付部33aとしてのスタッドの上下端部を長尺部材1に対して固定する作業が視覚的に確認し易くなり、作業効率を高めることができる。また、取付部33aとしてのスタッドの上下端部を長尺部材1に対して固定した後は、第1面材32のスリット36の位置での折り返しを元の状態に戻す。これにより、幅木や廻り縁を設けることなく、断面コの字形状に折り曲げられた長尺部材1の第1側端部3や第2側端部4を簡単に覆い隠すことができ、長尺部材1が露出することを防ぐことができる。つまり、天井面や床面とパネル30との間の隙間を小さくでき、幅木や廻り縁を設けない納まりが実現し易い。更に、第1面材32はスリット36を挟んで繋がっており、折り返しを戻した状態としても段差となり難く、平滑な仕上がりが実現し易い。
また、本実施形態の下地材33としてのスタッドは、その両端部が狭幅の絞り部となっている。そのため、下地材33としてのスタッドの端部を、長尺部材1を折り曲げて形成される受け溝20により受けた状態としても、スタッドの長手方向の中央の本体部を、長尺部材1の第1側端部3及び第2側端部4の外側面と面一又は略同一面となるようにすることができる。つまり、スタッドの両端部を断面コの字形状に折り曲げられた長尺部材1で受けた状態とした上で、第1面材32のスリット36の位置での折り返しを元の状態に戻しても、第1側端部3及び第2側端部4の外側面に阻害されることなく、第1ボード部材31及び第1面材32を平板状に復元することができる。すなわち、長尺部材1の厚みや、製造・施工の寸法誤差を吸収することができる。なお、図4に示す例では、下地材33としてのスタッドの長手方向の中央の本体部が、長尺部材1の第1側端部3及び第2側端部4の外側面と面一となっている。
なお、図4に示す壁構造50のパネル30における第2ボード部材34及び第2面材35についても、第1ボード部材31及び第1面材32と同様である。
また、壁パネルとして立設されているパネル30の幅方向両端面には、幅方向で隣接するパネル30と連結可能な連結部が設けられている。連結部としては、隣接するパネル30の端面に形成された凹部に嵌合可能な凸部や、隣接するパネル30の端面に形成された凸部に嵌合可能な凹部が挙げられるが、連結部の構成としては上述の凸部や凹部に限られるものではない。図2、図3に示すパネル30の連結部については、パネル30の下地材33により凸部及び凹部が形成されている。
最後に、上述した長尺部材1及びパネル30を用いて行うパネル施工方法の詳細について説明する。図5は、パネル施工方法の一例を示すフローチャートである。図5に示すパネル施工方法は、パネル30の上下端部を受ける受け部材としての長尺部材1を建物下地8に固定する固定工程S1と、パネル30の端面をベース部2上に配置する配置工程S2と、第2側端部4をベース部2に対して折り曲げ、第1側端部3及び第2側端部4によりパネル30を挟む折り曲げ工程S3と、第1側端部3及び第2側端部4を覆うカバー工程S4と、を含む。なお、図2、図3に示すパネル30についての「パネルの端面」とは、下地材33としてのスタッドの端面である。また、図2、図3に示すパネル30において、第1側端部3及び第2側端部4により挟まれるのは、下地材33としてのスタッドにおける取付部33aとしての端部である。以下、各工程S1〜S4の詳細を説明する。
図6(a)は、固定工程S1の概要を示す図である。図6(a)に示すように、固定工程S1では、建物下地8としての下地枠部の、天井下地102a及び床下地102bに対して長尺部材1を固定する。なお、長尺部材1は、上述したように、パネル30を受けるベース部2と、ベース部2の一端側に連続する第1側端部3と、ベース部2の他端側に連続する第2側端部4と、を備え、第2側端部4がベース部2に対して折り曲げ可能な受け部材である。また、第1側端部3は、ベース部2の厚み方向Cに延在すると共に、第2側端部4は、ベース部2の面内方向に延在している。つまり、長尺部材1は、断面L字形状を有している。
図6(b)は、配置工程S2の概要を示す図である。図6(b)に示すように、配置工程S2では、パネル30を第1側端部3に沿わせて配置する。具体的に、パネル30を、鉛直方向上下に位置する、断面L字形状の長尺部材1間に配置する。より具体的に、パネル30の下地材33としてのスタッドを、上下に位置する長尺部材1のベース部2間に位置するように配置する。その際に、下地材33としてのスタッドの側面を、ベース部2から略垂直に立ち上げられている第1側端部3に当接させるようにすることで、パネル30の位置決めを行う。これにより、パネル30の面内方向に連設される複数のパネル30が蛇行しながら連設されることを抑制できる。
なお、長尺部材1の第1側端部3は、施工現場で折り曲げ変形させるものではなく、工場等での製造時にベンダー等を用いてベース部2に対して予め屈曲した状態とされる。このようにすることで、第2側端部4と比較して、第1側端部3をベース部2に対して折れ曲がり難い構成とすることができる。そのため、上述した配置工程S2においてパネル30を突き当てて位置決めする際に、第1側端部3がベース部2に対して折れ曲がることを抑制し、上述した連設される複数のパネル30の蛇行配置をより一層抑制することができる。
図6(c)は、折り曲げ工程S3の概要を示す図である。図6(c)に示すように、折り曲げ工程S3において、第2側端部4をベース部2に対して折り曲げることにより、パネル30を厚み方向Dで挟んだ状態で、パネル30の厚み方向Dの両側からビス等の締結部材9を用いて固定することが可能となる。
なお、図6(b)に示す配置工程S2及び図6(c)に示す折り曲げ工程S3の際には、第1ボード部材31及び第1面材32がスリット36の位置で折り返された状態とされていると共に、第2ボード部材34及び第2面材35もスリット36の位置で折り返された状態とされている。そのため、パネル30の下地材33の取付部33aが外部に露出した状態で、長尺部材1に対する位置決め及び固定を行うことができる。したがって、取付部33aの視認性を高め、作業効率を向上させることができる。
カバー工程S4では、図4に示すように、折り返された第1面材32及び第2面材35を元に戻し、断面コの字形状に折り曲げられた長尺部材1の第1側端部3及び第2側端部4を覆い隠す。このように、折り返しを戻すという簡単な作業により、長尺部材1の第1側端部3及び第2側端部4を覆い隠すことができる。そして、天井面や床面とパネル30との間の隙間を小さくでき、幅木や廻り縁を不要とする納まりが実現し易くなる。
本発明に係る長尺部材、パネル及びパネル施工方法は、上述した具体的な構成や工程に限られるものではなく、特許請求の範囲に逸脱しない限り、種々の変更・変形を行うことが可能である。